ビーム照射装置
【課題】光検出器に迷光が入射し易いレイアウトにおいても、レーザ光の走査制御に対する迷光の影響を円滑に抑制することが可能なビーム照射装置を提供する。
【解決手段】ビーム照射装置は、走査用レーザ光が入射するスキャンミラー150とサーボ光が入射するサーボミラー124とを備えたミラーアクチュエータ100を有する。サーボミラー124により反射されたサーボ光は、PSD136により受光される。PSD136に隣接して高速フォトダイオード137が配置される。マイコン12は、PSD136から出力される信号に基づいてミラーアクチュエータ100を制御する。高速フォトダイオード137から出力される信号が所定の閾値を超えると、PSD136から出力される信号が、ノイズキャンセル回路2によって遮断される。
【解決手段】ビーム照射装置は、走査用レーザ光が入射するスキャンミラー150とサーボ光が入射するサーボミラー124とを備えたミラーアクチュエータ100を有する。サーボミラー124により反射されたサーボ光は、PSD136により受光される。PSD136に隣接して高速フォトダイオード137が配置される。マイコン12は、PSD136から出力される信号に基づいてミラーアクチュエータ100を制御する。高速フォトダイオード137から出力される信号が所定の閾値を超えると、PSD136から出力される信号が、ノイズキャンセル回路2によって遮断される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域にレーザ光を照射するビーム照射装置に関し、特に、目標領域にレーザ光を照射したときの反射光をもとに、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出する、いわゆるレーザレーダに搭載されるビーム照射装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、走行時の安全性を高めるために、走行方向前方にレーザ光を照射し、その反射光の状態から、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出するレーザレーダが、家庭用乗用車等に搭載されている。一般に、レーザレーダは、レーザ光を目標領域内でスキャンさせ、各スキャン位置における反射光の有無から、各スキャン位置における障害物の有無を検出する。さらに、各スキャン位置におけるレーザ光の照射タイミングから反射光の受光タイミングまでの所要時間をもとに、そのスキャン位置における障害物までの距離が検出される。
【0003】
目標領域においてレーザ光をスキャンさせるための構成として、ミラーを2軸駆動する構成を用いることができる(特許文献1)。このスキャン機構では、レーザ光を水平方向斜めからミラーに入射させる。ミラーを水平方向と鉛直方向に2軸駆動することにより、レーザ光が目標領域を走査する。
【0004】
ミラーの駆動制御は、たとえば、サーボ光を、ミラーと一体駆動する部材を介してPSD(PositionSensitive Detector)等の光検出器で受光することによって行われる。この場合、予め設定された理想の受光位置とサーボ光の実際の受光位置とが比較され、両者の差分に応じて、ミラーが2軸駆動される。
【0005】
サーボ光と光検出器とを用いた検出系として、たとえば、サーボ光をミラーの裏面に照射する構成を用いることができる(特許文献2)。この構成では、ミラーの裏面が反射面とされる。この反射面で反射されたサーボ光が光検出器により受光され、サーボ光の受光位置に基づきミラーの回転位置が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−175856号公報
【特許文献2】特開2006−224142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レーザ光を目標領域において水平に走査させる場合、ミラーは、水平方向のみならず鉛直方向にも回動される。このため、光検出器上におけるサーボ光の理想の受光位置の軌道(理想軌道)は、非線形な形状になり易い。このように理想軌道が非線形になると、理想軌道を規定するために、多数のテーブル値をメモリに保持しておく必要がある。また、多数のテーブル値に基づいて、サーボ光を理想の受光位置に近付けるよう制御するためには、複雑かつ頻繁な演算処理が必要となり、処理負担が大きくなってしまう。
【0008】
これに対し、上記のようにサーボ光をミラーの裏面に照射する構成では、サーボ光用の光源と光検出器の配置位置を調整することにより、サーボ光の理想軌道を線形に近づけ易くなる。しかしながら、この構成では、レーザ光を出射するレーザ光源に対してミラーの
反対側にサーボ光用の光検出器が配置されるため、レーザ光の一部が迷光となってサーボ光用の光検出器に入射することが起こり得る。車載用のビーム照射装置では、目標領域に照射されるレーザ光の強度はサーボ光に比べて顕著に大きい。このため、このようにレーザ光の一部が光検出器に入射すると、サーボ光によるミラーの位置検出を適正に行えなくなる惧れがある。
【0009】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、PSD等の光検出器に迷光が入射し易いレイアウトにおいても、レーザ光の走査制御に対する迷光の影響を円滑に抑制することが可能なビーム照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主たる局面に係るビーム照射装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、サーボ光を出射するサーボ光源と、前記レーザ光が入射する平面状の第1反射面と当該第1反射面に対して平行で且つ反対側を向き前記サーボ光が入射する第2反射面とを有するとともに、前記第1反射面と前記第2反射面を互いに垂直な第1軸と第2軸の周りに一体的に回転させるアクチュエータと、前記第2反射面により反射された前記サーボ光を受光して受光位置に応じた第1信号を出力する第1光検出器と、前記第1光検出器に隣接して配置されるとともに受光量に応じた第2信号を出力する第2光検出器と、前記第1信号に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記第2信号が所定の閾値を超えると、前記第1信号に基づく前記制御部による制御を中止する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、PSD等の光検出器に迷光が入射し易いレイアウトにおいても、レーザ光の走査制御に対する迷光の影響を円滑に抑制することが可能なビーム照射装置を提供することができる。
【0012】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係るミラーアクチュエータの分解斜視図を示す図である。
【図2】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図3】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図4】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図5】実施の形態に係るビーム照射装置の光学系を示す図である。
【図6】実施の形態に係るPSDの構成を示す図である。
【図7】実施の形態に係る位置検出信号の生成方法を説明する図である。
【図8】実施の形態に係るスキャンミラーの駆動状態およびサーボミラーの駆動状態と目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD上におけるサーボ光の軌道との関係を示す図である。
【図9】実施の形態に係るビーム照射装置の回路構成を示す図である。
【図10】実施の形態に係るノイズキャンセル回路の構成を示す図である。
【図11】実施の形態に係るノイズキャンセル回路の制御動作フローを示す図である。
【図12】実施の形態に係るミラーアクチュエータの制御方法を説明する図である。
【図13】実施の形態の変更例に係るミラーアクチュエータの構成を示す図である。
【図14】実施の形態の変更例に係るミラーアクチュエータの構成を示す図である。
【図15】実施の形態の変更例に係るビーム照射装置の回路構成を示す図である。
【図16】実施の形態の変更例変更例に係るノイズキャンセル回路の制御動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施の形態に係るミラーアクチュエータ100の分解斜視図である。
【0015】
ミラーアクチュエータ100は、チルトユニット110と、パンユニット120と、マグネットユニット130と、ヨークユニット140と、スキャンミラー150を備えている。
【0016】
チルトユニット110は、支軸111と、チルトフレーム112と、2つのチルトコイル113とを備えている。支軸111には、両端部近傍に2つの溝111aが形成されている。これら溝111aには、Eリング117a、117bが嵌め込まれる。
【0017】
チルトフレーム112には、左右に、チルトコイル113を装着するためのコイル装着部112aが形成されている。また、チルトフレーム112には、支軸111を嵌め込むための溝112bと、上下に並ぶ2つの孔112cが形成されている。
【0018】
支軸111は、両端に軸受け116a、116b、Eリング117a、117bおよびポリスライダーワッシャ118a、118bが取り付けられた状態で、チルトフレーム112に形成された溝112bに嵌め込まれ、接着固定される。さらに、チルトフレーム112の2つの孔112cに、それぞれ、上下から軸受け112dが嵌め込まれる。これにより、図2(a)に示すように、チルトユニット110の組み立てが完了する。なお、図2(a)には、支軸111に、軸受け116a、116bと、Eリング117a、117bと、ポリスライダーワッシャ118a、118bが装着された状態が示されている。
【0019】
完成したチルトユニット110には、後述の如くして、パンユニット120が装着される。その後、チルトユニット110は、軸受け116a、116bと、Eリング117a、117bと、ポリスライダーワッシャ118a、118bと、軸固定部材142を用いて、後述の如く、ヨーク141に取り付けられる。
【0020】
図1に戻り、パンユニット120は、パンフレーム121と、支軸122と、パンコイル123と、サーボミラー124を備えている。パンフレーム121には、凹部121aを挟んで上板部121bと下板部121cが形成されている。これら上板部121bと下板部121cには、支軸122を通すための孔121dが上下に並ぶように形成されている。また、上板部121bと下板部121cの前面には、スキャンミラー150を嵌め込むための段部121eが形成されている。
【0021】
なお、パンフレーム121の背面には、パンコイル123を装着するためのコイル装着部(図示せず)と、サーボミラー装着部121f(図3(b)参照)が形成されている。
【0022】
マグネットユニット130は、チルトマグネットフレーム131と、8つのチルトマグネット132と、パンマグネットフレーム133と、2つのパンマグネット134と、半導体レーザ135と、PSD(Position Sensitive Detector)136と、高速フォトダイオード137を備えている。
【0023】
チルトマグネットフレーム131は、前側に凹部131aを有する形状となっている。チルトマグネットフレーム131の上板部131bには、前後方向に、2つの切り欠き131cが形成され、さらに、2つのネジ穴131dが形成されている。また、チルトマグネットフレーム131の背面には、2つのネジ穴131eと、パンマグネットフレーム133を嵌め込むための開口131fが形成されている。8つのチルトマグネット132は
、チルトマグネットフレーム131の左右の内側面に、上下2段に分けて装着されている。
【0024】
パンマグネットフレーム133の左右の両端には、2つの孔133aが形成されている。また、パンマグネットフレーム133の中央には、図示の如く、上下(Tilt)方向に傾くように上板部133cと下板部133dが形成されている。上板部133cと下板部133dには、半導体レーザ135の光が、PSD136に到達することができるよう、切り欠き133e、133f(図3(a)参照)が形成されている。2つのパンマグネット134は、パンマグネットフレーム133の内側面133g、133hに装着されている。内側面133g、133hは、前後方向に45度傾いている。したがって、これら内側面133g、133hに装着された2つのパンマグネット134も、前後(Pan)方向に45度傾くように配置される。
【0025】
半導体レーザ135は、パンマグネットフレーム133の一方の内側面133gに形成された孔に嵌め込まれる(図3(a)参照)。そして、パンマグネットフレーム133の他方の内側面133hに形成された凹部に、PSD136と、高速フォトダイオード137が装着される(図3(a)参照)。こうして半導体レーザ135、PSD136および高速フォトダイオード137が装着されたパンマグネットフレーム133が、チルトマグネットフレーム131の開口131fに収容される。この状態で、パンマグネットフレーム133の2つの孔133aを介して2つのネジ133bをチルトマグネットフレーム131の2つのネジ穴131eに螺着する。これにより、図3(a)に示すように、マグネットユニット130の組み立てが完了する。
【0026】
図1に戻り、ヨークユニット140は、ヨーク141と、軸固定部材142を備えている。ヨーク141は、磁性部材からなっている。ヨーク141には、左右に壁部141aが形成され、これら壁部141aの下端には、チルトユニット110の支軸111を装着するための凹部141bが形成されている。ヨーク141の上部には上下に貫通する2つのネジ穴141cが形成され、さらに、マグネットユニット130のネジ穴131dに対応する位置に、孔141dが形成されている。2つの壁部141aの内側面間の距離は、支軸111の2つの溝111a間の距離よりも大きくなっている。
【0027】
軸固定部材142は、可撓性を有する金属性の薄板部材である。軸固定部材142の前側には、板ばね部142a、142bが形成され、これら板ばね部142a、142bの下端には、それぞれ、チルトユニット110の軸受け116a、116bの脱落を規制するための受け部142c、142dが形成されている。また、軸固定部材142の上板部には、ヨーク141側の2つのネジ穴141cに対応する位置にそれぞれ孔142eが形成され、さらに、ヨーク141側の孔141dに対応する位置に孔142fが形成されている。
【0028】
ミラーアクチュエータ100の組み立て時には、上記の如くして、図2(a)に示すチルトユニット110、マグネットユニット130が組み立てられる。その後、チルトフレーム112がパンフレーム121の凹部121a内に収容される。このとき、2つの軸受け112dおよびポリスライダーワッシャ112eと、パンフレーム121の孔121dとが上下に並ぶように、パンフレーム121が位置づけられる。そして、その状態で、2つの軸受け112dとパンフレーム121の孔121dに、支軸122が通され、支軸122がパンフレーム121に接着剤により固定される。これにより、図2(b)に示す構成体が形成される。この状態で、パンフレーム121は、支軸122の周りに回動可能となり、また、支軸122に沿って上下に僅かに移動可能となる。
