説明

パルスアーク蒸着ソースの操作方法ならびにパルスアーク蒸着ソースを有する真空処理装置

本発明は、直流電源(13)に接続された第1電極(5’)を含むアーク蒸着ソース(5)と、アーク蒸着ソース(5)から分離されて配置された第2電極(3、18、20)とを有する加工物(3)の表面処理のための真空処理装置に関する。両方の電極(5’、3、18、20)が個々のパルス電源(16)に接続されて運転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の上位概念に従ったアーク蒸着ソースを用いた加工物の表面処理のための真空処理装置ならびに特許請求項14の上位概念に従ったアーク蒸着ソースを操作するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子パルスの供給による、アークカソードとしても知られているアーク蒸着ソースの操作は従来技術ですでにかなり以前から公知である。アーク蒸着ソースを用いて効率性の高い蒸着速度およびしたがって高い析出速度をコーティングの際に達成することができる。そのうえこのようなソースの構造は、パルス運転への要求が比較的高なくかつパルスが多かれ少なかれ直流放電の点弧だけに限定される限り、技術的に比較的簡単に実現することができる。このソースは、比較的安価な直流電源で実現されうる電流では通常約100A以上の範囲でかつ電圧では数ボルトから10ボルトまでで動作する。これらソースにおける本質的な欠点は、陰極点の範囲内でターゲット表面におけるきわめて早く進行する溶融が生じることであり、このことによって滴、いわゆるドロップレットが形成され、このドロップレットは飛沫として飛ばされ、さらに加工物上で凝縮しかつしたがって膜性質に不利に影響を及ぼす。例えばそれにより膜構造が不均一になり、表面あらさが悪化する。膜品質に対する要求が高い場合にはこのようにして得られた膜はしばしば商品としては使用することはできない。したがってこの問題を軽減することが、アーク蒸着ソースを電源の純粋なパルス運転で動作させることによって既に試みられている。このパルス運転で確かに部分的にイオン化を既に増大させることはできたが、しかし、飛沫形成は動作パラメータの調整次第でそれどころかさらに不利な影響を受けた。
【0003】
反応性プラズマ中での金属ターゲットからの化合物を析出するための反応ガスの使用はこれまで著しく限定的にしか可能ではなかった、というのも飛沫形成の問題はこのようなプロセスの場合には、殊に不導体の、つまり誘電体の皮膜、例えば反応ガスとして酸素を使用しての酸化物を生成すべき場合に、さらに増大するからである。この場合のプロセスに必ず伴うアーク蒸着装置のターゲットの表面および対向電極、例えばアノードおよびまた真空処理装置のその他の部分の不導体膜による再被覆(Wiederbelegung)は、アーク放電の完全に不安定な状況および、それどころか消失をもたらす。このケースではアーク放電はそのような場合には繰り返し改めて点弧されなければならないだろうし、あるいはプロセスの実施がそのことによってまったく不可能になる。
【0004】
欧州特許第0,666,335号明細書ではアーク蒸着装置を用いた純粋に金属の材料の析出について、飛沫形成を減少させるために直流にパルス化された電流を重ねることによってこの直流の基本電流を低下させることができることが提案されている。この場合には、100Hz〜50kHzの範囲内の比較的低いパルス周波数でコンデンサ放電によって生成しなければならない5000Aまでのパルス電流が必要である。この処置は、アーク蒸着ソースを用いた純粋に金属のターゲットの非反応性の蒸着の場合にドロップレット形成を防止するために提案されている。不導体の、つまり誘電体の皮膜に対する解決はこの文献には示されていない。
【0005】
アーク蒸着ソースを用いた反応性のコーティングの場合には、特に絶縁膜の製造の際に反応性およびプロセス安定性が不足する。他のPVDプロセス(例えばスパッタ)と異なり、絶縁膜は導電性ターゲットのみを用いたアーク蒸着により製造されることができる。例えばスパッタの場合にそうであるように高周波を用いた動作はこれまで、高周波を有す
る大電流電源を動作させることができる技術の欠陥で失敗する。パルス化された電源を用いた動作は1つの選択であるようである。ただし、その場合には前述したようなアークが繰り返し点弧されなければならないか、あるいはパルス周波数がアークが消える程度に大きく選択されなければならない。特殊な材料、例えばグラファイト、への適用の場合にある程度機能するようである。
【0006】
酸化されたターゲット表面の場合には機械的な接触を介しかつ直流電源を用いた新たな点弧が不可能である。迅速な点弧経過の別の方法は技術的に費用がかかりかつその点弧周波数が制限されている。反応性のアーク蒸着における本来の問題は、ターゲットとアノードもしくはコーティングチャンバとへの絶縁膜による被覆である。この被覆によって火花放電のバーニング電圧が高められ、増大した飛沫とフラッシオーバーと、火花放電の中断時に終了する不安定なプロセスがもたらされる。ターゲットの被覆は、導電性表面が減少させる島の成長を伴う。著しく希薄な反応ガス(例えばアルゴン/酸素混合物)はターゲットでの成長を遅らせることはできるが、しかしプロセス不安定性の根本的な問題は解消されない。カソードとアノードを交互にそのつど新たに点弧しながら動作させる米国特許第5,103,766号明細書による提案はプロセス安定性に十分に寄与するが、しかし飛沫を増大させる。
【0007】
例えば反応スパッタの場合に可能であるパルス化された電源による打開策は、典型的なアーク蒸着では行うことができない。それは、電源供給が中断される場合にグロー放電がアークより「長く生きる」ことに起因している。絶縁膜によるターゲットの被覆の問題を回避するために、絶縁膜を生成するための反応性プロセスの場合には反応ガス入口がターゲットから場所的に分離される(その際、プロセスの反応性は基板の温度も酸化/反応を可能にする場合に保証されているだけである)かあるいは飛沫とイオン化された部分の分離が行なわれ(いわゆるフィルタードアーク)、かつ反応ガスはフィルタリング後にイオン化蒸気に添加される。出願番号CH00518/05をもつ先行の特許出願明細書は本質的にこの問題について解決のアプローチを指摘しており、本特許出願明細書で提示した発明は更なる発展であり、この更なる発展が優先権を本願に取り入れかつしたがってこれは本願の不可欠な構成要素である。
