フルオロアルコール含有ポリアミドを製造するための界面重合
【課題】 フルオロアルコール基を有するポリアミドを製造するための界面重合法を提供すること。
【解決手段】 化学混合物(A)と化学混合物(B)とを反応させてポリアミド化合物を形成する方法であって、(A)及び(B)は互いに不混和性であり、
(A)は、式1で表される、1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有するモノマーポリアミン反応物を含む水性塩基であり、
【化1】
式中、R0は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せから成る群から選択される有機基を表し、mは2又はそれ以上の整数であり、nは1又はそれ以上の整数であり、
(B)は、有機性であり、式2で表されるモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物を含み、
【化2】
式中、R1は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せを含む群から選択される有機基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択され、pは2又はそれ以上の整数を表す、方法。
【解決手段】 化学混合物(A)と化学混合物(B)とを反応させてポリアミド化合物を形成する方法であって、(A)及び(B)は互いに不混和性であり、
(A)は、式1で表される、1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有するモノマーポリアミン反応物を含む水性塩基であり、
【化1】
式中、R0は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せから成る群から選択される有機基を表し、mは2又はそれ以上の整数であり、nは1又はそれ以上の整数であり、
(B)は、有機性であり、式2で表されるモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物を含み、
【化2】
式中、R1は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せを含む群から選択される有機基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択され、pは2又はそれ以上の整数を表す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロアルコール基を有するポリアミドを製造するための界面重合に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールのような芳香族ポリマーは典型的には溶融重合又は溶液重合技術で合成されるが、そのような化合物のうち水相と有機相とを用いた界面重合によって合成することができるものは少数である。界面重合法は、いくつかのポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート合成に適用されており、界面ポリアミド調製法は、逆浸透膜を製造するために広く用いられている。
【0003】
界面重合は、一般的な溶液重合に比べて多くの利点を提供することができる。例えば、界面重合は、(1)典型的にはより低い温度で行われるので、エネルギーを節約することができ、(2)用いる有機溶媒がより少なく、(3)より高分子量の重合生成物を得るために、各二官能性モノマーを1:1のモル比で維持することができ、(4)得られた重合生成物の単離がより容易である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、界面重合では、モノマー反応物のうちの一方が水溶液に可溶であることが必要とされるので、界面重合で得られるポリマー構造は非常に限られていた。さらに、たとえモノマー反応物が水溶液に可溶である場合でも、望ましくない副反応のせいで界面重合の手順に困難が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい態様は、ペンダントフルオロアルキル基を有するモノマーポリアミン反応物を含む塩基性水性化学混合物と、モノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物を含む有機化学混合物とを反応させて、フルオロアルコール含有ポリアミドポリマー生成物を生成する、界面重合法に向けられる。本明細書に記載される方法は、マイクロエレクトロニクス及び膜の用途で見いだされるポリマーの製造のために産業上有用である。
【0006】
1つの態様において、本発明は、化学混合物(A)と化学混合物(B)とを反応させてポリアミドを形成する方法に向けられ、ここで、(A)及び(B)は互いに不混和性であり、
(A)は、式1で表される、1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有するモノマーポリアミン反応物を含む水性塩基であり、
【化1】
式中、R0は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せから成る群から選択される有機基を表し、mは2又はそれ以上の整数であり、nは1又はそれ以上の整数であり、
(B)は、有機性であり、式2で表されるモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物を含み、
【化2】
式中、R1は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せを含む群から選択される有機基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択され、pは2又はそれ以上の整数を表す。
【0007】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明において述べる。本発明の他の特徴、目的及び利点は、この説明及び図面並びに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のポリマー4のDMSO−d6中での1H−NMRスペクトルである。
【図2】比較例1によるポリマーのDMSO−d6中での1H−NMRスペクトルである。
【図3】実施例5の生成物11のIRスペクトルである。
【図4】実施例6の生成物12のIRスペクトルである。
【図5】比較例2の生成物13のIRスペクトルである。
【図6】比較例3の生成物15のIRスペクトルである。
【図7】比較例3の生成物15の、DMSO−d6中での1H−NMRスペクトルである。
【図8】水溶液と有機溶液との重合反応の実施形態である。
【図9】水溶液と有機溶液との重合反応の実施形態である。
【図10】水溶液と有機溶液との重合反応の実施形態である。
【図11】水溶液と有機溶液との重合反応の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい態様は、フルオロアルコール含有ポリアミド化合物を製造するための界面重合法に向けられる。本明細書において用いられる界面重合という用語は、2つの不混和性溶液の境界面またはその付近で生じる重合反応のことを指す。
【0010】
本開示において説明される界面重合法の1つの実施形態において、
【0011】
式1
【化3】
(式中、R0は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、
nは、1又はそれ以上、1から20、又は1から8までの整数を表し、
mは、2又はそれ以上、2から20、又は2から8までの整数を表す)