【0029】
こうしてパンユニット120が装着された後、パンフレーム121の段部121eにス
キャンミラー150が嵌め込まれて固定される。さらに、パンフレーム121のサーボミラー装着部121f(図3(b)参照)にサーボミラー124が嵌め込まれて固定される。
【0030】
図3(b)は、サーボミラー124とスキャンミラー150がパンフレーム121eに装着された状態を示す斜視図である。
【0031】
図3(b)に示す如く、サーボミラー124とスキャンミラー150は、支軸122の中心pからスキャンミラー150のミラー面までの距離l1と、サーボミラー124のミラー面までの距離l2が互いに等しい位置、すなわち、支軸122を軸として、対称の位置に配置される。さらに、サーボミラー124とスキャンミラー150は、それぞれのミラー面が支軸122に対して平行になるよう設置される。また、サーボミラー124とスキャンミラー150は、スキャンミラー150のミラー面の中心sとサーボミラー124のミラー面の中心s’を結ぶ直線が、支軸111の中心p’と支軸122の中心pを通るように配置され、かつ、それぞれのミラー面が支軸111と支軸122に対して平行となるように配置される。なお、図3(b)には、パンフレーム121に、サーボミラー124とスキャンミラー150のみが装着された状態が示されている。パンコイル123は、図3(b)に示すサーボミラー装着部121fの周りに巻回され固着される。
【0032】
その後、チルトユニット110の支軸111の両端に装着された軸受け116a、116bを、図1に示すヨーク141の凹部141bに嵌め込む。そして、この状態で、軸受け116a、116bが凹部141bから脱落しないように、軸固定部材142をヨーク141に装着する。すなわち、受け部142cが軸受け116aを下から支え、且つ、受け部142dが軸受け116bを前方から挟むようにして軸固定部材142をヨーク141に装着する。この状態で、軸固定部材142の2つの孔142eを介して2つのネジ143をヨーク141のネジ穴141cに螺着する。さらに、軸固定部材142の2つの孔142fとヨーク141の2つの孔141dを介して、チルトマグネットフレーム131の2つのネジ穴131dに累着する。これにより、図2(b)に示す構成体がヨークユニット140に装着される。
【0033】
こうして、図4(a)に示す構成体が完成する。この状態で、チルトフレーム112は、パンフレーム121と一体的に、支軸111の周りに回動可能となる。
【0034】
こうして組み立てられた図4(a)の構成体は、ヨーク141の2つの壁部141aが、それぞれ、マグネットユニット130側のチルトマグネットフレーム131の切り欠き131cに挿入されるようにして、マグネットユニット130に装着される。そして、この状態で、軸固定部材142の孔142fと、ヨーク141の孔141dを介して、ネジ144が、マグネットユニット130のネジ穴131dに螺着される。これにより、図4(a)に示す構成体が、マグネットユニット130に固着される。こうして、図4(b)に示すように、ミラーアクチュエータ100の組み立てが完了する。
【0035】
図4(b)に示す組み立て状態において、パンフレーム121が支軸122を軸として回動すると、これに伴ってスキャンミラー150が回動する。また、チルトフレーム112が支軸111を軸として回動すると、これに伴ってパンユニット120が回動し、パンユニット120と一体的にスキャンミラー150とサーボミラー124が回動する。このように、スキャンミラー150とサーボミラー124は、互いに直交する支軸111によって回動可能に支持され、チルトコイル113およびパンコイル123への通電によって、支軸111の周りに回動する。
【0036】
図4(b)に示すアセンブル状態において、8個のチルトマグネット132は、チルト
コイル113に電流を印加することにより、チルトフレーム112に支軸111を軸とする回動力が生じるよう、配置および極性が調整されている。したがって、チルトコイル113に電流を印加すると、チルトコイル113に生じる電磁駆動力によって、チルトフレーム112が、支軸111を軸として回動し、これに伴って、スキャンミラー150とサーボミラー124が回動する。
【0037】
また、図4(b)に示すアセンブル状態において、2個のパンマグネット134は、パンコイル123に電流を印加することにより、パンフレーム121に支軸122を軸とする回動力が生じるよう、配置および極性が調整されている。したがって、パンコイル123に電流を印加すると、パンコイル123に生じる電磁駆動力によって、パンフレーム121が、支軸122を軸として回動し、これに伴って、スキャンミラー150とサーボミラー124が回動する。
【0038】
なお、本実施の形態では、スキャンミラー150とサーボミラー124が、支軸122に対して軸対称に配置されるため、ミラーアクチュエータ100の重量バランスが良好となり、スキャンミラー150とサーボミラー124の回動を安定的に行うことができる。
【0039】
図5(a)は、ミラーアクチュエータ100が装着された状態の光学系の構成を示す一部上面図である。
【0040】
図5(a)において、500は、光学系を支持するベースである。ベース500は、上面が、水平面に平行となるよう設置される。ベース500の上面には、ミラーアクチュエータ100と、走査用レーザ光源201と、ビーム整形レンズ202とが配置されている。ミラーアクチュエータ100には、上記のように半導体レーザ135と、PSD136と、高速フォトダイオード137とが配置されている。なお、半導体レーザ135の出射口は、アパーチャとして機能する。半導体レーザ135から出射されるレーザ光は、この出射口によって、所定径の光束に絞られる。
【0041】
走査用レーザ光源201は、900nm程度の波長のレーザ光を出射する。走査用レーザ光源201は、ベース500の上面に配された回路基板201aに装着されている。また、走査用レーザ光源201は、光軸が水平方向と平行となるように配置されている。ビーム整形レンズ202は、走査用レーザ光源201から出射されたレーザ光(以下、「走査用レーザ光」という)を所定の形状に整形する。
【0042】
半導体レーザ135は、走査用レーザ光源201と異なる波長(たとえば、650nm程度)のレーザ光を出射する。半導体レーザ135は、パンマグネットフレーム133に配された回路基板135aに装着されている。また、半導体レーザ135は、光軸が水平方向と平行となるように配置されている。半導体レーザ135から出射されたレーザ光(以下、「サーボ光」という)は、サーボミラー124により反射され、PSD136の受光面上に照射される。
【0043】
PSD136は、サーボ光の受光位置に応じた信号を出力する。PSD136は、パンマグネットフレーム133に配された回路基板136aに装着されている。高速フォトダイオード137は、受光光量に応じた信号を出力する。高速フォトダイオード137は、パンマグネットフレーム133に配された回路基板137aに装着されている。高速フォトダイオード137は、PSD136の横に並ぶように配置されている。
【0044】
走査用レーザ光源201と半導体レーザ135は、それぞれの光軸が互いに平行となるように配置されている。鉛直方向における走査用レーザ光源201と半導体レーザ135の位置は同じである。
【0045】
ミラーアクチュエータ100は、スキャンミラー150が中立位置にあるときに、走査用レーザ光がスキャンミラー150のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射し、サーボ光がサーボミラー124のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。なお、「中立位置」とは、スキャンミラー150とサーボミラー124のミラー面が鉛直方向に対し平行で、且つ、走査用レーザ光およびサーボ光がミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するときのスキャンミラー150とサーボミラー124の位置をいう。
【0046】
中立位置において、PSD136の受光面は、サーボミラー124のミラー面に対して、水平方向に45度傾いている。したがって、中立位置において、サーボ光はPSD136の受光面に垂直に入射する。
【0047】
また、中立位置において、走査用レーザ光は、スキャンミラー150のミラー面の中心s(図3(b)参照)に入射し、サーボ光はサーボミラー124のミラー面の中心s’(図3(b)参照)に入射する。したがって、中立位置において、スキャンミラー150のミラー面に対する走査用レーザ光の入射位置(中心s)とサーボミラー124のミラー面に対するサーボ光の入射位置(中心s’)が、これら2つのミラー面に垂直な方向に並ぶ。
【0048】
ミラーアクチュエータ100によってスキャンミラー150が駆動されると、走査用レーザ光が目標領域内においてスキャンされる。このとき、同時に、支軸122を軸として、スキャンミラー150と対称に配置されたサーボミラー124によって、サーボ光がPSD136の受光面上を走査する。
【0049】
図5(b)は、サーボミラー124の回動位置とサーボ光の光路の関係およびスキャンミラー150の回動位置と走査レーザ光の光路の関係を模式的に示す図である。なお、同図(b)では、便宜上、同図(a)のスキャンミラー150、走査用レーザ光源201、サーボミラー124、半導体レーザ135、PSD136のみが図示されている。
【0050】
図5(b)を参照して、サーボ光は、サーボミラー124によって反射され、PSD136に受光される。また、走査用レーザ光は、スキャンミラー150によって反射され、目標領域に照射される。ここで、スキャンミラー150とサーボミラー124が破線の位置から矢印のように回動すると、走査用レーザ光とサーボ光の光路が図中の点線から実線のように変化し、走査用レーザ光の進行方向とPSD136上におけるサーボ光の受光位置が変化する。これにより、PSD136にて検出されるサーボ光の受光位置によって、スキャンミラー150の回動位置を検出することができ、また、走査用レーザ光が目標領域内においてスキャンされる。
【0051】
ここで、支軸111、122を軸とするスキャンミラー150の回動位置とサーボミラー124の回動位置は一対一に対応する。したがって、目標領域における走査用レーザ光の走査位置とPSD136上におけるサーボ光の照射位置も、一対一に対応する。よって、PSD136からの信号をもとに目標領域における走査用レーザ光の走査位置を容易に検出することができる。
【0052】
図6(a)は、PSD136の構成を示す図(側断面図)、図6(b)はPSD136の受光面を示す図である。
【0053】
図6(a)を参照して、PSD136は、N型高抵抗シリコン基板の表面に、受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層を形成した構造となっている。抵抗層表面には、同図(b)の
横方向における光電流を出力するための電極X1、X2と、縦方向における光電流を出力するための電極Y1、Y2(同図(a)では図示省略)が形成されている。また、裏面側には共通電極が形成されている。
【0054】
受光面にレーザ光が照射されると、照射位置に光量に比例した電荷が発生する。この電荷は光電流として抵抗層に到達し、各電極までの距離に逆比例して分割されて、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される。ここで、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流は、レーザ光の照射位置から各電極までの距離に逆比例して分割された大きさを有している。よって、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流値をもとに、受光面上における光の照射位置を検出することができる。
【0055】
たとえば、図7の位置Pにサーボ光が照射されたとする。この場合、受光面のセンターを基準点とする位置Pの座標(x,y)は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流量をそれぞれIx1、Ix2、Iy1、Iy2、X方向およびY方向における電極間の距離をLx、Lyとすると、たとえば、以下の式によって算出される。
【0056】
【数1】
【0057】
図8は、スキャンミラー150の駆動状態およびサーボミラー124の駆動状態と目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD136上におけるサーボ光の軌道との関係を模式的に示す図である。図8(b)、(c)は、スキャンミラー150の駆動状態およびサーボミラー124の駆動状態を示し、図8(a)、(d)は、それぞれ、目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD136上におけるサーボ光の軌道を示す。なお、本実施の形態において、走査用レーザ光の走査は、目標領域において水平方向に伸びた3つの走査軌道に沿って行われる。以下では、支軸111を軸とするスキャンミラー150の回動方向をTilt方向といい、支軸122を軸とするスキャンミラー150の回動方向をPan方向という。
【0058】
各図の中段のラインは、スキャンミラー150を、中立位置から水平方向にのみ回動させた場合を示している。また、図中の破線は、Pan方向のスキャンミラー150の回動位置が中立位置と同じ位置にある場合を示している。各図の中段のラインよりも上の領域では、スキャンミラー150が水平方向よりも上を向いており、中段のラインよりも下の領域では、スキャンミラー150が水平方向よりも下を向いている。
【0059】
目標領域における走査用レーザ光の軌道(以下、「走査軌道」という)が曲線状になると、目標領域内における障害物の検出精度が低下する惧れがある。このため、目標領域における走査軌道La1〜La3は、同図(a)に示すように、水平方向に直線状(線形)になるのが望ましい。
【0060】
このように走査軌道La1〜La3を水平方向に直線状とするには、スキャンミラー150を、同図(b)に示すように駆動する必要がある。すなわち、Pan方向の回動に伴
い、スキャンミラー150を、Tilt方向にも駆動する必要がある。
【0061】
本実施の形態では、スキャンミラー150とサーボミラー124が支軸111、122を挟むように配置されているため、スキャンミラー150が同図(b)のLb1のように駆動されると、サーボミラー124は同図(c)のLc1のように駆動される。また、スキャンミラー150が同図(b)のLb3のように駆動されると、サーボミラー124は同図(c)のLc3のように駆動される。
【0062】
本実施の形態では、スキャンミラー150およびサーボミラー124と、半導体レーザ135およびPSD136と、レーザ光源201とが、上記のように配置されているため、目標領域において走査用レーザ光を同図(a)のように水平に走査させると、PSD136の受光面上におけるサーボ光の軌道(以下、「照射軌道」という)は、同図(d)中のLd1〜Ld3のように、略直線状(線形)になる。