【0008】
スパッタと異なりカソードアークによるコーティングは本質的に蒸着プロセスである。高温の陰極点とその周辺部との移行部で原始サイズではない部分が飛沫となって同伴されると推測される。この集成物(Konglomerate)は、飛沫の中で完全に反応しつくされることはできないものとして基板にぶつかって結果的に粗い表面を生じさせる。この飛沫の回避ないしは分割はこれまで成功しておらず、反応性のコーティングプロセスにとってはすでにまったく成功していない。この場合にはアークカソード上に、例えば酸素雰囲気下で、付加的に、飛沫形成を増大させる傾向のある酸化物薄膜がなお形成される。前述の特許出願明細書CH00518/05には、完全に反応したターゲット表面に特に好適でありかつ顕著に減少された飛沫形成を示す第1の解決が示されていた。それにもかかわらず飛沫およびその大きさの更なる減少が望まれる。
【0009】
さらに基板の熱負荷の更なる削減の可能性ないしは適応の可能性が望まれており、かつ陰極アークコーティング(kathodische Funkenbeschichtung)の場合に低温プロセスを実施する可能性が望まれている。
【0010】
国際公開第03,018,862号パンフレットにはプラズマソースのパルス運転が、基板の熱負荷を削減する1つの可能な方法として記載されている。ただし、その文献ではスパッタ法の領域の根拠は十分に有効である。それはアーク蒸着とは関係なく製造される。
【0011】
従来技術については次の欠点がまとめて挙げられる。
1.陰極アーク蒸着によるコーティングの場合の反応性が不十分である。
2.飛沫の問題が基本的に解決されていない: 集成物(飛沫)完全に反応しつくされない → 膜表面の粗さ、膜構造および化学量論の一様性。
3.絶縁膜の析出に際し安定したプロセスが不可能。
4.飛沫の再度イオン化の可能性(Nachionisierungsmoeglichkeit)が不十分である。
5.低温プロセスを実施する不十分な可能性。
6.基板の熱負荷の更なる削減が不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、従来技術の上記欠点を取り除くことである。殊にこの課題は、蒸発した材料および、プロセスに関与する、反応ガスのより良好なイオン化によってプロセスにおける反応性が高められるように少なくとも1つのアーク蒸着ソースを用いて皮膜を経済的に析出させることである。この反応プロセスの場合には飛沫の大きさと頻度が、殊に絶縁膜を生成するための反応性プロセスの場合には、本質的に減少されるべきである。さらにより良好なプロセス制御、例えば蒸着速度の制御、膜品質の向上、膜性質の調整可能性、反応の均一性の改善ならびに析出膜の表面粗さの削減、を可能にすべきである。これら改善は殊に合金された皮膜および/または合金の製造の場合にも重要である。絶縁膜の製造のための反応プロセスにおけるプロセス安定性は一般的に高められるべきである。さらに低温プロセスはこの方法の高い経済性でも実現されるべきである。さらに装置および殊にパルス化された運転のための電源のための費用が少なく維持されることができなければならない。上記課題は、そのつどの必要とされる使用分野に応じて個別あるいはそれらの組み合わせででも生じる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明に従って特許請求項1に従った真空処理装置によって、かつ請求項13に従った方法に従った処置によって解決される。従属特許請求項はその他の有利な実施形態を定義する。
【0014】
この課題は、本発明に従って直流電源に接続され、かつ第1電極である少なくとも1つのアーク蒸着ソースによる加工物の表面処理のための真空処理装置が設けられ、付加的に1つの、アーク蒸着ソースから分離されて配置された第2電極が設けられており、かつこれら両電極がパルス電源に接続されていることによって解決される。両方の電極の間に、それによってプロセスの非常に良好な可制御性で関与した材料の特に高いイオン化を可能にするただ1つの個別のパルス電源を用いて1つの付加的な放電ギャップが操作される。
【0015】
第2電極は、この場合その他のアーク蒸着ソース、好ましくはマグネトロンソースのようなスパッタソース、加工物ホルダもしくは加工物自体であってよく、それによって第2電極はこの場合にバイアス電極として操作され、または第2電極は蒸着装置の低電圧アークのアノードを形成する蒸着坩堝としても構成することができる。
【0016】
特に好ましい構成は、両方の電極がそれぞれ1つのアーク蒸着ソースのカソードであり、かつこのアーク蒸着ソースは、両方のソースのアークもしくはアーク放電がバイポーラ運転でパルス電源によって消弧されないように、両者を直接それぞれ1つの直流電源にアーク電流の維持のために接続されていることである。したがってこのコンフィギュレーションの場合には1つだけのパルス電源が必要である、というのもこのパルス電源はアーク蒸着装置の両電極間に直接接続されているからである。高いイオン化度およびプロセスの良好な可制御性のほかに装置の高い効率も調整される。これら2つの電極およびそれによ
