説明

ビーム光投受光装置

【課題】同軸系タイプのビーム光投受光装置のコンパクト化及び組立て調整作業の容易化を図る。
【解決手段】光源210からスキャンミラー240に向かう投光ビームの光路と、対象領域内の物体から反射しスキャンミラー240から受光素子260に向かう戻り光の光路を分離する投受光分離部材を、1つのプリズム230で形成し、プリズム230は、投光ビームをスキャンミラー240方向に反射する反射領域231(外側反射面)と、スキャンミラー240からの戻り光を透過する透過領域232と、この透過領域232を透過した戻り光をプリズム内部で受光素子260方向に反射する内側反射面Dと有する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム光投受光装置に関し、特に、光ビームを用いて対象物までの距離を計測する光測距装置等において用いられるビーム光投受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視対象の領域内の物体までの距離を計測するために、空間内を多次元的に走査するようにレーザ光等の光ビームを射出し、光ビームを射出してから物体からの反射光が受光されるまでの時間を計測して物体までの距離を計測するように構成された光測距装置が知られている。このような光測距装置においては、レーザ光等の光ビームを射出する光源部と、対象領域内を多次元的に走査するよう光源部から射出された光ビームを反射し走査するスキャンミラーと、物体からの反射光を受光する受光素子と、を含んで構成されるビーム光投受光装置を備えている。
【0003】
このようなビーム光投受光装置として、特許文献1に記載されたような同軸系タイプと称されるものが知られている。この同軸系タイプは、光源部から射出されたレーザ光が光源部からスキャンミラーを経て対象領域内に照射されるまでの投光光路と、空間内の物体で反射された反射光が物体からスキャンミラーを経て受光素子に至るまでの戻り光路とが途中まで互いに重なっているタイプである。
【0004】
特許文献1では、対象領域内の物体に照射されたレーザ光の入射方向と同じ方向に反射した戻り光を、スキャンミラーにより反射させ、スキャンミラーで反射した戻り光の光路上に配した投受光分離部材により、スキャンミラーで反射した戻り光の光路を、前記投受光分離部材からスキャンミラーに向かう投光ビームの光路から分離して戻り光を受光素子に導くようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−91763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたビーム光投受光装置では、投光ビームの光路から分離する戻り光の光路の方向が光源部の配置方向と異なる方向であるため、光源部と受光素子を離れて配置しなければならなかった。また、複数のミラーやプリズムによる反射、屈折を利用して、投光ビームの光路と戻り光の光路の分離を行う構成であるため、部品点数が多くなり、それぞれのミラーやプリズム毎にその反射面の配置や調整を行う必要があるので、ビーム光投受光装置のコンパクト化や組立て調整作業の容易化等について改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、より一層の装置のコンパクト化及び組立て調整作業の容易化を図ることができるビーム光投受光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、請求項1に記載した本発明は、投光ビームを出射する光源と、前記投光ビームを反射して対象領域内へ投光し走査するスキャンミラーと、該スキャンミラーへ向かう投光ビームの光路と、前記対象領域内の物体で反射し前記スキャンミラーで反射した戻り光の光路と、を互いに分離する投受光分離部材と、前記戻り光を受光する受光素子と、を備えたビーム光投受光装置であって、前記投受光分離部材は、前記投光ビームをスキャンミラー方向に反射する反射面と、前記スキャンミラーからの戻り光を受光素子方向に反射する反射面と、を設けた1つのプリズムで形成したことを特徴とする。
【0009】
かかる構成では、1つのプリズムで、スキャンミラーへ向かう投光ビームの光路と、対象領域内の物体で反射しスキャンミラーで反射した戻り光の光路と、を互いに分離するようになる。
【0010】
