説明

ファイバスタブおよびこれを用いた光モジュール

【課題】光損失を低減し、小型化を可能にするファイバスタブおよびこれを用いた光モジュールを提供すること。
【解決手段】軸中心に光ファイバが挿入可能な貫通孔2aが形成されたフェルール1の一部側面に貫通孔2aの途中で貫通孔2aに通じて外部に貫通孔2aを露出させる切欠部2bが設けられたフェルール2と、貫通孔2aの各端部から挿入され、先端が斜め研磨面を有する光ファイバ3,5と、光ファイバ5の斜め研磨面に形成され、波長多重された光信号を分離する光学フィルタと、を備え、光学フィルタが設けられた光ファイバ5および光ファイバ3の各先端を貫通孔2aが露出する部分の略中央で光学フィルタを含めて各斜め研磨面同士が同一平面となるように突き当てて光学フィルタによって分離された光信号が少なくとも切欠部2gに導かれるように各光ファイバ3,5を貫通孔2aに固着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WDMフィルタを用いて一心双方向光ファイバ通信を実現するためのファイバスタブおよびこれを用いた光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、加入者系光通信方式では、1本の光ファイバに、たとえば1.31μm帯と1.49μm帯の2波長で送受信を行う波長多重方式が採用され、WDMフィルタに対して送信用のLDと受信用のPDとが直交配置され、WDMフィルタによって送受信光を分離するようにしている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、一つの筐体に、光学フィルタの固定面と、一心双方向光モジュールの構成部材の固定部とを一体に形成することにより、筐体以外の固定部材が不要となり、各構成部材の固定部の位置も予め精度良く加工しておくことができ、装置全体の部品点数を減少させることができ、コストの削減と小型化が行え、組立て誤差が少ない高精度の一心双方向光モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4254803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の一心双方向光モジュールでは、光ファイバと、フォトダイオードおよび半導体レーザとが、多重波長を分離する光学フィルタを介し、空間で光学的に結合された構造となっており、光損失が大きく、光学フィルタの外形寸法が大きくならざるを得ないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光損失を低減し、小型化を可能にするファイバスタブおよびこれを用いた光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかるファイバスタブは、軸中心に光ファイバが挿入可能な貫通孔が形成されたフェルールの一部側面に該貫通孔の途中で該貫通孔に通じて外部に該貫通孔を露出させる切欠部が設けられたフェルール本体と、前記貫通孔の一端から挿入され、先端が斜め研磨面を有する第1の光ファイバと、前記貫通孔の他端から挿入され、先端が斜め研磨面を有する第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバあるいは前記第2の光ファイバの斜め研磨面に形成され、波長多重された光信号を分離する光学フィルタと、を備え、前記第1の光ファイバおよび前記第2の光ファイバの各先端を前記貫通孔が露出する部分の略中央で前記光学フィルタを含めて各斜め研磨面同士が同一平面となるように突き当てて前記光学フィルタによって分離された光信号が少なくとも前記切欠部に導かれるように各光ファイバを前記貫通孔に固着したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかるファイバスタブは、上記の発明において、前記貫通孔が露出する部分の該貫通孔の断面形状は、Ω形状であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかるファイバスタブは、上記の発明において、前記切欠部は、段差を有して径方向に広がる2段構造であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかるファイバスタブは、上記の発明において、前記フェルール本体は、外周に位置決め機構を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるファイバスタブは、上記の発明において、前記位置決め機構は、前記フェルール本体の外周に設けられた溝であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかるファイバスタブは、上記の発明において、前記位置決め機構は、前記フェルール本体の外周に外挿されるコの字型リングであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかるファイバスタブは、上記の発明において、前記フェルール本体は、前記切欠部が形成される側面にフォトダイオードが近接配置される切込部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかるファイバスタブは、上記の発明において、前記フェルール本体の他端であって送信光が入射される前記第2の光ファイバ端部にアイソレータが設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかるファイバスタブは、上記の発明において、前記フェルール本体の他端であって送信光が入射される前記第2の光ファイバ端部は、斜め研磨面が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかるファイバスタブは、上記の発明において、前記切欠部に前記光学フィルタから分離された光信号を集光する集光レンズを設けたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる光モジュールは、上記の発明のいずれか一つに記載のファイバスタブと、前記フェルールの他端側あるいは前記切欠部側に設けられた半導体レーザと、前記フェルールの切欠部側あるいは前記他端側に設けられたフォトダイオードと、を備え、一心双方向光伝送を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1の光ファイバあるいは第2の光ファイバの斜め研磨面に形成され、波長多重された光信号を分離する光学フィルタを備え、前記第1の光ファイバおよび前記第2の光ファイバの各先端を、切欠部で貫通孔が露出する部分の略中央で前記光学フィルタを含めて各斜め研磨面同士が同一平面となるように突き当てて前記光学フィルタによって分離された光信号が少なくとも前記切欠部に導かれるように各光ファイバを前記貫通孔に固着しているので、半導体レーザとフェルールとの間の空間上に光学フィルタを配置した場合に比して、光ビーム形状が変化せず、半導体レーザとフェルール間の結合光損失を低減することができるとともに、光学フィルタ自体が小さいので、光モジュールの小型化を促進するとともに、光学フィルタの生産効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1であるファイバスタブの正面(b)および左右側面(a)(c)を示す図である。
【図2】図2は、図1に示したファイバスタブの縦断面(a)、B−B線断面(b)、A−A線断面(c)、および切欠部近傍の拡大した貫通孔断面(d)を示す図である。
【図3】図3は、光学フィルタ近傍の詳細構成を示す断面図である。
【図4】図4は、光学フィルタの設置の変形例を示す図である。
【図5】図5は、図1に示したファイバスタブに球レンズ、アイソレータ、および溝を設けたファイバスタブの構成を示す正面(a)およびC−C線断面(b)を示す図である。
【図6】図6は、図5に示したファイバスタブを用いた一心双方向伝送用の光モジュールの構成を示す縦断面図である。
【図7】図7は、図6に示した光モジュールの正面(b)および左右側面(a)(c)を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2であるファイバスタブを含む光モジュールの縦断面図である。
【図9】図9は、図8に示したファイバスタブの溝を削除し、90°フィルタを切欠部底部に設けたファイバスタブの構成を示す図である。
【図10】図10は、図8に示したファイバスタブの溝を削除し、90°フィルタを切欠部の開口を覆うように設けたファイバスタブの構成を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態3であるファイバスタブの構成を示す縦断面図(a)およびD−D線断面(b)を示す図である。
【図12】図12は、図11に示した溝に外嵌される圧入リングの正面(b)および左右側面(a)(c)を示す図である。
