説明

フィルタ装置

十分な減衰量を得ることができ、加えて、低損失かつ広帯域であるフィルタ装置を提供する。 通過帯域の相対的に低い第1のバンドパスフィルタまたは通過帯域が相対的に高い第2のバンドパスフィル
タとを含む通信システムの第1のバンドパスフィルタとして用いられるフィルタ装置であって、入力端子2と出力端子3とを結ぶ直列腕に直列腕共振子S21〜S23が挿入されており、直列腕と基準電位とを結ぶ並列腕にそれぞれ、並列腕共振子P21,P22が接続されており、少なくとも1つの並列腕共振子P21,P22に直列にインダクタンスL1,L2が接続されており、インダクタンスL1,L2の挿入により生じた副共振の共振周波数が、該ラダー型フィルタに対して相手側のフィルタである受信側または送信側帯域フィルタの通過帯域内またはその近傍に位置されている、フィルタ装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の共振子が、梯子型回路構成を有するように接続されているフィルタ装置に関し、例えば、通信システムの送信側帯域フィルタまたは受信側帯域フィルタとして用いられるフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性表面波装置の受信側帯域フィルタや送信側帯域フィルタとして、複数の弾性表面波共振子を接続してなるラダー型フィルタが広く用いられている。例えば、下記の特許文献1には、複数の一端子対弾性表面波共振子が、入力側から出力側に向かって、並列腕及び直列腕に交互に配置されているラダー型フィルタが開示されている。特許文献1では、図24に示すように、並列腕に並列腕共振子P1が、直列腕に直列腕共振子S1が挿入されている。図24では、1段の回路構成が示されているが、特許文献1には複数段構成のラダー型フィルタが示されている。特許文献1では、並列腕共振子P1と基準電位との間にインダクタンスLを接続することにより、広帯域かつ高減衰量を実現することができるとされている。
【0003】
他方、下記の特許文献2には、少なくとも2個の並列腕共振子の基準電位端子同士を共通接続したラダー型フィルタが開示されている。図25は、特許文献2に記載のラダー型フィルタ100の回路構成を示す図である。図25に示すように、入力端子101と、出力端子102とを結ぶ直列腕に、直列腕共振子S11〜S13が配置されている。そして、直列腕共振子S11,S12間の接続点と、基準電位とを結ぶ並列腕に、並列腕共振子P11が、直列腕共振子S12,S13間の接続点と、基準電位とを結ぶ並列腕に並列腕共振子P12が配置されている。ここでは、並列腕共振子P11,P12の基準電位側端子が共通接続されている。
【0004】
特許文献2に記載のラダー型フィルタ100では、並列腕共振子P11,P12を共通接続することにより、通過帯域高域側の減衰量の拡大が図られている。
【特許文献1】特開平5−183380号公報
【特許文献2】特開平10−163808号公報
【発明の開示】
【0005】
近年、携帯電話機などの通信機器の発達により、これらに用いられる帯域フィルタにおいて、より優れた特性が求められている。例えば、2GHz帯のWCDMA方式の分波器に用いられている送信側帯域フィルタでは、通過帯域における挿入損失は1.5dB以下であることが求められており、減衰量は37dB以上であることが求められている。また、この方式では、送信側の通過帯域は1920MHz〜1980MHzであり、周波数範囲も広くなっている。
【0006】
ところで、特許文献2に記載の回路構成では、通過帯域高域側の減衰量が拡大されるとされている。しかしながら、特許文献2に記載の回路構成を用いた場合、通過帯域の高域側における減衰量を拡大し得るものの、同時に通過帯域幅を拡げることは困難であった。従って、上記2GHz帯のWCDMA方式の分波器に用いられる送信側帯域フィルタのように、十分な減衰量を有するだけでなく、広い周波数範囲にわたり動作し得るフィルタを提供することが困難であった。
【0007】
他方、特許文献1に記載のラダー型フィルタでは、並列腕共振子P1に直列にインダクタンスLが接続されることにより、広帯域かつ高減衰量が実現されるとされている。しかしながら、インダクタンスLの最適なインダクタンス値については特に開示されていない。また、特許文献1では、通過帯域の高域側における減衰量を特に改善するための構成については何ら示されていない。
【0008】
本発明の目的は、通過帯域の周波数が相対的に低い第1のバンドパスフィルタと、通過帯域の周波数が相対的に高い第2のバンドパスフィルタとを含む通信システムの上記第1のバンドパスフィルタとして用いられるフィルタ装置であって、複数の共振子を接続してなるラダー型の回路構成を有し、相対的に十分な減衰量、特に通過帯域高域側の減衰量を十分な大きさとすることができ、加えて低損失かつ広帯域であるフィルタ装置を提供することにある。
【0009】
本発明のある広い局面によれば、通過帯域の周波数が相対的に低い第1のバンドパスフィルタと、通過帯域の周波数が相対的に高い第2のバンドパスフィルタとを含む通信システムの第1のバンドパスフィルタとして用いられるフィルタ装置であって、ラダー型回路構成を有し、入力端子と出力端子とを結ぶ直列腕に挿入された少なくとも一つの直列腕共振子と、前記直列腕と基準電位とを結ぶ少なくとも一つの並列腕に接続されている少なくとも一つの並列腕共振子と、少なくとも一つの前記並列腕共振子に直列に接続されたインダクタンスとを備え、前記インダクタンスのインダクタンス値が、前記インダクタンスの挿入により前記並列腕共振子に新たに生じた副共振の周波数が、相手側のフィルタである第2のバンドパスフィルタの通過帯域内またはその近傍に位置するように設定されていることを特徴とするフィルタ装置が提供される。
