説明

ヒト下垂体成長ホルモンのスプライスバリアント

本発明は、本発明においてヒト下垂体成長ホルモンの新規スプライシング変種として同定しINSP101と称する新規タンパク質、並びに前記タンパク質及びそのコード遺伝子に由来する核酸配列の疾患の診断、予防及び治療における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書においてヒト下垂体成長ホルモン(GH-N;P01241)の新規スプライシング変種として同定され、INSP101と名付けられた新規タンパク質に関し、またこのタンパク質及びそのコード遺伝子に由来する核酸配列の疾患の診断、予防及び治療における使用に関する。この変種は、変化したA−Bループを有し、その結果変更された受容体結合特性を有すると推定される。
本明細書に引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、参照により完全に本明細書に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
薬剤の発見過程において、機能ゲノム学の時代の到来にあわせて根幹的な革命が現在進行している。“機能ゲノム学”という用語は、対象のタンパク質配列に機能を帰属させるためにバイオインフォマティクスツールを利用するアプローチに用いられる。そのようなツールは、配列データの生成速度が、これらタンパク質配列に機能を割り当てる研究室の能力をはるかに越えるのでますます必要性を増している。
バイオインフォマティクスツールの潜在能力及び精度が高まっているために、前記ツールは通常の生化学的特徴付け技術と急速に置き換えられつつある。実際、本発明の同定に用いた高度なバイオインフォマティクスツールは、今や、高い信頼性をもつ結果を出力する能力を有する。
配列データが利用可能になるにつれ、種々の研究機関及び企業組織がそれらを調査し、重要な発見が絶え間なく達成され続けている。しかしながら、研究及び薬剤発見のための標的として、更なる遺伝子及びそれらがコードするポリペプチドを同定し特徴付ける必要性は引き続き存在している。
【0003】
選択的プレmRNAスプライシングは、機能的に多様なタンパク質が、単独の遺伝子の一次転写産物から、多くは組織特異的なパターンで産生される主要な細胞過程である。
実験的に、スプライシング変種は、変種mRNAの偶然の単離及びそれに続く配列決定により同定される。しかしこの実験的手法は、ヒトトランスクリプトームについて網羅的に完了されておらず(可能性のあるあらゆる環境条件下におけるヒト全組織由来の全mRNAの系統的単離及び配列決定を必要とすることから)、またこの実験的制限のために、多数のスプライシング変種が未だ同定されていないままである。
本発明者らは、ヒト成長ホルモン遺伝子のスプライシング変種の存在に関して、独自の(proprietary)バイオインフォマティクス手法を用い、意図的な方向性のある検索を行った。この方法により、実験的に既知であるスプライシング変種の限定的なデータセットを、はるかに大きな予測されるスプライシング変種のセットへ拡大することができる。
【0004】
[内分泌ホルモン]
ホルモンは、中間代謝、成長及び細胞分化を包含する多種多様な生理的機能を調節する。それらは、物理化学的特性に応じて、ふたつの基本的作用機序を有する。親油性ステロイドホルモン及び甲状腺ホルモンは、疎水性であって、主に細胞内で作用して遺伝子転写を調節するのに対し、アドレナリン及びメラトニンのようなペプチドホルモンは、親水性であって、細胞膜で作用して細胞内調節作用をもたらすシグナル伝達事象のカスケードの引き金を引く(Lodish et al. (1995) Molecular Cell Biology, Scientific American Books Inc. , New York, NY, pp.856-864)。
ホルモンは、内分泌腺の特定細胞において産生され、そのホルモンの標的細胞へ血液循環により到達する。ステロイドホルモンは、主として副腎皮質、卵巣及び精巣の細胞の細胞質ゾル及びミトコンドリアにおいて行われる一連の酵素反応によりコレステロールから誘導される。場合によっては、ステロイドホルモンは、活性化されるか又はより活性のある誘導体を生成するために、標的組織において改変をうけなければならない。ほとんどのペプチドホルモンは、前駆体タンパク質(プロホルモン)の形で合成され、内分泌細胞に貯蔵される。血液循環中へ放出される前に、プロホルモンは活性なホルモンへと切断される。いくつかのホルモン(主にステロイドホルモン及び甲状腺ホルモン)は、特異的結合タンパク質に結合しながら、循環系で輸送される。これらのタンパク質は、必要な時にホルモンを放出し、またホルモンを急速な失活から保護するホルモン貯蔵庫(depot)として役立つ。
【0005】
ヒト(H.sapiens)の全身生理におけるホルモンの中心的性質のために、ホルモン機能の調節不能は、多くの疾患過程において役割を果たすことが示されており、そのような疾患としては腫瘍(Sommer S. and Fuqua S. A. (2001) Semin Cancer Biol. Oct;11(5): 339-52;Bartucci M. , Morelli C. , Mauro L, Ando S. , and Surmacz E. (2001) Cancer Res. Sep 15; 61(18): 6747-54;Oosthuizen G. M. , Joubert G. , and du Toit R. S. (2001) S. Afr. Med. J. Jul ; 91(7): 576-79;Nickerson T. , Chang F. , Lorimer D. , Smeekens S. P. , Sawyers C. L. , and Pollak M. (2001) Cancer Res. Aug 15; 61(16): 6276-80)、心血管疾患(Liu Y. , Ding J. , Bush T. L., Longenecker J. C. , Nieto F. J. , Golden S. H. , and Szklo M. (2001) Am. J. Epidemiol. Sep 15; 154(6): 489-94)、代謝疾患(Flyvbjerg A. (2001) Growth Horm. IGF Res. Jun; ll Suppl. A: S115-9;Diamond T. , Levy S. , Smith A. , Day P. and Manoharan A. (2001) Intern. Med. J. Jul ; 31(5): 272-8;Toprak S., Yonem A. , Cakir B., Guler S. , Azal O., Ozata M. , and Corakci A. (2001) Horm. Res.; 55(2) : 65-70)、炎症(McEvoy A. N. , Bresnihan B. , FitzGerald O., and Murphy E. P. (2001) Arthritis Rheum. Aug ; 44(8): 1761-7, Lipsett P. A. (2001) Crit. Care Med. Aug; 29(8) : 1642-4)、及びCNS関連疾患(Bowen R. L. (2001) JAMA. Aug 15; 286(7): 790-1)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0006】
[成長ホルモンファミリー]
成長ホルモンは、構造的類似性及び生物学的活性を共有するポリペプチドホルモンのファミリーのメンバーであり、全ての脊椎動物の下垂体と一部の哺乳類の胎盤とにおいて生成される。ファミリーのメンバーは、下垂体プロラクチン、胎盤ラクトゲン(ヒトでは絨毛性体乳腺発育ホルモン[hCS]とも称される)、反芻動物及び齧歯動物のプロラクチン関連タンパク質、マウスのプロリフェリン(proliferin)並びに魚類のソマトラクチン(somatolactin)がある。
GHファミリーの大部分のメンバーをコードしている遺伝子は、5個のエクソン及び4個のイントロンを含んでおり、脊椎動物の出現に先立って単一の先祖遺伝子の複製により生じたように思われる。スプライシング変種及びプロセッシング変種が、このファミリーの数種類のメンバーについて記載されている。
【0007】
ヒトGH関連遺伝子ファミリーは、第17q22-24染色体上に位置している高度に配列保存された遺伝子群の遺伝子クラスターと第6染色体上の単一プロラクチン遺伝子とからなる(Owerbach D. et al. Science 1981)。この遺伝子クラスターは、5個の構造遺伝子である2個のGH遺伝子と3個のCS遺伝子とを含み、それらの発現は組織特異的である:hGH-N(Nは正常)、hGH-V(Vは変種)、ホルモン様ヒトソマトマンモトロピン(hCS-L)、ヒトソマトマンモトロピンホルモンA及びB(hCS-A及びhCS-B)(Misra-Press, A et al. JBC 1994; Boguszewski C. et al. JBC 1998)。
GH関連タンパク質ファミリーは、それらの3次元構造が4個の逆平行ヘリックスバンドルとしても知られている4個のαヘリックスを構成することから、構造的類似性を共有している。これらのαヘリックスは、密に詰め込まれており、2個の長いループが平行対に連結している状態で、上-上-下-下方向に逆平行に配置されている。
【0008】
hGH/hCS遺伝子ファミリーは、母親と胎児の代謝調節並びに胎児の成長及び発育において、重要である。妊娠の間は、母親の下垂体GH(hGH-N)発現が抑制され、胎盤により発現されたGH変種であるhGH-Vが母親において優勢なGHとなる。hCS-A遺伝子及びhCS-B遺伝子の産物であるhCSは、妊娠6週目以降、母親と胎児の両方の血液循環系に分泌される。hGH-V及びhCSは、母親において協調して作用してインスリン様成長因子(IGF)生成を刺激し且つ中間代謝を調節し、結果として胎児に対するブドウ糖及びアミノ酸の利用可能性を増加させる。胎児において、hCSは、ラクトゲン受容体及び恐らくはユニークなCS受容体を介して作用して、胚の発達を調節し、中間代謝を調節し、IGF、インスリン、副腎皮質ホルモン及び肺胞界面活性剤の生成を刺激する。胎児組織には機能的GH受容体が存在しないので、妊娠後期までは、胎児下垂体において発現されるhGH-Nは胎児においてほとんど又は全く生理的作用を有さない。強力な体形成性ホルモンでもあるhGH-Vは、胎児には放出されない。まとめると、妊娠中のhGH/hCS遺伝子ファミリーの研究は、ホルモンが互いに、また他の成長因子とも複雑に相互作用していることを明らかにする。胎児の成長及び発達の調節におけるファミリーのメンバーの相対的役割並びにこれらの遺伝子の発現を調節する因子の相対的役割を明らかにするためには、追加の研究が必要である(Handwerger S. & Freemark M. J., Pediatr. Endocrinol. Metab. 2000 Apr ; 13(4): 343-56)。
【0009】
ヒト成長ホルモンは、ソマトトロピンとしても公知であり、下垂体前方の成長ホルモン分泌細胞(somatotroph)と称される細胞により合成及び分泌される約190アミノ酸のタンパク質ホルモンである。このホルモンは主に、成長及び代謝を含む複数の複雑な生理的過程の制御に関与している。成長ホルモンは、ヒト及び動物の両方において使用される薬物としても相当な興味対象である。
成長ホルモンは、ふたつの別個な種類の作用を有する。直接的作用は、標的細胞上の受容体に結合している成長ホルモンの結果である。脂肪の細胞(脂肪細胞)は、例えば、成長ホルモン受容体を有しており、成長ホルモンはそれら脂肪細胞を刺激してトリグリセリドを破壊し、循環脂肪を取込み蓄積する能力を抑制する。間接的作用は、インスリン様成長因子-1(IGF-1)によって主に媒介される。体の成長の刺激における成長ホルモンの主要な役割は、肝臓及び他の組織を刺激して、IGF-1を分泌することである。成長ホルモンの成長促進作用の大部分は、実際にはIGF-1の標的細胞に対するIGF-1の作用によるものである。例えば、IGF-1は、軟骨細胞(軟骨の細胞)の増殖を刺激して、骨の成長をもたらす。成長ホルモンは、タンパク質、脂質及び炭水化物の代謝に対する重要な作用も有する。場合によっては、成長ホルモンの直接的作用が明らかに示されており、他方でIGF-1が重要なメディエーターであると考えられ、一部の場合では直接的作用及び間接的作用の両方が作用しているように見える。
【0010】
成長に対する複雑な作用に加えて、成長ホルモンの欠乏及び過剰のどちらの状態も、正常な生理における成長ホルモンの役割に対する非常に明白な証拠(testament)を提供する。このような障害は、視床下部、下垂体又は標的細胞のいずれかにおける病巣を反映し得る。欠乏状態は、単にこのホルモンの生成の欠乏から生じるだけではなく、ホルモンに対する標的細胞の反応の欠乏からも生じる。
臨床上、成長ホルモンの欠乏又は受容体の欠陥は、成長遅滞又は小人症となる。成長ホルモン欠乏の顕在化は、障害の開始年齢によって異なり、遺伝性又は後天性いずれかの疾患から生じ得る。
成長ホルモンの過剰な分泌の作用も、発症年齢に非常に左右され、ふたつの識別可能な疾患であるように見える。巨人症は、小児又は青年において始まる過剰な成長ホルモン分泌の結果である。これは非常に稀な障害であり、通常成長ホルモン分泌細胞の腫瘍に起因する。
末端肥大症は、成人における成長ホルモンの過剰分泌に起因する。この障害の開始は、典型的には潜行型(insideous)である。臨床上は、骨及び結合組織の過剰な成長が、“粗雑な造作(coarse feature)”を有すると説明されるような外観の変化をもたらす。過剰な成長ホルモン及びIGF-1は代謝の混乱ももたらし、そのような混乱としてはグルコース不耐性が挙げられる。
【0011】
ヒトの遺体の下垂体から精製された成長ホルモンが、重度の成長遅滞の小児を治療するために長らく使用されてきている。最近になって、組換え成長ホルモンの有用性が、ヒト及び動物の集団に複数の他の用途をもたらしている。例えば、ヒト成長ホルモンは、病理学的に低身長症の小児を治療するために、通常使用されている。正常な加齢における成長ホルモンの役割は余り理解されていないが、美容上の加齢症状の一部は、成長ホルモン療法に反応し易いように見える。成長ホルモンは現在、乳牛の乳汁生産を高めることに関して承認されて市販されており;畜産産業における成長ホルモンの別の用途は、生育しているブタをブタ成長ホルモンで処置することである。このような処置は、筋肉成長を著しく刺激し、脂肪の堆積を低下することが明らかにされている。
成長ホルモンが細胞過程において重要な役割を果たすことから、これに関する部分及びその調節方法の研究は、大きな関心事である。このホルモンのスプライシング変種を同定することは、科学的に非常に重要であろう。
【発明の開示】
【0012】
[本発明]
本発明は、INSP101タンパク質がヒト下垂体成長ホルモン(GH-N;P01241)の新規なスプライシング変種であるという発見を基にしている。
本発明の第一の特徴の一態様において:
(i) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)成長ホルモンとして機能するか、又は(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、(i)のフラグメントであるポリペプチド;又は
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物;
であるポリペプチドが提供される。
好ましくは、本発明の第一の特徴の前記第一態様のポリペプチドは:
(i)配列番号8もしくは配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
(ii)成長ホルモンとして機能するか又は(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、(i)のフラグメントであるポリペプチド;又は
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物;である。
【0013】
本発明の第一の特徴の第二態様によると、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドが提供される。
配列番号2に記載の配列を有するポリペプチドは、これ以降“INSP101エクソン2novポリペプチド”と称する。配列番号4に記載の配列を有するポリペプチドは、これ以降“INSP101エクソン3novポリペプチド”と称する。配列番号6に記載の配列を有するポリペプチドは、これ以降“INSP101隣接エクソン2nov-3novポリペプチド”と称する。配列番号8に記載の配列を有するポリペプチドは、これ以降“INSP101完全長ポリペプチド”と称する。配列番号10に記載の配列を有するポリペプチドは、これ以降“INSP101完全長成熟ポリペプチド”と称する。
【0014】
図2は、ヒト由来の下垂体成長ホルモン(GH-N)P01241のスプライシングパターンを、新規スプライシング変種INSP101のスプライシングパターンと比較している。この図から明らかであるように、このタンパク質は、5個の個別のエクソンを含む。INSP101エクソン2novポリペプチド及びINSP101エクソン3novポリペプチドは、選択的スプライシングにより生じた選択的エクソンであり;このスプライシング変種は、伸長型エクソン2(2nov)及び短縮型エクソン3(3nov)を有する。図は、下垂体成長ホルモン(GH-N)の主な二次構造エレメントも示している。GH-Nは、4個のαヘリックス(A、B、C及びD)で構成され、中でも特に重要なものは、ヘリックスAをヘリックスBに連結している“A-Bループ”である。A-Bループは、成長ホルモン受容体に結合するGH-N相互作用面の重要な構成要素である(Wells JA, PNAS vol. 93, pp.1-6 1996, ”Binding in the Growth Hormone Receptor complex”)。新規スプライシング変種INSP101が、(エクソン2の伸長のために)A−Bループに挿入された新たな残基を有することは明らかである。同様に、エクソン3の短縮は、A−Bループにおける幾つかのGH-N残基の除去をもたらし得る。したがって、INSP101はそもそも、A−Bループの構成においてGH-Nとは異なっており、このループは成長ホルモン受容体への結合における主要な決定基であるのことから、INSP101は(結合親和性及び/又は受容体選択性に関して)変化した受容体結合特性を示すことが推定される。
【0015】
本明細書において使用される用語“INSP101ポリペプチド”は、INSP101エクソン2novポリペプチド、INSP101エクソン3novポリペプチド、INSP101隣接エクソン2nov-3novポリペプチド、INSP101完全長ポリペプチド、及びINSP101完全長成熟ポリペプチドを含むか又はそれらからなるポリペプチドを含む。
“成長ホルモンとしての機能”という表現により、本発明者らは、ヒト成長ホルモンの範囲内に保存されている特徴として同定され得るアミノ酸配列又は構造的特徴を含むポリペプチドであり、よってそのポリペプチド活性は完全長の野生型ポリペプチドの機能と比べ実質的に有害な影響を受けないということを意味している。例えば、多種多様なアッセイを用い、ヒト成長ホルモンの結合に対する作用を決定しても良く(例えば、Well J. A. PNAS Vol. 93 pp.1-6, 1996参照)、このようなアッセイとしては、成長ホルモンと受容体との1:1複合体を沈降させるモノクローナル抗体の使用や、hGHbpのC末端近傍に配置した蛍光タグの消光による溶液中のhGHbp分子のhGH誘導性二量体化の使用が挙げられる(Well J. A. PNAS Vol. 93 pp.1-6, 1996参照)(hGHbpは、GH受容体の細胞外ドメインである)。
【0016】
複数のアッセイが、成長ホルモン活性を検出することに利用可能である。このようなアッセイとしては、下記の代謝内分泌学アッセイが挙げられる:
i)脂肪細胞への分化アッセイ
脂肪細胞分化の阻害は、糖尿病及び多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のような疾患におけるインスリン抵抗性の低下において重要であると信じられている脂肪量(adipose mass)の減少のin vitroモデルである。このアッセイの目的は、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を阻害する1又は複数のタンパク質を同定することである。3T3-L1マウス前駆脂肪細胞の細胞株は、インスリン及びIBMXにより脂肪細胞へ分化するように誘導される。分化はTNFα及びシクロヘキサミドにより阻害されるという知見が、陽性の対照として使用される。
ii)トリチウム化されたグルコースの取込み(3T3 L1)
このアッセイの目的は、糖尿病又はPCOS時の脂肪細胞におけるインスリン抵抗性のモデルとして、グルコース取込みを刺激するタンパク質(複数)を同定することである。使用する脂肪細胞は、マウス3T3-L1前駆脂肪細胞が分化したものである。
iii)トリチウム化されたグルコースの取込み(初代ヒト脂肪細胞)
このアッセイの目的は、糖尿病又はPCOS時の脂肪細胞におけるインスリン抵抗性のモデルとしてグルコース取込みを刺激する1又は複数のタンパク質を同定することである。初代ヒト脂肪細胞を使用する。
iv)トリチウム化されたグルコースの取込み(初代ヒト骨格筋細胞)
このアッセイの目的は、糖尿病又はPCOS時の筋肉組織におけるインスリン抵抗性のモデルとしてグルコースの取込みを刺激する1又は複数のタンパク質を同定することである。初代ヒト骨格筋細胞を筋管に分化させてから、このアッセイに使用する。
【0017】
第二の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする精製核酸分子を提供する。
本発明のこの特徴の第一の態様において、精製核酸分子は、配列番号1(INSP101エクソン2novポリペプチドをコードしている)、配列番号3(INSP101エクソン3novポリペプチドをコードしている)、配列番号5(INSP101隣接エクソン2nov-3novポリペプチドをコードしている)、配列番号7(INSP101完全長ポリペプチドをコードしている)、又は配列番号9(INSP101完全長成熟ポリペプチドをコードしている)に記載された核酸配列を含むか、又はこれらの配列のいずれかひとつの余剰的等価物もしくはフラグメントである。
本発明はさらに、配列番号1(INSP101エクソン2novポリペプチドをコードしている)、配列番号3(INSP101エクソン3novポリペプチドをコードしている)、配列番号5(INSP101隣接エクソン2nov-3novポリペプチドをコードしている)、配列番号7(INSP101完全長ポリペプチドをコードしている)、又は配列番号9(INSP101完全長成熟ポリペプチドをコードしている)に記載された核酸配列からなる精製核酸分子、又はそれらの配列のいずれかの余剰的(redandant)等価物もしくはフラグメントである精製核酸分子を提供する。
【0018】
野生型下垂体ヒト成長ホルモンをコードしているコード配列NM 000515は、本発明の範囲から特異的に除外される。
第三の特徴では、本発明は、高ストリンジェンシー条件下で本発明の第二の特徴の核酸分子とハイブリダイズする精製核酸分子を提供する。
第四の特徴では、本発明は、本発明の第二又は第三の特徴の核酸分子を含むベクター、例えば発現ベクターを提供する。
第五の特徴では、本発明は、本発明の第四の特徴のベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
第六の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴の成長ホルモンに特異的に結合するリガンドを提供する。好ましくは、このリガンドは、成長ホルモンである本発明の第一の特徴のポリペプチドの機能を阻害する。本発明のポリペプチドに対するリガンドは、様々な形態で機能することができ、このようなリガンドとしては、天然の又は改変された基質、酵素、受容体、小型有機分子、例えば最大2000Da、好ましくは800Da又はそれ未満の小さい天然の又は合成の有機分子、ペプチド模倣体(peptidemimetic)、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、前述の構造的又は機能的模倣体が挙げられる。
【0019】
第七の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させるか、又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節するのに有効な化合物を提供する。
本発明の第七の特徴の化合物は、前記ポリペプチドの遺伝子発現レベル又は活性を増加させ得るか(アゴニスト作用)、又は低下させ得る(アンタゴニスト作用)。重要なことに、INSP101ポリペプチドの機能を同定することによって、疾患の治療及び/又は診断に有効な化合物を同定し得るスクリーニング方法のデザインが可能になる。本発明の第六及び第七の特徴のリガンド及び化合物は、このような方法を用い同定されても良い。これらの方法は、本発明の特徴として含まれる。
【0020】
