説明

フラボノイド組成物、その製造方法および用途

【課題】水に対する溶解性、抗酸化能、紫外線吸収能等の優れた機能性を有し、かつ色調が酵素処理ルチンから大きく改善された組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係るフラボノイド組成物は、ルチンおよび/またはルチン誘導体(成分A)と、ジヒドロケルセチンおよび/またはジヒドロケルセチン誘導体(成分B)とを含有する。上記成分Aとしては、ルチンとデキストリンとの共存下にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させて得られる、α−グルコシルルチンおよびイソケルシトリンを含有する組成物(酵素処理ルチン)であることが好ましい。また、上記成分Bとしてはジヒドロケルセチンとしてタキシフォリンが好適に用いられる。本フラボノイド組成物は酵素処理ルチンと比較し、同じ抗酸化力当たりの色価が改善されているため、食品、化粧品分野への利用価値が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水への溶解性に優れ、色調が薄く、かつ抗酸化力に優れたフラボノイド組成物、ならびにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ルチンはソバ、タマネギ、アスパラガスなどの野菜類に含まれ、日常的に摂取されているフラボノイドである。アカシア科エンジュの蕾にもルチンは多量に含まれており、漢方ではこれを乾燥して得られた槐花を収斂止血、鎮痛に用いてきている。また、ルチンは血管強化、浮腫抑制、消炎、鎮痛等の薬理・生理活性を有し、医薬品、医薬品原料としての用途において実績のある物質である。
【0003】
かつて、ルチンは水に難溶のため、食品、化粧品分野等への利用が遅れていたが、その後、ルチンに糖を付加した「酵素処理ルチン」が開発された。この酵素処理ルチンは、ルチンと同様の機能性を保持しているが、元のルチンに比べ水への溶解度が約5000倍に著しく高まっており、しかも、ルチンと共存させることにより、ルチンの水への溶解度を高める作用も有する。このような酵素処理ルチンの開発により、抗酸化、退色防止、風味劣化防止、ラジカル消去等の機能を食品、化粧品分野等へ利用する動きが一気に広まってきた。
【0004】
上記酵素処理ルチンに関して、例えば下記特許文献1には、アルカリ性ルチン水溶液で澱粉質の共存下に糖転移酵素を作用させることによりα−グルコシルルチンが効率的に製造でき、このα−グルコシルルチンは水への溶解性や安定性などに優れ、食品、化粧品等に添加して使用できることが開示されている。また、本発明者らは、ルチンとα−グルコシルルチンとの混合物からイソケルシトリンとモノグルコシルルチンを含有する(ルチンは実質的に含有しない)組成物を効率的に製造する方法をすでに提案しており(下記特許文献2参照)、このような製造方法により得られる組成物は商品名「αGルチンPS」(東洋精糖(株)製)として上市されている。
【0005】
しかしながら、ルチンおよび酵素処理ルチンには分子構造上可視部の吸収があり、黄色を呈するため、前述のような機能性を目的として酵素処理ルチンを添加した際に、最終製品の色調に影響を与えることがあった。そのため、酵素処理ルチンと同様の抗酸化、退色防止、紫外線吸収などの機能性を有し、かつ色のより少ない同等品の開発が求められていた。
【0006】
一方、ジヒドロケルセチンは、ルチンと同じくフラボノイドに属する化合物であり、カラマツの心材部などから抽出される。抗酸化能、紫外線吸収能などを有することが知られており、活性酸素消去剤、抗酸化剤、あるいは美白剤の有効成分としての利用が提案されている(下記特許文献3〜5参照)。しかし、このジヒドロケルセチンは水に難溶性であるため、これまであまり広く利用されていなかった。
【特許文献1】特開平3−27294号公報
【特許文献2】特開平9−25288号公報
【特許文献3】特開平6−65074号公報
【特許文献4】特開平6−248267号公報
【特許文献5】特開平7−223993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、酵素処理ルチンと同等の、水に対する溶解性、抗酸化能、紫外線吸収能等の優れた機能性を有し、かつ色調が酵素処理ルチンから大きく改善された組成物、およびその製造方法、利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、酵素処理ルチンにジヒドロケルセチンを配合することにより、酵素処理ルチンと同等の機能性を維持しながらも色価が大きく改善された組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明に係るフラボノイド組成物は、ルチンおよび/またはルチン誘導体(成分A)と、ジヒドロケルセチンおよび/またはジヒドロケルセチン誘導体(成分B)とを含有することを特徴とする。
【0010】
上記成分Aとしては、ルチン、イソケルシトリン、または酵素処理ルチンであることが好ましい。ここで、上記酵素処理ルチンとは、ルチンとデキストリンとの共存下にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させて得られる、α−グルコシルルチンを含有する組成物をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるフラボノイド組成物は、呈色の問題を抑制しつつ、抗酸化、退色防止、紫外線吸収などの機能性を発揮できる組成物であり、食品、化粧品などで広く利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るフラボノイド組成物の成分やその配合量、製造方法、フラボノイド組成物の利用の態様などについて、順次説明する。
フラボノイド組成物の成分
<ルチン>
ルチン(rutin)は、下記構造式[1]に示すとおり、ケルセチン(quercetin)をアグリコン(非糖部分)とし、その3位の水酸基にルチノースがβ結合した構造を有するフラボノール配糖体である。
【0013】
【化1】

