フィルタ、デュプレクサおよび通信機器
【課題】バランス入力またはバランス出力が可能なフィルタにおいて、フィルタ特性を改善する。
【解決手段】フィルタは、端子1および端子2を含むバランス型入力端子、および端子3および端子4を含むバランス型出力端子を備え、入力されたバランス信号のうち通過帯域の信号を通過させるフィルタ部6と、フィルタ部6とシングル型端子との間に接続された平衡−不平衡変換器5を備える。フィルタ部6において、端子1と端子3との間(K1)の周波数伝達特性と、端子2と端子4との間(K2)の周波数伝達特性とは互いに異なる。
【解決手段】フィルタは、端子1および端子2を含むバランス型入力端子、および端子3および端子4を含むバランス型出力端子を備え、入力されたバランス信号のうち通過帯域の信号を通過させるフィルタ部6と、フィルタ部6とシングル型端子との間に接続された平衡−不平衡変換器5を備える。フィルタ部6において、端子1と端子3との間(K1)の周波数伝達特性と、端子2と端子4との間(K2)の周波数伝達特性とは互いに異なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末、PHS(Personal Handy-phone System)端末、無線LANシステムなどの移動体通信(高周波無線通信)機器に搭載されるフィルタ、デュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電材料に交流電圧をかけることにより発生する弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)や厚み振動波(BAW:Bulk Acoustic Wave)を利用する共振器を複数組み合わせることにより、高周波通信用のフィルタを構成することができる。このようなフィルタは、特定の周波数帯の電気信号のみを通過させる特徴を持つ。例えば、特許文献1には、SAWフィルタなどと同様の機能を有するFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)を梯子状に接続して構成されたラダーフィルタが開示されている。
【0003】
また、近年では、圧電基板とその上に形成した媒体との境界を中心に伝搬する境界波フィルタも開発されている。このような、SAW、BAW、境界波等を利用したフィルタは、他の誘電体フィルタやセラミックフィルタに比して外形サイズが小さく、かつ急峻なロールオフ特性を持つ。そのため、このようなフィルタは、小型で、狭い比帯域幅が要求される携帯電話等の移動体通信部品に適している。
【0004】
このようなフィルタの応用部品として、デュプレクサがある。デュプレクサは、送受信機能を持ち、例えば、送信信号と受信信号の周波数が異なる無線装置において用いられる。
【特許文献1】特開2001−24476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでデュプレクサの入出力端子は、殆どのケースにおいてシングルエンドに限られていた(例えば、特許文献1参照)。しかし、今後のRFアーキテクチャーの動向は、受信フィルタの後段に接続されるLNA(Low Noise Amplifier)がバランス入力に対応する傾向にある。それに伴い、LNAの入力端子に接続するデュプレクサの受信フィルタの出力端子は、バランス出力に対応する必要性が出てきている。そのため、バランス出力またはバランス入力に対応できるフィルタが求められる。そして、そのようなフィルタにおいても、フィルタ特性を改善することが求められる。
【0006】
本発明の目的は、バランス入力またはバランス出力が可能なフィルタにおいて、フィルタ特性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示するフィルタは、端子1および端子2を含むバランス型入力端子、および端子3および端子4を含むバランス型出力端子を備え、前記バランス型入力端子から入力されたバランス信号のうち、通過帯域の信号を通過させて前記バランス型出力端子から出力するフィルタ部と、前記フィルタ部のバランス型入力端子とシングル型端子との間に接続され、前記シングル型端子から入力された信号を互いに逆移相の2つの信号に分けて前記バランス型入力端子の端子1および端子2へそれぞれ入力する平衡−不平衡変換器、あるいは、前記バランス型出力端子とシングル型端子との間に接続され、前記バランス型出力端子の端子3および端子4から出力されたバランス信号を合成して前記シングル型端子に出力する平衡−不平衡変換器を備え、前記フィルタ部において、前記端子1と前記端子3との間の周波数伝達特性と、前記端子2と前記端子4との間の周波数伝達特性とが、互いに異なる。
【0008】
例えば、上記構成のフィルタにおいて、シングル型端子から入力された信号が、平衡−不平衡変換器、端子1、2およびフィルタ部を経て端子3、端子4からバランス出力される場合、シングル型端子―端子3間の周波数伝達特性と、シングル型端子−端子4間の周波数伝達特性とが一致する場合に、バランス特性(例えば、振幅バランス特性と位相バランス特性)が理想的になる。そのため、従来、フィルタ部における端子1−端子3間の周波数伝達特性と端子2−端子3間の周波数伝達特性が等しくなるように設計(対称設計)されていた。これに対して、上記構成のフィルタでは、前記端子1と前記端子3との間の周波数伝達特性と、前記端子2と前記端子4との間の周波数伝達特性とが、互いに異なるように構成される。これにより、バランス特性を、対称設計時よりも理想状態に近づけることが可能になることが、本願発明者によって見出されている。なお、端子1、2から入力されたバランス信号が、フィルタ部および平衡−不平衡変換器を経てシングル型端子から出力される場合も、同様に、バランス特性を理想状態に近づけることができる。すなわち、シングル型端子とバランス型端子を備えるフィルタにおいて、バランス特性の改善が可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本願明細書に開示によれば、バランス入力またはバランス出力が可能なフィルタにおいて、フィルタ特性を改善することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態として、前記フィルタ部において、前記端子1−端子3間にシングルエンド型フィルタ1が接続され、前記端子2−端子4間にシングルエンド型フィルタ2が接続されており、シングルエンド型フィルタ1とシングルエンド型フィルタ2の周波数伝達特性が互いに異なる態様とすることができる。
【0011】
上記構成のように、フィルタ部に、シングルエンド型フィルタ1およびシングルエンド型2を設けることにより、端子1−端子3間の周波数伝達特性と、端子2−端子4間の周波数伝達特性とを異ならせることが容易になる。
【0012】
本発明の実施形態において、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、ラダー型フィルタであり、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が互いに異なるか、あるいは、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は共振周波数または静電容量が互いに異なる態様とすることができる。
【0013】
上記構成のように、ラダー型フィルタの共振器の配置構成あるいは、相対応する共振器の共振周波数または静電容量を互いに異ならせることにより、さらに容易に、周波数伝達特性を異ならせることができる。
【0014】
本発明の実施形態において、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期の少なくとも1つが互いに異なる態様とすることができる。
【0015】
このように、対応する共振器対の櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期の少なくとも1つを互いに異ならせることによって、共振周波数または静電容量を互いに異ならせることができる。
【0016】
本発明の実施形態において、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、圧電薄膜共振器により構成され、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さの少なくとも1つが互いに異なる態様としてもよい。
【0017】
このように、対応する共振器対の圧電薄膜共振器の形状、共振部の面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さの少なくとも1つを互いに異ならせることによって、共振周波数または静電容量を互いに異ならせることができる。
【0018】
本発明の実施形態において、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、入力IDTおよび出力IDTを備える弾性表面波または弾性境界波を用いたダブルモード型フィルタであり、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、入力IDTの対数、出力IDTの対数、入出力IDTの開口長、並びにIDTおよび反射器部の周期のうち少なくとも1つが互いに異なる態様としてもよい。
【0019】
本発明の実施形態において、前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された並列共振器とを含むラダー型またはラティス型のバランスフィルタであり、前記端子1からn番目の直列共振器および前記端子2からn番目の直列共振器においては、共振周波数または静電容量が互いに異なる態様としてもよい。
【0020】
上記構成により、端子1−端子3間の周波数伝達特性と、端子2−端子4間の周波数伝達特性とを異ならせることが容易になる。
【0021】
本発明の実施形態において、前記バランスフィルタは、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、前記端子1からn番目の直列共振器と前記端子2からn番目の直列共振器は、櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期の少なくとも1つが互いに異なる態様としてもよい。
【0022】
本発明の実施形態において、前記バランスフィルタは、圧電薄膜共振器から構成され、前記端子1からn番目の直列共振器と前記端子2からn番目の直列共振器は、圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さのうち少なくとも1つが互いに異なる態様としてもよい。
【0023】
本発明の実施形態において、前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された複数の並列共振器とを含むラティス型のバランスフィルタであり、前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と共振周波数または静電容量が異なる態様としてもよい。
【0024】
上記構成により、端子1−端子3間の周波数伝達特性と、端子2−端子4間の周波数伝達特性とを異ならせることがさらに容易になる。
【0025】
本発明の実施形態において、前記バランスフィルタは、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期のうち少なくとも1つが異なる態様とすることができる。
【0026】
本発明の実施形態において、前記バランスフィルタは圧電薄膜共振器により構成され、前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さのうち少なくとも1つが異なる態様とすることができる。
【0027】
共通端子と、送信端子と、受信端子とを有するデュプレクサであって、前記共通端子と前記送信端子との間に接続される送信フィルタと、前記共通端子と前記受信端子との間に接続される受信フィルタとを備え、前記送信フィルタおよび前記受信フィルタのうち少なくとも1つが、上記フィルタであるデュプレクサも、本発明の一実施形態である。また、そのようなデュプレクサを備える通信機器も、本発明の一実施形態である。
【0028】
本願開示のフィルタ設計方法は、コンピュータが、フィルタを構成する共振器の最適な配置構成および特性値を算出するフィルタ設計方法であって、シングル型端子と端子1および端子2を含むバランス型端子A1との間に接続された平衡−非平衡変換回路と、前記バランス型端子A1と端子3および端子4を含むバランス型端子A2との間に接続され、複数の共振器を備えるフィルタ回路を表す回路設計データであって、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器の配置構成および特性値と、前記端子2−前記端子4間の経路における共振器の配置構成および特性値とが等しい回路設計データを、前記コンピュータがアクセス可能な記録部に格納する設定工程と、前記回路設計データが示す前記共振器の配置構成または特性値を、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器と前記端子2−前記端子4間の経路における共振器とで異なるように変更する変更工程と、前記変更工程で変更された前記回路設計データを前記記録部から読み出して、前記シングル型端子と前記バランス型端子A2との間の周波数伝達特性を計算するシミュレーション工程と、前記シミュレーション工程で計算された周波数伝達特性から評価データを生成する評価工程と、前記評価工程で生成される評価データに基づいて、前記共振器の特性値変更の仕方を決定して前記変更工程を実行し、さらに、前記シミュレーション工程および評価工程を繰り返すことにより、前記共振器の最適な配置構成および最適な特性値を算出する最適化工程とを含む。
【0029】
上記方法では、まず、設定工程で、端子1−端子3間の周波数伝達特性と端子2−端子4間の周波数特性が等しくなるように設計データが設定される。その後、変更工程で、共振器の特性値が、端子1−端子3間と端子2−端子4間で互いに異なるように設計データが変更される。そして、シングル型端子−バランス型端子A2間の周波数伝達特性がシミュレーション解析により計算されて、評価値が算出される。最適化工程では、評価値に基づく共振器の配置構成または特性値の変更、シミュレーションおよび評価が繰り返される。これにより、周波数伝達特性が改善するような、共振器の配置構成および特性値の最適解が決定される。そのため、端子1−端子3の構成と端子2−端子4間の構成が同じである場合に比べて、さらに、周波数伝達特性が改善したフィルタの設計データが得られる。
【0030】
(第1の実施形態)
[概略構成]
