説明

ファンの失速検出システム

ロータにおける失速の開始を検出するためのシステムが開示される。システムは、ロータ上で円周方向に配置されたブレード列の先端から、半径方向外側に離間されて位置する静的コンポーネント上に配置されたセンサであって、ブレード先端の近傍位置における流れパラメータに対応する入力信号を生成することのできるセンサと、ロータ速度信号を生成できる制御システムと、入力信号およびロータ速度信号を受け取ることができ、安定性相関信号を生成する相関プロセッサとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ガスタービンエンジンに関し、より詳細には、ファンなど、その圧縮システムにおける失速を検出するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボファン航空機ガスタービンエンジンでは、動作中に、空気は、ファンモジュール、ブースタモジュール、および圧縮モジュールを備える圧縮システム中で加圧される。大型のターボファンエンジンでは、ファンモジュールを通過する空気は、大部分がバイパスストリームに入り、飛行中の航空機を推進するために必要な推力の大部分を生成するために使用される。ブースタモジュールおよび圧縮モジュールを通って運ばれた空気は、燃焼器中で燃料と混合され、点火されて、高温の燃焼ガスを生成し、それはタービン段を通って流れ、そのガスからエネルギーを取り出してファン、ブースタ、および圧縮機ロータを作動させる。ファン、ブースタ、および圧縮機モジュールは、一連のロータ段およびステータ段を有する。ファンおよびブースタロータは、通常、低圧タービンにより駆動され、圧縮機ロータは、高圧タービンにより駆動される。ファンおよびブースタロータは、空気力学的に圧縮機ロータに結合されるが、これらは、通常、異なる機械的速度で動作する。
【0003】
広範囲な作動条件で動作できることは、ファン、ブースタ、および圧縮機などの圧縮システムの設計における基本的な要件である。進んだ航空機における最近の開発では、機体内に埋め込まれたエンジンを使用することが必要となっており、空気は、吸気口の空気流に厳しいディストーションを生ずる特有の幾何形状を有する吸気口を通ってエンジン中に流入する。これらのエンジンのいくつかはまた、これらのエンジンの動作性を制限する固定面積の排気ノズルを有する可能性がある。これらの圧縮システムを設計するときに基本となるのは、離陸、巡航、および着陸の運行に関する飛行エンベロープ全体に対して十分な失速マージンを持たせて空気を圧縮するときの効率である。しかし、圧縮効率および失速マージンは、普通は逆の関係にあり、効率の増加は、通常、失速マージンの減少に対応する。失速マージンと効率との競合する要件は、飛行エンベロープを通して、高レベルの安定性マージンをなお必要としながら、厳しいインレットディストーション、固定面積ノズル、および増加する補助動力抽出などの困難な動作条件の下で動作する高性能ジェットエンジンでは、特に、要求が厳しい。
【0004】
失速は、一般に、ファン、圧縮機、およびブースタなど、圧縮システムのロータのブレード先端における流れの崩壊(breakdown)により生ずる。ガスタービンエンジンの圧縮システムのロータでは、回転するブレード先端と、そのブレード先端を囲む静止したケーシングまたはシュラウドとの間に先端隙間が存在する。エンジンの動作中、空気は、ブレードの圧力面から、先端隙間を通って負圧面へと漏れる。これらの漏れ流れは、ブレードの先端領域で渦を形成させる可能性がある。先端の渦は、圧縮システムに流入する空気に厳しいインレットディストーションが生じたとき、またはエンジンが絞られたとき、成長しかつ広がるおそれがあり、圧縮機を失速させて、重大な動作性の問題および性能損失を生ずることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許第2191606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ファンにおける流れの不安定性など、動的な過程を測定し、かつ制御する機能を有することは望ましいはずである。ブレード先端近傍の動圧など、流れの不安定性の開始に関係するエンジンパラメータを測定し、測定されたデータを処理して、多段式ファンなど、圧縮システムの段における失速の開始を予測することのできるシステムを有することは望ましいはずである。飛行エンベロープの限界点におけるいくつかの飛行操作(maneuver)に対して、測定システムの出力に基づき圧縮システムの失速を軽減して、失速またはサージを生ずることなく操作を完了できるシステムを有することもまた望ましいはずである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の1つまたは複数の必要性は、ロータにおける失速の開始を検出するためのシステムを提供する例示的な実施形態により満たすことができる。そのシステムは、ロータ上で円周方向に配置されたブレード列の先端から、半径方向外側に離間されて位置する静的なコンポーネント上に配置されたセンサであって、ブレード先端の近傍位置における流れパラメータに対応する入力信号を生成することができるセンサと、ロータ速度信号を生成できる制御システムと、入力信号およびロータ速度信号を受け取ることができ、安定性相関信号を生成する相関プロセッサとを備える。
