説明

フルオロオレフィンモノマーおよびそれらのコポリマー

式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である)の新規フルオロオレフィンが本明細書に開示される。本フルオロオレフィンは、フッ素化カルボン酸を製造するために酸化されてもよい。本発明のフルオロオレフィンおよび少なくとも1つの他のフルオロモノマーの共重合単位を含むフルオロポリマーもまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種のフルオロオレフィンモノマーにおよびそれらのコポリマーに、より具体的には式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、RfはC1〜C8のフルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である)のフルオロオレフィンモノマーに、それらのコポリマーにならびにかかるモノマーから製造されるフッ素化カルボン酸に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性フルオロポリマー(すなわちフルオロエラストマー)は、熱、気候、オイル、溶剤および化学薬品の影響に対して優れた耐性を示す。かかる材料は市販されており、通常はフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)および、任意選択的に、テトラフルオロエチレン(TFE)とのコポリマーである。他の公知のフルオロエラストマーには、TFEとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)とのコポリマー、TFEとプロピレン(P)と、任意選択的にVF2とのコポリマー、ならびにエチレン(E)とTFEおよびPMVEとのコポリマーが含まれる。多くの場合、これらのフルオロエラストマーはまた、加硫を促進するための硬化部位モノマーの共重合単位を含有する。これらのコポリマーは、低い圧縮永久歪みおよび優れた加工性をはじめとする、多くの望ましい特性を有するが、それらの低温可撓性は特定の最終使用用途にとって適切であるわけではない。特に望ましい一改良は、より低温への使用温度の拡張を伴うガラス転移温度(Tg)の低下であろう。低いガラス転移温度を有するポリマーは低温で弾性を維持するので、Tgはしばしば低温可撓性の指標として用いられる。
【0003】
半結晶性および結晶性の熱可塑性フルオロポリマー(すなわちフルオロプラスチック)には、ホモポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレンもしくはポリフッ化ビニリデン)または20重量%以下の第2の(異なる)フルオロモノマー、炭化水素オレフィンもしくは後者の組み合わせを含有するTFEもしくはVF2のコポリマーが含まれる。かかるコポリマーには、THV、FEPおよびPFAが含まれるが、それらに限定されない。これらのポリマーは多くの望ましい特性を有するが、幾つかの用途では、向上した生強度が有益であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2のフルオロオレフィンが少なくとも1つの他のフルオロモノマーと共重合してフルオロエラストマーまたはフルオロプラスチックを製造するときにフルオロエラストマーのガラス転移温度が低下し、かつ、フルオロプラスチックの生強度が向上することが意外にも発見された。後者の式において、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である。
【0005】
従って、本発明は、一般式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)を有するフルオロオレフィンを指向する。
【0006】
本発明の別の態様は、
A)式Rf−O−CF=CF2(式中、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)のフルオロビニルエーテルを、i)一塩化ヨウ素、ii)HFおよびiii)ルイス酸触媒と50℃〜100℃の温度で10〜48時間反応させて式Rf−O−CF2CF2−I(式中、Rfは上に定義された通りである)のヨウ化フルオロアルキルを形成する工程と;
B)前記ヨウ化フルオロアルキルを、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンからなる群から選択されるオレフィンと反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−I(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは上に定義された通りである)の化合物を生成する工程と;
C)式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−Iの前記化合物をエチレンと反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH2CH2I(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)の化合物を生成する工程と;
D)式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH2CH2Iの前記化合物を塩基と反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)のフルオロオレフィンを生成する工程と
を含むフルオロオレフィンの製造方法である。
【0007】
本発明の別の態様は、
A)一般式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)を有するフルオロオレフィン;および
B)前記フルオロオレフィンとは異なる少なくとも1つのフルオロモノマー
の共重合単位を含むフルオロポリマーである。
【0008】
