説明

ビーム操作デバイス

光ビームを偏向させるビーム操作デバイス(300)が供される。当該ビーム操作デバイスは、第1偏向部(310)、回転部(320)、及び第2偏向部(330)を有する。当該ビーム操作デバイスの光学軸(314,334)に対して平行な偏光(303’)及び垂直な偏光(302’)を有する成分(303,302)を有する入射光ビームについて、前記平行な偏光を有する成分(303)は、前記第1偏向部(310)を通過するときに、第1角度(304)で偏向される。前記回転部(320)を通過するとき、前記光ビームの偏光は、90°(303’’,302’’)に回転される。前記第2偏向部(330)を通過するとき、前記垂直な偏光を有する成分(302)は、第2角度(305)で偏向される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを電気的に操作するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ビーム操作デバイスは、光ビームの方向を制御するため、照明装置において用いられる。これはたとえば、ときどき部屋の雰囲気を変化させるため半静的に、又は、娯楽目的で動的に行われて良い。追跡機構と併せて、ビーム操作はまた、動く対象物を照射するのにも用いられて良い。
【0003】
これまでのビーム操作技術は、機械的デバイス−モーター駆動のミラー又はレンズ−に基づくものだった。また電気的に制御可能な液晶に基づくフェーズドアレイ又は導波路を利用するビーム操作デバイスも知られている。
【0004】
特許文献1は、液晶に基づくビーム偏向素子のアレイを内蔵する光ビームスキャナについて開示している。ビームの偏向は、位相の傾き及び位相のオフセットを設定することによって実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5151814号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の技術及び従来技術に代わる、より効率的な代替技術を供することである。
【0007】
より具体的には、本発明の目的は、電気的に制御可能なビーム操作デバイスを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、独立請求項1に記載の技術的特徴を有するビーム操作デバイスによって実現される。本発明の実施例は、従属請求項によって特徴付けられる。
【0009】
本発明を説明するため、複屈折材料は光学的異方性を有する材料である。つまり光学的異方性を有する材料では、該材料中を伝播する光線への影響が、前記光線の伝播方向、前記材料の光学配置、及び前記光線の偏光に依存する。
【0010】
一軸材料は、複屈折材料の特殊な場合である。一軸材料が光線へ及ぼす影響は、光学軸によって記述することができる。前記光学軸に対して垂直な偏光を有する光線は、正常屈折率を感じる。前記光学軸に対して平行な偏光を有する光線は、異常屈折率を感じる。前記光学軸に対して純粋に垂直又は平行な偏光以外の偏光成分を有する光線は、前記正常屈折率と異常屈折率の間の屈折率を感じる。
【0011】
本発明の態様によると、光ビームを偏向させるデバイスが供される。当該デバイスは、前記光ビームの一部を第1角度で偏向させる第1偏向部を有する。前記第1偏向部は第1プリズムを有する。前記第1プリズムは、第1光学部材及び第2光学部材を有する。前記第1光学部材は第1屈折率を生じさせる。前記第2光学部材は、複屈折性で、かつ電気的に制御可能な光学軸を有する。前記光学軸は第2屈折率を生じさせる。前記第1偏向部により偏向される光ビームの一部は、前記第1角度が、前記第1屈折率と前記第2屈折率との差に比例するような直線偏光を有する。
【0012】
本発明は、少なくとも2つの光学部材−前記少なくとも2つの光学部材のうちの一は、複屈折性で、かつ可変屈折率を有する−を有するプリズムが、光ビームを制御して偏向させるのに用いることが可能であるという理解を利用している。前記光学軸、ひいては屈折率を電気的に制御することによって、前記プリズムを通過する光ビームを偏向させることができる。前記光学軸は、前記プリズムに対向する表面上の複数の位置合わせ層−たとえばラビン具されたポリイミド層−を結合し、かつ前記プリズム全体にわたって電場を印加することによって制御することができる。前記電場強度に依存して、前記光学軸は配向を変化させる。前記偏向は、前記プリズムの第1光学部材と第2光学部材との間の界面での屈折によって引き起こされる。本発明の実施例によるビーム操作デバイスは、可動部材を必要としないので、耐久性に優れ、静かで、かつ高速となる点で有利である。可動部材を使用する既知のビーム操作デバイスに固有の広く知られた問題−たとえば加速の限界、寿命の限界、及びかなり大きな空間が必要となること−は、回避又は少なくとも緩和することができる。
