説明

フェノール樹脂発泡体およびその製造方法

【課題】 断熱性能が良好で、かつ従来品に比べてpHが高く、接触部材に対して良好な腐食防止性を有するフェノール樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 フェノール樹脂、発泡剤、硬化剤および無機フィラーを含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなる発泡体であって、発泡体のpHが5以上、熱伝導率が0.022W/m・K以下、且つ透湿係数が60ng/(m・s・Pa)以下であるフェノール樹脂発泡体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェノール樹脂発泡体およびその製造方法、さらに詳しくは、断熱性能が良好で、かつ従来品に比べてpHが高く、接触部材に対して良好な腐食防止性を有するフェノール樹脂発泡体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フェノール樹脂発泡体は、断熱性、難燃・防火性などに優れることから、断熱材として建築その他の産業分野において使用されている。
【0003】
ところで、フェノール樹脂発泡体の製造においては、一般にフェノール樹脂、発泡剤及び硬化剤を少なくとも含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させる方法が用いられ、そして、前記硬化剤として、酸硬化剤、例えば硫酸や、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸が使用されている。したがって、得られるフェノール樹脂発泡体は、前記酸硬化剤を含むため、例えば雨などで濡れた場合、該酸硬化剤が水で抽出される。その結果、前記フェノール樹脂発泡体に金属部材が接触している場合、あるいは発泡体の近傍に金属部材が存在する場合、その金属部材は腐食を受けやすいという問題が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情のもとで、断熱性能が良好で、かつ従来品に比べてpHが高く、接触部材に対して良好な腐食防止性を有するフェノール樹脂発泡体およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有するフェノール樹脂発泡体を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の硬化剤の特定量を使用し、かつ特定の無機フィラーを使用することにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1) フェノール樹脂、発泡剤、硬化剤および無機フィラーを含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなる発泡体であって、発泡体のpHが5以上、熱伝導率が0.022W/m・K以下、且つ透湿係数が60ng/(m・s・Pa)以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体、
(2) 硬化剤が、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸およびナフトールスルホン酸の中から選ばれる少なくとも1種を含む、上記(1)項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(3) 硬化剤が、硬化剤に含まれる水分量が2質量%以下、遊離硫酸量が3質量%以下のものである、上記(1)または(2)項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(4) 発泡性フェノール樹脂成形材料が、フェノール樹脂100質量部当たり、硬化剤5〜25質量部を含む、上記(1)ないし(3)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(5) 無機フィラーが、金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩および金属粉末の中から選ばれる少なくとも1種である、上記(1)ないし(4)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(6) 独立気泡率が85%以上である、上記(1)ないし(5)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(7) 少なくとも一方の表面に面材を設けてなる、上記(1)ないし(6)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(8) 面材が、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、ケイ酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種である、上記(7)項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(9) フェノール樹脂が、フェノール類とアルデヒド類とのモル比が1:1.5〜1:2.5であり、かつアルカリ性条件下の反応で得られた、数平均分子量が300〜700のレゾール型フェノール樹脂である、上記(1)ないし(8)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体、および
(10) 前記フェノール樹脂と無機フィラーを含む混合物を0〜25℃、前記発泡剤を0〜5℃、前記硬化剤を0〜15℃に温調し、これらを混合し、発泡、硬化させることを特徴とする、上記(1)ないし(9)項に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の硬化剤の特定量を使用し、かつ特定の無機フィラーを加えることにより、断熱性能が良好で、かつ従来品に比べてpHが高く、接触部材に対して良好な腐食防止性を有するフェノール樹脂発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂、発泡剤、硬化剤および無機フィラーを含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなるものである。
