説明

フォトマスクブランクスおよびフォトマスク

【課題】マスクパターンの高解像度化に効果的なレジストの薄膜化が可能で、ドライエッチング時のローディング効果が低減され、レジスト寸法からのマスク寸法のシフト量の低減が図れ、マスク製造工程数の削減が図れるフォトマスクブランクスおよびそのブランクスを用いて製造したフォトマスクを提供する。
【解決手段】透明基板上に単層もしくは2層以上の薄膜が形成されたフォトマスクブランクスにおいて、前記単層もしくは2層以上の薄膜のうち、少なくとも1層が遮光膜であり、該遮光膜が酸素非含有塩素系ガスでドライエッチング可能で、かつフッ素系ガスでは実質的にドライエッチングされない材料を主成分とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI、超LSI等の高密度集積回路の製造に用いられるフォトマスクおよびそのフォトマスクを製造するためのフォトマスクブランクスに関し、さらに詳しくは、高NA露光装置を使用し、露光波長とほぼ同程度のサイズのマスクパターンをウェハ上に転写するとき、ウェハ上のパターンのハーフピッチが45nm以降の先端リソグラフィ技術に用いられるフォトマスクおよびフォトマスクブランクスに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、超LSIなどの半導体集積回路は、フォトマスクを使用したいわゆるリソグラフィ工程を繰り返すことによって製造される。パターニング前のフォトマスク基板はフォトマスクブランクス(以下、ブランクスとも称する)として知られており、光を通過させる部分と遮光する部分で構成されたバイナリ型フォトマスクのブランクスとしては、透明基板上のクロム(Cr)を主成分とする遮光膜からなる構造が実用化されている。高精度な半導体集積回路を実現するために、フォトマスクブランクスは低欠陥、ドライエッチング制御性を向上させるための膜組成・膜構造、低応力、並びに露光波長に対する低反射率化といった性能が要求される。これらの要求を満たすためにクロムを主成分とするフォトマスクブランクスにおいては、各種の膜組成、層構造、並びに成膜方法が提案され実用化されている(例えば、特許文献1〜特許文献5参照)。
【0003】
しかしながらフォトマスクに要求されるスペックは年々厳しくなってきており、例えばITRSロードマップ2006年アップデートによると(非特許文献1参照)、DRAM65nmハーフピッチで要求されるマスクパターンのCD(Critical Dimension) ユニフォーミティ、リニアリティはそれぞれ3nm、10nmとなっており、高精度フォトマスクの製造技術の開発は困難を極めている。
【0004】
上記の高精度フォトマスクの開発が難しい要因の一つとして、フォトマスク材料がクロムであることが挙げられている。レジストパターンから露出したクロム系材料をドライエッチングしてパターン形成するためには、エッチングガスとして酸素含有塩素ガス系を使用する必要がある。しかし、エッチングガスが酸素を含有するために有機系材料を主成分とするレジストに損傷を与えてしまい、ドライエッチングレートの対レジスト選択比の向上が根本的に困難となり、結果的にレジスト高解像化の有力な一つの手法であるレジストの薄膜化も適用することが難しい。またエッチング生成物として塩化クロミル(CrO2Cl2)が生じるこのラジカル主体のドライエッチングプロセスはローディング効果も大きく、さらにエッチング進行の方向性の制御が難しく、レジスト寸法に対するマスク寸法のシフト量も許容しがたいレベルになってきている。ローディング効果とは、ドライエッチングする被エッチング膜のエッチング面積の大小により、エッチングレートや選択比などのエッチング特性が変化し、その結果、マスク面内の寸法シフト量が変化してCD精度にばらつきを生じる現象である。
【0005】
上記の問題に対応すべく、近年いくつか手法が提案されている。例えば、クロム系膜のドライエッチングに対して耐性のある無機系材料からなるエッチングマスクをクロム系膜上に設け、クロム系膜並びにクロム系膜下の位相シフト層を順次ドライエッチングし、寸法制御性を向上させたフォトマスクの製造方法およびブランクスが提案されている(特許文献6参照)。
【0006】
あるいは、クロムを主成分とする第一遮光膜の上に、フッ素系ガスでドライエッチングが可能な珪素含有化合物を主成分とする第二遮光膜を積層し、第二遮光膜はエッチングレートの対レジスト選択比並びに寸法制御性がよいため、第一遮光膜を含めた全体のマスク寸法制御も向上させたフォトマスクブランクスおよびフォトマスクが提案されている(特許文献7参照)。この遮光膜はハーフトーン位相シフトマスク用遮光膜としても用いることができ、特許文献7には、上記遮光膜をフッ素系ガスでドライエッチング可能な位相シフト層上に形成させた時の製造工程も記載されている。