第八の特徴で、本発明は、ヒト成長ホルモンが関連した疾患の治療又は診断に使用するための、本発明の第一の特徴のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、又は本発明の第四の特徴のベクター、又は本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物を提供する。このような疾患及び障害は、生殖障害、妊娠障害、例えば妊娠性絨毛疾患、発育障害、例えばSilver-Russell症候群、成長障害、成長ホルモン欠乏症、クッシング病、内分泌障害、細胞増殖障害で、新生物、肉腫、下垂体腫瘍、卵巣腫瘍、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部及び頚部、胎盤部位の栄養膜の腫瘍、腺癌、絨毛上皮腫、骨肉腫及び他の固形腫瘍を含むもの;血管新生、骨髄増殖性障害;自己免疫/炎症疾患;心血管系疾患;神経障害、疼痛;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症、及び肥満を含むもの、悪液質、AIDS、腎疾患;肺損傷;加齢;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症及び寄生体感染症を含むもの、並びに他の病態を含む。好ましくは、これらの疾患は、内分泌機能、特に成長ホルモンが関連しているものである(例えば、Arato G. , Fulop V. , Degrell P. , Szigetvari 1. Pathol. Oncol. Res. 2000 6(4): 292-4;Hitchins M. P. , Stanier P. , Preece M. A. and Moore GE. , J. Med. Genet. 2001 Dec 38(12): 810-9;Rhoton-Vlasak A. , Wagner J. M. , Rutgers J. L. , Baergen R. N. , Young R. H. , Roche P. C. , Plummer T. B. and Gleich G. J., Hum Pathol 1998 Mar 29(3): 280-8 ;Llovera M. , Pichard C., Bernichtein S. , Jeay S., Touraine P. , Kelly P. A. and Goffin V. , Oncogene, 2000 Sep 28 19(41): 4695-705;Savage M. O. , Scommegna S. , Carroll P. V. , Ho J. T. , Monson J. P. , Besser G. M. and Grossman AB., Horm. Res. 2002 58 Suppl 1: 39-43;Aimaretti G., Corneli G. , Bellone S. , Baffoni C., Camanni F. and Ghigo E. , J. Pediatr. Endocrinol. Metab. 2001 14 Suppl 5: 1233-42;Berger P. , Untergasser G., Hermann M. , Hittmair A. , Madersbacher S. and Dirnhofer S. , Hum. Pathol. 1999 Oct 30(10): 1201-6;Hamilton J. , Chitayat D. , Blaser S. , Cohen L. E. , Phillips J. A. 3rd and Daneman D. , Am. J. Med. Genet. 1998 Nov 2 80(2): 128-32;Gonzalez- Rodriguez E. , Jaramillo-Rangel G. and Barrera-Saldana H. A. , Am. J. Med. Genet. 1997 Nov 12 72(4): 399-402;Perez Jurado L. A. , Argente J. , Barrios V. , Pozo J. , Munoz M. T., Hernandez M. and Francke U. , J. Pediatr. Endocrinol. Metab. 1997 Mar-Apr 10(2): 185-90;Saeger W. and Lubke D. , Endocr. Pathol. 1996 Spring 7(1) : 21-35 ;Conzemius M. G., Graham J. C. , Haynes J. S. and Graham C. A. , Am. J. Vet. Res. 2000 Jun 61(6): 646-50;Bartlett D. L. , Charland S. , Torosian M. H. , Cancer 1994 Mar 1 73(5): 1499-504参照)。本発明の第八の特徴の分子は、これらのような疾患及び障害の治療用医薬品の製造においても使用することができる。
【0021】
第九の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベル又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性レベルを前記患者由来の組織で評価する工程、及び前記発現又は活性レベルをコントロールレベルと比較する工程を含む患者の疾患を診断する方法を提供し、この場合前記コントロールレベルと異なるレベルは疾患を示している。前記の方法は、好ましくはin vitroで実施されるであろう。同様な方法は、患者における疾患の治療的処置のモニタリングに使用され、この場合、時間の経過にしたがってポリペプチド又は核酸分子の発現もしくは活性レベルがコントロールレベルに向かって変化することは、疾患の寛解を示している。
本発明の第一の特徴のポリペプチドを検出する好ましい方法は、以下の工程を含む:(a)本発明の第六の特徴のリガンド(例えば抗体)と生物学的サンプルとを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適した条件下で接触させる工程;及び(b)前記複合体を検出する工程。
本発明の第九の特徴によると、例えば短いプローブによる核酸ハイブリダイゼーション法、点変異分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、及び、抗体を用いて異常なタンパク質レベルを検出する方法といった種々の異なる方法が存在することは、当業者には明らかであろう。同様な方法を短期又は長期ベースで用いて、患者においてモニターされる疾患の治療的処置を可能にすることができる。本発明はまた、前記疾患診断方法に有用なキットも提供する。
【0022】
第十の特徴では、本発明は、成長ホルモンとして又は成長ホルモン活性のモジュレーターとしての第一の特徴のポリペプチドの使用を提供する。本発明のポリペプチドの成長ホルモンとして適切な使用は、細胞の成長、代謝若しくは分化のレギュレーターとしての使用;受容体/リガンド対の一部としての使用;並びに、生理学的もしくは病理学的状態の診断マーカーとしての使用が挙げられる。前述のように、成長ホルモンは、脂肪細胞におけるトリグリセリドの破壊を刺激する。ヒト成長ホルモンは、肝臓を刺激してIGF-1を分泌させることにより、体の成長も刺激する。これは次に、軟骨細胞を増殖させ、骨成長をもたらす。成長ホルモンは、代謝に対する作用も有する。成長ホルモンの投与は、小人症の公知の治療法である。乳牛の乳汁産生の増加及びブタ成長の増大のために使用されることも知られている。これらの有用性は全て、本発明のポリペプチドにより活用され得る。さらに、本発明のポリペプチドのアンタゴニストを、巨人症を生じ得る成長ホルモンの過剰生成を治療するために使用することができる。
【0023】
前述のように、多くの様々なアッセイを使用して、ヒト成長ホルモンの結合に関する作用を決定することができ(例えば、Well J. A. PNAS Vol. 93 pp.1-6, 1996参照)、そのようなアッセイとしては、成長ホルモンと受容体との1:1複合体を沈降させるモノクローナル抗体の使用や、hGHbpのC末端近傍に配置した蛍光タグの消光による溶液中のhGHbp分子のhGH誘導性二量体化の使用が挙げられる(Well J. A. PNAS Vol. 93 pp. 1-6, 1996参照)(hGHbpは、GH受容体の細胞外ドメインである)。
第十一の特徴において、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、又は本発明の第四の特徴のベクター、又は本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物を、医薬として許容できる担体と組合せて含有する医薬組成物を提供する。
第十二の特徴において、本発明は、治療又は診断における使用のための、本発明の第一の特徴のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、又は本発明の第四の特徴のベクター、又は本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物を提供する。これらの分子は、疾患の治療用医薬品の製造において使用することもできる。
【0024】
第十三の特徴では、本発明は患者の疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、又は本発明の第四の特徴のベクター、又は本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物を患者に投与することを含む。
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現、又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現又は活性レベルと比較したとき罹患対象者で低下する疾患については、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物がアゴニストであるべきである。逆に、前記天然の遺伝子の発現、又は前記ポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現又は活性レベルと比較したとき罹患対象者で上昇する疾患については、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物がアンタゴニストであるべきである。前記アンタゴニストの例にはアンチセンス核酸分子、リボザイム及びリガンド(例えば抗体)が含まれる。
【0025】
第十四番目の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドを高レベルで、又は低レベルで発現させるために、又は全く発現させないように形質転換したトランスジェニック又は遺伝子ノックアウト非ヒト動物を提供する。前記トランスジェニック動物は、疾患の研究用モデルとして非常に有用であり、さらに前記疾患の治療又は診断に有効な化合物の同定を目的とするスクリーニング方法で用いることもできる。
本発明を利用するために用いることができる標準的な技術及び方法の要旨は、下記で提供される。本発明は、記載される特定の方法論、プロトコル、細胞株、ベクター及び試薬に限定されないことは理解されよう。本明細書で用いられる専門用語は単に特定の態様を説明するためのものであり、前記用語によって本発明の範囲を限定しようとするものではないこともまた理解されよう。本発明の範囲は添付の請求の範囲の用語によってのみ限定される。
本明細書では、ヌクレオチド及びアミノ酸についての標準的な略語が用いられる。
本発明の実施では別に指示がなければ、分子生物学、微生物学、リコンビナントDNA技術及び免疫学の通常の技術が用いられ、前記技術は当業者の技術範囲内である。
【0026】
前記のような技術は、文献で完全に説明されている。特に適切な解説書の例には以下が含まれる:Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition (1989); DNA Cloning, Vol. I and II (D.N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Animal Cell Culture (R.I. Freshney ed. 1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the Methods in Enzymology series (Academic Press, Inc.)特にVol. 154 & 155;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.H. Miller and M.P. Calos eds. 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Mayer and Walker, eds. 1987, Academic Press, London);Scopes, (1987) Protein Purification: Principles and Practice, Second Edition (Springer Verlag, NY);及びHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell eds. 1986)。
【0027】
本明細書において用いる“ポリペプチド”という用語は、ペプチド結合又は改変ペプチド結合によって互いに結合した2又は3以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質が含まれ、前記改変ペプチド結合によるものは、すなわちペプチドイソスターである。この用語は、短鎖(ペプチド及びオリゴペプチド)及び長鎖(タンパク質)の両方を指す。
本発明のポリペプチドは成熟タンパク質の形態を有するものでもよく、またプレ-、プロ-又はプレプロ-タンパク質であってプレ-、プロ-又はプレプロ-部分の切断によって活性化されて活性な成熟ポリペプチドを生じるタンパク質でもよい。そのようなポリペプチドでは、プレ-、プロ-又はプレプロ-配列がリーダー配列もしくは分泌配列であっても、又は成熟ポリペプチド配列の精製のために用いられる配列であってもよい。
本発明の第一の特徴のポリペプチドは、融合タンパク質の一部分を形成することができる。例えば、1又は2以上の付加アミノ酸配列を含むことがしばしば有利であり、前記付加アミノ酸配列は、分泌もしくはリーダー配列、プロ-配列、精製に役立つ配列、又は例えばリコンビナント形成の間により高いタンパク質安定性を付与する配列を含んでもよい。あるいは、又は前記に加えて、前記成熟ポリペプチドを別の化合物、例えば前記ポリペプチドの半減期を増加させるような化合物(例えばポリエチレングリコール)と融合させることができる。
【0028】
ポリペプチドは、天然のプロセス(例えば翻訳後プロセッシング)によって、又は本技術分野で周知の化学的改変技術によって改変された、20の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでいてもよい。本発明のポリペプチドに一般的に存在する公知の改変には、グリコシル化、脂質付加、硫化、γ-カルボキシル化(例えばグルタミン酸残基の)、ヒドロキシル化及びADP-リボシル化がある。他の可能な改変には、アセチル化、アシル化、アミド化、フラビンの共有結合付加、ヘム部分の共有結合付加、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合付加、脂質誘導体の共有結合付加、ホスファチジルイノシトールの共有結合付加、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、GPIアンカー形成、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解性プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、タンパク質へのトランスファーRNA媒介性アミノ酸付加(例えばアルギニル化)及びユビキチン結合が含まれる。
改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ末端又はカルボキシ末端を含むポリペプチド内のいずれの場所に存在してもよい。実際、共有結合改変によるポリペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端又はその両端の閉塞(blockage)は、天然に存在するポリペプチド及び合成ポリペプチドで一般的であり、そのような改変は本発明のポリペプチドにも存在し得る。
ポリペプチド内に生じる改変は、多くの場合ポリペプチドが生成される方法の関数であろう。組換えによって生成されるポリペプチドについて、改変の性質及び程度は大部分が、特定の宿主細胞の翻訳後改変能力及び問題のポリペプチドのアミノ酸配列に存在している改変シグナルによって決定されるであろう。例えば、グリコシル化パターンは、異なる種類の宿主細胞間で変動する。
【0029】
本発明のポリペプチドは、任意の適切な様式で調製することができる。そのようなポリペプチドには、単離された天然に存在するポリペプチド(例えば、細胞培養物から精製される)、組換え的に生成されたポリペプチド(融合タンパク質を含む)、合成的に生成されたポリペプチド、又は前記方法の組合せによって生成されたポリペプチドが含まれる。
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP101ポリペプチドと相同なポリペプチドであり得る。本明細書で用いる用語として、2種のポリペプチドが、ポリペプチドの一方の配列が他方のポリペプチドの配列に対して充分に高い同一性又は類似性を有する場合、“相同である”と称される。“同一性”とは、アラインメントを施した配列のどの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で同一であることを示す。“類似性”は、アラインメントを施した配列のいずれの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で類似の種類であることを示す。同一性及び類似性の度合いは、容易に計算できる(Computational Molecular Biology, A.M. Lesk ed., Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing. Informatics and Genome Projects, D.W. Smith ed., Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, A.M. Griffin and H.G. Griffin eds., Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, G. von Heinje, Academic Press, 1987;及びSequence Analysis Primer, M. Gribskov and J. Devereux eds., M. Stockton Press, New York, 1991)。
【0030】
したがって、相同なポリペプチドには、INSP101ポリペプチドの天然の生物学的変種(例えば前記ポリペプチドが由来した種における対立形質変種又は地理的変種)及び変異体(例えばアミノ酸置換、挿入又は欠失を含む変異体)が含まれる。前記変異体は、1又は2以上のアミノ酸残基が保存的又は非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されているポリペプチドを含んでもよく、さらにそのような置換アミノ酸残基は遺伝コードでコードされたものでもそうでなくてもよい。典型的な前記の置換は、Ala、Val、Leu及びIle間で;SerとThr間で;酸性残基AspとGlu間で;AsnとGln間で;塩基性残基LysとArg間で;又は芳香族残基PheとTyr間で生じる。特に好ましいものは、いくつか(すなわち5から10、1から5、1から3、1から2、又は単に1つ)のアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失又は付加された変種である。とりわけ好ましいものは、タンパク質の特性及び活性を変化させないサイレント置換、付加及び欠失である。また、その際とりわけ好ましいものは、保存的置換である。前記変異体にはまた、1又は2以上のアミノ酸残基が置換基を含むポリペプチドも含まれる。
【0031】
典型的には、2つのポリペプチド間で30%を越える同一性が、機能的等価物の指標であると考えられる。好ましくは、本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP101ポリペプチド又はそれらの活性なフラグメントと、INSP101配列の完全長にわたり90%を越える配列同一性の度合いを有する。より好ましいポリペプチドは、それぞれINSP101配列の完全長にわたり92%、95%、98%又は99%を越える同一性の度合いを有する。
【0032】
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドはまた、構造についてのアラインメントの1つ又は2つ以上の技術を用いて同定されたポリペプチドであってもよい。例えば、バイオペンジウム(Biopendium)検索データベースの作製に用いられる検索ツールの一角を構成するインファーマティカ=ゲノムスレッダー(Inpharmatica Genome Threader)技術を用いて(同時係属国際特許出願(PCT/GB01/01105)を参照されたい)、INSP101ポリペプチドと比較して低い配列同一性しかもたないが、成長ホルモンタンパク質であると推定される現在未知の機能のポリペプチドを同定することができ、この方法は、INSP101ポリペプチド配列との顕著な構造的相同性を共有することに基づき、本発明の第一の特徴のポリペプチドを使用する。“顕著な構造的相同性”とは、インファーマティカ=ゲノムスレッダーが、2つのタンパク質は10%以上の確実性を有して構造的相同性を共有すると予測することを意味する。
本発明の第一の特徴のポリペプチドはまた、INSP1O1ポリペプチドのフラグメント及びINSP101ポリペプチドの機能的等価物のフラグメントを含むが、ただしこれらフラグメントが成長ホルモン活性を保持するか又はINSP101ポリペプチドと共通の抗原決定基を有することを条件とする。
【0033】
本明細書において用いる、“フラグメント”という用語は、INSP101ポリペプチド又はその機能的等価物の1つのアミノ酸配列の一部(全体ではないが)と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。前記フラグメントは、前記配列に由来する少なくともn個の連続するアミノ酸を含むべきであり、さらに個々の配列に応じてnは好ましくは7又はそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20又はそれより大きい)。小さなフラグメントは、抗原決定基を構成することができる。
完全長INSP101ポリペプチドのフラグメントは、各々、INSP101ポリペプチド配列における隣接するエクソン配列の2又は3の組合せからなっていてもよい。例えば、このような組合せとしては、エクソン1及び2、エクソン2及び3又はエクソン1、2及び3が挙げられる。このようなフラグメントは、本発明に含まれる。
そのようなフラグメントは、“独立的存在(free-standing)”、すなわち、他のアミノ酸もしくはポリペプチドの一部でもなく、他のアミノ酸もしくはポリペプチドの一部に融合されているのでもないものであってよく、又はより大きなポリペプチドに含まれて、前記ポリペプチドの一部分又は領域を形成してもよい。より大きなポリペプチドの内部に含まれている場合、本発明のフラグメントは、最も好ましくは連続するただ1つの領域を形成する。例えばある種の好ましい態様は、前記フラグメントのアミノ末端に融合したプレ-及び/もしくはプロ-ポリペプチド領域を有するフラグメント、並びに/又は前記フラグメントのカルボキシ末端に融合した付加的領域を有するフラグメントに関する。しかしながら、いくつかのフラグメントがただ1つのより大きなポリペプチドの内部に含まれていてもよい。
【0034】
本発明のポリペプチド又はその免疫原性フラグメント(少なくとも1つの抗原決定基を含む)を用いて、例えばポリクローナル又はモノクローナル抗体といった、前記ポリペプチドに免疫特異的なリガンドを作製することができる。そのような抗体を用いて、本発明のポリペプチドを発現しているクローンを単離もしくは同定するか、又はアフィニティークロマトグラフィーで本発明のポリペプチドを精製することができる。前記抗体はまた、当業者には明らかなように、他の用途のうち診断的又は治療的補助としても用いることができる。
“免疫特異的”という用語は、前記抗体が、先行技術における他の近縁ポリペプチドに対する親和性よりも、本発明のポリペプチドに対して実質的に強い親和性を有することを意味する。本明細書で用いる“抗体”という用語は、完全な分子だけでなく問題の抗原決定基と結合することができるそのフラグメント、例えばFab、F(ab’)2及びFvも指す。したがって、そのような抗体は、本発明の第一の特徴のポリペプチドと結合する。
【0035】
“実質的に強い親和性”は、本発明のポリペプチドの親和性に、公知のヒト成長ホルモンの親和性と比べて、測定可能な増加が存在することを意味する。
好ましくは、本発明のポリペプチドの親和性が、公知の分泌タンパク質、例えば成長ホルモンよりも、少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍又はそれ以上である。
ポリクローナル抗体が所望される場合、選択される哺乳類(例えばマウス、ウサギ、ヤギ又はウマ)が、本発明の第一の特徴のポリペプチドで免疫され得る。動物を免疫するために用いられるポリペプチドは、リコンビナントDNA技術によって誘導されてもよく、又は化学的に合成されてもよい。所望する場合には、前記ポリペプチドを担体タンパク質と結合させることができる。前記ポリペプチドと化学的に結合させることができる一般的に用いられ得る担体には、ウシ血清アルブミン、チログロブリン及びキーホールリンペットヘモシアニンが含まれる。次に、前記担体結合ポリペプチドが用いられて、動物が免疫される。免疫した動物から血清が採集され、既知の方法(例えばイムノアフィニティークロマトグラフィー)にしたがって処理される。
【0036】
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対するモノクローナル抗体もまた、当業者は容易に生成できる。ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作製する一般的な方法論は、周知である(例えば以下を参照されたい:G. Kohler & C. Milstein, Nature 256:495-497(1975);Kozbor et al., Immunology Today 4:72(1983);Cole et al., 77-96 “Monoclonal Antibodies and Cancer Treatment”, Alan R. Liss, Inc. (1985))。
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対して生成されたモノクローナル抗体のパネル(panels)を種々の特性、すなわちアイソタイプ、エピトープ、親和性などについてスクリーニングすることができる。モノクローナル抗体は、それらを作らせた個々のポリペプチドの精製に特に有用である。あるいは、対象のモノクローナル抗体をコードする遺伝子を、例えば当技術分野で知られるPCR技術によってハイブリドーマから単離し、さらにクローニングし適切なベクターで発現させることができる。
また、非ヒト可変領域がヒト定常領域と結合又は融合されているキメラ抗体(例えば以下を参照されたい:Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:3439(1987))も有用であり得る。
