説明

パワーオンリセット回路

【課題】誤動作を起こす可能性があった。
【解決手段】電源投入初期もしくは電源電圧降下時にリセット信号を発生し初期化するパワーオンリセット回路であって、電源電圧に応じた電圧を分圧した第1の比較電圧を生成する第1の比較電圧生成部と、電源電圧に応じた第1の電圧を出力する基準電圧生成部と、電源電圧端子と第1のノードとの間に接続され、制御端子に前記第1の電圧を入力するデプレッション型の第1のトランジスタと、前記第1のノードと接地端子との間に接続され、制御端子が前記第1のノードに接続されるエンハンスメント型の第2のトランジスタと、を備え、前記第1のノードの電位に応じた電圧を第2の比較電圧として生成する第2の比較電圧生成部と、前記第1、第2の比較電圧との比較結果に応じてリセット信号を出力する比較器と、を有するパワーオンリセット回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーオンリセット回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路システムの電源を投入した際、電源電圧が低い電圧値となっている状態では回路システムが誤動作する可能性がある。これを防止するため、電源電圧が一定値以上になったことを確認して回路システムの動作を開始させる機能が必要となる。この機能は、パワーオンリセット(POR)と称される。
【0003】
パワーオンリセット機能を実現する一般的な構成は、電源電圧に比例して大きくなる電圧値と基準電圧値をコンパレータで比較する構成となる。この基準電圧の値が温度やプロセスばらつきに対して変動してしまうと、正確なパワーオンリセット機能を実現できない。このため、上記基準電圧の値を温度やプロセスばらつきに対して変動を小さくし、安定で正確なパワーオンリセット機能を実現する技術が求められている。
【0004】
このような技術の一例として特許文献1が開示されている。この特許文献1に、図9に示すようなパワーオンリセット回路1が開示されている。図9に示すように、パワーオンリセット回路1は、基準電圧生成部11、12と、コンパレータCMP11とを有する。
【0005】
基準電圧生成部11は、PMOSトランジスタMP11と、抵抗R11、R12と、容量C11とを有する。基準電圧生成部12は、PMOSトランジスタMP12〜MP14と、NMOSトランジスタMN11、MN12と、ダイオードD11と、抵抗R13、R14とを有する。
【0006】
PMOSトランジスタMP11は、ソースが電源端子VDD、ドレインがノードN11、ゲートがノードN14に接続される。PMOSトランジスタMP12は、ソースが電源端子VDD、ドレインがノードN13、ゲートがノードN11に接続される。PMOSトランジスタMP13は、ソースが電源端子VDD、ドレインがノードN13、ゲートがノードN14に接続される。PMOSトランジスタMP14は、ソースが電源端子VDD、ドレイン及びゲートがノードN14に接続される。PMOSトランジスタMP15は、ソースが電源端子VDD、ドレインがノードN16、ゲートがノードN14に接続される。
【0007】
NMOSトランジスタMN11は、ドレイン及びゲートがノードN13、ソースが接地端子GNDに接続される。NMOSトランジスタMN12は、ドレインがノードN14、ソースがノードN15、ゲートがノードN13に接続される。
【0008】
抵抗R11は、一端がノードN11、他端がノードN12に接続される。抵抗R12は、一端がノードN12、他端が接地端子GNDに接続される。抵抗R13は、一端がノードN15、他端が接地端子GNDに接続される。抵抗R14は、一端がノードN16、他端がノードN17に接続される。
【0009】
容量C11は、一端がノードN11、他端が接地端子GNDに接続される。ダイオードD11は、アノードがノードN17、カソードが接地端子GNDに接続される。コンパレータCMP11は、ノードN16の電圧Vref、N12の電圧VAを比較して、その比較結果を出力端子OUTに出力する。
【0010】
ここで、PMOSトランジスタMP12と容量C11でスタートアップ部13を構成する。また、PMOSトランジスタMP13〜MP15と、NMOSトランジスタMN11、MN12と、抵抗R13、R14と、ダイオードD11とでBGR回路14を構成する。
【0011】
スタートアップ部13及びパワーオンリセット回路1は、以下のような動作を行う。まず、充電前の容量C11は、ノードN11に接地電圧GNDを伝達する。このため、PMOSトランジスタMP12が、オン状態となりノードN13に電源電圧VDDを伝達する。このことから、電源投入初期状態であっても、NMOSトランジスタMN11、MN12に基準電流を流させ、基準電圧生成部12を強制的に能動状態とさせる。
【0012】
そして、上記基準電流に応じて流れる電流により、ノードN12に生成される電圧VAと、ノードN16に生成される電圧Vrefとの比較をコンパレータCMP11により行う。この比較結果を利用して、回路のパワーオンリセットを実現する。ここで、ノードN16の電圧Vrefは、基準電圧生成部12が備えるBGR回路により生成されるため、素子のばらつきや温度依存に影響を受けにくい。このため、パワーオンリセット回路1は、安定したパワーオンリセット動作を行うことができる。
【0013】
図10に、パワーオンリセット回路1の動作波形を示す。図10に示すように、時刻t0に電源が投入され、徐々に電源電圧VDDが上昇する。電源電圧投入直後はBGR回路が動作していないため、電圧Vref、VAが共に低い値となる。そして、BGR回路内部の電位が上昇し始め、電圧Vrefの電位が上昇し所定の基準電圧に落ち着く。一方、電圧VAは、電源電圧VDDと共に上昇を続け、時刻t2で基準電圧Vrefより高くなる。このため、コンパレータCMP11の比較結果として、出力端子OUTから出力されるパワーオンリセット信号が、時刻t2以降にロウレベルとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−186484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、図10に示すように電源電圧投入直後の時刻t0〜t1では、BGR回路の動作電流が十分でないため、電圧VAがVrefより高くなる可能性がある。このため、本来ならば、コンパレータCMP11の比較結果として、ハイレベルのパワーオンリセット信号が出力されるべきところが、ロウレベルの信号が出力端子OUTに出力される可能性がある。このように、パワーオンリセット回路1では、電源電圧投入直後に誤った出力値を出力してしまう問題がある。
【0016】
