説明

ヒートシンク及びその製造方法

【課題】高い冷却性能を有し、外層を半導体素子に電圧を印加するための電極を兼ねた構成とすることができるヒートシンク及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ヒートシンク100は、冷媒循環用の流路9aに設けられる積層体12を備え、積層体12は、金属から形成され、内側が流路9aとなる管体9と、管体9の外側に形成された絶縁層10と、絶縁層10の外側に形成され、表面に冷却対象の半導体素子1の電極、例えばエミッタ電極1bが接合される接合面である上面11aを有する導体11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の冷却に用いられるヒートシンク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の動作を安定化させるために、様々なヒートシンクが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたヒートシンクは、銅からなるヒートシンク本体の内部空間に、複数の冷媒通孔を有する銅からなる多孔体を配置したものである。ヒートシンク本体の表面に半導体素子を実装し、冷媒を多孔体の冷媒通孔の一方から他方へ通過させることで、半導体素子からヒートシンク本体を介して多孔体に伝導した熱が冷媒通孔を通る冷媒中に放熱される。冷媒通孔の数が多いほど、多孔体が冷媒と接触する面積が増え、放熱量が増加して放熱効率が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−165165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のヒートシンクによれば、半導体素子をヒートシンク本体に直接接合した場合、半導体素子の電極とヒートシンクを流れる冷媒とが導通しないようにするため、半導体素子としては、半導体素子の接合面と反対側に電極を有するものに限られる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、高い冷却性能を有し、外層を半導体素子に電圧を印加するための電極を兼ねた構成とすることができるヒートシンク及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、上記目的を達成するため、以下のヒートシンク及びその製造方法を提供する。
【0008】
[1]冷媒循環用の流路に設けられる積層体を備え、前記積層体は、金属から形成され、内側が前記流路となる管体と、前記管体の外側に形成された絶縁層と、前記絶縁層の外側に形成され、表面に冷却対象の半導体素子の電極が接合される接合面を有する導体と、を備えたヒートシンク。
【0009】
上記構成において、半導体素子からの発熱は、導体の接合面に伝達し、さらに絶縁層を介して管体に伝達し、管体の流路を流れる冷媒中に放熱される。また、半導体素子からの発熱は、導体の周囲から管体に伝達しており、半導体素子の電極を導体の接合面にハンダ等を用いて直接接合することで、高い冷却性能が得られる。さらに、導体と管体とは絶縁層によって電気的に絶縁されているため、半導体素子の電極が管体を流れる冷媒と導通されず、安全性が確保される。すなわち、外層である導体を電極を兼ねた構成とすることができる。
【0010】
[2]前記導体の表面に設けられ、前記半導体素子に前記導体を介して電気的に接続される電極体を、さらに備えた前記[1]に記載のヒートシンク。
【0011】
[3]前記積層体は、並列して配置された複数の前記積層体である前記[1]又は[2]に記載のヒートシンク。
【0012】
[4]前記複数の積層体は、対向する一対の前記導体の表面に前記接合面を有する前記[3]に記載のヒートシンク。
【0013】
[5]前記複数の積層体は、前記導体の同一方向に設けられた表面に複数の前記接合面を有する前記[3]に記載のヒートシンク。
【0014】
[6]前記積層体は、長手方向に沿って設けられ、互いに電気的に絶縁された複数の前記導体を有する前記[1]乃至[5]のいずれかに記載のヒートシンク。
【0015】
[7]前記積層体は、前記導体の同一の面上に設けられ、互いに電気的に絶縁された複数の導体領域を有し、前記複数の導体領域がそれぞれ前記接合面を有する前記[1]乃至[5]のいずれかに記載のヒートシンク。
【0016】
[8]前記管体は、内面溝付管である前記[1]乃至[7]のいずれかに記載のヒートシンク。
【0017】
[9]前記積層体は、複数の前記流路に沿って形成された複数の前記管体と、前記複数の管体の外側に形成された単一の前記絶縁層と、前記単一の絶縁層の外側に形成された前記導体とを備えた前記[1]乃至[8]に記載のヒートシンク。
【0018】
[10]前記積層体は、複数の前記流路を有する単一の前記管体と、前記単一の管体の外側に形成された単一の前記絶縁層と、前記単一の絶縁体の外側に形成された単一の前記導体とを備えた前記[1]乃至[8]のいずれかに記載のヒートシンク。
【0019】
[11]金属から形成され内側が流路となる管体と、前記管体の外側に形成された絶縁層と、前記絶縁層の外側に形成された導体とを備えた長尺状の積層体を、引き抜き工程を経て形成し、前記導体の一部を除去し、前記長尺状の前記積層体を切断する工程を含むヒートシンクの製造方法。
【0020】
上記絶縁層は、酸化マグネシウム等のセラミックから形成されたものでもよい。また、上記導体は、断面矩形状を有し、接合面は平面が好ましい。上記半導体素子は、200V以上の高電圧が印加され、または300A以上の大電流が流れるパワー半導体素子でもよい。
【0021】