【0037】
抗体は、例えばヒト化により、改変して個体での免疫原性を減少させることができる(例えば以下を参照されたい:Jones et al., Nature,321:522(1986); Verhoeyen et al., Science, 239:1534(1988);Kabat et al., J. Immunol., 147:1709(1991);Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029(1989);Gorman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:34181(1991);Hodgson et al., Bio/Technology 9:421(1991))。本明細書で用いられる“ヒト化抗体”という用語は、非ヒトドナー抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメイン中のCDRアミノ酸及び選択した他のアミノ酸がヒト抗体の等価なアミノ酸に代えて置換されている抗体分子を指す。したがって、ヒト化抗体はヒトの抗体とよく似ているが、ドナー抗体の結合能力を有する。
また別の選択肢では、前記抗体が、2つの異なる抗原結合ドメインを有し、その各ドメインは異なるエピトープに向けられている“二重特異性”抗体であってもよい。
ファージディスプレー技術を用いて、本発明のポリペプチドに対する結合活性を有する抗体をコードしている遺伝子を、関連する抗体の保有についてスクリーニングされたヒト由来のリンパ球のPCR増幅V-遺伝子レパートリー、又は未感作ライブラリーのいずれかから選択することができる(J. McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-554; J. Marks et al., (1992) Biotechnology 10:779-783)。前記抗体の親和性は、鎖のシャッフリングによって改善することもできる(T. Clackson et al., (1991) Nature 352:624-628)。
上記の技術によって作製された抗体は、ポリクローナルであれモノクローナルであれ、免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で試薬として用いることができるという点で、更なる有用性を有する。これらの用途では、これら抗体を、分析的に検出可能な試薬(例えば放射性同位元素、蛍光分子又は酵素)で標識することができる。
【0038】
本発明の第二及び第三の特徴の好ましい核酸分子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8及び配列番号10に記載のポリペプチド配列並びに機能的に等価なポリペプチドをコードするものである。これら核酸分子は、本明細書に記載した方法及び用途で用いることができる。本発明の核酸分子は、好ましくは本明細書で開示される配列に由来する少なくともn個の連続するヌクレオチドを含み、この場合、前記個々の配列に応じてnは10又はそれより大きい、例えば12、14、15、18、20、25、30、35、40又はそれより大きい。
本発明の核酸分子は、例えばアンチセンス又はプローブとしての目的のために、上記で述べた核酸分子に相補的な配列も含む。
本発明の核酸分子は、RNA(例えばmRNA)、又はDNA(例えばcDNA、合成DNA又はゲノムDNAを含む)の形態であってもよい。そのような核酸分子は、クローニングによって、化学合成によって、又はそれらの組合せによって得ることができる。前記核酸分子は、固相ホスホルアミダイト化学合成のような技術を用いる化学合成によって、ゲノム又はcDNAライブラリーから、又は生物体からの分離によって調製することができる。RNA分子は、一般的にはDNA配列のin vitro又はin vivo転写によって作製され得る。
核酸分子は、二本鎖でも一本鎖でもよい。一本鎖DNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)でも、非コード鎖(アンチセンス鎖とも称される)でもよい。
“核酸分子”という用語には、DNA及びRNAのアナログ(例えば改変骨格を含むもの)、並びにペプチド核酸(PNA)も含まれる。本明細書で用いられる“PNA”という用語は、アンチセンス分子又は抗遺伝子(anti-gene)作用因子を指し、長さが少なくとも5ヌクレオチドであってアミノ酸残基のペプチド骨格に結合されたオリゴヌクレオチドを含み、このペプチド骨格は好ましくはリシンで終わる。前記末端リシンは当該組成物に可溶性を付与する。PNAは、PEG化(pegylated)されて細胞内での寿命が延長されてもよく、細胞内では、PNAは優先的に相補性一本鎖DNA及びRNAと結合して転写物の伸長を停止させる(P.E. Nielsen et al. (1993) Anticancer Drug Des. 8:53-63)。
本発明のポリペプチドをコードしている核酸分子は、本明細書に説明された核酸分子の1又は2以上のコード配列と同一であっても良い。
【0039】
これらの分子はまた、遺伝コードの縮退の結果として、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10のポリペプチドをコードする配列と異なる配列を有することもある。
そのような核酸分子には、それ自体で成熟なポリペプチドのコード配列;成熟ポリペプチドのコード配列及び付加コード配列(例えばリーダー配列又は分泌配列をコードするもの)、例えばプロ-、プレ-又はプレプロ-ポリペプチド配列をコードするもの;前述の付加的コード配列を伴って、又は伴わないで、さらに付加的な非コード配列(非コード5’及び3’配列を含む)を伴う成熟ポリペプチドのコード配列が含まれるが、ただしこれらに限定されず、前記の非コード5’及び3’配列は、例えば転写される非翻訳配列で、転写(終止シグナルを含む)、リボソーム結合及びmRNA安定性において役割を果たすものである。前記核酸分子は、更なる機能性を提供するアミノ酸のような付加アミノ酸をコードする付加配列を含むこともできる。
【0040】
本発明の第二及び第三の特徴の核酸分子は、本発明の第一の特徴のポリペプチド及びフラグメントの機能的等価物及びそれらのフラグメントもコードし得る。そのような核酸分子は、天然に存在する変種(例えば天然に存在する対立形質変種)であっても、又は前記分子は天然に存在することが知られていない変種であってもよい。前記のような天然に存在しない核酸分子の変種は、突然変異誘発技術(核酸分子、細胞又は生物に対して適用される技術が含まれる)によって達成できる。
このような変種の中では、特にヌクレオチドの置換、欠失又は挿入によって前述の核酸分子と異なる変種が挙げられる。置換、欠失又は挿入には、1又は2以上のヌクレオチドが関与し得る。変種は、コード領域又は非コード領域又はその両方において変化していてもよい。コード領域における変化は、保存的又は非保存的なアミノ酸の置換、欠失又は挿入を生成し得る。
本発明の核酸分子はまた、多様な理由で、当技術分野で一般的に知られている方法を用いて操作されてもよく、前記方法としては、遺伝子産物(ポリペプチド)のクローニング、プロセッシング及び/又は発現の改変が挙げられる。ランダムフラグメント化によるDNAシャッフリング並びに遺伝子フラグメント及び合成オリゴヌクレオチドのPCRリアッセンブリーは、ヌクレオチド配列の操作に用いられ得る技術に含まれる。部位特異的突然変異誘発を用いて、新規な制限部位の挿入、グリコシル化パターンの変更、コドンの優先性の変化、スプライシング変種の生成、変異の導入などを行うことができる。
【0041】
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする核酸分子は、結合核酸分子が融合タンパク質をコードするように、異種配列に連結されてもよい。前記のような結合核酸分子は本発明の第二又は第三の特徴に包含される。例えば、本発明のポリペプチドの活性の阻害物質についてペプチドライブラリーをスクリーニングするために、前記のような結合核酸分子を用いて、市販の抗体により認識され得る融合タンパク質を発現させることは、有用であり得る。融合タンパク質はまた、本発明のポリペプチド配列と異種タンパク質配列との間に位置する切断部位を含むように操作し、それによって前記ポリペプチドを異種タンパク質から切り離して精製することができるようにしてもよい。
本発明の核酸分子には、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子と部分的に相補的であり、したがってそのコード核酸分子とハイブリダイズする(ハイブリダイゼーション)アンチセンス分子も含まれる。そのようなアンチセンス分子(例えばオリゴヌクレオチド)は、当業者にはよく知られるように、本発明のポリペプチドをコードする標的核酸を認識し、その標的核酸と特異的に結合してその転写を妨げるようにデザインすることができる(例えば以下の文献を参照されたい:J.S. Cohen, Trends in Pharm. Sci., 10:435(1989);J. Okano, Neurochem. 56:560(1991);J. O’ Connor, Neurochem. 56:560(1991);Lee et al., Nucleic Acids Res. 6:3073(1979);Cooney et al., Science 241:456(1988);Dervan et al., Science 251:1360(1991))。
【0042】
本明細書で用いられる“ハイブリダイゼーション”という用語は、2つの核酸分子が水素結合によって互いに会合することを指す。典型的には、1つの分子が固相支持体に固定され、他方は溶液中で遊離しているであろう。次に、2つの分子は、水素結合に適した条件下で互いに接触させられ得る。前記結合に影響する因子には以下が含まれる:溶媒の種類及び体積;反応温度;ハイブリダイゼーションの時間;攪拌;液相分子の固相支持体への非特異的結合を妨害する薬剤(デンハルト試薬、又はBLOTTO);分子の濃度;分子の結合速度を増加させる化合物の使用(硫酸デキストラン又はポリエチレングリコール);及びハイブリダイゼーションに続く洗浄条件のストリンジェンシー(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。
完全に相補的な分子と標的分子とのハイブリダイゼーションの阻害は、当業者に知られるハイブリダイゼーションアッセイを用いて調べることができる(例えばSambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。したがって、実質的に相同な分子は、文献(G.M. Wahl and S.L. Berger, 1987, Methods Enzymol. 152:399-407; A.R. Kimmel, 1987, Methods Enzymol. 152:507-511)で教示されるように、完全に相同な分子と標的分子との結合を種々のストリンジェンシー条件下で競合させ阻害するであろう。
“ストリンジェンシー”とは、異なる分子の会合よりも非常に類似した分子の会合に適したハイブリダイゼーション反応の条件を指す。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、以下を含む溶液(50%のホルムアミド、5倍のSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍のデンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/mLの変性せん断サケ精子DNA)中で42℃にて一晩インキュベーションし、続いてフィルターを約65℃にて0.1倍のSSC中で洗浄すると定義される。低ストリンジェンシー条件は、35℃にて実施されるハイブリダイゼーション反応を含む(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。好ましくは、ハイブリダイゼーションに用いられる条件は高ストリンジェンシー条件である。
【0043】
本発明のこの特徴の好ましい態様は、INSP101核酸分子をコードする核酸分子の全長にわたって少なくとも90%同一である核酸分子、及びそのような核酸分子と実質的に相補的な核酸分子である。
好ましくは、本発明のこの特徴の核酸分子は、そのようなコード配列の全長にわたって少なくとも92%同一の領域又はこれらと相補的な核酸分子を含む。これに関しては、そのような核酸分子の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%又は99%同一の核酸分子が特に好ましい。この特徴の好ましい態様は、INSP101ポリペプチドと同じ生物学的機能又は活性を実質的に保持するポリペプチドをコードする核酸分子である。
本発明はまた、以下の工程を含む、本発明の核酸分子を検出する方法を提供する:(a)二重鎖を形成するハイブリダイゼーション条件下で、本発明の核酸プローブを生物学的サンプルと接触させる工程;及び(b)形成された前記の二重鎖を全て検出する工程。
【0044】
本発明にしたがって利用し得るアッセイに関連して下記でさらに考察するように、上述の核酸分子をRNA、cDNA又はゲノムDNAに対するハイブリダイゼーションプローブとして用いて、INSP101ポリペプチドをコードする完全長cDNA及びゲノムクローンを単離し、さらにこのポリペプチドをコードする遺伝子と高い配列類似性を有する相同遺伝子又はオーソログ遺伝子のcDNA又はゲノムクローンを単離することができる。
これに関しては、当技術分野で既知の他の技術のうち、特に以下の技術を利用することができ、これらの技術は、例示として下記で考察される。DNAのシークエンシング及び解析の方法は周知であって、当技術分野では一般的に利用可能であり、本明細書で考察される本発明の態様の多くを実施するために実際に用いることができる。そのような方法では、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、シークエナーゼ(US Biochemical Corp., Cleaveland, OH)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)、耐熱性T7ポリメラーゼ(Amersham, Chicago, IL)、又はポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼの組合せ(例えば市販(Gibco/BRL, Gaithersburg, MD)のELONGASE増幅システムで見出されるようなもの)のような酵素を利用することができる。好ましくは、シークエンシング過程は、例えばハミルトンマイクロラブ(Hamilton Micro Lab)2200(Hamilton, Reno, NV)、ペルティエサーマルサイクラー(Peltier Thermal Cycler)PTC200(MJ Research, Watertown, MA)、ABIカタリスト並びに373及び377DNAシークエンサー(Perkin Elmer)のような機器を用いて自動化することができる。
【0045】
INSP101ポリペプチドの機能と等価な機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子を単離する方法の1つは、当技術分野で知られている標準的な手法を用い、天然のプローブ又は人工的に設計したプローブによりゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーを探索することである(例えば以下の文献を参照されたい:“Current Protocols in Molecular Biology”, Ausubel et al.(eds). Greene Publishing Association and John Wiley Interscience, New York, 1989, 1992)。特に有用なプローブは、適切なコード遺伝子(配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7又は配列番号9)に由来する核酸配列に一致するか、又は前記配列と相補的であって、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、さらに好ましくは少なくとも50の連続する塩基を含むプローブである。前記のようなプローブは、分析的に検出可能な試薬で標識して、前記プローブの識別を容易にすることができる。有用な試薬には、放射性同位元素、蛍光色素、及び検出可能な生成物の形成を触媒し得る酵素が含まれるが、ただしこれらに限定されない。これらのプローブを用いて、当業者は、ヒト、哺乳類又は他の動物供給源から対象のタンパク質をコードするゲノムDNA、cDNA又はRNAポリヌクレオチドの相補的なコピーを単離し、近縁配列、例えば前記のファミリー、タイプ及び/又はサブタイプに属するまた別のメンバーについて、前記の供給源をスクリーニングすることができるであろう。
【0046】
多くの場合、単離されるcDNA配列は不完全で、ポリペプチドをコードする領域は短く(通常は5’末端で)切断されているであろう。完全長cDNAを得るために、又は短いcDNAを伸長させるために、いくつかの方法が利用可能である。そのような配列は、部分的なヌクレオチド配列を用い、上流の配列(例えばプロモーター及び調節エレメント)を検出するための当技術分野で公知の種々の方法を用いて伸長させることができる。例えば、使用され得るある方法は、cDNA末端迅速増幅法(RACE;例えば以下を参照されたい:Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988) 85:8998-9002)に基づく。前記技術の最近の改変(例えばマラソン(Marathon)(商標)技術(Clontech Laboratories Inc.)により例示される)は、より長いcDNAの検索を顕著に単純化している。“制限部位”PCRと称されるわずかに異なる技術では、普遍的プライマーを用いて、既知の遺伝子座に近接する未知の核酸配列が検索される(G. Sarkar (1993) PCR Methods Applic. 2:318-322)。逆PCRも、既知の領域に基づく多様なプライマーを用いて、配列を増幅すること又は伸長することに用いられ得る(T. Triglia et al. (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186)。使用され得る別の方法は捕捉PCRで、この方法は、ヒト及び酵母の人工染色体DNAにおける既知配列に近接しているDNAフラグメントのPCR増幅を含む(M. Lagerstrom et al. (1991) PCR Methods Applic. 1:111-119)。未知配列を検索するために用いられ得る別の方法は、パーカーの方法である(J.D. Parker et al.(1991) Nucleic Acids Res. 19:3055-3060)。さらに、ゲノムDNAを少しずつ移動して調べるためにPCR、入れ子(nested)プライマー及びプロモーターファインダーTM(PromoterFinderTM)ライブラリー(Clontech, Palo Alto, CA)を用いてもよい。この方法ではライブラリーのスクリーニングが不要で、イントロン/エクソン結合部の発見に有用である。
完全長cDNAをスクリーニングする場合、より大きなcDNAを包含するようにサイズ選択されたライブラリーを用いることが好ましい。さらにまた、遺伝子の5’領域を含む配列をより多く含むという点で、ランダムプライミングした(random-primed)ライブラリーが好ましい。ランダムプライムライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを生成できない状況で特に好まれ得る。ゲノムライブラリーは、5’非転写調節領域に配列を伸長させるために有用であり得る。
【0047】
本発明のある態様では、染色体上の位置特定のために、本発明の核酸分子を用いることができる。この技術では、核酸分子は個々のヒト染色体上の特定の位置に対して特異的に標的化され、個々のヒト染色体上の特定の位置とハイブリダイズさせることができる。本発明の関連配列の染色体上へのマッピングは、遺伝子関連疾患に関する配列の相関性確認において重要な工程である。いったん染色体の正確な位置に配列がマッピングされたら、前記配列の染色体上の物理的な位置を遺伝子地図データと相関させることができる。そのようなデータは、例えば以下で見出すことができる:V. McKusick, Mendelian Inheritance in Man(ジョーンズホプキンス大学、ウェルチ医学図書館を通じてオンラインで利用可能である)。同じ染色体領域にマッピングされた遺伝子と疾患との関係を、次に連鎖解析(物理的に近接する遺伝子の同時遺伝(coinheritance))によって同定する。これにより、ポジショナルクローニング又は他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を検索する研究者に貴重な情報が提供される。いったん疾患又は症候群の位置が遺伝連鎖によって特定のゲノム領域で大まかに限局されたら、前記領域にマッピングされるいずれの配列も、更なる解析のための関連遺伝子又は調節遺伝子となることができる。前記核酸分子はまた、正常な個体、キャリア個体又は罹患個体間で転座、逆位などによる染色体位置上の相違を検出するために用いることができる。
【0048】
本発明の核酸分子はまた、組織分布同定(tissue localisation)のために貴重である。そのような技術は、ポリペプチドをコードするmRNAの検出によって、組織中の前記ポリペプチドの発現パターンの決定を可能にする。これらの技術には、in situハイブリダイゼーション技術及びヌクレオチド増幅技術(例えばPCR)が含まれる。これらの研究から得られる結果は、生物内での前記ポリペプチドの正常な機能を示唆する。さらに、変異遺伝子によってコードされるmRNAの発現パターンと正常mRNA発現パターンとの比較研究によって、変異ポリペプチドの疾患における役割に対する貴重な洞察が提供される。そのような不適切な発現は時間的、位置的又は量的性質を有する場合もある。
遺伝子サイレンシングアプローチを実施して、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の内在性発現をダウンレギュレートすることもできる。RNA干渉(RNAi)(S.M. Elbashir et al. Nature 2001, 411, 494-498)は、使用可能な配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのための1つの方法である。短いdsRNAオリゴヌクレオチドをin vitroで合成して細胞内に導入する。これらdsRNAの配列特異的結合によって標的mRNAの分解が開始され、標的タンパク質の発現が減少又は阻害される。
上記に述べた遺伝子サイレンシングの有効性は、ポリペプチド発現の測定(例えばウェスタンブロットによる)、又はTaqManによる方法を用いるRNAレベルの測定によって評価することができる。
【0049】
本発明のベクターは本発明の核酸分子を含み、クローニングベクターでも発現ベクターでもよい。本発明のベクターで形質転換、トランスフェクト又は形質導入され得る本発明の宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよい。
本発明のポリペプチドは、宿主細胞内に含まれるベクター中の前記ポリペプチドをコードする核酸分子の発現によって、リコンビナント形態で調製することができる。前記のような発現方法は当業者によく知られており、多くは以下の文献でより詳細に記述されている:Sambrook et al.(上掲書)及びFernandez & Hoeffler(1998, eds. “Gene expression systems. Using nature for the art of expression”, Academic Press, San Diego, London, Boston, New York, Sydney, Tokyo, Toronto)。
【0050】
一般的には、要求される宿主でポリペプチドを生成させるために、核酸分子の維持、増殖又は発現に適したいずれの系又はベクターも用いることができる。周知であり日常的である種々の技術のいずれによっても(例えば前掲書(Sambrook et al.)に記載されたようなもの)、適切なヌクレオチド配列を発現系に挿入することができる。一般的には、コード遺伝子は制御エレメント(例えばプロモーター、リボソーム結合部位(細菌での発現の場合)、及び場合によってオペレーター)の制御下に置かれ、それによって所望のポリペプチドをコードするDNA配列を形質転換宿主細胞でRNAに転写させることができる。
適切な発現系の例には、例えば染色体系、エピソーム系及びウイルス由来系、例えば以下に由来するベクターが含まれる:細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パポーバウイルス(例えばSV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス、又は上記の組合せ、例えばプラスミドとバクテリオファージの遺伝子エレメントに由来するもの(例えばコスミド及びファージミドを含む)。ヒト人工染色体(HAC)もまた、プラスミドに包含させ発現させるよりも大きいDNAフラグメントを搬送するのに用いることができる。
【0051】
特に適切な発現系には、リコンビナントバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された微生物(例えば細菌);酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)又は細菌発現ベクター(例えばTi又はpBR322プラスミド)で形質転換した植物細胞系;又は動物細胞系が含まれる。無細胞翻訳系もまた、本発明のポリペプチドの生成に用いることができる。