【0013】
本発明の実施例によると、当該デバイスは、前記光ビームの一部を第2角度で偏向させる第2偏向部、及び、回転部をさらに有する。前記回転部は、前記第1偏向部と第2偏向部との間に設けられる。前記第2偏向部は第2プリズムを有する。前記第2プリズムは、第1光学部材及び第2光学部材を有する。前記第1光学部材は第1屈折率を生じさせる。前記第2光学部材は、複屈折性で、かつ電気的に制御可能な光学軸を有する。前記光学軸は第2屈折率を生じさせる。前記光学軸は第2屈折率を生じさせる。前記第2偏向部により偏向される光ビームの一部は、前記第2角度が、前記第1屈折率と前記第2屈折率との差に比例するような直線偏光を有する。前記回転部は少なくとも第1状態を有する。前記回転部は、前記第1状態にあるとき、前記光ビームの偏向を90°回転させるように構成されている。これは、光ビームの2つの偏向成分を偏向させることができる点で有利である。最初に、前記第1プリズムの光学軸に対して平行な偏光を有する光ビームの一部が偏向される。続いて、前記回転部を通過するとき、前記光ビームの偏向は90°回転する。この回転の効果は、前記2つの偏向成分が交換されることである。つまり前記第1プリズムと第2プリズムは同一の光学配置を有するので、本来は前記第1プリズムの光学軸に対して平行な偏光を有していた前記の偏向された成分は、現在、前記第1プリズムの光学軸と前記第2プリズムの光学軸に対して垂直な偏光を有するようになる。最終的に、前記第1プリズムによっては偏向されずに、前記第2プリズムの光学軸に対して平行な偏光を有する光ビームの成分は、前記第2偏向部を通過するときに第2角度で偏向される。よって前記光ビームの2つの偏光成分が偏向される。前記第1角度と第2角度は互いに独立に制御される。前記第1角度と第2角度とが異なる場合、各異なる偏光成分は分裂する。つまり当該ビーム操作デバイスはビームスプリッタとして機能する。
【0014】
本発明の実施例によると、前記第1プリズム及び第2プリズムはマイクロプリズムである。複数のマイクロプリズムを用いることは、当該デバイスのサイズを少なくとも1次元について減少させることができるという利点を有する。
【0015】
本発明の実施例によると、前記第1プリズムの第2光学部材の光学軸と前記第2プリズムの第2光学部材の光学軸とは、1つとなって電気的に制御可能である。それにより前記第1角度と前記第2角度とは実質的に等しくなる。これは、2つの偏光成分が、同一の角度によって偏向され、かつ、当該ビーム操作デバイスを通過した後、単一ビームとして伝播し続けるという点で有利である。
【0016】
本発明の実施例によると、前記第1プリズムの第1光学部材及び前記第2プリズムの第1光学部材はポリマーを主成分とする。ポリマーを用いることは、鋳型成型できる点で有利である。特に、マイクロプリズムの組立体が用いられる場合、前記マイクロプリズムの構造は、ポリマー膜内で鋳型成型されて良い。そのようにして、横方向の寸法をはるかに大きくしながら、厚さがわずか数mmの薄い偏向部を製造することができる。
【0017】
本発明の実施例によると、前記第1プリズムの第2光学部材及び前記第2プリズムの第2光学部材は液晶を主成分とする。
【0018】
本発明の実施例によると、前記回転部は第2状態をさらに有する。前記回転部は、第2状態にあるとき、前記光ビームの偏光に実質的に影響を及ぼさないように構成される。前記回転部は、第1状態と第2状態との間で電気的に切り換え可能である。これは、前記光ビームの偏光の回転−つまり2つの偏光成分の交換−を起こしたり起こさなかったりすることが可能となる点で有利である。そのようにして、本発明の実施例によるビーム操作デバイスは、少なくとも各異なるモードで利用可能である。第1モードでは、前記回転部が起動することにより、前記光ビームの2つの成分が偏向される。つまり前記ビームは全体として偏向される。第2モードでは、前記回転部が起動しないことにより、前記第1プリズムと第2プリズムの光軸に対して平行な偏光を有する成分のみが偏向される。この場合
2つの偏向部が同一の偏光成分を有するので、大きな偏向角を得ることができる。これはたとえば、偏光ビーム光−たとえばレーザーによって放出される光−を偏向させるのに利用されて良い。
【0019】
本発明の実施例によると、前記回転部は液晶−たとえばネマティック液晶−を主成分とする。
【0020】
