説明

パー(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体、その調製方法及び金属元素を生物学的標的へ輸送するための又は生物学的標的又は流体を除染するためのその用途

本発明は、次の式(I)又は(II):


[上式中、Rの少なくとも一は、ペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、オリゴ糖又は多糖、及びバイオポリマーから選択される基を表し;同一でも異なっていてもよい他の可能なRは、OH、OR、OM、SH、SR、OCOR、NH、NHR、NR、CONH、CONHR、CONR、CN、COOR、OCHCOOH、COOH、OSO、N及びRから選択される基を表し、ここで、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、O、S及びNから選択される一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、ハロゲン原子で置換されていてもよい飽和又は不飽和の脂肪族又は芳香族の炭化水素ベース基を表し、Mはアルカリ金属カチオンから選択される一価カチオンを表し;Rは単結合又はスペーサ基を表し;nは6、7又は8に等しい]の一に対応するパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体に関する。これらの誘導体は特に金属元素を生物学的標的に輸送するために又は生物学的標的又は流体の汚染を除去するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属元素を結合させるために、またより詳しくは、化学修飾によって、生物学的標的に該元素を輸送するか又は生物学的標的又は生物学的流体からこれらの元素を除去するために使用できる新規な化学修飾パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体に関する。
【0002】
本発明は架橋パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリンにも関し、該パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体は生物学的流体から金属元素を除去するために使用することが可能である。
本発明は、診断分野、金属元素での治療分野、又はインビトロ又はインビボでのヒトの汚染除去の分野において特に利用することができる。
【背景技術】
【0003】
シクロマルトオリゴ糖の中のシクロデキストリンは、α-(1、4)結合グルコース単位の環状結合によって形成された天然由来の化合物である。その誘導体はα-(1、4)結合マルトース単位からなりうる。
多くの研究では、これらの化合物が疎水性分子と共に包接錯体を形成可能であり、よってそれらを水性媒質に溶解させることができることが示されている。“Cyclodextrins and their industrial uses”, D. Duchene Ed., Editions de Sante, Paris, 1987, pages 213-257のD. Duchene, “Pharmaceutical application of cyclodextrins”[1]に記載されていているように、特に医薬分野において、この現象を利用するために多くの用途が提案された。
【0004】
これらのシクロデキストリンの多数の修飾誘導体の中で、有機分子を含むその能力が失われるか又は非常に制限される場合であっても、空隙が裏返しになっているものが有利な特性を示す。この種の化合物は、パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリンである。
【0005】
これらパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリンの合成は早くも1991年に文献[2]:Gadelle A.及びDefaye J., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., (1991), 30,78-79頁;及び文献[3]:Ashton P.R., Ellwood P., Staton I.及びStoddart J.F., Angew. Chem. Int. ed. Engl., (1991) 30,80-81頁に記載され,これらの誘導体が水と有機溶媒の双方に有利な溶解性を示すことが示された。幾つかのその後の研究(文献[4]:Yamamura H.及びFujita K. Chem. Pharm. Bull., (1991) 39,2505-2508頁;文献[5]:Yamamura H., Ezuka T., Kawase Y., Kawai M., Butsugan Y.及びFujita K., J. Chem. Soc., Chem. Com., (1993) 636-637頁;及び文献[6]:Yamamura H., Nagaoka H., Kawai M.及びButsugan Y., Tetrahedron Lett. (1995) 36,1093-1094頁)は、これらのパーアンヒドロ誘導体が些細ではない選択性でアルカリ金属イオンを錯化できることをまた示した。
【0006】
文献FR-A2744124[7]、文献FR-A2764525[8]及び文献FR-A2807044[9]は、様々なイオンを分離するために使用され、特に文献[7]の場合はアセチル置換基の存在のためにカリウムとセシウム、又は文献[8]の場合はメトキシ置換基の存在のために鉛、又は文献[9]の場合は置換基-O-CH-COHの存在のためにコバルト又はウラニルイオン及びランタニドイオンのような汚染イオンの分離に使用される、2位が置換された他のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体を記述している。
しかし、これらのシクロデキストリンは、生物学的標的への金属元素の輸送体として記載され、あるいは一又は複数の毒性金属元素で汚染された生物学的流体を精製するために架橋後に使用できるパーアンヒドロシクロデキストリン誘導体ではない。
【発明の開示】
【0007】
本発明の主題は、放射線診断分野、放射線療法分野又はヒトの汚染除去分野における誘導体の利用を可能にする目的のために金属元素錯体生成特性、例えば放射性元素錯体生成特性を付与しながら、2位の置換基が生物学的標的に誘導体を輸送することを可能にする新規なパーアンヒドロシクロデキストリン誘導体である。
本発明の主題は、また、架橋がこれらの新規主題物に生物学的流体中での不溶性特性を付与し、例えば透析の意味で、毒性金属元素に関してパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリンの錯体生成により生物学的流体を精製することを可能にする架橋パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体である。
【0008】
本発明によれば、パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体は、次の式(I)又は(II):

[上式中、