図1は、第1の実施の形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図である。このデュプレクサは、平衡−不平衡変換器5(以下、変換回路5と称する)、受信フィルタ6および送信フィルタ7を備える。シングル型端子(シングルエンド)であるアンテナ端子(共通端子)Antは、送信フィルタ7および変換回路5に接続されている。変換回路5は、アンテナ端子Antを介して入力されたシングル信号(受信信号)をバランス信号に変換して出力する素子である。したがって、変換回路5の入力端子は1系統であるシングル端子で構成され、出力端子は2系統であるバランス端子(端子1、端子2)で構成されている。
【0031】
この端子1および端子2が、受信フィルタ6のバランス入力端子となり、端子3および端子4がバランス出力端子となる。すなわち、受信フィルタ6は、端子1および端子2から入力された受信信号(バランス信号)のうち、所定の周波数帯域(受信周波数帯域)のみを通過させ、端子3および端子4からバランス出力するフィルタ部である。したがって、端子3および端子4は、受信端子Rx1、Rx2と呼ぶこともできる。
【0032】
なお、図示しないが、送信フィルタ7と変換回路5との間に、位相整合回路が接続されてもよい。この位相整合回路は、受信フィルタ6のインピーダンスの位相を調整することにより、送信フィルタ7から出力される送信信号が受信フィルタ6側に流れ込むのを防ぐ役割を果たすことができる。
【0033】
受信フィルタ6は、端子1と端子3間の信号経路を経路K1、端子2と端子4間の信号経路を経路K2とした場合、経路K1と経路K2の周波数伝達特性が互いに異なるように構成される。この構成により、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間のバランス特性(振幅バランス特性と位相バランス特性)を理想状態に近づけることができる。ひいては、受信フィルタ6の通過特性も改善される。
【0034】
従来、バランス入力端子とバランス出力端子を有するバランスフィルタにおいては、経路K1と経路K2の周波数伝達特性は互いに等しくなるように設計されていた。これは、経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに等しくすることで、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間のバランス特性を理想状態に近くできると考えられていたためである。
【0035】
このような背景のもと、経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに異ならせることで、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間のバランス特性を理想状態に近づけることができることが見出された。すなわち、経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに異ならせることで、経路K1と経路K2の周波数伝達特性が等しい場合の構成よりもバランス特性を改善できることが見出された。なお、経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに異ならせるための構成は、特に限定されない。以下に、その構成の具体例を説明する。
【0036】
[構成の具体例]
図2は、受信フィルタ6が、2つのシングルエンド型フィルタを備えるバランス入出力型フィルタである場合の構成例を示す図である。図2に示す例では、端子1−端子3間にシングルエンド型フィルタ61(以下、フィルタ61と称する)が接続され、端子2−端子4間にシングルエンド型フィルタ62(以下、フィルタ62と称する)が接続される。このようなバランス入出力型フィルタにおいて経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに異ならせるためには、フィルタ61、62各々の周波数伝達特性を互いに異ならせればよい。
【0037】
図3は、図2に示すフィルタ61、62および変換回路5の詳細な構成例を示す図である。図3に示す例では、変換回路5は、シングル端子Comを入力端子とし、端子1および端子2を出力端子とするバラン(平衡−不平衡変換器)である。
【0038】
変換回路5は、シングル端子Comに入力された信号の位相を約90°遅らせて端子1に出力すると同時に、シングル端子Comに入力された信号の位相を約90°進ませて端子2にも出力する。図3に示す例では、変換回路5は、コイルL、コンデンサCを用いて構成される。そして、変換回路5の出力端子である端子1および端子2には、フィルタ61およびフィルタ62がそれぞれ接続されている。
【0039】
フィルタ61およびフィルタ62は、いずれもラダー型フィルタである。フィルタ61は、直列腕に接続された直列共振器L1−S1〜S4、および並列腕に接続された並列共振器L1−P1〜P4を備える。フィルタ62も同様に、直列共振器L2−S1〜S4および並列共振器L2−P1〜P4を備える。
【0040】
フィルタ61とフィルタ62では、共振器の個数および直列共振器と並列共振器の配列が同一である。このような場合、ラダー型フィルタの共振器の配置構成が同一であるという。共振器の配置構成が同一の場合に、経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに異ならせるためには、フィルタ61と62の相対応する共振器対(例えば、L1−S3とL2−S3)の特性を互いに異なるようにすればよい。例えば、直列共振器L1−S3およびL2―S3それぞれの共振周波数や静電容量を互いに異ならせることにより、経路K1と経路K2の周波数伝達特性が異なる構成となる。
【0041】
この場合、直列共振器L1−S3およびL2―S3の共振周波数および静電容量の値は、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の周波数伝達特性が改善するような値に設定される。すなわち、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の特性が改善するように、直列共振器L1−S3およびL2―S3の周波数伝達特性が設定される。例えば、市販の回路シミュレーションソフトを用いて、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の特性が改善するような、直列共振器L1−S3およびL2―S3の特性値(例えば、共振周波数や静電容量)を計算することができる。具体的な計算例については後述する。なお、1対の相対応する共振器対のみたけでなく、複数の共振器対において互いに特性が異なるように設定されてもよい。
【0042】
次に、共振器の構造例について説明する。図4に、図3に示すラダー型フィルタを構成する共振器の構造例を示す。図4(a)は、一端子対共振器の回路図を示す図である。図4(b)は、弾性表面波共振器の構造例を示す図である。なお、弾性境界波共振器も図4(b)と同様に構成することができる。図4(b)に示す弾性表面波共振器は、圧電基板8上に設けられたIDT(Interdigital Transducer:すだれ状電極)9と、その両側に設けられた反射器10a、10bを備える。IDT9には、入力端子Inと出力端子Outが線路パターンを介して接続されている。ここで、IDT9の対数、開口長、IDTおよび反射器の周期等を変更することで、共振器の周波数伝達特性を変化させることができる。これにより、共振器が設けられた経路の周波数伝達特性を制御することができる。
【0043】
図4(c)は、圧電薄膜共振器の構造の一例を示す上面図であり、図4(d)は、図4(c)に示す圧電薄膜共振器のA−A線に沿う断面図である。圧電薄膜共振器は、基板11上に、下部電極13、圧電膜14、上部電極15、付加膜16が順に積層されて形成される。下部電極13、圧電膜14、上部電極15が重なる部分が共振部であり、基板11における、前記共振部の下側は、貫通穴11aが設けられる。圧電薄膜共振器の周波数伝達特性は、例えば、共振部の面積や形状、上部電極15の膜厚、下部電極13の膜厚、圧電膜14の膜厚、付加膜16の膜厚等を変更することで変化する。そのため、圧電薄膜共振器がフィルタ61、62に用いられた場合は、これらの圧電薄膜共振器の設計値を調節することにより、経路K1、K2の周波数伝達特性を制御することができる。
【0044】
図5(a)は、図3に示す回路構成において、フィルタ61の共振器L1−S1〜S4、L1−P1〜P4の特性と、フィルタ62の対応する共振器L1−S1〜S4、L1−P1〜P4の特性とが全て同じである場合(同一の設計の場合)のアンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の信号の通過特性の計算結果を示すグラフである。図5(a)において、太い実線s11はAnt−Rx1間の通過特性、細い実線s12はAnt−Rx2間の通過特性を示す。
【0045】
図5(b)は、フィルタ61の共振器L1−S1〜S4、L1−P1〜P4の特性と、それぞれ対応する、フィルタ62の共振器L1−S1〜S4、L1−P1〜P4の特性とを全て互いに異なる周波数伝達特性を持つように設計した場合(異なる設計)のアンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の信号の通過特性の計算結果を示すグラフである。図5(b)において、太い実線d11はAnt−Rx1間の通過特性、細い実線d12はAnt−Rx2間の通過特性を示す。
【0046】
図6(a)および図6(b)は、図5(a)および図5(b)の通過帯域付近をそれぞれ拡大したグラフである。図6(a)および図6(b)のグラフにおいては、同一設計の場合のs11とs12の差異より、異なる設計の場合のd11とd12の差異の方が小さくなっている。すなわち、フィルタ61とフィルタ62で対応する共振器の特性を異なるように設計することで、受信端子Rx1およびRx2からバランス出力される信号間の差異が小さくなっている。
【0047】
図7(a)および図7(b)は、Ant端子−受信端子Rx1、Rx2間の信号のバランス出力をシングルエンドに変換して計算した通過特性を示すグラフである。細い実線s1は、図3に示す回路構成でフィルタ61とフィルタ62が同一設計の場合、太い実線d1は、フィルタ61とフィルタ62が異なる設計の場合の通過特性をそれぞれ表す。図7(b)は、図7(a)の通過帯域付近を拡大したグラフである。
【0048】
図7(a)および図7(b)のグラフにおいて、通過帯域内において、g1が示す損失は、s1が示す損失より低減していることが示される。すなわち、フィルタ61およびフィルタ62で共振器の特性を異なる設計にすることによって通過帯域における損失が低減している。なお、図5〜図7に示すグラフにおいて、縦軸は損失[dB]、横軸は周波数[MHz]を表す。
【0049】
図8(a)は、Ant―Rx1の信号とAnt−Rx2の信号との振幅バランス特性を示すグラフである。細い実線s2は、フィルタ61、62の共振器が同じ設計の場合の、Ant−Rx1の信号の振幅とAnt−Rx2の信号の振幅との差異の程度を表す。太い実線d2は、フィルタ61、62の共振器が異なる設計の場合のAnt−Rx1の信号の振幅とAnt−Rx2の信号の振幅との差異の程度を表す。
【0050】
図8(b)は、Ant―Rx1とAnt−Rx2との位相バランス特性を示すグラフである。細い実線s3は、フィルタ61、62の共振器が同じ設計の場合の、Ant−Rx1の信号の位相とAnt−Rx2の信号の位相とのずれの程度を表す。太い実線d2は、フィルタ61、62の共振器が異なる設計の場合のAnt−Rx1の信号の位相とAnt−Rx2の信号の位相とずれの度合いを表す。
【0051】
図7(a)(b)および図8(a)(b)のグラフは、フィルタ61、62で共振器を異なる設計にすることにより、振幅バランス特性および位相バランス特性の双方とも改善していることを示している。
【0052】
[最適設計時の計算例]
次に、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の特性が改善するような、フィルタ6の共振器の配置構成または特性値を計算する方法の一例を説明する。図9は、このような計算を実行する設計システムの構成例を示す図である。図9に示す設計システム20は、UI部21、記録部22、初期設定部23、シミュレータ24、評価部25、最適化部26および設計変更部27を備える。
【0053】
設計システム20は、パーソナルコンピュータやサーバマシン等の汎用コンピュータに所定のプログラムをインストールすることにより実現される。上記UI部21、初期設定部23、シミュレータ24、評価部25、最適化部26および設計変更部27の各機能部は、コンピュータのCPUが所定のプログラムを実行することによって実現される。また、記録部22は、コンピュータが内蔵されたRAM、ROM、HDD等の記録装置あるいは外部記録装置により実現される。したがって、上記各機能を実現するためのプログラムまたはそれを記録した記録媒体も本発明の実施形態に含まれる。
【0054】
UI部21は、回路設計者等のユーザからデータ入力を受け付けたり、ユーザに対してデータを提供したりするためのユーザインタフェース部である。UI部21は、例えば、フィルタの初期設計データや設計データの変更条件等のデータ入力の受け付ける。UI部21は、マウス、キーボード等の入力デバイスおよびディスプレイ等の出力デバイス(図示せず)を介してユーザとデータのやり取りを行う。
【0055】
初期設定部23は、UI部21を介して入力されたユーザからの指示に基づいて、フィルタの初期設計データを記録部22に記録する。この設計データには、例えば、回路を構成する回路素子の接続関係を表す回路構成データと、各回路素子の特性値を表す回路素子特性値が含まれる。回路構成データとして、例えば、図3に示したデュプレクサの回路構成を示すデータが記録される。回路素子特性値として、例えば、図3に示すフィルタ61、62を構成する各共振器L1−S1〜S4、P1〜P4、L2−S1〜S4、P1〜P4各々の共振周波数および静電容量が記録される。また、初期設定部23は、設計データの最適化処理(後述)において変更すべきデータとその変更範囲を特定する変更条件データも記録部22に記録することができる。
【0056】
初期設定部23は、このような初期の設計データおよび変更条件データを、ユーザからのUI部21を介した入力により取得してもよいし、ユーザが指定したファイルを、他の記録装置等から読み込むことによって取得してもよい。
【0057】
シミュレータ24は、記録部22の設計データを読み出して、設計データで示される回路のシミュレーションを実行する。シミュレーション結果として、例えば、ある端子間の周波数伝達特性(通過特性)あるいはバランス特性等が、評価部25へ出力される。シミュレータ24の機能の実現には、市販の回路シミュレーションソフトを用いることができる。
【0058】
評価部25は、シミュレータ24のシミュレーション結果に基づいて、回路の評価値を算出する。評価値は、例えば、回路の所定端子間の通過特性や、バランス特性が理想状態にどの程度近づいているかを示す値であってもよいし、所定の端子間の通過特性やバランス特性の値そのものであってもよい。