【0008】
他の実施形態では、多段式ファンロータにおける失速の開始を検出するためのシステムは、ファンのブレード列の先端を囲むケーシング上に位置する圧力センサであって、ファンのブレード先端の近傍位置における動圧に対応する入力信号を生成できる圧力センサを備える。
【0009】
本発明と見なされる主題は、本明細書の終わりの部分において具体的に指摘され、かつ明確に特許請求される。しかし、本発明は、添付の図面と共に以下の説明を参照することにより、最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の例示的な実施形態によるガスタービンエンジンの概略の横断面図である。
【図2】図1で示すガスタービンエンジンのファンセクションの一部を拡大した横断面図である。
【図3】図1で示すガスタービンエンジンにおける圧縮システムの例示的な作動線図である。
【図4】図4aは、ファン段においてブレード先端渦を有する領域の形成を示す図であり、図4bは、図4aで示すブレード先端渦の広がりを示す図であり、図4cは、失速中のブレード先端領域における渦の流れを示す図である。
【図5】失速検出システムの例示的な実施形態を有するファンの先端領域の概略的な横断面図である。
【図6】失速検出システムのための複数のセンサの例示的な配置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
様々な図を通して、同一の参照番号が同様のエレメントを示している諸図面を参照すると、図1は、本発明の例示的な実施形態を組み込む例示的なターボファンガスタービンエンジン10を示す。それは、エンジン中心軸8と、周囲空気14を受け取るファンセクション12と、高圧圧縮機(HPC)18と、高圧タービン(HPT)22を介して下流へと流れる燃焼ガス流を生成するために、HPC18により加圧された空気と燃料を混合する燃焼器20と、エンジン10からの燃焼ガスがそこから放出される低圧タービン(LTP)24とを備える。多くのエンジンは、ファンセクションとHPCの間に取り付けられたブースタ、または低圧圧縮機(図1には示されていない)を有する。ファンセクション12を通過する空気の一部は、ファンセクション12と高圧圧縮機18の間に入口またはスプリッタ23を有するバイパスダクト21を通り、高圧圧縮機18の周囲を迂回する。HPT22はHPC18に結合されて、実質的に、高圧ロータ29を形成する。低圧シャフト28は、LPT24を、ファンセクション12に、また使用される場合はブースタに結合する。第2のもしくは低圧シャフト28は、第1のもしくは高圧ロータと同軸に、かつその半径方向内側に、回転可能に配置される。図1および2で示される本発明の例示的な実施形態では、ファンセクション12は、多くのガスタービンエンジンと同様に、多段式のファンロータを有しており、第1、第2、および第3のファンロータ段12a、12b、および12cで、それぞれ示されている。
【0012】
通過して流れる空気を加圧するファンセクション12は、長手方向の中心線軸8に関して軸対称である。ファンセクション12は、複数の入口案内翼(IGV)30と、長手方向の中心線軸8の周りに円周方向に配置された複数の静翼31とを含む。ファンセクション12の複数のファンロータ段12は、任意の従来方法により、個々のディスクの形、または一体のブリスクの形、または環状のドラムの形の対応するロータハブ39a、39b、39cから半径方向外側に延びる対応するファンのロータブレード40a、40b、40cを有する。
【0013】