【0014】
ルチンは、抗酸化能(ラジカル消去能)、紫外線吸収能などの機能性を有することが知られている。しかし、空気中では不安定であり、また、アルカリ性水溶液には可溶である
が、水、酸性水溶液には難溶である。室温では、1リットルの水に僅か0.1g程度しか
溶けない。酸性領域では無色に近いが、中性からアルカリ性領域では淡黄色を呈する。
【0015】
<ルチン誘導体>
本発明における「ルチン誘導体」とは、ルチン及びイソケルシトリンのグリコシル基にさらに糖鎖が結合した化合物およびイソケルシトリンの総称である。このような誘導体は、前述の特許文献1や公知の手法を利用して形成することが可能である。
【0016】
本発明において、原料のルチンに1種または2種程度の酵素を作用させることにより効率的に製造することができる、α−グルコシルルチン、イソケルシトリン(これらの詳細は後述する)の少なくとも1種を含有し、さらに未反応のルチンを含有していてもよい組成物を「酵素処理ルチン」と呼ぶ。酵素処理ルチンは、一般的には「酵素処理」により製造されるが、同様の配合組成を有する組成物であれば、他の手法を用いて入手、製造されたものであっても構わない。
【0017】
α−グルコシルルチン(以下「αGルチン」と記載することもある。)は、下記構造式[1a]に示すとおり、ルチンのグルコース単位にさらにグルコースがα-1,4結合により付加(通常、nは1〜20程度)した構造を有する化合物の総称である。本発明では、通常は付加数の異なるもの同士の混合物の態様をとる。また、α−グルコシルルチンのうち、1分子のみのグルコースが付加したもの、すなわち構造式[1a]におけるnが1であるものを特に「モノグルコシルルチン」とよぶことがある。
【0018】
【化2】

【0019】
イソケルシトリン(isoquercitrin)は、下記構造式[2]に示すとおり、ケルセチン
の3位の水酸基にグルコースがβ結合した構造、すなわち前述のルチンのルチノース単位からラムノース単位が外れた構造を有するフラボノール配糖体である。
【0020】
【化3】