【0063】
したがって、PSD136上におけるサーボ光の照射位置が、同図(d)に示す照射軌道Ld1〜Ld3を追従するように、ミラーアクチュエータ100を制御することで、目標領域における走査軌道La1〜La3は、同図(a)に示す如く水平方向に直線状(線形)となる。
【0064】
なお、サーボ光の照射軌道が直線状(線形)となるための条件は、以下のとおりである。
【0065】
(1)スキャンミラー150のミラー面とサーボミラー124のミラー面が、支軸111、122に対して対称に配置されている。
【0066】
(2)スキャンミラー150のミラー面に対する走査用レーザ光の入射方向とサーボミラー124のミラー面に対するサーボ光の入射方向が、互いに平行である。
【0067】
(3)ミラーアクチュエータ100が中立位置にあるとき、スキャンミラー150のミラー面に対する走査用レーザ光の入射位置とサーボミラー124のミラー面に対するサーボ光の入射位置が、これら2つのミラー面に垂直な方向に並ぶ。
【0068】
(4)ミラーアクチュエータ100が中立位置にあるとき、PSD136の受光面に対してサーボ光が垂直に入射する。
【0069】
本実施の形態では、上記(1)以外の条件が全て満たされている。また、上記(1)の条件についても、スキャンミラー150のミラー面とサーボミラー124のミラー面が、支軸122に対して対称に配置される点は満たされている。本実施の形態において、唯一満たされない条件は、スキャンミラー150のミラー面とサーボミラー124のミラー面が、支軸111に対して対称でないことである。しかしながら、支軸122に対する支軸111のズレ量は小さいため、かかる非対称性の程度は小さい。また、走査用レーザ光が目標領域を走査する際、支軸111を軸とするスキャンミラー150とサーボミラー124の回転量は小さい。このため、本実施の形態のように、スキャンミラー150のミラー面とサーボミラー124のミラー面が支軸111に対して対称でなくても、サーボ光の照射軌道は直線状(線形)に極めて近いものとなる。
【0070】
なお、支軸111の中心に上下に貫通する孔を開け、この孔に支軸122を通すように、上記ミラーアクチュエータ100の構成を変更すると、スキャンミラー150のミラー面とサーボミラー124のミラー面を支軸111に対して対称に配置することが可能となる。この変更例によれば、上記(1)〜(4)の条件が全て満たされるようになり、サー
ボ光の照射軌道を直線状(線形)とすることができる。
【0071】
ところで、本実施の形態では、図5(a)に示すように、PSD136が、走査用レーザ光源201に対面するよう配置されているため、走査用レーザ光の一部が迷光となってPSD136に入射することが起こり得る。走査用レーザ光源201の発光強度(数10W程度)は、PSD136に入射する際のサーボ光の強度(数10μW程度)に比べて顕著に大きいため、このように迷光がPSD136に入射すると、PSD136から出力される信号が劣化する。また、このように高パワーの迷光がPSD136に入射すると、PSD136から高レベルの電流信号が出力され、この電流信号が後段側の回路に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0072】
本実施の形態では、かかる迷光の影響を抑えるため、PSD136に隣接した位置に、高速フォトダイオード137が配されている。高速フォトダイオード137を用いた迷光の影響を抑制するための構成については、図9および図10を参照して説明する。
【0073】
図9は、本実施の形態に係るビーム照射装置の回路構成を示す図である。なお、同図には、便宜上、図5(a)に示す走査用レーザ光とサーボ光のための光学系1が、その主要な構成とともに示されている。
【0074】
図示の如く、ビーム照射装置は、ノイズキャンセル回路2と、I/V変換回路3〜7と、位置信号生成回路8と、マイコン12と、走査レーザ駆動回路13と、サーボレーザ駆動回路14と、アクチュエータ駆動回路15とを備えている。
【0075】
半導体レーザ135から出射されたサーボ光は、上記の如く、サーボミラー124によって反射された後、PSD136の受光面に入射される。これにより、サーボ光の照射位置に応じた電流信号Ix1、Ix2、Iy1、Iy2(図7中の電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流信号)がPSD136から出力され、それぞれ、ノイズキャンセル回路2に入力される。
【0076】
走査用レーザ光源201から出射された走査用レーザ光にかかる迷光が、高速フォトダイオード137に入射されると、迷光の光量に応じた電流信号が高速フォトダイオード137から出力され、I/V変換回路3に入力される。
【0077】
I/V変換回路3は、アナログ回路からなっており、高速フォトダイオード137から出力される電流信号を電圧信号(以下、「モニタ電圧信号」という)に変換し、ノイズキャンセル回路2に出力する。
【0078】
ノイズキャンセル回路2は、I/V変換回路3から出力されるモニタ電圧信号を受信する。ノイズキャンセル回路2は、受信したモニタ電圧信号が、一定の閾値を超えると、PSD136から出力される電流信号を遮断し、一定の閾値を超えない場合には、PSD136から出力される電流信号をI/V変換回路4〜7へ出力する。
【0079】
I/V変換回路4〜7は、アナログ回路からなっており、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流信号Ix1、Ix2、Iy1、Iy2を電圧信号(以下、「位置電圧信号」という)に変換し、位置信号生成回路8に出力する。
【0080】
位置信号生成回路8は、アナログ回路からなっており、I/V変換回路4〜7から出力される位置電圧信号を図7で参照して説明した式(1)、(2)に基づき、X軸およびY軸方向の照射位置を示す信号を生成する。かかる照射位置信号は、A/D変換回路10、11に出力される。
【0081】
A/D変換回路10、11は、位置信号生成回路8から出力される照射位置信号をデジタル信号に変換し、マイコン12に出力する。
【0082】
マイコン12は、位置信号生成回路8から出力される信号に基づき、目標領域における走査用レーザ光の走査位置を検出し、ミラーアクチュエータ100の駆動制御や、走査用レーザ光源201と半導体レーザ135の駆動制御等を実行する。
【0083】
すなわち、マイコン12は、走査位置が所定の位置に到達したタイミングで、パルス駆動信号を、走査レーザ駆動回路13に出力する。これにより、走査用レーザ光源201がパルス発光され、目標領域にレーザ光が照射される。
【0084】
また、マイコン12は、図8(a)に示す走査軌道La1〜La3を走査用レーザ光が追従するよう、アクチュエータ駆動回路15に、サーボ信号(Pan方向およびTilt方向の駆動信号)を出力する。具体的には、マイコン12は、図8(d)に示す照射軌道Ld1〜Ld3を走査用レーザ光が追従するよう、アクチュエータ駆動回路15に、サーボ信号(Pan方向およびTilt方向の駆動信号)を出力する。これを受けてアクチュエータ駆動回路15は、ミラーアクチュエータ100を駆動し、これにより、走査用レーザ光が所期の軌道に追従するよう目標領域を走査する。さらに、マイコン12は、サーボレーザ駆動回路14に制御信号を出力する。これにより、半導体レーザ135が、一定パワーレベルにて連続的に発光される。
【0085】
本実施の形態では、一定周期T毎に、ミラーアクチュエータ100の制御が行われる。マイコン12には、各制御タイミングにおけるPSD136上の理想の照射位置(以下、「目標照射位置」という)が保持されている。かかる目標照射位置は、走査用レーザ光が適正な走査軌道上に沿って水平方向に走査されるときのサーボ光の照射軌道(図8(d)参照)上に位置している。マイコン12は、かかる照射軌道に沿ってサーボ光の照射位置が進むよう、ミラーアクチュエータ100を駆動する。
【0086】
図9の構成において、ノイズキャンセル回路2は、走査用レーザ光が迷光となってPSD136に入射したときの悪影響を抑制するために配されている。上述のように、高パワーの走査用レーザ光が迷光となってPSD136に入射すると、高レベルの電流信号がPSD136から出力される。図9の構成において、ノイズキャンセル回路2が配されていないと、この電流信号は、I/V変換回路4〜7に直接入力される。ところが、I/V変換回路4〜7はアナログ回路であるため、このように迷光による高レベルの電流信号がI/V変換回路4〜7に入力されると、I/V変換回路4〜7において不要輻射や反射等が起こり、I/V変換回路4〜7の動作が不安定になる惧れがある。また、図9の構成では、位置信号生成回路8もアナログ回路からなっているため、迷光による高レベルの電流信号による影響は、位置信号生成回路8にも波及する。このため、位置信号生成回路8の動作が、迷光による高レベルの電流信号によって不安定になる惧れがある。
【0087】
そこで、図9の構成では、I/V変換回路4〜7の前段にノイズキャンセル回路2を配置し、迷光による高レベルの電流信号がI/V変換回路4〜7に入力されないようになっている。
【0088】
図10は、ノイズキャンセル回路2の回路構成を示す図である。
【0089】
図示の如く、ノイズキャンセル回路2は、比較回路21と、スイッチング回路22〜25とを備える。
【0090】
スイッチング回路22は、それぞれ端子22a、22bを備えている。端子22aは、PSD136からI/V変換回路4〜7への出力ラインに接続されており、端子22bは、GND(グランド)に接続されている。また、他のスイッチング回路23〜25についてもスイッチング回路22と同様に構成されている。
【0091】
比較回路21は、I/V変換回路3によって変換されたモニタ電圧信号と閾値Vshとを比較し、モニタ電圧信号が閾値Vshを超えるときに、エラー信号をスイッチング回路22〜25へ出力する。
【0092】
スイッチング回路22〜25は、比較回路21からエラー信号を受信すると、端子22aと端子22bを導通させ、PSD136から入力された電流信号をGND(グランド)へと導く。こうして、I/V変換回路4〜7に対する電流信号の供給が一時的に遮断される。
【0093】
図11は、迷光受光時におけるノイズキャンセル回路2の動作を示すフローチャートである。
【0094】
高速フォトダイオード137が迷光を受光すると(S11:YES)、I/V変換回路3によって変換されたモニタ電圧信号が取得され(S12)、取得されたモニタ電圧信号が閾値Vshを超えたかが、比較回路21により判別される(S13)。モニタ電圧信号が閾値Vshを超えると(S13:YES)、比較回路21からエラー信号が出力され、スイッチング回路22〜25により、一時的に、I/V変換回路4〜7に対する電流信号の供給が遮断される(S14)。
【0095】
これにより、PSD136に迷光等が入射された場合においても、PSD136に隣接した位置に配置された高速フォトダイオード137が迷光を検知し、ノイズキャンセル回路2によって、迷光による高レベルの電流信号を遮断することができる。したがって、I/V変換回路4〜7および位置信号生成回路8における迷光による悪影響(不要輻射や反射等)を抑えることができる。なお、迷光が、走査用レーザ光源201以外の原因によるものであっても、同様に、迷光による悪影響を回避できる。
【0096】
図12は、ミラーアクチュエータ100の制御方法を説明する図である。図中、Pn〜Pn+3は、それぞれ、制御タイミングtn〜tn+3における目標照射位置であり、Qn〜Qn+3は、それぞれ、制御タイミングtn〜tn+3におけるサーボ光の実際の照射位置である。
【0097】
ある制御タイミングtnにおけるサーボ光の実際の照射位置Qnが、目標照射位置PnからX軸方向にXn、Y軸方向にYnずれていると、マイコン12は、ずれ量Xn、Ynに基づくPID制御により、次の制御タイミングにおいて照射位置Qn+1を目標照射位置Pn+1により接近させるためのPan方向およびTilt方向の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。同様に、制御タイミングtn+1において、マイコン12は、ずれ量Xn+1、Yn+1に基づくPID制御により、Pan方向およびTilt方向の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。
【0098】
制御タイミングtn+2は、走査用レーザ光の出射タイミングtsと重なっている。このとき、PSD136が走査用レーザ光の迷光を受光すると、上記のように、ノイズキャンセル回路2により、PSD136からの電流信号が遮断される。この場合、位置信号生成回路8は、I/V変換回路4〜6からそれぞれグランドレベルの位置電圧信号を受けるため、原点位置(スキャンミラー150の中立位置)の照射位置信号を生成する。マイコ
ン12は、原点位置Pと目標照射位置Pn+2のずれ量Xmに基づくPID制御により、Pan方向の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。これにより、スキャンミラー150は、実際の照射位置Qn+2からのずれ量Xn+2、Yn+2とは異なった位置へ補正するよう動作するが、走査用レーザ光のパルス発光期間(数10nsec程度)は、極めて微小であり、また、PID制御によって制御タイミングtn+2より前の制御タイミングにおける補正値が引き継がれるため、サーボ信号が一時的に遮断されることによる影響は軽微である。
【0099】
なお、走査用レーザ光の出射タイミングtsと制御タイミングtn+2が重なる場合に、マイコン12にて、位置信号生成回路8から入力されたX成分とY成分の照射位置信号を、直前のタイミングtn+1における照射位置信号で補間してもよい。
【0100】
これにより、走査用レーザ光の発光タイミング時に、PSD136が迷光を受光した場合においても、走査用レーザ光を目標領域において適正に走査させることができる。
【0101】
このように、マイコン12は、制御タイミングごとに、Pan方向およびTilt方向の制御信号を生成して、アクチュエータ駆動回路15に出力する。アクチュエータ駆動回路15は、入力されたPan方向およびTilt方向の制御信号に応じて、スキャンミラー150を、Pan方向およびTilt方向に駆動する。これにより、スキャンミラー150は、図8(b)のように駆動され、サーボミラー124は、図8(c)のように駆動される。
【0102】
以上、本実施の形態によれば、サーボミラー124とスキャンミラー150が軸対称に配置されるため、バランサ等の部材を用意せずに、重量バランスよくミラーアクチュエータ100を構成することができる。したがって、スキャンミラー150とサーボミラー124の回動を安定的に行うことができ、かつ、ビーム照射装置の小型化を図ることができる。
【0103】
また、本実施の形態によれば、上記のように、走査用レーザ光源201と半導体レーザ135の光軸が互いに平行に対向して配置され、スキャンミラー150とサーボミラー124が支軸に対して対称に配置され、中立位置において走査用レーザ光とサーボ光がそれぞれスキャンミラー150とサーボミラー124の中心に入射し、さらに、中立位置においてサーボ光がPSD136に垂直に入射するため、PSD136上におけるサーボ光の照射軌道Ld1〜Ld3を直線状(線形)とすることができる。これにより、照射軌道Ld1〜Ld3を規定するためにマイコン12に保持されるべき目標照射位置の数を少なくすることができ、目標照射位置を規定するテーブルを簡素なものにすることができる。また、目標照射位置と実際の照射位置との間の差分の算出およびそれに基づく制御処理の頻度を削減でき、マイコン12の処理負担を軽減することができる。