【図13】図13は、図11に示したファイバスタブに圧入リングを外嵌したファイバスタブの正面(b)および左右側面(a)(c)を示す図である。
【図14】図14は、ファイバスタブのH−H線断面図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態3である光モジュールの構成を示す縦断面図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態4であるファイバスタブの縦断面(a)およびE−E線断面(b)を示す図である。
【図17】図17は、本発明の実施の形態4である光モジュールの構成を示す縦断面図である。
【図18】図18は、図17に示した光モジュールのアイソレータを半導体レーザに取り付け、フォトダイオードを接着剤で取り付けた光モジュールの構成を示す縦断面図である。
【図19】図19は、シェルパイプの断面形状を矩形にした実施の形態5にかかる光モジュールの正面(b)および左右側面(a)(c)を示す図である。
【図20】図20は、ファイバスタブの切欠部の段差を削除した構成の縦断面(a)およびF−F線断面(b)を示す図である。
【図21】図21は、本発明の実施の形態の応用例1にかかるファイバスタブの縦断面(a)、J1−J1線断面(b)、J2−J2線断面(c)、J3−J3線断面(d)、およびJ4−J4線断面(e)を示す図である。
【図22】図22は、図21に示したファイバスタブの正面(b)および左右側面(a)(c)を示す図である。
【図23】図23は、図22に示したファイバスタブの光フィルタ配置構成を示す図である。
【図24】図24は、本発明の実施の形態の応用例2にかかるファイバスタブの縦断面(a)、K1−K1線断面(b)、K2−K2線断面(c)、K3−K3線断面(d)、およびK4−K4線断面(e)を示す図である。
【図25】図25は、図24に示したファイバスタブの正面(b)および左右側面(a)(c)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるファイバスタブおよびこれを用いた光モジュールの実施の形態について説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1であるファイバスタブの正面および左右側面を示す図である。また、図2は、図1に示したファイバスタブの縦断面、A−A線断面、B−B線断面、および切欠部近傍の拡大した貫通孔断面を示す図である。図1および図2において、ファイバスタブ1は、ジルコニアなどのセラミックスで形成された略円柱状のフェルール2の中心軸に光ファイバが挿入可能な貫通孔2aが形成され、この貫通孔2aに通じて一部側面の径方向が開口した切欠部2bが形成されている。すなわち、フェルール2に形成された貫通孔2aの位置P1から、貫通孔2aの軸に垂直な方向(径方向)に切欠部2bが形成される。この切欠部2bには、段差2gが設けられ、径方向に広がった空間が形成される。なお、この実施の形態1では、略円柱体の横断面を略D字状に加工(Dカット)された切欠部2bが形成されている。
【0022】
貫通孔2aには、一端(波長多重光の入出力端)から、光ファイバ5が挿入され、他端(送信光の入力端)から、光ファイバ3が挿入され、位置P1で突き当てられる。詳細には、図3に示すように、光ファイバ5は、その先端が、光ファイバの軸に対して45°に斜め研磨された斜め研磨面5bが形成され、この斜め研磨面5bには多層膜などによって形成され波長多重光を分離する光学フィルタ5cが設けられている。また、光ファイバ3は、その先端が、光ファイバの軸に対して45°に斜め研磨された斜め研磨面3bが形成されている。
【0023】
そして、光ファイバ3,5は、貫通孔2aの他端および一端から、それぞれ図3(a)に示すように、挿入され、各斜め研磨面3b,5bが平行となって実質的に間隙なく接続されるように、貫通孔2aの露出部分の略中央の位置P1で突き当てられ、図3(b)に示すように、斜め研磨面3bと光学フィルタ5cとの間には屈折率整合のためのマッチングオイル6が塗布される。これによって、光ファイバ3,5は、光学フィルタ5cを介して略連続した1つの光ファイバとなり、切欠部2bが形成される貫通孔2aの位置P1に光学フィルタ5cが形成されたことになる。この光学フィルタ5cの面は、一端側から入射して反射する光が、貫通孔2aの軸に対して垂直で切欠部2bが形成する空間に向けられるように配置される。なお、光ファイバ3,5は、エポキシ系樹脂などの接着剤4によって貫通孔2a内に固着される。なお、図3(b)において、3a,5aは、光ファイバのコアを示している。