【0021】
α−グルコシルルチンおよびイソケルシトリンも、ルチンと同様にケルセチンをアグリコンとするため、やはり同様に、抗酸化能、紫外線吸収能などを有する。また、α−グルコシルルチンは、ルチンやイソケルシトリンに比べ水への溶解度が約5000倍に著しく高まっており、しかも、ルチンやイソケルシトリンと共存させたときにこれらの水への溶解度をも高める作用があることが知られている。
【0022】
<ジヒドロケルセチンおよびジヒドロケルセチン誘導体>
ジヒドロケルセチンは、ケルセチンの2位および3位に水素が添加された、下記構造式[3]で表される化合物である。2位および3位の立体配置により4種類の立体異性体が存在するが、その1種である下記構造式[3a]で表される化合物はタキシフォリン(taxifolin)と呼ばれる。
【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
また、本発明における「ジヒドロケルセチン誘導体」とは、ジヒドロケルセチンの3、3'、4'、5または7位の少なくとも1以上の水酸基に糖が結合した配糖体をいう。例えば、オウギ等の植物から抽出することのできる、タキシフォリンの3位の水酸基にα-L-ラムノースが結合したアスチルビンなどが含まれる。
【0026】
フラボノイド組成物の配合組成
本発明のフラボノイド組成物は、少なくとも、ルチンおよび/またはルチン誘導体(以下「成分A」と表記することがある)と、ジヒドロケルセチンおよび/またはジヒドロケルセチン誘導体(以下「成分B」と表記することがある)とを含有する。これらの配合比は、フラボノイド組成物の用途に応じて適宜調整することができるが、例えば、上記成分A100重量部に対して、上記成分Bが1〜45重量部、好ましくは10〜45重量部の割合で配合されたフラボノイド組成物は、色価と、抗酸化能、紫外線吸収能などの機能性とにバランスよく優れ、食品、化粧品に添加して利用しやすい組成物となる。
【0027】
上記成分Aとしては、得られるフラボノイド組成物の単位量あたりのケルセチン換算量を大きくし、抗酸化能、紫外線吸収能を高めるなどの点、また、得られるフラボノイド組成物の水に対する溶解性を高める点から、α−グルコシルルチンとルチンやイソケルシトリンを含有する酵素処理ルチン、特にモノグルコシルルチンとイソケルシトリンとを含有する酵素処理ルチンを用いることが好ましい。
【0028】
また、フラボノイド組成物全体において、上記成分Aの割合を高めることにより、フラボノイド組成物の水に対する溶解性も高まる傾向にあり、逆に、上記成分Bの割合を高めることにより、色価は低くなる(無色に近づく)傾向にある。上述のような事項を勘案して、フラボノイド組成物が所望の性質となるよう配合組成を適宜調整すればよい。
【0029】
なお、「ケルセチン換算量」は、例えばHPLCにおいて、ルチン、モノグルコシルルチン、イソケルシトリンなどのピーク面積と、濃度が既知の標準ケルセチン(試薬)のピーク面積とを比較することにより求められる。一般的には、例えば同質量のルチンおよびルチン誘導体同士を比較した場合、より分子量の低い化合物(糖の付加量がより少ないなど)の方が、ケルセチン換算量が高くなる。
【0030】
フラボノイド組成物の製造方法
上述のような配合組成をもつ本発明のフラボノイド組成物は各種の方法により製造することが可能であり、製造方法は特に限定されるものではない。ルチン、ルチン誘導体、ジヒドロケルセチン、ジヒドロケルセチン誘導体などの各成分をそれぞれ調製または入手し、所定の割合で混合することにより、本発明のフラボノイド組成物を製造することが可能である。これらの各成分の一部は上市されており、例えば、酵素処理ルチンとしては、モノグルコシルルチンおよびイソケルシトリンを含有する東洋精糖(株)製「αGルチンPS」などの商品が挙げられ、ジヒドロケルセチンとしては、松心材から抽出した「タキシフォリン」((株)Techservice)などの商品が挙げられる。
【0031】
また、本発明において、ルチン誘導体として既存添加物名簿(厚生省告示第120号)記
載の酵素処理イソクエルシトリンなどを用いて、これにジヒドロケルセチンおよび/またはジヒドロケルセチン誘導体を添加する態様で、本発明のフラボノイド組成物を得ることも可能である。
【0032】