ファンロータ段12a、12b、12cと協働しているのは、複数の円周方向に離間されて位置する静翼31a、31b、31cを備える対応するステータ段である。静翼およびロータブレードの構成を図2に示す。ロータブレード40および静翼31は、軸方向の段で成功裡に空気流を加圧するための対応する空気力学的プロフィルまたは輪郭を有するエーロフォイルを形成する。各ファンのロータブレード40は、翼根部45から翼端部46へと半径方向外側に延びるエーロフォイル34と、圧力面43と、負圧面44と、前縁部41と、後縁部42とを備える。エーロフォイル34は、前縁部41と後縁部42の間で翼弦方向に延びる。エーロフォイル34の翼弦Cは、ブレードの各半径方向横断面における前縁部41と後縁部42の間の長さである。エーロフォイル34の圧力面43は、概してファンロータの回転方向に面しており、負圧面44は、エーロフォイルのもう一方の側にある。前段のロータブレード40は、ロータブレード先端を囲む環状ケーシング50内を回転する。後段のロータブレードは、通常、ブレード先端46の周りに円周方向に配置されたシュラウドセグメント51により形成された環状通路内で回転する。動作においては、空気の圧力は、空気がステータおよびロータのエーロフォイルを通って減速し、かつ拡散するにつれて増加する。
【0014】
例示的なガスタービンエンジン10におけるファンセクション12などの例示的な圧縮システムの作動線図が、X軸に沿った入口修正流量、およびY軸の圧力比を用いて図3で示されている。作動線114、116、および失速線112が、一定速度線122、124と共に示されている。線124は低速の線を表し、また線122は高速の線を表している。圧縮システムが、一定速度線124などの一定速度で絞られたとき、入口修正流量は減少するが、圧力比は増加し、圧縮システムの動作は、失速線112のより近くに移動する。各作動状態は、それに対応する圧縮機効率を有しており、所与の圧力比を達成するために必要な実際の仕事入力に対する、理想的な(等エントロピーの)圧縮機仕事入力の比として従来定義されている。各作動状態の圧縮機効率は、図3で示された項目118、120など一定効率の等高線の形で作動線図上にプロットされる。性能線図は、最小の等高線120として図3で示されているピーク効率の領域を有しており、可能な限り、ピーク効率の領域内で圧縮システムを動作させることが望ましい。ファンセクション12に入る入口空気流14における流れのディストーションは、空気が、ファンブレード(および圧縮システムのブレード)により圧縮されると、流れの不安定性を生ずる傾向があり、また失速線112がより低く下がる傾向がある。本明細書で次にさらに説明するように、本発明の例示的な実施形態は、流れのディストーションなどから、ファンセクション12における流れの不安定性を検出し、かつファンセクションからの情報を処理して、ファンロータ中の差し迫った失速を予測するためのシステムを提供する。本明細書で示される本発明の諸実施形態は、必要に応じて応答することのできるエンジン中の他のシステムに、ファンロータおよび他の圧縮システムの失速マージンを管理できるようにする。
【0015】
入口流れのディストーションによるファンロータの失速、および絞られた他の圧縮システムにおける失速は、図2で示すファンロータ12a、12b、12cなど、ロータの先端領域52における流れの崩壊により生ずることが知られている。この先端流れの崩壊は、計算流体力学解析に基づき負の軸流速度を有する領域の等高線プロットとして図4a、4b、および4cで概略的に示された先端漏れ渦と関連する。先端漏れ渦200は、まず、前縁部41付近のロータのブレード先端46で開始する。この渦200の領域では、負の軸流速度を有する流れが存在する、すなわち、この領域における流れは、流れの本体に対抗するものであり、非常に望ましくないものである。妨げられない限り、先端渦200は、図4bで示すように、軸方向で後方に、かつブレード負圧面44から隣接するブレード圧力面43へと接線方向に伝播する。渦が、圧力表面43に達すると、図4cで示すように、ブレード間の先端で閉塞領域に集まる傾向があり、高い損失を生ずる。入口流れのディストーションがひどくなると、または圧縮システムが絞られると、その閉塞部は、隣接するブレード間の流路内でますます大きくなり、最後には、ロータの圧力比をその設計レベル未満に低下させるほど大きくなって、ファンロータを失速させることになる。失速に近づくと、ブレード通路の流れ場構造の挙動、特に、ブレード先端隙間の渦の軌跡は、軸方向に対して垂直であり、先端隙間の渦200は、図4cで示すように隣接するブレード40の前縁部41にまで及んでいる。渦200は、図4cで示すように、ブレード40の負圧面44上の前縁部41から始まり、隣接するブレード40の圧力面上の前縁部41の方向に移動する。
【0016】
圧縮システムにおける流れの不安定性など、動的過程を制御するための機能は、連続的な測定法を用いるか、あるいは十分な数の別個の測定サンプルを用いて、その過程の特性を測定することが必要となる。安定性マージンが小さい、またはマージンが負である、飛行エンベロープの限界点におけるいくつかの飛行操作に対するファンの失速を軽減するために、直接的に使用可能な、または何らかの追加の処理を有するエンジンの流れパラメータがまず測定されて、図2で示す多段式ファンのある段の失速開始を予測する。
【0017】