り付加的に生成されるパルス放電ギャップの間にこの放電ギャップに対して電気的に、負および正の部分からなるバイポーラパルスが生成され、そのことによりこの供給された交流電圧の全周期時間がプロセスに利用されることができる。事実上、利用されないパルスブレークは発生せずかつ負ならびに正のパルスが中断なく全体としてプロセスに寄与する。これは飛沫低減に寄与し、反応性コーティングプロセスを安定化し、付加的に高いパルス電源を使用する必要もなく反応性および析出速度を高める。2つのアーク蒸着ソースを有するこの装置は、反応ガスを使用した金属ターゲットからの皮膜の析出に特に適当である。プラズマプロセスは、アルゴンのような希ガスを用いて運転され、周知のように非常に安定している。種々の金属および半金属化合物を析出できるようにするため、反応ガスがそれに来ると直ちにプロセスパラメータがプロセスの実施をむしろ不可能にし得る様々なかつ従って不安定性が発生するので、プロセスの実施が困難になる。この問題は特に反応ガスとして酸素の使用下に酸化膜のような非伝導性膜が生成されるべきである場合に特に現れる。2つのアーク蒸着ソースを有する前記配列は、この問題を簡単な方法で解決する。この配列によってその上完全にアルゴンのようなシールド希ガスを省くことが可能になり、かつ純反応ガスを用いて、その上驚くべきことに純酸素を用いて作業することができる。それによって蒸着された材料および酸素を用いるような達成可能の反応ガスの高いイオン化率によって、バルク材料の品質の近傍に達する高い品質を有する非伝導性膜が発生される。プロセスはこの場合にはきわめて安定して進行し、意外にもこの場合にはさらに飛沫形成も劇的に削減されるかまたはほぼ完全に回避される。しかしまた前記の長所は、前記の好ましい作用が2つのアーク蒸着装置による配列の構成と同じ規模で達成されないにもかかわらず、1つのスパッタ電極、1つのバイアス電極、1つの補助電極または1つの低電圧アーク蒸着坩堝と異なるソースを第2電極として使用することによって達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明を図により例としてかつ図示しながら詳説する。
図1には、直流電源(13)を備えたアーク蒸着ソース(5)を動作させるための、従来技術で公知の装置を示す真空処理装置が示されている。該装置(1)に、この真空処理装置(1)のチャンバ内に必要な真空を生成するためのポンプシステム(2)が備えられている。ポンプシステム(2)は、圧力<10−1mbarでのコーティング装置の運転を可能にし、かつ典型的な反応ガス、例えばO、N、SiH、炭化水素などを用いた運転も保証する。反応ガスはガス入口(11)を介してチャンバ(1)の中へ流入させ、かつそこで対応して分配される。さらにその他の入口を通して付加的な反応ガスを流入させ、しかしまたはガスを個別的におよび/または混合物で利用するためにこれが必要とみられる場合アルゴンのような希ガスも流入させることが可能である。装置に配置された加工物ホルダ(3)は、通常金属またはセラミック材料から製造され、かつ硬質材料膜または摩耗保護膜でこの種のプロセスでコーティングされるここにそれ以上図示しない加工物の収容および電気的接触に用いられる。加工物に基板電圧あるいはバイアス電圧を励起するためにバイアス電源(4)が電気的に加工物ホルダ(3)と接続されている。バイアス電源(4)はDC、ACまたはバイポーラパルスもしくは単極性パルス−基板電源であることができる。処理チャンバ内のプロセス圧力およびガス組成物を設定および制御するために、プロセスガス入口(11)経由で希ガスもしくは反応ガスが入れられてもよい。
【0018】
アーク蒸着ソース(5)の構成要素は、背後に置かれる冷却板と、好ましくは磁石システムとを有するターゲット5’、ターゲット表面の周辺領域に配置された点弧フィンガ(7)ならびにターゲットを取り囲むアノード(6)である。スイッチ(14)を用いて、電源(13)の陽極のアノード(6)の非接地の運転と定義された零電位あるいは大地電位を有する運転との間で選択することができる。点弧フィンガ(7)を用いて例えばアーク蒸着ソース(5)のアーク放電の点弧の際にカソードとの短時間の接触が行なわれ、続いてカソードは引き離され、そのことによりアークが点弧される。点弧フィンガ(7)は
このために例えば限流抵抗器を介してアノード電位と接続されている。
【0019】
真空処理装置(1)に任意に、プロセスの実施がそれを必要とする場合には、付加的なプラズマソース(9)がさらに装備されてもよい。この場合にはプラズマソース(9)は、熱陰極を用いた低電圧アークを生成するためのソースとして形成されている。熱陰極は例えば小さなイオン化室中に配置されたフィラメントとして形成されており、このイオン化室中にガス入口(8)を用いて作動ガス、例えばアルゴンが、真空処理装置(1)の主チャンバ内にまで及ぶ低電圧アーク放電の生成のために入れられる。低電圧アーク放電の形成のための補助アノード(15)は、真空処理装置(1)のチャンバの中に対応して位置決めして配置され、かつ公知の方法でカソードおよびプラズマソース(9)およびアノード(15)の間の直流電源で運転される。必要な場合には、低電圧アークプラズマの磁界集束ないしは磁気案内のために真空処理装置(1)の周囲に置かれたコイル(10,10’)、例えばヘルムホルツ様装置(helmholzartige Anordnungen)が付加的に備えられていてもよい。
【0020】
本発明に従ってここでターゲット電極(5’)を有する第1アーク蒸着ソース(5)のほかに、これを図2に示したように、第2ターゲット電極(20’)を有する第2アーク蒸着ソース(20)が設けられる。両方のアーク蒸着ソース(5、20)は、基本電流を有する直流電源がアーク放電の維持を保証するように、それぞれ1つの直流電源(13)および(13’)で運転される。直流電源(13、13’)は今日の技術水準に相当し、かつコスト好適に実現することができる。両方のアーク蒸着ソース(5、20)のカソードを形成する両方の電極(5’、20’)は、本発明に従って両方の電極(5’、20’)にパルスの一定の形状および立上りしゅん度を有する高いパルス電流を引き渡すことができる個々のパルス電源(16)に接続されている。図2に従って図示した配列において、両方のアーク蒸着ソース(5、20)のアノード(6)は処理装置(1)のアースの電位に引き込まれる。
【0021】
しかしまた図3に示したように、火花放電をアースなしに運転することも可能である。この場合に第1直流電源(13)はその負極と共に第1アーク蒸着ソース(5)のカソード(5’)に接続され、かつその正極は第2アーク蒸着ソース(20)の対向アノードに接続される。第2アーク蒸着ソース(20)は同様に運転され、かつ第2電源(13’)は第1アーク蒸着ソース(5)のアノードの正極に接続されている。
【0022】
このアーク蒸着ソースのアノードの対向運転は、プロセス中の材料の良好なイオン化をもたらす。しかしアーク蒸着ソース(5、20)のアースなしの運転もしくは浮動または浮遊運転は、対向アノード給電の使用なしでも実施することができる。さらに、選択的にアースなしおよびアース接続された運転の間で切り換えることができるようにするため、スイッチ(14)を設けることも可能である。前記のように両方のアーク蒸着ソース(5、20)のカソードを形成する両方の電極(5’、20’)は本発明に従って個々のパルス電源(16)に接続されている。
