説明

ヒータに投入する電力の省エネルギー化に寄与する温度制御装置及びプログラム

【課題】ヒータに投入される電力の省エネルギー化を図る温度制御装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】この温度制御装置は、複数のヒータに入力する電力を調整することにより温度を所定の範囲内になるように制御する装置であって、複数のヒータのうちの1個に対する入力電力をONとし、且つ、入力電力をONとするヒータを順に切り替える電力フリッカー手段と、温度が所定の下限値に達した時から所定の上限値に達するまでの間、複数のヒータの全てに対する入力電力をONとする電力連続投入手段とを備える。温度制御プログラムはこれらの入力電力の切り替えを指令する機能をコンピュータに実現させる。入力電力をONとするヒータを順に切り替えることにより、温度のアンダーシュートの幅を小さくし、無駄な電力の消費を抑えることができる。また、電力連続投入手段の代わりに、温度下降時に全てのヒータの入力電力をOFFにする電力連続遮断手段を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータに投入する電力の省エネルギー化を図ることができる温度制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護や資源利用の持続性の観点から、社会全体として省資源・省エネルギー化や資源・エネルギーをより有効的に活用する必要に迫られている。ここではその問題点につき、生ゴミ処理機を例として説明する。
【0003】
生ゴミ処理機は、家庭や事業所で発生した生ゴミを分解処理するものである。この装置は、分解処理後の生成物を肥料の原料として再生利用が可能であるため、資源の有効活用に資するものである。日本では、食品リサイクル法に基づいて定められた「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」(財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省告示第1号、2007年11月30日)により、食品関連業界に対して、食品廃棄物について40〜85%以上(業種による)の割合で再生利用等を行うことが求められている。
【0004】
生ゴミ処理機には、生ゴミを乾燥させる方式のものと、微生物の活動により生ゴミを分解させる方式のものがある。前者の場合には生ゴミが乾燥する温度を維持するために、後者の場合には微生物が活性化する温度を維持するために、生ゴミが投入される槽内の温度を所定の範囲内に維持する温度制御が行われる。特許文献1には微生物方式の生ゴミ処理機において、ON/OFF制御又はPID制御により温度制御を行うことが記載されている。ON/OFF制御では、槽内の測定温度が所定の下限温度になると電力をONにし、所定の上限温度になると電力をOFFにする。PID制御では、比例動作、積分動作及び微分動作を組み合わせて電力を細かく変化させることにより温度制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-263021号公報([0030])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的には、単純なON/OFF制御では温度が過剰に下限温度以下又は上限温度以上になりやすい(アンダーシュート、オーバーシュート)のに対して、PID制御は温度の安定性という点でより優れた制御方法であるといわれている。制御対象の装置によっては、PID制御により、温度変化の幅をほとんどゼロにすることもできる。しかし、微生物方式の生ゴミ処理機では、微生物の活動に左右されて温度が不規則に変化するため、温度を一定に保つことが難しいうえ、微生物が活性化する温度範囲は比較的広い(10℃程度)ため、温度変化の幅をさほど小さくする必要もない。そのため、微生物方式の生ゴミ処理機では、PID制御を用いると、電力の調整を不必要に細かく行ってしまい、本願発明者が行った実験(後述の「比較例1」)によれば電力が無駄に多く消費されてしまうことが明らかになった。
【0007】
このような問題は、生ゴミ処理機だけではなく、温度変化の幅をさほど小さくする必要がない熱源用の電気機器でも同様に生じるものである。本発明が解決しようとする課題は、これら電気機器のヒータに投入する電力の省エネルギー化を図ることができる温度制御装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る温度制御装置の第1の態様のものは、複数のヒータに入力する電力を調整することにより温度を所定の範囲内になるように制御する装置であって、