【0010】
本発明に係るフィルタ装置のある特定の局面では、前記直列腕共振子及び並列腕共振子が、それぞれ、弾性表面波共振子により構成されている。
【0011】
本発明に係るフィルタ装置の他の特定の局面では、ラダー型フィルタを構成している並列腕共振子及び直列腕共振子が、それぞれ、圧電薄膜共振子により構成されている。
【0012】
本発明に係るフィルタ装置の他の特定の局面では、前記圧電薄膜共振子は、開口部もしくは凹部を有する基板と、該開口部もしくは凹部の上方に配置された圧電薄膜と、前記圧電薄膜の上面及び下面にそれぞれ形成されており、かつ圧電薄膜を介して対向するように配置された上部電極及び下部電極を有する。
【0013】
本発明に係るフィルタ装置のさらに別の特定の局面では、前記基板と、前記圧電薄膜との間に、前記基板の開口部もしくは凹部を覆ように設けられた圧電薄膜支持層がさらに備えられている。
【0014】
本発明に係るフィルタ装置のさらに他の特定の局面では、前記ラダー型フィルタの前記直列腕共振子及び並列腕共振子が接続されているパッケージがさらに備えられており、前記インダクタは、前記パッケージの外部で前記並列腕共振子に接続されているインダクタンス素子である。
【0015】
本発明に係るフィルタ装置のさらに別の特定の局面では、前記パッケージが実装される実装基板をさらに備え、前記インダクタが、前記実装基板に内蔵されたインダクタンス素子である。
【0016】
また、本発明に係るフィルタ装置のさらに他の特定の局面では、前記フィルタ装置が実装されているパッケージをさらに備え、前記インダクタが、前記パッケージに内蔵されている。
【0017】
本発明に係るフィルタ装置では、少なくとも1つの並列腕共振子に直列にインダクタンスが接続されており、かつインダクタンスの挿入により生じた副共振の周波数が、相手側のフィルタである第2のバンドパスフィルタの通過帯域内またはその近傍に位置するように構成されているため、広帯域であり、かつ帯域外減衰量を十分な大きさとすることができ、さらに通過帯域内における挿入損失を低減することができる。従って、広帯域、低損失かつ高減衰量のフィルタ装置を提供することが可能となる。
【0018】
フィルタ装置を構成している並列腕共振子及び直列腕共振子が弾性表面波共振子により構成されている場合には、本発明に従って、広帯域、低損失及び高減衰量の帯域フィルタを弾性表面波装置を用いて構成することができる。
【0019】
直列腕共振子及び並列腕共振子が、圧電薄膜共振子により構成されている場合には、本発明に従って広帯域、低損失及び高減衰量の第1のバンドパスフィルタを、圧電薄膜共振子を用いて構成することができる。
【0020】
圧電薄膜共振子には、開口部または凹部を有する基板と、開口部または凹部に配置された圧電薄膜と、圧電薄膜の上面に形成された上部電極と、下面に形成された下部電極とを有する場合には、開口部または凹部の上方において圧電薄膜の振動が妨げられ難いため、圧電薄膜の振動を利用した共振特性を得ることができる。
【0021】
また、上記開口部または凹部を覆うように圧電薄膜支持層が形成されている場合、該圧電薄膜支持層上に圧電薄膜が積層された構造の圧電共振子が得られる。従って、様々な圧電薄膜を用いて圧電薄膜共振子を容易に形成することができる。
【0022】
本発明に係るフィルタ装置において、前記ラダー型フィルタの前記直列腕共振子及び並列腕共振子が接続されているパッケージをさらに備え、前記インダクタが、前記パッケージの外部で前記並列腕共振子に接続されているインダクタンス素子である場合には、パッケージ外においてインダクタンス素子を接続すればよい。従って、要求特性に応じた様々なインダクタンス値のインダクタンス素子を、別部品として用意するだけで、本発明に係るフィルタ装置を容易に構成することができる。
【0023】
上記パッケージが実装される実装基板がさらに備えられており、上記インダクタが、上記パッケージの外部で該実装基板に内蔵されているインダクタンス素子である場合には、該インダクタンス素子を実装基板上または実装基板内の回路パターンと同時に形成することができる。従って、生産性を高めることができる。
【0024】
フィルタ装置が実装されているパッケージをさらに備え、上記インダクタが該パッケージ内に内蔵されている場合には、パッケージの外部でインダクタンスを接続する作業を省略することができ、かつパッケージにインダクタンスが内蔵されているので、フィルタ装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
[図1]図1は本発明の一実施形態のラダー型回路を示す回路図である。
[図2]図2は図1に示した実施形態のラダー型フィルタの構造を模式的に示す平面図である。
[図3]図3は図2に示したラダー型フィルタの模式的底面図である。
[図4]図4は(a)及び(b)は、本発明において、並列腕共振子と並列腕共振子に接続されるインダクタンスからなる構造の各変形例を示す回路図である。
[図5]図5は本発明の実施形態で用いられている並列腕共振子単独、並びに該並列腕共振子に種々のインダクタンス値のインダクタンスを直列に接続した場合の減衰量−周波数特性を示す図である。
[図6]図6は本発明の実施形態で用いられている並列腕共振子単独、並びに該並列腕共振子に種々のインダクタンス値のインダクタンスを直列に接続した場合のインピーダンス−周波数特性を示す図である。
[図7]図7は第1の実施形態のラダー型フィルタの減衰量−周波数特性を示す図である。