また、請求項2に記載した本発明は、投光ビームを出射する光源と、前記投光ビームを反射して対象領域内へ投光し走査するスキャンミラーと、該スキャンミラーへ向かう投光ビームの光路と、前記対象領域内の物体で反射し前記スキャンミラーで反射した戻り光の光路と、を互いに分離する投受光分離部材と、前記戻り光を受光する受光素子と、を備えたビーム光投受光装置であって、前記投受光分離部材は、少なくとも1つのプリズムで形成し、前記プリズムの外側反射面と内側反射面のいずれか一方の反射面で、前記投光ビームをスキャンミラー方向に反射し、他方の反射面で、前記スキャンミラーからの戻り光を受光素子方向に反射するよう構成したことを特徴とする。
【0011】
かかる構成では、プリズムの外側反射面と内側反射面のいずれか一方の反射面で、投光ビームをスキャンミラー方向に反射し、他方の反射面で、スキャンミラーからの戻り光を受光素子方向に反射することで、スキャンミラーへ向かう投光ビームの光路と、対象領域内の物体で反射しスキャンミラーで反射した戻り光の光路と、を互いに分離するようになる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した本発明のビーム光投受光装置によれば、投受光分離部材を、投光ビームをスキャンミラー方向に反射する反射面とスキャンミラーからの戻り光を受光素子方向に反射する反射面とを設けた1つのプリズムで形成する構成としたので、戻り光を反射する反射面を、その反射方向が光源と同じ方向側になるよう形成すれば、光源と受光素子を並べて配置することができ、ビーム光投受光装置を小型化できる。また、投光ビームの光路と戻り光の光路をプリズム1つで分離するので、従来装置に比べて部品点数を少なくでき、装置の小型化と組立て調整作業を容易化できる。
【0013】
請求項2に記載した本発明のビーム光投受光装置によれば、投受光分離部材を、少なくとも1つのプリズムで形成し、プリズムの外側反射面と内側反射面の一方で投光ビームをスキャンミラー方向に反射し、他方で前記スキャンミラーからの戻り光を受光素子方向に反射する構成としたので、戻り光を反射する外側反射面又は内側反射面を、その反射方向が光源と同じ方向側になるよう形成すれば、光源と受光素子を並べて配置することができ、ビーム光投受光装置を小型化できる。また、投光ビームの光路と戻り光の光路とを、プリズムの外側反射面と内側反射面を用いて分離することにより、従来装置に比べて部品点数を少なくでき、組立て調整作業を容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のビーム光投受光装置を適用する光測距装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のビーム光投受光装置の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図3】第1実施形態における投受光分離部材(プリズム)の斜視図である。
【図4】コーナーキューブによる光軸調整例を説明するための図である。
【図5】本発明のビーム光投受光装置の第2実施形態を示す概略構成図である。
【図6】本発明のビーム光投受光装置の第3実施形態を示す概略構成図である。
【図7】第3実施形態における投受光分離部材(プリズム)の斜視図である。
【図8】第3実施形態における投受光分離部材(プリズム)の変形例の斜視図である。
【図9】本発明のビーム光投受光装置の第4実施形態を示す概略構成図である。
【図10】第4実施形態における投受光分離部材(プリズム)の斜視図である。
【図11】本発明のビーム光投受光装置の第5実施形態を示す概略構成図である。
【図12】第5実施形態における投受光分離部材(プリズム)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明のビーム光投受光装置の詳細を説明する前に、本発明のビーム光投受光装置の適用例として、光測距装置について説明する。
図1は、光測距装置の概略構成を示すブロック図である。
図1において、光測距装置1は、投光ビーム(レーザパルス)を対象領域内でリサージュ走査、又はラスタ走査して前記対象領域内に存在する物体までの距離を計測(測距)し、計測結果に基づく距離画像を生成して出力(表示)する。
【0016】
光測距装置1は、例えば複数の動作モードで動作可能に構成されており、図1に示すように、情報入力部3と、電磁駆動型のスキャンミラー5と、スキャンミラー5を駆動する駆動部7と、投光ビームを出射する光源部9と、出射された投光ビームの光路とその反射光(戻り光)の光路を分離する投受光分離部材11と、投光ビームと分離された反射光(戻り光)を受光する受光部13と、投光ビームを反射した物体までの距離を計測する測距部15と、測距部15による計測結果に基づいて距離画像を生成する画像生成部17と、生成された距離画像を出力(表示)する表示部19と、を備える。そして、光源部9、スキャンミラー5、投受光分離部材11及び受光部13を備えて構成されるビーム光投受光装置に、後述する本発明のビーム光投受光装置を適用する。
