説明

パーキンソン病および遅発性ジスキネジーの処置のための組成物および方法

本方法は、メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの細胞呼吸を増加させるための組成物および方法を提供し、かつパーキンソン病および関連する状態(黒質線条体の変性に特徴付けられる)、ならびに薬物性ジスキネジー、遅発性ジスキネジー、神経弛緩薬性悪性症候群、および統合失調症の陰性症状の症状を緩和させるか、または症状の出現および/もしくは進行を停止させる方法を提供する。適切な薬学的キャリア中にキノリン環を有する有効量の神経メラニン結合組成物は、このような処置を必要とする患者に投与される。好ましくは、この組成物は、(−)クロロキンニリン酸を含有する。選択されるアジュバントもまた、本発明の組成物の一部として、提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
特発性パーキンソン病(IPD)は、進行性の神経変性障害である。IPD症状の発症は、線条体ドパミン流出の80%〜90%減衰を伴う、60%〜70%の黒質ニューロンの閾値減少に達した場合に発現し始める(Koller,W.C.、「When does Parkinson’s disease begin?」(1992)Neurology 42(S4):27−31)。症状としては、振せん、体位不均衡、硬直、運動緩徐、および運動不能が挙げられる(Diagnostic Clinical Neuropsychology,Bigler,E.およびClement,P.(編)第3版、1997)。これらの症状は、病気の進行とともに重くなる。IPDの重篤なステージでは、運動不能の発症に続いて、最も単純な運動でさえも、しばしば苦痛といってよい程の大変な集中度および精神的努力を必要とする(Textbook of Medical Physiology,Guyton,A.C.およびHall,J.E.(編)第9版、W.B.Saunders Company,Philadelphia,PA,1996)。IPDはまた、多くの自律性(Vainshtok,A.B.「Treatment of Parkinsonism with delagil」(1972)Klin.Med(Mosk)50(9):51−56)、および非運動性症状(うつ病(Cummings,J.L.「Depression and Parkinson’s Disease:A Review」(1992)Am.J.Psychiatry 149(4):443−454)および前頭葉機能不全(Gotham,A.M.ら「Levodopa treatment may benefit or impair ’frontal’ function in Parkinson’s disease」(1986)Lancet 25;2(8513):970−971)を含む)によって特徴付けられる。
【0002】
米国においては、100,000人毎に5〜24人がIPDを被り、同時に低所得患者の大多数は診断未確定の状態であると推定される(Chrischilles,E.A.ら「The health burdens of Parkinson’s disease」(1998)Movement Disorders 13(3):406−413)。1995年、世界保健機関(WHO)は、IPDの発生の全世界的な疫学的評価を行い、世界的発生が、100,000人当り5.32人であることを示し、同時に65歳以上で100,000人当り49.33人という驚くべき発生率を示した(M.Privett,WHO)。より最近の疫学的数値は得られないが、1996年には、世界人口がおよそ57億人である中で、推定280万人の人々がIPDの確定診断を受けた。
【0003】
現行のIPDおよび他のパーキンソン様運動障害に対する薬理学的処置として、抗コリン作用剤、カテコール−o−メチルトランスフェラーゼ阻害剤、およびドパミン作用剤が挙げられる(Physicians’Desk Reference,2000(第54版)Medical Economics Company,Inc.,Montvale,NJ)。1960年代後半から、ドパミン前駆体L−DOPAが、IPDの運動機能障害の症状の軽減のために利用されている(Mena,M.A.ら「Pharmacokinetics of L−DOPA in patients with Parkinson’s disease」(1986)Advances in Neurology 45:481−486)。しかし、L−DOPAの長期の使用(一般に5〜8年)後、およそ50%のIPD患者において、治療効果の消失が観察される(Roos,R.A.ら「Response fluctuations in Parkinson’s disease」(1990)Neurology 40(9):1344−1346)。L−DOPA効果の減少は、一連の運動性副作用(例えば、オン/オフ(on/off)運動振動およびジスキネジー)の発生に先行する(Carlsson,Arvid「Development of new pharmacological approaches in Parkinson’s disease」(1986)Advances in Neurology 45:513−518)。さらに、薬剤がこれらの新たな運動機能障害を補償するために増加される場合、より深刻な副作用(精神医学的合併症を含む)が一般に観察され、他方、ごくわずかな治療効果しかもたらさない(Stoof,J.C.ら「Leads for the development of neuroprotective treatment in Parkinson’s disease and imaging methods for estimating treatment efficacy」(1999)Eur.J.Pharmacol.375(1−3):75−86)。
【0004】
初めにIPDと診断された人々の20%までが、実際に非定型IPD(APD)、線条体黒質変性(SND)、もしくは多症状性萎縮症(MSA)を被る(Antonini,A.ら「Differential diagnosis of Parkinsonism with [18F]Fluorodeoxyglucose and PET」(1998)Movement Disorders 13(2):268−274)。従来のパーキンソン病薬物治療に対する反応がほとんどもしくは全くないことは、通常、IPDに対してAPD、SND、およびMSAの診断の間を区別する因子である(Dethy、S.ら「Asymmetry of basal ganglia glucose metabolism and L−dopa responsiveness in Parkinsonism」(1998)Movement Disorders 13(2):275−280)。多くの場合、これらの非定型性の苦痛を被る人々のためにほとんど何もし得ない。したがって、薬理学的手段が、非定型パーキンソン病およびIPDの症状を緩和し得ると同定された場合、それは大きな利益となる。
【0005】
統合失調症は、18歳以上の人々のおよそ1%に発症し、米国内および米国外の多くの国々において、群を抜いて最も費用がかかり、かつ弱体化させる精神疾患である(Rupp,A.およびKeith,S.J.(1993)「The cost of schizophrenia:assessing the burden」,Psych Clin N Am,16:413−423)。直接的処置の費用が300億を超えていることが2000年に報告された。この傷害を処置するための費用の大部分は、メディケード(Medicaid)およびメディケア(Medicare)を含む政府関係筋により支払われる(Martin,B.C.ら(2001)「Antipsychotic prescription use and costs for persons with schizophrenia in the 1990s:current trend and five year time series forecasts」,Schizo Res,47(2−3):281−292)。これらのプログラムに対して現行予算の削減が実施されていることにより、保健医療提供は、統合失調症および他の情動障害と診断された患者に、より費用のかからない、フェノチアジンおよびデカン酸(例えば、ハロペリドールおよびフルフェナジン)を含む「伝統的」な抗精神病薬を与えるように委託される(Laurie Lucero,LCSW,CACIII,personal communication)。この抗精神病薬はドパミンアンタゴニストであり、そして精神病の緩和に対して、より新しい非定型用薬剤(例えば、クロザピン、リスペリドン、およびオランザピン)よりも有効ではないとしても、同程度有効である(Seeman、P.およびKaput,S.(1997)「Clozapine occupies high levels of dopamine d2 receptors」,Life Sci,60(12):207−216)。しかし、これらのより古い薬剤は、しばしばより多くの副作用をもたらし、そしてより新しい、より高価な非定型用神経弛緩薬よりも高いジスキネジーのプロフィールを有する(Martin,B.C.ら(2001)「Antipsychotic prescription use and costs for persons with schizophrenia in the 1990s:current trend and five year time series forecasts」,Schizo Res,47(2−3):281−292)。
【0006】
薬物性運動障害(DID)は、統合失調症、パーキンソン病および他のドパミン関連障害と診断された患者の、成功する、有効な薬物治療学的処置を複雑にすることにより、医師に深刻な問題をもたらす(Rodnitzky,R.L.(2002)「Drug−Induced movement disorders」,Clin Nueropharmacol,25(3):142−152)。ドパミン処置の間にパーキンソン病において観察されるのと同様に、およそ5年のドパミンアンタゴニスト治療に続いて、統合失調症患者の20〜25%が、遅発性ジスキネジーを発現し始める(Morgenstern,H.およびGlazer,W.M.(1993)「Identifying risk−factors for tardive dyskinesia among long−term ourpatients maintained with neuroleptic medications」,Arch Gen Psych,50:723−733;Kane,J.M.(1995)「Tardive dyskinesias:epidemiological and clinical presentation」,Psychopharmacology:The Fourth Generation of Progress,Bloom,R.E.およびKupfer,D.J.(編)New York,NY,Raven Press,1485−1496ページ)。神経弛緩薬処置の間の発達性の遅発性ジスキネジーの発生は、使用とともに増加する。10年間神経弛緩薬を服用している患者において、49%の有病率の報告が見られ、この比率は、患者がそれらを25年間服用している場合、68%に増加する(Glazer,W.M.ら(1993)「Predicting the long−term risk of tardive dyskinesia in out−patients maintained on neuroleptic medications」,J Clin Psych,54(4):133−139)。
【0007】
遅発性ジスキネジーは、レボドパ誘発性ジスキネジー(LID)を経験するパーキンソン患者に見られるのと同様のジスキネジー状態(例えば、舞踏病、ジストニーなど)によって特徴付けられる(Nutt,J.G.(2000),「Clinical pharmacology of levodopa−induced dyskinesia」,Ann.Nuerol.,47(suppl 1):S160−S166)。神経弛緩薬性悪性症候群(NMS)は、しばしば誤って、統合失調症および神経弛緩薬と関連付けられるが、やはりパーキンソン患者に発症し、ドパミン作用量の減少、薬物の中止、および感受性患者における投薬間のドパミン作用の「減少」期間に続いて、最も頻繁に発現する。NMSの運動症状としては、軸性硬直、ジストニー、舞踏病、パーキンソン症候群、および口−頬−顔面ジスキネジーが挙げられ、これらは、ドパミン系を介して主に媒介されるようである(Hansen,T.E.ら(1997)「Neuroleptic intolerance」,Schizo.Bull.23(4):567−582)。しかし、変化された意識、低体温、自律神経の不安定性および呼吸障害は、個々の病的状態に対する大きな脅威をもたらし、したがって、NMSの運動症状よりも重要であるとみなされる(Rodnitzky,R.L.(2002)「Drug−Induced movement disorders」,Clin Neuropharmacol,25(3):142−152)。
【0008】
多数の患者が運動変動(MF)を発生する(Chase,T.N.ら(1986)「Fluctuation in response to chronic levodopa therapy pathogenetic and therapeutic considerations」,Adv Neurol,45:477−480)か、および/もしくはレボドパ誘発性ジスキネジーを発生する(Klawans,H.およびShenker,D.(1970)「Theoretical implications of the use of L−dopa in Parkinsonism」,Acta Neurol Scand,46:409−441)のは、レボドパ(L−dopa)治療の過程の間であると長く認識されてきた。Bergmannおよび同僚は、L−dopa治療を始めた295人のパーキンソン患者群を長期的に評価した(Bergmann,K.J.ら(1986)「Parkinson’s disease and long term levodopa therapy」,Adv Neurol,45:463−467)。295人の患者中、263人(93%)がジスキネジーを発生し、そしてこれらの患者の163人(58%)がL−dopa導入の数年以内に毎日の運動変動を経験し始めた。運動変動は、早発性パーキンソン病(PD)を有する人々に頻繁に起こる;他方、レボドパ誘発性ジスキネジーは、一般に重篤なパーキンソン病の場合に早期に発現する。胚性被殻細胞移植を受けている患者の15〜30%が、L−dopa治療もしくはドパミン作用性薬物治療なしでさえも、「逃走性(run−away)」ジスキネジーを発生することが、近年確立された(Michael J.Fox Foundation,2003)。これらの障害の根底にある機構は、関連性はないと考えられている(Textbook of Medical Physiology(1996)、第9版、Guyton,E.およびHall,A.;John E.W.B.Saunders Company Philadelphia,PA;Diagnostic Clinical Neuropsychology(1997)、第3版(編)Bigler,Erin Clement,Pamelia,University of Texas Press Austin,TX)。
【0009】
これらのジスキネジーを処置する方法が必要とされる。
【0010】
(クロロキン化合物)
クロロキン[7−クロロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン](The Merck Index、2220ページ、1996)は、合成的に製造される、キノリン核を含有する抗マラリア剤である。クロロキンは、50年以上前に開発された。これは依然として、P.falciparumの無性赤血球形態の処置のために最も広く利用される薬物である(Deepalakshmi,P.D.ら「Effect of chloroquine on rat liver mitochondria」(1994),Indian J.Exp.Biology 32(11):797−799)。多数のクロロキン誘導体が、抗マラリア剤および他の使用のために同定された。米国特許第5,948,791号、同第5,834,505号、同第5,736,557号、同第5,639,737号、同第5,624,938号、同第5,596,002号、および同第4,421,920号を参照のこと。