で表される、1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有するモノマーポリアミン反応物を含む水性塩基性化学混合物(A)を、
式2
【化4】
(式中、R1は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、
Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択され、
pは2又はそれ以上、2から20、又は2から8までの整数を表す)
で表されるモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物を含む有機化学混合物(B)と反応させる。
【0012】
水性塩基性化学混合物(A)及び有機化学混合物(B)は互いに不混和性である。(A)と(B)とが接触した状態で置かれた場合に、不混和性とは、(A)と(B)との間に界面が存在することを意味する。
【0013】
化学混合物(A)及び(B)は独立に、溶液、分散体又はそれらの組合せとすることができる。好ましくは、(A)及び(B)は両方とも溶液であり、以下の議論の中では溶液と称される。
【0014】
水溶液(A)と有機溶液(B)との界面重合の1つの実施形態は、図8に示される反応1で示される。
【0015】
いかなる理論にも拘束されることも望まないが、現在入手できる証拠は、塩基性水溶液(A)は、界面重合プロセス中の望ましくない副反応(例えばエステル化)を実質的に低減し又は排除する一方で、ポリアミンモノマー反応物を可溶性にすることができることを示している。
【0016】
いくつかの実施形態において、式1のモノマーポリアミン反応物中のR0は、2個から30個までの炭素原子、又は2個から20個までの炭素原子、又は6個から20個までの炭素原子を有する有機基を表す。例えば、R0は、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルナン環及びそれらの組合せから選択される芳香族有機基を含むことができる。
【0017】
1つの実施形態において、式1のモノマーポリアミン反応物において、R0は、式3で表される有機基であり、
【化5】
式中、Yは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、rは0又は1の整数を表す。式3において、一価アミノ(NH2)基及び一価ヘキサフルオロアルコール[C(CF3)2OH]基は、各々、ベンゼン環に化学結合する。
【0018】
別の実施形態において、式1のモノマーポリアミン反応物において、R0は、式4で表される有機基であり、
【化6】
一価アミノ(NH2)基及び一価ヘキサフルオロアルコール[C(CF3)2OH]基は、各々、ナフタレン環に化学結合する。
【0019】
別の実施形態において、モノマーポリアミン反応物(A)は、式6で表される四価有機化合物又は式7で表される三価有機化合物から選択される化合物のうちの少なくとも1つを含み、
【化7】
式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから選択される。Yは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、rは0又は1の整数を表す。
【0020】
別の実施形態において、水溶液(A)中のモノマーポリアミン反応物は、式8で表される四価有機化合物又は式9で表される三価有機化合物から選択される化合物のうちの少なくとも1つを含み、
【化8】
式中、R9、R10、R11、R12、R13、R14及びR15は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから選択される。
【0021】
別の実施形態において、水溶液(A)中のモノマーポリアミン反応物は、式10で表される三価有機化合物又は式11で表される四価有機化合物から選択される化合物のうちの少なくとも1つを含み、
【化9】
式中、R16、R17、R18、R19、R20、R21及びR22は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから選択される。
【0022】
他の実施形態において、水溶液(A)の中のモノマーポリアミン反応物は、式15から式36までのいずれか、又はそれらの組合せで表される。
【化10】
【化11】
【化12】
【0023】
水溶液(A)中で用いられる塩基は様々に変えることができ、有機塩基、無機塩基及びそれらの組合せを含むことができる。例えば、水溶液(A)中の塩基は、無機水酸化物、有機水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、スルフィド、アミンおよびそれらの組合せを含むことができる。適切な塩基としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、NaHCO3、KHCO3、トリエチルアミン、ピリジン、水酸化テトラメチルアンモニウム及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
いくつかの実施形態において、式2の多官能性ハロゲン化アシル反応物中のR1は、1個から30個までの炭素原子、又は1個から20個までの炭素原子、又は1個から15個までの炭素原子を有する有機基を表す。いくつかの実施形態において、式2の多官能性ハロゲン化アシル反応物において、R1は、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルナン環及びそれらの組合せから選択される有機基を含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、式2の多官能性ハロゲン化アシル反応物中のR1は式12で表される有機基を表し、
【化13】
式中、Wは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、sは0又は1の整数である。一価COXは、ベンゼン環に化学結合し、Xは、独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態において、溶液(B)中のモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物は、式10’で表される二価有機化合物又は式11’で表される三価有機化合物のうちの少なくとも1つを含み、
【化14】
式中、R23、R24、R25、R26及びR27は、各々独立に、一価COXから選択され、Xは、独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される。
【0027】
別の実施形態において、溶液(B)中のモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物は、式13で表される三価有機化合物又は式14で表される二価有機化合物から選択される化合物のうちの少なくとも1つを含み、
【化15】
式中、R28、R29、R30、R31及びR32は、各々独立に、一価COXから選択され、Xは、独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される。Wは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、sは0又は1の整数を表す。
【0028】
他の実施形態において、溶液(B)中のモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物は、式37から式61の化合物いずれか、及びそれらの組合せから選択される化合物を含む。
【化16】
【化17】
【0029】