このような問題を解決する手段とし、パワーオンリセット回路2の構成が特許文献1に記載されている。図11にパワーオンリセット回路2の構成を示す。図11に示すように、パワーオンリセット回路2は、基準電圧生成部21、22と、コンパレータCMP11、CMP12と、OR回路OR11とを有する。なお、基準電圧生成部22は、BGR回路23を有する。
【0017】
基準電圧生成部21は、PMOSトランジスタMP11と、抵抗R11〜R15と、容量C11とを有する。基準電圧生成部22は、PMOSトランジスタMP12〜MP14と、NMOSトランジスタMN11、MN12と、ダイオードD11〜D13とを有する。
【0018】
パワーオンリセット回路2は、パワーオンリセット回路1に新たに、抵抗R15と、ダイオードD12、D13と、コンパレータCMP12と、OR回路OR11を加えた構成となっている。このようなパワーオンリセット回路2は、パワーオンリセット回路1の問題点を解決するため、ノードN18の電圧VBとノードN13の電圧VCとを比較するコンパレータCMP12を儲けている。そして、そのコンパレータCMP12の比較結果とコンパレータCMP11との比較結果とをOR回路OR11により和演算している。この和演算の結果をパワーオンリセット信号とする。
【0019】
図12に、パワーオンリセット回路2の動作波形を示す。図12に示すように、ノードN13の電圧VCは、電源電圧VDDに追随して大きくなり、BGR回路が安定して動作する電圧値に落ち着く。ノードN18の電圧VBは、ノードN12の電圧VAよりも大きな傾きを持って上昇する。このため、図12に示すように、電圧VAと電圧Vrefが交わる時刻t3よりも、早い時刻t2に電圧VBと電圧VCが交わる。このため、これらのコンパレータCMP11、CMP12の出力の和演算を取ることにより、パワーオンリセット回路1で、電源電圧投入直後に誤った値を出力していた問題を解決している。
【0020】
しかし、パワーオンリセット回路2にも以下のような問題点がある。電源電圧VDDの立ち上がりスピードが速い場合、図13に示すように、ノードN13の電圧VCが電源電圧VDDに追随できずに電圧の立ち上がりが遅れる可能性がある。このとき、電圧の立ち上がりが遅れた時間分だけ電圧値の大小が不確定な期間Td1ができてしまい、図13の時刻t0〜t1において、コンパレータCMP12の出力が誤った値を出力してしまう可能性がある。このため、電源電圧VDDの立ち上がりが想定以上に急な場合、パワーオンリセット回路2から出力されるパワーオンリセット信号も電源電圧投入直後に誤った出力値を出力してしまう問題がある。
【0021】
このように、電源投入初期状態であっても、正確にパワーオンリセット信号を生成可能なパワーオンリセット回路が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、半導体装置の電源電圧供給開始時もしくは前記電源電圧降下時にリセット信号を発生し、その半導体装置の内部回路を初期化するパワーオンリセット回路であって、前記電源電圧に応じた電圧を所定の比率で分圧した第1の比較電圧を生成する第1の比較電圧生成部と、前記電源電圧に応じた第1の電圧を出力する基準電圧生成部と、前記電源電圧を供給する電源電圧端子と第1のノードとの間に接続され、制御端子に前記第1の電圧を入力するデプレッション型の第1のトランジスタと、前記第1のノードと接地端子との間に接続され、制御端子が前記第1のノードに接続されるエンハンスメント型の第2のトランジスタと、を備え、前記第1のノードの電位に応じた電圧を第2の比較電圧として生成する第2の比較電圧生成部と、前記第1、第2の比較電圧を比較し、その比較結果に応じて前記リセット信号を出力する比較器と、を有するパワーオンリセット回路である。
【0023】
本発明にかかるパワーオンリセット回路は、電源電圧端子と接地端子との間に直列接続されたデプレッション型の第1のトランジスタとエンハンスメント型の第2のトランジスタによる第2の比較電圧生成部を有する。このデプレッション型の第1のトランジスタとエンハンスメント型の第2のトランジスタは第1のノードで接続され、第2のトランジスタは制御端子が第1のノードに接続されている。このため、第1のノードの電圧は、電源が投入された初期状態では、電源電圧が上昇すると、ほぼ同じ電位で追従して上昇する。
【0024】
そして、第1のノードの電圧は、電源電圧が所定の電圧より大きくなると、一定の電圧になる。このため、その第1のノードに応じた第2の比較電圧と、電源電圧に応じた電圧を所定の比率で分圧した第1の比較電圧とは、電源投入初期状態であっても、大小関係が不確定になることがなく、比較器の出力するリセット信号が誤った値となることを防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかるパワーオンリセット回路は、リセット信号が誤った値となることを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態1にかかるパワーオンリセット回路の構成である。
【図2】実施の形態1にかかるパワーオンリセット回路の動作波形である。
【図3】実施の形態2にかかるパワーオンリセット回路の構成である。
【図4】実施の形態2にかかるパワーオンリセット回路の動作波形である。
【図5】実施の形態3にかかるパワーオンリセット回路の構成である。
【図6】従来のパワーオンリセット回路の問題点を説明するための動作波形である。
【図7】その他の実施の形態にかかるパワーオンリセット回路の構成である。
【図8】その他の実施の形態にかかるパワーオンリセット回路の構成である。
【図9】従来のパワーオンリセット回路の構成である。
【図10】従来のパワーオンリセット回路の問題点を説明するための動作波形である。
【図11】従来のパワーオンリセット回路の構成である。
【図12】従来のパワーオンリセット回路の動作波形である。
【図13】従来のパワーオンリセット回路の問題点を説明するための動作波形である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の実施の形態1
【0028】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に本実施の形態1にかかるパワーオンリセット回路100の構成を示す。図1に示すように、パワーオンリセット回路100は、基準電圧生成回路110と、比較電圧生成部120、130と、コンパレータ(比較器)CMP150とを有する。
【0029】
基準電圧生成回路110は、電源端子VDDからの電源電圧VDDを電源とし、所定の基準電圧を生成する。例えば、図9の基準電圧生成部12のBGR回路14や図11の基準電圧生成部22のBGR回路23のような構成であってもよい。基準電圧生成回路110は、電源投入初期の電源電圧VDDが低い場合、内部回路の駆動電流が十分でなく、能動状態となれない。このため電源電圧VDDが上昇しても、出力である基準電圧Vrefが、その電源電圧VDDに追従できずに低電位となる。