【0011】
(クロロキン鏡像異性体)
クロロキンおよびヒドロキシクロロキンは(−)および(+)鏡像異性体のラセミ混合物である。(−)鏡像異性体はまた、(R)鏡像異性体(物理的回旋)およびl−鏡像異性体(光学的回旋)としても知られる。(+)鏡像異性体はまた、(S)鏡像異性体(物理的回旋)およびd−鏡像異性体(光学的回旋)としても知られる。(+)鏡像異性体は、末梢において(−)鏡像異性体よりも約8倍速く代謝し、脱エチルクロロキンを含む毒性の代謝産物を生成する(Augustijins,P.およびVerbeke,N.[1993]「Stereoselective pharmacokinetic properties of chloroquine and de−ethyl chloroquine in humans」,Clinical Pharmacokinetics 24(3):259−69;Augustijins,P.ら[1999]「Stereoselective de−ethylation of chloroquine in rat liver microsomes」,Eur.J.Drug Metabolism & Pharmacokinetics 24(1):105−8;DuCharme,J.およびFarinotti R.[1996]「Clinical pharmacokinetics and metabolism of chloroquine」,Clinical Pharmacokinetics 31(4):257−74)。(+)クロロキンの投与は、有毒の代謝産物形成のために、心臓性の副作用を引き起こし得る。(−)鏡像異性体は、(+)鏡像異性体よりも長い半減期と、より低いクリアランスを有する(Ducharme,J.ら[1995]「Enantio−selective disposition of hydroxychloroquine after a single oral dose of the racemate to healthy subjects」,British J.Clinical Pharmacology 40(2):127−33)。クロロキンおよびヒドロキシクロロキンの鏡像異性体は、当該分野で公知の手順で調製され得る。
【0012】
本明細書中で参照される全ての刊行物は、本明細書と矛盾しない範囲において、参考のため援用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(本発明の要旨)
本発明は、メラニン沈着されたカテコールアミンニューロン(例えば、黒質および基底核のドパミンニューロン)、エピネフリンおよびノルエピネフリンニューロンの細胞呼吸を増加させ、このようなニューロンを酸化性のストレス、興奮毒性、およびアポトーシスに対して保護する組成物および方法を提供する。
【0014】
本発明の組成物は、パーキンソン病および関連する状態(パーキンソン病の認識症状、薬物性ジスキネジー、遅発性ジスキネジーが挙げられる)、ならびに統合失調症の陰性症状および関連する状態の処置(これらの状態の症状の緩和、ならびにこれらの状態の症状の発症および進行予防の両方が挙げられる)に有用である。本発明の組成物はまた、ドパミン前駆体、ドパミンアゴニストおよび/もしくは神経弛緩薬を服用する人々を苦しめる神経弛緩薬性悪性症候群(NMS)の処置、ならびに運動障害の処置のためのドパミン前駆体もしくはドパミンアゴニストの使用に関連する運動変動の処置に有用である。本発明の組成物は、長期的に投与され得る。
【0015】
本発明の組成物はまた、L−Dopaおよびドパミンアゴニスト(初期の有効期の後、一時的および永続的に、パーキンソン病の症状を改善するその能力を失う)の有用性および有効性を延長するのに有用である。本発明の組成物はまた、フェノチアジンおよびデカン酸のような「代表的」神経弛緩薬(遅発性ジスキネジーを促進し、かつ統合失調症の陰性症状の発生の原因となる)の安全性および耐性プロフィールを改善するのに有用である。
【0016】
本明細書中で使用される用語「パーキンソン病および関連する状態」は、特発性パーキンソン病(IPD)、非定型パーキンソン病(APD)、非L−dopa反応性非定型パーキンソン病、パーキンソンプラス症候群(核上性麻痺および他の非L−dopa反応性パーキンソン型疾患を含む)、線条体黒質変性(SND)、多症状性萎縮症(MSA)、ならびに脈管性パーキンソン病およびジストニーを含む。
【0017】
本明細書中で使用される用語「薬物性ジスキネジー」は、運動低下状態および運動低下疾患、例えば、パーキンソン病および関連する状態、薬物性パーキンソン症候群(DID)、錐体外障害(EPS)および運動不能、を含む。本明細書中で使用される用語「薬物性ジスキネジー」はまた、多動状態および多動障害、例えば、レボドパ誘発性ジスキネジー(LID)、遅発性ジスキネジー(TD)、舞踏病、およびバリスム、を含む。
【0018】
本明細書中で記載される状態に関する用語「処置」は、症状の緩和もしくは症状の発現および/もしくは進行の停止を意味する。
【0019】
治療薬の長期使用に由来する遅発性ジスキネジーは、何年も(例えば、5〜8年)の「代表的」神経弛緩治療薬の服用の後に発生する運動障害である。
【0020】
例えば、神経弛緩薬誘発性遅発性ジスキネジー(神経変性に起因する多動状態)は、患者が「代表的」神経弛緩薬(例えば、クロルプロマジン、フルフェナジン、およびハロペリドール)を服用する数年の期間の後にしばしば発生する。加えて、レボドパ誘発性ジスキネジー(LID)は、パーキンソン病患者において、パーキンソン病もしくは他の運動障害(例えば、ウィルソン病)に対するレボドパ服用の数年後に代表的に発生する多動性障害である。本明細書中で報告される臨床研究は、クロロキンニリン酸の服用後、パーキンソン病患者における多動性ジスキネジーの良好な改善を示した。
【0021】
クロロキンニリン酸研究薬物を用いる本明細書中で報告される臨床研究は、パーキンソン運動の減少を示すのに加えて、記憶消失、単語想起困難、および複数課題遂行能力の消失のようなパーキンソン病の認識症状の減少もまた示す。
【0022】
種々の運動障害の処置のためのドパミンもしくはドパミンアゴニストの使用に関する運動変動は、このような薬物が、通常、断続的投与で与えられるために生じる。代表的に、薬物の投与の直後に「オン」状態を経験し、その後、この薬物が器官からなくなり始める場合、患者は「オフ」に転ずる、ここで、再度動くことはさらに困難になる。本発明の
活性成分の半減期に一部起因して、ドパミン前駆体および/またはドパミンアゴニストを服用する患者に見られる「オン/オフ」運動機能は安定化される。
【0023】
統合失調症の陰性症状としては、感覚鈍麻、言語の流暢さの消失、情動の平坦化、動機付けの欠如、およびうつ病が挙げられる。これらの症状は、神経変性作用の結果であり、そしてドパミン作用性薬剤によって改善され得る。したがって、本発明の組成物は、そのドパミン作用性効果によって、統合失調症の陰性症状を処置するのに有用である。加えて、本発明の組成物は、その神経保護効果によって、統合失調症の陰性症状の発現および/もしくは進行を予防するのに有用である。この目的に関して、適切な投薬量とは、パーキンソン障害の処置のために使用される量である。本発明の組成物は、ニューロンに対する抗酸化性ストレスを減少させ、DNAをインターカレートして安定化させ、そして、アポトーシスからニューロンを保護する脳由来の神経栄養因子の発現を促進および/もしくは維持し、このことによって、これらのニューロンの変性を予防もしくは減少させる。
【0024】
本発明の組成物はまた、増量したグリア由来神経栄養因子(GDNF)の、脳の領域(この因子の存在がパーキンソン病のような運動障害に有利な影響を有する領域)での選択的な誘導のために有用である。GDNFのパーキンソン病患者への全身的投与は有利な影響を有さないが、GDNFの被殻への直接注入は有利な結果を有したことが分かった。この有利な影響は、そのような注入の必要性なしに、阻害因子κBーα(IFκB−α、パーキンソン病を発症している脳の領域におけるGDNFの合成を促進する核因子κB(NFκB)を脱活化させるように働く分子)の活性を防止することによって、達成され得る。これらの脳の領域としては、これらに限定されないが、黒質、線条体(被殻、尾状核、および側坐核の領域)、および淡蒼球(内側区および外側区)が挙げられる。用語「選択的に」は、本明細書中において、比較的少ない(約1/10くらい少ない)GDNFが、本発明の組成物が蓄積しない大脳皮質内で誘導され、「標的」するか、もしくは治療効果を及ぼすことを示すために使用される。
【0025】
本発明の組成物はまた、本明細書中において後に明らかにされる機構(それによって神経保護効果がもたらされる)によって、メラニン沈着された線条体、基底核、中脳、脳幹および小脳に含まれるカテコールアミンニューロンおよび他のニューロンにおけるアポトーシスを減少させるのに、有用である。「アポトーシスの減少」とは、アポトーシスの減少を示す手段に関するパラメーター(例えば、フリーラジカルおよび前アポトーシスサイトカインのレベルの減少、抗アポトーシス分子の産生の増加(IFκBαによるNFκBの不活性化の阻害を介して)、ならびに細胞収縮およびDNA断片化の減少)が測定可能に変更することを意味する。
【0026】
本発明の組成物はまた、多動状態を経験する患者において視床の機能亢進を減少させるのに有用である。これらの組成物は、視床の前腹側部、外側腹側部、および網様核部における視床の運動中継を調節する。これらの運動中継の活動の、完全な阻害というよりも調節は、運動機能の改善をもたらす。「視床活動の調節」および「視床性多動の減少」は、当該分野で公知の手段によって、好ましくは運動機能の測定可能な改善を示すことによって測定される。
【0027】
本発明の組成物は、本明細書に記載される、ドパミン前駆体およびドパミンアゴニストと組み合わせた活性成分を含有する。臨床研究において、運動障害の処置に使用されるドパミンおよびドパミンアゴニストの投薬量は、本明細書中の活性成分と組み合わせる場合、約1/2に減少され得る。代表的に、このことは、ドパミンおよびドパミンアゴニストが、1日に何度も投与されることを必要としないこと、そして各回に投与されるドパミンおよびドパミンアゴニストの量もまた減少され得ることを意味する。これらの組成物中におけるドパミンおよびドパミンアゴニストに対する本明細書中の活性成分の比率は、約5:95〜約25:95であるべきである。より多くのドパミンおよびドパミンアゴニストの投薬量を必要とするより後期のステージの患者においては、ドパミンおよびドパミンアゴニストに対する活性成分の比率は、より早期のステージの患者よりも低い。
【0028】
ドパミン作用性効果を避ける必要がない患者(例えば、損傷したドパミンニューロンを有する患者)に関しては、クロロキンおよび関連化合物の適切な投薬量レベルは、パーキンソン病の処置のために、本明細書中において示される。ドパミン作用性効果が相反する患者に関しては、過度の実験なしに当業者によって容易に決定され得る投薬量よりは、低くあるべきである。
【0029】
本発明の組成物は、本明細書中に記載される、従来のフェノチアジンおよび/もしくはデカン酸神経弛緩薬と組み合わせた活性成分を含有し、これらの薬剤の安全性および耐性を向上させ、一方でこれらの薬物の長期使用の結果として起こる永続的神経学的損傷(遅発性ジスキネジーおよび統合失調症の陰性症状の形成をもたらす)を予防する。従来のフェノチアジン神経弛緩薬としては、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、フルフェナジン、ハロペリドール、ロクサピン、メソリダジン、モリンドン、パーフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジンが挙げられる。デカン酸神経弛緩薬としては、デカン酸フルフェナジン、およびデカン酸ハロペリドールが挙げられる。クロロキンもしくは関連化合物の量は、ドパミン作用性効果を及ぼす量よりも少なくあるべきであり、好ましくは、その量は約25〜約100mg/日である。
【0030】
本発明は、前記の目的のために有用な組成物を提供し、この組成物は以下に記載されるような活性成分を含有する:ラセミ混合物、およびそれらの鏡像異性体(好ましくはアジュバントと共有結合性に連結されるか、混合されるか、もしくは複合される)、およびそれらの受容可能な薬物塩、ならびに前記の混合物。その活性成分およびアジュバント(使用される場合)は、有効量存在し、以下から選択される機能を提供するべきである:メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの細胞呼吸の増加、ドパミン作用性効果の発揮、炎症誘発性サイトカインおよびインターロイキンの産生の阻害、DNAのインターカレート、黒質、線条体および視床核アセチルコリンレセプターの拮抗、NMDAレセプターサブユニットNRA2AおよびNAR2Bの不活性化、およびGDNFの(if)合成促進。
【0031】
本発明の組成物は、以下に記載されるような活性成分を含有する:ラセミ混合物、およびそれらの鏡像異性体(アジュバントと共有結合性に連結されるか、混合されるか、もしくは複合される)、およびそれらの受容可能な薬物塩、ならびに前記の混合物。その活性成分およびアジュバントは、有効量存在し、メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンを増加させる。
【0032】
活性成分は、好ましくはクロロキンもしくは関連化合物(本明細書中においては、「CQ」と呼ばれる)である。用語「CQ」は、クロロキン(7−クロロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン)、リン酸クロロキン(7−クロロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリンホスフェート)、およびヒドロキシクロロキン(7−クロロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン)、ラセミ混合物、鏡像異性体、それらの適切な薬物塩、およびそれらの混合物を含む。同様に、用語(−)クロロキンおよび(+)クロロキンは、(−)および(+)リン酸クロロキン、ならびに(−)および(+)ヒドロキシクロロキンを、それぞれ含む。
【0033】
活性成分はまた、上記の化合物から選択され得、ここで、水素もしくはフッ素は、これらの分子の塩素原子と置換される(これらは、例えば、7−フルオロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン、4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン、7−フルオロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリンホスフェート、4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリンホスフェート、7−フルオロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン、および4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン、ラセミ混合物、鏡像異性体、それらの適切な薬物塩、ならびにそれらの混合物である)。同様に、用語(−)鏡像異性体および(+)鏡像異性体は、(−)および(+)鏡像異性体リン酸塩、ならびに前記の(−)および(+)ヒドロキシアナログを、それぞれ含む。
【0034】
メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの細胞呼吸を増加させるため、および/もしくはパーキンソン症状の進行を予防、停止させるために有用な組成物はまた、活性成分として、神経メラニン結合クロロキンおよびフッ素アナログ、ならびにキノリン核を含有する誘導体を含有し得、この神経メラニン結合クロロキンおよびフッ素アナログ、ならびにキノリン核を含有する誘導体は、好ましくは、以下からなる群から選択される:
7−クロロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン(クロロキン);
7−フルオロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
7−ヒドロキシ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
リン酸クロロキン;
7−クロロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン(デスメチルクロロキン);
7−フルオロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
7−ヒドロキシ−4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
7−クロロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン(ヒドロキシクロロキン);
7−フルオロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
7−ヒドロキシ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
リン酸ヒドロキシクロロキン;
7−クロロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン(デスメチルヒドロキシクロロキン);
7−フルオロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
7−ヒドロキシ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;
7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;
8−[(4−アミノペンチル)アミノ)−6−メトキシジヒドロクロライドキノリン
1−アセチルー1,2,3,4−テトラヒドロキノリン;8−[4−アミノペンチル)アミノ]−6−メトキシキノリンジヒドロクロライド;
1−ブチリル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン;7−クロロ−2−(o−クロロスチリル)−4−[4−ジメチルアミノ−1−メチルブチル]アミノキノリンホスフェート;
3−クロロ−4−(4−ヒドロキシ−α,α’−ビス(2−メチル−1−ピロリジニル)−2,5−キシリジノキノリン、4−[(4−ジエチルアミノ)−1−メチルブチル)アミノ]−6−メトキシキノリン;
3−フルオロ−4−(4−ヒドロキシ−α,α’−ビス(2−メチル−1−ピロリジニル)−2,5−キシリジノキノリン、4−[(4−ジエチルアミノ)−1−メチルブチル)アミノ]−6−メトキシキノリン;
4−(4−ヒドロキシ−α,α’−ビス(2−メチル−1−ピロリジニル)−2,5−キシリジノキノリン、4−[(4−ジエチルアミノ)−1−メチルブチル)アミノ]−6−メトキシキノリン;
3,4−ジヒドロ−1−(2H)−キノリンカルボキシアルデヒド;
1,1’−ペンタメチレンジキノレイニウムジヨージド;ならびに8−キノリノール硫酸塩、ラセミ混合物、ならびにそれらの鏡像異性体、ならびにそれらの適切な薬物塩であって、全ての前記化合物の、リン酸塩を含む薬物塩(ここで、この化合物はアジュバントおよびそれらの混合物、ならびにそれらの適切な薬物塩と共有結合性に連結されるか、複合されるか、もしくは混合される)。クロロキンおよびヒドロキシクロロキンが好ましい;それらの(−)鏡像異性体は、より好ましい、ここで、前記の化合物がアジュバントと共有結合性に連結されるか、複合されるか、もしくは混合されると最も好ましい。クロルプロマジンおよび他の抗精神病薬のような神経メラニン結合化合物は、ドパミンレセプターに結合するが、本発明のPD−有効性の神経メラニン結合化合物の範囲内に含まれない。当該分野で公知であり、かつ神経メラニンに結合し得る、あらゆるクロロキンアナログもしくはクロロキン誘導体は、本発明の方法において有用であり得る。
【0035】
神経メラニン結合化合物は、有効量で血液脳関門を通過し得る化合物からなる群から選択され得る。当該分野で公知であるように、このような化合物は、より脂質親和性の化合物を含有し、血液脳関門を通過した後に効果的な鏡像異性に変化し得、血液脳関門の輸送機構を介する化合物の輸送を増強する側鎖置換基を有するか、または抗体もしくは他の標的成分と複合されるかもしくは共有結合性に連結され、またはその血液脳関門の通過を促進する他の化合物と組み合わせて投与される。クロロキンの(−)鏡像異性体(本明細書中においては、活性鏡像異性体と呼ばれる)が、好ましい。
【0036】
クロロキンの(−)鏡像異性体および関連化合物は、神経細胞のDNAをインターカレートし、そしてグアニンを保護する(これは、さもければフリーラジカルの攻撃に供されて神経変性をもたらす)。
【0037】
好ましい実施形態において、メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの細胞呼吸を増加させるのに有用な本発明の組成物は、以下:(−)CQまたはアジュバントと混合されるか、複合されるか、もしくは共有結合性に連結される(−)CQ;前記の(−)CQよりも少量の、または前記の、標的薬剤と混合されるか、複合されるか、もしくは共有結合性に連結される(−)CQよりも少量の、(+)CQ;ならびに、適切な薬物学的キャリア、を含む有効量の組成物を含有する。CQ鏡像異性体が、別個に投与される場合、眼へのCQの蓄積は有意に少なく、したがって、CQ関連性の網膜変性はより少ない。
【0038】
このような(−)クロロキン含有組成物は、0〜49%の(+)CQのいずれかを含み得る。CQの末梢分解を引き起こす酵素に結合するのに十分な(+)CQの量が好ましく、これは、より多くの(−)CQを、その治療効果が生じる場所の血液脳関門を通過するるように残す。好ましくは、この組成物は、約10%〜約20%の(+)CQを含有する。
【0039】
本明細書中のアジュバントは、好ましくは、末梢膜保護剤(例えば、網膜保護剤)活性成分の末梢代謝を阻害する末梢代謝阻害剤、増強剤(例えば、ヒスタミンHレセプターアゴニスト)、本明細書中で定義された活性成分以外の神経保護化合物、ドパミンおよびドパミンアゴニスト、フリーラジカル脱活化剤、および抗酸化剤からなる群から選択される。
【0040】
標的薬剤とは、活性成分と複合される場合、血液脳関門を越えてそれを運ぶのを助ける物質である。好ましい標的薬剤は、当該分野で公知の脂質親和性成分(これは、キノリン環の神経メラニンに結合する能力を干渉しない位置で活性分子に付加される)、および抗体(例えば、中脳と解剖学的に極めて近接する脈管構造において病理学的に発現される、ラクトトランスフェリンに結合し得る抗体)である。活性成分に共有結合性に付加される(好ましくは、クロロキン、リン酸クロロキン、もしくはヒドロキシクロロキンに共有結合性に付加される)このようなラクトトランスフェリン抗体を用いることは、ニューロン内への鉄の取り込みを競合的に阻害し、これによって、パーキンソン病における酸化性ストレスおよびそれに続く神経変性の原因であるとして特徴付けられている病理学的な鉄の取り込みを減少させる。
【0041】
網膜および末梢膜保護剤(「保護剤」とも呼ばれる)は、活性成分が長期間(例えば、1年以上)投与される場合に所望される。クロロキンおよび関連化合物は、膜に結合し、そしてその膜の硬直を引き起こす傾向にある(特にミトコンドリア膜)。CQは、カルシウムイオンATPaseポンプ阻害剤である。網膜において、CQは色素に結合し、そして網膜の変性をもたらす。末梢膜保護剤はまた、それらの膜安定化活性および神経保護活性によって、パーキンソン病で生じる末梢交感神経の損傷を相殺するように作用する。
【0042】
本発明の組成物はまた、ノルエピネフリン交感神経線維によって支配される効果器への反応閾値を内因性により低くするように超感受性を誘導することで、交感神経遠心性線維の消失およびノルエピネフリンの減少を相殺する有効な薬剤として作用する。
【0043】
好ましい網膜および末梢膜保護剤は、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびリン酸カルシウムからなる群から選択される、しかし炭酸カルシウムは選択されない。好ましい網膜および末梢膜保護剤は、カルシウムの胃腸での吸収を促進するため、ビタミンDを含有する。カルシウムイオンは、網膜のメラニンと高い親和性を有し、眼の色素に蓄積し、そしてCQの網膜メラニンへの結合を競合的に阻害する。また、カルシウムイオン濃度の増加は、他の膜(特にミトコンドリア膜)の柔軟性の回復を助け得る。カルシウムイオンは、膜の結合およびメラニン結合部位に関してCQと競合するため、カルシウムイオンは活性成分とともに持続放出性製剤の形態で投与され、ここでカルシウムイオンがCQの放出に約2〜3時間先立って放出されるのが好ましい。
【0044】
末梢代謝阻害剤は、活性成分の代謝産物(例えば、クロロキンおよびその鏡像異性体にとっては、モノデスエチルクロロキンおよびデスエチルクロロキンならびにそれらの鏡像異性体)への分解を阻害する化合物であり、これによって、この活性成分が本発明の治療目的のために有効である場所で血液脳関門を通過するための、活性成分の利用能を増加させる。CQは、一般的に、その代謝産物よりも脂質親和性であり、したがって、より容易に血液脳関門を通過する。末梢代謝阻害剤の使用は、中枢神経系へのより多くの活性成分の取り込みを許容することによって、活性成分の投薬量の減少を許容し、それによって、パーキンソン病処置効果をより向上させ得る。例えば、CQ投薬量は、1日の基本当量(dose equivalent)で約100mg〜約200mg程度の低さに減少され得る。
【0045】
CQ代謝産物はCQそのものよりも容易に眼の色素に結合するため、末梢代謝阻害剤はまた、網膜保護剤として作用し得、そして利用可能な代謝産物の量の減少は、網膜の変性量を減少させる。
【0046】
このような末梢代謝阻害剤はまた、CQ代謝産物に関連する心臓および皮膚の有害な現象の発生を低下させるよう手伝い、これによって、特に通常の抗マラリア剤と比較した場合、本明細書中に記載される組成物の安全性および毒性を改善する。
【0047】
このような末梢代謝阻害剤は、チトクロームP450 2D6酵素および/もしくはチトクロームP450 3A酵素の阻害剤である。これらは、CQ代謝産物の存在量を減少させ得る。これらの阻害剤は、ドパミン、L−dopaもしくは他のドパミンアゴニストの吸収を妨げないが、患者が服用する他の薬剤のバイオアベイラビリティーを干渉し得、その場合、このようなP450阻害剤を含有する本発明の組成物は、夕方(evening)に、もしくはそれが干渉する薬剤が投与されない別の時間に投与されることが好ましい。
【0048】
好ましいチトクローム(CYP)2D6酵素阻害剤は、アミオダロン、セレコキシブ、クロルフェニラミン、シメチジン、クロミプラミン、フルオキセチン、レボメプロマジン、メトクロプラミド、ミベフラジル、モクロベミド、パロキセチン、キニジン、ラニチジン、リトナビル、セルトラリン、テルビナフィン、ラセミ混合物および鏡像異性体、ならびに前記の適切な薬物塩、からなる群から選択される薬剤である。
【0049】
前記チトクローム(CYP)2D6酵素阻害剤の好ましい1日投薬量は、以下である:
アミオダロン:約400mg〜約800mg。これは、CYP 2D6およびCYP 3Aの両方において阻害剤として作用するため、好ましいアジュバントである。
【0050】
セレコキシブ:約200mg〜約400mg。このアジュバントは、抗関節炎剤として知られており、関節炎を同時に有する患者を処置する場合に使用するのに好まれる。
【0051】
クロルフェニラミン:約6mg〜約10mg。このアジュバントは、以下に記載されるように、ヒスタミンHレセプターアンタゴニストである。
【0052】
シメチジン:約400mg〜約600mg。シメチジンは、公知の抗潰瘍剤および抗胃酸逆流剤であり、好ましくは、胃腸の問題を同時に有する患者、またはCQもしくは他の活性成分の投与によって引き起こされる胃腸の問題を有する患者を処置する場合に使用される。シメチジンは、良い結果を得た本発明の組成物の臨床研究において使用された、そして、その有害な心臓および低血圧効果がないために、好ましいアジュバントである。
【0053】
クロミプラミン:約25mg〜約100mg。これは、臨床的うつを同時に有する患者を処置する場合に好まれる。
【0054】
フルオキセチン:約20mg〜約60mg。これもまた、抗うつ剤であり、臨床的うつを有する患者を処置する場合に好まれる。
【0055】
レボメプロマジン:約15mg〜約35mg。
【0056】
メトクロプラミド:約25mg〜約30mg。シメチジンと同様に、これは抗潰瘍剤および抗胃酸逆流剤であり、好ましくは、胃腸の問題を同時に有する患者、またはCQもしくは他の活性成分の投与によって引き起こされる胃腸の問題を有する患者を処置する場合に使用される。
【0057】
ミベフラジル:約25mg〜約50mg。
【0058】
モクロベミド:約200mg〜約30mg。モクロベミドは、抗うつ剤であり、好ましくは、臨床的うつを同時に有する患者を処置する場合に使用される。
【0059】
パロキセチン:約20mg〜約40mg。パロキセチンもまた、抗うつ剤であり、好ましくは、臨床的うつを同時に有する患者を処置する場合に使用される。
【0060】
キニジン:約200mg〜約400mg。
【0061】
ラニチジン:約200mg〜約300mg。ラニチジンは、抗潰瘍剤および抗胃酸逆流剤であり、好ましくは、胃腸の問題を同時に有する患者、またはCQもしくは他の活性成分の投与によって引き起こされる胃腸の問題を有する患者を処置する場合に使用される。
【0062】
リトナビル:約600mg〜約1200mg。
【0063】
セルトラリン:約25mg〜約50mg。セルトラリンは、抗うつ剤であり、好ましくは、臨床的うつを同時に有する患者を処置する場合に使用される。
【0064】
テルビナフィン:約200mg〜約400mg。
【0065】
好ましいチトクロームP450 3A酵素阻害剤は、デラビルジン、インジナビル、ネルフィナビル、サキナビル、アミオダロン、シメチジン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、ジエチル−ジチオカルバミン酸塩、ジルチアゼム、エリスロマイシン、フルコナゾール、フルボキサミン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミフェプリストン、ネファゾドン、ミフェプリストン、ノルフロキサシン(norfloxacinem)、ノルフロキセチン、ラセミ混合物および鏡像異性体、ならびに前記の適切な薬物塩、からなる群から選択される薬剤である。
【0066】
前記チトクローム(CYP)3A酵素阻害剤の好ましい1日投薬量は、以下である:
アミオダロン:約400mg〜約800mg。これは、CYP 2D6およびCYP 3Aの両方において阻害剤として作用するため、好ましいアジュバントである。
【0067】
デラビルジン:約400mg〜約1200mg。
【0068】
インジナビル:約600mg〜約1200mg。
【0069】
ネルフィナビル:約600mg〜約1200mg。
【0070】
サキナビル:約1000mg〜約2000mg。
【0071】
アミオダロン:約400mg〜約800mg。
【0072】
シメチジン:約400mg〜約600mg。
【0073】
シプロフロキサシン:約200mg〜約200mg。
【0074】
クラリスロマイシン:約200mg〜約400mg。
【0075】
