説明

パワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法

【課題】回路層上に搭載された電子部品等からの熱を効率よく放散できるとともに、冷熱サイクル負荷時における絶縁基板の割れの発生を抑制できるパワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁基板11と、この絶縁基板11の一方の面に形成された回路層12と、を備えたパワーモジュール用基板10であって、回路層12は、絶縁基板11の一方の面に銅板が接合されて構成されており、前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の中でも電力供給のためのパワーモジュールは、発熱量が比較的高いため、これを搭載する基板としては、例えば、AlN(窒化アルミ)、Al(アルミナ)、Si(窒化ケイ素)などからなる絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面側に第一の金属板が接合されて構成された回路層と、絶縁基板の他方の面側に第二の金属板が接合されて構成された金属層と、を備えたパワーモジュール用基板が用いられる。
このようなパワーモジュール基板では、回路層の上に、はんだ材を介してパワー素子等の半導体素子が搭載される。
【0003】
例えば、特許文献1には、第一の金属板(回路層)及び第二の金属板(金属層)としてアルミニウム板を用いてなるパワーモジュール用基板が提案されている。
また、特許文献2、3には、第一の金属板(回路層)及び第二の金属板(金属層)を銅板とし、この銅板をDBC法によって絶縁基板に直接接合してなるパワーモジュール用基板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3171234号公報
【特許文献2】特開平04−162756号公報
【特許文献3】特許第3211856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたパワーモジュール用基板においては、回路層を構成する第一の金属板としてアルミニウム板が用いられている。ここで、銅とアルミニウムとを比較すると、アルミニウムの熱伝導率が低いことから、回路層としてアルミニウム板を用いた場合には、銅板を用いた場合に比べて回路層上に搭載された電気部品等の発熱体からの熱を拡げて放散することができない。このため、電子部品の小型化や高出力化により、パワー密度が上昇した場合には、熱を十分に放散することができなくなるおそれがあった。
【0006】
ここで、特許文献2,3においては、回路層を銅板で構成していることから、回路層上に搭載された電気部品等の発熱体からの熱を効率的に放散することが可能となる。
しかしながら、上述のパワーモジュール用基板においては、その使用環境において冷熱サイクルが負荷されることになるが、特許文献2,3に記載されているように回路層及び金属層を銅板で構成した場合には、上述の冷熱サイクルによって絶縁基板と銅板との熱膨張係数の差に起因するせん断応力が銅板に作用し、銅板が加工硬化してしまい、絶縁基板に割れ等が発生するといった問題があった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、回路層上に搭載された電子部品等からの熱を効率よく放散できるとともに、冷熱サイクル負荷時における絶縁基板の割れの発生を抑制できるパワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明のパワーモジュール用基板は、絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面に形成された回路層と、を備えたパワーモジュール用基板であって、前記回路層は、前記絶縁基板の一方の面に銅板が接合されて構成されており、前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることを特徴としている。
【0009】
この構成のパワーモジュール用基板においては、電子部品等が搭載される回路層が銅板で構成されているので、電子部品等から発生する熱を十分に拡げることができ、熱の放散を促進することができる。
また、回路層を構成する銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされているので、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素又はボロンのうち少なくとも1種以上の元素が、不可避不純物のひとつとして銅中に存在するS(硫黄)と反応して硫化物を生成し、Sの影響を抑制することが可能となる。よって、冷熱サイクル時の特に高温域で、回路層において回復・再結晶化が進み、絶縁基板と回路層との熱膨張率の差に起因するせん断応力によって加工硬化された回路層の歪みが減少されることになり、冷熱サイクル時において絶縁基板に負荷される応力が低減される。これにより、冷熱サイクル負荷時における絶縁基板の割れの発生を抑制することが可能となる。
【0010】
なお、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素の含有量の合計が1molppm未満である場合、又は、ボロンの含有量が100molppm未満である場合には、銅中に存在するSの影響を十分に抑制することができなくなるおそれがある。また、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素の含有量の合計が100molppm超える場合、又は、ボロンの含有量が1000molppm超える場合には、これらの元素によって回路層(銅板)が硬化したり、熱伝導度が低下してしまうおそれがある。
よって、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下の範囲に設定している。
【0011】
ここで、前記絶縁基板の他方の面に金属層が形成されており、この金属層は、前記絶縁基板の他方の面に銅板が接合されて構成されており、前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることが好ましい。