本発明の別の態様は、
式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−COOH(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)のフッ素化カルボン酸の製造方法であって、
A)式Rf−O−CF=CF2(式中、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)のフルオロビニルエーテルを、一塩化ヨウ素、HFおよびルイス酸触媒と50℃〜100℃の温度で10〜48時間反応させて式Rf−O−CF2CF2−I(式中、Rfは上に定義された通りである)のヨウ化フルオロアルキルを形成する工程と;
B)前記ヨウ化フルオロアルキルを、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンからなる群から選択されるオレフィンと反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−I(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは上に定義された通りである)の化合物を生成する工程と;
C)式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−Iの前記化合物をエチレンと反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH2CH2I(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)の化合物を生成する工程と;
D)式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH2CH2Iの前記化合物を塩基と反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)のフルオロオレフィンを生成する工程と、
E)前記フルオロオレフィンを酸化して式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−COOH(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)を有するフッ素化カルボン酸にする工程と
を含む方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の新規フルオロオレフィンは、一般式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)を有する。前記フルオロオレフィンの具体的な例には、CF3−O−CF2CF2−CH=CH2、C25−O−CF2CF2−CH=CH2、C37−O−CF2CF2−CH=CH2、C37O−[CF(CF3)CF2O]p−CF2CF2−CH=CH2、CF3−O−CF2CF2CF2CF2−CH=CH2、CF3−O−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2、C25−O−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2、C37−O−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2、およびC37O−[CF(CF3)CF2O]p−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2(式中、pは整数1〜3である)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0010】
これらのフルオロオレフィンは好ましくは次の一連の反応によってフルオロビニルエーテルから製造される。先ず、式Rf−O−CF=CF2(式中、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)のフルオロビニルエーテルは、i)一塩化ヨウ素、ii)HFおよびiii)ルイス酸触媒と反応して式Rf−O−CF2CF2−I(式中、Rfは上に定義された通りである)のヨウ化フルオロアルキルを形成する。この方法に用いられてもよいルイス酸触媒の例には、BF3、SbF3、TaF5、NbF5、SbCl5およびTiCl4が挙げられるが、それらに限定されない。この反応は典型的には、50℃〜100℃の温度で10〜48時間行われる。生じたヨウ化フルオロアルキルは次に、テトラフルオロエチレンもしくはフッ化ビニリデンと反応して式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−I(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは上に定義された通りである)の化合物を生成する。
【0011】
式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−Iの化合物は次に、エチレンと反応して式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH2CH2I(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)の化合物を生成する。エチレンとの反応は、190℃〜230℃の温度で6〜24時間、またはベンゾイルペルオキシドもしくはVazo(登録商標)開始剤(DuPontから入手可能な)などのラジカル開始剤の存在下の場合には、60℃〜90℃の温度で行われてもよい。
【0012】
f−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH2CH2Iは次に、塩基で脱ヨウ化水素されて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)を有する本発明のフルオロオレフィンを生成する。
【0013】
