説明

フレキシブル基板へのパターン形成方法

【課題】フレキシブル基板上にカラーフィルタやTFTをパターン形成する際の寸法安定性を向上させることができるパターン形成方法の提供。
【解決手段】フレキシブル基板3を寸法安定なハード基板1に仮留剤で仮留めする仮留工程Aと、前記仮留剤のガラス転移温度以上、前記フレキシブル基板3を構成するポリマーのガラス転移温度以下の温度で前記フレキシブル基板3をアニール処理するアニール処理工程Bと、前記フレキシブル基板3上にフォトリソグラフィーによりパターンを形成するパターン形成工程Cと、パターン形成したフレキシブル基板3をハード基板1から剥離する剥離工程Dとを含むパターン形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板上にカラーフィルタやTFTをパターン形成する際の寸法安定性を向上させることができるフレキシブル基板へのパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などのフラットパネルディスプレイは、薄型省スペースの表示装置として広く用いられている。これらの表示装置のうち、カラー表示を行うものの多く(特に液晶表示装置のほとんど)は、ガラス基板を用いて形成された画素に対応したRGB3原色のカラーフィルタによりカラー化が行われており、この3原色パターンを形成した基板を一般にカラーフィルタと呼んでいる。
【0003】
近年、特に携帯電話等の携帯機器用の表示装置において、更なる薄型及び軽量化のためにガラスに換えてプラスチックフィルムを基板に用いることが試みられている。前記プラスチックフィルムの種類としては、ポリエチレンレテフタレート,ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性プラスチックフィルムの他、エポキシ樹脂等の架橋性樹脂も提案されている。
【0004】
ところで、プラスチックフィルムを用いてカラーフィルタを製造する際に着色レジストを使用する場合、フォトリソグラフィーによりパターニングし、200℃程度の熱処理工程を必要としている。この工程を赤、緑、青の着色部ごとに3回又はこれら着色部に加えて着色部の間に樹脂ブラックマトリックスを形成する場合には少なくとも4回の熱処理工程が必要となる。プラスチックフィルムを基板に用いる場合には上記の熱処理工程により複数回の熱履歴を受けることになる。例えば、熱可塑性樹脂の場合工程中で例えば搬送時にテンションなどの外力がかかった場合に変形が生じることがあり、特に延伸フィルムの場合には緩和による収縮が起こる。また架橋性樹脂の場合であっても熱履歴により硬化収縮が起こる。熱処理工程を繰り返すために、これらのような変形が原因による寸法変化が生じてしまい、ガラス基板を使用した時より寸法精度が設計値を逸脱してしまうという問題がある。
【0005】
前記問題点を解決するため、例えば特許文献1では、透明プラスチックフィルムの一面側に透明セラミック層を設けて基板を形成した後、前記透明プラスチックフィルム材料のガラス転移温度より高い温度で熱処理することが提案されている。しかし、この提案では、透明セラミック層を設けることにより、透明プラスチックフィルムのフレキシビリティが損われてしまうという問題がある。
また、特許文献2では、プラスチックフィルム上に熱処理してなるカラーフィルタ層を有する表示装置用カラーフィルタにおいて、カラーフィルタ層の形成よりも先にカラーフィルタ層形成時の熱処理温度以上の温度で、前記プラスチックフィルムが加熱されてなる表示装置用カラーフィルタが提案されている。しかし、この提案のようにフレキシブル基板のみでは、カラーフィルタ作製時の加熱処理により、基板に微妙な反り等が生じ、寸法安定性が低下してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−292657号公報
【特許文献2】特開2006−99016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、フレキシブル基板上へのパターン形成の際の寸法安定性を向上させることができ、フレキシブル基板上にカラーフィルタパターンやTFTパターンを寸法安定精度良く形成することができるフレキシブル基板へのパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、温度による寸法変化の少ないハード基板にフレキシブル基板を仮留剤で仮留することで、フレキシブル基板上にパターン形成する際の寸法安定性を向上させることができる。また、フレキシブル基板を仮留剤でハード基板に仮留した後に、該仮留剤のガラス転移温度以上、前記フレキシブル基板を構成するポリマーのガラス転移温度以下の温度でアニール処理を行うことにより、ハード基板から剥離した後のフレキシブル基板の寸法安定性も向上し、平滑なまま基板に貼付することができ、作業性も向上することを知見した。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> フレキシブル基板を寸法安定なハード基板に仮留剤で仮留めする仮留工程と、