【0023】
この「デュアル・パルスド・モード」のための電源は種々のインピーダンス範囲を網羅できなければならず、かつそれにもかかわらず電圧がかかった状態でなお「堅固」でなければならない。それはつまり、該電源が大電流を提供しなければならないが、しかしその場合にそれにもかかわらず十分に電圧安定に動作することができるということである。このような供給の一例は番号......をもつ本特許出願と同じ日付で平行に出願される。
エラー 2 本発明の第1の、そして有利な使用分野は、例えば図2に示されている2つのパルス化されたアーク蒸着ソース(5,20)を用いた陰極アーク蒸着の使用分野である。この使用についてはインターバルにおけるインピーダンスは約0.01Ω〜1Ωである
。なおここで、ソース、これらソース間で「デュアルでパルス化」される、のインピーダンスが通常さまざまであることが注記されなければならない。それは、これらが異なる材料もしくは合金から成るか、かつソースの磁界が異なるか、またはソースの材料の除去が異なる段階であることが原因である可能性がある。この「デュアル・パルスド・モード」によって、2つのソースが同じ電流を消費するようなパルス幅の調整についての均等化がこれからは可能となる。結果として種々の電圧がソースにもたらされる。プロセスの実施にとって望ましいと思われる場合には、当然のことながら電源は電流に関して非対称にも負荷されてもよく、このことは例えば種々の材料の傾斜膜について該当する。1つの電源の電圧安定性は、各プラズマのインピーダンスが小さくなるほど実現がますます困難になる。そのため短いパルス長がしばしば有利になる。種々の出力インピーダンスへの供給の可切換性もしくは可追従制御性は、そのためその出力の全範囲を利用したい場合、つまりたとえば範囲50V/100Aから50V/1000Aへ、または平行出願番号......で実現されるような場合に特に有利である。
【0024】
殊に2つのアーク蒸着ソースから成る、このようなデュアルでパルス化されたカソード装置の利点は次のようにまとめられる。
1.急傾斜のパルスにおける高められた電子放出がより大きな電流(基板電流とも)および蒸発した材料および反応ガスの高められたイオン化度をもたらす。
2.絶縁膜の生成の場合の高められた電子密度が基板表面のより速い放電にも寄与し、すなわち基板における比較的小さな再負荷時間(Umladezeiten)(あるいはまたバイアス電圧のパルスブレークのみ)が生成する絶縁膜を放電するのに十分である。
3. 2つの陰極アーク蒸着ソース間のバイポーラ運転によってほぼ100%のパルスブレーク比率(デューティサイクル)が可能となり、それに対し1つだけのソースのパルスは必然的に常に休止を必要とし、したがって効率はそれほど高くない。
4. 互いに向かい合わせになっている2つの陰極アークソースのデュアルでパルス化された運転によって基板領域が濃密なプラズマに浸され、この領域における、また反応ガスの、反応性が高められる。基板電流の増大が明らかである。
5. 酸素雰囲気下の反応プロセスの場合にパルス化運転でなお高められた電子放出値が達成されることができ、かつ金属ターゲットからの従来の蒸着の場合に該当するような火花領域の溶融が十分に回避されることができる。
【0025】
本発明のもう1つの好ましい変形は、第2電極としてアーク蒸着ソース(5)の第1電極のほかに、これを図4に示したように、その上に有る加工物を有する加工物ホルダ(3)が利用されることである。この場合、アーク蒸着ソース(5)の第1電極(5’)と加工物ホルダ(3)として形成された第2電極との間に個々のパルス電源(16)が接続される。より安定した放電条件を達成できるようにするため、付加的にアーク蒸着ソース(5)の直流電源(13)を同時に第2電極、加工物ホルダに接続することができる。このバイアス操作により同様にイオン化特性を、特に加工物表面の領域に標定して制御することができる。この変形においてインピーダンスは互いに本質的に異なっている。この場合も電流整合を電圧パルス幅にわたって実施できる。基板ホルダおよび基板の電子放出が陰極アーク蒸着装置の電子放出から強く区別されるので、生じるパルス化された電圧は零通過を示さない(基板は常に陽極である)。この変形において重要であるのは、再び絶縁膜の製造における適用と、さらに基板を高い電子流で作動する可能性である。この運転は、反応ガスを基板表面の近傍で解離し、かつ同時に高い基板温度を実現することが課題である場合、特に重要である。
【0026】
これらの長所は次のようにまとめられる。
1.基板近傍の高い反応性
2.反応ガスの効率的分解
3.絶縁膜の析出時の基板の放電
4.高い基板温度の実現が可能
本発明のもう1つの変形は図5に示しており、ここで第2電極が噴霧ターゲット(スパッタターゲット)として噴霧ソース(18)に形成されている。好ましくはこの噴霧ソース(18)はマグネトロン噴霧ソースとして形成されており、かつ通常直流電源(17)によって給電される。この配列によって噴霧技術の長所をアーク蒸着技術の長所と組み合わせることができ、かつこれを反応性プロセスでも、特に誘電性膜またはグラジエント膜および合金膜の析出で組み合わせることができる。
【0027】
この場合もインピーダンスは非常に異なっている。これらのインピーダンスはすでに上述したようなアーク蒸着ソースとマグネトロンソースを有するスパッタのアーク蒸着ソースとの間にある(10Ω−100Ω)。直流のための整合が実施されるべきである場合、それに応じて再びパルス長が適合されなければならない。特にこの運転方法においては、たとえばダイオードを含むフィルタによるパルス化された電源からの直流供給が減結合されることが重要である。このモードはアーク蒸着ソースに対してだけではなく、特にスパッタソースに対しても非常に幅広いプロセス窓を実現できるので、特に絶縁膜の析出のための反応性プロセスに対して長所であることが判明している。たとえば一定の反応ガス流によって作業することができ、かつ制御の困難を回避することができる。両方のソースが互いに対向して配置されている場合、プロセスプラズマは基板を通して他のソースへ到達し、かつ広い範囲にわたってスパッタターゲットの被毒を阻止する。