本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の宿主細胞への導入は、多くの標準的な実験室マニュアル(例えば、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology (1986)及び上掲書(Sambrook et al.))に記載された方法によって達成できる。特に適切な方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン仲介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、陽イオン脂質仲介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、擦過ローディング(scrape loading)、弾道導入又は感染が含まれる(以下を参照されたい:Sambrook et al.(1989)上掲書;Ausubel et al.(1991)上掲書;Spector, Goldman & Leinwald,(1998))。真核細胞では、発現系は、その系の要求に応じて一過性(例えば、エピソーム性)又は永続的(染色体組込み)であり得る。
【0052】
コード核酸分子は、所望であれば、例えば翻訳ポリペプチドの小胞体内腔、細胞膜周辺腔又は細胞外環境への分泌のために、シグナルペプチド又はリーダー配列のような制御配列をコードする配列を含んでいても、又は含んでいなくてもよい。これらのシグナルは前記ポリペプチドにとって内因性であってもよく、又は異種シグナルであってもよい。リーダー配列は、翻訳後プロセッシングで細菌宿主によって取り除くことができる。
コントロール配列の他に、宿主細胞の増殖に関連して前記ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することが望ましい場合がある。調節配列の例は、化学的又は物理的刺激(調節化合物の存在を含む)又は多様な温度もしくは代謝条件に応答して遺伝子の発現を増加させたり低下させたりする配列である。調節配列は、ベクターの非翻訳領域、例えばエンハンサー、プロモーター並びに5’及び3’非翻訳領域である。これらは、宿主細胞タンパク質と相互作用して、転写及び翻訳を実行する。そのような調節配列は、その強度及び特異性を変化させることができる。利用されるベクター系及び宿主に応じて、多くの適切な転写及び翻訳エレメント(構成性及び誘発性プロモーターを含む)を用いることができる。例えば、細菌系でクローニングするときは、誘発性プロモーター、例えばBluescriptファージミド(Stratagene, La Jolla, CA)又はpSportl(商標)プラスミド(Gibco BRL)などのハイブリッドlacZプロモーターを用いることができる。バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターは、昆虫細胞で用いることができる。植物細胞ゲノムに由来するプロモーター又はエンハンサー(例えば熱ショック、RUBISCO及び貯蔵タンパク質遺伝子)又は植物ウイルスに由来するプロモーター又はエンハンサー(例えばウイルスプロモーター又はリーダー配列)は、ベクターへクローニングすることができる。哺乳類細胞系では、哺乳類遺伝子由来又は哺乳類ウイルス由来のプロモーターが好ましい。配列の多数コピーを含む細胞株の作製が必要な場合、SV40又はEBVをベースとするベクターが、適切な選択マーカーとともに用いられ得る。
【0053】
発現ベクターは、特定の核酸コード配列を適切な調節配列とともにベクター内に配置させることができるように構築され、前記コード配列の調節配列に関する位置及び向きは、前記コード配列が調節配列の“制御”下で転写されるような位置及び向きである(すなわちコントロール配列にてDNA分子と結合するRNAポリメラーゼは、前記コード配列を転写する)。いくつかの事例では、前記配列を適切な向きで制御配列に付属させることができるように(すなわちリーディングフレームを維持するために)、前記配列を改変する必要があるであろう。
コントロール配列及び他の調節配列は、ベクターへの挿入の前に核酸コード配列に連結させることができる。あるいは、コントロール配列及び適切な制限部位を既に含む発現ベクターへ、コード配列を直接クローニングすることができる。
リコンビナントポリペプチドの長期的かつ高収量の生成のためには、安定な発現が好ましい。例えば、対象のポリペプチドを安定して発現する細胞株は、ウイルスの複製起点及び/又は内因性発現エレメント並びに選択マーカー遺伝子を同じ又は別個のベクター上に含む発現ベクターを用いて形質転換させることができる。ベクターの導入に続き、選択培地に切り替える前に細胞を栄養(enriched)培地で1-2日間増殖させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することで、選択マーカーの存在によって、導入された配列をうまく発現する細胞の増殖及び回収が可能になる。安定して形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞の種類に適した組織培養技術を用いて増殖させることができる。
【0054】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞株は当技術分野で公知であり、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection, ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。そのような細胞株には、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベイビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎(COS)細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK293細胞、ボウズ(Bowes)メラノーマ細胞及びヒト肝細胞癌(例えばHepG2)細胞及び他の多数の細胞株が挙げられるが、これだけに限られない。
バキュロウイルス系では、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料は、特にインビトロジェン(Invitrogen, San Diego, CA)からキットの形態で(“MaxBac”キット)商業的に入手可能である。そのような技術は一般的に当業者に知られており、文献には完全に記載されている(Summers & Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987))。この系での使用に特に適切な宿主細胞には、昆虫細胞、例えばドロソフィラ(Drosophila)S2細胞及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞が含まれる。
【0055】
当技術分野で公知である多くの植物細胞培養及び植物体(whole plant)遺伝子発現系が存在する。適切な植物細胞遺伝子発現系の例には、米国特許第5,693,506号、5,659,122号及び5,608,143号に記載されるものが含まれる。植物細胞培養における遺伝子発現の更なる例は、文献に記載されている(Zenk (1991) Phytochemistry 30:3861-3863)。
特に、プロトプラストを単離し、これを培養して完全な再生植物を形成することが可能な植物は全て利用することができ、それによって移入遺伝子を含む完全な植物が回収できる。特に、サトウキビ、サトウダイコン、綿花、果実及び他の樹木、マメ類及び野菜の主要な種の全てを含む(ただしこれらに限定されない)全ての植物は、培養細胞又は培養組織から再生させることができる。
特に好ましい細菌宿主細胞の例には、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌(E.coli)、ストレプトマイセス及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)細胞が含まれる。
【0056】
真菌での発現に特に適切な宿主細胞の例には、酵母細胞(例えばS.セレビシエ(cerevisiae))及びアスペルギルス細胞が含まれる。
形質転換細胞株の回収に用いることができる多くの選択系は、当技術分野で公知である。そのような例としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(M. Wigler et al.(1977) Cell 11:223-32)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(I. Lowy et al.(1980) Cell 22:817-23)の遺伝子が挙げられ、これらはそれぞれtk-又はaprt±細胞で用いることができる。
さらにまた、抗代謝物質耐性、抗生物質耐性又は除草剤耐性を選択基準として用いてもよい。例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)はメトトレキセートに対する耐性を付与し(M. Wigler et al.(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. 77:3567-70)、nptはアミノグリコシド系ネオマイシン及びG-418に対する耐性を付与し(F. Colbere-Garapin et al.(1981) J. Mol. Biol. 150:1-14)、さらにals又はpatはそれぞれクロロスルフロン(chlorsulfuron)及びホスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する。さらに別の選択可能な遺伝子が報告されており、それらの例は当業者には明白であろう。
マーカー遺伝子の発現の有無は対象の遺伝子も存在することを示唆するが、対象の遺伝子の存在及び発現を確認する必要があり得る。例えば、関連配列がマーカー遺伝子配列内に挿入されている場合、マーカー遺伝子機能が存在しないことによって、適切な配列を含む形質転換細胞を識別することができる。あるいは、マーカー遺伝子は、ただ1つのプロモーターの制御下に、本発明のポリペプチドをコードする配列とともに直列に配置することができる。通常、誘発又は選択に応答するマーカー遺伝子の発現は、直列遺伝子の発現も示している。
【0057】
あるいは、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含み、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に知られている多様な手法で同定することができる。前記手法には、DNA-DNA又はDNA-RNAハイブリダイゼーション及びタンパク質バイオアッセイ、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)又はイムノアッセイ技術(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び放射性イムノアッセイ(RIA))が含まれ(ただしこれらに限定されない)、核酸又はタンパク質の検出及び/又は定量のためにメンブレン、溶液又はチップをベースとする技術が含まれる(例えば以下を参照されたい:R. Hampton et al.(1990) Serological Methods, A Laboratory Manual, APS Press, St Paul, MN;及びD.E. Maddox et al.(1983) J. Exp. Med. 158:1211-1216)。
【0058】
多様な標識及び結合技術が当業者に知られており、種々の核酸及びアミノ酸アッセイで用いることができる。本発明のポリペプチドをコードする核酸分子に近縁な配列を検出するための標識ハイブリダイゼーションプローブ又はPCRプローブの作製手段には、標識したポリヌクレオチドを用いるオリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識又はPCR増幅が含まれる。あるいは、本発明のポリペプチドをコードする配列をベクターにクローニングしてmRNAプローブを作製することができる。そのようなベクターは当技術分野で公知であって、商業的に入手可能であり、適切なRNAポリメラーゼ(例えばT7、T3又はSP6)及び標識ヌクレオチドを添加することによりin vitroでRNAプローブを合成することに用いられ得る。これらの手法は、商業的に入手可能な種々のキット(Pharmacia & Upjohn (Kalamazoo, MI); Promega (Madison, WI); U.S. Biochemical Corp., (Cleaveland, OH))を用いて実施することができる。
検出を容易にするために用いられ得る適切なレポーター分子又は標識には、放射性核種、酵素及び蛍光、化学発光又は色素生産性物質、基質、コファクター、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。
【0059】
本発明の核酸分子は、トランスジェニック動物(特にげっ歯類動物)の作製にも用いることができる。そのようなトランスジェニック動物は、本発明の別の特徴を構成する。そのような作製は、体細胞の改変によって局部的に、又は遺伝性改変を導入する生殖細胞系列療法によって実施することができる。前記のようなトランスジェニック動物は、本発明のポリペプチドのモジュレーターとして有効な薬剤分子のための動物モデルを作製するために特に有用であり得る。
ポリペプチドは、周知の方法によってリコンビナント細胞培養物から回収し精製することができ、これは、硫安又はエタノール沈澱、酸性抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸化セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーが含まれる。高性能液体クロマトグラフィーは、精製に特に有用である。単離及び精製の間にポリペプチドが変性した場合には、タンパク質のリフォールディングのためによく知られている技術を用いて活性な高次構造を再生することができる。
【0060】
所望の場合には、可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に本発明のポリペプチドをコードする配列を連結させることにより特殊化したベクター構築物も、タンパク質の精製を容易にするために用いることができる。そのような精製促進ドメインの例には、金属キレートペプチド(例えば固定化金属上での精製を可能にするヒスチジン-トリプトファンモジュール、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、及びFLAGS伸長/アフィニティー精製システム(Immunex Corp., Seattle, WA)で用いられるドメイン)が含まれる。切断可能なリンカー配列(例えばXA因子又はエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, CA)に特異的なもの)を精製ドメインと本発明のポリペプチドとの間に包含させて、精製を容易にすることに用いてもよい。そのような発現ベクターの1つは、チオレドキシン又はエンテロキナーゼ切断部位に先行するいくつかのヒスチジン残基と融合させた本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質の発現を提供する。ヒスチジン残基は、IMAC(固定金属イオンアフィニティークロマトグラフィー;J. Porath et al.(1992) Prot. Exp. Purif. 3:263-281)により精製を容易にし、一方、チオレドキシン又はエンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質からポリペプチドを精製するための手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターについての考察は以下で提供される:D.J. Kroll et al.(1993) DNA 細胞 Biol. 12:441-453)。
【0061】
スクリーニングアッセイで使用するためにポリペプチドを発現させる場合は、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞の表面で前記ポリペプチドを生成させることが一般には好ましい。この場合、宿主細胞はスクリーニングアッセイで使用する前に、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)又はイムノアフィニティー技術のような技術を用いて収穫することができる。ポリペプチドが培養液中に分泌される場合は、前記培養液を回収して発現されたポリペプチドを回収及び精製することができる。ポリペプチドが細胞内で生成される場合、ポリペプチドを回収する前に、先ず初めに細胞を溶解させねばならない。
本発明のポリペプチドを用いて、種々の薬剤スクリーニング技術のいずれかで化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。そのような化合物は、本発明のポリペプチドの遺伝子発現レベル又は活性レベルを活性化させる(アゴニスト作用)か、又は阻害する(アンタゴニスト作用)ことができ、本発明のさらなる特徴を形成し得る。好ましい化合物は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させることに有効であるか、又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節することに有効である。
【0062】
アゴニスト化合物又はアンタゴニスト化合物は、例えば細胞、無細胞調製物、化学物質ライブラリー又は天然物混合物から単離することができる。これらのアゴニスト又はアンタゴニストは、天然又は改変された基質、リガンド、酵素、受容体、又は構造的もしくは機能的模倣物質であってもよい。前記のようなスクリーニング技術の適切な概論については、以下を参照されたい:Coligan et al.(1991) Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5。
良好なアンタゴニストである可能性が高い化合物は、本発明のポリペプチドと結合し、結合しているときに前記ポリペプチドの生物学的作用を誘発しない分子である。強力なアンタゴニストには、本発明のポリペプチドと結合し、それによって本発明のポリペプチドの活性を阻害又は消滅させる小型有機分子、ペプチド、ポリペプチド及び抗体が含まれる。そのようなやり方で、前記ポリペプチドと正常な細胞の結合分子との結合が阻害され、その結果前記ポリペプチドの正常な生物学的活性が阻害され得る。
このようなスクリーニング技術で用いられる本発明のポリペプチドは、溶液中で遊離していても、固相支持体に固定されていても、細胞表面に保持されていても、又は細胞内に位置していてもよい。一般に、このようなスクリーニングの方法は、前記のポリペプチドを発現している適切な細胞又は細胞膜を用いることを含み、前記細胞又は細胞膜をテスト化合物と接触させて、結合又は機能的応答の刺激もしくは阻害を観察する。続いて前記テスト化合物と接触させた細胞の機能的応答を、前記テスト化合物と接触させなかったコントロール細胞と比較する。このようなアッセイによって、前記ポリペプチドの活性化によって生じるシグナルをテスト化合物がもたらすか否かを、適切なアッセイを用いて評価することができる。活性化の阻害剤は、一般的には既知のアゴニストの存在下でアッセイを行われ、テスト化合物の存在下でのアゴニストによる活性化の影響が観察される。
【0063】
本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニスト化合物を同定する好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)本発明の第一の特徴のポリペプチドをその表面に発現している細胞を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で被験化合物と接触させる工程であって、前記ポリペプチドは、前記化合物とポリペプチドとの結合に応答して検出可能なシグナルを提供することができる第二の成分と結合されており;さらに
(b)前記化合物と前記ポリペプチドとの相互作用によって生じるシグナルのレベルを測定することにより、前記化合物が前記ポリペプチドと結合しこれを活性化するか又は阻害するかを決定する工程。
本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定するさらに好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)前記ポリペプチドをその表面に発現している細胞を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で被験化合物と接触させる工程であって、前記ポリペプチドは、前記化合物とポリペプチドとの結合に応答して検出可能なシグナルを提供することができる第二の成分と結合されており;さらに
(b)前記化合物と前記ポリペプチドとの相互作用によって生じるシグナルレベルを前記化合物が存在しないときのシグナルレベルと比較することにより、前記化合物が前記ポリペプチドと結合しこれを活性化するか又は抑制するかを決定する工程。
さらに好ましい態様では、上述の一般的な方法が、前記ポリペプチドに対する標識又は非標識リガンドの存在下でアゴニスト又はアンタゴニストの同定を行う工程をさらに含み得る。
【0064】
本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法の別の態様は、以下の工程を含む:
本発明のポリペプチドをその表面に有する細胞とリガンドとの結合又は前記のポリペプチドを含む細胞膜とリガンドとの結合の抑制を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で候補化合物を存在させて決定する工程、及び前記ポリペプチドに結合したリガンドの量を決定する工程。リガンドの結合の減少をひき起こし得る化合物は、アゴニスト又はアンタゴニストであると考えられる。好ましくは、前記リガンドが標識されている。
より詳しくは、アンタゴニスト又はアゴニスト化合物をポリペプチドについてスクリーニングする方法は以下の工程を含む:
(a)本発明のポリペプチドをその表面に発現している全細胞又は本発明のポリペプチドを含む細胞膜と、標識リガンドとをインキュベートする工程;
(b)前記全細胞又は細胞膜と結合した標識リガンドの量を測定する工程;
(c)工程(a)の標識リガンド及び前記全細胞又は細胞膜の混合物に候補化合物を添加し、前記混合物を平衡化させる工程;
(d)前記全細胞又は細胞膜と結合した標識リガンドの量を工程(c)の後で測定する工程;さらに
(e)工程(b)及び工程(d)で結合した標識リガンドの相違を比較する工程であって、それにより工程(d)結合の減少をひき起こす化合物はアゴニスト又はアンタゴニストであると考える前記工程。
【0065】
本発明のINSP101ポリペプチドは、免疫系における細胞増殖及び移動のような過程を含む、様々な生理学的及び病理学的過程を調節することができる。したがってINSP101ポリペプチドの生物学的活性は、種々の適切なアッセイを用い、このようなモジュレーター活性の研究を可能にするシステムにおいて試験することができる。
例えば細胞成長阻害を観察するために、固形又は液体の培地を使用することができる。固形培地においては、成長阻害を受けている細胞は、形成したコロニーのサイズを比較することにより、対象細胞群から容易に選択することができる。液体培地においては、培養培地の濁度又はDNA内の標識チミジンの組込みを測定することにより、成長阻害をスクリーニングすることができる。典型的には、新たに合成されたDNAへのヌクレオシドアナログの組込みを用い、細胞集団における増殖(すなわち、活性な細胞成長)を測定することができる。例えばブロモデオキシウリシン(BrdU)を、DNA標識試薬として使用することができ、抗-BrdUマウスモノクローナル抗体を、検出試薬として使用することができる。この抗体は、ブロモデオキシウリシンを組込んだDNAを含む細胞にのみ結合する。免疫蛍光法、免疫組織法、ELISA、及び比色法を含む多くの検出方法を、このアッセイと組合せて使用することができる。ブロモデオキシウリシン(BrdU)及び抗-BrdUマウスモノクローナル抗体を含むキットは、Boehringer Mannheim (Indianapolis, IN)から商業的に入手可能である。
【0066】
INSP101ポリペプチドは、上記のアッセイにおいて用量依存的な様式で多様な生理学的及び病理学的過程を調節することが判明するであろう。したがって、INSP101ポリペプチドの“機能的等価物”には、上記アッセイにおいて用量依存的な様式で同じ調節的活性のいずれかを示すポリペプチドが含まれる。用量依存的活性の程度はINSP101ポリペプチドのそれと同一である必要はないが、好ましくは前記“機能的等価物”は、所定の活性アッセイにおいてINSP101ポリペプチドと比較して実質的に類似の用量依存性を示すであろう。
上述のある態様では、単純な結合アッセイを用いてもよく、この場合、テスト化合物のポリペプチド保持表面への付着が、直接的又は間接的にテスト化合物と結合させた標識手段によって検出されるか、又は標識競合物質との競合を含むアッセイで検出される。別の態様では、競合薬剤スクリーニングアッセイを用いることができ、この場合、ポリペプチドと特異的に結合することができる中和抗体が、結合についてテスト化合物と競合する。このようにして、前記抗体を用いて、前記ポリペプチドに対し特異的な結合親和性を保有する一切のテスト化合物の存在を検出することができる。
【0067】
前記ポリペプチドをコードするmRNAの細胞内産生に対する添加テスト化合物の影響を検出するアッセイをデザインすることもできる。例えば、当技術分野で公知の標準的な方法によりモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を用いてポリペプチドの分泌レベル又は細胞結合レベルを測定するELISAを構築することができ、前記ELISAを用いて、適切に操作された細胞又は組織からのポリペプチド生成を阻害又は増強し得る化合物について検索することができる。続いて、前記ポリペプチドと被験化合物との結合複合体の形成を測定することができる。
使用され得る別の薬剤スクリーニング技術は、対象のポリペプチドに対して適切な結合親和性を有する化合物の高速大量処理スクリーニングを提供する(国際特許出願WO84/03564を参照されたい)。前記方法では、多数の異なる小型のテスト化合物が固相支持体上で合成され、次に本発明のポリペプチドと反応させられ洗浄され得る。ポリペプチドを固定する方法の1つは、非中和抗体を使用することである。続いて、当技術分野で周知の方法を用いて、結合ポリペプチドを検出することができる。精製ポリペプチドはまた、前述の薬剤スクリーニング技術で使用するために、プレート上に直接被覆させることができる。
【0068】