さらに、以下に述べるような公知の酵素処理方法を用いることにより、ルチン、ルチン誘導体、ジヒドロケルセチン、ジヒドロケルセチン誘導体などの成分を含有する組成物を調製し、必要に応じて精製することにより、所望の配合組成を有するフラボノイド組成物を得ることも可能である。
【0033】
酵素処理のための装置等は公知慣用のものを用いることができる。所望の成分を含有する組成物を得るための単離、精製などの工程も、例えば濾過や、吸着樹脂、イオン交換樹脂などを用いた公知の手法に基づいて行えばよい。最終的に得られたフラボノイド組成物は、乾燥粉末または濃縮液の形態で貯蔵することが望ましい。
【0034】
<ルチン誘導体の調製方法>
α−グルコシルルチン、モノグルコシルルチン、イソケルシトリン、あるいはこれらを含有する組成物である「酵素処理ルチン」は、ルチンなどを原料として各種の酵素処理を組み合わせ、必要に応じて単離、精製して調製することが可能である。
【0035】
これらの調製においては、公知の各種の手法を用いることができるが、例えば、本発明者らがすでに提案している、特許第2816030号公報に記載の酵素処理方法によれば、ルチンとモノグルコシルルチンからなる組成物、あるいはイソケルシトリンとモノグルコシルルチンからなる組成物を効率的に製造できる。
【0036】
上記文献に記載の酵素処理について概説すれば、以下の通りである。(1)ルチンに糖供与体の共存下に糖転移酵素を作用させ、ルチンのグルコース単位にα-1,4結合によりグルコースを付加することにより、α−グルコシルルチンが生成し、未反応のルチンとα−グルコシルルチンを含有する組成物が得られる。(2)上記(1)により生成したα−グルコシルルチンにグルコアミラーゼ等を作用させ、ルチンのグルコース単位に結合しているグルコース鎖から1分子だけを残して他のグルコースを切断することにより、モノグルコシルルチンが生成し、未反応のままのルチンとモノグルコシルルチンを含有する組成物が得られる。(3)未反応のままのルチンにα-L-ラムノシダーゼを作用させ、ルチンのルチノース単位に含まれるラムノースを切断することによりイソケルシトリンが生成し、イソケルシトリンとモノグルコシルルチンを含有する組成物が得られる。
【0037】
なお、酵素処理は、目的とするフラボノイド組成物の態様に合わせて、組み合わせ、順番等を適宜調整することが可能である。また、複数種の酵素を同時に添加することで、1つの工程で複数の酵素反応を並行して進める態様であってもよい。
<ジヒドロケルセチン、及びジヒドロケルセチン誘導体の製造方法>
ジヒドロケルセチンの一種のタキシフォリンは、カラマツの心材のチップやベイマツ樹皮の粉砕品から温水やメタノール、エタノール等の有機溶剤、含水有機溶剤で抽出し、吸着樹脂、イオン交換樹脂等によって精製、さらに必要により結晶化して得られる。また、ケルセチンを還元しても得られる。
【0038】
一方、ジヒドロケルセチン誘導体としては、ジヒドロケルセチンの3,5,7,3,, 4,の何れか1ヶ所以上の水酸基に糖が付いたジヒドロケルセチングリコシドを好適に用いることができる。3-グルコシルジヒドロケルセチンの一種はムクゲ(フヨウ属)やキンミズヒキ(キンミズヒキ属)から抽出して得られる。7-ラムノシルジヒドロケルセチンはヒメオトギリ(オトギリソウ属)から抽出して得られる。タキシフォリンの3位の水酸基にα-L-ラムノースが結合したアスチルビンはオウギ等の植物から抽出して得られる。またジヒドロケルセチンとデキストリン等の糖供与体存在下、糖転移活性のある酵素を用いて糖付加したものを利用することもできる。
【0039】
フラボノイド組成物の利用
前述のように、ルチン誘導体は、ルチンと同様にケルセチンをアグリコンとし、抗酸化能、紫外線吸収能などを有する。また、α−グルコシルルチンなどは、ルチンやイソケルシトリンに比べ水への溶解度が約5000倍に著しく高まっており、しかも、ルチンやイソケルシトリンと共存させたときにこれらの水への溶解性をも高める作用があることが知られている。
【0040】
しかし、ルチンおよび上記ルチン誘導体は、中性からアルカリ性領域で淡黄色を呈するため、例えば酵素処理ルチンを抗酸化剤などとして利用する場合は、黄色の(別途に黄色着色料が使用されている)飲食物などに添加する、あるいはルチン等の呈する黄色が目立