【0104】
なお、マイコン12に目標照射位置をテーブル値として保持せずに、各制御タイミングにおける目標照射位置Pnを、マイコン12により、演算により求めてもよい。本実施の形態では、サーボ光の照射軌道が直線状(線形)となるため、各制御タイミングにおける目標照射位置Pnは簡単な演算により求めることができる。
【0105】
また、本実施の形態によれば、PSD136が走査用レーザ光源201による迷光等を受光した場合、PSD136に隣接した位置に配置された高速フォトダイオード137にて、迷光が検出される。高速フォトダイオード137にて、迷光が検出された場合、迷光の光量に応じたモニタ電圧信号がノイズキャンセル回路2に出力され、モニタ電圧信号が閾値Vshを超える場合に、ノイズキャンセル回路2によって、迷光による高レベルの電流信号が一時的に遮断される。さらに、電流信号が遮断された場合においても、マイコン
12によってPID制御が実施されるため、スキャンミラー150が大きく振られることはない。よって、走査用レーザ光源がサーボ光の光検出器に対面する配置にあっても、I/V変換回路4〜7、位置信号生成回路8に対する迷光の影響を回避しながら、走査用レーザ光を目標領域において適正に走査させることができる。
【0106】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0107】
たとえば、上記実施の形態では、半導体レーザ135とPSD136は、サーボ光が、水平方向において、45度の角度でサーボミラー124に入射するように配置したが、鉛直方向において、45度の角度サーボミラー124に入射するように配置してもよい。
【0108】
図13(a)は、サーボミラー124に対し、サーボ光が鉛直方向において45度の角度でサーボミラー124に入射されるよう、半導体レーザ135と、PSD136を配置した場合のマグネットユニット130の斜視図である。
【0109】
図13(a)に示す如く、半導体レーザ135は、パンマグネットフレーム133の下板部133dに形成された孔に嵌め込まれる。PSD136と、高速フォトダイオード137は、上板部133cに形成された凹部に対して装着される。上板部133cは、サーボミラー124のミラー面に対し、鉛直方向に45度の角度で傾いている。同様に下板部133dは、サーボミラー124のミラー面に対し、鉛直方向に45度の角度で傾いている。
【0110】
図13(b)は、図13(a)の構成におけるサーボミラー124と半導体レーザ135とPSD136、高速フォトダイオード137の位置関係を示す図である。
【0111】
図13(b)に示す如く、半導体レーザ135は、中立位置において、サーボ光がスキャンミラー150の背面のミラー面に対し鉛直方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。また、PSD136が、中立位置において、法線が、スキャンミラー150の背面のミラー面に対し鉛直方向において45度傾くよう配置されている。中立位置において、半導体レーザ135から出射されるサーボ光は、サーボミラー124のミラー面によって反射され、PSD136に垂直に入射する。また、走査用レーザ光源201は、光軸が半導体レーザ135の光軸に平行となるように配置される。したがって、サーボ光は、スキャンミラー150のミラー面に対し鉛直方向において45度の入射角で入射する。上記実施の形態と同様、走査用レーザ光とサーボ光は、中立位置において、それぞれスキャンミラー150とサーボミラー124の中心に入射する。なお、サーボミラー124とスキャンミラー150の位置関係は、上記実施の形態と同様である。
【0112】
この変更例では、中立位置において、スキャンミラー150で反射された走査用レーザ光が水平に進むよう、支軸122がベース500上面に対して45度傾くように、ミラーアクチュエータ100が配置される。あるいは、上記実施の形態と同様にミラーアクチュエータ100が配置される場合は、ベース500が鉛直方向に45度傾くように設置される。
【0113】
この変更例においても、上記実施の形態同様、目標領域において走査用レーザ光を水平に走査されたときのサーボ光の照射軌道が線形性を有する。したがって、上記実施の形態と同様の効果が得ることができる。
【0114】
また、上記実施の形態では、サーボ光の反射に支軸122と軸対称に配置したサーボミラー124を利用したが、スキャンミラー150の背面をミラー面とし、このミラー面を
利用するようにしてもよい。
【0115】
図14(a)は、サーボ光の反射にサーボミラー124を利用せず、スキャンミラー150の背面のミラー面を利用する場合のマグネットユニット130の斜視図である。
【0116】
図14(a)に示す如く、マグネットユニット130は、チルトマグネットフレーム131の背面からスキャンミラー150の背面付近まで突出した2つの腕部135b、136bを有する。図4(b)のようにミラーアクチュエータ100が組み立てられると、腕部135b、136bに延設された鍔状の壁部135c、136cが、スキャンミラー150の背面に対面する。中立位置において、壁部135cは、スキャンミラー150の背面に対し、水平方向に45度の角度で傾いている。同様に、中立位置において、壁部136cは、スキャンミラー150の背面に対し、水平方向に45度の角度で傾いている。また、腕部135b、136bは、チルトマグネットフレーム131に2つのネジ135d、136dにて装着されている。半導体レーザ135は、壁部135cに装着され、PSD136と、高速フォトダイオード137は、壁部136cに装着される。
【0117】
図14(b)は、図14(a)の構成におけるスキャンミラー150と半導体レーザ135とPSD136、高速フォトダイオード137の位置関係を示す図である。
【0118】
図14(b)に示す如く、半導体レーザ135は、中立位置において、スキャンミラー150の背面のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。また、PSD136は、中立位置において、その法線がスキャンミラー150の背面のミラー面に対し水平方向において45度傾くよう配置されている。中立位置において、半導体レーザ135から出射されるサーボ光は、スキャンミラー150の背面によって反射され、PSD136に垂直に入射する。なお、走査用レーザ光源201は、上記実施の形態同様、スキャンミラー150のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。走査用レーザ光源201の出射方向は半導体レーザ135の出射方向と逆である。上記実施の形態と同様、走査用レーザ光とサーボ光は、中立位置において、それぞれスキャンミラー150とサーボミラー124の中心に入射する。また、サーボミラー124とスキャンミラー150の位置関係についても、上記実施の形態と同様である。
【0119】
この構成によっても、上記実施の形態と同様、目標領域において走査用レーザ光を水平に走査されたときのサーボ光の照射軌道が線形性を有する。したがって、上記実施の形態と同様の効果が得られる。また、図14の構成例では、図3の構成に比べ、サーボミラー124を削減できるため、部品点数の減少が見込まれる。
【0120】
また、高速フォトダイオード137からの信号に基づいて迷光がPSD136に入射した期間を把握し、この期間に制御タイミングが到来すると、前回の制御タイミングにおける照射位置信号を用いてミラーアクチュエータ100の制御を行うようにしてもよい。
【0121】
図15は、この場合の回路構成である。この構成では、上記実施の形態に比べて、A/D変換回路16が追加されている。A/D変換回路16は、I/V変換回路3からの電圧信号をデジタル信号(デジタルモニタ信号)に変換する。
【0122】
図16は、マイコン12における補間処理を示すフローチャートである。
【0123】
マイコン12は、制御タイミングTkになると(S21)、A/D変換回路16から入力されたデジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えたかを判定する(S22)。デジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えると(S22:YES)、マイコン12は、照射位置信
号X、Yを一回前の制御タイミングTk−1における照射位置信号で補間する(S23)。これにより、マイコン12は、当該制御タイミングTkにおけるサーボ信号(Pan方向およびTilt方向の制御信号)を、直前の制御タイミングTk−1における照射位置信号に基づきPID制御により生成し、生成したサーボ信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。
【0124】
なお、デジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えない場合(S22:NO)、マイコン12は、A/D変換回路19、11から入力される照射位置信号X、Yを取得する(S24)。そして、取得した照射位置信号に基づき、PID制御により、サーボ信号を生成し、生成したサーボ信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。
【0125】
ステップS23にて補間された照射位置信号またはステップS24にて取得された照射位置信号は、当該制御タイミングTkにおける照射位置信号として、マイコン12の内蔵メモリに保持される(S25)。保持された照射位置信号は、次回の制御タイミングTk+1において、処理がステップS23に進んだときに、一回前の制御タイミングの照射位置信号として用いられる。
【0126】
この構成例によれば、上記実施の形態と同様、I/V変換回路4〜7に対する迷光の影響を回避しながら、走査用レーザ光を目標領域において適正に走査させることができる。さらに、この構成例では、高速フォトダイオード137の受光量が大きくなって、ノイズキャンセル回路2によってグランドレベルの信号がI/V変換回路4〜7に供給されたような場合にも、一回前の制御タイミングにおける照射位置信号を用いて制御がおこなわれるため、安定した制御動作を実現することができる。
【0127】
また、この構成例では、走査レーザ光の発光タイミングに拘わらず、高速フォトダイオード137からの出力信号が大きくなったことによって補間が行われるため、走査用レーザ光以外が原因の迷光によっても、照射位置信号の補間を行うことができる。また、
なお、この構成例では、マイコン12とは別に、アナログの位置信号生成回路8が配置されたが、位置信号生成回路8を省略し、マイコン12が、上記処理の他、照射位置信号の生成を行うようにしてもよい。この場合、I/V変換回路4〜7の後段にそれぞれA/D変換回路が配置され、これらA/D変換回路からの出力値(X1、X2、Y1、Y2出力のデジタル値)が、マイコン12に入力される。また、図16のフローチャートにおいて、ステップS24が、照射位置信号X、Yの生成処理に変更される。すなわち、デジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えない場合(S22:NO)、マイコン12は、A/D変換回路からの出力値(X1、X2、Y1、Y2出力のデジタル値)から照射位置信号X、Yを生成し(S24)、生成した照射位置信号に基づき、PID制御により、サーボ信号を生成する。
【0128】
なお、図9の構成においても、マイコン12が照射位置信号の生成を行うように変更可能である。また、アナログ回路に対する迷光の影響が小さい場合は、ノイズキャンセル回路2を省略しても良い。
【0129】
また、上記実施の形態では、サーボ光の光源として半導体レーザ135を用いたが、これに替えて、LED(Light Emitting Diode)を用いることもできる。
【0130】
また、上記実施の形態では、迷光の光量の検出に高速フォトダイオード137を用いたが、これに替えて、フォトトランジスタを用いることもできる。
【0131】
なお、上記実施の形態では、サーボ光を受光する光検出器としてPSD136を用いたが、これに替えて、4分割センサを用いることもできる。
【0132】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0133】
2 … ノイズキャンセル回路(遮断部)
12 … マイコン(制御部)
100 … ミラーアクチュエータ(アクチュエータ)
124 … サーボミラー(第2反射面、第2ミラー)
135 … 半導体レーザ(サーボ光源)
136 … PSD(第1光検出器)
137 … 高速フォトダイオード(第2光検出器)
150 … スキャンミラー(第1反射面、第1ミラー)
201 … 走査用レーザ光源(レーザ光源)
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域にレーザ光を照射するビーム照射装置に関し、特に、目標領域にレーザ光を照射したときの反射光をもとに、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出する、いわゆるレーザレーダに搭載されるビーム照射装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、走行時の安全性を高めるために、走行方向前方にレーザ光を照射し、その反射光の状態から、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出するレーザレーダが、家庭用乗用車等に搭載されている。一般に、レーザレーダは、レーザ光を目標領域内でスキャンさせ、各スキャン位置における反射光の有無から、各スキャン位置における障害物の有無を検出する。さらに、各スキャン位置におけるレーザ光の照射タイミングから反射光の受光タイミングまでの所要時間をもとに、そのスキャン位置における障害物までの距離が検出される。
【0003】
目標領域においてレーザ光をスキャンさせるための構成として、ミラーを2軸駆動する構成を用いることができる(特許文献1)。このスキャン機構では、レーザ光を水平方向斜めからミラーに入射させる。ミラーを水平方向と鉛直方向に2軸駆動することにより、レーザ光が目標領域を走査する。
【0004】
ミラーの駆動制御は、たとえば、サーボ光を、ミラーと一体駆動する部材を介してPSD(PositionSensitive Detector)等の光検出器で受光することによって行われる。この場合、予め設定された理想の受光位置とサーボ光の実際の受光位置とが比較され、両者の差分に応じて、ミラーが2軸駆動される。
【0005】
サーボ光と光検出器とを用いた検出系として、たとえば、サーボ光をミラーの裏面に照射する構成を用いることができる(特許文献2)。この構成では、ミラーの裏面が反射面とされる。この反射面で反射されたサーボ光が光検出器により受光され、サーボ光の受光位置に基づきミラーの回転位置が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−175856号公報
