パルス整形装置、パルス整形方法、及び電子銃
【課題】簡便にパルス光を整形することができるパルス整形装置、パルス整形方法、及びそれを用いた電子銃を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様にかかるパルス整形装置は、パルス光の直交する偏光成分間に時間遅延を与える複屈折素子123と、複屈折素子123からのパルス光のパルス形状を調整する可変ミラー40と、複屈折素子123から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出すPBS125と、可変ミラー40によりパルス形状を調整するために、PBS125によって取り出された一方の偏光成分に応じた測定を行うビームモニタ55と、を備えるものである。
【解決手段】本発明の一態様にかかるパルス整形装置は、パルス光の直交する偏光成分間に時間遅延を与える複屈折素子123と、複屈折素子123からのパルス光のパルス形状を調整する可変ミラー40と、複屈折素子123から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出すPBS125と、可変ミラー40によりパルス形状を調整するために、PBS125によって取り出された一方の偏光成分に応じた測定を行うビームモニタ55と、を備えるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス光を整形するパルス整形装置、及びパルス整形方法、並びに、整形されたパルス光を用いた電子銃に関する。
【背景技術】
【0002】
X線自由電子レーザ(XFEL)、逆コンプトン散乱によるフェムト秒X線パルス光源、フェムト秒時間分解電子顕微鏡、超短パルス電子線描画装置、エネルギー回収型ライナック(ERL)などの電子源として、電子銃が用いられている。通常、高輝度電子銃、又は超短パルス電子銃がこれらの用途に用いられる。
【0003】
電子銃を電子放出の観点から分類すると、熱カソード電子銃、フォトカソード電子銃、及び電界放出型電子銃の3種類に分かれる。熱カソード電子銃は熱エネルギーにより電子放出を行う。フォトカソード電子銃は光電効果によって電子放出を行う。電界放出型電子銃は、高電界(1GV/m以上)をカソードに印加することで電子を放出する。また、電子銃を電子加速方式から分類すると、RF電子銃と、DC電子銃の2つに分かれる。RF電子銃は、共振器空胴の助けを借りてマイクロ波(RF)により電子を加速する。DC電子銃は、対向する電極間に電圧を印加してDC的(インパルス的)に電子を加速する。ビーム電流が大きい場合、フォトカソードとRF加速方式の組み合わせ、並びに、熱カソードとDC加速方式の組み合わせが一般的である。これは、両者の性質を合わせられるので相性がよいためである。また、電子ビームの重要な特性として、エミッタンスや輝度等が挙げられる。従って、低エミッタンスで高輝度な高品質電子ビームを安定して発生させることができる電子銃の開発が望まれている。
【0004】
フォトカソードRF電子銃は、熱カソードDC電子銃、及び電界放出型電子銃に比べて、(1)低エミッタンス化が可能であること、(2)光源の強度を制御することで容易に電子ビームの輝度を調整することができるため、制御性に優れていること、などの利点を有している。現在、世界最高輝度のパルス電子ビームは、フォトカソード電子銃により得られている。フォトカソード電子銃では、フォトカソードにレーザ光を照射して、電子を発生させている。
【0005】
フォトカソード電子銃を用いる場合、レーザ光のパルスを整形することによって、電子バンチを所望の形状にすることができる。すなわち、パルス形状を整形することで、電子ビームの高品質化を図ることができる。このため、レーザ光のパルスを所望の形状に整形することが望まれている。例えば、パルススタッカーを用いてレーザ光を円筒形状に整形する技術が開示されている(非特許文献1)。ここで、パルススタッカーは、波長板と偏光ビームスプリッタで構成されている(非特許文献2)。そして、偏光ビームスプリッタキューブにより、各偏光成分(S偏光とP偏光)に分岐する。そして、分岐されたパルス光に光路長差を与えて、合成用の偏光ビームスプリッタで合成する。上記の文献では、3段分のスタックを用いているため、8つの分岐パルス光が重ね合わされている。このようなパルススタッカーでは、例えば、縦方向(光軸と平行方向)に関するパルス整形が可能になる。すなわち、分岐されたパルスレーザ光に与える光路長を調整することによって、縦方向に関してパルスを整形することができる。さらに、特許文献1に示すようなパルスレーザ光を用いた加工方法において、加工形状を制御するため、パルス光を所望の形状に整形することが望まれている。
【0006】
パルスを整形する場合、実際に測定されたパルス形状に基づいて調整が行われる。レーザ光のパルス形状を測定する場合には、横方向(光軸と垂直な方向)のパルス形状は、例えば、ビームプロファイラーやCCDカメラなどで測定することができる。また、縦方向のパルス形状は、例えば、ストリークカメラなどで測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−205179号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】冨澤宏光「加速器の要求に堪えるレーザ光源を目指して〜フォトカソードRF電子銃用レーザ光源開発〜」加速器Vol3,No3,2006(251−262)
【非特許文献2】株式会社ルミネックスホームページ[平成19年6月19日検索]、インターネット〈http://www.luminex.co.jp/Newcatalog/Pulse_Stacker_Kit/Pulse%20Stacker%20Kit.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のパルス整形方法では、3次元的に整形することが困難であった。
すなわち、ビームプロファイラやCCDカメラでは、パルス形状を時間的に積分して測定するため、縦方向の情報を得ることができない。また、ストリークカメラでは、横方向の情報を得ることができない。よって、パルス光を所望の形状に整形することが困難であるという問題点がある。
【0010】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであって、本発明の目的は、簡便にパルス光を整形することができるパルス整形装置、パルス整形方法、及びそれを用いた電子銃を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様にかかるパルス整形装置は、パルス光を2本の光ビームに分岐する光分岐手段と、前記光分岐手段によって分岐された2本の光ビームを合成する光合成手段と、前記光分岐手段から前記光合成手段に入射する2本の光ビームのパルス光に光路長差を与えて、タイミングをずらす遅延手段と、前記光合成手段からのパルス光のパルス形状を調整する調整手段と、前記第1の光分岐手段と前記光合成手段との間において、前記光合成手段に入射する一方の光ビームを遮光可能な遮光部材と、前記調整手段により前記パルス形状を調整するために、前記遮光部材によって前記一方の光ビームを遮光した状態で前記他方の光ビームに応じた測定を行う測定器と、を備えるパルスものである。これにより、精度よく測定することができるため、簡素な構成でパルス光を整形することができる。
【0012】
本発明の第2の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、回転可能に設けられたλ/2板が前記光分岐手段の前に配置され、前記光合成手段と前記光分岐手段とが偏光状態に応じて光を分岐する偏光ビームスプリッタであるものである。これにより、分岐される光ビームの強度を変えることができる。
【0013】
本発明の第3の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、前記測定器が前記他方の光ビームのパルス形状を測定し、前記測定器で測定された前記他方の光ビームのパルス形状に基づいて、前記調整手段が前記パルス形状を調整するものである。これにより、パルス形状を正確に整形することができる。
【0014】
本発明の第4の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、前記遅延手段によって与えられる光路長差が可変であることを特徴とするものである。これにより、縦方向のパルス形状を簡便に調整することができる。
【0015】
本発明の第5の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、前記光合成手段が前記一方の光ビームと前記他方の光ビームを合成することによって、前記光合成手段から測定光と利用光とが分岐されて出射し、前記測定光のパルス形状の測定結果に基づいて、前記利用光のパルス形状を調整するものである。これにより、実際に利用される光の効率が低減するのを防ぐことができる。
【0016】
本発明の第6の態様にかかるパルス整形装置は、パルス光の直交する偏光成分間に時間遅延を与える複屈折素子と、前記複屈折素子からのパルス光のパルス形状を調整する調整手段と、前記複屈折素子から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段と、前記調整手段により前記パルス形状を調整するために、前記手段によって取り出された前記一方の偏光成分に応じた測定を行う測定器と、を備えるものである。これにより、より精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。
【0017】
本発明の第7の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、パルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段が、前記パルス光の光路中に挿脱可能に設けられているものである。これにより、簡便にマスクすることができる。
【0018】
本発明の第8の態様にかかるパルス整形装置は、タイミングがずれた2つのパルス光を合成して、第1の光ビームを出射する第1のスタックユニットと、タイミングがずれた2つのパルス光を合成して、第2の光ビームを出射する第2のスタックユニットと、第1及び第2のスタックユニットの後段において、前記第1及び第2の光ビームを合成する後段側光合成手段と、前記後段側光合成手段と前記スタックユニットとの間に配置され、前記第1の光ビームのプロファイルを変化させるプロファイル変化手段と、を備えるものである。これにより、簡素な構成でパルス光を整形することができる。
【0019】
本発明の第9の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、前記第1及び第2のスタックユニットのそれぞれが、主パルス光を2本の光ビームに分岐して前記2つのパルス光を生成する光分岐手段と、前記光分岐手段によって分岐された2本の光ビームを合成する光合成手段と、前記光分岐手段から前記光合成手段に入射する2本の光ビームのパルス光に光路長差を与えて、タイミングをずらす遅延手段と、前記第1の光分岐手段と前記光合成手段との間において、前記光合成手段に入射する一方の光ビームを遮光可能な遮光部材と、を備え、前記遮光部材によって前記一方の光ビームを遮光した状態で前記他方の光ビームに応じた測定を行う測定器での測定結果に基づいて、パルス形状を調整するものである。これにより、精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。
【0020】
本発明の第10の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、前記後段側光合成手段が前記第1及び第2の光ビームを合成することによって、前記後段側光合成手段から測定光と利用光とが分岐されて出射し、前記測定光のパルス形状の測定結果に基づいて、前記利用光のパルス形状を調整するものである。実際に利用される光の効率が低減するのを防ぐことができる。
【0021】
本発明の第11の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、時間に応じて波長が変化するプローブ光を発生する手段と、前記測定光と前記プローブ光とが同期して入射する非線形光学素子と、前記非線形光学素子から出射する光のスペクトルを測定する分光器と、をさらに備え、前記分光器での測定結果に基づいて、前記パルス光の進行方向におけるパルス形状を調整するものである。これにより、縦方向のパルス形状を正確に測定することができるため、正確な整形が可能になる。
【0022】
本発明の第12の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、記後段側光合成手段が無偏光ビームスプリッタであるものである。
【0023】
本発明の第13の態様にかかる電子銃は、上記のパルス整形装置と、前記パルス整形装置で整形されたパルス光が入射するフォトカソードと、を備えるものである。これにより、高品質の電子ビームを得ることができる。
【0024】
本発明の第14の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記フォトカソードで発生した電子ビームのバンチ形状を測定し、前記バンチ形状の測定結果に基づいて、前記パルス形状を調整するものである。これにより、好適なバンチ形状の電子ビームを得ることができる。
【0025】
本発明の第15の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記電子ビームのバンチ内電子をエネルギーに応じて空間的に分散させた後、バンチ内電子の空間分布を測定し、前記空間分布の測定結果に基づいて、前記パルス光の進行方向におけるパルス形状を調整するものである。これにより、縦方向のバンチ形状を正確に測定することができるため、より正確に整形することができる。
【0026】
本発明の第16の態様にかかるパルス整形方法は、パルス光を2本の光ビームに分岐する光分岐手段と、前記光分岐手段によって分岐された2本の光ビームを合成する光合成手段と、前記光分岐手段から前記光合成手段に入射する2本の光ビームのパルス光に光路長差を与えて、タイミングをずらす遅延手段と、を備えたパルス整形装置を用いたパルス整形方法であって、前記光分岐手段で分岐された2本の光ビームのうちの一方の光ビームを遮光するステップと、前記一方の光ビームを遮光した状態で、他方の光ビームに応じた測定を行うステップと、前記測定を行うステップでの測定結果に基づいて、パルス形状を調整するステップと、を備えるものである。これにより、精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。
【0027】
本発明の第17の態様にかかるパルス整形方法は、上記のパルス整形方法であって、前記光分岐手段で分岐された2本の光ビームのうちの他方の光ビームを遮光するステップと、前記他方の光ビームを遮光した状態で、一方の光ビームに応じた測定を行うステップと、をさらに備え、前記パルス形状を調整するステップでは、前記一方の光ビームに応じた測定を行うステップでの測定結果に基づいて、パルス形状を調整するものである。これにより、より精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。また、空間整形技術と、時間整形技術が、お互いに影響しないため、独立に制御することができる。
【0028】
本発明の第17の態様にかかるパルス整形方法は、パルス光の直交する偏光成分間に対して、時間遅延を与える複屈折素子と、前記複屈折素子からのパルス光のパルス形状を調整する調整手段と、を用いたパルス整形方法であって、前記複屈折素子から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出すステップと、前記調整手段により前記パルス形状を調整するために、前記取り出された一方の偏光成分に応じた測定を行うステップと、前記測定を行うステップでの測定結果に基づいて、パルス形状を調整するステップと、を備えるものである。これにより、より精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。
【0029】
本発明の第19の態様にかかるパルス整形方法は、タイミングがずれた2つのパルス光を合成して、第1の光ビームを出射するステップと、タイミングがずれた2つのパルス光を合成して、第2の光ビームを出射するステップと、前記第1の光ビームのプロファイルを変化させるステップと、前記第2の光ビームと、前記プロファイルが変化した前記第1の光ビームとを合成して、出射するステップと、を備えるものである。これにより、簡便にパルス光を整形することができる。
【0030】
本発明の第20の態様にかかるパルス整形方法は、上記のパルス整形方法であって、前記第1又は前記第2の光ビームに含まれる2つのパルス光の一方を遮光部材によって遮光し、前記遮光部材によって遮光された状態でのパルス形状の測定結果に基づいて、パルス形状を調整するものである。これにより、より精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、簡便にパルス光を整形することができるパルス整形装置、パルス整形方法、及びそれを用いた電子銃を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかる電子銃の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明にかかる電子銃に用いられる光源部の構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかるパルススタッカーの構成を模式的に示す図である。
【図4】パルススタッカーでのパルス波形を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例にかかるスタッキングロッドの構成を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかるパルススタッカーの構成を模式的に示す図である。
【図7】時間方向におけるパルス形状を測定する測定部の構成を示す図である。
【図8】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図9】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図10】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図11】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図12】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図13】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図14】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図15】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図16】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図17】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図18】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図19】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図20】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図21】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図22】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図23】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図24】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図25】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図26】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図27】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図28】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図29】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施例ついて以下に図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施例を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施例に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものを実質的に同様の内容を示している。
発明の実施の形態1.
【0034】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能であろう。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略される。
【0035】
本発明の実施の形態にかかる電子銃について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1にかかる電子銃100の構成を模式的に示す図である。本実施の形態にかかる電子銃100は、レーザ光がカソードに入射することによって、電子を発生するフォトカソード電子銃である。そして、電子銃100で発生した電子は、マイクロ波源53からのマイクロ波によって加速される。なお、本実施の形態にかかる電子銃100は、透過型のフォトカソードを有している。すなわち、電子ビーム出射側と反対側からレーザ光を照射している。さらに、電子銃100は、パルスレーザ光を所望の形状に整形するためのパルス整形装置を有している。
【0036】
本実施の形態にかかるビーム測定装置は、光源部10、パルススタッカー20、可変形ミラー40(DM:Deformable Mirror)、ミラー41、レンズ42、レンズ43、レンズ44、ミラー45、ビームスプリッタ46、カメラ47、制御装置48、フォトカソード51、共振器52、マイクロ波源53、ビームモニタ55、ウェッジ56、ミラー57、及びミラー58を有している。
【0037】
光源部10は、フォトカソードに入射するパルス光を発生する。光源部10では、パルスレーザ光のパルス幅が伸長されるとともに、パルスレーザ光がチャープされている。光源部10から出射したパルス光は、ウェッジ56を介してパルススタッカー20に入射する。すなわち、光源部10とパルススタッカー20との間には4つの透明なウェッジ56が設けられている。制御装置48は、それぞれのウェッジ56を駆動して、パルススタッカー20に入射するパルス光の位置を調整する。例えば、それぞれのウェッジ56を独立に回転させることによって、パルス光の位置を調整することができる。このようなウェッジ56を用いることでポインティング補償を行うことができる。
【0038】
パルススタッカー20は、パルス光を分岐して複数のミクロパルスを生成する。さらに、パルススタッカー20は、複数のミクロパルスを時間的にずらして合成する。これにより、パルス幅が長くなるようにパルス光が整形される。すなわち、縦方向(光軸と垂直な方向)のパルス形状が広くなる。なお、光源部10、及びパルススタッカー20の構成については、後述する。
【0039】
パルススタッカー20からのパルス光は、2枚のミラー57を介して、可変形ミラー40に入射する。すなわち、パルススタッカー20と可変形ミラー40の間には、2つのミラー57が設けられている。また、パルススタッカー20と可変形ミラー40の間にレンズを設けて、パルス光をコリメートしてもよい。これにより、可変形ミラー40に入射するビーム径を調整することができ、ビーム径を可変形ミラー40の有効径以下にすることができる。制御装置48は、それぞれのミラー57を駆動して、可変形ミラー40に入射するパルス光の位置を調整する。例えば、それぞれのミラー57を独立に傾斜させることによって、パルス光の位置を調整することができる。このように、制御装置48がミラー57の角度を制御することによって、パルス光の位置を変化させることができる。このようなミラー57を用いることでポインティング補償を行うことができる。
【0040】
ミラー57、及びウェッジ56を用いてポインティング補償を行うことで、精度よく可変形ミラー40に入射させることができる。すなわち、可変形ミラー40におけるパルスレーザ光の位置ずれを防ぐことができる。これにより、高精度の整形が可能になる。なお、特願2004−30236号の匠アルゴリズムを用いてポインティング補償を行うことができる。さらに、遺伝的アルゴリズムや焼き鈍し法などの最適化アルゴリズムを用いてもよい。
【0041】
可変形ミラー40は、パルス光の横方向(光軸と垂直な方向)の形状を整形する。すなわち、可変形ミラー40は、光軸と垂直な平面におけるパルス形状を整形する。具体的には、可変形ミラー40が反射面の位置を変化させて、レーザ光の波面形状を調整する。このため、可変形ミラー40には、例えば、ミラーの表面(反射面)形状を変更するために複数の電極(チャンネル)が設けられている。そして、それぞれの電極に印加する電圧を調整することにより、波面の形状が変化する。ミラーの表面形状を制御することにより、光学系の波面の補正や、反射ビームの方向、形状を制御できる。可変形ミラー40としては、例えば、静電容量型、ピエゾアクチュエータ型などの物を用いることができる。可変形ミラー40は、例えば、φ20mm〜φ50mmの有効径を有している。
【0042】
可変形ミラー40からのパルス光は、ミラー41、レンズ42、レンズ43、レンズ44、及びミラー45からなる伝播光学系を伝播する。すなわち、可変形ミラー40で反射されたパルス光は、ミラー41で反射される。そして、レンズ42、レンズ43、及びレンズ44で屈折されてミラー45に入射する。ミラー45に入射したパルス光は、ビームスプリッタ46の方向に反射される。このように、ミラー41、レンズ42、レンズ43、レンズ44、ミラー45の順番で、パルス光が伝播していく。例えば、レンズ42は、f=51.5mmの凸レンズであり、レンズ43は、f=100mmの凹レンズであり、レンズ44は、f=300の凸レンズである。また、レンズ42とレンズ43との距離は22mmであり、レンズ43とレンズ44のとの距離は108mmである。レンズ42、レンズ43、及びレンズ44等によって、パルス光の横方向の形状が変形する。すなわち、レンズや窓材などの透過光学系の収差を利用することで、パルス光の横方向形状が変形する。
【0043】
ミラー45で反射されたパルス光は、ビームスプリッタ46に入射する。ビームスプリッタ46は、入射したパルス光を2本の光ビームに分岐する。ビームスプリッタ46は入射したパルス光の一部をカメラ47の方向に反射させる。カメラ47は、例えば、アレイ状に受光素子が配列されたCCDカメラなどの2次元カメラである。カメラ47はパルス光のプロファイルを測定する。具体的には、カメラ47が、光軸と垂直な平面におけるパルス形状を測定する。なお、時間積算型のカメラ47を用いているため、1パルス全体の2次元形状が測定される。すなわち、カメラ47の1フレームはパルス長に比べて十分に長くなっている。カメラ47は、パルス光の横方向プロファイルを測定する。そして、カメラ47は、横方向のパルス形状に応じた測定結果に基づく信号を制御装置48に出力する。このように、カメラ47は、可変形ミラー40によってパルス形状を調整するために、光ビームに応じた測定を行う測定器となる。従って、光ビームが変化すると、カメラ47から出力される信号が変化する。
【0044】
また、ビームスプリッタ46に入射したパルス光の一部は、ビームスプリッタ46を通過する。そして、ビームスプリッタ46を通過したパルス光は、フォトカソード51に入射する。フォトカソード51は、透過型のフォトカソードである。なお、フォトカソード51は、透過型に限定されるものではなく、反射型のフォトカソードであってもよい。フォトカソード51は入射したパルス光に応じて電子を発生する。すなわち、光電効果によって、フォトカソード51から電子を発生される。フォトカソード51から発生した電子は、共振器52に入射する。共振器52には、マイクロ波源53で発生したマイクロ波が入射されている。共振器52は、空胴共振器であり、入力されたマイクロ波に応じた定在波を発生する。すなわち、RF共振器である共振器52には、フォトカソード51で発生した電子を加速するための電場が発生している。共振器52内の加速電場は時間に応じて変化している。フォトカソード51で発生した電子は、共振器52内の電場で加速される。すなわち、所定のエネルギーの電子ビームとなって共振器52から出射する。ここでは、共振器52で発生する定在波に応じて、パルス光のタイミングを調整する。すなわち、マイクロ波源53からのマイクロ波とレーザ光のパルスを同期させる。これにより、共振器52内に加速電場が生じているタイミングで、フォトカソード51から電子が発生する。従って、電子ビームが効率よく加速される。
【0045】
このようにして電子ビームのバンチが出射する。電子ビームは、所定の経路を通過して、X線自由電子レーザ(XFEL)、逆コンプトン散乱によるフェムト秒X線パルス光源、フェムト秒時間分解電子顕微鏡、超短パルス電子線描画装置、エネルギー回収型ライナック(ERL)などに利用される。さらに、電子ビームはビームモニタ55に入射する。ビームモニタ55は、電子ビームをモニタする。ビームモニタ55によって、バンチに関する情報を測定することができる。具体的には、電子ビームのプロファイル、エミッタンス、あるいはエネルギーなどを測定する。ビームモニタ55でのモニタ結果に応じた信号は、制御装置48に入力される。
【0046】
発生した電子ビームのプロファイルは、フォトカソード51に入射するパルス光の形状を反映している。すなわち。パルス光の形状に応じたプロファイルの電子ビームが発生する。具体的には、バンチの横方向の形状は、光軸と垂直な面におけるパルス形状を反映する。バンチの縦方向の形状は、光軸と平行な面におけるパルス形状を反映する。すなわち、電子ビームは、レーザ光のパルス幅に応じたバンチ長になる。このように、電子ビームのプロファイルは、レーザ光のプロファイルに応じて変化する。従って、ビームモニタ55は、可変形ミラー40によりパルス形状を調整するために、光ビームに応じた測定を行う測定器となる。換言すると、光ビームのパルス形状が変化すると、ビームモニタ55から出力される信号も変化する。
【0047】
制御装置48は、CPUやメモリ等の記憶領域を備えるコンピュータである。例えば、制御装置48は、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit)、記憶領域であるROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、通信用のインターフェースなどを有し、表明形状を測定するために必要な処理を実行する。例えば、ROMには、演算処理するための演算処理プログラムや、各種の設定データ等が記憶されている。そして、CPUは、このROMに記憶されている演算処理プログラムを読み出し、RAMに展開する。そして、設定データや、ビームモニタ55やカメラ47からの出力に応じてプログラムを実行する。さらに、制御装置48は、演算処理結果を表示させるためのモニター等を有している。制御装置48は、例えば、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置であり、測定結果やモニタ結果に対して所定の演算処理を行なう。さらに、制御装置48は、レーザ光のプロファイルを調整するための制御を行う。なお、制御装置48は物理的に単位な構成に限られるものではない。
【0048】
制御装置48は、例えば、電子ビームの測定結果、及びパルス形状の測定結果に基づいて可変形ミラー40を制御する。制御装置48は、可変形ミラー40に制御信号を出力して、反射面の形状を変化させる。これにより、レーザ光のパルス形状が調整される。従って、電子ビームを利用に最適なバンチ形状とすることができる。例えば、低エミッタンスの電子ビームを得ることができる。
さらに、測定結果に基づいてフィードバック制御を行うことで、リアルタイムでのバンチ形状の調整が可能になる。このように、制御装置48は、可変形ミラー40を制御して、パルス光の形状を調整する。これにより、フォトカソード51に入射するパルス光のプロファイルが変化する。そして、電子ビームのモニタ結果、及びパルス形状の測定結果によって、パルス形状を最適化する。これにより、電子ビームの高品質化を図ることができる。さらに、利用目的に適合したバンチ形状の電子ビームを生成することができる。
【0049】
ビームスプリッタ46からフォトカソード51までの距離は、ビームスプリッタ46からカメラ47までの距離と等しくなっている。従って、フォトカソード51上でのパルス形状とカメラ47上でのパルス形状は、略等しくなっている。よって、カメラ47での検出結果に基づいて制御した場合でも、電子ビームのバンチを正確に整形することが可能になる。
【0050】
次に、光源部10の構成について、図2を用いて説明する。図2は、光源部10の構成例を示す図である。光源部10には、レーザ発振器11、パルスストレッチャー12、光変調器13、再生増幅器14、マルチパス増幅器15、パルスコンプレッサー16、及び波長変換器17を有している。
【0051】
レーザ発振器11は、例えば、モードロックチタンサファイアレーザ発振器であり、パルスレーザ光を出射する。レーザ発振器11は、結晶媒質にチタンサファイアを用いている。その結晶母材であるサファイアは、ダイヤモンドに次いで熱伝導がよい透明材料であり、窒素温度に冷却すると動と同等の熱伝導になる優れた材料である。従って、熱のこもりが少ない。この母材となるサファイアにTi3+をドープしたチタンサファイア結晶は、蛍光スペクトルバンド幅が400nm(700−1100nm)と広く、超短(フーリエ変換限界)パルス生成に適している。そもそも、フェムト秒の超短パルスとは、10nmを越す広帯域レーザパルスのスペクトル成分間の相対位相を揃える、フーリエ変換限界のレーザパルスであるからである。この広いスペクトルの各波長の光路長の違いを、後述するパルスストレッチャー12やパルスコンプレッサー16の回折格子ペアで制御することで、パルスを伸ばしたり、縮めたりすることができる。レーザ発振器11は、繰り返し周波数89.25MHzで、中心波長790nm、パルス幅(半値幅)20fsecのパルスレーザ光を発振する。なお、レーザ発振器11の繰り返し周波数は、電子加速器での電子加速に広く用いられているSバンドの32分周となっている。