【0012】
この場合、絶縁基板の他方の面に銅板からなる金属層が形成されているので、金属層において熱を拡げることができ、熱の放散をさらに促進することができる。また、絶縁基板の両面にそれぞれ銅板が接合されることから、絶縁基板の反りを抑制することができる。 さらに、金属層を構成する銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされているので、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素又はボロンのうち少なくとも1種以上の元素が、不可避不純物のひとつとして銅中に存在するS(硫黄)と反応して硫化物を生成し、Sの影響を抑制することが可能となる。よって、冷熱サイクル時の特に高温域で、金属層において回復・再結晶化が進み、絶縁基板と回路層との熱膨張率の差に起因するせん断応力によって加工硬化された回路層の歪みが減少されることになり、冷熱サイクル時において絶縁基板に負荷される応力が低減される。これにより、冷熱サイクル負荷時における絶縁基板の割れの発生を抑制することが可能となる。
【0013】
ここで、前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることが好ましい。
この場合、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素の含有量の合計が3molppm以上、又は、ボロンの含有量が300molppm以上とされているので、銅中のSの影響を抑制することができ、再結晶温度が低くなり、加工硬化を確実に抑制することが可能となる。また、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素の含有量の合計が50molppm以下、又は、ボロンの含有量が1000molppm以下とされているので、銅板の硬化や熱伝導度の低下を抑制することができる。
【0014】
また、前記銅板は、酸素含有量が1質量ppm以下とされていることが好ましい。
この場合、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素又はボロンのうち少なくとも1種以上の元素が、酸素と反応して酸化物となることが抑制され、確実にSと反応し、硫化物を生成することができる。よって、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素又はボロンのうち少なくとも1種以上の元素の含有量が少なくても、Sの影響を十分に抑制することが可能となる。
【0015】
本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板は、前述のパワーモジュール用基板と、ヒートシンクと、備えたことを特徴としている。
この構成のヒートシンク付パワーモジュール用基板によれば、ヒートシンクによって、パワーモジュール用基板からの熱を効率良く放散することができる。
【0016】
本発明のパワーモジュールは、前述のヒートシンク付パワーモジュール用基板と、前記回路層上に搭載された電子部品と、を備えたことを特徴としている。
また、本発明のパワーモジュールは、前述のパワーモジュール用基板と、前記回路層上に搭載された電子部品と、を備えたことを特徴としている。
これらの構成のパワーモジュールによれば、回路層上に搭載された電子部品からの熱を効率的に放散することができ、電子部品のパワー密度(発熱量)が向上した場合であっても、十分に対応することができる。
【0017】
本発明のパワーモジュール用基板の製造方法は、絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面に形成された回路層と、を備えたパワーモジュール用基板の製造方法であって、前記回路層は、前記絶縁基板の一方の面に銅板が接合されて構成されており、前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされており、前記絶縁基板の接合面にAl層を形成するアルミナ層形成工程と、前記絶縁基板の一方の面に銅板を接合して前記回路層を形成する回路層形成工程と、を備えており、前記回路層形成工程においては、前記銅板と前記絶縁基板とを、銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)の共晶域での液相を利用したDBC法によって接合することを特徴としている。
【0018】
この構成のパワーモジュール用基板の製造方法によれば、前述したパワーモジュール用基板を製造することができる。また、前記銅板と前記絶縁基板とを銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)の共晶域での液相を利用したDBC法(Direct Bonding Copper)によって接合しているので、銅板と絶縁基板とを強固に接合することができる。よって、回路層と絶縁基板の接合信頼性に優れたパワーモジュール用基板を製造することができる。さらに、絶縁基板の接合面にAl層を形成するアルミナ形成工程を備えているので、銅板と絶縁基板とをDBC法を用いて接合することが可能となる。なお、形成するAl層の厚さは、1μm以上とすることが好ましい。Al層の厚さが1μm未満の場合、銅板と絶縁基板とを良好に接合できなくなるおそれがあるためである。
【0019】
また、前記パワーモジュール用基板は、前記絶縁基板の他方の面に形成された金属層を備え、前記金属層は、前記絶縁基板の他方の面に銅板が接合されて構成されており、前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされており、前記絶縁基板の接合面にAl層を形成するアルミナ層形成工程と、前記絶縁基板の他方の面に銅板を接合して前記金属層を形成する金属層形成工程と、を備えており、前記金属層形成工程においては、前記銅板と前記絶縁基板とを、銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)の共晶域での液相を利用したDBC法によって接合する構成としてもよい。
