パワーエレクトロニクス用デバイス
【課題】半導体装置の小型化が図れ、接合装置や治具等の自由度を向上する手段を提供する。
【解決手段】半導体装置10とヒートシンク20とからなるパワーエレクトロニクス用デバイスにおいて、ヒートシンク20は、クロス部22からフィン21を林立させ、これらのフィン21の先端面のみにペースト25を臨ませて、半導体装置10とヒートシンク20とを合体する。そして、プレスパンチ34で押圧しながら加熱焼結を行う。
【効果】フィン21の先端面の面積和(s1+s2+・・・+s8)は十分に小さいため、押圧P2が小さくて済む。結果、樹脂ケース15の剛性を下げることができ、樹脂ケース15の薄肉化が可能となり、半導体装置10の小型化及び軽量化が図れる。
【解決手段】半導体装置10とヒートシンク20とからなるパワーエレクトロニクス用デバイスにおいて、ヒートシンク20は、クロス部22からフィン21を林立させ、これらのフィン21の先端面のみにペースト25を臨ませて、半導体装置10とヒートシンク20とを合体する。そして、プレスパンチ34で押圧しながら加熱焼結を行う。
【効果】フィン21の先端面の面積和(s1+s2+・・・+s8)は十分に小さいため、押圧P2が小さくて済む。結果、樹脂ケース15の剛性を下げることができ、樹脂ケース15の薄肉化が可能となり、半導体装置10の小型化及び軽量化が図れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱性半導体素子を内蔵する半導体装置に、ヒートシンクを付設してなるパワーエレクトロニクス用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路を樹脂ケースに収納してなる半導体装置は、広く使用されている。そして、高い発熱性がある半導体素子(以下、発熱性半導体素子と記す。)は、樹脂ケースの内に配置される。通電による発熱によって、素子温度が耐熱温度を超えてしまう。対策として、熱放散を促すヒートシンクの付設がある。
【0003】
ヒートシンクが付設されているパワーエレクトロニクス用デバイスの一例を図面に基づいて説明する。
図11は従来のパワーエレクトロニクス用デバイスの断面図であり、従来の車載用のパワーエレクトロニクス用デバイス100は、半導体装置101と、この半導体装置101に付設したヒートシンク102とからなる。
そして、半導体装置101は、発熱性半導体素子103と回路板104と絶縁板105と放熱金属板106とを積層して、樹脂ケース107に一括収納してなる。ただし、放熱金属板106は、図下面が外へ露出している。
【0004】
この放熱金属板106からの放熱を促すために、この放熱金属板106にヒートシンク102が接続される。ところで、放熱金属板106は、見かけ上平坦であっても、微少の凹凸を不可避的に有する。ヒートシンク102も同様に、微少の凹凸を有する。
そのため、放熱金属板106とヒートシンク102との接合部に、微少の隙間が無数に発生し、これらの隙間が伝熱を妨げる。対策として、接合部に伝熱グリース108が塗布される。伝熱グリースで隙間が埋められるため、伝熱性が改善される。
【0005】
ただし、伝熱グリースは経年劣化が避けられない。また、アルミニウム製のヒートシンク102の熱伝導率が236W/m・Kであるのに対して、伝熱グリースの熱伝導率は10W/m・K程度又はそれ以下であり、期待したほどの伝熱性の改善が見込めない。
【0006】
対策として、金属ナノ粒子の利用が考えられる。
半導体装置の接合に金属ナノ粒子を使用することが知られている(例えば、特許文献1(図3)参照。)。
特許文献1の図3において、半導体素子(101)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)に、金属基材(301)が金属ナノ粒子層(302)で接合されている。
このような金属ナノ粒子層(302)を、伝熱グリース108に代えた例を次図で説明する。
【0007】
図12に示すように、ヒートシンク102の上面に、有機物で被覆されている金属ナノ粒子を分散媒に分散させてなるペーストを塗布し、その上に半導体装置101を載せる。次に、押圧力P1で半導体装置101を押し、この状態で加熱する。すると、有機物がガス化して飛散し、さらに焼結温度に加熱すると、金属ナノ粒子が放熱金属板106及びヒートシンク102に焼結結合する。
すなわち、パワーエレクトロニクス用デバイス100Bは、半導体装置101と、金属ナノ粒子層109で半導体装置101に付設されているヒートシンク102とからなる。その他の構成は、図11と同一であるため、符号を流用し、説明を省略する。