【0052】
レーザ発振器11で発生したパルスレーザ光は、パルスストレッチャー12に入射する。パルスストレッチャー12は、パルス幅を延ばすための回折格子ペアを有している。パルスストレッチャー12は、例えば、パルス幅(半値幅)を150psecに広げる。パルスストレッチャー12でパルス幅が広げられたパルスレーザ光は、光変調器13に入射する。
【0053】
光変調器13としては、例えば、音響光学(AO:Acousto−Optics)素子や液晶素子を用いることができる。より具体的には、光変調器13として、音響光学空間位相制御フィルター(AOPDF:Acoutsto−Optics Programmable Dispersive Filter)や液晶空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)を用いることができる。光変調器13は、スペクトル位相を変調する。光変調器13としては、例えば、ファーストライト(FASTLITE)社製DAZZLER(登録商標)を用いることができる。これにより、広帯域スペクトルを有するパルスレーザ光を変調することができる。上述の電子ビームのモニタ結果、及びパルス形状の測定結果に基づいて、光変調器13を制御する。これにより、パルス波形を整形することができる。すなわち、電子ビームの高品質化に好適なパルス波形を得ることができる。
【0054】
さらに、光変調器13によって、パルスレーザ光をチャープさせるようにしてもよい。すなわち、光変調器13によって、パルスを整形するだけでなく、チャープしてもよい。時間に応じて波長が変化するように、パルスレーザ光のスペクトル位相、又は強度を変調する。パルスレーザ光を正チャープさせることにより、パルスの先頭から後方側に向かうにつれて、波長が徐々に短くなる。パルス先端の波長が最長波長となり、パルス後端の波長が最短波長となる。レーザパルス内の波長は、後方側に向かうにつれて、単調減少していく。さらに、波長と時間の関係がリニアになるように高次の分散を補償して、2次分散の増減をコントロールする。例えば、光変調器13自体が持つ2次分散を光変調器13の設定値で2次分散で打ち消すことできるし、また、その打ち消したところでフーリエ限界になるようにしていれば、正チャープにも負チャープにもすることができる。よって、時間とともに波長がリニアに減少する。このように、光変調器13から出射したレーザパルス光では、時間とともに波長が線形(リニア)に変化するようにする。すなわち、パルスレーザ光の波長は時間に応じて、波長が線形(リニア)に変化する。光変調器13に入力する変調信号(Acoustic Wave)に応じて、パルスレーザ光のスペクトルが変調される。そして、チャープした音波によって、結晶を通過するパルスレーザ光に、波長に応じた光路差を自由に与えることができる。音波のスペクトルと同じ形状にパルスレーザ光のスペクトルが整形される。あるいは、音波のパルス形状と同じ形状にパルスレーザ光のスペクトルを整形してもよい。また、光変調器13以外の光学素子によってチャープさせることも可能である。例えば、波長に応じて屈折率が異なる透明な正分散媒質を用いることで、パルス光を正チャープさせることができる。
【0055】
光変調器13で変調されたパルスレーザ光は、再生増幅器14、及びマルチパス増幅器15で増幅される。すなわち、パルスレーザ光は、前段の再生増幅器14に入射する。再生増幅器14は、パルスレーザ光を増幅して、後段のマルチパス増幅器15に出射する。そして、マルチパス増幅器15で増幅されたパルスレーザ光は、パルスコンプレッサー16に入射する。再生増幅器14、及びマルチパス増幅器15はフラッシュランプ励起YAGレーザ光を分岐して励起光源としている。すなわち、再生増幅器14、及びマルチパス増幅器15は、励起光源を共通化している。
【0056】
再生増幅器14内では、共振器内のポッケルスセルにより10Hzでパルス列を切り出して選択増幅する。ここでは、例えば、2mJまでパルスレーザ光が増幅される。このレーザパルスを次のマルチパス増幅器15で同じ結晶を4回往復させる。マルチパス増幅器15は、例えば、30mJ/pulseまで増幅する。なお、再生増幅器14、及びマルチパス増幅器15では、中心波長、及びパルス幅(半値幅)は、790nm、150psecのままになっている。このように、種光を作るレーザ発振器11と、その後に種光を外部増幅器からなるMOPA(Maseter Oscillator Power Amplifier)方式を採用している。そして、外部増幅器が再生増幅器14、及びマルチパス増幅器15の2段構成になっている。
【0057】
マルチパス増幅器15からのパルスレーザ光は、パルスコンプレッサー16に入射する。パルスコンプレッサー16は、パルス長を短くするための回折格子ペアを有している。ここでは、例えば、パルス長(半値幅)が150psecから1psecに縮められる。さらに、レーザのもつスペクトル帯域で最短のパルス、すなわちフーリエ限界パルスにすることができる。このように、パルスストレッチャー12とパルスコンプレッサー16の間に、再生増幅器14、及びマルチパス増幅器を配置している。これにより、ピークパワーを押さえながら増幅するチャープパルス増幅(Chirped Pulse Amplification)を実行するこができる。パルスコンプレッサー16からは、例えば、中心波長790nm、スペクトル・バンド幅(半値幅)20nmのパルスレーザ光が出射する。
【0058】
パルスコンプレッサー16からのパルスレーザ光は、波長変換器17に入射する。ここで、波長変換器17は、パルスコンプレッサー16から出射した中心波長790nmのパルスレーザ光の3倍高調波(中心波長263nm)を発生させる。具体的には、波長変換器17は、2つの非線形光学結晶を有している。ここで、非線形光学結晶としては、BBO結晶を用いることができる。まず、1つ目の結晶にパルスコンプレッサー16からの基本波(中心波長790nm)を入射させて、2倍高調波(中心波長395nm)を発生させる。そして、2つ目の結晶に、2倍高調波と基本波を入射させて、3倍高調波を発生させる。
【0059】
固体レーザの短波長発生の基礎となるのは、入射する2つのコヒーレント光(波長λ1、λ2)に対して、2次の非線形光学効果を利用したBBO結晶内での相互作用の結果である、エネルギー保存則に従う波長λ3の発生、すなわち和周波混合(SFM:Sum Frequency−Mixing)である。2倍高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)はSFMの2つの入射光の波長λ1とλ2とが等しい場合に対応する。第3高調波発生(THG:Third Harmonic Generation)は、通常SHGで発生した2倍高調波(λ2)と残存する基本波(λ1)とのSFMにより実現される。基本波から3倍高調波の変換効率は約10%であり、2倍高調波への変換効率は約50%である。もちろん、BBO結晶以外の非線形光学素子によって3倍高調波を発生させてもよい。
【0060】
このように、光源部10では、パルス幅の伸長、増幅、圧縮、紫外光への波長変換を受ける。なお、波長変換器の後に、石英ロッドを通過させて、紫外パルスを正チャープして、パルス幅を延ばしてもよい。例えば、長さ45cmの溶解石英ロッドを2つ用いることで、パルス幅が80fsecから10psecに伸ばすことができる。(H. Tomizawa, T. Asaka, H. Dewa, H. Hanaki, T. Kobayashi, A. Mizuno, S. Suzuki, T. Taniuchi, and K. Yanagida, <Status of SPring−8 photocathode RF Gun for Future light Sourcesc, Proceedings of the 27th International Free electron laser Conference, Stanford, CA, 21−26 August 2005, (2005) pp. 138−141.参照)なお、光源部10は、直線偏光を出射している。光源部10から出射したパルスレーザ光は、図1に示したようにパルススタッカー20に入射する。
但し、非線形効果が効くような増幅後の超短パルスレーザのTHGでは、石英中のフィラメンテーションというトランスバース方向の屈折率分布ができる。このため、プロファイルが劣化してしまうという問題が生じるおそれがある。このような場合、石英ロッドを使用しなくてもよい。
【0061】
次にパルススタッカー20に構成について図3、及び図4を用いて説明する。図3は、パルススタッカー20の光学系の構成を示す図である。図4は、パルススタッカー20によってスタックされたパルス波形を示すタイミングチャートである。なお、図4では、光源部10からパルス幅2.5psecのパルス光が入射しているものとして示している。また、図4では、横軸が時間を示し、縦軸が光強度を示している。図4では、パルススタッカー20における6つのパルス波形が上から順番に示されている。そして、6つのパルス波形をそれぞれA〜Fとして示している。
【0062】
パルススタッカー20は、入射側λ/4板(1/4波長板)21、入射側λ/2板(1/2波長板)22、入射側偏光ビームスプリッタ(以下、偏光ビームスプリッタをPBSとする)23、スタックユニット31、スタックユニット32、スタックユニット33、ミラー34、出射側λ/2板35を有している。すなわち、3段のスタックユニット31〜33が直列配置されている。ここで、スタックユニット31、スタックユニット32、及びスタックユニット33は同じ構成を有している。スタックユニット31、スタックユニット32、及びスタックユニット33のそれぞれは、スタック用λ/2板24、固定ミラー対25、可動ミラー対26、アクチュエータ27、分岐用PBS28、合成用PBS29、及び遮光部材37を有している。そして、パルススタッカー20は、入射側λ/2板22と入射側PBS23とでパワーを調整する。
【0063】
入射側PBS23、分岐用PBS28、及び合成用PBS29は、例えば、偏光ビームスプリッタキューブであり、偏光状態に応じて光を分岐する。例えば、入射側PBS23、分岐用PBS28、及び合成用PBS29は、P偏光を通過させ、S偏光を反射する。入射側λ/4板21、入射側λ/2板22、スタック用λ/2板24は、0次水晶波長板であり、常光成分と異常光成分との間に所定の位相差を与える。なお、偏光ビームスプリッタキューブには、オプティカル・コンタクト方式のものを用いることが好ましい。これにより、高強度のパルス光に対しても適用することが可能になる。レーザ強度が強い場合、エアーギャップ方式が好ましい。また、オプティカルコンタクトの波長板があるが、それには接着材を使わない接着材フリーのものを使用するとエミッションが少ない。また、接着材を用いる場合、航空宇宙使用の接着材が好ましい。
【0064】
図3に示すパルススタッカー20には、光源部10からのパルス光が入射している。入射側λ/4板21は、楕円化しているパルス光を直線偏光にする。例えば、入射側λ/4板21は、回転可能に設けられている。そして、入射したパルス光の偏光状態に応じて回転角度を調整する。これにより、パルス光が略完全な直線になる。もちろん、光源部10から出射したパルス光が直線偏光である場合、入射側λ/4は不要である。λ/4板21を通過したパルス光は、λ/2板22に入射する。
【0065】
入射側λ/2板22は、入射した直線偏光の偏光軸を回転させる。入射側λ/2板22を通過したパルス光は、入射側PBS23に入射する。入射側PBS23は、入射光の偏光状態に応じて、入射光を通過させる。入射側PBS23を通過したパルス光は、スタックユニット31に入射する。例えば、入射側PBS23は、P偏光を通過させ、S偏光を反射する。さらに、入射側λ/2板22は入射側PBS23の前に回転可能に設けられている。すなわち、入射側λ/2板22の光学軸が、光軸と垂直な面において回転する。入射側λ/2板22の回転角度を調整することにより、偏光面が回転する。これにより、スタックユニット31に入射するパルス光のパワーを調整することができる。すなわち、入射側λ/2板22の回転角度によって、直線偏光の偏光方向が変化するため、P偏光成分を増減させることができる。
【0066】
入射側PBS23を通過したパルス光は、1段目のスタックユニット31に入射する。スタックユニット31は、入射した主パルス光を分岐して2つの光ビームに分岐する。これにより、2つのミクロパルスが生成される。分岐された2本の光ビームは、異なる光路に沿って伝播する。スタックユニット31は、分岐された2つの光ビームのパルス光に対して光路長差を与えた後、その2つの光ビームを合成する。合成された2つの光ビームは共通の光路に沿って伝播する。これにより、スタックユニット31からはタイミングのずれた2つのミクロパルスが出射する。以下に、上記の機能を有するスタックユニット31の構成を詳細に説明する。
【0067】
スタックユニット31に入射したパルス光は、スタック用λ/2板24に入射する。スタック用λ/2板24は、直線偏光の偏光面を45°回転させる。ここでは、図4のAに示すように+45°の直線偏光になる。これにより、P偏光成分とS偏光成分が略同じになる。スタック用λ/2板24から出射されたパルス光は、分岐用PBS28に入射する。
【0068】
分岐用PBS28は、入射したパルス光を偏光状態に応じて分岐する。ここでは、P偏光成分が分岐用PBS28を通過して、S偏光成分が前段側PBSで反射される。なお、スタック用λ/2板24によって、P偏光成分とS偏光成分が略同じになっているため、パルス光は2等分される。このように、分岐用PBS28はパルス光を分岐して、2つのミクロパルスを生成する。ここで、分岐用PBS28を通過したP偏光成分のミクロパルスをP偏光ミクロパルスとし、分岐用PBS28で反射したS偏光成分のミクロパルスをS偏光ミクロパルスとする。S偏光ミクロパルスとP偏光ミクロパルスは、異なる光路に沿って伝播する。
【0069】
分岐用PBS28で反射したS偏光ミクロパルスは固定ミラー対25に入射する。固定ミラー対25は、例えば、ステージなどに固定されている。固定ミラー対25は、2枚のミラー30を有している。ミラー30は、例えば、平面鏡であり、入射した光のほとんどを反射する。そして、S偏光ミクロパルスは、2枚のミラー30で反射されて合成用PBS29に入射する。
【0070】
一方、分岐用PBS28を通過したP偏光ミクロパルスは、可動ミラー対26に入射する。可動ミラー対26は、固定ミラー対25と同様に、2枚のミラー30を有している。そして、P偏光ミクロパルスは、2枚のミラー30で反射されて合成用PBS29に入射する。さらに、可動ミラー対26はステージなどに対して移動可能に設けられている。すなわち、可動ミラー対26は、アクチュエータ27に取り付けられている。そして、アクチュエータ27を駆動することによって、可動ミラー対26が図3中の点線矢印方向に移動する。アクチュエータ27は制御装置48によって制御される。
【0071】
これにより、可動ミラー対26から合成用PBS29までの距離が変化するとともに、可動ミラー対26から分岐用PBS28までの距離が変化する。従って、分岐用PBS28から合成用PBS29までの間において、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスとで光路長が変化する。S偏光ミクロパルスに対してP偏光ミクロパルスが遅延する。ここで、パルスススタッカー20において、2.5psecのミクロパルスが2.5psecであり、20psecのマクロパルスを作るとすると、1段目で10psec、2段目で5psec、3段目で2,5psecの遅延を与える。P偏光ミクロパルスがS偏光ミクロパルスから10psec遅れている。なお、P偏光ミクロパルスを遅れても進めてもよいが、全ての段で同じ方向にする。すなわち、アクチュエータ27によって分岐用PBS28から合成用PBS29までの距離を調整して、時間遅延量を10psecにする。これにより、S偏光ミクロパルスとP偏光ミクロパルスとの間に、所望の時間遅延量を与えることができる。このように、可動ミラー対26、及び固定ミラー対25が2本の光ビーム間に時間遅延を与える遅延手段になる。
【0072】
光路長差が与えられたP偏光ミクロパルス、及びS偏光ミクロパルスは、合成用PBS29で合成される。すなわち、合成用PBS29は、P偏光ミクロパルスを通過して、S偏光ミクロパルスを反射する。これにより、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスが合成される。すなわち、P偏光ミクロパルスの光軸とS偏光ミクロパルスの光軸とが合流して、一致する。このとき、P偏光ミクロパルス、及びS偏光ミクロパルスには、図4のBに示すように、時間遅延が与えられている。
【0073】
そして、1段目のスタックユニット31から出射したパルス光は、2段目のスタックユニット32に入射する。2段目のスタックユニット32は1段目のスタックユニット31と同様の構成を有している。ここで、2段目のスタックユニット32には、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスとが入射する。このため、図4のCに示すように、スタック用λ/2板24によって、S偏光ミクロパルスでは偏光軸が+45°となり、P偏光ミクロパルスでは偏光軸が−45°になる。
【0074】
そして、2つのミクロパルスを含むパルス光は、分岐用PBS28で分岐され、合成用PBS29で合成する。このとき、スタック用λ/2板24によって偏光軸が回転している。よって、それぞれのミクロパルスがさらに2つのミクロパルスに分岐される。すなわち、4つのミクロパルスが生成される。さらに、固定ミラー対25、及び可動ミラー対26によって、光路長差が与えられている。ここでは、例えば、5psecの時間遅延が与えられるように、アクチュエータ27が調整されている。すなわち、P偏光ミクロパルスがS偏光ミクロパルスに対して、5psec遅れるようにする。このため、合成用PBS29で合成されたパルス光には、図4のDに示すように、4つのミクロパルスが含まれる。先頭側の2つのミクロパルスは、スタック用λ/2板24直後において偏光軸が+45°のミクロパルスから生成されている。また、後端側の2つのミクロパルスは、スタック用λ/2板24直後において偏光軸が−45°のミクロパルスから生成されている。
【0075】
2段目のスタックユニット32では、1段目のスタックユニット31での遅延時間よりも短い遅延時間が与えられている。このため、合成された光ビームでは、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスが交互に並んでいる。また、2段目のスタックユニット32では、1段目のスタックユニット31のほぼ半分の遅延時間が与えられている。このため、隣接するミクロパルス間の時間間隔が等しくなっている。すなわち、4つのミクロパルスが5psec間隔で並んでいる。
【0076】
2段目のスタックユニット32から出射した4つのミクロパルスを有するパルス光は、3段目のスタックユニット33に入射する。このため、図4のEに示すように、スタック用λ/2板24によって、S偏光ミクロパルスでは偏光軸が+45°となり、P偏光ミクロパルスでは偏光軸が−45°になる。ここでは、偏光軸が+45°のミクロパルスと偏光軸が−45°のミクロパルスとが交互に配列される。
【0077】
そして、2段目のスタックユニット32と同様に、ミクロパルスの数を2倍にする。これにより、8つのミクロパルスが生成される。ここでは、アクチュエータ27による遅延時間が2.5psecに設定されている。これにより、図(f)に示すようにミクロパルスが配列される。
【0078】
3段目のスタックユニット33では、2段目のスタックユニット32での遅延時間よりも短い遅延時間が与えられている。このため、合成された光ビームでは、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスが交互に並んでいる。また、3段目のスタックユニット33では、1段目のスタックユニット32のほぼ半分の遅延時間が与えられている。このため、隣接するミクロパルス間の時間間隔は等しくなっている。すなわち、8つのミクロパルスが2.5psec間隔で並んでいる。
【0079】
このように、3つのスタックユニット31〜33を直列に配置して、8つのミクロパルスを重ね合わせている。これにより、マクロパルスのパルス長は20psec程度になる。各スタックユニット31〜33に設けられているアクチュエータ27を制御することで、縦方向のパルス形状を調整することができる。また、アクチュエータ27を制御することでパルス長を調整することも可能になる。もちろん、各ミクロパルスは、等間隔でなくてもよい。重ね合わされたマクロパルスは、電子ビームの高品質化に好適な形状に調整される。
【0080】
3段目のスタックユニット33から出射したマクロパルスは、ミラー34を介して、出射側λ/2板35に入射する。そして、出射側λ/2板35からのマクロパルスがパルススタッカー20から出射する。出射側λ/2板35を回転させることで、通過するミクロパルスのパワーを調整する。ここでは、フォトカソード51に入射する光のパワーが最大になるように出射側λ/2板35の回転角度を調整する。
【0081】
なお、スタックユニット31〜33において、時間遅延を与える光学素子は、可動ミラー対26に限られるものではない。例えば、屈折率の異なる透明部材を光路中に配置してもよい。これにより、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスとの間で、光学的な距離が変化するため、時間遅延を与えることができる。もちろん、これら以外のものを遅延手段として用いてもよい。
【0082】
スタック用λ/2板24を回転可能に設けても良い。これにより、分岐用PBS28で分岐されるP偏光成分、及びS偏光成分の割合を変化させることができる。よって、8つのミクロパルスの強度を調整することができる。フォトカソード51に入射するパルス光の縦方向の形状を調整することができる。
【0083】
もちろん、ミクロパルスの数は8に限られるものではない。スタックユニットの段数を増やすことによって、23以上のミクロパルスをスタックすることができる。すなわち、2n個のミクロパルス(n=段数)をスタックすることができる。もちろん、スタックユニットの段数を減らして、ミクロパルスの数を8未満にしてもよい。
【0084】
さらに、各スタックユニット31〜33には、遮光部材37が設けられている。例えば、スタックユニット31には1つの遮光部材37が設けられている。遮光部材37は、分岐用PBS28で分岐された光ビームが合成用PBS29に入射するのを選択的に遮るシャッターである。なお、それぞれの光路に対して別の遮光部材37を設けても良い。遮光部材37は分岐用PBS28で分岐された2つの光路中に移動可能に設けられている。すなわち、遮光部材37は光路中に挿脱可能に設けられている。そして、電子ビームの精密調整時には、一方の遮光部材37を光路中に挿入する。スタックユニット31〜33のそれぞれにおいて、遮光部材37は、P偏光ミクロパルス、又はS偏光ミクロパルスを遮光する。すなわち、分岐用PBS28で分岐された2本の光ビームのうち、一方の光路中に遮光部材37を配置する。これにより、各段のスタックユニット31〜33において、一方のミクロパルスのみが遮光される。
【0085】
この場合、図4のFに示されている8つのミクロパルスのうち、1つのミクロパルスのみが3段目のスタックユニット33から出射する。すなわち、3つの遮光部材37で遮光した場合、1つのミクロパルスのみが、フォトカソード51、及びカメラ47に入射する。これにより、各ミクロパルスの形状測定が可能になる。例えば、各ミクロパルスの横方向の形状をカメラ47で測定する。全ミクロパルスの個別の測定結果に基づいて、可変形ミラー40を設定する。具体的には、一方のミクロパルスを遮光して、他方のミクロパルスを測定する。さらに、他方のミクロパルスを遮光して、一方のミクロパルスを測定する。そして、3段のスタックユニット31〜33のそれぞれに対して、遮光部材37の移動を順次行う。具体的には、23通りの遮光部材37の配置で、測定を行う。これにより、各ミクロパルスの形状を測定することができる。そして、全ての測定結果に基づいて調整を行う。
【0086】
各ミクロパルスの横方向の形状を略同じ形状に調整することができる。これにより、マクロパルスの横方向の形状を最適化することができる。すなわち、時間に応じた横方向形状の変化が低減され、円筒形のパルス光を生成することができる。簡便な構成でマクロパルスをトップフラット形状に整形することができる。各段のスタックユニット33で一方のミクロパルスを遮光することにより、パルス形状の微調整を行うことができる。
【0087】
もちろん、ビームモニタ55での測定結果に応じて、マクロパルスの横方向の形状を調整してもよい。遮光部材37によって遮光した状態で、フォトカソード51にパルス光を照射すればよい。そして、ビームモニタでの測定結果に基づいて、パルス形状を調整する。これにより、さらなる微調整が可能になる。さらには、一部のミクロパルスを同時にスタックユニット33から出射させて、調整してもよい。例えば、2つ、又は4つのミクロパルスを同時にスタックユニット33から出射させて、調整してもよい。
【0088】
このように、縦方向、及び横方向のパルス形状を精密に整形することができる。すなわち、パルス光の3次元形状の整形を容易に行うことができる。ミクロパルス毎に測定できるため、より精密な整形が可能になる。そして、最適な設定で8つのミクロパルスを含むマクロパルスをフォトカソード51に照射する。所望の形状のパルス光をフォトカソードに照射することができる。これにより、フォトカソード51からの電子ビームの高品質化を図ることができる。すなわち、所望のバンチ形状の電子ビームを得ることができる。高輝度で低エミッタンスの電子ビームの生成が可能になる。さらには、利用に最適な形状のバンチを生成することができる。簡便な構成で、縦方向プロファイル、及び横方向プロファイルを最適化することができる。また、「Wefers AND Nelson, IEEE J.Quantum Electron, Vol. 32, pp.161(1996)」に示されているように、回折の影響で時間波形が空間波形に反映されてしまうが、可変形ミラー40とパルススタッカー20の組み合わせでは、互いに与える影響を低減することができる。よって、3次元的な形状を正確に整形することができる。
【0089】
各ミクロパルスの微調整が行われた後は、上記のように、電子ビームやパルス形状の測定結果に基づいてフィードバック制御する。例えば、加速管で加速された後のバンチ形状をビームモニタ55でモニタしながら、リアルタイムで調整することできる。よって、高品質の電子ビームを安定して発生させることができる。さらに、利用目的に適合したバンチ形状をすることができ、例えば、エミッタンスを低減することができる。
【0090】
マイクロ波を用いて加速しているため、電子ビームのエネルギー分布がバンチの縦方向分布に対応する。すなわち、マイクロ波での位相がずれると、電子ビームの加速エネルギーが変化する。例えば、パルス幅が広い場合、電子のエネルギー分散が広くなる。電子ビームのエネルギー分布の測定結果に応じて、パルス光の縦方向分布を調整することも可能である。電子ビームのエネルギー分布を測定する場合、ベンディングマグネット等によって電子ビームを曲げる。ベンディングマグネットは、電子の入射方向と垂直な方向に、一定の磁場を発生している。これにより、バンチ内電子をエネルギーに応じて空間的に分散させることができる。そして、曲げられた後のバンチ内電子の空間分布を測定する。これにより、縦方向(時間方向)のパルス形状を測定することができる。空間分布の測定結果に基づいて、パルス光の進行方向におけるパルス形状を調整する。このように、DAZZLERなどの光変調器13で2次分散をコントロールして、バンチ内電子のエネルギー分散に基づいて縦方向のパルス形状を調整することができる。
【0091】
縦方向のパルス形状は、光変調器13によって調整することもできる。バンチのエネルギー分布に応じて光変調器13を制御する。これにより、縦方向のパルス形状、及びバンチ形状を最適化することができる。さらに、フォトカソード51までの光路における光のロスを補償するように、光変調器13を用いてパルス形状を調整することができる。このように調整を行う場合でも、ビームモニタ55やカメラ47の測定結果に基づいて調整することで、所望のバンチ形状、及びパルス形状を容易に得ることができる。さらに、縦方向のパルス形状は、パルスコンプレッサー16によっても調整することできる。すなわちパルスコンプレッサー16でのコンプレッサー長を変えることで、縦方向のパルス形状を最適化することができる。また、上記のように、光変調器13の設定値を変えることで、2次分散を打ち消すことができる。例えば、光変調器13自身に13066fs2の2次分散がある場合、予め光変調器13の2次分散の設定値を−13066fs2にして、2次分散を打ち消す。そして、この状態でコンプレッサー長を変えることで、フーリエ限界パルスにすることができる。さらに、光変調器13の設定値を変えることで、高次の分散まで補償されるため、理想的なフーリエ限界パルスに近づけることができる。光変調器13として、DAZZLER(登録商標)を用いて、スペクトルの中央部分に凹みを設けることで、スペクトルの帯域を増幅後で広く保つことができる。これにより、さらなる超短パルス化が可能になる。光変調器13の設定値を変えることで、縦方向のパルス形状を調整することができる。
【0092】
なお、パルススタッカー20に入射されるパルス光は、特に限定されるものではない。すなわち、任意のパルス幅を持つパルス光であればよい。さらにパルススタッカー20から出射されるパルス光は、電子の発生以外の用途に利用可能である。例えば、パルス光をレーザ加工に用いることができる。この場合、加工対象にパルススタッカー20からのパルス光を照射する。レーザ加工に用いることにより、より微細で精密な加工を行うことができる。また、ストリークカメラや高速カメラの校正に、パルス光を利用することができる。このように、パルススタッカー20において、各ミクロパルスを遮光することによって、簡便にパルス形状を整形することが可能になる。
時間遅延量が小さくなると、縦方向において隣接するミクロパルスが重複する。すなわち、ミクロパルスの一部が隣のミクロパルスと重畳する。このような場合であって、パルス光をチャープすることによって、ミクロパルス間の干渉を防ぐことができる。すなわち、隣接するミクロパルスと重複する部分は波長が異なっているため、干渉しない。さらに、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスを交互に配置することで、ミクロパルス間の干渉を防ぐことができる。このように、光干渉を低減するように、S偏光ミクロパルスとP偏光ミクロパルスとを交互に配置する。
【0093】
また、加速された電子ビームを自由電子レーザ(FEL)の発振に用いる場合、発振した自由電子レーザをモニタしながらバンチ形状をモニタすることもできる。例えば、発振したFELの発振強度が最大になるようにパルス形状をリアルタイムで調整する。さらに、パルス光をレーザ加工に用いる場合、加工物の形状に応じてパルスを整形してもよい。このように、用途に応じて電子バンチの形状を最適化することができる。
【0094】
なお、バンチが所望の形状になっているかを評価するための評価関数を用いてもよい、この場合、複数のパラーメータを用いて調整することによって、簡便にパルス光をフラットトップ化することができる。可変形ミラー40の調整には、遺伝的アルゴリズムを用いることが好ましい。これにより、簡便に調整することができる。あるいは、パルス光をガウシアン化することもできる。また、パルス形状の調整は制御装置48を用いて自動で行ってもよく、作業者が手動で行ってもよい。さらには、可変形ミラー40の調整を半自動で行ってもよい。また、過去のパラメータセーブしておくことで、迅速に所望のプロファイルに整形できる。
【0095】
なお、パルススタッカー20において、入射側λ/2板22、スタック用λ/2板24、及び出射側λ/2板35を回転可能に設けている。なお、入射側λ/2板22、スタック用λ/2板24、及び出射側λ/2板35の回転軸は、光軸と平行である。そして、入射側λ/2板22、スタック用λ/2板24、及び出射側λ/2板35の回転角度を調整することでパルス光の光強度を調整することができる。さらに、3つのスタック用λ/2板24の回転角度を独立して調整することで、各ミクロパルスの光強度を調整することができる。よって、縦方向のパルス形状を整形することが可能になる。
【0096】
なお、上記の説明では、パルス光の2次元形状を調整する調整手段として可変形ミラー40を用いたが、調整手段は、これに限られるものではない。例えば、マイクロミラーがアレイ状に配列されたマイクロミラーアレイを調整手段として用いることができる。マイクロミラーアレイとしては、テキサス・インスツルメント社のものを用いることが好適である。もちろん、これら以外の調整手段を用いてもよい。
【0097】
遮光部材37として回転可能に配置された偏光子を用いることも可能である。すなわち、移動可能に設けられたシャッターの代わりに、回転可能に設けられた偏光板を用いることができる。例えば、分岐用PBS28で分岐された2本の光ビームの光路中にそれぞれ偏光板を配置する。そして、それぞれの偏光板を回転して、P偏光ミクロパルス、又はS偏光ミクロパルスを遮光する。例えば、一方の偏光板ではP偏光ミクロパルスを遮光して、他方の偏光板ではS偏光ミクロパルスを透過する。この場合、P偏光ミクロパルスの偏光面と偏光板の吸収軸が一致するように配置する。また、S偏光ミクロパルスの偏光面と偏光板の吸収軸が直交するように配置する。このようにしても、合成用PBS29へのミクロパルスの入射を遮ることができる。また、液晶パネル等を用いて遮光するようにしてもよい。なお、遮光部材37はミクロパルスを完全に遮光しなくてもよい。
【0098】
ミクロパルスの時間間隔は2.5psecに限られるものではない。もちろん、全てのミクロパルスを等間隔にしなくてもよい。この場合、各段のスタックユニットでの時間遅延量が整数倍にならないようにする。
【0099】
さらに、フォトカソード51までに配置されたレンズやミラーなどの光学素子における波長分散を考慮して、パルススタッカー20に入射するパルス幅を設定してもよい、例えば、透過型の光学素子では、分散によってパルス幅が広がってしまう。このような場合、フォトカソード51に入射するパルス光のパルス幅は、パルススタッカー20に入射するパルス光のパルス幅よりも広くなっている。従って、波長分散によるパルス幅の延びを補償するように、パルススタッカー20に入射するパルス光のパルス幅を設定する。電子のバンチ長やビームスプリッタ46で分岐されたパルス光のパルス幅を測定することで、フォトカソード51に入射するパルス光を所望のパルス幅にすることができる。なお、ストリークカメラなどを用いて、パルス幅を測定してもよい。
【0100】