【0030】
比較電圧生成部120は、抵抗R11、R12を有する。抵抗R11は、一端が電源端子VDD、他端がノードN12に接続される。抵抗R12は、一端がノードN12、他端が接地端子GNDに接続される。なお、ノードN12に現れる電圧を比較電圧VAとする。この比較電圧VAは、上記回路の接続構成からもわかるように、電源電圧VDDが上昇すると同様に追従して電圧が上昇する。
【0031】
比較電圧生成部130は、NMOSトランジスタDPMN101、MN101を有する。ここで、NMOSトランジスタDPMN101は、デプレッション型トランジスタである。NMOSトランジスタMN101は、エンハンスメント型トランジスタである。
【0032】
NMOSトランジスタDPMN101は、ドレインが電源端子VDD、ソースがノードN101に接続される。NMOSトランジスタDPMN101のゲートは、基準電圧生成回路110からの基準電圧Vrefが入力される。NMOSトランジスタMN101は、ドレイン及びゲートがノードN101、ソースが接地端子GNDに接続される。なお、ノードN101に現れる電圧を比較電圧VDとする。
【0033】
ここで、デプレッション型トランジスタであるNMOSトランジスタDPMN101は、スレッショルド電圧が負の値をとる。よって、ゲート電圧が0V、つまり接地電圧GNDであっても、ドレイン電圧を与えることで、ドレイン電流が流れる。また、エンハンスメント型トランジスタであるNMOSトランジスタMN101は、ゲートに印加される電圧がスレッショルド電圧より大きくなる場合にオン状態となり、ドレイン電流を流す。
【0034】
コンパレータCMP150は、一方の入力端子がノードN101、他方の入力端子がノードN12、出力端子がパワーオンリセット出力端子OUTに接続される。つまり、コンパレータCMP150は、比較電圧VA、VDの電圧値を比較し、その比較結果をパワーオンリセット信号として出力する。なお、パワーオンリセット出力端子OUTに出力される信号の電圧をVOUTとする。
【0035】
以上のような構成のパワーオンリセット回路100の動作を説明する。図2にパワーオンリセット回路100の動作波形を示す。なお、従来技術(例えば図9のパワーオンリセット回路1)のように、BGR回路を利用した基準電圧生成回路からの基準電圧Vrefによりパワーオンリセット信号を生成する場合のパワーオンリセット信号の電圧波形をVOUTPとして記載する。
【0036】
図2に示すように、比較電圧生成部120は、電源電圧VDDを抵抗分圧した電圧である比較電圧VAを出力する。このため、電源投入された時刻t0以降、電源電圧VDDの上昇に追従し、抵抗R11、R12の抵抗比に応じた傾きで比較電圧VAも上昇する。
【0037】
ここで、基準電圧生成回路110は、パワーオンリセット回路1のように内部回路の駆動電流が十分流れず能動状態とならないため、時刻t0から時刻t1の間は図2に示すように電源電圧VDDに追従しきれず低電位の基準電圧Vrefを出力する。更に電源電圧VDDが上昇すると基準電圧生成回路110が能動状態となる。それにより基準電圧Vrefは所定の電圧値になるまで電源電圧VDDに追従して上昇する。
【0038】
このため、この基準電圧生成回路110の基準電圧Vrefと比較電圧VAを利用して、コンパレータがパワーオンリセット信号を生成する場合、時刻t2で基準電圧Vrefと比較電圧VAが交差するまで、パワーオンリセット信号VOUTPは、ロウレベルとなってしまう。これでは、従来技術のパワーオンリセット回路1、2と同様、電源投入初期に、ロウレベルのパワーオンリセット信号が生成され、電源電圧投入直後に誤った出力値を出力してしまう。
【0039】
しかし、本実施の形態1では、比較電圧生成部130のNMOSトランジスタDPMN101がデプレッション型トランジスタであり、スレッショルド電圧が負の値をとる。このため、ゲートに入力される基準電圧Vrefが低く接地電圧GND付近であっても、NMOSトランジスタDPMN101はオン状態となっている。このため、電源電圧VDDが上昇すると、NMOSトランジスタDPMN101は、その電源電圧VDDの上昇に応じてドレイン電流を流し、ノードN101の電圧である比較電圧VDを上昇させる。
【0040】
一方、比較電圧生成部130のNMOSトランジスタMN101は、エンハンスメント型トランジスタであり、スレッショルド電圧以下ではオン状態とならない。このため、電源電圧VDDが低く、比較電圧VDがスレッショルド電圧以下では、NMOSトランジスタMN101は、オン状態とならない。このため、時刻t0の電源電圧投入直後で電源電圧VDDが低い場合には、NMOSトランジスタMN101は、ノードN101と接地端子GNDとの間を非導通状態とする。このことから、図2に示すように、ノードN101の電圧である比較電圧VDが、ほぼ電源電圧VDDと同じ電圧値を保ったまま比較電圧生成部130から出力される。
【0041】
その後、電源電圧VDDが更に上昇し、ノードN101の電圧である比較電圧VDも上昇する。更に、時刻t1で基準電圧生成回路110が能動状態となり、基準電圧Vrefも上昇する。NMOSトランジスタDPMN101は、この基準電圧Vrefに応じたドレイン電流をノードN101に流す。このため、比較電圧VDは更に上昇し、いずれNMOSトランジスタMN101のスレッショルド電圧を超える。このため、NMOSトランジスタMN101がオン状態となり、ドレイン電流を流し始める。つまり、接地端子GNDとノードN101が徐々に導通状態となる。
【0042】
このため、比較電圧VDは、電源電圧VDDに追従しなくなり、NMOSトランジスタDPMN101とMN101のトランジスタサイズで決まる所定の電圧値で一定となる。そして、時刻t3では、この比較電圧VAとVDが逆転し、コンパレータCMP150からロウレベルのパワーオンリセット信号が出力される。このため、電源電圧投入直後に誤った出力値を出力してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0043】
ここで、所定の電圧値で一定となる比較電圧VDについて説明する。まず、NMOSトランジスタMN101のドレイン電流は、ゲートソース間電圧VgsがVDとなり、以下の式(1)として示される。また、式(1)から比較電圧VDは式(2)として示される。但しβMN101、βDPMN101は、それぞれNMOSトランジスタMN101、DPMN101の移動度μと、酸化膜容量Coxと、トランジスタのW/L比との積で決まる値(μ×Cox×W/L)となる。
【数1】