前記仮留剤のガラス転移温度以上、前記フレキシブル基板を構成するポリマーのガラス転移温度以下の温度で前記フレキシブル基板をアニール処理するアニール処理工程と、
前記フレキシブル基板上にフォトリソグラフィーによりパターンを形成するパターン形成工程と、
前記パターン形成したフレキシブル基板を前記ハード基板から剥離する剥離工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法である。
<2> 剥離工程において、パターン形成されたフレキシブル基板とハード基板の積層体を熱水中に浸漬することにより、パターン形成したフレキシブル基板をハード基板から剥離する前記<1>に記載のパターン形成方法である。
<3> 形成されるパターンが、カラーフィルタ及びTFTのいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載のパターン形成方法である。
<4> フレキシブル基板を構成するポリマーが、ポリエチレンナフタレート(PEN)である前記<1>から<3>のいずれかに記載のパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、フレキシブル基板上へのパターン形成の際の寸法安定性を向上させることができ、フレキシブル基板上にカラーフィルタパターンやTFTパターンを寸法安定精度良く形成することができるフレキシブル基板へのパターン形成方法を提供することができるフレキシブル基板へのパターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のフレキシブル基板上へのパターン形成方法(カラーフィルタの作製)を示す工程図である。
【図2】図2は、ブラックマトリックスパターンが形成されたフレキシブル基板(プラスチックフィルム)の平面図である。
【図3】図3は、ブラックマトリックスパターン及びREDの着色パターンが形成されたフレキシブル基板(プラスチックフィルム)の平面図である。
【図4】図4は、カラーフィルタの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のフレキシブル基板へのパターン形成方法は、仮留工程と、アニール処理工程と、パターン形成工程と、剥離工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0013】
<仮留工程>
前記仮留工程は、フレキシブル基板を寸法安定なハード基板に仮留剤で仮留めする工程である。
【0014】
前記フレキシブル基板としては、フレキシブル性を有する限り、形状、材料、大きさ、形状、構造などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、シート状、フィルム状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。
前記材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリルニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、三酢酸セルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性が高く光学材料に適している点、加熱冷却過程による熱収縮が少ない点からポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
前記フレキシブル基板の厚みは、0.1mm〜0.5mmであることが好ましい。
【0015】
前記寸法安定なハード基板としては、熱処理による寸法変化が小さいものである限り材料、大きさ、形状、構造などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばガラス基板、石英板、サファイア板、アルミニウム板、鉄板、ジュラルミン板などが挙げられる。これらの中でも、廉価である点、薬品に侵されず安定である点でガラス基板が特に好ましい。
【0016】
前記仮留剤としては、フレキシブル基板とハード基板を仮留でき、両者を剥離工程で剥離できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル酸系ポリマー、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル系ポリマー、澱粉糊、などが挙げられる。
前記仮留剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えばPhoto Bond 800(サンライズMSI株式会社製)、Photo Bond 810(サンライズMSI株式会社製)、Photo Bond 830(サンライズMSI株式会社製)、Photo Bond 840(サンライズMSI株式会社製)、PVA−103(株式会社クラレ製)、PVA−105(株式会社クラレ製)、PVA−107(株式会社クラレ製),PVA−117(株式会社クラレ製)、PVA−203(株式会社クラレ製)、PVA−205(株式会社クラレ製)、PVA−210(株式会社クラレ製)、PVA−403(株式会社クラレ製)、PVA−405(株式会社クラレ製)、PVA−420(株式会社クラレ製)、などが挙げられる。