本発明の実施例によると、デバイスは複数のビーム操作デバイスを有する。前記複数のビーム操作デバイスは、マトリックス内の複数の画素として配置される。前記複数の画素は独立に制御可能である。これは、多重ビームを各異なる方向に偏向できるので有利である。特に多重ビームは、単一の光源から得られて良い。ビーム操作デバイスのマトリックスは、ビーム整形及び光パターンの生成に用いられて良い。
【0021】
本発明の実施例によると、当該デバイスは、前記ビームの偏向を拡大する望遠鏡をさらに有する。望遠鏡の利用は、所与のビーム操作デバイスの偏向の最大角度を増大させることができるので有利である。
【0022】
本発明の他の実施例によると、当該デバイスは、前記ビームの偏向を拡大する望遠鏡のアレイをさらに有する。
【0023】
本発明の実施例によると、前記望遠鏡は第1レンズ及び第2レンズを有する。前記第1レンズは焦点長f1を有する。前記第2レンズは焦点長f2を有する。前記焦点長は、f1>f2となる。前記第1レンズと第2レンズとの間の距離はf1+f2である。
【0024】
本発明の他の実施例によると、前記望遠鏡は複数の第1レンズ及び複数の第2レンズを有する。前記複数の第1レンズは、焦点長f1及び直径D1を有し、かつマトリックスで配置されている。前記複数の第2レンズは、焦点長f2及び直径D2を有し、かつマトリックスで配置されている。前記焦点長は、f1>f2で、かつ、前記複数の第1レンズと複数の第2レンズとの間の距離がf1+f2となるようなものである。レンズのマトリックス−たとえば複数のマイクロレンズ−を用いることは、直径の小さなレンズは一般的に短い焦点長を有する結果、光の伝播方向に沿った望遠鏡の長さが短くなるので有利である。
【0025】
本発明のさらに他の実施例によると、前記望遠鏡は、複数の第3レンズをさらに有する。前記複数の第3レンズは、焦点長f3及び直径D3を有し、かつマトリックスで配置されて、前記複数の第1レンズと複数の第2レンズとの間に設けられる。前記複数の第3レンズは、前記複数の第1レンズからの距離がf1で、かつ前記複数の第2レンズからの距離がf2となる位置に配置される。前記焦点長は、1/f3=1/f1+1/f2となる。第3レンズのアレイを用いることは、許容角度−つまり前記望遠鏡の光学軸に対して入射光が有し得る最大角度−を増大させることができる点で有利である。さらに前記第2レンズと第3レンズの焦点長は、各対応するレンズの直径を減少させることによって減少させて良い。
【0026】
本発明の実施例によると、当該ビーム操作デバイスは光源をさらに有する。好適には、前記光源は、コリメートされた光ビームを放出する。
【0027】
本発明のさらに他の目的、特徴、及び利点は、以降の詳細な説明、図面、及び請求項を検討することで明らかになる。当業者は、本発明の様々な特徴を組み合わせて、以降で記載されている実施例以外の実施例が生成されうることを理解する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例によるビーム操作デバイスを表している。
【図2】本発明の実施例による偏向部を表している。
【図3】本発明の他の実施例によるビーム操作デバイスを表している。
【図4】本発明の実施例による回転部を表している。
【図5】本発明の他の実施例によるビーム操作デバイスを表している。
【図6】本発明のさらに他の実施例によるビーム操作デバイスを表している。
【図7】本発明の実施例による望遠鏡を表している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の実施例によるビーム操作デバイス100を図示している。ビーム操作デバイス100は偏向部110を有する。偏向部110は、2つの光学部材111と112を有するプリズムを構成する。2つの光学部材111と112は、前記プリズムの内部の界面113を構成する。第1光学部材111は、光学的等方性を有し、かつ、等方的な屈折率によって特徴付けることができる。第2光学部材112は、一軸の異方性を有する複屈折性材料−つまり光学軸114とも呼ばれる単一の異方性軸114−である。かかる材料は、光学軸114に対して垂直な偏光を有する正常光線に影響を及ぼす正常屈折率と、光学軸114に対して平行な偏光を有する異常光線に影響を及ぼす異常屈折率によって特徴付けることができる。光学軸114の配向は、プリズム110全体にわたって電場を印加し、かつ、位置合わせ層−たとえばラビングされたポリイミド層−によって制御されて良い。光学軸114の配向を変化させることによって、屈折率を変化させることができる。
【0030】
図1には特定の配向を有する光学軸114が図示されているが、他の配向の光学軸が、たとえば位置合わせ層を用いることによって実現されても良い。マイクロプリズムの場合では、たとえばプリズムの端部に沿った光学軸の配向は、実現が容易である。以降では、図1に表されているような光学軸の配向を仮定して、本発明の実施例について説明する。しかし本発明は、その特定の配向に限定されるものではない。