上記ヒートシンクが複数の積層体を有している場合、複数の積層体の管体を金属からなる連結管により直列に接続してもよい。管体と連結管とは、ろう付けあるいはハンダ付けで行うことが好ましい。
【0022】
上記積層体が複数の流路を有する場合、複数の流路が直列に接続されていてもよく、分岐部と合流部との間に設けられたものでもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高い冷却性能を有し、外層を半導体素子に電圧を印加するための電極を兼ねた構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の第2の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す平面図である。
【図2B】図2Bは、図2AのA−A線断面図である。
【図2C】図2Cは、第2の実施の形態に係るシステムの等価回路図である。
【図3A】図3Aは、本発明の第3の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。
【図3B】図3Bは、第3の実施の形態に係るシステムの等価回路図である。
【図4】図4は、本発明の第4の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。
【図5A】図5Aは、本発明の第5の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。
【図5B】図5Bは、第5の実施の形態に係るシステムの等価回路図である。
【図6】図6は、本発明の第6の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す平面図である。
【図7】図7は、本発明の第7の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す平面図である。
【図8】図8は、第7の実施の形態における導体の除去工程を模式的に示す工程図である。
【図9】図9は、本発明の第8の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。
【図10】図10に、本発明の第9の実施の形態に係るヒートシンクの積層体の断面図である。
【図11A】図11Aは、本発明の第10の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。
【図11B】図11Bは、第10の実施の形態に係るシステムの流路系を示す図である。
【図11C】図11Cは、第10の実施の形態に係るシステムの他の流路系を示す図である。
【図12】図12は、本発明の第11の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。
【図13】図13は、本発明の第12の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0026】
[実施の形態]
本実施の形態に係るヒートシンクは、冷媒循環用の流路に設けられる積層体を備えたヒートシンクにおいて、前記積層体は、金属から形成され、内側が前記流路となる管体と、前記管体の外側に形成された絶縁層と、前記絶縁層の外側に形成され、表面に冷却対象の半導体素子の電極が接合される接合面を有する導体とを備える。
【0027】
上記構成において、半導体素子からの発熱は、導体の接合面に伝達し、さらに絶縁層を介して管体に伝達し、管体の流路を流れる冷媒中に放熱される。また、半導体素子からの発熱は、導体の周囲から管体に伝達しており、半導体素子の電極を導体の接合面にハンダ等を用いて直接接合することで、高い冷却性能が得られる。さらに、導体と管体とは絶縁層によって電気的に絶縁されているため、半導体素子の電極が管体を流れる冷媒と導通されず、安全性が確保される。すなわち、外層である導体を電極を兼ねた構成とすることができる。
【0028】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。
【0029】
このヒートシンク100は、冷媒循環用の流路9aに設けられた積層体12と、積層体12の表面に電気的に接続された電極体7とを有して構成され、積層体12の表面に冷却対象の半導体素子1が接合剤としてのハンダ2によって接合される。冷媒としては、例えば冷水が用いられる。なお、半導体素子1と積層体12との接合には、ハンダ2に限られず、銀ペースト等の導電性接着剤を用いてもよく、超音波溶接、常温接合(真空中で原子レベルで清浄な面同士を圧接する方法)等の接合剤を用いない他の接合方法を用いてもよい。接合剤を用いないことで伝熱性がより向上できる場合がある。
【0030】
(積層体)
積層体12は、内側が流路9aとなる管体9と、管体9の外側に形成された絶縁層10と、絶縁層10の外側に形成された導体11とを備える。管体9、絶縁層10及び導体11は、一体成形される。
【0031】
管体9は、断面矩形状(例えば断面正方形状)を有する。管体9の厚さは、薄い方が伝熱性能は向上する。管体9の厚さは、加工性、取付性等を考慮して決められる。管体9の厚さは、本実施の形態では、例えば1mm〜7mmである。流路9aは正方形状を有し、その一辺のサイズは、例えば4mm〜20mmである。管体9は、熱伝導性及び電気伝導性の観点から、例えば銅又は銅合金から形成されているが、他の金属でもよい。
【0032】