【0044】
次に、NMOSトランジスタDPMN101のドレイン電流は、ゲートソース間電圧VgsがVref−VDとなり、以下の式(3)として示される。
【数2】

【0045】
式(3)を式(2)に代入して、式(4)を求める。
【数3】

【0046】
但し、式(4)の「A」は、式(5)で表すことができる。なお、NMOSトランジスタMN101、DPMN101の移動度μはほぼ同じであり、酸化膜容量Coxは同じである。このため、Aの値は結果として、NMOSトランジスタMN101、DPMN101のトランジスタサイズ比で決定される値となる。
【数4】

【0047】
式(4)をVDでまとめると、以下のような式(6)となる。
【数5】

以上、式(6)からわかるように、比較電圧VDは、電源電圧VDDによらず、基準電圧VrefとNMOSトランジスタMN101、DPMN101のトランジスタサイズ比で決まる電圧値で一定(図2のVcnt)となる。また、この式(6)から、NMOSトランジスタDPMN101のゲートに入力される電圧Vrefの条件は、NMOSトランジスタMN101が飽和領域で動作することから、以下の式(7)を満たす必要がある。
【数6】

【0048】
ここで、NMOSトランジスタDPMN101のスレッショルド電圧VthDPMN101は、0程度もしくは0に近い負の値であることから、VrefもVthMN101程度であればよい。
【0049】
以上、本実施の形態1では、比較電圧生成部120が出力する比較電圧VAと、比較電圧生成部130が出力する比較電圧VDとをコンパレータCMP150で比較することで、パワーオンリセット信号を生成している。比較電圧VAは、電源電圧VDDを抵抗分圧し、電源電圧VDDにリニアに追従する。
【0050】
一方、比較電圧VDは、電源投入初期では、オン状態のデプレッション型のNMOSトランジスタDPMN101と、オフ状態のエンハンスメント型のNMOSトランジスタMN101との中間ノード(ノードN101)の電位として、ほぼ電源電圧VDDと同じ電圧値で、追従して上昇する。そして、電源電圧VDDがある程度上昇すると、電源電圧VDDによらず、基準電圧VrefとNMOSトランジスタMN101、DPMN101のトランジスタサイズ比で決まる電圧値で一定となる。
【0051】
この動作は、電源電圧VDDの上昇スピードによらず同じ動作となる。つまり、電源電圧VDDの上昇スピードが速くても、遅くても電源投入初期において、電源電圧VDDとほぼ同じ電圧をキープする。このため、従来技術のパワーオンリセット回路1、2のように、電源投入初期において、ロウレベルのパワーオンリセット信号を生成することがなく、誤った出力値を出力してしまう問題を解決することができる。
【0052】
発明の実施の形態2
【0053】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。図3に本実施の形態2にかかるパワーオンリセット回路200の構成を示す。図3に示すように、パワーオンリセット回路200は、基準電圧生成回路210と、比較電圧生成部220、130と、コンパレータ(比較器)CMP150とを有する。
【0054】
基準電圧生成回路210は、バンドギャップリファレンス(BGR)回路211と、スタートアップ部212とを有する。
【0055】
BGR回路211は、PMOSトランジスタMP13〜MP15と、NMOSトランジスタMN11、MN12と、ダイオードD11〜D13と、抵抗R13、R14とを有する。
【0056】
PMOSトランジスタMP13は、ソースが電源端子VDD、ドレインがノードN13、ゲートがノードN14に接続される。PMOSトランジスタMP14は、ソースが電源端子VDD、ドレイン及びゲートがノードN14に接続される。PMOSトランジスタMP15は、ソースが電源端子VDD、ドレインがノードN16、ゲートがノードN14に接続される。
【0057】
NMOSトランジスタMN11は、ドレイン及びゲートがノードN13、ソースがノードN19に接続される。NMOSトランジスタMN12は、ドレインがノードN14、ソースがノードN15、ゲートがノードN13に接続される。抵抗R13は、一端がノードN15、他端がノードN20に接続される。抵抗R14は、一端がノードN16、他端がノードN17に接続される。
【0058】
ダイオードD11は、アノードがノードN17、カソードが接地端子GNDに接続される。ダイオードD12は、アノードがノードN20、カソードが接地端子GNDに接続される。ダイオードD13は、アノードがノードN19、カソードが接地端子GNDに接続される。
【0059】
BGR回路211は、図11のパワーオンリセット回路2のBGR回路と同様の動作をする。つまり、電源電圧VDDが上昇し、一定以上の値以上になると、所定の基準電圧VrefをノードN16に生成する。ここで本実施の形態2では、このノードN13にて生成される電圧をVCとする。
【0060】
比較電圧生成部220は、PMOSトランジスタMP11と、抵抗R11、R12とを有する。PMOSトランジスタMP11は、ソースが電源端子VDD、ドレインがノードN11、ゲートがノードN14に接続される。抵抗R11は、一端がノードN11、他端がノードN12に接続される。抵抗R12は、一端がノードN12、他端が接地端子GNDに接続される。なお、ノードN12に現れる電圧を比較電圧VAとする。
【0061】
PMOSトランジスタMP11は、BGR回路211のPMOSトランジスタMP14とカレントミラーを構成している。このため、BGR回路211が能動状態となり、PMOSトランジスタMP14に電流が流れると、PMOSトランジスタMP11もその電流に応じたドレイン電流を流し、比較電圧生成部220が能動状態となる。
【0062】
比較電圧生成部130は、実施の形態1と同様、NMOSトランジスタDPMN101、MN101を有する。また、実施の形態1と同様、NMOSトランジスタDPMN101は、デプレッション型トランジスタである。NMOSトランジスタDPMN101は、ドレインが電源端子VDD、ソースがノードN101、ゲートがノードN13に接続される。NMOSトランジスタMN101は、ドレイン及びゲートがノードN101、ソースが接地端子GNDに接続される。なお、ノードN101に現れる電圧を比較電圧VDとする。
【0063】
スタートアップ部212は、PMOSトランジスタMP12と、容量C11とを有する。PMOSトランジスタMP12は、ソースが電源端子VDD、ドレインがノードN13、ゲートがノードN11に接続される。容量C11は、一端がノードN11、他端が接地端子GNDに接続される。
【0064】
スタートアップ部212は、従来のパワーオンリセット回路1、2と同様、BGR回路(本実施の形態2のBGR回路211)を電源投入時から短時間で能動状態にする機能を有する。これは、電源投入初期状態で、容量C11を経由して接地電圧GNDをノードN11に伝達することで、ゲートがノードN11に接続されているPMOSトランジスタMP12をオン状態とする。オン状態のPMOSトランジスタMP12は、電源電圧VDDをノードN13に伝達し、BGR回路211を強制的に能動状態とさせる。