【0059】
最適化部26は、評価部25の算出した評価値を基に、設計データが最適であるか否かを判断し、最適でなければ、設計変更部27に設計データを変更させる。最適であるか否かの判断は、例えば、評価値が改善したか、評価値に改善の余地があるか等により判断される。この判断には、例えば、評価値、シミュレーションの回数、評価値の変化の度合い等を用いることができる。
【0060】
設計変更部27は、最適化部26から指示に従い、設計データにおける、回路構成データおよび/または回路素子特性値を変更する。例えば、図3に示したデュプレクサにおける各共振器のうち対応する一対の共振器L1−S1、L2−S1の共振周波数および静電容量が変更される。ここで、回路構成または共振器の特性値のいずれを変更するかの判断や、あるいは、変更対象の共振器対、変更対象の特性値の種類等をいずれにするかの判断は、記録部22に記録された変更条件データに基づいて決定することができる。
【0061】
また、変更条件データで定められた変更対象の設計データをどのように変更するかは、最適化部26が評価値に基づいて決定することもできる。なお、このような最適化部26による最適化手法として、例えば、シミュレーテッドアニーリング(SA:Simulated Annealing)法、遺伝アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)、シンプレックス法(Simplex method)等公知の手法を用いることができる。
【0062】
設計変更部27が設計データを変更すると、シミュレータ24および評価部25は、変更後の設計データについて計算を繰り返す。最適化部26は、評価値が最適になった(最適解が得られた)と判断すると、その時の設計データを最適な設計データとして記録部22に記録する。これにより、記録部22の設計データが最適化される。
【0063】
図10は、設計システム20による処理の例を示すフローチャートである。図10に示す例では、まず、初期設定部23が、ユーザからUI部21を介して、デュプレクサの初期設計データの入力を受け付け、記録部22に記録する(Op1)。
【0064】
ここでは、一例として、図3に示したデュプレクサの回路構成を示す設計データが初期設計データとして記録される場合について説明する。初期設計データにおいては、フィルタ61とフィルタ62とは、共振器の配置構成および共振器の特性値は全て等しくなっている。すなわち、フィルタ61とフィルタ62の周波数伝達特性が同一である回路の設計データが初期設計データとなる。
【0065】
初期設定部23は、設計データの変更条件データも、UI部21を介してユーザから受け付け、記録部22に記録する(Op2)。変更条件データは、例えば、フィルタ61、62とで周波数伝達特性を異ならせるために変更するべき項目や、その変更幅,その他の変更条件を特定するデータである。
【0066】
初期設計データおよび変更条件データが記録部22に記録されると、シミュレータ24が、設計データを読み出し、デュプレクサにおけるアンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の通過特性およびバランス特性を計算する(Op3)。シミュレータ24は、これらの計算結果である通過特性およびバランス特性を評価部25へ通知する。
【0067】
評価部25は、通過特性およびバランス特性を基に評価値を計算する(Op4)。評価値の例として、通過帯域における損失の平均、受信端子Rx1の信号とRx2の信号との振幅の差の通過帯域における平均値、受信端子Rx1、Rx2間の位相差の180°からずれ量の通過帯域における最大値等が挙げられる。
【0068】
最適化部26は、評価値を基に設計データが最適になっているか否かを判断する(Op5)。最適化部26は、最適解が得られる(Op5でYES)まで、設計変更部に設計データを変更させ(Op6)、Op3およびOp4の処理を繰り返させる。Op6において、設計変更部27は、変更条件データの示す条件に従って、設計データを変更する。
【0069】
一例として、変更条件データで示される変更項目が、直列共振器L1―S1〜S4、L2−S1〜S4の周波数および静電容量である場合、設計変更部27は、フィルタ61とフィルタ62とで相対応する共振器の共振周波数または静電容量が異なるように変更する。このときの変更の幅は、例えば、予め更新条件データに記録しておくことができる。
【0070】
なお、Op5の判断およびOp6の変更は、例えば、SA法や、GA法等の公知の最適化方法を用いることができる。例えば、また、SA法を用いることにより、設計変更部27は、評価値がよくなる確率が高くなるように、設計データの変更を繰り返すことができる。
【0071】
以上のように、図10に示した処理では、まず、フィルタ61とフィルタ62が同じ共振器の配置構成で、共振器の特性も等しくなるように対称設計され、その後、フィルタ61およびフィルタ62の回路パラメータ(上記例では、共振周波数と静電容量)を様々に変化させて、周波数伝達特性が改善させる値を探索する最適化処理が実行される。これにより、Ant端子−受信端子Rx、Rx2間の通過特性およびバランス特性が改善されるように、フィルタ61とフィルタ62の周波数伝達特性を異ならせ、最適な設計データを得ることができる。
【0072】
なお、上記処理では、図3に示すフィルタ6において、2つのシングルエンドラダー型フィルタの相対応する共振器の特性を異ならせる場合について説明したが、図10に示した処理の適用対象となる回路構成はこれに限られない。例えば、下記の第2〜6の実施形態に示すような様々なバランス出力型フィルタも、上記図10の処理により最適化設計が可能になる。
【0073】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図である。図11において、図3と同様の回路素子には、同じ番号を付す。図11に示す例では、フィルタ61とフィルタ62aの共振器の配置構成が異なっている。すなわち、フィルタ61は、4段のラダー型フィルタであるのに対し、フィルタ62aは3段のラダー型フィルタである。このように、ラダー型フィルタの段数が異なると、周波数伝達特性も異なる。
【0074】
そのため、例えば、図10に示した処理で、フィルタ61およびフィルタ62のラダー型フィルタの段数の組み合わせを様々に変化させて、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の通過特性および/またはバランス特性が改善される組み合わせを決定することができる。
【0075】
なお、共振器の配置構成が異なる構成は、図11に示すようにラダー型フィルタの段数を異ならせる例に限られない。また、フィルタ61およびフィルタ62aで、相対応する共振器対(例えば、共振器L1−S1とL2−S1)の特性が互いに異なる構成であってもよい。
【0076】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図である。図12において、図3と同様の回路素子には、同じ番号を付す。図12に示す例では、受信フィルタ6として、バランス型ラダーフィルタ6bが用いられている。すなわち、端子1−端子3間に直列共振器L1−S1〜S4が接続され、端子2−端子4間に直列共振器L2−S1〜4が接続されている。さらに、端子1−端子3の線路上のノードと、端子2−端子4の線路上のノードを、それぞれ繋ぐ並列共振器P1〜P4が設けられている。バランス型ラダーフィルタ6bでは、端子1からn番目の直列共振器と端子2からn番目の直列共振器(例えば、n=3の場合は、共振器L1−S3とL2−S3)の周波数伝達特性を互いに異なるようにすればよい。(nは1、2、3、4のうち少なくとも1つの値で成立すればよい。)なお、nの値およびn番目の直列共振器の適切な特性値は、例えば、図10に示した処理により決定することができる。これにより、デュプレクサにおいて、通過特性および/またはバランス特性を改善することができる。
【0077】
(第4の実施形態)
図13は、第4の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図である。図13において、図3と同様の回路素子には同じ番号を付す。図13に示す例では、受信フィルタ6として、バランス型ラティスフィルタ6cが用いられている。
【0078】
すなわち、端子1−端子3間に直列共振器L1−S1〜S3が接続され、端子2−端子4間に直列共振器L2−S1〜3が接続されている。さらに、端子1−端子3の線路上のノードと、端子2−端子4の線路上のノードを、それぞれ繋ぐ並列共振器P1〜P6が設けられている。
【0079】
バランス型ラティスフィルタ6cにおいては、端子1からn番目の直列共振器と端子2からn番目の直列共振器(例えば、n=3の場合は、共振器L1−S3とL2−S3)の周波数伝達特性を互いに異なるようにすればよい。(nは1、2、3のうち少なくとも1つの値で成立すればよい。)
また、複数の並列共振器P1〜P6のいずれか1つの周波数伝達特性を、他の並列共振器の周波数伝達特性と異なるようにしてもよい。このようにしても、端子1−端子3間の周波数特性と端子2−端子4間の周波数特性とを異ならせることができる。
【0080】
また、nの値およびn番目の直列共振器の適切な特性値あるいは、並列共振器の適切な特性値は、例えば、図10に示した処理により決定することができる。これにより、デュプレクサにおいて、通過特性および/またはバランス特性を改善することができる。
【0081】
(第5の実施形態)
図14は、第5の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図である。図14において、同様の回路素子には同じ番号を付す。図14に示す例では、受信フィルタ6dは、端子1−端子3間に接続されたダブルモード型フィルタ61dと、端子2−端子4間に接続されたダブルモード型フィルタ62dにより形成される。ダブルモード型フィルタは、弾性表面波や弾性境界波を用いたフィルタである。
【0082】
図15は、ダブルモード型弾性表面波フィルタの構成例を示す図である。図15のダブルモード型弾性表面波フィルタは、入力端子Inが接続された入力IDT29と、その両側に設けられた出力IDT31a、31bと、出力IDT31a、31bの外側に設けられた反射器32a、32bを備える。出力IDT31a、31bには出力端子Outが接続されている。
【0083】
この場合、ダブルモード型フィルタ61dと62dで、入力IDT29の対数、出力IDT31a、31bの対数、反射器32a、32bの対数、入力IDT29および出力IDT31a、31bの開口長などが互いに異なるようにすればよい。これにより、フィルタ61dと62dの周波数特性を異ならせることができ、ひいては、デュプレクサの通過特性および/またはバランス特性を改善することができる。
【0084】
(第6の実施形態)
上記第1〜第5の実施形態では、受信フィルタ6を、バランス入出力型フィルタで構成する場合について説明した。これらと同様に、送信フィルタ7も、バランス入出力型フィルタで構成されてもよい。図16は、送信フィルタ7も、バランス入出力型フィルタで構成される場合の回路構成を示す図である。
【0085】
図16に示す例では、送信フィルタ7は、端子1および端子2をバランス入力端子とし、端子3および端子4をバランス出力端子とするバランス入出力型フィルタである。送信フィルタ7は、端子1および端子2から入力されたバランス信号のうち、送信周波数帯域のみ通過させ、端子3および端子4からバランス出力するフィルタ部である。
【0086】
端子3および端子4には、変換回路5aが接続されている。変換回路5aは、端子3および端子4から入力されたバランス信号をシングル型の信号に変換してアンテナ端子Antへ出力する。
【0087】
図16に示す構成により、例えば、送信フィルタの前段にバランス出力型のパワーアンプ等を配することが可能になる。また、上記第1〜第5の実施形態と同様に、端子1−端子3間の経路K1と端子2−端子4間の経路K2との周波数伝達特性を異ならせることにより、送信端子Tx1、Tx2−アンテナAnt端子間の通過特性やバランス特性を改善することができる。
【0088】
図16に示す例では、送信フィルタ7は、2つのシングルエンド型のラダーフィルタ(フィルタ71、72)で構成されているが、送信フィルタ7に用いられ得るバランス入出力型フィルタの回路構成は、これに限られない。例えば、上記第2〜第5の実施形態における受信フィルタに用いられたフィルタが、同様に、送信フィルタに用いられてもよい。
【0089】
(第7の実施形態)
本実施形態は、上記の第1〜第5の実施形態で示したデュプレクサを備える通信機器である。
【0090】
図17は、図3に示す回路構成のデュプレクサを含む通信機器40の概略構成を示す図である。図17に示す構成要素において、図3に示す回路の構成要素と対応する部分には、同じ番号を付す。図17に示す通信機器40においては、モジュール基板41上に、送信フィルタ7、受信フィルタ6、変換回路5、パワーアンプ42、RFIC43、ベースバンドIC44が設けられている。受信フィルタ6、送信フィルタ7は、それぞれ半導体チップで形成することができる。変換回路5は、例えば、IPDチップで形成されてもよい。
【0091】
モジュール基板41に形成された配線パターンにより、アンテナ端子(共通端子)Antと送信フィルタ7および変換回路5との接続、変換回路5と受信フィルタ6との接続がなされている。なお、アンテナ端子Antは通信機器40が備えるアンテナ(図示せず)に接続される。
【0092】
送信端子Txはパワーアンプ42を介してRFIC43に接続され、受信端子Rx1、Rx2もRFIC43に接続されている。RFIC43はベースバンドIC44に接続されている。RFIC43は、半導体チップおよびその他の部品により構成されている。RFIC43には、受信端子Rx1、Rx2から入力された受信信号を処理するための受信回路および、パワーアンプ42を介してアンテナ端子Antに出力する送信信号を処理するための送信回路を含む回路を集積している。なお、パワーアンプ42は、RFIC43の送信回路から出力された送信信号を増幅して送信フィルタ7の送信端子Txへ入力する回路である。
【0093】
また、ベースバンドIC44も半導体チップおよびその他の部品により構成されている。ベースバンドIC44には、RFIC43に含まれる受信回路から受け取った受信信号を、音声信号やパッケットデータに変換するための回路と、音声信号やパッケットデータを送信信号に変換してRFIC43に含まれる送信回路に出力するため回路とが集積される。
【0094】
図示しないが、ベースバンドIC44には、例えば、スピーカ、ディスプレイ等の出力機器が接続されており、ベースバンドIC44で受信信号から変換された音声信号やパケットデータを出力し、通信機器40のユーザに認識させることができる。また、マイク、ボタン等の通信機器40が備える入力機器もベースバンドIC44に接続されており、ユーザから入力された音声やデータをベースバンドIC44が送信信号に変換することができる構成になっている。