[図8]図8は特許文献2に記載の構成に従って作製した比較例のラダー型フィルタの減衰量−周波数特性を示す図である。
[図9]図9は実施形態のラダー型フィルタの帯域幅及び減衰量と並列腕共振子に接続されるインダクタンスのインダクタンス値との関係を示す図である。
[図10]図10は特許文献2に記載の先行技術に基づいて作製された比較例のラダー型フィルタの帯域幅及び減衰量と並列腕共振子に接続されるインダクタンスのインダクタンス値との関係を示す図である。
[図11]図11は並列腕共振子とインダクタンスとの間の線路が交差している場合と交差していない場合のラダー型フィルタの減衰量−周波数特性の差を説明するための図である。
[図12]図12は図2に示したラダー型フィルタの変形例を示す模式的平面図である。
[図13]図13は図2に示したラダー型フィルタの他の変形例を示す模式的平面図である。
[図14]図14は本発明で直列腕共振子及び並列腕共振子として用いられる圧電薄膜共振子の一例を示す正面断面図である。
[図15]図15は本発明で直列腕共振子及び並列腕共振子として用いられる圧電薄膜共振子の一例を示す正面断面図である。
[図16]図16は本発明の変形例に係るフィルタ装置の構造を説明するための模式的平面図である。
[図17]図17は本発明のフィルタ装置の他の変形例を説明するための正面断面図である。
[図18]図18は本発明のフィルタ装置のさらの他の変形例を説明するための模式的平面図である。
[図19]図19は本発明に係るフィルタ装置のさらに別の変形例を説明するための模式的正面断面図である。
[図20]図20は本発明の更に他の変形例に係るフィルタ装置の正面断面図である。
[図21]図21は本発明の更に別の変形例に係るフィルタ装置の正面断面図である。
[図22]図22は本発明の他の変形例に係るフィルタ装置の正面断面図である。
[図23]図23は本発明の別の変形例に係るフィルタ装置の正面断面図である。
[図24]図24は従来のラダー型フィルタの一例を示すための回路図である。
[図25]図25は従来のラダー型フィルタの他の例を示すための回路図である。
【符号の説明】
【0026】
1…ラダー型フィルタ
2…入力端子
3…出力端子
11…パッケージ
11a…開口部
13…弾性表面波エレメント
14…圧電基板
15a〜15c,16a〜16c…電極ランド
17a〜17d…電極パッド
18a〜18d…ボンディングワイヤー
19a〜19c…端子電極
20a〜20c…端子電極
22…配線パターン
23…配線パターン
41…圧電薄膜共振子
42…基板
42a…凹部
43…圧電薄膜支持層
44…圧電薄膜
45…下部電極
46…上部電極
51…圧電薄膜共振子
52…基板
52a…開口部
61…フィルタ装置
62…実装基板
63…パッケージ
65…フィルタ装置
66…実装基板
67a,67b…ビアホール電極
68a,68b…配線パターン
69a,69b…ビアホール電極
70a,70b…端子電極
71…フィルタ装置
72…パッケージ
73…フィルタ素子
74a,74b…ボンディングワイヤー
75…フィルタ装置
72a…パッケージ
78a,78b…配線パターン
79a,79b…端子電極
80a,80b…コイルパターン
81a,81b…ビアホール電極
S21〜S23…直列腕共振子
P21,P22…並列腕共振子
P31a,P31b…並列腕共振子
P32a,P32b…並列腕共振子
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルタ装置としてのラダー型フィルタの回路図である。本実施形態のラダー型フィルタ1は、送信側帯域が1920〜1980MHz、受信側帯域が2110〜2170MHzのW−CDMA方式のデュプレクサに用いられる送信側帯域フィルタである。従って、送信側帯域が、受信側帯域よりも低くされている。すなわち、ラダー型フィルタ1は、通過帯域の周波数が相対的に低い第1のバンドパスフィルタと、通過帯域の周波数が相対的に高い第2のバンドパスフィルタとを含む通信システムの第1のバンドパスフィルタとして用いられるフィルタ装置である。
【0029】
ラダー型フィルタ1は、複数の弾性表面波共振子が梯子型回路構成を有するように接続された構造を有する。すなわち、入力端子2と出力端子3とを結ぶ直列腕に、それぞれ弾性表面波共振子からなる直列腕共振子S21,S22,S23が配置されている。直列腕共振子S21,S22間の接続点と基準電位との間に延びる並列腕に並列腕共振子P21が配置されている。並列腕共振子P21の基準電位側端子と基準電位との間に、並列腕共振子P21と直列にインダクタンスL1が接続されている。また、直列腕共振子S22,S23間の接続点と基準電位との間の並列腕に並列腕共振子P22が配置されている。並列腕共振子P2き2の基準電位側端子と、基準電位との間にインダクタンスL2が接続されている。
【0030】
すなわち、本実施形態のラダー型フィルタ1では、並列腕共振子P21,P22のそれぞれに、直列にインダクタンスL1,L2が接続されている。
【0031】
図2は、本実施形態のラダー型フィルタの構造を示す模式的平面図であり、図3は、その底面に構成されている端子電極を説明するためのラダー型フィルタの模式的平面図である。
【0032】