【0031】
第1偏向部110を通過する、たとえば光源101を起源とする入射光は、プリズムの光学軸114に対して垂直な偏光有する偏光成分及び平行な偏光を有する偏光成分の2つに分解することができる。本発明を説明する目的で、入射光は、互いに独立である、垂直な偏光102’を有する光線102、及び平行な偏光103’を有する光線103として表される。
【0032】
光学軸114に対して垂直な偏光102’を有する光線102は、偏向されることなく偏向部110を通過する。プリズムの光学軸114に対して平行な偏光103’を有する光線103は、第1偏向部110を通過するときに偏向される。偏向は、第1光学部材111の屈折率と第2光学部材112の異常屈折率とのミスマッチに起因する内部の界面113での屈折によって引き起こされる。第1角度104は、界面113のいずれかの側での2つの屈折率間の差に比例する。
【0033】
図1を参照すると、入射光が、光学軸114に対して平行な偏光103’を有する直線偏光である−つまり成分102を無視できる−場合、全光ビームは偏向され得る。他方入射光が2つの偏光成分102と103を含む場合、第1偏向部110はビームスプリッタとして機能し、角度104だけ成分103が偏向される一方で、成分102は影響を受けない。
【0034】
第1光学部材111は、鋳型成型可能なポリマーを主成分として良い。第2光学部材112は、液晶を主成分として良い。この場合、第2光学部材112の光学軸114は、第2光学部材112にわたって−少なくとも内部の界面113付近で、かつ偏向に影響を及ぼすのに十分な大きさの体積にわたって、又はプリズム全体にわたって−電場を印加することによって変化することができる。
【0035】
一般的にはポリマーが第1光学部材111に用いられ、かつ、液晶が第2光学部材112に用いられる場合、第1光学部材111の屈折率と第2光学部材112の異常屈折率は約1.5の値を有する。第2光学部材112の異常屈折率は、約1.7に固定され、その値は電場に独立である。換言すると、記載されたように材料を組み合わせることによって、電場が印加される場合に、ビーム操作デバイス100を通過する光ビームは偏向され、かつ、偏向角は、電場を印加することによって減少し得る。しかし異なる挙動−つまり電場が印加されなければ偏向されず、偏向が印加された電場に比例するような挙動−が、第1光学部材111及び第2光学部材112の適切な選択によって実現されても良い。第1光学部材111はたとえば、複屈折性材料で作られて良い。
【0036】
図1を参照すると、1つのプリズムを有する第1偏向部110が図示されているが、複数のプリズム−たとえばマイクロプリズムの集合体−が用いられても良い。図2を参照すると、マイクロプリズム2101-210Nを有する、本発明の実施例による偏向部200が記載されている。図2には一定数のプリズムが図示されているが、将来的には、その用途に適した任意の数のプリズムが考えられ得る。
【0037】
マイクロプリズム2101-210Nは、1次元プリズム構造211及び液晶層212によって作られる。液晶212を閉じこめ、かつ1次元プリズム構造211を支持するため、マイクロプリズム2101-210Nは、スペーサ215によってある距離に保持されている2つのガラスプレート213と214によって挟まれている。マイクロプリズム2101-210Nにわたって電場を印加するため、ガラスプレート213と214は、それぞれ導電層216と217によって被覆される。導電層216と217は、偏向部200を通過する光に対して光学的に透明であることが好ましい。導電層216と217は、たとえばインジウム−スズ酸化物(ITO)で作られて良い。ワイヤ218は、導電層216と217を電源に接続するのに用いられて良い。1次元プリズム構造211はたとえば、ポリマー膜に鋳型成型されて良い。典型的には、ポリマー膜は約100μmの厚さで、かつ、液晶層212は約50μmの厚さを有する。しかし将来的には、その用途に適した任意の厚さが用いられて良い。標準的な複製技術を利用することによって、厚さ約1mmで横方向寸法がはるかに大きい薄い偏向部を実現することができる。
【0038】
図3を参照すると、本発明の他の実施例によるビーム操作デバイス300が記載されている。ビーム操作デバイス300は、2つの偏向部310と330のみならず、回転部320をも有する。回転部320は、第1偏向部310と第2偏向部330の間に設けられている。第1プリズム310の第2光学部材と第2プリズム330の第2光学部材は、電場が印加されない場合には、同一の光学配向を有する。
【0039】
