パワートレーンの制御装置
【課題】無段変速機の入力軸回転数を制御するために必要な処理を簡素にする。
【解決手段】上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを各々が設定する、優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかが取得される。上限値または下限値が取得されると(S102にてYES)、取得された上限値または下限値が、第1制限値または第2制限値として記憶される(S106)。第1制限値よりも小さく、第2制限値よりも大きい回転数が取得されると(S102にてNO、S110にてYES)、取得された回転数が目標値として設定される(S112)。回転数が取得されると(S102にてNO)、上限値、下限値および回転数を取得することが中断される(S120)。無段変速機は、プライマリプーリ回転数NINが目標値になるように制御される(S122)。
【解決手段】上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを各々が設定する、優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかが取得される。上限値または下限値が取得されると(S102にてYES)、取得された上限値または下限値が、第1制限値または第2制限値として記憶される(S106)。第1制限値よりも小さく、第2制限値よりも大きい回転数が取得されると(S102にてNO、S110にてYES)、取得された回転数が目標値として設定される(S112)。回転数が取得されると(S102にてNO)、上限値、下限値および回転数を取得することが中断される(S120)。無段変速機は、プライマリプーリ回転数NINが目標値になるように制御される(S122)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワートレーンの制御装置に関し、特に、複数の制御システムが設定した上限値、下限値および回転数に基づいて、パワートレーンの回転軸の回転数を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
変速比を無段階に変更可能な無段変速機(CVT)が知られている。無段変速機では、たとえば金属ベルトもしくはチェーンがプライマリプーリおよびセカンダリプーリにより挟持される。無段変速機においては、一般的にはプライマリプーリに供給される油圧、より具体的にはプライマリプーリのプライマリシーブに供給される油圧を変更することによって、変速比が変更される。
【0003】
たとえば、プライマリプーリのプライマリシーブに供給される油圧を増大すると、プライマリプーリの溝幅が狭くなる。その結果、プライマリプーリの有効径が大きくなる。プライマリプーリの有効径が大きくなることに伴なって、セカンダリプーリの溝幅が広くなるとともに有効径が小さくなる。その結果、無段変速機がアップシフトする。
【0004】
逆に、プライマリプーリのプライマリシーブに供給される油圧を低減すると、プライマリプーリの溝幅が広くなる。その結果、プライマリプーリの有効径が小さくなる。プライマリプーリの有効径が小さくなることに伴なって、セカンダリプーリの溝幅が狭くなるとともに有効径が大きくなる。その結果、無段変速機がダウンシフトする。
【0005】
一般的に、無段変速機の変速比は、入力軸回転数が設定された目標値(目標回転数)になるように制御される。入力軸回転数の目標値は、様々な制御システムにおいて設定される。たとえば、通常の制御システムにおいては、アクセル開度、車速およびブレーキ信号などの情報に基づいて、入力軸回転数の目標値が設定される。運転者がシフトレバーまたはパドルスイッチなどを操作することによりアップシフトまたはダウンシフトを要求する制御システムにおいては、車速に比例して入力軸回転数の目標値が増大するように設定される。車両が走行する道路に応じて入力軸回転数の目標値を設定する制御システムでは、道路の勾配および車両に搭載されたナビゲーションシステムからのコーナー情報(カーブの形状等)に基づいて、入力軸回転数の目標値が適切に設定される。その他、入力軸回転数の目標値を設定するための様々な制御システムが実用化されている。これらの各制御システムが設定した目標値から、最終的に用いられる目標値が選択される。すなわち、各制御システムが設定した目標値が調停されることにより、最終的に用いられる目標値が選択される。
【0006】
各制御システムにおいて回転数を設定する代わりに、上限値または下限値を設定することもある。特開2001−328462号公報(特許文献1)は、走行負荷に応じて下限回転数を設定し、目標入力回転数NINTBSEが下限回転数以上であれば、その目標入力回転数NINTBSEを最終目標入力回転数NINTとし、目標入力回転数NINTBSEが下限回転数より低回転数であれば、下限回転数を最終目標入力回転数NINTとして採用することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−328462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、複数の制御システムが設定した、全ての上限値、下限値および回転数を考慮して最終的な目標回転数を決定するようにすると、最終的な目標回転数を決定するための処理が煩雑になり得る。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、パワートレーンの回転軸の回転数を制御するために必要な処理を簡素にすることができるパワートレーンの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係るパワートレーンの制御装置は、回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段と、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを取得するための手段と、上限値が取得されると、予め定められた第1の値を取得された上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、下限値が取得されると、予め定められた、第1の値よりも小さい第2の値を取得された下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、第1の値よりも小さく、かつ、第2の値よりも大きい回転数が取得されると、取得された回転数を目標値として設定するための手段と、回転数が取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断するための手段とを備える。
【0011】
この構成によると、複数の制御システムのうちのいずれかの制御システムが設定した回転数が取得されると、優先順位が高い制御システムにより設定された上限値または下限値を考慮する一方で、優先順位が低い制御システムにより設定される上限値または下限値を取得せずに、パワートレーンの回転軸の回転数の目標値を設定することができる。そのため、全ての制御システムから上限値、下限値または回転数を取得する前に、いずれかの制御システムから回転数を取得した場合には、全ての上限値、下限値および回転数を考慮せずとも、入力軸回転数の最終的な目標値を決定することができる。その結果、パワートレーンの回転軸の回転数を制御するために必要な処理を簡素にすることができる。
【0012】
第2の発明に係るパワートレーンの制御装置は、第1の値よりも大きい回転数が取得されると、第1の値を目標値として設定するための手段と、第2の値よりも小さい回転数が取得されると、第2の値を目標値として設定するための手段とをさらに備える。
【0013】
この構成によると、目標値が第1の値よりも大きくならないように制限したり、目標値が第2の値よりも小さくならないように制限することができる。
【0014】
第3の発明に係るパワートレーンの制御装置は、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、第1の値を目標値として設定するための手段と、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断するための手段と、第2の値よりも小さい上限値が取得されると、第2の値を目標値として設定するための手段と、第2の値よりも小さい上限値が取得されると、上限値および下限値を取得することを中断するための手段とをさらに備える。第1の変更手段は、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい上限値が取得されると、第1の値を取得された上限値に応じて変更するための手段を含む。第2の変更手段は、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値が取得されると、第2の値を取得された下限値に応じて変更するための手段を含む。
【0015】
この構成によると、優先度が低い制御システムから取得された下限値と、優先度が高い制御システムから取得された上限値に応じて変更された第1の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、目標値を設定することができる。同様に、優先度が低い制御システムから取得された上限値と、優先度が高い制御システムから取得された下限値に応じて変更された第2の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、目標値を設定することができる。
【0016】
第4の発明に係るパワートレーンの制御装置は、パワートレーンの回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段と、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを取得するとともに、回転数を、上限値および下限値として取得するための手段と、予め定められた第1の値よりも小さく、かつ、予め定められた、第1の値よりも小さい第2の値よりも大きい上限値が取得されると、第1の値を第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値が取得されると、第2の値を第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、第1の値を目標値として設定するための手段と、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断するための手段と、第2の値よりも小さい上限値が取得されると、第2の値を目標値として設定するための手段と、第2の値よりも小さい上限値が取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断するための手段とを備える。
【0017】
この構成によると、複数の制御システムのうちのいずれかの制御システムが設定した回転数は、上限値および下限値として取得される。優先度が低い制御システムから取得された下限値と、優先度が高い制御システムから取得された上限値に応じて変更された第1の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、パワートレーンの回転軸の回転数の目標値を設定することができる。同様に、優先度が低い制御システムから取得された上限値と、優先度が高い制御システムから取得された下限値に応じて変更された第2の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、パワートレーンの回転軸の回転数の目標値を設定することができる。そのため、全ての制御システムから上限値、下限値または回転数を取得する前に、いずれかの制御システムから取得された下限値または上限値が第1の値または第2の値と論理的に矛盾すると、全ての上限値および下限値を考慮せずとも、回転軸の回転数の最終的な目標値を決定することができる。その結果、パワートレーンの回転軸の回転数を制御するために必要な処理を簡素にすることができる。また、物理量を上限値および下限値に統一できるため、第1の発明に比べて処理をより簡素にすることができる。
【0018】