さらに、合成用PBS29から漏れてくるパルス光の無偏光成分を測定するようにしてもよい。スタックユニット31に入射したパルス光に存在する無偏光成分は、合成用PBS29から漏れてくる。このため、無偏光成分は、合成用PBS29からスタック用λ/2板24やミラー34に入射しない。合成用PBS29で合成されずに漏れてくる光を検出することができる。これにより、光を有効的に利用することができる。さらに、実質的に同じ形状のパルスを測定することができるため、より正確な測定が可能になる。例えば、漏れてくる光を検出して、横方向のパルス形状を測定してもよい。この場合、カメラやビームプロファイラーで無偏光成分を測定する。ここで、無偏光成分をカメラなどに入射する測定光とし、偏光成分を、フォトカソード51において電子の発生に利用される利用光とする。合成用PBS29が2本の光ビームを合成することによって、合成用PBS29から測定光と利用光とが分岐されて出射する。そして、測定光をカメラ47などで検出することによって、測定光のパルス形状を測定する。そして、測定光のパルス形状の測定結果に基づいて、利用光のパルス形状を調整する。これにより、利用光のパルス形状をフィードバック制御することができる。
【0101】
また、図3に示す構成のパルススタッカー20では、1つのミクロパルスに応じた測定を行う際、そのミクロパルスの光路中に光学素子を配置することなく、測定を行うことができる。従って、系を壊さずにマスキングすることが可能になる。すなわち、遮光部材37を光路中に挿入することで、各ミクロパルスを簡便にマスクすることができる。これにより、光学系の調整等が不要となり、正確な測定を簡便に行うことができる。
【0102】
次に、パルススタッカー20の変形例について図5を用いて説明する。図5は、図3と異なる構成でミクロパルスを生成するためのスタッキングロッド120を示す図である。図5では、1つのパルス光から8つのミクロパルスをスタックするスタッキングロッド120が示されている。従って、スタッキングロッド120には、3段のスタックユニット131、132、133が設けられている。なお、パルススタッカー20と同様の内容については説明を省略する。
【0103】
スタックユニット131〜133のそれぞれは、ウェッジ121、ウェッジ122、複屈折素子123、取出し用λ/2板124、取出し用PBS125を備えている。さらに、スタックユニット131、132は、スタック用λ/2板126を有している。なお、それぞれのスタックユニット131〜133は、基本的に同じ構成を有している。ここでは、3つのスタックユニット131〜133が直列に配置されている。
【0104】
まず、パルス光は、1段目のスタックユニット131に入射する。すなわち、パルス光は、ウェッジ121、及びウェッジ122からなるウェッジペアに入射する。ウェッジペアで屈折されたパルス光は、複屈折素子123に入射する。ウェッジ121、及びウェッジ122を独立して回転させることによって、複屈折素子123に入射するパルス光の位置、及び入射角度を調整することができる。
【0105】
複屈折素子123は、例えば、α―BBOなどの結晶素子であり、入射したパルス光に対して複屈折効果を生じさせる。これにより、パルス光のうちの常光線と異常光線との間に時間遅延が生じる。すなわち、進相軸と平行な偏光成分に比べて、遅相軸に平行な偏光成分は、伝播速度が遅くなる。これにより、直交する偏光成分間に時間遅延が与えられる。複屈折素子123の光学軸をパルス光の光軸に垂直に配置する。P偏光成分が常光線であり、S偏光成分が異常光線であるとすると、S偏光成分がP偏光成分に比べて遅れる。例えば、複屈折素子123は、10psecのディレイを生じさせる。これにより、図4のAに示したように、10psecずれた2つのミクロパルスが生成される。なお、複屈折素子として、www.pantotek.com/Birefringentcrystals/AlphaBBO.html等に記載の結晶を用いることができる。あるいは、CRYSTECH社製 α−BBO結晶を用いることもできる。また、α―BBO結晶の代わりに、YVO4結晶や液晶素子などを複屈折素子123として用いてもよい。例えば、YVO4結晶を用いることで、波長400nm〜5μmのパルス光の整形が可能になる。
【0106】
スタック用λ/2板126は、スタック用λ/2板24と同様に、直線偏光の偏光面を45°回転させる。よって、図4のBに示すようになり、+45°のミクロパルスと−45°のミクロパルスが生成される。スタック用λ/2板126は、ミクロパルスを45度偏光にする。そして、2つのミクロパルスが2段目のスタックユニット132に入射する。
【0107】
スタックユニット132,133の構成は、スタックユニット131と同様である。但し、各ユニットでは、複屈折素子123での遅延量が異なっている。スタックユニット132の複屈折素子123での遅延時間は、5psecになっている。従って、スタックユニット132の複屈折素子123では、図4のDに示すような4つのミクロパルスが生成される。そして、スタック用λ/2板126によって、図4のEに示す状態になる。
【0108】
さらに、3段目のスタックユニット133における複屈折素子123での遅延時間は、2.5psecになっている。従って、スタックユニット133の複屈折素子123を通過すると、図4のFに示す状態となる。なお、3段目のスタックユニット133のみ、スタック用λ/2板126が設けられていない。P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスが交互に配置される。なお、α―BBO結晶の厚み等を変えることで、所定の遅延時間を得ることができる。すなわち、複屈折素子123の長さは、与える時間遅延に応じて決定される。遅延時間を長くする場合、複屈折素子123を厚くする。例えば、CRYSTECH社製のα―BBO結晶ロッドを用いて10psecの時間遅延を与える場合、結晶ロッドの厚さを2cmとする必要がある。また、5psecの時間遅延を与える場合、厚さを1cmとし、2.5psecの時間遅延を与える場合、厚さを0.5cmとする。遅延時間を長くする場合、透過率の高い複屈折素子123を用いることが好ましい。これにより、複屈折素子123でのパルス光の減衰を低減することができ、十分な強度のパルス光を得ることができる。
【0109】
各スタックユニットにおいて、複屈折素子123の後段には、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が挿入可能に配置されている。すなわち、スタックユニット131、132では、複屈折素子123とスタック用λ/2板126との間に、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が挿入される。また、スタックユニット133では、複屈折素子123の後方に取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125を配置することができる。例えば、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125を矢印の方向にスライド移動させると、図5の点線に示すように、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路上に、配置される。パルス形状の調整時には、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路中に配置される。そして、各ミクロパルス光のプロファイルなどが測定される。一方、電子ビームの利用時には、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路中から取り除かれる。これにより、8つのミクロパルスがスタックされた状態で光学系を伝播する。このように、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125は、光路中に挿脱可能に配置されている。
【0110】
取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路中に配置されると、一方のミクロパルスが、スタック用λ/2板126に入射しない。すなわち、複屈折素子123からの2つのミクロパルスは、同一光軸上を伝播して、取出し用λ/2板124に入射する。しかしながら、取出し用λ/2板124の後方には、取出し用PBS125が配置されている。取出し用λ/2板124の回転角度を調整することで、一方のミクロパルスのみが取出し用PBS125を通過し、他方のミクロパルスが反射される。すなわち、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスのうちの一方のみが取出し用PBS125を通過して、スタック用λ/2板126に入射する。換言すると、取出し用PBS125は、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスのうちの他方がスタック用λ/2板124に入射するのを遮光する。このように、取出し用PBS125は、偏光状態に応じて、次の段のスタックユニット132に1つのミクロパルスが入射するのを遮る。
【0111】
このように、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路中に配置された状態では、一方のミクロパルスがスタックユニット132に入射する。取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路中から除去された状態では、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスの両方がスタックユニット132に入射する。従って、3つのスタックユニット131〜133において、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125を光路中に挿入すれば、上記と同様に、8つのミクロパルスのうちの1つのみが取り出される。そして、取り出すミクロパルスに応じて取出し用λ/2板124を回転させる。
【0112】
このように、スタッキングロッド120では、複屈折素子123によって、パルス光の直交する偏光成分間に時間遅延を与えている。そして、複屈折素子123から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段を光路中に挿脱可能に配置している。そして、パルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段を光路中に挿入した状態で、可変形ミラー40などを用いて、複屈折素子123からのパルス光のパルス形状を調整する。可変形ミラー40などによりパルス形状を調整するために、カメラ47やビームモニタ55などで一方の偏光成分に応じた測定を行う。このような構成のスタッキングロッド120を電子銃100に用いることで、上記と同様に、ミクロパルス毎の調整が可能になる。また、調整の自動化を簡便に行うことができる。
【0113】
図4の構成では、複屈折素子123間に45度偏光にするスタック用λ/2板126を入れていたが、省略することも可能である。例えば、複屈折素子123の結晶ロッドを回転させて結晶軸を45度傾けてもよい。すなわち、スタック用λ/2板126の代わりに、結晶ロッドを回転させることで、各偏光成分のパワーを調整することができる。これにより、構成を大幅に簡略化できる。
【0114】
さらに、取出し用PBS125によって分岐された偏光成分を測定することも可能である。すなわち、取出し用PBS125を通過せずに反射した偏光成分のプロファイル等を測定し、その測定結果に基づいてパルス形状を調整してもよい。例えば、取出し用PBSによってP偏光ミクロパルスが取り出され、スタック用λ/2板126に入射する場合、取出し用PBS125で反射されたS偏光ミクロパルスをカメラなどで測定する。そして、S偏光ミクロパルスの測定結果に基づいてプロファイルを調整する。なお、偏光成分の一方を取り出す手段は、光路中に挿脱可能に設けられた偏光板などであってもよい。偏光板を、回転させることで、S偏光ミクロパルス、又はP偏光ミクロパルスを取り出すことができる。
【0115】
発明の実施の形態2.
本実施の形態では、電子銃100において、図3で示したパルススタッカー20の代わりに、図6に示すパルススタッカー70が用いられている。パルススタッカー以外の構成については、図1と同様であるため、説明を省略する。図6に示すパルススタッカー70では、4つのスタックユニット83a〜83dが用いられている。そして、4つのスタックユニット83a〜83dが並列に配置されている。これにより、1パルスから8つのミクロパルスを生成することができる。なお、パルススタッカー70においても、実施の形態1と同様の内容については説明を省略する。さらに、スタックユニット83a〜83dは、実施の形態1で示したスタックユニット31〜33と同様の構成であるため、一部の構成が省略して図示されている。例えば、アクチュエータ27、固定ミラー対25、及び可動ミラー対26については、実施の形態1と同様の構成であるため、省略されて図示している。本実施の形態では、パルススタッカー70が、パルス光をラグビーボール状のエリプソイド形状にするための構成を有している。
【0116】
スタックユニット83a〜83dの前段には、前段側λ/2板84、前段側λ/2板85a、前段側λ/2板85b、前段側PBS71、前段側PBS71a、及び前段側PBS71bが配置されている。また、スタックユニット83a〜83dの後段には、ミラー81、後段側分岐用ビームスプリッタ74、後段側分岐用ビームスプリッタ76、後段側分岐用ビームスプリッタ78、後段側合成用ビームスプリッタ75、後段側合成用ビームスプリッタ77、後段側合成用ビームスプリッタ79、アパーチャー86b、アパーチャー86c、及びアパーチャー86dが設けられている。
【0117】
スタックユニット83a〜83dの後段では、合成ユニット88a〜88cが設けられている。合成ユニット88aは、後段側分岐用ビームスプリッタ74と、後段側合成用ビームスプリッタ75と、2枚のミラー81から構成される。合成ユニット88bは、後段側分岐用ビームスプリッタ76と、後段側合成用ビームスプリッタ77と、2枚のミラー81から構成される。合成ユニット88cは、後段側分岐用ビームスプリッタ78と、後段側合成用ビームスプリッタ79と、2枚のミラー81から構成される。なお、合成ユニット88a、合成ユニット88b、及び合成ユニット88cは同じ構成を有している。
【0118】
光源部10からのパルス光は、前段側λ/2板84に入射する。前段側λ/2板84は、直線偏光であるパルス光の偏光軸を回転させる。これにより、偏光軸が45°回転する。そして、前段側λ/2板84から出射したパルス光は、前段側PBS71に入射する。1段目の前段側PBS71は、偏光状態に応じて入射したパルス光を分岐する。これにより、S偏光成分の光ビームと、P偏光成分の光ビームとに分岐される。そして、P偏光成分の光ビームは、2段目の前段側λ/2板85aを介して前段側PBS71aに入射し、S偏光成分の光ビームは、2段目の分岐用λ/2板85bを介して前段側PBS71bに入射する。分岐用λ/2板85a、85bは偏光軸を45°回転させている。このように、λ/2板とPBSを交互に2回づつ通過する。これにより、パルス光が4つの光ビームに分岐される。具体的には、2本のP偏光ビームと2本のS偏光ビームが生成される。
【0119】
4本の光ビームは、それぞれのスタックユニット83a〜83dに入射する。具体的には、前段側PBS71aからのP偏光ビームがスタックユニット83aに入射し、前段側PBS71aからのS偏光ビームがスタックユニット83bに入射する。また、前段側PBS71bからのP偏光ビームがスタックユニット83cに入射し、前段側PBS71bからのS偏光ビームがスタックユニット83dに入射する。
【0120】
スタックユニット83a〜83dは、スタックユニット31とほぼ同じ構成を有している。例えば、スタックユニット83aに入射した光ビームは、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスに分岐される。ここで、スタックユニット83a〜83dにおいて与えられる光路長差が異なっている。例えば、スタックユニット83aでは、2.5psecの遅延時間に相当する光路長差が与えられる。これにより、スタックユニット83aから出射するS偏光ミクロパルスがP偏光ミクロパルスよりも2.5psec遅れる。また、スタックユニット83bでは、7.5psecの遅延時間に相当する光路長差が与えられ、スタックユニット83cでは、12.5psecの遅延時間に相当する光路長差が与えられ、スタックユニット83dでは、17.5psecの遅延時間に相当する光路長差が与えられる。
【0121】
そして、4つのスタックユニット83a〜83dからのミクロパルスを順番に合成していく。ここで、8つのミクロパルスは、合成ユニット88a〜88cで順番に合成される。ここでは、3つの合成ユニット88a、3つの合成ユニット88b、合成ユニット88cが直列に配置されている。そして、合成ユニット88aは、スタックユニット83a、83bからのミクロパルスを合成する。これにより、計4つのミクロパルスが合成される。合成ユニット88bは、合成ユニット88aからのミクロパルスと、スタックユニット83cからのミクロパルスとを合成する。これにより、計6つのミクロパルスが合成される。合成ユニット88cは、合成ユニット88bからのミクロパルスと、スタックユニット83dからのミクロパルスとを合成する。これにより、計8つのミクロパルスが合成される。以下に、合成ユニット88a〜88cにおけるミクロパルスの合成について詳細に説明する。
【0122】
スタックユニット83aのミクロパルスは、ミラー81を介して、1段目の合成ユニット88aに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ74に入射する。スタックユニット83bのミクロパルスは、アパーチャー86bを介して、1段目の合成ユニット88aに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ74に入射する。後段側分岐用ビームスプリッタ74は、無偏光ビームスプリッタである。従って、偏光状態に関係なく、入射した光を分割する。これにより、スタックユニット83a、83bからのS偏光ミクロパルスとP偏光ミクロパルスとが分岐される。そして、分岐されたミクロパルスは、ミラー81で反射されて、後段側合成用ビームスプリッタ75に入射する。後段側合成用ビームスプリッタ75は、無偏光ビームスプリッタであり、偏光状態に関係なく、後段側合成用ビームスプリッタ75で分岐された光ビームを合成する。これにより、4つのミクロパルスが合成される。
【0123】
ここで、スタックユニット83bと合成ユニット88aとの間には、アパーチャー86bが配置されている。このアパーチャー86bは、例えば、円形の開口部を有している。従って、アパーチャー86bの開口部の外側に入射した光は、遮光され、後段側分岐用ビームスプリッタ74に入射できない。アパーチャー86bを通過したミクロパルスのみが後段側分岐用ビームスプリッタ74に入射する。これにより、スタックユニット83bからのミクロパルスのビーム径が制限され、スタックユニット83bからのミクロパルスのビーム径よりも小さくなる。これにより、横方向におけるビームのプロファイルが変化する。
【0124】
さらに、スタックユニット83aとスタックユニット83bとの間で光学的な距離を変えている。これにより、4つのミクロパルスに光路長差が与えられる。それぞれのミクロパルスのタイミングがずれる。ここでは、スタックユニット83bからの2つのミクロパルスの間に、スタックユニット83aからの2つのミクロパルスが配置される。そして、合成ユニット88aからは、4つのミクロパルスが同じ光軸に沿って出射する。
【0125】
合成ユニット88aのミクロパルスは、ミラー81を介して、2段目の合成ユニット88bに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ76に入射する。スタックユニット83cのミクロパルスは、アパーチャー86cを介して、2段目の合成ユニット88bに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ76に入射する。
【0126】
2段目の合成ユニット88bは、合成ユニット88aからのミクロパルスとスタックユニット83cからのミクロパルスを、同様に合成する。これにより、4つのミクロパルスと2つのミクロパルスとが合成用ビームスプリッタ77で合成されて、出射する。ここで、スタックユニット83a〜83cの間で光学的な距離を変えている。これにより、6つのミクロパルスに光路長差が与えられる。それぞれのミクロパルスのタイミングがずれる。ここでは、スタックユニット83cからの2つのミクロパルスの間に、合成ユニット88aからの4つのミクロパルスが配置される。そして、合成ユニット88bからは、6つのミクロパルスが同じ光軸に沿って出射する。
【0127】
ここで、スタックユニット83cと合成ユニット88bとの間には、アパーチャー86cが配置されている。このアパーチャー86cは、例えば、円形の開口部を有している。従って、アパーチャー86cの開口の外側に入射した光は、遮光され、後段側分岐用ビームスプリッタ76に入射できない。アパーチャー86cを通過したミクロパルスのみが後段側分岐用ビームスプリッタ76に入射する。これにより、スタックユニット83cからのミクロパルスのビーム径が制限される。さらに、アパーチャー86cの開口部をアパーチャー86bの開口部よりも小さくしている。従って、スタックユニット83cからのミクロパルスのビーム径は、スタックユニット83bからのミクロパルスのビーム径よりも小さくなる。アパーチャー86bは横方向におけるビームのプロファイルを変化させる。
【0128】
合成ユニット88bのミクロパルスは、ミラー81を介して、3段目の合成ユニット88cに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ78に入射する。スタックユニット83dのミクロパルスは、アパーチャー86dを介して、合成ユニット88cに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ78に入射する。
【0129】
3段目の合成ユニット88cは、合成ユニット88bからのミクロパルスとスタックユニット83dからのミクロパルスを、同様に合成する。これにより、6つのミクロパルスと2つのミクロパルスとが合成用ビームスプリッタ79で合成されて、出射する。ここで、スタックユニット83a〜83dの間で光学的な距離を変えている。これにより、8つのミクロパルスに光路長差が与えられる。それぞれのミクロパルスのタイミングがずれる。ここでは、スタックユニット83dからの2つのミクロパルスの間に、合成ユニット88bからの6つのミクロパルスが配置される。そして、合成ユニット88dからは、8つのミクロパルスが同じ光軸に沿って出射する。
【0130】
スタックユニット83dと合成ユニット88cとの間には、アパーチャー86dが配置されている。このアパーチャー86dは、アパーチャー86cよりも小さい円形の開口部を有している。これにより、スタックユニット83dからのミクロパルスのビーム径は、スタックユニット83cからのミクロパルスのビーム径よりも小さくなる。このように、アパーチャー86b〜86dではビームの通過が制限されるため、ミクロパルスのプロファイルが変化する。
【0131】
このようにパルススタッカー70から出射したパルス光は、所定の時間間隔で配置された8つのミクロパルスを有している。そして、アパーチャー86b〜86cによって、ビーム径がミクロパルス毎に変化している。すなわち、図6に示すように、マクロパルスのうち1番目と8番目のミクロパルスは、アパーチャー86dを通過しているため、ビーム径が最小になる。また、2番目と7番目のミクロパルスは、アパーチャー86dを通過しているため、ビーム径が2番目に小さくなる。3番目と6番目のミクロパルスは、アパーチャー86cを通過しているため、ビーム径が2番目に大きくなる。そして、4番目と5番目のミクロパルスは、アパーチャーを通過していないため、ビーム径が最大になる。
【0132】
マクロパルス全体のビーム径は時間とともに大きくなっていき、縦方向におけるマクロパルスの中央近傍で最大になる。すなわち、4番目と5番目のミクロパルスに対応するタイミングで、ビーム径が最大になる。そして、縦方向におけるマクロパルスの中央近傍から時間とともにビーム径が小さくなっていく。縦方向におけるビームプロファイルは時間に応じて変化する。縦方向におけるプロファイルは対称になる。このようなパルススタッカー70を用いることによって、エリプソイド形状のマクロパルスを得ることができる。もちろん、エリプソイド形状以外の整形することも可能である。実施の形態1と同様に、パルス整形を容易に行うことができる。さらに、様々な形状のパルス光を簡素な構成で整形することができる。また、アパーチャー86b〜86dの開口径を可変にすることで、様々な形状に整形することができる。
【0133】
なお、上記の説明では、アパーチャー86b〜86dを用いてプロファイルを変えたが、プロファイルを変えるプロファイル変化手段はこれに限られるものではない。例えば、1対のレンズなどを用いてプロファイルを変えることも可能である。すなわち、レンズペアからなるダウンコリメートレンズを用いることができる。そして、ビーム径を縮小して、プロファイルを変化する。縮小光学系であるレンズペアを用いる場合、光量を減らすことなくビーム径を変更することができる。もちろん、レンズペアを拡大光学系として、ビーム径を拡大してもよい。さらには、レンズペアとアパーチャーの両方を用いてプロファイルを変化させてもよい。さらに、位置に応じて透過率の異なる空間フィルタ等を用いてプロファイルを変化させてもよい。なお、光ビームを平行光束としたまま、ビーム径を変えることが好ましい。また、合成ユニット88aと、スタックユニット83aとの間にアパーチャーなどを配置して、プロファイルを変化させてもよい。
【0134】
このように、本実施の形態では、スタックユニット83a〜83dを並列配置している。このため、合成前の光路中に、プロファイル変化手段を配置することができる。このため、ミクロパルスを個別に調整することが可能になる。このことによって、パルス光を様々な形状に整形することができる。特に、縦方向(光軸と平行な方向)における調整が容易になる。また、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスが交互に配置されるため、光干渉を低減することができる。
【0135】
実施の形態1と同様にλ/2板24の角度を調整することによって、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスの光強度の比を調整することができる。また、遮光部材37を挿入することによって、個々のミクロパルス形状の測定が可能になる。これにより、より精密なパルス形状の整形が可能になる。さらに、遮光部材37を挿入することやλ/2板24を回転させることによって、一方のミクロパルスを除去することができる。これにより、ビーム径を調整する自由度が高くなる。すなわち、全てのミクロパルスを異なるビーム径にすることができる。よって、所望の形状のパルス光を得ることができる。
【0136】
さらに、本実施の形態では、後段側合成用ビームスプリッタ75、77、79からの光を測定する測定部90が設けられている。測定部90は、光を合成する際に漏れてくる光を効率的に利用している。例えば、後段側合成用ビームスプリッタ75には、無偏光ビームスプリッタが設けられている。このため、後段側合成用ビームスプリッタ75光を合成する際にロスが生じ、一部がミラー81に入射しなくなる。換言すると、測定部90には、後段側合成用ビームスプリッタ75からミラー81に入射しない光ビームが入射する。後段側合成用ビームスプリッタ75から出射する2本の光ビームのうちの一方がミラー81に入射し、他方が測定部90に入射する。すなわち、後段側合成用ビームスプリッタ75で合成されてミラー81に向かう光ビームではない光ビームを測定部90で測定する。
【0137】
ここで、後段側合成用ビームスプリッタ75から出射する光ビームのうち測定部90に入射する光ビームを測定光とする。また、後段側合成用ビームスプリッタ75から出射する光ビームのうちミラー81に入射する光ビームを利用光とする。利用光は、上記のようにフォトカソード51に入射して電子の発生に利用される。測定部90は、測定光を利用してパルス形状の測定を行っている。これにより、光を効率的に使用することができる。さらに、ミクロパルスをモニタしながらのパルス整形が可能になる。
【0138】
測定部90は、パルス形状を測定するためのカメラなどを有している。例えば、2次元カメラなどによって、横方向のプロファイルを測定することができる。さらに、測定部90によって、縦方向のプロファイルを測定してもよい。ここで、縦方向のプロファイルを測定するための好適な構成例について図7を用いて説明する。図7は縦方向のプロファイルを測定する測定部90の構成を示す図である。測定部90は、測定用PBS91、ミラー92、非線形光学素子93、分光器94及びプローブ用光変調器95を有している。
【0139】
測定用PBS91には、後段側合成用ビームスプリッタ75からの光ビームが入射している。ここでは2つのミクロパルスを有する光ビームが入射している。例えば、スタックユニット83bで、スタックユニット83bからのミクロパルスを遮光する。具体的には、スタックユニット83a、83bにおいて、遮光部材37を挿入することで、2つのミクロパルスを遮光することができる。この場合、2つのミクロパルスを有するダブルパルスが後段側合成用ビームスプリッタ75から取り出される。測定用PBS91は、ミラー92の方向にダブルパルスを反射する。ここで、パルス形状の測定対象であるダブルパルスを、測定光とする。
【0140】
さらに測定用PBS91には、プローブ用光変調器95でチャープされたチャープパルスが入射している。このチャープパルスが、パルス形状の測定に利用されるプローブ光となる。チャープパルスはダブルパルスの間隔+パルス幅よりも長いパルス幅を有している。すなわち、ダブルパルス全体がチャープパルスと重複する。このチャープパルスをプローブ光として利用する。プローブ光は時間に応じて波長が変化する。チャープパルスはプローブ用光変調器95によって、矩形状にチャープされている。より好ましくは矩形である。チャープを長くして、フラットに近い中央部を使うようにしてもよい。但し、チャープを長くすると、レーザ強度が落ちるという問題があるすなわち、チャープパルスでは、時間とともに波長が変化している。このチャープされたパルス光は、光源部10から取り出すことができる。例えば、再生増幅器14、又はマルチパス増幅器15から出射するパルス光の一部を取り出して、チャープパルスとすることができる。ここでは、例えば、基本波(790nm)をプローブ光として取り出している。そして、測定用PBS91は媒質を透過することによる分散でのダブルパルス側のパルスの伸びを防いでおいて、チャープパルスを通過させる。これにより、ダブルパルスとチャープパルスとが合成される。ここで、チャープパルスとダブルパルスとは同期して、測定用PBS91に入射する。
【0141】
ダブルパルスの偏光方向を、例えば、45°回転させている。ここでは、波長板や偏光子などを用いて、偏光方向を回転させる。測定用PBS91では、ダブルパルスのS偏光成分、又はP偏光成分が取り出される。また、測定用PBS91からは、チャープパルスが取り出される。従って、測定用PBS91で効率よく合成される。測定用PBS91で合成されたパルス光は、ミラー92で反射され、非線形光学素子93に入射する。非線形光学素子93は、例えば、KDPなどの非線形光学結晶である。非線形光学素子93では第2高調波発生(SHG)、差周波発生(DFG)及び和周波発生(SFG)が生じる。ここでは、非線形光学素子93によって、第2高調波やダブルパルスとチャープパルスとの和周波、差周波が発生する。なお、第2高調波は、同じ波長での非線形光学効果による和周波と捉えることもできる。チャープパルスとダブルパルスとは同期しているため、非線形光学素子93に入射するタイミングが一致している。また、チャープパルスは、ダブルパルスよりも十分長いパルス幅を有している。これにより、効率よく和周波、又は差周波が発生する。
例えば、測定光であるダブルパルスが3倍波の場合、基本波のチャープパルスとダブルパルスとの差周波を発生させる。これにより、基本波の2倍波が発生する。測定光が紫外域の3倍波である場合でも、差周波を用いることで、容易に測定することができる。また、測定光であるダブルパルスが基本波の場合、チャープパルスとダブルパルスとの和周波により、基本波の2倍波を発生させてもよい。
【0142】
非線形光学素子93によって発生した和周波又は差周波は、分光器94に入射する。分光器94は、入射した和周波のスペクトルを測定する。例えば、分光器94は、入射側に設けられているスリット等を介して入射したパルスレーザ光をその波長に応じて空間的に分散させる。反射型回折格子を用いた分光器94の場合、さらに入射スリットからの光を分光素子までに導く凹面ミラーと分光素子によって分光された光を2次元アレイカメラまで導く凹面ミラーなどの光学系が設けられている。もちろん、上記以外の構成を有する分光器94を用いてもよい。入射光は分光器94によって入射スリットの方向と垂直な方向に分散される。すなわち、分光器94は、入射スリットのライン状の開口部と垂直な方向に出射光を波長分散する。分光器94により分光された出射光は2次元アレイカメラに入射する。2次元アレイカメラには、受光素子がマトリクス状に配列されている。
【0143】
分光器94で分光されることによって、異なる波長の光が、異なる受光画素に入射する。すなわち、波長に応じて入射する受光画素がずれる。これにより、和周波又は差周波のスペクトル測定が可能になる。例えば、最長波長の光は受光画素列の一端側の受光画素に入射し、最短波長の光は他端側の受光画素に入射する。そして、波長に応じて入射する受光画素が異なる。さらに、チャーピングされたパルスレーザ光を用いているため、受光画素列がパルスレーザ光内の時間に対応する。従って、パルス内において異なるタイミングの光は、異なる受光画素に入射する。例えば、パルス先端の光は、受光画素列の一端側の受光画素に入射し、パルス後端の光は、受光画素列の他端の受光画素に入射する。そして、1パルスのスペクトルを分光器94のカメラの1フレームで検出する。すなわち、分光器94のカメラの1フレームで、パルスレーザ光の1パルスのスペクトルが取得される。これにより、和周波、又は差周波のスペクトル分布を高速に測定することができる。
【0144】
このように、分光器94では、ダブルパルスとチャープパルスの和周波又は差周波のスペクトルが測定される。さらに、チャープパルスを用いているため、波長が時間に対応する。ダブルパルスに含まれるミクロパルスの時間間隔は、スペクトルのピーク波長間隔に相当する。スペクトルには、縦方向におけるダブルパルスの形状の情報が含まれている。これにより、ミクロパルスの間隔を正確に測定することができる。具体的には、パルス間隔をτとすると、ピーク波長の間隔はτに基づく値となる。これにより、パルス間隔τを算出することができる。
【0145】