【0024】
ここで、切欠部2bの貫通孔2a側の底部は、図2(d)に示すように、貫通孔2aの軸よりも外径側に形成され、この位置P1近傍の貫通孔2aの断面は、切欠部2b方向の一部が露出するΩ形状の溝2eとなり、切欠部2bと貫通孔2aとの連通を可能にするとともに、光ファイバ3,5の保持を確実に行えるようにしている。
【0025】
また、フェルール2の両端部周縁は、面取りがなされ、他端側は、他端側からの入射戻り光の防止のために、貫通孔2aの軸に対して6°〜8°の傾斜をもった斜め研磨面2dが形成されている。
【0026】
なお、光学フィルタ5cは、光ファイバ5の先端に設けられていたが、図4に示すように、光ファイバ3の先端側に設けてもよい。
【0027】
このファイバスタブ1は、図5に示すように、切欠部2b内に受光部への集光レンズである球レンズ7を予め設けるようにしてもよい。球レンズ7の表面には反射防止膜としてのARコートを施しておくのが好ましい。また、球レンズ7は、切欠部2bに対して、エポキシ系樹脂などの接着剤によって固定される。ここで、切欠部2bは、段差2gが設けられているため、球レンズ7が光学フィルタ5cに接触することなく、極めて光学フィルタ5c近傍に設けることができるとともに、球レンズ7の位置決めを確実に行うことができる。そして、切欠部2bは、球レンズ7の直径に合わせた深さや幅とすることによって、一層、位置決めを容易かつ確実に行うことが可能となる。なお、この切欠部2bを、受光方向を軸とする円柱空間となるようにしてもよい。これによって、さらに球レンズ7の位置決めが容易となる。
【0028】
さらに、図5に示すように、フェルール2の他端側、すなわち送信光の入射側に、アイソレータ8を予め設けるようにしてもよい。送信光の集光位置はフェルール2の貫通孔2a他端側近傍となるため、半導体レーザ104の出射面にアイソレータ8を設ける場合よりも、アイソレータ8の大きさを小さくすることができる。
【0029】
また、図5に示すように、このファイバスタブ1を光モジュールに設ける際の位置決めおよび把持用の溝2cを設けることが好ましい。この溝2cは、光モジュールに組み込む際の軸方向位置を示す目印になるとともに、その平坦部2hに垂直な方向が一定の径方向を示し、特に切欠部2bが設けられている方向に対向させておくことによって受光部側の位置決めを容易に行うことができる。
【0030】
図6は、図5に示したファイバスタブ1を用いた一心双方向伝送用の光モジュールの構成を示す縦断面図である。また、図7は、図6に示した光モジュールの正面および左右側面を示す図である。図6に示すように、この光モジュール100は、ファイバスタブ1の切欠部2bおよび球レンズ7が設けられる側に、光学フィルタ5cによって分離された受信光を受光するフォトダイオード103が設けられる。また、ファイバスタブ1のアイソレータ8が設けられる側に、送信光を送信する半導体レーザ104が設けられる。なお、フォトダイオード103の受光面の図示しないカバーガラス上に所定の波長帯の光を透過する90°フィルタ107が、接着剤によって固着される。この90°フィルタ107は、たとえば受信光が1.49μm帯である場合、1.55μm帯の不要な光(アナログのビデオ信号)を含む場合があり、この不要な光を除去するために用いる。
【0031】
ファイバスタブ1は、円筒状のシェルパイプ105の一端側(波長多重光の送受信側)に配置され、他端側に半導体レーザ104が配置される。シェルパイプ105は、ファイバスタブ1の受光部方向側面に開口部105aが形成され、この開口部105aにフォトダイオード103が配置される。
【0032】
このファイバスタブ1のシェルパイプ105への固定は、圧入部品102aによって行われる。圧入部品102aは、シェルパイプ105の一端側に固定される。ファイバスタブ1は、この圧入部品102aに対して、溝2cを用いて半導体レーザ104側から圧入するとともに、圧入部品102aの突起部102bおよび溝2cを用いて軸方向および周方向の位置決めをする。一方、スリーブホルダ102には、割スリーブ101が挿入されており、スリーブホルダ102は、この割スリーブ101を把持しつつ、圧入部品102aの他端から圧入するとともに、割スリーブ101がファイバスタブ1の他端を外挿し、コネクタを形成する。なお、割スリーブ101に替えて割りなしの精密スリーブを用いてもよい。
【0033】