【0008】
金属ナノ粒子層109は、金属並みの熱伝導率を有するために、格段に伝熱性を高めることができる。
図中、S1は接合部の面積を示し、この面積S1が大きいほど、押圧力P1は大きくなる。この押圧力P1に耐えるように、樹脂ケース107の剛性を確保する必要がある。結果、半導体装置101Bの小型化が難しくなる。
また、焼結は有機ガスが抜けた周囲から始まるため、接合部の面積S1が大きいと、接合部の中央に発生した有機物ガスは、抜け難いために、有機被膜の除去が不十分になる。中央に、有機ガスが残るとボイド等が発生するために焼結結合が不十分になり、所望の接合強度が得られなくなるという問題がある。
対策として、時間を掛けてガス抜きをさせる。しかし、生産時間が延びて、生産性が低下し、実用的な対策とならない。
【0009】
このように、金属ナノ粒子を使用した場合に、伝熱性の改善は期待できる反面、半導体装置が大きくなり、接合装置や治具に制限がかかることや、ボイドの発生による接合強度の低下という新たな問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−214340公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、半導体装置の小型化が図れ、接合装置や治具等の自由度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、発熱性半導体素子、回路板、絶縁板、放熱金属板が積層された形態でケースに収納され、前記放熱金属板の外面が露出している半導体装置と、前記放熱金属板に付設されるヒートシンクとからなるパワーエレクトロニクス用デバイスであって、
前記ヒートシンクは、複数のフィンと、これらのフィンの一端を連結するクロス部とからなる櫛歯断面を呈し、
前記フィンの先端と前記放熱金属板とが金属ナノ粒子で接合されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、ヒートシンクに、半導体装置を嵌合させて半導体装置にヒートシンクを位置合わせする位置合わせ用凹部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、複数のフィンにより櫛歯断面を呈するヒートシンクを採用し、フィンの先端を放熱金属板に接合する。接合面の面積が少なくなり、焼結時のプレス圧力を減少させることができる。プレス圧力が小さければ、ケースの剛性を下げることができ、ケースの軽量、小型化が可能となり、もってパワーエレクトロニクス用デバイスの小型化が達成できる。ヒートシンクの上板がないことによる熱伝導性の向上、半導体装置の耐熱性も向上する。ナノ粒子ペーストの使用量削減によるコスト低減の効果もある。
【0015】
さらには、フィンとフィンとの間に冷媒を流すと、この冷媒は直接放熱金属板に接触する。結果、放熱性をより高めることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、位置合わせ用凹部を介して半導体装置をヒートシンクに嵌合できるようにした。製造中での位置合わせが容易になり、製造時間を短縮することができ、パワーエレクトロニクス用デバイスの生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る準備工程を説明する図である。
【図2】パワーエレクトロニクス用デバイスの製造工程を説明するフロー図である。
【図3】塗布工程を説明する図である。
【図4】第1加熱工程を説明する図である。
【図5】第2加熱工程を説明する図である。
【図6】本発明に係るパワーエレクトロニクス用デバイスの断面図である。
【図7】図3の別実施例を説明する図である。
【図8】図6の別実施例を説明する図である。
【図9】図3の更なる別実施例を説明する図である。
【図10】図6の更なる別実施例を説明する図である。
【図11】従来のパワーエレクトロニクス用デバイスの断面図である。
【図12】従来の別のパワーエレクトロニクス用デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0019】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1(a)に示されるように、半導体装置10は、発熱性半導体素子11と回路板12と絶縁基板13と放熱金属板14とを積層して、樹脂ケース15に一括収納してなる。ただし、放熱金属板14は、図下面が外へ露出している。