【0028】
付加的な長所
1.ターゲット被毒なしにスパッタ運転のための強く拡大されたプロセス窓
2.特により高い電子密度によるスパッタプロセスのより高い反応性
本発明のもう1つの構成において、第2電極は、これを図6に示しているように、低電圧蒸着装置の部分である蒸着坩堝(22)として構成されている。上述のように、低電圧アーク放電は直流電源(21)で運転され、この直流電源は正極と共にここでアノードとして用いられる蒸着坩堝(22)に接続され、かつ負極と共にここでカソードとして用いられる対向するプラズマソース(9)のフィラメントに接続される。低電圧アーク放電は公知の方法でコイル(10、10’)を用いて蒸着坩堝(22)に集中させることができ、そこで蒸着物を溶融し、かつ蒸着する。パルス電源(16)は再びアーク蒸着ソース(5)の電極(5’)と第2電極、蒸着坩堝(22)との間に、所望の高いイオン化率を達成するために接続されている。この処置は蒸着が困難な材料でも飛沫を低減することを介助する。もちろん通常の電子ビーム蒸着装置の坩堝も第2電極としてパルス電源に利用することができる。
【0029】
長所:
1.二重運転が熱蒸着装置においてイオン化を高める
2.熱蒸着および陰極火花蒸着の簡単な組み合わせ
3.低電圧アーク放電における反応ガスの効率的な分解および励起
4.他の熱蒸着に対するアーク蒸着の高い電子流の利用
5.プロセスの実施中の非常に高い柔軟性
本発明の先に述べた種々の可能な実施の形態において上記の有利なプロセス特性を達成できるようにするために、パルス電源(16)は種々の条件を満たさなければならない。バイポーラのパルス表現の場合にはプロセスは、10Hz〜500kHzの範囲内である周波数で操作することができる。この場合、イオン化特性のためにパルスの停止可能の立上りしゅん度が重要である。立上りエッジU2/(t2−t1)、U1(t6−t5)の量も、立下りエッジU2/(t4−t3)およびU1(t8−t7)の量も、少なくとも本質的にエッジ伸張の本質的部分にわたって測定して2.0Vnsより大きい立上りしゅん度を有するべきである。しかしこれらの立上りしゅん度は少なくとも0.02V/ns〜2.0V/nsの範囲、好ましくは少なくとも0.1V/ns〜1.0V/nsの範囲
にある立上りしゅん度を有するべきであり、かつこれは少なくとも無負荷運転でつまり負荷なしに、しかし好ましくは負荷の場合でも有するべきである。もちろん立上りしゅん度は、それぞれ対応する負荷もしくは印加されるインピーダンスの対応する高さまたは対応する調整に応じて、かつこれを図7による線図に示したように運転時に影響を受ける。バイポーラ表示におけるパルス幅は、図7に示したように、t4〜t1およびt8〜t5に対して≧1μsが有利であり、休止t5〜t4およびt9〜t8は有利に本質的に0とすることができ、しかし一定の前提条件下に≧0μsとすることができる。パルスブレークが>0である場合には、この運転は間隙があると呼ばれ、かつ例えばパルス間隙幅の可変の時間シフトによってプラズマへのエネルギーの適切な入力およびその安定性を調整することができる。上述のように異なるインピーダンスの2つの電極間のパルス電源の運転時に、場合によっては、電流上昇を制限し、かつパルス電源を間欠モードで運転するために、パルス持続時間が小さく保持される場合に有利とすることができる。
パルス運転が電圧1000Vで500Aまで可能であり、その際にパルス断続比(デューティサイクル)を対応して考慮しなければならず、もしくは供給の可能な設計出力に適合しなければならないようにパルス電源が設計される場合、特に有利である。パルス電圧の立上がりしゅん度のほかに好ましくは、パルス電源(16)が500Aへの電流増大を少なくとも1μ秒で克服することができることに注意が払われる。
【0030】
以下の実施例において、ここでこれを図2に模式的に示したように、本発明の第1の好ましい適用を説明する。この場合、2つの陰極火花蒸着ソース(5、20)の間でパルス化された大電源(16)が駆動される。この運転方式で絶縁膜に対するプロセス安定性、飛沫低減およびプラズマのより高い反応性が達成される。
実施例1:
Al−Cr−O膜を製造するための典型的なプロセス進行の説明
以下、本発明の使用下に反応性アークコーティングプロセスにおける基板処理の典型的な経過を説明する。本発明が実現される本来のコーティングプロセスのほかに、基板の前処理および後処理に関係する別のプロセスステップについても詳述する。これらのステップは全て幅広い変形を可能にし、幾つかは一定の条件下に廃止、短縮または伸長またはその他に組み合わせることもできる。
【0031】
第1ステップにおいて基板は通常それぞれの材料および前履歴に応じて様々に実施される湿式化学洗浄にかけられる。
【0032】
1.基板の前処理(洗浄等)(当業者に公知の方法)
2.そのために設けたホルダへの基板の挿入およびコーティングシステムへの取り込み
3.当業者に知られているように、ポンプシステムによる約10−4mbarの圧力でのコーティングチャンバのポンプ排出(プレポンピング/拡散ポンプ、プレポンピング/ターボモレキュラーポンプ、最終圧力約10−7mbarを達成可能)。
4.アルゴン水素プラズマまたはその他の公知のプラズマ処理における加熱ステップを有する真空中の基板前処理の開始。制限なしにこの前処理は以下のパラメータで実施することができる:
約100Aの放電電流、200Aまで、400Aまでの低電圧アーク放電のプラズマは、好ましくは基板がこの低電圧アーク放電のためのアノードとして接続されている。
アルゴン流50sccm
水素流300sccm
基板温度500℃(一部プラズマ加熱、一部輻射加熱による)
プロセス時間45分
好ましくは、このステップ中に電源が基板およびアースまたはその他の基準電位の間に印加され、この電源によって基板が直流(好ましくは正)でもまたは直流パルス化(単極性、双極性)でもまたはMFまたはRFとして印加させることができる。
【0033】