− Rの少なくとも一は、ペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、オリゴ糖又は多糖、及びバイオポリマーから選択される基を表し;同一でも異なっていてもよい他の可能なRは、OH、OR、OM、SH、SR、OCOR、NH、NHR、NR、CONH、CONHR、CONR、CN、COOR、OCHCOOH、COOH、OSO、N及びRから選択される基を表し、ここで、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、O、S及びNから選択される一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、ハロゲン原子で置換されていてもよい飽和又は不飽和の脂肪族又は芳香族の炭化水素ベース基を表し、Mはアルカリ金属カチオンから選択される一価カチオンを表し;
− Rは、同一でも異なっていてもよく、単結合又はスペーサ基を表し;
− nは6、7又は8に等しい]
の一に対応する。
よって、本発明の誘導体は、ペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、オリゴ糖又は多糖、及びバイオポリマーから選択される基を表す少なくとも一の基Rを含み、場合によっては(必ずしも全てのRがこの定義に対応するものではない)一又は複数のRは、OH、OR、OM、SH、SR、OCOR、NH、NHR、NR、CONH、CONHR、CONR、CN、COOR、OCHCOOH、COOH、OSO、N及びRから選択される同一でも異なっていてもよい基を表す。
【0009】
式(I)又は(II)のシクロデキストリン誘導体において、R及びRに使用することができる脂肪族又は芳香族炭化水素ベース基は様々なタイプでありうる。それらは、幾つかの炭素原子がO、S及びNのような一又は複数のヘテロ原子で置き換えられうる炭素鎖からなり得、それらは一又は複数のエチレン性又はアセチレン性不飽和を含みうる。更に、炭化水素ベース基はハロゲン原子で置換されていてもよい。R及びRに使用することができる芳香族炭化水素ベース基は、場合によっては例えば1から20の炭素原子を含むアルキル基で置換されていてもよい、フェニル基及びトシル基からなりうる。
及びRを構成するために使用できる脂肪族炭化水素ベース基は、特に1から20の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基を表しうる。
【0010】
は、特にRが、OH、OR、OM、SH、SR、OCOR、NH、NHR、NR、CONH、CONHR、CONR、CN、COOR、OCHCOOH、COOH、OSO、N及びRから選択される基である場合、単結合を表しうる。この場合、基Rはグルコース又はマルトース単位の環状炭素に直接共有結合している。
は、スペーサ基、すなわち、ペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、及びオリゴ糖又は多糖の性質の基の一部ではない有機タイプの基を表しうる。このスペーサ基は、例えば、-NH-、-NR-、-NH-(CH)m-CO-、-NH-(CH)m-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-、-NH-CO-(CH)m-COO-、-NH-CO-(CH)m-CO-NH-、-NH-CO-(CH)m-NH-CO-、-NH-CO-CHR-NH-、-O-、-O-(CH)-、-O-(CH)-O-、-O-(CH)m-CO-、-O-(CH)m-CO-、-O-(CH)m-NH-、-O-(CH)m-NH-CO-、-O-(CH)m-CO-NH-、-O-CO-NH-、-O-CO-NR-、-O-CO-、-O-CO-、-S-、-S-(CH)m-CO-、-S-(CH)m-CO-、-S-(CH)m-NH-、-S-(CH)m-NH-CO-、-S-(CH)m-CO-NH-、-S-CO-NH-、-S-CO-、-S-CO-S-、-O-CS-S-、-CS-NR-、-O-CS-、-CO-、-CO-NH-、-CO-NR-、-CS-NR-、-CO-O-、-CO-S-、-CO-O-(CH)m-CO-O-、-CO-S-(CH)m-CO-O-、-CO-S-(CH)m-CO-S-、-CHOH-NH-、-CHSH-NH-、-CHOH-(CH)m-NH-、-CHSH-(CH)m-NH-から選択される基であり得、ここでRはRとRと同じ定義のものであり;mは1から12の範囲の整数である。
【0011】
上に定義された式(I)又は(II)のパーアンヒドロシクロデキストリン誘導体の定義において、Rの少なくとも一はペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、オリゴ糖又は多糖、及びバイオポリマーから選択される基である。
本発明によれば、「ペプチド」という用語は2から30のアミノ酸の鎖からなる分子を意味するものであり、上記アミノ酸は同一又は異なっていることが可能で、鎖の二つの連続するアミノ酸の間の結合は、一アミノ酸のアミン基と隣接するアミノ酸のカルボキシル基の間で水をなくして-CO-NH-結合を形成することによって達成できる。
「タンパク質」という用語は、例えば30から30000の、多数のアミノ酸が互いに結合して形成された分子を意味するものである。
「脂質」という用語は、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸アミド、直鎖状又は分枝状鎖の飽和又は不飽和脂肪酸、脂肪族高級アルコール、ステロール(例えばコレステロール)、スクアレンのような炭化水素、脂溶性ビタミン、1,2,3-トリアシルグリセロールのようなアシルグリセロール、グリコグリセリド、又はリン脂質からなる分子を意味するものである。
【0012】
「オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド」という用語は、その数は一から数十の範囲にあるが、例えばオリゴ[A](オリゴ(5'-アデニル酸))、オリゴ[I](オリゴ(5'-イノシン酸))又はオリゴ[U](オリゴ(5'-ウリジン酸))のように、オリゴヌクレオチドでは100より少なく、ポリ[A](ポリ(5'-アデニル酸))、ポリ[I](ポリ(5'-イノシン酸))又はポリ[U](ポリ(5'-ウリジン酸))のように、ポリヌクレオチドでは100を越える配列からなる分子を意味するものである。
「オリゴ糖又は多糖」という用語は、同一でも異なっていてもよい単糖単位の鎖(グルコース又はマンノースのようにオリゴ糖では2から10、多糖では10を越える)からなる分子を意味するものである。
「バイオポリマー」という用語は、例えばポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-ナフチルアラニン、ポリ-L-フェニルアラニン、ポリ-L-トリプトファン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ヒスチジン又はポリ-L-リジンのような、生物学的由来(ペプチド、脂質、タンパク質、ヌクレオチド、多糖)の同一でも異なっていてもよいモノマーの直鎖状又は分枝状鎖を意味するものである。
【0013】
本発明の特定の実施態様では、使用される式(I)に対応するパーアンヒドロシクロデキストリン誘導体は、Rの少なくとも一がペプチド性の基を表し、他の可能なRが-OHを表し、ペプチド性の基を表すRに結合したRが、式-OCHCO-のスペーサ基を表し、-OHを表す可能なRに結合した可能なRが単結合であり、nが6に等しい誘導体である。