絶縁層10の厚さは、薄い方が伝熱性能は向上するが、半導体素子1に印加される電圧や管体9及び導体11を流れる電流により決定される。絶縁層10の厚さは、例えば1mm〜4mmである。絶縁層10は、電気絶縁性及び耐熱性の観点から、例えば酸化マグネシウム等のセラミックから形成されているが、他の絶縁材料でもよい。すなわち、絶縁層10の材料は、酸化マグネシウムに限定されるものではなく、半導体素子1の取付方法(温度条件を含む)などにより、他のセラミックや耐熱性樹脂等を用いてもよい。絶縁層10の材料としてセラミックを用いることで、半導体素子1のハンダ接合の際に接合部が高温になっても絶縁層10の劣化や損傷等が生じるおそれが少ない。
【0033】
導体11は、上面11a、下面11b、側面11c、11dから構成された断面矩形状(例えば断面正方形状)を有する。本実施の形態では、上面11aが半導体素子1が接合される接合面を含んでいる。導体11の厚さは、薄い方が伝熱性能は向上するが、半導体素子1に印加される電圧及び導体11を流れる電流により決定される。導体11の厚さは、例えば0.5mm〜3mmである。また、導体11の外形の一辺のサイズは、例えば7mm〜35mmである。導体11の接合面となる面のサイズは、冷却対象の半導体素子のサイズ又は電極のサイズに応じて決められる。導体11の半導体素子1が接合される上面(接合面)11aは、半導体素子1が接合し易いように平面となっている。従って、接合面以外の面は湾曲していてもよい。導体11は、熱伝導性及び電気伝導性の観点から、例えば銅又は銅合金から形成されているが、他の金属でもよい。
【0034】
(電極体)
電極体7は、例えば断面L字状を有する。電極体7は、電気伝導性の観点から、例えば銅又は銅合金から形成されているが、他の金属でもよい。電極体7は、導体11の表面、本実施の形態では側面11cにハンダ付け、ろう付け、超音波溶接等により接合され、半導体素子1に導体11を介して電気的に接続される。電極体7の取り付け面は、導体11の側面11cに限られず、下面11bや他の側面11d、上面11aの半導体素子1が接合されている領域以外の領域でもよい。電極体7の形状も断面L字状に限られず、平坦状でもよく、他の形状でもよい。
【0035】
(半導体素子)
半導体素子1としては、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラモード静電誘導トランジスタ(BSIT:Bipolar-Mode Static Induction Transistor)等の定格電圧200V以上、定格電流300A以上のパワー半導体素子や、レーザダイオード等を冷却対象とすることができるが、これらに限られない。本実施の形態は、例えば定格電圧200V、定格電流300Aの仕様のIGBTを用いる。IGBTの半導体素子1は、上面にコレクタ電極1a、下面にエミッタ電極1b、側面にゲート電極1cを備える。半導体素子1のコレクタ電極1aには、直流電源の正極が金属線(図示省略)を介して接続され、エミッタ電極1bには、直流電源の負極が金属線(図示省略)、電極体7、導体11及びハンダ2を介して接続される。IGBTの半導体素子1は、例えば15mm×30mm程度のサイズを有する。
【0036】
半導体素子1のコレクタ電極1aは、配線を介して直流電源の正極に接続される。半導体素子1のエミッタ電極1bは、ハンダ2、積層体12の導体11、電極体7、配線を介して直流電源の負極に接続される。半導体素子1は、ゲート電極1cに制御信号が入力されることで動作する。
【0037】
(積層体の製造方法)
次に、積層体12の製造方法の一例について説明する。本実施の形態は、以下のような引き抜き工程を行って製造する。まず、所定の外径と肉厚を有する断面円形の導体、管体、及び酸化マグネシウムの粉末を所定の外形と肉厚の筒体に成型してなる絶縁体を用意し、導体内に絶縁体と管体を同心状に挿入することによって積層体を形成する。
【0038】
次に、この積層体の管体の中空部にプラグを通した状態で、四角形の各辺の中央部がやや外側にふくらんだ形の孔形を有するダイスに通して引抜き加工を行った後、焼鈍を行う。これにより積層体(中間体)は、四角形の各辺の中央部がやや外側にふくらんだ断面形状を有するものとなる。
【0039】
次に、この積層体(中間体)を中空部にプラグを通した状態で製品寸法に等しい四角形の孔形を有するダイを通して引抜き加工する。これにより、図1に示すような断面形状を有する積層体12が得られる。この後、焼鈍することにより例えば60m以上の長尺の完成品が得られる。その後は、必要な長さに切断する。
【0040】
なお、上記製造方法の説明では、2回の引抜き加工で成形しているが、引抜き加工と焼鈍の回数を増やしてもよい。また、上記製造方法の説明では、管体の中空部にプラグを通して引抜き加工を行ったが、プラグを入れずに引抜き加工しても差支えなく、プラグを入れないとコイル状に引抜き加工でき、長尺品が得られ易い。
【0041】
(ヒートシンクの動作)
半導体素子1は動作によって発熱する。半導体素子1からの発熱は、導体11の接合面である上面11aに伝達し、さらに絶縁層10を介して管体9に伝達し、管体9の流路9aを流れる冷媒中に放熱される。また、半導体素子1からの発熱は、導体11の周囲から管体9に伝達しており、半導体素子1のエミッタ電極1bを導体11の接合面である上面11aにハンダ2を用いて直接接合することで、高い冷却性能が得られる。さらに、導体11と管体9とは絶縁層10によって電気的に絶縁されているため、半導体素子1のエミッタ電極1bが管体9を流れる冷媒と導通されず、安全性が確保される。すなわち、導体11を電極を兼ねた構成とすることができる。冷媒は流路9aを流れてポンプ、ラジエータ、ファン等から構成された放熱部(図示省略)や冷凍機(図示省略)を通過する際に冷媒が保持する熱は外気に放熱される。
【0042】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)積層体12は、引き抜き工程で各層を容易に一体構造とすることが可能であり、かつ60m以上の長尺に加工することが可能であることから、長尺材を所定の長さに切断するだけで、本ヒートシンクを安価に製造することができる。