【0065】
なお、BGR回路211が能動状態となると、比較電圧生成部220も能動状態となり、ノードN11に電流が流れ、容量C11が充電される。容量C11が充電されると、PMOSトランジスタMP12は、ゲートに印加される電圧がハイレベルとなり、オフ状態となる。よって、スタートアップ部212は、BGR回路211が能動状態となってから、所定の期間後にオフ状態となる。
【0066】
ここで、PMOSトランジスタMP11〜MP15及び、NMOSトランジスタMN11、MN12は、エンハンスメント型トランジスタで構成するものとする。
【0067】
コンパレータCMP150は、一方の入力端子がノードN101、他方の入力端子がノードN12、出力端子がパワーオンリセット出力端子OUTに接続される。つまり、コンパレータCMP150は、実施の形態1と同様、比較電圧VA、VDの電圧値を比較し、その比較結果をパワーオンリセット信号として出力する。なお、パワーオンリセット出力端子OUTに出力される信号の電圧をVOUTとする。
【0068】
次に、本実施の形態2にかかるパワーオンリセット回路200の動作について説明する。図4にパワーオンリセット回路200の動作波形を示す。ここで、電源電圧VDDは、従来のパワーオンリセット回路2で問題となっていたように、想定したよりも上昇スピードが速い場合を考える。また、BGR回路211、スタートアップ部212の基本的な動作は、従来のパワーオンリセット回路2と同様なため、特に必要がない場合、説明は省略する。
【0069】
図4に示すように、時刻t0に電源が投入され、徐々に電源電圧VDDが上昇する。電源投入直後の時刻t0〜t1ではBGR回路211が能動状態となっていないため、比較電圧VA、基準電圧Vrefは共に接地電圧GND程度の低い値となる。そして、電源電圧VDDが更に上昇すると、スタートアップ部212の機能により、PMOSトランジスタMP12がオン状態となり、ノードN13にドレイン電流を流す。このため、ノードN13の電圧VCが上昇を始め、BGR回路211が能動状態となる。
【0070】
更に、BGR回路211が能動状態となり、PMOSトランジスタMP14に電流が流れると、PMOSトランジスタMP14とカレントミラー接続されている比較電圧生成部220のPMOSトランジスタMP11にも電流が流れる。このため、ノードN12の電圧である比較電圧VAの電位も上昇を始める。そして、電源電圧VDDが更に上昇すると、基準電圧Vref及びノードN13の電圧VCは、いずれ所定の電圧値で一定となる。
【0071】
ここで、従来のパワーオンリセット回路2では、想定よりも電源電圧VDDの上昇スピードが速い場合、ノードN13の電圧VCが電源電圧VDDに追随できずに電圧の立ち上がりが遅れる可能性があった。このため、電圧の立ち上がりが遅れた時間分だけ、基準電圧生成部21から出力される比較電圧VBと比較電圧生成部22から出力される比較電圧VCの電圧値の大小が、図13に示した時刻t0〜t1の期間Td1で不確定であった。よって、コンパレータCMP12の出力が誤った値を出力してしまう可能性があり、パワーオンリセット回路2から出力されるパワーオンリセット信号も電源電圧投入直後に誤った出力値を出力してしまう問題があった。
【0072】
しかし、本実施の形態2では、実施の形態1と同様、比較電圧生成部130のNMOSトランジスタDPMN101がデプレッション型トランジスタであり、スレッショルド電圧が負の値をとる。このため、NMOSトランジスタDPMN101のゲートに入力される電圧VCが低く接地電圧GND付近であっても、NMOSトランジスタDPMN101はオン状態となっている。このため、電源電圧VDDが上昇すると、NMOSトランジスタDPMN101は、その電源電圧VDDの上昇に応じてドレイン電流を流し、ノードN101の電圧である比較電圧VDを上昇させる。
【0073】
一方、比較電圧生成部130のNMOSトランジスタMN101は、実施の形態1と同様、エンハンスメント型トランジスタであり、スレッショルド電圧以下ではオン状態とならない。このため、電源電圧VDDが低く、比較電圧VDがスレッショルド電圧以下では、NMOSトランジスタMN101は、オン状態とならない。このため、時刻t0の電源電圧投入直後で電源電圧VDDが低い場合には、NMOSトランジスタMN101は、ノードN101と接地端子GNDとの間を非導通状態とする。このことから、図4に示すように、ノードN101の電圧である比較電圧VDが、ほぼ電源電圧VDDと同じ電圧値を保ったまま比較電圧生成部130から出力される。
【0074】
その後、電源電圧VDDが更に上昇し、ノードN101の電圧である比較電圧VDも上昇する。更に、時刻t1でBGR回路211が能動状態となり電圧VCも上昇する。NMOSトランジスタDPMN101は、この電圧VCに応じたドレイン電流をノードN101に流す。このため、比較電圧VDは更に上昇し、いずれNMOSトランジスタMN101のスレッショルド電圧を超える。このため、NMOSトランジスタMN101がオン状態となり、ドレイン電流を流し始める。つまり、接地端子GNDとノードN101が徐々に導通状態となる。
【0075】
このため、比較電圧VDは、電源電圧VDDに追従しなくなり、NMOSトランジスタDPMN101とMN101のトランジスタサイズで決まる所定の電圧値で一定となる。そして、時刻t5では、この比較電圧VAとVDが逆転し、コンパレータCMP150からロウレベルのパワーオンリセット信号が出力される。このため、電源電圧投入直後に誤った出力値を出力してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0076】
なお、本実施の形態2の動作波形との比較のため図4に、従来のパワーオンリセット回路2と同様、抵抗分圧された電圧(ここでは比較電圧VA)とノードN13の電圧VCとを比較して生成した信号の電圧波形をVOUTPとして示す。この信号VOUTPも、図13と同様、時刻t0〜t1の期間において、電圧VCとVAの大小が不確定となるため、図4に示すようにロウレベルとなる。このため、この信号VOUTPを利用したパワーオンリセット信号は、電源電圧投入直後に誤った出力値を出力してしまう可能性がある。
【0077】
しかし、上述のように、本実施の形態2のパワーオンリセット回路200では、比較電圧生成部130が生成する比較電圧VDと、比較電圧VAとを比較するため、このような問題が発生しない。
【0078】
ここで、所定の電圧値で一定となる比較電圧VDについて説明する。実施の形態1と同様、NMOSトランジスタMN101のドレイン電流は式(1)として示され、比較電圧VDは式(2)として示される。
【0079】
次に、NMOSトランジスタDPMN101のドレイン電流は、ゲートソース間電圧VgsがVC−VDとなり、以下の式(8)として示される。
【数7】