有機溶液(B)において用いられる有機溶媒は様々に変えることができ、1個から20個の炭素原子、又は1個から16個の炭素原子、又は1個から12個の炭素原子を有する有機化合物を含むことができる。適切な有機溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、キシレン、トルエン、ベンゼン及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
有機溶液中のハロゲン化アシル反応物又は水溶液中のモノマーポリアミン反応物の濃度は広範囲に変えることができる。例えば、有機溶液中のハロゲン化アシル反応物の濃度は、0.01%(w/v)から100%(w/v)、又は0.1%(w/v)から100%(w/v)、又は0.5%(w/v)から50%(w/v)までの範囲とすることができる。同様に、水溶液中のモノマーポリアミン反応物の濃度は、0.01%(w/v)から100%(w/v)、又は0.1%(w/v)から50%(w/v)、又は0.1%(w/v)から20%(w/v)までの範囲とすることができる。用いられる具体的な濃度は、形成されるポリマーの所望の量に応じて調節することができる。
【0031】
例えば、図9の反応2で示される1つの実施形態において、現在説明している界面重合法における溶液(A)と(B)との重合反応生成物は、ヘキサフルオロアルコール(HFA)含有ポリアミドであり、RはCH2及びOから選択される。
【0032】
界面重合反応条件は広範囲に変えることができ、いくつかの詳細な例を以下に述べる。しかしながら、反応は典型的には溶液(A)と(B)とを混合し、機械式攪拌機で約−30℃から約150℃にて約0.01時間から約50時間にわたって激しく撹拌することによって行われる。典型的には、界面重合反応は、窒素下、室温にて約3時間にわたって行われる。本出願において、室温とは、約10℃から約40℃まで、好ましくは25℃を意味する。
【0033】
随意に、相転移触媒を溶液(A)又は溶液(B)のいずれかに添加してもよい。いくつかの実施形態において、相転移触媒は反応性を高めることができる。
【0034】
化学混合物(A)及び(B)は多様な添加物を含むことができ、例として、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0035】
重合反応生成物はいずれかの適切な方法によって単離することができ、例として、濾過、沈殿、デカンテーション、塩析などが挙げられる。
【0036】
ここで、界面重合反応を以下の非限定的な例によって説明する。
【実施例】
【0037】
実施例1:反応生成物4の生成
図10中の反応3を参照して、250−mlの三つ口フラスコに化合物1(2.51g)のNaOH水溶液(NaOH/水:0.396g/70ml)及び化合物3のn−ヘキサン溶液(n−ヘキサン/化合物3:70ml/0.958g)を加え、その後、混合物を、機械式攪拌機を用いて室温にて3時間、窒素を通しながら激しく撹拌した。
【0038】
濾過し、その後60℃にて減圧乾燥することにより、白色粉末(2.70g)が得られた。THF溶液(THF/得られた白色粉末:5.0g/0.5g)から12N−HCl/メタノール/水(1.8g/30ml/60ml)の中に再沈させた後、濾過し、その後60℃にて減圧乾燥することにより、生成物(ポリマー4)が0.35g得られ、Mw(Mw/Mn)=47,000(2.36)であった。
【0039】
生成物4の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
【0040】
比較例1
窒素導入管及び導出管を装着した100−mlの三つ口フラスコに、化合物1(1.50g)及びDMAc(8ml)を加えた。溶液を作った後、フラスコをドライアイス/アセトン浴中に置いた。溶液を凍結させた後、3(0.57g)及びDMAc(2ml)を添加し、その後、混合物を、機械式攪拌機を用いて、氷/水浴中で3時間、窒素を通しながら撹拌し、その後室温で20時間、窒素を通しながら撹拌した。メタノール中で沈殿させた後、濾過し、その後60℃にて減圧乾燥することにより、ポリマー(1.87g)が得られ、Mw(Mw/Mn)=118,000(1.67)であった。
【0041】
図2は、比較例1に従って調製したポリマーの1H−NMRスペクトルを示す。
【0042】
結果として、ポリマー4及び標準(authentic)のポリマーは両方とも同じ化学構造を有していることが確認された。
【0043】
実施例2:反応生成物5の生成
上記の反応3を再び参照して、実施例1と同様の方法で、生成物(ポリマー5)を化合物2及び化合物3(化合物2/化合物3:1.163g/0.445g(2.18mmol/2.19mmol)から生成し、1.46g:Mw(Mw/Mn)=40,000(3.10)を得た。
【0044】
比較例2:反応生成物13の生成
図11の反応4を参照して、実施例1と同様の方法で、生成物(ポリマー13)を化合物3及び化合物14から生成した。生成物13のIRスペクトルを図5に示す。
【0045】
比較例3:反応生成物15の生成
反応4を再び参照して、比較例1と同様の方法で、生成物(ポリマー15)を化合物3及び化合物14から生成した。生成物15の固有粘度を測定したところ、NMP中、1.81dL/gであった。生成物15のIR及びNMRスペクトルをそれぞれ図6及び図7に示す。
【0046】
図7に示される1H−NMRスペクトルにおいて、ポリマー15の構造は完全に帰属された。図5及び図6に示されるように、ポリマー13とポリマー15との間には明らかな違いがあった。したがって、ポリマー15と同じ構造を有するポリマーは、界面重合法では合成することができない。
【0047】
実施例3:反応生成物7の生成
反応4及び5を参照して、実施例1と同様の方法で、生成物(ポリマー7)を化合物1、化合物6及び化合物3(化合物1/化合物6/化合物3:0.849g/0.780g/0.653g(1.60mmol/1.59mmol/3.22mmol))から生成し、0.61g:Mw(Mw/Mn)=14,900(2.11):a/b=70/30(19F−NMRで判定)を得た。
【化18】
【0048】
実施例4:反応生成物9の生成
反応4及び6を参照して、実施例1と同様の方法で、生成物(ポリマー9)を化合物1、化合物8及び化合物3(化合物1/化合物8/化合物3:0.849g/0.780g/0.653g(1.60mmol/1.59mmol/3.22mmol))から生成し、0.84g:Mw(Mw/Mn)=10,900(2.05):c/d=77/23(19F−NMRで判定)を得た。
【化19】
【0049】
実施例5:反応生成物11の生成
反応1及び7を参照して、250−mlの三つ口フラスコに1(2.31g)のNaOH水溶液(NaOH/水:0.371g/75ml)及び化合物10のn−ヘキサン溶液(n−ヘキサン/化合物10:75ml/1.150g)を加え、その後、混合物を、機械式攪拌機を用いて室温にて3時間、窒素を通しながら激しく撹拌した。濾過し、その後、室温にて減圧乾燥することにより、白色粉末11(2.94g)が得られた。
【0050】
生成物11のIRスペクトルを図3に示す。図3に示されるIRスペクトルにおいて、カルボン酸基、アミド基、メチレン基及びトリフルオロメチル基の特性ピークが、それぞれ1730、1670、1320及び1220cm−1に観察された。
【化20】
【0051】
実施例6:反応生成物12の生成
反応7及び下記の式62を参照して、実施例5と同様の方法で、生成物(ポリマー12)を化合物2及び化合物10(化合物2/化合物10:1.135g/0.566g(2.13mmol/2.13mmol)から生成し、1.41gが生成された。
【0052】
生成物12のIRスペクトルを図4に示す。図4に示されるIRスペクトルにおいて、カルボン酸基、アミド基及びトリフルオロメチル基の特性ピークが、それぞれ1730、1670及び1220cm−1に観察された。