図2に示すように、ラダー型フィルタ1は、パッケージ11を有する。図2では、パッケージ11を閉成する蓋材を取り去った状態が示されている。すなわち、パッケージ11は、凹部11aを有し、凹部11a内に、弾性表面波エレメント13が収納されている。弾性表面波エレメント13は、矩形の圧電基板14を用いて構成されている。圧電基板14上に、電極パターンを形成することにより、上述した直列腕共振子S21〜S23及び並列腕共振子P21,P22が図1に示すように、電気的に接続された構造が示されている。図2から明らかなように、直列腕共振子S21〜S23及び並列腕共振子P21,P22は、それぞれ、インターデジタル電極と、インターデジタル電極の表面波伝搬方向両側に配置された反射器とを備える一端子対弾性表面波共振子により構成されている。なお、パッケージ11の凹部11aの両側には、凹部11aよりも高い段差部11b,11cが設けられている。段差部11b,11c上に、電極ランド15a〜15c及び16a〜16cが形成されている。
【0033】
他方、圧電基板13上においては、電極パッド17a〜17dが形成されている。電極パッド17aは、直列腕共振子S21の入力端側に接続されている。すなわち、ラダー型フィルタ1の入力端側に配置される電極パッドである。電極パッド17aは、ボンディングワイヤー18aにより、パッケージ11側に設けられた電極ランド15bに電気的に接続されている。
【0034】
電極パッド17bは、直列腕共振子S23の出力端に接続されている。すなわち、ラダー型フィルタ1の出力端に相当する。電極パッド17bは、ボンディングワイヤー18bにより電極ランド16aに電気的に接続されている。
【0035】
他方、電極パッド17cは、並列腕共振子P21の基準電位側端子に接続されている。電極パッド17cは、ボンディングワイヤー18cにより電極ランド16bに接続されている。同様に、電極パッド17dは、並列腕共振子P22の基準電位側端子に接続されており、ボンディングワイヤー18dにより、パッケージ11に形成された電極ランド16cに電気的に接続されている。
【0036】
本実施形態では、上記圧電基板13は、LiNbO板を用いて構成されている。また、上記インターデジタル電極、反射器及び電極パッドをAlを主成分とする導電性材料により構成されている。
【0037】
もっとも、本発明において、弾性表面波共振子を構成する圧電基板材料及び電極を構成する導電性材料は上記に限定されるものではない。
【0038】
図2に示したラダー型フィルタ1は、実際には、パッケージ1の凹部11aを覆う蓋材により閉成される。
【0039】
他方、図3に示すように、ラダー型フィルタ1のパッケージ11の底面11d上には、端子電極19a〜19c,20a〜20cが形成されている。端子電極19a〜19cは、上述した電極ランド15a〜15cにそれぞれ電気的に接続されており、端子電極20a〜20cは、電極ランド16a〜16cに電気的に接続されている。
【0040】
そして、図3に示すように、本実施形態のラダー型フィルタ1では、上記端子電極20b,20cと基準電位との間に、外付けで第1,第2のインダクタンスL1,L2がそれぞれ電気的に接続されている。すなわち、図1に示すインダクタンスL1,L2は、外付けのインダクタンス素子によりそれぞれ構成されている。
【0041】
パッケージ11は、アルミナにより構成されている。パッケージ11は、アルミナに限定されず、低温焼結性セラミックスLTCCなどの他の絶縁性セラミックス、あるいは合成樹脂などの他の絶縁性材料により構成されていてもよい。
【0042】
なお、図2に示すように、並列腕共振子P21と電極パッド17cとを電気的に接続している配線パターン22と、ボンディングワイヤー18dとが矢印Aで示すように交差している。
【0043】
本実施形態では、インダクタンスL1,L2は、上記のようにパッケージ11外に用意されたインダクタンス素子により構成されていたが、インダクタンスL1,L2はパッケージ11内に内蔵されていてもよい。すなわち、パッケージ11にスパイラル状インダクタやマイクロストリップなどを内蔵することにより、あるいはチップ型インダクタンス素子をパッケージ11内に収納することにより、パッケージ11内にインダクタンスL1,L2を内蔵させてもよい。
本実施形態のラダー型フィルタ1の特徴は、インダクタンスL1,L2の接続により生じた副共振の周波数が、ラダー型フィルタ1の相手側フィルタである受信側帯域フィルタの通過帯域、すなわち、2110〜2170MHz周波数範囲内に、特にラダー型フィルタ1の減衰極に位置するように設定されており、それによって、広帯域、低損失及び減衰量の拡大が図られていることにある。
【0044】
これを以下において説明する。
図5は、上記ラダー型フィルタ1において用いられている並列腕共振子P21の単独の伝送特性並びに並列腕共振子P21に3.5nH、4nH及び5nHのインダクタンスL1が接続されている場合の伝送特性を示す図である。図6は、上記ラダー型フィルタ1において用いられている並列腕共振子P21の単独のインピーダンス−周波数特性並びに並列腕共振子P21に3.5nH、4nH及び5nHのインダクタンスL1が接続されている場合のインピーダンス−周波数特性を示す図である。
【0045】
なお、図5及び図6に示した特性における並列腕共振子と、並列腕共振子に接続されたインダクタンスからなるトラップの共振周波数、反共振周波数及びインダクタンスの接続により表れる副共振の周波数を下記の表1に示す。
【0046】


【0047】
図6において、共振周波数は通過帯域よりも低域側でインピーダンスがゼロを横切る周波数、反共振周波数は通過帯域内でインピーダンスの絶対値が極大値になる周波数、副共振周波数は通過帯域よりも高域側でインピーダンスがゼロを横切る周波数である。
図5において、通過帯域よりも低域側と通過帯域よりも高域側に減衰極が発生している。前記減衰極の発生している周波数は図6における共振周波数、副共振周波数と略一致する。
【0048】
