説明

ヒドロキシカルボン酸エステルを用いてナノ乳化粒子を安定化させる方法及びナノ乳化粒子を含有する皮膚外用剤

【課題】 本発明は、ナノ乳化粒子を安定化する方法及びこのナノ乳化粒子を含有する皮膚外用剤、特に、内部に生理活性物質を含有させた場合には、の安定性をも向上させるので、内部に含有される生理活性有効成分の種類によって、抗酸化、美白、皮膚シワ抑制、皮膚保湿、角質除去、タンパク質合成効果等の効果が優れる皮膚外用剤の提供をその課題とする。
【解決手段】 本発明は、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として用いて製造する数〜数10ナノメータサイズの乳化粒子を、ヒドロキシカルボン酸エステルを用いることにより、安定性を向上させる方法であり、即ち、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルの総重量に対してヒドロキシカルボン酸エステルを0.001〜20倍の量で添加することで、乳化粒子の安定性を向上させることを可能とし、更には、生理活性有効成分を配合した皮膚外用剤の提供を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ乳化粒子を安定化させる方法及びナノ乳化粒子を含有する皮膚外用剤に関する。詳しくは、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として用いて製造する数〜数10ナノメータサイズの乳化粒子を、ヒドロキシカルボン酸エステルを用いて安定化させる方法及びこのナノ乳化粒子を含有する皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体の一次防御膜であって、体内の諸器官を温度・湿度変化、紫外線、公害物質など外部環境の刺激から保護する機能を有する。このような機能を有する皮膚の老化現象を防止すると共に、より健康で且つ美しい皮膚を維持するため、従来、各種動物、植物、微生物等から得られた生理活性物質を化粧品に加えて使用することにより、皮膚の固有機能を維持し、皮膚細胞を活性化させて、皮膚老化及びメラニンの沈着を効果的に抑制するための努力がなされてきた。
【0003】
特に、皮膚に有効活性成分を吸収させ、活性成分が直接的に作用するように誘導する経皮吸収技術に対する研究が盛んに進んで来た。このような経皮吸収に利用された方法は、次のように分類することができる。
【0004】
まず、生理活性物質を適当な溶剤に溶解させ、周期的に皮膚に塗布することにより、皮膚内に有効活性成分を伝達する非常に基礎的な方法がある。この場合、多くの生理活性物質に対して適当な溶剤を選定しなければならないが、このような活性成分を溶解させることができる溶剤を選定することが困難である。また、溶剤により皮膚刺激が発生することもあり、化粧料において使用感の調節が不可能なので、製品化が難しくて、この頃非常に制限的に使用されている。
【0005】
次いで、使用感を改善し、有効活性成分の経皮吸収を促進するため、乳化物の形態の経皮吸収剤が開発された。初期には、マイクロメータサイズの乳化粒子内部に有効活性成分を含有させた方式から、次第にナノメータサイズの乳化粒子を製造してその中に有効活性成分を含有させる技術へ発展した。特に、最近、油溶性薬物と脂質、グリセロールと水、リン脂質又は水溶性非イオン性界面活性剤を使用して、ナノメータサイズ〜マイクロメータサイズの乳化粒子を製造する技術が報告されている(米国特許第5,338,761号)。また、電荷を有するリン脂質を乳化剤として使用したナノ粒子を製造する技術が報告されている(米国特許第6,120,751号)。また、乳化剤、オイル及び水よりなる3相が適当な濃度をなす時に形成されるマイクロエマルジョンを用いたナノサイズの乳化粒子の製造に関する技術が報告されている(米国特許第5,152,923号、WO91/006,286、
WO91/006,287)。
【0006】
しかしながら、上記従来の技術のように、乳化粒子内部に不安定な活性成分を含有させる場合、乳化膜が外相(連続相)の水分子と動的平衡状態に置かれるので、乳化物の内部にある有効活性成分が持続的に水と接し、酸化、分解による変成が生ずるという問題がある。従って、高濃度の有効活性成分を含有するためには、多くの量の乳化剤を使用しなければならないが、この場合、乳化剤によって皮膚刺激などが誘発されるという問題がある。
【特許文献1】米国特許第5,338,761号公報
【特許文献2】米国特許第6,120,751号公報
【特許文献3】米国特許第5,152,923号公報
【特許文献4】WO91/006,286号公報