前記複数のヒータのうちの1個に対する入力電力をONとし、且つ、入力電力をONとするヒータを順に切り替える電力フリッカー手段と、
前記温度が所定の下限値に達した時から該温度が所定の上限値に達するまでの間、前記複数のヒータの全てに対する入力電力をONとする電力連続投入手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
第1の態様の温度制御装置では、温度が所定の下限値に達すると、電力連続投入手段によって全てのヒータに電力が入力されることにより温度が上昇する。そして、温度が所定の上限値に達すると、電力を入力するヒータが順に切り替えられ、各ヒータでは短い周期での電力のON/OFF(点滅=フリッカー)が繰り返される。これにより、全てのヒータに対する入力電力の総和が温度上昇時よりも小さくなる。フリッカーの開始直後は更に温度が上昇(オーバーシュート)することもあるが、最終的には温度が徐々に下降する。温度が下限値に達すると、再び電力連続投入手段により全てのヒータに電力が入力される。電力を入力した直後は更に温度が下降(アンダーシュート)することもあるが、最終的には温度は上昇に転じる。こうして、これら2つの手段による動作が交互に繰り返されることにより、温度は下限値から上限値の間を含む所定の範囲内に維持される。
【0010】
第1の態様の温度制御装置では、PID制御のように不必要に細かく電力を調整することがない。また、温度の下降中に、全てのヒータに対して同様に電力を調整するのではなく、ヒータ毎にタイムラグを設けて、常に複数のヒータのうちのいずれか1個に電力を入力しているため、従来の単純なON/OFF制御のように完全に電力がゼロになることがなく、温度が急激に下降することが防止される。また、電力のONとOFFが短い周期で繰り返されることから、電力がOFFの期間を通してヒータに余熱が残るという点においても、温度が急激に下降することが防止される。このように温度の急激な下降が防止されることにより、アンダーシュートの幅が小さくなり、温度が下降から上昇に転じる際に余計に消費される電力が小さくなる。
【0011】
本発明に係る温度制御装置の第2の態様のものは、複数のヒータに入力する電力を調整することにより温度を所定の範囲内になるように制御する装置であって、
前記複数のヒータのうちの1個に対する入力電力をONとし、且つ、入力電力をONとするヒータを順に切り替える電力フリッカー手段と、
前記温度が所定の上限値に達した時から該温度が所定の上限値に達するまでの間、前記複数のヒータの全てに対する入力電力をOFFとする電力連続遮断手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
第2の態様の温度制御装置では、温度が所定の上限値に達すると、電力連続遮断手段によって全てのヒータに対する入力電力がOFFになり、温度が(初期にはオーバーシュートが生じうるが)下降する。一方、温度が所定の下限値に達すると、電力フリッカー手段により各ヒータに順に電力が入力され、その結果、温度が(初期にはアンダーシュートが生じうるが)徐々に上昇する。これにより温度が上限値に達すると、再び電力連続遮断手段によって全てのヒータの電力がOFFになる。こうして、これら2つの手段による動作が交互に繰り返されることにより、温度は下限値から上限値の間を含む所定の範囲内に維持される。
【0013】
第2の態様の温度制御装置では、第1の態様のものと同様、PID制御のように不必要に細かく電力を調整することがない。また、第2の態様の温度制御装置では、温度上昇の際に、全てのヒータに対して同様に電力を調整するのではなく、ヒータ毎にタイムラグを設けて、常に複数のヒータのうちのいずれか1個のみに電力を入力しているため、温度が急激に上昇することが防止され、オーバーシュートの幅が小さくなる。そのため、オーバーシュートの分だけ余計に消費される電力が小さくなる。
【0014】
前記ヒータへの入力電力のON及びOFFには、それらを高速で行うことができるという点で、ソリッドステートリレーを好適に用いることができる。
【0015】
第1の態様及び第2の態様の温度制御装置において、ヒータに供給する電力の調整はコンピュータを用いて行うことができる。そのコンピュータには以下の温度制御プログラムを用いることができる。