【0080】
式(8)を式(2)に代入して、式(9)を求める。
【数8】

【0081】
なお、式(9)の「A」は、実施の形態1と同様、式(5)で表すことができ、Aの値はNMOSトランジスタMN101、DPMN101のトランジスタサイズ比で決定される値となる。
【0082】
式(9)をVDでまとめると、以下のような式(10)となる。
【数9】

以上、式(10)からわかるように、比較電圧VDは、電源電圧VDDによらず、ノードN13の電圧VCとNMOSトランジスタMN101、DPMN101のトランジスタサイズ比で決まる電圧値で一定(図4のVcnt)となる。また、この式(10)から、NMOSトランジスタDPMN101のゲートに入力される電圧VCの条件は、NMOSトランジスタMN101が飽和領域で動作することから、以下の式(11)を満たす必要がある。
【数10】

【0083】
ここで、NMOSトランジスタDPMN101のスレッショルド電圧VthDPMN101は、0程度もしくは0に近い負の値であることから、VCもVthMN101程度であればよい。
【0084】
以上、本実施の形態2では、比較電圧生成部220が出力する比較電圧VAと、比較電圧生成部130が出力する比較電圧VDとをコンパレータCMP150で比較することで、パワーオンリセット信号を生成している。
【0085】
上述のように比較電圧VAは、BGR回路211が能動状態となる前には比較電圧生成部220の能動状態となっておらず接地電圧GND程度である。そして、BGR回路211が能動状態となった後は、電源電圧VDDを抵抗分圧し、電源電圧VDDにリニアに追従する。
【0086】
一方、比較電圧VDは、電源投入初期では、オン状態のデプレッション型のNMOSトランジスタDPMN101と、オフ状態のエンハンスメント型のNMOSトランジスタMN101との中間ノード(ノードN101)の電位として、ほぼ電源電圧VDDと同じ電圧値で、追従して上昇する。そして、電源電圧VDDがある程度上昇すると、電源電圧VDDによらず、BGR回路211のノードN13の電圧VCとNMOSトランジスタMN101、DPMN101のトランジスタサイズ比で決まる電圧値で一定となる。
【0087】
この動作は、電源電圧VDDの上昇スピードによらず同じ動作となる。つまり、比較電圧VDは、電源電圧VDDの上昇スピードが速くても、遅くても電源投入初期において、電源電圧VDDとほぼ同じ電圧をキープする。このため、従来技術のパワーオンリセット回路1、2のように、電源投入初期において、ロウレベルのパワーオンリセット信号を生成することがなく、誤った出力値を出力してしまう問題を解決することができる。
【0088】
発明の実施の形態3
【0089】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態3について、図面を参照しながら詳細に説明する。図5に本実施の形態3にかかるパワーオンリセット回路300の構成を示す。図5に示すように、パワーオンリセット回路300は、基準電圧生成回路210と、比較電圧生成部220、330と、コンパレータ(比較器)CMP150とを有する。基準電圧生成回路210は、バンドギャップリファレンス(BGR)回路211と、スタートアップ部212とを有する。
【0090】
なお、図5に示された符号のうち、図3と同じ符号を付した構成は、図3と同じか又は類似の構成を示している。実施の形態2と異なるのは、比較電圧生成部330の構成である。本実施の形態3では、この異なる部分を重点的に説明し、その他実施の形態2と同様の部分は説明を省略する。
【0091】
比較電圧生成部330は、NMOSトランジスタDPMN101、DPMN102、MN101、MN102を有する。NMOSトランジスタDPMN101及びDPMN102は、デプレッション型トランジスタである。
【0092】
NMOSトランジスタDPMN101は、ドレインが電源端子VDD、ソースがノードN101、ゲートがノードN13に接続される。NMOSトランジスタMN101は、ドレイン及びゲートがノードN101、ソースが接地端子GNDに接続される。なお、ノードN101に現れる電圧を比較電圧VDとする。
【0093】
NMOSトランジスタDPMN102は、ドレインが電源端子VDD、ソースがノードN102、ゲートがノードN101に接続される。NMOSトランジスタMN102は、ドレイン及びゲートがノードN102、ソースが接地端子GNDに接続される。なお、ノードN102に現れる電圧を比較電圧VEとする。
【0094】
コンパレータCMP150は、一方の入力端子がノードN102、他方の入力端子がノードN12、出力端子がパワーオンリセット出力端子OUTに接続される。つまり、コンパレータCMP150は、比較電圧VA、VEの電圧値を比較し、その比較結果をパワーオンリセット信号として出力する。なお、パワーオンリセット出力端子OUTに出力される信号の電圧をVOUTとする。
【0095】
図5の構成からもわかるように、比較電圧生成部330は、実施の形態1、2の比較電圧生成部130の回路を、ノードN13とコンパレータCMP150との間に2段直列接続とした構成となっている。このため、基本的な動作は、ほぼ同様でありここでの説明は省略する。以下に、この比較電圧生成部330の出力電圧である比較電圧VEを求める。
【0096】
ここで、所定の電圧値で一定となる比較電圧VDについて説明する。まず、NMOSトランジスタMN102のドレイン電流は、ゲートソース間電圧VgsがVEとなり、以下の式(12)として示される。また、式(12)から比較電圧VEは式(13)として示される。但しβMN101、βMN102、βDPMN101、βDPMN102、は、それぞれNMOSトランジスタMN101、MN102、DPMN101、DPMN102の移動度μと、酸化膜容量Coxと、トランジスタのW/L比との積で決まる値(μ×Cox×W/L)となる。
【数11】