たないよう低量の添加にとどめるなど、利用できる幅が狭かった。
【0041】
このようなルチンおよび/またはルチン誘導体と、ジヒドロケルセチンおよび/またはジヒドロケルセチン誘導体とを配合した本発明のフラボノイド組成物は、抗酸化能、退色防止、紫外線吸収能などの機能性において酵素処理ルチンと同程度に優れており、しかも、これらの機能性を十分に発揮できる量を使用した場合であっても、黄色の呈色がほとんど問題にならない程度に抑制されている。
【0042】
それと同時に、ルチンおよび/またはルチン誘導体としてα−グルコシルルチンなどが含有されている場合、これらの作用により、通常は水に難溶性であるジヒドロケルセチンおよび/またはジヒドロケルセチン誘導体の溶解性が飛躍的に向上するため、析出のおそれもない。
【0043】
すなわち、本発明においては、ルチンおよび/またはルチン誘導体と、ジヒドロケルセチンおよび/またはジヒドロケルセチン誘導体とが、極めて好適な組み合わせにおいて使用されているといえる。
【0044】
以上のように、水への溶解性が高く、色価が改善され、抗酸化能、退色防止、紫外線吸収能などに優れた本発明のフラボノイド組成物は、最終製品の色調に影響を与えるとしてこれまで酵素処理ルチンの利用が遅れていた飲食品(一般飲食物のほか、健康食品や機能性食品なども含む。)や化粧品などの分野においても、十分に利用しやすくなっている。
【0045】
上記「飲食品」としては、例えば、果実飲料、ウーロン茶、緑茶、紅茶、ココア、野菜ジュース、青汁、豆乳、乳飲料、乳酸飲料、ニアウォーター、スポーツドリンク、栄養ドリンク等の飲料類、ゼリー、プリン、ヨーグルト等の洋菓子類、和菓子、調味料、魚肉、魚肉加工品、畜産加工品等、が挙げられその利用に際しては天然高甘味度甘味料のステビア抽出物、酵素処理ステビア、羅漢果抽出物、合成高甘味度甘味料のL‐アスパラチルフェニアラニンメチルエステルなどのアミノ酸系甘味料、アセスルファムK、スクラロース、砂糖、ブドウ糖、水あめ、マルトース、パラチノース、トレハロース、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、パラチニットなどと併用して用いることができる。
【0046】
また、上記「化粧品」の態様は特に限定されるものではないが、例えば、パウダー、乳液、リキッド、クリーム状のファンデーションや日焼け止めなどが挙げられる。
また本フラボノイド組成物はアスコルビン酸、アスコルビン酸ソーダ、カテキン、クロロゲン酸、フェルラ酸、等の水溶性抗酸化剤、カロチノイド系物質やビタミンEなどの油溶性抗酸化剤と併用して用いることにより相加的、相乗的な抗酸化能を発揮することができる。更に本フラボノイド組成物は脂質代謝改善、血糖値上昇抑制、グリケーション抑制、尿酸値上昇抑制、血管強化を目的とした機能性飲食品に好適に用いられる。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
ベイマツ樹皮微粉砕2kgに対し10倍量の温水を加え、一晩攪拌した後ろ過を行い抽出
液とした。得られた抽出液を多孔性吸着剤(オルガノ(株)製「アンバーライトXAD-7」
) 1Lを充填させた樹脂カラムに2L/hrで通液させ、次に2Lの温水で洗浄をした。その後10%エタノール濃度含水液2Lを流して樹脂へ吸着した成分を溶出させ、更に2Lの水で押し出しを行い、溶出液と押出し液をまとめて回収液4Lを得た。本液中の固形分は60g、タキシフォリンの含有割合は51%であった。本液を濃縮した後、静置させ、結晶を十分生じさせてからろ過を行った。得られたケーキは含水アルコール中にて加温溶解し、活性炭を加え、再びろ過を行った。水溶液中にて再結晶化し、タキシフォリン10gが得られた。
【0048】
[溶解性1]
ルチン誘導体としての「αGルチンPS」(東洋精糖(株)製)と、ジヒドロケルセチンとして上記のようにして調製したタキシフォリンとを、1/9,3/7,5/5,7/3,9/1で配合して得られた粉末を、それぞれフラボノイド組成物A,B,C,D,Eとした。各フラボノイド組成物1重量部に、イオン交換水9重量部を加え、60℃で5分間加熱して溶解性(外観)を評価した。結果は次表の通りである。
【0049】
【表1】