ジエチル−ジチオカルバミン酸塩:約10mg〜約1000mg。この化合物(カルバミン酸)は、現在、AIDSの進行を遅くするその性能を試験されている金属イオンキレート剤である。鉄イオンを結合し得るキレート剤として、これは、CYP 3A阻害剤として使用するのに非常に好ましい薬剤である。
【0076】
ジルチアゼム:約5mg〜約15mg。
【0077】
エリスロマイシン:約500mg〜約1000mg。
【0078】
フルコナゾール:約200mg〜約400mg。
【0079】
フルボキサミン:約50mg〜約100mg。フルボキサミンは、抗うつ剤であり、好ましくは、臨床的うつを同時に有する患者を処置する場合に使用される。
【0080】
イトラコナゾール:約200mg〜約400mg。
【0081】
ケトコナゾール:約200mg〜約400mg。
【0082】
ミフェプリストン:約25mg〜約50mg。
【0083】
ネファゾドン:約50mg〜約150mg。ネファゾドンは、抗うつ剤であり、好ましくは、臨床的うつを同時に有する患者を処置する場合に使用される。
【0084】
ミフェプリストン:約2000mg〜約3000mg。
【0085】
ノルフロキサシン:約250mg〜約500mg。
【0086】
ノルフロキセチン:約40mg〜約100mg。ノルフロキセチンは、フロキセチンと同様、抗うつ剤であり、好ましくは、臨床的うつを同時に有する患者を処置する場合に使用される。最も好ましくは、フロキセチンとノルフロキセチンとの組み合わせが、重篤にうつであるパーキンソン病患者に対する製剤に使用される。
【0087】
好ましくは、末梢代謝阻害剤は、持続放出性製剤の形態で、本発明の活性成分とともに投与され、ここで、この阻害剤は、胃腸の吸収を最大化し、かつ薬力学的相互作用を増強するため、網膜および末梢保護剤の約1.5時間〜約2時間後、かつ活性成分の約1時間前に放出に放出される。
【0088】
増強剤は、脳内の活性成分のレベルを増加させるように、もしくは脳内のドパミンレベルを増加させるように作用する薬剤である。好ましい増強剤は、ヒスタミン(H)レセプターアンタゴニストである。これらは、ヒスタミンのバイオアベイラビリティーの増加(これは活性成分、特にCQの、クロロキンによるヒスタミンメチルトランスフェラーゼ(HMT)およびドパミンオキシダーゼ(DAO)(2つの主要なヒスタミン分解経路)の阻害から生じる)を相殺するように、かつヒスタミン関連の有害現象(抗マラリア処置製剤によって観察される)を最小化するように作用する。
【0089】
研究は、CQが、所定のレセプターにおいてヒスタミンの作用を阻害し得ることを示したが(すなわち、喘息の研究で、気管支動脈において)、CQによるマラリアの処置で見られる主な問題の1つは、痒みである。痒みは、ヒスタミンにより引き起こされる皮膚の問題で、CQによってマラリアを処置される人々の約35%に生じる。これは、クロルフェニラミンもしくはベナドリルのようなHアンタゴニストによって容易に処置され、したがって、CQがこのレセプタータイプを末梢性に阻害しないことは明らかである。CQを投与する前に抗ヒスタミン剤を投与することによって痒みを処置することは、特に、CQ代謝産物(これは、心臓の副作用に加えて、元のCQよりも痒みの発生の原因となる)に非常に感受性のある患者を処置する場合、最も良い。
【0090】
本発明の1つの実施形態は、第1世代ヒスタミンHレセプターアンタゴニストをアジュバントとして利用する。第1世代ヒスタミンHレセプターアンタゴニストは、血液脳関門を通過し得る薬剤である。これらの薬剤は、眠気を引き起こす。このような第1世代ヒスタミンHレセプターアンタゴニストは、好ましくは、マレイン酸カルビノキサミン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリネート、マレイン酸ピリラミン、トリペレナミン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸ブロムフェニルアミン、塩酸ヒドロキシジン、ヒドロキシジンパモエート、塩酸シクリジン、乳酸シクリジン、塩酸メクリジン、塩酸プロメタジン、ならびにラセミ混合物および鏡像異性体、ならびに前記の治療学的部分の適切な薬物塩、からなる群から選択される。上記で述べた物質より他の、薬学的に有効な前記化合物の塩もまた有用である。
【0091】
前記第1世代ヒスタミンHレセプターアンタゴニストの好ましい1日投薬量は、以下である:
マレイン酸カルビノキサミン:約10mg〜約8mg。
【0092】
クレマスチン:約3mg〜約6mg。
【0093】
ジフェンヒドラミン:約50mg〜約100mg。
【0094】
ジメンヒドリネート:約100mg〜約200mg。
【0095】
マレイン酸ピリラミン:約100mg〜約200mg。
【0096】
トリペレナミン:約100mg−好ましくは、持効性形態で。
【0097】
マレイン酸クロルフェニラミン:約12mg、好ましくは、持効性形態で。他のクロルフェニラミン塩もまた、使用され得る。好ましくは、クロルフェニラミンはd−クロルフェニラミンの形態で投与され(これはこの形態が、l−形態もしくはラセミ形態よりも高い有効性を有するためである)、そして、より有効な形態の使用は、組成物を詰められたカプセル中で空間を節約し得る
マレイン酸ブロムフェニルアミン:約12mg、持効性形態。
【0098】
塩酸ヒドロキシジン:約50mg〜約100mg。
【0099】
ヒドロキシジンパモエート:約50mg〜約100mg。
【0100】
乳酸シクリジン:約50mg〜約100mg。
【0101】
塩酸メクリジン:約40mg〜約60mg。
【0102】
塩酸プロメタジン:約50mg〜約100mg。
【0103】
本発明の別の実施形態において、第2世代ヒスタミン(H)レセプターアンタゴニストはアジュバントとして使用され得る。第2世代ヒスタミン(H)レセプターアンタゴニストは、血液能関門を通過し得ず、したがって、眠気を引き起こさない。好ましい第2世代ヒスタミン(H)レセプターアンタゴニストは、有害な心臓の効果(例えば、トルサード・ド・ポワントおよび不整脈)を引き起こさない。
【0104】
本明細書中のアジュバントとしての使用に好ましい第2世代ヒスタミン(H)レセプターアンタゴニストは、アクリバスチン、塩酸セチリジン、アステミゾール、ロラタジン、およびテルフェナジン、それらのラセミ混合物および鏡像異性体、ならびに前記の治療学的部分の受容可能な薬物塩、からなる群から選択される。
【0105】
前記第2世代ヒスタミン(H)レセプターアンタゴニストの好ましい1日投薬量は、以下である:
アクリバスチン:約15mg〜約25mg。
【0106】
塩酸セチリジン:約10mg〜約20mg。
【0107】
アステミゾール:約10mg。
【0108】
ロラタジン:約5mg〜約10mg。
【0109】
テルフェナジン:約60mg。
【0110】
増強剤を含有する本発明の組成物は、持続放出性製剤の形態で調製され得る。好ましくは、この増強剤は、活性成分と同時に放出される。
【0111】
増強剤を含有する組成物は、神経保護作用を生じ得、かつ処置が病気のステージの初期(すなわち、黒質中のドパミンニューロンの約50%が消失してしまう前に)に開始される場合、パーキンソン病の運動症状の発現を予防し得る。パーキンソン病の進行の緩徐化は、活性成分が、パーキンソン病に見られる神経変性の原因として記される病理学的指標の大部分を相殺し得ることに伴われる。
【0112】
増強剤を含有する前記の組成物は、他の利用可能なパーキンソン病の薬剤と相乗的であり、かつ、患者に、L−Dopaおよび他の利用可能なパーキンソン病の薬剤の服用を延長させることによって、患者が本発明の組成物を服用し始める場合、併用するパーキンソン病の薬剤の容量を大きく減少させることによって、ならびにドパミン細胞の消失を緩徐化および/もしくは停止されることによって、他の利用可能なパーキンソン病の薬剤の有用性および有効性を延長し得、このことによって、原稿で利用可能なパーキンソン病の薬剤の投薬量の着実な増加はもはや必要でなくなる。
【0113】
本発明の組成物はまた、抗酸化剤、他の網膜保護剤、他の神経保護化合物、ドパミンもしくはドパミンアゴニスト、ならびにフリーラジカル脱活化剤からなる群から選択される、有効量の少なくとも1つのアジュバントを含有し得る。
【0114】
抗酸化剤は、当該分野で公知の、フリーラジカル生成および組織の酸化による変性を防止するあらゆる抗酸化剤であり得、好ましくは、プロブコール、ピクノゲノール、ビタミンC、ビタミンE、スーパーオキシドジスムターゼ、好ましくは合成のBHT、BHA、およびメラトニンからなる群から選択される。
【0115】
網膜保護剤は、当該分野で公知であるように、網膜メラニンとCQとの結合を防止するために、局所的に投与される組成物である(例えば、アルカンおよびC−Cアルコール、イチョウ葉、ならびに上記で議論されたカルシウム化合物およびビタミンDアジュバントである)。
【0116】
神経保護化合物は、当該分野で公知のあらゆる化合物であり、好ましくは、塩酸セレジリンおよび他のモノアミンオキシダーゼ阻害剤からなる群から選択される。
【0117】
ドパミンアゴニストは、当該分野において、抗パーキンソン処置として公知のあらゆる化合物であり、好ましくは、L-DOPA、プラミペキソール、ロピネロール、ブロモクリプチン、トルカポン、およびカルビドパからなる群から選択される。
【0118】
フリーラジカル脱活化剤は、当該分野で公知のあらゆる化合物であり、好ましくは、スーパーオキシドジスムターゼ、塩酸セレジリンおよびトルカポン(tolcapone)からなる群から選択される。
【0119】
本発明の組成物は、それらの臨床研究でもたらされた行動上の結果において見られるように、ドパミン利用能を増強し得るが、これは2つの主要な機構による:第1に、CQは、ドパミンを含むカテコールアミンの再取り込みを阻害する;そして第2に、本発明者らの分析は、CQが、2つの混合されたモノアミンオキシダーゼAおよびモノアミンオキシダーゼBの阻害剤(すなわち、塩酸ヒドララジン(CAS No.304−20−1)およびキナクリンジヒドロクロライド(CAS No.69−05−6))と構造的に適合性があり、かつ薬物動態学的に関連しており、したがって、カテコールアミンの分解を阻害し得ることを明らかにする。
【0120】
1つの実施形態において、メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの細胞呼吸を増加させるのに有効なこの組成物の単回成人投薬量が、提供される。活性成分は、許容される限り高い投薬量(例えば、500mg/日までのマラリア投薬量)で提供され得るが、好ましくは、抗マラリア剤単回成人投薬量より少ない量が使用され、より好ましくは、約1mM基本当量よりも少なく、最も好ましくは、CQの約0.5mM基本当量よりも少ない。当該分野で公知であるように、用語「基本当量」とは、活性成分の量を指す(例えば、リン酸クロロキンに関しては、(クロロキン)−(リン酸および充填成分))。パーキンソン病の症状の緩和、予防、もしくは進行停止、または本明細書中で記載される他の使用のための使用に関する単回成人投薬量は、規定された治療効果をもたらすために毎日投与される場合の有効量である。活性成分のバイオアベイラビリティーを増加させるアジュバントを含有する本発明の組成物は、約100mg〜約200mgの低さの活性成分投薬量で投与され得る。
【0121】
本発明はまた、キットを提供し、このキットは、非常に接近した状態(例えば、コンテナやブリスター包装)で、単回用量、または1週間もしくは他の適切な期間当りの用量に対して有効な投薬量および形態の本発明の組成物を、好ましくは、有効投薬形態および量のアジュバント(例えば、末梢網膜保護剤もしくは末梢膜保護剤、末梢代謝阻害剤、増強剤、抗酸化剤、ドパミンもしくはドパミンアゴニスト、フリーラジカル脱活化剤、または上記で議論された、この組成物と共投与するのに適切な他のアジュバント)と組み合わせて、含有する。
【0122】
適切な薬物学的キャリアは、当該分野で公知であり、血液能関門を越える輸送を助けるキャリアを含有する(例えば、吸収される組成物上の、界面活性剤に覆われたナノ粒子、例えば、本明細書と矛盾しない範囲において参考のため援用される、Begley,D.J.(1996)「The blood−brain barrier:principles for targeting peptides and drugs to the central nervous system」,J.Pharm.Pharmacol.48(2):136−46、に記載されるようなもの)。
【0123】
本発明はまた、メラニン沈着されたカテーテルコールアミンニューロンの細胞呼吸を増加させる方法、ならびに、パーキンソン病および関連疾患の症状を緩和、または症状の発現および/もしくは症状の進行を停止する方法、ならびに、特発性および非定型パーキンソン病、黒質線条体変性により特徴付けられる状態、多系統萎縮症、脈管性パーキンソン病、およびL−Dopa反応性非定型パーキンソン障害(時に「パーキンソンプラス症候群」と呼ばれる)からなる群から選択される疾患の症状を被る患者の、ドパミンもしくはドパミンアゴニストによる処置に関連するオン−オフ(on−off)症候群の症状を予防する方法、を提供する。この方法は、この患者に、有効量の上記の本発明の組成物を投与する工程を包含する。この方法は、このようなメラニン沈着されたニューロンもしくはパーキンソン病の症状を有するあらゆる哺乳動物に適する。上記の、パーキンソン病および関連する状態の症状を処置および予防する方法はまた、このような症状もしくはそれらを発生する危険を有する患者を同定する工程を包含する。
【0124】
臨床研究は、本発明の組成物が、特発性パーキンソン病を処置するのに必要とされる投薬量と同様の投薬量で投与された場合、効果的に、認識を改善し、運動症状を緩和し、そしてパーキンソン病および前記の関連する障害の進行を減弱することを示した。
【0125】
メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの細胞呼吸を増加させるのに有効な薬物学的組成物を生成する方法が、本明細書中においてさらに提供され、この方法は、以下:活性成分およびアジュバントを含有する、上記に記載された本発明の組成物を提供する工程;適切な薬学的キャリアを提供する工程;および、この組成物と薬学的キャリアとを混合し、メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの細胞呼吸を増加させるのに効果的な組成物を形成する工程、を包含する。
【0126】
(+)CQと(−)CQとを混合する代わりに(−)CQを含有する、本発明の組成物を生成する方法は、ラセミキノリンを用いて開始すること、およびある量の(+)CQを除去し、メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの細胞呼吸を増加させるのに効果的なCQ組成物を残すことによって、実施され得る。
【0127】
(詳細な説明)
CQは、多くの侵害性の攻撃からニューロンを保護し得、この攻撃には、ヒトおよび哺乳動物において全身性に投与されるMPTP(N−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)、およびその活性代謝産物MPP+(1−メチル−4−フェニル−ピリジン)の黒質内注入(これらは、PD症状の発生の原因である)が含まれる。神経保護は、ジスキネジーの予防に決定的な役割を有する。したがって、12週間の試験的試行の過程の間、本発明者らのCQ製剤(すなわち、CQ+脳を標的とする薬剤)の抗ジスキネジー効果が、その神経保護効果と同じくらい劇的であると明らかになったことを発見することは、全く満足であった。
【0128】
多くの神経治療候補物と同様に、CQの末梢効果、特に脱エチル化代謝産物によって発揮される効果は、本明細書中で記載された障害を処置するのに必要なCQの長期投与を防止するのに十分有害である。加えて、保存されるCQの構造的整合性は、CNSにおいてCQに最大の治療効果を発揮させるための、血液脳関門を越えてのCQの送達に必須である。S(+)CQ鏡像異性体(これは、CQの治療効果よりは、代謝産物の生成の原因となる)の分離によって、CQの長期安全性および耐性が改善された。さらに、R(−)CQと持続放出性の脳を標的とする薬剤および増強剤とを組み合わせることによって(これは、CQの吸収、および血液脳関門(BBB)を越えてのCQの送達を最大化する)、認可された量の半分より少ない量のラセミ混合物の投与でも、臨床的に有意な結果が達成され得る。