【0017】
情報入力部3には、例えばユーザによって光測距装置1の動作に関する情報、例えば、光測距装置1の動作モードを選択するモード選択指令が入力される。選択可能な動作モードには、例えば、基本となる「通常計測モード」、通常計測モードよりも計測位置を多くして対象領域について詳細な測距を行う「詳細計測モード」、対象領域の一部について詳細な測距を行う「部分詳細モード」及び通常計測モードよりも対象領域についての測距完了時間が短い「高速計測モード」等がある。
【0018】
スキャンミラー5は、ミラーを有する可動部が互いに直交する2つの方向に揺動可能に形成されており、ミラー面に入射される投光ビーム(パルス光)を空間領域内で二次元走査、より具体的にはリサージュ走査、又はラスタ走査することが可能である。このようなスキャンミラー5としては、例えば、本出願人により提案された特許第2722314号公報に記載の二次元走査型の半導体ガルバノミラー(以下単に「二次元ガルバノミラー」という)を用いることができる。この二次元ガルバノミラーは、2つの駆動コイル(内側駆動コイルと外側駆動コイル)にそれぞれ流れる各電流(交流電流)と、1対又は2対の永久磁石による静磁界と、によって2つの可動部(外側可動部及び内側可動部)にローレンツ力が作用し、その結果、内側可動部が二次元方向に揺動する。内側可動部が揺動することによってミラー面に入射される投光ビームが対象領域内でリサージュ走査、又はラスタ走査される。尚、リサージュ走査又はラスタ走査を実現するスキャンミラーとして、2つの一次元ガルバノミラーを使用し、2つの一次元ガルバノミラーを、それぞれのミラーを有する可動部が互いに直交する方向に揺動するよう配置することで、リサージュ走査、又はラスタ走査を行うようにしてもよい。
【0019】
駆動部7は、駆動信号(交流電流)をスキャンミラー5に供給して内側可動部(及び外側可動部)を揺動駆動する。駆動部7は、内側駆動コイルに駆動信号を供給すると共に外側駆動コイルに駆動信号を供給する駆動回路71と、2つの駆動信号の位相差を変更する位相差変更部72と、2つの駆動信号の大きさ(振幅)を調整して内側可動部の揺動振幅を変更する振幅変更部73と、を備える。
【0020】
駆動回路71は、位相差変更部72から位相差を入力すると共に振幅変更部73から各駆動信号の大きさを入力し、入力した大きさの各駆動信号を入力した位相差でスキャンミラー5に供給する。ここで、各駆動信号の周波数は、二次元ガルバノミラーの共振周波数と同一又はその近傍の周波数に設定されている。
【0021】
位相差変更部72は、情報入力部3を介して入力されたモード選択指令に応じて2つの駆動信号の位相差を設定し、設定した位相差を駆動回路71に出力する。
【0022】
振幅変更部73は、各駆動信号の大きさ(振幅)を調整してスキャンミラー5の内側可動部の揺動振幅を変更する。具体的には、振幅変更部73は、情報入力部3を介して入力されたモード選択指令に応じて各駆動信号の大きさをそれぞれ設定し、設定した大きさを駆動回路71に出力する。内側可動部の揺動振幅を小さくすればスキャンミラー5によるリサージュ走査、又はラスタ走査範囲は小さくなり、内側可動部の揺動振幅を大きくすればスキャンミラー5によるリサージュ走査、又はラスタ走査範囲は大きくなる。
【0023】
光源部9は、スキャンミラー5の内側可動部に形成されたミラーに向かって投光ビームを出射するものであり、光源91と、光源91の駆動を制御する光源制御部92と、投光光学系93と、を含む。
【0024】
光源91は、例えば半導体レーザであり、光源制御部92からの駆動信号によって発光してレーザ光を投光ビームとして出射する。
【0025】
光源制御部92は、情報入力部3を介して入力されたモード選択指令に応じて光源91の発光タイミング、即ち、投光ビームの出射タイミングを制御する。光源制御部92は、例えば動作モード毎に対象領域内の計測位置と時刻(タイミング)とが関連付けられた発光タイミングテーブルを備えており、動作モードに応じて予め設定されたタイミング(計測位置)で光源91を発光させる。
【0026】
投光光学系93は、光源91が発した投光ビームを好ましい状態とするものであり、光源91が発した投光ビームを平行光に変換する。
【0027】
投受光分離部材11は、光源91が発した投光ビームをスキャンミラー5方向に反射し、対象領域内の物体で反射しスキャンミラー5で反射した戻り光を受光部13方向に反射することにより、スキャンミラー5へ向かう投光ビームの光路と、スキャンミラー5で反射した戻り光の光路と、を互いに分離する。