第5の発明に係るパワートレーンの制御装置は、パワートレーンの回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段と、上限値および下限値のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に上限値および下限値のうちのいずれかを取得するための手段と、予め定められた第1の値よりも小さく、かつ、予め定められた、第1の値よりも小さい第2の値よりも大きい上限値が取得されると、第1の値を第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値が取得されると、第2の値を第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、第1の値を目標値として設定するための手段と、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、上限値および下限値を取得することを中断するための手段と、第2の値よりも小さい上限値が取得されると、第2の値を目標値として設定するための手段と、第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい上限値が取得されると、上限値および下限値を取得することを中断するための手段とを備える。
【0019】
この構成によると、優先度が低い制御システムから取得された下限値と、優先度が高い制御システムから取得された上限値に応じて変更された第1の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、パワートレーンの回転軸の回転数の目標値を設定することができる。同様に、優先度が低い制御システムから取得された上限値と、優先度が高い制御システムから取得された下限値に応じて変更された第2の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、パワートレーンの回転軸の回転数の目標値を設定することができる。そのため、全ての制御システムから上限値または下限値を取得する前に、いずれかの制御システムから取得された下限値または上限値が第1の値または第2の値と論理的に矛盾すると、全ての上限値および下限値を考慮せずとも、回転軸の回転数の最終的な目標値を決定することができる。その結果、パワートレーンの回転軸の回転数を制御するために必要な処理を簡素にすることができる。
【0020】
第6の発明に係るパワートレーンの制御装置においては、第1の変更手段は、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい上限値が取得されると、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい上限値を第1の値として記憶するための手段を含む。第2の変更手段は、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値が取得されると、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値を第2の値として記憶するための手段を含む。
【0021】
この構成によると、優先順位が高い制御システムから取得された上限値または下限値を、優先順位が低い制御システムから取得された上限値、下限値または回転数と比較することができる。そのため、目標値を設定するために、優先順位が高い順に、各制御システムから取得された上限値または下限値を考慮することができる。
【0022】
第7の発明に係るパワートレーンの制御装置においては、回転軸は、無段変速機の入力軸である。制御手段は、無段変速機の入力軸の回転数が目標値になるように制御するための手段を含む。
【0023】
この構成によると、無段変速機の入力軸の回転数が目標値になるように、無段変速比の変速比を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車両の駆動装置を示す図である。
【図2】車両の制御システムの概略を示すブロック図である。
【図3】複数の制御システムの優先順位などを示す図である。
【図4】回転数が設定される範囲を示す図(その1)である。
【図5】回転数が設定される範囲を示す図(その2)である。
【図6】回転数が設定される範囲を示す図(その3)である。
【図7】第1の実施の形態におけるECUの機能ブロック図である。
【図8】第1の実施の形態においてECUが実行する処理のフローチャートを示す図である。
【図9】第1の制限値よりも小さく、かつ第2の制限値よりも大きい上限値または下限値を示す図である。
【図10】第1の制限値よりも小さく、かつ第2の制限値よりも大きい回転数を示す図である。
【図11】第1の制限値よりも大きい回転数を示す図である。
【図12】第2の制限値よりも小さい回転数を示す図である。
【図13】第1の制限値よりも大きい下限値を示す図である。
【図14】第2の制限値よりも小さい上限値を示す図である。
【図15】第2の実施の形態におけるECUの機能ブロック図である。
【図16】上限値および下限値として取得される回転数を示す図である。
【図17】第2の実施の形態においてECUが実行する処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0026】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、車両に搭載されたパワートレーン100のエンジン200の出力は、トルクコンバータ300を介して、前後進切換装置400を有する無段変速機500に入力される。無段変速機500の出力は、減速歯車600および差動歯車装置700に伝達され、左右の駆動輪800へ分配される。パワートレーン100は、後述するECU(Electronic Control Unit)900により制御される。なお、エンジン200の代わりにもしくは加えて、モータを駆動源として用いるようにしてもよい。
【0027】
トルクコンバータ300は、エンジン200のクランク軸に連結されたポンプインペラ302と、タービン軸304を介して前後進切換装置400に連結されたタービンランナ306とから構成されている。ポンプインペラ302およびタービンランナ306の間にはロックアップクラッチ308が設けられている。ロックアップクラッチ308は、係合側油室および解放側油室に対する油圧供給が切換えられることにより、係合または解放されるようになっている。
【0028】
ロックアップクラッチ308が完全係合させられることにより、ポンプインペラ302およびタービンランナ306は一体的に回転させられる。ポンプインペラ302には、無段変速機500を変速制御したり、ベルト挟圧力を発生させたり、各部に潤滑のための作動油を供給したりするための油圧を発生する機械式のオイルポンプ310が設けられている。
【0029】
前後進切換装置400は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置から構成されている。トルクコンバータ300のタービン軸304はサンギヤ402に連結されている。無段変速機500の入力軸502はキャリア404に連結されている。キャリア404とサンギヤ402とはフォワードクラッチ406を介して連結されている。リングギヤ408は、リバースブレーキ410を介してハウジングに固定される。フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410は油圧シリンダによって摩擦係合させられる。フォワードクラッチ406の入力回転数は、タービン軸304の回転数、すなわちタービン回転数NTと同じである。
【0030】
フォワードクラッチ406が係合させられるとともに、リバースブレーキ410が解放されることにより、前後進切換装置400は前進用係合状態となる。この状態で、前進方向の動力が無段変速機500に伝達される。リバースブレーキ410が係合させられるとともにフォワードクラッチ406が解放されることにより、前後進切換装置400は後進用係合状態となる。この状態で、入力軸502はタービン軸304に対して逆方向へ回転させられる。これにより、後進方向の動力が無段変速機500に伝達される。
【0031】
すなわち、フォワードクラッチ406もしくはリバースブレーキ410が係合することにより、エンジン200から出力された動力が駆動輪800に伝達される。フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410が共に解放されると、前後進切換装置400は動力伝達を遮断するニュートラル状態になる。
【0032】
なお、前後進切換装置400を、無段変速機500と駆動輪800との間に配置するようにしてもよい。
【0033】
無段変速機500には、入力軸502に設けられたプライマリプーリ504と、出力軸506に設けられたセカンダリプーリ508と、これらのプーリに巻き掛けられた金属ベルト510とがさらに設けられる。各プーリと金属ベルト510との間の摩擦力を利用して、動力伝達が行われる。
【0034】
各プーリは溝幅が可変であるように、油圧シリンダ(シーブ)から構成されている。プライマリプーリ504の油圧シリンダ、すなわちプライマリシーブの油圧が制御されることにより、各プーリの溝幅が変化する。これにより、各プーリの有効径が変更され、変速比GR(=プライマリプーリ回転数NIN/セカンダリプーリ回転数NOUT)が連続的に変化させられる。なお、金属ベルト510の代わりにチェーンを用いるようにしてもよい。
【0035】
図2に示すように、ECU900には、エンジン回転数センサ902、タービン回転数センサ904、車速センサ906、スロットル開度センサ908、冷却水温センサ910、油温センサ912、アクセル開度センサ914、フットブレーキスイッチ916、ポジションセンサ918、プライマリプーリ回転数センサ922およびセカンダリプーリ回転数センサ924から信号が入力される。また、ECU900には、ナビゲーションシステム930からコーナー情報(カーブの形状等)を表わす信号が入力される。
【0036】
エンジン回転数センサ902は、エンジン200の回転数(エンジン回転数)NEを検出する。タービン回転数センサ904は、タービン軸304の回転数(タービン回転数)NTを検出する。車速センサ906は、車速Vを検出する。スロットル開度センサ908は、電子スロットルバルブの開度THAを検出する。冷却水温センサ910は、エンジン200の冷却水温TWを検出する。油温センサ912は、無段変速機500の作動に用いられる作動油の温度(以下、油温とも記載する)THOを検出する。アクセル開度センサ914は、アクセルペダルの開度ACCを検出する。フットブレーキスイッチ916は、フットブレーキの操作の有無を検出する。ポジションセンサ918は、シフトポジションと対応する位置に設けられた接点がONであるかOFFであるかを判別することにより、シフトレバー920のポジションPSHを検出する。プライマリプーリ回転数センサ922は、プライマリプーリ504の回転数(入力軸回転数)NINを検出する。セカンダリプーリ回転数センサ924は、セカンダリプーリ508の回転数(出力軸回転数)NOUTを検出する。各センサの検出結果を表す信号が、ECU900に送信される。タービン回転数NTは、フォワードクラッチ406が係合された前進走行時にはプライマリプーリ回転数NINと一致する。車速Vは、セカンダリプーリ回転数NOUTと対応した値になる。したがって、車両が停車状態にあり、かつフォワードクラッチ406が係合された状態では、タービン回転数NTは0となる。
【0037】
ECU900は、CPU(Central Processing Unit)、メモリおよび入出力インターフェースなどを含む。CPUはメモリに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なう。これにより、エンジン200の出力制御、無段変速機500の変速制御、ベルト挟圧力制御、フォワードクラッチ406の係合/解放制御およびリバースブレーキ410の係合/解放制御などを実行する。
【0038】
エンジン200の出力制御は電子スロットルバルブ1000、燃料噴射装置1100、点火装置1200などによって行なわれる。無段変速機500の変速制御、ベルト挟圧力制御、フォワードクラッチ406の係合/解放制御およびリバースブレーキ410の係合/解放制御は、油圧制御回路2000によって行なわれる。
【0039】
無段変速機500の変速比GRは、たとえば、プライマリプーリ回転数NINがECU900により設定された目標値(目標回転数)になるように制御される。後述するように、プライマリプーリ回転数NINの目標値は、複数の制御システムから取得された上限値、下限値および回転数に基づいて設定される。
【0040】