【0017】
前記フレキシブル基板を寸法安定なハード基板に仮留剤で仮留めする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば(1)ハード基板上に仮留剤を塗布し、該仮留剤層上にフレキシブル基板を重ね合わせ、紫外線を照射して硬化させる方法、(2)ハード基板上に仮留剤を塗布し、該仮留剤層上にフレキシブル基板を重ね合わせ、加熱して硬化させる方法、(3)ハード基板上に仮留剤を塗布し、該仮留剤層上にフレキシブル基板を重ね合わせ、圧着させる方法などが挙げられる。
【0018】
<アニール処理工程>
前記アニール処理工程は、前記仮留剤のガラス転移温度以上、前記フレキシブル基板を構成するポリマーのガラス転移温度以下の温度で前記フレキシブル基板をアニール処理する工程である。フレキシブル基板をアニール処理することで通常は内部応力がおさまり熱安定の状態となる。
【0019】
前記アニール処理の温度は、前記仮留剤のガラス転移温度以上、前記フレキシブル基板を構成するポリマーのガラス転移温度以下の温度であり、40℃〜200℃であることが好ましい。前記アニール処理の温度が、前記仮留剤のガラス転移温度未満であると、アニールの効果が顕著に見られず寸法安定性の向上が見られないことがあり、前記フレキシブル基板を構成するポリマーのガラス転移温度を超えると、フレキシブル基板が軟化して形状を保持することが困難となることがある。
前記仮留剤のガラス転移温度は、40℃〜100℃であることが好ましい。
前記フレキシブル基板を構成するポリマーのガラス転移温度は、50℃〜200℃であることが好ましい。
前記フレキシブル基板を構成するポリマーのガラス転移温度は、前記仮留剤のガラス転移温度より高いことが好ましい。
【0020】
前記アニール処理方法としては、フレキシブル基板を仮留剤のガラス転移温度以上、フレキシブル基板を構成するポリマーのガラス転移温度以下の温度で熱処理できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばオーブン内での加熱及び空冷、ホットプレートによる加熱及び空冷、赤外線加熱による加熱及び空冷などが挙げられる。
【0021】
<パターン形成工程>
前記パターン形成工程は、フレキシブル基板上にフォトリソグラフィーによりパターンを形成する工程である。本発明においては、寸法安定性の高い仮留状態のままでパターン形成を行うことにより、作業性が向上する。
【0022】
前記パターン形成工程において形成されるパターンとしては、カラーフィルタ及びTFTのいずれかであることが好ましい。
【0023】
以下、ガラス基板上に仮留され、アニール処理されたフレキシブル基板(プラスチックフィルム)の表面にブラックマトリックス及びRGBの着色剤による着色パターンからなるカラーフィルタの形成方法について説明する。
【0024】
ブラックマトリクス及びRGBの着色パターンは、フォトリソグラフィーにより形成することができ、枚葉(カットシート状)で行うこともロール・ツー・ロールの連続工程で行うこともできる。特に、ロール・ツー・ロールの連続工程で行う場合には、生産性が高く好ましい。
【0025】
ここで、ブラックマトリックス及び着色剤は、感光性組成物であるブラックマトリックス形成用組成物及び着色パターン形成用組成物を、それぞれプラスチックフィルム上に直接塗布してパターニングし熱キュアするか、予め別途これらの感光性組成物をベースフィルム上に塗布して乾燥することによりドライフィルム化し、これを基板となるプラスチックフィルムにラミネートして転写しパターニングし、熱キュアすることで形成することができる。
【0026】
前記感光性組成物としては、(A)着色剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)多官能性単量体、及び(D)光重合開始剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記着色剤(A)とは、カラーフィルタへの透過光照射の際に各着色パターンを色表示するあるいはブラックマトリックスパターンを遮光するための材料であり、例えば、着色剤料としては赤色有機顔料、緑色有機顔料、青色有機顔料、遮光材料としてはカーボンブラック顔料等が挙げられる。
前記アルカリ可溶性樹脂(B)とは、現像の際に溶解して感光性組成物からなる層を除去するための材料であり例えば、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体が挙げられる。
前記多官能性単量体(C)とは、露光の際に感光性組成物からなる層を重合して、現像時に非溶解性のパターンを形成するための材料であり、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