【0028】
そして、光源部9から出射された投光ビームは、投受光分離部材11でスキャンミラー5方向に反射され、スキャンミラー5のミラーで反射されて対象領域内に投光されリサージュ走査、又はラスタ走査される。
【0029】
受光部13は、光源部9から出射されて対象領域内に存在する物体によって反射された反射光(戻り光)を受光して検知するものであり、受光光学系131と、受光素子132と、を含む。
【0030】
受光光学系131は、対象領域内に存在する物体によって反射され、投受光分離部材11で投光ビームと分離された反射光(戻り光)を受光素子132上に集光させるものである。
【0031】
受光素子132は、対象領域内に存在する物体によって反射された反射光(戻り光)を、受光光学系131を介して受光するもので、例えばフォトセンサを用いることができる。
【0032】
測距部15は、光源部9による投光ビームの出射タイミングと、受光部13による反射光(戻り光)の受光タイミングと、を入力し、両者の時間差(光飛行時間)に基づいて投光ビームを反射した物体までの距離を計測する。測距部15による距離の計測は、対象領域内の各計測位置において、即ち、光源部9からの投光ビームの出射毎に行なわれ、その計測結果が画像生成部17に出力される。
【0033】
画像生成部17は、測距部15によって計測された距離に基づいて各計測位置の画素値を決定し、対象領域についての距離画像を生成する。生成される距離画像は、例えば、計測された距離毎に色が異なる画像、即ち、対象領域内に存在する物体についてはその奥行き距離が反映された三次元的な画像となる。そして、画像生成部17で生成された距離画像は表示部19に出力される。表示部19は、ディスプレイを備え、画像生成部17から出力された距離画像を表示する。この距離画像によって対象領域内に存在する物体を認識できることは勿論、物体の位置、物体までの距離、物体の姿勢の変化なども検出することが可能となる。
【0034】
次に、上述の光測距装置に適用する本発明に係るビーム光投受光装置について説明する。
図2及び図3に本発明に係るビーム光投受光装置の第1実施形態を示す。
図2は、本実施形態のビーム光投受光装置の概略構成図であり、本実施形態のビーム光投受光装置200は、例えば半導体レーザでレーザ光を投光ビームとして出射する光源210と、光源210からの投光ビームを平行光に変換するとコリメートレンズ220と、光源210から出射された投光ビームの光路と対象領域内の物体からの反射光(戻り光)の光路を分離する投受光分離部材230と、スキャンミラー240と、投受光分離部材230で投光ビームと分離された戻り光を集光する集光レンズ250と、集光レンズ250で受光面に集光される戻り光を受光する受光素子260と、を備える。尚、270は、光測距装置等に適用する場合等に、スキャンミラー240の汚れ防止や保護のために、スキャンミラー前方で筐体等に取付けるカバーガラスを示す。ここで、光源210、コリメートレンズ220、投受光分離部材230、スキャンミラー240、集光レンズ250及び受光素子260は、図1の光測距装置1において、光源部9の光源91、投光光学系93、投受光分離部材11、スキャンミラー5、受光部13の受光光学系131、受光素子132に、それぞれ対応するものである。
【0035】
前記投受光分離部材230は、光源210から出射されコリメートレンズ220で平行光に変換された投光ビームをスキャンミラー240方向に反射する反射面を有し、また、対象領域内の物体で投光ビームの入射方向に反射されスキャンミラー240で反射された反射光(戻り光)を受光素子260方向に反射する反射面を有し、スキャンミラー240へ向かう投光ビームの光路(図2中、実線で示す)と、対象領域内の物体で反射しスキャンミラー240で反射した戻り光の光路(図2中、点線で示す)と、を互いに分離する。
【0036】
前記投受光分離部材230は、具体的には、図3に示すように、例えば5つの面A〜Eを持つ5角形状の1つのプリズムで形成されている。前記プリズム230は、外側表面の1つである例えばA面に、投光ビームをスキャンミラー240方向に反射する反射領域231と、戻り光(反射光)を透過する透過領域232が形成されている。反射領域231は、投光ビームが略100%反射するように鏡面反射面で且つ散乱光等が発生しないようにコーティングを施してあり、外側反射面となる。透過領域232は、戻り光が略100%透過するよう無反射コーティングを施してある。また、プリズム230は、透過領域232を透過した戻り光をプリズム230内部においてD面で受光素子260方向に反射するよう形成されている。この際、D面で反射されB面を透過して受光素子260に向かう戻り光が、光源210からコリメートレンズ220を介してスキャンミラー240に向かう投光ビームと平行になるように、A面及びB面に対するD面の角度を決定する。