この場合、前記銅板と前記絶縁基板とを銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)の共晶域での液相を利用したDBC法(Direct Bonding Copper)によって接合しているので、銅板と絶縁基板とを強固に接合することができる。よって、金属層と絶縁基板の接合信頼性に優れたパワーモジュール用基板を製造することができる。
【0020】
さらに、前記前記回路層形成工程と前記金属層形成工程とを同時に実施することが好ましい。
この場合、絶縁基板の両面に同時に銅板を接合することから、接合時における絶縁基板の反りを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回路層上に搭載された電子部品等からの熱を効率よく放散できるとともに、冷熱サイクル負荷時における絶縁基板の割れの発生を抑制できるパワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板及びパワーモジュールの概略説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法のフロー図である。
【図3】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態であるパワーモジュール用基板の概略説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法の製造方法のフロー図である。
【図6】本発明の第2の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【図7】本発明の第3の実施形態であるパワーモジュール用基板の概略説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法のフロー図である。
【図9】本発明の第3の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板10、ヒートシンク付パワーモジュール用基板40及びパワーモジュール1を示す。
このパワーモジュール1は、回路層12が配設されたパワーモジュール用基板10と、回路層12の搭載面12Aにはんだ層2を介して接合された半導体素子3と、ヒートシンク41とを備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材(いわゆる無鉛はんだ材)とされている。なお、本実施形態では、回路層12の搭載面12Aとはんだ層2との間に、Niめっき膜(図示なし)が設けられていてもよい。
【0024】
パワーモジュール用基板10は、図1に示すように、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(図1において上面)に形成された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面(図1において下面)に形成された金属層13と、を備えている。
【0025】
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAl(アルミナ)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0026】
回路層12は、図3に示すように、セラミックス基板11の一方の面(図3において上面)に、銅板22が接合されることにより形成されている。回路層12の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.3mmに設定されている。また、この回路層12には、回路パターンが形成されており、その一方の面(図1において上面)が、半導体素子3が搭載される搭載面12Aとされている。
【0027】
金属層13は、図3に示すように、セラミックス基板11の他方の面(図3において下面)に、銅板23が接合されることにより形成されている。金属層13の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.3mmに設定されている。
【0028】
そして、この銅板22(回路層12)及び銅板23(金属層13)は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされており、さらに好ましくは、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有しており、酸素含有量が1質量ppm以下とされている。
本実施形態においては、銅板22(回路層12)及び銅板23(金属層13)は、純度99.99質量%以上の無酸素銅(OFC)にMgを15molppm添加したMg−Doped銅とされている。
【0029】
ヒートシンク41は、前述のパワーモジュール用基板10を冷却するためのものである。本実施形態におけるヒートシンク41は、図1に示すように、パワーモジュール用基板10の金属層13の他方の面側に接合された放熱板42を備えている。なお、本実施形態では、放熱板42は、A6063合金(アルミニウム合金)で構成されたものとされている。
【0030】
なお、パワーモジュール用基板10の金属層13とヒートシンク41の天板部42とは、はんだ層5を介して接合されている。ここで、はんだ層5は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材(いわゆる無鉛はんだ材)とされている。
【0031】
以下に、前述の構成のパワーモジュール用基板10及びヒートシンク付パワーモジュール用基板40の製造方法について、図2及び図3を参照して説明する。
【0032】
図2及び図3に示すように、回路層12となる銅板22とセラミックス基板11とを接合する(回路層形成工程S01)とともに、金属層13となる銅板23とセラミックス基板11とを接合する(金属層形成工程S02)。本実施形態では、これら回路層形成工程S01と、金属層形成工程S02と、を同時に実施することになる。