【特許文献2】特開2006−224142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レーザ光を目標領域において水平に走査させる場合、ミラーは、水平方向のみならず鉛直方向にも回動される。このため、光検出器上におけるサーボ光の理想の受光位置の軌道(理想軌道)は、非線形な形状になり易い。このように理想軌道が非線形になると、理想軌道を規定するために、多数のテーブル値をメモリに保持しておく必要がある。また、多数のテーブル値に基づいて、サーボ光を理想の受光位置に近付けるよう制御するためには、複雑かつ頻繁な演算処理が必要となり、処理負担が大きくなってしまう。
【0008】
これに対し、上記のようにサーボ光をミラーの裏面に照射する構成では、サーボ光用の光源と光検出器の配置位置を調整することにより、サーボ光の理想軌道を線形に近づけ易くなる。しかしながら、この構成では、レーザ光を出射するレーザ光源に対してミラーの
反対側にサーボ光用の光検出器が配置されるため、レーザ光の一部が迷光となってサーボ光用の光検出器に入射することが起こり得る。車載用のビーム照射装置では、目標領域に照射されるレーザ光の強度はサーボ光に比べて顕著に大きい。このため、このようにレーザ光の一部が光検出器に入射すると、サーボ光によるミラーの位置検出を適正に行えなくなる惧れがある。
【0009】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、PSD等の光検出器に迷光が入射し易いレイアウトにおいても、レーザ光の走査制御に対する迷光の影響を円滑に抑制することが可能なビーム照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主たる局面に係るビーム照射装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、サーボ光を出射するサーボ光源と、前記レーザ光が入射する平面状の第1反射面と当該第1反射面に対して平行で且つ反対側を向き前記サーボ光が入射する第2反射面とを有するとともに、前記第1反射面と前記第2反射面を互いに垂直な第1軸と第2軸の周りに一体的に回転させるアクチュエータと、前記第2反射面により反射された前記サーボ光を受光して受光位置に応じた第1信号を出力する第1光検出器と、前記第1光検出器に隣接して配置されるとともに受光量に応じた第2信号を出力する第2光検出器と、前記第1信号に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記第2信号が所定の閾値を超えると、前記第1信号に基づく前記制御部による制御を中止する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、PSD等の光検出器に迷光が入射し易いレイアウトにおいても、レーザ光の走査制御に対する迷光の影響を円滑に抑制することが可能なビーム照射装置を提供することができる。
【0012】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係るミラーアクチュエータの分解斜視図を示す図である。
【図2】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図3】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図4】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図5】実施の形態に係るビーム照射装置の光学系を示す図である。
【図6】実施の形態に係るPSDの構成を示す図である。
【図7】実施の形態に係る位置検出信号の生成方法を説明する図である。
【図8】実施の形態に係るスキャンミラーの駆動状態およびサーボミラーの駆動状態と目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD上におけるサーボ光の軌道との関係を示す図である。
【図9】実施の形態に係るビーム照射装置の回路構成を示す図である。
【図10】実施の形態に係るノイズキャンセル回路の構成を示す図である。
【図11】実施の形態に係るノイズキャンセル回路の制御動作フローを示す図である。
【図12】実施の形態に係るミラーアクチュエータの制御方法を説明する図である。
【図13】実施の形態の変更例に係るミラーアクチュエータの構成を示す図である。
【図14】実施の形態の変更例に係るミラーアクチュエータの構成を示す図である。
【図15】実施の形態の変更例に係るビーム照射装置の回路構成を示す図である。
【図16】実施の形態の変更例変更例に係るノイズキャンセル回路の制御動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施の形態に係るミラーアクチュエータ100の分解斜視図である。
【0015】
ミラーアクチュエータ100は、チルトユニット110と、パンユニット120と、マグネットユニット130と、ヨークユニット140と、スキャンミラー150を備えている。
【0016】
チルトユニット110は、支軸111と、チルトフレーム112と、2つのチルトコイル113とを備えている。支軸111には、両端部近傍に2つの溝111aが形成されている。これら溝111aには、Eリング117a、117bが嵌め込まれる。
【0017】
チルトフレーム112には、左右に、チルトコイル113を装着するためのコイル装着部112aが形成されている。また、チルトフレーム112には、支軸111を嵌め込むための溝112bと、上下に並ぶ2つの孔112cが形成されている。
【0018】
支軸111は、両端に軸受け116a、116b、Eリング117a、117bおよびポリスライダーワッシャ118a、118bが取り付けられた状態で、チルトフレーム112に形成された溝112bに嵌め込まれ、接着固定される。さらに、チルトフレーム112の2つの孔112cに、それぞれ、上下から軸受け112dが嵌め込まれる。これにより、図2(a)に示すように、チルトユニット110の組み立てが完了する。なお、図2(a)には、支軸111に、軸受け116a、116bと、Eリング117a、117bと、ポリスライダーワッシャ118a、118bが装着された状態が示されている。
【0019】
完成したチルトユニット110には、後述の如くして、パンユニット120が装着される。その後、チルトユニット110は、軸受け116a、116bと、Eリング117a、117bと、ポリスライダーワッシャ118a、118bと、軸固定部材142を用いて、後述の如く、ヨーク141に取り付けられる。
【0020】
図1に戻り、パンユニット120は、パンフレーム121と、支軸122と、パンコイル123と、サーボミラー124を備えている。パンフレーム121には、凹部121aを挟んで上板部121bと下板部121cが形成されている。これら上板部121bと下板部121cには、支軸122を通すための孔121dが上下に並ぶように形成されている。また、上板部121bと下板部121cの前面には、スキャンミラー150を嵌め込むための段部121eが形成されている。
【0021】
なお、パンフレーム121の背面には、パンコイル123を装着するためのコイル装着部(図示せず)と、サーボミラー装着部121f(図3(b)参照)が形成されている。
【0022】
マグネットユニット130は、チルトマグネットフレーム131と、8つのチルトマグネット132と、パンマグネットフレーム133と、2つのパンマグネット134と、半導体レーザ135と、PSD(Position Sensitive Detector)136と、高速フォトダイオード137を備えている。
【0023】
チルトマグネットフレーム131は、前側に凹部131aを有する形状となっている。チルトマグネットフレーム131の上板部131bには、前後方向に、2つの切り欠き131cが形成され、さらに、2つのネジ穴131dが形成されている。また、チルトマグネットフレーム131の背面には、2つのネジ穴131eと、パンマグネットフレーム133を嵌め込むための開口131fが形成されている。8つのチルトマグネット132は
、チルトマグネットフレーム131の左右の内側面に、上下2段に分けて装着されている。
【0024】
パンマグネットフレーム133の左右の両端には、2つの孔133aが形成されている。また、パンマグネットフレーム133の中央には、図示の如く、上下(Tilt)方向に傾くように上板部133cと下板部133dが形成されている。上板部133cと下板部133dには、半導体レーザ135の光が、PSD136に到達することができるよう、切り欠き133e、133f(図3(a)参照)が形成されている。2つのパンマグネット134は、パンマグネットフレーム133の内側面133g、133hに装着されている。内側面133g、133hは、前後方向に45度傾いている。したがって、これら内側面133g、133hに装着された2つのパンマグネット134も、前後(Pan)方向に45度傾くように配置される。
【0025】
半導体レーザ135は、パンマグネットフレーム133の一方の内側面133gに形成された孔に嵌め込まれる(図3(a)参照)。そして、パンマグネットフレーム133の他方の内側面133hに形成された凹部に、PSD136と、高速フォトダイオード137が装着される(図3(a)参照)。こうして半導体レーザ135、PSD136および高速フォトダイオード137が装着されたパンマグネットフレーム133が、チルトマグネットフレーム131の開口131fに収容される。この状態で、パンマグネットフレーム133の2つの孔133aを介して2つのネジ133bをチルトマグネットフレーム131の2つのネジ穴131eに螺着する。これにより、図3(a)に示すように、マグネットユニット130の組み立てが完了する。
【0026】
図1に戻り、ヨークユニット140は、ヨーク141と、軸固定部材142を備えている。ヨーク141は、磁性部材からなっている。ヨーク141には、左右に壁部141aが形成され、これら壁部141aの下端には、チルトユニット110の支軸111を装着するための凹部141bが形成されている。ヨーク141の上部には上下に貫通する2つのネジ穴141cが形成され、さらに、マグネットユニット130のネジ穴131dに対応する位置に、孔141dが形成されている。2つの壁部141aの内側面間の距離は、支軸111の2つの溝111a間の距離よりも大きくなっている。
【0027】
軸固定部材142は、可撓性を有する金属性の薄板部材である。軸固定部材142の前側には、板ばね部142a、142bが形成され、これら板ばね部142a、142bの下端には、それぞれ、チルトユニット110の軸受け116a、116bの脱落を規制するための受け部142c、142dが形成されている。また、軸固定部材142の上板部には、ヨーク141側の2つのネジ穴141cに対応する位置にそれぞれ孔142eが形成され、さらに、ヨーク141側の孔141dに対応する位置に孔142fが形成されている。
【0028】
ミラーアクチュエータ100の組み立て時には、上記の如くして、図2(a)に示すチルトユニット110、マグネットユニット130が組み立てられる。その後、チルトフレーム112がパンフレーム121の凹部121a内に収容される。このとき、2つの軸受け112dおよびポリスライダーワッシャ112eと、パンフレーム121の孔121dとが上下に並ぶように、パンフレーム121が位置づけられる。そして、その状態で、2つの軸受け112dとパンフレーム121の孔121dに、支軸122が通され、支軸122がパンフレーム121に接着剤により固定される。これにより、図2(b)に示す構成体が形成される。この状態で、パンフレーム121は、支軸122の周りに回動可能となり、また、支軸122に沿って上下に僅かに移動可能となる。
【0029】
こうしてパンユニット120が装着された後、パンフレーム121の段部121eにス
キャンミラー150が嵌め込まれて固定される。さらに、パンフレーム121のサーボミラー装着部121f(図3(b)参照)にサーボミラー124が嵌め込まれて固定される。
【0030】
図3(b)は、サーボミラー124とスキャンミラー150がパンフレーム121eに装着された状態を示す斜視図である。
【0031】
図3(b)に示す如く、サーボミラー124とスキャンミラー150は、支軸122の中心pからスキャンミラー150のミラー面までの距離l1と、サーボミラー124のミラー面までの距離l2が互いに等しい位置、すなわち、支軸122を軸として、対称の位置に配置される。さらに、サーボミラー124とスキャンミラー150は、それぞれのミラー面が支軸122に対して平行になるよう設置される。また、サーボミラー124とスキャンミラー150は、スキャンミラー150のミラー面の中心sとサーボミラー124のミラー面の中心s’を結ぶ直線が、支軸111の中心p’と支軸122の中心pを通るように配置され、かつ、それぞれのミラー面が支軸111と支軸122に対して平行となるように配置される。なお、図3(b)には、パンフレーム121に、サーボミラー124とスキャンミラー150のみが装着された状態が示されている。パンコイル123は、図3(b)に示すサーボミラー装着部121fの周りに巻回され固着される。
【0032】
その後、チルトユニット110の支軸111の両端に装着された軸受け116a、116bを、図1に示すヨーク141の凹部141bに嵌め込む。そして、この状態で、軸受け116a、116bが凹部141bから脱落しないように、軸固定部材142をヨーク141に装着する。すなわち、受け部142cが軸受け116aを下から支え、且つ、受け部142dが軸受け116bを前方から挟むようにして軸固定部材142をヨーク141に装着する。この状態で、軸固定部材142の2つの孔142eを介して2つのネジ143をヨーク141のネジ穴141cに螺着する。さらに、軸固定部材142の2つの孔142fとヨーク141の2つの孔141dを介して、チルトマグネットフレーム131の2つのネジ穴131dに累着する。これにより、図2(b)に示す構成体がヨークユニット140に装着される。
【0033】
こうして、図4(a)に示す構成体が完成する。この状態で、チルトフレーム112は、パンフレーム121と一体的に、支軸111の周りに回動可能となる。
【0034】
こうして組み立てられた図4(a)の構成体は、ヨーク141の2つの壁部141aが、それぞれ、マグネットユニット130側のチルトマグネットフレーム131の切り欠き131cに挿入されるようにして、マグネットユニット130に装着される。そして、この状態で、軸固定部材142の孔142fと、ヨーク141の孔141dを介して、ネジ144が、マグネットユニット130のネジ穴131dに螺着される。これにより、図4(a)に示す構成体が、マグネットユニット130に固着される。こうして、図4(b)に示すように、ミラーアクチュエータ100の組み立てが完了する。
【0035】