【0037】
本実施形態では、前記反射領域231(外側反射面)が、光源210から出射されコリメートレンズ220で平行光に変換された投光ビームをスキャンミラー240方向に反射する反射面であり、前記D面が、対象領域内の物体で投光ビームの入射方向に反射されスキャンミラー240で反射された戻り光を受光素子260方向に反射する反射面である。
【0038】
かかるビーム光投受光装置では、光源210から出射された投光ビームは、図2に実線で示すように、コリメートレンズ220で平行光に変換され、プリズム230の反射領域231(外側反射面)でスキャンミラー240の方向に反射される。更に、スキャンミラー240で反射され、カバーガラス270を透過して装置外部の対象領域に投光され、スキャンミラー240の揺動動作により対象領域内で走査される。対象領域内に存在する物体で投光ビーム方向に反射した戻り光は、図2に点線で示すように、投光ビームの光路と同軸、即ち、略重なるようにしてカバーガラス270を透過し、スキャンミラー240で反射してプリズム230のA面に向かい、プリズム230のA面の透過領域232を透過する。戻り光を、プリズム230のA面の透過領域232を透過させることで、投光ビームの光路と戻り光の光路を分離する。投光ビームと分離された戻り光は、プリズム230の内部を進行しD面(内側反射面)で受光素子260方向に反射され、プリズム230のB面を透過し、集光レンズ250を介して集光されて受光素子260で受光される。
【0039】
本実施形態のビーム光投受光装置によれば、プリズム230の外側表面であるA面に投光ビームをスキャンミラー240の方向に反射する外側反射面(反射領域231)を形成し、同じA面に戻り光を透過させる透過領域232を形成すると共に、A面と対面するD面を内側反射面として、透過した戻り光を受光素子260の方向に反射するよう構成して、投光ビームの光路と戻り光の光路を1つのプリズム230で分離するようにしたので、ビーム光投受光装置の部品点数を減らすことができると共に、投受光の光軸調整等における調整部品を少なくでき、装置の小型化と調整作業の容易化を図れる。更に、プリズム230のD面を、その反射方向が光源210と同じ方向側で、且つ、光源210からプリズム230側に向かう投光ビームとプリズム230から受光素子260方向に向かう戻り光が平行となるように形成すれば、光源210と受光素子260を並べて配置できるので、より一層の装置全体の小型化を図ることができる。
【0040】
また、光源210、プリズム230、スキャンミラー240、受光素子260等の各光学部材の配置や形状が決まっていれば、コーナーキューブ等の再帰反射装置を用いて組立て調整工程の大幅な削減が図れる。例えば、プリズム230とスキャンミラー240がない状態で、まず、始めに光源210と受光素子260を並べて配置する。そして、図4のように投光ビームの投光方向にコーナーキューブ300を置いて、投光ビームをコーナーキューブ300に向けて投光し、コーナーキューブ300からの反射光が受光素子260で受光できるように受光素子260の配置を調整する。これにより、投光ビームと反射光(戻り光)を略平行にできる。その後、プリズム230とスキャンミラー240を予め決めてある位置にセットすれば、光軸調整は略完了するので、組立て作業工程の大幅な削減が図れる。
【0041】
上記実施形態では、投光ビームを反射領域231(外側反射面)で反射させ、戻り光をプリズム230のD面(内側反射面)で反射させる構成であるが、図5に示す第2実施形態のように、逆に、投光ビームをプリズム230のD面(内側反射面)でスキャンミラー240の方向に反射させ、戻り光を反射領域231(外側反射面)で受光素子260の方向に反射させる構成としてもよい。かかる構成の第2実施形態の場合も、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。尚、図5において、第1実施形態と同一要素には同一符号を付してある。
【0042】
ただし、プリズム230の内側反射面では略全反射となるので、信号レベルが投光ビームに比べて低い戻り光を、プリズム230の内側反射面で反射させて受光素子260で受光する構成である第1実施形態の方が望ましい。
【0043】
図6及び図7に本発明に係るビーム光投受光装置の第3実施形態を示す。尚、第1実施形態と同一要素には同一符号を付してある。