図2は、ガスタービンエンジン10の圧縮段で、失速またはサージなどの空気力学的不安定性が開始するのを検出するためのシステム500の例示的な実施形態を示している。図2で示す例示的な実施形態では、3段の第1のロータ12a、12b、および12cを備えるファンセクション12が示されている。本発明の諸実施形態はまた、単段ファン、あるいは、高圧圧縮機18、または低圧圧縮機もしくはブースタなど、ガスタービンエンジンにおける他の圧縮システム中で使用することもできる。本明細書で示す例示的な実施形態では、圧力センサ502は、エンジンの動作中、ファンのブレード先端46の先端領域52付近の局所的な動圧を測定するために使用される。流れパラメータを測定するために、単一のセンサ502を使用することができるが、長期間のエンジン動作中に、動作不能になりうるセンサがあるため、少なくとも2つのセンサ502を使用することが好ましい。図2で示す例示的な実施形態では、複数の圧力センサ502が、3つのファンロータ段12a、12b、および12c全ての先端の周囲で使用されている。
【0018】
図5で示す例示的な実施形態では、圧力センサ502が、ファンのブレード先端46から、半径方向外側に離間されたケーシング50上に配置されている。代替的には、圧力センサ502を、ブレード先端から半径方向外側に位置するシュラウドセグメント51上に配置することもできる。ケーシング50、または複数のシュラウド51は、ブレード47の列の先端を囲む。圧力センサ502は、図6で示すように、ケーシング50またはシュラウド51上で円周方向に配置される。ロータ段上に複数のセンサを用いる例示的な実施形態では、センサ502は、ケーシングまたはシュラウドにおいて実質的に直径上で反対の位置に配置される。
【0019】
エンジンの動作中、ファンのブレード先端と、ケーシング50もしくはシュラウド51の間に有効な隙間48が存在する(図5を参照)。センサ502は、ブレード先端46付近のブレード先端領域52における動圧など、流れパラメータに対応する入力信号504を実時間で生成することができる。ブレードが通過する周波数よりも高い応答能力を有する適切な高応答トランスデューサが使用される。通常、これらのトランスデューサは、1000Hzよりも高い応答能力を有する。本明細書で示す例示的な実施形態では、使用されるセンサ502は、Kulite Semiconductor Products社による製品であった。例えば、ブレード通過周波数の約10倍など、動圧測定の高周波数サンプリングを用いることが好ましい。
【0020】
センサ502による流れパラメータの測定は、相関プロセッサ510により入力信号504として使用される信号を生成する。相関プロセッサ510はまた、図1、2、および5で示すように、ファンロータ12a、12b、12cの回転速度に対応するファンロータ速度信号506を入力として受け取る。本明細書で示す例示的な実施形態では、ファンロータ速度信号506は、ガスタービンエンジン中で使用される従来のエンジン制御システム74により供給される。代替的には、ファンロータ速度信号506を、航空機エンジンで使用されるデジタル電子制御システム、またはFADEC(Full Authority Digital Electronic Control)システムにより供給することもできる。
【0021】
相関プロセッサ510は、センサ502から入力信号504を、また制御システム74からロータ速度信号506を受け取り、従来の数値的方法を用いて実時間で、安定性相関信号512を生成する。公開された文献で利用可能な自己相関法を使用することもできる。本明細書で示す例示的な実施形態では、相関プロセッサ510アルゴリズムは、サイクル同期化のために、エンジン制御からの既存の速度信号を使用する。ロータのブレード先端全体の個々の圧力トランスデューサに対して相関測度が計算される。本明細書で前述した例示的な実施形態における自己相関システムは、200KHzの周波数で、圧力センサ502から信号をサンプリングしている。この比較的高いサンプリング周波数値は、データが、ファンブレード40の通過周波数の少なくとも10倍のレートでサンプリングされることを保証する。72個のサンプルのウィンドウが自己相関を計算するために使用されて、作動線116に沿って1(unity)に近い値を示し、また動作が失速/サージ線112に近づくとゼロの方向に下がる(図3を参照)。特定のファン段12a、12b、12cに対して安定性マージンがゼロに近づいたとき、その特定のファン段は、失速寸前であり、相関測度は最小となる。圧縮システムにおける失速またはサージを回避するように設計されたシステムでは、相関測度が、選択され事前に設定された閾値レベル未満に低下すると、安定性管理システムは、安定性相関信号512を受け取り、電気信号を、例えば、FADECシステムなどのエンジン制御システムに送り、そのシステムは、次いで、エンジンをサージから遠ざけるのに利用可能な装置を用いて、修正アクションを取ることができる。本明細書で示された例示的な実施形態における空気力学的安定性レベルを評価するために相関プロセッサ510により使用される方法は、論文「Development and Demonstration of a Stability Management System for Gas Turbine Engines」、GT2006 ASME Turbo Expo 2006の論文集、GT2006-90324で述べられている。