【特許文献1】特開昭61−272746号公報
【特許文献2】特開平2−242252号公報
【特許文献3】特開平4−9847号公報
【特許文献4】特開平5−297570号公報
【特許文献5】特許第3276954号公報
【特許文献6】WO2004/090635
【特許文献7】特開2006−146152号公報
【非特許文献1】International Technology Roadmap For Semiconductors 2006 Update,Lithography,p.9,半導体技術ロードマップ専門委員会(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ウェハ上のパターンがハーフピッチ65nmから45nmへと進展するに伴い、クロム系材料を遮光膜に用いたフォトマスク製造においては、ドライエッチング時のローディング効果の問題や寸法シフトが許容しがたいレベルになりつつあり、さらに上記のように、クロム系材料は酸素含有塩素ガスでドライエッチングするために、高解像に有効なレジストの薄膜化が困難であるという問題がある。またそれらの問題に対応すべく提案されている上記の特許文献6あるいは特許文献7に示される発明は、エッチングマスクあるいは第二遮光膜というエッチング用の薄膜層を設けているために、エッチングを主としたマスク製造工程数の増加並びにそれに伴うマスクの製造コストの上昇という新たな問題を生じている。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、マスクパターンの高解像度化に効果的なレジストの薄膜化が可能で、ドライエッチング時のローディング効果が低減され、レジスト寸法からのマスク寸法のシフト量が低減され、マスク製造工程数の削減が図れるフォトマスクブランクスおよびそのブランクスを用いて製造したフォトマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係るフォトマスクブランクスは、透明基板上に単層もしくは2層以上の薄膜が形成されたフォトマスクブランクスにおいて、前記単層もしくは2層以上の薄膜のうち、少なくとも1層が遮光膜であり、該遮光膜が酸素非含有塩素系ガスでドライエッチング可能で、かつフッ素系ガスでは実質的にドライエッチングされない材料を主成分とすることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明に係るフォトマスクブランクスは、請求項1に記載のフォトマスクブランクスにおいて、前記遮光膜が、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)から選択された金属元素のいずれか1種を主成分とすることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明に係るフォトマスクブランクスは、請求項2または請求項3に記載のフォトマスクブランクスにおいて、前記遮光膜が、前記金属元素の窒化物、酸化物、または酸化窒化物のいずれかであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の発明に係るフォトマスクは、透明基板上の単層もしくは2層以上の薄膜をパターン化したフォトマスクにおいて、前記単層もしくは2層以上の薄膜のうち、少なくとも1層が遮光膜であり、該遮光膜が酸素非含有塩素系ガスでドライエッチング可能で、かつフッ素系ガスでは実質的にドライエッチングされない材料を主成分とすることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の発明に係るフォトマスクは、請求項4に記載のフォトマスクにおいて、前記遮光膜が、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)から選択された金属元素のいずれか1種を主成分とすることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6の発明に係るフォトマスクは、請求項4または請求項5に記載のフォトマスクにおいて、前記遮光膜が、前記金属元素の窒化物、酸化物、または酸化窒化物のいずれかであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフォトマスクブランクスによれば、遮光膜を酸素非含有塩素系ガスでエッチング可能でかつフッ素系ガスで実質的にエッチングされないアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)のいずれか1種を主成分とする材料を用いることにより、ドライエッチング時に酸素を必要としないため、クロム系材料と比較して、レジスト高解像度化に効果的なレジストの薄膜化が可能となり、ローディング効果が低減し、レジスト寸法からのマスク寸法のシフト量の低減が図れ、寸法制御性の良い高精度バイナリーマスクあるいは位相シフトマスクを作成することが可能となる。また本発明のフォトマスクブランクスは、従来のエッチングマスクあるいは第二遮光膜というエッチング用の薄膜層を設けたマスクブランクスと比較した場合、マスク製造工程数の低減並びにそれに伴うマスクの製造コストを低減したフォトマスクを提供することが可能となる。
【0016】
本発明のフォトマスクによれば、寸法制御性が良く高解像の微細パターンを有し製造コストを低減したフォトマスクを用いることにより、微細な高集積度の半導体集積回路を作製することが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るフォトマスクブランクスおよびフォトマスクについて詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
本実施形態は、バイナリ型フォトマスクブランクスおよびバイナリ型フォトマスクの例である。図1は、本実施形態のフォトマスクブランクス(図1(a))およびそれを用いて製造された本実施形態のフォトマスク(図1(b))の一例を示す断面模式図である。図1(a)に示すように、本実施形態のフォトマスクブランクス10は、透明基板11とその上に設けられた遮光膜12からなる。遮光膜12は、酸素非含有塩素系ガスでエッチング可能で、かつフッ素系ガスで実質的にエッチングされない材料からなる。図1(a)では遮光膜12が単層の場合を例示しているが、遮光膜は2層以上の薄膜で形成されていてもよい。
【0019】
本実施形態の遮光膜12は、遮光膜のドライエッチング時に酸素ガスを必要とせずに酸素非含有塩素系ガスでエッチングするために、ドライエッチング時のレジスト膜減り量が低減でき、結果的にレジストの薄膜化による微細レジストパターン形成が可能となり、それに伴う遮光膜の微細パターン形成が可能となる。また遮光膜は酸素非含有塩素系ガスでエッチングするため、透明基板11が合成石英の場合、合成石英はエッチングされず、図1(b)に示すように、良好な断面形状の高い寸法精度の微細パターンを有するフォトマスク15を得ることができる。本実施形態のフォトマスクを用いることにより、高解像のウェハ転写画像を形成することができる。
【0020】
(第2の実施形態)
本実施形態は、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクスおよびハーフトーン型位相シフトマスクの例である。図2は、本実施形態のハーフトーン型位相シフトマスクブランクス(図2(a))およびそれを用いて製造された本実施形態のハーフトーン型位相シフトマスク(図2(b))の一例を示す断面模式図である。図2(a)に示すように、本実施形態のブランクス20は、透明基板21上に順にハーフトーン型位相シフト膜23、遮光膜22が積層されてなる。
【0021】
本実施形態のハーフトーン型位相シフトマスク25は、以下の工程で得ることができる。図4は、図2(b)に示す位相シフトマスク25を得るための製造工程の一例を示す断面模式図である。図4(a)に示すように、ブランクス20の遮光膜22上に第1のレジスト膜41を形成し、次に、位相シフト膜23のパターンに合わせた第1のレジストパターン42を形成する(図4(b))。
【0022】
次いで、レジストパターン42を耐エッチングマスクとして酸素を含まない塩素系のガスを用いて遮光膜22をドライエッチングし、遮光膜パターン43を形成する(図4(c))。この段階の遮光膜パターン43は、位相シフト膜のエッチングマスク用としてのパターン形状である。遮光膜のエッチングに酸素ガスを必要としないため、ドライエッチング時のレジスト膜減り量が低減でき、結果的にレジストの薄膜化による微細レジストパターン形成が可能となり、それに伴う遮光膜の微細パターン形成が可能となる。
【0023】