【0095】
なお、通信機器40の構成は、図17に示す例に限られない。また、通信機器40の一部に用いられる部品の集合であるモジュールであって、上記第1〜第6の実施形態のデュプレクサを含むモジュールも本発明の実施形態に含まれる。
【0096】
また、例えば、変換回路5、受信フィルタ6および送信フィルタ7をそれぞれ形成するチップを、セラミックパッケージにフリップチップ実装して、メタルリッドをかぶせて気密封止することにより、上記第1〜第6の実施形態におけるデュプレクサのパッケージ部品を形成することができる。
【0097】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0098】
(付記1)
端子1および端子2を含むバランス型入力端子、および端子3および端子4を含むバランス型出力端子を備え、前記バランス型入力端子から入力されたバランス信号のうち、通過帯域の信号を通過させて前記バランス型出力端子から出力するフィルタ部と、
前記フィルタ部のバランス型入力端子とシングル型端子との間に接続され、前記シングル型端子から入力された信号を互いに逆移相の2つの信号に分けて前記バランス型入力端子の端子1および端子2へそれぞれ入力する平衡−不平衡変換器、あるいは、前記バランス型出力端子とシングル型端子との間に接続され、前記バランス型出力端子の端子3および端子4から出力されたバランス信号を合成して前記シングル型端子に出力する平衡−不平衡変換器を備え、
前記フィルタ部において、前記端子1と前記端子3との間の周波数伝達特性と、前記端子2と前記端子4との間の周波数伝達特性とが、互いに異なることを特徴とするフィルタ。
【0099】
(付記2)
前記フィルタ部において、前記端子1−端子3間にシングルエンド型フィルタ1が接続され、前記端子2−端子4間にシングルエンド型フィルタ2が接続されており、シングルエンド型フィルタ1とシングルエンド型フィルタ2の周波数伝達特性が互いに異なる、付記1に記載のフィルタ。
【0100】
(付記3)
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、ラダー型フィルタであり、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が互いに異なるか、あるいは、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は共振周波数または静電容量が互いに異なる、付記2に記載のフィルタ。
【0101】
(付記4)
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期の少なくとも1つが互いに異なる、付記3に記載のフィルタ。
【0102】
(付記5)
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、圧電薄膜共振器により構成され、
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さの少なくとも1つが互いに異なる、付記3に記載のフィルタ。
【0103】
(付記6)
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、入力IDTおよび出力IDTを備える弾性表面波または弾性境界波を用いたダブルモード型フィルタであり、
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、入力IDTの対数、出力IDTの対数、入出力IDTの開口長、並びにIDTおよび反射器部の周期のうち少なくとも1つが互いに異なる、付記3に記載のフィルタ。
【0104】
(付記7)
前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された並列共振器とを含むラダー型またはラティス型のバランスフィルタであり、
前記端子1からn番目の直列共振器および前記端子2からn番目の直列共振器においては、共振周波数または静電容量が互いに異なる、付記1に記載のフィルタ。
【0105】
(付記8)
前記バランスフィルタは、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、前記端子1からn番目の直列共振器と前記端子2からn番目の直列共振器は、櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期の少なくとも1つが互いに異なる、付記7に記載のフィルタ。
【0106】
(付記9)
前記バランスフィルタは、圧電薄膜共振器から構成され、前記端子1からn番目の直列共振器と前記端子2からn番目の直列共振器は、圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さのうち少なくとも1つが互いに異なる、付記7に記載のフィルタ。
【0107】
(付記10)
前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された複数の並列共振器とを含むラティス型のバランスフィルタであり、
前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と共振周波数または静電容量が異なる、付記1に記載のフィルタ。
【0108】
(付記11)
前記バランスフィルタは、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期のうち少なくとも1つが異なる、付記10に記載のフィルタ。
【0109】
(付記12)
前記バランスフィルタは圧電薄膜共振器により構成され、前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さのうち少なくとも1つが異なる、付記10に記載のフィルタ。
【0110】
(付記13)
共通端子と、送信端子と、受信端子とを有するデュプレクサであって、
前記共通端子と前記送信端子との間に接続される送信フィルタと、
前記共通端子と前記受信端子との間に接続される受信フィルタとを備え、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタのうち少なくとも1つが、付記1〜5のいずれか1項に記載のフィルタである、デュプレクサ。
【0111】
(付記14)
付記6に記載のデュプレクサを備える通信機器。
【0112】
(付記15)
コンピュータが、フィルタを構成する共振器の最適な配置構成および特性値を算出するフィルタ設計方法であって、
シングル型端子と端子1および端子2を含むバランス型端子A1との間に接続された平衡−非平衡変換回路と、前記バランス型端子A1と端子3および端子4を含むバランス型端子A2との間に接続され、複数の共振器を備えるフィルタ回路を表す回路設計データであって、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器の配置構成および特性値と、前記端子2−前記端子4間の経路における共振器の配置構成および特性値とが等しい回路設計データを、前記コンピュータがアクセス可能な記録部に格納する設定工程と、
前記回路設計データが示す前記共振器の配置構成または特性値を、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器と前記端子2−前記端子4間の経路における共振器とで異なるように変更する変更工程と、
前記変更工程で変更された前記回路設計データを前記記録部から読み出して、前記シングル型端子と前記バランス型端子A2との間の周波数伝達特性を計算するシミュレーション工程と、
前記シミュレーション工程で計算された周波数伝達特性から評価データを生成する評価工程と、
前記評価工程で生成される評価データに基づいて、前記共振器の特性値変更の仕方を決定して前記変更工程を実行し、さらに、前記シミュレーション工程および評価工程を繰り返すことにより、前記共振器の最適な配置構成および最適な特性値を算出する最適化工程とを含む、フィルタ設計方法。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】第1の実施の形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図
【図2】受信フィルタの構成例を示す図
【図3】図2に示すフィルタおよび変換回路の詳細な構成例を示す図
【図4】図3に示すラダー型フィルタを構成する共振器の構造例を示す図
【図5】図5(a)は、フィルタ61とフィルタ62が同一に設計された場合の通過特性の計算結果を示すグラフである。図5(b)は、フィルタ61とフィルタ62が異なるように設計された場合の通過特性の計算結果を示すグラフである。
【図6】図6(a)および図6(b)は、図5(a)および図5(b)の通過帯域付近をそれぞれ拡大したグラフである。
【図7】図7(a)および図7(b)は、バランス出力をシングルエンドに変換して計算した通過特性を示すグラフ
【図8】図8(a)は、振幅バランス特性を示すグラフである。図8(b)は、位相バランス特性を示すグラフである。
【図9】設計システムの構成例を示す図
【図10】設計システムによる処理の例を示すフローチャート
【図11】第2の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図
【図12】第3の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図
【図13】第4の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図
【図14】第5の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図
【図15】ダブルモード型弾性表面波フィルタの構成例を示す図
【図16】送信フィルタをバランス入出力型フィルタで構成した回路構成を示す図
【図17】図3に示すデュプレクサを含む通信機器の概略構成を示す図
【符号の説明】
【0114】
5 平衡−不平衡変換器(変換回路)
6 受信フィルタ
6b バランス型ラダーフィルタ
6c バランス型ラティスフィルタ
6d 受信フィルタ
7 送信フィルタ
20 設計システム
21 UI部
22 記録部
23 初期設定部
24 シミュレータ
25 評価部
26 最適化部
27 設計変更部
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末、PHS(Personal Handy-phone System)端末、無線LANシステムなどの移動体通信(高周波無線通信)機器に搭載されるフィルタ、デュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電材料に交流電圧をかけることにより発生する弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)や厚み振動波(BAW:Bulk Acoustic Wave)を利用する共振器を複数組み合わせることにより、高周波通信用のフィルタを構成することができる。このようなフィルタは、特定の周波数帯の電気信号のみを通過させる特徴を持つ。例えば、特許文献1には、SAWフィルタなどと同様の機能を有するFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)を梯子状に接続して構成されたラダーフィルタが開示されている。
【0003】
また、近年では、圧電基板とその上に形成した媒体との境界を中心に伝搬する境界波フィルタも開発されている。このような、SAW、BAW、境界波等を利用したフィルタは、他の誘電体フィルタやセラミックフィルタに比して外形サイズが小さく、かつ急峻なロールオフ特性を持つ。そのため、このようなフィルタは、小型で、狭い比帯域幅が要求される携帯電話等の移動体通信部品に適している。
【0004】
このようなフィルタの応用部品として、デュプレクサがある。デュプレクサは、送受信機能を持ち、例えば、送信信号と受信信号の周波数が異なる無線装置において用いられる。
【特許文献1】特開2001−24476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでデュプレクサの入出力端子は、殆どのケースにおいてシングルエンドに限られていた(例えば、特許文献1参照)。しかし、今後のRFアーキテクチャーの動向は、受信フィルタの後段に接続されるLNA(Low Noise Amplifier)がバランス入力に対応する傾向にある。それに伴い、LNAの入力端子に接続するデュプレクサの受信フィルタの出力端子は、バランス出力に対応する必要性が出てきている。そのため、バランス出力またはバランス入力に対応できるフィルタが求められる。そして、そのようなフィルタにおいても、フィルタ特性を改善することが求められる。
【0006】
本発明の目的は、バランス入力またはバランス出力が可能なフィルタにおいて、フィルタ特性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示するフィルタは、端子1および端子2を含むバランス型入力端子、および端子3および端子4を含むバランス型出力端子を備え、前記バランス型入力端子から入力されたバランス信号のうち、通過帯域の信号を通過させて前記バランス型出力端子から出力するフィルタ部と、前記フィルタ部のバランス型入力端子とシングル型端子との間に接続され、前記シングル型端子から入力された信号を互いに逆移相の2つの信号に分けて前記バランス型入力端子の端子1および端子2へそれぞれ入力する平衡−不平衡変換器、あるいは、前記バランス型出力端子とシングル型端子との間に接続され、前記バランス型出力端子の端子3および端子4から出力されたバランス信号を合成して前記シングル型端子に出力する平衡−不平衡変換器を備え、前記フィルタ部において、前記端子1と前記端子3との間の周波数伝達特性と、前記端子2と前記端子4との間の周波数伝達特性とが、互いに異なる。
【0008】
例えば、上記構成のフィルタにおいて、シングル型端子から入力された信号が、平衡−不平衡変換器、端子1、2およびフィルタ部を経て端子3、端子4からバランス出力される場合、シングル型端子―端子3間の周波数伝達特性と、シングル型端子−端子4間の周波数伝達特性とが一致する場合に、バランス特性(例えば、振幅バランス特性と位相バランス特性)が理想的になる。そのため、従来、フィルタ部における端子1−端子3間の周波数伝達特性と端子2−端子3間の周波数伝達特性が等しくなるように設計(対称設計)されていた。これに対して、上記構成のフィルタでは、前記端子1と前記端子3との間の周波数伝達特性と、前記端子2と前記端子4との間の周波数伝達特性とが、互いに異なるように構成される。これにより、バランス特性を、対称設計時よりも理想状態に近づけることが可能になることが、本願発明者によって見出されている。なお、端子1、2から入力されたバランス信号が、フィルタ部および平衡−不平衡変換器を経てシングル型端子から出力される場合も、同様に、バランス特性を理想状態に近づけることができる。すなわち、シングル型端子とバランス型端子を備えるフィルタにおいて、バランス特性の改善が可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本願明細書に開示によれば、バランス入力またはバランス出力が可能なフィルタにおいて、フィルタ特性を改善することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態として、前記フィルタ部において、前記端子1−端子3間にシングルエンド型フィルタ1が接続され、前記端子2−端子4間にシングルエンド型フィルタ2が接続されており、シングルエンド型フィルタ1とシングルエンド型フィルタ2の周波数伝達特性が互いに異なる態様とすることができる。