このファイバスタブ1がシェルパイプ105に固定された状態で、シェルパイプ105を図示しない固定治具に固定し、フォトダイオード103を図示しない微調治具に固定する。フォトダイオード103の受光方向(X方向)の調芯に用いる溶接リング103aがステム103f上に設けられ、この溶接リング103aにさらに受光方向に垂直な面内(Z−Y面内)の調芯に用いる溶接リング103cが設けられる。このフォトダイオード103は、ステム103fに固定された溶接リング103aを受光方向に微調することによって調芯され、調芯された状態で溶接リング103aが溶接リング103cにYAG溶接される。その後、溶接リング103cを受光方向に垂直な面内で微調し、調芯された状態で溶接リング103cを開口部105aにYAG溶接されることによって調芯が終了する。同様に、半導体レーザ104の調芯も、溶接リング104aおよび溶接リング104cによって行われる。溶接リング104aは、送信方向(Z方向)の調芯に用いられ、溶接リング104cは、X−Y面内の調芯に用いられ、それぞれYAG溶接によって固定される。なお、フォトダイオード103の電気端子103bと半導体レーザ104の電気端子104bは、リードピンによって実現されているが、フレキシブル基板によって実現してもよい。
【0034】
この一心双方向光伝送用の光モジュール100では、半導体レーザ104から出力された送信光L1は、アイソレータ8、光ファイバ3、光学フィルタ5c、光ファイバ5を介して出力され、受信光L2は、光ファイバ5、光学フィルタ5c、球レンズ7を介してフォトダイオード103に受光される。なお、半導体レーザ104からの送信光L1の中心波長は、1270nm、1310nm、1490nm、および1577nmのいずれかである。また、光学フィルタ5cおよび90°フィルタ107の通過波長帯域は、1260〜1280nm、1260〜1360nm、1480〜1500nm、および1575〜1580nmのいずれかあるいはその組合せである。さらに、フォトダイオード103は、少なくとも1260〜1580nmの受信波長帯域を有する。また、半導体レーザ104とフォトダイオード103との配置関係を逆にしてもよい。
【0035】
この実施の形態1では、フェルール2内の貫通孔2a内で、光ファイバ3,5が略連続的に接続され、光ファイバ3,5間に光学フィルタ5cを設け、フェルール2と半導体レーザ104との間に光学フィルタが設けられていないため、半導体レーザ104からの送信光の光損失を低減して送信光を伝送することができる。すなわち、従来では、フェルール2と半導体レーザ104との間の空間上に光学フィルタを設けていたため、半導体レーザ104の送信光ビーム形状が楕円等に変形し、歪みが生じやすく、このため、フェルール内の光ファイバへの入射損失が大きかったが、この実施の形態1では、このようなビーム形状変化は少なく、送信光の光損失を低減することができる。
【0036】
また、この実施の形態1では、光学フィルタ5cがフェルール2内に設けられ、光学フィルタ5cと各光ファイバ3,5との間の結合空間がほとんどなく、光の空間伝搬ロスが減少し、光の取込にも漏れが生じず、光学フィルタ5c内を伝送する光損失のみとなり、光結合効率を一層高めることができる。
【0037】
さらに、この実施の形態1では、フェルール2内の半導体レーザ104側端部にアイソレータ8が設けられ、この端部では、送信光ビームが集光に近い状態であり、アイソレータ8の小型化が可能になり、光モジュール全体の小型化とともに、アイソレータのコストダウンも促進することができる。
【0038】
また、この実施の形態1では、フェルール2の軸方向途中に受光用の切欠部2bを設け、この切欠部2bの空間に受光用の球レンズ7を設けているので、フォトダイオード103を光学フィルタ5c側に近接配置することが可能となり、光モジュールの小型化を促進することができる。さらに、受光系の位置は、フェルール2の軸上の任意の位置に設けることができるため、受信光の取出口の自由度が高くなり、結果的に受光系設計の自由度を高めることも可能となる。しかも、この受信光の取出口は、構造上の強度が高いフェルール2の軸の途中に設けられるため、受光系の支持がしやすく、強度の高い光モジュールを実現することが可能である。
【0039】
なお、この実施の形態1では、光ファイバ3,5間に光学フィルタ5cを設けているため、光学フィルタの生成領域が狭く、小さな光学フィルタ5cで済み、しかも、たとえば光ファイバ5の斜め研磨面5bを同一方向端部にして束にし、多数の光ファイバ5の斜め研磨面5bに多層膜を同時に蒸着することが可能となり、生産効率を向上させることが可能である。