次に、図4(d)に示すように、レジストパターン42を除去し、続いてフッ素系ガスで位相シフト膜23のドライエッチングを行ない、位相シフト膜パターン26を形成する(図4(e))。上記の図4(d)の工程は、遮光膜パターン43がエッチングマスクとして機能するため、必ずしも必要な工程ではない。
【0024】
次に、遮光膜パターン形成用のレジストを塗布し第2のレジスト膜45を形成し(図4(f))、遮光膜パターンに合せた開口を有する第2のレジストパターン46を形成し(図4(g))、これを耐エッチングマスクとして、酸素を含有しない塩素系のガスを用いて遮光膜パターン43をドライエッチングし、最終的な遮光膜パターン24を形成する(図4(h))。尚、位相シフト膜にダメージがなければ本工程はウェットエッチングでも良い。最後に第2のレジスト膜46を剥離し、図2(b)の構造の良好な断面形状の高い寸法精度の微細パターンを有する位相シフトマスク25を得ることができる。本実施形態の位相シフトマスクを用いることにより、高解像のウェハ転写画像を形成することができる。
【0025】
(第3の実施形態)
本実施形態は、基板掘り込み型位相シフトマスクブランクスおよび基板掘り込み型位相シフトマスクの例である。図3は、本実施形態の遮光膜を設けた基板掘り込み型位相シフトマスクブランクス(図3(a))および基板掘り込み型位相シフトマス(図3(b))の一例を示す断面模式図である。図3(a)に示すように、本実施形態のブランクス30は、透明基板31とその上に設けられた遮光膜32からなり、ブランクスの形態はバイナリー型マスクブランクと同じである。
【0026】
本実施形態の基板掘り込み型位相シフトマスク35は、以下の工程で得ることができる。図5は、図3(b)に示す位相シフトマスク35を得るための製造工程の一例を示す断面模式図である。図5(a)に示すように、ブランクス30の遮光膜32上に第1のレジスト膜51を形成し、次に、遮光膜のパターンに合わせた第1のレジストパターン52を形成する(図5(b))。次いで、レジストパターン52を耐エッチングマスクとして塩素系のガスを用いて遮光膜32をドライエッチングし、遮光膜パターン34を形成する(図5(c))。上記の他の実施形態と同様に、遮光膜のエッチングに酸素ガスを必要としないため、ドライエッチング時のレジスト膜減り量が低減でき、結果的にレジストの薄膜化による微細レジストパターン形成が可能となり、それに伴う遮光膜の微細パターン形成が可能となる。
【0027】
次に、レジスト剥離後(図5(d))、位相シフトパターンを形成させるための第2のレジストを塗布し第2のレジスト膜55を形成し(図5(e))、次いで位相シフトパターンに合わせた第2のレジストパターン56を形成する(図5(f))。図5(f)に示すように、透明基板31が合成石英のようなフッ素系ガスでエッチングできる材質の場合、基板掘り込み型の位相シフトパターンは遮光膜がエッチングマスクとして機能するため、第2のレジストパターン56は、位相シフトパターンを形成する上のレジストが除去され、かつ位相シフト部でない遮光膜開口部がレジストで覆われてさえいればよく、遮光膜パターン形成用レジストパターン52と比較して寸法精度及び位置精度は緩くてよい。
【0028】
次に、位相シフト部の基板を必要な深さまでドライエッチングして掘り込んで基板掘り込み型位相シフトパターン36を形成し(図5(g))、次いで、レジストを除去し、図3(b)の構造の良好な断面形状の高い寸法精度の微細パターンを有する位相シフトマスク35を得ることができる(図5(h))。本実施形態の位相シフトマスクを用いることにより、高解像のウェハ転写画像を形成することができる。
【0029】
(ブランクス構成要素)
次に、本発明の第1の実施形態、第2の実施形態および第3の実施形態のフォトマスクブランクスを構成する各要素について述べる。
【0030】
(透明基板)
本発明のフォトマスクブランクスにおいて、透明基板11、21、31としては、露光光を高透過率で透過する光学研磨された合成石英ガラス、蛍石、フッ化カルシウムなどを用いることができるが、通常、多用されており品質が安定し、短波長の露光光の透過率の高い合成石英ガラスがより好ましい。
【0031】
(遮光膜)
本発明のフォトマスクブランクスにおいて、遮光膜12、22、32は、酸素非含有塩素系ガスでドライエッチング可能で、かつフッ素系ガスでは実質的にドライエッチングされない材料を主成分とするものである。本発明において、上記の実質的にドライエッチングされないという意味は、フッ素系ガスにより遮光膜以外の薄膜をドライエッチング加工した時に、遮光膜にはほとんどダメージを与えないで加工し得る状態を意味するものである。
【0032】