【0129】
神経保護剤は、ジスキネジーの予防に決定的な役割を有する。12週間の試験的試行の過程の間、本発明者らの最も単純なCQ製剤(すなわち、持続放出性CYP2D6/3A阻害剤+CQ)が、PDの症状を緩和し、レボドパ誘発性ジスキネジー(LID)/運動変動(MF)を改善し、そして実施例2に示されるように、併用するPD用薬剤の実施される量の有意な減少を許容することが発見された。
【0130】
薬物性運動障害(DID)は、パーキンソン病(PD)、統合失調症、および他のドパミン(DA)関連障害と診断された患者の、成功する有効な薬物治療学的処置を複雑にすることにより、医師に深刻な問題をもたらす。レボドパ(L−dopa)治療の過程の間、大多数の患者はMFおよび/もしくはLIDを発生するようになる。MFは、早発性パーキンソン病(PD)有する患者に頻繁に生じ;他方、LIDは一般に、重篤なPDの場合の早期に発現する。神経弛緩薬性悪性症候群(NMS)は、しばしば誤って、統合失調症および神経弛緩薬と関連付けられるが、やはりパーキンソン病患者に発症し、ドパミン作用量の減少、薬物の中止、および感受性患者における投薬間のドパミン作用の「減少」期間に続いて、最も頻繁に発現する。加えて、胚性被殻細胞移植を受けている患者の15〜30%が、L−dopa治療もしくはドパミン作用性薬物治療なしでさえも、「逃走性」ジスキネジーを発生することが、近年証明された。
【0131】
遅発性ジスキネジーおよびNMSは、フェノチアジンおよびデカン酸(例えば、ドパミンアンタゴニストであるハロペリドールおよびフルフェナジン)を含む「伝統的」抗精神病薬によって、促進される。伝統的抗精神病薬は、精神病の緩和に対して、より新しくより高価な非定型用薬剤よりも有効ではないとしても、同程度有効である。しかし、これらのより古い薬剤は、しばしばより多くの副作用をもたらし、そしてより高いジスキネジーのプロフィールを有する。遅発性ジスキネジーは、DAアンタゴニスト治療を開始して5年以内の患者の20〜25%に発現する。
【0132】
多動障害および運動低下障害は、ニューロパシーの特徴において、ある程度の類似性を共有する(それらはいずれも、基底核からの異常な出力に関与する)。TDおよびLIDは、多動障害であるとみなされる。両側の後腹側淡蒼球切断および視床切断のような外科的手順が、統合失調症およびPDを有する患者において、非難治性TDおよび無力性のLIDを処置するために、それぞれ使用されている。パーキンソン症候群および錐体外副作用(EPS)(この両者は、神経弛緩剤によって誘発される)は、運動低下障害であるとみなされる。これらの症状は、PDにおけるDA薬剤の増加によってか、または統合失調症患者によって服用されるDA拮抗薬剤の量の減少によって緩和され得る。
【0133】
L−dopaおよび代表的な神経弛緩薬の使用は、これらの2次的な運動障害の発現によって制限される。CQは、これらの変性機構を相殺し得る。本発明者らの試験的試行に見られたような、CQのDIDを改善する能力、およびCQの、これらの形成の基となる病理学的プロセスを相殺する能力は、CQを、これらの薬剤と組み合わせて使用するのに非常に所望される薬物とする。これらの治療法と組み合わせて及び/もしくは併用して与えられるCQは、それらのDIDプロフィールを減少させ、かつこれらのDA関連障害をうまく処置するための、それらの有効性および有用性を長期間延長する。加えてLIDは、続いて起こる、L−dopaの用量減少、および/もしくは高いジスキネジープロフィールのDAアゴニストの用量減少を解決することで知られている。L−dopaと相乗的に作用しかつ/または従来のPD薬剤中で働く投薬量の減少(本発明者らの臨床的試行における記録に先立ってLIDを経験する患者に生じる)を許容する薬剤による補充的なPD薬理学的治療は、現存のLIDをさらに改善させるように働く。
【0134】
CQは、NF−κB変性分子、IF−κBαの阻害剤であり、それは、NF−κBの抗アポトーシス転写活性、ならびにPD、TDおよび統合失調症の陰性症状において見られる神経変性を緩徐化および/もしくは停止させ得る、脳/グリア由来の神経栄養因子の活性を維持する。また、(R)CQは、DNAのグアニン含有塩基対に選択的に結合し、それを酸化性の損傷、DNAase、および断片化に対して抵抗性にさせ、それによって細胞のアポトーシスの発生を減少させる。加えて、PDにおける問題であり、かつTDおよび統合失調症の陰性症状の発生の原因となる酸化性のストレスに関して、(R)CQは、これらの病気の形成および進行の原因となる、神経メラニン(NM)、遊離鉄、細胞性の酸化剤、および他のフリーラジカルによって誘発される酸化性の損傷の予防に、最も効果的である。P450酵素阻害剤の使用は、TD症状を減弱するのに役立つCQの神経弛緩薬性のバイオアベイラビリティーを増強する。加えて、脳を標的とする薬剤としてのP450阻害剤の使用は、TDの発現を永続化させるという欠点なしに、神経弛緩薬として実施される用量の減少を許容する。
【0135】
DID(すなわち、LIDおよびTD)に関与するオピオイドペプチドは、間接の線条体淡蒼球経路における、中型の、D2レセプターを有するGABAニューロンに含有されるエンケファリン(ENK)、および、直接の線条体黒質経路において、中型で無突起の、GABA産生D1レセプターを有するニューロンで共発現されるジノルフィン(DYN)/サブスタンスP(Sub P)である。ENKデルタ(δ)およびミュー(μ)は、オピエートレセプターアゴニストであり;他方、DYNはδおよびμに結合するが、最も特異的にカッパ(κ)レセプターに結合する。CQは、強力なκおよびμオピエートレセプターアゴニストである。加えて、CQは、「標的に基づく(target based)」治療剤であり、線条体、黒質(SN)、視床、中脳、脳幹および小脳に、組み合わせた濃度比で、大脳皮質に対して99%対1%で蓄積し得る。ほとんどの薬剤は、標的を絞られた影響、もしくは解剖学的に特異的な影響よりはむしろ、全体的な影響を与える。このことは、多くの薬剤(これらは、局所的に投与される場合にはジスキネジーを減弱するために非常に有効であるが)を、全身性に投与された場合に有効でなくさせるか、または有害にさせる。
【0136】
上記で規定されたように、CQは、強力なκおよびμオピエートレセプターアゴニストである。今までは、ヒトでオピエートレセプターを操作することによってDIDを最小化させる努力は、ナルトレキソンおよびナロキソンの使用に限られていた(両者は、非特異的オピエートレセプターアンタゴニストである)。おそらく、これは、大脳皮質内の深くに存在するκレセプターのアゴニスト作用(agonism)が、鎮静、運動失調、および歩行運動(locomotion)の減少を促進するためである。しかし、CQは大脳皮質に蓄積しないため、皮質のκおよびμレセプターを作動させ得ない。
【0137】
PDにおいては、κの発現の増加が、高い興奮性アミノ酸(EEA)(すなわち、グルタミン酸)伝達領域(例えば、線条体および淡蒼球内側部(GPi))に見られる。GPiにおけるκのアゴニスト作用は、視床下部求心性線維からのグルタミン酸の放出を減少させ、これによって、運動低下傷害、PDの運動不能/運動症状、およびEPSを軽減させる。また、κアゴニストは、モノアミンの枯渇した哺乳動物において、歩行運動活動を増強する(これは、L−dopa/DAアゴニストと独立および相乗的である)。したがって、CQは、L−dopa/DAアゴニストが同様の反応を引き起こすのに必要な閾値用量を効果的に減少させる。DA L−Dopaアゴニストの用量を低めることは、LIDを効果的に改善する。
【0138】
線条体および大脳基底核のκおよびμレセプターは、CQによって(脳を標的とする薬剤/増強剤と組み合わせて、本明細書中で記載された投薬量で投与された場合)効果的に作動させられる。これは、低い治療学的投薬量でのL−dopa/DAアゴニスト効果を増強するように作用し、これによって、PDの運動症状を処置することに対するこれらの薬剤の有用性を延長する。これらの薬剤とCQとを組み合わせることによって、L−dopa/DAアゴニストの閾値用量を低めることは、LIDを軽減する。κ誘導性のシナプスのグルタミン酸放出阻害を介した、GPiにおけるEEA伝達を減弱するCQの能力は、PDおよびEPSのような運動低下傷害を軽減する。
【0139】
CQは、ドパミン作用性効果を及ぼし、そして穏やかな、DAの神経への再取り込み阻害剤として作用する。DA再取り込み阻害剤は、内因性DAのシナプスでのバイオアベイラビリティーを延長し、このことは、PD、EPS、LID、およびTDの症状の減少、ならびに統合失調症の陰性症状の処置に有用である。ほとんどのDA再取り込み阻害剤は、抗ジスキネジー効果を及ぼす;しかし、その副作用のため、それらは、しばしば患者にとって許容するのが困難である。本発明者らの臨床的結果は、CQが、良好な(well−being)および/もしくは減少したL−dopa効果を有する患者に関わらず、PD症状の軽減を促進し、かつ、有意な抗ジスキネジー効果を発生することを証明した。加えて、CQは、そのリソソーム親和性作用を介して、DAレセプターの内在化を妨害することなく、DAレセプターの再利用を阻害する。したがって、CQは、L−dopa処置の結果としてのDAレセプターの「感作」を軽減する。
【0140】
PDにおいては、皮質線条体および基底核におけるグルタミン酸(興奮性アミノ酸[EEA])のNMDAレセプターの刺激は、PDにおいては機能亢進しており、これは神経変性および運動機能不全をもたらす。グルタミン酸アンタゴニストの使用は、非特異的で「全体的」なNMDAのアンタゴニスト作用(antagonism)をもたらす副作用によって、制限される。これらの副作用としては、精神障害、運動失調、解離性の感覚脱失、およびL−dopa効果の減少が挙げられる。NMDAレセプター活性を阻害するより効果的な方法は、NMDA NR2AおよびNR2Bサブユニットを、特に線条体および基底核において、クロロキンで不活性化することである。
【0141】
クロロキンによるNR2AおよびNR2Bサブユニットの不活性化は、PDの運動低下系および多動性DID(例えば、LIDおよびTD)を緩和する。CQによるNR2AおよびNR2Bの不活性化によって行われる神経保護は、PDの進行を妨害し、そしてLID、TD、および統合失調症の陰性症状の基となる変性機構を干渉する。
【0142】
CQは、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)およびブチリルコリンエステラーゼ(BChE)を阻害し、そしてAChムスカリン性およびニコチン性アンタゴニストである。R−CQは、AChレセプターを不活性化するのに最も効果的である。抗コリン作用性(ムスカリン性)薬物は、PD症状を20%まで改善し、そしてしばしば、EPSを処置するために処方される。加えて、コリン作用性の過剰興奮は、PDおよび統合失調症において、神経変性の原因である。
【0143】
加えて、黒質緻密部(SNc)へのAChおよびグルタミン酸遠心性線維の過活動は、PDおよび進行性核上性麻痺(PSP)の両方で見られるDA細胞の消失の基となる。SNcのDAニューロンのAchおよびグルタミン酸刺激の抑制によって、CQは、SNc DA細胞の消失を緩徐化および防止し、そしてPDおよびPSPの両方で見られる運動欠乏の発現を緩徐化および防止する。
【0144】
用語「細胞呼吸の増加」とは、測定可能に増加する酸素消費、測定可能に増加する好気性の細胞呼吸、および測定可能に減少する嫌気性細胞呼吸(例えば、脳脊髄液中の乳酸によって測定される)を意味する。
【0145】
用語「黒質および基底核のドパミンニューロンの酸化性分解の減少」とは、当該分野で公知のアッセイ(遊離鉄イオン利用能、マロンジアルデヒド生成のような生成物による脂質の過酸化、および酸素化されたラジカル生成の測定が挙げられる)によって測定されるような分解を無視できない程に減少することを意味する。
【0146】
用語「パーキンソン病もしくは関連する状態の症状の緩和」とは、パーキンソン病もしくは関連する状態の少なくとも1つの症状(例えば、振せん、体位不均衡、硬直、運動緩徐、運動不能、歩行障害、およびオン/オフ変動)を、測定可能に減少、阻害、減弱および/もしくは補償することを意味する。これらの症状は、神経メラニン(NM)合成の間の有毒な代謝産物の生成、内在性および外在性の毒物のNMに対する親和性の増大、ミトコンドリアの機能障害、抗酸化剤のレベルの減少によって増強される酸化性ストレスの増加、タンパク質の酸化および脂質の過酸化、鉄含有物の増加および異常なFe(II)/Fe(III)比の増加、ならびに細胞外タンパク質ペプチドフラグメントの蓄積(これらの状態もまた、本発明の組成物によって緩和され得る)、から生じ得る。
【0147】
(−)CQを含有する本発明の組成物は、より多くの(−)CQ、または(+)CQよりもアジュバントと混合されたか、複合体化されたか、もしくは共有結合性に連結された(−)CQを多く有するより多くの(−)CQを有している。なぜならば、(+)CQの有毒な代謝産物が長期の使用に対してそれほど適切でなく、そして(−)CQのそのより良いメラニン結合特性、そのより長い半減期、およびより低いクリアランスが、長期間(例えば、少なくとも約6週間、より好ましくは、約2年、そして最も好ましくは、少なくとも10年以上)の投与についてその使用をより効果的にするからである。
【0148】
本発明の組成物の有効量は、測定可能な効果をもたらすのに必要な量である。例えば、細胞呼吸を増加させるための本発明の組成物の有効量は、上記で議論したような当該分野で公知のアッセイによって測定可能に、細胞呼吸を増加させる。(−)CQを含有する組成物において、この効果は(−)CQによってもたらされるか、または、一部は(−)CQによって、かつ一部は(+)CQによって、もたらされる。同様に、パーキンソン病の症状の進行を緩和もしくは停止させるための本発明の組成物の有効量は、当該分野で既知の試験(例えば、Unified Parkinson’s Disease Rating ScaleおよびTinetti Gait and Balance Assessment Tool、これらは、症状を有する処置患者の症状と、治療前および/もしくは治療後の同じ患者、またはパーキンソン病の同じステージの未処置患者の症状とを比較する)に基づいて、パーキンソン病の症状の進行をを緩和もしくは停止させる量である。
【0149】
パーキンソン病の症状の予防は、このような症状発生する危険のある患者を同定することを含む。パーキンソン病の発生が疑われる患者の同定は、遺伝子検査、家族の病歴からの予測、もしくはPET走査のような当該分野で公知の他の手段によって行われ得る。パーキンソンの症状が発生しない場合、もしくは予測される(平均)程度に発生しない場合、それらは、本発明の方法および組成物によって予防されたとみなされる。
【0150】
L−Dopaもしくは同様の薬剤で処置されている患者におけるオン−オフ症状を予防することは、このような薬剤で処置されている、パーキンソン病の同様のステージにある患者と比較されるような症状の、測定可能な停止または減少を意味する。
【0151】
本発明の組成物は、単独(neat)で処方され得るか、または投与のために、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、溶媒、希釈剤など)と組み合わせされ得、そして、錠剤、カプセル、散剤、顆粒、もしくは、例えば約0.05%〜5%の懸濁剤を含有する懸濁液、例えば約10%〜50%の糖を含有するシロップ、および例えば約20%〜50%のエタノールを含有するエリキシル剤などのような形態で、経口的に投与され得るか、または、無菌の注射用溶液、もしくは等張媒体中に約0.05%〜5%の懸濁剤を含有する懸濁液の形態で、非経口的に投与され得る。このような薬学的製剤は、例えば、約0.05%〜約90%までの活性成分を、キャリア(より一般的には約5重量%〜60重量%)と組み合わせて含有し得る。