放熱金属板14は、銅、アルミニウム、Al−SiC複合材又は炭素−金属複合材が好適である。
【0020】
準備するヒートシンク20は、(b)に示すように、複数のフィン21の一端のみがクロス部22で連結された櫛歯断面体であり、アルミニウム合金の押出品が好適である。
【0021】
又、準備する金属ナノ粒子ペースト25は、C、H、Oを含む有機被膜26で被覆された金属ナノ粒子27を、分散媒28に分散させてなる。金属ナノ粒子27の金属は銀が好ましい。また、分散媒28は、エチレングリコール、トルエン、テトラデカン、ブタンジオール、低級アルコールの一種又は複数種を含む。
【0022】
金属ナノ粒子27が主体であるため、分散媒28は少ないほどよく、質量%で、分散媒28は5〜15%以下とする。残部が金属ナノ粒子27となる。なお、有機被膜26は、常温で金属ナノ粒子27同士が凝集することを防止する機能を発揮する分離用膜であり、ごく薄いため、金属ナノ粒子に対して3〜8%とする。
【0023】
以上のように、準備が終わったら、次図のフローに基づいて製造を実施する。
図2に示すステップ(以下、STと記す。)01の準備工程は、上述の図1により終了している。次に、接合面(放熱金属板14とフィン21の先端)を洗浄する(ST02)。
【0024】
ST02の洗浄工程は次の何れかの手順で実施する。
第1の手順は、アセトンで洗浄し、純水で洗い、乾燥させる。
第2の手順は、イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄し、純水で洗い、乾燥させる。
第3の手順は、アセトン又はIPAで洗浄し、酸で洗い、純水で洗い、乾燥させる。
第4の手順は、プラズマ洗浄法で洗浄する。
【0025】
洗浄が終わったら、放熱金属板14に、金属ナノ粒子ペースト25を塗布する(ST03)。この金属ナノ粒子塗布工程では、図3に示すように、放熱金属板14に筋状に金属ナノ粒子ペースト25を塗布する。筋はフィン21のピッチに合わせる。メタルマスク版やスクリーン印刷版を用いると、容易に塗布が行える。
【0026】
塗布が終わったら、金属ナノ粒子ペースト25にフィン21を位置合わせしながら、ヒートシンク20を半導体装置10に合わせる(図2、ST04)。
合体物29は、図4に示すヒータ31を備えている第1加熱炉32に装入する。そして、この第1加熱炉32で、大気雰囲気中、60〜120℃の温度で、5〜120分間、第1加熱を実施する(図2、ST05)。この第1加熱工程により、分散媒が除去される。
【0027】
次に、合体物29を、図5に示すヒータ33及びプレスパンチ34を備えている第2加熱炉35に装入する。そして、この第2加熱炉35で、押圧力P2で押しながら、大気雰囲気中、150〜300℃の温度で、5〜120分間、第2加熱を実施する(図2、ST06)。この第2加熱工程により、有機被膜がガス化して除去される。発生ガスは、フィン21、21間の隙間、すなわち溝36を通るため、円滑に且つ短い時間で排出される。
また、押圧力P2は、フィン21の先端の面積s1〜s8の総和に比例する。この面積は図12に示す面積S1の約半分である。したがって、押圧力P2は十分に小さくなる。
【0028】
有機被膜が除去されると、金属ナノ粒子が直接放熱金属板14及びフィンの先端に接触し、焼結結合が行われる。
【0029】
結果、図6に示されるように、半導体装置10とヒートシンク20とが、金属ナノ粒子からなる接合層37で結合されたパワーエレクトロニクス用デバイス38が得られる。
溝36がガスの排出路を兼ねるため、有機ガス抜けが円滑に行われ、生産時間の短縮化を図ることができると共に、ボイドの発生を抑えることができる。
また、押圧力(図5、P2)が小さくなれば、樹脂ケース15の肉厚を薄くすることができ、半導体装置10の小型、軽量化が達成できる。
【0030】
さらには、溝36に冷媒(水、空気、不活性ガス)を流すと、冷媒が直接放熱金属板14に接触する。この結果、放熱金属板14をより効果的に冷却することができる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図7に示されるように、ヒートシンク20Bに、半導体装置10側へ突出する周壁部39が設けられている。この周壁部39の内側が、半導体装置10を収納する位置合わせ用凹部41となる。その他の構成は、図3と同じであるため符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0032】