5.次のプロセスステップとしてエッチングがスタートする。そのために低電圧アークがフィラメントと補助アノードとの間で運転される。DC、パルス化されたDC、MFまたはRF電源が基板およびアースの間に接続されており、かつ基板が好ましくは負電圧で印加される。パルス化された電源およびMF、RF電源において正の電圧も基板に印加される。この電源は単極性または双極性に運転することができる。このステップ中の典型的な、しかし非排他的なプロセスパラメータ:
アルゴン流60sccm
放電電流 低電圧アーク150A
基板温度500℃(一部プラズマ加熱による、一部輻射加熱による)
プロセス時間30分
絶縁膜の製造時の低電圧アーク放電の安定性を保証するために、高温の伝導性の補助アノードを用いて処理されるかまたはパルス化された大電源が補助電極とアースとの間に接続されている。
【0034】
6.中間膜によるコーティングの開始(約15分)
火花蒸着によるCrN中間膜300nm(ソース電流140A、N2 1200sccm、−180Vバイポーラバイアスによる。(36μs負、4μs正)
このコーティングは低電圧アーク有りまたは無しで行うことができる。
この時点まで、たとえばこれを図1に再現されているように、この方法は従来の技術に従う。
【0035】
7.機能膜への移行(約5分)
本来の機能膜への移行において、窒素は1200sccmから約400sccmへ傾斜させて下げられ、それに続き300sccmの酸素流が入れられる。同時に直流電源がCr−アークカソードに対して200Aに上げられる。その後Al−アークカソードがスイッチ投入され、かつ同様に200Aの電流で運転される。ここで窒素流が遮断され、かつそれに続き酸素流が400sccmに立ち上げられる。
【0036】
8.機能膜によるコーティング
ここで、図2に示したように、バイポーラパルス大電源(16)は、両方のアークカソードの間で運転される。前記プロセスにおいて約50Aの電流の正もしくは負の時間的平均値で作動された。パルス持続時間はそれぞれ正および負の電圧範囲に対して20μsになる。バイポーラパルス電源による電流のピーク値はそれぞれのパルス形状に左右される。バイポーラパルス電流の各アークカソードおよびピーク値による直流電流からの差分は、さもないとアークが消弧するので、いわゆるアークカソードの保持電流を下回ってはならない。
【0037】
コーティングの最初10分間にバイアスが−180Vから−60Vへ傾斜される。二重に回転する基板の典型的なコーティング速度は3μm/hおよび6μm/hになる。
【0038】
つまり本来の機能膜を有する基板のコーティングは、純反応ガス(この例の場合は酸素)で実施される。最も重要なプロセスパラメータを再度要約する:
酸素流300sccm
基板温度500℃
AlソースおよびCrソース両者用の直流ソース電流200A
両方のカソード間のバイポーラパルス直流電流は周波数25kHzを有する。
プロセス圧力約3×10−3mbar
上述のように、コーティングは低電圧アークの運転と同時にも実施できる。この場合に反応性のさらなる増加が特に基板近傍で達成される。さらにコーティング中の低電圧アー
クの同時利用は、DC成分をソースで低減できる長所も有する。より高いアーク電流により、これはさらに低減することができる。
【0039】
このように実施されたコーティングプロセスは数時間にわたって安定している。アークターゲットは薄く平坦な酸化膜で覆われる。これは望ましくかつ広範囲に飛沫がなくかつ安定したプロセスに対する前提条件でもある。この被覆はアークターゲットでの電圧上昇に体現されており、これはすでに先行する特許出願CH00518/05にも記載された。
【0040】
以下、3つの別の適用例を記載するが、それらのうち単にインタフェースおよび機能膜の析出について詳述する。
【0041】
実施例2:
上記実施例において単に2アークターゲットが利用されたAl−Cr−O膜の製造を説明し、他方、以下では4アークターゲットの利用下の純酸化アルミニウム膜のプロセスを説明する。
【0042】
コーティングのためにすでに厚さ1.5μmのTiN膜を有する先行の方法でコーティングされた硬質金属割出差込工具(炭化タングステン)が基板として利用された。この基板は、本質的に上記ステップ1〜5と同一であった前処理にかけられた。しかし機能膜によるコーティングの前に、特殊の中間膜が析出されなかった。すなわち直ちにTiN−下層への機能膜と共に開始され、かつステップ6および7が省かれた。機能膜(8)の析出のために4アークターゲットによって作業され、かつ以下のプロセスパラメータが利用された。
・4Alターゲットはそれぞれ直流170Aで運転される
・電源およびそれぞれ20μsの正および負のパルス幅での100Vの出力電圧によるそれぞれ2Alターゲットの、図2に従ったバイポーラ電流パルス
・アルゴン流:50sccm
・酸素流:700sccm
・基板バイアス:直流バイポーラパルス化、+/−100V、38μs負、4μs正
・基板温度:695℃
この方法により得た膜は以下の測定によって特徴づけられた。
・基板の二重回転による膜厚:4μm
・膜付着性はロックウェル圧痕試験によってHF1〜HF2に決定された。
・微小硬さはフィッシャースコープ(F=50mN/20sにおける微小押込)で算出し、かつHV=1965(+/−200)、Y=319GPa(+/−12GPa)になった。
【0043】
膜のXRDスペクトルは角度範囲2θ/θに対してもかすり入射に対しても実施された(3°)。
【0044】
このX線測定はアモルファス酸化アルミニウムへの寄与が可能な限り小さい結晶膜を示す。酸化アルミニウムは明確にγ−Al相として同定できる。
【0045】
実施例3:
次の実施例は、酸化ジルコニウム膜の製造に関係する。この基板は本来の機能膜による本来のコーティングの前にZrNからなる中間膜でコーティングされた。このコーティングに対して、2Paの窒素分圧でそれぞれ170Aで運転される4ターゲットで作業された。基板温度は500℃であり、かつ−150Vの基板バイアスが使用された。この中間膜に対するコーティング時間は6分になった。
機能膜(8)の析出のために同様に、図2に従って、4アークターゲットで作動され、かつ以下のプロセスパラメータを利用した。
・4Zr−ターゲットはそれぞれ直流170Aで運転された。
・電源およびそれぞれ20μsの正および負のパルス幅で100Vの出力電圧を有するそれぞれ2Zr−ターゲットのバイポーラ電流パルス