図3に示すように、複数の制御システムの各々が、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを設定する。図3に示す例では、制御システムAは、回転数を設定する。また、制御システムAは、必要がある場合だけ、回転数を設定する。すなわち、回転数が常に取得されるとは限らない。
【0041】
制御システムBは、必要がある場合だけ、上限値を算出する。制御システムCは、必要がある場合だけ、上限値を算出する。制御システムDは、必要がある場合だけ、下限値を算出する。制御システムEは、常に下限値を設定する。
【0042】
たとえば、いずれかの制御システムは、変速レンジが「D」レンジであると、アクセル開度、車速およびブレーキ信号などの情報に基づいて、回転数を図4において斜線で示す領域内で設定する。
【0043】
別の制御システムは、道路の勾配および車両に搭載されたナビゲーションシステム930からのコーナー情報(カーブの形状等)に基づいて、回転数を設定する。
【0044】
さらに別の制御システムは、上り坂ではアップシフトを制限するために下限値を設定する。さらに別の制御システムは、下り坂では無段変速機500をシフトダウンするために下限値を設定する。
【0045】
さらに別の制御システムは、図5において実線で示すように、運転者がシフトレバー920またはパドルスイッチ(図示せず)などを操作することにより選択された変速比M1〜M7を維持するように、回転数を設定する。すなわち、車速に比例して回転数が増大するように設定される。変速比の数は、7つよりも少なくてもよく、多くてもよい。
【0046】
さらに別の制御システムは、変速レンジが「B」レンジであると、アクセル開度、車速およびブレーキ信号などの情報に基づいて、回転数を、図6において斜線で示す領域内で設定する。
【0047】
さらに別の制御システムは、油温THOがしきい値より高いという条件が満たされると、上限値を設定する。
【0048】
上述した制御システムは一例である。制御システムの数、種類および具体的な内容は、開発者により任意に定められる。各制御システムは、ソフトウェアにより構成してもよく、ハードウェアにより構成してもよく、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより構成してもよい。
【0049】
図3に戻って、複数の制御モードは、予め定められた順番で優先順位付けされる。優先順位は、開発者により定められる。本実施の形態においては、優先順位が高い制御モードから順番に、設定された上限値、下限値および回転数のうちのいずれかが取得される。
【0050】
図7を参照して、ECU900についてさらに説明する。ECU900は、制御部940と、設定部942と、取得部944と、変更部946と、中断部948とを含む。制御部940、設定部942、取得部944、変更部946および中断部948は、ソフトウェアにより構成してもよく、ハードウェアにより構成してもよく、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより構成してもよい。
【0051】
制御部940は、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINが、設定部942により設定された目標値になるように制御する。
【0052】
設定部942は、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値を設定する。具体的には、予め定められた第1制限値(第1の値に相当)よりも小さく、かつ、予め定められた第2制限値(第2の値に相当)よりも大きい回転数が、いずれかの制御システムから取得されると、取得された回転数が目標値として設定される。本実施の形態において、第2制限値は、第1制限値よりも小さい。
【0053】
また、第1制限値よりも大きい回転数が、いずれかの制御システムから取得されると、第1制限値が目標値として設定される。第2制限値よりも小さい回転数が、いずれかの制御システムから取得されると、第2制限値が目標値として設定される。
【0054】
さらに、第1制限値よりも大きい下限値が、いずれかの制御システムから取得されると、第1制限値が目標値として設定される。第2制限値よりも小さい上限値が、いずれかの制御システムから取得されると、第2制限値が目標値として設定される。
【0055】
すなわち、設定部942は、各制御システムから取得された上限値、下限値および回転数を調停することによって、プライマリプーリ回転数NINの目標値を設定する。
【0056】
なお、第1制限値よりも大きい上限値が取得されると第1制限値を目標値として設定したり、第2制限値よりも小さい下限値が取得されると第2制限値を目標値として設定したりするようにしてもよい。
【0057】
取得部944は、前述した複数の制御システムから、優先順位が高い順に上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを取得する。
【0058】
変更部946は、いずれかの制御システムから上限値が取得されると、第1制限値を取得された上限値に応じて変更(更新)する。また、変更部946は、いずれかの制御システムから下限値が取得されると、第2制限値を取得された下限値に応じて変更する。
【0059】
より具体的には、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい上限値が取得されると、第1制限値が取得された上限値に応じて変更される。たとえば、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい上限値が、新たな第1制限値として記憶される。すなわち、第1制限値が取得された上限値によって書き換えられる。
【0060】
同様に、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい下限値が取得されると、第2制限値が取得された下限値に応じて変更される。たとえば、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい下限値が、新たな第2制限値として記憶される。すなわち、第2制限値が取得された下限値によって書き換えられる。
【0061】
なお、制御システムから上限値または下限値が取得される前の第1制限値および第2制限値には、開発者が実験およびシミュレーションなどに基づいて予め定めた初期値(たとえば無効値)が用いられる。
【0062】
中断部948は、いずれかの制御システムから回転数が取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断する。
【0063】
また、中断部948は、第1制限値よりも大きい下限値が、いずれかの制御システムから取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断する。さらに、中断部948は、第2制限値よりも小さい上限値が、いずれかの制御システムから取得されると、上限値および下限値を取得することを中断する。
【0064】
なお、第1制限値よりも大きい上限値が取得されると上限値、下限値および回転数を取得することを中断したり、第2制限値よりも小さい下限値が取得されると上限値、下限値および回転数を取得することを中断したりするようにしてもよい。
【0065】
図8を参照して、ECU900が実行する処理について説明する。なお、以下に説明する処理は、予め定められた周期で繰り返される。
【0066】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU900は、上限値、下限値および回転数のいずれも取得していない制御システムのうち、最も優先順位が高い制御システムから、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを取得する。すなわち、上限値を設定する制御システムからは、上限値が取得される。下限値を設定する制御システムからは、下限値が取得される。回転数を設定する制御システムからは、回転数が取得される。
【0067】
S102にて、ECU900は、上限値または下限値が取得されたか否かを判断する。上限値または下限値が取得されると(S102にてYES)、処理はS104に移される。回転数が取得されると(S102にてNO)、処理はS110に移される。
【0068】
S104にて、ECU900は、取得された上限値または下限値が、第1制限値または第2制限値と論理的に整合しているか否かを判断する。すなわち、取得された上限値または下限値が、第1制限値より小さく、かつ第2制限値より大きいか否かが判断される。取得された上限値または下限値が、第1制限値より小さく、かつ第2制限値より大きいと(S104にてYES)、処理はS106に移される。
【0069】
取得された上限値または下限値が、第1制限値または第2制限値と論理的に矛盾していると、処理はS108に移される。たとえば、第1制限値よりも大きい下限値が取得された場合、または第2制限値よりも小さい上限値が取得された場合、処理がS108に移される。なお、第1制限値よりも大きい上限値が取得された場合、または第2制限値よりも小さい下限値が取得された場合に、処理をS108に移すようにしてもよい。
【0070】
S106にて、ECU900は、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい上限値、または、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい下限値を、新たな第1制限値または新たな第2制限値として記憶する。第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい上限値が取得された場合、取得された上限値が新たな第1制限値として記憶される。第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい下限値が取得された場合、取得されたか現地が新たな第2制限値として記憶される。その後、処理はS100に戻される。すなわち、今回の処理において上限値または下限値が取得された制御システムよりも一つだけ優先順位が低い制御システムから、上限値、下限値および回転数のいずれかが取得される。
【0071】
S108にて、ECU900は、第1制限値または第2制限値を、プライマリプーリ回転数NINの目標値として設定する。第1制限値よりも大きい下限値が取得されると、第1制限値が目標値として設定される。第2制限値よりも小さい上限値が取得されると、第2制限値が目標値として設定される。
【0072】
なお、第1制限値よりも大きい上限値が取得されると第1制限値を目標値として設定したり、第2制限値よりも小さい下限値が取得されると第2制限値を目標値として設定したりしてもよい。
【0073】
S110にて、ECU900は、取得された回転数が、第1制限値よりも小さく、かつ、第2制限値よりも大きいか否かを判断する。第1制限値よりも小さく、かつ、第2制限値よりも大きい回転数が取得されると(S110にてYES)、処理はS112に移される。第1制限値よりも大きい回転数が取得された場合、または、第2制限値よりも小さい回転数が取得された場合、(S110にてNO)、処理はS114に移される。
【0074】
S112にて、ECU900は、第1制限値よりも小さく、かつ、第2制限値よりも大きい回転数を、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定する。すなわち、取得された回転数が目標値として設定される。
【0075】
S114にて、ECU900は、第1制限値または第2制限値を、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定する。第1制限値よりも大きい回転数が取得されると、第1制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される。第2制限値よりも小さい回転数が取得されると、第2制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される。
【0076】
S120にて、ECU900は、制御システムから上限値、下限値および回転数を取得することを中断する。S122にて、ECU900は、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINが、設定された目標値になるように、無段変速機500を制御する。その後、この処理は終了する。