このフルオロオレフィンは、式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−COOH(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)を有するフッ素化カルボン酸を形成するために、酸化され、開裂されてもよい。この反応に用いられてもよい酸化剤には、硫酸などの強酸と一緒のKMnO4およびCrO3が含まれるが、それらに限定されない。生じたフッ素化カルボン酸は、式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−COOM(式中、MはNH4+、Na+、K+等々の一価のカチオンである)のアニオン性フルオロ界面活性剤を形成するために塩基(例えばNH4HCO3、NaOH、KOHなど)と反応させられてもよい。これらのフルオロ界面活性剤は、フルオロポリマーの重合に分散剤として用いられてもよい。
【0014】
本発明のフルオロオレフィンはまた、フルオロポリマーを製造するために用いられてもよい。本発明のフルオロポリマー、フルオロエラストマーおよびフルオロプラスチックの両方は、上記のフルオロオレフィンおよび前記フルオロオレフィンとは異なる、少なくとも1つの他のフルオロモノマーの共重合単位を含む。好ましくはフルオロポリマーは、0.5〜10モル%の本発明のフルオロオレフィンを含む。
【0015】
本発明のフルオロポリマー中に含有されてもよいフルオロモノマーには、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニリデン(VF2)、フッ化ビニル(VF)、パーフルオロビニルエーテル、ならびにCF2=CFOCF2CF(CF3)−O−CF2CF2−COOCH3、およびCF2=CFOCF2CF(CF3)−O−CF2CF2−SO2Fなどの官能性モノマーが含まれるが、それらに限定されない。
【0016】
本発明のフルオロポリマーに用いられてもよい好ましいクラスのパーフルオロビニルエーテルには、式
CF2=CFO(CF2CFXO)nf
(式中、XはFまたはCF3であり、nは0〜5であり、Rfは、1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)
のエーテルが含まれる。
【0017】
最も好ましいクラスのパーフルオロビニルエーテルには、nが0または1であり、かつ、Rfが1〜3個の炭素原子を含有するそれらのエーテルが含まれる。かかる過フッ素化エーテルの例には、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が挙げられる。
【0018】
他の有用なパーフルオロビニルエーテルには、式
CF2=CFO[(CF2mCF2CFZO]nf
(式中、Rfは、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、m=0または1、n=0〜5、Z=FまたはCF3である)
のものが含まれる。このクラスの好ましい一員は、RfがCF3であり、m=1、n=1、Z=Fである;およびRfがC37であり、m=0、n=1であるものである。
【0019】
追加のパーフルオロビニルエーテルには、式
CF2=CFO[(CF2CF{CF3}O)n(CF2CF2CF2O)m(CF2p]Cx2x+1
(式中、mおよびnは独立して0〜10であり、p=0〜3、x=1〜5である)
の化合物が含まれる。このクラスの好ましい一員には、n=0〜1、m=0〜1、x=1である化合物が含まれる。
【0020】
有用なパーフルオロビニルエーテルの追加の例には、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mn2n+1
(式中、n=1〜5、m=1〜3であり、式中、好ましくは、n=1である)
が挙げられる。
【0021】
本発明のフルオロオレフィンとは異なる少なくとも1つのフルオロモノマーに加えて、本発明のフルオロポリマーはまた、エチレンまたはプロピレンなどの炭化水素オレフィンの共重合単位を含有してもよい。
【0022】
さらに本発明のフルオロポリマーは、フルオロポリマー工業で一般的に用いられる硬化部位モノマーの0.1〜7モルパーセント共重合単位を含有してもよい。かかる硬化部位モノマーには、ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン、および4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテンなどの臭素−およびヨウ素含有オレフィンが含まれるが、それらに限定されない。かかる硬化部位モノマーは当該技術分野で周知である(例えば米国特許第4,214,060号明細書、米国特許第5,214,106号明細書、米国特許第5,717,036号明細書)。他の硬化部位モノマーには、2−ヒドロペンタフルオロプロペン、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、および米国特許第6,211,319 B1号明細書に開示されているもの(例えばパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン))などのニトリル基含有フルオロオレフィンまたはフルオロビニルエーテルが含まれる。
【0023】
本発明のフルオロポリマーは、公知の乳化、懸濁または溶液重合法によって製造されてもよい。二ヨウ化パーフルオロアルキル(例えばI−(CF24−I)、アルコール、ケトンまたは炭化水素などの連鎖移動剤が重合を調節するために用いられてもよい。
【0024】
本発明のフルオロエラストマーは、ガスケット、チュービング、シール、ホース、Oリングおよび他の成形部品の製造に有用である。かかる物品は一般に、エラストマー、硬化剤および様々な添加剤の配合調合物を圧縮成形し、成形品を硬化させ、次にそれをポスト硬化サイクルにかけることによって製造される。硬化エラストマー部品は、優れた熱安定性および耐化学薬品性だけでなく優れた低温可撓性および加工性を有する。それらは、耐油性と、耐燃料性と低温可撓性との良好な組み合わせを必要とするシールおよびガスケットなどの用途で、例えば燃料注入システム、燃料ライン連結器システムならびに高温および低温自動車用途向けの他のシールで特に有用である。