【0011】
上記構成のように、フィルタ部に、シングルエンド型フィルタ1およびシングルエンド型2を設けることにより、端子1−端子3間の周波数伝達特性と、端子2−端子4間の周波数伝達特性とを異ならせることが容易になる。
【0012】
本発明の実施形態において、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、ラダー型フィルタであり、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が互いに異なるか、あるいは、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は共振周波数または静電容量が互いに異なる態様とすることができる。
【0013】
上記構成のように、ラダー型フィルタの共振器の配置構成あるいは、相対応する共振器の共振周波数または静電容量を互いに異ならせることにより、さらに容易に、周波数伝達特性を異ならせることができる。
【0014】
本発明の実施形態において、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期の少なくとも1つが互いに異なる態様とすることができる。
【0015】
このように、対応する共振器対の櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期の少なくとも1つを互いに異ならせることによって、共振周波数または静電容量を互いに異ならせることができる。
【0016】
本発明の実施形態において、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、圧電薄膜共振器により構成され、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さの少なくとも1つが互いに異なる態様としてもよい。
【0017】
このように、対応する共振器対の圧電薄膜共振器の形状、共振部の面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さの少なくとも1つを互いに異ならせることによって、共振周波数または静電容量を互いに異ならせることができる。
【0018】
本発明の実施形態において、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、入力IDTおよび出力IDTを備える弾性表面波または弾性境界波を用いたダブルモード型フィルタであり、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、入力IDTの対数、出力IDTの対数、入出力IDTの開口長、並びにIDTおよび反射器部の周期のうち少なくとも1つが互いに異なる態様としてもよい。
【0019】
本発明の実施形態において、前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された並列共振器とを含むラダー型またはラティス型のバランスフィルタであり、前記端子1からn番目の直列共振器および前記端子2からn番目の直列共振器においては、共振周波数または静電容量が互いに異なる態様としてもよい。
【0020】
上記構成により、端子1−端子3間の周波数伝達特性と、端子2−端子4間の周波数伝達特性とを異ならせることが容易になる。
【0021】
本発明の実施形態において、前記バランスフィルタは、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、前記端子1からn番目の直列共振器と前記端子2からn番目の直列共振器は、櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期の少なくとも1つが互いに異なる態様としてもよい。
【0022】
本発明の実施形態において、前記バランスフィルタは、圧電薄膜共振器から構成され、前記端子1からn番目の直列共振器と前記端子2からn番目の直列共振器は、圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さのうち少なくとも1つが互いに異なる態様としてもよい。
【0023】
本発明の実施形態において、前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された複数の並列共振器とを含むラティス型のバランスフィルタであり、前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と共振周波数または静電容量が異なる態様としてもよい。
【0024】
上記構成により、端子1−端子3間の周波数伝達特性と、端子2−端子4間の周波数伝達特性とを異ならせることがさらに容易になる。
【0025】
本発明の実施形態において、前記バランスフィルタは、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期のうち少なくとも1つが異なる態様とすることができる。
【0026】
本発明の実施形態において、前記バランスフィルタは圧電薄膜共振器により構成され、前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さのうち少なくとも1つが異なる態様とすることができる。
【0027】
共通端子と、送信端子と、受信端子とを有するデュプレクサであって、前記共通端子と前記送信端子との間に接続される送信フィルタと、前記共通端子と前記受信端子との間に接続される受信フィルタとを備え、前記送信フィルタおよび前記受信フィルタのうち少なくとも1つが、上記フィルタであるデュプレクサも、本発明の一実施形態である。また、そのようなデュプレクサを備える通信機器も、本発明の一実施形態である。
【0028】
本願開示のフィルタ設計方法は、コンピュータが、フィルタを構成する共振器の最適な配置構成および特性値を算出するフィルタ設計方法であって、シングル型端子と端子1および端子2を含むバランス型端子A1との間に接続された平衡−非平衡変換回路と、前記バランス型端子A1と端子3および端子4を含むバランス型端子A2との間に接続され、複数の共振器を備えるフィルタ回路を表す回路設計データであって、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器の配置構成および特性値と、前記端子2−前記端子4間の経路における共振器の配置構成および特性値とが等しい回路設計データを、前記コンピュータがアクセス可能な記録部に格納する設定工程と、前記回路設計データが示す前記共振器の配置構成または特性値を、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器と前記端子2−前記端子4間の経路における共振器とで異なるように変更する変更工程と、前記変更工程で変更された前記回路設計データを前記記録部から読み出して、前記シングル型端子と前記バランス型端子A2との間の周波数伝達特性を計算するシミュレーション工程と、前記シミュレーション工程で計算された周波数伝達特性から評価データを生成する評価工程と、前記評価工程で生成される評価データに基づいて、前記共振器の特性値変更の仕方を決定して前記変更工程を実行し、さらに、前記シミュレーション工程および評価工程を繰り返すことにより、前記共振器の最適な配置構成および最適な特性値を算出する最適化工程とを含む。
【0029】
上記方法では、まず、設定工程で、端子1−端子3間の周波数伝達特性と端子2−端子4間の周波数特性が等しくなるように設計データが設定される。その後、変更工程で、共振器の特性値が、端子1−端子3間と端子2−端子4間で互いに異なるように設計データが変更される。そして、シングル型端子−バランス型端子A2間の周波数伝達特性がシミュレーション解析により計算されて、評価値が算出される。最適化工程では、評価値に基づく共振器の配置構成または特性値の変更、シミュレーションおよび評価が繰り返される。これにより、周波数伝達特性が改善するような、共振器の配置構成および特性値の最適解が決定される。そのため、端子1−端子3の構成と端子2−端子4間の構成が同じである場合に比べて、さらに、周波数伝達特性が改善したフィルタの設計データが得られる。
【0030】
(第1の実施形態)
[概略構成]
図1は、第1の実施の形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図である。このデュプレクサは、平衡−不平衡変換器5(以下、変換回路5と称する)、受信フィルタ6および送信フィルタ7を備える。シングル型端子(シングルエンド)であるアンテナ端子(共通端子)Antは、送信フィルタ7および変換回路5に接続されている。変換回路5は、アンテナ端子Antを介して入力されたシングル信号(受信信号)をバランス信号に変換して出力する素子である。したがって、変換回路5の入力端子は1系統であるシングル端子で構成され、出力端子は2系統であるバランス端子(端子1、端子2)で構成されている。
【0031】
この端子1および端子2が、受信フィルタ6のバランス入力端子となり、端子3および端子4がバランス出力端子となる。すなわち、受信フィルタ6は、端子1および端子2から入力された受信信号(バランス信号)のうち、所定の周波数帯域(受信周波数帯域)のみを通過させ、端子3および端子4からバランス出力するフィルタ部である。したがって、端子3および端子4は、受信端子Rx1、Rx2と呼ぶこともできる。
【0032】
なお、図示しないが、送信フィルタ7と変換回路5との間に、位相整合回路が接続されてもよい。この位相整合回路は、受信フィルタ6のインピーダンスの位相を調整することにより、送信フィルタ7から出力される送信信号が受信フィルタ6側に流れ込むのを防ぐ役割を果たすことができる。
【0033】
受信フィルタ6は、端子1と端子3間の信号経路を経路K1、端子2と端子4間の信号経路を経路K2とした場合、経路K1と経路K2の周波数伝達特性が互いに異なるように構成される。この構成により、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間のバランス特性(振幅バランス特性と位相バランス特性)を理想状態に近づけることができる。ひいては、受信フィルタ6の通過特性も改善される。
【0034】
従来、バランス入力端子とバランス出力端子を有するバランスフィルタにおいては、経路K1と経路K2の周波数伝達特性は互いに等しくなるように設計されていた。これは、経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに等しくすることで、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間のバランス特性を理想状態に近くできると考えられていたためである。
【0035】
このような背景のもと、経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに異ならせることで、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間のバランス特性を理想状態に近づけることができることが見出された。すなわち、経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに異ならせることで、経路K1と経路K2の周波数伝達特性が等しい場合の構成よりもバランス特性を改善できることが見出された。なお、経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに異ならせるための構成は、特に限定されない。以下に、その構成の具体例を説明する。
【0036】
[構成の具体例]
図2は、受信フィルタ6が、2つのシングルエンド型フィルタを備えるバランス入出力型フィルタである場合の構成例を示す図である。図2に示す例では、端子1−端子3間にシングルエンド型フィルタ61(以下、フィルタ61と称する)が接続され、端子2−端子4間にシングルエンド型フィルタ62(以下、フィルタ62と称する)が接続される。このようなバランス入出力型フィルタにおいて経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに異ならせるためには、フィルタ61、62各々の周波数伝達特性を互いに異ならせればよい。
【0037】
図3は、図2に示すフィルタ61、62および変換回路5の詳細な構成例を示す図である。図3に示す例では、変換回路5は、シングル端子Comを入力端子とし、端子1および端子2を出力端子とするバラン(平衡−不平衡変換器)である。
【0038】
変換回路5は、シングル端子Comに入力された信号の位相を約90°遅らせて端子1に出力すると同時に、シングル端子Comに入力された信号の位相を約90°進ませて端子2にも出力する。図3に示す例では、変換回路5は、コイルL、コンデンサCを用いて構成される。そして、変換回路5の出力端子である端子1および端子2には、フィルタ61およびフィルタ62がそれぞれ接続されている。
【0039】
フィルタ61およびフィルタ62は、いずれもラダー型フィルタである。フィルタ61は、直列腕に接続された直列共振器L1−S1〜S4、および並列腕に接続された並列共振器L1−P1〜P4を備える。フィルタ62も同様に、直列共振器L2−S1〜S4および並列共振器L2−P1〜P4を備える。
【0040】
フィルタ61とフィルタ62では、共振器の個数および直列共振器と並列共振器の配列が同一である。このような場合、ラダー型フィルタの共振器の配置構成が同一であるという。共振器の配置構成が同一の場合に、経路K1と経路K2の周波数伝達特性を互いに異ならせるためには、フィルタ61と62の相対応する共振器対(例えば、L1−S3とL2−S3)の特性を互いに異なるようにすればよい。例えば、直列共振器L1−S3およびL2―S3それぞれの共振周波数や静電容量を互いに異ならせることにより、経路K1と経路K2の周波数伝達特性が異なる構成となる。
【0041】