【0077】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、ECU900の動作について説明する。
【0078】
車両の走行中、上限値、下限値および回転数のいずれも取得していない制御システムのうち、最も優先順位が高い制御システムから、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかが取得される(S100)。
【0079】
上限値または下限値が取得されると(S102にてYES)、取得された上限値または下限値が、第1制限値または第2制限値と論理的に整合しているか否かが判断される(S104)。
【0080】
図9に示すように、たとえば、取得された上限値または下限値が、第1制限値より小さく、かつ第2制限値より大きいと(S104にてYES)、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい上限値、または、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい下限値が、新たな第1制限値または新たな第2制限値として記憶される(S106)。
【0081】
その後、一つだけ優先順位が低い制御システムから、上限値、下限値および回転数のいずれかが取得され、同様の処理が繰り返される。これにより、プライマリプーリ回転数NINの目標値を設定する際に、優先順位が高い制御システムから取得された上限値または下限値を考慮することができる。
【0082】
図10に示すように、第1制限値よりも小さく、かつ、第2制限値よりも大きい回転数が取得されると(S102にてNO、S110にてYES)、取得された回転数が、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される(S112)。
【0083】
一方、図11に示すように、第1制限値よりも大きい回転数が取得されると(S102にてNO、S110にてNO)、第1制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される(S114)。同様に、図12に示すように、第2制限値よりも小さい回転数が取得されると(S102にてNO、S110にてNO)、第2制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される(S114)。
【0084】
また、図13に示すように、第1制限値よりも大きい下限値が取得されると(S104にてNO)、第1制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される(S108)。図14に示すように、第2制限値よりも小さい上限値が取得されると(S104にてNO)、第2制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される(S108)。
【0085】
無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値が設定されると(S108,S112,S114)、今回の処理で上限値、下限値または回転数を取得した制御システムよりも優先順位が低い制御システムから上限値、下限値および回転数を取得することが中断される(S120)。そのため、全ての上限値および下限値を考慮せずとも、入力軸回転数の最終的な目標値を決定することができる。その結果、無段変速機の入力軸回転数を制御するために必要な処理を簡素にすることができる。
【0086】
無段変速機500は、プライマリプーリ回転数NINが、設定された目標値になるように制御される(S122)。
【0087】
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態について説明する。図15を参照して、ECU900の取得部950は、前述した複数の制御システムから、優先順位が高い順に上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを取得するとともに、回転数を上限値および下限値として取得する。すなわち、回転数が、上限値および下限値に変換される。図16に示すように、上限値および下限値が、取得された回転数と同じ値であると見なされる。すなわち、上限値および下限値が、同じ値であると見なされる。
【0088】
図17を参照して、ECU900が実行する処理について説明する。前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰り返さない。
【0089】
S200にて、ECU900は、上限値および下限値のいずれも取得していない制御システムのうち、最も優先順位が高い制御システムから、上限値および下限値のうちのいずれかを取得する。
【0090】
本実施の形態においてECU900が実行する処理は、前述した第1の実施の形態においてECU900が実行する処理から、S102,S110〜S114を取り除いたものと略同じである。したがって、回転数を上限値および下限値として取得することにより、ECU900が行なう処理をさらに簡素化することができる。
【0091】
<その他の実施の形態>
プライマリプーリ回転数NINの目標値を設定する代わりに、エンジン回転数NEの目標値を設定するようにしてもよい。この場合、エンジン回転数NEとプライマリプーリ回転数NINとが同じであると見なしてもよい。すなわち、プライマリプーリ回転数NINがエンジン回転数NEの目標値になるように、無段変速機500の変速比を制御するようにしてもよい。
【0092】
さらに、エンジン回転数NEが、設定された、プライマリプーリ回転数NINまたはエンジンNEの目標値になるように、エンジン200を制御するようにしてもよい。
【0093】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
100 パワートレーン、200 エンジン、300 トルクコンバータ、400 前後進切換装置、500 無段変速機、600 減速歯車、700 差動歯車装置、800 駆動輪、900 ECU、930 ナビゲーションシステム、940 制御部、942 設定部、944 取得部、946 変更部、948 中断部、950 取得部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワートレーンの制御装置に関し、特に、複数の制御システムが設定した上限値、下限値および回転数に基づいて、パワートレーンの回転軸の回転数を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
変速比を無段階に変更可能な無段変速機(CVT)が知られている。無段変速機では、たとえば金属ベルトもしくはチェーンがプライマリプーリおよびセカンダリプーリにより挟持される。無段変速機においては、一般的にはプライマリプーリに供給される油圧、より具体的にはプライマリプーリのプライマリシーブに供給される油圧を変更することによって、変速比が変更される。
【0003】
たとえば、プライマリプーリのプライマリシーブに供給される油圧を増大すると、プライマリプーリの溝幅が狭くなる。その結果、プライマリプーリの有効径が大きくなる。プライマリプーリの有効径が大きくなることに伴なって、セカンダリプーリの溝幅が広くなるとともに有効径が小さくなる。その結果、無段変速機がアップシフトする。
【0004】
逆に、プライマリプーリのプライマリシーブに供給される油圧を低減すると、プライマリプーリの溝幅が広くなる。その結果、プライマリプーリの有効径が小さくなる。プライマリプーリの有効径が小さくなることに伴なって、セカンダリプーリの溝幅が狭くなるとともに有効径が大きくなる。その結果、無段変速機がダウンシフトする。
【0005】
一般的に、無段変速機の変速比は、入力軸回転数が設定された目標値(目標回転数)になるように制御される。入力軸回転数の目標値は、様々な制御システムにおいて設定される。たとえば、通常の制御システムにおいては、アクセル開度、車速およびブレーキ信号などの情報に基づいて、入力軸回転数の目標値が設定される。運転者がシフトレバーまたはパドルスイッチなどを操作することによりアップシフトまたはダウンシフトを要求する制御システムにおいては、車速に比例して入力軸回転数の目標値が増大するように設定される。車両が走行する道路に応じて入力軸回転数の目標値を設定する制御システムでは、道路の勾配および車両に搭載されたナビゲーションシステムからのコーナー情報(カーブの形状等)に基づいて、入力軸回転数の目標値が適切に設定される。その他、入力軸回転数の目標値を設定するための様々な制御システムが実用化されている。これらの各制御システムが設定した目標値から、最終的に用いられる目標値が選択される。すなわち、各制御システムが設定した目標値が調停されることにより、最終的に用いられる目標値が選択される。
【0006】
各制御システムにおいて回転数を設定する代わりに、上限値または下限値を設定することもある。特開2001−328462号公報(特許文献1)は、走行負荷に応じて下限回転数を設定し、目標入力回転数NINTBSEが下限回転数以上であれば、その目標入力回転数NINTBSEを最終目標入力回転数NINTとし、目標入力回転数NINTBSEが下限回転数より低回転数であれば、下限回転数を最終目標入力回転数NINTとして採用することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−328462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、複数の制御システムが設定した、全ての上限値、下限値および回転数を考慮して最終的な目標回転数を決定するようにすると、最終的な目標回転数を決定するための処理が煩雑になり得る。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、パワートレーンの回転軸の回転数を制御するために必要な処理を簡素にすることができるパワートレーンの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係るパワートレーンの制御装置は、回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段と、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを取得するための手段と、上限値が取得されると、予め定められた第1の値を取得された上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、下限値が取得されると、予め定められた、第1の値よりも小さい第2の値を取得された下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、第1の値よりも小さく、かつ、第2の値よりも大きい回転数が取得されると、取得された回転数を目標値として設定するための手段と、回転数が取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断するための手段とを備える。
【0011】
この構成によると、複数の制御システムのうちのいずれかの制御システムが設定した回転数が取得されると、優先順位が高い制御システムにより設定された上限値または下限値を考慮する一方で、優先順位が低い制御システムにより設定される上限値または下限値を取得せずに、パワートレーンの回転軸の回転数の目標値を設定することができる。そのため、全ての制御システムから上限値、下限値または回転数を取得する前に、いずれかの制御システムから回転数を取得した場合には、全ての上限値、下限値および回転数を考慮せずとも、入力軸回転数の最終的な目標値を決定することができる。その結果、パワートレーンの回転軸の回転数を制御するために必要な処理を簡素にすることができる。
【0012】
第2の発明に係るパワートレーンの制御装置は、第1の値よりも大きい回転数が取得されると、第1の値を目標値として設定するための手段と、第2の値よりも小さい回転数が取得されると、第2の値を目標値として設定するための手段とをさらに備える。
【0013】
この構成によると、目標値が第1の値よりも大きくならないように制限したり、目標値が第2の値よりも小さくならないように制限することができる。
【0014】