図5及び図6から明らかなように、インダクタンスL1が接続されていない場合に比べてインダクタンスL1を接続することにより、特にインダクタンスL1のインダクタンス値を大きくすることにより、並列腕共振子P21の反共振周波数よりも高域側における副共振の周波数が低くなっていることがわかる。すなわち、この副共振をトラップとして利用することにより、ラダー型フィルタの高域側における減衰量の拡大を図り得ることがわかる。本発明では、このように、インダクタンスL1を並列腕共振子P21に直列に接続することにより生じた副共振をトラップとして利用し、それによって通過帯域よりも高域側の減衰量の拡大を図ったことに特徴を有する。
【0049】
図7は、ラダー型フィルタ1において、インダクタンスL1,L2のインダクタンス値を変化させた場合の減衰量−周波数特性を示す図である。図7から明らかなように、インダクタンスL1,L2を0nH、すなわち接続しなかった場合に比べて、インダクタンスL1,L2の値を、3.5nHまたは4nHとすることにより、通過帯域幅が拡大し、かつ通過帯域よりも高域側の減衰量が改善されていることがわかる。
【0050】
上記効果を明確にするために、特許文献2に記載のラダー型フィルタと上記実施形態のラダー型フィルタとを比較することとする。
【0051】
図8は、比較例として用意したラダー型フィルタの減衰量周波数特性を示す図である。この比較例は、特許文献2に記載のラダー型フィルタの基準電位側端子が共通接続されている並列腕共振子において、該基準電位側端子と基準電位との間にインダクタンスを挿入した構成において、インダクタンス値を変化させたことを除いては、本実施形態と同様にして作製されたラダー型フィルタである。
【0052】
図7と図8を比較すれば明らかなように、比較例では、通過帯域よりも低域側に減衰極が発生し、インダクタンスL1,L2の値を大きくしたとしても、帯域幅は拡大しないことがわかる。上記図7と図8との比較をより明確にするために、上記実施形態のラダー型フィルタ1の帯域幅と減衰量との関係、及び上記比較例のラダー型フィルタの帯域幅と減衰量との関係を、それぞれ、図9及び図10にグラフで示す。
【0053】
図9及び図10において、横軸は接続されるインダクタンスのインダクタンス値を、○は帯域外減衰量(相手側通過帯域2110〜2170MHzにおける最小の減衰量である)を、●は3dB帯域幅を示す。
【0054】
図10から明らかなように、比較例のラダー型フィルタでは、インダクタンスを接続し、そのインダクタンス値を変化させても帯域幅は拡大しないことがわかる。これに対して、上記実施形態のラダー型フィルタ1では、インダクタンスL1,L2のインダクタンス値を増大させることにより、帯域幅は拡大していき、帯域外減衰量についても、インダクタンス値の増加に伴って増加していき、但しインダクタンス値が大きくなり過ぎると、再度減衰域における減衰量が低下していることがわかる。
【0055】
従って、比較例のラダー型フィルタでは、並列腕共振子にインダクタンスを接続しても帯域幅拡大効果が得られないのに対し、上記実施形態のラダー型フィルタでは、広帯域であり、かつ高減衰量を実現し得ることがわかる。また、図9から明らかなように、ラダー型フィルタ1では、インダクタンス値の値を選択することにより、大きな帯域外減衰量の得られることがわかる。これは、インダクタンスL1,L2の付加により反共振周波数よりも高い領域に生じる副共振と、減衰域との関係によると考えられる。すなわち、上記実施形態のように、上記副共振の周波数域が、ラダー型フィルタ1の減衰極の近傍となった場合に、減衰量を拡大し得る効果がもっとも大きくなる。また、このとき、同時に帯域幅拡大効果も得ることができ、インダクタンスL1,L2が接続されていない場合に比べて2倍程度の帯域幅を確保することができる。
【0056】
従って、好ましくは、上記実施形態のように、インダクタンスL1,L2の接続により生じた副共振の周波数位置は、ラダー型フィルタ1の減衰極もしくはその近傍に位置することが望ましい。もっとも、本発明では、相手側帯域フィルタである受信側帯域フィルタの通過帯域内に上記副共振が位置しておれば、相手側通過帯域における減衰量を拡大することができ、かつ前述したように帯域幅の拡大を図ることができる。また、本実施形態においては、図9からわかるように、インダクタンスが3nH〜5nHである場合に十分な帯域外減衰量と広い帯域幅を確保することができる。ここで、インダクタンスが3nHのときの副共振周波数の位置は、2260MHz付近であり、インダクタンスが3.5nHのときの副共振周波数の位置は、表1に示すように2206MHzである。
【0057】
従って、帯域外減衰量の拡大効果は上記実施形態よりも劣るものの、本発明においては上記副共振の周波数位置は、相手側の帯域フィルタの受信側帯域フィルタの通過帯域内またはその近傍に位置しておればよい。ここで、相手側の帯域フィルタの受信側帯域フィルタの通過帯域内の近傍とは、図9からわかるように、インダクタンスが3nHであるときの副共振の周波数位置である2260MHz付近まで減衰を確保できることから、概ね相手側通過帯域のより90MHz程度高い周波数位置を示すものである。また、フィルタの通過周波数が変化すると当然変化するため、相手側の通過帯域の上限の周波数を基準として標準化すると、2260/2170=約1.04となるので相手側の通過帯域の上限の周波数の1.04倍の周波数位置に副共振の周波数をもってくればよいことがわかる。従って、相手側の帯域フィルタの受信側帯域フィルタの通過帯域内の近傍とは、相手側の通過帯域の上限の周波数を超え、相手側の通過帯域の上限の周波数の1.04倍の周波数位置までの周波数帯として定義することができる。
【0058】