【0009】
前記フェノール樹脂は、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類及びその変性物とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアルカリを触媒量添加し、アルカリ条件下で反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂におけるフェノール類とアルデヒド類とのモル比は1:1.5〜1:2.5、好ましくは1:1.8〜1:2.2である。フェノール樹脂の分子量は数平均分子量で300〜700であることが好ましい。
【0010】
このようなフェノール樹脂として、特にフェノールとホルムアルデヒドとのモル比が1:1.5〜1:2.5であり、アルカリ性条件下の反応で得られた、数平均分子量で300〜700であるフェノール樹脂が好適である。
【0011】
本発明において、前記発泡剤としては、窒素、アルゴン、炭酸ガス等の気体、又は空気、沸点が0〜100℃、好ましくは20〜50℃の物質が用いられる。このような物質としては、例えば1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン等の弗素化炭化水素化合物(代替フロン)、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等の塩弗素化炭化水素化合物、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系化合物、又はそれらのハロゲン化物、イソプロピルエーテル等のエーテル化合物等が例示されるが、特に限定されない。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0012】
本発明において、前記発泡剤の使用量は、前述のフェノール樹脂100質量部に対して、通常1〜20質量部、好ましくは5〜10質量部である。
【0013】
本発明において、前記硬化剤として、酸硬化剤、例えばベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などのトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸等の有機酸が好ましく、これらの硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
前記硬化剤に含まれる水分の量は2質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下である。水分の量が多いと、発泡体のセルが連通し、断熱性能が低下する。また硬化剤に含まれる遊離硫酸の量は3質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下である。遊離硫酸の量が多いと、接触部材への腐食性が増し、また発泡体のセルが連通し、断熱性能が低下する。
【0015】
前記硬化剤の使用量は、硬化剤の種類にもよるが、前記フェノール樹脂100質量部当たり、5〜25質量部、好ましくは7〜20質量部の範囲である。硬化剤の使用量が、上記の範囲にあれば、硬化剤としての機能を良好に発揮し得ると共に、発泡体のpHを5以上に制御することができる。より好ましい硬化剤の使用量は、10〜20質量部である。
【0016】
本発明において無機フィラーは、熱伝導率が低く、pHが5以上と高いフェノール樹脂発泡体を与えるために用いられる。無機フィラーの使用量は、前記フェノール樹脂100質量部に対して、通常0.1〜30質量部、好ましくは1〜10質量部、特に好ましくは2〜6質量部である。0.1質量部より少ないとフェノール樹脂発泡体の抽出pHが小さくなり、酸性度が増す為、施工状況によっては接触する資材に腐食の引き起こすことがある。他方、30質量部より多いと、発泡体生成反応が著しく遅くなり、生産性が悪化する。
【0017】
この無機フィラーとしては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属の水酸化物や酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛などの金属の炭酸塩、亜鉛などの金属粉末を用いることができ、この中で水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムが特に好ましい。これらの無機フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明において所望により用いられる整泡剤としては、例えばポリシロキサン系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油のエチレンオキシド付加物などの非イオン性界面活性剤が好ましく挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
当該発泡性フェノール樹脂成形材料は、例えば、前記フェノール樹脂に前記無機フィラーを加えた混合物を0〜25℃に温調し、この混合物に0〜5℃に温調した発泡剤および0〜15℃に温調した硬化剤を添加したのち、これをミキサーに供給して、例えば回転数1,000〜5,000rpmで攪拌することにより、爆発的な発泡と未発泡を生じない最適な発泡状態を得ることができ、発泡体のセル壁や亀裂、ピンホールの発生を抑えることができ、熱伝導率が小さい発泡ガスをセル中に封じ込めることにより、断熱性が優れた発泡体が得られる。
【0020】
発泡性フェノール樹脂成形材料を用いて、フェノール樹脂発泡体を形成させる方法としては、例えば(1)エンドレスコンベア上に流出させる成形方法、(2)スポット的に流出させて部分的に発泡させる方法、(3)モールド内で加圧発泡させる方法、(4)ある大きな空間中に投入して発泡ブロックを作る方法、(5)空洞中に圧入しながら充填発泡させる方法などが挙げられる。