第3の発明に係るパワートレーンの制御装置は、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、第1の値を目標値として設定するための手段と、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断するための手段と、第2の値よりも小さい上限値が取得されると、第2の値を目標値として設定するための手段と、第2の値よりも小さい上限値が取得されると、上限値および下限値を取得することを中断するための手段とをさらに備える。第1の変更手段は、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい上限値が取得されると、第1の値を取得された上限値に応じて変更するための手段を含む。第2の変更手段は、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値が取得されると、第2の値を取得された下限値に応じて変更するための手段を含む。
【0015】
この構成によると、優先度が低い制御システムから取得された下限値と、優先度が高い制御システムから取得された上限値に応じて変更された第1の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、目標値を設定することができる。同様に、優先度が低い制御システムから取得された上限値と、優先度が高い制御システムから取得された下限値に応じて変更された第2の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、目標値を設定することができる。
【0016】
第4の発明に係るパワートレーンの制御装置は、パワートレーンの回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段と、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを取得するとともに、回転数を、上限値および下限値として取得するための手段と、予め定められた第1の値よりも小さく、かつ、予め定められた、第1の値よりも小さい第2の値よりも大きい上限値が取得されると、第1の値を第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値が取得されると、第2の値を第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、第1の値を目標値として設定するための手段と、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断するための手段と、第2の値よりも小さい上限値が取得されると、第2の値を目標値として設定するための手段と、第2の値よりも小さい上限値が取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断するための手段とを備える。
【0017】
この構成によると、複数の制御システムのうちのいずれかの制御システムが設定した回転数は、上限値および下限値として取得される。優先度が低い制御システムから取得された下限値と、優先度が高い制御システムから取得された上限値に応じて変更された第1の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、パワートレーンの回転軸の回転数の目標値を設定することができる。同様に、優先度が低い制御システムから取得された上限値と、優先度が高い制御システムから取得された下限値に応じて変更された第2の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、パワートレーンの回転軸の回転数の目標値を設定することができる。そのため、全ての制御システムから上限値、下限値または回転数を取得する前に、いずれかの制御システムから取得された下限値または上限値が第1の値または第2の値と論理的に矛盾すると、全ての上限値および下限値を考慮せずとも、回転軸の回転数の最終的な目標値を決定することができる。その結果、パワートレーンの回転軸の回転数を制御するために必要な処理を簡素にすることができる。また、物理量を上限値および下限値に統一できるため、第1の発明に比べて処理をより簡素にすることができる。
【0018】
第5の発明に係るパワートレーンの制御装置は、パワートレーンの回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段と、上限値および下限値のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に上限値および下限値のうちのいずれかを取得するための手段と、予め定められた第1の値よりも小さく、かつ、予め定められた、第1の値よりも小さい第2の値よりも大きい上限値が取得されると、第1の値を第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値が取得されると、第2の値を第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、第1の値を目標値として設定するための手段と、第1の値よりも大きい下限値が取得されると、上限値および下限値を取得することを中断するための手段と、第2の値よりも小さい上限値が取得されると、第2の値を目標値として設定するための手段と、第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい上限値が取得されると、上限値および下限値を取得することを中断するための手段とを備える。
【0019】
この構成によると、優先度が低い制御システムから取得された下限値と、優先度が高い制御システムから取得された上限値に応じて変更された第1の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、パワートレーンの回転軸の回転数の目標値を設定することができる。同様に、優先度が低い制御システムから取得された上限値と、優先度が高い制御システムから取得された下限値に応じて変更された第2の値との関係が論理的に矛盾すると、さらに優先度が低い制御システムから上限値および下限値を取得せずに、パワートレーンの回転軸の回転数の目標値を設定することができる。そのため、全ての制御システムから上限値または下限値を取得する前に、いずれかの制御システムから取得された下限値または上限値が第1の値または第2の値と論理的に矛盾すると、全ての上限値および下限値を考慮せずとも、回転軸の回転数の最終的な目標値を決定することができる。その結果、パワートレーンの回転軸の回転数を制御するために必要な処理を簡素にすることができる。
【0020】
第6の発明に係るパワートレーンの制御装置においては、第1の変更手段は、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい上限値が取得されると、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい上限値を第1の値として記憶するための手段を含む。第2の変更手段は、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値が取得されると、第1の値よりも小さく、かつ第2の値よりも大きい下限値を第2の値として記憶するための手段を含む。
【0021】
この構成によると、優先順位が高い制御システムから取得された上限値または下限値を、優先順位が低い制御システムから取得された上限値、下限値または回転数と比較することができる。そのため、目標値を設定するために、優先順位が高い順に、各制御システムから取得された上限値または下限値を考慮することができる。
【0022】
第7の発明に係るパワートレーンの制御装置においては、回転軸は、無段変速機の入力軸である。制御手段は、無段変速機の入力軸の回転数が目標値になるように制御するための手段を含む。
【0023】
この構成によると、無段変速機の入力軸の回転数が目標値になるように、無段変速比の変速比を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車両の駆動装置を示す図である。
【図2】車両の制御システムの概略を示すブロック図である。
【図3】複数の制御システムの優先順位などを示す図である。
【図4】回転数が設定される範囲を示す図(その1)である。
【図5】回転数が設定される範囲を示す図(その2)である。
【図6】回転数が設定される範囲を示す図(その3)である。
【図7】第1の実施の形態におけるECUの機能ブロック図である。
【図8】第1の実施の形態においてECUが実行する処理のフローチャートを示す図である。
【図9】第1の制限値よりも小さく、かつ第2の制限値よりも大きい上限値または下限値を示す図である。
【図10】第1の制限値よりも小さく、かつ第2の制限値よりも大きい回転数を示す図である。
【図11】第1の制限値よりも大きい回転数を示す図である。
【図12】第2の制限値よりも小さい回転数を示す図である。
【図13】第1の制限値よりも大きい下限値を示す図である。
【図14】第2の制限値よりも小さい上限値を示す図である。
【図15】第2の実施の形態におけるECUの機能ブロック図である。
【図16】上限値および下限値として取得される回転数を示す図である。
【図17】第2の実施の形態においてECUが実行する処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0026】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、車両に搭載されたパワートレーン100のエンジン200の出力は、トルクコンバータ300を介して、前後進切換装置400を有する無段変速機500に入力される。無段変速機500の出力は、減速歯車600および差動歯車装置700に伝達され、左右の駆動輪800へ分配される。パワートレーン100は、後述するECU(Electronic Control Unit)900により制御される。なお、エンジン200の代わりにもしくは加えて、モータを駆動源として用いるようにしてもよい。
【0027】
トルクコンバータ300は、エンジン200のクランク軸に連結されたポンプインペラ302と、タービン軸304を介して前後進切換装置400に連結されたタービンランナ306とから構成されている。ポンプインペラ302およびタービンランナ306の間にはロックアップクラッチ308が設けられている。ロックアップクラッチ308は、係合側油室および解放側油室に対する油圧供給が切換えられることにより、係合または解放されるようになっている。
【0028】
ロックアップクラッチ308が完全係合させられることにより、ポンプインペラ302およびタービンランナ306は一体的に回転させられる。ポンプインペラ302には、無段変速機500を変速制御したり、ベルト挟圧力を発生させたり、各部に潤滑のための作動油を供給したりするための油圧を発生する機械式のオイルポンプ310が設けられている。
【0029】
前後進切換装置400は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置から構成されている。トルクコンバータ300のタービン軸304はサンギヤ402に連結されている。無段変速機500の入力軸502はキャリア404に連結されている。キャリア404とサンギヤ402とはフォワードクラッチ406を介して連結されている。リングギヤ408は、リバースブレーキ410を介してハウジングに固定される。フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410は油圧シリンダによって摩擦係合させられる。フォワードクラッチ406の入力回転数は、タービン軸304の回転数、すなわちタービン回転数NTと同じである。
【0030】
フォワードクラッチ406が係合させられるとともに、リバースブレーキ410が解放されることにより、前後進切換装置400は前進用係合状態となる。この状態で、前進方向の動力が無段変速機500に伝達される。リバースブレーキ410が係合させられるとともにフォワードクラッチ406が解放されることにより、前後進切換装置400は後進用係合状態となる。この状態で、入力軸502はタービン軸304に対して逆方向へ回転させられる。これにより、後進方向の動力が無段変速機500に伝達される。
【0031】
すなわち、フォワードクラッチ406もしくはリバースブレーキ410が係合することにより、エンジン200から出力された動力が駆動輪800に伝達される。フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410が共に解放されると、前後進切換装置400は動力伝達を遮断するニュートラル状態になる。