【化21】
【0053】
本発明の種々の実施形態を説明した。これら及びその他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロアルコール基を有するポリアミドを製造するための界面重合に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールのような芳香族ポリマーは典型的には溶融重合又は溶液重合技術で合成されるが、そのような化合物のうち水相と有機相とを用いた界面重合によって合成することができるものは少数である。界面重合法は、いくつかのポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート合成に適用されており、界面ポリアミド調製法は、逆浸透膜を製造するために広く用いられている。
【0003】
界面重合は、一般的な溶液重合に比べて多くの利点を提供することができる。例えば、界面重合は、(1)典型的にはより低い温度で行われるので、エネルギーを節約することができ、(2)用いる有機溶媒がより少なく、(3)より高分子量の重合生成物を得るために、各二官能性モノマーを1:1のモル比で維持することができ、(4)得られた重合生成物の単離がより容易である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、界面重合では、モノマー反応物のうちの一方が水溶液に可溶であることが必要とされるので、界面重合で得られるポリマー構造は非常に限られていた。さらに、たとえモノマー反応物が水溶液に可溶である場合でも、望ましくない副反応のせいで界面重合の手順に困難が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい態様は、ペンダントフルオロアルキル基を有するモノマーポリアミン反応物を含む塩基性水性化学混合物と、モノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物を含む有機化学混合物とを反応させて、フルオロアルコール含有ポリアミドポリマー生成物を生成する、界面重合法に向けられる。本明細書に記載される方法は、マイクロエレクトロニクス及び膜の用途で見いだされるポリマーの製造のために産業上有用である。
【0006】
1つの態様において、本発明は、化学混合物(A)と化学混合物(B)とを反応させてポリアミドを形成する方法に向けられ、ここで、(A)及び(B)は互いに不混和性であり、
(A)は、式1で表される、1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有するモノマーポリアミン反応物を含む水性塩基であり、
【化1】
式中、R0は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せから成る群から選択される有機基を表し、mは2又はそれ以上の整数であり、nは1又はそれ以上の整数であり、
(B)は、有機性であり、式2で表されるモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物を含み、
【化2】
式中、R1は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せを含む群から選択される有機基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択され、pは2又はそれ以上の整数を表す。
【0007】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明において述べる。本発明の他の特徴、目的及び利点は、この説明及び図面並びに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のポリマー4のDMSO−d6中での1H−NMRスペクトルである。
【図2】比較例1によるポリマーのDMSO−d6中での1H−NMRスペクトルである。
【図3】実施例5の生成物11のIRスペクトルである。
【図4】実施例6の生成物12のIRスペクトルである。
【図5】比較例2の生成物13のIRスペクトルである。
【図6】比較例3の生成物15のIRスペクトルである。
【図7】比較例3の生成物15の、DMSO−d6中での1H−NMRスペクトルである。
【図8】水溶液と有機溶液との重合反応の実施形態である。
【図9】水溶液と有機溶液との重合反応の実施形態である。
【図10】水溶液と有機溶液との重合反応の実施形態である。
【図11】水溶液と有機溶液との重合反応の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい態様は、フルオロアルコール含有ポリアミド化合物を製造するための界面重合法に向けられる。本明細書において用いられる界面重合という用語は、2つの不混和性溶液の境界面またはその付近で生じる重合反応のことを指す。
【0010】
本開示において説明される界面重合法の1つの実施形態において、
【0011】
式1
【化3】
(式中、R0は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、
nは、1又はそれ以上、1から20、又は1から8までの整数を表し、
mは、2又はそれ以上、2から20、又は2から8までの整数を表す)
で表される、1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有するモノマーポリアミン反応物を含む水性塩基性化学混合物(A)を、
式2
【化4】
(式中、R1は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、
Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択され、
pは2又はそれ以上、2から20、又は2から8までの整数を表す)
で表されるモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物を含む有機化学混合物(B)と反応させる。
【0012】
水性塩基性化学混合物(A)及び有機化学混合物(B)は互いに不混和性である。(A)と(B)とが接触した状態で置かれた場合に、不混和性とは、(A)と(B)との間に界面が存在することを意味する。
【0013】
化学混合物(A)及び(B)は独立に、溶液、分散体又はそれらの組合せとすることができる。好ましくは、(A)及び(B)は両方とも溶液であり、以下の議論の中では溶液と称される。
【0014】
水溶液(A)と有機溶液(B)との界面重合の1つの実施形態は、図8に示される反応1で示される。
【0015】
いかなる理論にも拘束されることも望まないが、現在入手できる証拠は、塩基性水溶液(A)は、界面重合プロセス中の望ましくない副反応(例えばエステル化)を実質的に低減し又は排除する一方で、ポリアミンモノマー反応物を可溶性にすることができることを示している。
【0016】
いくつかの実施形態において、式1のモノマーポリアミン反応物中のR0は、2個から30個までの炭素原子、又は2個から20個までの炭素原子、又は6個から20個までの炭素原子を有する有機基を表す。例えば、R0は、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルナン環及びそれらの組合せから選択される芳香族有機基を含むことができる。
【0017】
1つの実施形態において、式1のモノマーポリアミン反応物において、R0は、式3で表される有機基であり、
【化5】
式中、Yは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、rは0又は1の整数を表す。式3において、一価アミノ(NH2)基及び一価ヘキサフルオロアルコール[C(CF3)2OH]基は、各々、ベンゼン環に化学結合する。