【0033】
まず、セラミックス基板11の一方の面側に銅板22を積層する。また、セラミックス基板11の他方の面側に銅板23を積層する(積層工程S11)。
【0034】
次に、銅板22、セラミックス基板11、銅板23をその積層方向に加圧した状態で、酸素含有雰囲気で加熱する(加熱工程S12)。ここで、本実施形態では、加熱温度は1065℃以上1083℃以下の範囲内に設定している。
すると、図3に示すように、銅板22とセラミックス基板11との界面に第1溶融金属領域55が形成され、セラミックス基板11と銅板23との界面に第2溶融金属領域56が形成される。これら第1溶融金属領域55及び第2溶融金属領域56は、銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)との共晶反応によって融点が降下することにより形成されるものである。
【0035】
次に、温度を低下させることにより、第1溶融金属領域55及び第2溶融金属領域56を凝固させる(凝固工程S13)。
このようして、銅板22、セラミックス基板11、銅板23が接合され、本実施形態であるパワーモジュール用基板10が製造されることになる。
【0036】
以上のような構成とされた本実施形態であるパワーモジュール用基板10によれば、半導体素子3が搭載される搭載面12Aを有する回路層12が、銅板22で構成されているので、半導体素子3から発生する熱を十分に拡げることができ、この熱の放散を促進することができる。よって、パワー密度の高い半導体素子3等の電子部品を搭載することができ、半導体パッケージの小型化、高出力化を図ることが可能となる。
【0037】
そして、回路層12を構成する銅板22及び金属層13を構成する銅板23が、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされ、さらに好ましくは、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有しており、本実施形態においては、純度99.99質量%以上の無酸素銅(OFC)にMgを15molppm添加したMg−Doped銅とされているので、Mgが不可避不純物のひとつとして銅中に存在するS(硫黄)と反応して硫化物を生成し、Sの影響を抑制することが可能となる。これにより、銅板22(回路層12)及び銅板23(金属層13)の再結晶温度が低くなり、加工硬化が抑制されることになる。よって、冷熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板11の割れの発生を抑制することが可能となる。
さらに、銅板22(回路層12)及び銅板23(金属層13)の酸素含有量が1質量ppm以下とされているので、Mgが酸素と反応して消費されることが抑制され、MgとSとを確実に反応させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、セラミックス基板11がAlで構成されているので、上述のように、銅板22、23とセラミックス基板11とを、銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)の共晶域での液相を利用したDBC法(Direct Bonding Copper)によって接合することができる。よって、セラミックス基板11と回路層12(銅板22)及びセラミックス基板11と金属層13(銅板23)との接合強度を確保することができ、接合信頼性に優れたパワーモジュール用基板10を構成することができる。
【0039】
また、本実施形態では、回路層形成工程S01と金属層形成工程S02とを同時に行う構成としているので、接合時におけるセラミックス基板11の反りの発生を抑制することができる。また、セラミックス基板11に不要な熱負荷が作用することがなく、反り等の発生を抑制することができる。さらに、このパワーモジュール用基板10の製造コストを大幅に削減することができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態について、図4から図6を参照して説明する。
図4に示すパワーモジュール基板110は、セラミックス基板111と、このセラミックス基板111の一方の面(図4において上面)に接合された回路層112と、セラミックス基板111の他方の面(図4において下面)に接合された金属層113と、を備えている。
【0041】
セラミックス基板111は、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板111の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
また、このセラミックス基板111の一方の面及び他方の面には、Al層125、126が形成されている。
【0042】
回路層112は、図6に示すように、セラミックス基板111の一方の面(図6において上面)に銅板122が接合されることにより形成されている。回路層112の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.3mmに設定されている。また、この回路層112には、回路パターンが形成されており、その一方の面(図4において上面)が、半導体素子等の電子部品が搭載される搭載面112Aとされている。
【0043】
金属層113は、図6に示すように、セラミックス基板111の他方の面(図6において下面)に、銅板123が接合されることにより形成されている。金属層113の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.3mmに設定されている。
【0044】
そして、銅板122(回路層112)及び銅板123(金属層113)は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされており、さらに好ましくは、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有しており、酸素含有量が1質量ppm以下とされている。