図4(b)に示す組み立て状態において、パンフレーム121が支軸122を軸として回動すると、これに伴ってスキャンミラー150が回動する。また、チルトフレーム112が支軸111を軸として回動すると、これに伴ってパンユニット120が回動し、パンユニット120と一体的にスキャンミラー150とサーボミラー124が回動する。このように、スキャンミラー150とサーボミラー124は、互いに直交する支軸111によって回動可能に支持され、チルトコイル113およびパンコイル123への通電によって、支軸111の周りに回動する。
【0036】
図4(b)に示すアセンブル状態において、8個のチルトマグネット132は、チルト
コイル113に電流を印加することにより、チルトフレーム112に支軸111を軸とする回動力が生じるよう、配置および極性が調整されている。したがって、チルトコイル113に電流を印加すると、チルトコイル113に生じる電磁駆動力によって、チルトフレーム112が、支軸111を軸として回動し、これに伴って、スキャンミラー150とサーボミラー124が回動する。
【0037】
また、図4(b)に示すアセンブル状態において、2個のパンマグネット134は、パンコイル123に電流を印加することにより、パンフレーム121に支軸122を軸とする回動力が生じるよう、配置および極性が調整されている。したがって、パンコイル123に電流を印加すると、パンコイル123に生じる電磁駆動力によって、パンフレーム121が、支軸122を軸として回動し、これに伴って、スキャンミラー150とサーボミラー124が回動する。
【0038】
なお、本実施の形態では、スキャンミラー150とサーボミラー124が、支軸122に対して軸対称に配置されるため、ミラーアクチュエータ100の重量バランスが良好となり、スキャンミラー150とサーボミラー124の回動を安定的に行うことができる。
【0039】
図5(a)は、ミラーアクチュエータ100が装着された状態の光学系の構成を示す一部上面図である。
【0040】
図5(a)において、500は、光学系を支持するベースである。ベース500は、上面が、水平面に平行となるよう設置される。ベース500の上面には、ミラーアクチュエータ100と、走査用レーザ光源201と、ビーム整形レンズ202とが配置されている。ミラーアクチュエータ100には、上記のように半導体レーザ135と、PSD136と、高速フォトダイオード137とが配置されている。なお、半導体レーザ135の出射口は、アパーチャとして機能する。半導体レーザ135から出射されるレーザ光は、この出射口によって、所定径の光束に絞られる。
【0041】
走査用レーザ光源201は、900nm程度の波長のレーザ光を出射する。走査用レーザ光源201は、ベース500の上面に配された回路基板201aに装着されている。また、走査用レーザ光源201は、光軸が水平方向と平行となるように配置されている。ビーム整形レンズ202は、走査用レーザ光源201から出射されたレーザ光(以下、「走査用レーザ光」という)を所定の形状に整形する。
【0042】
半導体レーザ135は、走査用レーザ光源201と異なる波長(たとえば、650nm程度)のレーザ光を出射する。半導体レーザ135は、パンマグネットフレーム133に配された回路基板135aに装着されている。また、半導体レーザ135は、光軸が水平方向と平行となるように配置されている。半導体レーザ135から出射されたレーザ光(以下、「サーボ光」という)は、サーボミラー124により反射され、PSD136の受光面上に照射される。
【0043】
PSD136は、サーボ光の受光位置に応じた信号を出力する。PSD136は、パンマグネットフレーム133に配された回路基板136aに装着されている。高速フォトダイオード137は、受光光量に応じた信号を出力する。高速フォトダイオード137は、パンマグネットフレーム133に配された回路基板137aに装着されている。高速フォトダイオード137は、PSD136の横に並ぶように配置されている。
【0044】
走査用レーザ光源201と半導体レーザ135は、それぞれの光軸が互いに平行となるように配置されている。鉛直方向における走査用レーザ光源201と半導体レーザ135の位置は同じである。
【0045】
ミラーアクチュエータ100は、スキャンミラー150が中立位置にあるときに、走査用レーザ光がスキャンミラー150のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射し、サーボ光がサーボミラー124のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。なお、「中立位置」とは、スキャンミラー150とサーボミラー124のミラー面が鉛直方向に対し平行で、且つ、走査用レーザ光およびサーボ光がミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するときのスキャンミラー150とサーボミラー124の位置をいう。
【0046】
中立位置において、PSD136の受光面は、サーボミラー124のミラー面に対して、水平方向に45度傾いている。したがって、中立位置において、サーボ光はPSD136の受光面に垂直に入射する。
【0047】
また、中立位置において、走査用レーザ光は、スキャンミラー150のミラー面の中心s(図3(b)参照)に入射し、サーボ光はサーボミラー124のミラー面の中心s’(図3(b)参照)に入射する。したがって、中立位置において、スキャンミラー150のミラー面に対する走査用レーザ光の入射位置(中心s)とサーボミラー124のミラー面に対するサーボ光の入射位置(中心s’)が、これら2つのミラー面に垂直な方向に並ぶ。
【0048】
ミラーアクチュエータ100によってスキャンミラー150が駆動されると、走査用レーザ光が目標領域内においてスキャンされる。このとき、同時に、支軸122を軸として、スキャンミラー150と対称に配置されたサーボミラー124によって、サーボ光がPSD136の受光面上を走査する。
【0049】
図5(b)は、サーボミラー124の回動位置とサーボ光の光路の関係およびスキャンミラー150の回動位置と走査レーザ光の光路の関係を模式的に示す図である。なお、同図(b)では、便宜上、同図(a)のスキャンミラー150、走査用レーザ光源201、サーボミラー124、半導体レーザ135、PSD136のみが図示されている。
【0050】
図5(b)を参照して、サーボ光は、サーボミラー124によって反射され、PSD136に受光される。また、走査用レーザ光は、スキャンミラー150によって反射され、目標領域に照射される。ここで、スキャンミラー150とサーボミラー124が破線の位置から矢印のように回動すると、走査用レーザ光とサーボ光の光路が図中の点線から実線のように変化し、走査用レーザ光の進行方向とPSD136上におけるサーボ光の受光位置が変化する。これにより、PSD136にて検出されるサーボ光の受光位置によって、スキャンミラー150の回動位置を検出することができ、また、走査用レーザ光が目標領域内においてスキャンされる。
【0051】
ここで、支軸111、122を軸とするスキャンミラー150の回動位置とサーボミラー124の回動位置は一対一に対応する。したがって、目標領域における走査用レーザ光の走査位置とPSD136上におけるサーボ光の照射位置も、一対一に対応する。よって、PSD136からの信号をもとに目標領域における走査用レーザ光の走査位置を容易に検出することができる。
【0052】
図6(a)は、PSD136の構成を示す図(側断面図)、図6(b)はPSD136の受光面を示す図である。
【0053】
図6(a)を参照して、PSD136は、N型高抵抗シリコン基板の表面に、受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層を形成した構造となっている。抵抗層表面には、同図(b)の
横方向における光電流を出力するための電極X1、X2と、縦方向における光電流を出力するための電極Y1、Y2(同図(a)では図示省略)が形成されている。また、裏面側には共通電極が形成されている。
【0054】
受光面にレーザ光が照射されると、照射位置に光量に比例した電荷が発生する。この電荷は光電流として抵抗層に到達し、各電極までの距離に逆比例して分割されて、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される。ここで、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流は、レーザ光の照射位置から各電極までの距離に逆比例して分割された大きさを有している。よって、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流値をもとに、受光面上における光の照射位置を検出することができる。
【0055】
たとえば、図7の位置Pにサーボ光が照射されたとする。この場合、受光面のセンターを基準点とする位置Pの座標(x,y)は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流量をそれぞれIx1、Ix2、Iy1、Iy2、X方向およびY方向における電極間の距離をLx、Lyとすると、たとえば、以下の式によって算出される。
【0056】
【数1】
【0057】
図8は、スキャンミラー150の駆動状態およびサーボミラー124の駆動状態と目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD136上におけるサーボ光の軌道との関係を模式的に示す図である。図8(b)、(c)は、スキャンミラー150の駆動状態およびサーボミラー124の駆動状態を示し、図8(a)、(d)は、それぞれ、目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD136上におけるサーボ光の軌道を示す。なお、本実施の形態において、走査用レーザ光の走査は、目標領域において水平方向に伸びた3つの走査軌道に沿って行われる。以下では、支軸111を軸とするスキャンミラー150の回動方向をTilt方向といい、支軸122を軸とするスキャンミラー150の回動方向をPan方向という。
【0058】
各図の中段のラインは、スキャンミラー150を、中立位置から水平方向にのみ回動させた場合を示している。また、図中の破線は、Pan方向のスキャンミラー150の回動位置が中立位置と同じ位置にある場合を示している。各図の中段のラインよりも上の領域では、スキャンミラー150が水平方向よりも上を向いており、中段のラインよりも下の領域では、スキャンミラー150が水平方向よりも下を向いている。
【0059】
目標領域における走査用レーザ光の軌道(以下、「走査軌道」という)が曲線状になると、目標領域内における障害物の検出精度が低下する惧れがある。このため、目標領域における走査軌道La1〜La3は、同図(a)に示すように、水平方向に直線状(線形)になるのが望ましい。
【0060】
このように走査軌道La1〜La3を水平方向に直線状とするには、スキャンミラー150を、同図(b)に示すように駆動する必要がある。すなわち、Pan方向の回動に伴
い、スキャンミラー150を、Tilt方向にも駆動する必要がある。
【0061】
本実施の形態では、スキャンミラー150とサーボミラー124が支軸111、122を挟むように配置されているため、スキャンミラー150が同図(b)のLb1のように駆動されると、サーボミラー124は同図(c)のLc1のように駆動される。また、スキャンミラー150が同図(b)のLb3のように駆動されると、サーボミラー124は同図(c)のLc3のように駆動される。
【0062】
本実施の形態では、スキャンミラー150およびサーボミラー124と、半導体レーザ135およびPSD136と、レーザ光源201とが、上記のように配置されているため、目標領域において走査用レーザ光を同図(a)のように水平に走査させると、PSD136の受光面上におけるサーボ光の軌道(以下、「照射軌道」という)は、同図(d)中のLd1〜Ld3のように、略直線状(線形)になる。
【0063】
したがって、PSD136上におけるサーボ光の照射位置が、同図(d)に示す照射軌道Ld1〜Ld3を追従するように、ミラーアクチュエータ100を制御することで、目標領域における走査軌道La1〜La3は、同図(a)に示す如く水平方向に直線状(線形)となる。
【0064】
なお、サーボ光の照射軌道が直線状(線形)となるための条件は、以下のとおりである。
【0065】
(1)スキャンミラー150のミラー面とサーボミラー124のミラー面が、支軸111、122に対して対称に配置されている。
【0066】
(2)スキャンミラー150のミラー面に対する走査用レーザ光の入射方向とサーボミラー124のミラー面に対するサーボ光の入射方向が、互いに平行である。
【0067】
(3)ミラーアクチュエータ100が中立位置にあるとき、スキャンミラー150のミラー面に対する走査用レーザ光の入射位置とサーボミラー124のミラー面に対するサーボ光の入射位置が、これら2つのミラー面に垂直な方向に並ぶ。
【0068】
(4)ミラーアクチュエータ100が中立位置にあるとき、PSD136の受光面に対してサーボ光が垂直に入射する。
【0069】
本実施の形態では、上記(1)以外の条件が全て満たされている。また、上記(1)の条件についても、スキャンミラー150のミラー面とサーボミラー124のミラー面が、支軸122に対して対称に配置される点は満たされている。本実施の形態において、唯一満たされない条件は、スキャンミラー150のミラー面とサーボミラー124のミラー面が、支軸111に対して対称でないことである。しかしながら、支軸122に対する支軸111のズレ量は小さいため、かかる非対称性の程度は小さい。また、走査用レーザ光が目標領域を走査する際、支軸111を軸とするスキャンミラー150とサーボミラー124の回転量は小さい。このため、本実施の形態のように、スキャンミラー150のミラー面とサーボミラー124のミラー面が支軸111に対して対称でなくても、サーボ光の照射軌道は直線状(線形)に極めて近いものとなる。
【0070】
なお、支軸111の中心に上下に貫通する孔を開け、この孔に支軸122を通すように、上記ミラーアクチュエータ100の構成を変更すると、スキャンミラー150のミラー面とサーボミラー124のミラー面を支軸111に対して対称に配置することが可能となる。この変更例によれば、上記(1)〜(4)の条件が全て満たされるようになり、サー
ボ光の照射軌道を直線状(線形)とすることができる。
【0071】
ところで、本実施の形態では、図5(a)に示すように、PSD136が、走査用レーザ光源201に対面するよう配置されているため、走査用レーザ光の一部が迷光となってPSD136に入射することが起こり得る。走査用レーザ光源201の発光強度(数10W程度)は、PSD136に入射する際のサーボ光の強度(数10μW程度)に比べて顕著に大きいため、このように迷光がPSD136に入射すると、PSD136から出力される信号が劣化する。また、このように高パワーの迷光がPSD136に入射すると、PSD136から高レベルの電流信号が出力され、この電流信号が後段側の回路に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0072】
本実施の形態では、かかる迷光の影響を抑えるため、PSD136に隣接した位置に、高速フォトダイオード137が配されている。高速フォトダイオード137を用いた迷光の影響を抑制するための構成については、図9および図10を参照して説明する。