【0025】
本発明のフルオロプラスチックは、シール、ワイヤおよびケーブル外被、ホースなどの製造に有用である。それらは、シーリング、成形および射出用途向けの部品などの良好な生強度を必要とする用途に特に有用である。
【0026】
これより、本発明を、すべての部および百分率が特に明記されない限り重量による、ある種の実施形態によって例示する。
【実施例】
【0027】
試験方法
組成および微細構造は、19Fおよび1H NMRによって測定した。NMRスペクトルは、溶媒として重水素化アセトンおよび1H(または19F)核用の基準としてテトラメチルシラン(TMS)(またはCFCl3)を使用して、Bruker AC 400(400MHz)機器で記録した。結合定数および化学シフトは、それぞれ、Hzおよびppm単位で示す。1H(または19F)NMRスペクトルについての実験条件は次の通りであった:フリップ角90°(または30°)、収集時間4.5秒(または0.7秒)、パルス遅れ2秒(または5秒)、スキャンの数16(または64)、および19F NMRについて5μ秒のパルス幅。
【0028】
実施例1
1300mLのステンレススチール振盪機チューブにパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE、346グラム、1.30モル)、一塩化ヨウ素(248.5グラム、1.53モル)、HF(500グラム、25モル)、および三フッ化ホウ素(50グラム、0.737モル)を装入した。チューブを密閉し、冷却排気した。「冷却排気した」とは、酸素を除去するために真空が適用される間ずっとすべての原料が反応器にとどまるように十分に反応器内容物を冷却することによって酸素を反応器から除去したことを意味する。チューブおよび内容物を次に、振盪しながら75℃で24時間加熱した。冷却後に、生成物混合物をチューブから取り出し、飽和重亜硫酸ナトリウム溶液で洗浄して未反応の残存ヨウ素を除去した。乾燥後に、生成物(CF3CF2CF2−O−CF2CF2−I)を蒸留して透明無色の液体、bp.85〜86℃、収量:400グラム(75%)を得た。
【0029】
1300mLのステンレススチール振盪機チューブに1−ヨード−3−オキサ−パーフルオロヘキサン(CF3CF2CF2−O−CF2CF2−I)(370.8グラム、0.90モル)およびd−(+)−リモネン(1.0グラム)を装入した。チューブを密閉し、冷却排気し、エチレン(42グラム、1.50モル)をチューブ中へ移した。チューブを再び密閉し、220℃で10時間加熱した。生成物(CF3CF2CF2−O−CF2CF2−CH2CH2−I)をチューブから取り出し、蒸留によって精製して淡いピンク色の透明な液体、bp.50mmHgで65〜69℃を得た。収量:340グラム(86%)。1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ 3.24(t,J=8.7Hz,2H),2.72(m,2H);19F−NMR(CDCl3,376.89MHz):−81.8(t,J=7.5Hz,3F),−84.5(m,2F),−88.0(t,J=13.2Hz,2F),−119.3(t,J=17Hz,2F),−130.4(s,2F)。
【0030】
反応フラスコに1−ヨード−1,1,2,2−テトラヒドロ−5−オキサ−パーフルオロオクタン(CF3CF2CF2−O−CF2CF2−CH2CH2−I)(176グラム、0.40モル)と一緒に、TLF−2370C相間移動触媒(DuPontから入手可能な[C1225][PhCH2][CH2CH(OH)CH32)(60%水溶液)(29.6グラム、0.042モル)、10MのKOH溶液(280mL、2.80モル)を装入した。反応混合物を周囲温度で14時間撹拌するに任せた。生成物混合物を分液漏斗中へ移し、底部の有機層を分離し、水で2回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次に蒸留して透明な無色の液体としてCF3CF2CF2−O−CF2CF2−CH=CH2生成物、bp.75〜76℃を得た。収量:172グラム(72%)。1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ5.90(m,1H),5.92(m,2H);19F−NMR(CDCl3,376.89MHz):−81.9(t,J=7.5Hz,3F),−85.1(m,2F),−85.3(t,J=13.2Hz,2F),−118.3(d,J=11.3Hz,2F),−130.5(s,2F)。
【0031】
実施例2
400mLのステンレススチール振盪機チューブに脱イオン水(280mL)、パーフルオロオクタン酸アンモニウム界面活性剤(1.5グラム)、リン酸二ナトリウム七水和物(1.0グラム)、過硫酸アンモニウム(0.1グラム)および1,1,2−トリヒドロ−5−オキサ−パーフルオロ−1−オクテンモノマー(CF3CF2CF2−O−CF2CF2−CH=CH2)(4グラム)を装入した。チューブを密閉し、冷却排気した。テトラフルオロエチレン(TFE、45グラム、0.45モル)およびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE、38グラム、0.229モル)をチューブ中へ移した。チューブを再び密閉し、75℃で8時間加熱した。冷却後に、ラテックスをチューブから取り出し、飽和硫酸マグネシウム溶液で凝固させた。沈澱したポリマーを集め、温水で十分に洗浄した。乾燥後に、白色ポリマー(69グラム)を得た。このポリマーは、DSCによって測定した際に−6.14℃のTgを有し、NMR分光分析法によって測定した際にTFE/PMVE/CF3CF2CF2−O−CF2CF2−CH=CH2=60.0/37.9/2.1(モル%)の組成を有した。
【0032】
実施例3