【0022】
図5は、ブレード40のブレード先端の翼弦中央付近のケーシング50に位置するセンサ502を用いる本発明の例示的な実施形態を概略的に示す。センサは、ファンのブレード先端46とケーシング50の内側表面53との間の隙間48における空気の動圧を測定できるように、ケーシング50中に配置される。例示的な一実施形態では、センサ502は、ケーシング50中の環状溝部54に配置される。他の例示的な実施形態では、例えば、先端流れを修正して安定させるなどのために、ケーシング50中に複数の環状溝部54を有することも可能である。複数の溝部が存在する場合、圧力センサ502は、本明細書で開示されたものと同様の原理および例を用いて、これらの溝部のいくつかの内部に配置される。図5で、センサは、ケーシング50中に位置するものとして示されているが、他の実施形態では、圧力センサ502を、ブレード先端46から、半径方向外側に、かつ離れて位置するシュラウド51中に配置することもできる。さらに、圧力センサ502は、ブレード40の前縁部41の先端または後縁部42の先端付近のケーシング50(またはシュラウド51)中に位置することもできる。
【0023】
図6は、図2で示す項目40aなどのファン段において複数のセンサ502を使用する本発明の例示的な実施形態を概略的に示している。複数のセンサ502は、センサ502の各対が、実質的に直径上で反対側に位置するように、ケーシング50(またはシュラウド51)中で円周方向に配置される。相関プロセッサ510は、これらのセンサの対から入力信号504を受け取り、各対からの信号を一緒に処理する。ある対における直径上で反対側のセンサから測定されたデータにおける差は、エンジンの入口流れのディストーションによるファンの失速の開始を検出するための安定性相関信号512を作成する上で特に有用となりうる。
【0024】
この記載された説明は、最適な形態を含む本発明を開示するために、また当業者が本発明を製作しかつ使用することを可能にするために諸例を使用している。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲により定義されるが、当業者が想到する他の例を含むこともできる。このような他の例は、それらが、特許請求の範囲の文言と異ならない構造的要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言とは本質的ではない差を有する均等な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0025】
8 エンジン中心軸
10 ガスタービンエンジン
12 ファンセクション
12a〜c ファンロータ段
14 周囲空気
18 高圧圧縮機(HPC)
20 燃焼器
21 バイパスダクト
22 高圧タービン(HPT)
23 スプリッタ
24 低圧タービン(LTP)
28 低圧シャフト
29 高圧ロータ
30 入口案内翼(IGV)
31 静翼
31a〜c 静翼
34 エーロフォイル
39a〜c ロータハブ
40 ロータブレード、ファンブレード
40a〜c ロータブレード
41 前縁部
42 後縁部
43 圧力面
44 負圧面
45 翼根部
46 ブレード先端
47 ブレード
48 隙間
50 ケーシング
51 シュラウドセグメント
52 ブレード先端領域
53 内側表面
54 溝部
74 エンジン制御システム
112 失速線
114 作動線
116 作動線
118 項目
120 項目、等高線
122 一定速度線
124 一定速度線
200 先端漏れ渦
500 システム
502 圧力センサ
504 入力信号
506 ファンロータ速度信号
510 相関プロセッサ
512 安定性相関信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータにおける失速の開始を検出するためのシステムであって、
前記ロータ上で円周方向に配置されたブレード列の先端から、半径方向外側に離間されて位置する静的コンポーネント上に配置されたセンサであり、前記ブレード先端の近傍位置における流れパラメータに対応する入力信号を生成できるセンサと、
ロータ速度信号を生成できる制御システムと、