光源301から放出されて、ビーム操作デバイス300−つまり第1偏向部310、回転部320、及び第2偏向部330−を通過する入射光は、図1を参照しながら説明したものの類推で、2つの偏光成分302と303に分解され得る。光学軸314に対して平行な偏光303’を有する光線303は、第1偏向部310を通過するときに、偏向される。回転部320を通過するとき、光線の偏光303は90°回転する。それによりその偏光は、光軸334に対して垂直な303’’となる。従って、第2偏向部330を通過するとき、光線303は偏向されない。よってビーム操作デバイス300を全体的に考慮すると、光線303は、ビーム操作デバイス300を通過するときに、第1角度304で偏向される。
【0040】
入射光の他の偏光成分−つまり光学軸314に対して垂直な偏光302’を有する光線302−は、第1偏向部310を通過するときには、偏向されない。回転部320を通過するとき、光線302の偏光は90°回転する。それにより、光線302が第2偏向部330に入射するとき、偏光302’’は光学軸334に対して平行となる。従って光線302は、第2偏向部330を通過するとき、第2角度305で偏向される。よってビーム操作デバイス300を全体的に考慮すると、光線302は、ビーム操作デバイス300を通過するときに、第2角度305で偏向される。
【0041】
光学軸314に対して平行な成分303’又は垂直な成分302’のいずれかを有する直線偏光ではないが、両成分の合成として表すことのできる偏光を有する入射光を考慮すると、前記入射光が、第1角度304と第2角度305とが等しくなるように選ばれた場合にビーム操作デバイス300を通過するとき、前記入射光は、全体としては偏向され得る。他方第1角度304と第2角度305が異なるように選ばれる場合、ビーム操作デバイス300は、光学軸314に対してそれぞれ平行な偏光303’と垂直な偏光302’を有する2つの成分に、入射光を分解することを可能にするビームスプリッタとして用いられて良い。
【0042】
図3に記載されているビーム操作デバイス300の偏向部310と330は、図2に記載されている偏向部200と同じ種類であって良い。偏向部310と330は同一であっても良いし、それぞれ異なっても良い。入射光ビームが全体的に偏向される場合、つまり第1角度304と第2角度305が等しい場合、同一の偏向部310と330を用いることが有利となる。これは、2つの偏向部内のプリズムにわたって同一の電場を印加する−つまり2つの偏向部の導電層に同一の電圧を印加する−ことによって実現することができる。
【0043】
図4を参照すると、本発明の実施例による回転部400が記載されている。回転部400は、スペーサ403によって隔離された2つのガラスプレート401と402を有する。ガラスプレート401と402の体積は、ツイステッド・ネマチック液晶404で充填されている。液晶の位置合わせは、液晶404に対向するガラスプレート401と402の面を覆うラビングされたポリイミド位置合わせ層を用いることによって実現される。ラビングされたポリイミド層は、互いに垂直となるように位置合わせた配置をとる。それにより液晶404はねじれる。その結果、回転部400を通過する光ビームの偏光は90°回転する。
【0044】
図4に記載された回転部400はさらに、液晶に対向するガラスプレートを覆う透明導電層を備えて良い。そのようにして、液晶404にわたって電場を印加することによって、回転部400をスイッチオフする−つまり回転部400を通過する光ビームの偏光が影響を受けないようにする−ことができる。これは、導電層に対して電場を印加することによって実現することができる。導電層はたとえばITOで作られて良い。図3を参照すると、回転部がスイッチオフされる場合、光学軸314に対して平行な偏光303’を有する光ビームの偏光成分303のみが偏向されるが、他方他の成分は影響を受けない。このことは、光学軸314に対して平行な偏光303’を有する直線偏光ビームが偏向される場合には有利となる。なぜなら最大偏向角が増大するからである。任意で当該デバイスはビームスプリッタとして用いられて良い。
【0045】
図5では、本発明の他の実施例によるビーム操作デバイス500が図示されている。ビーム操作デバイス500は、複数のビーム502を各独立に偏向させる複数の画素510を有する。入射光501は、単一の光源を起源として良いし、又は複数の光源を起源としても良い。単一の光源を起源とする場合、光は複数のビームに分裂する。
【0046】