特に、ペプチド性の基は、Bzがベンジル基に対応する式-NH-CH(CH)-CO-NH-CHBz-CO-OCHに対応する、つまり、式:

でありうる。
【0014】
本発明の他の特定の実施態様では、式(I)に対応するパーアンヒドロシクロデキストリン誘導体は、Rの少なくとも一がバイオポリマーを表し、他の可能なRが-OHを表し、バイオポリマーを表すRに結合したRが、式-OCHCO-のスペーサ基を表し、-OHを表す可能なRに結合した可能なRが単結合であり、nが6に等しい誘導体である。
特に、バイオポリマーはポリ-L-リジンに対応しうる。このポリ-L-リジンは3000から300000の範囲の分子量、例えば7500に等しい分子量を有しうる。
【0015】
本発明に係る誘導体は、特に、それらが誘導されるベースのシクロデキストリンのものより大きく、また本明細書の実験セクションに更に十分に例証される金属元素を錯化する能力を有している。
また、そのような基が存在するために、それらは次の利点を示す:
− それらは与えられた生物学的標的に輸送され得る;その結果、それらは、この標的を上記金属元素で処理する目的で、与えられた生物学的標的に金属元素を輸送するために使用することができる;
− それらは金属元素に関して生物学的標的の汚染除去に使用することができ、生体分子から誘導される基の選択は汚染除去される生物学的標的に従いかつ除去される金属元素に従いなされることが理解される;
− それらは生体適合性がある、つまり生きている生物に十分な耐性があり、よって、例えば生物学的流体の汚染除去に使用することができる;
− それらは、後者がバイオポリマーである場合に基のレベルで架橋され得るもので、よって与えられた生物学的流体に不溶性であるポリマーを形成することができ;その結果、それらは生物学的液体の汚染除去をインビトロで行うために使用することができる。
【0016】
よって、上記の段落において強調されるように、本発明の誘導体はまた架橋され得る。
本発明によれば、「架橋誘導体」という用語は、バイオポリマータイプの少なくとも一のRを含む誘導体を架橋することによって得られる誘導体を意味するものであり、上記架橋は上記バイオポリマーを架橋することによって実施される。この架橋は幾つかの実施態様によって考えることができる。
第一の実施態様では、本発明の架橋誘導体は、少なくとも二つの異なったパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリンの分子間架橋から生じ、上記二つのパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリンはバイオポリマータイプの基を表す二つのRの間に架橋を形成する単位によって結合される。
第二の実施態様では、本発明の架橋誘導体は、単一のベースのパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリンの少なくとも二つのRの間の分子内架橋から生じ、問題の上記Rはバイオポリマータイプの基である。得られる架橋誘導体は、バイオポリマータイプの少なくとも二つのRが架橋形成単位によって結合されるパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体の形態である。
【0017】
本発明によれば、上述の二つの実施態様の組み合わせから生じる架橋誘導体、つまり分子間架橋と分子内架橋の双方から生じる架橋誘導体の場合を考えることもまた可能である。
本発明によれば、分子間及び/又は分子内架橋に関与するバイオポリマータイプのRは、架橋前に反応性官能基を含み、よって、架橋は、上記のRによって担持される上記反応性官能基と反応することができる少なくとも二つの反応性官能基を含む架橋剤の単純作用によって生じ得る。
【0018】
本発明の特定の架橋誘導体は、架橋のためのベースとして作用するパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体が、全てのRがポリ-L-リジンで、Rが式-O-CH-CO-のスペーサ基であって、nが6に等しく、上記Rの少なくとも一が水素化ホウ素ナトリウムの存在下でグルタルアルデヒドの作用によって架橋されている誘導体である。
この特定の場合では、グルタルアルデヒドは、ポリ-L-リジンによって担持された第一級アミン官能基と反応し、これによってイミン単位

を形成し、これがついで水素化ホウ素ナトリウムによって還元されて、式

の単位を付与し、該単位が二つのRの間に架橋を形成する。
【0019】
本発明に係る架橋誘導体は、バイオポリマーから誘導されたRの存在とまた架橋によって部分的に転換されたRから誘導された基のために、金属元素との良好な錯化能を示す。また、架橋のために、それらは与えられた生理学的液体中で不溶性である化合物を構成できる。この場合、これらのポリマーには、毒性金属元素に対して生物学的流体の汚染除去の用途が見出される。それらは特に汚染除去がなされる生物学的流体が循環する膜に吸着させることができる。従って、これらの誘導体は汚染した生物学的流体の透析処理の意味で特に有利な場合がある。
【0020】
の少なくとも一が上記の基を表し、他のRがOH又は上述の他の基を表し、nが6、7又は8に等しい上に与えた式(I)又は(II)に対応する本発明の誘導体は、次の工程を含む方法によって調製することができる:
1)次の式(III)又は(IV):

[上式中、同一でも異なっていてもよいRはOH基又はスペーサ基Rの前駆体である基を表す]に対応するパーアンヒドロシクロデキストリンを、ペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、オリゴ糖又は多糖、及びバイオポリマーから選択される生体分子と反応させ、ここで上記生体分子は上記の基Rと反応可能な反応性基を含み;
2)場合によっては、上記生体分子と反応しなかったRを一又は複数の適切な反応物質と反応させてそれを所望の基Rに転換させる。
【0021】
本発明によれば、スペーサ基Rの前駆体である上記基は、-NH、-NHR、-NH-(CH)m-COH、-NH-(CH)m-NH、-NH-COH、-NH-COX、-NH-CO-(CH)m-COOH、-NH-CO-(CH)m-CO-NH、-NH-CO-(CH)m-NH-COX、-NH-CO-CHR-NH、-OH、-O-(CH)m-X、-O-(CH)m-COX、-O-(CH)m-COH、-O-(CH)m-NH、-O-(CH)m-NH-COX、-O-(CH)m-CO-NH、-O-CO-NH、-O-CO-NHR、-O-COX、-O-COH、-SH、-S-(CH)m-COX、-S-(CH)m-COH、-S-(CH)m-NH、-S-(CH)m-NH-COX、-S-(CH)m-CO-NH、-S-CO-NH、-S-COX、-S-CO-SH、-O-CS-SH、-CS-NHR、-O-CSH、-COH、-COSH、-CO-NHR、-CS-NHR、-CO-O-(CH)m-COOH、-CO-S-(CH)m-COOH、-CO-S-(CH)m-COSH、-CHOH-NH、-CHSH-NH、-CHOH-(CH)m-NH、-CHSH-(CH)m-NH、-O-(CH)m-OH、-COX及び-CONHから選択される基であり得、ここでmは上に与えたものと同じ定義を有し、Xはハロゲン原子である。
【0022】