セミバッチ式反応器に脱イオン水(2,000mL)、パーフルオロオクタン酸アンモニウム界面活性剤(3.9グラム)、リン酸二ナトリウム七水和物(20グラム)、および1,1,2−トリヒドロ−5−オキサ−パーフルオロ−1−オクテンモノマー(CF3CF2CF2−O−CF2CF2−CH=CH2)(20グラム)を装入した。反応器を冷却排気し、次にフッ化ビニリデン(VF2)(320グラム)と、TFE(10グラム)と、PMVE(670グラム)とのガス混合物を、圧力が80℃で1.38MPaに達するまで装入した。過硫酸アンモニウム(20mLの2重量%水溶液)を最初にフィードし、引き続き2重量%溶液を10mL/分の速度でフィードした。13.8kPaの圧力降下が観察されたとき、VF2(212グラム/時)と、TFE(37グラム/時)と、PMVE(140グラム/時)とのガス混合物を、反応器圧力を1.24MPaに維持するのに十分な速度でフィードした。合計量約720gのガスをフィードしたときに重合を停止した。ポリマーラテックスを反応器から取り出し、上記の実施例に記載されたように凝固させ、単離した。得られた白色ポリマー(760グラム)は、NMR分光分析法によって測定した際に75.0/6.4/18.6/0.05(モル%)のVF2/TFE/PMVE/CF3CF2CF2−O−CF2CF2−CH=CH2の組成を有すると分析された。このポリマーのTgは、DSCによって測定した際に−30.1℃であった。
【0033】
実施例4
KMnO4(50g、0.315モル)を脱イオン水に溶解させ、引き続きH2SO4(53g、0.541モル)を添加した。C37OCF2CF2CH=CH2(上記の実施例でのように製造された)(20g、0.094モル)を過マンガン酸塩溶液に60℃で滴加し、酸化反応を70℃で3時間行った。次に、生じた溶液を室温に冷却し、100mLのエーテルで3回抽出した。抽出液をMgSO4上で乾燥させ、次に濾過した。フッ素化カルボン酸生成物(C37OCF2CF2COOH)を減圧蒸留によって蒸留した(9g、29%収率)、b.p.30mmHgで62〜63℃。
19F NMR(376MHz,CDCl3):−84.52(3F,t,J=8Hz),−84.7〜−85.0(2F,m),−86.17〜86.23(2F,m),−125.20〜−125.21(2H,t,J=2.1Hz),−134.49(2F,s)。
【0034】
重炭酸アンモニウム溶液(10mL水中の、1.48g、0.0187モル)を、上で製造されたフッ素化カルボン酸C37OCF2CF2COOH(6g、0.0182モル)に加えた。反応物を室温で1時間撹拌した。水をロートバップ(rotovap)で除去し、白色固体として生成物(C37OCF2CF2COONH4)(4g、79%収率)、b.p.121〜123℃をもたらした。
19F NMR(376MHz,CDCl3):−81.61(3F,t,J=8Hz),−84.7〜−85.0(2F,m),−86.17〜86.23(2F,m),−121.17〜121.19(2H,t,J=2.1Hz),−130.27(2F,s)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)を有するフルオロオレフィン。
【請求項2】
前記フルオロオレフィンがCF3−O−CF2CF2−CH=CH2、C25−O−CF2CF2−CH=CH2、C37−O−CF2CF2−CH=CH2、C37O−[CF(CF3)CF2O]p−CF2CF2−CH=CH2、CF3−O−CF2CF2CF2CF2−CH=CH2、CF3−O−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2、C25−O−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2、C37−O−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2、およびC37O−[CF(CF3)CF2O]p−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2(式中、pは整数1〜3である)からなる群から選択される請求項1に記載のフルオロオレフィン。
【請求項3】
A)i)式Rf−O−CF=CF2(式中、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)のフルオロビニルエーテルを、ii)一塩化ヨウ素、iii)HFおよびiv)ルイス酸触媒と50℃〜100℃の温度で10〜48時間反応させて式Rf−O−CF2CF2−I(式中、Rfは上に定義された通りである)のヨウ化フルオロアルキルを形成する工程と;
B)前記ヨウ化フルオロアルキルを、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンからなる群から選択されるオレフィンと反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−I(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは上に定義された通りである)の化合物を生成する工程と;
C)式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−Iの前記化合物をエチレンと反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH2CH2I(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)の化合物を生成する工程と;
D)式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH2CH2Iの前記化合物を塩基と反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)のフルオロオレフィンを生成する工程と
を含むフルオロオレフィンの製造方法。
【請求項4】
前記ルイス酸触媒が、BF3、SbF3、TaF5、NbF5、SbCl5およびTiCl4からなる群から選択される請求項3に記載のフルオロオレフィンの製造方法。