(b)管体9と導体11は、絶縁層10によって絶縁されているので、高電圧が冷媒である水に印加されるおそれはない。このように、積層体12をあたかも電極兼ヒートシンクとして用いるだけで、従来構造のように絶縁に気を配り特別な構造を配する必要がなくなる。
【0043】
[第2の実施の形態]
図2Aは、本発明の第1の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す平面図である。図2Bは、図2AのA−A線断面図である。なお、図2A、図2Bでは、半導体素子1Aのゲート電極1cの図示を省略している(以下の図でも同じ)。
【0044】
本実施の形態は、一対の積層体12A、12Bを並列して配置し、2つの半導体素子1A、1Bを一対の積層体12A、12B間に配置したものである。本実施の形態の場合、積層体12Aの導体11の側面11dが接合面に相当し、積層体12Bの導体11の側面11cが接合面に相当する。
【0045】
本実施の形態のヒートシンクは、並列して配置された一対の積層体12A、12Bと、一対の積層体12A、12Bの一方の端部にそれぞれ接続された一対の配管材13A、13Bと、一対の積層体12A、12Bの他方の端部間に両端部が接続された円弧状の配管材13Cと、一対の積層体12A、12Bの導体11に接続された一対の電極体7A、7Bとを備えて構成されている。積層体12A、12B、配管材13A、13Bの一部、配管材13C、及び一対の電極体7A、7Bは、ケース6に収容されている。
【0046】
ケース6は、例えば樹脂等の絶縁性材料から形成されている。ケース6は、例えば上部ケースと下部ケースに分離できる構成とし、積層体12A、12B、配管材13A、13B、13C、電極体7A、7Bを下部ケースに収容した後、上部ケースを下部ケースに取り付けてもよい。
【0047】
半導体素子1Aは、例えばIGBTであり、上面にコレクタ電極1a、下面にエミッタ電極1b、側面にゲート電極(図示省略)を備える。
半導体素子1Bは、例えばフリーホイールダイオード(FWD:Free Wheel Diode)であり、上面にカソード電極1d、下面にアノード電極1eを備える。IGBTである半導体素子1Aのコレクタ電極1aは、ハンダ2によって積層体12Aの導体11に接続され、半導体素子1Aのエミッタ電極1bは、ハンダ2によって積層体12Bの導体11に接続される。FWDである半導体素子1Bのカソード電極1dは、ハンダ2によって積層体12Aの導体11に接続され、半導体素子1Bのアノード電極1eは、ハンダ2によって積層体12Bの導体11に接続される。
【0048】
積層体12A、12Bの一方の端面に露出する管体9には、配管材13A、13Bが接続され、積層体12A、12Bの他方の端面に露出する管体9には、配管材13Cが接続される。これにより、配管材13A、積層体12A、配管材13C、積層体12B及び配管材13Bを冷媒が循環する。なお、実際には、信号線や位置決め機構等が配されてシステムが構成されているが、ヒートシンクに着目しているため、図示を省略している(以後の図も同様)。
【0049】
配管材13A、13B、13Cは、管体9の流路9aと同じ大きさの断面矩形状の流路9aを有する。配管材13A、13B、13Cは、例えば銅又は銅合金から形成されている。配管材13は、銀ろう等のろう材で管体9に接続される。銀ろうによる接続により、水漏れへの信頼性が向上する。
【0050】
図2Cは、第2の実施の形態に係るシステムの等価回路図である。図2Cに示すように、IGBTである半導体素子1Aのコレクタ電極1a、及びFWDである半導体素子1Bのカソード電極1dは、ハンダ2、積層体12Aの導体11、電極体7A及び配線18aを介して直流電源20の正極に接続される。IGBTである半導体素子1Aのエミッタ電極1b、及びFWDである半導体素子1Bのカソード電極1dは、ハンダ2、積層体12Bの導体11、電極体7B及び配線18bを介して直流電源20の負極に接続される。半導体素子1Aは、ゲート電極(図示省略)に制御信号が入力されることで動作する。
【0051】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)半導体素子1のハンダ接合時の温度よりも高い融点のろう材を用いて予め配管材13を接合しておけば、半導体素子1をハンダ付けする際にも配管材13の接合が取れることなく、安定して製造できる。
(b)さらに、配管材13と半導体素子1を同一のハンダ材で接合すれば、一度にまとめて接合することができ、さらに安価に製造することができる。
(c)また、ハンダ接合部は、半導体素子1が導体11と接合する部分だけにすることができ、従来技術に比べてハンダクラックに対する信頼性が向上する。
(d)放熱経路に伝熱グリースを用いる必要がないので、冷却性能が向上するとともに、組立て安定性が向上する。
(e)従来構造にくらべ、放熱経路も単純・短経路化することが可能で、性能向上が可能となる。
【0052】
[第3の実施の形態]
図3Aは、本発明の第3の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。
【0053】
第2の実施の形態では、一対の積層体12A、12Bの間に半導体素子1A、1Bを配置したが、本実施の形態は、一方の積層体12Aの上面11aに半導体素子1Aを配置し、他方の積層体12Bの上面11aに半導体素子1Bを配置したものである。すなわち、第2の実施の形態では、半導体素子1A、1Bの上下両面に放熱経路を有していたが、本実施の形態では、半導体素子1D、1Dの下面に放熱経路を有する。なお、図3A中、18cはボンディングワイヤである。