このように、非線形光学素子93、及び分光器94を用いることで、縦方向のパルス形状を正確に測定することができる。なお、チャープパルスの代わりに2色のダブルパルスをプローブ光として用いてもよい。この場合、プローブ用光変調器95によって、基本波のパルスレーザ光を変調させる。そして、波長の異なるダブルパルスを発生させる。例えば、1つ目のパルスを短波長にして、2つめのパルスを長波長にする。もちろん、この反対でもよい。このように、時間に応じて異なる波長となるパルス光をプローブ光とする。
そして、プローブ用の2色ダブルパルスと測定用のダブルパルスを同期させて、非線形光学素子93に入射させる。すなわち、測定光であるダブルパルスとプローブ光である2色ダブルパルスを重ね合わせる。これにより、非線形光学素子93で和周波や差周波が発生する。ここで、測定光であるダブルパルスは、2色ダブルパルスと重複している。波長の異なる2色ダブルパルスとの和周波、又は差周波を分光器94で測定する。
なお、縦方向におけるパルス形状の測定については、例えば、ファーストライト(FASTLITE)社製PHAZZLER(登録商標)を利用することができる。これにより、パルス形状を簡便に測定することができる。例えば、基本波を測定光とする場合、測定光であるダブルパルスをPHAZZLER(登録商標)に入射させる。これにより、プローブ光である2色ダブルパルスと、測定光との和周波を発生させることができる。そして、PHAZZLER(登録商標)の分光器でスペクトルを測定することで、縦方向のパルス形状を測定することができる。このように、AO変調を利用したプローブ用光変調器95を用いることで、プローブ光と測定光との和周波又は差周波を容易に発生させることができる。
【0146】
また、測定光に含まれるミクロパルスの数は、2つに限られるものではない。例えば、測定光が、4つ又は8つのミクロパルスを含んでいてもよい。このような場合、パルススタッカー70の後段に、PBSを挿脱可能に配置する。8つのミクロパルスを取り出すときは、パルススタッカー70の出射側のλ/2板で、45°偏光にする。そして、PBSでS偏光成分かP偏光成分を取り出す。これにより、8つのミクロパルスを取り出すことができる。また、プローブ光としても、8色のミクロパルスを用意する。すなわち、測定光に含まれるミクロパルスと同数のミクロパルスをプローブ光として用意する。なお、プローブ光のミクロパルスは矩形パルスとしてもよい。あるいは、測定光の8つのミクロパルス列をカバーするパルス幅のチャープパルスをプローブ光として用意してもよい。4つのミクロパルスを取り出すときは、例えば、各段のスタックユニットで、一方の偏光成分をマスクする。これにより、例えば、P偏光成分のみが取り出される。4つのミクロパルスを測定する場合、1つおきにミクロパルスを取り出すことができる。例えば、P偏光ミクロパルスのみを取り出すことが可能になる。このようにすることで、各ミクロパルス間隔と、各ミクロパルスの縦方向の形状を同時に測定することができる。もちろん、上記の測定方法は、実施の形態1で示したパルススタッカー20やスタッキングロッド120に対しても利用可能である。
【0147】
さらに、分光器94の測定結果に基づいて、ミクロパルス毎に縦方向のパルス形状を測定することもできる。このための信号処理について図8〜図11を用いて説明する。なお、以下の信号処理は、例えば、制御装置48で実施することができる。
【0148】
まず、図8に示すデータをフーリエ変換する。なお、図8に示すデータは、分光器94で測定されたスペクトルの一例である。フーリエ変換することで、図9に示す時間領域のデータが得られる。チャープパルスとダブルパルスに基づいた和周波であるため、図9に示すように、例えば、ダブルパルスを例に取ると、2つのサイドバンドが発生している。2つのサイドバンドは±τ近傍に現れている。ここで、1つのサイドバンドに着目して、サイドバンドをウィンドウで取り出す。ここでは、時間τ近傍にサイドバンドが表れている。このサイドバンドをウィンドウで切り出す。これにより、図10に示すデータが得られる。ここで、図10で示すデータに対してフーリエ逆変換を行う。これにより、図11に示すように、周波数領域のデータが得られる。
【0149】
ここで、図11に示すデータは、以下の式で表される。
φ1(ω)+ωτ
【0150】
なお、φ1(ω)はサイドバンドとして取り出した方のミクロパルスの形状を示す関数であり、τは上記の通りパルス間隔である。ここで、図11に示すデータからωτの項を削除して、データをつなぎ合わせると、図12に示すグラフとなる。なお、図12に示すφ1(t)には、周波数強度分布(振幅スペクトル)と周波数位相分布(位相スペクトル)の情報が含まれている。図12に示すデータをフーリエ変換すると、図13に示す時間領域のデータが得られる。ここで、時間領域の強度分布が縦方向のパルス形状になる。
【0151】
このような測定を行うことで、ミクロパルス毎に縦方向のパルス形状を正確に測定することができる。そして、この測定結果に基づいて、パルスを整形する。例えば、測定結果に基づいて、制御装置48が、光変調器13を制御する。これにより、より正確なパルス整形を行うことができる。また、後段側合成用ビームスプリッタ75から漏れてくる光は、実際にスタックされるミクロパルスと同じ形状を有している。従って、精度の高い測定が可能になる。また、同様に、後段側合成用ビームスプリッタ77、79から出射する光を検出してもよい。さらには、2以上のミクロパルスを同時に測定してもよい。この場合でも、それぞれのサイドバンドに着目することで、ミクロパルスの形状を測定することができる。
【0152】
さらに、合成用PBS29a〜29dから漏れてくるパルス光を測定するようにしてもよい。スタックユニット83aに入射したパルス光に存在する無偏光成分は、合成用PBS29aから漏れてくる。合成用PBS29aからミラー81に入射せずに、漏れてくる光を検出することができる。これにより、光を有効的に利用することができる。さらに、実質的に同じパルス形状のパルスを測定することができるため、より正確な測定が可能になる。もちろん、漏れてくる光を検出する測定部90で横方向のパルス形状を測定してもよい。この場合、測定部90にカメラやビームプロファイラーを設ける。ここでは、無偏光成分が測定部90に入射する測定光になる。そして、偏光成分がミラー81に入射する利用光となる。
【0153】
上記のパルススタッカー70を、実施の形態1と同様に、電子銃以外の用途に用いてもよい。もちろん、実施の形態1と実施の形態2とを適宜組み合わせてもよい。例えば、パルススタッカー70においても遮光部材37やスタック用λ/2板24を用いて、ミクロパルスを遮光することができる。各ミクロパルスの最適化が可能になる。さらには、実施の形態2に示すパルススタッカー70において、入射側λ/4板21、入射側λ/2板22、及び入射側PBS23を用いてもよい。同様に、実施の形態2に示すパルススタッカー70において、出射側λ/2板35を用いてもよい。なお、実施の形態1、2において、各ミクロパルスは完全にずれていなくてもよい。すなわち、ミクロパルスの一部が時間的に重複していてもよい。
【0154】
上記のように、パルススタッカーにおいて、分岐用PBS28で分岐された後の光ビームの一方を遮光部材37によって、遮光している。このため、各ミクロパルスをより正確に測定することができ、パルス形状の微調整が可能になる。さらに、実施の形態2に係るパルススタッカー70において、アパーチャー86b〜86dなどを用いて、ビームのプロファイルを調整している。これにより、ミクロパルス毎の整形が可能になる。さらに、カメラ47や測定部90でパルス形状を測定している。また、ビームモニター55で光ビームに応じた測定を行っている。そして、これらの測定結果に基づいて、パルス形状を整形している。これにより、より精度よく調整することが可能になる。よって、精度よくパルス形状を整形することができ、所望のバンチ形状に近づけることができる。
時間的に重複していてもよい。
【0155】
また、実施の形態1、2に示す構成により、深紫外、真空紫外域〜157nmまでのパルス光に対しても整形が可能になる。このように、本発明は、波長が157nm〜400nmのパルス光の整形に好適である。さらに、広波長帯域で使用可能なため、超短パルスを整形することが可能になる。
【0156】
実施例
上記のパルス整形装置で整形したパルス形状の測定結果を図14〜図22に示す。図14〜図22では、光変調器13での2次分散を変えたときの、電子ビームのエネルギースペクトルを示す図である。ここでは、上記のように、ベンディングマグネットによって電子ビームのバンチ内電子ビームを空間的に分散させた。そして、ビームモニタ55としてビームプロファイラーを用い、分散されたバンチ内電子ビームの横方向空間分布を測定した。上記のように、電子のエネルギーによってベンディングマグネットでの曲率が変化する。また、RF電子銃では、時間に応じて加速エネルギーが異なる。従って、バンチ内電子ビームのエネルギー分布を測定することによって、縦方向のパルス形状を計測した。
【0157】
図14〜図22は、分散部での電子ビームの空間分布を示すグレースケールのイメージデータである。なお、分散部とは、ベンディングマグネットで電子ビームを曲げた後の箇所である。図14〜図22では、電子がエネルギーに応じて横方向に分散されている。ここで、図14〜図22において、左側が高エネルギー側であり、パルス光の先端側になる。なお、図14〜図22では、実際の測定で取得されたカラーイメージデータをグレースケールで表示している。また、図14〜図22の下部には、点線箇所におけるプロファイルのデータが示されている。
さらに、2次分散の0点出しを行うため、光変調器13の2次分散の設定値を負の値にした。ここでは、光変調器13の設定値を−13066fs2とした。そして、この状態で、パルスコンプレッサー16でのコンプレッサー長を変えて、フーリエ限界パルスを得た。また、高次の分散を補償するため、光変調器13の3次分散の設定値を−7475fs3とし、4次分散の設定値を−2680fs4とした。この状態で、光変調器13の2次分散のみを変化させると、リニアにチャープさせることができる。
【0158】
図14は、光変調器13であるDAZZLER(登録商標)の2次分散の設定値を8500fs2としたときの、分散部での電子ビームの空間分布を示す図である。同様に、図15は、2次分散の設定値を10500fs2、図16は、2次分散の設定値を12500fs2、図17は2次分散の設定値を14500fs2、図18は2次分散の設定値を15500fs2、図19は2次分散の設定値を16500fs2、図20は2次分散の設定値を18500fs2、図21は2次分散の設定値を20500fs2、図22は、2次分散の設定値を22500fs2としたときの、分散部での空間分布を示す図である。
なお、光変調器13自体の2次分散が13066fs2である。このため、フーリエ限界の時の2次分散を0とすると、光変調器13の2次分散の設定値に、13066fs2を加えた値が、光変調器13において与えられる2次分散の絶対値となる。従って、光変調器13による2次分散が、図14では21566fs2になり、図15では23566fs2になり、図16では25566fs2になり、図17では27566fs2になり、図18では28566fs2になり、図19では29566fs2になり、図20では31566fs2になり、図21では33566fs2になり、図33では35566fs2になっている。
【0159】
2次分散の設定値を変えることで、縦方向のパルス形状を最適化することができる。例えば、光変調器13を制御して、2次分散の設定値を15500fs2以上にすると、各ミクロパルスが繋がり、マクロパルスとして一体となる。また、2次分散の設定値が12500fs2までは、各ミクロパルスが繋がっておらず、22500fs2になると、ミクロパルス同士がオーバラップして数珠玉状になる。このように、光変調器13の2次分散の設定値を変更することで、スタッキング状態を改善することができる。
【0160】
次に、横方向のパルス形状を整形した実施例の測定結果を図23〜図28に示す。図23〜図29は、パルス光の空間プロファイルを測定した画像である。ここでは、カメラ47の代わりにレーザプロファイラーを用いて、空間プロファイルを測定した。すなわち、図23〜図29は、レーザプロファイラーでの取得した画像データを示している。図23〜図29では、下側及び左側に、サークルの中心におけるプロファイルデータが示されている。なお、図23〜図29において、中心部分のサークルは直径0.8mmの円を示している。また、図23〜図29は、実際の測定で取得されたカラーイメージデータをグレースケールで表示している。以下に、調整方法をその手順に従って説明する。
(ステップ0)
まず、図3に示すパルススタッカー20において、各段でのディレイ時間を調整した。さらに、上記のように、光変調器13で最適な2次分散を設定して、バンチ内電子のエネルギーがむらなくつながっていることを確認した。ここでは、光変調器13の2次分散の設定値を14500fs2にした時に、マクロパルス内のミクロパルスが滑らかにつながっていることを、電子ビームのエネルギースペクトルから判断した。そして、この値に設定して、レーザ空間プロファイル整形を開始した。なお、このステップ0は、以下の一連のステップの終了後(レーザ空間プロファイルの最適化後)にもう一度行う。
【0161】
(ステップ1)
整形開始初期条件として、パルススタッカー20からの8個のミクロパルスが可変形ミラー40の中心に入射し、フォトカソード51と等距離にあるプロファイラ上でほぼ同じ位置にあるように粗調整した。これらは、パルススタッカー20の前のウェッジ56の上下左右の角度制御によって、調整することができる。また、実際には、ウェッジ56の代わりに2枚のパラレルウィンドウの上下左右の角度を制御して、調整した。この段階でのパルス光の空間プロファイルは、図23に示す状態になった。
【0162】
(ステップ2)
ミクロパルス8個のパルス強度がパルススタッカー20直後(出射側λ/2板35の前)のパワーメータで同じになるように、マスクしたスタックユニットのスタック用λ/2板24の角度を回転制御した。このとき、マスキングは、(NNS,NNP)、(NSN,NPN)、(SNN,PNN)の双対になるペアで同じミクロパルス強度になるように微調整した。ここで、NとSとPは各段でのマスク状態を示している。すなわち、Nとはマスクしない状態を示し、PとはS偏光成分をマスクしてP偏光成分を透過させる状態を示し、SとはP偏光成分をマスクしてP偏光成分を透過させる状態を示している。上記のように、N、S、Pを3つ並べて書くことにより、3段のパルススタッカー20のマスク状態を特定することができる。
【0163】
例えば、NNSとは、1段目と2段目のスタックユニット31,32でマスクなしで、3段目のスタックユニット33でP偏光ミクロパルスをマスクしている状態(S偏光ミクロパルスの通過を許可している状態)を示している。また、NNPとは、1段目と2段目のスタックユニット31,32でマスクなしで、3段目のスタックユニット33でS偏光ミクロパルスをマスクしている状態(P偏光ミクロパルスの通過を許可している状態)を示している。なお、その他のマスク状態についても同様である。
【0164】
従って、(NNS,NNP)の双対ペアのミクロパルス強度を等しくする場合、1段目と2段目のスタックユニット31、32をマスクしない状態で、3段目のスタックユニット33で一方をマスクする。そして、出射側λ/2板35の前に、パワーメータを配置して、それぞれのミクロパルスのパワーを測定する。すなわち、NNSのマスク状態で、S偏光成分のパワーを測定し、NNPのマスク状態で、P偏光成分のパワーを測定する。そして、それぞれのパワーを比べ、S偏光成分とP偏光成分とが同じパワーとなるように、スタックユニット33のスタック用λ/2板24を回転させる。これにより、(NNS,NNP)の双対のミクロパルス強度を等しくすることができる。
【0165】
同様に、1段目と2段目のスタックユニット31、32についても、順番にマスクをして、各段でのS偏光成分とP偏光成分とが同じ強度になるように、スタック用λ/2板24を回転させる。2段目のスタックユニット32のみマスクすると、(NSN,NPN)の双対でミクロパルス強度が等しくなる。また、1段目のスタックユニット31のみマスクすると、(SNN,PNN)の双対でミクロパルス強度が等しくなる。このようにして、各段について、スタック用λ/2板25の最適な回転角度を求めた。
【0166】
そして、レーザトランスポート光学系での反射率、透過率の偏光依存性を補償するように、ミクロパルス8個のパルス強度がカメラ47等上で同じになるように、出射側λ/2板35を回転制御した。
【0167】
図24〜図27にステップ2における測定データを示す。なお、図24〜図27は、下記の一連のステップの終了後、再度行った精密調整時のものである。図24はマスク状態がSNNの場合の測定データを示し、図25は、マスク状態がPNNの場合の測定データを示している。図24と図25は、双対のミクロパルス間で、アライメントがずれている例を示している。図25では、ミクロパルスの入射位置が、サークルの中心からずれている。
【0168】
図26は、マスク状態がNSNの場合の測定データを示し、マスク状態がNPNの場合の測定データを示している。図26と図27とでは、双対のミクロパルス間の強度が異なっている。マスク状態がNPNのミクロパルスの強度が、NSNのミクロパルスよりも低くなっている。このような場合、スタック用λ/2板の回転角度を調整して、双対のミクロパルスの強度を同じにする。そして、この後、双対のマスキング間で、プロファイルがカメラ47上で同じく重なるように微調整する。
【0169】
(ステップ3)
可変形ミラー40の59個のチャネルで、全て同じ電圧のセットをかけた。そして、オール0〜255Vまでかけていき、8個のミクロパルスが目的のビーム径程度になる印加電圧を求めた。例えば、カソード表面上で0.8mmのスポット径を目指す場合、印加電圧をオール115Vとすると、最も適しているという結果になった。ステップ3の段階での測定データを図28に示す。そして、この状態から、中心の直径0.8mmのサークル内に収まる様に、円筒形型パルス光強度を遺伝的アルゴリズムで探す。ここから、探索の出発点となる。
【0170】
(ステップ4)
可変形ミラー40の制御アルゴリズムである遺伝的アルゴリズムの初期遺伝子を、同じ電圧セットで用意した。ここでは、上記のようにオール115V近辺での遺伝子が優秀であることが予想されることから、生存率を上げるために個体数を増やした。また、突然変異確率を1%とした。遺伝的アルゴリズムで実際の3万ステップで試行すると、281回の突然変異を起こした。
初期遺伝子(合計100個)
オール85〜99 1セットづつ 1×15=15
オール100〜104 2セットづつ 2×5=10
オール105〜125 3セットづつ 3×21=63
オール126〜135 1セットづつ 1×10=10
オール85〜99 2セット 2×1=2
因みに最後のオール115Vのセット2本は、何回か最適化アルゴリズムを試行するうちに優れたセットであると見做された遺伝子(DNA)と置き換えるようにする。それにより、優秀な遺伝子の生存率を上げる。
遺伝的アルゴリズムは、ある評価関数を最大化するように制御する。その評価関数の要素は、例えば、H. Tomizawa, T. Asaka, H. Dewa, H. Hanaki, T. Kobayashi, A. Mizuno, S. Suzuki, T. Taniuchi, and K. Yanagida, <Status of SPring−8 photocathode RF Gun for Future light Sourcesc, Proceedings of the 27th International Free electron laser Conference, Stanford, CA, 21−26 August 2005, (2005) pp. 138−141の表1の9個のパラメータに各係数をかけたものの線形結合で作った。そして、各係数は、表の上から50、200、170、200、300、0、200、0、10に設定した。
【0171】
(ステップ5)
全体として3万ステップになるように、交互にマスクしながら、可変形ミラー40を遺伝的アルゴリズムで整形した。ここでは、以下のような順番でマスキングを行った。
全体(NNN)−SSS−全体−SSP−全体−SPS−全体−PSS−全体−SPP−全体−PSP−全体−PPS−全体−PPP−全体
各段階でのマクロパルス全体の調整は、2000ステップづつ行った。従って、1サイクルの中で全体の調整を9回行っているため、全体調整を18000ステップ行った。各ミクロパルスの調整は、それぞれ1500ステップづつ全8回行った。従って、1サイクルの中で各ミクロパルスの整形を12000ステップを行った。そして、1サイクルの中で、合わせて30000ステップ行った。このステップ5での、空間プロファイルが図29に示すようになった。
【0172】
このように、マクロパルス全体の測定とミクロパルス毎の測定とを交互に行い、その測定結果に応じてパルス形状を随時調整した。すなわち、複数ステップの全体測定が終了した後、複数ステップのミクロパルス測定を行った。そして、全体測定とミクロパルス測定を交互に行っていった。また、ミクロパルス測定ではマスクするミクロパルスを順番に変えていき、全てのミクロパルスの測定を順番に行っていった。そして、遺伝的アルゴリズムを用いて、可変形ミラー40を調整して、パルス形状を最適化していった。
【0173】
この後、ステップ2の精密調整を行なった。そして、各ミクロパルス間のミスアライメントと、パルスエネルギーの不均一性をなくした。この様子は、図24〜図27に示した。プロファイラー上での各ミクロパルスの位置ずれが、10μm以内になり、8つのミクロパルスのパルスエネルギーの平均値からの差は±10%以内に収まった。
さらに、ステップ0を行い、電子ビームのエネルギースペクトルとエミッタンスが最小値になるように、光変調器13の2次分散の設定値を設定した。ここでは、光変調器13の2次分散の値から判断して、光変調器13の2次分散の設定値を18500fs2に変更した。この設定値を設定した後、ステップ4のオール115Vのセット2本を、先の30000ステップでの最適化アルゴリズムの試行で選ばれた最適の遺伝子(DNA)2本と置き換えた。そして、30000ステップの最適化を行った。
【0174】
なお、遺伝的アルゴリズムについて、その初期遺伝子集団を用意するとき、最初のステップにおいて2乗間隔ですべてが同じ電極印加電圧になるセットで作ることが好ましい場合がある。このようにすることで、探索空間を最大化することができる。これは、可変形ミラー30が静電アクチュエータ方式の場合、可変形ミラー40の変形変位量が各電極に印加する電圧の2乗に比例するためである。従って、この方法をごく初期のステップで使用している。なお、可変形ミラー30がピエゾアクチュエータ方式の場合はこの方法を利用しなくてもよい。
【符号の説明】
【0175】
10 光源部、11 レーザ発振器、12 パルスストレッチャー、13 光変調器、
14 再生増幅器、15 マルチパス増幅器、16 パルスコンプレッサー、
17 波長変換器、
20 パルススタッカー、21 入射側λ/4板、22 入射側λ/2板、
23 入射側PBS、24 スタック用λ/2板、25 固定ミラー対、
26 可動ミラー対、27 アクチュエータ、28 分岐用PBS、
28a〜28d 分岐用PBS、29 合成用PBS、29a〜29d 合成用PBS、
30 ミラー、31 スタックユニット、32 スタックユニット、
33 スタックユニット、34 ミラー、35 出射側λ/2板、37 遮光部材、
40 可変形ミラー、41 ミラー、42 レンズ、43 レンズ、44 レンズ、
45 ミラー、46 ビームスプリッタ、47 カメラ、48 制御装置、
51 フォトカソード、52 共振器、53 マイクロ波源、55 ビームモニタ
70 パルススタッカー
71 前段側PBS、71a 前段側PBS、71b 前段側PBS、
74 後段側分岐用ビームスプリッタ、75 後段側合成用ビームスプリッタ、
76 後段側分岐用ビームスプリッタ、77 後段側合成用ビームスプリッタ、
78 後段側分岐用ビームスプリッタ、79 後段側合成用ビームスプリッタ、
81 ミラー、84 前段側λ/2板、85a 前段側λ/2板、
85b 前段側λ/2板、86b〜86d アパーチャー
90 測定部、91 測定用PBS、92 ミラー、93 非線形光学素子、
94 分光器、95 プローブ用光変調器、
120 スタッキングロッド、121 ウェッジ、122 ウェッジ、
123 複屈折素子、124 取出し用λ/2波長板、125 取出し用PBS、
126 スタック用λ/2板、131 スタックユニット、132 スタックユニット、133 スタックユニット、
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス光を整形するパルス整形装置、及びパルス整形方法、並びに、整形されたパルス光を用いた電子銃に関する。
【背景技術】
【0002】
X線自由電子レーザ(XFEL)、逆コンプトン散乱によるフェムト秒X線パルス光源、フェムト秒時間分解電子顕微鏡、超短パルス電子線描画装置、エネルギー回収型ライナック(ERL)などの電子源として、電子銃が用いられている。通常、高輝度電子銃、又は超短パルス電子銃がこれらの用途に用いられる。
【0003】
電子銃を電子放出の観点から分類すると、熱カソード電子銃、フォトカソード電子銃、及び電界放出型電子銃の3種類に分かれる。熱カソード電子銃は熱エネルギーにより電子放出を行う。フォトカソード電子銃は光電効果によって電子放出を行う。電界放出型電子銃は、高電界(1GV/m以上)をカソードに印加することで電子を放出する。また、電子銃を電子加速方式から分類すると、RF電子銃と、DC電子銃の2つに分かれる。RF電子銃は、共振器空胴の助けを借りてマイクロ波(RF)により電子を加速する。DC電子銃は、対向する電極間に電圧を印加してDC的(インパルス的)に電子を加速する。ビーム電流が大きい場合、フォトカソードとRF加速方式の組み合わせ、並びに、熱カソードとDC加速方式の組み合わせが一般的である。これは、両者の性質を合わせられるので相性がよいためである。また、電子ビームの重要な特性として、エミッタンスや輝度等が挙げられる。従って、低エミッタンスで高輝度な高品質電子ビームを安定して発生させることができる電子銃の開発が望まれている。
【0004】
フォトカソードRF電子銃は、熱カソードDC電子銃、及び電界放出型電子銃に比べて、(1)低エミッタンス化が可能であること、(2)光源の強度を制御することで容易に電子ビームの輝度を調整することができるため、制御性に優れていること、などの利点を有している。現在、世界最高輝度のパルス電子ビームは、フォトカソード電子銃により得られている。フォトカソード電子銃では、フォトカソードにレーザ光を照射して、電子を発生させている。
【0005】
フォトカソード電子銃を用いる場合、レーザ光のパルスを整形することによって、電子バンチを所望の形状にすることができる。すなわち、パルス形状を整形することで、電子ビームの高品質化を図ることができる。このため、レーザ光のパルスを所望の形状に整形することが望まれている。例えば、パルススタッカーを用いてレーザ光を円筒形状に整形する技術が開示されている(非特許文献1)。ここで、パルススタッカーは、波長板と偏光ビームスプリッタで構成されている(非特許文献2)。そして、偏光ビームスプリッタキューブにより、各偏光成分(S偏光とP偏光)に分岐する。そして、分岐されたパルス光に光路長差を与えて、合成用の偏光ビームスプリッタで合成する。上記の文献では、3段分のスタックを用いているため、8つの分岐パルス光が重ね合わされている。このようなパルススタッカーでは、例えば、縦方向(光軸と平行方向)に関するパルス整形が可能になる。すなわち、分岐されたパルスレーザ光に与える光路長を調整することによって、縦方向に関してパルスを整形することができる。さらに、特許文献1に示すようなパルスレーザ光を用いた加工方法において、加工形状を制御するため、パルス光を所望の形状に整形することが望まれている。
【0006】
パルスを整形する場合、実際に測定されたパルス形状に基づいて調整が行われる。レーザ光のパルス形状を測定する場合には、横方向(光軸と垂直な方向)のパルス形状は、例えば、ビームプロファイラーやCCDカメラなどで測定することができる。また、縦方向のパルス形状は、例えば、ストリークカメラなどで測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−205179号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】冨澤宏光「加速器の要求に堪えるレーザ光源を目指して〜フォトカソードRF電子銃用レーザ光源開発〜」加速器Vol3,No3,2006(251−262)
【非特許文献2】株式会社ルミネックスホームページ[平成19年6月19日検索]、インターネット〈http://www.luminex.co.jp/Newcatalog/Pulse_Stacker_Kit/Pulse%20Stacker%20Kit.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のパルス整形方法では、3次元的に整形することが困難であった。
すなわち、ビームプロファイラやCCDカメラでは、パルス形状を時間的に積分して測定するため、縦方向の情報を得ることができない。また、ストリークカメラでは、横方向の情報を得ることができない。よって、パルス光を所望の形状に整形することが困難であるという問題点がある。
【0010】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであって、本発明の目的は、簡便にパルス光を整形することができるパルス整形装置、パルス整形方法、及びそれを用いた電子銃を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様にかかるパルス整形装置は、パルス光を2本の光ビームに分岐する光分岐手段と、前記光分岐手段によって分岐された2本の光ビームを合成する光合成手段と、前記光分岐手段から前記光合成手段に入射する2本の光ビームのパルス光に光路長差を与えて、タイミングをずらす遅延手段と、前記光合成手段からのパルス光のパルス形状を調整する調整手段と、前記第1の光分岐手段と前記光合成手段との間において、前記光合成手段に入射する一方の光ビームを遮光可能な遮光部材と、前記調整手段により前記パルス形状を調整するために、前記遮光部材によって前記一方の光ビームを遮光した状態で前記他方の光ビームに応じた測定を行う測定器と、を備えるパルスものである。これにより、精度よく測定することができるため、簡素な構成でパルス光を整形することができる。
【0012】
本発明の第2の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、回転可能に設けられたλ/2板が前記光分岐手段の前に配置され、前記光合成手段と前記光分岐手段とが偏光状態に応じて光を分岐する偏光ビームスプリッタであるものである。これにより、分岐される光ビームの強度を変えることができる。
【0013】
本発明の第3の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、前記測定器が前記他方の光ビームのパルス形状を測定し、前記測定器で測定された前記他方の光ビームのパルス形状に基づいて、前記調整手段が前記パルス形状を調整するものである。これにより、パルス形状を正確に整形することができる。
【0014】
本発明の第4の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、前記遅延手段によって与えられる光路長差が可変であることを特徴とするものである。これにより、縦方向のパルス形状を簡便に調整することができる。
【0015】
本発明の第5の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、前記光合成手段が前記一方の光ビームと前記他方の光ビームを合成することによって、前記光合成手段から測定光と利用光とが分岐されて出射し、前記測定光のパルス形状の測定結果に基づいて、前記利用光のパルス形状を調整するものである。これにより、実際に利用される光の効率が低減するのを防ぐことができる。
【0016】
本発明の第6の態様にかかるパルス整形装置は、パルス光の直交する偏光成分間に時間遅延を与える複屈折素子と、前記複屈折素子からのパルス光のパルス形状を調整する調整手段と、前記複屈折素子から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段と、前記調整手段により前記パルス形状を調整するために、前記手段によって取り出された前記一方の偏光成分に応じた測定を行う測定器と、を備えるものである。これにより、より精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。
【0017】
本発明の第7の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、パルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段が、前記パルス光の光路中に挿脱可能に設けられているものである。これにより、簡便にマスクすることができる。
【0018】
本発明の第8の態様にかかるパルス整形装置は、タイミングがずれた2つのパルス光を合成して、第1の光ビームを出射する第1のスタックユニットと、タイミングがずれた2つのパルス光を合成して、第2の光ビームを出射する第2のスタックユニットと、第1及び第2のスタックユニットの後段において、前記第1及び第2の光ビームを合成する後段側光合成手段と、前記後段側光合成手段と前記スタックユニットとの間に配置され、前記第1の光ビームのプロファイルを変化させるプロファイル変化手段と、を備えるものである。これにより、簡素な構成でパルス光を整形することができる。
【0019】
本発明の第9の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、前記第1及び第2のスタックユニットのそれぞれが、主パルス光を2本の光ビームに分岐して前記2つのパルス光を生成する光分岐手段と、前記光分岐手段によって分岐された2本の光ビームを合成する光合成手段と、前記光分岐手段から前記光合成手段に入射する2本の光ビームのパルス光に光路長差を与えて、タイミングをずらす遅延手段と、前記第1の光分岐手段と前記光合成手段との間において、前記光合成手段に入射する一方の光ビームを遮光可能な遮光部材と、を備え、前記遮光部材によって前記一方の光ビームを遮光した状態で前記他方の光ビームに応じた測定を行う測定器での測定結果に基づいて、パルス形状を調整するものである。これにより、精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。
【0020】
本発明の第10の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、前記後段側光合成手段が前記第1及び第2の光ビームを合成することによって、前記後段側光合成手段から測定光と利用光とが分岐されて出射し、前記測定光のパルス形状の測定結果に基づいて、前記利用光のパルス形状を調整するものである。実際に利用される光の効率が低減するのを防ぐことができる。