【特許文献5】WO91/006,287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ナノ乳化粒子を安定化させる方法を提供し、ナノ乳化粒子を含有する皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として用い、得られた数〜数十ナノメータサイズの乳化粒子を、ヒドロキシカルボン酸エステルを使用することにより、ナノ乳化粒子自体の物理化学的な安定度が大きく向上すると共に、粒子内に含有された生理活性物質が様々な条件において、安定性が大きく向上するという事実を見出し、本発明を完成することに至った。
【0009】
即ち、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルの総重量に対してヒドロキシカルボン酸エステルを0.001〜20倍の量で添加することで、乳化粒子の安定性が大きく向上することを見出し、本発明を完成することに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるヒドロキシカルボン酸エステルを用いたナノ乳化粒子は、物理・化学的に安定した状態を長期間維持する効果があり、緻密な乳化膜を形成することにより内部の生理活性物質の酸化を防ぐ効果を併せて有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をより詳しく説明する。本発明は、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いてナノ乳化粒子を製造する際、ヒドロキシカルボン酸エステルを添加して製造することにより、ナノ乳化粒子自体の物理化学的な安定性を向上させると共に、ナノ粒子内に不安定な生理活性物質を安定に含有、保管することができるようにしたものである。
【0012】
本発明のナノ乳化粒子は、ポリグリセリン脂肪酸エステルとヒドロキシカルボン酸エステルを適正比率で用いることにより、物理化学的に安定に製造される。製造されたナノ乳化粒子のサイズは、1nm〜500nm、好ましくは10nm〜100nmである。
【0013】
本発明のナノ乳化粒子に含有されることができる生理活性成分は、その種類が特に限定されないが、例えば、抗生剤、抗腫瘍剤、抗炎症剤、解熱剤、鎮痛剤、抗浮腫剤、鎮咳裾痰剤、鎮静剤、筋肉弛緩剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗憂鬱剤、抗アレルギー剤、強心剤、抗不整脈剤、血管拡張剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、恒常性剤、ポリペプチド、ホルモンなどの医薬原料、抗酸化剤、美白原料、コラーゲン合成促進剤などのしわ除去・緩和剤、皮膚障壁強化剤及び皮膚保湿力増強剤などが含有されることができる。
【0014】
より具体的には、インドメタシン、グリチルレチン酸ステアリル、副腎皮質ホルモン等の抗炎症・抗浮腫剤;ホルモン医薬品;補酵素Q10、レスベラトロール、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンC誘導体、ビタミンEとその誘導体等の抗酸化剤;ミノキシジル、TGF(transforming growth factor)、EGF(epidermal growth factor)、FGF(fibroblast growth factor)、IGF(insuline-like growth factor)、テストステロン、アンドロゲン等の育毛剤;美白原料;コラーゲン合成促進剤等のしわ除去・緩和剤;セラミド、スフィンゴシン等の皮膚障壁強化剤及び皮膚保湿力増強剤等がナノ乳化粒子に含有されることができ、ナノ粒子の内部に含有された有効活性成分の種類及び含量は、目的及び場合によって調節可能である。
【0015】
一方、ナノ乳化粒子の製造時、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルの乳化力を補助するため界面活性剤をさらに使用することができる。この際、界面活性剤の種類は特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン形態、多価アルコールエステル形態、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体等の非イオン性界面活性剤、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N-アシルアミノ酸塩等のアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ハイドロキシイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、エチルセルロース等のような高分子界面活性剤、ラノリン、コレステロール、サポニン等の天然界面活性剤等が使用可能である。
【0016】