第一の工程を実施するためには、出発のシクロデキストリンの少なくとも一の基Rを適切に修飾する必要量のペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、又はオリゴ糖又は多糖の性質の生体分子又はバイオポリマーが使用される。
シクロデキストリン誘導体が他のRがOHを表しRが単結合である式(I)又は(II)に対応する場合、方法の工程2)は、出発のシクロデキストリンの全てのRがOHを表す場合は実施されない。
シクロデキストリン誘導体が、他のRがORを表しRが上記の意味を持つ上記式(I)又は(II)に対応する場合、方法の第一工程の間、部分的に修飾されたパーアンヒドロシクロデキストリンは、-OH官能基又はMがアルカリ金属を表す-OM官能基を転換させるためにアルカリ金属水素化物と反応させることができ、ついで得られた誘導体を、Rが上と同じ意味を持ちXがハロゲン原子を表す式RXのハロゲン化物と反応させる。
シクロデキストリン誘導体が、他のRが-OCORを表す上記式(I)又は(II)に対応する場合、方法は、最初は上記のようにして実施され、ついで得られた誘導体を、Rが上と同じ意味を持ちXがハロゲン原子を表す式RCOXのハロゲン化アルキルと引き続いて反応させる。-OH官能基は、また式(RCO)Oの酸無水物とシクロデキストリン誘導体を直接反応させることにより、-OCOR官能基に転換させることもできる。
【0023】
他のRが式SH、SR、NH、NHR NR、CONR、CONHR、CONH、CN、COOR、COOH、又はRの基を表し、RとRが上記と同じ意味を持ち、nが6、7又は8に等しいシクロデキストリン誘導体を調製することが望まれる場合、部分的に修飾されたパーアンヒドロシクロデキストリン、つまりRの少なくとも一がペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、又はオリゴ糖又は多糖の性質の基又はバイオポリマーを表すものから出発して、次の工程を実施することができる:
1)このパーアンヒドロシクロデキストリンをアルカリ金属水素化物と反応させて、OH基をMがアルカリ金属を表すOM基に転換させ;
2)1)で得られた修飾パーアンヒドロシクロデキストリンを、Rが上記の意味を持つClSOの塩化物と反応させ、Rの少なくとも一がOSOの基である式(I)又は(II)の誘導体を得;
3)第二工程で得られた誘導体を一又は複数の適切な反応物質と反応させて、所望のRとOSOを置き換える。
【0024】
この方法では、部分的に修飾されたパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体が先ずアルカリ金属水素化物の作用によってアルコキシドに転換され、ついでこのアルコキシドが、式OSOの離脱基を含む誘導体に転換され、これがついで一又は複数の適切な反応物質と一又は複数の工程で反応させられ、この離脱基を所望の基Rと置き換える。
よって、RがNHを表さなければならない場合、NMと2)に定義された化合物を反応させることができる。RがNHを表さなければならない生成物を得るために、アジドと呼ばれるこのようにして得られた化合物に接触水素化を施し又はアンモニアNHの存在下で処理することができる。
がNHR又はNRを表さなければならない生成物は、2)で定義された化合物を化合物NH又はNHRと反応させることによって得られる。
【0025】
がSH又はSRを表さなければならない場合、2)で定義された化合物をハロゲン化物Xと反応させて、(R=X)の化合物を得、ついでこれをHS又はRと反応させて、RがSH又はSRを表す化合物を得る。
が炭化水素ベース基を表さなければならない場合、2)で得られた化合物をRLiCuと反応させて、上述のように、Rが炭化水素ベース基を表す最終化合物を得る。
同様に、Rがハロゲンを表す化合物はCNと反応して、RがCNを表す最終化合物を生じ得る。
同様に、RがCNを表す化合物は、制御された加水分解によって、RがCONHを表す最終化合物を生じ得る。RがCNを表す化合物は、完全な加水分解によって、RがCOOHを表す化合物を生じ得る。
がCOOHを表す化合物は、エステル化によって、RがCOORを表す化合物を生じ得る。
がCOOHを表す化合物は、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)の存在下でNHR又はNHと反応して、RがNR又はNHRを表す化合物を生じ得る。
【0026】
式(III)又は(IV)のシクロデキストリンのRとの反応によるパーアンヒドロシクロデキストリンへのペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、又はオリゴ糖又は多糖の性質の基のグラフト化は様々な方法で実施することができる。
例えば、反応性-NH末端を持つペプチド性の基をグラフトさせるには、これはパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン(3,6-CD)とペプチド間にペプチド結合をつくることを含む。このために、3,6-CDには好ましくは-NH又は-COOH官能基で終端する基を持たせてもよい。
ペプチドの酸末端がシクロデキストリンと(この場合は、-NH官能基又は誘導体と)反応する場合、酸末端は活性化される酸ハロゲン化物、混合無水物、アジド又はエステルに転換されなければならない。この末端がひとたび活性化されると、それはシクロデキストリンのアミン官能基と直接反応してペプチド結合を形成し得る。酸官能基はまたジシクロヘキシルカルボジイミドのようなカップリング試薬と反応させることができる。
【0027】
タンパク質性の基をグラフト化させることからなる反応は上に開示したものと同様な方法で実施することができる。
脂質性の基をグラフトさせるために、この基は(特に脂肪酸に対応する場合)-NH官能基にグラフトさせることができ、カップリング法はペプチド又はタンパク質性の基のカップリングに対して開示されたものと同様である。
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド性の基をグラフトさせるために、末端リン酸基にアミン官能基を含むDNA配列を使用することができる。カップリング法はこの場合上に開示したものと同様である。
糖類性の基をグラフトさせるためには、糖は、例えば、シクロデキストリンのRと反応可能な基をそこに導入するために官能化させることができる。この反応可能な基は例えばエチレンジアミン基でありうる。
【0028】
本発明によれば、Rの少なくとも一がバイオポリマータイプの基である場合、該方法は、グラフト工程と、Rを適切なR(又はRが単結合以外である場合に適切な基R-R)に転換する任意の工程の後に、既に転換されたパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体へ、グルタルアルデヒドのような架橋剤の作用によって、架橋させることからなる工程をまた含みうる。
上述のように、本発明に係るパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体は、パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリンの空隙とパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリンによって2位に担持された基の存在のために誘導体金属元素の優れた錯体形成能を有している。