【0073】
図9は、本実施の形態に係るビーム照射装置の回路構成を示す図である。なお、同図には、便宜上、図5(a)に示す走査用レーザ光とサーボ光のための光学系1が、その主要な構成とともに示されている。
【0074】
図示の如く、ビーム照射装置は、ノイズキャンセル回路2と、I/V変換回路3〜7と、位置信号生成回路8と、マイコン12と、走査レーザ駆動回路13と、サーボレーザ駆動回路14と、アクチュエータ駆動回路15とを備えている。
【0075】
半導体レーザ135から出射されたサーボ光は、上記の如く、サーボミラー124によって反射された後、PSD136の受光面に入射される。これにより、サーボ光の照射位置に応じた電流信号Ix1、Ix2、Iy1、Iy2(図7中の電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流信号)がPSD136から出力され、それぞれ、ノイズキャンセル回路2に入力される。
【0076】
走査用レーザ光源201から出射された走査用レーザ光にかかる迷光が、高速フォトダイオード137に入射されると、迷光の光量に応じた電流信号が高速フォトダイオード137から出力され、I/V変換回路3に入力される。
【0077】
I/V変換回路3は、アナログ回路からなっており、高速フォトダイオード137から出力される電流信号を電圧信号(以下、「モニタ電圧信号」という)に変換し、ノイズキャンセル回路2に出力する。
【0078】
ノイズキャンセル回路2は、I/V変換回路3から出力されるモニタ電圧信号を受信する。ノイズキャンセル回路2は、受信したモニタ電圧信号が、一定の閾値を超えると、PSD136から出力される電流信号を遮断し、一定の閾値を超えない場合には、PSD136から出力される電流信号をI/V変換回路4〜7へ出力する。
【0079】
I/V変換回路4〜7は、アナログ回路からなっており、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流信号Ix1、Ix2、Iy1、Iy2を電圧信号(以下、「位置電圧信号」という)に変換し、位置信号生成回路8に出力する。
【0080】
位置信号生成回路8は、アナログ回路からなっており、I/V変換回路4〜7から出力される位置電圧信号を図7で参照して説明した式(1)、(2)に基づき、X軸およびY軸方向の照射位置を示す信号を生成する。かかる照射位置信号は、A/D変換回路10、11に出力される。
【0081】
A/D変換回路10、11は、位置信号生成回路8から出力される照射位置信号をデジタル信号に変換し、マイコン12に出力する。
【0082】
マイコン12は、位置信号生成回路8から出力される信号に基づき、目標領域における走査用レーザ光の走査位置を検出し、ミラーアクチュエータ100の駆動制御や、走査用レーザ光源201と半導体レーザ135の駆動制御等を実行する。
【0083】
すなわち、マイコン12は、走査位置が所定の位置に到達したタイミングで、パルス駆動信号を、走査レーザ駆動回路13に出力する。これにより、走査用レーザ光源201がパルス発光され、目標領域にレーザ光が照射される。
【0084】
また、マイコン12は、図8(a)に示す走査軌道La1〜La3を走査用レーザ光が追従するよう、アクチュエータ駆動回路15に、サーボ信号(Pan方向およびTilt方向の駆動信号)を出力する。具体的には、マイコン12は、図8(d)に示す照射軌道Ld1〜Ld3を走査用レーザ光が追従するよう、アクチュエータ駆動回路15に、サーボ信号(Pan方向およびTilt方向の駆動信号)を出力する。これを受けてアクチュエータ駆動回路15は、ミラーアクチュエータ100を駆動し、これにより、走査用レーザ光が所期の軌道に追従するよう目標領域を走査する。さらに、マイコン12は、サーボレーザ駆動回路14に制御信号を出力する。これにより、半導体レーザ135が、一定パワーレベルにて連続的に発光される。
【0085】
本実施の形態では、一定周期T毎に、ミラーアクチュエータ100の制御が行われる。マイコン12には、各制御タイミングにおけるPSD136上の理想の照射位置(以下、「目標照射位置」という)が保持されている。かかる目標照射位置は、走査用レーザ光が適正な走査軌道上に沿って水平方向に走査されるときのサーボ光の照射軌道(図8(d)参照)上に位置している。マイコン12は、かかる照射軌道に沿ってサーボ光の照射位置が進むよう、ミラーアクチュエータ100を駆動する。
【0086】
図9の構成において、ノイズキャンセル回路2は、走査用レーザ光が迷光となってPSD136に入射したときの悪影響を抑制するために配されている。上述のように、高パワーの走査用レーザ光が迷光となってPSD136に入射すると、高レベルの電流信号がPSD136から出力される。図9の構成において、ノイズキャンセル回路2が配されていないと、この電流信号は、I/V変換回路4〜7に直接入力される。ところが、I/V変換回路4〜7はアナログ回路であるため、このように迷光による高レベルの電流信号がI/V変換回路4〜7に入力されると、I/V変換回路4〜7において不要輻射や反射等が起こり、I/V変換回路4〜7の動作が不安定になる惧れがある。また、図9の構成では、位置信号生成回路8もアナログ回路からなっているため、迷光による高レベルの電流信号による影響は、位置信号生成回路8にも波及する。このため、位置信号生成回路8の動作が、迷光による高レベルの電流信号によって不安定になる惧れがある。
【0087】
そこで、図9の構成では、I/V変換回路4〜7の前段にノイズキャンセル回路2を配置し、迷光による高レベルの電流信号がI/V変換回路4〜7に入力されないようになっている。
【0088】
図10は、ノイズキャンセル回路2の回路構成を示す図である。
【0089】
図示の如く、ノイズキャンセル回路2は、比較回路21と、スイッチング回路22〜25とを備える。
【0090】
スイッチング回路22は、それぞれ端子22a、22bを備えている。端子22aは、PSD136からI/V変換回路4〜7への出力ラインに接続されており、端子22bは、GND(グランド)に接続されている。また、他のスイッチング回路23〜25についてもスイッチング回路22と同様に構成されている。
【0091】
比較回路21は、I/V変換回路3によって変換されたモニタ電圧信号と閾値Vshとを比較し、モニタ電圧信号が閾値Vshを超えるときに、エラー信号をスイッチング回路22〜25へ出力する。
【0092】
スイッチング回路22〜25は、比較回路21からエラー信号を受信すると、端子22aと端子22bを導通させ、PSD136から入力された電流信号をGND(グランド)へと導く。こうして、I/V変換回路4〜7に対する電流信号の供給が一時的に遮断される。
【0093】
図11は、迷光受光時におけるノイズキャンセル回路2の動作を示すフローチャートである。
【0094】
高速フォトダイオード137が迷光を受光すると(S11:YES)、I/V変換回路3によって変換されたモニタ電圧信号が取得され(S12)、取得されたモニタ電圧信号が閾値Vshを超えたかが、比較回路21により判別される(S13)。モニタ電圧信号が閾値Vshを超えると(S13:YES)、比較回路21からエラー信号が出力され、スイッチング回路22〜25により、一時的に、I/V変換回路4〜7に対する電流信号の供給が遮断される(S14)。
【0095】
これにより、PSD136に迷光等が入射された場合においても、PSD136に隣接した位置に配置された高速フォトダイオード137が迷光を検知し、ノイズキャンセル回路2によって、迷光による高レベルの電流信号を遮断することができる。したがって、I/V変換回路4〜7および位置信号生成回路8における迷光による悪影響(不要輻射や反射等)を抑えることができる。なお、迷光が、走査用レーザ光源201以外の原因によるものであっても、同様に、迷光による悪影響を回避できる。
【0096】
図12は、ミラーアクチュエータ100の制御方法を説明する図である。図中、Pn〜Pn+3は、それぞれ、制御タイミングtn〜tn+3における目標照射位置であり、Qn〜Qn+3は、それぞれ、制御タイミングtn〜tn+3におけるサーボ光の実際の照射位置である。
【0097】
ある制御タイミングtnにおけるサーボ光の実際の照射位置Qnが、目標照射位置PnからX軸方向にXn、Y軸方向にYnずれていると、マイコン12は、ずれ量Xn、Ynに基づくPID制御により、次の制御タイミングにおいて照射位置Qn+1を目標照射位置Pn+1により接近させるためのPan方向およびTilt方向の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。同様に、制御タイミングtn+1において、マイコン12は、ずれ量Xn+1、Yn+1に基づくPID制御により、Pan方向およびTilt方向の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。
【0098】
制御タイミングtn+2は、走査用レーザ光の出射タイミングtsと重なっている。このとき、PSD136が走査用レーザ光の迷光を受光すると、上記のように、ノイズキャンセル回路2により、PSD136からの電流信号が遮断される。この場合、位置信号生成回路8は、I/V変換回路4〜6からそれぞれグランドレベルの位置電圧信号を受けるため、原点位置(スキャンミラー150の中立位置)の照射位置信号を生成する。マイコ
ン12は、原点位置Pと目標照射位置Pn+2のずれ量Xmに基づくPID制御により、Pan方向の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。これにより、スキャンミラー150は、実際の照射位置Qn+2からのずれ量Xn+2、Yn+2とは異なった位置へ補正するよう動作するが、走査用レーザ光のパルス発光期間(数10nsec程度)は、極めて微小であり、また、PID制御によって制御タイミングtn+2より前の制御タイミングにおける補正値が引き継がれるため、サーボ信号が一時的に遮断されることによる影響は軽微である。
【0099】
なお、走査用レーザ光の出射タイミングtsと制御タイミングtn+2が重なる場合に、マイコン12にて、位置信号生成回路8から入力されたX成分とY成分の照射位置信号を、直前のタイミングtn+1における照射位置信号で補間してもよい。
【0100】
これにより、走査用レーザ光の発光タイミング時に、PSD136が迷光を受光した場合においても、走査用レーザ光を目標領域において適正に走査させることができる。
【0101】
このように、マイコン12は、制御タイミングごとに、Pan方向およびTilt方向の制御信号を生成して、アクチュエータ駆動回路15に出力する。アクチュエータ駆動回路15は、入力されたPan方向およびTilt方向の制御信号に応じて、スキャンミラー150を、Pan方向およびTilt方向に駆動する。これにより、スキャンミラー150は、図8(b)のように駆動され、サーボミラー124は、図8(c)のように駆動される。
【0102】
以上、本実施の形態によれば、サーボミラー124とスキャンミラー150が軸対称に配置されるため、バランサ等の部材を用意せずに、重量バランスよくミラーアクチュエータ100を構成することができる。したがって、スキャンミラー150とサーボミラー124の回動を安定的に行うことができ、かつ、ビーム照射装置の小型化を図ることができる。
【0103】
また、本実施の形態によれば、上記のように、走査用レーザ光源201と半導体レーザ135の光軸が互いに平行に対向して配置され、スキャンミラー150とサーボミラー124が支軸に対して対称に配置され、中立位置において走査用レーザ光とサーボ光がそれぞれスキャンミラー150とサーボミラー124の中心に入射し、さらに、中立位置においてサーボ光がPSD136に垂直に入射するため、PSD136上におけるサーボ光の照射軌道Ld1〜Ld3を直線状(線形)とすることができる。これにより、照射軌道Ld1〜Ld3を規定するためにマイコン12に保持されるべき目標照射位置の数を少なくすることができ、目標照射位置を規定するテーブルを簡素なものにすることができる。また、目標照射位置と実際の照射位置との間の差分の算出およびそれに基づく制御処理の頻度を削減でき、マイコン12の処理負担を軽減することができる。
【0104】
なお、マイコン12に目標照射位置をテーブル値として保持せずに、各制御タイミングにおける目標照射位置Pnを、マイコン12により、演算により求めてもよい。本実施の形態では、サーボ光の照射軌道が直線状(線形)となるため、各制御タイミングにおける目標照射位置Pnは簡単な演算により求めることができる。
【0105】
また、本実施の形態によれば、PSD136が走査用レーザ光源201による迷光等を受光した場合、PSD136に隣接した位置に配置された高速フォトダイオード137にて、迷光が検出される。高速フォトダイオード137にて、迷光が検出された場合、迷光の光量に応じたモニタ電圧信号がノイズキャンセル回路2に出力され、モニタ電圧信号が閾値Vshを超える場合に、ノイズキャンセル回路2によって、迷光による高レベルの電流信号が一時的に遮断される。さらに、電流信号が遮断された場合においても、マイコン
12によってPID制御が実施されるため、スキャンミラー150が大きく振られることはない。よって、走査用レーザ光源がサーボ光の光検出器に対面する配置にあっても、I/V変換回路4〜7、位置信号生成回路8に対する迷光の影響を回避しながら、走査用レーザ光を目標領域において適正に走査させることができる。
【0106】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0107】
たとえば、上記実施の形態では、半導体レーザ135とPSD136は、サーボ光が、水平方向において、45度の角度でサーボミラー124に入射するように配置したが、鉛直方向において、45度の角度サーボミラー124に入射するように配置してもよい。
【0108】
図13(a)は、サーボミラー124に対し、サーボ光が鉛直方向において45度の角度でサーボミラー124に入射されるよう、半導体レーザ135と、PSD136を配置した場合のマグネットユニット130の斜視図である。
【0109】
図13(a)に示す如く、半導体レーザ135は、パンマグネットフレーム133の下板部133dに形成された孔に嵌め込まれる。PSD136と、高速フォトダイオード137は、上板部133cに形成された凹部に対して装着される。上板部133cは、サーボミラー124のミラー面に対し、鉛直方向に45度の角度で傾いている。同様に下板部133dは、サーボミラー124のミラー面に対し、鉛直方向に45度の角度で傾いている。
【0110】
図13(b)は、図13(a)の構成におけるサーボミラー124と半導体レーザ135とPSD136、高速フォトダイオード137の位置関係を示す図である。
【0111】