また、本発明のナノ乳化粒子は、分散安定性のため水溶性高分子をさらに使用することができる。水溶性高分子の種類は特に限定されないが、例えば、アカシアガム、イリシモス, カラヤガム, トラガカントガム,グアヤクガム, キサンタンガム,ロカストビンガム等の天然由来ガム類、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、グロブリン、フィブリン、及びセルロース、デキストリン、ペクチン、澱粉、アガ、マンナン等のセルロース系誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエーテル等のポリビニル化合物、ポリアクリル酸、カボポール等のポリカルボキシ酸、ポリエチレングリコール等のポリエチレン化合物、ポリスクロース、ポリグリコース、ポリラクトース等の多糖類及びこの塩類等がある。
【0017】
本発明のナノ乳化粒子を製造するときに用いられる1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとヒドロキシカルボン酸エステルの使用量は、内部に含有された活性成分の種類、徐放化、物理化学的性質等によって異なるが、ポリグリセリン脂肪酸エステルの総量は、活性成分の量に対して0.1〜100倍の質量比で、好ましくは、1〜5倍の質量比で使用し、ヒドロキシカルボン酸エステルは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの総量に対して0.001〜20倍の質量比で、好ましくは、0.1〜2倍の質量比で使用する。
【0018】
本発明の安定性に優れているナノ乳化粒子は、保護化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ゲル、皮膚粘着タイプの化粧料、口紅、メークアップベース、パウンデーション等の剤型を有する化粧料;
シャンプー、リンス、バディクレンザ、石鹸、歯磨き、口腔清浄剤等の洗浄料;
ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ又は噴霧剤のような経皮投与型医薬料のような皮膚外用剤に含有されることができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例及び試験例を例に挙げて詳しく説明するが、本願発明がこれらの例に限定されるものではない。
【0020】
<実施例1〜実施例18、及び比較例1〜比較例3>
ナノ乳化粒子の製造ナノ乳化粒子の製造において、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとヒドロキシカルボン酸エステルの含量比を決めるため、内部含有物質を考慮しない状態でポリグリセリン脂肪酸エステルに対するヒドロキシカルボン酸エステルの含量比を異ならせてナノ乳化粒子を製造した。他の界面活性剤及び分散安定化のための水溶性高分子は使用しなかった。ポリグリセリン脂肪酸エステル2g(モノミリスチン酸デカグリセリル1.7g及びモノイソステアリン酸ジグリセリル0.3g)、クエン酸トリエチルを0.02、0.1、0.2、0.5、1.0及び2.0gを各々1gのスクワランに混合、加温して60℃で均一、溶解させ、精製水で100gになるようにした後、ホモジナイザーを使用して10,000rpmで5分間、1次乳化した直後、マイクロフルイダイザー(みづほ工業製高圧乳化機)を使用して3回処理し、実施例1〜実施例6及び比較例1のナノ乳化
粒子を製造した。
【0021】
ナノ乳化粒子の内部に含有させた活性成分の安定化の程度を確認するため、次のようにレチノール、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル(VC-IP)を生理活性成分で内部に含有させたナノ乳化粒子を製造した。すなわち、スクワランに前記の生理活性物質を各々0.25gずつ入れて、ポリグリセリン脂肪酸エステル2g(モノミリスチン酸デカグリセリル1.7g及びモノイソステアリン酸ジグリセリル0.3g)、クエン酸トリエチルを0.02、0.1、0.2、0.5、1.0及び2.0gを、各々混合、加温して60℃で均一に溶解させ、精製水で100gになるようにした後、ホモジナイザーを使用して10,000rpmで5分間、1次乳化した直後、マイクロフルイダイザー(みづほ工業製高圧乳化機)を使用して3回処理し、実施例7〜実施例18及び比較例2〜比較例3の生理活性成分を含有したナノ乳化粒子を製造した。
【0022】
製造されたナノ乳化粒子の平均粒子径を測定するため、動的レーザー光散乱法(堀場製作所製LB-550V)を利用して測定した。なお、凝集、沈殿によって肉眼観察される場合は、別に粒径を測定しなかった。製造されたナノ乳化粒子をまとめると次の表1の通りになる。また、表1に示す、生理活性成分の含量及びポリグリセリン脂肪酸エステル総量/ヒドロキシカルボン酸エステル総量の含量比は、試料全体に対する質量比で示した。
【0023】
【表1】