【0021】
本発明の第11の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、時間に応じて波長が変化するプローブ光を発生する手段と、前記測定光と前記プローブ光とが同期して入射する非線形光学素子と、前記非線形光学素子から出射する光のスペクトルを測定する分光器と、をさらに備え、前記分光器での測定結果に基づいて、前記パルス光の進行方向におけるパルス形状を調整するものである。これにより、縦方向のパルス形状を正確に測定することができるため、正確な整形が可能になる。
【0022】
本発明の第12の態様にかかるパルス整形装置は、上記のパルス整形装置であって、記後段側光合成手段が無偏光ビームスプリッタであるものである。
【0023】
本発明の第13の態様にかかる電子銃は、上記のパルス整形装置と、前記パルス整形装置で整形されたパルス光が入射するフォトカソードと、を備えるものである。これにより、高品質の電子ビームを得ることができる。
【0024】
本発明の第14の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記フォトカソードで発生した電子ビームのバンチ形状を測定し、前記バンチ形状の測定結果に基づいて、前記パルス形状を調整するものである。これにより、好適なバンチ形状の電子ビームを得ることができる。
【0025】
本発明の第15の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記電子ビームのバンチ内電子をエネルギーに応じて空間的に分散させた後、バンチ内電子の空間分布を測定し、前記空間分布の測定結果に基づいて、前記パルス光の進行方向におけるパルス形状を調整するものである。これにより、縦方向のバンチ形状を正確に測定することができるため、より正確に整形することができる。
【0026】
本発明の第16の態様にかかるパルス整形方法は、パルス光を2本の光ビームに分岐する光分岐手段と、前記光分岐手段によって分岐された2本の光ビームを合成する光合成手段と、前記光分岐手段から前記光合成手段に入射する2本の光ビームのパルス光に光路長差を与えて、タイミングをずらす遅延手段と、を備えたパルス整形装置を用いたパルス整形方法であって、前記光分岐手段で分岐された2本の光ビームのうちの一方の光ビームを遮光するステップと、前記一方の光ビームを遮光した状態で、他方の光ビームに応じた測定を行うステップと、前記測定を行うステップでの測定結果に基づいて、パルス形状を調整するステップと、を備えるものである。これにより、精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。
【0027】
本発明の第17の態様にかかるパルス整形方法は、上記のパルス整形方法であって、前記光分岐手段で分岐された2本の光ビームのうちの他方の光ビームを遮光するステップと、前記他方の光ビームを遮光した状態で、一方の光ビームに応じた測定を行うステップと、をさらに備え、前記パルス形状を調整するステップでは、前記一方の光ビームに応じた測定を行うステップでの測定結果に基づいて、パルス形状を調整するものである。これにより、より精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。また、空間整形技術と、時間整形技術が、お互いに影響しないため、独立に制御することができる。
【0028】
本発明の第17の態様にかかるパルス整形方法は、パルス光の直交する偏光成分間に対して、時間遅延を与える複屈折素子と、前記複屈折素子からのパルス光のパルス形状を調整する調整手段と、を用いたパルス整形方法であって、前記複屈折素子から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出すステップと、前記調整手段により前記パルス形状を調整するために、前記取り出された一方の偏光成分に応じた測定を行うステップと、前記測定を行うステップでの測定結果に基づいて、パルス形状を調整するステップと、を備えるものである。これにより、より精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。
【0029】
本発明の第19の態様にかかるパルス整形方法は、タイミングがずれた2つのパルス光を合成して、第1の光ビームを出射するステップと、タイミングがずれた2つのパルス光を合成して、第2の光ビームを出射するステップと、前記第1の光ビームのプロファイルを変化させるステップと、前記第2の光ビームと、前記プロファイルが変化した前記第1の光ビームとを合成して、出射するステップと、を備えるものである。これにより、簡便にパルス光を整形することができる。
【0030】
本発明の第20の態様にかかるパルス整形方法は、上記のパルス整形方法であって、前記第1又は前記第2の光ビームに含まれる2つのパルス光の一方を遮光部材によって遮光し、前記遮光部材によって遮光された状態でのパルス形状の測定結果に基づいて、パルス形状を調整するものである。これにより、より精度よく測定することができるため、簡便にパルス光を整形することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、簡便にパルス光を整形することができるパルス整形装置、パルス整形方法、及びそれを用いた電子銃を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかる電子銃の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明にかかる電子銃に用いられる光源部の構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかるパルススタッカーの構成を模式的に示す図である。
【図4】パルススタッカーでのパルス波形を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例にかかるスタッキングロッドの構成を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかるパルススタッカーの構成を模式的に示す図である。
【図7】時間方向におけるパルス形状を測定する測定部の構成を示す図である。
【図8】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図9】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図10】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図11】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図12】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図13】時間方向におけるパルス形状を測定する信号処理を説明するための図である。
【図14】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図15】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図16】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図17】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図18】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図19】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図20】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図21】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図22】本発明の実施例において、光変調器の2次分散を変えたときの、分散部での電子ビームのエネルギー分布を示す図である。
【図23】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図24】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図25】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図26】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図27】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図28】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【図29】本発明の実施例において、パルス光の空間プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施例ついて以下に図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施例を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施例に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものを実質的に同様の内容を示している。
発明の実施の形態1.
【0034】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能であろう。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略される。
【0035】
本発明の実施の形態にかかる電子銃について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1にかかる電子銃100の構成を模式的に示す図である。本実施の形態にかかる電子銃100は、レーザ光がカソードに入射することによって、電子を発生するフォトカソード電子銃である。そして、電子銃100で発生した電子は、マイクロ波源53からのマイクロ波によって加速される。なお、本実施の形態にかかる電子銃100は、透過型のフォトカソードを有している。すなわち、電子ビーム出射側と反対側からレーザ光を照射している。さらに、電子銃100は、パルスレーザ光を所望の形状に整形するためのパルス整形装置を有している。
【0036】
本実施の形態にかかるビーム測定装置は、光源部10、パルススタッカー20、可変形ミラー40(DM:Deformable Mirror)、ミラー41、レンズ42、レンズ43、レンズ44、ミラー45、ビームスプリッタ46、カメラ47、制御装置48、フォトカソード51、共振器52、マイクロ波源53、ビームモニタ55、ウェッジ56、ミラー57、及びミラー58を有している。
【0037】
光源部10は、フォトカソードに入射するパルス光を発生する。光源部10では、パルスレーザ光のパルス幅が伸長されるとともに、パルスレーザ光がチャープされている。光源部10から出射したパルス光は、ウェッジ56を介してパルススタッカー20に入射する。すなわち、光源部10とパルススタッカー20との間には4つの透明なウェッジ56が設けられている。制御装置48は、それぞれのウェッジ56を駆動して、パルススタッカー20に入射するパルス光の位置を調整する。例えば、それぞれのウェッジ56を独立に回転させることによって、パルス光の位置を調整することができる。このようなウェッジ56を用いることでポインティング補償を行うことができる。
【0038】
パルススタッカー20は、パルス光を分岐して複数のミクロパルスを生成する。さらに、パルススタッカー20は、複数のミクロパルスを時間的にずらして合成する。これにより、パルス幅が長くなるようにパルス光が整形される。すなわち、縦方向(光軸と垂直な方向)のパルス形状が広くなる。なお、光源部10、及びパルススタッカー20の構成については、後述する。
【0039】
パルススタッカー20からのパルス光は、2枚のミラー57を介して、可変形ミラー40に入射する。すなわち、パルススタッカー20と可変形ミラー40の間には、2つのミラー57が設けられている。また、パルススタッカー20と可変形ミラー40の間にレンズを設けて、パルス光をコリメートしてもよい。これにより、可変形ミラー40に入射するビーム径を調整することができ、ビーム径を可変形ミラー40の有効径以下にすることができる。制御装置48は、それぞれのミラー57を駆動して、可変形ミラー40に入射するパルス光の位置を調整する。例えば、それぞれのミラー57を独立に傾斜させることによって、パルス光の位置を調整することができる。このように、制御装置48がミラー57の角度を制御することによって、パルス光の位置を変化させることができる。このようなミラー57を用いることでポインティング補償を行うことができる。
【0040】
ミラー57、及びウェッジ56を用いてポインティング補償を行うことで、精度よく可変形ミラー40に入射させることができる。すなわち、可変形ミラー40におけるパルスレーザ光の位置ずれを防ぐことができる。これにより、高精度の整形が可能になる。なお、特願2004−30236号の匠アルゴリズムを用いてポインティング補償を行うことができる。さらに、遺伝的アルゴリズムや焼き鈍し法などの最適化アルゴリズムを用いてもよい。
【0041】
可変形ミラー40は、パルス光の横方向(光軸と垂直な方向)の形状を整形する。すなわち、可変形ミラー40は、光軸と垂直な平面におけるパルス形状を整形する。具体的には、可変形ミラー40が反射面の位置を変化させて、レーザ光の波面形状を調整する。このため、可変形ミラー40には、例えば、ミラーの表面(反射面)形状を変更するために複数の電極(チャンネル)が設けられている。そして、それぞれの電極に印加する電圧を調整することにより、波面の形状が変化する。ミラーの表面形状を制御することにより、光学系の波面の補正や、反射ビームの方向、形状を制御できる。可変形ミラー40としては、例えば、静電容量型、ピエゾアクチュエータ型などの物を用いることができる。可変形ミラー40は、例えば、φ20mm〜φ50mmの有効径を有している。
【0042】
可変形ミラー40からのパルス光は、ミラー41、レンズ42、レンズ43、レンズ44、及びミラー45からなる伝播光学系を伝播する。すなわち、可変形ミラー40で反射されたパルス光は、ミラー41で反射される。そして、レンズ42、レンズ43、及びレンズ44で屈折されてミラー45に入射する。ミラー45に入射したパルス光は、ビームスプリッタ46の方向に反射される。このように、ミラー41、レンズ42、レンズ43、レンズ44、ミラー45の順番で、パルス光が伝播していく。例えば、レンズ42は、f=51.5mmの凸レンズであり、レンズ43は、f=100mmの凹レンズであり、レンズ44は、f=300の凸レンズである。また、レンズ42とレンズ43との距離は22mmであり、レンズ43とレンズ44のとの距離は108mmである。レンズ42、レンズ43、及びレンズ44等によって、パルス光の横方向の形状が変形する。すなわち、レンズや窓材などの透過光学系の収差を利用することで、パルス光の横方向形状が変形する。
【0043】
ミラー45で反射されたパルス光は、ビームスプリッタ46に入射する。ビームスプリッタ46は、入射したパルス光を2本の光ビームに分岐する。ビームスプリッタ46は入射したパルス光の一部をカメラ47の方向に反射させる。カメラ47は、例えば、アレイ状に受光素子が配列されたCCDカメラなどの2次元カメラである。カメラ47はパルス光のプロファイルを測定する。具体的には、カメラ47が、光軸と垂直な平面におけるパルス形状を測定する。なお、時間積算型のカメラ47を用いているため、1パルス全体の2次元形状が測定される。すなわち、カメラ47の1フレームはパルス長に比べて十分に長くなっている。カメラ47は、パルス光の横方向プロファイルを測定する。そして、カメラ47は、横方向のパルス形状に応じた測定結果に基づく信号を制御装置48に出力する。このように、カメラ47は、可変形ミラー40によってパルス形状を調整するために、光ビームに応じた測定を行う測定器となる。従って、光ビームが変化すると、カメラ47から出力される信号が変化する。
【0044】
また、ビームスプリッタ46に入射したパルス光の一部は、ビームスプリッタ46を通過する。そして、ビームスプリッタ46を通過したパルス光は、フォトカソード51に入射する。フォトカソード51は、透過型のフォトカソードである。なお、フォトカソード51は、透過型に限定されるものではなく、反射型のフォトカソードであってもよい。フォトカソード51は入射したパルス光に応じて電子を発生する。すなわち、光電効果によって、フォトカソード51から電子を発生される。フォトカソード51から発生した電子は、共振器52に入射する。共振器52には、マイクロ波源53で発生したマイクロ波が入射されている。共振器52は、空胴共振器であり、入力されたマイクロ波に応じた定在波を発生する。すなわち、RF共振器である共振器52には、フォトカソード51で発生した電子を加速するための電場が発生している。共振器52内の加速電場は時間に応じて変化している。フォトカソード51で発生した電子は、共振器52内の電場で加速される。すなわち、所定のエネルギーの電子ビームとなって共振器52から出射する。ここでは、共振器52で発生する定在波に応じて、パルス光のタイミングを調整する。すなわち、マイクロ波源53からのマイクロ波とレーザ光のパルスを同期させる。これにより、共振器52内に加速電場が生じているタイミングで、フォトカソード51から電子が発生する。従って、電子ビームが効率よく加速される。
【0045】
このようにして電子ビームのバンチが出射する。電子ビームは、所定の経路を通過して、X線自由電子レーザ(XFEL)、逆コンプトン散乱によるフェムト秒X線パルス光源、フェムト秒時間分解電子顕微鏡、超短パルス電子線描画装置、エネルギー回収型ライナック(ERL)などに利用される。さらに、電子ビームはビームモニタ55に入射する。ビームモニタ55は、電子ビームをモニタする。ビームモニタ55によって、バンチに関する情報を測定することができる。具体的には、電子ビームのプロファイル、エミッタンス、あるいはエネルギーなどを測定する。ビームモニタ55でのモニタ結果に応じた信号は、制御装置48に入力される。
【0046】
発生した電子ビームのプロファイルは、フォトカソード51に入射するパルス光の形状を反映している。すなわち。パルス光の形状に応じたプロファイルの電子ビームが発生する。具体的には、バンチの横方向の形状は、光軸と垂直な面におけるパルス形状を反映する。バンチの縦方向の形状は、光軸と平行な面におけるパルス形状を反映する。すなわち、電子ビームは、レーザ光のパルス幅に応じたバンチ長になる。このように、電子ビームのプロファイルは、レーザ光のプロファイルに応じて変化する。従って、ビームモニタ55は、可変形ミラー40によりパルス形状を調整するために、光ビームに応じた測定を行う測定器となる。換言すると、光ビームのパルス形状が変化すると、ビームモニタ55から出力される信号も変化する。
【0047】
制御装置48は、CPUやメモリ等の記憶領域を備えるコンピュータである。例えば、制御装置48は、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit)、記憶領域であるROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、通信用のインターフェースなどを有し、表明形状を測定するために必要な処理を実行する。例えば、ROMには、演算処理するための演算処理プログラムや、各種の設定データ等が記憶されている。そして、CPUは、このROMに記憶されている演算処理プログラムを読み出し、RAMに展開する。そして、設定データや、ビームモニタ55やカメラ47からの出力に応じてプログラムを実行する。さらに、制御装置48は、演算処理結果を表示させるためのモニター等を有している。制御装置48は、例えば、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置であり、測定結果やモニタ結果に対して所定の演算処理を行なう。さらに、制御装置48は、レーザ光のプロファイルを調整するための制御を行う。なお、制御装置48は物理的に単位な構成に限られるものではない。
【0048】
制御装置48は、例えば、電子ビームの測定結果、及びパルス形状の測定結果に基づいて可変形ミラー40を制御する。制御装置48は、可変形ミラー40に制御信号を出力して、反射面の形状を変化させる。これにより、レーザ光のパルス形状が調整される。従って、電子ビームを利用に最適なバンチ形状とすることができる。例えば、低エミッタンスの電子ビームを得ることができる。
さらに、測定結果に基づいてフィードバック制御を行うことで、リアルタイムでのバンチ形状の調整が可能になる。このように、制御装置48は、可変形ミラー40を制御して、パルス光の形状を調整する。これにより、フォトカソード51に入射するパルス光のプロファイルが変化する。そして、電子ビームのモニタ結果、及びパルス形状の測定結果によって、パルス形状を最適化する。これにより、電子ビームの高品質化を図ることができる。さらに、利用目的に適合したバンチ形状の電子ビームを生成することができる。
【0049】
ビームスプリッタ46からフォトカソード51までの距離は、ビームスプリッタ46からカメラ47までの距離と等しくなっている。従って、フォトカソード51上でのパルス形状とカメラ47上でのパルス形状は、略等しくなっている。よって、カメラ47での検出結果に基づいて制御した場合でも、電子ビームのバンチを正確に整形することが可能になる。
【0050】
次に、光源部10の構成について、図2を用いて説明する。図2は、光源部10の構成例を示す図である。光源部10には、レーザ発振器11、パルスストレッチャー12、光変調器13、再生増幅器14、マルチパス増幅器15、パルスコンプレッサー16、及び波長変換器17を有している。
【0051】
レーザ発振器11は、例えば、モードロックチタンサファイアレーザ発振器であり、パルスレーザ光を出射する。レーザ発振器11は、結晶媒質にチタンサファイアを用いている。その結晶母材であるサファイアは、ダイヤモンドに次いで熱伝導がよい透明材料であり、窒素温度に冷却すると動と同等の熱伝導になる優れた材料である。従って、熱のこもりが少ない。この母材となるサファイアにTi3+をドープしたチタンサファイア結晶は、蛍光スペクトルバンド幅が400nm(700−1100nm)と広く、超短(フーリエ変換限界)パルス生成に適している。そもそも、フェムト秒の超短パルスとは、10nmを越す広帯域レーザパルスのスペクトル成分間の相対位相を揃える、フーリエ変換限界のレーザパルスであるからである。この広いスペクトルの各波長の光路長の違いを、後述するパルスストレッチャー12やパルスコンプレッサー16の回折格子ペアで制御することで、パルスを伸ばしたり、縮めたりすることができる。レーザ発振器11は、繰り返し周波数89.25MHzで、中心波長790nm、パルス幅(半値幅)20fsecのパルスレーザ光を発振する。なお、レーザ発振器11の繰り返し周波数は、電子加速器での電子加速に広く用いられているSバンドの32分周となっている。
【0052】
レーザ発振器11で発生したパルスレーザ光は、パルスストレッチャー12に入射する。パルスストレッチャー12は、パルス幅を延ばすための回折格子ペアを有している。パルスストレッチャー12は、例えば、パルス幅(半値幅)を150psecに広げる。パルスストレッチャー12でパルス幅が広げられたパルスレーザ光は、光変調器13に入射する。
【0053】
光変調器13としては、例えば、音響光学(AO:Acousto−Optics)素子や液晶素子を用いることができる。より具体的には、光変調器13として、音響光学空間位相制御フィルター(AOPDF:Acoutsto−Optics Programmable Dispersive Filter)や液晶空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)を用いることができる。光変調器13は、スペクトル位相を変調する。光変調器13としては、例えば、ファーストライト(FASTLITE)社製DAZZLER(登録商標)を用いることができる。これにより、広帯域スペクトルを有するパルスレーザ光を変調することができる。上述の電子ビームのモニタ結果、及びパルス形状の測定結果に基づいて、光変調器13を制御する。これにより、パルス波形を整形することができる。すなわち、電子ビームの高品質化に好適なパルス波形を得ることができる。
【0054】
さらに、光変調器13によって、パルスレーザ光をチャープさせるようにしてもよい。すなわち、光変調器13によって、パルスを整形するだけでなく、チャープしてもよい。時間に応じて波長が変化するように、パルスレーザ光のスペクトル位相、又は強度を変調する。パルスレーザ光を正チャープさせることにより、パルスの先頭から後方側に向かうにつれて、波長が徐々に短くなる。パルス先端の波長が最長波長となり、パルス後端の波長が最短波長となる。レーザパルス内の波長は、後方側に向かうにつれて、単調減少していく。さらに、波長と時間の関係がリニアになるように高次の分散を補償して、2次分散の増減をコントロールする。例えば、光変調器13自体が持つ2次分散を光変調器13の設定値で2次分散で打ち消すことできるし、また、その打ち消したところでフーリエ限界になるようにしていれば、正チャープにも負チャープにもすることができる。よって、時間とともに波長がリニアに減少する。このように、光変調器13から出射したレーザパルス光では、時間とともに波長が線形(リニア)に変化するようにする。すなわち、パルスレーザ光の波長は時間に応じて、波長が線形(リニア)に変化する。光変調器13に入力する変調信号(Acoustic Wave)に応じて、パルスレーザ光のスペクトルが変調される。そして、チャープした音波によって、結晶を通過するパルスレーザ光に、波長に応じた光路差を自由に与えることができる。音波のスペクトルと同じ形状にパルスレーザ光のスペクトルが整形される。あるいは、音波のパルス形状と同じ形状にパルスレーザ光のスペクトルを整形してもよい。また、光変調器13以外の光学素子によってチャープさせることも可能である。例えば、波長に応じて屈折率が異なる透明な正分散媒質を用いることで、パルス光を正チャープさせることができる。
【0055】
光変調器13で変調されたパルスレーザ光は、再生増幅器14、及びマルチパス増幅器15で増幅される。すなわち、パルスレーザ光は、前段の再生増幅器14に入射する。再生増幅器14は、パルスレーザ光を増幅して、後段のマルチパス増幅器15に出射する。そして、マルチパス増幅器15で増幅されたパルスレーザ光は、パルスコンプレッサー16に入射する。再生増幅器14、及びマルチパス増幅器15はフラッシュランプ励起YAGレーザ光を分岐して励起光源としている。すなわち、再生増幅器14、及びマルチパス増幅器15は、励起光源を共通化している。
【0056】
再生増幅器14内では、共振器内のポッケルスセルにより10Hzでパルス列を切り出して選択増幅する。ここでは、例えば、2mJまでパルスレーザ光が増幅される。このレーザパルスを次のマルチパス増幅器15で同じ結晶を4回往復させる。マルチパス増幅器15は、例えば、30mJ/pulseまで増幅する。なお、再生増幅器14、及びマルチパス増幅器15では、中心波長、及びパルス幅(半値幅)は、790nm、150psecのままになっている。このように、種光を作るレーザ発振器11と、その後に種光を外部増幅器からなるMOPA(Maseter Oscillator Power Amplifier)方式を採用している。そして、外部増幅器が再生増幅器14、及びマルチパス増幅器15の2段構成になっている。
【0057】
マルチパス増幅器15からのパルスレーザ光は、パルスコンプレッサー16に入射する。パルスコンプレッサー16は、パルス長を短くするための回折格子ペアを有している。ここでは、例えば、パルス長(半値幅)が150psecから1psecに縮められる。さらに、レーザのもつスペクトル帯域で最短のパルス、すなわちフーリエ限界パルスにすることができる。このように、パルスストレッチャー12とパルスコンプレッサー16の間に、再生増幅器14、及びマルチパス増幅器を配置している。これにより、ピークパワーを押さえながら増幅するチャープパルス増幅(Chirped Pulse Amplification)を実行するこができる。パルスコンプレッサー16からは、例えば、中心波長790nm、スペクトル・バンド幅(半値幅)20nmのパルスレーザ光が出射する。
【0058】
パルスコンプレッサー16からのパルスレーザ光は、波長変換器17に入射する。ここで、波長変換器17は、パルスコンプレッサー16から出射した中心波長790nmのパルスレーザ光の3倍高調波(中心波長263nm)を発生させる。具体的には、波長変換器17は、2つの非線形光学結晶を有している。ここで、非線形光学結晶としては、BBO結晶を用いることができる。まず、1つ目の結晶にパルスコンプレッサー16からの基本波(中心波長790nm)を入射させて、2倍高調波(中心波長395nm)を発生させる。そして、2つ目の結晶に、2倍高調波と基本波を入射させて、3倍高調波を発生させる。
【0059】
固体レーザの短波長発生の基礎となるのは、入射する2つのコヒーレント光(波長λ1、λ2)に対して、2次の非線形光学効果を利用したBBO結晶内での相互作用の結果である、エネルギー保存則に従う波長λ3の発生、すなわち和周波混合(SFM:Sum Frequency−Mixing)である。2倍高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)はSFMの2つの入射光の波長λ1とλ2とが等しい場合に対応する。第3高調波発生(THG:Third Harmonic Generation)は、通常SHGで発生した2倍高調波(λ2)と残存する基本波(λ1)とのSFMにより実現される。基本波から3倍高調波の変換効率は約10%であり、2倍高調波への変換効率は約50%である。もちろん、BBO結晶以外の非線形光学素子によって3倍高調波を発生させてもよい。
【0060】
このように、光源部10では、パルス幅の伸長、増幅、圧縮、紫外光への波長変換を受ける。なお、波長変換器の後に、石英ロッドを通過させて、紫外パルスを正チャープして、パルス幅を延ばしてもよい。例えば、長さ45cmの溶解石英ロッドを2つ用いることで、パルス幅が80fsecから10psecに伸ばすことができる。(H. Tomizawa, T. Asaka, H. Dewa, H. Hanaki, T. Kobayashi, A. Mizuno, S. Suzuki, T. Taniuchi, and K. Yanagida, <Status of SPring−8 photocathode RF Gun for Future light Sourcesc, Proceedings of the 27th International Free electron laser Conference, Stanford, CA, 21−26 August 2005, (2005) pp. 138−141.参照)なお、光源部10は、直線偏光を出射している。光源部10から出射したパルスレーザ光は、図1に示したようにパルススタッカー20に入射する。
但し、非線形効果が効くような増幅後の超短パルスレーザのTHGでは、石英中のフィラメンテーションというトランスバース方向の屈折率分布ができる。このため、プロファイルが劣化してしまうという問題が生じるおそれがある。このような場合、石英ロッドを使用しなくてもよい。
【0061】
次にパルススタッカー20に構成について図3、及び図4を用いて説明する。図3は、パルススタッカー20の光学系の構成を示す図である。図4は、パルススタッカー20によってスタックされたパルス波形を示すタイミングチャートである。なお、図4では、光源部10からパルス幅2.5psecのパルス光が入射しているものとして示している。また、図4では、横軸が時間を示し、縦軸が光強度を示している。図4では、パルススタッカー20における6つのパルス波形が上から順番に示されている。そして、6つのパルス波形をそれぞれA〜Fとして示している。
【0062】
パルススタッカー20は、入射側λ/4板(1/4波長板)21、入射側λ/2板(1/2波長板)22、入射側偏光ビームスプリッタ(以下、偏光ビームスプリッタをPBSとする)23、スタックユニット31、スタックユニット32、スタックユニット33、ミラー34、出射側λ/2板35を有している。すなわち、3段のスタックユニット31〜33が直列配置されている。ここで、スタックユニット31、スタックユニット32、及びスタックユニット33は同じ構成を有している。スタックユニット31、スタックユニット32、及びスタックユニット33のそれぞれは、スタック用λ/2板24、固定ミラー対25、可動ミラー対26、アクチュエータ27、分岐用PBS28、合成用PBS29、及び遮光部材37を有している。そして、パルススタッカー20は、入射側λ/2板22と入射側PBS23とでパワーを調整する。
【0063】
入射側PBS23、分岐用PBS28、及び合成用PBS29は、例えば、偏光ビームスプリッタキューブであり、偏光状態に応じて光を分岐する。例えば、入射側PBS23、分岐用PBS28、及び合成用PBS29は、P偏光を通過させ、S偏光を反射する。入射側λ/4板21、入射側λ/2板22、スタック用λ/2板24は、0次水晶波長板であり、常光成分と異常光成分との間に所定の位相差を与える。なお、偏光ビームスプリッタキューブには、オプティカル・コンタクト方式のものを用いることが好ましい。これにより、高強度のパルス光に対しても適用することが可能になる。レーザ強度が強い場合、エアーギャップ方式が好ましい。また、オプティカルコンタクトの波長板があるが、それには接着材を使わない接着材フリーのものを使用するとエミッションが少ない。また、接着材を用いる場合、航空宇宙使用の接着材が好ましい。
【0064】
図3に示すパルススタッカー20には、光源部10からのパルス光が入射している。入射側λ/4板21は、楕円化しているパルス光を直線偏光にする。例えば、入射側λ/4板21は、回転可能に設けられている。そして、入射したパルス光の偏光状態に応じて回転角度を調整する。これにより、パルス光が略完全な直線になる。もちろん、光源部10から出射したパルス光が直線偏光である場合、入射側λ/4は不要である。λ/4板21を通過したパルス光は、λ/2板22に入射する。
【0065】
入射側λ/2板22は、入射した直線偏光の偏光軸を回転させる。入射側λ/2板22を通過したパルス光は、入射側PBS23に入射する。入射側PBS23は、入射光の偏光状態に応じて、入射光を通過させる。入射側PBS23を通過したパルス光は、スタックユニット31に入射する。例えば、入射側PBS23は、P偏光を通過させ、S偏光を反射する。さらに、入射側λ/2板22は入射側PBS23の前に回転可能に設けられている。すなわち、入射側λ/2板22の光学軸が、光軸と垂直な面において回転する。入射側λ/2板22の回転角度を調整することにより、偏光面が回転する。これにより、スタックユニット31に入射するパルス光のパワーを調整することができる。すなわち、入射側λ/2板22の回転角度によって、直線偏光の偏光方向が変化するため、P偏光成分を増減させることができる。