図6は、本実施形態のビーム光投受光装置の概略構成図であり、本実施形態のビーム光投受光装置200は、プリズム230のA面の略中央部に、図7に示すように矩形形状の反射領域231を形成し、A面の反射領域231を除く部分に透過領域232を形成したものである。尚、反射領域231の形状は、図8に示すような円形形状にしてもよい。
【0044】
かかる第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、透過領域232の面積が増加するため、プリズム230内部における内側反射面(D面)で受光素子260方向に反射される戻り光の光量が増大できる。
【0045】
図9及び図10に本発明に係るビーム光投受光装置の第4実施形態を示す。尚、第1実施形態と同一要素には同一符号を付してある。
図9は、本実施形態のビーム光投受光装置の概略構成図であり、本実施形態のビーム光投受光装置200は、反射領域231と透過領域232をプリズム230の外側表面の2つの面に分けて形成するようにしたものである。即ち、図10に示すように、プリズム230に新たな面Fを形成して6角形状とし、反射領域231(外側反射面)をA面に形成し、透過領域232を隣接するF面に形成し、F面の透過領域232を透過した戻り光を、プリズム230の内側反射面であるD面で受光素子260に向けて反射する構成である。
【0046】
かかる第4実施形態によれば、投光ビームの反射領域231と戻り光の透過領域232が異なる面にあるため、信号レベルが戻り光に比べて格段に高い投光ビームが透過領域232を透過する戻り光の光路側に漏れ難くなるので、投光/受光のアイソレーション特性を向上できる。
【0047】
尚、図6の第3実施形態や図9の第4実施形態の各構成の場合も、図5の第2実施形態のように、投光ビームをプリズム230の内側反射面(D面)でスキャンミラー240の方向に反射させ、戻り光を反射領域231(外側反射面)で受光素子260の方向に反射させる構成としてもよいが、投光ビームと戻り光の信号レベルを考慮すれば、図6や図9の構成の方が望ましい。
【0048】
図11及び図12に本発明に係るビーム光投受光装置の第5実施形態を示す。尚、第1実施形態と同一要素には同一符号を付してある。
図11は、本実施形態のビーム光投受光装置の第5実施形態を示す概略構成図であり、本実施形態のビーム光投受光装置200は、投受光分離部材を、図10に示すプリズム230に、スキャンミラー240からの戻り光を透過する透過領域332と、受光素子260の方向に透過した戻り光を反射する内側反射面(D1面)と、を有する別のプリズム330を結合して構成したものである。即ち、図12に示すように、プリズム330は、5つの面B1〜E1とG1を持つ5角形状で、プリズム330を図12に示すようにプリズム230に結合したときに、プリズム330のB1面〜E1面の各面を、プリズム230のB面〜E面の各面とそれぞれ面一となるように形成し、G1面をプリズム230のF面と段差を有するように形成し、このG1面に、無反射コーティングを施して戻り光が透過する透過領域332を形成し、この透過領域332を透過した戻り光を、プリズム330内部でD1面を内側反射面として受光素子260の方向に反射するように形成する。
【0049】
かかる第5実施形態によれば、第5実施形態と同様に、投光ビームの反射領域231と戻り光の透過領域232、332が異なる面にあるため、信号レベルが戻り光に比べて格段に高い投光ビームが透過領域232を透過する戻り光の光路側に漏れ難くなり、投光/受光のアイソレーション特性を向上できる。加えて、透過領域面積が増大するので、受光素子260方向に反射する戻り光の光量が増大し、受光素子260の受光量を増大することができる。
【0050】
尚、上述した各実施形態において、投光ビームの光路と戻り光の光路の途中に位置するプリズム230のA面、B面、D面やプリズム330のD1面の各に適当な凸状又は凹状の曲率をつけることで、光源210側のコリメートレンズ220や受光素子260側の集光レンズ250を省略することが可能であり、これにより、部品点数を更に削減することが可能となり、光軸調整部品の削減で光軸調整作業をより一層容易化できるようになる。
【0051】
尚、本発明のビーム光投受光装置は、光測距装置だけでなく、光ビームを照射し物体からの戻り光を受光して物体の存在、位置、大きさ等を検出するようなあらゆる装置の同軸系タイプのビーム光投受光装置として適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 光測距装置
200 ビーム光投受光装置
210 光源