【0040】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。図8は、本発明の実施の形態2であるファイバスタブを含む光モジュールの縦断面図である。図8に示すように、この実施の形態2では、ファイバスタブ1に対応するファイバスタブ21が、溝2cに替えて溝22cを設けている。この場合、溝22cは、圧入部品102の突起部102bよりも外側に位置するように配置されている。ファイバスタブ21は、圧入部品102の外側から圧入部品102に圧入され、位置決めされて配置される。
【0041】
なお、図8に示した光モジュールでは、90°フィルタ107をフォトダイオード103側に配置するようにしていたが、図9に示すように、90°フィルタ107に対応する90°フィルタ10を段差2gと球レンズ7との間に設けるようにしてもよい。
【0042】
また、図10に示すように、球レンズ7の外側であって切欠部2bの開口を覆うようにした90°フィルタ11を設けるようにしてもよい。
【0043】
さらに、図9および図10に示すように、ファイバスタブ22,23は、溝2c,22cを設けなくてもよい。この場合、切欠部2bの位置によってファイバスタブ22,23の位置決めを概略行うことができるからである。
【0044】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。図11は、本発明の実施の形態3であるファイバスタブの構成を示す縦断面およびD−D線断面を示す図である。また、図12は、図11に示した溝32cに外嵌される圧入リング9の正面および左右側面を示す図である。さらに、図13は、図11に示したファイバスタブの正面および左右側面を示す図である。また、図14は、図13に示したファイバスタブのH−H線断面図である。さらに、図15は、本発明の実施の形態3である光モジュールの構成を示す縦断面図である。図11〜図15に示すように、この実施の形態3のファイバスタブ31では、溝2c,22cに比してやや幅広の溝32cが形成され、この溝32cに、C字型の圧入リング9が外嵌される。ただし、この圧入リング9の内周は略コの字型となり、圧入リング9が不連続となる開口部9aを有する。
【0045】
一方、図15に示すように、光モジュール100にファイバスタブ31が組み込まれる場合、圧入部品102aには突起部102bが形成されていない。そして、ファイバスタブ31は、圧入リング9の突起によって圧入部品102a内に圧入され、この圧入リング9の配置位置によって、ファイバスタブ31の軸方向位置が位置決めされる。一方、圧入リング9の開口部9aの位置によって、ファイバスタブ31の周方向位置、すなわち受光方向の位置決めを行うことができる。なお、この実施の形態3では、図10と同様に、90°フィルタ11が設けられている。
【0046】
(実施の形態4)
つぎに、この発明の実施の形態4について説明する。図16は、本発明の実施の形態4であるファイバスタブの構成を示す縦断面図である。また、図17は、本発明の実施の形態4である光モジュールの構成を示す縦断面図である。この実施の形態4のファイバスタブ41は、受光方向側の溝2cを半導体レーザ104側まで連続してDカットした切込部2fが形成されている。この結果、切欠部2bに対応する切欠部42bの深さは、浅くなる。なお、切欠部42bに対向する片側の溝42cは、そのまま残される。
【0047】
図17に示すように、ファイバスタブ41は、光モジュール100に対応する光モジュール200内に設けられる。ここで、90°フィルタ10は、予め切欠部42bの段差に設けておいてもよいし、光モジュール200の組み立て時に設けてもよい。フォトダイオード103の受光面には、球レンズ7に対応する球レンズ203dが設けられている。
【0048】
この実施の形態4では、切込部2fの切り込みが半導体レーザ側端部まで延びているので、フォトダイオード103全体を光学フィルタ5c側に近接させることができ、光モジュール200の小型化を一層促進することができる。
【0049】
なお、上述した実施の形態1〜4では、アイソレータ8をフェルール2の半導体レーザ104側端部に設けていたが、これに限らず、図18に示した光モジュール201のように、アイソレータ106を半導体レーザ104の光出射面に設けてもよい。
【0050】
また、上述した実施の形態1〜4では、フォトダイオード103がシェルパイプ105の開口部105aに溶接リング103a,103cを用いて位置決めされてYAG溶接されるようにしていたが、図18に示すように、エポキシ系樹脂などの接着剤103eを用いて開口部105aに固着するようにしてもよい。また、半導体レーザ104のシェルパイプ105への固着も同様に、接着剤を用いて固着してもよい。