【0066】
入射側PBS23を通過したパルス光は、1段目のスタックユニット31に入射する。スタックユニット31は、入射した主パルス光を分岐して2つの光ビームに分岐する。これにより、2つのミクロパルスが生成される。分岐された2本の光ビームは、異なる光路に沿って伝播する。スタックユニット31は、分岐された2つの光ビームのパルス光に対して光路長差を与えた後、その2つの光ビームを合成する。合成された2つの光ビームは共通の光路に沿って伝播する。これにより、スタックユニット31からはタイミングのずれた2つのミクロパルスが出射する。以下に、上記の機能を有するスタックユニット31の構成を詳細に説明する。
【0067】
スタックユニット31に入射したパルス光は、スタック用λ/2板24に入射する。スタック用λ/2板24は、直線偏光の偏光面を45°回転させる。ここでは、図4のAに示すように+45°の直線偏光になる。これにより、P偏光成分とS偏光成分が略同じになる。スタック用λ/2板24から出射されたパルス光は、分岐用PBS28に入射する。
【0068】
分岐用PBS28は、入射したパルス光を偏光状態に応じて分岐する。ここでは、P偏光成分が分岐用PBS28を通過して、S偏光成分が前段側PBSで反射される。なお、スタック用λ/2板24によって、P偏光成分とS偏光成分が略同じになっているため、パルス光は2等分される。このように、分岐用PBS28はパルス光を分岐して、2つのミクロパルスを生成する。ここで、分岐用PBS28を通過したP偏光成分のミクロパルスをP偏光ミクロパルスとし、分岐用PBS28で反射したS偏光成分のミクロパルスをS偏光ミクロパルスとする。S偏光ミクロパルスとP偏光ミクロパルスは、異なる光路に沿って伝播する。
【0069】
分岐用PBS28で反射したS偏光ミクロパルスは固定ミラー対25に入射する。固定ミラー対25は、例えば、ステージなどに固定されている。固定ミラー対25は、2枚のミラー30を有している。ミラー30は、例えば、平面鏡であり、入射した光のほとんどを反射する。そして、S偏光ミクロパルスは、2枚のミラー30で反射されて合成用PBS29に入射する。
【0070】
一方、分岐用PBS28を通過したP偏光ミクロパルスは、可動ミラー対26に入射する。可動ミラー対26は、固定ミラー対25と同様に、2枚のミラー30を有している。そして、P偏光ミクロパルスは、2枚のミラー30で反射されて合成用PBS29に入射する。さらに、可動ミラー対26はステージなどに対して移動可能に設けられている。すなわち、可動ミラー対26は、アクチュエータ27に取り付けられている。そして、アクチュエータ27を駆動することによって、可動ミラー対26が図3中の点線矢印方向に移動する。アクチュエータ27は制御装置48によって制御される。
【0071】
これにより、可動ミラー対26から合成用PBS29までの距離が変化するとともに、可動ミラー対26から分岐用PBS28までの距離が変化する。従って、分岐用PBS28から合成用PBS29までの間において、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスとで光路長が変化する。S偏光ミクロパルスに対してP偏光ミクロパルスが遅延する。ここで、パルスススタッカー20において、2.5psecのミクロパルスが2.5psecであり、20psecのマクロパルスを作るとすると、1段目で10psec、2段目で5psec、3段目で2,5psecの遅延を与える。P偏光ミクロパルスがS偏光ミクロパルスから10psec遅れている。なお、P偏光ミクロパルスを遅れても進めてもよいが、全ての段で同じ方向にする。すなわち、アクチュエータ27によって分岐用PBS28から合成用PBS29までの距離を調整して、時間遅延量を10psecにする。これにより、S偏光ミクロパルスとP偏光ミクロパルスとの間に、所望の時間遅延量を与えることができる。このように、可動ミラー対26、及び固定ミラー対25が2本の光ビーム間に時間遅延を与える遅延手段になる。
【0072】
光路長差が与えられたP偏光ミクロパルス、及びS偏光ミクロパルスは、合成用PBS29で合成される。すなわち、合成用PBS29は、P偏光ミクロパルスを通過して、S偏光ミクロパルスを反射する。これにより、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスが合成される。すなわち、P偏光ミクロパルスの光軸とS偏光ミクロパルスの光軸とが合流して、一致する。このとき、P偏光ミクロパルス、及びS偏光ミクロパルスには、図4のBに示すように、時間遅延が与えられている。
【0073】
そして、1段目のスタックユニット31から出射したパルス光は、2段目のスタックユニット32に入射する。2段目のスタックユニット32は1段目のスタックユニット31と同様の構成を有している。ここで、2段目のスタックユニット32には、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスとが入射する。このため、図4のCに示すように、スタック用λ/2板24によって、S偏光ミクロパルスでは偏光軸が+45°となり、P偏光ミクロパルスでは偏光軸が−45°になる。
【0074】
そして、2つのミクロパルスを含むパルス光は、分岐用PBS28で分岐され、合成用PBS29で合成する。このとき、スタック用λ/2板24によって偏光軸が回転している。よって、それぞれのミクロパルスがさらに2つのミクロパルスに分岐される。すなわち、4つのミクロパルスが生成される。さらに、固定ミラー対25、及び可動ミラー対26によって、光路長差が与えられている。ここでは、例えば、5psecの時間遅延が与えられるように、アクチュエータ27が調整されている。すなわち、P偏光ミクロパルスがS偏光ミクロパルスに対して、5psec遅れるようにする。このため、合成用PBS29で合成されたパルス光には、図4のDに示すように、4つのミクロパルスが含まれる。先頭側の2つのミクロパルスは、スタック用λ/2板24直後において偏光軸が+45°のミクロパルスから生成されている。また、後端側の2つのミクロパルスは、スタック用λ/2板24直後において偏光軸が−45°のミクロパルスから生成されている。
【0075】
2段目のスタックユニット32では、1段目のスタックユニット31での遅延時間よりも短い遅延時間が与えられている。このため、合成された光ビームでは、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスが交互に並んでいる。また、2段目のスタックユニット32では、1段目のスタックユニット31のほぼ半分の遅延時間が与えられている。このため、隣接するミクロパルス間の時間間隔が等しくなっている。すなわち、4つのミクロパルスが5psec間隔で並んでいる。
【0076】
2段目のスタックユニット32から出射した4つのミクロパルスを有するパルス光は、3段目のスタックユニット33に入射する。このため、図4のEに示すように、スタック用λ/2板24によって、S偏光ミクロパルスでは偏光軸が+45°となり、P偏光ミクロパルスでは偏光軸が−45°になる。ここでは、偏光軸が+45°のミクロパルスと偏光軸が−45°のミクロパルスとが交互に配列される。
【0077】
そして、2段目のスタックユニット32と同様に、ミクロパルスの数を2倍にする。これにより、8つのミクロパルスが生成される。ここでは、アクチュエータ27による遅延時間が2.5psecに設定されている。これにより、図(f)に示すようにミクロパルスが配列される。
【0078】
3段目のスタックユニット33では、2段目のスタックユニット32での遅延時間よりも短い遅延時間が与えられている。このため、合成された光ビームでは、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスが交互に並んでいる。また、3段目のスタックユニット33では、1段目のスタックユニット32のほぼ半分の遅延時間が与えられている。このため、隣接するミクロパルス間の時間間隔は等しくなっている。すなわち、8つのミクロパルスが2.5psec間隔で並んでいる。
【0079】
このように、3つのスタックユニット31〜33を直列に配置して、8つのミクロパルスを重ね合わせている。これにより、マクロパルスのパルス長は20psec程度になる。各スタックユニット31〜33に設けられているアクチュエータ27を制御することで、縦方向のパルス形状を調整することができる。また、アクチュエータ27を制御することでパルス長を調整することも可能になる。もちろん、各ミクロパルスは、等間隔でなくてもよい。重ね合わされたマクロパルスは、電子ビームの高品質化に好適な形状に調整される。
【0080】
3段目のスタックユニット33から出射したマクロパルスは、ミラー34を介して、出射側λ/2板35に入射する。そして、出射側λ/2板35からのマクロパルスがパルススタッカー20から出射する。出射側λ/2板35を回転させることで、通過するミクロパルスのパワーを調整する。ここでは、フォトカソード51に入射する光のパワーが最大になるように出射側λ/2板35の回転角度を調整する。
【0081】
なお、スタックユニット31〜33において、時間遅延を与える光学素子は、可動ミラー対26に限られるものではない。例えば、屈折率の異なる透明部材を光路中に配置してもよい。これにより、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスとの間で、光学的な距離が変化するため、時間遅延を与えることができる。もちろん、これら以外のものを遅延手段として用いてもよい。
【0082】
スタック用λ/2板24を回転可能に設けても良い。これにより、分岐用PBS28で分岐されるP偏光成分、及びS偏光成分の割合を変化させることができる。よって、8つのミクロパルスの強度を調整することができる。フォトカソード51に入射するパルス光の縦方向の形状を調整することができる。
【0083】
もちろん、ミクロパルスの数は8に限られるものではない。スタックユニットの段数を増やすことによって、23以上のミクロパルスをスタックすることができる。すなわち、2n個のミクロパルス(n=段数)をスタックすることができる。もちろん、スタックユニットの段数を減らして、ミクロパルスの数を8未満にしてもよい。
【0084】
さらに、各スタックユニット31〜33には、遮光部材37が設けられている。例えば、スタックユニット31には1つの遮光部材37が設けられている。遮光部材37は、分岐用PBS28で分岐された光ビームが合成用PBS29に入射するのを選択的に遮るシャッターである。なお、それぞれの光路に対して別の遮光部材37を設けても良い。遮光部材37は分岐用PBS28で分岐された2つの光路中に移動可能に設けられている。すなわち、遮光部材37は光路中に挿脱可能に設けられている。そして、電子ビームの精密調整時には、一方の遮光部材37を光路中に挿入する。スタックユニット31〜33のそれぞれにおいて、遮光部材37は、P偏光ミクロパルス、又はS偏光ミクロパルスを遮光する。すなわち、分岐用PBS28で分岐された2本の光ビームのうち、一方の光路中に遮光部材37を配置する。これにより、各段のスタックユニット31〜33において、一方のミクロパルスのみが遮光される。
【0085】
この場合、図4のFに示されている8つのミクロパルスのうち、1つのミクロパルスのみが3段目のスタックユニット33から出射する。すなわち、3つの遮光部材37で遮光した場合、1つのミクロパルスのみが、フォトカソード51、及びカメラ47に入射する。これにより、各ミクロパルスの形状測定が可能になる。例えば、各ミクロパルスの横方向の形状をカメラ47で測定する。全ミクロパルスの個別の測定結果に基づいて、可変形ミラー40を設定する。具体的には、一方のミクロパルスを遮光して、他方のミクロパルスを測定する。さらに、他方のミクロパルスを遮光して、一方のミクロパルスを測定する。そして、3段のスタックユニット31〜33のそれぞれに対して、遮光部材37の移動を順次行う。具体的には、23通りの遮光部材37の配置で、測定を行う。これにより、各ミクロパルスの形状を測定することができる。そして、全ての測定結果に基づいて調整を行う。
【0086】
各ミクロパルスの横方向の形状を略同じ形状に調整することができる。これにより、マクロパルスの横方向の形状を最適化することができる。すなわち、時間に応じた横方向形状の変化が低減され、円筒形のパルス光を生成することができる。簡便な構成でマクロパルスをトップフラット形状に整形することができる。各段のスタックユニット33で一方のミクロパルスを遮光することにより、パルス形状の微調整を行うことができる。
【0087】
もちろん、ビームモニタ55での測定結果に応じて、マクロパルスの横方向の形状を調整してもよい。遮光部材37によって遮光した状態で、フォトカソード51にパルス光を照射すればよい。そして、ビームモニタでの測定結果に基づいて、パルス形状を調整する。これにより、さらなる微調整が可能になる。さらには、一部のミクロパルスを同時にスタックユニット33から出射させて、調整してもよい。例えば、2つ、又は4つのミクロパルスを同時にスタックユニット33から出射させて、調整してもよい。
【0088】
このように、縦方向、及び横方向のパルス形状を精密に整形することができる。すなわち、パルス光の3次元形状の整形を容易に行うことができる。ミクロパルス毎に測定できるため、より精密な整形が可能になる。そして、最適な設定で8つのミクロパルスを含むマクロパルスをフォトカソード51に照射する。所望の形状のパルス光をフォトカソードに照射することができる。これにより、フォトカソード51からの電子ビームの高品質化を図ることができる。すなわち、所望のバンチ形状の電子ビームを得ることができる。高輝度で低エミッタンスの電子ビームの生成が可能になる。さらには、利用に最適な形状のバンチを生成することができる。簡便な構成で、縦方向プロファイル、及び横方向プロファイルを最適化することができる。また、「Wefers AND Nelson, IEEE J.Quantum Electron, Vol. 32, pp.161(1996)」に示されているように、回折の影響で時間波形が空間波形に反映されてしまうが、可変形ミラー40とパルススタッカー20の組み合わせでは、互いに与える影響を低減することができる。よって、3次元的な形状を正確に整形することができる。
【0089】
各ミクロパルスの微調整が行われた後は、上記のように、電子ビームやパルス形状の測定結果に基づいてフィードバック制御する。例えば、加速管で加速された後のバンチ形状をビームモニタ55でモニタしながら、リアルタイムで調整することできる。よって、高品質の電子ビームを安定して発生させることができる。さらに、利用目的に適合したバンチ形状をすることができ、例えば、エミッタンスを低減することができる。
【0090】
マイクロ波を用いて加速しているため、電子ビームのエネルギー分布がバンチの縦方向分布に対応する。すなわち、マイクロ波での位相がずれると、電子ビームの加速エネルギーが変化する。例えば、パルス幅が広い場合、電子のエネルギー分散が広くなる。電子ビームのエネルギー分布の測定結果に応じて、パルス光の縦方向分布を調整することも可能である。電子ビームのエネルギー分布を測定する場合、ベンディングマグネット等によって電子ビームを曲げる。ベンディングマグネットは、電子の入射方向と垂直な方向に、一定の磁場を発生している。これにより、バンチ内電子をエネルギーに応じて空間的に分散させることができる。そして、曲げられた後のバンチ内電子の空間分布を測定する。これにより、縦方向(時間方向)のパルス形状を測定することができる。空間分布の測定結果に基づいて、パルス光の進行方向におけるパルス形状を調整する。このように、DAZZLERなどの光変調器13で2次分散をコントロールして、バンチ内電子のエネルギー分散に基づいて縦方向のパルス形状を調整することができる。
【0091】
縦方向のパルス形状は、光変調器13によって調整することもできる。バンチのエネルギー分布に応じて光変調器13を制御する。これにより、縦方向のパルス形状、及びバンチ形状を最適化することができる。さらに、フォトカソード51までの光路における光のロスを補償するように、光変調器13を用いてパルス形状を調整することができる。このように調整を行う場合でも、ビームモニタ55やカメラ47の測定結果に基づいて調整することで、所望のバンチ形状、及びパルス形状を容易に得ることができる。さらに、縦方向のパルス形状は、パルスコンプレッサー16によっても調整することできる。すなわちパルスコンプレッサー16でのコンプレッサー長を変えることで、縦方向のパルス形状を最適化することができる。また、上記のように、光変調器13の設定値を変えることで、2次分散を打ち消すことができる。例えば、光変調器13自身に13066fs2の2次分散がある場合、予め光変調器13の2次分散の設定値を−13066fs2にして、2次分散を打ち消す。そして、この状態でコンプレッサー長を変えることで、フーリエ限界パルスにすることができる。さらに、光変調器13の設定値を変えることで、高次の分散まで補償されるため、理想的なフーリエ限界パルスに近づけることができる。光変調器13として、DAZZLER(登録商標)を用いて、スペクトルの中央部分に凹みを設けることで、スペクトルの帯域を増幅後で広く保つことができる。これにより、さらなる超短パルス化が可能になる。光変調器13の設定値を変えることで、縦方向のパルス形状を調整することができる。
【0092】
なお、パルススタッカー20に入射されるパルス光は、特に限定されるものではない。すなわち、任意のパルス幅を持つパルス光であればよい。さらにパルススタッカー20から出射されるパルス光は、電子の発生以外の用途に利用可能である。例えば、パルス光をレーザ加工に用いることができる。この場合、加工対象にパルススタッカー20からのパルス光を照射する。レーザ加工に用いることにより、より微細で精密な加工を行うことができる。また、ストリークカメラや高速カメラの校正に、パルス光を利用することができる。このように、パルススタッカー20において、各ミクロパルスを遮光することによって、簡便にパルス形状を整形することが可能になる。
時間遅延量が小さくなると、縦方向において隣接するミクロパルスが重複する。すなわち、ミクロパルスの一部が隣のミクロパルスと重畳する。このような場合であって、パルス光をチャープすることによって、ミクロパルス間の干渉を防ぐことができる。すなわち、隣接するミクロパルスと重複する部分は波長が異なっているため、干渉しない。さらに、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスを交互に配置することで、ミクロパルス間の干渉を防ぐことができる。このように、光干渉を低減するように、S偏光ミクロパルスとP偏光ミクロパルスとを交互に配置する。
【0093】
また、加速された電子ビームを自由電子レーザ(FEL)の発振に用いる場合、発振した自由電子レーザをモニタしながらバンチ形状をモニタすることもできる。例えば、発振したFELの発振強度が最大になるようにパルス形状をリアルタイムで調整する。さらに、パルス光をレーザ加工に用いる場合、加工物の形状に応じてパルスを整形してもよい。このように、用途に応じて電子バンチの形状を最適化することができる。
【0094】
なお、バンチが所望の形状になっているかを評価するための評価関数を用いてもよい、この場合、複数のパラーメータを用いて調整することによって、簡便にパルス光をフラットトップ化することができる。可変形ミラー40の調整には、遺伝的アルゴリズムを用いることが好ましい。これにより、簡便に調整することができる。あるいは、パルス光をガウシアン化することもできる。また、パルス形状の調整は制御装置48を用いて自動で行ってもよく、作業者が手動で行ってもよい。さらには、可変形ミラー40の調整を半自動で行ってもよい。また、過去のパラメータセーブしておくことで、迅速に所望のプロファイルに整形できる。
【0095】
なお、パルススタッカー20において、入射側λ/2板22、スタック用λ/2板24、及び出射側λ/2板35を回転可能に設けている。なお、入射側λ/2板22、スタック用λ/2板24、及び出射側λ/2板35の回転軸は、光軸と平行である。そして、入射側λ/2板22、スタック用λ/2板24、及び出射側λ/2板35の回転角度を調整することでパルス光の光強度を調整することができる。さらに、3つのスタック用λ/2板24の回転角度を独立して調整することで、各ミクロパルスの光強度を調整することができる。よって、縦方向のパルス形状を整形することが可能になる。
【0096】
なお、上記の説明では、パルス光の2次元形状を調整する調整手段として可変形ミラー40を用いたが、調整手段は、これに限られるものではない。例えば、マイクロミラーがアレイ状に配列されたマイクロミラーアレイを調整手段として用いることができる。マイクロミラーアレイとしては、テキサス・インスツルメント社のものを用いることが好適である。もちろん、これら以外の調整手段を用いてもよい。
【0097】
遮光部材37として回転可能に配置された偏光子を用いることも可能である。すなわち、移動可能に設けられたシャッターの代わりに、回転可能に設けられた偏光板を用いることができる。例えば、分岐用PBS28で分岐された2本の光ビームの光路中にそれぞれ偏光板を配置する。そして、それぞれの偏光板を回転して、P偏光ミクロパルス、又はS偏光ミクロパルスを遮光する。例えば、一方の偏光板ではP偏光ミクロパルスを遮光して、他方の偏光板ではS偏光ミクロパルスを透過する。この場合、P偏光ミクロパルスの偏光面と偏光板の吸収軸が一致するように配置する。また、S偏光ミクロパルスの偏光面と偏光板の吸収軸が直交するように配置する。このようにしても、合成用PBS29へのミクロパルスの入射を遮ることができる。また、液晶パネル等を用いて遮光するようにしてもよい。なお、遮光部材37はミクロパルスを完全に遮光しなくてもよい。
【0098】
ミクロパルスの時間間隔は2.5psecに限られるものではない。もちろん、全てのミクロパルスを等間隔にしなくてもよい。この場合、各段のスタックユニットでの時間遅延量が整数倍にならないようにする。
【0099】
さらに、フォトカソード51までに配置されたレンズやミラーなどの光学素子における波長分散を考慮して、パルススタッカー20に入射するパルス幅を設定してもよい、例えば、透過型の光学素子では、分散によってパルス幅が広がってしまう。このような場合、フォトカソード51に入射するパルス光のパルス幅は、パルススタッカー20に入射するパルス光のパルス幅よりも広くなっている。従って、波長分散によるパルス幅の延びを補償するように、パルススタッカー20に入射するパルス光のパルス幅を設定する。電子のバンチ長やビームスプリッタ46で分岐されたパルス光のパルス幅を測定することで、フォトカソード51に入射するパルス光を所望のパルス幅にすることができる。なお、ストリークカメラなどを用いて、パルス幅を測定してもよい。
【0100】
さらに、合成用PBS29から漏れてくるパルス光の無偏光成分を測定するようにしてもよい。スタックユニット31に入射したパルス光に存在する無偏光成分は、合成用PBS29から漏れてくる。このため、無偏光成分は、合成用PBS29からスタック用λ/2板24やミラー34に入射しない。合成用PBS29で合成されずに漏れてくる光を検出することができる。これにより、光を有効的に利用することができる。さらに、実質的に同じ形状のパルスを測定することができるため、より正確な測定が可能になる。例えば、漏れてくる光を検出して、横方向のパルス形状を測定してもよい。この場合、カメラやビームプロファイラーで無偏光成分を測定する。ここで、無偏光成分をカメラなどに入射する測定光とし、偏光成分を、フォトカソード51において電子の発生に利用される利用光とする。合成用PBS29が2本の光ビームを合成することによって、合成用PBS29から測定光と利用光とが分岐されて出射する。そして、測定光をカメラ47などで検出することによって、測定光のパルス形状を測定する。そして、測定光のパルス形状の測定結果に基づいて、利用光のパルス形状を調整する。これにより、利用光のパルス形状をフィードバック制御することができる。
【0101】
また、図3に示す構成のパルススタッカー20では、1つのミクロパルスに応じた測定を行う際、そのミクロパルスの光路中に光学素子を配置することなく、測定を行うことができる。従って、系を壊さずにマスキングすることが可能になる。すなわち、遮光部材37を光路中に挿入することで、各ミクロパルスを簡便にマスクすることができる。これにより、光学系の調整等が不要となり、正確な測定を簡便に行うことができる。
【0102】
次に、パルススタッカー20の変形例について図5を用いて説明する。図5は、図3と異なる構成でミクロパルスを生成するためのスタッキングロッド120を示す図である。図5では、1つのパルス光から8つのミクロパルスをスタックするスタッキングロッド120が示されている。従って、スタッキングロッド120には、3段のスタックユニット131、132、133が設けられている。なお、パルススタッカー20と同様の内容については説明を省略する。
【0103】
スタックユニット131〜133のそれぞれは、ウェッジ121、ウェッジ122、複屈折素子123、取出し用λ/2板124、取出し用PBS125を備えている。さらに、スタックユニット131、132は、スタック用λ/2板126を有している。なお、それぞれのスタックユニット131〜133は、基本的に同じ構成を有している。ここでは、3つのスタックユニット131〜133が直列に配置されている。
【0104】
まず、パルス光は、1段目のスタックユニット131に入射する。すなわち、パルス光は、ウェッジ121、及びウェッジ122からなるウェッジペアに入射する。ウェッジペアで屈折されたパルス光は、複屈折素子123に入射する。ウェッジ121、及びウェッジ122を独立して回転させることによって、複屈折素子123に入射するパルス光の位置、及び入射角度を調整することができる。
【0105】
複屈折素子123は、例えば、α―BBOなどの結晶素子であり、入射したパルス光に対して複屈折効果を生じさせる。これにより、パルス光のうちの常光線と異常光線との間に時間遅延が生じる。すなわち、進相軸と平行な偏光成分に比べて、遅相軸に平行な偏光成分は、伝播速度が遅くなる。これにより、直交する偏光成分間に時間遅延が与えられる。複屈折素子123の光学軸をパルス光の光軸に垂直に配置する。P偏光成分が常光線であり、S偏光成分が異常光線であるとすると、S偏光成分がP偏光成分に比べて遅れる。例えば、複屈折素子123は、10psecのディレイを生じさせる。これにより、図4のAに示したように、10psecずれた2つのミクロパルスが生成される。なお、複屈折素子として、www.pantotek.com/Birefringentcrystals/AlphaBBO.html等に記載の結晶を用いることができる。あるいは、CRYSTECH社製 α−BBO結晶を用いることもできる。また、α―BBO結晶の代わりに、YVO4結晶や液晶素子などを複屈折素子123として用いてもよい。例えば、YVO4結晶を用いることで、波長400nm〜5μmのパルス光の整形が可能になる。
【0106】
スタック用λ/2板126は、スタック用λ/2板24と同様に、直線偏光の偏光面を45°回転させる。よって、図4のBに示すようになり、+45°のミクロパルスと−45°のミクロパルスが生成される。スタック用λ/2板126は、ミクロパルスを45度偏光にする。そして、2つのミクロパルスが2段目のスタックユニット132に入射する。
【0107】
スタックユニット132,133の構成は、スタックユニット131と同様である。但し、各ユニットでは、複屈折素子123での遅延量が異なっている。スタックユニット132の複屈折素子123での遅延時間は、5psecになっている。従って、スタックユニット132の複屈折素子123では、図4のDに示すような4つのミクロパルスが生成される。そして、スタック用λ/2板126によって、図4のEに示す状態になる。
【0108】
さらに、3段目のスタックユニット133における複屈折素子123での遅延時間は、2.5psecになっている。従って、スタックユニット133の複屈折素子123を通過すると、図4のFに示す状態となる。なお、3段目のスタックユニット133のみ、スタック用λ/2板126が設けられていない。P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスが交互に配置される。なお、α―BBO結晶の厚み等を変えることで、所定の遅延時間を得ることができる。すなわち、複屈折素子123の長さは、与える時間遅延に応じて決定される。遅延時間を長くする場合、複屈折素子123を厚くする。例えば、CRYSTECH社製のα―BBO結晶ロッドを用いて10psecの時間遅延を与える場合、結晶ロッドの厚さを2cmとする必要がある。また、5psecの時間遅延を与える場合、厚さを1cmとし、2.5psecの時間遅延を与える場合、厚さを0.5cmとする。遅延時間を長くする場合、透過率の高い複屈折素子123を用いることが好ましい。これにより、複屈折素子123でのパルス光の減衰を低減することができ、十分な強度のパルス光を得ることができる。
【0109】
各スタックユニットにおいて、複屈折素子123の後段には、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が挿入可能に配置されている。すなわち、スタックユニット131、132では、複屈折素子123とスタック用λ/2板126との間に、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が挿入される。また、スタックユニット133では、複屈折素子123の後方に取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125を配置することができる。例えば、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125を矢印の方向にスライド移動させると、図5の点線に示すように、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路上に、配置される。パルス形状の調整時には、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路中に配置される。そして、各ミクロパルス光のプロファイルなどが測定される。一方、電子ビームの利用時には、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路中から取り除かれる。これにより、8つのミクロパルスがスタックされた状態で光学系を伝播する。このように、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125は、光路中に挿脱可能に配置されている。
【0110】
取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路中に配置されると、一方のミクロパルスが、スタック用λ/2板126に入射しない。すなわち、複屈折素子123からの2つのミクロパルスは、同一光軸上を伝播して、取出し用λ/2板124に入射する。しかしながら、取出し用λ/2板124の後方には、取出し用PBS125が配置されている。取出し用λ/2板124の回転角度を調整することで、一方のミクロパルスのみが取出し用PBS125を通過し、他方のミクロパルスが反射される。すなわち、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスのうちの一方のみが取出し用PBS125を通過して、スタック用λ/2板126に入射する。換言すると、取出し用PBS125は、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスのうちの他方がスタック用λ/2板124に入射するのを遮光する。このように、取出し用PBS125は、偏光状態に応じて、次の段のスタックユニット132に1つのミクロパルスが入射するのを遮る。
【0111】
このように、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路中に配置された状態では、一方のミクロパルスがスタックユニット132に入射する。取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125が光路中から除去された状態では、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスの両方がスタックユニット132に入射する。従って、3つのスタックユニット131〜133において、取出し用λ/2板124、及び取出し用PBS125を光路中に挿入すれば、上記と同様に、8つのミクロパルスのうちの1つのみが取り出される。そして、取り出すミクロパルスに応じて取出し用λ/2板124を回転させる。
【0112】
このように、スタッキングロッド120では、複屈折素子123によって、パルス光の直交する偏光成分間に時間遅延を与えている。そして、複屈折素子123から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段を光路中に挿脱可能に配置している。そして、パルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段を光路中に挿入した状態で、可変形ミラー40などを用いて、複屈折素子123からのパルス光のパルス形状を調整する。可変形ミラー40などによりパルス形状を調整するために、カメラ47やビームモニタ55などで一方の偏光成分に応じた測定を行う。このような構成のスタッキングロッド120を電子銃100に用いることで、上記と同様に、ミクロパルス毎の調整が可能になる。また、調整の自動化を簡便に行うことができる。
【0113】
図4の構成では、複屈折素子123間に45度偏光にするスタック用λ/2板126を入れていたが、省略することも可能である。例えば、複屈折素子123の結晶ロッドを回転させて結晶軸を45度傾けてもよい。すなわち、スタック用λ/2板126の代わりに、結晶ロッドを回転させることで、各偏光成分のパワーを調整することができる。これにより、構成を大幅に簡略化できる。
【0114】
さらに、取出し用PBS125によって分岐された偏光成分を測定することも可能である。すなわち、取出し用PBS125を通過せずに反射した偏光成分のプロファイル等を測定し、その測定結果に基づいてパルス形状を調整してもよい。例えば、取出し用PBSによってP偏光ミクロパルスが取り出され、スタック用λ/2板126に入射する場合、取出し用PBS125で反射されたS偏光ミクロパルスをカメラなどで測定する。そして、S偏光ミクロパルスの測定結果に基づいてプロファイルを調整する。なお、偏光成分の一方を取り出す手段は、光路中に挿脱可能に設けられた偏光板などであってもよい。偏光板を、回転させることで、S偏光ミクロパルス、又はP偏光ミクロパルスを取り出すことができる。
【0115】
発明の実施の形態2.