この場合、直列共振器L1−S3およびL2―S3の共振周波数および静電容量の値は、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の周波数伝達特性が改善するような値に設定される。すなわち、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の特性が改善するように、直列共振器L1−S3およびL2―S3の周波数伝達特性が設定される。例えば、市販の回路シミュレーションソフトを用いて、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の特性が改善するような、直列共振器L1−S3およびL2―S3の特性値(例えば、共振周波数や静電容量)を計算することができる。具体的な計算例については後述する。なお、1対の相対応する共振器対のみたけでなく、複数の共振器対において互いに特性が異なるように設定されてもよい。
【0042】
次に、共振器の構造例について説明する。図4に、図3に示すラダー型フィルタを構成する共振器の構造例を示す。図4(a)は、一端子対共振器の回路図を示す図である。図4(b)は、弾性表面波共振器の構造例を示す図である。なお、弾性境界波共振器も図4(b)と同様に構成することができる。図4(b)に示す弾性表面波共振器は、圧電基板8上に設けられたIDT(Interdigital Transducer:すだれ状電極)9と、その両側に設けられた反射器10a、10bを備える。IDT9には、入力端子Inと出力端子Outが線路パターンを介して接続されている。ここで、IDT9の対数、開口長、IDTおよび反射器の周期等を変更することで、共振器の周波数伝達特性を変化させることができる。これにより、共振器が設けられた経路の周波数伝達特性を制御することができる。
【0043】
図4(c)は、圧電薄膜共振器の構造の一例を示す上面図であり、図4(d)は、図4(c)に示す圧電薄膜共振器のA−A線に沿う断面図である。圧電薄膜共振器は、基板11上に、下部電極13、圧電膜14、上部電極15、付加膜16が順に積層されて形成される。下部電極13、圧電膜14、上部電極15が重なる部分が共振部であり、基板11における、前記共振部の下側は、貫通穴11aが設けられる。圧電薄膜共振器の周波数伝達特性は、例えば、共振部の面積や形状、上部電極15の膜厚、下部電極13の膜厚、圧電膜14の膜厚、付加膜16の膜厚等を変更することで変化する。そのため、圧電薄膜共振器がフィルタ61、62に用いられた場合は、これらの圧電薄膜共振器の設計値を調節することにより、経路K1、K2の周波数伝達特性を制御することができる。
【0044】
図5(a)は、図3に示す回路構成において、フィルタ61の共振器L1−S1〜S4、L1−P1〜P4の特性と、フィルタ62の対応する共振器L1−S1〜S4、L1−P1〜P4の特性とが全て同じである場合(同一の設計の場合)のアンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の信号の通過特性の計算結果を示すグラフである。図5(a)において、太い実線s11はAnt−Rx1間の通過特性、細い実線s12はAnt−Rx2間の通過特性を示す。
【0045】
図5(b)は、フィルタ61の共振器L1−S1〜S4、L1−P1〜P4の特性と、それぞれ対応する、フィルタ62の共振器L1−S1〜S4、L1−P1〜P4の特性とを全て互いに異なる周波数伝達特性を持つように設計した場合(異なる設計)のアンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の信号の通過特性の計算結果を示すグラフである。図5(b)において、太い実線d11はAnt−Rx1間の通過特性、細い実線d12はAnt−Rx2間の通過特性を示す。
【0046】
図6(a)および図6(b)は、図5(a)および図5(b)の通過帯域付近をそれぞれ拡大したグラフである。図6(a)および図6(b)のグラフにおいては、同一設計の場合のs11とs12の差異より、異なる設計の場合のd11とd12の差異の方が小さくなっている。すなわち、フィルタ61とフィルタ62で対応する共振器の特性を異なるように設計することで、受信端子Rx1およびRx2からバランス出力される信号間の差異が小さくなっている。
【0047】
図7(a)および図7(b)は、Ant端子−受信端子Rx1、Rx2間の信号のバランス出力をシングルエンドに変換して計算した通過特性を示すグラフである。細い実線s1は、図3に示す回路構成でフィルタ61とフィルタ62が同一設計の場合、太い実線d1は、フィルタ61とフィルタ62が異なる設計の場合の通過特性をそれぞれ表す。図7(b)は、図7(a)の通過帯域付近を拡大したグラフである。
【0048】
図7(a)および図7(b)のグラフにおいて、通過帯域内において、g1が示す損失は、s1が示す損失より低減していることが示される。すなわち、フィルタ61およびフィルタ62で共振器の特性を異なる設計にすることによって通過帯域における損失が低減している。なお、図5〜図7に示すグラフにおいて、縦軸は損失[dB]、横軸は周波数[MHz]を表す。
【0049】
図8(a)は、Ant―Rx1の信号とAnt−Rx2の信号との振幅バランス特性を示すグラフである。細い実線s2は、フィルタ61、62の共振器が同じ設計の場合の、Ant−Rx1の信号の振幅とAnt−Rx2の信号の振幅との差異の程度を表す。太い実線d2は、フィルタ61、62の共振器が異なる設計の場合のAnt−Rx1の信号の振幅とAnt−Rx2の信号の振幅との差異の程度を表す。
【0050】
図8(b)は、Ant―Rx1とAnt−Rx2との位相バランス特性を示すグラフである。細い実線s3は、フィルタ61、62の共振器が同じ設計の場合の、Ant−Rx1の信号の位相とAnt−Rx2の信号の位相とのずれの程度を表す。太い実線d2は、フィルタ61、62の共振器が異なる設計の場合のAnt−Rx1の信号の位相とAnt−Rx2の信号の位相とずれの度合いを表す。
【0051】
図7(a)(b)および図8(a)(b)のグラフは、フィルタ61、62で共振器を異なる設計にすることにより、振幅バランス特性および位相バランス特性の双方とも改善していることを示している。
【0052】
[最適設計時の計算例]
次に、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の特性が改善するような、フィルタ6の共振器の配置構成または特性値を計算する方法の一例を説明する。図9は、このような計算を実行する設計システムの構成例を示す図である。図9に示す設計システム20は、UI部21、記録部22、初期設定部23、シミュレータ24、評価部25、最適化部26および設計変更部27を備える。
【0053】
設計システム20は、パーソナルコンピュータやサーバマシン等の汎用コンピュータに所定のプログラムをインストールすることにより実現される。上記UI部21、初期設定部23、シミュレータ24、評価部25、最適化部26および設計変更部27の各機能部は、コンピュータのCPUが所定のプログラムを実行することによって実現される。また、記録部22は、コンピュータが内蔵されたRAM、ROM、HDD等の記録装置あるいは外部記録装置により実現される。したがって、上記各機能を実現するためのプログラムまたはそれを記録した記録媒体も本発明の実施形態に含まれる。
【0054】
UI部21は、回路設計者等のユーザからデータ入力を受け付けたり、ユーザに対してデータを提供したりするためのユーザインタフェース部である。UI部21は、例えば、フィルタの初期設計データや設計データの変更条件等のデータ入力の受け付ける。UI部21は、マウス、キーボード等の入力デバイスおよびディスプレイ等の出力デバイス(図示せず)を介してユーザとデータのやり取りを行う。
【0055】
初期設定部23は、UI部21を介して入力されたユーザからの指示に基づいて、フィルタの初期設計データを記録部22に記録する。この設計データには、例えば、回路を構成する回路素子の接続関係を表す回路構成データと、各回路素子の特性値を表す回路素子特性値が含まれる。回路構成データとして、例えば、図3に示したデュプレクサの回路構成を示すデータが記録される。回路素子特性値として、例えば、図3に示すフィルタ61、62を構成する各共振器L1−S1〜S4、P1〜P4、L2−S1〜S4、P1〜P4各々の共振周波数および静電容量が記録される。また、初期設定部23は、設計データの最適化処理(後述)において変更すべきデータとその変更範囲を特定する変更条件データも記録部22に記録することができる。
【0056】
初期設定部23は、このような初期の設計データおよび変更条件データを、ユーザからのUI部21を介した入力により取得してもよいし、ユーザが指定したファイルを、他の記録装置等から読み込むことによって取得してもよい。
【0057】
シミュレータ24は、記録部22の設計データを読み出して、設計データで示される回路のシミュレーションを実行する。シミュレーション結果として、例えば、ある端子間の周波数伝達特性(通過特性)あるいはバランス特性等が、評価部25へ出力される。シミュレータ24の機能の実現には、市販の回路シミュレーションソフトを用いることができる。
【0058】
評価部25は、シミュレータ24のシミュレーション結果に基づいて、回路の評価値を算出する。評価値は、例えば、回路の所定端子間の通過特性や、バランス特性が理想状態にどの程度近づいているかを示す値であってもよいし、所定の端子間の通過特性やバランス特性の値そのものであってもよい。
【0059】
最適化部26は、評価部25の算出した評価値を基に、設計データが最適であるか否かを判断し、最適でなければ、設計変更部27に設計データを変更させる。最適であるか否かの判断は、例えば、評価値が改善したか、評価値に改善の余地があるか等により判断される。この判断には、例えば、評価値、シミュレーションの回数、評価値の変化の度合い等を用いることができる。
【0060】
設計変更部27は、最適化部26から指示に従い、設計データにおける、回路構成データおよび/または回路素子特性値を変更する。例えば、図3に示したデュプレクサにおける各共振器のうち対応する一対の共振器L1−S1、L2−S1の共振周波数および静電容量が変更される。ここで、回路構成または共振器の特性値のいずれを変更するかの判断や、あるいは、変更対象の共振器対、変更対象の特性値の種類等をいずれにするかの判断は、記録部22に記録された変更条件データに基づいて決定することができる。
【0061】
また、変更条件データで定められた変更対象の設計データをどのように変更するかは、最適化部26が評価値に基づいて決定することもできる。なお、このような最適化部26による最適化手法として、例えば、シミュレーテッドアニーリング(SA:Simulated Annealing)法、遺伝アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)、シンプレックス法(Simplex method)等公知の手法を用いることができる。
【0062】
設計変更部27が設計データを変更すると、シミュレータ24および評価部25は、変更後の設計データについて計算を繰り返す。最適化部26は、評価値が最適になった(最適解が得られた)と判断すると、その時の設計データを最適な設計データとして記録部22に記録する。これにより、記録部22の設計データが最適化される。
【0063】
図10は、設計システム20による処理の例を示すフローチャートである。図10に示す例では、まず、初期設定部23が、ユーザからUI部21を介して、デュプレクサの初期設計データの入力を受け付け、記録部22に記録する(Op1)。
【0064】
ここでは、一例として、図3に示したデュプレクサの回路構成を示す設計データが初期設計データとして記録される場合について説明する。初期設計データにおいては、フィルタ61とフィルタ62とは、共振器の配置構成および共振器の特性値は全て等しくなっている。すなわち、フィルタ61とフィルタ62の周波数伝達特性が同一である回路の設計データが初期設計データとなる。
【0065】
初期設定部23は、設計データの変更条件データも、UI部21を介してユーザから受け付け、記録部22に記録する(Op2)。変更条件データは、例えば、フィルタ61、62とで周波数伝達特性を異ならせるために変更するべき項目や、その変更幅,その他の変更条件を特定するデータである。
【0066】
初期設計データおよび変更条件データが記録部22に記録されると、シミュレータ24が、設計データを読み出し、デュプレクサにおけるアンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の通過特性およびバランス特性を計算する(Op3)。シミュレータ24は、これらの計算結果である通過特性およびバランス特性を評価部25へ通知する。
【0067】
評価部25は、通過特性およびバランス特性を基に評価値を計算する(Op4)。評価値の例として、通過帯域における損失の平均、受信端子Rx1の信号とRx2の信号との振幅の差の通過帯域における平均値、受信端子Rx1、Rx2間の位相差の180°からずれ量の通過帯域における最大値等が挙げられる。
【0068】
最適化部26は、評価値を基に設計データが最適になっているか否かを判断する(Op5)。最適化部26は、最適解が得られる(Op5でYES)まで、設計変更部に設計データを変更させ(Op6)、Op3およびOp4の処理を繰り返させる。Op6において、設計変更部27は、変更条件データの示す条件に従って、設計データを変更する。
【0069】
一例として、変更条件データで示される変更項目が、直列共振器L1―S1〜S4、L2−S1〜S4の周波数および静電容量である場合、設計変更部27は、フィルタ61とフィルタ62とで相対応する共振器の共振周波数または静電容量が異なるように変更する。このときの変更の幅は、例えば、予め更新条件データに記録しておくことができる。
【0070】
なお、Op5の判断およびOp6の変更は、例えば、SA法や、GA法等の公知の最適化方法を用いることができる。例えば、また、SA法を用いることにより、設計変更部27は、評価値がよくなる確率が高くなるように、設計データの変更を繰り返すことができる。
【0071】
以上のように、図10に示した処理では、まず、フィルタ61とフィルタ62が同じ共振器の配置構成で、共振器の特性も等しくなるように対称設計され、その後、フィルタ61およびフィルタ62の回路パラメータ(上記例では、共振周波数と静電容量)を様々に変化させて、周波数伝達特性が改善させる値を探索する最適化処理が実行される。これにより、Ant端子−受信端子Rx、Rx2間の通過特性およびバランス特性が改善されるように、フィルタ61とフィルタ62の周波数伝達特性を異ならせ、最適な設計データを得ることができる。
【0072】
なお、上記処理では、図3に示すフィルタ6において、2つのシングルエンドラダー型フィルタの相対応する共振器の特性を異ならせる場合について説明したが、図10に示した処理の適用対象となる回路構成はこれに限られない。例えば、下記の第2〜6の実施形態に示すような様々なバランス出力型フィルタも、上記図10の処理により最適化設計が可能になる。