上記の本発明の遮光膜としては、具体的にはアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)から選択された金属元素のいずれか1種を主成分とするものである。さらに、本発明の遮光膜としては、上記の金属元素の窒化物、酸化物、または酸化窒化物のいずれかであることが好ましい。
【0033】
遮光膜は、上記の材料から選ばれた単層膜もしくは2層以上の薄膜として形成され、その膜厚は、40nm〜200nm程度の範囲の膜厚で用いられるが、微細パターンを形成するためには膜厚は小さい方が好ましく、遮光性を高くするには膜厚は大きい方が好ましい。ウェハへのマスクパターン転写時に露光光の多重反射を低減し、ウェハ転写画像の解像力を向上させるために、2層以上の薄膜からなる遮光膜の場合には、最表面層を低反射膜とするのがより好ましい。
【0034】
(位相シフト膜)
本発明の第2の実施形態で示したハーフトーン型位相シフト膜23としては、所望のハーフトーン特性が得やすく、フッ素系ガスによりドライエッチングできる化合物を主成分とし、ドライエッチング加工特性に優れ、遮光膜22とのエッチング選択比が大きい薄膜が好ましい。例えば、モリブデンシリサイド化合物を主成分とするハーフトーン型位相シフト膜23として、モリブデンシリサイド酸化膜(MoSiO)、モリブデンシリサイド窒化膜(MoSiN)、モリブデンシリサイド酸化窒化膜(MoSiON)などの光半透過膜が挙げられる。また本発明においては、ハーフトーン型位相シフト膜23として、例えば、下層のタンタルハフニウム膜を透過率調整層とし、上層の酸化窒化シリコン(SiON)を位相調整層とする2層構成などの多層構成の位相シフト膜も挙げることができる。上記の例では、遮光膜を酸素非含有塩素系ガスでドライエッチングする時に、露出している下層のタンタルハフニウム膜を同時にエッチング除去することができる。
【0035】
ハーフトーン型位相シフト膜23の膜厚は、例えば、モリブデンシリサイド化合物を用いた場合には、60nm〜100nm程度の範囲の膜厚で用いられ、より好ましくは、露光光がKrFエキシマレーザの場合には、80nm〜90nm程度の範囲の膜厚、ArFエキシマレーザの場合には、70nm程度の膜厚が用いられる。
【0036】
本発明の第3の実施形態で示した基板掘り込み型位相シフトマスクブランクスは透明基板そのものを掘り込んで位相シフト部として用いる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の透明な合成石英基板を洗浄し、その一主面上にアルミニウム(Al)を主成分とし、低反射膜としてAlNを設けた2層構造の遮光膜(Al/AlN)を有するバイナリ型フォトマスクブランクスを以下の条件で形成した。遮光膜の膜厚は、石英基板側の第1層のAlが80nm、その上の第2層のAlNが8nmの2層構造からなり、193nmの波長で光学濃度(OD)3、表面反射率12%であった。
【0038】
<遮光膜のスパッタリング成膜条件>
装置: 平行平板型DCマグネトロンスパッタリング装置
第1層(Al)
スパッタターゲット:アルミニウム(Al)
ガスおよび流量:Ar 40sccm
圧力:5mTorr
カソードパワー:1.5kW
第2層(AlN)
スパッタターゲット:アルミニウム
ガス及び流量:Ar/N2 10/30sccm
圧力:5mTorr
カソードパワー:0.5kW
【0039】
次に、上記のブランクス上に日本ゼオン(株)製電子線レジストZEP520Aを膜厚100nmで塗布し、プリベーク後、電子線描画装置にてパターン露光し、日本ゼオン製ZEN−N50により現像し、所望形状のレジストパターンを形成した。
【0040】
次に、上記のレジストパターンをマスクとして、ドライエッチング装置によりレジストパターンから露出している2層の遮光膜を下記条件により順にドライエッチングし、パターニングした。酸素非含有塩素系ガスでドライエッチングを行ったため、遮光膜のエッチングレートがレジストのエッチングレートと比較して3倍早く、100nmのレジスト膜厚で問題なく遮光膜のパターニングができた。最後にレジストをO2プラズマでアッシングして除去し、第1の実施形態のフォトマスクを得た。
【0041】
<遮光膜のドライエッチング条件>
装置:高密度プラズマドライエッチング装置
エッチングガス:BCl3/Cl2 50/10sccm
圧力:3mTorr
ICPパワー:950W
バイアスパワー:30W
【0042】
(実施例2)