【0152】
利用される活性成分の有効な投薬量は、利用される特定の混合物、投与のモード、および処置される状態の重症度に依存して変動し得る。しかし、一般に、本発明の活性成分が、約0.5〜約1000mgの1日成人投薬量で投与される場合に満足な結果が得られ、必要に応じて1日に2回〜4回の用量に分けて、または持続放出形態で与えられる。ほとんどの大型動物においては、総1日投薬量は、約1〜1000mgであり、好ましくは、約2〜500mgである。内服に適する投薬形態は、約0.5〜1000mgの活性化合物を、本質的(intimate)な混合物中に固体もしくは液体の薬学的に受容可能なキャリアとともに、含有する。この投薬レジメンは、最適な治療反応をもたらすように調整され得る。例えば、数回に分割された用量が毎日投与され得、または用量は、治療状況の緊急性によって示される状態に比例して減らされ得る。好ましくは、単回1日成人用量は、約1mMよりも少なく、そしてより好ましくは約0.5mMよりも少ない基本当量を含む。約100mg〜約200mg1日基本当量の活性成分投薬量が、特に、上記のような活性成分のバイオアベイラビリティーを増加させるアジュバントと組み合わせた状態で、使用され得る。
【0153】
本発明の組成物は、経口的に、および静脈内経路、筋肉内経路、もしくは皮下経路で投与され得る。活性成分の性質、および所望される特定の投与の形態に対して適切であるように、固体のキャリアとしては、でんぷん、乳糖、第ニリン酸カルシウム、微結晶性セルロース、ショ糖、およびカオリンが挙げられ、他方液体のキャリアとしては、無菌水、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、および食用油(例えば、コーン油、ピーナッツ油、およびごま油)が挙げられる。習慣的に薬学的組成物の調製に利用されるアジュバントは、香料添加剤、着色剤、保存剤、および抗酸化剤(例えば、ビタミンE、アスコルビン酸、BHTおよびBHA)のような薬剤を、有効に含み得る。
【0154】
調製および投与の簡便性という観点から好ましい薬学的組成物は、固体の組成物、特に錠剤、および硬い物質が充填された(hard−filled)かもしくは液体が充填されたカプセルである。この組成物の経口投与が好ましい。上記の持続放出性製剤が、本明細書中で教えられたような多くの場合に所望される。いくつかの場合においては、エアロゾルの形態で、患者の気道に化合物を投与することが所望され得る。
【0155】
本発明の化合物はまた、非経口的もしくは腹腔内に投与され得る。これらの活性化合物の溶液および懸濁液は、遊離塩基もしくは薬学的に受容可能な塩として、界面活性剤(例えば、ヒドロキシ−プロピルセルロース)と適切に混合された水の中に調製され得る。分散剤もまた、グリセロール中、液体ポリエチレングリコール中、および油中でのそれらの混合物中に調製され得る。通常の保存および使用状態において、これらの製剤は、微生物の増殖を防ぐため保存剤を含有する。
【0156】
注射用の使用に適切な薬学的形態は、無菌の注射用溶液、もしくは散剤の即時調製のため、無菌の水性溶液、もしくは、分散剤および無菌の粉末を含む。全ての場合において、この形態は無菌でなければならず、かつ容易にシリンジで利用可能であるという点において、流体でなければならない。これは、製造および保存の状態で安定でなければならず、かつ微生物(例えば、細菌や真菌類)の汚染作用に対して保存されなければならない。このキャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒もしくは分散媒体であり得る。
【0157】
「適切な薬学的キャリア」とは、本明細書中において使用される場合、蒸留水および薬学的グレードの水を含むが、ヒト患者への投与に適さない水および緩衝液を含まない。
【0158】
神経メラニンが、スーパーオキシドラジカルおよびヒドロキシラジカル(これは脂質の過酸化、およびニューロンの呼吸の中断をもたらし、そして好気性呼吸を介してニューロンが利用可能なエネルギーの量を減少させるNADHの酸化を触媒する)を含む毒性の生成物の生成の原因となることによって、パーキンソン病の症状の原因となり得る、いくつかの機構がある。
【0159】
神経メラニンは、カテコールアミン分解の廃棄物とみなされ得、カテコールアミンニューロンの細胞質内に、その生存期間を通じて徐々に蓄積する。ドパミンは自己酸化され、細胞毒性のある、反応性に酸素化された種(例えば、6−ヒドロキシドパミン(6−OHDA)およびセミキノンラジカル)になる。低グルタチオンレベルは、パーキンソン病における酸化性ストレスの原因となり、利用可能な過酸化水素に、高い毒性のあるスーパーオキシドラジカルおよびヒドロキシラジカル種、ならびにセミキノンラジカルへとさらに鉄によって触媒される。ドパミンおよびL−DOPAとスーパーオキシドラジカルとの相互作用は、グルタチオンの枯渇を増強させ、有害な反応の下方スパイラルをもたらす。
【0160】
モノアミンオキシダーゼは、多くの物質(例えば、β−カルボリン誘導体およびテトラヒドロイソキノリン、これらはパーキンソン病の人々の脳脊髄液中に過剰量存在する)から毒性代謝産物を形成する。これらの毒性代謝産物は、神経メラニンと高い親和性を有し、一度結合するとATPの生成のほぼ完全な停止を引き起こし得、そして呼吸の減少、ニューロンが利用可能なエネルギーの損失、およびパーキンソン病の症状を引き起こす、大量のメラニン沈着された細胞の損失をもたらす。デプレニルのようなモノアミンオキシダーゼBの阻害剤は、これらの毒性代謝産物の生成を防止する。鉄もまた、神経メラニンに結合する傾向にあり、病原性反応のカスケードをもたらし、神経細胞死を引き起こす。基底核における鉄濃度の増加は、通常の加齢とともに、パーキンソン病を有する患者において観察され、鉄は、高い三価鉄/ニ価鉄比とともに病的に上昇する。三価鉄は、6−OHDAとともに、有害なスーパーオキシドラジカルおよびヒドロキシラジカルの形成の原因となり、脂質の過酸化および細胞の分解を引き起こす。
【0161】
鉄キレート剤は、6−OHDAによるNADHデヒドロゲナーゼ阻害によって引き起こされたミトコンドリア呼吸の障害を逆転させることを示した。6−OHDAは、細胞内貯蔵フェリチンからの鉄の放出を触媒し、次にこれは脂質の過酸化を触媒する。この事象の毒性連鎖は、スーパーオキシドジスムターゼによって阻害され得る。鉄キレート剤およびリン酸クロロキンの両方が、遊離鉄の利用能を制限すること、それによって遊離鉄がこれらの毒性反応を触媒するために利用し得ないことが分かった。
【0162】
鉄輸送タンパク質、ジフェリック(diferric)トランスフェリン(これは全身に鉄を送達する)もまた、減少したNADHの利用能を干渉することによって、ニューロンの利用可能なエネルギーの損失の原因となる。リン酸クロロキンが、メラニンによるNADHの細胞内酸化を阻害することが分かった。
【0163】
クロロキンリン酸は神経メラニンに結合するが、生物学的に必須の化合物内への鉄の酵素合成を阻害しない。これは、ニューロン内への鉄の組み込みを防止するだけでなく、細胞内鉄貯蔵所からの鉄の放出もまた阻害する。加えて、リン酸クロロキンが、アルツハイマー病の原因となる脳内の細胞外タンパク質堆積物の蓄積に対する、星状細胞の免疫反応を増強することが分かった。
【0164】
クロロキンの(−)異性体は、ラセミ体のクロロキンよりも有効な神経メラニン結合剤でさえある、なぜならクロロキンの(−)異性体はより末梢でないところで分解し、より長い半減期、およびより低いクリアランスを有し、そして、そのために血液脳関門を通過するのにより利用可能であり、かつDNAへの安定化効果を有するためである。したがって、これは本発明における使用に好ましい。
【実施例】
【0165】
(実施例1)
リン酸クロロキンの鏡像異性体を、Stalcup,A.M.ら(1996),Analytical Chemistry 68:2248−50、の手順に従って、単離した。ジアミンオキシダーゼを阻害する能力、および神経メラニンに結合する能力に関する、これらの鏡像異性体の比較をインビトロで実施する。結果は、両方のアッセイにおける、活性鏡像異性体の、ジアミンオキシダーゼを阻害する能力および神経メラニンに結合する能力の有意な増強を示す。
【0166】
(実施例2)
特発性パーキンソン病(IPD)および症候性パーキンソン障害の診断を有する成人における運動障害の処置に対する、CQおよびCQ鏡像異性体(試験化合物)の安全性および耐性を評価するため、単一被験体内での、非盲検の、試験的研究を実施した。機能的な「オン」および「オフ」評価は、評価の処置前、処置中、および処置後2週間の良好な変化に関して、Unified Parkinson’s Disease Rating Scale、および時限タッピング試験を用いて行った。処置期間では、8週までの反応の安全性および耐久性を評価した。初期の処置前2週間では、各参加者のベースラインの神経生理学的測定基準および良好さ(well−being)の測定基準を設定した。最終評価は2週間の中断期間の後に行われ、症状の回復について各参加者を評価した。
【0167】
PDのステージI〜IIIの確定診断を有する30〜75歳の成人は、処置の最初の1週間、試験薬剤の逆滴定を受けた。この後、155mg/日の維持用量を1日1回、夕食時に服用した。
【0168】
初期の24時間の処置期間、被験体に、155mgの試験薬物を4回/日服用するように指示した。研究2日目および3日目には、被験体に、155mgの試験薬物を3回/日服用するように指示した。研究4日目、5日目および6日目には、被験体に、155mgの試験薬物を2回/日服用するように指示した。研究7日目には、被験体に、155mgの試験薬物を、毎日その日の最後の食事とともに服用するように指示した。研究10日目には、医師は、処置期間中に被験体のその日の最後の食事とともに毎夕服用する、最終的な維持用量を決定した。維持用量は、155mgの試験薬物/日を続けるか、またはより低用量もしくはより高用量に調整した(例えば、被験体が改善を示していたが、胃腸もしくは他の不快感を有していた場合、100mgに下がる)。被験体が症状の軽減を経験しなかった場合は、この用量を200mg/日もしくは255mg/日まで増加した。
【0169】
上記の、もしくは同様の測定手段における処置前(ベースライン)スコアの改善、および/または、薬剤中断期間に続く機能およびスコア値の低下を、評価に使用した。研究の各来診の間、被験体での有害現象の発生を調べた。処置前スクリーニング、ならびに処置期間10日目、28日目、および56日目において、実験評価(化学的および血液学的プロフィール)を実施し、そしてまた、処置後2週間の間に、評価を終了した。
【0170】
初期の処置前2週間の評価期間に、処置前(ベースライン)測定を行った。各患者のベースラインの神経生理学的測定値および健康さの測定値を決定するため、処置前スコアを平均した。2つの別個の神経生理学的評価および健康さの評価を、処置10日目および56日目に行った。処置56日目に行われた神経生理学的評価および健康さの評価の直後に、薬剤を中止した。患者は、完全な身体検査を含む追加の終了問診を受け、そして実験的処置の2週間後に実験評価を打ち切った。
【0171】
2週間の処置前期間で得たベースラインスコアを、処置10日目および56日目の間に得たスコアと比較し、処置期間を通じた患者の状態のあらゆる変化を決定した。最後の処置後2週間の評価は、健康な患者の決定のため、および、この研究の薬剤適用期間の間に減少させた、患者の併用PD薬剤の投薬量を増加するためであった。処置前および薬剤適用中からの運動症状の改善、および改善した健康さを評価した。p値0.05を用いての試験前状態から試験後状態へのスコアの差のt検定を用いて、被験体内での改善を分析した。性別、人種、および年齢の下位群に従って、処置群ごとに変動をまとめた。
【0172】
処置前評価から処置7日目、14日目、28日目、42日目、および56日目への、各臨床徴候および症状の変化を、処置群ごとにまとめた。非常にかつ臨床的に有意な、生体反応データのベースラインからの実験値および平均の変化を、両処置群内でまとめた。処置後に症状の解決/改善する時間もまた、まとめた。被験体の満足度データおよびアンケートから集めた被験体の症状もまた、処置群ごとにまとめ、分析した。3%の有害現象率に基づき、使用する処置群の大きさは、p値0.05(両側検定)有意水準での有意差の検出に対しておよそ80%の検出力を提供した。
【0173】
処置中および処置後の両方で、有意な症状の改善および症状の進行停止を観察した。
【0174】
予備的臨床研究は、以下の結果をもたらした:
(多症状性萎縮症(MSA)に対するクロロキンニリン酸の使用)
(プロトコール#PD/CQ症例#1(MSA))
【0175】
【表1】

症例#1は、多症状性萎縮症(MSA)の確定診断を有し、CQ+脳を標的とする薬剤(BTA;シメチジン)を投与される第1の患者である。ベースラインと処置14日目との間で、時限タッピングおよびUPDRSスケールスコアの両方において、運動の改善が見られた。薬剤適用35日目の来診において、患者は、前の10日間でのすくみ(すなわち、オフ時間)の減少、および集中力の増加を報告した。この患者の言語療法士および理学療法士は(両者とは隔週で会う)、言語および運動範囲におけるそれぞれの改善を報告した。しかし、35日目の来診の後、プロトコールの違反が生じ、この患者の記録は不適格とされた。
【0176】
(パーキンソンプラス症候群に対するクロロキンニリン酸の使用)
(プロトコール#PD/CQ症例#2(同時に痴呆を伴うパーキンソン病))
【0177】
【表2】

症例#2は、進行性の認識機能の後退(Mini−Mental State Exam スコア24、痴呆≦24)のあるパーキンソン病のステージIIIの確定診断を有する患者を記録した。症例#1と同様に、この患者は、CQ+BTA服用の間、認識および記憶の劇的な改善を有するように見えた。CQの中断から2週間後、この患者およびその妻は、「単語想起」の困難の再発、ならびに集中力および記憶の両方の有意な減少を報告した。この患者は、中断の1週間後にCQ+BTAの服用に戻し、そしてこれを再開することを要求した。
【0178】
2つの特性が、CQを、記憶および認識機能の改善に有望な薬剤としている。1つは、CQ(特に、(+)CQ鏡像異性体)が、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChE)であって、脳内のAChレベル(記憶の神経伝達物質)を増加させることである。このことが患者の記憶および認識機能を増大させる原因となり得ている一方で、AChはまた、パーキンソン病の総体的症状の原因となることが知られている。時限タッピング(tt)およびUPDRS評価において観察されるように、有意な「運動機能」の改善があるように見える。認識の改善に関する2番目の理由は、患者がCQを服用した間に、脳組織の酸素化が増大された結果であった。CQおよびヒドロキシクロロキン(HCQ)は、両方とも、生理学的pHの変化によって促進されるボーア移動(Bohr shift)の機構を介して、赤血球細胞(RBC)のO吸収および送達を増加することが知られている薬剤である。
【0179】
(認識症状の減少を含む非定型パーキンソン病(APD)に対するクロロキンニリン酸の使用)
(プロトコール#CQ/PD症例#3(非定型パーキンソン障害))
【0180】
【表3】

症例#3は、本研究の1年前未満にパーキンソン症候群と診断された。外部の患者記録のレビューは、この患者が、非定型パーキンソン障害を有することを示唆する。加えて、本研究に受け入れる前には、有意なレボドパ反応がなかった。実際、この患者は、シネメットとCQ+BTAとの共投与に関する指示に従うことに後に失敗し、パーキンソン症状の悪化が全くない状態で、全ての他の抗パーキンソン薬剤適用を約10日間停止した。この患者が特発性形態のパーキンソン病を有さないことは、有意な徴候である。
【0181】