【0024】
<試験例1>ナノ乳化粒子の経時安定性
ナノ乳化粒子の経時安定性を確認するため、各々の粒子を温度別に条件を異ならせて保管し、30日が経過した後、ナノ乳化粒子の分散安定性及び乳化安定性を確認した。ナノ乳化
粒子の粒径の増減を測定するため、上記実施例及び比較例で使用した動的レーザー光散乱法(堀場製作所製LB-550V)を使用して測定し、肉眼で凝集、沈殿が観察される試料に対しては、別途の粒径測定を行なわなかった。その結果は表2に示した。
【0025】
【表2】

【0026】
上記表2から、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルのみで乳化された場合(比較例1〜比較例3)には、長期保管による経時安定性が比較的低く、室温以上の温度条件において、層分離、クリーミング・凝集現象等が肉眼で観察される粒子を形成し、クエン酸トリエチルを一緒に用いて製造したナノ乳化粒子(実施例1〜実施例18)は、1ヶ月が経過した後でも物理的に安定に分散されていることが分かる。
【0027】
次に、上記方法により製造されたナノ乳化粒子を含有する化粧料に対する剤型例を表3〜表7に示す。なお、配合割合は重量部である。
【0028】
<剤型例1,2及び比較剤型例1,2>保護化粧水を表3に示す。なお、製法は、精製水に精製水以外の組成を加え、均一に混合し、保護化粧水を得る。
【0029】
【表3】

【0030】
<剤型例3,4及び比較剤型例3,4>栄養クリームを表4に示す。なお、製法は、水相の原料を混合し、加熱して80℃に保ち、水相部とする。一方、上記油相の原料を混合し、加熱溶解して80℃に保ち、油相部とする。この油相部を水相部に加えて予備乳化を行い、ホモミキサーにて均一に乳化し、30℃まで冷却して、栄養クリームを得る。
【0031】
【表4】

【0032】
<剤型例5,6及び比較剤型例5,6>乳液を表5に示す。なお、製法は、水相の原料を混合し、加熱して80℃に保ち、水相部とする。一方、上記油相の原料を混合し、加熱溶解して80℃に保ち、油相部とする。この油相部を水相部に加えて乳化し、30℃まで冷却して、乳液を得る。
【0033】
【表5】

【0034】
<剤型例7,8及び比較剤型例7,8>クリーム状ファンデーションを表6に示す。なお、製法は、油相の原料の一部と粉体原料を3本ロールミルにかけ、残りの油相の原料を加え、加熱溶解して80℃に保つ。次に、加熱溶解した上記水相の原料を徐々に加えて80℃で乳化し、これを攪拌しながら室温まで冷却して、クリーム状ファンデーションを得る。
【0035】
【表6】

【0036】
<剤型例9,10及び比較剤型例9,10>クリーム状マッサージ料を表7に示す。なお、製法は、油相の原料の一部と粉体原料を3本ロールミルにかけ、残りの油相の原料を加え、加熱溶解して80℃に保つ。次に、加熱溶解した上記水相の原料を徐々に加えて80℃で乳化し、これを攪拌しながら30℃まで冷却して、クリーム状マッサージ料を得る。
【0037】
【表7】

【0038】
<試験例2>生理活性成分の経時安定性の確認実験
ナノ乳化粒子に含有された生理活性成分の経時安定性を定量的に確認するため、高速液体クロマトグラフィーを使用して残存量を測定した。各々の実施例、比較例、剤型例及び比較剤型例のうち有効活性成分の開始前含有量100%に換算し、活性成分の残存量を計算した。保管条件は25℃恒温槽を使用した。ナノ乳化粒子に対する実験結果を表8に示し、剤型例に対する結果を表9に示した。各々の成分に対する分析条件は次の通りである。
〔レチノールの定量分析条件〕
a.カラム:Shim-pack CLC-ODS(6mmφ×150mm, 5μm)
b.移動相:アセトニトリル/メタノール=80/20
c.流速:1.0ml/min
d.検出器:UV254nm
〔テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルの定量分析条件〕
a.カラム:Shim-pack CLC-ODS(6mmφ×150mm, 5μm)
b.移動相:メタノール/エタノール/クロロホルム=2/2/1
c.流速:2.0ml/min
d.検出器:UV236nm
【0039】
【表8】

【0040】
上記の実験結果から、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルのみで製造したナノ乳化粒子のうち生理活性成分は、25℃保管条件において急激に減少することが分かる。(比較例2,比較例3)ヒドロキシカルボン酸エステルを一緒に使用したナノ乳化粒子(実施例7〜実施例18)の内部に含有された生理活性成分は、長期間安定に保管が可能であることを確認することができた。このような結果は、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとヒドロキシカルボン酸エステルが非常に緊密な構造を形成し、外相(連続相)の水分子の乳化粒子内部への侵入を抑制することにより、乳化粒子内部の活性成分が水と接触する確率が減少するにつれて現れる現象と予想される。
【0041】
【表9】