230、330 プリズム(投受光分離部材)
231 反射領域(外側反射面)
232、332 透過領域
D、D1 内側反射面
240 スキャンミラー
260 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光ビームを出射する光源と、前記投光ビームを反射して対象領域内へ投光し走査するスキャンミラーと、該スキャンミラーへ向かう投光ビームの光路と、前記対象領域内の物体で反射し前記スキャンミラーで反射した戻り光の光路と、を互いに分離する投受光分離部材と、前記戻り光を受光する受光素子と、を備えたビーム光投受光装置であって、
前記投受光分離部材は、前記投光ビームをスキャンミラー方向に反射する反射面と、前記スキャンミラーからの戻り光を受光素子方向に反射する反射面と、を設けた1つのプリズムで形成したことを特徴とするビーム光投受光装置。
【請求項2】
投光ビームを出射する光源と、前記投光ビームを反射して対象領域内へ投光し走査するスキャンミラーと、該スキャンミラーへ向かう投光ビームの光路と、前記対象領域内の物体で反射し前記スキャンミラーで反射した戻り光の光路と、を互いに分離する投受光分離部材と、前記戻り光を受光する受光素子と、を備えたビーム光投受光装置であって、
前記投受光分離部材は、少なくとも1つのプリズムで形成し、前記プリズムの外側反射面と内側反射面のいずれか一方の反射面で、前記投光ビームをスキャンミラー方向に反射し、他方の反射面で、前記スキャンミラーからの戻り光を受光素子方向に反射するよう構成したことを特徴とするビーム光投受光装置。
【請求項3】
前記プリズムは、外側表面に、光ビームの反射領域と光ビームの透過領域を有すると共に、前記透過領域を透過した光ビームをプリズム内部で反射させる反射面を有する構成とし、前記外側表面の前記反射領域を外側反射面とし、透過した光ビームをプリズム内部で反射させる反射面を内側反射面とし、前記外側反射面と前記内側反射面のいずれか一方の反射面で、前記投光ビームをスキャンミラー方向に反射し、他方の反射面で、前記スキャンミラーからの戻り光を受光素子方向に反射するよう構成した請求項1又は2に記載のビーム光投受光装置。
【請求項4】
前記プリズムの前記外側反射面と前記内側反射面を、光源からプリズムに向かう投光ビームの投光光路とプリズムから受光素子に向かう戻り光の戻り光路とが、互いに略平行になるように形成した請求項2又は3に記載のビーム光投受光装置。
【請求項5】
前記反射領域と透過領域を、プリズムの外側表面の同じ面に形成した請求項3又は4に記載のビーム光投受光装置。
【請求項6】
前記同じ面の略中央部に前記反射領域を形成し、前記反射領域を除く部分に前記透過領域を形成するようにした請求項5に記載のビーム光投受光装置。
【請求項7】
前記反射領域を円形形状にした請求項6に記載のビーム光投受光装置。
【請求項8】
前記反射領域と透過領域を、プリズムの外側表面の2つの面に分けて形成した請求項3又は4に記載のビーム光投受光装置。
【請求項9】
前記投受光分離部材は、前記外側反射面と前記内側反射面を有するプリズムに、前記スキャンミラーからの戻り光を受光素子方向に反射する反射面を設けた別のプリズムを結合して構成したことを特徴とする請求項2に記載のビーム光投受光装置。
【請求項10】
前記投受光分離部材は、外側表面に投光ビームをスキャンミラー方向に反射する外側反射面となる反射領域とスキャンミラーからの戻り光を透過させる透過領域とを有すると共に、前記透過領域を透過した戻り光をプリズム内部で受光素子方向に反射する内側反射面を有するプリズムに、前記透過領域と段差を有しスキャンミラーからの戻り光を透過させる透過領域と、当該透過領域を透過した戻り光をプリズム内部で受光素子方向に反射する内側反射面と、を有する別のプリズムを結合して構成した請求項9に記載のビーム光投受光装置。
【請求項11】
前記光源からの投光ビームの出射タイミングと前記受光素子における戻り光の受光タイミングとに基づいて前記対象領域内の物体までの距離を計測する光測距装置に用いる請求項1〜10のいずれか1つに記載のビーム光投受光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−68350(P2012−68350A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211712(P2010−211712)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【出願人】(391009936)株式会社住田光学ガラス (59)
【Fターム(参考)】