症例#3では、処置14日目のUPDRS機能のオフ/オン評価を11−21−01に行った。患者は、CQ+BTAの服用を開始する2週間前にシネメットの服用を誤って中断してしまってさえ、順調であった。患者は、シネメットCR50/100を3回/日、およびシネメット10/100を1日2回再び服用することを指示された。処置35日目の来診において、有害な現象もしくは運動の改善は記録されなかったが、患者は、精神活動のわずかな(sight)増加を報告した。35日目の来診後、患者は、150mg/日から200mg/日に増加した用量のCQを与えられた。処置56日目までに、患者は、CQの容量の増加のために「生き返った」と報告した。彼は、精神の明瞭さの増大および可動性の向上を報告し、これは理学療法士および作業療法士によって確認された。患者は、評価のための来診終了直後に、CQ200mg/日+BTA400mg/日の服用を元通りにして再開することを要求した。本研究のおよそ15日後、患者は安定性の減少を報告し、本研究の薬物の服用を再開するよう求めた。
【0182】
(ドパミンアゴニスト投薬量を減少させるためのクロロキンニリン酸の使用)
(プロトコール#CQ/PD#4(パーキンソン病))
【0183】
【表4】

症例#4では、本研究後、低用量の抗パーキンソン薬剤適用を患者は維持し続けた。本研究終了のおよそ20日後、この患者は、抗パーキンソン薬剤適用の増加の必要性を報告し、本研究の薬物を続けることを求めた。この患者のレボドパ誘発性ジスキネジーは改善した。この患者は、結果として、本研究の薬剤適用を開始する前よりも機能的に向上したと感じ、そしてほとんどジスキネジーがないことを報告した。
【0184】
処置後2週間に、患者は、感情が良好であること、しかしジスキネジーのわずかな増加を経験していることを報告した。1度クロロキンニリン酸で安定化されると、この患者は、毎日の併用するパーキンソン薬剤適用の投薬量を、研究前の投薬量のおよそ2/3に減少させ得た。クロロキンニリン酸の中断のおよそ19日後、この患者は、その服用を再開することへの強い所望を表明した。薬剤投与期間中におけるこの患者の最大の利益は、制御不能のジスキネジーの減少であった。
【0185】
この患者の、中断後の症状の再出現は、クロロキンニリン酸の薬理学的な平均滞在時間(MRT)および半減期と一致する。予期されるように、クロロキンニリン酸は、細胞呼吸を増加させ、これによって線条体中でのDAの合成、貯蔵、および放出を増加させた。本発明者らは、神経保護効果を及ぼすことによって、ならびに、動物モデルおいての、ドパミン(DA)関連の行動上の効果を促進することにおける、その明らかなL−Dopaおよびドパミン作用性薬剤との相乗作用の両方によって、クロロキンニリン酸がL−Dopaの有用性および有効性を延長したという仮説を立てている。研究結果は、この仮説を支持する。
【0186】
(プロトコール#CQ/PD#5(パーキンソン病))
【0187】
【表5】

症例#5の抗パーキンソン薬剤適用は、クロロキンニリン酸の投与によるジスキネジーの増加のため、適切に減少された。この抗パーキンソン薬剤適用は、その後変化していなかった。UPDRS ADLのオンおよびオフスコアはある程度改善し、かつUPDRSオフスコアが改善された(オンスコアは改善されなかった)、そして時限タッピングスコアの改善が伴った、これら全ては、この患者が、クロロキンニリン酸の投与によって有意に改善したことを示唆する。
【0188】
この患者は本研究の薬剤適用に非常に耐性があるように見え、かつ薬剤適用期間7日目まででさえ、有意に反応するように見えた。ジスキネジーの増加に起因して、処置10日目において、この患者は併用するシネメットの投薬量を、スクリーニング来診時に要求された投薬量の1/3に減らした。ベースライン(処置前)におけるこの患者の「オフ」薬剤適用UPDRS評価では、患者は車椅子を必要とした。処置14日目において、患者は、歩行器を使用して「オフ」薬剤適用評価に現れ得た。処置35日目までに、患者はすくみを有することがより少ないこと、中断の影響のないこと、および1日を通じてより「一様」であることを報告した。患者は起き上がることができ、夜にバスルームを使用することができた、このことで、患者は移動式便器の使用をやめることができた。しかし、本研究の薬剤適用の中断から2週間後、この患者は、ベッドサイドの移動式便器の使用に再び頼る必要があり、そして不安定さの増大の経験を報告した。患者は、本研究の薬剤適用の再開に対する所望を表明し、そして再開した。
【0189】
(パーキンソン病の認識症状を減少させるためのクロロキンニリン酸の使用)
(プロトコールCQ/PD#6(パーキンソン病))
【0190】
【表6】

症例#6におけるアルタリン投薬量は、おそらく患者の服薬遵守に関連して不定であった。クロロキンニリン酸の投薬量は、不定であり、200mgまでも増加し、次いで175mgに減少した。ベースラインと比較した「オン」および「オフ」状態についての運動のUPDRSスコアにおいて優位な変化があったが、しかし時限タッピングスコアにおいてはわずかな変化しかなかった。結果として、この患者は、本研究の薬剤適用によってわずかに改善したようであった。
【0191】
この患者は、本研究を通じて、中程度から重度の悪心を有するように見えた。本研究の薬剤適用中断後19日後、この患者は、可動性が減少したと報告し、よりゆっくり歩き、そして一度に複数の課題を行うことができなかった。この患者は、「この薬剤が自分を助けていたとは考えていなかった(すなわち、本研究の薬剤適用期間には)が、今はそう考えている」と述べた。この患者は、本研究の薬剤適用の再開に対する強い所望を表明した。
【0192】
この患者は、本研究の薬剤適用を服用している間、気分が良くなり、より良く動作したことを表明した。患者は、本研究の薬剤適用の中断の後に悪心が解消しなかったことを報告した。患者は、本研究の薬剤適用が悪心の原因であったと考えていたが、しかし今は、併用する薬剤適用を変更することが必要かもしれないと考えていると述べた。本研究のおよそ20日後、この患者は、パーキンソン症状の増加、振せんの増加、および歩行の緩徐化を報告した。
【0193】
多症状性萎縮症の場合(症例#1)、パーキンソンプラス症候群(症例#2)、および/もしくは他の非L−dopa反応性非定型パーキンソン障害(症例#3)において、特発性パーキンソン病を処置するのに要求される投薬量と同様の投薬量で投与される場合、クロロキンニリン酸をBTAとともに含有する組成物は、認識を有効に改善するため、運動症状を緩和するため、およびこれらの障害の進行を減弱するために使用され得る。1人の患者は、多症状性萎縮症(MSA)の確定診断を有した。別の患者は、2回の別個の胎性細胞の移植処置を受けた(1988年および1995年);さらに、無力性のジスキネジーと記録され、そして「ほぼ完全にジスキネジーのない状態」で、本研究を終了した。別の患者は、新たに診断され、L−dopa未処置であった;他方、2人の他の患者は、PDプラスの診断を有した。1人の患者は不正確に薬剤適用し、そのため処置35日目後まで臨床的改善を経験せず、その後「生き返った」という報告をした。別の患者は、処置14日目には非常に順調であり;しかし、主要な研究者が不在の状態で代理の医師によって始められた禁忌の用量増加の後、本研究の薬物に対して耐性がなくなった。3人の患者は特発性PD(IPD)の確定診断を有した。3人全ては、PD症状の有意な軽減およびMFの減弱を経験した。
【0194】
処置期間2〜3週間の研究の薬剤適用の洗い流し期間の後、併用するPD薬剤適用に対して生じた減少を有した患者は、彼らの最初の処置前ベースラインレベルへと戻る投薬量の増加を必要とする症状の再発を経験し始めた。
【0195】
このことは、CQの薬物動態学的な特性と非常によく対応する。共同もしくは単独で、両方のCQ鏡像異性体は、異常に長い半減期(t1/2)および平均滞在時間(MRT)を有する:例えば、L−dopa:t1/2λz=50分、またはシネメット:t1/2λz=90分と比較して、(R)519−t1/2λz=294時間、MRT=388時間;(S)519−t1/2λz=236時間、MRT=372時間)。洗い流しに続いて、5人の参加者は、本研究の薬物適用の服用を再開することを要求した。本発明者らの最後のアップデートの時点で、これらの患者はまだラセミCQ+BTAを服用しており、彼らは「安定」(すなわち、抗ジスキネジー)なままでおり、そして16ヶ月以上の間順調であり続けた。
【0196】
本研究の結果は、CQと種々の他のパーキンソン薬物適用との相乗的相互作用を示す。本研究のプロトコールに記録された患者は、CQ+BTAを服用していた間に運動変動の減弱、「すくみ」の減少、および「オフ」時間の有意な減少を経験したことを報告した。併用するパーキンソン病への薬剤適用において生じた何らかの非常に劇的な減少に続いて、これらの改善が発現、および持続したと報告されたことが、明らかに考察される。
【0197】
本発明は、特別な条件で記載されたが、これは、本発明書における記載を制限するためのものではなく、添付の特許請求の範囲の全ての範囲およびそれに相当する全てを提供するためのものである。例えば、当該分野で公知のキノリン環構造体を含有する他の神経メラニン結合化合物および複合体は、特別に記載されたものと同等であり、またバイオアベイラビリティー、血液脳関門の通過、生物学的半減期、および他の所望の特性を増強させるための、組成物の他の改変についても同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの細胞呼吸を増加させるために有用な組成物であって、該組成物は活性成分を含有し、該活性成分は、以下:
7−クロロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン(クロロキン);7−フルオロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン(デスメチルクロロキン);7−フルオロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン(ヒドロキシクロロキン);7−フルオロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン7−ヒドロキシ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;リン酸ヒドロキシクロロキン;7−クロロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン(デスメチルヒドロキシクロロキン);7−フルオロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;8−[(4−アミノペンチル)アミノ)−6−メトキシジヒドロクロライドキノリン;1−アセチルー1,2,3,4−テトラヒドロキノリン;8−[4−アミノペンチル)アミノ]−6−メトキシキノリンジヒドロクロライド;1−ブチリル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン;3−クロロ−4−(4−ヒドロキシ−α,α’−ビス(2−メチル−1−ピロリジニル)−2,5−キシリジノキノリン、4−[(4−ジエチルアミノ)−1−メチルブチル)アミノ]−6−メトキシキノリン;3−フルオロ−4−(4−ヒドロキシ−α,α’−ビス(2−メチル−1−ピロリジニル)−2,5−キシリジノキノリン、4−[(4−ジエチルアミノ)−1−メチルブチル)アミノ]−6−メトキシキノリン;4−(4−ヒドロキシ−α,α’−ビス(2−メチル−1−ピロリジニル)−2,5−キシリジノキノリン、4−[(4−ジエチルアミノ)−1−メチルブチル)アミノ]−6−メトキシキノリン;3,4−ジヒドロ−1−(2H)−キノリンカルボキシアルデヒド;1,1’−ペンタメチレンジキノレイニウムジヨージド;ならびに8−キノリノール硫酸塩、ラセミ混合物、ならびにそれらの鏡像異性体、それらのリン酸塩および他の適切な薬物塩、ならびにそれらの混合物、
からなる群から選択される化合物であって、該化合物は、アジュバントと共有結合性に連結されるか、複合されるか、もしくは混合される、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記活性成分が以下:クロロキン、リン酸クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ならびに、アジュバントと共有結合性と連結されるか、混合されるか、もしくは複合されるそれらのラセミ混合物および鏡像異性体、それらの受容可能な薬物塩、および以上の混合物、からなる群から選択され、該活性成分および該アジュバントが、メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの呼吸を増加させるのに有効な量で存在する、組成物。
【請求項3】
前記活性成分が、約100mg〜約500mgの間の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性成分が、約100mg〜約200mgの間の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アジュバントが、末梢膜の保護剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記アジュバントが、網膜保護剤である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、持続放出性製剤の形態で提供され、かつ前記末梢保護剤が、前記活性成分と複合されないか、または共有結合性に結合しない、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記末梢保護剤が、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびリン酸カルシウム、からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記末梢保護剤が、ビタミンDをまた含有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
カルシウムイオンが約1000mg〜約2000mgの間の量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
ビタミンDが約700IU〜約900IUの間の量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記末梢保護剤を、前記活性成分の放出に約1.5時間〜約3時間先立って放出するように設計される、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記アジュバントが、前記活性成分の末梢代謝を阻害する末梢代謝阻害剤である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記末梢代謝阻害剤が、チトクロームP450 2D6酵素および/もしくはチトクロームP450 3A酵素の阻害剤である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記末梢代謝阻害剤が、以下:アミオダロン、セレコキシブ、クロルフェニラミン、シメチジン、クロミプラミン、フルオキセチン、レボメプロマジン、メトクロプラミド、ミベフラジル、モクロベミド、パロキセチン、キニジン、ラニチジン、リトナビル、セルトラリン、テルビナフィン、ラセミ混合物および鏡像異性体、ならびに以上の受容可能な薬物塩、からなる群から選択される、チトクローム(CYP)2D6酵素阻害剤である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記末梢代謝阻害剤が、以下:デラビルジン、インジナビル、ネルフィナビル、サキナビル、アミオダロン、シメチジン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、ジエチル−ジチオカルバミン酸塩、ジルチアゼム、エリスロマイシン、フルコナゾール、フルボキサミン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミフェプリストン、ネファゾドン、ミフェプリストン、ノルフロキサシン、ノルフロキセチン、ラセミ混合物および鏡像異性体、ならびに以上の受容可能な薬物塩、からなる群から選択される、チトクロームP450 3A酵素阻害剤である、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記末梢代謝阻害剤が、アミオダロン、シメチジン、ラセミ混合物および鏡像異性体、ならびに以上の受容可能な薬物塩、からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