【0054】
図3Bは、第3の実施の形態に係るシステムの等価回路図である。図3Bに示すように、半導体素子1D、1Dは、例えばIGBTとFWDとが1チップ化されたものであり、半導体素子1Dのコレクタ電極1aは、ハンダ2、積層体12Aの導体11、電極体7A及び配線18aを介して直流電源20の正極に接続される。また、半導体素子1Dのエミッタ電極1bは、ボンディングワイヤ18cを介して半導体素子1Dのコレクタ電極1aに接続される。半導体素子1Dのエミッタ電極1bは、ハンダ2、積層体12Bの導体11、電極体7B及び配線18bを介して直流電源20の負極に接続される。すなわち、半導体素子1D、1Dは直列接続される。
【0055】
第3の実施の形態は、第1の実施の形態と比較すると、冷却性能で不利であるが、積層体12を冷却用途及び電圧印加用途として用いることは、第2の実施の形態と同様であり、効果についても、第2の実施の形態と同等の効果を得ることが可能となる。
【0056】
[第4の実施の形態]
図4は、本発明の第4の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。第3の実施の形態では、一対の積層体12A、12Bの上面にそれぞれ半導体素子1A、1Bを配置したが、本実施の形態は、一対の積層体12A、12Bに跨るように半導体素子1Cを配置したものである。
【0057】
本実施の形態の半導体素子1Cは、下面にコレクタ電極1a及びエミッタ電極1bを有する。
【0058】
図2に示すように半導体素子1A、1Bの両面に電極1a、1b、1d、1eを有する場合や、本実施の形態のように半導体素子1Cの下面に電極1a、1bを有する場合のように、半導体素子の電極位置に応じて半導体素子の片面又は上下両面を冷却として用いることができる。
【0059】
なお、外層である導体11と管体9が絶縁されていることを生かし、電極位置によらず、半導体素子1の任意の面に積層体12を配して、冷却を効率的に行ってもよい。例えば、積層体12が電圧印加を兼ねていないものがあってもよい。
【0060】
[第5の実施の形態]
図5Aは、本発明の第5の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。本実施の形態は、3つの積層体12A、12B、12Cを並列に配置し、積層体12A、12B、12Cの間に2つの半導体素子1A、1Bを配置したものである。
【0061】
本実施の形態は、図5Aにおいて、左に位置する積層体12Aと中央に位置する積層体12Bとの間にIGBTである半導体素子1Aを配置し、中央に位置する積層体12Bと右に位置する積層体12Cとの間にFWDである半導体素子1Bを配置している。
【0062】
IGBTである半導体素子1Aのコレクタ電極1aは、ハンダ2によって左に位置する積層体12Aの導体11に接続され、半導体素子1Aのエミッタ電極1bは、ハンダ2によって中央に位置する積層体12Bの導体11に接続される。
【0063】
FWDである半導体素子1Bのアノード電極1eは、ハンダ2によって中央に位置する積層体12Bの導体11に接続され、半導体素子1Bのカソード電極1dは、ハンダ2によって右に位置する積層体12Cの導体11に接続される。
【0064】
図5Bは、第5の実施の形態に係るシステムの等価回路図である。IGBTである半導体素子1Aのコレクタ電極1aは、ハンダ2、積層体12Aの導体11、電極体7A及び配線18aを介して直流電源20の正極に接続される。半導体素子1Aのエミッタ電極1bは、ハンダ2、積層体12Bの導体11、電極体7B及び配線18bを介して直流電源20の負極に接続される。
【0065】
FWDである半導体素子1Bのカソード電極1dは、ハンダ2、積層体12Cの導体11、電極体7C及び配線18aを介して直流電源20の正極に接続される。半導体素子1Bのアノード電極1eは、ハンダ2、積層体12Bの導体11、電極体7B及び配線18bを介して直流電源20の負極に接続される。
【0066】
(第5の実施の形態の効果)
第5の実施の形態によれば、半導体素子の回路を形成する上で、素子同士の電極が導通する回路の場合には、中央の積層体12Bが2つの半導体素子1A、1Bの電極を兼ねることができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、2つの半導体素子1を用いた場合について説明したが、本実施の形態は、3つ以上の半導体素子1を用いる場合にも適用することができる。
【0068】
[第6の実施の形態]
図6は、本発明の第6の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す平面図である。なお、図6では、電極体、ケース及び配管材の図示を省略している。本実施の形態は、並列して配置された一対の積層体を2組長手方向に連結したものである。
【0069】
本実施の形態は、図2Aに示したように、並列して配置された一対の積層体12A、12Bを2組、連結体14によって長手方向に連結したものである。一対の積層体12A、12B間には、第2の実施の形態と同様に、2つの半導体素子1A、1Bが配置されている。積層体12と半導体素子1とは、いままでの実施の形態と同様に、ハンダ2によって接合されている。
【0070】
連結体14は、管体9の流路9aの内径よりも大きい外径を有する大径部14aと、大径部14aの両端に設けられ、管体9の流路9aの内径よりもやや小さい外径を有する小径部14bとを備え、軸方向に沿って断面矩形状の流路14cが形成されている。小径部14bを管体9の流路9aに挿入し、銀ろう等を用いたろう付けで連結体14を積層体12Aに連結する。