【0029】
よって、本発明の主題はまた上述のパーアンヒドロシクロデキストリン誘導体との金属元素の錯体である。
特に、本発明に従って、パーアンヒドロシクロデキストリン誘導体と錯体を形成する金属元素は、Tc、Y、In、Ga、Re、Sc、Co、Cu、Ca、Sr、Ag、Au、Sn、Bi、At、Rh、Er、Pm、Sm、Ho、Lu、Dy、Gd、Eu、Mn、Pb及びTl、並びに場合によってはその放射性同位元素から選択することができる。
本発明の特定の錯体は、Rの少なくとも一がペプチド及びバイオポリマーから選択される基である上述のパーアンヒドロシクロデキストリン誘導体と、Pb及びErから選択される金属元素の錯体である。
これらの錯体は、生体分子から誘導された基の存在のために、生物学的標的に輸送され得る。錯化された金属元素に応じて、それらはよって問題の金属元素で標的を処理するために使用することができ、又は医用画像に使用することができる。
【0030】
上述の使用によって、上記の錯体は診断又は治療組成物の構築の一部となりうる。
その結果、本発明の主題はよってまた上述のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体と金属元素の錯体と薬学的に許容可能な担体を含有する診断用組成物である。
特に、この種の組成物の場合には、本発明に係るパーアンヒドロシクロデキストリン誘導体と錯体を形成する金属元素はγ線又はβ線を放射する金属元素から選択され、これら元素はTc、In、Ga、Co、Cu、Sm及びGaから選択することが可能である。
これらの元素は幾つかの同位体形態で存在しうることが理解される。
【0031】
本発明の主題はまた上述のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体と金属元素の錯体、又は上述のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体と薬学的に許容可能な担体を含有する治療用組成物である。
そのような組成物が本発明に係るパーアンヒドロシクロデキストリン誘導体を含む場合、それらは、金属と錯体を形成することができる本発明に係るシクロデキストリンの能力のために特に標的器官又は生物学的流体の汚染除去の分野で使用することができる。
そのような組成物が、本発明に従って、金属元素の錯体を含む場合、それらは上記錯体を生物学的標的まで輸送するために使用され、錯化金属元素がその治療作用をこの標的へ作用させることができる。
特に、そのような金属元素はβ線及びα線を放射する金属元素から選択することができ、これら元素はSc、Cu、Sr、Y、Rh、Ag、Sn、Pm、Sm、Ho、Lu、Re、Er、Dy、At、Bi、Au及びCa等のアルカリ土類金属から選択されることが可能である。
【0032】
本発明の主題はまた少なくとも一の金属元素に対する生体媒質(生物学的標的又は流体)の汚染をインビトロで除去する方法であり、該方法は、上述のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体に上記生体媒質を接触させて、上記元素をパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体に錯体の形態で結合させることからなる工程を含む。
本発明の方法によって付着させ又は分離させることができる金属元素は様々なタイプのものでありうる。
よって、これらの金属元素は、Tc、Y、In、Ga、Re、Sc、Co、Cu、Ca、Sr、Ag、Au、Sn、Bi、At、Rh、Er、Pm、Sm、Ho、Lu、Dy、Gd、Eu、Mn、Pb及びTl、並びに場合によってはその放射性同位元素から選択することができる。
特に、鉛のような毒性元素は環境を汚染し、動物及びヒトの双方において毒性でありうる。従って、環境からこれらの元素を分離し除去することが必要である。更に、その神経系及び他の器官に影響を及ぼさないで生物の汚染除去を確実にする生成物が大なる利点を構成する。
【0033】
本発明によれば、上記の式(I)及び(II)に対応するパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体が上述の金属イオンを付着させる特に有利な能力を示すことが言い出された。
特に、有利な誘導体は、Rがペプチド又はバイオポリマーから選択される基を表し、他のRが-OHを表し、ペプチド基又はバイオポリマーを表すRに結合したRが、式-OCHCO-のスペーサ基を表し、-OHを表すRに結合した可能なRが単結合であり、nが6に等しい式(I)に対応する、パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体であり、より詳細には、Bzがベンジル基を表す式-NH-CH(CH)-CO-NH-CHBz-CO-OCHのペプチド基Rを持つもの、及びポリ-L-リジンタイプのバイオポリマーに対応するRを持つものである。
【0034】
本発明によれば、上述の誘導体が上述の金属元素を付着させる特に有利な能力を有していることが見出された。
特に、全てのRがポリ-L-リジンであり、Rが式-O-CH-CO-のスペーサ基に対応し、nが6に等しく、上述のRの少なくとも幾つかが水素化ホウ素ナトリウムの存在下でグルタルアルデヒドの作用によって架橋されている架橋パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体が特に汚染除去に有利である。
これらの上述した特定の誘導体は、特に鉛及びエルビウムの付着に対して高い特異性を示す。
従って、それらは、ある種の器官を標的としたヒトの汚染除去の分野で、特に付着されるイオンが鉛の場合に、用途が見出されうる。
【0035】
このような誘導体は次の理由から特に有利である:
− それらは生体適合性があり、従ってインビボで使用することができる;
− それらは、特に上述のようにして架橋されている場合、生理学的液体のインビトロでの汚染除去に使用することができる;これら誘導体は、一般に生理学的液体に不溶性であり、濾過膜に吸着させることができ、上記生理学的液体は上記膜を通過して汚染除去される。
本発明の他の利点と特徴は、添付図を参照しながら非限定的な例証として与えられた以下の実施例を読むとより一層明らかになるであろう。
【実施例】
【0036】
実施例1
この実施例は、[(モノ-2-O-メチルアミド)-パー(3,6-アンヒドロ)-α-シクロデキストリン]-L-Ala-L-Phe OMeエステルの調製に対応する。
この化合物は、RがジペプチドL-アラニル-L-フェニルアラニン-OMeに対応する、つまり式-NH-CH(CH)-CO-NH-CH(Bz)-COOCHに対応し、関連したRは式-O-CH-CO-のスペーサ基であり、他のRが-OHに対応し、関連したRが単結合を表し、nが6に等しい式(I)に対応する。