本発明に係る温度制御プログラムの第1の態様の態様のものは、複数のヒータに入力する電力を調整することにより温度を制御するためのプログラムであって、
前記複数のヒータのうちの1個に対する入力電力をONとし、且つ、入力電力をONとするヒータを順に切り替えるように指令する電力フリッカー指令機能と、
前記温度が所定の下限値に達した時から該温度が所定の上限値に達するまでの間、前記複数のヒータの全てに対する入力電力をONとするように指令する電力連続投入指令機能と、
をコンピュータに実現させるための温度制御プログラムである。
【0016】
本発明に係る温度制御プログラムの第2の態様の態様のものは、複数のヒータに入力する電力を調整することにより温度を制御するためのプログラムであって、
前記複数のヒータのうちの1個に対する入力電力をONとし、且つ、入力電力をONとするヒータを順に切り替える電力フリッカー指令機能と、
前記温度が所定の上限値に達した時から該温度が所定の上限値に達するまでの間、前記複数のヒータの全てに対する入力電力をOFFとする電力連続遮断指令機能と、
をコンピュータに実現させるための温度制御プログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、不必要に細かく電力を調整することがないうえ、常に複数のヒータのうちのいずれか1個のみに電力を入力する電力制御を行うことにより、温度のアンダーシュート(第1の態様の場合)又はオーバーシュート(第2の態様の場合)の幅を小さくすることができる。それにより、余計に消費される電力を小さくすることができるため、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例である温度制御装置を用いた生ゴミ処理機を示す概略構成図(a)及び配線図(b)。
【図2】第1実施例の温度制御装置で行われる電力制御と温度との関係を示すグラフ。
【図3】第1実施例の温度制御装置を用いた生ゴミ処理機、及び比較例であるPID制御による温度制御装置を用いた生ゴミ処理機につき、生ゴミ処理槽内の温度及び消費電力を測定した結果を示すグラフ。
【図4】本発明の第2実施例である温度制御装置を用いた温水器を示す概略構成図。
【図5】第2実施例の温度制御装置で行われる電力制御と温度との関係を示すグラフ。
【図6】第2実施例の温度制御装置を用いた温水器、及び比較例であるON/OFF制御を用いた温水器につき、貯水槽内の温度及び消費電力を測定した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図6を用いて、本発明に係る温度制御装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1〜図3を用いて、本発明の第1実施例である、生ゴミ処理装置のヒータの制御に用いられる温度制御装置について説明する。
まず、本実施例の温度制御装置が用いられる生ゴミ処理装置10の構成及び動作を説明する。生ゴミ処理装置10は、図1(a)の概略構成図に示すように、生ゴミが投入される処理槽12と、処理槽12内を加熱するヒータ13と、処理槽12内の温度を測定する温度センサ14と、処理槽12内を攪拌する攪拌機15と、処理槽12内に空気を供給する吸気ブロア16と、処理槽12内の空気(生ゴミの分解により生じたガスを含む)を排出する排気ブロア17とを備える。ヒータ13は定格消費電力が共に3kWである第1ヒータ131及び第2ヒータ132から成る。処理槽12の上部には生ゴミを投入する投入口121が、処理槽12の下部には処理後の生成物を取り出すための排出口122が、それぞれ設けられている。投入口121と排出口122は、投入・排出時以外は閉鎖される。なお、この生ゴミ処理装置10は、後述の温度制御装置11を除いて市販のもの(米田工機株式会社製BF-100型、1日あたりの最大処理量100kg)である。
【0021】
生ゴミ処理装置10の動作の概略を説明する。使用者は処理槽12内に生ゴミとバイオ分解剤(微生物を含む薬剤)を投入する。処理槽12内では、生ゴミはバイオ分解剤と共に攪拌機15で攪拌されると共に、後述の温度制御装置11での制御の下でヒータ13により60℃前後の温度に維持される。その間、処理槽12内は吸気ブロア16及び排気ブロア17により換気される。このような環境下において、生ゴミは微生物の活動により分解される。
【0022】
次に、図1(b)を用いて、生ゴミ処理装置10における負荷への電力の配線を説明しつつ、本実施例の温度制御装置11について説明する。