【0021】
好ましい方法としては、前記発泡性フェノール樹脂成形材料を、連続的に移動するコンベア上に吐出し、この吐出物を加熱ゾーンを経由して発泡させると共に成形して、所望のフェノール樹脂発泡体を作製する方法がある。具体的には、前記発泡性フェノール樹脂成形材料を、コンベヤーベルト上の面材の上に吐出する。次いでコンベヤーベルト上の成形材料の上面に面材を載せ硬化炉に入れる。硬化炉の中では上から他のコンベヤーベルトで押さえ、フェノール樹脂発泡体を所定の厚さに調整し、60〜100℃程度、2〜15分間程度の条件で発泡硬化する。硬化炉から出たフェノール樹脂発泡体は所定の長さに切断される。
【0022】
前記面材としては、特に制限されず、一般的には天然繊維、ポリエステル繊維やポリエチレン繊維などの合成繊維、ガラス繊維などの無機繊維等の不織布、紙類、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔などが用いられるが、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、構造用パネル、パーティクルボード、ハードボード、木質系セメント板、フレキシブル板、パーライト板、ケイ酸カルシウム板、炭酸マグネシウム板、パルプセメント板、シージングボード、ミディアムデンシティーファイバーボード、石膏ボード、ラスシート、火山性ガラス質複合板、天然石、煉瓦、タイル、ガラス成形体、軽量気泡コンクリート成形体、セメントモルタル成形体、ガラス繊維補強セメント成形体等の水硬化性セメント水和物をバインダー成分とする成形体が好適である。この面材は、フェノール樹脂発泡体の片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。また、両面に設ける場合、面材は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、あとから接着剤を用いて面材を貼り合わせて設けてもよい。
【0023】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、pHが5以上である。pHが5以上であるので、雨に濡れても、発泡体に接触する金属部材、あるいは発泡体の近傍に存在する金属部材に対する腐食を抑制することができる。好ましいpHは5.5以上であり、特に6以上が好ましい。なお、発泡体のpHの測定方法は、後で詳述する。
【0024】
本発明のフェノール樹脂発泡体において、熱伝導率は0.022W/m・K以下であり、好ましくは熱伝導率が0.020W/m・K以下である。この熱伝導率が0.022W/m・Kを超えるとフェノール樹脂発泡体の断熱性能が不十分となる。
【0025】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、厚さ25mm当たりの透湿係数が、60ng/(m・s・Pa)以下であり、好ましくは55ng/(m・s・Pa)以下である。この透湿係数が60ng/(m・s・Pa)を超えると水分透過性が増加して、断熱性能が不十分となる。
【0026】
また、密度は10〜100kg/m程度、平均気泡径は5〜400μm程度であり、発泡体の横断面積に占めるボイドの面積割合は5%以下であることが好ましい。さらに、気泡壁に実質的に孔が存在せず、独立気泡率が通常85%以上、好ましくは90%以上である。酸素指数は29以上が好ましく、30以上がより好ましい。
なお、フェノール樹脂発泡体の前記物性の測定方法については実施例において詳述する。
【実施例】
【0027】
次に本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で得られたフェノール樹脂発泡体の物性は、以下に示す方法に従って測定した。
【0028】
(1)密度
JIS A 9511:2003、5.6密度に従い測定した。
【0029】
(2)熱伝導率
300mm角のフェノール樹脂発泡体サンプルを用い、低温板10℃、高温板30℃に設定し、JIS A 1412−2:1999の熱流計法に従い、熱伝導率測定装置HC−074 304(英弘精機株式会社製)を使用して測定した。なお、初期熱伝導率は、フェノール樹脂発泡体サンプルを70℃雰囲気に4日間放置後の熱伝導率である。
【0030】
(3)腐食防止性
300mm角の亜鉛鉄板(厚さ1mmめっき付着量120g/m)の上に、同じ大きさのフェノール樹脂発泡体サンプルを載せ、ずれないようにして固定したものを試験体とし、40℃、100%RHの促進環境下に設置し、24週間放置後の亜鉛鉄板のサンプルとの接触面の腐食性を目視にて評価した。
【0031】
(4)pH
乳鉢で250μm(60メッシュ)以下に微粉化したフェノール樹脂発泡体サンプル0.5gを200ml共栓付き三角フラスコに量り取り、純水100mlを加え、密栓後、マグネチックスターラーを用い室温(23±5℃)で7日間攪拌後、pHメータで測定した。
【0032】
(5)平均気泡径
フェノール樹脂発泡体サンプルの内部の50倍拡大写真上に9cmの長さの直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数を各直線で求め、それらの平均値(JIS K6402に準じて測定したセル数)で1800μmを割った値である。
【0033】
(6)ボイド
フェノール樹脂発泡体サンプルの厚み方向のほぼ中央を表裏面に平行に切削し、100mm×150mmの範囲を200%拡大カラーコピー(それぞれの長さが2倍、即ち面積は4倍になる)をとって、透明方眼紙により1mm×1mmマスが8マス以上のボイド面積を積算し面積分率を計算した。拡大コピーをとっているため、この8マスが実際のフォーム断面では2mmの面積に相当する。
【0034】
(7)厚さ25mm当たりの透湿係数
ISO 1663:1999硬質発泡プラスチック−水蒸気透過性の求め方に準拠して測定した。なお、吸湿剤の塩化カルシウムは、直径2.5〜3.5mm程度のものを使用した。
【0035】
(8)独立気泡率
ASTM D2856により測定した。
【0036】
(9)数平均分子量