当技術分野で公知の標準的な受容体結合技術により膜結合受容体又は可溶性受容体を同定するのに、本発明のポリペプチドが用いられ得る。前記標準的な技術は、例えばリガンド結合アッセイ及び架橋アッセイであり、そのようなアッセイでは、ポリペプチドが放射性同位体で標識されているか、化学的に改変されているか、又はその検出もしくは精製を容易にするペプチド配列と融合されており、推定上の受容体供給源(例えば細胞の組成物、細胞膜、細胞上清、組織抽出物又は体液)とインキュベートされる。結合の有効性は、生物物理的技術、例えば表面プラズモン共鳴及び分光法を用いて測定することができる。結合アッセイは、受容体の精製及びクローニングのために用いることができるが、ポリペプチドとその受容体との結合に競合する前記ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストを同定するためにも用いることができる。スクリーニングアッセイを実施する標準的方法は、当技術分野ではよく理解されている。
【0069】
本発明のINSP101ポリペプチドは、ホルモン分泌、細胞成長及び癌細胞転移を含む細胞転移のような過程を含む、様々な生理学的及び病理学的過程を調節することができる(Torosian, M. H. & Donoway, R. B. , 1991, Cancer, 67 (9): 2280-2283)。したがってINSP101ポリペプチドの生物学的活性は、種々の適切なアッセイを用い、そのようなモジュレーター活性の試験を可能にするシステムにおいて試験することができる。
例えば本発明のINSP101ポリペプチドの細胞転移に対する作用を観察するために、Ohtakiらの論文(Nature. 2001 May 31; 411 (6837): 613-7)又は本明細書に引用された刊行物に説明される1又は2以上の方法を用いることができる。
例えば本発明のINSP101ポリペプチドのホルモン分泌に対する作用を観察するために、Hinumaらの論文(Nature. 1998 May 21; 393 (6682): 272-6)又はHinumaらの論文(Nat Cell Biol. 2000 Oct; 2 (10): 703-8)又は本明細書に引用された刊行物をに説明される1又は2以上の方法を用いることができる。
【0070】
本発明のINSP101ポリペプチドは、本発明のINSP101ポリペプチドと相互作用する受容体、特に成長ホルモン受容体を同定及び特徴決定するために使用することもできる。同定及び特徴決定に適した方法は、Hinumaらの論文(Nat Cell Biol. 2000 Oct; 2 (10): 703-8)及び国際特許出願WO01/17958又は本明細書に引用された刊行物に説明されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
INSP101ポリペプチドは、前述のアッセイにおいて用量依存的様式で様々な生理学的及び病理学的過程を調節することがわかっている場合もある。したがってINSP101ポリペプチドの“機能的等価物”は、用量依存的様式である前述のアッセイにおいていずれか同じモジュレーター活性を示すポリペプチドを含む。用量依存的活性の程度はINSP101ポリペプチドのものと同一である必要はないが、好ましくは“機能的等価物”がINSP101ポリペプチドと比べて、所定の活性アッセイにおいて実質的に類似した用量依存性を示す。
【0071】
本発明はまた、上記で述べるアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、受容体、基質、酵素を同定する方法に有用なスクリーニングキットを含む。
本発明は、上記アゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、受容体、基質及び酵素、並びに上記で述べる方法によって発見され、本発明のポリペプチドの活性又は抗原性を調節する他の化合物を含む。
本発明はまた、本発明のポリペプチド、核酸、リガンド又は化合物を適切な医薬担体と組合せて含む医薬組成物を提供する。これらの組成物は、下記で詳細に説明するように、治療用もしくは診断用試薬として、ワクチンとして、又は他の免疫原性組成物として適切であり得る。
本明細書で用いられる専門用語にしたがえば、ポリペプチド、核酸、リガンド又は化合物[X]を含む組成物は、組成物中のX+Yの合計の少なくとも85質量%がXである場合に不純物(本明細書中ではY)を“実質的に含まない”。好ましくは、Xが組成物中のX+Yの合計の少なくとも約90質量%、より好ましくは少なくとも約95質量%、98質量%又は99質量%を構成する。
【0072】
本医薬組成物は、好ましくは治療的に有効な量の本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物を含むべきである。本明細書で用いられる“治療的に有効な量”という用語は、標的疾患又は症状を治療、緩和もしくは予防するために、又は検出可能な治療効果もしくは予防効果を示すために必要な治療薬剤の量を指す。いずれの化合物についても、治療的に有効な投与量は、最初に細胞培養アッセイ(例えば新生物細胞培養アッセイ)又は動物モデル(通常はマウス、ウサギ、イヌ又はブタ)のいずれかで概算することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路の決定にも用いることができる。次にそのような情報を用いて、ヒトで有用な投与用量及び投与経路を決定することができる。
ヒト対象者に対する正確な有効量は、疾患状態の重篤度、対象者の全身の健康状態、対象者の年齢、体重及び性別、食事、投与時間及び投与回数、併用薬剤、反応感受性及び治療に対する忍容性/応答性に依存するであろう。この量は、日常的検査により決定することができ、それは臨床医の判断の範囲内である。一般には、有効用量は、0.01mg/kgから50mg/kg、好ましくは0.05mg/kgから10mg/kgであろう。本組成物は、患者に個別に投与されてもよく、又は他の薬剤、医薬品又はホルモンと一緒に投与されてもよい。
【0073】
医薬組成物はまた、治療薬の投与のために医薬的に許容できる担体を含むことができる。そのような担体には、抗体及び他のポリペプチド、遺伝子並びに他の治療薬剤(例えばリポソーム)が含まれるが、ただし担体がそれ自体で前記組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘発せず、かつ不都合な毒性をもたらすことなく投与され得ることを条件とする。適切な担体は、大型でゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子であり得る。
医薬組成物に、医薬的に許容できる塩、例えば鉱酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような);及び有機酸の塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などのような)を用いることができる。医薬的に許容できる担体についての綿密な考察は以下のテキストで入手可能である:Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)。
治療用組成物中の医薬的に許容できる担体は、さらに液体、例えば水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールを含むことができる。さらに、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などのような助剤が、前記組成物中に存在していてもよい。そのような担体は、患者が摂取できるように、前記医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。
いったん製剤化されたら、本発明の組成物を直接対象者に投与することができる。治療される対象者は動物で、特にヒト対象者が治療され得る。
【0074】
本発明で用いられる医薬組成物は、多数の経路(経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜下腔内、心室内、経皮的アプリケーション(例えばWO98/20734を参照)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸的手段が挙げられるが、ただしこれらに限定されない)によって投与できる。遺伝子銃又はハイポスプレーもまた、本発明の医薬組成物の投与に用いることができる。典型的には、本治療用組成物は、注射用物質(液体溶液又は懸濁剤のいずれか)として調製できる。注射に先立ち液体ビヒクルで溶液又は懸濁液とするのに適する固体を調製することもできる。
本組成物の直接的デリバリーは一般に、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内に注射することによって達成されるか、又は組織の間隙腔にデリバリーされるであろう。前記組成物はまた、病巣に投与してもよい。投薬治療は、単回投与スケジュールでも反復投与スケジュールでもよい。
本発明のポリペプチドの活性が特定の疾患状態において過剰である場合には、いくつかのアプローチが利用可能である。あるアプローチは、医薬的に許容できる担体とともに上記のような阻害化合物(アンタゴニスト)を、前記ポリペプチドの機能を阻害するのに有効な量で対象者に投与することを含む。前記ポリペプチドの機能の阻害は、例えばリガンド、基質、酵素、受容体の結合を遮断することによって、又は第二のシグナルを阻害することによって成され、それによって異常な症状が緩和される。好ましくは、前記アンタゴニストが抗体である。最も好ましくは、そのような抗体が、先に記載するような免疫原性を最少にするキメラ抗体及び/又はヒト化抗体である。
【0075】
別のアプローチでは、リガンド、基質、酵素、受容体に対する結合親和性を保持する該ポリペプチドの可溶形を投与することができる。典型的には、前記ポリペプチドは、関連部分を保持するフラグメントの形態で投与することができる。
また別のアプローチでは、前記ポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、内部で生成される又は別々に投与されるアンチセンス核酸分子(上述のような)の使用といった発現遮断技術を用いて、阻害することができる。遺伝子発現の改変は、ポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域、5’領域又は調節領域(シグナル配列、プロモーター、エンハンサー及びイントロン)に対して相補的な配列又はアンチセンス分子(DNA、RNA又はPNA)をデザインすることによって達成できる。同様に、阻害は“三重らせん”塩基対方法論を用いて達成することができる。三重らせん対形成は、ポリメラーゼ、転写因子又は調節分子の結合のために二重らせんが充分に開く能力を阻害することから有用である。三重らせんDNAを用いる近年の治療上の進歩は、文献に記載されている(J.E. Gee et al.(1994) In:B.E. Huber & B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY)。相補的配列又はアンチセンス分子をデザインし、リボソームに対する結合を妨げて転写を妨害することによってmRNAの翻訳を遮断することもできる。そのようなオリゴヌクレオチドは投与されてもよいし、またin vivoでの発現によりin situで生成させてもよい。
【0076】
さらに、本発明のポリペプチドの発現は、そのコードmRNA配列に特異的なリボザイムを用いることによって妨げることができる。リボザイムは、天然又は合成であり得る触媒的活性型のRNAである(例えば以下を参照されたい:N. Usman et al., Curr. Opin. Struct. Biol.(1996) 6(4):527-533)。合成リボザイムをデザインして、選択した位置でmRNAを特異的に切断し、それによってmRNAの機能的ポリペプチドへの翻訳を妨げることができる。リボザイムは、通常RNA分子で見出されるような、天然のリボースリン酸骨格及び天然の塩基を用いて合成され得る。或いは、リボザイムは、非天然の骨格(例えば2'-O-メチルRNA)を用いて合成されて、リボヌクレアーゼ分解から保護されてもよく、また改変塩基を含んでいてもよい。
【0077】
RNA分子は、細胞内安定性及び半減期を増加させるように改変されてもよい。可能な改変には、RNA分子の5'及び/又は3'末端へのフランキング配列の付加、又は分子の骨格内でホスホジエステル結合に代わるホスホロチオエート又は2’-O-メチルの使用が含まれるが、ただしこれらに限られない。この概念は、PNAの生成にも受け継がれ、内因性エンドヌクレアーゼによって同様に容易には認識されないイノシン、ケオシン(queosine)及びブトシン(butosine)のような非慣用塩基、並びにアセチル-、メチル-、チオ-及び同様な改変形態のアデニン、シチジン、グアニン、チミン及びウリシンの包含によってPNA分子の全てに広げられ得る。
本発明のポリペプチド及びその活性の過小発現に関連する異常な状態を治療するためには、いくつかのアプローチも利用可能である。あるアプローチは、前記ポリペプチドを活性化する化合物(すなわち上記で述べたアゴニスト)の治療的に有効な量を対象者に投与し、異常な状態を緩和することを含む。あるいは、本ポリペプチドの治療量を適切な医薬担体と組合せて投与し、関連性のあるポリペプチド生理学的バランスを回復させることができる。
【0078】
遺伝子治療を用い、対象者の関連細胞によって本ポリペプチドの内因性産生を行わせることができる。遺伝子治療は、欠陥のある遺伝子を修正した治療用遺伝子と置き換えることによって、前記ポリペプチドの不適切な生成を永久的に治療することに用いられる。
本発明の遺伝子治療は、in vivo又はex vivoで実施することができる。ex vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離及び精製、治療用遺伝子の導入、及び遺伝的に改変した細胞を患者に戻して導入することを必要とする。対照的に、in vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離及び精製を必要としない。
治療用遺伝子は、患者に投与するために、典型的には“パッケージング”されている。遺伝子デリバリービヒクルは、リポソームのような非ウイルス性、又は、例えばK.L. Berkner (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:39-66に記載されているアデノウイルスのような複製欠損ウイルスもしくはN. Muzyczka (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:97-129及び米国特許第5,252,479号に記載されているアデノ付随ウイルス(AAV)ベクターであり得る。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、複製欠損レトロウイルスベクターで発現させるために、操作され得る。次に、この発現構築物は単離されて、前記ポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターで形質導入したパッケージ細胞に導入され、その結果、前記パッケージ細胞は、対象の遺伝子を含有する感染性ウイルス粒子を産生することができるようになる。これらのプロデューサー細胞は、in vivoで細胞を操作するため及びin vivoでポリペプチドを発現させるために、対象者に投与することができる(以下を参照されたい:Gene Therapy and Other Molecular Genetic-based Therapeutic Approaches, Chapter 20(及びその中に引用された文献), “Human Molecular Genetics” (1996) T. Strachan & A.Pread, BIOS Scientific Publishers Ltd.)。
【0079】
別のアプローチは“裸のDNA”の投与で、この場合、治療用遺伝子が血流又は筋肉組織に直接注射される。
本発明のポリペプチド又は核酸分子が疾患をひき起こす原因物質である場合には、本発明は、前記疾患を引き起こす原因物質に対する抗体を生成するワクチンとして用いることができる前記ポリペプチド又は核酸分子を提供する。
本発明のワクチンは、予防的(すなわち、感染を防ぐ)であっても治療的(すなわち、感染後の疾患を治療する)であってもよい。そのようなワクチンは、免疫性を付与する抗原、免疫原、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を、通常は上記で述べた医薬的に許容できる担体と組合せて含む。前記担体には、組成物を投与される個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体で誘発しない担体のいずれもが含まれる。さらに、これらの担体は免疫刺激剤(“アジュバント”)として機能してもよい。さらにまた、前記抗原又は免疫原は、細菌の類毒素(例えばジフテリア、破傷風、コレラ、H.ピロリ菌(pyroli)由来の類毒素)及び他の病原体と結合されてもよい。
ポリペプチドは胃で分解されるので、ポリペプチドを含むワクチンは、好ましくは非経口的に(例えば皮下、筋肉内、静脈内又は皮内注射)投与される。非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤をレシピエントの血液に対して等張にする溶質を含んでもよい、水性及び非水性の無菌注射溶液、並びに懸濁剤又は増粘剤を含んでもよい、水性及び非水性の無菌懸濁剤が含まれる。
本発明のワクチン製剤は、単位用量又は複数単位用量の容器で提供されてもよい。例えば、密封されたアンプル及びバイアルでの提供は、使用直前に無菌液状担体を添加することのみを必要とする凍結乾燥状態で保存することができる。投与量はワクチンの比活性に依存し、日常的な検査によって容易に決定することができる。
【0080】
例えば、国際特許出願W098/55607に説明されるように、本発明のポリペプチドに結合する抗体を遺伝子的に送達することも有効である。
射出注入(jet injection)と称される技術(例えば、www.powderject.com参照)も、ワクチン組成物の製剤において有用であり得る。
予防接種及びワクチンデリバリーシステムに関する多くの適切な方法は、国際特許出願WO00/29428に開示されている。
本発明はまた、診断薬としての本発明の核酸分子の使用に関する。本発明の核酸分子により特徴付けられ、機能不全に付随する遺伝子の変異型の検出は、前記遺伝子の過小発現、過剰発現又は位置的もしくは時間的発現の変化から生じる疾患の診断、又はそのような疾患に対する感受性の診断を規定するか又はそれら診断に付け加えることができる診断ツールを提供する。前記遺伝子に変異を保有する個体は、種々の技術によってDNAレベルで検出することができる。
診断のための核酸分子は、対象者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織生検又は剖検材料から入手できる。ゲノムDNAを直接検出に用いてもよいし、又はPCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)もしくは他の増幅技術を分析に先立って用いることによって、ゲノムDNAを酵素的に増幅してもよい(以下の文献を参照されたい:Saiki et al., Nature 324:163-166(1986); Bej et al., Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol., 26:301-334(1991); Birkenmeyer et al., J. Virol. Meth., 35:117-126(1991); Van Brunt, J., Bio/Technology, 8:291-294(1990))。
【0081】
ある態様では、本発明のこの特徴は、本発明のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベルを評価すること、及び前記発現レベルをコントロールのレベルと比較することを含む、患者における疾患を診断する方法を提供する。この場合、前記コントロールレベルと異なるレベルは疾患を示唆する。前記方法は、以下の工程を含み得る:
a)本発明の核酸分子と核酸プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、患者由来の組織サンプルを前記核酸プローブと接触させる工程;
b)工程a)で用いた条件と同じ条件下で、コントロールサンプルを前記プローブと接触させる工程;及び、
c)前記サンプル中のハイブリッド複合体の存在を検出する工程;
この場合、コントロールサンプル中のハイブリッド複合体レベルと異なるハイブリッド複合体レベルが患者サンプルで検出されることは、疾患を示唆する。
本発明のさらなる特徴は、以下の工程を含む診断方法を含む:
a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
b)前記組織サンプルから、本発明の核酸分子を単離する工程;及び、
c)疾患に付随する前記核酸分子における変異の存在を検出することによって、患者を疾患について診断する工程。
上記に記載した方法における核酸分子の検出を補助するために、増幅工程、例えばPCRの使用が含まれ得る。
【0082】
正常な遺伝子型と比較すると、増幅産物におけるサイズの変化によって、欠失及び挿入が検出される。点変異は、増幅DNAを本発明の標識RNAとハイブリダイズさせるか、あるいは本発明の標識アンチセンスDNA配列とハイブリダイズさせることによって同定することができる。完全にマッチした配列は、RNase消化によって、又は溶融温度における差異を評価することによって、ミスマッチを有する二重鎖と区別することができる。DNAをストリンジェントな条件下で前記DNAとハイブリダイズする核酸プローブと接触させてハイブリッド二本鎖分子を形成させること(前記ハイブリッド二本鎖は、疾患に付随する変異に対応するいずれかの部分で前記核酸プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分を有する)、及び、前記プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分の有無を前記DNA鎖の対応部分における疾患付随変異の有無を示すものとして検出することによって、患者における変異の有無を検出することができる。
前記のような診断は特に出生前検査で有用であり、新生児検査でもなお有用である。
【0083】
参照遺伝子と“変異”遺伝子との間の点変異及び他の配列的相違は、他の周知の技術、例えば直接DNAシークエンシング又は一本鎖構造多型性(Orita et al., Genomics, 5:874-879(1989))によって同定できる。例えば、シークエンシングプライマーは、二本鎖PCR産物又は改変PCRによって作製された一本鎖鋳型分子とともに用いることができる。配列決定は、放射能標識ヌクレオチドを用いる通常の方法によって、又は蛍光タグを用いる自動シークエンシング法によって実施される。クローン化DNAセグメントを、特異的DNAセグメントを検出するためのプローブとして用いることもできる。この方法の感度は、PCRと併用したとき極めて増強される。さらに、点変異及び他の配列の変動(例えば多型性)は、例えば対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをただ1つのヌクレオチドが異なる配列のPCR増幅に用いることによって、上記のように検出することができる。
DNA配列の相違はまた、変性剤の存在下又は非存在下でのゲル内のDNAフラグメントの電気泳動移動度における変化によって、又は直接DNAシークエンシング(例えば、Myers et al., Science (1985) 230:1242)によっても検出することができる。特定の位置における配列の変化はまた、RNase及びS1保護のようなヌクレアーゼ保護アッセイによって、又は化学切断法(Cotton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 85:4397-4401を参照)によっても明らかにすることができる。
ミクロ欠失、異数性、転座、逆位のような変異は、通常のゲル電気泳動及びDNAシークエンシングの他に、in situ分析によっても検出できる(例えば以下を参照されたい:Keller et al., DNA Probes, 2nd Ed., Stockton Press, New York, N.Y., USA(1993))。すなわち、細胞内のDNA又はRNA配列は、それらを単離及び/又はメンブレン上に固定する必要なしに、変異について分析することができる。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、現在のところ最も一般的に用いられている方法で、FISHに関する多数の概論が存在する(例えば以下を参照されたい:Trachuck et al., Science, 250, 559-562(1990);及びTrask et al., Trends, Genet., 7, 149-154(1991))。
本発明の別の態様では、本発明の核酸分子を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、遺伝的変種、変異及び多型性の効率的スクリーニングを実施することができる。アレイ技術方法はよく知られていて一般的な応用性を有しており、遺伝子発現、遺伝連鎖及び遺伝的可変性を含む分子遺伝学における種々の疑問に取り組むのに用いることができる(例えば以下を参照されたい:M. Chee et al., Science (1996) , Vol 274, pp610-613)。
【0084】
ある態様では、前記アレイが、以下の文献に記載されている方法にしたがって調製され使用される(PCT出願WO95/11995(Chee et al.);D.J. Lockhart et al.(1996) Nat. Biotech. 14:1675-1680;M. Schena et al.(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614-10619)。オリゴヌクレオチド対は、2つから100万個を越える範囲にわたり得る。前記オリゴマーは、光誘導化学法を用いて基板上の指定領域で合成される。基板は、紙、ナイロン又は他の種類のメンブレン、フィルター、チップ、ガラススライドもしくは他の適切な固相支持体のいずれであってもよい。別の特徴では、オリゴヌクレオチドは、PCT特許出願(WO95/251116, Baldeschweiler et al.)に記載されているように、化学的結合方法及びインクジェット応用装置を用いることによって基板表面上で合成することができる。別の特徴では、ドット(又はスロット)ブロットに類似する“格子化(gridded)”アレイが、真空系、熱結合方法、UV結合方法、機械的又は化学的結合方法を用いて基質表面にcDNAフラグメント又はオリゴヌクレオチドを配置すること及び連結させることに用いられ得る。上述するようなアレイは、手動で、又は利用可能な装置(スロットブロット又はドットブロット装置)、材料(適切な固相支持体すべて)及び機械(ロボット機器を含む)を用いて作製することができ、8、24、96、384、1536又は6144個のオリゴヌクレオチド、又は2個から100万個を越える範囲の他のいずれの数をも含むことができる(このことは、アレイ自体を商業的に入手可能な計測器の有効利用に向くものとしている)。