【0018】
別の実施形態において、式1のモノマーポリアミン反応物において、R0は、式4で表される有機基であり、
【化6】
一価アミノ(NH2)基及び一価ヘキサフルオロアルコール[C(CF3)2OH]基は、各々、ナフタレン環に化学結合する。
【0019】
別の実施形態において、モノマーポリアミン反応物(A)は、式6で表される四価有機化合物又は式7で表される三価有機化合物から選択される化合物のうちの少なくとも1つを含み、
【化7】
式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから選択される。Yは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、rは0又は1の整数を表す。
【0020】
別の実施形態において、水溶液(A)中のモノマーポリアミン反応物は、式8で表される四価有機化合物又は式9で表される三価有機化合物から選択される化合物のうちの少なくとも1つを含み、
【化8】
式中、R9、R10、R11、R12、R13、R14及びR15は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから選択される。
【0021】
別の実施形態において、水溶液(A)中のモノマーポリアミン反応物は、式10で表される三価有機化合物又は式11で表される四価有機化合物から選択される化合物のうちの少なくとも1つを含み、
【化9】
式中、R16、R17、R18、R19、R20、R21及びR22は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから選択される。
【0022】
他の実施形態において、水溶液(A)の中のモノマーポリアミン反応物は、式15から式36までのいずれか、又はそれらの組合せで表される。
【化10】
【化11】
【化12】
【0023】
水溶液(A)中で用いられる塩基は様々に変えることができ、有機塩基、無機塩基及びそれらの組合せを含むことができる。例えば、水溶液(A)中の塩基は、無機水酸化物、有機水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、スルフィド、アミンおよびそれらの組合せを含むことができる。適切な塩基としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、NaHCO3、KHCO3、トリエチルアミン、ピリジン、水酸化テトラメチルアンモニウム及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
いくつかの実施形態において、式2の多官能性ハロゲン化アシル反応物中のR1は、1個から30個までの炭素原子、又は1個から20個までの炭素原子、又は1個から15個までの炭素原子を有する有機基を表す。いくつかの実施形態において、式2の多官能性ハロゲン化アシル反応物において、R1は、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルナン環及びそれらの組合せから選択される有機基を含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、式2の多官能性ハロゲン化アシル反応物中のR1は式12で表される有機基を表し、
【化13】
式中、Wは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、sは0又は1の整数である。一価COXは、ベンゼン環に化学結合し、Xは、独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態において、溶液(B)中のモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物は、式10’で表される二価有機化合物又は式11’で表される三価有機化合物のうちの少なくとも1つを含み、
【化14】
式中、R23、R24、R25、R26及びR27は、各々独立に、一価COXから選択され、Xは、独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される。
【0027】
別の実施形態において、溶液(B)中のモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物は、式13で表される三価有機化合物又は式14で表される二価有機化合物から選択される化合物のうちの少なくとも1つを含み、
【化15】
式中、R28、R29、R30、R31及びR32は、各々独立に、一価COXから選択され、Xは、独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される。Wは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、sは0又は1の整数を表す。
【0028】
他の実施形態において、溶液(B)中のモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物は、式37から式61の化合物いずれか、及びそれらの組合せから選択される化合物を含む。
【化16】
【化17】
【0029】
有機溶液(B)において用いられる有機溶媒は様々に変えることができ、1個から20個の炭素原子、又は1個から16個の炭素原子、又は1個から12個の炭素原子を有する有機化合物を含むことができる。適切な有機溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、キシレン、トルエン、ベンゼン及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
有機溶液中のハロゲン化アシル反応物又は水溶液中のモノマーポリアミン反応物の濃度は広範囲に変えることができる。例えば、有機溶液中のハロゲン化アシル反応物の濃度は、0.01%(w/v)から100%(w/v)、又は0.1%(w/v)から100%(w/v)、又は0.5%(w/v)から50%(w/v)までの範囲とすることができる。同様に、水溶液中のモノマーポリアミン反応物の濃度は、0.01%(w/v)から100%(w/v)、又は0.1%(w/v)から50%(w/v)、又は0.1%(w/v)から20%(w/v)までの範囲とすることができる。用いられる具体的な濃度は、形成されるポリマーの所望の量に応じて調節することができる。
【0031】
例えば、図9の反応2で示される1つの実施形態において、現在説明している界面重合法における溶液(A)と(B)との重合反応生成物は、ヘキサフルオロアルコール(HFA)含有ポリアミドであり、RはCH2及びOから選択される。
【0032】
界面重合反応条件は広範囲に変えることができ、いくつかの詳細な例を以下に述べる。しかしながら、反応は典型的には溶液(A)と(B)とを混合し、機械式攪拌機で約−30℃から約150℃にて約0.01時間から約50時間にわたって激しく撹拌することによって行われる。典型的には、界面重合反応は、窒素下、室温にて約3時間にわたって行われる。本出願において、室温とは、約10℃から約40℃まで、好ましくは25℃を意味する。
【0033】
随意に、相転移触媒を溶液(A)又は溶液(B)のいずれかに添加してもよい。いくつかの実施形態において、相転移触媒は反応性を高めることができる。
【0034】
化学混合物(A)及び(B)は多様な添加物を含むことができ、例として、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0035】