位置合わせ用凹部41に半導体装置10を嵌合することで、ヒートシンク20Bとの合体作業が容易になる。すなわち、ヒートシンク20Bの心に半導体装置10の心を簡単に合わせることができる。
結果、図8に示されるように、半導体装置10とヒートシンク20Bとが、金属ナノ粒子からなる接合層37で結合されたパワーエレクトロニクス用デバイス38Bが得られる。
【実施例3】
【0033】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図9に示されるように、ヒートシンク20Cは、クロス部22と、このクロス部22から垂直に延ばされたフィン21とからなるが、このフィン21が先端に向かって広がる台形断面フィンである。台形断面フィンであるから、先端の面積S2を拡大することができ、金属ナノ粒子ペースト25の塗布面積を増大した面積S2に合わせることができる。その他の構成は、図3と同じであるため符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0034】
結果、図10に示されるように、半導体装置10とヒートシンク20Cとが、金属ナノ粒子からなる接合層37で結合されたパワーエレクトロニクス用デバイス38Cが得られる。接合層37の面積が大きいため、放射金属板14からヒートシンク20Cへの伝熱量を増すことができ、半導体装置10の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、車両に搭載されるパワーエレクトロニクス用デバイスに好適である。
【符号の説明】
【0036】
10…半導体装置、11…発熱性半導体素子、12…回路板、13…絶縁基板、14…放熱金属板、15…ケース(樹脂ケース)、20、20B、20C…ヒートシンク、21…フィン、22…クロス部、38、38B、38C…パワーエレクトロニクス用デバイス、41…位置合わせ用凹部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱性半導体素子を内蔵する半導体装置に、ヒートシンクを付設してなるパワーエレクトロニクス用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路を樹脂ケースに収納してなる半導体装置は、広く使用されている。そして、高い発熱性がある半導体素子(以下、発熱性半導体素子と記す。)は、樹脂ケースの内に配置される。通電による発熱によって、素子温度が耐熱温度を超えてしまう。対策として、熱放散を促すヒートシンクの付設がある。
【0003】
ヒートシンクが付設されているパワーエレクトロニクス用デバイスの一例を図面に基づいて説明する。
図11は従来のパワーエレクトロニクス用デバイスの断面図であり、従来の車載用のパワーエレクトロニクス用デバイス100は、半導体装置101と、この半導体装置101に付設したヒートシンク102とからなる。
そして、半導体装置101は、発熱性半導体素子103と回路板104と絶縁板105と放熱金属板106とを積層して、樹脂ケース107に一括収納してなる。ただし、放熱金属板106は、図下面が外へ露出している。
【0004】
この放熱金属板106からの放熱を促すために、この放熱金属板106にヒートシンク102が接続される。ところで、放熱金属板106は、見かけ上平坦であっても、微少の凹凸を不可避的に有する。ヒートシンク102も同様に、微少の凹凸を有する。
そのため、放熱金属板106とヒートシンク102との接合部に、微少の隙間が無数に発生し、これらの隙間が伝熱を妨げる。対策として、接合部に伝熱グリース108が塗布される。伝熱グリースで隙間が埋められるため、伝熱性が改善される。
【0005】
ただし、伝熱グリースは経年劣化が避けられない。また、アルミニウム製のヒートシンク102の熱伝導率が236W/m・Kであるのに対して、伝熱グリースの熱伝導率は10W/m・K程度又はそれ以下であり、期待したほどの伝熱性の改善が見込めない。
【0006】
対策として、金属ナノ粒子の利用が考えられる。
半導体装置の接合に金属ナノ粒子を使用することが知られている(例えば、特許文献1(図3)参照。)。
特許文献1の図3において、半導体素子(101)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)に、金属基材(301)が金属ナノ粒子層(302)で接合されている。
このような金属ナノ粒子層(302)を、伝熱グリース108に代えた例を次図で説明する。
【0007】