【0032】
なお、前後進切換装置400を、無段変速機500と駆動輪800との間に配置するようにしてもよい。
【0033】
無段変速機500には、入力軸502に設けられたプライマリプーリ504と、出力軸506に設けられたセカンダリプーリ508と、これらのプーリに巻き掛けられた金属ベルト510とがさらに設けられる。各プーリと金属ベルト510との間の摩擦力を利用して、動力伝達が行われる。
【0034】
各プーリは溝幅が可変であるように、油圧シリンダ(シーブ)から構成されている。プライマリプーリ504の油圧シリンダ、すなわちプライマリシーブの油圧が制御されることにより、各プーリの溝幅が変化する。これにより、各プーリの有効径が変更され、変速比GR(=プライマリプーリ回転数NIN/セカンダリプーリ回転数NOUT)が連続的に変化させられる。なお、金属ベルト510の代わりにチェーンを用いるようにしてもよい。
【0035】
図2に示すように、ECU900には、エンジン回転数センサ902、タービン回転数センサ904、車速センサ906、スロットル開度センサ908、冷却水温センサ910、油温センサ912、アクセル開度センサ914、フットブレーキスイッチ916、ポジションセンサ918、プライマリプーリ回転数センサ922およびセカンダリプーリ回転数センサ924から信号が入力される。また、ECU900には、ナビゲーションシステム930からコーナー情報(カーブの形状等)を表わす信号が入力される。
【0036】
エンジン回転数センサ902は、エンジン200の回転数(エンジン回転数)NEを検出する。タービン回転数センサ904は、タービン軸304の回転数(タービン回転数)NTを検出する。車速センサ906は、車速Vを検出する。スロットル開度センサ908は、電子スロットルバルブの開度THAを検出する。冷却水温センサ910は、エンジン200の冷却水温TWを検出する。油温センサ912は、無段変速機500の作動に用いられる作動油の温度(以下、油温とも記載する)THOを検出する。アクセル開度センサ914は、アクセルペダルの開度ACCを検出する。フットブレーキスイッチ916は、フットブレーキの操作の有無を検出する。ポジションセンサ918は、シフトポジションと対応する位置に設けられた接点がONであるかOFFであるかを判別することにより、シフトレバー920のポジションPSHを検出する。プライマリプーリ回転数センサ922は、プライマリプーリ504の回転数(入力軸回転数)NINを検出する。セカンダリプーリ回転数センサ924は、セカンダリプーリ508の回転数(出力軸回転数)NOUTを検出する。各センサの検出結果を表す信号が、ECU900に送信される。タービン回転数NTは、フォワードクラッチ406が係合された前進走行時にはプライマリプーリ回転数NINと一致する。車速Vは、セカンダリプーリ回転数NOUTと対応した値になる。したがって、車両が停車状態にあり、かつフォワードクラッチ406が係合された状態では、タービン回転数NTは0となる。
【0037】
ECU900は、CPU(Central Processing Unit)、メモリおよび入出力インターフェースなどを含む。CPUはメモリに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なう。これにより、エンジン200の出力制御、無段変速機500の変速制御、ベルト挟圧力制御、フォワードクラッチ406の係合/解放制御およびリバースブレーキ410の係合/解放制御などを実行する。
【0038】
エンジン200の出力制御は電子スロットルバルブ1000、燃料噴射装置1100、点火装置1200などによって行なわれる。無段変速機500の変速制御、ベルト挟圧力制御、フォワードクラッチ406の係合/解放制御およびリバースブレーキ410の係合/解放制御は、油圧制御回路2000によって行なわれる。
【0039】
無段変速機500の変速比GRは、たとえば、プライマリプーリ回転数NINがECU900により設定された目標値(目標回転数)になるように制御される。後述するように、プライマリプーリ回転数NINの目標値は、複数の制御システムから取得された上限値、下限値および回転数に基づいて設定される。
【0040】
図3に示すように、複数の制御システムの各々が、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを設定する。図3に示す例では、制御システムAは、回転数を設定する。また、制御システムAは、必要がある場合だけ、回転数を設定する。すなわち、回転数が常に取得されるとは限らない。
【0041】
制御システムBは、必要がある場合だけ、上限値を算出する。制御システムCは、必要がある場合だけ、上限値を算出する。制御システムDは、必要がある場合だけ、下限値を算出する。制御システムEは、常に下限値を設定する。
【0042】
たとえば、いずれかの制御システムは、変速レンジが「D」レンジであると、アクセル開度、車速およびブレーキ信号などの情報に基づいて、回転数を図4において斜線で示す領域内で設定する。
【0043】
別の制御システムは、道路の勾配および車両に搭載されたナビゲーションシステム930からのコーナー情報(カーブの形状等)に基づいて、回転数を設定する。
【0044】
さらに別の制御システムは、上り坂ではアップシフトを制限するために下限値を設定する。さらに別の制御システムは、下り坂では無段変速機500をシフトダウンするために下限値を設定する。
【0045】
さらに別の制御システムは、図5において実線で示すように、運転者がシフトレバー920またはパドルスイッチ(図示せず)などを操作することにより選択された変速比M1〜M7を維持するように、回転数を設定する。すなわち、車速に比例して回転数が増大するように設定される。変速比の数は、7つよりも少なくてもよく、多くてもよい。
【0046】
さらに別の制御システムは、変速レンジが「B」レンジであると、アクセル開度、車速およびブレーキ信号などの情報に基づいて、回転数を、図6において斜線で示す領域内で設定する。
【0047】
さらに別の制御システムは、油温THOがしきい値より高いという条件が満たされると、上限値を設定する。
【0048】
上述した制御システムは一例である。制御システムの数、種類および具体的な内容は、開発者により任意に定められる。各制御システムは、ソフトウェアにより構成してもよく、ハードウェアにより構成してもよく、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより構成してもよい。
【0049】
図3に戻って、複数の制御モードは、予め定められた順番で優先順位付けされる。優先順位は、開発者により定められる。本実施の形態においては、優先順位が高い制御モードから順番に、設定された上限値、下限値および回転数のうちのいずれかが取得される。
【0050】
図7を参照して、ECU900についてさらに説明する。ECU900は、制御部940と、設定部942と、取得部944と、変更部946と、中断部948とを含む。制御部940、設定部942、取得部944、変更部946および中断部948は、ソフトウェアにより構成してもよく、ハードウェアにより構成してもよく、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより構成してもよい。
【0051】
制御部940は、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINが、設定部942により設定された目標値になるように制御する。
【0052】
設定部942は、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値を設定する。具体的には、予め定められた第1制限値(第1の値に相当)よりも小さく、かつ、予め定められた第2制限値(第2の値に相当)よりも大きい回転数が、いずれかの制御システムから取得されると、取得された回転数が目標値として設定される。本実施の形態において、第2制限値は、第1制限値よりも小さい。
【0053】
また、第1制限値よりも大きい回転数が、いずれかの制御システムから取得されると、第1制限値が目標値として設定される。第2制限値よりも小さい回転数が、いずれかの制御システムから取得されると、第2制限値が目標値として設定される。
【0054】
さらに、第1制限値よりも大きい下限値が、いずれかの制御システムから取得されると、第1制限値が目標値として設定される。第2制限値よりも小さい上限値が、いずれかの制御システムから取得されると、第2制限値が目標値として設定される。
【0055】
すなわち、設定部942は、各制御システムから取得された上限値、下限値および回転数を調停することによって、プライマリプーリ回転数NINの目標値を設定する。
【0056】
なお、第1制限値よりも大きい上限値が取得されると第1制限値を目標値として設定したり、第2制限値よりも小さい下限値が取得されると第2制限値を目標値として設定したりするようにしてもよい。
【0057】
取得部944は、前述した複数の制御システムから、優先順位が高い順に上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを取得する。
【0058】
変更部946は、いずれかの制御システムから上限値が取得されると、第1制限値を取得された上限値に応じて変更(更新)する。また、変更部946は、いずれかの制御システムから下限値が取得されると、第2制限値を取得された下限値に応じて変更する。
【0059】
より具体的には、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい上限値が取得されると、第1制限値が取得された上限値に応じて変更される。たとえば、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい上限値が、新たな第1制限値として記憶される。すなわち、第1制限値が取得された上限値によって書き換えられる。
【0060】
同様に、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい下限値が取得されると、第2制限値が取得された下限値に応じて変更される。たとえば、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい下限値が、新たな第2制限値として記憶される。すなわち、第2制限値が取得された下限値によって書き換えられる。
【0061】
なお、制御システムから上限値または下限値が取得される前の第1制限値および第2制限値には、開発者が実験およびシミュレーションなどに基づいて予め定めた初期値(たとえば無効値)が用いられる。
【0062】
中断部948は、いずれかの制御システムから回転数が取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断する。
【0063】
また、中断部948は、第1制限値よりも大きい下限値が、いずれかの制御システムから取得されると、上限値、下限値および回転数を取得することを中断する。さらに、中断部948は、第2制限値よりも小さい上限値が、いずれかの制御システムから取得されると、上限値および下限値を取得することを中断する。
【0064】
なお、第1制限値よりも大きい上限値が取得されると上限値、下限値および回転数を取得することを中断したり、第2制限値よりも小さい下限値が取得されると上限値、下限値および回転数を取得することを中断したりするようにしてもよい。
【0065】
図8を参照して、ECU900が実行する処理について説明する。なお、以下に説明する処理は、予め定められた周期で繰り返される。
【0066】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU900は、上限値、下限値および回転数のいずれも取得していない制御システムのうち、最も優先順位が高い制御システムから、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを取得する。すなわち、上限値を設定する制御システムからは、上限値が取得される。下限値を設定する制御システムからは、下限値が取得される。回転数を設定する制御システムからは、回転数が取得される。
【0067】
S102にて、ECU900は、上限値または下限値が取得されたか否かを判断する。上限値または下限値が取得されると(S102にてYES)、処理はS104に移される。回転数が取得されると(S102にてNO)、処理はS110に移される。