重合反応生成物はいずれかの適切な方法によって単離することができ、例として、濾過、沈殿、デカンテーション、塩析などが挙げられる。
【0036】
ここで、界面重合反応を以下の非限定的な例によって説明する。
【実施例】
【0037】
実施例1:反応生成物4の生成
図10中の反応3を参照して、250−mlの三つ口フラスコに化合物1(2.51g)のNaOH水溶液(NaOH/水:0.396g/70ml)及び化合物3のn−ヘキサン溶液(n−ヘキサン/化合物3:70ml/0.958g)を加え、その後、混合物を、機械式攪拌機を用いて室温にて3時間、窒素を通しながら激しく撹拌した。
【0038】
濾過し、その後60℃にて減圧乾燥することにより、白色粉末(2.70g)が得られた。THF溶液(THF/得られた白色粉末:5.0g/0.5g)から12N−HCl/メタノール/水(1.8g/30ml/60ml)の中に再沈させた後、濾過し、その後60℃にて減圧乾燥することにより、生成物(ポリマー4)が0.35g得られ、Mw(Mw/Mn)=47,000(2.36)であった。
【0039】
生成物4の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
【0040】
比較例1
窒素導入管及び導出管を装着した100−mlの三つ口フラスコに、化合物1(1.50g)及びDMAc(8ml)を加えた。溶液を作った後、フラスコをドライアイス/アセトン浴中に置いた。溶液を凍結させた後、3(0.57g)及びDMAc(2ml)を添加し、その後、混合物を、機械式攪拌機を用いて、氷/水浴中で3時間、窒素を通しながら撹拌し、その後室温で20時間、窒素を通しながら撹拌した。メタノール中で沈殿させた後、濾過し、その後60℃にて減圧乾燥することにより、ポリマー(1.87g)が得られ、Mw(Mw/Mn)=118,000(1.67)であった。
【0041】
図2は、比較例1に従って調製したポリマーの1H−NMRスペクトルを示す。
【0042】
結果として、ポリマー4及び標準(authentic)のポリマーは両方とも同じ化学構造を有していることが確認された。
【0043】
実施例2:反応生成物5の生成
上記の反応3を再び参照して、実施例1と同様の方法で、生成物(ポリマー5)を化合物2及び化合物3(化合物2/化合物3:1.163g/0.445g(2.18mmol/2.19mmol)から生成し、1.46g:Mw(Mw/Mn)=40,000(3.10)を得た。
【0044】
比較例2:反応生成物13の生成
図11の反応4を参照して、実施例1と同様の方法で、生成物(ポリマー13)を化合物3及び化合物14から生成した。生成物13のIRスペクトルを図5に示す。
【0045】
比較例3:反応生成物15の生成
反応4を再び参照して、比較例1と同様の方法で、生成物(ポリマー15)を化合物3及び化合物14から生成した。生成物15の固有粘度を測定したところ、NMP中、1.81dL/gであった。生成物15のIR及びNMRスペクトルをそれぞれ図6及び図7に示す。
【0046】
図7に示される1H−NMRスペクトルにおいて、ポリマー15の構造は完全に帰属された。図5及び図6に示されるように、ポリマー13とポリマー15との間には明らかな違いがあった。したがって、ポリマー15と同じ構造を有するポリマーは、界面重合法では合成することができない。
【0047】
実施例3:反応生成物7の生成
反応4及び5を参照して、実施例1と同様の方法で、生成物(ポリマー7)を化合物1、化合物6及び化合物3(化合物1/化合物6/化合物3:0.849g/0.780g/0.653g(1.60mmol/1.59mmol/3.22mmol))から生成し、0.61g:Mw(Mw/Mn)=14,900(2.11):a/b=70/30(19F−NMRで判定)を得た。
【化18】
【0048】
実施例4:反応生成物9の生成
反応4及び6を参照して、実施例1と同様の方法で、生成物(ポリマー9)を化合物1、化合物8及び化合物3(化合物1/化合物8/化合物3:0.849g/0.780g/0.653g(1.60mmol/1.59mmol/3.22mmol))から生成し、0.84g:Mw(Mw/Mn)=10,900(2.05):c/d=77/23(19F−NMRで判定)を得た。
【化19】
【0049】
実施例5:反応生成物11の生成
反応1及び7を参照して、250−mlの三つ口フラスコに1(2.31g)のNaOH水溶液(NaOH/水:0.371g/75ml)及び化合物10のn−ヘキサン溶液(n−ヘキサン/化合物10:75ml/1.150g)を加え、その後、混合物を、機械式攪拌機を用いて室温にて3時間、窒素を通しながら激しく撹拌した。濾過し、その後、室温にて減圧乾燥することにより、白色粉末11(2.94g)が得られた。
【0050】
生成物11のIRスペクトルを図3に示す。図3に示されるIRスペクトルにおいて、カルボン酸基、アミド基、メチレン基及びトリフルオロメチル基の特性ピークが、それぞれ1730、1670、1320及び1220cm−1に観察された。
【化20】
【0051】
実施例6:反応生成物12の生成
反応7及び下記の式62を参照して、実施例5と同様の方法で、生成物(ポリマー12)を化合物2及び化合物10(化合物2/化合物10:1.135g/0.566g(2.13mmol/2.13mmol)から生成し、1.41gが生成された。
【0052】
生成物12のIRスペクトルを図4に示す。図4に示されるIRスペクトルにおいて、カルボン酸基、アミド基及びトリフルオロメチル基の特性ピークが、それぞれ1730、1670及び1220cm−1に観察された。
【化21】
【0053】
本発明の種々の実施形態を説明した。これら及びその他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学混合物(A)と化学混合物(B)とを反応させてポリアミドを形成する方法であって、(A)及び(B)は互いに不混和性であり、
(A)は、式1で表される、1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有するモノマーポリアミン反応物を含む水性塩基であり、
【化1】
式中、R0は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せから成る群から選択される有機基を表し、mは2又はそれ以上の整数であり、nは1又はそれ以上の整数であり、
(B)は、有機性であり、式2で表されるモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物を含み、
【化2】
式中、R1は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せを含む群から選択される有機基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択され、pは2又はそれ以上の整数を表す、
方法。
【請求項2】
R0が2個から30個までの炭素原子を有する有機基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1が1個から30個までの炭素原子を有する有機基である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(A)中の前記塩基が、無機塩基、有機塩基及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(B)が、1個から20個までの炭素原子を有する有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
R0が、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン及びそれらの組合せから成る群から選択される有機基である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