【0085】
上記で考察する方法の他に、対象者に由来するサンプルから、ポリペプチド又はmRNAの異常な増加又は低下のレベルを決定することを含む方法によって、疾患を診断することができる。発現低下又は発現増加は、例えば、核酸増幅、一例を挙げるとPCR、RT-PCR、RNase保護、ノーザンブロット法及び他のハイブリダイゼーション方法のようなポリヌクレオチドの定量のために当技術分野で周知の方法のいずれかを用いて、RNAレベルで測定することができる。
宿主に由来するサンプルで本発明のポリペプチドレベルを決定することに用いることができるアッセイ技術は当業者によく知られており、また上記でいくらか詳細に考察されている(ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット分析及びELISAアッセイを含む)。本発明のこの特徴では、以下の工程を含む診断方法が提供される:(a)上記のようなリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で、生物学的サンプルと接触させる工程;及び(b)前記複合体を検出する工程。
ELISA、RIA及びFACSのようなポリペプチドレベルを測定するためのプロトコルは、ポリペプチド発現の変化レベル又は異常レベルを診断するための基礎をさらに提供することができる。ポリペプチド発現の正常値又は標準値は、正常な哺乳類対象体(好ましくはヒト)から得られた体液又は細胞抽出物を、複合体形成に適した条件下で、前記ポリペプチドに対する抗体と混合することによって確立される。標準的な複合体形成量は、種々の方法、例えば分光測定方法によって定量することができる。
【0086】
本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体は、前記ポリペプチドの発現によって特徴付けられる症状又は疾患の診断のために、又は本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンド及び他の化合物を用いて治療されている患者をモニターするアッセイにおいて、用いることができる。診断目的に有用な抗体は、治療薬として上記で述べたのと同じ様式で調製することができる。前記ポリペプチドについての診断アッセイは、前記抗体及び標識を用いてヒトの体液又は細胞もしくは組織の抽出物中のポリペプチドを検出する方法を含む。前記抗体は改変して、又は改変せずに用いることができ、さらにそれらをレポーター分子と共有結合又は非共有結合によって結合させることによって標識することができる。当技術分野で公知の多様なレポーター分子を用いることができ、それらのいくつかは上記に記載されている。
生検組織由来の、対象者、コントロール及び疾患サンプルで発現されているポリペプチドの量は、標準値と比較される。標準値と対象者の値との間の偏差は疾患診断のためのパラメータを確立する。診断アッセイを用いて、ポリペプチド発現の有無及び過剰を識別し、治療的処置の間のポリペプチドレベルの調節をモニターすることができる。そのようなアッセイはまた、動物実験、臨床試験又は個々の患者の治療モニタリングにおける特定の治療的処置方法の有効性を評価することに用いることができる。
【0087】
本発明の診断キットは、以下を含み得る:
(a)本発明の核酸分子;
(b)本発明のポリペプチド;又は
(c)本発明のリガンド。
本発明のある特徴では、診断キットが、ストリンジェントな条件下で本発明の核酸分子とハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;前記核酸分子を増幅させるために有用なプライマーを含む第二の容器;及び、疾患の診断を容易にするために前記プローブ及びプライマーの使用についての指示書を含み得る。前記キットは、ハイブリダイズしていないRNAを消化するための薬剤を保持している第三の容器をさらに含んでもよい。
本発明の別の特徴では、診断キットが核酸分子のアレイを含んでもよく、前記核酸分子の少なくとも1つが本発明の核酸分子であってもよい。
本発明のポリペプチドを検出するために、診断キットは、本発明のポリペプチドと結合する1種又は2種以上の抗体;及び、前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬;を含み得る。
【0088】
このようなキットは、内分泌タンパク質が関与している疾患もしくは障害の診断又は疾患もしくは障害の易罹患性の診断において使用されるであろう。このような疾患及び障害は、生殖障害、妊娠障害、例えば妊娠性絨毛疾患、発育障害、例えばSilver-Russell症候群、成長障害、成長ホルモン欠乏症、クッシング病、内分泌障害、細胞増殖障害で、新生物、肉腫、下垂体腫瘍、卵巣腫瘍、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部及び頚部、胎盤部位の栄養膜の腫瘍、腺癌、絨毛上皮腫、骨肉腫及び他の固形腫瘍を含むもの;血管新生、骨髄増殖性障害;自己免疫/炎症疾患;心血管系疾患;神経障害、疼痛;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症、及び肥満を含むもの、悪液質、AIDS、腎疾患;肺損傷;加齢;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症及び寄生体感染症を含むもの、並びに他の病態を含む。好ましくは、この疾患は、内分泌機能、特に成長ホルモンが関係するものである。
本発明の種々の特徴及び態様は、特にINSP101ポリペプチドに関連する実施例を介して、これからより詳細に説明されるであろう。
本発明の範囲を逸脱することなく細部の改変がなされ得ることは、理解されるであろう。
【0089】
(実施例)
実施例1
INSP101は、5個のエクソンを含むものとして同定された。図2は、ヒト由来の下垂体成長ホルモン(GH-N) P01241のスプライシングパターンを、新規スプライシング変種INSP101のスプライシングパターンと比較している。INSP101エクソン2novポリペプチド及びINSP101エクソン3novポリペプチドは、選択的スプライシングにより生じた選択的エクソンであり;このスプライシング変種は、野生型タンパク質と比べ、延長されたエクソン2(2nov)及び短縮されたエクソン3(3nov)を有する。
【0090】
この概略図は、下垂体成長ホルモン(GH-N)の主要な二次構造エレメントも示している。GH-Nは、4個のαヘリックス(A、B、C及びD)で構成され、並びに特に重要であるのは、ヘリックスAをヘリックスBと連結している“A-Bループ”である。A-Bループは、成長ホルモン受容体に結合するGH-N相互作用面の重要な構成要素である(Wells JA, PNAS vol. 93, pp.1-6 1996 Binding in the growth hormone receptor complex)。新規スプライシング変種INSP101は、(エクソン2の延長のために)A-Bループ中に挿入された新たな残基を有することが証明されている。同様に、エクソン3の短縮は、A-Bループ内の一部のGH-N残基の除去をもたらすであろう。したがって、INSP101は、原則的にA-Bループの組成が、GH-Nとは異なり、このループは成長ホルモン受容体に結合する主要な決定基であるので、INSP101は、(結合親和性及び/又は受容体選択性に関して)変更された受容体結合特性を示すと推定される。これらの実験的予想は、指向性の実験的試験により引き続き確認されるであろう。例えば、成長ホルモンと受容体との1:1複合体を沈降させるモノクローナル抗体の使用、及びhGHbpのC末端近傍に配置した蛍光タグの消光による、溶液中のhGHbp分子のhGH誘導性二量体化の使用(例えば、Well J.A, PNAS Vol. 93 pp.1-6, 1996参照)を含む、多くの異なるアッセイを使用し、ヒト成長ホルモンの結合に対する作用を決定することができる(例えば、Well J.A, PNAS Vol. 93 pp.1-6, 1996参照)(hGHbpはGH受容体の細胞外ドメインである)。
【0091】
実施例2:INSP101のクローニング
1.1ヒト下垂体cDNAの調製
第一鎖cDNAを、ヒト下垂体総RNA(Clontech)から、Superscript II RNase H-逆転写酵素(Invitrogen)を製造元のプロトコルに従って用いて調製した。オリゴ(dT)15プライマー(500μg/ml, Promega)1μL、ヒト肺総RNA 2μg、10mM 各dNTP混合液(中性pH、dATP、dGTP、dCTP、及びdTTP、各10mM)1μL並びに滅菌水を、最終容積12μLとして1.5mLのエッペンドルフチューブ中で混合し、65℃で5分間加熱し、その後氷上で急冷した。これらの内容物を、短時間の遠心により集めて、5X第一鎖緩衝液4μL、0.1M DTT 2μL、及びRNaseOUT組換えリボヌクレアーゼ阻害剤(40ユニット/μL, Invitrogen)1μLを添加した。このチューブの内容物を、穏やかに混合し、42℃で2分間インキュベーションし、その後SuperScript II酵素1μL(200ユニット)を添加し、ピペッティングで穏やかに混合した。この混合液を、42℃で50分間インキュベーションし、その後70℃で15分間加熱することにより失活させた。cDNAに相補的なRNAを除去するために、大腸菌のRNase H(Invitrogen)1μL(2ユニット)を添加し、反応混合液を37℃で20分間インキュベーションした。最終の反応混合液21μLを、滅菌水を179μL添加することにより希釈し、総容積200μLとした。
【0092】
1.2 PCRのための遺伝子特異的クローニングプライマー
18〜25塩基の長さを有する PCRプライマー対を、Primer Designer Software (Scientific & Educational Software, PO Box 72045, Durham, NC 27722-2045, USA)を用い、仮想cDNAの完全なコード配列の増幅のためにデザインした。PCRプライマーは、55±10℃に近いTm及びGC含量40〜60%を有するように最適化した。非特異的プライミングをほとんど又は全く伴わずに標的配列(INSP101)について高い選択性を有するプライマーを選択した。
1.3 ヒト下垂体cDNAからのINSP101のPCR増幅
遺伝子-特異的クローニングプライマー(INSP101-CP1及びINSP101-CP2, 表1)をデザインし、推定INSP101の全コード配列を網羅するcDNAフラグメントを増幅した。遺伝子特異的クローニングプライマーINSP101-CP1及びINSP101-CP2を、鋳型としてのヒト下垂体cDNAと共に使用した。PCRは、1X AmpliTaq(登録商標)緩衝液50μL、200μM の各dNTP、50ピコモルのINSP101-CP1、50ピコモルのINSP101-CP2、AmpliTaq (Perkin Elmer)2.5ユニット及び肺cDNA 100ngを含有する最終容積50μLで、下記のようにプログラムしたMJ Research DNA Engineを使用し行った:94℃、2分; 94℃で1分、50℃で1分、及び72℃で1分を40サイクル;引き続き72℃で7分を1サイクル、並びに4℃の保持サイクル。PCR産物は、Wizard PCR Preps DNA Purification System (Promega)を用い、直接精製した。
【0093】
1.4 PCR産物のサブクローニング
PCR産物を、インビトロジェン社(Invitrogen Corporation)から購入したTAクローニングキットを用い製造元に指定されている条件を用いて、トポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCRII TOPO)中にサブクローニングした。簡単に記すと、ヒトライブラリープールP増幅物に由来する4μLのゲル精製PCR産物を、1μLのTOPOベクター及び1μLの塩溶液とともに室温にて15分間インキュベートした。続いて前記反応混合物で大腸菌株TOP10(Invitrogen)を次のように形質転換した:ワンショットTOP10細胞の50μLアリコートを氷上で解凍してから、2μLのTOPO反応物を添加した。前記混合物を氷上で15分間インキュベートし、続いて42℃にて正確に30秒間インキュベーションすることによってヒートショック処理した。サンプルを氷上に戻し、250μLの温SOC培地(室温)を添加した。サンプルを、振盪しながら(220rpm)37℃にて1時間インキュベートした。続いて形質転換混合物をアンピシリン(100μg/mL)含有L-ブロス(LB)プレート上に蒔いて、37℃で一晩インキュベートした。
1.5 コロニーPCR
滅菌処理した爪楊枝を用い、コロニーを、滅菌水50μL中に接種した。続いて接種物の10μLアリコートを、1X AmpliTaq(商標)緩衝液、200μM 各dNTP、20ピコモルT7プライマー、20ピコモルSP6プライマー、1ユニットAmpliTaq(商標)(Perkin Elmer)を含有する全反応容積20μLで、MJ Research DNA Engineを用いてPCRを行った。サイクリング条件は以下の通りであった:94℃で2分;94℃で30秒、47℃で30秒及び72℃で1分を30サイクル。続いて更なる分析まで、サンプルを4℃で維持した(保持サイクル)。
PCR反応産物を、1X TAE緩衝液中において1%アガロースゲル上で分析した。予想されるPCR産物サイズ(マルチクローニングサイトすなわちMCSにより、187bp多い)を示す1のコロニーを、アンピシリン(100μg/ml)含有L-ブロス(LB)5mL中で、220rpmで振盪しながら37℃で一晩増殖させた。
【0094】
1.6 プラミドDNAの調製及びシークエンシング
ミニプレッププラスミドDNAを、Qiaprep Turbo9600ロボティックシステム(Qiagen)又はWizard Plus SVミニプレップキット(Promega Cat.# 1460)を用い、製造元の指示にしたがって5mLの培養物から調製した。プラスミドDNAを100μLの滅菌水に溶出させた。そのDNA濃度を、エッペンドルフBO分光計を用いて測定した。BigDye Terminatorシステム(Applied Biosystems Cat.# 4390246)を用い製造元の指示にしたがいながら、プラスミドDNA(200〜500ng)をT7及びSP6プライマーと共にDNAシークエンシングした。プライマー配列は、表1に示した。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーンアッププレート(Millipore cat. # LSKS09624)を用い精製し、続いてApplied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。配列分析により、プラスミドpCRII-TOPO中のクローニングした配列はGenBank E00974 (プラスミド13686)と同一であることが明らかとなった(図4)。
【0095】
1.7 プラスミド13686からのINSP101の5'及び3'末端のPCR増幅
PCRプライマーを、INSP101の5'末端及び3'末端を個別に増幅するようにデザインした(表1)。INSP101の5'末端のフォワードプライマー(INSP101-B1P-5'-F)は、ゲートウェイ attB1部位(5'GCAGGCTTC)及びコザック配列(5' GCCACC)の部分配列も含む。INSP101の5'末端のリバースプライマー(INSP101-5'-R)は、INSP101の3'末端のフォワードプライマーと25塩基重複している。INSP101の3'末端のフォワードプライマー(INSP101-3'-F)は、5'末端のリバースプライマーと26bpの重複を有する。INSP101の3'末端のリバースプライマー(INSP101-3'-R)は、5HIS配列を含む(図5)。
【0096】
INSP101 5'末端の増幅のために、PCR反応を最終容積50μLで行い、ここにはプラスミド13686 ミニプレップDNA 0.5μL、5mM 各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)2μL、INSP101-B1p-5'-F(10μM)6μL、INSP101-5'R 6μL、10X Pfu緩衝液5μL、及びPfuポリメラーゼ(3U/μL)(#M774B, Promega)0.5μLを含んでいた。PCR条件は、94℃で2分;94℃で30秒、55℃で30秒及び72℃で1分を30サイクル、並びに4℃の保持サイクルであった。反応産物を1.5%アガロースゲル(1X TAE)に装荷して、正しいサイズのPCR産物(211bp)を、Qiaquick Gel Extraction Kit (Qiagen cat. #28704)を用いてゲル精製し、50μL溶離緩衝液(Qiagen)で溶出した。
INSP101 3'末端を、前述と同じ反応条件を用いるが、プライマーINSP101-3'-F及びINSP101-3'-R、10X AmpliTaq緩衝液5μL及びAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems, # N808-0155, 5U/μL)0.5μLを使用し、増幅した。441bpのPCR産物を、前述のようにゲルで精製した。
【0097】
2. INSP101 ORF作製のためのINSP101の5'及び3'末端のアッセンブリー
INSP101の5'末端及び3'末端を、ゲル精製した5'末端5μL、ゲル精製した3'末端2μL、5mM 各dNTP 2μL、NSP101-B1P-5'-F(10μM)6μL、INSP101-3'-R(10μM)6μL、10X Pfu緩衝液5μL、Pfuポリメラーゼ(3U/μL;Promega cat.#M774B)0.5μLを含有するPCR反応で集成した。反応条件は以下のようであった:94℃で4分;94℃で30秒、48℃で30秒及び70℃で2分を10サイクル;94℃で30秒、52℃で30秒、70℃で2分を25サイクル;追加の伸長工程70℃で10分;並びに、4℃の保持サイクル。反応産物を、1.5%アガロースゲル(1X TAE)上で分析した。推定されたサイズ(627bp)のPCR産物をQiaquick Gel Extraction Kit (Qiagen cat. #28704)を用いてゲル精製し、溶離緩衝液(Qiagen)50μLで溶出した。得られた産物(INSP101 ORF)は、5'末端にattB1部位及びコザック配列が、3'末端に5HISタグコード配列がフランキングしているINSP101のORFを含む(図6)。
【0098】
3. INSP101 ORFのpDONR221へのサブクローニング
INSP101 ORFを、ゲートウェイ(登録商標)クローニングシステム(Invitrogen)を用い、pDONR221へサブクローニングした。ゲル精製したINSP101 ORF PCR産物2μL、5mM 各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)2μL、GCP-フォワード(10μM)3μL、GCP-リバース(10μM)3μL、10X AmpliTaq緩衝液5μL及びAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems, # N808-0155, 5U/μl)0.5μLを含有する最終容積50μLのPCR反応液中で、部分的attB1組換え部位をINSP101 ORFの5'末端に追加し、6HISタグ配列、停止コドン及びattB2組換え部位をINSP101 ORFの3'末端に加えた。PCR条件は、94℃で2分;94℃で30秒、55℃で30秒及び72℃で1分を30サイクル;追加の伸長工程72℃で3分、及び4℃の保持サイクルであった。反応産物を、1.5%アガロースゲル(1X TAE)上で分析し、正確なサイズ(685bp)のPCR産物を、Qiaquick Gel Extraction Kit (Qiagen cat. #28704)を用いてゲル精製し、50μL溶離緩衝液(Qiagen)で溶出した。次に精製したPCR産物(ゲートウェイ改変INSP101 ORF)を、以下のようにBPクロナーゼを使用し、pDONR221へ移入した:1.5μlのゲートウェイ改変INSP101 ORFを、0.5μL pDONR221(0.1μg/μL)、1μL BP緩衝液及び1μL BPクロナーゼ酵素混合液(Invitrogen)と共に、最終容積5μL、室温で2時間インキュベーションした。反応を、0.5μプロテイナーゼK(2μg/μl)を添加することにより停止させ、さらに37℃で10分間インキュベーションした。この反応のアリコート(3μL)を用い、50μL大腸菌DH5α細胞(Invitrogen)をヒートショックにより形質転換した。形質転換混合液を、0.2ml PCRチューブ中で、氷上で30分間インキュベーションし、続いて42℃の水浴に移し45秒間保持した。このチューブを、氷上に2分間戻し、形質転換混合液を、12mlプロピレンチューブに移した。その後サンプルを、SOC培地900μLの添加により希釈し、振盪しながら37℃で1時間インキュベーションした。形質転換体(200μL)を、40μg/μLカナマイシンを含有するLBプレート上に播種し、室温で72時間インキュベーションした。プラスミドミニプレップDNAを、QiaPrep Turbo 9600ロボット型システム(Qiagen)を用い、8個の得られたコロニーから単離し、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems cat. #4390246)を製造元の指示に従い用い、M13F及びM13RシークエンシングプライマーによりDNAシークエンシングを施した。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore cat. #LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサー上で分析した。
【0099】
3. pDONR221-INSP101の変異誘発
シークエンシングの確認により、pDONR-221-INSP 101クローンの全てが、ORFと6HISタグの間に停止コドンを有することが示された。部位特異的変異誘発を用い、停止コドンを削除した。Stratagene Quik Change XL Site-Directed Mutagenesis キット(cat. # 200517)及びプライマーINSP101-mut-F及びINSP1O1-mut-Rを、製造元の指示に従い使用した。プラスミドミニプレップDNAを、得られた8個のコロニーからQiaprep Turbo 9600ロボット型システム(Qiagen)を用いて単離し、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems cat. #4390246)を製造元の指示に従い用い、M13F及びM13RシークエンシングプライマーによりDNAシークエンシングを行った。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore cat. #LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサー上で分析した。
【0100】
4. INSP101 ORFの発現ベクターpEAK12dへのサブクローニング
INSP101 ORFの正しい配列を含むpDONR221クローン由来のプラスミド溶離液(1.5μL)(pENTR-INSP101-6HIS, プラスミドID 14577)(図7)を、次に、pEAK12d(0.1μg/μL)1.5μL、LR緩衝液2μL及びLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μLを含む最終容積10μLで、組換え反応に使用した。この混合液を室温で1時間インキュベーションし、1μLプロテイナーゼK(2μg/μL)の添加により停止させ、さらに10分間37℃でインキュベーションした。この反応液のアリコート(1μL)を用い、Biorad Gene Pulserを製造元の推奨に従い使用し、エレクトロポレーションにより20μL大腸菌DH10B細胞(Invitrogen)(滅菌水中1/5希釈)を形質転換した。エレクトロポレーションした細胞を12mlプロピレンチューブに移し、SOC培地1mLの添加により希釈し、37℃で1時間インキュベーションした。形質転換体を、LB-アンピシリンプレート上に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。QiaPrep Turbo 9600ロボティックシステム(Qiagen)を用い、3個のコロニーからミニプレップDNAを調製し、溶離緩衝液50μL中に溶離した。続けて各ミニプレップ0.5μLに、5mM 各dNTP 2μL、10μM pEAK12-F 3μL、10μM pEAK12-R 3μL、10X AmpliTaq(商標)緩衝液5μL及びAmpliTaq (Applied Biosystems cat. #N808-0155)0.5μLを含有する、全反応容積50μLでPCRを施した。サイクリング条件は、以下のようであった:94℃で2分;94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で1分を30サイクル;72℃で3分を1サイクル。その後、更なる分析まで、サンプルを4℃で維持した(保持サイクル)。
PCR反応生成物は、1X TAE緩衝液中で、1%アガロースゲル上で分析した。予想されるPCR産物サイズ(1010bp)を与えた1個のコロニーを用い、500ml培養液からプラスミドpEAK12d-INSP101-6HIS(プラスミドID 14578)(図6)のCsCl勾配精製されたマキシプレップDNAを調製した(Sambrook J. et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)。得られたプラスミドDNAを、TE緩衝液中に濃度1μg/μLで再懸濁し、前述のpEAK12d F及びpEAK12d Rプライマーで配列を確認した。