光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の透明な合成石英基板を洗浄し、その一主面上にハーフトーン型位相シフト膜としてモリブデンシリサイド化合物を主成分とし、窒素、酸素を含むモリブデンシリサイド酸化窒化膜(MoSiON)を以下の条件で形成した。成膜前に基板上にレジスト塗布した部位上の位相シフト層をレジスト剥膜することにより除去して段差を形成させ、レーザーテック社製MPM193で測定したところ、膜厚70nm、波長193nmで位相差176度、透過率5.8%を有する位相シフト膜であった。
【0043】
<ハーフトーン型位相シフト膜のスパッタリング成膜条件>
装置:平行平板型DCマグネトロンスパッタリング装置
スパッタターゲット:Mo/Si 1/4(原子比)
ガス及び流量:Ar/N2/O2 20/20/10sccm
圧力:5mTorr
カソードパワー:1.5kW
【0044】
続いて、実施例1と同様の下記の条件で上記の位相シフト膜上に遮光膜としてアルミニウム(Al)を膜厚80nm成膜し、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクスを形成した。
【0045】
<遮光膜のスパッタリング成膜条件>
装置:平行平板型DCマグネトロンスパッタリング装置
第1層(Al)
スパッタターゲット:アルミニウム(Al)
ガスおよび流量:Ar 40sccm
圧力:5mTorr
カソードパワー:1.5kW
【0046】
次に、実施例1と同様に、上記のブランクス上に電子線レジストを膜厚100nmで塗布し、プリベーク後、電子線描画装置にてパターン露光し、現像し、所望形状のレジストパターンを形成した。
【0047】
次いで、実施例1と同様の下記の条件で、レジストパターンをマスクとして遮光膜(Al)をドライエッチングし、遮光膜パターンを形成した。酸素非含有塩素系ガスでドライエッチングを行ったため、遮光膜のエッチングレートがレジストのエッチングレートと比較して3倍早く、本実施例の場合にも100nmのレジスト膜厚で問題なく遮光膜のパターニングができた。次いで、レジストをO2プラズマでアッシングし除去した。
【0048】
<遮光膜のドライエッチング条件>
装置:高密度プラズマドライエッチング装置
エッチングガス:BCl3/Cl2 50/10sccm
圧力:3mTorr
ICPパワー:950W
バイアスパワー:30W
【0049】
次に、上記の遮光膜パターンをマスクとして露出しているハーフトーン型位相シフト膜を下記の条件でドライエッチングによりパターニングして位相シフトパターンを形成した。エッチング断面形状は略垂直であり、きわめて微細なマスクパターンが形成された。
【0050】
<位相シフト膜ドライエッチング>
装置:高密度プラズマドライエッチング装置
エッチングガス:CF4 50sccm
圧力:10mTorr
ICPパワー:500W
バイアスパワー:100W
【0051】
<遮光パターン形成>
次に、上記の工程を行った基板上に、電子線レジストを塗布し、電子線描画し現像して、遮光膜から露出させたい領域のみを開口したレジストパターン膜を形成した後、下記のエッチング液でウエットエッチングを行い、遮光膜を選択的に除去し、最後にレジストをO2プラズマでアッシングし除去し、ハーフトーン型位相シフトマスクを得た。本実施例によるハーフトーン型位相シフトマスクは、合成石英基板上にモリブデンシリサイド化合物を主成分とするハーフトーン位相シフト層によりマスクパターンが形成され、さらにその一部にクロム遮光膜が積層された構成をなすものである。
【0052】
<遮光膜エッチング>
エッチング液: リン酸:硝酸:酢酸:水=16:1:2:1の混合液
エッチング温度:25℃
【0053】
(実施例3)
実施例1と同様の形態のブランクスを基板掘り込み型位相シフトマスクブランクスとした。すなわち、光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の透明な合成石英基板上に、低反射膜としてAlNを設けた2層構造の遮光膜(Al/AlN)を有し、遮光膜の膜厚は、石英基板側の第1層のAlが80nm、その上の第2層のAlNが8nmの2層構造からなり、193nmの波長で光学濃度(OD)3、表面反射率12%のブランクスを得た。
【0054】
次に、実施例1と同様にして、2層の遮光膜を順に酸素非含有塩素系ガスでドライエッチングし、合成石英基板上に2層構造の遮光膜(Al/AlN)パターンを形成した。次に、位相シフトパターンを形成させるために再度電子線レジストを塗布し、電子線描画して位相シフトパターンに合わせたレジストパターンを形成した。続いて、位相シフト部とする石英基板を下記の条件で所定の深さまでフッ素系ガスで171nmの深さまでドライエッチングし、基板掘り込み型位相シフトパターンを形成し、最後にレジストをO2プラズマでアッシングし除去し、基板掘り込み型位相シフトマスクを得た。