図13(b)に示す如く、半導体レーザ135は、中立位置において、サーボ光がスキャンミラー150の背面のミラー面に対し鉛直方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。また、PSD136が、中立位置において、法線が、スキャンミラー150の背面のミラー面に対し鉛直方向において45度傾くよう配置されている。中立位置において、半導体レーザ135から出射されるサーボ光は、サーボミラー124のミラー面によって反射され、PSD136に垂直に入射する。また、走査用レーザ光源201は、光軸が半導体レーザ135の光軸に平行となるように配置される。したがって、サーボ光は、スキャンミラー150のミラー面に対し鉛直方向において45度の入射角で入射する。上記実施の形態と同様、走査用レーザ光とサーボ光は、中立位置において、それぞれスキャンミラー150とサーボミラー124の中心に入射する。なお、サーボミラー124とスキャンミラー150の位置関係は、上記実施の形態と同様である。
【0112】
この変更例では、中立位置において、スキャンミラー150で反射された走査用レーザ光が水平に進むよう、支軸122がベース500上面に対して45度傾くように、ミラーアクチュエータ100が配置される。あるいは、上記実施の形態と同様にミラーアクチュエータ100が配置される場合は、ベース500が鉛直方向に45度傾くように設置される。
【0113】
この変更例においても、上記実施の形態同様、目標領域において走査用レーザ光を水平に走査されたときのサーボ光の照射軌道が線形性を有する。したがって、上記実施の形態と同様の効果が得ることができる。
【0114】
また、上記実施の形態では、サーボ光の反射に支軸122と軸対称に配置したサーボミラー124を利用したが、スキャンミラー150の背面をミラー面とし、このミラー面を
利用するようにしてもよい。
【0115】
図14(a)は、サーボ光の反射にサーボミラー124を利用せず、スキャンミラー150の背面のミラー面を利用する場合のマグネットユニット130の斜視図である。
【0116】
図14(a)に示す如く、マグネットユニット130は、チルトマグネットフレーム131の背面からスキャンミラー150の背面付近まで突出した2つの腕部135b、136bを有する。図4(b)のようにミラーアクチュエータ100が組み立てられると、腕部135b、136bに延設された鍔状の壁部135c、136cが、スキャンミラー150の背面に対面する。中立位置において、壁部135cは、スキャンミラー150の背面に対し、水平方向に45度の角度で傾いている。同様に、中立位置において、壁部136cは、スキャンミラー150の背面に対し、水平方向に45度の角度で傾いている。また、腕部135b、136bは、チルトマグネットフレーム131に2つのネジ135d、136dにて装着されている。半導体レーザ135は、壁部135cに装着され、PSD136と、高速フォトダイオード137は、壁部136cに装着される。
【0117】
図14(b)は、図14(a)の構成におけるスキャンミラー150と半導体レーザ135とPSD136、高速フォトダイオード137の位置関係を示す図である。
【0118】
図14(b)に示す如く、半導体レーザ135は、中立位置において、スキャンミラー150の背面のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。また、PSD136は、中立位置において、その法線がスキャンミラー150の背面のミラー面に対し水平方向において45度傾くよう配置されている。中立位置において、半導体レーザ135から出射されるサーボ光は、スキャンミラー150の背面によって反射され、PSD136に垂直に入射する。なお、走査用レーザ光源201は、上記実施の形態同様、スキャンミラー150のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。走査用レーザ光源201の出射方向は半導体レーザ135の出射方向と逆である。上記実施の形態と同様、走査用レーザ光とサーボ光は、中立位置において、それぞれスキャンミラー150とサーボミラー124の中心に入射する。また、サーボミラー124とスキャンミラー150の位置関係についても、上記実施の形態と同様である。
【0119】
この構成によっても、上記実施の形態と同様、目標領域において走査用レーザ光を水平に走査されたときのサーボ光の照射軌道が線形性を有する。したがって、上記実施の形態と同様の効果が得られる。また、図14の構成例では、図3の構成に比べ、サーボミラー124を削減できるため、部品点数の減少が見込まれる。
【0120】
また、高速フォトダイオード137からの信号に基づいて迷光がPSD136に入射した期間を把握し、この期間に制御タイミングが到来すると、前回の制御タイミングにおける照射位置信号を用いてミラーアクチュエータ100の制御を行うようにしてもよい。
【0121】
図15は、この場合の回路構成である。この構成では、上記実施の形態に比べて、A/D変換回路16が追加されている。A/D変換回路16は、I/V変換回路3からの電圧信号をデジタル信号(デジタルモニタ信号)に変換する。
【0122】
図16は、マイコン12における補間処理を示すフローチャートである。
【0123】
マイコン12は、制御タイミングTkになると(S21)、A/D変換回路16から入力されたデジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えたかを判定する(S22)。デジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えると(S22:YES)、マイコン12は、照射位置信
号X、Yを一回前の制御タイミングTk−1における照射位置信号で補間する(S23)。これにより、マイコン12は、当該制御タイミングTkにおけるサーボ信号(Pan方向およびTilt方向の制御信号)を、直前の制御タイミングTk−1における照射位置信号に基づきPID制御により生成し、生成したサーボ信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。
【0124】
なお、デジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えない場合(S22:NO)、マイコン12は、A/D変換回路19、11から入力される照射位置信号X、Yを取得する(S24)。そして、取得した照射位置信号に基づき、PID制御により、サーボ信号を生成し、生成したサーボ信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。
【0125】
ステップS23にて補間された照射位置信号またはステップS24にて取得された照射位置信号は、当該制御タイミングTkにおける照射位置信号として、マイコン12の内蔵メモリに保持される(S25)。保持された照射位置信号は、次回の制御タイミングTk+1において、処理がステップS23に進んだときに、一回前の制御タイミングの照射位置信号として用いられる。
【0126】
この構成例によれば、上記実施の形態と同様、I/V変換回路4〜7に対する迷光の影響を回避しながら、走査用レーザ光を目標領域において適正に走査させることができる。さらに、この構成例では、高速フォトダイオード137の受光量が大きくなって、ノイズキャンセル回路2によってグランドレベルの信号がI/V変換回路4〜7に供給されたような場合にも、一回前の制御タイミングにおける照射位置信号を用いて制御がおこなわれるため、安定した制御動作を実現することができる。
【0127】
また、この構成例では、走査レーザ光の発光タイミングに拘わらず、高速フォトダイオード137からの出力信号が大きくなったことによって補間が行われるため、走査用レーザ光以外が原因の迷光によっても、照射位置信号の補間を行うことができる。また、
なお、この構成例では、マイコン12とは別に、アナログの位置信号生成回路8が配置されたが、位置信号生成回路8を省略し、マイコン12が、上記処理の他、照射位置信号の生成を行うようにしてもよい。この場合、I/V変換回路4〜7の後段にそれぞれA/D変換回路が配置され、これらA/D変換回路からの出力値(X1、X2、Y1、Y2出力のデジタル値)が、マイコン12に入力される。また、図16のフローチャートにおいて、ステップS24が、照射位置信号X、Yの生成処理に変更される。すなわち、デジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えない場合(S22:NO)、マイコン12は、A/D変換回路からの出力値(X1、X2、Y1、Y2出力のデジタル値)から照射位置信号X、Yを生成し(S24)、生成した照射位置信号に基づき、PID制御により、サーボ信号を生成する。
【0128】
なお、図9の構成においても、マイコン12が照射位置信号の生成を行うように変更可能である。また、アナログ回路に対する迷光の影響が小さい場合は、ノイズキャンセル回路2を省略しても良い。
【0129】
また、上記実施の形態では、サーボ光の光源として半導体レーザ135を用いたが、これに替えて、LED(Light Emitting Diode)を用いることもできる。
【0130】
また、上記実施の形態では、迷光の光量の検出に高速フォトダイオード137を用いたが、これに替えて、フォトトランジスタを用いることもできる。
【0131】
なお、上記実施の形態では、サーボ光を受光する光検出器としてPSD136を用いたが、これに替えて、4分割センサを用いることもできる。
【0132】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0133】
2 … ノイズキャンセル回路(遮断部)
12 … マイコン(制御部)
100 … ミラーアクチュエータ(アクチュエータ)
124 … サーボミラー(第2反射面、第2ミラー)
135 … 半導体レーザ(サーボ光源)
136 … PSD(第1光検出器)
137 … 高速フォトダイオード(第2光検出器)
150 … スキャンミラー(第1反射面、第1ミラー)
201 … 走査用レーザ光源(レーザ光源)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
サーボ光を出射するサーボ光源と、
前記レーザ光が入射する平面状の第1反射面と当該第1反射面に対して平行で且つ反対側を向き前記サーボ光が入射する第2反射面とを有するとともに、前記第1反射面と前記第2反射面を互いに垂直な第1軸と第2軸の周りに一体的に回転させるアクチュエータと、
前記第2反射面により反射された前記サーボ光を受光して受光位置に応じた第1信号を出力する第1光検出器と、
前記第1光検出器に隣接して配置されるとともに受光量に応じた第2信号を出力する第2光検出器と、
前記第1信号に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2信号が所定の閾値を超えると、前記第1信号に基づく前記制御部による制御を中止する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載のビーム照射装置において、
前記制御部は、前記第2信号が前記閾値を超えると、前記第1信号を遮断する遮断部を有する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のビーム照射装置において、
前記制御部は、前記第2信号が前記閾値を超えると、前記第2信号が前記閾値を超える前の前記第1信号に基づいて、前記アクチュエータを制御する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のビーム照射装置において、
前記レーザ光と前記サーボ光は、前記第1反射面と前記第2反射面にそれぞれ入射する際の入射方向が互いに平行で且つ逆向きとなるように、前記第1反射面と前記第2反射面に入射する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のビーム照射装置において、
前記アクチュエータは、前記第1反射面を有する第1ミラーと前記第2反射面を有する第2ミラーとを備え、前記第1ミラーと前記第2ミラーは、前記第1軸と前記第2軸の少なくとも一方に対して対称な位置に配置されている、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のビーム照射装置において、
前記第1反射面と前記第2反射面がそれぞれ中立位置にあるとき、前記第1反射面に対する前記レーザ光の入射位置と前記第2反射面に対する前記サーボ光の入射位置が、前記第1の反射面と前記第2の反射面に垂直な方向に並ぶ、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
サーボ光を出射するサーボ光源と、
前記レーザ光が入射する平面状の第1反射面と当該第1反射面に対して平行で且つ反対側を向き前記サーボ光が入射する第2反射面とを有するとともに、前記第1反射面と前記第2反射面を互いに垂直な第1軸と第2軸の周りに一体的に回転させるアクチュエータと、
前記第2反射面により反射された前記サーボ光を受光して受光位置に応じた第1信号を出力する第1光検出器と、
前記第1光検出器に隣接して配置されるとともに受光量に応じた第2信号を出力する第2光検出器と、
前記第1信号に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2信号が所定の閾値を超えると、前記第1信号に基づく前記制御部による制御を中止する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載のビーム照射装置において、
前記制御部は、前記第2信号が前記閾値を超えると、前記第1信号を遮断する遮断部を有する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のビーム照射装置において、
前記制御部は、前記第2信号が前記閾値を超えると、前記第2信号が前記閾値を超える前の前記第1信号に基づいて、前記アクチュエータを制御する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のビーム照射装置において、
前記レーザ光と前記サーボ光は、前記第1反射面と前記第2反射面にそれぞれ入射する際の入射方向が互いに平行で且つ逆向きとなるように、前記第1反射面と前記第2反射面に入射する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のビーム照射装置において、
前記アクチュエータは、前記第1反射面を有する第1ミラーと前記第2反射面を有する第2ミラーとを備え、前記第1ミラーと前記第2ミラーは、前記第1軸と前記第2軸の少なくとも一方に対して対称な位置に配置されている、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のビーム照射装置において、
前記第1反射面と前記第2反射面がそれぞれ中立位置にあるとき、前記第1反射面に対する前記レーザ光の入射位置と前記第2反射面に対する前記サーボ光の入射位置が、前記第1の反射面と前記第2の反射面に垂直な方向に並ぶ、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−118266(P2012−118266A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267450(P2010−267450)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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