テトラヒドロフランを用いて0.2%に調製し、Shodex GPC KF−802カラムにてゲルパーミエーションクロマトグラフにより測定した。
【0037】
また実施例および比較例で用いられた硬化剤の水分量および遊離硫酸量は、以下に示す方法に従って測定した。
(1)水分量
硬化剤試料を所定量採り、JIS K 6910 7.24水分(カールフィッシャー自動容量滴定法)により測定した。
(2)遊離硫酸量
硬化剤試料を所定量採り、メタノールに溶解し、自動滴定装置によりN/10シクロヘキシルアミン−メタノール標準溶液で電位差滴定し、2段階変曲点から定量した。
【0038】
実施例1
フェノールとホルムアルデヒドとをモル比1:2で反応させて得られたレゾール型フェノール樹脂[旭有機材工業(株)製、商品名「PF−330」、数平均分子量500]100質量部に、整泡剤としてひまし油エチレンオキサイド(22モル)付加物3質量部を加えて混合した。
このフェノール樹脂混合物103質量部に対し、無機フィラーとして炭酸カルシウム3質量部を加え、15℃に温調した。
発泡剤として0℃に温調したHFC−365mfc(日本ソルベイ製、1,1,1,3,3-ペンタフロロブタン)8質量部、硬化剤として0℃に温調したパラトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸の質量比=2:1の混合物(水分量0.8質量%、遊離硫酸量1.0質量%)15質量部を加えて、発泡性フェノール樹脂成形材料を調製した。
続いて、この成形材料を、ミキサーに供給し、回転数2,000rpmで撹拌、混合してガラス不織布を敷いた型枠に吐出し、80℃の乾燥機に入れ、15分間発泡させて成形し、フェノール樹脂発泡体を得た。この発泡体の物性を表1に示す。
【0039】
実施例2
実施例1において、硬化剤をキシレンスルホン酸:エチルベンゼンスルホン酸の質量比=2:1の混合物(水分量1.0質量%、遊離硫酸量1.2質量%)15質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を得た。この発泡体の物性を表1に示す。
【0040】
実施例3
実施例1において、無機フィラー量を5質量部、硬化剤量を20質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を得た。この発泡体の物性を表1に示す。
【0041】
比較例1
実施例1において、無機フィラーを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を得た。この発泡体の物性を表1に示す。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、特定の硬化剤の特定量を使用し、かつ特定の無機フィラーを使用することにより、断熱性能が良好で、かつ従来品に比べてpHが高く、接触部材に対して良好な腐食防止性を有している。本発明のフェノール樹脂発泡体は、断熱材などとして建築その他の産業分野において好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂、発泡剤、硬化剤および無機フィラーを含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなる発泡体であって、発泡体のpHが5以上、熱伝導率が0.022W/m・K以下、且つ透湿係数が60ng/(m・s・Pa)以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
【請求項2】
硬化剤が、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸およびナフトールスルホン酸の中から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項3】
硬化剤が、硬化剤に含まれる水分量が2質量%以下、遊離硫酸量が3質量%以下のものである、請求項1または2に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項4】
発泡性フェノール樹脂成形材料が、フェノール樹脂100質量部当たり、硬化剤5〜25質量部を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項5】
無機フィラーが、金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩および金属粉末の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項6】
独立気泡率が85%以上である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項7】
少なくとも一方の表面に面材を設けてなる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項8】
面材が、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、ケイ酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項9】
フェノール樹脂が、フェノール類とアルデヒド類とのモル比が1:1.5〜1:2.5であり、かつアルカリ性条件下の反応で得られた、数平均分子量が300〜700のレゾール型フェノール樹脂である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項10】
前記フェノール樹脂と無機フィラーを含む混合物を0〜25℃、前記発泡剤を0〜5℃、前記硬化剤を0〜15℃に温調し、これらを混合し、発泡、硬化させることを特徴とする、請求項1ないし9に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2007−70508(P2007−70508A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260287(P2005−260287)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】