第1ヒータ131、第2ヒータ132、攪拌機15、吸気ブロア16及び排気ブロア17は電圧200Vの三相交流電源18に並列に接続される。三相交流電源18と第1ヒータ131の間には第1SSR(ソリッドステートリレー)111が設けられている。同様に、三相交流電源18と第2ヒータ132の間には第2SSR112が設けられている。SSRはサイリスタやフォトカプラ等の半導体素子を用いた電流のスイッチング装置であり、電磁リレー等とは異なり可動部がないため、高速で電流のON/OFFを繰り返すことができる、という特長を有する。三相交流電源18と攪拌機15の間にはモータの回転方向を逆転させる可逆電磁開閉器151が設けられ、吸気ブロア16及び排気ブロア17の間にはそれぞれ第1インバータ161及び第2インバータ171が設けられている。温度センサ14には電圧24Vの直流が供給される。
【0023】
また、生ゴミ処理装置10には第1SSR111、第2SSR112、温度センサ14等を制御するコンピュータであるプログラマブルコントローラ(PLC)110が設けられている。このPLC110と第1SSR111及び第2SSR112により、ヒータ13に入力される電力に対する温度制御装置11が構成される。PLC110は、温度センサ14から処理槽12内の温度に関する信号を受信すると共に、第1SSR111及び第2SSR112に対して、ヒータ13への電力の供給のON/OFFに関する信号を発信する。PLC110はヒータ13の温度制御装置11としての機能の他に、可逆電磁開閉器151、第1インバータ161、第2インバータ171等の制御を行う機能を有するが、ここでは詳細な説明は省略する。
【0024】
次に、図2を用いて、温度制御装置11によるヒータ13への入力電力の調整について説明する。生ゴミ処理装置10の起動時、又は起動後に処理槽12内に生ゴミが投入された時には通常、処理槽12内の温度は設定上限温度TH(本実施例では60℃)よりも低くなる。温度センサ14がこのような低い温度を示す信号をPLC110に送信すると、PLC110は、ヒータ13への入力電力を連続的にONとするよう、第1SSR111及び第2SSR112に制御信号を送信する。これにより、第1SSR111は第1ヒータ131に、第2SSR112は第2ヒータ132に、それぞれ連続的に電力を入力し、それにより処理槽12内の温度が上昇する(図2中の時間t0)。
【0025】
処理槽12内の温度が設定上限温度THに達すると、PLC110は温度センサ14からの信号によりそのことを検知し、第1ヒータ131及び第2ヒータ132への入力電力を以下のように時間変化させるように制御信号を送信する。即ち、第1SSR111はT/2秒間(本実施例では0.3秒間)のONとT/2秒間のOFFを周期的(周期T)に繰り返すように第1ヒータ131への入力電力W1を時間変化させる。一方、第2SSR112は第1ヒータ131への入力電力W1とT/2周期ずらしてT/2秒間のONとT/2秒間のOFFを周期的に繰り返すように、第2ヒータ132への入力電力W2を時間変化させる。この時、ヒータ13全体に対して供給される電力は時間t0の時の1/2となり、処理槽12内の温度が徐々に低下する。また、電力は第1ヒータ131又は第2ヒータ132のいずれかに対して常に供給されていると共に、第1ヒータ131及び第2ヒータ132において電力がOFFになるのが1周期あたり0.3秒という短時間であるため、第1ヒータ131及び第2ヒータ132が持つ余熱により、温度の低下は緩やかになる。このような周期的なON/OFFの切り替えを、処理槽12内の温度が所定の下限温度に達するまで行う(時間tf)。
【0026】
そして、処理槽12内の温度が設定下限温度TL(本実施例では57℃)に達すると、PLC110は温度センサ14からの信号によりそのことを検知し、第1ヒータ131及び第2ヒータ132の双方への電力を連続的にONとするように、第1SSR111及び第2SSR112に制御信号を送信する。この連続的な電力の供給は、処理槽12内の温度が再び設定上限温度THに達するまで行う(時間tU)。
【0027】
以後、電力の周期的なON/OFFと連続的な供給が交互に繰り返されることにより、処理槽12内の温度はほぼ設定上限温度THと設定下限温度TLの間に保たれる。
【0028】
次に、本実施例の温度制御装置11を用いた実験の結果を説明する。この実験では、温度制御装置11を用いて処理槽12内の温度(槽内温度)を制御し、その間の温度、及び第1ヒータ131に投入される電力と第2ヒータ132に投入される電力の和の時間変化を測定した。併せて、比較例として、従来のPID制御を用いて第1ヒータ131と第2ヒータ132に投入される電力を同じタイミングで調整することにより槽内温度を制御し、槽内温度及び投入電力の和の時間変化を測定した(比較例1)。