【0068】
S104にて、ECU900は、取得された上限値または下限値が、第1制限値または第2制限値と論理的に整合しているか否かを判断する。すなわち、取得された上限値または下限値が、第1制限値より小さく、かつ第2制限値より大きいか否かが判断される。取得された上限値または下限値が、第1制限値より小さく、かつ第2制限値より大きいと(S104にてYES)、処理はS106に移される。
【0069】
取得された上限値または下限値が、第1制限値または第2制限値と論理的に矛盾していると、処理はS108に移される。たとえば、第1制限値よりも大きい下限値が取得された場合、または第2制限値よりも小さい上限値が取得された場合、処理がS108に移される。なお、第1制限値よりも大きい上限値が取得された場合、または第2制限値よりも小さい下限値が取得された場合に、処理をS108に移すようにしてもよい。
【0070】
S106にて、ECU900は、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい上限値、または、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい下限値を、新たな第1制限値または新たな第2制限値として記憶する。第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい上限値が取得された場合、取得された上限値が新たな第1制限値として記憶される。第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい下限値が取得された場合、取得されたか現地が新たな第2制限値として記憶される。その後、処理はS100に戻される。すなわち、今回の処理において上限値または下限値が取得された制御システムよりも一つだけ優先順位が低い制御システムから、上限値、下限値および回転数のいずれかが取得される。
【0071】
S108にて、ECU900は、第1制限値または第2制限値を、プライマリプーリ回転数NINの目標値として設定する。第1制限値よりも大きい下限値が取得されると、第1制限値が目標値として設定される。第2制限値よりも小さい上限値が取得されると、第2制限値が目標値として設定される。
【0072】
なお、第1制限値よりも大きい上限値が取得されると第1制限値を目標値として設定したり、第2制限値よりも小さい下限値が取得されると第2制限値を目標値として設定したりしてもよい。
【0073】
S110にて、ECU900は、取得された回転数が、第1制限値よりも小さく、かつ、第2制限値よりも大きいか否かを判断する。第1制限値よりも小さく、かつ、第2制限値よりも大きい回転数が取得されると(S110にてYES)、処理はS112に移される。第1制限値よりも大きい回転数が取得された場合、または、第2制限値よりも小さい回転数が取得された場合、(S110にてNO)、処理はS114に移される。
【0074】
S112にて、ECU900は、第1制限値よりも小さく、かつ、第2制限値よりも大きい回転数を、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定する。すなわち、取得された回転数が目標値として設定される。
【0075】
S114にて、ECU900は、第1制限値または第2制限値を、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定する。第1制限値よりも大きい回転数が取得されると、第1制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される。第2制限値よりも小さい回転数が取得されると、第2制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される。
【0076】
S120にて、ECU900は、制御システムから上限値、下限値および回転数を取得することを中断する。S122にて、ECU900は、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINが、設定された目標値になるように、無段変速機500を制御する。その後、この処理は終了する。
【0077】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、ECU900の動作について説明する。
【0078】
車両の走行中、上限値、下限値および回転数のいずれも取得していない制御システムのうち、最も優先順位が高い制御システムから、上限値、下限値および回転数のうちのいずれかが取得される(S100)。
【0079】
上限値または下限値が取得されると(S102にてYES)、取得された上限値または下限値が、第1制限値または第2制限値と論理的に整合しているか否かが判断される(S104)。
【0080】
図9に示すように、たとえば、取得された上限値または下限値が、第1制限値より小さく、かつ第2制限値より大きいと(S104にてYES)、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい上限値、または、第1制限値よりも小さく、かつ第2制限値よりも大きい下限値が、新たな第1制限値または新たな第2制限値として記憶される(S106)。
【0081】
その後、一つだけ優先順位が低い制御システムから、上限値、下限値および回転数のいずれかが取得され、同様の処理が繰り返される。これにより、プライマリプーリ回転数NINの目標値を設定する際に、優先順位が高い制御システムから取得された上限値または下限値を考慮することができる。
【0082】
図10に示すように、第1制限値よりも小さく、かつ、第2制限値よりも大きい回転数が取得されると(S102にてNO、S110にてYES)、取得された回転数が、無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される(S112)。
【0083】
一方、図11に示すように、第1制限値よりも大きい回転数が取得されると(S102にてNO、S110にてNO)、第1制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される(S114)。同様に、図12に示すように、第2制限値よりも小さい回転数が取得されると(S102にてNO、S110にてNO)、第2制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される(S114)。
【0084】
また、図13に示すように、第1制限値よりも大きい下限値が取得されると(S104にてNO)、第1制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される(S108)。図14に示すように、第2制限値よりも小さい上限値が取得されると(S104にてNO)、第2制限値が無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値として設定される(S108)。
【0085】
無段変速機500のプライマリプーリ回転数NINの目標値が設定されると(S108,S112,S114)、今回の処理で上限値、下限値または回転数を取得した制御システムよりも優先順位が低い制御システムから上限値、下限値および回転数を取得することが中断される(S120)。そのため、全ての上限値および下限値を考慮せずとも、入力軸回転数の最終的な目標値を決定することができる。その結果、無段変速機の入力軸回転数を制御するために必要な処理を簡素にすることができる。
【0086】
無段変速機500は、プライマリプーリ回転数NINが、設定された目標値になるように制御される(S122)。
【0087】
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態について説明する。図15を参照して、ECU900の取得部950は、前述した複数の制御システムから、優先順位が高い順に上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを取得するとともに、回転数を上限値および下限値として取得する。すなわち、回転数が、上限値および下限値に変換される。図16に示すように、上限値および下限値が、取得された回転数と同じ値であると見なされる。すなわち、上限値および下限値が、同じ値であると見なされる。
【0088】
図17を参照して、ECU900が実行する処理について説明する。前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰り返さない。
【0089】
S200にて、ECU900は、上限値および下限値のいずれも取得していない制御システムのうち、最も優先順位が高い制御システムから、上限値および下限値のうちのいずれかを取得する。
【0090】
本実施の形態においてECU900が実行する処理は、前述した第1の実施の形態においてECU900が実行する処理から、S102,S110〜S114を取り除いたものと略同じである。したがって、回転数を上限値および下限値として取得することにより、ECU900が行なう処理をさらに簡素化することができる。
【0091】
<その他の実施の形態>
プライマリプーリ回転数NINの目標値を設定する代わりに、エンジン回転数NEの目標値を設定するようにしてもよい。この場合、エンジン回転数NEとプライマリプーリ回転数NINとが同じであると見なしてもよい。すなわち、プライマリプーリ回転数NINがエンジン回転数NEの目標値になるように、無段変速機500の変速比を制御するようにしてもよい。
【0092】
さらに、エンジン回転数NEが、設定された、プライマリプーリ回転数NINまたはエンジンNEの目標値になるように、エンジン200を制御するようにしてもよい。
【0093】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
100 パワートレーン、200 エンジン、300 トルクコンバータ、400 前後進切換装置、500 無段変速機、600 減速歯車、700 差動歯車装置、800 駆動輪、900 ECU、930 ナビゲーションシステム、940 制御部、942 設定部、944 取得部、946 変更部、948 中断部、950 取得部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段を備えた、パワートレーンの制御装置であって、
上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に前記上限値、前記下限値および前記回転数のうちのいずれかを取得するための手段と、
前記上限値が取得されると、予め定められた第1の値を取得された上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、
前記下限値が取得されると、予め定められた、前記第1の値よりも小さい第2の値を取得された下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、
前記第1の値よりも小さく、かつ、前記第2の値よりも大きい回転数が取得されると、取得された回転数を前記目標値として設定するための手段と、
前記回転数が取得されると、前記上限値、前記下限値および前記回転数を取得することを中断するための手段とを備える、パワートレーンの制御装置。
【請求項2】
前記第1の値よりも大きい回転数が取得されると、前記第1の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第2の値よりも小さい回転数が取得されると、前記第2の値を前記目標値として設定するための手段とをさらに備える、請求項1に記載のパワートレーンの制御装置。
【請求項3】
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第1の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記上限値、前記下限値および前記回転数を取得することを中断するための手段と、
前記第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記第2の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記上限値および前記下限値を取得することを中断するための手段とをさらに備え、