【0055】
<石英基板掘り込みエッチング>
装置:高密度プラズマドライエッチング装置
エッチングガス:CF4 50sccm
圧力:10mTorr
ICPパワー:950W
バイアスパワー:50W
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の遮光膜を設けた単層のバイナリ型フォトマスクブランクス(図1(a))およびバイナリ型フォトマスク(図1(b))の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の遮光膜を設けたハーフトーン型位相シフトマスクブランクス(図2(a))およびハーフトーン型位相シフトマスク(図2(b))の一例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の遮光膜を設けた基板掘り込み型位相シフトマスクブランクス(図3(a))および基板掘り込み型位相シフトマス(図3(b))の一例を示す断面模式図である。
【図4】図2に示すハーフトーン型位相シフトマスクを得るための一実施形態を示す製造工程の断面模式図である。
【図5】図3に示す基板掘り込み型位相シフトマスクを得るための一実施形態を示す製造工程の断面模式図である。
【符号の説明】
【0057】
10 バイナリ型フォトマスクブランクス
11、21、31 透明基板
12、22、32 遮光膜
14、24、34 遮光膜パターン
15 バイナリ型フォトマスク
20 ハーフトーン型位相シフトマスクブランクス
23 ハーフトーン型位相シフト膜
25 ハーフトーン型位相シフトマスク
26 ハーフトーン型位相シフト膜パターン
30 基板掘り込み型位相シフトマスクブランクス
36 基板掘り込み型位相シフトパターン
41、51 第1のレジスト膜
42、52 第1のレジストパターン
43 遮光膜パターン(エッチングマスク用)
45、55 第2のレジスト膜
46、56 第2のレジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に単層もしくは2層以上の薄膜が形成されたフォトマスクブランクスにおいて、
前記単層もしくは2層以上の薄膜のうち、少なくとも1層が遮光膜であり、該遮光膜が酸素非含有塩素系ガスでドライエッチング可能で、かつフッ素系ガスでは実質的にドライエッチングされない材料を主成分とすることを特徴とするフォトマスクブランクス。
【請求項2】
前記遮光膜が、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)から選択された金属元素のいずれか1種を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項3】
前記遮光膜が、前記金属元素の窒化物、酸化物、または酸化窒化物のいずれかであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項4】
透明基板上の単層もしくは2層以上の薄膜をパターン化したフォトマスクにおいて、
前記単層もしくは2層以上の薄膜のうち、少なくとも1層が遮光膜であり、該遮光膜が酸素非含有塩素系ガスでドライエッチング可能で、かつフッ素系ガスでは実質的にドライエッチングされない材料を主成分とすることを特徴とするフォトマスク。
【請求項5】
前記遮光膜が、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)から選択された金属元素のいずれか1種を主成分とすることを特徴とする請求項4に記載のフォトマスク。
【請求項6】
前記遮光膜が、前記金属元素の窒化物、酸化物、または酸化窒化物のいずれかであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のフォトマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−92823(P2009−92823A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261862(P2007−261862)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】