【0071】
第6の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)1組の半導体素子1A、1Bと他の組の半導体素子1A、1Bとを電気的に絶縁した場合に用いることができる。
(b)連結体14を半導体素子1のハンダ接合時の温度よりも高い融点のろう材を用いて予め接合しておけば、半導体素子1をハンダ付けする際に連結体14の接合が取れることなく、安定して製造することができる。
(c)連結体14と半導体素子1を同一のハンダ材で接合すれば、一度にまとめて接合することができ、さらに安価に製造することができる。
【0072】
[第7の実施の形態]
図7は、本発明の第7の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す平面図である。なお、図7では、ケース及び配管材の図示を省略している。本実施の形態は、並列して配置された一対の積層体12A、12Bの導体11を所定の位置で部分的に除去し、一対の積層体12A、12Bの残存する導体11間に複数の半導体素子1を配置し、複数の半導体素子1を直列接続したものである。
【0073】
本実施の形態は、各積層体12A、12Bは、長手方向に沿って設けられ、互いに電気的に絶縁された複数の導体11を有する。すなわち、積層体12Aは、互いに電気的に絶縁された複数の導体11B、11Dを有する。積層体12Bは、互いに電気的に絶縁された複数の導体11A、11C、11Eを有する。両積層体12A、12Bは、並列して配置し、両積層体12A、12B間に複数の半導体素子1D(1D〜1D)を配置したものである。
【0074】
半導体素子1D〜1Dは、例えばIGBTとFWDとが1チップ化されたものを用いる。
【0075】
半導体素子1Dは、コレクタ電極1aが積層体12Bの導体11Aにハンダ2によって接続され、エミッタ電極1bが積層体12Aの導体11Bにハンダ2によって接続される。
【0076】
半導体素子1Dは、コレクタ電極1aが積層体12Aの導体11Bにハンダ2によって接続され、エミッタ電極1bが積層体12Bの導体11Cにハンダ2によって接続される。
【0077】
半導体素子1Dは、コレクタ電極1aが積層体12Bの導体11Cにハンダ2によって接続され、エミッタ電極1bが積層体12Aの導体11Dにハンダ2によって接続される。
【0078】
半導体素子1Dは、コレクタ電極1aが積層体12Aの導体11Dにハンダ2によって接続され、エミッタ電極1bが積層体12Bの導体11Eにハンダ2によって接続される。
【0079】
以上のように半導体素子1D〜1Dを接続することにより、半導体素子1D〜1Dが直列接続される。また、半導体素子1Dのコレクタ電極1aがハンダ2、積層体12Bの導体11A、電極体7A及び配線を介して直流電源の正極に接続され、半導体素子1Dのエミッタ電極1bがハンダ2、積層体12Bの導体11E、電極体7B及び配線を介して直流電源の負極に接続される。
【0080】
図8は、導体の除去工程を模式的に示す工程図である。第1の実施の形態で説明したような引抜き加工を行って60m以上の長尺状の積層体(長尺材)を形成する(S1)。この場合、長尺材は、コイル状の形態でも棒状の形態でもよい。
【0081】
次に、長尺状の積層体を整直機により整直する(S2)。次に、導体11を機械加工機により部分的に除去する(S3)。次に、積層体を切断機により必要な長さに切断する(S4)。
【0082】
上記ステップS2、S3、S4は、引抜き加工機、整直機、機械加工機、切断機を並べて配し、引抜き加工機、整直機、機械加工機、切断機間に被加工材の送り機構を設けることで、被加工材を連続して加工することができ、ヒートシンクを安価に製造することができる。なお、マシニングセンタを機械加工及び切断を行う工程に用いてもよい。
【0083】
(第7の実施の形態の効果)
第7の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)所定の位置で部分的に積層体12の外層導体部分を除去することで、任意の位置に電気絶縁部を設けることが可能となり、半導体素子1と部分除去された積層体12の組合せで電気回路を組むことが可能となる。
(b)積層体12は引き抜き加工で長尺とすることが可能であることから、予め全長に応じた積層体を準備しておき、所定の位置を除去することで、本構造を実現できることから、安価に製造することが可能となる。
【0084】
なお、本実施の形態では、外層の導体と併せて絶縁層も除去しているが、絶縁層を残して、導体だけ除去してもよい。
【0085】
[第8の実施の形態]
図9は、本発明の第8の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。本実施の形態は、図2に示す第2の実施の形態の変形例である。
【0086】
本実施の形態は、積層体12A、12Bの導体11の半導体素子1A、1Bが配置される面に長手方向に沿って一対の突起15を設けたものである。一対の突起15の間隔は、半導体素子1A、1Bの幅に対応している。突起15は切削加工等の機械加工で形成してもよいが、積層体の引き抜き加工の際に突起15を形成してもよい。引き抜き工程で突起15を形成するには、引抜ダイスの断面形状を突起付きの形状とする。また、引き抜き工程で突起15を形成する場合、半導体素子1Aと半導体素子1Bの幅を同一とする必要がある。
【0087】
(第8の実施の形態)
第8の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)積層体12と半導体素子1をハンダ接合する際、突起15で半導体素子1を位置決めすることができるため、半導体素子1を所定の位置に容易に固定することができる。