・アルゴン流:50sccm
・酸素流:700sccm
・基板バイアス:直流バイポーラパルス化、+/−40V、38μs負、4μs正
・基板温度:500℃
この方法により得た膜は以下の測定によって特徴づけられた。
・基板の二重回転による膜厚:6.5μm
・膜付着性はロックウェル圧痕試験によってHF1に決定された
・微小硬さはフィッシャースコープ(F=50mN/20sにおける微小押込)で算出し、かつHV=2450になった
・粗さに対する膜値はR=0.41μm、R=3.22μm、Rmax=4.11μmになった
・摩擦係数は0.58に算出された
膜のXRDスペクトルの測定によって一義的にバデレ石構造を検出することができる。
【0046】
実施例4:
最後の例において、SiAlN膜の製造および分析について詳述する。この基板は本来の機能膜によるコーティングの前にTiNからなる中間膜でコーティングされた。このコーティングに対して、0.8Paの窒素分圧でそれぞれ180Aで運転される、図2に相当する2ターゲットで処理された。基板温度は500℃であり、かつ−150Vの基板バイアスが使用された。この中間膜に対するコーティング時間は5分になった。
・2SiAl−ターゲットは70/30のSi−Al比でそれぞれ直流170Aで運転された
・電源およびそれぞれ20μsの正および負のパルス幅で100Vの出力電圧を有する2SiAl−ターゲットのバイポーラ電流パルス
・アルゴン流:50sccm
・酸素流:800sccm
・基板バイアス:直流バイポーラパルス化、+/−40V、38μs負、4μs正
・基板温度:410℃
この方法により得た膜は以下の測定によって特徴づけられた。
・基板の二重回転による膜厚:6.5μm
・膜付着性はロックウェル圧痕試験によってHF2に決定された
・微小硬さはフィッシャースコープ(F=50mN/20sにおける微小押込)で算出し、かつHV=1700になった
・粗さに対する膜値はR=0.48μm、R=4.08μm、Rmax=5.21μmになった
・摩擦係数は、0.82に算出された
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来の技術に相当するアーク蒸着コーティング装置の模式図である。
【図2】重ね合わせた大電流パルスによる運転時に2つの直流給電されたアーク蒸着ソースを有する本発明に従った配列である。
【図3】アースなしの運転による本発明に従った2つの直流給電されたアーク蒸着ソースと中間に接続された大電流パルス電源とを有する配列である。
【図4】直流給電されたアーク蒸着ソースと中間に接続された大電流パルス電源を有する基板ホルダとしての第2電極とを有する配列である。
【図5】直流運転されたアーク蒸着ソースと中間に接続された大電流パルス電源を有する直流運転されたマグネトロンスパッタソースとしての第2電極とを有する配列である。
【図6】直流給電されたアーク蒸着ソースと、低電圧アーク蒸着配列および中間に接続された大電流パルス電源の蒸着坩堝としての第2電極とを有する配列である。
【図7】大電流パルス電源の電圧パルス形状である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源(13)に接続された第1電極(5’)を含むアーク蒸着ソース(5)と、アーク蒸着ソース(5)から分離されて配置された第2電極(3、18、20)とを有する加工物(3)の表面処理のための真空処理装置であって、
両方の電極(5’、3、18、20)がパルス電源(16)に接続されていることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
第2電極(20’)が別の1つのアーク蒸着ソース(20)のカソードであり、かつこのアーク蒸着ソースが同様に直流電源(13’)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第2電極(18)がスパッタソース(18)、特にマグネトロンソース(18)のカソードであり、かつこのスパッタソースが同様に電源(17)、特に直流電源に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第2電極(3)が加工物ホルダ(3)として構成されており、かつ加工物(3)と共にバイアス電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
第2電極が、低電圧アーク蒸着装置(9、22)のアノードを形成する蒸着坩堝(22)であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
第2電極が補助電極(22)、好ましくは低電圧アーク放電を形成するための補助アノード(15)であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
直流電源(13)とパルス電源(16)との間に電気的減結合フィルタが配置されており、このフィルタが好ましくは少なくとも1つの遮断ダイオードを含むことを特徴とする上記請求項1から6までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
直流電源(13)がソース(5、18、20)へ、特にアーク蒸着ソース(5、20)へプラズマ放電の本質的に中断のない獲得のために基本電流を引き渡すことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
装置が反応ガス入口を有することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
パルス電源(16)の周波数が1kHz〜200kHzの範囲にあることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
パルス電源(16)のパルス幅比が様々に調整されることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
パルス電源(16)のパルスが間欠的に調整されることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