【0097】
次に、NMOSトランジスタDPMN102のドレイン電流は、ゲートソース間電圧VgsがVD−VEとなり、以下の式(14)として示される。
【数12】

【0098】
式(14)を式(13)に代入して、式(15)を求める。
【数13】

【0099】
但し、式(15)の「B」は、以下の式(16)で表すことができる。なお、NMOSトランジスタMN102、DPMN102の移動度μはほぼ同じであり、酸化膜容量Coxは同じである。このため、Bの値は結果として、NMOSトランジスタMN102、DPMN102のトランジスタサイズ比で決定される値となる。
【数14】

【0100】
式(16)をVEでまとめると、以下のような式(17)となる。
【数15】

次に、ノードN101の電圧VDの温度依存性を考える。電圧VDの温度依存性は、式(10)から以下の式(18)として求めることができる。
【数16】

同様に、ノードN102の電圧である比較電圧VEの温度依存性を考える。電圧VEの温度依存性は、式(18)から以下の式(19)として求めることができる。
【数17】

ここで、電圧VDの温度依存性を排除するには、上記式(18)のAの値を非常に小さい値(A≒0)に設定する。例えば、NMOSトランジスタDPMN101のゲート幅WDPMN101をNMOSトランジスタMN101のゲート幅WMN101と比較して十分小さく、もしくは、NMOSトランジスタDPMN101のゲート長LDPMN101をNMOSトランジスタMN101のゲート長LMN101と比較して十分大きくする。具体的な数値としては、WDPMN101をWMN101の約10分の1以下、もしくは、LDPMN101をLMN101の約10倍以上とし、Aの値が約0.3以下となるようにする。また、NMOSトランジスタDPMN101のトランジスタサイズ比(WDPMN101/LDPMN101)及びNMOSトランジスタMN101のトランジスタサイズ比(WMN101/LMN101)を調整して、結果的にAの値が約0.3以下となるようにしてもよい。この場合、電圧VDの温度依存性は、NMOSトランジスタMN101のスレッショルド電圧VthMN101の温度依存性となる。
【0101】
更に、A≒0とした式(18)を式(19)に代入すると、NMOSトランジスタMN101のスレッショルド電圧VthMN101の温度依存性とNMOSトランジスタDPMN102のスレッショルド電圧VthDPMN102の温度依存性が同じとなることから、NMOSトランジスタMN101のスレッショルド電圧VthMN101の温度依存性とNMOSトランジスタDPMN102のスレッショルド電圧VthDPMN102の温度依存性が打ち消しあう。
【0102】
このため、結果として、電圧VEの温度依存性は、NMOSトランジスタMN102のスレッショルド電圧VthMN102の温度依存性を(1+B)で割った値となる。よって、Bの値を大きくなるようにNMOSトランジスタDPMN102とMN102を設定することで、電圧VEの温度依存性を非常に小さくすることができる。なお、Bの値を大きくするには、例えば、NMOSトランジスタDPMN102のゲート幅WDPMN102をNMOSトランジスタMN102のゲート幅WMN102と比較して十分大きく、もしくは、NMOSトランジスタDPMN101のゲート長LDPMN102をNMOSトランジスタMN101のゲート長LMN102と比較して十分小さくする。具体的な数値としては、WDPMN102をWMN102の約10倍以上、もしくは、LDPMN101をLMN101の約10分の1以下とし、Bの値が約3以上となるようにする。また、NMOSトランジスタDPMN102のトランジスタサイズ比(WDPMN102/LDPMN102)及びNMOSトランジスタMN102のトランジスタサイズ比(WMN102/LMN102)を調整して、結果的にBの値が約3以上となるようにしてもよい。
【0103】
更に、上述したように、Aの値を小さくし、Bの値を大きくすることが決定されたため、A≒0、B>>1と仮定すると、VD=VthMN101、VE=VD−VthDPMN102と近似できる。よって、VE=VthMN101−VthDPMN102となる。ここで、比較電圧生成部330を構成するトランジスタが、製造プロセスのばらつきが同方向にばらついたと仮定すると、比較電圧VEのプロセスばらつきもキャンセルされる。
【0104】
ここで、従来のパワーオンリセット回路2では、ノードN13の電圧VCは温度の影響やプロセスばらつきの影響によって電圧値が変動する。このため、設計によっては図6に示すように、電源電圧投入直後の誤動作は消せても検出時間が期間Td2分遅れてしまうことも考えられる。
【0105】
しかし、本実施の形態3のパワーオンリセット回路300では、上述したような値でA、Bを設定することで、比較電圧VEの温度依存性及びプロセス依存性をキャンセルすることできる。このため、比較電圧生成部330は、温度やプロセスばらつきに関係なく安定した比較電圧VEを出力することができる。結果として、本実施の形態3のパワーオンリセット回路300は、実施の形態2と同じ効果を有しつつ、更に温度やプロセスばらつきに対しても安定した精度の高いパワーオンリセット信号を生成することが可能である。
【0106】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものでなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、図7に示すパワーオンリセット回路400のように、実施の形態3の比較電圧生成部330を実施の形態1の比較電圧生成部130に置き換えてもよい。この場合、パワーオンリセット回路400は、実施の形態1と同じ効果を有しつつ、更に温度やプロセスばらつきに対しても安定した精度の高いパワーオンリセット信号を生成することが可能である。
【0107】
更に、実施の形態2のパワーオンリセット回路200は、コンパレータCMP150が比較電圧VD、VAを比較することによりパワーオンリセット信号VOUTを生成していたが、図8に示すように、コンパレータCMP151がBGR回路211の生成した基準電圧Vrefと比較電圧VAを比較してパワーオンリセット信号VOUT2を生成するようにしてもよい。また、比較電圧VAをコンパレータCMP150もしくはCMP151へ伝達するかはスイッチSW501により選択するようにしてもよい。
【0108】
このようにすることで、比較電圧生成部130の生成した比較電圧VDを基にしたパワーオンリセット信号を生成することも、BGR回路211の生成した基準電圧Vrefを基にパワーオンリセット信号を生成することも可能となる。なお、この構成は実施の形態3のパワーオンリセット回路300にも適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