図6を参照すると、本発明の他の実施例によるビーム操作デバイス600が記載されている。ビーム操作デバイス600は偏向部610及び望遠鏡620を有する。偏向部610は、図1に記載されている偏向部110のような単一の偏向部であって良いし、又は、図3に記載されている2つの偏向部310と330及び回転部320の積層体であっても良い。図6を参照すると、入射光ビーム601は、偏向部610を通過するときに角度602で偏向される。ビームの偏向は、望遠鏡602を通過した後に拡大される。このときの偏向角は603である。換言すると、入射光ビームは、全体としてのビーム操作デバイス600−つまり偏向部610と望遠鏡620の両方−を通過したときに、角度603で偏向される。
【0047】
図7a-図7dでは、本発明の実施例による望遠鏡が図示されている。図7aは、焦点長f1及びf2をそれぞれ有する2つのレンズ711及び712を有する望遠鏡710を図示している。レンズ711及び712は、距離f1+f2だけ離れるように配置される。f1及びf2がf1>f2となるように選ばれる場合、入射角714を有する入射光ビーム713は、望遠鏡710を通過するときに、角度715にまで偏向を増大させる。
【0048】
焦点長f1+f2を減少させることで、望遠鏡を小さくするため、レンズのマトリックスが用いられて良い。図7bは、直径がDで、焦点長f1及びf2をそれぞれ有するレンズの2つのマトリックス721及び722を有する望遠鏡720を図示している。好適には、意図しない2次ビームを回避するため、係るシステムの設計は、第1マトリックス721のレンズに入射する光のみが、第2マトリックス722の対応するレンズを通過するようになされる。この条件は、許容角αmax−入射光ビームが有し得る最大角度−について表式が次式を満たす場合に、満たされる。
【0049】
【数1】

ここでM=f1/f2である。
【0050】
図7cは、本発明の他の実施例による望遠鏡730を図示している。望遠鏡730は焦点長f1とf2及び直径Dを有するレンズ731と732の2つのマトリックス、並びに、焦点長f3及び直径Dを有する他のレンズ733のマトリックスを有する。レンズ733のマトリックスは、レンズ731のマトリックスから距離f1で、かつレンズ732のマトリックスから距離f2の位置に配置されている。それに加えて、各レンズの設計は、レンズ731のマトリックスのうちの1つのレンズの1点は、レンズ731のマトリックスの対応するレンズ上で結像される。係る望遠鏡では、焦点長f3が、1/f3=1/f1+1/f2で与えられる場合、許容角αmaxは、改善され、かつ、tanαmax<D/2f1によって与えられることが分かった。
【0051】
図7dは、本発明の他の実施例による望遠鏡740を図示している。望遠鏡740は、図7cに記載された望遠鏡730と同様、レンズのマトリックスを3つ有する。しかし望遠鏡740では、レンズ741、742、及び743のマトリックスは、それぞれ各異なる直径D1、D2、及びD3を有する。D2/f2>D1/f1の関係を維持しながらレンズ742と743のマトリックスの直径を減少させることによって、次式によって表されるように許容角αmaxの改善を実現することができる。
tanαmax<D3/2f1
当業者は、本願発明が上述の実施例に限定されないことを理解する。対照的に、多くの修正型及び変化型が、請求項に係る発明の技術的範囲内で可能である。たとえばプリズムの第1光学部材もまた複屈折性であって良い。さらに2つの偏向部又は2つの2つの偏向部と回転部からなる2つの積層体が、光ビームを2方向に偏向させることを可能にするように組み合わせられても良い。さらにシリンドリカルレンズが、1方向における光ビームの偏向を拡大させるのに用いられて良い。
【0052】
以上をまとめると、光ビームを偏向させるビーム操作デバイスが供される。当該ビーム操作デバイスは、第1偏向部、回転部、及び第2偏向部を有する。当該ビーム操作デバイスの光学軸に対してそれぞれ平行な偏光と垂直な偏光を有する成分を有する入射光ビームについては、前記平行な偏向を有する成分は、前記第1偏向部を通過するときに第1角度で偏向される。前記回転部を通過するとき、前記光ビームの偏光は90°回転する。前記第2偏向部を通過するとき、前記垂直な偏光を有する成分は第2角度で偏向される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを偏向させるデバイスであって、
当該デバイスは前記光ビームの一部を第1角度で偏向させる第1偏向部を有し、
前記第1偏向部は第1プリズムを有し、
前記第1プリズムは、第1屈折率を生じさせる第1光学部材、及び、第2屈折率を生じさせる電気的に制御可能な光学軸を有する複屈折性の第2光学部材を有し、
前記第1偏向部により偏向される光ビームの一部は、前記第1角度が、前記第1屈折率と前記第2屈折率との差に比例するような直線偏光を有する、
デバイス。
【請求項2】