末梢保護剤をまた含有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
持続放出性製剤の形態である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記末梢代謝阻害剤を、前記末梢保護剤の約1.5時間〜約2時間後、および前記活性成分の約1時間前に放出するように設計される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記アジュバントが増強剤である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記増強剤が、ヒスタミンHレセプターアンタゴニストである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記増強剤が、第1世代ヒスタミンHレセプターアンタゴニストである、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記第1世代ヒスタミンHレセプターアンタゴニストが、以下:マレイン酸カルビノキサミン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリネート、マレイン酸ピリラミン、トリペレナミン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸ブロムフェニルアミン、塩酸ヒドロキシジン、ヒドロキシジンパモエート、塩酸シクリジン、乳酸シクリジン、塩酸メクリジン、塩酸プロメタジン、ならびにラセミ混合物および鏡像異性体、ならびに以上の治療学的部分の受容可能な薬物塩、からなる群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
持続放出性製剤の形態である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記活性成分とほぼ同時に、前記第1世代ヒスタミンHレセプターを放出するように設計される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記増強剤が、第2世代ヒスタミンHレセプターアンタゴニストである、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
前記第2世代ヒスタミンHレセプターアンタゴニストが、以下:アクリバスチン、塩酸セチリジン、アステミゾール、ロラタジン、テルフェナジン、ラセミ混合物および鏡像異性体、ならびに以上の治療学的部分の適切な薬物塩、からなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
持続放出性製剤の形態である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記活性成分とほぼ同時に、前記第2世代ヒスタミンHレセプターを放出するように設計される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記活性成分が、ラクトトランスフェリン抗体に共有結合性に連結される、請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記活性成分が、それらの(−)鏡像異性体である、請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記活性成分が、有効量の、それらの(−)鏡像異性体、およびより少量の、それらの(+)鏡像異性体から本質的に構成される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記(+)鏡像異性体が、該(+)鏡像異性体および前記(−)鏡像異性体の総量の約0%〜約20%である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記活性成分が、クロロキンである、請求項1〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記活性成分が、リン酸クロロキンである、請求項1〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
前記活性成分が、ヒドロキシクロロキンである、請求項1〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記活性成分が、脂肪親和性成分に共有結合性に連結される、請求項1〜37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
前記アジュバントが、前記活性成分以外の神経保護化合物、ドパミンおよびドパミンアゴニスト、ならびにフリーラジカル脱活化剤からなる群から選択される、請求項1〜38のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
前記活性成分の前記ドパミンもしくはドパミンアゴニストに対する比率が、約5:95〜約25:75である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記アジュバントが、以下:プロブコール、ピクノゲノール、ビタミンC、ビタミンE、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、メラトニン、およびスーパーオキシドジスムターゼ、からなる群から選択される抗酸化剤である、請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
請求項1に記載の、メラニン沈着されたカテコールアミンニューロンの細胞呼吸を増加させるために有用な薬学的組成物を生成する方法であって、該方法は、以下:
(a)活性成分として、神経メラニン結合剤を提供する工程;
(b)該活性成分のアジュバントを提供する工程;
(c)適切な薬学的キャリアを提供する工程;ならびに、
(d)該活性成分と該アジュバントとを混合するか、複合するか、もしくは共有結合性に結合し、そして該活性成分および該アジュバントと該薬学的キャリアとを配合する工程、
を包含する、方法。
【請求項43】
前記活性成分が、クロロキン、リン酸クロロキン、ヒドロキシクロロキン、鏡像異性体、ラセミ混合物、およびそれらの適切な薬物塩からなる群の化合物から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記アジュバントが、脳を標的とする薬剤、末梢膜保護剤、末梢代謝阻害剤、増強剤、ラセミ混合物、鏡像異性体、およびそれらの受容可能な薬物塩、ならびに以上の混合物;からなる群から選択される、請求項42もしくは43に記載の方法。
【請求項45】
特発性パーキンソン病、パーキンソン病に関連する多症状性萎縮症、パーキンソンプラス症候群、非定型パーキンソン障害、パーキンソン病の認識症状、ドパミンもしくはドパミンアゴニストによる処置に関連するオン−オフ症状、脈管性パーキンソン病、薬物性ジスキネジー、遅発性ジスキネジー、運動変動、神経弛緩薬性悪性症候群、および統合失調症の陰性症状からなる群から選択される状態の処置のための方法であって、該方法が、患者へ、有効なレジメンおよび有効量で、請求項1〜41のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項46】
特発性パーキンソン病、パーキンソン病に関連する多症状性萎縮症、パーキンソンプラス症候群、非定型パーキンソン症候群の障害、パーキンソン病の認識症状、ドパミンもしくはドパミンアゴニストによる処置に関連するオン−オフ症状、脈管性パーキンソン病、薬物性ジスキネジー、遅発性ジスキネジー、運動変動、神経弛緩薬性悪性症候群、および統合失調症の陰性症状からなる群から選択される状態を被る患者を処置するために使用されるドパミンもしくはドパミンアゴニストの量を減少させる方法であって、該方法が、該患者へ、有効なレジメンおよび有効量で、請求項1〜41のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項47】
統合失調症の陰性症状を被る患者における統合失調症の陰性症状を引き起こす酸化性のストレスを阻害するための方法であって、該方法が、該患者へ、有効なレジメンおよび有効量で、請求項1〜41のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項48】
メラニン沈着されたカテーテルコールアミンニューロンのアポトーシスを、該ニューロンの変性状態を被る患者において減少させるための方法であって、該方法が、該患者へ、有効なレジメンおよび有効量で、請求項1〜41のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項49】
線条体の神経変性によって特徴付けられる状態を被る患者の黒質、線条体および/もしくは淡蒼球におけるグリア由来神経栄養因子(GDNF)を選択的に増加させるための方法であって、該方法が、該患者へ、有効なレジメンおよび有効量で、請求項1〜41のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項50】
視床の機能亢進に関連する状態を有する患者における視床の機能亢進を減少させるための方法であって、該方法が、該患者へ、有効なレジメンおよび有効量で、請求項1〜41のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項51】
パーキンソン病、パーキンソンプラス症候群、非定型パーキンソン障害、ドパミンもしくはドパミンアゴニストによる処置に関連するオン−オフ症状、黒質線条体の変性によって特徴付けられる状態、脈管性パーキンソン病、治療薬の長期使用から生じる遅発性ジスキネジー、運動障害を処置するためのドパミンアゴニストの使用に関連する運動変動、および統合失調症の陰性症状からなる群から選択される状態を処置する方法であって、該方法は、このような処置を必要とする患者へ、以下:
7−クロロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン(クロロキン);7−フルオロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン(デスメチルクロロキン);7−フルオロ−4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−ジエチルアミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン(ヒドロキシクロロキン);7−フルオロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン7−ヒドロキシ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;リン酸ヒドロキシクロロキン;7−クロロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン(デスメチルヒドロキシクロロキン);7−フルオロ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ブチルアミノ)キノリン;7−クロロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−フルオロ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;7−ヒドロキシ−4−(1−カルボキシ−4−エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1−メチルブチルアミノ)キノリン;8−[(4−アミノペンチル)アミノ)−6−メトキシジヒドロクロライドキノリン;1−アセチルー1,2,3,4−テトラヒドロキノリン;8−[4−アミノペンチル)アミノ]−6−メトキシキノリンジヒドロクロライド;1−ブチリル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン;3−クロロ−4−(4−ヒドロキシ−α,α’−ビス(2−メチル−1−ピロリジニル)−2,5−キシリジノキノリン、4−[(4−ジエチルアミノ)−1−メチルブチル)アミノ]−6−メトキシキノリン;3−フルオロ−4−(4−ヒドロキシ−α,α’−ビス(2−メチル−1−ピロリジニル)−2,5−キシリジノキノリン、4−[(4−ジエチルアミノ)−1−メチルブチル)アミノ]−6−メトキシキノリン;4−(4−ヒドロキシ−α,α’−ビス(2−メチル−1−ピロリジニル)−2,5−キシリジノキノリン、4−[(4−ジエチルアミノ)−1−メチルブチル)アミノ]−6−メトキシキノリン;3,4−ジヒドロ−1−(2H)−キノリンカルボキシアルデヒド;1,1’−ペンタメチレンジキノレイニウムジヨージド;ならびに8−キノリノール硫酸塩、ラセミ混合物、ならびにそれらの鏡像異性体、それらのリン酸塩および他の適切な薬物塩、ならびにそれらの混合物、
からなる群から選択される化合物である活性成分を含有する組成物を、有効なレジメンおよび有効量で、投与する工程を包含する、方法。
【請求項52】
前記活性成分が、クロロキン、リン酸クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ならびにそれらのラセミ混合物および鏡像異性体からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記活性成分が、それらの(−)鏡像異性体である、請求項51もしくは52に記載の方法。
【請求項54】
前記活性成分が、有効量の、それらの(−)鏡像異性体、およびより少量の、それらの(+)鏡像異性体から本質的になる、請求項51〜53に記載の方法。
【請求項55】
前記(+)鏡像異性体が、該(+)鏡像異性体および前記(−)鏡像異性体の総量の約0%〜約20%である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ドパミン、ドパミン前駆体、もしくはドパミンアゴニストである第2の活性成分をまた含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項57】
ドパミンアンタゴニストである第2の活性成分をまた含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項58】
前記ドパミンアンタゴニストが、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、フルフェナジン、ハロペリドール、ロクサピン、メソリダジン、モリンドン、パーフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジン、デカン酸フルフェナジン、およびデカン酸ハロペリドールからなる群から選択される、請求項57に記載の組成物。

【公表番号】特表2006−514917(P2006−514917A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−520071(P2004−520071)
【出願日】平成15年7月9日(2003.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/021463
【国際公開番号】WO2004/004660
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(502014721)アルファ リサーチ グループ, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】