(b)突起15を有する積層体12は、引き抜き加工により長尺に加工することができるので、突起を形成するための工程を増やすことなく、突起15を有する積層体12を安価に得ることができる。
【0088】
なお、突起の形状は、図9のものに限られず、引き抜きダイスの断面形状を任意に設定することで任意の形状に加工することができる。
【0089】
[第9の実施の形態]
図10に、本発明の第9の実施の形態に係るヒートシンクの積層体の断面図である。同図は、積層体12のみを示しているが、これまでの実施の形態と同様、積層体12には、半導体素子が接合され、積層体12は、電極兼ヒートシンクして使用される。
【0090】
本実施の形態の積層体12は、管体16の内面に溝16aが形成されている。溝16aは例えば螺旋状を有する。積層体の引き抜き工程で溝16aを形成することができる。
【0091】
第9の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)管体として内面溝付管16を用いることで、流路内の冷媒への熱伝達率が向上して冷却性能が向上する。
(b)内面溝付管は、エアコン用熱交換器等に広く使用されていることから、大きなコストアップすることなしに適用することができる。
(c)積層体12の引き抜き工程について工程を増やすことはなく、同工程で製造可能となることから、コストアップにはならない。
【0092】
[第10の実施の形態]
図11Aは、本発明の第10の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。同図は、積層体12のみを示しているが、これまでの実施の形態と同様、積層体12には、半導体素子が接合され、積層体12は、電極兼ヒートシンクして使用される。
【0093】
本実施の形態は、積層体12が複数(本実施の形態では4つ)の流路9aを有する複数(本実施の形態では4つ)の管体9と、複数の管体9の外側に形成された単一の絶縁層10と、単一の絶縁層10の外側に形成された導体11とを備える。
【0094】
本実施の形態は、例えば、積層体12を引き抜き工程において、複数の管体9を絶縁体の内側に予め挿入しておくことで、本構造の積層体12を製造する。
【0095】
図11Bは、第10の実施の形態に係るシステムの流路系を示す図である。同図は、積層体12内の4つの流路9aを円弧状の配管材9bで接続した直流系によって構成した場合を示す。積層体12の流路9aはポンプ21から圧送された冷媒は、積層体12内の流路9a、配管19を通る。冷媒が保持する熱は、アルミ製ラジエータ等の放熱器22で放熱される。放熱器22には冷却ファン23が設けられている。
【0096】
図11Cは、第10の実施の形態に係るシステムの他の流路系を示す図である。同図は、積層体12内の4つの流路9aを平行流として構成した場合を示す。ポンプ21から圧送された冷媒は、分岐部19aで分岐されて積層体12内の流路9aを通り、合流部19b、配管19を通る。冷媒が保持する熱は、放熱器22で放熱される。
【0097】
(第10の実施の形態の効果)
第10の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)本構造とすることで、広幅の積層体12を容易に得ることができると共に、断面オーバル状の管体に比べ、内面積を増大させることができ、冷却性能が向上する。
(b)また、管体9への配管構造により、直列流、平行流等を任意に設定することが可能となり、ポンプの能力や全体の圧力損実に応じて、最適な流路を設定することが可能となり、冷却性能の向上を図ることができる。
【0098】
[第11の実施の形態]
図12は、本発明の第11の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す断面図である。同図は、積層体12のみを示しているが、これまでの実施の形態と同様、積層体12には、半導体素子が接合され、積層体12は、電極兼ヒートシンクして使用される。
【0099】
本実施の形態は、図11Aに示す複数の管体9を単一の管体9としたものである。すなわち、本実施の形態は、積層体が、複数(本実施の形態は5つ)の流路17aを有する単一の管体17と、単一の管体17の外側に形成された単一の絶縁層10と、単一の絶縁層10の外側に形成された単一の導体11とを備える。
【0100】
本実施の形態は、例えば、積層体12を引き抜き工程で製造する際に、管体17を予め挿入しておくことで、容易に本構造を得ることができる。
【0101】
第11の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)本構造とすることで、広幅の積層体12を容易に得ることができると共に、流路内面積を増大させることができ、冷却性能向上が図れる。
(b)アルミ製ラジエータ等の熱交換器等で多孔管は広く用いられていることから、大きなコストアップをしないで本構造を得ることができる。
【0102】
[第12の実施の形態]
図13は、本発明の第12の実施の形態に係るヒートシンクの概略の構成を示す斜視図である。同図は、電極体及びケースの図示を省略している。本実施の形態は、図12に示す第11の実施の形態において、積層体12の上面に複数の半導体素子を配置したものである。
【0103】
本実施の形態は、積層体12が、複数(本実施の形態は5つ)の流路9aを有する単一の管体9と、単一の管体9の外側に形成された単一の絶縁層10と、単一の絶縁層10の外側に形成された単一の導体11とを備え、導体11の上面11aに複数の半導体素子1を配置したものである。前記積層体は、前記導体の同一の面に設けられ。互いに電気的に絶縁された複数の導体領域を有し、前記複数の導体領域がそれぞれ前記接合面を有する