図2に示したように、ラダー型フィルタ1では、ボンディングワイヤー18dが、配線パターン22と矢印Aで示すように交差されている。すなわち、並列腕共振子P21から第1のインダクタンスL1に至る電気的線路と、並列腕共振子P22から第2のインダクタンスL2に至る線路とが交差していることになる。そのため、ラダー型フィルタ1では、両線路において生じる磁束が打ち消し合い、インダクタンスL1,L2を大きくした場合の減衰量の悪化が抑制される。よって、交差部Aを設けることにより、大きな減衰量を得ることができる。これを図11を参照して説明する。
【0059】
図11の実線は、交差部Aを有するラダー型フィルタ1の減衰量−周波数特性であり、破線は交差部Aを設けないように、ボンディングワイヤー18dを接続したことを除いては、上記実施形態と同様にして構成されたラダー型フィルタの減衰量−周波数特性である。図11から明らかなように、上記交差部Aを設けることにより、帯域外減衰量の拡大が図られていることがわかる。
【0060】
なお、上記実施形態では、ボンディングワイヤー18dが配線パターン22と矢印Aで示すように交差されていたが、図12及び図13に示すように、交差部を設ける構造は適宜変更することができる。図12に示す変形例では、電極パッド17cと電極ランド16bを接続しているボンディングワイヤー18cと、ボンディングワイヤー18dとが矢印A1で示すように交差されている。
【0061】
また、図13に示す変形例では、ボンディングワイヤー18cが、並列腕共振子P22と電極パッド17dとを結ぶ配線パターン23と矢印A2で示すように交差されている。
【0062】
このように、1個の並列腕共振子とインダクタンスとの間の線路と、他方の並列腕共振子と該並列腕共振子に接続されているインダクタンスとの間の線路を交差させる構造は様々に変形することができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、並列腕共振子P21,P22に直列にインダクタンス素子が基準電位との間に接続されていたが、このような構成は様々に変形することができる。例えば、図4(a)に示すように、1つの並列腕において、互いに並列に接続された2個の共振子P31a,P31bを配置し、並列接続された並列腕共振子P31a,P31bの基準電位側の共通接続点と基準電位との間に、インダクタンスL3を接続した構造であってもよい。さらに、図4(b)に示すように、1つの並列腕において、2個の並列腕共振子P32a,P32bが直列に接続されていてもよい。
【0064】
すなわち、並列腕に配置される並列腕共振子は、複数の並列腕共振子を直列または並列に接続した構造であってもよい。また、インダクタンスについても複数のインダクタンス素子を1つの並列腕において、互いに直列に、または互いに並列に接続して構成してもよい。
【0065】
さらに、複数段構成のラダー型フィルタにおいて、全ての並列腕共振子に、必ずしも直列にインダクタンスが接続されている構成は必ずしもない。
【0066】
すなわち、複数の並列腕共振子の内、少なくとも1つの並列腕共振子の基準電位側端子に、直列にインダクタンスが接続されておればよい。
【0067】
また、上記ラダー型フィルタ1では、直列腕共振子S21〜S23及び並列腕共振子P21,P22は弾性表面波共振子で構成されていたが、弾性表面波共振子ではなく、他の共振子により構成されていてもよい。このような他の共振子として、例えば図14及び図15に示す圧電薄膜共振子41,51を挙げることができる。
【0068】
図14に示す圧電薄膜共振子41は、上面に凹部42aを有する基板42を用いて構成されている。凹部42aを覆うように圧電薄膜支持層43が積層されている。圧電薄膜支持層43の上面に、圧電薄膜44が配置されている。圧電薄膜44の下面には下部電極45が、上面には上部電極46が形成されている。下部電極45と上部電極46とは圧電薄膜44を介して部分的に対向されており、かつ該対向部分は、前述した基板42の凹部42aの上方に位置している。
【0069】
従って、下部電極45と上部46との間に交流電界を印加した場合、圧電効果により、下部電極45と圧電薄膜46とが対向している部分が励振され、共振特性を得ることができる。
【0070】
上記圧電薄膜共振子41において、圧電薄膜44は、ZnOやAlNなどの適宜の圧電材料などから構成され得る。
【0071】
また、下部電極45及び上部電極46は、AlまたはCuなどの適宜の導電性材料により構成され得る。
【0072】
基板42は、開口42aを有するように構成され得る限り、適宜の絶縁性材料あるいは圧電性材料により構成され得る。基板42を構成する材料としては、例えば、アルミナなどを挙げることができる。さらに、圧電薄膜支持層43は、開口42aを覆い、かつ圧電薄膜44を支持する機能を有するものであり、かつ圧電薄膜44の振動を妨げない限り、適宜の材料により構成され得る。このような圧電薄膜支持層43は、ダイヤフラム構造を形成するものであるため、上記のように圧電薄膜44の振動を妨げない厚みに形成されておればよい。圧電薄膜支持層43は、例えばSiO、Alなどから構成され得る。
【0073】
図15に示す圧電薄膜共振子51では、基板52に開口部52aが形成されている。この開口部52a上に、圧電薄膜支持層43、下部電極45、圧電薄膜44及び上部電極46が積層されている。すなわち、図14に示した凹部42aを有する基板42に代えて、開口52aを有する基板52が設けられていることを除いては、圧電薄膜共振子41と同様に構成されている。このように、圧電薄膜共振子では、上面に開いた凹部でなく、貫通した開口部52aが基板52に設けられていてもよい。この場合には、開口部52aの上方において、圧電薄膜44の励振部分が構成されることになる。