前記光ビームの一部を第2角度で偏向させる第2偏向部、及び、少なくとも第1状態を有する回転部をさらに有する請求項1に記載のデバイスであって、
前記第2偏向部は第2プリズムを有し、
前記第2プリズムは、第1屈折率を生じさせる第1光学部材、及び、第2屈折率を生じさせる電気的に制御可能な光学軸を有する複屈折性の第2光学部材を有し、
前記第2偏向部により偏向される光ビームの一部は、前記第2角度が、前記第1屈折率と前記第2屈折率との差に比例するような直線偏光を有し、
前記回転部は、前記第1状態にあるとき、前記光ビームの偏向を90°回転させるように構成され、
前記回転部が、前記第1偏向部と第2偏向部との間に設けられる、
デバイス。
【請求項3】
前記第1プリズム及び第2プリズムがマイクロプリズムである、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1プリズムの第2光学部材の光学軸と前記第2プリズムの第2光学部材の光学軸とが、1つとなって電気的に制御可能で、それにより前記第1角度と前記第2角度とは等しくなる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1プリズムの第1光学部材及び前記第2プリズムの第1光学部材がポリマーを主成分とする、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1プリズムの第2光学部材及び前記第2プリズムの第2光学部材が液晶を主成分とする、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項7】
前記回転部が第2状態をさらに有し、
前記回転部は、前記第2状態にあるとき、前記光ビームの偏光に実質的に影響を及ぼさないように構成され、
前記回転部は、第1状態と第2状態との間で電気的に切り換え可能である、
請求項2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記回転部が液晶を主成分とする、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記複数のビーム操作デバイスがマトリックス内の複数の画素として配置され、
前記複数の画素は独立に制御可能である、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ビームの偏向を拡大する望遠鏡をさらに有する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ビームの偏向を拡大する望遠鏡のアレイをさらに有する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記望遠鏡が:
焦点長f1を有する第1レンズ;及び
焦点長f2を有する第2レンズ;
を有し、
f1>f2で、かつ前記第1レンズと第2レンズとの間の距離はf1+f2である、
請求項10又は11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記望遠鏡が:
焦点長f1及び直径D1を有する複数の第1レンズ;及び
焦点長f2及び直径D2を有する複数の第2レンズ;
を有し、
前記複数の第1レンズはマトリックスで配置され、
前記複数の第2レンズはマトリックスで配置され、
f1>f2で、かつ、前記複数の第1レンズと複数の第2レンズとの間の距離がf1+f2である、
請求項10又は11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記望遠鏡が焦点長f3及び直径D3を有する複数の第3レンズをさらに有し、
前記複数の第3レンズは、マトリックスで配置されて、かつ前記複数の第1レンズと複数の第2レンズとの間であって、前記複数の第1レンズからの距離がf1で、かつ前記複数の第2レンズからの距離がf2となる位置に設けられ、
前記焦点長は、1/f3=1/f1+1/f2である、
請求項10又は11に記載のデバイス。
【請求項15】
光源をさらに有する、請求項1乃至14のうちいずれか1項に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【公表番号】特表2013−509608(P2013−509608A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535968(P2012−535968)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054410
【国際公開番号】WO2011/051841
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】