【0051】
(実施の形態5)
つぎに、この発明の実施の形態5について説明する。上述した実施の形態1〜4では、光モジュールの筐体であるシェルパイプ105が円筒形状であったが、この実施の形態5では、図19に示すように、シェルパイプ105に対応するシェルパイプ305を矩形の筒状にしている。このようなシェルパイプ305とすることによって、光モジュール300の確実な設置を行うことが可能になる。
【0052】
なお、上述した実施の形態では、切欠部2b,42bが段差2gを有する2段構造としていたが、これに限らず、図20に示すように、段差2gのない切欠部52bとしてもよい。
【0053】
(応用例1)
また、上述した実施の形態では、フェルール2の他端側に半導体レーザ104を配置し、切欠部2b,42b,52b側にフォトダイオード103を配置していたが、切欠部を2つ設け、一方の切欠部から半導体レーザの送信光が入射され、他方の切欠部からフォトダイオードに受信光が分離出力されるようにしてもよい。
【0054】
図21は、この発明の実施の形態の応用例1にかかるファイバスタブの縦断面、J1−J1線断面、J2−J2線断面、J3−J3線断面、およびJ4−J4線断面を示す図である。また、図22は、図21に示したファイバスタブの正面および左右側面を示す図である。さらに、図23は、図22に示したファイバスタブの光フィルタ配置構成を示す図である。図21〜図23において、このファイバスタブ61は、フェルール2の波長多重光の入出力端側である一端側にさらに切欠部412bを設けている。すなわち、このフェルール2には、切欠部2bに対応する切欠部402bと切欠部412bとの2つの切欠部が設けられている。この切欠部412bは、フェルール2の軸に対し、切欠部412bの開口とは反対側に開口している。切欠部412には球レンズ407が配置され、受信した波長多重光L2を出力する。切欠部402bには、アイソレータ208が配置され、アイソレータ8を介して送信される送信光L1とは異なる波長光L3が入力される。
【0055】
ここで、図23に示すように、切欠部402b近傍の貫通孔2aの領域5gには、図3,4と同様に、斜め研磨面3b,5cおよび光学フィルタ5cが設けられ、送信光L1,L3を合波し、切欠部412b近傍の貫通孔2aの領域5hには、同様に斜め研磨面3b,5cおよび光学フィルタ5cが設けられ、受信光L2を分波出力するとともに、送信光L1,L3を通過させる。なお、光ファイバ5の先端は、切欠部402b,412b間の距離に対応する長さの光ファイバ5dが形成されることになる。また、切欠部402bの段差は、アイソレータ408が配置されるため、面取りはされていない。
【0056】
(応用例2)
応用例1と同様にして、1つの送信光L1を送信し、2つの受信光L2,L4を受信できるようにしてもよい。図24は、本発明の実施の形態の応用例2にかかるファイバスタブの縦断面、K1−K1線断面、K2−K2線断面、K3−K3線断面、およびK4−K4線断面を示す図である。また、図25は、図24に示したファイバスタブの正面および左右側面を示す図である。図24,および図25に示すように、この応用例2のファイバスタブ62では、切欠部402bに対応する切欠部502bを設け、この切欠部502bに球レンズ517を配置し、受信光L4を受信するようにしている。なお、切欠部502b近傍の貫通孔2bに設けられる光学フィルタは、送信光L1を通過させ、受信光L4を球レンズ517側に分岐出力し、切欠部412b近傍の貫通孔2bに設けられる光学フィルタは、送信光L1および受信光L4を通過させ、受信光L2を球レンズ407側に分岐出力する。
【0057】
この実施の形態、変形例および応用例では、1以上の送信光および1以上の受信光の合分岐を、1つのファイバスタブで実現でき、しかも光損失を低減し、小型化を可能にするすることができる。
【0058】
また、上述した実施の形態、変形例および応用例の各構成要素は、適宜組合せが可能である。本実施の形態、変形例および応用例におけるファイバスタブの使用波長、細部構成などに関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
1,21〜23,31,41,42,51,61,62 ファイバスタブ
2 フェルール
2a 貫通孔
2b,42b,52b,402b,412b,502b 切欠部
2c,22c,32c,42c,2e 溝
2d,3b 斜め研磨面