100〜500 パワーオンリセット回路
110、210 基準電圧生成回路
211 BGR回路
212 スタートアップ部
120、130 比較電圧生成部
CMP150、CMP151 コンパレータ
MN11、MN12、MN101、MN102 エンハンスメント型NMOSトランジスタ
MP11〜MP15 エンハンスメント型PMOSトランジスタ
DPMN101、DPMN102 デプレッション型NMOSトランジスタ
R11、R12 抵抗
C11 容量
D11〜D13 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の電源電圧供給開始時もしくは前記電源電圧降下時にリセット信号を発生し、その半導体装置の内部回路を初期化するパワーオンリセット回路であって、
前記電源電圧に応じた電圧を所定の比率で分圧した第1の比較電圧を生成する第1の比較電圧生成部と、
前記電源電圧に応じた第1の電圧を出力する基準電圧生成部と、
前記電源電圧を供給する電源電圧端子と第1のノードとの間に接続され、制御端子に前記第1の電圧を入力するデプレッション型の第1のトランジスタと、
前記第1のノードと接地端子との間に接続され、制御端子が前記第1のノードに接続されるエンハンスメント型の第2のトランジスタと、を備え、
前記第1のノードの電位に応じた電圧を第2の比較電圧として生成する第2の比較電圧生成部と、
前記第1、第2の比較電圧を比較し、その比較結果に応じて前記リセット信号を出力する比較器と、を有する
パワーオンリセット回路。
【請求項2】
前記第1の電圧は、前記基準電圧生成部の出力ノードから出力され、前記電源電圧が所定の電圧以上になった場合に一定の電圧値となる第1の基準電圧である
請求項1に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項3】
前記基準電圧生成部は、内部の第2のノードに印加される電圧に応じた動作電流が流れることにより能動状態となり、その能動状態になった場合に第1の制御電圧を生成し、更に、前記電源電圧が所定の電圧以上になった場合に前記第1の制御電圧に応じた一定の基準電圧を生成するバンドギャップリファレンス回路であり、
前記第1の電圧は、前記第1の制御電圧である
請求項1に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項4】
前記第1の比較電圧生成部は、前記第1の制御電圧に応じて能動状態となる
請求項3に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項5】
前記電源電圧供給開始から所定の期間、前記電源電圧を前記第1のノードに伝達するスタートアップ部を更に有する
請求項4に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項6】
前記第2の比較電圧生成部は、デプレッション型の第3のトランジスタと、エンハンスメント型の第4のトランジスタを更に備え、
前記第3のトランジスタは、前記電源電圧を供給する電源電圧端子と第3のノードとの間に接続され、制御端子が前記第1のノードと接続され、
前記第4のトランジスタは、前記第3のノードと接地端子との間に接続され、制御端子が前記第3のノードに接続され、
前記第3のノードの電位を第2の比較電圧として生成する
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項7】
前記第1のトランジスタに対して、少なくとも前記第2のトランジスタのゲート幅の比が大きい、もしくは、ゲート長さの比が小さく、
前記第3のトランジスタに対して、少なくとも前記第4のトランジスタのゲート幅の比が小さい、もしくは、ゲート長さの比が大きい
請求項6に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項8】
前記基準電圧生成回路は、エンハンスメント型の第5〜第9のトランジスタと、第1〜第3のダイオードと、第1、第2の抵抗とを有し、
前記第5のトランジスタは、前記電源電圧端子と前記第1の制御信号を生成する前記第2のノードとの間に接続され、制御端子が第4のノードに接続され、
前記第6のトランジスタは、前記電源電圧端子と前記第4のノードとの間に接続され、制御端子が前記第4のノードに接続され、
前記第7のトランジスタは、前記電源電圧端子と当該基準電圧生成回路の出力ノードである第5のノードとの間に接続され、制御端子が前記第4のノードに接続され、
前記第8のトランジスタは、前記第2のノードと第6のノードとの間に接続され、制御端子が前記第2のノードに接続され、
前記第9のトランジスタは、前記第4のノードと第7のノードとの間に接続され、制御端子が前記第2のノードに接続され、
前記第1の抵抗は、前記第7のノードと、第8のノードとの間に接続され、
前記第2の抵抗は、前記第5のノードと、第9のノードとの間に接続され、
前記第1のダイオードは、前記第6のノードと前記接地端子との間に接続され、
前記第2のダイオードは、前記第8のノードと前記接地端子との間に接続され、
前記第3のダイオードは、前記第9のノードと前記接地端子との間に接続される、
前記比較電圧生成部は、第10のトランジスタと、第3、第4の抵抗とを有し、
前記第10のトランジスタは、前記電源電圧端子と前記第10のノードとの間に接続され、制御端子が前記第4のノードに接続され、
前記第3の抵抗は、前記第10のノードと、前記第1の比較電圧を生成する第11のノードとの間に接続され、
前記第4の抵抗は、前記第11のノードと、前記接地端子との間に接続される
請求項3〜請求項7のいずれか1項に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項9】
前記スタートアップ部は、第11のトランジスタと、第1の容量とを有し、
前記第11のトランジスタは、前記電源電圧端子と前記第2のノードとの間に接続され、制御端子が第10のノードに接続され、
前記第1の容量は、前記第10のノードと、接地端子との間に接続される
請求項8に記載のパワーオンリセット回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−188361(P2011−188361A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53297(P2010−53297)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】