【0074】
本発明に係るフィルタ装置では、上記インダクタは様々な形態で構成され得る。図16及び図17は、本発明のフィルタ装置の変形例を示す模式的部分切欠平面図及び正面断面図である。本変形例のフィルタ装置61は、実装基板62を有する。実装基板62上にパッケージ63が実装されている。パッケージ63内には、上述した実施形態と同様に、本発明のフィルタ装置を構成している直列腕共振子及び並列腕共振子からなるラダー型回路が構成されている。すなわち、本発明に従って上記並列腕共振子に直列に接続されるインダクタンスを除いた回路構成を形成してなる圧電基板が収納されている。
フィルタ装置61では、前述した並列腕共振子に直列に接続される上記インダクタンスL1,L2は、実装基板62の表面に設けられたコイル状の導体パターンにより構成されている。従って、インダクタンスL1,L2を構成する導体パターンは、実装基板62上の配線62aと同一材料を用いて、同じ工程で形成され得る。よって、製造工程の煩雑化を招くことなく、インダクタンスL1,L2を構成することができる。また、インダクタンスL1,L2が、実装基板62に一体化されているため、部品点数の低減を図ることができる。コイル状導体パターンはミアンダ状導体パターンであってもよい。
【0075】
図17に正面断面図で示す変形例のフィルタ装置65では、実装基板66上に、パッケージ63が搭載されている。もっとも、本変形例では、実装基板66内に、インダクタンスL1,L2を構成する導体パターンが形成されている。この導体パターンからなるインダクタンスL1,L2の一端は、それぞれ、ビアホール電極67a,67bを介して、実装基板66の表面に設けられた配線パターン68a,68bに接続されている。配線パターン68a,68bは、パッケージ63に設けられた電極に電気的に接続されている。他方、インダクタンスL1,L2の他端は、実装基板66内に設けられたビアホール電極69a,69bを介して、実装基板66の下面に設けられた端子電極70a,70bに電気的に接続されている。ビアホール電極69a,69bを介した接続は実装基板66の側面に設けられた電極を介した接続であってもよい。
【0076】
本変形例のフィルタ装置65においても、インダクタンスL1,L2が、実装基板66内に内蔵されているため、大型化を招くことなく、本発明のフィルタ装置を提供することができる。また、上記内蔵されているインダクタンスL1,L2は、例えばセラミック多層基板を製造する公知の製造方法に従って容易に得ることができる。よって、部品点数の増大を招くことなく、かつ製造工程の増大を招くことなく、フィルタ装置65を提供することができる。
【0077】
図18は、本発明のフィルタ装置のさらに他の変形例を説明するための模式的平面図である。図18に示すフィルタ装置71では、パッケージ72内に、フィルタ素子73が収納されている。フィルタ素子73は、第1の実施形態のラダー型フィルタ1のフィルタ素子と同様に構成されている。この変形例の特徴は、パッケージ72の表面に、コイル状導体パターンを形成することにより上記インダクタンスL1,L2が形成されていることにある。このように、パッケージ72の表面に、導体パターンを形成することにより、インダクタンスL1,L2を形成してもよい。ここでは、インダクタンスL1,L2の一端は、それぞれ、ボンディングワイヤー74a,74bにより、フィルタ素子73上の電極ランドに電気的に接続されている。また、特に図示はしないが、インダクタンスL1,L2の他端は、外部と電気的に接続される端子電極等にビアホール電極(図示せず)を介して電気的に接続されている。コイル状導体パターンはミアンダ状導体パターンであってもよい。ビアホール電極を介した接続は側面電極を介した接続であってもよい。
【0078】
図19に示す変形例のフィルタ装置75では、パッケージ72a内に、フィルタ素子76が収納されている。ここでは、パッケージ72aがセラミック多層基板により構成されている。パッケージ72aの内部に、インダクタンスL1,L2が内蔵されている。インダクタンスL1,L2は、パッケージ72a内において、複数の高さ位置にコイルパターン76a,76bを形成し、両者をビアホール電極76cで電気的に接続することにより構成されている。コイルパターン76aが、ビアホール77aにより配線パターン78aに電気的に接続されている。また、コイルパターン76bが、ビアホール電極77bにより、端子電極79aに電気的に接続されている。
【0079】
他方、インダクタンスL2も同様に構成されており、インダクタンスL2を構成するコイルパターン80a,80bがビアホール電極80cにより電気的に接続されている。コイルパターン80aが、ビアホール電極81aにより配線パターン78bに接続されている。また、コイルパターン80bが、ビアホール電極81bにより、端子電極79bに電気的に接続されている。ビアホール電極77b,81bのかわりに側面電極を用いてもよい。コイルパターンはミアンダパターンであってもよい。
【0080】
図18及び図19に示した各変形例のフィルタ装置71,75から明らかなように、フィルタ装置が実装されるパッケージに、上記インダクタンスL1,L2の少なくとも一方が内蔵されていてもよい。この場合には、パッケージ72,75の外部でインダクタンス素子を接続する作業を省略することができるとともに、フィルタ装置が内蔵された電子部品の小型化が図ることができる。すなわち、上記フィルタ装置を用いて構成された例えばデュプレクサ等の電子部品の小型化を図ることができる。
【0081】