【0101】
表1
INSP101クローニング及びシークエンシングのためのプライマー

下線付き配列=コザック配列
“”付き配列=停止コドン
[]内配列=Hisタグ
()内配列=隣接cDNA部分との重複
【0102】
実施例3:INSP101の発現及び精製
ここで本明細書に明らかにされたヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を基に、INSP101ポリペプチドのin vivoにおける組織分布及び発現レベルを決定するために、更なる実験を行った。
INSP101の転写産物の存在を、様々なヒト組織に由来するcDNAのPCRにより調べた。INSP101転写産物は、試験したサンプル中で非常に低いレベルで存在することがある。したがって、RNA調製物中の少量のゲノム混入は、偽陽性の結果を生じるので、様々なヒト組織中の転写産物の存在を証明する実験のデザインには細心の注意が必要である。したがって全てのRNAは、逆転写に使用する前に、DNAseで処理すべきである。加えて各組織に関して、対照(コントロール)反応は、逆転写が行われないように行い得る(-ve RTコントロール)。
例えば、各組織由来の総RNA 1μgを使用し、Multiscript逆転写酵素(ABI)及びランダムヘキサマープライマーを用い、cDNAを作成してもよい。各組織について、逆転写酵素以外の全ての構成要素が添加された対照反応を行う(-ve RTコントロール)。各組織について、逆転写されたRNAサンプル及びマイナスRTコントロールに対して、PCR反応を行う。INSP101特異的プライマーは、本明細書に提供された配列情報を基に容易にデザインできる。逆転写されたサンプルにおける正しい分子量の産物の存在は、マイナスRTコントロール中に該産物が存在しないことと共に、その組織における転写産物の存在の証拠とできる。INSP101転写産物をスクリーニングするためには、前述のように作成されたもののみではなく、いずれか適切なcDNAライブラリーを使用することができる。
INSP101ポリペプチドの組織分布パターンはさらに、これらのポリペプチドの機能に関連した有用な情報を提供するであろう。
加えてここで、pEAK12d-INSP101-6HIS発現ベクターを使用し、更なる実験を行うことができる。これらのベクターによる哺乳類細胞株のトランスフェクションは、INSP101タンパク質の高レベルの発現を可能にし、その結果INSP101ポリペプチドの機能特性に関する継続的な研究を可能にする。下記の材料及び方法は、そのような実験において適切なものの例である:
【0103】
細胞培養
エプスタイン-バーウイルス核抗原を発現しているヒト胚性腎293細胞(HEK293-EBNA, Invitrogen)を、Ex細胞VPRO血清非含有培地(シードストック、維持培地、JRH)において懸濁状態で維持した。トランスフェクションの16-20時間前に(-1日目)、細胞を、2個のT225フラスコに播種した(2%FBS播種培地(JRH)を含むDMEM/F12(1:1)中に2x105細胞/mlの密度でフラスコあたり50ml)。次の日(トランスフェクション0日目)、JetPEI(登録商標)試薬を用いトランスフェクションを行った(プラスミドDNA 2μL/μg、PolyPlus-トランスフェクション)。各フラスコについて、プラスミドDNAを、GFP(蛍光レポーター遺伝子)DNAで同時-トランスフェクションした。トランスフェクション混合物は、2個のT225フラスコに加え、37℃(5%CO2)で6日間インキュベーションした。陽性トランスフェクションの確認は、1日目及び6日目に定量的蛍光試験により行った(Axiovert 10 Zeiss)。
6日目に(採集日)、2つのフラスコから上清をプールし、遠心分離し(例えば、4℃、400g)、固有の識別票を付したポットに入れた。6His-タグ付加タンパク質のQCのために(内部バイオプロセッシングQC)、1個のアリコート(500μL)を保持した。
大規模化バッチは、トランスフェクション試薬としてPolysciences から入手したポリエチレンイミンを用いて、“浮遊細胞のPEIトランスフェクション”と称されるプロトコルに従い(BP/PEI/HH/02/04を参照)生産することができる。
【0104】
精製方法
C-末端6Hisタグを伴う組換えタンパク質を含有する培養培地サンプルを、冷緩衝液A(50mM NaH2PO4;600mM NaCl;8.7%(w/v)グリセロール、pH7.5)で希釈した。このサンプルを、滅菌フィルター(Millipore)で濾過し、滅菌培養角ビン(Nalgene)で4℃で維持した。
精製は、自動サンプル添加装置(Labomatic)に連結したVISIONワークステーション(Applied Biosystems)で4℃で実施した。精製方法は、以下の2つの連続する工程を含んでいた:Niイオンで荷電されているPoros 20 MC (Applied Biosystems)カラム(4.6x50mm, 0.83ml)での金属アフィニティークロマトグラフィー、続いてセファデックスG-25中型(Amersham Pharmacia)カラム(1,0x10cm)でゲルろ過。
最初のクロマトグラフィー工程のために、金属アフィニティーカラムを30カラム容積のEDTA溶液(100mM EDTA;1M NaCl;pH8.0)で再生させ、15カラム容積の100mM NiS04溶液で洗浄し、10カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて7カラム容積の緩衝液B(50mM NaH2PO4;600mM NaCl;8.7%(w/v)グリセロール、400mMイミダゾール、pH7.5)で洗浄し、最後に15カラム容積の緩衝液A(15mMのイミダゾールを含む)で平衡化した。Labomaticサンプル添加装置でサンプルを200mlのサンプルループに移し、続いてNi金属アフィニティーカラムに流速10ml/分で装荷した。前記カラムを12カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて28カラム容積の緩衝液(20mMのイミダゾールを含む)で洗浄した。20mMのイミダゾール洗浄の間に、緩く付着していた混入タンパク質はカラムから溶出した。リコンビナントHis-タグ付加タンパク質を、流速2ml/分、10カラム容積の緩衝液Bで最後に溶出させ、この溶出タンパク質を採集した。
【0105】
二番目のクロマトグラフィー工程のために、セファデックスG-25ゲルろ過カラムを、2mlの緩衝液D(1.137M NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;pH7.2)で再生し、続いて4カラム容積の緩衝液C(137mM NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;20%(w/v)グリセロール;pH7.4)で平衡化した。Niカラムから溶出したピーク画分は、VISIONに統合されているサンプル添加装置を自動的に通過して、セファデックスG-25カラムに装荷され、2ml/分の流速の緩衝液Cでタンパク質を溶出した。前記画分を、滅菌遠心分離フィルター(Millipore)で濾過し、凍結して-80℃で保存した。サンプルのアリコートを、抗-His抗体を用い、SDS-PAGE(4-12% NuPAGEゲル;Novex)ウェスタンブロットで分析した。NuPAGEゲルは、0.1%クマーシーブルーR250染色液(30%メタノール、10%酢酸)で室温で1時間染色し、続けて20%メタノール、7.5%酢酸で、バックグラウンドが透明になりタンパク質バンドが明確に視認できるまで、脱染した。
電気泳動に続いて、タンパク質をゲルからニトロセルロースメンブレンへ移した。前記メンブレンを、5%粉乳を含む緩衝液E(137mM NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;0.1% Tween 20、pH7.4)で室温にて1時間ブロッキングし、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液E中でふたつのウサギポリクローナル抗体混合物(G-18及びH-15、各々0.2μg/mL;Santa Cruz)と共に4℃で一晩インキュベーションした。室温でさらに1時間インキュベーションした後、前記メンブレンを緩衝液E(10分、3回)で洗浄し、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液Eで1/3000に希釈したHRP-結合抗-ウサギ二次抗体(DAKO, HRP 0399)と室温で2時間インキュベーションした。緩衝液Eで洗浄(10分、3回)した後、前記メンブレンをECLキット(Amersham Pharmacia)で1分間処理した。続いて前記メンブレンをハイパーフィルム(Amersham Pharmacia)に露光し、前記フィルムを現像してウェスタンブロット画像を視覚的に分析した。
【0106】
クマーシー染色により検出可能なタンパク質バンドを示したサンプルについて、ウシ血清アルブミンを標準とし、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて、タンパク質濃度が決定できる。
さらに細胞株中のポリペプチドの過剰発現又は発現のノックダウンを使用して、宿主細胞ゲノムの転写活性に対する作用を決定することができる。INSP 101ポリペプチドの二量体化のパートナーであるコアクチベーター及びコリプレッサーを、ウェスタンブロットと組合わせた免疫沈降及び質量分析と組合せた免疫沈降により同定することができる。
【0107】
INSP101特異的配列のリスト (注:エクソン-エクソン接合部によってコードされているアミノ酸については、より5’側のエクソンに対してアサインしている。)