本実施形態においては、銅板122(回路層112)及び銅板123(金属層113)は、純度99.99質量%以上の無酸素銅(OFC)にZrを10molppm添加したZr−Doped銅とされている。
【0045】
以下に、前述の構成のパワーモジュール用基板110の製造方法について、図5及び図6を参照して説明する。
【0046】
本実施形態では、図5及び図6に示すように、回路層112となる銅板122とセラミックス基板111とを接合する(回路層形成工程S101)とともに、金属層113となる銅板123とセラミックス基板111とを接合する(金属層形成工程S102)。本実施形態では、これら回路層形成工程S101と、金属層形成工程S102と、を同時に実施することになる。
【0047】
まず、図5及び図6に示すように、AlNからなるセラミックス基板111の一方の面及び他方の面に、Al層125,126を形成する(アルミナ層形成工程S110)。このアルミナ層形成工程S110においては、AlNの酸化処理を1200℃以上でAr−O混合ガス雰囲気にて行った。酸素分圧PO2を10kPaとし、水蒸気分圧PH2Oを0.05kPaに調整した。このように、高酸素分圧/低水蒸気分圧雰囲気にてAlNの酸化処理を行うことにより、AlNとの密着性に優れた緻密なAl層125、126が形成されることになる。ここで、Al層125,126の厚さは1μm以上とされている。
なお、高純度のArガスを脱酸処理した後に酸素ガスを混合することによって酸素分圧を調整した。また、この雰囲気ガスをシリカゲルと五酸化二リンを充填した乾燥系に通すことで脱水処理を行った後に所定温度に調整された水中を通過させることによって水蒸気分圧を調整した。
【0048】
次に、セラミックス基板111の一方の面側に銅板122を積層する。また、セラミックス基板111の他方の面側に銅板123を積層する(積層工程S111)。すなわち、セラミックス基板111と銅板122との間にAl層125を介在させ、セラミックス基板111と銅板123との間にAl層126を介在させているのである。
【0049】
次に、銅板122、セラミックス基板111、銅板123をその積層方向に加圧した状態で、酸素含有雰囲気で加熱する(加熱工程S112)。ここで、本実施形態では、加熱温度は1065℃以上1083℃以下の範囲内に設定している。
すると、図6に示すように、銅板122とセラミックス基板111との界面に第1溶融金属領域155が形成され、セラミックス基板111と銅板123との界面に第2溶融金属領域156が形成される。これら第1溶融金属領域155及び第2溶融金属領域156は、銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)との共晶反応によって融点が降下することにより形成されるものである。
【0050】
次に、温度を低下させることにより、第1溶融金属領域155及び第2溶融金属領域156を凝固させる(凝固工程S113)。
このようして、銅板122、セラミックス基板111、銅板123が接合され、本実施形態であるパワーモジュール用基板110が製造されることになる。
【0051】
以上のような構成とされた本実施形態であるパワーモジュール用基板110によれば、回路層112が銅板122で構成されているので、回路層112の搭載面112A上に搭載される半導体素子等の発熱体からの熱を効率良く促進することができる。
また、回路層112及び金属層113が、Zrを10molppm含有する銅板122、123で構成されているので、Zrが不可避不純物のひとつとして銅中に存在するS(硫黄)と反応して硫化物を生成し、Sの影響を抑制することが可能となる。これにより、銅板122(回路層112)及び銅板123(金属層113)の再結晶温度が低くなり、加工硬化が抑制されることになる。よって、冷熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板111の割れの発生を抑制することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、AlNからなるセラミックス基板111の一方の面にAl層125を形成し、かつ、他方の面にAl層126を形成し、これらAl層125、126を利用して銅板122,123とセラミックス基板111とをDBC法によって接合していることから、銅板122,123とセラミックス基板111とを強固に接合することができる。このように、AlNからなるセラミックス基板111であっても、DBC法を利用して銅板122,123を接合することが可能となる。
【0053】
さらに、アルミナ層形成工程S110において、形成するAl層125、126の厚さを1μm以上としているので、銅板122、123とセラミックス基板111とを確実に接合することが可能となる。
また、本実施形態では、高酸素分圧/低水蒸気分圧雰囲気にてAlNの酸化処理を行うことにより、AlNとの密着性に優れた緻密なAl層125、126を形成しているので、AlNからなるセラミックス基板111とAl層125、126との間での剥離の発生を防止することが可能となる。
【0054】
次に、本発明の第3の実施形態について、図7から図9を参照して説明する。
図7に示すパワーモジュール用基板210は、セラミックス基板211と、このセラミックス基板211の一方の面(図7において上面)に形成された回路層212と、セラミックス基板211の他方の面(図7において下面)に形成された金属層213と、を備えている。
【0055】
セラミックス基板211は、回路層212と金属層213との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAlNで構成されている。また、セラミックス基板211の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0056】