図20〜23は、本発明に係るフィルタ装置構造の変形例を示す各正面断面図である。本発明に係るフィルタ装置では、パッケージ構造は適宜変形され得る。
【0082】
例えば、図20に示すフィルタ装置201では、基板202と、枠状部材203と、蓋材204とによりパッケージが構造されている。ここでは、基板202上にフリップチップボンディング工法によりSAW素子205が搭載されている。すなわち、基板202の上面に電極ランド206,207が形成されており、金属バンプ208a,208bによりSAW素子205が電極ランド206,207に接合されている。なお、電極ランド206,207はビアホール電極209a,209bにより端子電極210,211に接合されている。本変形例においても、前述した実施例と同様にインダクダンスを適宜構成すればよい。例えば、外付のインダクタンス素子により構成していてもよい。
【0083】
また、図21に示すフィルタ装置221では、フィルタ装置201と同様のパッケージ構造が採用されている。もっとも、ここでは、基板202に代えて、多層基板222が用いられている。多層基板222の上面には、電極ランド206,207が形成されており、該電極ランド206,207は、多層基板222内に配置されたインダクタンス構成用の内部電極223,224にビアホール電極209a,209bにより電気的に接続されている。更に、内部電極223,224が、ビアホール電極225,226によりインダクタンス構成用の内部電極227,228に接続されている。内部電極227,228が、ビアホール電極229,230により端子電極210,211に接続されている。このように、多層基板222内にインダクタンスを構成し、多層基板222上に、フィルタ装置201の場合と同様にフリップチップボンディング工法によりSAW素子205が搭載されていてもよい。
【0084】
図22に示すフィルタ装置241は、図20に示した枠状部材203及び蓋材204に代えて、外装樹脂層242を用いたことを除いてはフィルタ装置201と同様に構成されている。また、図23に示すフィルタ装置251は、枠状部材203及び蓋材204に代えて外装樹脂層252を用いたことを除いては、フィルタ装置221と同様に構成されている。このように、パッケージの一部を外装樹脂層242,252で構成してもよい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過帯域の周波数が相対的に低い第1のバンドパスフィルタと、通過帯域の周波数が相対的に高い第2のバンドパスフィルタとを含む通信システムの第1のバンドパスフィルタとして用いられるフィルタ装置であって、
ラダー型回路構成を有し、
入力端子と出力端子とを結ぶ直列腕に挿入された少なくとも一つの直列腕共振子と、
前記直列腕と基準電位とを結ぶ少なくとも一つの並列腕に接続されている、少なくとも一つの並列腕共振子と、
少なくとも一つの前記並列腕共振子に直列に接続されたインダクタンスとを備え、
前記インダクタンスのインダクタンス値が、前記インダクタンスの挿入により前記並列腕共振子に新たに生じた副共振の周波数が、相手側のフィルタである第2のバンドパスフィルタの通過帯域内またはその近傍に位置するように設定されていることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記直列腕共振子及び並列腕共振子が、それぞれ、弾性表面波共振子により構成されている、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記直列腕共振子及び並列腕共振子が、それぞれ、圧電薄膜共振子により構成されている、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記圧電薄膜共振子は、開口部もしくは凹部を有する基板と、該開口部もしくは凹部の上方に配置された圧電薄膜と、前記圧電薄膜の上面及び下面にそれぞれ形成されており、かつ圧電薄膜を介して対向するように配置された上部電極及び下部電極を有する、請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記基板と、前記圧電薄膜との間に、前記基板の開口部もしくは凹部を覆うように設けられた圧電薄膜支持層をさらに備える、請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記ラダー型フィルタの前記直列腕共振子及び並列腕共振子が接続されているパッケージをさらに備え、前記インダクタが、前記パッケージの外部で前記並列腕共振子に接続されているインダクタンス素子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記パッケージが実装される実装基板をさらに備え、前記インダクタが、前記実装基板に内蔵されたインダクタンス素子であり、請求項6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記フィルタ装置が実装されているパッケージをさらに備え、前記インダクタが、前記パッケージに内蔵されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルタ装置。

【国際公開番号】WO2005/055423
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515906(P2005−515906)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017460
【国際出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】