【0050】
フラボノイド組成物は、αGルチンPS/タキシフォリン=7/3以上で、10質量%の濃度で溶解することがわかった。これより、上記フラボノイド組成物Dを「本発明品1」として、以下の評価試験に供した。
【0051】
[溶解性2]
実施例1の本発明品1(フラボノイド組成物D)を、1質量%、10質量%、25質量%、50質量%の濃度となるようにイオン交換水と混合し、90℃の熱水下での溶解性を評価した。結果は次表の通りである。
【0052】
【表2】

【0053】
本発明品は、高濃度まで溶解が可能であった。このような良好な溶解性は、フラボノイド組成物を添加する食品や化粧品等の生産性の向上に大きく寄与するといえる。
[実施例2] 色調の改善
実施例1の本発明品1(フラボノイド組成物D)、αGルチンPS、タキシフォリンを各々50%エタノールで50ppmになるように溶解し、各0.2mlにトリス緩衝液0.8
mlを添加・混合したものを試料とした。また、ブランクとしてトリス緩衝液1.0ml
を準備した。各試料およびブランクにつき、ミキサーで攪拌しながらDPPH試薬(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl0.0198gを99.5%エタノール100mlに溶解した
。)を1ml加え、約5秒間攪拌を継続した。正確に20分間、室温・暗所に静置後、分光光度計にて517nmの吸光度を測定し、次式よりDPPHラジカル消去率を算出して抗酸化力とした。
【0054】
ラジカル消去率(抗酸化力)=100−(試料の吸光度/ブランクの吸光度)×100
結果は次表の通りである。
【0055】
【表3】