【0029】
これらの実験の結果を図3に示す。本実施例では、比較例と同程度の安定性で温度制御がなされている。そして、ヒータに投入される電力は全ての時間帯において比較例よりも本実施例の方が小さく、その平均値は、比較例1では5.84kWであるのに対して、本実施例では比較例1の半分以下の2.76kWであった。これらの実験結果より、本実施例の温度制御装置11による温度制御は比較例1のPID制御よりも省電力性の点で優れていることが明らかになった。
【実施例2】
【0030】
図4〜図6を用いて、本発明の第2実施例である、温水器のヒータの制御に用いられる温度制御装置について説明する。
まず、本実施例の温度制御装置が用いられる温水器20の構成を説明する。温水器20は、図4の概略構成図に示すように、水槽22と、水槽22内に貯留される水を加熱するヒータ23と、貯留水の温度を測定する温度センサ24と、温度制御装置21と、を有する。ヒータ23は第1ヒータ231及び第2ヒータ232の2個のヒータから成り、これら2個のヒータの定格消費電力は共に1.3kWである。
【0031】
温度制御装置21はPLC210、第1SSR211及び第2SSR212から成る。PLC210は、温度センサ24から水槽22内の温度に関する信号を受信すると共に、第1SSR211及び第2SSR212に対して、ヒータ23への電力の供給のON/OFFに関する信号を発信する。
【0032】
次に、図5を用いて、温度制御装置21によるヒータ23への入力電力の調整について説明する。まず、水槽22内の水温が設定下限温度TLよりも低い場合には、PLC210は第1ヒータ231及び第2ヒータ232への入力電力を共に連続的にONとするよう、第1SSR211及び第2SSR212に制御信号を送信する。これにより、第1SSR211は第1ヒータ231に、第2SSR212は第2ヒータ232に、それぞれ連続的に電力を入力し、その電力により水槽22内の水が加熱される(図5中の時間t0)。
【0033】
水槽22内の水温が設定上限温度THに達すると、PLC210は温度センサ24からの信号によりそのことを検知し、第1ヒータ231及び第2ヒータ232への入力電力をOFFにするよう、第1SSR211及び第2SSR212に制御信号を送信する。これにより、第1SSR211から第1ヒータ231への、及び第2SSR212から第2ヒータ232への投入電力が0となり、水槽22内の水温は下降する(時間t)。
【0034】
そして、水槽22内の水温が設定下限温度TLに達すると、PLC210は温度センサ24からの信号によりそのことを検知し、第1ヒータ231及び第2ヒータ232への入力電力を以下のように時間変化させるように制御信号を送信する。即ち、第1SSR211はT/2秒間のONとT/2秒間のOFFを周期的に繰り返すように第1ヒータ231への入力電力W1を時間変化させる。一方、第2SSR212は第1ヒータ231への入力電力W1とT/2周期ずらしてT/2秒間のONとT/2秒間のOFFを周期的に繰り返すように、第2ヒータ232への入力電力W2を時間変化させる。これにより、電力を第1ヒータ231又は第2ヒータ232のいずれかに対して常に供給しつつ、第1ヒータ231及び第2ヒータ232が持つ余熱を利用して水槽22内の水に熱を供給する。こうして、水槽22内の温度は緩やかに上昇する。このような電力の供給は水槽22内の水温が再び設定上限温度THに達するまで行う(時間tf)。
【0035】
以後、電力の周期的なON/OFFとOFFが交互に繰り返されることにより、水槽22内の水温はほぼ設定上限温度THと設定下限温度TLの間に保たれる。
【0036】
次に、本実施例の温度制御装置21を用いた実験の結果を説明する。この実験では、温度制御装置21を用いて水槽22内の水温を制御し、その間の温度、及び第1ヒータ231に投入される電力と第2ヒータ232に投入される電力の和の時間変化を測定した。設定上限温度THは60℃、設定下限温度TLは57℃とした。併せて、比較例として、従来のPID制御を用いて第1ヒータ231と第2ヒータ232に投入される電力を同じタイミングで調整することにより、水温が60℃になるように制御し、水温及び投入電力の和の時間変化を測定した(比較例2)。
【0037】