パルス電源(16)のパルスエッジが2.0Vns以上の立上りしゅん度を有し、かつこの立上りしゅん度が少なくとも0.02V/ns〜2.0V/ns、好ましくは少なくとも0.1V/ns〜1.0V/nsの範囲にあることを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
アーク蒸着ソース(5)の第1電極(5’)と、1つのアーク蒸着ソース(5)から分離されて配置された第2電極(3、18、20)とによって加工物(3)上へ膜が析出される真空処理装置(1)内における加工物(3)の表面処理方法において、アーク蒸着ソース(5)が直流電源によって給電される方法であって、
両方の電極(5’、3、18、20)が個々のパルス電源(16)に接続されて運転されることを特徴とする方法。
【請求項15】
第2電極(20’)が別の1つアーク蒸着ソース(20)のカソードとして運転され、このアーク蒸着ソースが同様に直流電源(13’)と接続され、運転されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第2電極(18)がスパッタソース(18)、特にマグネトロンソース(18)のカソードとして運転され、かつこれらのスパッタソースが同様に電源(17)、特に直流電源に接続されて運転されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第2電極(3)が加工物ホルダ(3)として構成され、かつ加工物(3)と共にバイアス電極を形成することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
第2電極が蒸着坩堝(22)として構成され、かつ低電圧アーク蒸着装置(9、22)のアノードとして運転されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
第2電極が補助電極(22)として、好ましくは低電圧アーク放電を形成するための補助アノード(15)として運転されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
直流電源(13)およびパルス電源(16)が電気的減結合フィルタによって減結合され、このフィルタが好ましくは少なくとも1つの遮断ダイオードを含むことを特徴とする上記請求項14から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ソース(5、18、20)へ、特にアーク蒸着ソース(5、20)へプラズマ放電が本質的に中断なく維持されるように、直流電源(13)が基本電流によって運転されることを特徴とする請求項14から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ソース(5、18、20)が、反応ガスを含むプロセスガスによって運転されることを特徴とする請求項14から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ソース(5、18、20)が、排他的に反応ガスであるプロセスガスによって運転されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ソース(5、18、20)がプロセスガスによって運転され、前記プロセスガスにおいて反応ガスが酸素を含み、かつ好ましくは本質的に酸素であることを特徴とする請求項22または23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
パルス電源(16)が1kHz〜200kHzの範囲の周波数で運転されることを特徴とする請求項14から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
パルス電源(16)が様々なパルス幅比で調整され、運転されることを特徴とする請求項14から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
パルス電源(16)が間欠的にパルスによって運転されることを特徴とする請求項14から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
パルス電源(16)が2.0Vns以上の立上りしゅん度を有し、かつこの立上りしゅん度が好ましくは少なくとも0.02V/ns〜2.0V/nsの範囲、好ましくは少なくとも0.1V/ns〜1.0V/nsの範囲にあるパルスエッジによって運転されることを特徴とする請求項14から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
2以上の電極(5、5’、3、18、20)が反応ガスを含有する、好ましくは排他的に反応ガスを含有する真空処理装置(19)内で運転され、2電極のみが個々のパルス電源(16)によって運転され、かつ両電極の一方がアーク蒸着ソース(5)の第1電極(5’)として運転されることを特徴とする請求項14から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
2つのパルス化された電極(5、5’)がアーク蒸着ソース(5、20)として運転され、かつ少なくとも1つの別の電極がスパッタソース(18)として運転されることを特徴とする請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−533311(P2008−533311A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502215(P2008−502215)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000125
【国際公開番号】WO2006/099760
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(598051691)エリコン・トレーディング・アクチェンゲゼルシャフト,トリュープバッハ (44)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Trading AG,Truebbach
【Fターム(参考)】