本実施の形態では、電子銃100において、図3で示したパルススタッカー20の代わりに、図6に示すパルススタッカー70が用いられている。パルススタッカー以外の構成については、図1と同様であるため、説明を省略する。図6に示すパルススタッカー70では、4つのスタックユニット83a〜83dが用いられている。そして、4つのスタックユニット83a〜83dが並列に配置されている。これにより、1パルスから8つのミクロパルスを生成することができる。なお、パルススタッカー70においても、実施の形態1と同様の内容については説明を省略する。さらに、スタックユニット83a〜83dは、実施の形態1で示したスタックユニット31〜33と同様の構成であるため、一部の構成が省略して図示されている。例えば、アクチュエータ27、固定ミラー対25、及び可動ミラー対26については、実施の形態1と同様の構成であるため、省略されて図示している。本実施の形態では、パルススタッカー70が、パルス光をラグビーボール状のエリプソイド形状にするための構成を有している。
【0116】
スタックユニット83a〜83dの前段には、前段側λ/2板84、前段側λ/2板85a、前段側λ/2板85b、前段側PBS71、前段側PBS71a、及び前段側PBS71bが配置されている。また、スタックユニット83a〜83dの後段には、ミラー81、後段側分岐用ビームスプリッタ74、後段側分岐用ビームスプリッタ76、後段側分岐用ビームスプリッタ78、後段側合成用ビームスプリッタ75、後段側合成用ビームスプリッタ77、後段側合成用ビームスプリッタ79、アパーチャー86b、アパーチャー86c、及びアパーチャー86dが設けられている。
【0117】
スタックユニット83a〜83dの後段では、合成ユニット88a〜88cが設けられている。合成ユニット88aは、後段側分岐用ビームスプリッタ74と、後段側合成用ビームスプリッタ75と、2枚のミラー81から構成される。合成ユニット88bは、後段側分岐用ビームスプリッタ76と、後段側合成用ビームスプリッタ77と、2枚のミラー81から構成される。合成ユニット88cは、後段側分岐用ビームスプリッタ78と、後段側合成用ビームスプリッタ79と、2枚のミラー81から構成される。なお、合成ユニット88a、合成ユニット88b、及び合成ユニット88cは同じ構成を有している。
【0118】
光源部10からのパルス光は、前段側λ/2板84に入射する。前段側λ/2板84は、直線偏光であるパルス光の偏光軸を回転させる。これにより、偏光軸が45°回転する。そして、前段側λ/2板84から出射したパルス光は、前段側PBS71に入射する。1段目の前段側PBS71は、偏光状態に応じて入射したパルス光を分岐する。これにより、S偏光成分の光ビームと、P偏光成分の光ビームとに分岐される。そして、P偏光成分の光ビームは、2段目の前段側λ/2板85aを介して前段側PBS71aに入射し、S偏光成分の光ビームは、2段目の分岐用λ/2板85bを介して前段側PBS71bに入射する。分岐用λ/2板85a、85bは偏光軸を45°回転させている。このように、λ/2板とPBSを交互に2回づつ通過する。これにより、パルス光が4つの光ビームに分岐される。具体的には、2本のP偏光ビームと2本のS偏光ビームが生成される。
【0119】
4本の光ビームは、それぞれのスタックユニット83a〜83dに入射する。具体的には、前段側PBS71aからのP偏光ビームがスタックユニット83aに入射し、前段側PBS71aからのS偏光ビームがスタックユニット83bに入射する。また、前段側PBS71bからのP偏光ビームがスタックユニット83cに入射し、前段側PBS71bからのS偏光ビームがスタックユニット83dに入射する。
【0120】
スタックユニット83a〜83dは、スタックユニット31とほぼ同じ構成を有している。例えば、スタックユニット83aに入射した光ビームは、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスに分岐される。ここで、スタックユニット83a〜83dにおいて与えられる光路長差が異なっている。例えば、スタックユニット83aでは、2.5psecの遅延時間に相当する光路長差が与えられる。これにより、スタックユニット83aから出射するS偏光ミクロパルスがP偏光ミクロパルスよりも2.5psec遅れる。また、スタックユニット83bでは、7.5psecの遅延時間に相当する光路長差が与えられ、スタックユニット83cでは、12.5psecの遅延時間に相当する光路長差が与えられ、スタックユニット83dでは、17.5psecの遅延時間に相当する光路長差が与えられる。
【0121】
そして、4つのスタックユニット83a〜83dからのミクロパルスを順番に合成していく。ここで、8つのミクロパルスは、合成ユニット88a〜88cで順番に合成される。ここでは、3つの合成ユニット88a、3つの合成ユニット88b、合成ユニット88cが直列に配置されている。そして、合成ユニット88aは、スタックユニット83a、83bからのミクロパルスを合成する。これにより、計4つのミクロパルスが合成される。合成ユニット88bは、合成ユニット88aからのミクロパルスと、スタックユニット83cからのミクロパルスとを合成する。これにより、計6つのミクロパルスが合成される。合成ユニット88cは、合成ユニット88bからのミクロパルスと、スタックユニット83dからのミクロパルスとを合成する。これにより、計8つのミクロパルスが合成される。以下に、合成ユニット88a〜88cにおけるミクロパルスの合成について詳細に説明する。
【0122】
スタックユニット83aのミクロパルスは、ミラー81を介して、1段目の合成ユニット88aに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ74に入射する。スタックユニット83bのミクロパルスは、アパーチャー86bを介して、1段目の合成ユニット88aに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ74に入射する。後段側分岐用ビームスプリッタ74は、無偏光ビームスプリッタである。従って、偏光状態に関係なく、入射した光を分割する。これにより、スタックユニット83a、83bからのS偏光ミクロパルスとP偏光ミクロパルスとが分岐される。そして、分岐されたミクロパルスは、ミラー81で反射されて、後段側合成用ビームスプリッタ75に入射する。後段側合成用ビームスプリッタ75は、無偏光ビームスプリッタであり、偏光状態に関係なく、後段側合成用ビームスプリッタ75で分岐された光ビームを合成する。これにより、4つのミクロパルスが合成される。
【0123】
ここで、スタックユニット83bと合成ユニット88aとの間には、アパーチャー86bが配置されている。このアパーチャー86bは、例えば、円形の開口部を有している。従って、アパーチャー86bの開口部の外側に入射した光は、遮光され、後段側分岐用ビームスプリッタ74に入射できない。アパーチャー86bを通過したミクロパルスのみが後段側分岐用ビームスプリッタ74に入射する。これにより、スタックユニット83bからのミクロパルスのビーム径が制限され、スタックユニット83bからのミクロパルスのビーム径よりも小さくなる。これにより、横方向におけるビームのプロファイルが変化する。
【0124】
さらに、スタックユニット83aとスタックユニット83bとの間で光学的な距離を変えている。これにより、4つのミクロパルスに光路長差が与えられる。それぞれのミクロパルスのタイミングがずれる。ここでは、スタックユニット83bからの2つのミクロパルスの間に、スタックユニット83aからの2つのミクロパルスが配置される。そして、合成ユニット88aからは、4つのミクロパルスが同じ光軸に沿って出射する。
【0125】
合成ユニット88aのミクロパルスは、ミラー81を介して、2段目の合成ユニット88bに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ76に入射する。スタックユニット83cのミクロパルスは、アパーチャー86cを介して、2段目の合成ユニット88bに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ76に入射する。
【0126】
2段目の合成ユニット88bは、合成ユニット88aからのミクロパルスとスタックユニット83cからのミクロパルスを、同様に合成する。これにより、4つのミクロパルスと2つのミクロパルスとが合成用ビームスプリッタ77で合成されて、出射する。ここで、スタックユニット83a〜83cの間で光学的な距離を変えている。これにより、6つのミクロパルスに光路長差が与えられる。それぞれのミクロパルスのタイミングがずれる。ここでは、スタックユニット83cからの2つのミクロパルスの間に、合成ユニット88aからの4つのミクロパルスが配置される。そして、合成ユニット88bからは、6つのミクロパルスが同じ光軸に沿って出射する。
【0127】
ここで、スタックユニット83cと合成ユニット88bとの間には、アパーチャー86cが配置されている。このアパーチャー86cは、例えば、円形の開口部を有している。従って、アパーチャー86cの開口の外側に入射した光は、遮光され、後段側分岐用ビームスプリッタ76に入射できない。アパーチャー86cを通過したミクロパルスのみが後段側分岐用ビームスプリッタ76に入射する。これにより、スタックユニット83cからのミクロパルスのビーム径が制限される。さらに、アパーチャー86cの開口部をアパーチャー86bの開口部よりも小さくしている。従って、スタックユニット83cからのミクロパルスのビーム径は、スタックユニット83bからのミクロパルスのビーム径よりも小さくなる。アパーチャー86bは横方向におけるビームのプロファイルを変化させる。
【0128】
合成ユニット88bのミクロパルスは、ミラー81を介して、3段目の合成ユニット88cに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ78に入射する。スタックユニット83dのミクロパルスは、アパーチャー86dを介して、合成ユニット88cに設けられた後段側分岐用ビームスプリッタ78に入射する。
【0129】
3段目の合成ユニット88cは、合成ユニット88bからのミクロパルスとスタックユニット83dからのミクロパルスを、同様に合成する。これにより、6つのミクロパルスと2つのミクロパルスとが合成用ビームスプリッタ79で合成されて、出射する。ここで、スタックユニット83a〜83dの間で光学的な距離を変えている。これにより、8つのミクロパルスに光路長差が与えられる。それぞれのミクロパルスのタイミングがずれる。ここでは、スタックユニット83dからの2つのミクロパルスの間に、合成ユニット88bからの6つのミクロパルスが配置される。そして、合成ユニット88dからは、8つのミクロパルスが同じ光軸に沿って出射する。
【0130】
スタックユニット83dと合成ユニット88cとの間には、アパーチャー86dが配置されている。このアパーチャー86dは、アパーチャー86cよりも小さい円形の開口部を有している。これにより、スタックユニット83dからのミクロパルスのビーム径は、スタックユニット83cからのミクロパルスのビーム径よりも小さくなる。このように、アパーチャー86b〜86dではビームの通過が制限されるため、ミクロパルスのプロファイルが変化する。
【0131】
このようにパルススタッカー70から出射したパルス光は、所定の時間間隔で配置された8つのミクロパルスを有している。そして、アパーチャー86b〜86cによって、ビーム径がミクロパルス毎に変化している。すなわち、図6に示すように、マクロパルスのうち1番目と8番目のミクロパルスは、アパーチャー86dを通過しているため、ビーム径が最小になる。また、2番目と7番目のミクロパルスは、アパーチャー86dを通過しているため、ビーム径が2番目に小さくなる。3番目と6番目のミクロパルスは、アパーチャー86cを通過しているため、ビーム径が2番目に大きくなる。そして、4番目と5番目のミクロパルスは、アパーチャーを通過していないため、ビーム径が最大になる。
【0132】
マクロパルス全体のビーム径は時間とともに大きくなっていき、縦方向におけるマクロパルスの中央近傍で最大になる。すなわち、4番目と5番目のミクロパルスに対応するタイミングで、ビーム径が最大になる。そして、縦方向におけるマクロパルスの中央近傍から時間とともにビーム径が小さくなっていく。縦方向におけるビームプロファイルは時間に応じて変化する。縦方向におけるプロファイルは対称になる。このようなパルススタッカー70を用いることによって、エリプソイド形状のマクロパルスを得ることができる。もちろん、エリプソイド形状以外の整形することも可能である。実施の形態1と同様に、パルス整形を容易に行うことができる。さらに、様々な形状のパルス光を簡素な構成で整形することができる。また、アパーチャー86b〜86dの開口径を可変にすることで、様々な形状に整形することができる。
【0133】
なお、上記の説明では、アパーチャー86b〜86dを用いてプロファイルを変えたが、プロファイルを変えるプロファイル変化手段はこれに限られるものではない。例えば、1対のレンズなどを用いてプロファイルを変えることも可能である。すなわち、レンズペアからなるダウンコリメートレンズを用いることができる。そして、ビーム径を縮小して、プロファイルを変化する。縮小光学系であるレンズペアを用いる場合、光量を減らすことなくビーム径を変更することができる。もちろん、レンズペアを拡大光学系として、ビーム径を拡大してもよい。さらには、レンズペアとアパーチャーの両方を用いてプロファイルを変化させてもよい。さらに、位置に応じて透過率の異なる空間フィルタ等を用いてプロファイルを変化させてもよい。なお、光ビームを平行光束としたまま、ビーム径を変えることが好ましい。また、合成ユニット88aと、スタックユニット83aとの間にアパーチャーなどを配置して、プロファイルを変化させてもよい。
【0134】
このように、本実施の形態では、スタックユニット83a〜83dを並列配置している。このため、合成前の光路中に、プロファイル変化手段を配置することができる。このため、ミクロパルスを個別に調整することが可能になる。このことによって、パルス光を様々な形状に整形することができる。特に、縦方向(光軸と平行な方向)における調整が容易になる。また、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスが交互に配置されるため、光干渉を低減することができる。
【0135】
実施の形態1と同様にλ/2板24の角度を調整することによって、P偏光ミクロパルスとS偏光ミクロパルスの光強度の比を調整することができる。また、遮光部材37を挿入することによって、個々のミクロパルス形状の測定が可能になる。これにより、より精密なパルス形状の整形が可能になる。さらに、遮光部材37を挿入することやλ/2板24を回転させることによって、一方のミクロパルスを除去することができる。これにより、ビーム径を調整する自由度が高くなる。すなわち、全てのミクロパルスを異なるビーム径にすることができる。よって、所望の形状のパルス光を得ることができる。
【0136】
さらに、本実施の形態では、後段側合成用ビームスプリッタ75、77、79からの光を測定する測定部90が設けられている。測定部90は、光を合成する際に漏れてくる光を効率的に利用している。例えば、後段側合成用ビームスプリッタ75には、無偏光ビームスプリッタが設けられている。このため、後段側合成用ビームスプリッタ75光を合成する際にロスが生じ、一部がミラー81に入射しなくなる。換言すると、測定部90には、後段側合成用ビームスプリッタ75からミラー81に入射しない光ビームが入射する。後段側合成用ビームスプリッタ75から出射する2本の光ビームのうちの一方がミラー81に入射し、他方が測定部90に入射する。すなわち、後段側合成用ビームスプリッタ75で合成されてミラー81に向かう光ビームではない光ビームを測定部90で測定する。
【0137】
ここで、後段側合成用ビームスプリッタ75から出射する光ビームのうち測定部90に入射する光ビームを測定光とする。また、後段側合成用ビームスプリッタ75から出射する光ビームのうちミラー81に入射する光ビームを利用光とする。利用光は、上記のようにフォトカソード51に入射して電子の発生に利用される。測定部90は、測定光を利用してパルス形状の測定を行っている。これにより、光を効率的に使用することができる。さらに、ミクロパルスをモニタしながらのパルス整形が可能になる。
【0138】
測定部90は、パルス形状を測定するためのカメラなどを有している。例えば、2次元カメラなどによって、横方向のプロファイルを測定することができる。さらに、測定部90によって、縦方向のプロファイルを測定してもよい。ここで、縦方向のプロファイルを測定するための好適な構成例について図7を用いて説明する。図7は縦方向のプロファイルを測定する測定部90の構成を示す図である。測定部90は、測定用PBS91、ミラー92、非線形光学素子93、分光器94及びプローブ用光変調器95を有している。
【0139】
測定用PBS91には、後段側合成用ビームスプリッタ75からの光ビームが入射している。ここでは2つのミクロパルスを有する光ビームが入射している。例えば、スタックユニット83bで、スタックユニット83bからのミクロパルスを遮光する。具体的には、スタックユニット83a、83bにおいて、遮光部材37を挿入することで、2つのミクロパルスを遮光することができる。この場合、2つのミクロパルスを有するダブルパルスが後段側合成用ビームスプリッタ75から取り出される。測定用PBS91は、ミラー92の方向にダブルパルスを反射する。ここで、パルス形状の測定対象であるダブルパルスを、測定光とする。
【0140】
さらに測定用PBS91には、プローブ用光変調器95でチャープされたチャープパルスが入射している。このチャープパルスが、パルス形状の測定に利用されるプローブ光となる。チャープパルスはダブルパルスの間隔+パルス幅よりも長いパルス幅を有している。すなわち、ダブルパルス全体がチャープパルスと重複する。このチャープパルスをプローブ光として利用する。プローブ光は時間に応じて波長が変化する。チャープパルスはプローブ用光変調器95によって、矩形状にチャープされている。より好ましくは矩形である。チャープを長くして、フラットに近い中央部を使うようにしてもよい。但し、チャープを長くすると、レーザ強度が落ちるという問題があるすなわち、チャープパルスでは、時間とともに波長が変化している。このチャープされたパルス光は、光源部10から取り出すことができる。例えば、再生増幅器14、又はマルチパス増幅器15から出射するパルス光の一部を取り出して、チャープパルスとすることができる。ここでは、例えば、基本波(790nm)をプローブ光として取り出している。そして、測定用PBS91は媒質を透過することによる分散でのダブルパルス側のパルスの伸びを防いでおいて、チャープパルスを通過させる。これにより、ダブルパルスとチャープパルスとが合成される。ここで、チャープパルスとダブルパルスとは同期して、測定用PBS91に入射する。
【0141】
ダブルパルスの偏光方向を、例えば、45°回転させている。ここでは、波長板や偏光子などを用いて、偏光方向を回転させる。測定用PBS91では、ダブルパルスのS偏光成分、又はP偏光成分が取り出される。また、測定用PBS91からは、チャープパルスが取り出される。従って、測定用PBS91で効率よく合成される。測定用PBS91で合成されたパルス光は、ミラー92で反射され、非線形光学素子93に入射する。非線形光学素子93は、例えば、KDPなどの非線形光学結晶である。非線形光学素子93では第2高調波発生(SHG)、差周波発生(DFG)及び和周波発生(SFG)が生じる。ここでは、非線形光学素子93によって、第2高調波やダブルパルスとチャープパルスとの和周波、差周波が発生する。なお、第2高調波は、同じ波長での非線形光学効果による和周波と捉えることもできる。チャープパルスとダブルパルスとは同期しているため、非線形光学素子93に入射するタイミングが一致している。また、チャープパルスは、ダブルパルスよりも十分長いパルス幅を有している。これにより、効率よく和周波、又は差周波が発生する。
例えば、測定光であるダブルパルスが3倍波の場合、基本波のチャープパルスとダブルパルスとの差周波を発生させる。これにより、基本波の2倍波が発生する。測定光が紫外域の3倍波である場合でも、差周波を用いることで、容易に測定することができる。また、測定光であるダブルパルスが基本波の場合、チャープパルスとダブルパルスとの和周波により、基本波の2倍波を発生させてもよい。
【0142】
非線形光学素子93によって発生した和周波又は差周波は、分光器94に入射する。分光器94は、入射した和周波のスペクトルを測定する。例えば、分光器94は、入射側に設けられているスリット等を介して入射したパルスレーザ光をその波長に応じて空間的に分散させる。反射型回折格子を用いた分光器94の場合、さらに入射スリットからの光を分光素子までに導く凹面ミラーと分光素子によって分光された光を2次元アレイカメラまで導く凹面ミラーなどの光学系が設けられている。もちろん、上記以外の構成を有する分光器94を用いてもよい。入射光は分光器94によって入射スリットの方向と垂直な方向に分散される。すなわち、分光器94は、入射スリットのライン状の開口部と垂直な方向に出射光を波長分散する。分光器94により分光された出射光は2次元アレイカメラに入射する。2次元アレイカメラには、受光素子がマトリクス状に配列されている。
【0143】
分光器94で分光されることによって、異なる波長の光が、異なる受光画素に入射する。すなわち、波長に応じて入射する受光画素がずれる。これにより、和周波又は差周波のスペクトル測定が可能になる。例えば、最長波長の光は受光画素列の一端側の受光画素に入射し、最短波長の光は他端側の受光画素に入射する。そして、波長に応じて入射する受光画素が異なる。さらに、チャーピングされたパルスレーザ光を用いているため、受光画素列がパルスレーザ光内の時間に対応する。従って、パルス内において異なるタイミングの光は、異なる受光画素に入射する。例えば、パルス先端の光は、受光画素列の一端側の受光画素に入射し、パルス後端の光は、受光画素列の他端の受光画素に入射する。そして、1パルスのスペクトルを分光器94のカメラの1フレームで検出する。すなわち、分光器94のカメラの1フレームで、パルスレーザ光の1パルスのスペクトルが取得される。これにより、和周波、又は差周波のスペクトル分布を高速に測定することができる。
【0144】
このように、分光器94では、ダブルパルスとチャープパルスの和周波又は差周波のスペクトルが測定される。さらに、チャープパルスを用いているため、波長が時間に対応する。ダブルパルスに含まれるミクロパルスの時間間隔は、スペクトルのピーク波長間隔に相当する。スペクトルには、縦方向におけるダブルパルスの形状の情報が含まれている。これにより、ミクロパルスの間隔を正確に測定することができる。具体的には、パルス間隔をτとすると、ピーク波長の間隔はτに基づく値となる。これにより、パルス間隔τを算出することができる。
【0145】
このように、非線形光学素子93、及び分光器94を用いることで、縦方向のパルス形状を正確に測定することができる。なお、チャープパルスの代わりに2色のダブルパルスをプローブ光として用いてもよい。この場合、プローブ用光変調器95によって、基本波のパルスレーザ光を変調させる。そして、波長の異なるダブルパルスを発生させる。例えば、1つ目のパルスを短波長にして、2つめのパルスを長波長にする。もちろん、この反対でもよい。このように、時間に応じて異なる波長となるパルス光をプローブ光とする。
そして、プローブ用の2色ダブルパルスと測定用のダブルパルスを同期させて、非線形光学素子93に入射させる。すなわち、測定光であるダブルパルスとプローブ光である2色ダブルパルスを重ね合わせる。これにより、非線形光学素子93で和周波や差周波が発生する。ここで、測定光であるダブルパルスは、2色ダブルパルスと重複している。波長の異なる2色ダブルパルスとの和周波、又は差周波を分光器94で測定する。
なお、縦方向におけるパルス形状の測定については、例えば、ファーストライト(FASTLITE)社製PHAZZLER(登録商標)を利用することができる。これにより、パルス形状を簡便に測定することができる。例えば、基本波を測定光とする場合、測定光であるダブルパルスをPHAZZLER(登録商標)に入射させる。これにより、プローブ光である2色ダブルパルスと、測定光との和周波を発生させることができる。そして、PHAZZLER(登録商標)の分光器でスペクトルを測定することで、縦方向のパルス形状を測定することができる。このように、AO変調を利用したプローブ用光変調器95を用いることで、プローブ光と測定光との和周波又は差周波を容易に発生させることができる。
【0146】
また、測定光に含まれるミクロパルスの数は、2つに限られるものではない。例えば、測定光が、4つ又は8つのミクロパルスを含んでいてもよい。このような場合、パルススタッカー70の後段に、PBSを挿脱可能に配置する。8つのミクロパルスを取り出すときは、パルススタッカー70の出射側のλ/2板で、45°偏光にする。そして、PBSでS偏光成分かP偏光成分を取り出す。これにより、8つのミクロパルスを取り出すことができる。また、プローブ光としても、8色のミクロパルスを用意する。すなわち、測定光に含まれるミクロパルスと同数のミクロパルスをプローブ光として用意する。なお、プローブ光のミクロパルスは矩形パルスとしてもよい。あるいは、測定光の8つのミクロパルス列をカバーするパルス幅のチャープパルスをプローブ光として用意してもよい。4つのミクロパルスを取り出すときは、例えば、各段のスタックユニットで、一方の偏光成分をマスクする。これにより、例えば、P偏光成分のみが取り出される。4つのミクロパルスを測定する場合、1つおきにミクロパルスを取り出すことができる。例えば、P偏光ミクロパルスのみを取り出すことが可能になる。このようにすることで、各ミクロパルス間隔と、各ミクロパルスの縦方向の形状を同時に測定することができる。もちろん、上記の測定方法は、実施の形態1で示したパルススタッカー20やスタッキングロッド120に対しても利用可能である。
【0147】
さらに、分光器94の測定結果に基づいて、ミクロパルス毎に縦方向のパルス形状を測定することもできる。このための信号処理について図8〜図11を用いて説明する。なお、以下の信号処理は、例えば、制御装置48で実施することができる。
【0148】
まず、図8に示すデータをフーリエ変換する。なお、図8に示すデータは、分光器94で測定されたスペクトルの一例である。フーリエ変換することで、図9に示す時間領域のデータが得られる。チャープパルスとダブルパルスに基づいた和周波であるため、図9に示すように、例えば、ダブルパルスを例に取ると、2つのサイドバンドが発生している。2つのサイドバンドは±τ近傍に現れている。ここで、1つのサイドバンドに着目して、サイドバンドをウィンドウで取り出す。ここでは、時間τ近傍にサイドバンドが表れている。このサイドバンドをウィンドウで切り出す。これにより、図10に示すデータが得られる。ここで、図10で示すデータに対してフーリエ逆変換を行う。これにより、図11に示すように、周波数領域のデータが得られる。
【0149】
ここで、図11に示すデータは、以下の式で表される。
φ1(ω)+ωτ
【0150】
なお、φ1(ω)はサイドバンドとして取り出した方のミクロパルスの形状を示す関数であり、τは上記の通りパルス間隔である。ここで、図11に示すデータからωτの項を削除して、データをつなぎ合わせると、図12に示すグラフとなる。なお、図12に示すφ1(t)には、周波数強度分布(振幅スペクトル)と周波数位相分布(位相スペクトル)の情報が含まれている。図12に示すデータをフーリエ変換すると、図13に示す時間領域のデータが得られる。ここで、時間領域の強度分布が縦方向のパルス形状になる。
【0151】
このような測定を行うことで、ミクロパルス毎に縦方向のパルス形状を正確に測定することができる。そして、この測定結果に基づいて、パルスを整形する。例えば、測定結果に基づいて、制御装置48が、光変調器13を制御する。これにより、より正確なパルス整形を行うことができる。また、後段側合成用ビームスプリッタ75から漏れてくる光は、実際にスタックされるミクロパルスと同じ形状を有している。従って、精度の高い測定が可能になる。また、同様に、後段側合成用ビームスプリッタ77、79から出射する光を検出してもよい。さらには、2以上のミクロパルスを同時に測定してもよい。この場合でも、それぞれのサイドバンドに着目することで、ミクロパルスの形状を測定することができる。
【0152】