回路層212は、図9に示すように、セラミックス基板211の一方の面(図9において上面)に、銅板222が接合されることにより形成されている。回路層212の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.3mmに設定されている。また、この回路層212には、回路パターンが形成されており、その一方の面(図7において上面)が、半導体素子等の電子部品が搭載される搭載面212Aとされている。
【0057】
金属層213は、図9に示すように、セラミックス基板211の他方の面(図9において下面)に、銅板223が接合されることにより形成されている。金属層213の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.3mmに設定されている。
【0058】
そして、銅板222(回路層212)及び銅板223(金属層213)は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされ、さらに好ましくは、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有しており、酸素含有量が1質量ppm以下とされている。
本実施形態においては、銅板222(回路層212)及び銅板223(金属層213)は、純度99.99質量%以上の無酸素銅(OFC)にLaを7molppm添加したLa−Doped銅とされている。
【0059】
以下に、前述の構成のパワーモジュール用基板210の製造方法について、図8及び図9を参照して説明する。
【0060】
本実施形態では、図8及び図9に示すように、回路層212となる銅板222とセラミックス基板211とを接合する(回路層形成工程S201)とともに、金属層213となる銅板223とセラミックス基板211とを接合する(金属層形成工程S202)。本実施形態では、これら回路層形成工程S201と、金属層形成工程S202と、を同時に実施することになる。
【0061】
銅板222、223とセラミックス基板211とは、いわゆる活性金属法によって接合されている。
まず、セラミックス基板211の一方の面側に銅板222を積層する。また、セラミックス基板211の他方の面側に銅板223を積層する(積層工程S211)。このとき、図9に示すように、銅板222とセラミックス基板211との間にAg−Cu−Tiからなるろう材225を配設し、セラミックス基板211と銅板223との間にAg−Cu−Tiからなるろう材226を配設する。
なお、本実施形態では、ろう材225、226は、Ag−27.4質量%Cu−2.0質量%Tiの組成のものを用いた。
【0062】
次に、銅板222、セラミックス基板211、銅板223をその積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気で加熱する(加熱工程S212)。なお、本実施形態では、10−3Paの真空雰囲気で、850℃、10分の条件で加熱した。
すると、図9に示すように、銅板222とセラミックス基板211との界面に第1溶融金属領域255が形成され、セラミックス基板211と銅板223との界面に第2溶融金属領域256が形成される。
【0063】
次に、温度を低下させることにより、第1溶融金属領域255及び第2溶融金属領域256を凝固させる(凝固工程S213)。
このようして、銅板222、セラミックス基板211、銅板223が接合され、本実施形態であるパワーモジュール用基板210が製造されることになる。
【0064】
以上のような構成とされた本実施形態であるパワーモジュール用基板210によれば、回路層212が銅板222で構成されているので、回路層212の搭載面212A上に搭載される半導体素子等の発熱体からの熱を効率良く促進することができる。
また、回路層212及び金属層213が、Laを7molppm含有する銅板222,223で構成されているので、Laが不可避不純物のひとつとして銅中に存在するS(硫黄)と反応して硫化物を生成し、Sの影響を抑制することが可能となる。これにより、銅板222(回路層212)及び銅板223(金属層213)の再結晶温度が低くなり、加工硬化が抑制されることになる。よって、冷熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板211の割れの発生を抑制することが可能となる。
【0065】
また、Ag−Cu−Tiのろう材225,226を用いた活性金属法によって、銅板222,223とセラミックス基板211とを接合しているので、銅板222,223とセラミックス基板211との界面に酸素を介在させることなく、パワーモジュール用基板210を構成することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、セラミックス基板を、Al、AlNで構成したもので説明したが、これに限定されることはなく、Si等で構成されたものであってもよい。
【0067】
また、回路層を構成する銅板と金属層を構成する銅板とを、同一の組成のものとして説明したが、これに限定されることはなく、回路層を構成する銅板と金属層を構成する銅板とを互いに組成の異なるものとしてもよい。
さらに、第2の実施形態において、AlNを酸化処理することによってAl層を形成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の手段によってセラミックス基板の表面にAl層を形成してもよい。
【0068】
また、本実施形態では、ヒートシンクの天板部をA6063合金で構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、A1100合金、A3003合金、A5052合金、A7N01合金等の他の金属材料で構成されたものであってもよい。
さらに、ヒートシンクの構造は、本実施形態に限定されることはなく、他の構造のヒートシンクを採用してもよい。
【0069】
また、本実施形態では、ヒートシンクの上に一つのパワーモジュール用基板が接合された構成として説明したが、これに限定されることはなく、一つのヒートシンクの上に複数のパワーモジュール用基板が接合されていてもよい。
【実施例】
【0070】
本発明の有効性を確認するために行った比較実験について説明する。