【0104】
導体11は、半導体素子1の配置に応じて同一の上面11aに設けられ、上面11aの一部が除去されて互いに電気的に絶縁された複数の導体領域11eが形成されている。導体11の部分な除去は、切削等の機械加工や、エッチング等の化学処理で行うことができる。導体11を除去する場合は、前述の図8に示す工程で行うことができる。
【0105】
第12の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)パターン除去された導体11には、半導体素子1がハンダ2により接合されている。このようにすることで、積層体12をあたかも配線基板のように用いることができ、半導体素子1の冷却も効率的に行うことが可能となる。
(b)導体11が部分的に除去されているが、半導体素子1からの発熱が絶縁層10を介して管体9に伝達し、管体9の流路9aを流れる冷媒に伝達する。
【0106】
なお、本実施の形態では、半導体素子1の下面にだけ積層体12が接続されているが、同様にパターン除去された積層体12を半導体素子の上面に接続してもよい。これにより、上下両面から放熱されることで冷却性能が向上すると共に、導体11で形成される電気回路をより複雑なものにすることが可能になり、汎用性が向上する。
【0107】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々な変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1、1A−1D、1D−1D…半導体素子、1a…コレクタ電極、1b…エミッタ電極、1c…ゲート電極、1d…カソード電極、1e…アノード電極、2…ハンダ、6…ケース、7、7A−7C…電極体、9…管体、9a…流路、9b…配管材、10…絶縁層、11、11A−11E…導体、11a…上面、11b…下面、11c、11d…側面、11e…導体領域、12、12A−12C…積層体、13、13A−13C…配管材、14…連結体、14a…大径部、14b…小径部、14c…流路、15…突起、16…管体、16a…溝、17…管体、17a…流路、18a、18b…配線、18c…ボンディングワイヤ、19…配管、19a…分岐部、19b…合流部、20…直流電源、21…ポンプ、22…放熱器、23…冷却ファン、100…ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒循環用の流路に設けられる積層体を備え、
前記積層体は、金属から形成され、内側が前記流路となる管体と、
前記管体の外側に形成された絶縁層と、
前記絶縁層の外側に形成され、表面に冷却対象の半導体素子の電極が接合される接合面を有する導体と、
を備えたヒートシンク。
【請求項2】
前記導体の表面に設けられ、前記半導体素子に前記導体を介して電気的に接続される電極体を、さらに備えた請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記積層体は、並列して配置された複数の前記積層体である請求項1又は2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記複数の積層体は、対向する一対の前記導体の表面に前記接合面を有する請求項3に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記複数の積層体は、前記導体の同一方向に設けられた表面に複数の前記接合面を有する請求項3に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記積層体は、長手方向に沿って設けられ、互いに電気的に絶縁された複数の前記導体を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項7】
前記積層体は、前記導体の同一の面上に設けられ。互いに電気的に絶縁された複数の導体領域を有し、前記複数の導体領域がそれぞれ前記接合面を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項8】
前記管体は、内面溝付管である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項9】
前記積層体は、複数の前記流路に沿って形成された複数の前記管体と、前記複数の管体の外側に形成された単一の前記絶縁層と、前記単一の絶縁層の外側に形成された前記導体とを備えた請求項1乃至8のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項10】
前記積層体は、複数の前記流路を有する単一の前記管体と、前記単一の管体の外側に形成された単一の前記絶縁層と、前記単一の絶縁体の外側に形成された単一の前記導体とを備えた請求項1乃至8のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項11】
金属から形成され内側が流路となる管体と、前記管体の外側に形成された絶縁層と、前記絶縁層の外側に形成された導体とを備えた長尺状の積層体を、引き抜き工程を経て形成し、
前記導体の一部を除去し、
前記長尺状の前記積層体を切断する工程を含むヒートシンクの製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−174856(P2012−174856A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34660(P2011−34660)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】