新鮮に凍結乾燥した15mg(0.017mmol)のモノ-2-O-カルボキシメチル-パー-(3,6-アンヒドロ)-α-シクロデキストリン(ベースシクロデキストリンと称す)を計り、酢酸エチルから再結晶化した6.6mg(0.032mmol、2当量)のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCI)をそれに添加した。これらの二生成物を3mlの無水ジメチルホルムアミドに溶解させた。混合物を乾燥窒素の流れ下で10分間撹拌した。5.1mg(0.020mmol)の新鮮に凍結乾燥されたL-アラニル-L-フェニルアラニン-Oメチルエステルをついで加え、混合物を48時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、蒸発残留物を蒸留水で取り上げ、0.22μmフィルター(Millex(登録商標)-SLGS025OS)を通してジシクロヘキシル尿素を除去した。得られた透明溶液を凍結乾燥して、薄層クロマトグラフィー及びプロトン核磁気共鳴(500MHz、298K)によって特徴づけた。
【0037】
図1及び2は、それぞれ、重水素水及び重水素を含むジメチルスルホキシド中における粗生成物(すなわち未精製)のスペクトルを表す。
薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、溶出剤:1/1/1 ブタノール/DMF/水)は、0.48のRfを示す生成物の存在を示し、これは遊離のシクロデキストリン(Rf=0.37)及び遊離のジペプチド(Rf=0.77)のものとは異なる。
この実施例において調製された粗生成物(つまり、未精製、又は換言すれば、なお遊離ジペプチド及びベースの3,6-シクロデキストリンの存在下にある)の重水素水中でのプロトンスペクトル(500MHz、298K)が図1に表され、二つの部分において、
− B部は1から7.5ppmの領域におけるこのスペクトルを表し;
− A部は1.2及び1.6ppm間のスペクトルの拡大領域である。
このスペクトルはシクロデキストリンにグラフトしたL-アラニル基のβ-メチルに対応し、遊離のジペプチドのL-アラニル基のβ-メチルの二重スペクトルと同じ結合定数(7Hz)を有する二重スペクトルを1.345ppmに示す。後者は、1.525ppmに現れる。
【0038】
この実施例において調製された粗生成物(つまり、未精製、又は換言すれば、なお遊離ジペプチド及びベースの3,6-シクロデキストリンの存在下にある)の重水素を含むDMSO中でのプロトンスペクトル(500MHz、298K)が図2に表され、二つの部分において、
− A部は1から9ppmの領域におけるこのスペクトルを表し;
− B部は1及び1.5ppm間のこの同じスペクトルの拡大領域を表し;
− C部は7.5及び9ppm間のこの同じスペクトルの拡大領域を表す。
# このスペクトルでは、8.375及び7.725ppmにおける2つのピークは、それぞれ、ペプチド結合のプロトンが現れる領域に現れる。これらのシグナルは、グラフト化シクロデキストリンによって担持された二つのペプチド結合の-NH-プロトンのシグナルに対応し、8.785ppmに位置する遊離のジペプチドのペプチド結合の-NH-プロトンのシグナルとは異なる。これらの二つのシグナルは、重水素水を加えたときに消失し、これは、それらが確かにペプチド結合の-NH-プロトンであることを確認するものである。
【0039】
実施例2
この実施例は、[(モノ-2-O-メチル(モノ-ε-アミドポリ-L-リジン)]-パー-(3,6-アンヒドロ)-α-シクロデキストリンに対応する。
この化合物は、Rがポリ‐L‐リジン(PLL)に対応し、関連Rがスペーサ基-O-CH-CO-であり、該PLLが7500の平均分子量の市販PLLであり、他のRが-OHに対応し、関連Rが単結合を表し、nが6に等しい式(I)に対応する。
新鮮に凍結乾燥した10mg(0.0108mmol)のモノ-2-O-カルボキシメチル-パー-(3,6-アンヒドロ)シクロマルトヘキザオースを計り、8mg(0.039mmol)の再結晶化ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)をそれに添加した。これらの二生成物を3mlの無水DMFに溶解させた。混合物を乾燥窒素の流れ下で15分間撹拌した後、4mg(5x10−4mmol、つまり平均で0.019x10−3の-NH官能基)のPLLを加えた。窒素流を取り除き、丸底反応フラスコに栓をして溶液を48時間撹拌した。
溶媒を減圧下で蒸発させ、蒸発残留物を水で取り上げた。ついで、生成物を、セルロースエステル膜(Spectra/Por(登録商標)CE、カットオフ閾値1000)を使用して48時間、10−3MのHClに対して透析し、凍結乾燥した。
【0040】
ついで、最終生成物を薄層クロマトグラフィー及びNMRによって特徴づける。
シリカプレートに、溶媒の次の混合物:ブタノール/DMF/水(1/1/1)を使用して、Rfが0.64であり、値が0.44である非グラフトシクロデキストリンと移動しない遊離PLLとは異なることが証明された。
図3は、遊離のPLL(5mM)(A部)と反応の最終生成物(図B)のプロトンNMRスペクトル(200MHz、298K、DO)を示し、透析後のそれぞれが上記と同じ条件下にある。B部のスペクトルは明らかにPLLに結合したシクロデキストリンのスペクトルを表し、遊離の3,6-シクロデキストリンは膜を通った。簡単な試験により、遊離の3,6-シクロデキストリンが膜を通過し、PLLが膜内に維持されることを確認することが可能になる。すなわち、遊離のPLLと非結合モノ-2-O-カルボキシメチル-パー-(3,6-アンヒドロ)シクロマルトヘキサオースの等モル混合物が透析される場合、1000のカットオフ閾値のSpectra/Por(登録商標)を注意して使用した場合、透析後の残留物は遊離のPLLだけを含む。
凍結乾燥後に得られた粗生成物を次にPLL結合シクロデキストリン当量当たり、2当量のグルタルアルデヒドと2当量のNaBHを添加することによって架橋させた。溶媒の蒸発後、得られた生成物は水に非可溶性であり、これは、確かにPLLの架橋があることを示すのに十分である。
【0041】
実施例3
この実施例では、核医学において使用されるカチオンに関して、実施例1及び2において調製された化合物の錯体化の特性を示す問題である。
錯体化を評価するために、評価される種によってこれらのイオンの錯体化の迅速な評価を可能にするイオン負荷薄層クロマトグラフィープレートが用いられる。この場合、様々な対イオンを負荷したPolygram Ionex25-SA-Naタイプのプレート(Macherey-Nagel、参照:80613)を使用した。各試験において、試験される化合物はプレート上に導入され、化合物がイオンを錯化すれば、それらはプレートに保持される。ついで、プレートは、少量のシクロデキストリンの移動のため、水中に4回露出され、ついで、錯体化の度合いが値1/Rfによって決定され、ここで、Rfは比:(シクロデキストリン誘導体によってカバーされる距離/溶媒によってカバーされる距離)を表す。
【0042】
鉛(Pb2+の形態)と形態(Er3+)のエルビウムの錯体化度の測定は、以下の3つの化合物に対して実施された:
− ベースのシクロデキストリン・モノ-2-O-カルボキシメチル-パー-(3,6-アンヒドロ)シクロマルトヘキサオース(図4で(1)と標記);
− 実施例1において調製した本発明のシクロデキストリン(図4に(2)で示す);
− 実施例2において調製した本発明のシクロデキストリン(図4に(3)で示す)。
図4は、実施例1及び2において調製した化合物の鉛-及びエルビウム-錯化特性、特に実施例2において調製した化合物のものが特に有利であることを示している。
エルビウムに関しては、図3は実施例1及び2で調製された化合物がエルビウムを錯化する一方、カップリングしていないパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリンがエルビウムを錯化しないことを特に示している。