さらに、合成用PBS29a〜29dから漏れてくるパルス光を測定するようにしてもよい。スタックユニット83aに入射したパルス光に存在する無偏光成分は、合成用PBS29aから漏れてくる。合成用PBS29aからミラー81に入射せずに、漏れてくる光を検出することができる。これにより、光を有効的に利用することができる。さらに、実質的に同じパルス形状のパルスを測定することができるため、より正確な測定が可能になる。もちろん、漏れてくる光を検出する測定部90で横方向のパルス形状を測定してもよい。この場合、測定部90にカメラやビームプロファイラーを設ける。ここでは、無偏光成分が測定部90に入射する測定光になる。そして、偏光成分がミラー81に入射する利用光となる。
【0153】
上記のパルススタッカー70を、実施の形態1と同様に、電子銃以外の用途に用いてもよい。もちろん、実施の形態1と実施の形態2とを適宜組み合わせてもよい。例えば、パルススタッカー70においても遮光部材37やスタック用λ/2板24を用いて、ミクロパルスを遮光することができる。各ミクロパルスの最適化が可能になる。さらには、実施の形態2に示すパルススタッカー70において、入射側λ/4板21、入射側λ/2板22、及び入射側PBS23を用いてもよい。同様に、実施の形態2に示すパルススタッカー70において、出射側λ/2板35を用いてもよい。なお、実施の形態1、2において、各ミクロパルスは完全にずれていなくてもよい。すなわち、ミクロパルスの一部が時間的に重複していてもよい。
【0154】
上記のように、パルススタッカーにおいて、分岐用PBS28で分岐された後の光ビームの一方を遮光部材37によって、遮光している。このため、各ミクロパルスをより正確に測定することができ、パルス形状の微調整が可能になる。さらに、実施の形態2に係るパルススタッカー70において、アパーチャー86b〜86dなどを用いて、ビームのプロファイルを調整している。これにより、ミクロパルス毎の整形が可能になる。さらに、カメラ47や測定部90でパルス形状を測定している。また、ビームモニター55で光ビームに応じた測定を行っている。そして、これらの測定結果に基づいて、パルス形状を整形している。これにより、より精度よく調整することが可能になる。よって、精度よくパルス形状を整形することができ、所望のバンチ形状に近づけることができる。
時間的に重複していてもよい。
【0155】
また、実施の形態1、2に示す構成により、深紫外、真空紫外域〜157nmまでのパルス光に対しても整形が可能になる。このように、本発明は、波長が157nm〜400nmのパルス光の整形に好適である。さらに、広波長帯域で使用可能なため、超短パルスを整形することが可能になる。
【0156】
実施例
上記のパルス整形装置で整形したパルス形状の測定結果を図14〜図22に示す。図14〜図22では、光変調器13での2次分散を変えたときの、電子ビームのエネルギースペクトルを示す図である。ここでは、上記のように、ベンディングマグネットによって電子ビームのバンチ内電子ビームを空間的に分散させた。そして、ビームモニタ55としてビームプロファイラーを用い、分散されたバンチ内電子ビームの横方向空間分布を測定した。上記のように、電子のエネルギーによってベンディングマグネットでの曲率が変化する。また、RF電子銃では、時間に応じて加速エネルギーが異なる。従って、バンチ内電子ビームのエネルギー分布を測定することによって、縦方向のパルス形状を計測した。
【0157】
図14〜図22は、分散部での電子ビームの空間分布を示すグレースケールのイメージデータである。なお、分散部とは、ベンディングマグネットで電子ビームを曲げた後の箇所である。図14〜図22では、電子がエネルギーに応じて横方向に分散されている。ここで、図14〜図22において、左側が高エネルギー側であり、パルス光の先端側になる。なお、図14〜図22では、実際の測定で取得されたカラーイメージデータをグレースケールで表示している。また、図14〜図22の下部には、点線箇所におけるプロファイルのデータが示されている。
さらに、2次分散の0点出しを行うため、光変調器13の2次分散の設定値を負の値にした。ここでは、光変調器13の設定値を−13066fs2とした。そして、この状態で、パルスコンプレッサー16でのコンプレッサー長を変えて、フーリエ限界パルスを得た。また、高次の分散を補償するため、光変調器13の3次分散の設定値を−7475fs3とし、4次分散の設定値を−2680fs4とした。この状態で、光変調器13の2次分散のみを変化させると、リニアにチャープさせることができる。
【0158】
図14は、光変調器13であるDAZZLER(登録商標)の2次分散の設定値を8500fs2としたときの、分散部での電子ビームの空間分布を示す図である。同様に、図15は、2次分散の設定値を10500fs2、図16は、2次分散の設定値を12500fs2、図17は2次分散の設定値を14500fs2、図18は2次分散の設定値を15500fs2、図19は2次分散の設定値を16500fs2、図20は2次分散の設定値を18500fs2、図21は2次分散の設定値を20500fs2、図22は、2次分散の設定値を22500fs2としたときの、分散部での空間分布を示す図である。
なお、光変調器13自体の2次分散が13066fs2である。このため、フーリエ限界の時の2次分散を0とすると、光変調器13の2次分散の設定値に、13066fs2を加えた値が、光変調器13において与えられる2次分散の絶対値となる。従って、光変調器13による2次分散が、図14では21566fs2になり、図15では23566fs2になり、図16では25566fs2になり、図17では27566fs2になり、図18では28566fs2になり、図19では29566fs2になり、図20では31566fs2になり、図21では33566fs2になり、図33では35566fs2になっている。
【0159】
2次分散の設定値を変えることで、縦方向のパルス形状を最適化することができる。例えば、光変調器13を制御して、2次分散の設定値を15500fs2以上にすると、各ミクロパルスが繋がり、マクロパルスとして一体となる。また、2次分散の設定値が12500fs2までは、各ミクロパルスが繋がっておらず、22500fs2になると、ミクロパルス同士がオーバラップして数珠玉状になる。このように、光変調器13の2次分散の設定値を変更することで、スタッキング状態を改善することができる。
【0160】
次に、横方向のパルス形状を整形した実施例の測定結果を図23〜図28に示す。図23〜図29は、パルス光の空間プロファイルを測定した画像である。ここでは、カメラ47の代わりにレーザプロファイラーを用いて、空間プロファイルを測定した。すなわち、図23〜図29は、レーザプロファイラーでの取得した画像データを示している。図23〜図29では、下側及び左側に、サークルの中心におけるプロファイルデータが示されている。なお、図23〜図29において、中心部分のサークルは直径0.8mmの円を示している。また、図23〜図29は、実際の測定で取得されたカラーイメージデータをグレースケールで表示している。以下に、調整方法をその手順に従って説明する。
(ステップ0)
まず、図3に示すパルススタッカー20において、各段でのディレイ時間を調整した。さらに、上記のように、光変調器13で最適な2次分散を設定して、バンチ内電子のエネルギーがむらなくつながっていることを確認した。ここでは、光変調器13の2次分散の設定値を14500fs2にした時に、マクロパルス内のミクロパルスが滑らかにつながっていることを、電子ビームのエネルギースペクトルから判断した。そして、この値に設定して、レーザ空間プロファイル整形を開始した。なお、このステップ0は、以下の一連のステップの終了後(レーザ空間プロファイルの最適化後)にもう一度行う。
【0161】
(ステップ1)
整形開始初期条件として、パルススタッカー20からの8個のミクロパルスが可変形ミラー40の中心に入射し、フォトカソード51と等距離にあるプロファイラ上でほぼ同じ位置にあるように粗調整した。これらは、パルススタッカー20の前のウェッジ56の上下左右の角度制御によって、調整することができる。また、実際には、ウェッジ56の代わりに2枚のパラレルウィンドウの上下左右の角度を制御して、調整した。この段階でのパルス光の空間プロファイルは、図23に示す状態になった。
【0162】
(ステップ2)
ミクロパルス8個のパルス強度がパルススタッカー20直後(出射側λ/2板35の前)のパワーメータで同じになるように、マスクしたスタックユニットのスタック用λ/2板24の角度を回転制御した。このとき、マスキングは、(NNS,NNP)、(NSN,NPN)、(SNN,PNN)の双対になるペアで同じミクロパルス強度になるように微調整した。ここで、NとSとPは各段でのマスク状態を示している。すなわち、Nとはマスクしない状態を示し、PとはS偏光成分をマスクしてP偏光成分を透過させる状態を示し、SとはP偏光成分をマスクしてP偏光成分を透過させる状態を示している。上記のように、N、S、Pを3つ並べて書くことにより、3段のパルススタッカー20のマスク状態を特定することができる。
【0163】
例えば、NNSとは、1段目と2段目のスタックユニット31,32でマスクなしで、3段目のスタックユニット33でP偏光ミクロパルスをマスクしている状態(S偏光ミクロパルスの通過を許可している状態)を示している。また、NNPとは、1段目と2段目のスタックユニット31,32でマスクなしで、3段目のスタックユニット33でS偏光ミクロパルスをマスクしている状態(P偏光ミクロパルスの通過を許可している状態)を示している。なお、その他のマスク状態についても同様である。
【0164】
従って、(NNS,NNP)の双対ペアのミクロパルス強度を等しくする場合、1段目と2段目のスタックユニット31、32をマスクしない状態で、3段目のスタックユニット33で一方をマスクする。そして、出射側λ/2板35の前に、パワーメータを配置して、それぞれのミクロパルスのパワーを測定する。すなわち、NNSのマスク状態で、S偏光成分のパワーを測定し、NNPのマスク状態で、P偏光成分のパワーを測定する。そして、それぞれのパワーを比べ、S偏光成分とP偏光成分とが同じパワーとなるように、スタックユニット33のスタック用λ/2板24を回転させる。これにより、(NNS,NNP)の双対のミクロパルス強度を等しくすることができる。
【0165】
同様に、1段目と2段目のスタックユニット31、32についても、順番にマスクをして、各段でのS偏光成分とP偏光成分とが同じ強度になるように、スタック用λ/2板24を回転させる。2段目のスタックユニット32のみマスクすると、(NSN,NPN)の双対でミクロパルス強度が等しくなる。また、1段目のスタックユニット31のみマスクすると、(SNN,PNN)の双対でミクロパルス強度が等しくなる。このようにして、各段について、スタック用λ/2板25の最適な回転角度を求めた。
【0166】
そして、レーザトランスポート光学系での反射率、透過率の偏光依存性を補償するように、ミクロパルス8個のパルス強度がカメラ47等上で同じになるように、出射側λ/2板35を回転制御した。
【0167】
図24〜図27にステップ2における測定データを示す。なお、図24〜図27は、下記の一連のステップの終了後、再度行った精密調整時のものである。図24はマスク状態がSNNの場合の測定データを示し、図25は、マスク状態がPNNの場合の測定データを示している。図24と図25は、双対のミクロパルス間で、アライメントがずれている例を示している。図25では、ミクロパルスの入射位置が、サークルの中心からずれている。
【0168】
図26は、マスク状態がNSNの場合の測定データを示し、マスク状態がNPNの場合の測定データを示している。図26と図27とでは、双対のミクロパルス間の強度が異なっている。マスク状態がNPNのミクロパルスの強度が、NSNのミクロパルスよりも低くなっている。このような場合、スタック用λ/2板の回転角度を調整して、双対のミクロパルスの強度を同じにする。そして、この後、双対のマスキング間で、プロファイルがカメラ47上で同じく重なるように微調整する。
【0169】
(ステップ3)
可変形ミラー40の59個のチャネルで、全て同じ電圧のセットをかけた。そして、オール0〜255Vまでかけていき、8個のミクロパルスが目的のビーム径程度になる印加電圧を求めた。例えば、カソード表面上で0.8mmのスポット径を目指す場合、印加電圧をオール115Vとすると、最も適しているという結果になった。ステップ3の段階での測定データを図28に示す。そして、この状態から、中心の直径0.8mmのサークル内に収まる様に、円筒形型パルス光強度を遺伝的アルゴリズムで探す。ここから、探索の出発点となる。
【0170】
(ステップ4)
可変形ミラー40の制御アルゴリズムである遺伝的アルゴリズムの初期遺伝子を、同じ電圧セットで用意した。ここでは、上記のようにオール115V近辺での遺伝子が優秀であることが予想されることから、生存率を上げるために個体数を増やした。また、突然変異確率を1%とした。遺伝的アルゴリズムで実際の3万ステップで試行すると、281回の突然変異を起こした。
初期遺伝子(合計100個)
オール85〜99 1セットづつ 1×15=15
オール100〜104 2セットづつ 2×5=10
オール105〜125 3セットづつ 3×21=63
オール126〜135 1セットづつ 1×10=10
オール85〜99 2セット 2×1=2
因みに最後のオール115Vのセット2本は、何回か最適化アルゴリズムを試行するうちに優れたセットであると見做された遺伝子(DNA)と置き換えるようにする。それにより、優秀な遺伝子の生存率を上げる。
遺伝的アルゴリズムは、ある評価関数を最大化するように制御する。その評価関数の要素は、例えば、H. Tomizawa, T. Asaka, H. Dewa, H. Hanaki, T. Kobayashi, A. Mizuno, S. Suzuki, T. Taniuchi, and K. Yanagida, <Status of SPring−8 photocathode RF Gun for Future light Sourcesc, Proceedings of the 27th International Free electron laser Conference, Stanford, CA, 21−26 August 2005, (2005) pp. 138−141の表1の9個のパラメータに各係数をかけたものの線形結合で作った。そして、各係数は、表の上から50、200、170、200、300、0、200、0、10に設定した。
【0171】
(ステップ5)
全体として3万ステップになるように、交互にマスクしながら、可変形ミラー40を遺伝的アルゴリズムで整形した。ここでは、以下のような順番でマスキングを行った。
全体(NNN)−SSS−全体−SSP−全体−SPS−全体−PSS−全体−SPP−全体−PSP−全体−PPS−全体−PPP−全体
各段階でのマクロパルス全体の調整は、2000ステップづつ行った。従って、1サイクルの中で全体の調整を9回行っているため、全体調整を18000ステップ行った。各ミクロパルスの調整は、それぞれ1500ステップづつ全8回行った。従って、1サイクルの中で各ミクロパルスの整形を12000ステップを行った。そして、1サイクルの中で、合わせて30000ステップ行った。このステップ5での、空間プロファイルが図29に示すようになった。
【0172】
このように、マクロパルス全体の測定とミクロパルス毎の測定とを交互に行い、その測定結果に応じてパルス形状を随時調整した。すなわち、複数ステップの全体測定が終了した後、複数ステップのミクロパルス測定を行った。そして、全体測定とミクロパルス測定を交互に行っていった。また、ミクロパルス測定ではマスクするミクロパルスを順番に変えていき、全てのミクロパルスの測定を順番に行っていった。そして、遺伝的アルゴリズムを用いて、可変形ミラー40を調整して、パルス形状を最適化していった。
【0173】
この後、ステップ2の精密調整を行なった。そして、各ミクロパルス間のミスアライメントと、パルスエネルギーの不均一性をなくした。この様子は、図24〜図27に示した。プロファイラー上での各ミクロパルスの位置ずれが、10μm以内になり、8つのミクロパルスのパルスエネルギーの平均値からの差は±10%以内に収まった。
さらに、ステップ0を行い、電子ビームのエネルギースペクトルとエミッタンスが最小値になるように、光変調器13の2次分散の設定値を設定した。ここでは、光変調器13の2次分散の値から判断して、光変調器13の2次分散の設定値を18500fs2に変更した。この設定値を設定した後、ステップ4のオール115Vのセット2本を、先の30000ステップでの最適化アルゴリズムの試行で選ばれた最適の遺伝子(DNA)2本と置き換えた。そして、30000ステップの最適化を行った。
【0174】
なお、遺伝的アルゴリズムについて、その初期遺伝子集団を用意するとき、最初のステップにおいて2乗間隔ですべてが同じ電極印加電圧になるセットで作ることが好ましい場合がある。このようにすることで、探索空間を最大化することができる。これは、可変形ミラー30が静電アクチュエータ方式の場合、可変形ミラー40の変形変位量が各電極に印加する電圧の2乗に比例するためである。従って、この方法をごく初期のステップで使用している。なお、可変形ミラー30がピエゾアクチュエータ方式の場合はこの方法を利用しなくてもよい。
【符号の説明】
【0175】
10 光源部、11 レーザ発振器、12 パルスストレッチャー、13 光変調器、
14 再生増幅器、15 マルチパス増幅器、16 パルスコンプレッサー、
17 波長変換器、
20 パルススタッカー、21 入射側λ/4板、22 入射側λ/2板、
23 入射側PBS、24 スタック用λ/2板、25 固定ミラー対、
26 可動ミラー対、27 アクチュエータ、28 分岐用PBS、
28a〜28d 分岐用PBS、29 合成用PBS、29a〜29d 合成用PBS、
30 ミラー、31 スタックユニット、32 スタックユニット、
33 スタックユニット、34 ミラー、35 出射側λ/2板、37 遮光部材、
40 可変形ミラー、41 ミラー、42 レンズ、43 レンズ、44 レンズ、
45 ミラー、46 ビームスプリッタ、47 カメラ、48 制御装置、
51 フォトカソード、52 共振器、53 マイクロ波源、55 ビームモニタ
70 パルススタッカー
71 前段側PBS、71a 前段側PBS、71b 前段側PBS、
74 後段側分岐用ビームスプリッタ、75 後段側合成用ビームスプリッタ、
76 後段側分岐用ビームスプリッタ、77 後段側合成用ビームスプリッタ、
78 後段側分岐用ビームスプリッタ、79 後段側合成用ビームスプリッタ、
81 ミラー、84 前段側λ/2板、85a 前段側λ/2板、
85b 前段側λ/2板、86b〜86d アパーチャー
90 測定部、91 測定用PBS、92 ミラー、93 非線形光学素子、
94 分光器、95 プローブ用光変調器、
120 スタッキングロッド、121 ウェッジ、122 ウェッジ、
123 複屈折素子、124 取出し用λ/2波長板、125 取出し用PBS、
126 スタック用λ/2板、131 スタックユニット、132 スタックユニット、133 スタックユニット、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光の直交する偏光成分間に時間遅延を与える複屈折素子と、
前記複屈折素子からのパルス光のパルス形状を調整する調整手段と、
前記複屈折素子から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段と、
前記調整手段により前記パルス形状を調整するために、前記手段によって取り出された前記一方の偏光成分に応じた測定を行う測定器と、を備えるパルス整形装置。
【請求項2】
パルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段が、前記パルス光の光路中に挿脱可能に設けられている請求項1に記載のパルス整形装置。
【請求項3】
タイミングがずれた2つのパルス光を含む第1の光ビームを出射する第1のスタックユニットと、
タイミングがずれた2つのパルス光を含む第2の光ビームを出射する第2のスタックユニットと、
第1及び第2のスタックユニットの後段において、前記第1及び第2の光ビームを合成する後段側光合成手段と、
前記後段側光合成手段と前記スタックユニットとの間に配置され、前記第1の光ビームのプロファイルを変化させるプロファイル変化手段と、を備え、
前記第1及び第2のスタックユニットのそれぞれが請求項2に記載のパルス整形装置によって構成され、
前記手段が光路中から取り除いた状態となっているパルス整形装置。
【請求項4】
前記後段側光合成手段が前記一方の光ビームと前記他方の光ビームを合成する偏光ビームスプリッタであり、前記後段側光合成手段から出射する偏光成分を利用光とし、前記後段側光合成手段から漏れてくる無偏光成分を測定光とし、
前記測定光のパルス形状の測定結果に基づいて、前記利用光のパルス形状を調整する請求項3に記載のパルス整形装置。
【請求項5】
時間に応じて波長が変化するプローブ光を発生する手段と、
前記測定光と前記プローブ光とが同期して入射する非線形光学素子と、
前記非線形光学素子から出射する光のスペクトルを測定する分光器と、をさらに備え、
前記分光器での測定結果に基づいて、前記パルス光の進行方向におけるパルス形状を調整する請求項5、又は10に記載のパルス整形装置。
【請求項6】
前記後段側光合成手段が無偏光ビームスプリッタである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパルス整形装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパルス整形装置と、
前記パルス整形装置で整形されたパルス光が入射するフォトカソードと、を備える電子銃。
【請求項8】
前記フォトカソードで発生した電子ビームのバンチ形状を測定し、
前記バンチ形状の測定結果に基づいて、前記パルス形状を調整する請求項7に記載の電子銃。
【請求項9】
前記電子ビームのバンチ内電子をエネルギーに応じて空間的に分散させた後、バンチ内電子の空間分布を測定し、
前記空間分布の測定結果に基づいて、前記パルス光の進行方向におけるパルス形状を調整する請求項8に記載の電子銃。
【請求項10】
パルス光の直交する偏光成分間に対して、時間遅延を与える複屈折素子と、
前記複屈折素子からのパルス光のパルス形状を調整する調整手段と、を用いたパルス整形方法であって、
前記複屈折素子から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出すステップと、
前記調整手段により前記パルス形状を調整するために、前記取り出された一方の偏光成分に応じた測定を行うステップと、
前記測定を行うステップでの測定結果に基づいて、パルス形状を調整するステップと、を備えるパルス整形方法。
【請求項11】
タイミングがずれた2つのパルス光を含む第1の光ビームを出射するステップと、
タイミングがずれた2つのパルス光を含む第2の光ビームを出射するステップと、
前記第1の光ビームのプロファイルを変化させるステップと、
前記第2の光ビームと、前記プロファイルが変化した前記第1の光ビームとを合成して、出射するステップと、を備え、
前記第1及び第2の光ビームのそれぞれが請求項10に記載のパルス整形方法によって整形された2つのパルス光を含む光ビームであるパルス整形方法。
【請求項1】
パルス光の直交する偏光成分間に時間遅延を与える複屈折素子と、
前記複屈折素子からのパルス光のパルス形状を調整する調整手段と、
前記複屈折素子から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段と、
前記調整手段により前記パルス形状を調整するために、前記手段によって取り出された前記一方の偏光成分に応じた測定を行う測定器と、を備えるパルス整形装置。
【請求項2】
パルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出す手段が、前記パルス光の光路中に挿脱可能に設けられている請求項1に記載のパルス整形装置。
【請求項3】
タイミングがずれた2つのパルス光を含む第1の光ビームを出射する第1のスタックユニットと、
タイミングがずれた2つのパルス光を含む第2の光ビームを出射する第2のスタックユニットと、
第1及び第2のスタックユニットの後段において、前記第1及び第2の光ビームを合成する後段側光合成手段と、
前記後段側光合成手段と前記スタックユニットとの間に配置され、前記第1の光ビームのプロファイルを変化させるプロファイル変化手段と、を備え、
前記第1及び第2のスタックユニットのそれぞれが請求項2に記載のパルス整形装置によって構成され、
前記手段が光路中から取り除いた状態となっているパルス整形装置。
【請求項4】
前記後段側光合成手段が前記一方の光ビームと前記他方の光ビームを合成する偏光ビームスプリッタであり、前記後段側光合成手段から出射する偏光成分を利用光とし、前記後段側光合成手段から漏れてくる無偏光成分を測定光とし、
前記測定光のパルス形状の測定結果に基づいて、前記利用光のパルス形状を調整する請求項3に記載のパルス整形装置。
【請求項5】
時間に応じて波長が変化するプローブ光を発生する手段と、
前記測定光と前記プローブ光とが同期して入射する非線形光学素子と、
前記非線形光学素子から出射する光のスペクトルを測定する分光器と、をさらに備え、
前記分光器での測定結果に基づいて、前記パルス光の進行方向におけるパルス形状を調整する請求項5、又は10に記載のパルス整形装置。
【請求項6】
前記後段側光合成手段が無偏光ビームスプリッタである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパルス整形装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパルス整形装置と、
前記パルス整形装置で整形されたパルス光が入射するフォトカソードと、を備える電子銃。
【請求項8】
前記フォトカソードで発生した電子ビームのバンチ形状を測定し、
前記バンチ形状の測定結果に基づいて、前記パルス形状を調整する請求項7に記載の電子銃。
【請求項9】
前記電子ビームのバンチ内電子をエネルギーに応じて空間的に分散させた後、バンチ内電子の空間分布を測定し、
前記空間分布の測定結果に基づいて、前記パルス光の進行方向におけるパルス形状を調整する請求項8に記載の電子銃。
【請求項10】
パルス光の直交する偏光成分間に対して、時間遅延を与える複屈折素子と、
前記複屈折素子からのパルス光のパルス形状を調整する調整手段と、を用いたパルス整形方法であって、
前記複屈折素子から出射したパルス光の直交する偏光成分の一方を他方の偏光成分から取り出すステップと、
前記調整手段により前記パルス形状を調整するために、前記取り出された一方の偏光成分に応じた測定を行うステップと、
前記測定を行うステップでの測定結果に基づいて、パルス形状を調整するステップと、を備えるパルス整形方法。
【請求項11】
タイミングがずれた2つのパルス光を含む第1の光ビームを出射するステップと、
タイミングがずれた2つのパルス光を含む第2の光ビームを出射するステップと、
前記第1の光ビームのプロファイルを変化させるステップと、
前記第2の光ビームと、前記プロファイルが変化した前記第1の光ビームとを合成して、出射するステップと、を備え、
前記第1及び第2の光ビームのそれぞれが請求項10に記載のパルス整形方法によって整形された2つのパルス光を含む光ビームであるパルス整形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2012−215905(P2012−215905A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159590(P2012−159590)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2007−197232(P2007−197232)の分割
【原出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(599112582)公益財団法人高輝度光科学研究センター (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2007−197232(P2007−197232)の分割
【原出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(599112582)公益財団法人高輝度光科学研究センター (35)
【Fターム(参考)】
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