【請求項5】
工程C)がラジカル開始剤の不存在下に190℃〜230℃で6〜24時間行われる請求項3に記載のフルオロオレフィンの製造方法。
【請求項6】
工程C)がラジカル開始剤の存在下に60℃〜90℃で行われる請求項3に記載のフルオロオレフィンの製造方法。
【請求項7】
A)一般式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)を有するフルオロオレフィン;および
B)前記フルオロオレフィンとは異なる少なくとも1つのフルオロモノマー
の共重合単位を含むフルオロポリマー。
【請求項8】
フルオロオレフィンが、CF3−O−CF2CF2−CH=CH2、C25−O−CF2CF2−CH=CH2、C37−O−CF2CF2−CH=CH2、C37O−[CF(CF3)CF2O]p−CF2CF2−CH=CH2、CF3−O−CF2CF2CF2CF2−CH=CH2、CF3−O−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2、C25−O−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2、C37−O−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2、およびC37O−[CF(CF3)CF2O]p−CF2CF2−CH2CF2−CH=CH2(式中、pは整数1〜3である)からなる群から選択される請求項7に記載のフルオロポリマー。
【請求項9】
フルオロモノマーが、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニルおよびパーフルオロビニルエーテルからなる群から選択される請求項7に記載のフルオロポリマー。
【請求項10】
0.1〜7モルパーセントの硬化部位モノマーの共重合単位をさらに含む請求項7に記載のフルオロポリマー。
【請求項11】
式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−COOH(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)のフッ素化カルボン酸の製造方法であって、
A)i)式Rf−O−CF=CF2(式中、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)のフルオロビニルエーテルを、ii)一塩化ヨウ素、iii)HFおよびiv)ルイス酸触媒と50℃〜100℃の温度で10〜48時間反応させて式Rf−O−CF2CF2−I(式中、Rfは上に定義された通りである)のヨウ化フルオロアルキルを形成する工程と;
B)前記ヨウ化フルオロアルキルを、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンからなる群から選択されるオレフィンと反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−I(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは上に定義された通りである)の化合物を生成する工程と;
C)式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−Iの前記化合物をエチレンと反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH2CH2I(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)の化合物を生成する工程と;
D)式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH2CH2Iの前記化合物を塩基と反応させて式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−CH=CH2(式中、Rf、nおよびmは上に定義された通りである)のフルオロオレフィンを生成する工程と、
E)前記フルオロオレフィンを酸化して式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−COOH(式中、nは1または2であり、mは0または1であり、Rfは、C1〜C8のフルオロアルキル基およびC1〜C8のフルオロアルコキシ基からなる群から選択される)を有するフッ素化カルボン酸にする工程と
を含む方法。
【請求項12】
前記ルイス酸触媒が、BF3、SbF3、TaF5、NbF5、SbCl5およびTiCl4からなる群から選択される請求項11に記載のフッ素化カルボン酸の製造方法。
【請求項13】
工程C)がラジカル開始剤の不存在下に190℃〜230℃で6〜24時間行われる請求項11に記載のフッ素化カルボン酸の製造方法。
【請求項14】
工程C)がラジカル開始剤の存在下に60℃〜90℃で行われる請求項11に記載のフッ素化カルボン酸の製造方法。
【請求項15】
KMnO4およびCrO3からなる群から選択される酸化剤が工程E)で用いられる請求項11に記載のフッ素化カルボン酸の製造方法。
【請求項16】
F)前記フッ素化カルボン酸を塩基で中和して式Rf−O−(CF2CF2n(CH2CF2m−COOM(式中、Mは一価のカチオンである)のアニオン性フルオロ界面活性剤を形成する工程をさらに含む請求項11に記載のフッ素化カルボン酸の製造方法。

【公表番号】特表2011−503097(P2011−503097A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533262(P2010−533262)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082748
【国際公開番号】WO2009/061999
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】