前記第1の変更手段は、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい上限値が取得されると、前記第1の値を取得された上限値に応じて変更するための手段を含み、
前記第2の変更手段は、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第2の値を取得された下限値に応じて変更するための手段を含む、請求項1または2に記載のパワートレーンの制御装置。
【請求項4】
回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段を備えた、パワートレーンの制御装置であって、
上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に前記上限値、前記下限値および前記回転数のうちのいずれかを取得するとともに、前記回転数を、前記上限値および前記下限値として取得するための手段と、
予め定められた第1の値よりも小さく、かつ、予め定められた、前記第1の値よりも小さい第2の値よりも大きい上限値が取得されると、前記第1の値を前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、
前記前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第2の値を前記前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第1の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記上限値、前記下限値および前記回転数を取得することを中断するための手段と、
前記第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記第2の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記上限値、前記下限値および前記回転数を取得することを中断するための手段とを備える、パワートレーンの制御装置。
【請求項5】
回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段を備えた、パワートレーンの制御装置であって、
上限値および下限値のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に前記上限値および前記下限値のうちのいずれかを取得するための手段と、
予め定められた第1の値よりも小さく、かつ、予め定められた、前記第1の値よりも小さい第2の値よりも大きい上限値が取得されると、前記第1の値を前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、
前記前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第2の値を前記前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第1の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記上限値および前記下限値を取得することを中断するための手段と、
前記第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記第2の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記前記第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記上限値および前記下限値を取得することを中断するための手段とを備える、パワートレーンの制御装置。
【請求項6】
前記第1の変更手段は、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい上限値が取得されると、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい上限値を前記第1の値として記憶するための手段を含み、
前記第2の変更手段は、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値を前記第2の値として記憶するための手段を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のパワートレーンの制御装置。
【請求項7】
前記回転軸は、無段変速機の入力軸であり、
前記制御手段は、前記無段変速機の入力軸の回転数が前記目標値になるように制御するための手段を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のパワートレーンの制御装置。
【請求項1】
回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段を備えた、パワートレーンの制御装置であって、
上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に前記上限値、前記下限値および前記回転数のうちのいずれかを取得するための手段と、
前記上限値が取得されると、予め定められた第1の値を取得された上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、
前記下限値が取得されると、予め定められた、前記第1の値よりも小さい第2の値を取得された下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、
前記第1の値よりも小さく、かつ、前記第2の値よりも大きい回転数が取得されると、取得された回転数を前記目標値として設定するための手段と、
前記回転数が取得されると、前記上限値、前記下限値および前記回転数を取得することを中断するための手段とを備える、パワートレーンの制御装置。
【請求項2】
前記第1の値よりも大きい回転数が取得されると、前記第1の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第2の値よりも小さい回転数が取得されると、前記第2の値を前記目標値として設定するための手段とをさらに備える、請求項1に記載のパワートレーンの制御装置。
【請求項3】
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第1の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記上限値、前記下限値および前記回転数を取得することを中断するための手段と、
前記第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記第2の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記上限値および前記下限値を取得することを中断するための手段とをさらに備え、
前記第1の変更手段は、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい上限値が取得されると、前記第1の値を取得された上限値に応じて変更するための手段を含み、
前記第2の変更手段は、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第2の値を取得された下限値に応じて変更するための手段を含む、請求項1または2に記載のパワートレーンの制御装置。
【請求項4】
回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段を備えた、パワートレーンの制御装置であって、
上限値、下限値および回転数のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に前記上限値、前記下限値および前記回転数のうちのいずれかを取得するとともに、前記回転数を、前記上限値および前記下限値として取得するための手段と、
予め定められた第1の値よりも小さく、かつ、予め定められた、前記第1の値よりも小さい第2の値よりも大きい上限値が取得されると、前記第1の値を前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、
前記前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第2の値を前記前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第1の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記上限値、前記下限値および前記回転数を取得することを中断するための手段と、
前記第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記第2の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記上限値、前記下限値および前記回転数を取得することを中断するための手段とを備える、パワートレーンの制御装置。
【請求項5】
回転軸の回転数が目標値になるように制御するための制御手段を備えた、パワートレーンの制御装置であって、
上限値および下限値のうちのいずれかを各々が設定する、予め定められた順番で優先順位付けされた複数の制御システムから、優先順位が高い順に前記上限値および前記下限値のうちのいずれかを取得するための手段と、
予め定められた第1の値よりも小さく、かつ、予め定められた、前記第1の値よりも小さい第2の値よりも大きい上限値が取得されると、前記第1の値を前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい上限値に応じて変更するための第1の変更手段と、
前記前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第2の値を前記前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値に応じて変更するための第2の変更手段と、
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第1の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記第1の値よりも大きい下限値が取得されると、前記上限値および前記下限値を取得することを中断するための手段と、
前記第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記第2の値を前記目標値として設定するための手段と、
前記前記第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい上限値が取得されると、前記上限値および前記下限値を取得することを中断するための手段とを備える、パワートレーンの制御装置。
【請求項6】
前記第1の変更手段は、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい上限値が取得されると、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい上限値を前記第1の値として記憶するための手段を含み、
前記第2の変更手段は、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値が取得されると、前記第1の値よりも小さく、かつ前記第2の値よりも大きい下限値を前記第2の値として記憶するための手段を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のパワートレーンの制御装置。
【請求項7】
前記回転軸は、無段変速機の入力軸であり、
前記制御手段は、前記無段変速機の入力軸の回転数が前記目標値になるように制御するための手段を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のパワートレーンの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−190873(P2011−190873A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57785(P2010−57785)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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