図12に示すように、ヒートシンク102の上面に、有機物で被覆されている金属ナノ粒子を分散媒に分散させてなるペーストを塗布し、その上に半導体装置101を載せる。次に、押圧力P1で半導体装置101を押し、この状態で加熱する。すると、有機物がガス化して飛散し、さらに焼結温度に加熱すると、金属ナノ粒子が放熱金属板106及びヒートシンク102に焼結結合する。
すなわち、パワーエレクトロニクス用デバイス100Bは、半導体装置101と、金属ナノ粒子層109で半導体装置101に付設されているヒートシンク102とからなる。その他の構成は、図11と同一であるため、符号を流用し、説明を省略する。
【0008】
金属ナノ粒子層109は、金属並みの熱伝導率を有するために、格段に伝熱性を高めることができる。
図中、S1は接合部の面積を示し、この面積S1が大きいほど、押圧力P1は大きくなる。この押圧力P1に耐えるように、樹脂ケース107の剛性を確保する必要がある。結果、半導体装置101Bの小型化が難しくなる。
また、焼結は有機ガスが抜けた周囲から始まるため、接合部の面積S1が大きいと、接合部の中央に発生した有機物ガスは、抜け難いために、有機被膜の除去が不十分になる。中央に、有機ガスが残るとボイド等が発生するために焼結結合が不十分になり、所望の接合強度が得られなくなるという問題がある。
対策として、時間を掛けてガス抜きをさせる。しかし、生産時間が延びて、生産性が低下し、実用的な対策とならない。
【0009】
このように、金属ナノ粒子を使用した場合に、伝熱性の改善は期待できる反面、半導体装置が大きくなり、接合装置や治具に制限がかかることや、ボイドの発生による接合強度の低下という新たな問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−214340公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、半導体装置の小型化が図れ、接合装置や治具等の自由度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、発熱性半導体素子、回路板、絶縁板、放熱金属板が積層された形態でケースに収納され、前記放熱金属板の外面が露出している半導体装置と、前記放熱金属板に付設されるヒートシンクとからなるパワーエレクトロニクス用デバイスであって、
前記ヒートシンクは、複数のフィンと、これらのフィンの一端を連結するクロス部とからなる櫛歯断面を呈し、
前記フィンの先端と前記放熱金属板とが金属ナノ粒子で接合されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、ヒートシンクに、半導体装置を嵌合させて半導体装置にヒートシンクを位置合わせする位置合わせ用凹部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、複数のフィンにより櫛歯断面を呈するヒートシンクを採用し、フィンの先端を放熱金属板に接合する。接合面の面積が少なくなり、焼結時のプレス圧力を減少させることができる。プレス圧力が小さければ、ケースの剛性を下げることができ、ケースの軽量、小型化が可能となり、もってパワーエレクトロニクス用デバイスの小型化が達成できる。ヒートシンクの上板がないことによる熱伝導性の向上、半導体装置の耐熱性も向上する。ナノ粒子ペーストの使用量削減によるコスト低減の効果もある。
【0015】
さらには、フィンとフィンとの間に冷媒を流すと、この冷媒は直接放熱金属板に接触する。結果、放熱性をより高めることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、位置合わせ用凹部を介して半導体装置をヒートシンクに嵌合できるようにした。製造中での位置合わせが容易になり、製造時間を短縮することができ、パワーエレクトロニクス用デバイスの生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る準備工程を説明する図である。
【図2】パワーエレクトロニクス用デバイスの製造工程を説明するフロー図である。
【図3】塗布工程を説明する図である。
【図4】第1加熱工程を説明する図である。
【図5】第2加熱工程を説明する図である。
【図6】本発明に係るパワーエレクトロニクス用デバイスの断面図である。
【図7】図3の別実施例を説明する図である。
【図8】図6の別実施例を説明する図である。
【図9】図3の更なる別実施例を説明する図である。
【図10】図6の更なる別実施例を説明する図である。
【図11】従来のパワーエレクトロニクス用デバイスの断面図である。