【0042】
表9から、ナノ乳化粒子を剤型化しても、内部に含有された生理活性成分が安定化したことが分かる。剤型化において、ナノ乳化粒子は多重乳化物の形態に形成されると予想され、一種の多重乳化物の形態に形成されて水との接触機会がさらに少なくなるにつれて、付加的な生理活性成分の安定化を得ることができたと予想される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のヒドロキシカルボン酸エステルを用いたナノ乳化粒子は、物理・化学的に安定した状態を長期間維持できるため、有効な生理活性物質の酸化を防止する効果を有するため、医薬品や化粧料、食品分野に広く応用が期待できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いてナノ乳化粒子を製造する際、ポリグリセリン脂肪酸エステルの総重量に対してヒドロキシカルボン酸エステルを0.001〜20倍の比率で添加してナノ乳化粒子を安定化させる方法。
【請求項2】
ポリグリセリン脂肪酸エステルがモノステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、ジオレイン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸テトラグリセリル、ペンタオレイン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、テトラベヘン酸ヘキサグリセリル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリル、ペンタオレイン酸ヘキサグリセリル、ポリリシノレイン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ペンタヒドロキシステアリン酸デカグリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、ヘプタステアリン酸デカグリセリル、ヘプタオレイン酸デカグリセリル、デカステアリン酸デカグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、デカオレイン酸デカグリセリル、デカマカデミアナッツ脂肪酸デカグリセリル、ポリリシノレイン酸デカグリセリルの1種又は2種以上から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヒドロキシカルボン酸エステルが乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オクチルドデシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシルのうち1種又は2種以上から選択されることを特徴とする請求項1〜請求項2記載の方法。
【請求項4】
ナノ乳化粒子の内部に生理活性物質を含有していることを特徴とする請求項1〜請求項3記載の方法。
【請求項5】
生理活性物質が、抗生剤、抗浮腫剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、解熱剤、鎮痛剤、鎮咳裾痰剤、筋肉弛緩剤、鎮静剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗憂鬱剤、抗アレルギー剤、強心剤、抗不整脈剤、血管拡張剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、恒常性剤、ポリペプチド、抗酸化剤、ホルモン剤、抗菌剤、育毛剤、養毛剤、美白原料、シワ除去・緩和剤、皮膚障壁強化・皮膚保湿力増強剤及び角質除去酵素よりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとヒドロキシカルボン酸エステルより製造されたナノ乳化粒子を含有する皮膚外用剤。
【請求項7】
ポリグリセリン脂肪酸エステルが、モノステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、ジオレイン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸テトラグリセリル、ペンタオレイン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、テトラベヘン酸ヘキサグリセリル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリル、ペンタオレイン酸ヘキサグリセリル、ポリリシノレイン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ペンタヒドロキシステアリン酸デカグリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、ヘプタステアリン酸デカグリセリル、ヘプタオレイン酸デカグリセリル、デカステアリン酸デカグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、デカオレイン酸デカグリセリル、デカマカデミアナッツ脂肪酸デカグリセリル、ポリリシノレイン酸デカグリセリルの1種又は2種以上から選択されることを特徴とする請求項6記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
ヒドロキシカルボン酸エステルが、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オクチルドデシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシルのうち1種又は2種以上から選択されることを特徴とする請求項6若しくは7に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
ナノ乳化粒子の内部に生理活性物質を含有していることを特徴とする請求項6〜請求項8記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
生理活性物質が、抗生剤、抗浮腫剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、解熱剤、鎮痛剤、鎮咳裾痰剤、筋肉弛緩剤、鎮静剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗憂鬱剤、抗アレルギー剤、強心剤、抗不整脈剤、血管拡張剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、恒常性剤、ポリペプチド、抗酸化剤、ホルモン剤、抗菌剤、育毛剤、養毛剤、美白原料、シワ除去・緩和剤、皮膚障壁強化・皮膚保湿力増強剤及び角質除去酵素よりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項9記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2006−273820(P2006−273820A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99961(P2005−99961)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】