R1が、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン及びそれらの組合せから成る群から選択される有機基である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基が、有機水酸化物、無機水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、スルフィド、アミン及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記有機溶媒が、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、キシレン、トルエン、ベンゼン及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
R0が、式3で表される有機基であり、
【化3】
式中、Yは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから成る群から選択され、rは0又は1の整数であり、式3中の各ベンゼン環が一価NH2及び一価C(CF3)2OHに化学結合している、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
R0が、式4で表される有機基であり、
【化4】
式4におけるナフタレン環が一価NH2及び一価C(CF3)2OHに化学結合している、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(A)中の前記モノマーポリアミン反応物が、式6の四価有機化合物又は式7の三価有機化合物から選択される化合物を含み、
【化5】
式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから成る群から選択され、Yは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから成る群から選択され、rは0又は1の整数である、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記モノマーポリアミン反応物が、式8で表される四価有機化合物又は式9で表される三価有機化合物から選択される化合物を含み、
【化6】
式中、R9、R10、R11、R12、R13、R14及びR15は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから成る群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記モノマーポリアミン反応物が、式10で表される三価有機化合物又は式11で表される四価有機化合物から選択される化合物を含み、
【化7】
式中、R16、R17、R18、R19、R20、R21及びR22は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから成る群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記モノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物が、式10’で表される二価有機化合物又は式11’で表される三価有機化合物から選択される化合物を含み、
【化8】
式中、R23、R24、R25、R26及びR27は、各々独立に、一価COXから成る群から選択され、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
R1が、式12で表される有機基であり、
【化9】
式中、Wは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、sは0又は1の整数を表し、一価COXは式12のベンゼン環に化学結合している、
請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記モノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物が、式13で表される三価有機化合物又は式14で表される二価有機化合物から選択される化合物を含み、
【化10】
式中、R28、R29、R30、R31及びR32は、各々独立に、一価COXから成る群から選択され、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択され、Wは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、sは0又は1の整数を表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
溶液(A)中の前記塩基が、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、NaHCO3、KHCO3、トリエチルアミン、ピリジン、水酸化テトラメチルアンモニウム及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項19】
(A)及び(B)のうちの少なくとも一方が相転移触媒をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記モノマーポリアミン反応物が、式15から式36までのいずれかで表される、
【化11】
【化12】
請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記モノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物が、式37から式61のいずれかで表される、
【化13】
【化14】
請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記化学混合物(A)及び(B)が、各々独立に、溶液、分散体及びそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記化学混合物(A)及び(B)が、各々、溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
化学混合物(A)と化学混合物(B)とを反応させてポリアミドを形成する方法であって、(A)及び(B)は互いに不混和性であり、
(A)は、式1で表される、1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有するモノマーポリアミン反応物を含む水性塩基であり、
【化1】
式中、R0は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せから成る群から選択される有機基を表し、mは2又はそれ以上の整数であり、nは1又はそれ以上の整数であり、
(B)は、有機性であり、式2で表されるモノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物を含み、
【化2】
式中、R1は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環式基及びそれらの組合せを含む群から選択される有機基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択され、pは2又はそれ以上の整数を表す、
方法。
【請求項2】