【0073】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図である。図11において、図3と同様の回路素子には、同じ番号を付す。図11に示す例では、フィルタ61とフィルタ62aの共振器の配置構成が異なっている。すなわち、フィルタ61は、4段のラダー型フィルタであるのに対し、フィルタ62aは3段のラダー型フィルタである。このように、ラダー型フィルタの段数が異なると、周波数伝達特性も異なる。
【0074】
そのため、例えば、図10に示した処理で、フィルタ61およびフィルタ62のラダー型フィルタの段数の組み合わせを様々に変化させて、アンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の通過特性および/またはバランス特性が改善される組み合わせを決定することができる。
【0075】
なお、共振器の配置構成が異なる構成は、図11に示すようにラダー型フィルタの段数を異ならせる例に限られない。また、フィルタ61およびフィルタ62aで、相対応する共振器対(例えば、共振器L1−S1とL2−S1)の特性が互いに異なる構成であってもよい。
【0076】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図である。図12において、図3と同様の回路素子には、同じ番号を付す。図12に示す例では、受信フィルタ6として、バランス型ラダーフィルタ6bが用いられている。すなわち、端子1−端子3間に直列共振器L1−S1〜S4が接続され、端子2−端子4間に直列共振器L2−S1〜4が接続されている。さらに、端子1−端子3の線路上のノードと、端子2−端子4の線路上のノードを、それぞれ繋ぐ並列共振器P1〜P4が設けられている。バランス型ラダーフィルタ6bでは、端子1からn番目の直列共振器と端子2からn番目の直列共振器(例えば、n=3の場合は、共振器L1−S3とL2−S3)の周波数伝達特性を互いに異なるようにすればよい。(nは1、2、3、4のうち少なくとも1つの値で成立すればよい。)なお、nの値およびn番目の直列共振器の適切な特性値は、例えば、図10に示した処理により決定することができる。これにより、デュプレクサにおいて、通過特性および/またはバランス特性を改善することができる。
【0077】
(第4の実施形態)
図13は、第4の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図である。図13において、図3と同様の回路素子には同じ番号を付す。図13に示す例では、受信フィルタ6として、バランス型ラティスフィルタ6cが用いられている。
【0078】
すなわち、端子1−端子3間に直列共振器L1−S1〜S3が接続され、端子2−端子4間に直列共振器L2−S1〜3が接続されている。さらに、端子1−端子3の線路上のノードと、端子2−端子4の線路上のノードを、それぞれ繋ぐ並列共振器P1〜P6が設けられている。
【0079】
バランス型ラティスフィルタ6cにおいては、端子1からn番目の直列共振器と端子2からn番目の直列共振器(例えば、n=3の場合は、共振器L1−S3とL2−S3)の周波数伝達特性を互いに異なるようにすればよい。(nは1、2、3のうち少なくとも1つの値で成立すればよい。)
また、複数の並列共振器P1〜P6のいずれか1つの周波数伝達特性を、他の並列共振器の周波数伝達特性と異なるようにしてもよい。このようにしても、端子1−端子3間の周波数特性と端子2−端子4間の周波数特性とを異ならせることができる。
【0080】
また、nの値およびn番目の直列共振器の適切な特性値あるいは、並列共振器の適切な特性値は、例えば、図10に示した処理により決定することができる。これにより、デュプレクサにおいて、通過特性および/またはバランス特性を改善することができる。
【0081】
(第5の実施形態)
図14は、第5の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図である。図14において、同様の回路素子には同じ番号を付す。図14に示す例では、受信フィルタ6dは、端子1−端子3間に接続されたダブルモード型フィルタ61dと、端子2−端子4間に接続されたダブルモード型フィルタ62dにより形成される。ダブルモード型フィルタは、弾性表面波や弾性境界波を用いたフィルタである。
【0082】
図15は、ダブルモード型弾性表面波フィルタの構成例を示す図である。図15のダブルモード型弾性表面波フィルタは、入力端子Inが接続された入力IDT29と、その両側に設けられた出力IDT31a、31bと、出力IDT31a、31bの外側に設けられた反射器32a、32bを備える。出力IDT31a、31bには出力端子Outが接続されている。
【0083】
この場合、ダブルモード型フィルタ61dと62dで、入力IDT29の対数、出力IDT31a、31bの対数、反射器32a、32bの対数、入力IDT29および出力IDT31a、31bの開口長などが互いに異なるようにすればよい。これにより、フィルタ61dと62dの周波数特性を異ならせることができ、ひいては、デュプレクサの通過特性および/またはバランス特性を改善することができる。
【0084】
(第6の実施形態)
上記第1〜第5の実施形態では、受信フィルタ6を、バランス入出力型フィルタで構成する場合について説明した。これらと同様に、送信フィルタ7も、バランス入出力型フィルタで構成されてもよい。図16は、送信フィルタ7も、バランス入出力型フィルタで構成される場合の回路構成を示す図である。
【0085】
図16に示す例では、送信フィルタ7は、端子1および端子2をバランス入力端子とし、端子3および端子4をバランス出力端子とするバランス入出力型フィルタである。送信フィルタ7は、端子1および端子2から入力されたバランス信号のうち、送信周波数帯域のみ通過させ、端子3および端子4からバランス出力するフィルタ部である。
【0086】
端子3および端子4には、変換回路5aが接続されている。変換回路5aは、端子3および端子4から入力されたバランス信号をシングル型の信号に変換してアンテナ端子Antへ出力する。
【0087】
図16に示す構成により、例えば、送信フィルタの前段にバランス出力型のパワーアンプ等を配することが可能になる。また、上記第1〜第5の実施形態と同様に、端子1−端子3間の経路K1と端子2−端子4間の経路K2との周波数伝達特性を異ならせることにより、送信端子Tx1、Tx2−アンテナAnt端子間の通過特性やバランス特性を改善することができる。
【0088】
図16に示す例では、送信フィルタ7は、2つのシングルエンド型のラダーフィルタ(フィルタ71、72)で構成されているが、送信フィルタ7に用いられ得るバランス入出力型フィルタの回路構成は、これに限られない。例えば、上記第2〜第5の実施形態における受信フィルタに用いられたフィルタが、同様に、送信フィルタに用いられてもよい。
【0089】
(第7の実施形態)
本実施形態は、上記の第1〜第5の実施形態で示したデュプレクサを備える通信機器である。
【0090】
図17は、図3に示す回路構成のデュプレクサを含む通信機器40の概略構成を示す図である。図17に示す構成要素において、図3に示す回路の構成要素と対応する部分には、同じ番号を付す。図17に示す通信機器40においては、モジュール基板41上に、送信フィルタ7、受信フィルタ6、変換回路5、パワーアンプ42、RFIC43、ベースバンドIC44が設けられている。受信フィルタ6、送信フィルタ7は、それぞれ半導体チップで形成することができる。変換回路5は、例えば、IPDチップで形成されてもよい。
【0091】
モジュール基板41に形成された配線パターンにより、アンテナ端子(共通端子)Antと送信フィルタ7および変換回路5との接続、変換回路5と受信フィルタ6との接続がなされている。なお、アンテナ端子Antは通信機器40が備えるアンテナ(図示せず)に接続される。
【0092】
送信端子Txはパワーアンプ42を介してRFIC43に接続され、受信端子Rx1、Rx2もRFIC43に接続されている。RFIC43はベースバンドIC44に接続されている。RFIC43は、半導体チップおよびその他の部品により構成されている。RFIC43には、受信端子Rx1、Rx2から入力された受信信号を処理するための受信回路および、パワーアンプ42を介してアンテナ端子Antに出力する送信信号を処理するための送信回路を含む回路を集積している。なお、パワーアンプ42は、RFIC43の送信回路から出力された送信信号を増幅して送信フィルタ7の送信端子Txへ入力する回路である。
【0093】
また、ベースバンドIC44も半導体チップおよびその他の部品により構成されている。ベースバンドIC44には、RFIC43に含まれる受信回路から受け取った受信信号を、音声信号やパッケットデータに変換するための回路と、音声信号やパッケットデータを送信信号に変換してRFIC43に含まれる送信回路に出力するため回路とが集積される。
【0094】
図示しないが、ベースバンドIC44には、例えば、スピーカ、ディスプレイ等の出力機器が接続されており、ベースバンドIC44で受信信号から変換された音声信号やパケットデータを出力し、通信機器40のユーザに認識させることができる。また、マイク、ボタン等の通信機器40が備える入力機器もベースバンドIC44に接続されており、ユーザから入力された音声やデータをベースバンドIC44が送信信号に変換することができる構成になっている。
【0095】
なお、通信機器40の構成は、図17に示す例に限られない。また、通信機器40の一部に用いられる部品の集合であるモジュールであって、上記第1〜第6の実施形態のデュプレクサを含むモジュールも本発明の実施形態に含まれる。
【0096】
また、例えば、変換回路5、受信フィルタ6および送信フィルタ7をそれぞれ形成するチップを、セラミックパッケージにフリップチップ実装して、メタルリッドをかぶせて気密封止することにより、上記第1〜第6の実施形態におけるデュプレクサのパッケージ部品を形成することができる。
【0097】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0098】
(付記1)
端子1および端子2を含むバランス型入力端子、および端子3および端子4を含むバランス型出力端子を備え、前記バランス型入力端子から入力されたバランス信号のうち、通過帯域の信号を通過させて前記バランス型出力端子から出力するフィルタ部と、
前記フィルタ部のバランス型入力端子とシングル型端子との間に接続され、前記シングル型端子から入力された信号を互いに逆移相の2つの信号に分けて前記バランス型入力端子の端子1および端子2へそれぞれ入力する平衡−不平衡変換器、あるいは、前記バランス型出力端子とシングル型端子との間に接続され、前記バランス型出力端子の端子3および端子4から出力されたバランス信号を合成して前記シングル型端子に出力する平衡−不平衡変換器を備え、
前記フィルタ部において、前記端子1と前記端子3との間の周波数伝達特性と、前記端子2と前記端子4との間の周波数伝達特性とが、互いに異なることを特徴とするフィルタ。
【0099】
(付記2)
前記フィルタ部において、前記端子1−端子3間にシングルエンド型フィルタ1が接続され、前記端子2−端子4間にシングルエンド型フィルタ2が接続されており、シングルエンド型フィルタ1とシングルエンド型フィルタ2の周波数伝達特性が互いに異なる、付記1に記載のフィルタ。
【0100】
(付記3)
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、ラダー型フィルタであり、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が互いに異なるか、あるいは、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は共振周波数または静電容量が互いに異なる、付記2に記載のフィルタ。
【0101】
(付記4)
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期の少なくとも1つが互いに異なる、付記3に記載のフィルタ。
【0102】
(付記5)
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、圧電薄膜共振器により構成され、
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さの少なくとも1つが互いに異なる、付記3に記載のフィルタ。
【0103】
(付記6)
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、入力IDTおよび出力IDTを備える弾性表面波または弾性境界波を用いたダブルモード型フィルタであり、
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は、入力IDTの対数、出力IDTの対数、入出力IDTの開口長、並びにIDTおよび反射器部の周期のうち少なくとも1つが互いに異なる、付記3に記載のフィルタ。
【0104】
(付記7)
前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された並列共振器とを含むラダー型またはラティス型のバランスフィルタであり、
前記端子1からn番目の直列共振器および前記端子2からn番目の直列共振器においては、共振周波数または静電容量が互いに異なる、付記1に記載のフィルタ。
【0105】
(付記8)
前記バランスフィルタは、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、前記端子1からn番目の直列共振器と前記端子2からn番目の直列共振器は、櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期の少なくとも1つが互いに異なる、付記7に記載のフィルタ。
【0106】
(付記9)
前記バランスフィルタは、圧電薄膜共振器から構成され、前記端子1からn番目の直列共振器と前記端子2からn番目の直列共振器は、圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さのうち少なくとも1つが互いに異なる、付記7に記載のフィルタ。
【0107】
(付記10)
前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された複数の並列共振器とを含むラティス型のバランスフィルタであり、
前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と共振周波数または静電容量が異なる、付記1に記載のフィルタ。
【0108】
(付記11)
前記バランスフィルタは、櫛形電極を有するIDTおよび反射器を含む弾性表面波共振器または弾性境界波共振器により構成され、前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と櫛形電極の対数、開口長並びにIDTおよび反射器の周期のうち少なくとも1つが異なる、付記10に記載のフィルタ。
【0109】
(付記12)