【図12】従来の別のパワーエレクトロニクス用デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0019】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1(a)に示されるように、半導体装置10は、発熱性半導体素子11と回路板12と絶縁基板13と放熱金属板14とを積層して、樹脂ケース15に一括収納してなる。ただし、放熱金属板14は、図下面が外へ露出している。
放熱金属板14は、銅、アルミニウム、Al−SiC複合材又は炭素−金属複合材が好適である。
【0020】
準備するヒートシンク20は、(b)に示すように、複数のフィン21の一端のみがクロス部22で連結された櫛歯断面体であり、アルミニウム合金の押出品が好適である。
【0021】
又、準備する金属ナノ粒子ペースト25は、C、H、Oを含む有機被膜26で被覆された金属ナノ粒子27を、分散媒28に分散させてなる。金属ナノ粒子27の金属は銀が好ましい。また、分散媒28は、エチレングリコール、トルエン、テトラデカン、ブタンジオール、低級アルコールの一種又は複数種を含む。
【0022】
金属ナノ粒子27が主体であるため、分散媒28は少ないほどよく、質量%で、分散媒28は5〜15%以下とする。残部が金属ナノ粒子27となる。なお、有機被膜26は、常温で金属ナノ粒子27同士が凝集することを防止する機能を発揮する分離用膜であり、ごく薄いため、金属ナノ粒子に対して3〜8%とする。
【0023】
以上のように、準備が終わったら、次図のフローに基づいて製造を実施する。
図2に示すステップ(以下、STと記す。)01の準備工程は、上述の図1により終了している。次に、接合面(放熱金属板14とフィン21の先端)を洗浄する(ST02)。
【0024】
ST02の洗浄工程は次の何れかの手順で実施する。
第1の手順は、アセトンで洗浄し、純水で洗い、乾燥させる。
第2の手順は、イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄し、純水で洗い、乾燥させる。
第3の手順は、アセトン又はIPAで洗浄し、酸で洗い、純水で洗い、乾燥させる。
第4の手順は、プラズマ洗浄法で洗浄する。
【0025】
洗浄が終わったら、放熱金属板14に、金属ナノ粒子ペースト25を塗布する(ST03)。この金属ナノ粒子塗布工程では、図3に示すように、放熱金属板14に筋状に金属ナノ粒子ペースト25を塗布する。筋はフィン21のピッチに合わせる。メタルマスク版やスクリーン印刷版を用いると、容易に塗布が行える。
【0026】
塗布が終わったら、金属ナノ粒子ペースト25にフィン21を位置合わせしながら、ヒートシンク20を半導体装置10に合わせる(図2、ST04)。
合体物29は、図4に示すヒータ31を備えている第1加熱炉32に装入する。そして、この第1加熱炉32で、大気雰囲気中、60〜120℃の温度で、5〜120分間、第1加熱を実施する(図2、ST05)。この第1加熱工程により、分散媒が除去される。
【0027】
次に、合体物29を、図5に示すヒータ33及びプレスパンチ34を備えている第2加熱炉35に装入する。そして、この第2加熱炉35で、押圧力P2で押しながら、大気雰囲気中、150〜300℃の温度で、5〜120分間、第2加熱を実施する(図2、ST06)。この第2加熱工程により、有機被膜がガス化して除去される。発生ガスは、フィン21、21間の隙間、すなわち溝36を通るため、円滑に且つ短い時間で排出される。
また、押圧力P2は、フィン21の先端の面積s1〜s8の総和に比例する。この面積は図12に示す面積S1の約半分である。したがって、押圧力P2は十分に小さくなる。
【0028】
有機被膜が除去されると、金属ナノ粒子が直接放熱金属板14及びフィンの先端に接触し、焼結結合が行われる。
【0029】
結果、図6に示されるように、半導体装置10とヒートシンク20とが、金属ナノ粒子からなる接合層37で結合されたパワーエレクトロニクス用デバイス38が得られる。
溝36がガスの排出路を兼ねるため、有機ガス抜けが円滑に行われ、生産時間の短縮化を図ることができると共に、ボイドの発生を抑えることができる。
また、押圧力(図5、P2)が小さくなれば、樹脂ケース15の肉厚を薄くすることができ、半導体装置10の小型、軽量化が達成できる。
【0030】