R0が2個から30個までの炭素原子を有する有機基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1が1個から30個までの炭素原子を有する有機基である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(A)中の前記塩基が、無機塩基、有機塩基及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(B)が、1個から20個までの炭素原子を有する有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
R0が、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン及びそれらの組合せから成る群から選択される有機基である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
R1が、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン及びそれらの組合せから成る群から選択される有機基である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基が、有機水酸化物、無機水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、スルフィド、アミン及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記有機溶媒が、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、キシレン、トルエン、ベンゼン及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
R0が、式3で表される有機基であり、
【化3】
式中、Yは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから成る群から選択され、rは0又は1の整数であり、式3中の各ベンゼン環が一価NH2及び一価C(CF3)2OHに化学結合している、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
R0が、式4で表される有機基であり、
【化4】
式4におけるナフタレン環が一価NH2及び一価C(CF3)2OHに化学結合している、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(A)中の前記モノマーポリアミン反応物が、式6の四価有機化合物又は式7の三価有機化合物から選択される化合物を含み、
【化5】
式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから成る群から選択され、Yは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから成る群から選択され、rは0又は1の整数である、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記モノマーポリアミン反応物が、式8で表される四価有機化合物又は式9で表される三価有機化合物から選択される化合物を含み、
【化6】
式中、R9、R10、R11、R12、R13、R14及びR15は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから成る群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記モノマーポリアミン反応物が、式10で表される三価有機化合物又は式11で表される四価有機化合物から選択される化合物を含み、
【化7】
式中、R16、R17、R18、R19、R20、R21及びR22は、各々独立に、NH2及びC(CF3)2OHから成る群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記モノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物が、式10’で表される二価有機化合物又は式11’で表される三価有機化合物から選択される化合物を含み、
【化8】
式中、R23、R24、R25、R26及びR27は、各々独立に、一価COXから成る群から選択され、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
R1が、式12で表される有機基であり、
【化9】
式中、Wは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、sは0又は1の整数を表し、一価COXは式12のベンゼン環に化学結合している、
請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記モノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物が、式13で表される三価有機化合物又は式14で表される二価有機化合物から選択される化合物を含み、
【化10】
式中、R28、R29、R30、R31及びR32は、各々独立に、一価COXから成る群から選択され、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択され、Wは、CH2、O、S、C=O、SO2、C(CH3)2、C(CF3)2及びそれらの組合せから選択される有機基を表し、sは0又は1の整数を表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
溶液(A)中の前記塩基が、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、NaHCO3、KHCO3、トリエチルアミン、ピリジン、水酸化テトラメチルアンモニウム及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項19】
(A)及び(B)のうちの少なくとも一方が相転移触媒をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記モノマーポリアミン反応物が、式15から式36までのいずれかで表される、
【化11】
【化12】
請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記モノマー多官能性ハロゲン化アシル反応物が、式37から式61のいずれかで表される、
【化13】
【化14】
請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記化学混合物(A)及び(B)が、各々独立に、溶液、分散体及びそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記化学混合物(A)及び(B)が、各々、溶液である、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−518710(P2012−518710A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551217(P2011−551217)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/024595
【国際公開番号】WO2010/096565
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/024595
【国際公開番号】WO2010/096565
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】
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