2f 切込部
2g 段差
2h,32h 平坦部
3,5,5d 光ファイバ
3a,5a コア
3b,5b 斜め研磨面
4,103e 接着剤
5c 光学フィルタ
6 マッチングオイル
7,203d,407,517 球レンズ
8,106,408 アイソレータ
9 圧入リング
9a,105a 開口部
10,11,107 90°フィルタ
100,200,201,300 光モジュール
101 割スリーブ
102 スリーブホルダ
102a 圧入部品
102b 突起部
103 フォトダイオード
103a,103c,104a,104c 溶接リング
103b,104b 電気端子
103f,204f ステム
104 半導体レーザ
105,305 シェルパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸中心に光ファイバが挿入可能な貫通孔が形成されたフェルールの一部側面に該貫通孔の途中で該貫通孔に通じて外部に該貫通孔を露出させる切欠部が設けられたフェルール本体と、
波長多重光が入出力される前記貫通孔の一端から挿入され、先端が斜め研磨面を有する第1の光ファイバと、
前記貫通孔の他端から挿入され、先端が斜め研磨面を有する第2の光ファイバと、
前記第1の光ファイバあるいは前記第2の光ファイバの斜め研磨面に形成され、波長多重された光信号を分離する光学フィルタと、
を備え、前記第1の光ファイバおよび前記第2の光ファイバの各先端を前記貫通孔が露出する部分の略中央で前記光学フィルタを介して各斜め研磨面同士が平行となって実質的に間隙なく接続されるように突き当て、前記光学フィルタによって分離された光信号が前記切欠部から前記フェルール本体の外部に導かれるように各光ファイバを前記貫通孔に固着したことを特徴とするファイバスタブ。
【請求項2】
前記貫通孔が露出する部分の該貫通孔の断面形状は、Ω形状であることを特徴とする請求項1に記載のファイバスタブ。
【請求項3】
前記切欠部は、段差を有して径方向に広がる2段構造であることを特徴とする請求項1または2に記載のファイバスタブ。
【請求項4】
前記フェルール本体は、外周に位置決め機構を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のファイバスタブ。
【請求項5】
前記位置決め機構は、前記フェルール本体の外周に設けられた溝であることを特徴とする請求項4に記載のファイバスタブ。
【請求項6】
前記位置決め機構は、前記フェルール本体の外周に外嵌される略C字型リングであることを特徴とする請求項4に記載のファイバスタブ。
【請求項7】
前記フェルール本体は、前記切欠部が形成される側面に前記光学フィルタによって分離された前記光信号を受光するフォトダイオードが近接配置される切込部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のファイバスタブ。
【請求項8】
前記フェルール本体の前記貫通孔の前記他端における前記第2の光ファイバ端部にアイソレータが設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のファイバスタブ。
【請求項9】
前記フェルール本体の前記貫通孔の前記他端における前記第2の光ファイバ端部には、斜め研磨面が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のファイバスタブ。
【請求項10】
前記切欠部に前記光学フィルタから分離された光信号を集光する集光レンズを設けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載のファイバスタブ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに記載のファイバスタブと、
前記フェルールの前記貫通孔の前記他端側あるいは前記切欠部側に設けられた半導体レーザと、
前記フェルールの切欠部側あるいは前記フェルールの前記貫通孔の前記他端側に設けられたフォトダイオードと、
を備え、一心双方向光伝送を行うことを特徴とする光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−242655(P2011−242655A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115534(P2010−115534)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】