前記バランスフィルタは圧電薄膜共振器により構成され、前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と圧電薄膜共振器の形状、面積および圧電薄膜共振器を構成する膜の厚さのうち少なくとも1つが異なる、付記10に記載のフィルタ。
【0110】
(付記13)
共通端子と、送信端子と、受信端子とを有するデュプレクサであって、
前記共通端子と前記送信端子との間に接続される送信フィルタと、
前記共通端子と前記受信端子との間に接続される受信フィルタとを備え、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタのうち少なくとも1つが、付記1〜5のいずれか1項に記載のフィルタである、デュプレクサ。
【0111】
(付記14)
付記6に記載のデュプレクサを備える通信機器。
【0112】
(付記15)
コンピュータが、フィルタを構成する共振器の最適な配置構成および特性値を算出するフィルタ設計方法であって、
シングル型端子と端子1および端子2を含むバランス型端子A1との間に接続された平衡−非平衡変換回路と、前記バランス型端子A1と端子3および端子4を含むバランス型端子A2との間に接続され、複数の共振器を備えるフィルタ回路を表す回路設計データであって、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器の配置構成および特性値と、前記端子2−前記端子4間の経路における共振器の配置構成および特性値とが等しい回路設計データを、前記コンピュータがアクセス可能な記録部に格納する設定工程と、
前記回路設計データが示す前記共振器の配置構成または特性値を、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器と前記端子2−前記端子4間の経路における共振器とで異なるように変更する変更工程と、
前記変更工程で変更された前記回路設計データを前記記録部から読み出して、前記シングル型端子と前記バランス型端子A2との間の周波数伝達特性を計算するシミュレーション工程と、
前記シミュレーション工程で計算された周波数伝達特性から評価データを生成する評価工程と、
前記評価工程で生成される評価データに基づいて、前記共振器の特性値変更の仕方を決定して前記変更工程を実行し、さらに、前記シミュレーション工程および評価工程を繰り返すことにより、前記共振器の最適な配置構成および最適な特性値を算出する最適化工程とを含む、フィルタ設計方法。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】第1の実施の形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図
【図2】受信フィルタの構成例を示す図
【図3】図2に示すフィルタおよび変換回路の詳細な構成例を示す図
【図4】図3に示すラダー型フィルタを構成する共振器の構造例を示す図
【図5】図5(a)は、フィルタ61とフィルタ62が同一に設計された場合の通過特性の計算結果を示すグラフである。図5(b)は、フィルタ61とフィルタ62が異なるように設計された場合の通過特性の計算結果を示すグラフである。
【図6】図6(a)および図6(b)は、図5(a)および図5(b)の通過帯域付近をそれぞれ拡大したグラフである。
【図7】図7(a)および図7(b)は、バランス出力をシングルエンドに変換して計算した通過特性を示すグラフ
【図8】図8(a)は、振幅バランス特性を示すグラフである。図8(b)は、位相バランス特性を示すグラフである。
【図9】設計システムの構成例を示す図
【図10】設計システムによる処理の例を示すフローチャート
【図11】第2の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図
【図12】第3の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図
【図13】第4の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図
【図14】第5の実施形態におけるデュプレクサの回路構成を示す図
【図15】ダブルモード型弾性表面波フィルタの構成例を示す図
【図16】送信フィルタをバランス入出力型フィルタで構成した回路構成を示す図
【図17】図3に示すデュプレクサを含む通信機器の概略構成を示す図
【符号の説明】
【0114】
5 平衡−不平衡変換器(変換回路)
6 受信フィルタ
6b バランス型ラダーフィルタ
6c バランス型ラティスフィルタ
6d 受信フィルタ
7 送信フィルタ
20 設計システム
21 UI部
22 記録部
23 初期設定部
24 シミュレータ
25 評価部
26 最適化部
27 設計変更部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子1および端子2を含むバランス型入力端子、および端子3および端子4を含むバランス型出力端子を備え、前記バランス型入力端子から入力されたバランス信号のうち、通過帯域の信号を通過させて前記バランス型出力端子から出力するフィルタ部と、
前記フィルタ部のバランス型入力端子とシングル型端子との間に接続され、前記シングル型端子から入力された信号を互いに逆移相の2つの信号に分けて前記バランス型入力端子の端子1および端子2へそれぞれ入力する平衡−不平衡変換器、あるいは、前記バランス型出力端子とシングル型端子との間に接続され、前記バランス型出力端子の端子3および端子4から出力されたバランス信号を合成して前記シングル型端子に出力する平衡−不平衡変換器を備え、
前記フィルタ部において、前記端子1と前記端子3との間の周波数伝達特性と、前記端子2と前記端子4との間の周波数伝達特性とが、互いに異なることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記フィルタ部において、前記端子1−端子3間にシングルエンド型フィルタ1が接続され、前記端子2−端子4間にシングルエンド型フィルタ2が接続されており、シングルエンド型フィルタ1とシングルエンド型フィルタ2の周波数伝達特性が互いに異なる、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、ラダー型フィルタであり、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が互いに異なるか、あるいは、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は共振周波数または静電容量が互いに異なる、請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された並列共振器とを含むラダー型またはラティス型のバランスフィルタであり、
前記端子1からn番目の直列共振器および前記端子2からn番目の直列共振器においては、共振周波数または静電容量が互いに異なる、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された複数の並列共振器とを含むラティス型のバランスフィルタであり、
前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と共振周波数または静電容量が異なる、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項6】
共通端子と、送信端子と、受信端子とを有するデュプレクサであって、
前記共通端子と前記送信端子との間に接続される送信フィルタと、
前記共通端子と前記受信端子との間に接続される受信フィルタとを備え、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタのうち少なくとも1つが、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタである、デュプレクサ。
【請求項7】
請求項6に記載のデュプレクサを備える通信機器。
【請求項8】
コンピュータが、フィルタを構成する共振器の最適な配置構成および特性値を算出するフィルタ設計方法であって、
シングル型端子と端子1および端子2を含むバランス型端子A1との間に接続された平衡−非平衡変換回路と、前記バランス型端子A1と端子3および端子4を含むバランス型端子A2との間に接続され、複数の共振器を備えるフィルタ回路を表す回路設計データであって、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器の配置構成および特性値と、前記端子2−前記端子4間の経路における共振器の配置構成および特性値とが等しい回路設計データを、前記コンピュータがアクセス可能な記録部に格納する設定工程と、
前記回路設計データが示す前記共振器の配置構成または特性値を、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器と前記端子2−前記端子4間の経路における共振器とで異なるように変更する変更工程と、
前記変更工程で変更された前記回路設計データを前記記録部から読み出して、前記シングル型端子と前記バランス型端子A2との間の周波数伝達特性を計算するシミュレーション工程と、
前記シミュレーション工程で計算された周波数伝達特性から評価データを生成する評価工程と、
前記評価工程で生成される評価データに基づいて、前記共振器の特性値変更の仕方を決定して前記変更工程を実行し、さらに、前記シミュレーション工程および評価工程を繰り返すことにより、前記共振器の最適な配置構成および最適な特性値を算出する最適化工程とを含む、フィルタ設計方法。
【請求項1】
端子1および端子2を含むバランス型入力端子、および端子3および端子4を含むバランス型出力端子を備え、前記バランス型入力端子から入力されたバランス信号のうち、通過帯域の信号を通過させて前記バランス型出力端子から出力するフィルタ部と、
前記フィルタ部のバランス型入力端子とシングル型端子との間に接続され、前記シングル型端子から入力された信号を互いに逆移相の2つの信号に分けて前記バランス型入力端子の端子1および端子2へそれぞれ入力する平衡−不平衡変換器、あるいは、前記バランス型出力端子とシングル型端子との間に接続され、前記バランス型出力端子の端子3および端子4から出力されたバランス信号を合成して前記シングル型端子に出力する平衡−不平衡変換器を備え、
前記フィルタ部において、前記端子1と前記端子3との間の周波数伝達特性と、前記端子2と前記端子4との間の周波数伝達特性とが、互いに異なることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記フィルタ部において、前記端子1−端子3間にシングルエンド型フィルタ1が接続され、前記端子2−端子4間にシングルエンド型フィルタ2が接続されており、シングルエンド型フィルタ1とシングルエンド型フィルタ2の周波数伝達特性が互いに異なる、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2は、ラダー型フィルタであり、前記シングルエンド型フィルタ1および前記シングルエンド型フィルタ2において、共振器の配置構成が互いに異なるか、あるいは、共振器の配置構成が同じで、相対応する共振器対のうち少なくとも1組の共振器対は共振周波数または静電容量が互いに異なる、請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された並列共振器とを含むラダー型またはラティス型のバランスフィルタであり、
前記端子1からn番目の直列共振器および前記端子2からn番目の直列共振器においては、共振周波数または静電容量が互いに異なる、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記フィルタ部は、前記端子1と前記端子3との間および前記端子2と前記端子4の間に、それぞれ直列に接続された直列共振器と、前記端子1と前記端子3との間の線路上のノードと、前記端子2と前記端子4の間の線路上のノードとの間に接続された複数の並列共振器とを含むラティス型のバランスフィルタであり、
前記複数の並列共振器のうち少なくとも1つは、他の並列共振器と共振周波数または静電容量が異なる、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項6】
共通端子と、送信端子と、受信端子とを有するデュプレクサであって、
前記共通端子と前記送信端子との間に接続される送信フィルタと、
前記共通端子と前記受信端子との間に接続される受信フィルタとを備え、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタのうち少なくとも1つが、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタである、デュプレクサ。
【請求項7】
請求項6に記載のデュプレクサを備える通信機器。
【請求項8】
コンピュータが、フィルタを構成する共振器の最適な配置構成および特性値を算出するフィルタ設計方法であって、
シングル型端子と端子1および端子2を含むバランス型端子A1との間に接続された平衡−非平衡変換回路と、前記バランス型端子A1と端子3および端子4を含むバランス型端子A2との間に接続され、複数の共振器を備えるフィルタ回路を表す回路設計データであって、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器の配置構成および特性値と、前記端子2−前記端子4間の経路における共振器の配置構成および特性値とが等しい回路設計データを、前記コンピュータがアクセス可能な記録部に格納する設定工程と、
前記回路設計データが示す前記共振器の配置構成または特性値を、前記端子1−前記端子3間の経路における共振器と前記端子2−前記端子4間の経路における共振器とで異なるように変更する変更工程と、
前記変更工程で変更された前記回路設計データを前記記録部から読み出して、前記シングル型端子と前記バランス型端子A2との間の周波数伝達特性を計算するシミュレーション工程と、
前記シミュレーション工程で計算された周波数伝達特性から評価データを生成する評価工程と、
前記評価工程で生成される評価データに基づいて、前記共振器の特性値変更の仕方を決定して前記変更工程を実行し、さらに、前記シミュレーション工程および評価工程を繰り返すことにより、前記共振器の最適な配置構成および最適な特性値を算出する最適化工程とを含む、フィルタ設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−272666(P2009−272666A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118615(P2008−118615)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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