前記入力信号および前記ロータ速度信号を受け取ることができ、安定性相関信号を生成する相関プロセッサと
を備えるシステム。
【請求項2】
前記ブレード列の先端から、半径方向外側に離間されて位置する前記静的コンポーネント上に配置された複数のセンサをさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記センサが圧力センサである、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記センサが、前記ブレード先端の近傍位置における動圧に対応する圧力信号を生成できる圧力センサである、請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記ロータの回転軸の周りにあり、かつ前記ブレード列の先端から半径方向外側に離間されて位置する前記静的コンポーネント上で円周方向に配置された複数のセンサをさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記静的コンポーネントがケーシングである、請求項2記載のシステム。
【請求項7】
前記静的コンポーネントがシュラウドである、請求項2記載のシステム。
【請求項8】
前記ロータが、複数のファンロータを備える、請求項1乃至7のいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
前記センサが、ブレードの翼弦中央に対応する前記静的構造上の位置に配置される、請求項1乃至8のいずれか1項記載のシステム。
【請求項10】
前記センサが、ブレードの前縁部に対応する前記静的構造上の位置に配置される、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
ファンロータにおける失速の開始を検出するためのシステムであって、
ファンのブレード列の先端を囲む静的なコンポーネント上に位置する圧力センサであり、前記ブレード先端の近傍位置における動圧に対応する入力信号を生成できる圧力センサと、
ファンロータの速度信号を生成できる制御システムと、
前記入力信号および前記ファンの速度信号を受け取ることができ、安定性相関信号を生成する相関プロセッサと
を備えるシステム。
【請求項12】
複数のファンロータをさらに備え、複数の圧力センサが、少なくとも2つのファンロータのファンブレード列の先端を囲む前記静的なコンポーネント上に配置される、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記ロータの回転軸の周りにあり、かつファンの前記ブレード列の先端から半径方向外側に離間されて位置する前記静的なコンポーネント上で円周方向に配置された複数のセンサをさらに備える、請求項11記載のシステム。
【請求項14】
ファンのブレード先端が、前記圧力信号の前記生成中、超音速で動作する、請求項11乃至13のいずれか1項記載のシステム。
【請求項15】
前記相関プロセッサが、相関信号を生成するために、複数の圧力センサからの前記入力信号と、前記ロータ速度信号とを受け取る、請求項11乃至14のいずれか1項記載のシステム。
【請求項16】
前記相関プロセッサが、複数の圧力センサからの前記入力信号と、前記ロータ速度信号とに基づいて相関信号を生成する、請求項11乃至14のいずれか1項記載のシステム。
【請求項17】
前記相関プロセッサが、少なくとも2つのファンロータのファンのブレード列の先端を囲む前記静的なコンポーネント上に位置する圧力センサからの前記入力信号に基づいて相関信号を生成する、請求項11乃至14のいずれか1項記載のシステム。
【請求項18】
前記静的なコンポーネントがケーシングである、請求項11乃至17のいずれか1項記載のシステム。
【請求項19】
前記静的なコンポーネントがシュラウドである、請求項11乃至17のいずれか1項記載のシステム。
【請求項20】
前記センサが、ファンのブレードの翼弦中央に対応する前記静的な構造上の位置に配置される、請求項11記載のシステム。
【請求項21】
前記センサが、ファンのブレードの前縁部に対応する前記静的な構造上の位置に配置される、請求項11記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−508155(P2011−508155A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540859(P2010−540859)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/088134
【国際公開番号】WO2009/086358
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】