Alからなる厚さ0.635mmのセラミックス基板と、表1に示す組成の銅又は銅合金からなる厚さ0.3mmの銅板と、を準備した。
これらの銅板、セラミックス基板、銅板を、第3の実施形態に記載された方法により接合した。なお、回路層形成工程S201及び金属層形成工程S202における加圧圧力を0.5kgf/cm、加熱温度を850℃とした。
【0071】
そして、これらのパワーモジュール用基板に、冷熱サイクル(−40℃←→110℃)を所定回数だけ負荷し、セラミックス基板の割れの有無について確認した。
【0072】
【表1】

【0073】
タフピッチ銅を用いた従来例1及び無酸素銅(OFC)を用いた従来例2においては、冷熱サイクルを1000回から2000回負荷するまでに、セラミックス基板にクラックが認められた。
【0074】
アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有する本発明例1〜14においては、冷熱サイクルを2000回負荷した時点でセラミックス基板に割れは認められなかった。特に、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有する本発明例1〜3、7〜13では、冷熱サイクルを3000回負荷した時点でもセラミックス基板に割れは認められなかった。
さらに、酸素含有量が異なる本発明例5と本発明例6とを比較すると、酸素含有量が1質量ppm以下とされた本発明例5の方がセラミックス基板の割れ防止効果が高いことが確認された。
【符号の説明】
【0075】
1 パワーモジュール
3 半導体素子(電子部品)
10、110、210 パワーモジュール用基板
11、111、211 セラミックス基板(絶縁基板)
12、112、212 回路層
13、113、213 金属層
22、122、222 銅板
23、123、223 銅板
40 ヒートシンク付パワーモジュール用基板
41 ヒートシンク
125、126 Al

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面に形成された回路層と、を備えたパワーモジュール用基板であって、
前記回路層は、前記絶縁基板の一方の面に銅板が接合されて構成されており、
前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることを特徴とするパワーモジュール用基板。
【請求項2】
前記絶縁基板の他方の面に金属層が形成されており、この金属層は、前記絶縁基板の他方の面に銅板が接合されて構成されており、
前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項3】
前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項4】
前記銅板は、酸素含有量が1質量ppm以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板と、ヒートシンクと、を備えたことを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板。
【請求項6】
請求項5に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板と、前記回路層上に搭載された電子部品と、を備えたことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板と、前記回路層上に搭載された電子部品と、を備えたことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項8】
絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面に形成された回路層と、を備えたパワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記回路層は、前記絶縁基板の一方の面に銅板が接合されて構成されており、前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされており、
前記絶縁基板の接合面にAl層を形成するアルミナ層形成工程と、前記絶縁基板の一方の面に銅板を接合して前記回路層を形成する回路層形成工程と、を備えており、
前記回路層形成工程においては、前記銅板と前記絶縁基板とを、銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)の共晶域での液相を利用したDBC法によって接合することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項9】
前記パワーモジュール用基板は、前記絶縁基板の他方の面に形成された金属層を備え、前記金属層は、前記絶縁基板の他方の面に銅板が接合されて構成されており、前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされており、
前記絶縁基板の接合面にAl層を形成するアルミナ層形成工程と、前記絶縁基板の他方の面に銅板を接合して前記金属層を形成する金属層形成工程と、を備えており、
前記金属層形成工程においては、前記銅板と前記絶縁基板とを、銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)の共晶域での液相を利用したDBC法によって接合することを特徴とする請求項8に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項10】
前記前記回路層形成工程と前記金属層形成工程とを同時に実施することを特徴とする請求項9に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−41913(P2013−41913A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176712(P2011−176712)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】