さらには、溝36に冷媒(水、空気、不活性ガス)を流すと、冷媒が直接放熱金属板14に接触する。この結果、放熱金属板14をより効果的に冷却することができる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図7に示されるように、ヒートシンク20Bに、半導体装置10側へ突出する周壁部39が設けられている。この周壁部39の内側が、半導体装置10を収納する位置合わせ用凹部41となる。その他の構成は、図3と同じであるため符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0032】
位置合わせ用凹部41に半導体装置10を嵌合することで、ヒートシンク20Bとの合体作業が容易になる。すなわち、ヒートシンク20Bの心に半導体装置10の心を簡単に合わせることができる。
結果、図8に示されるように、半導体装置10とヒートシンク20Bとが、金属ナノ粒子からなる接合層37で結合されたパワーエレクトロニクス用デバイス38Bが得られる。
【実施例3】
【0033】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図9に示されるように、ヒートシンク20Cは、クロス部22と、このクロス部22から垂直に延ばされたフィン21とからなるが、このフィン21が先端に向かって広がる台形断面フィンである。台形断面フィンであるから、先端の面積S2を拡大することができ、金属ナノ粒子ペースト25の塗布面積を増大した面積S2に合わせることができる。その他の構成は、図3と同じであるため符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0034】
結果、図10に示されるように、半導体装置10とヒートシンク20Cとが、金属ナノ粒子からなる接合層37で結合されたパワーエレクトロニクス用デバイス38Cが得られる。接合層37の面積が大きいため、放射金属板14からヒートシンク20Cへの伝熱量を増すことができ、半導体装置10の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、車両に搭載されるパワーエレクトロニクス用デバイスに好適である。
【符号の説明】
【0036】
10…半導体装置、11…発熱性半導体素子、12…回路板、13…絶縁基板、14…放熱金属板、15…ケース(樹脂ケース)、20、20B、20C…ヒートシンク、21…フィン、22…クロス部、38、38B、38C…パワーエレクトロニクス用デバイス、41…位置合わせ用凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱性半導体素子、回路板、絶縁板、放熱金属板が積層された形態でケースに収納され、前記放熱金属板の外面が露出している半導体装置と、前記放熱金属板に付設されるヒートシンクとからなるパワーエレクトロニクス用デバイスであって、
前記ヒートシンクは、複数のフィンと、これらのフィンの一端を連結するクロス部とからなる櫛歯断面を呈し、
前記フィンの先端と前記放熱金属板とが金属ナノ粒子で接合されていることを特徴とするパワーエレクトロニクス用デバイス。
【請求項2】
前記ヒートシンクに、前記半導体装置を嵌合させて前記半導体装置に前記ヒートシンクを位置合わせする位置合わせ用凹部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のパワーエレクトロニクス用デバイス。
【請求項1】
発熱性半導体素子、回路板、絶縁板、放熱金属板が積層された形態でケースに収納され、前記放熱金属板の外面が露出している半導体装置と、前記放熱金属板に付設されるヒートシンクとからなるパワーエレクトロニクス用デバイスであって、
前記ヒートシンクは、複数のフィンと、これらのフィンの一端を連結するクロス部とからなる櫛歯断面を呈し、
前記フィンの先端と前記放熱金属板とが金属ナノ粒子で接合されていることを特徴とするパワーエレクトロニクス用デバイス。
【請求項2】
前記ヒートシンクに、前記半導体装置を嵌合させて前記半導体装置に前記ヒートシンクを位置合わせする位置合わせ用凹部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のパワーエレクトロニクス用デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−232366(P2010−232366A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77357(P2009−77357)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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