本発明において調製された化合物は、よって、ヒトの汚染除去(鉛汚染の場合)において、また、エルビウムが放射線療法で使用されるβ線放射体である範囲で、核医学において有利であり得、その構造中にペプチド性又はバイオポリマーの基が存在するためにそれらは生体適合性があるので、特に有利である。
【0043】
引用文献
[1] D. Duchene "Pharmaceutical application of cyclodextrins" in "Cyclodextrins and their industrial uses". D. Duchene Ed., Editions de Sante, Paris, 1987, pages 213-257 ;
[2] Gadelle A. et Defaye J., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., (1991), 30, pages 78-79 ;
[3] Ashton P.R., Ellwood P., Staton I. and Stoddart J.F., Angew. Chem. Int. ed. Engl., (1991) 30, pages 80-81);
[4] Yamamura H. and Fujita K. Chem. Pharm. Bull., (1991) 39, pages 2505-2508;
[5] Yamamura H., Ezuka T., Kawase Y., Kawai M., Butsugan Y. and Fujita K., J. Chem. Soc., Chem. Com., (1993), pages 636-637;
[6] Yamamura H. Nagaoka H., Kawai M. and Butsugan Y., Tetrahedron Lett. (1995) 36, pages 1093-1094);
[7] FR-A 2 744 124;
[8] FR-A 2 764 525;
[9] FR-A 2 807 044。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、実施例1において調製した粗生成物(つまり、未精製)の重水素水中でのNMRスペクトルを表し、B部は1から7.5ppmの領域におけるこのスペクトルを表し、A部は1.2から1.6ppmの領域の拡大領域である。
【図2】図2は、実施例1において調製した粗生成物(つまり、未精製)のジメチルスルホキシド中でのNMRスペクトルを表し、A部は1から9ppmの領域におけるこのスペクトルを表し、B部は1から1.5ppmの間のこの同じスペクトルの拡大領域であり、C部は7.5から9ppmの間のこのスペクトルの拡大領域である。
【図3】図3は、重水素水中でのNMRスペクトルを表し、A部はポリ-L-リジンのスペクトルを表し、B部は実施例2において調製された生成物のスペクトルを表す。
【図4】図4は、それぞれモノ-2-O-カルボキシメチル-パー(3,6-アンヒドロ)α-シクロデキストリン(1)、実施例1において調製された生成物(2)及び実施例2において調製された生成物(3)に対する、Pb2+及びEr3+に対する保持画分の逆数(1/RF)の模式図を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)又は(II):

[上式中、
− Rの少なくとも一は、ペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、オリゴ糖又は多糖、及びバイオポリマーから選択される基を表し;同一でも異なっていてもよい他の可能なRは、OH、OR、OM、SH、SR、OCOR、NH、NHR、NR、CONH、CONHR、CONR、CN、COOR、OCHCOOH、COOH、OSO、N及びRから選択される基を表し、ここで、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、O、S及びNから選択される一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、ハロゲン原子で置換されていてもよい飽和又は不飽和の脂肪族又は芳香族の炭化水素ベース基を表し、Mはアルカリ金属カチオンから選択される一価カチオンを表し;
− Rは、同一でも異なっていてもよく、単結合又はスペーサ基を表し;
− nは6、7又は8に等しい]
の一に対応するパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体。
【請求項2】
スペーサ基が、-NH-、-NR-、-NH-(CH)m-CO-、-NH-(CH)m-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-、-NH-CO-(CH)m-COO-、-NH-CO-(CH)m-CO-NH-、-NH-CO-(CH)m-NH-CO-、-NH-CO-CHR-NH-、-O-、-O-(CH)-、-O-(CH)-O-、-O-(CH)m-CO-、-O-(CH)m-CO-、-O-(CH)m-NH-、-O-(CH)m-NH-CO-、-O-(CH)m-CO-NH-、-O-CO-NH-、-O-CO-NR-、-O-CO-、-O-CO-、-S-、-S-(CH)m-CO-、-S-(CH)m-CO-、-S-(CH)m-NH-、-S-(CH)m-NH-CO-、-S-(CH)m-CO-NH-、-S-CO-NH-、-S-CO-、-S-CO-S-、-O-CS-S-、-CS-NR-、-O-CS-、-CO-、-CO-NH-、-CO-NR-、-CS-NR-、-CO-O-、-CO-S-、-CO-O-(CH)m-CO-O-、-CO-S-(CH)m-CO-O-、-CO-S-(CH)m-CO-S-、-CHOH-NH-、-CHSH-NH-、-CHOH-(CH)m-NH-、-CHSH-(CH)m-NH-から選択される基で、ここでRは請求項1のRとRと同じ定義のものであり;mは1から12の範囲の整数である、請求項1に記載のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体。
【請求項3】
の少なくとも一がペプチド性の基を表し;他の可能なRが-OHを表し、ペプチド性の基を表すRに結合したRが、式-OCHCO-のスペーサ基を表し、-OHを表す他の可能なRに結合した可能なRが単結合であり、nが6に等しい、請求項1又は2に記載のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体。
【請求項4】
に対応するペプチド性の基が、Bzがベンジル基に対応する式-NH-CH(CH)-CO-NH-CHBz-CO-OCHに対応する、請求項3に記載のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体。
【請求項5】
の少なくとも一がバイオポリマーを表し、他の可能なRが-OHを表し、バイオポリマーを表すRに結合したRが、式OCHCOのスペーサ基を表し、-OHを表すRに結合した他の可能なRが単結合であり、nが6に等しい、請求項1又は2に記載のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体。
【請求項6】