配列番号 1 (INSP101エクソン2novヌクレオチド配列)

1 GGCTCCCGGA CGTCCCTGCT CCTGGCTTTT GGCCTGCTCT GCCTGCCCTG
51 GCTTCAAGAG GGCAGTGCCT TCCCAACCAT TCCCTTATCC AGGCTTTTTG
101 ACAACGCTAT GCTCCGCGCC CATCGTCTGC ACCAGCTGGC CTTTGACACC
151 TACCAGGAGT TTGTAAGCTC TTGGGGAATG G

配列番号 2 (INSP101エクソン2novタンパク質配列)

1 GSRTSLLLAF GLLCLPWLQE GSAFPTIPLS RLFDNAMLRA HRLHQLAFDT
51 YQEFVSSWGM E
【0108】
配列番号 3 (INSP101エクソン3novヌクレオチド配列)

1 AGTCTATTCC GACACCCTCC AACAGGGAGG AAACACAACA GAAATCC

配列番号 4 (INSP101エクソン3novタンパク質配列)

1 SIPTPSNREE TQQKS
【0109】
配列番号 5 (INSP101隣接エクソン2nov-3novヌクレオチド配列)

1 GGCTCCCGGA CGTCCCTGCT CCTGGCTTTT GGCCTGCTCT GCCTGCCCTG
51 GCTTCAAGAG GGCAGTGCCT TCCCAACCAT TCCCTTATCC AGGCTTTTTG
101 ACAACGCTAT GCTCCGCGCC CATCGTCTGC ACCAGCTGGC CTTTGACACC
151 TACCAGGAGT TTGTAAGCTC TTGGGGAATG GAGTCTATTC CGACACCCTC
201 CAACAGGGAG GAAACACAAC AGAAATCC

配列番号 6 (INSP101隣接エクソン2nov-3novタンパク質配列)

1 GSRTSLLLAF GLLCLPWLQE GSAFPTIPLS RLFDNAMLRA HRLHQLAFDT
51 YQEFVSSWGM ESIPTPSNRE ETQQKS
【0110】
配列番号 7 (INSP101完全長ヌクレオチド配列)

1 ATGGCTACAG GCTCCCGGAC GTCCCTGCTC CTGGCTTTTG GCCTGCTCTG
51 CCTGCCCTGG CTTCAAGAGG GCAGTGCCTT CCCAACCATT CCCTTATCCA
101 GGCTTTTTGA CAACGCTATG CTCCGCGCCC ATCGTCTGCA CCAGCTGGCC
151 TTTGACACCT ACCAGGAGTT TGTAAGCTCT TGGGGAATGG AGTCTATTCC
201 GACACCCTCC AACAGGGAGG AAACACAACA GAAATCCAAC CTAGAGCTGC
251 TCCGCATCTC CCTGCTGCTC ATCCAGTCGT GGCTGGAGCC CGTGCAGTTC
301 CTCAGGAGTG TCTTCGCCAA CAGCCTGGTG TACGGCGCCT CTGACAGCAA
351 CGTCTATGAC CTCCTAAAGG ACCTAGAGGA AGGCATCCAA ACGCTGATGG
401 GGAGGCTGGA AGATGGCAGC CCCCGGACTG GGCAGATCTT CAAGCAGACC
451 TACAGCAAGT TCGACACAAA CTCACACAAC GATGACGCAC TACTCAAGAA
501 CTACGGGCTG CTCTACTGCT TCAGGAAGGA CATGGACAAG GTCGAGACAT
551 TCCTGCGCAT CGTGCAGTGC CGCTCTGTGG AGGGCAGCTG TGGCTTCTAG
【0111】
配列番号8 (INSP101完全長タンパク質配列)

1 MATGSRTSLL LAFGLLCLPW LQEGSAFPTI PLSRLFDNAM LRAHRLHQLA
51 FDTYQEFVSS WGMESIPTPS NREETQQKSN LELLRISLLL IQSWLEPVQF
101 LRSVFANSLV YGASDSNVYD LLKDLEEGIQ TLMGRLEDGS PRTGQIFKQT
151 YSKFDTNSHN DDALLKNYGL LYCFRKDMDK VETFLRIVQC RSVEGSCGF
【0112】
配列番号9 (INSP101完全長ヌクレオチド配列(シグナルペプチド領域を含まない))

1 TTCCCAACCA TTCCCTTATC CAGGCTTTTT GACAACGCTA TGCTCCGCGC
51 CCATCGTCTG CACCAGCTGG CCTTTGACAC CTACCAGGAG TTTGTAAGCT
101 CTTGGGGAAT GGAGTCTATT CCGACACCCT CCAACAGGGA GGAAACACAA
151 CAGAAATCCA ACCTAGAGCT GCTCCGCATC TCCCTGCTGC TCATCCAGTC
201 GTGGCTGGAG CCCGTGCAGT TCCTCAGGAG TGTCTTCGCC AACAGCCTGG
251 TGTACGGCGC CTCTGACAGC AACGTCTATG ACCTCCTAAA GGACCTAGAG
301 GAAGGCATCC AAACGCTGAT GGGGAGGCTG GAAGATGGCA GCCCCCGGAC
351 TGGGCAGATC TTCAAGCAGA CCTACAGCAA GTTCGACACA AACTCACACA
401 ACGATGACGC ACTACTCAAG AACTACGGGC TGCTCTACTG CTTCAGGAAG
451 GACATGGACA AGGTCGAGAC ATTCCTGCGC ATCGTGCAGT GCCGCTCTGT
501 GGAGGGCAGC TGTGGCTTCT AG
【0113】
配列番号10 (INSP101完全長タンパク質配列(シグナルペプチド領域を含まない))

1 FPTIPLSRLF DNAMLRAHRL HQLAFDTYQE FVSSWGMESI PTPSNREETQ
51 QKSNLELLRI SLLLIQSWLE PVQFLRSVFA NSLVYGASDS NVYDLLKDLE
101 EGIQTLMGRL EDGSPRTGQI FKQTYSKFDT NSHNDDALLK NYGLLYCFRK
151 DMDKVETFLR IVQCRSVEGS CGF
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】完全長INSP101(配列番号6)対ヒト由来の下垂体成長ホルモン(GH-N) P01241のアラインメントを示す。A-Bループはアスタリスクで印を付けている。
【図2】ヒト由来の下垂体成長ホルモン(GH-N) P01241のスプライシングパターンを、新規スプライシング変種INSP101のスプライシングパターンと比較している。
【図3】INSP101の予想ヌクレオチド配列を、翻訳と共に示す。下線付きの配列は、予想シグナル配列を示す。
【図4】プラスミドpCRII-TOPO-E00974のマップを示す。
【図5】INSP101のプラスミド#13686とのアラインメントを示す。
【図6】クローニングしたINSP101産物のヌクレオチド配列及び翻訳を示す。
【図7】pENTR-INSP101-6HISのマップを示す。
【図8】pEAK12d-INSP101-6HISのマップを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)から(iii)のいずれかのポリペプチド:
(i)配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)成長ホルモンとして機能するか又は(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、(i)のポリペプチドのフラグメント;又は
(iii) (i)もしくは(ii)のポリペプチドの機能的等価物。
【請求項2】
以下の(i)から(iii)のいずれかのポリペプチド;
(i)配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)成長ホルモンとして機能するか又は(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、(i)のポリペプチドのフラグメント;又は
(iii) (i)もしくは(ii)のポリペプチドの機能的等価物。
【請求項3】
配列番号8又は配列番号10に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1又は2記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号8又は配列番号10に記載のアミノ酸配列と相同であり且つ成長ホルモンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項の(iii)に記載の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項5】
配列番号8又は配列番号10に記載のアミノ酸配列もしくはその活性フラグメントと90%を超える配列同一性、好ましくは85%、90%、95%、98%又は99%を超える配列同一性を有し、請求項1〜3のいずれか1項記載のフラグメント又は機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項6】
配列番号8又は配列番号10に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと顕著な構造的相同性を示す、請求項1〜5のいずれか1項記載の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項記載の(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有し、配列番号8又は配列番号10記載のアミノ酸配列に由来する7以上のアミノ酸残基からなる、請求項1〜3及び5のいずれか1項記載のフラグメントであるポリペプチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドをコードする精製核酸分子。
【請求項9】
配列番号7又は配列番号9に記載の核酸配列を含むか、又はそれらの余剰的等価物もしくはフラグメントである、請求項8記載の精製核酸分子。
【請求項10】
配列番号7又は配列番号9記載の核酸配列からなるか、又はそれらの余剰的等価物もしくはフラグメントである、請求項8記載の精製核酸分子。
【請求項11】
高ストリンジェンシー条件下で、請求項8〜10のいずれか1項記載の核酸分子とハイブリダイズする、精製核酸分子。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項13】
請求項12記載のベクターで形質転換されている宿主細胞。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか1項記載の成長ホルモンポリペプチドと特異的に結合するリガンド。
【請求項15】
抗体である、請求項14記載のリガンド。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの発現レベル又は活性レベルを増加又は低下させる化合物。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドのいずれの生物学的作用も誘導することなく、前記ポリペプチドと結合する、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
天然又は改変されている、基質、リガンド、酵素、受容体又は構造的もしくは機能的模倣物である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
疾患の治療又は診断に使用するための、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14もしくは15項記載のリガンド、又は請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
患者由来の組織において、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドをコードする天然遺伝子の発現レベルを評価するか、又は請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの活性を評価すること;及び
前記発現又は活性のレベルをコントロールのレベルと比較すること;
を含み、このとき前記コントロールのレベルと異なるレベルが疾患を示唆している、患者の疾患を診断する方法。
【請求項21】
In vitroで実施される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
(a)請求項14又は15記載のリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で生物学的サンプルと接触させる工程;及び
(b)前記複合体を検出する工程;
を含む、請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
(a)患者由来の組織サンプルを、核酸プローブと、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子と前記プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で接触させる工程;
(b)コントロールサンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プローブと接触させる工程;及び
(c)前記サンプルにおけるハイブリッド複合体の存在を検出する工程;
を含み、このときコントロールサンプルのハイブリッド複合体のレベルと異なる患者サンプルのハイブリッド複合体レベルの検出は疾患を示唆している、請求項20又は21記載の方法。
【請求項24】
(a)患者の組織由来の核酸サンプルを、核酸プライマーと、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子と前記プライマーとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で接触させる工程;
(b)コントロールサンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プライマーと接触させる工程;及び
(c)前記サンプルの核酸を増幅させる工程;及び、
(d)患者サンプル及びコントロールサンプルの両サンプルから、増幅核酸レベルを検出する工程;
を含み、このときコントロールサンプルの増幅核酸レベルと顕著に異なる患者サンプルの増幅核酸レベルの検出は疾患を示唆している、請求項20又は21記載の方法。
【請求項25】
(a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
(b)前記組織サンプルから、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を単離する工程;及び、
(c)疾患に付随する変異の存在を前記疾患の指標として前記核酸分子中で検出することによって、疾患について患者を診断する工程;
を含む請求項20又は21記載の方法。
【請求項26】
核酸分子を増幅させて増幅産物を生成し、前記増幅産物で変異の有無を検出することをさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
核酸分子を、前記核酸分子にハイブリダイズする核酸プローブとストリンジェントな条件下で接触させて、疾患に付随する変異に対応するいずれかの部分に前記核酸プローブ鎖の非ハイブリダイズ部分を有するハイブリッド二本鎖分子を形成させること;及び
疾患に付随する変異の有無の指標として前記プローブ鎖の非ハイブリダイズ部分の有無を検出すること;
によって、前記患者における変異の有無を検出する、請求項25又は26記載の方法。
【請求項28】
疾患が、生殖障害;妊娠障害、例えば妊娠性絨毛疾患;発育障害、例えばSilver-Russell症候群;成長障害;成長ホルモン欠乏症;クッシング病;内分泌障害;細胞増殖障害で、新生物、肉腫、下垂体腫瘍、卵巣腫瘍、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部及び頚部、胎盤部位の栄養膜の腫瘍、腺癌、絨毛上皮腫、骨肉腫及び他の固形腫瘍を含むもの;血管新生、骨髄増殖性障害;自己免疫/炎症疾患;心血管系疾患;神経障害、疼痛;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症、及び肥満を含むもの、悪液質、AIDS、腎疾患;肺損傷;加齢;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症及び寄生体感染症を含むもの、並びに他の病態を含むが、これらに限定されるものではない、請求項20〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記疾患が、成長ホルモンタンパク質に関連した疾患である、請求項20〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
成長ホルモンとして又は成長ホルモン活性のモジュレーターとしての、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの使用。
【請求項31】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14もしくは15項記載のリガンド、又は請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物を含有する、医薬組成物。
【請求項32】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、又は請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を含有する、ワクチン組成物。
【請求項33】
以下の疾患の治療用医薬の製造において使用される、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14もしくは15項記載のリガンド、請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物、又は、請求項31記載の医薬組成物:生殖障害、妊娠障害、例えば妊娠性絨毛疾患、発育障害、例えばSilver-Russell症候群、成長障害、成長ホルモン欠乏症、クッシング病、内分泌障害、細胞増殖障害で、新生物、肉腫、下垂体腫瘍、卵巣腫瘍、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部及び頚部、胎盤部位の栄養膜の腫瘍、腺癌、絨毛上皮腫、骨肉腫及び他の固形腫瘍を含むもの;血管新生、骨髄増殖性障害;自己免疫/炎症疾患;心血管系疾患;神経障害、疼痛;代謝障害で、糖尿病、骨粗鬆症、及び肥満を含むもの、悪液質、AIDS、腎疾患;肺損傷;加齢;感染症で、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症及び寄生体感染症を含むもの、並びに他の病態。
【請求項34】
成長ホルモンタンパク質が関係している疾患の治療用医薬品の製造において使用される、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14もしくは15項記載のリガンド、請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物、又は、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項35】
患者へ、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子、請求項12記載のベクター、請求項13記載の宿主細胞、請求項14もしくは15項記載のリガンド、請求項16〜18のいずれか1項記載の化合物又は請求項31記載の医薬組成物を投与することを含む、患者の疾患を治療する方法。
【請求項36】
疾患にかかっている患者での天然遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が健常な対象者での発現又は活性のレベルと比較した場合に低い疾患に対して、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物又は組成物がアゴニストである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
疾患にかかっている患者での天然遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が健常な対象者での発現又は活性のレベルと比較した場合に高い疾患に対して、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物又は組成物がアンタゴニストである、請求項35記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの発現もしくは活性のレベル、又は請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子の発現レベルを、前記患者由来の組織で一定期間にわたってモニターすることを含む、患者における疾患の治療的処置をモニターする方法であって、
前記期間にわたる発現又は活性のレベルがコントロールレベルに対して変化することは前記疾患の退行の指標である、前記方法。
【請求項39】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチド又は請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子を、前記ポリペプチド又は核酸分子に対し結合親和性を有すると疑われる1又は2以上の化合物と接触させること;及び、
前記核酸分子又はポリペプチドと特異的に結合する化合物を選択すること;
を含む、疾患の治療及び/又は診断で有効な化合物を同定する方法。
【請求項40】
請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;
前記核酸分子の増幅に有用なプライマーを含む第二の容器;及び、
疾患の診断を容易にするために前記プローブ及びプライマーを使用するための説明書;
を含む、疾患の診断に有用なキット。
【請求項41】
ハイブリダイズしないRNAを消化するための薬剤を保有する第三の容器をさらに含む、請求項40のキット。
【請求項42】
核酸分子のアレイを含むキットであって、前記核酸分子の少なくとも1つが請求項8〜11のいずれか1項記載の核酸分子である前記キット。
【請求項43】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドと結合する1又は2以上の抗体;及び
前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬;
を含むキット。
【請求項44】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドを、より高いレベル、より低いレベル又は存在しないレベルで発現するように形質転換された、トランスジェニック非ヒト動物又はノックアウト非ヒト動物。
【請求項45】
請求項44記載のトランスジェニック非ヒト動物を候補化合物と接触させること、及び前記動物の疾患への前記化合物の作用を決定することによって、疾患の治療に有効な化合物をスクリーニングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−525782(P2006−525782A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556543(P2004−556543)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005295
【国際公開番号】WO2004/050703
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(504238862)アレス トレイディング ソシエテ アノニム (24)
【Fターム(参考)】