【0056】
本発明品は、タキシフォリンの添加により抗酸化力が高まっていることがわかった。
次に、αGルチンPSと実施例1の本発明品1(フラボノイド組成物D)が同じ抗酸化力を示す濃度になるよう、pH6.5の酢酸緩衝液にてそれぞれ500ppm、400ppmに
調整後、分光光度計にて420nmの吸光度を測定した。結果は次表の通りである。
【0057】
【表4】

【0058】
本発明品は、タキシフォリンの添加により抗酸化力を維持したまま、420nmの吸光度を低下させ、αGルチンPSに比べてより黄色の薄い色調に改善できた。
[実施例3] フレーバーの劣化防止
実施例1の本発明品1(フラボノイド組成物D)を、ヨーグルト中に100ppmとなる
ように混合し、日光下に置くことでヨーグルトのフレーバーの劣化防止を評価した。結果は次表の通りである。
【0059】
【表5】

【0060】
本発明品をヨーグルトと混合することで、ヨーグルトの変色(褐変)を防ぎ、またヨーグルト特有の爽快なフレーバーの劣化を防止することが可能となった。
[実施例4] 退色防止
濃度0.05質量%のクチナシ黄色素溶液(クエン酸緩衝液pH3.3)に、同じ抗酸化力を示す濃度になるよう、実施例1の本発明品1(フラボノイド組成物D)を溶液重量あたり40mg/kg加えたものと、αGルチンPSを50mg/kg加えたもの、さらに無添加区を準備した。
【0061】
次いで、これらを密閉容器にて加熱殺菌した後、一定期間日光下に置き、クチナシ黄色素の残存率(%)を分光光度計(420nmの吸光度)にて測定した。結果は次表の通りである。
【0062】
【表6】

【0063】
クチナシ黄色素に本発明品を添加することにより、クチナシ黄色素の退色は有意に抑制された。
[実施例5] クリーム
下記の処方によりクリームを調製した。調製方法は次の通りである。イオン交換水にプロピレングリコール、苛性カリおよびエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩を加えて溶解し、70℃に保った(水相)。その他の成分を混合して加熱溶解して70℃に保ち(油相)、水相を油相に徐々に加えて70℃で予備乳化を行い、ホモミキサーにて均一に乳化した後、よくかき混ぜながら30℃まで冷却した。
【0064】
《組成》配合量は質量%を表す。
ステアリン酸 6.0/ステアリルアルコール 3.0/イソプロピルミリステート 18.0/グリセリンモノステアリン酸エステル 3.0/プリピレングリコール 10.0/苛性カリ 0.2/エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩 0.01/酢酸トコフェロール 0.1/ブチルパラペン 適量/香料 適量/イオン交換水 適量/実施例1の本発明品1(フ
ラボノイド組成物D) 0.05。
【0065】
実施例1の本発明品1(フラボノイド組成物D)をクリームに混合することで、クリームの白色を損なうことなく、美白効果の高いクリームを用いることが可能となった。
[実施例6] 機能性飲食品
実施例1と同様の方法で得られた抽出液を、実施例1と同様に多孔性吸着剤(オルガノ
(株)製「アンバーライトXAD-7」) 1Lを充填させた樹脂カラムに2L/hrで通液させ、
次に2Lの温水で洗浄をした。その後50%エタノール濃度含水液2Lを流して樹脂へ吸着した成分を溶出させ、更に2Lの水で押し出しを行い、溶出液と押出し液をまとめて回収液4Lを得た。該回収液全量に、「αGルチンPS」(東洋精糖(株)製)140gを加え濃縮濾過乾燥し酵素処理ルチン含有松抽出物195gを得た。本品中のタキシフォリン含有量は30.5g
、含有率は15.3%であった、本品は脂質代謝改善、血糖値上昇抑制、グリケーション抑制、尿酸値上昇抑制、血管強化を目的とした機能性飲食品として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチンおよび/またはルチン誘導体とジヒドロケルセチンおよび/またはジヒドロケルセチン誘導体とを含有することを特徴とするフラボノイド組成物。
【請求項2】
前記ルチンおよび/またはルチン誘導体が、ルチン、イソケルシトリン、または酵素処理ルチンであり、
上記酵素処理ルチンとは、ルチンとデキストリンとの共存下にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させて得られる、α−グルコシルルチンを含有する組成物である
ことを特徴とする請求項1に記載のフラボノイド組成物。
【請求項3】
前記ジヒドロケルセチンが下記構造式[3a]で表されるタキシフォリンであることを特徴とする請求項1または2に記載のフラボノイド組成物。
【化1】

【請求項4】
前記ルチンおよび/またはルチン誘導体100重量部に対して、前記ジヒドロケルセチンおよび/またはジヒドロケルセチン誘導体が1〜45重量部の割合で配合されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフラボノイド組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフラボノイド組成物を含有することを特徴とする飲食品または化粧品。

【公開番号】特開2008−92869(P2008−92869A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278820(P2006−278820)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(591061068)東洋精糖株式会社 (17)
【Fターム(参考)】