これらの実験の結果を図6に示す。水温は、本実施例、比較例2共に、実験開始時からの経過時間が2時間以降の時間帯においてほぼ一定になっている。この「2時間以降の時間帯」における電力の平均値は、比較例2では428.4Wであるのに対して、本実施例ではそれよりも3.3%小さい414.5Wであった。
【0038】
ここまでに説明した実施例1及び実施例2ではいずれも、ヒータが2個である場合を例に説明したが、ヒータは3個以上であってもよい。その場合には、時間tf(図2、図5)において、n個のヒータに対して1個ずつ順に、T/n秒間(Tは周期)電力を投入する操作を繰り返す。第1実施例の時間tuにおける電力は、ヒータが2個の場合と同様に、全てのヒータに対してONとする。第2実施例の時間tdにおける電力は、ヒータが2個の場合と同様に、全てのヒータに対してOFFとする。
【符号の説明】
【0039】
10…生ゴミ処理装置
20…温水器
11、21…温度制御装置
110、210…プログラマブルコントローラ(PLC)
111、211…第1SSR
112、212…第2SSR
12…処理槽
22…水槽
121…投入口
122…排出口
13、23…ヒータ
131、231…第1ヒータ
132、232…第2ヒータ
14、24…温度センサ
15…攪拌機
151…可逆電磁開閉器
16…吸気ブロア
161…第1インバータ
17…排気ブロア
171…第2インバータ
18…三相交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヒータに入力する電力を調整することにより温度を所定の範囲内になるように制御する装置であって、
前記複数のヒータのうちの1個に対する入力電力をONとし、且つ、入力電力をONとするヒータを順に切り替える電力フリッカー手段と、
前記温度が所定の下限値に達した時から該温度が所定の上限値に達するまでの間、前記複数のヒータの全てに対する入力電力をONとする電力連続投入手段と、
を備えることを特徴とする温度制御装置。
【請求項2】
複数のヒータに入力する電力を調整することにより温度を所定の範囲内になるように制御する装置であって、
前記複数のヒータのうちの1個に対する入力電力をONとし、且つ、入力電力をONとするヒータを順に切り替える電力フリッカー手段と、
前記温度が所定の上限値に達した時から該温度が所定の上限値に達するまでの間、前記複数のヒータの全てに対する入力電力をOFFとする電力連続遮断手段と、
を備えることを特徴とする温度制御装置。
【請求項3】
前記ヒータへの入力電力のON及びOFFをソリッドステートリレーにより行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記ヒータが生ゴミ処理機の生ゴミ貯留槽内に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の温度制御装置。
【請求項5】
前記ヒータが温水器の温水貯留槽内に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の温度制御装置。
【請求項6】
複数のヒータに入力する電力を調整することにより温度を所定の範囲内になるように制御するためのプログラムであって、
前記複数のヒータのうちの1個に対する入力電力をONとし、且つ、入力電力をONとするヒータを順に切り替えるように指令する電力フリッカー指令機能と、
前記温度が所定の下限値に達した時から該温度が所定の上限値に達するまでの間、前記複数のヒータの全てに対する入力電力をONとするように指令する電力連続投入指令機能と、
をコンピュータに実現させるための温度制御プログラム。
【請求項7】
複数のヒータに入力する電力を調整することにより温度を所定の範囲内になるように制御するためのプログラムであって、
前記複数のヒータのうちの1個に対する入力電力をONとし、且つ、入力電力をONとするヒータを順に切り替える電力フリッカー指令機能と、
前記温度が所定の上限値に達した時から該温度が所定の上限値に達するまでの間、前記複数のヒータの全てに対する入力電力をOFFとする電力連続遮断指令機能と、
をコンピュータに実現させるための温度制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−49124(P2011−49124A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199034(P2009−199034)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(509103875)
【Fターム(参考)】