に対応するバイオポリマーが、ポリ-L-リジンである、請求項5に記載のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体。
【請求項7】
上記誘導体が架橋している、請求項1に記載のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体。
【請求項8】
パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体が、全てのRがポリ-L-リジンで、Rが式-O-CH-CO-のスペーサ基であって、nが6に等しく、上記Rの少なくとも一が水素化ホウ素ナトリウムの存在下でグルタルアルデヒドの作用によって架橋されている誘導体である、請求項7に記載の誘導体。
【請求項9】
次の式(I)又は(II):

[上式中、
− Rの少なくとも一は、ペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、オリゴ糖又は多糖、及びバイオポリマーから選択される生体分子から選択される基を表し、同一でも異なっていてもよい他のRは、OH、OR、OM、SH、SR、OCOR、NH、NHR、NR、CONH、CONHR、CONR、CN、COOR、OCHCOH、COOH、OSO、N及びRから選択される基を表し、ここで、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、O、S及びNから選択される一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、ハロゲン原子で置換されていてもよい飽和又は不飽和の脂肪族又は芳香族の炭化水素ベース基を表し、Mはアルカリ金属カチオンから選択される一価カチオンを表し、Rは、同一でも異なっていてもよく、単結合又はスペーサ基を表し、nは6、7又は8に等しい]
の一に対応するパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体の調製方法であって、
1)次の式(III)又は(IV):

[上式中、同一でも異なっていてもよいRはOH基又はスペーサ基Rの前駆体である基を表す]
のパーアンヒドロシクロデキストリンを、ペプチド、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、オリゴ糖又は多糖、及びバイオポリマーから選択される生体分子と反応させ、ここで上記生体分子は上記の基Rと反応可能な反応性基を含み;
2)場合によっては、上記生体分子と反応しなかったRを一又は複数の適切な反応物質と反応させてそれを所望の基Rに転換させる
工程を含んでなる方法。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れか一項に記載のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体と金属元素の錯体。
【請求項11】
パーアンヒドロシクロデキストリン誘導体と錯体を形成する金属元素が、Tc、Y、In、Ga、Re、Sc、Co、Cu、Ca、Sr、Ag、Au、Sn、Bi、At、Rh、Er、Pm、Sm、Ho、Lu、Dy、Gd、Eu、Mn、Pb及びTl、並びに場合によってはその放射性同位元素から選択される、請求項10に記載の錯体。
【請求項12】
の少なくとも一はペプチド及びバイオポリマーから選択される基であり、金属元素がPb又はErである、請求項10又は11に記載の錯体。
【請求項13】
請求項10ないし12の何れか一項に記載の錯体と薬学的に許容可能な担体を含有する診断用組成物。
【請求項14】
金属元素がγ線又はβ線を放射する金属元素から選択され、該元素がTc、In、Ga、Co、Cu、Sm、Gaから選択可能である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項10ないし12の何れか一項に記載の錯体、又は請求項1ないし8の何れか一項に記載の誘導体と薬学的に許容可能な担体を含有する治療用組成物。
【請求項16】
金属元素がβ線及びα線を放射する金属元素から選択され、該元素がSc、Cu、Sr、Y、Rh、Ag、Sn、Pm、Sm、Ho、Lu、Re、Er、Dy、At、Bi、Au及びCa等のアルカリ土類金属から選択可能である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
金属元素に対する生体媒質の汚染をインビトロで除去する方法において、請求項1ないし8の何れか一項に記載のパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体に上記生体媒質を接触させて上記元素をパー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体に錯体の形態で結合させることからなる工程を含む方法。
【請求項18】
金属が、Tc、Y、In、Ga、Re、Sc、Co、Cu、Ca、Sr、Ag、Au、Sn、Bi、At、Rh、Er、Pm、Sm、Ho、Lu、Dy、Gd、Eu、Mn、Pb及びTl、並びに場合によってはその放射性同位元素から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
使用される誘導体が請求項8に記載の架橋誘導体である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
パー(3,6-アンヒドロ)シクロデキストリン誘導体が、Rがペプチド及びバイオポリマーから選択される基を表し、他のRが-OHを表し、ペプチド基又はバイオポリマーを表すRに結合したRが、式-OCHCO-のスペーサ基を表し、-OHを表すRに結合したRが単結合であり、nが6に等しい式(I)に対応する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
に対応するペプチドが、Bzがベンジル基に対応する式-NH-CH(CH)-CO-NH-CHBz-CO-OCHに対応する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
に対応するバイオポリマーが、ポリ-L-リジンである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
結合される金属元素が鉛である、請求項19ないし22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
結合される金属元素がエルビウムである、請求項19ないし22の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−522840(P2006−522840A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502174(P2006−502174)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050048
【国際公開番号】WO2004/071639
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(501402671)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (23)
【Fターム(参考)】