前記光重合開始剤(D)とは、露光の際に多官能性単量体を重合させるための材料であり、例えば2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリオフェニル)ブタノン−1などが挙げられる。
このような感光性組成物を用いることで、ロール・ツー・ロール上に高解像度の着色パターン及びブラックマトリックスパターンを形成でき、なおかつプラスチックフィルムの屈曲性に追従する柔軟なパターンが形成できる。
【0027】
ここでは、ドライフィルムからブラックマトリックスをプラスチックフィルムにラミネートする形態について説明する。ここで使用するブラックマトリックス用のドライフィルムは、ベースフィルム上にブラックマトリックス形成用組成物をウェット状態でダイコートを用いて塗布し、乾燥させて感光性組成物からなる層を形成後にカバーフィルムをラミネートして得ることができる。
【0028】
感光性組成物の塗布方式としては、ダイコート以外に、グラビアコート、グラビアリバースコート、スリットリバースコート、マイクログラビアコート、コンマコート、スライドコート、スプレーコート、カーテンコートなどがある。
【0029】
このようなベースフィルムの厚みは2.5μm〜100μmが好ましく、更にはフィルムの搬送性を良好にするためには6μm以上が好ましく、被転写基材の凹凸への追従性が増すには50μm以下がより好ましい。
【0030】
このようにして得られるドライフィルムからカバーフィルムを予め剥離し、感光性組成物からなる層が基材となるプラスチックフィルム上のガスバリア層と向かい合うようにベースフィルムを積層して、ブラックマトリックス形成用の感光性組成物からなる層を加圧加熱ローラにより加熱加圧処理して連続的に転写し、積層原反を作製する。
【0031】
ここで、加熱加圧処理には、一般的な加圧加熱ローラを用いることができ、具体的には上下2本のロールでフィルムを挟むことができて1本のロールで加熱し他方のロールで圧力を受ける構造を有するものである。材質は主に表面が耐熱ゴムで覆われたものを一方のロールに用い、他方にはクロムめっき処理された金属ロールが用いられる。このように、一方をゴムロールにして他方を金属ロールにすることにより、加圧を均一にすることができる。
【0032】
また、加圧加熱処理の条件を、ローラ圧が0.5kg/cm〜10kg/cm、加熱温度が50℃〜150℃、また搬送速度が100mm/min〜2,000mm/minとすることで、転写品質を良好にすることができる。この理由として、ローラ圧及び加熱温度が低いと転写層と被転写基材との密着性が不十分となり転写に欠陥が発生しやすくなり、逆に高いと転写層、非転写基材及びベースフィルムへの熱圧の影響により、変形等が発生し、転写品質が低下することが挙げられる。また搬送速度が遅いとスループット低下と熱圧による転写品質の劣化が発生し、また早いと、転写の際に熱圧が不足し、転写が正確に行われない。
【0033】
次に、加熱加圧処理された積層原反に対して、必要に応じてベースフィルムを剥離した状態で、感光性組成物の層上から露光処理する。
【0034】
また、ブラックマトリックス形成用組成物を、プラスチックフィルム上に直接塗布する場合、上記工程をすべて省略するか、塗布後にベースフィルムをラミネートして積層原反を作製し、この積層原反にベースフィルムを感光性組成物からなる層上に付けた状態で露光処理を行ってもよい。
【0035】
この感光性組成物に露光する工程では、後述する光源からの光を露光させる露光台を備える露光部と、この露光部に感光性組成物を導入するために上流側に巻き出し装置,下流側に巻き取り装置、更に入口側及び出口側にニップロール対とを備えた露光装置に、上記で得られた積層原反を通し、ニップロール対を駆動させて連続状の積層原反を露光部に搬送し、露光部で積層原反を露光台上に吸着固定させてプロキシ露光によって積層原反を露光する。
【0036】
積層原反を露光台上に吸着固定している間は、ニップローラの駆動を止めることが好ましい。また、搬送時の原反にかかるテンションに関しては、弱いと搬送不良により原反の蛇行が発生しやすく、またテンションが強いと原反の伸びの影響があるという観点から、0.5〜5kg/300mm幅にすることが好ましい。
【0037】
なお、上述での原反搬送形態は、ブラックマトリックスの塗布又はベースフィルムを用いたパターニングを行う処理を行う装置、露光・現像処理を行う装置、及び後述のベーク装置が別装置となっているため、巻き出し及び巻き取り装置が必要であるが、連続の装置構成である場合は、各装置での巻き取りの考えは必ずしも必要ではない。
【0038】
ここで、露光装置の露光部の温度は、装置の露光時の温度、湿度条件の変動範囲である気温、湿度の雰囲気安定性を考慮して、20℃±0.1℃〜25℃±0.1℃であり、一方湿度が50%±1%〜65%±1%であることが、この温度による各材料の安定性と材料の吸湿性を考慮すると好ましい。
【0039】
また、積層原反のベースフィルム又はブラックマトリックス形成用感光性組成物からなる層とパターン(フォトマスク)との間隔(ギャップ)に関しては絶えず一定になるよう毎回自動調整する。この場合のギャップ量は形成パターンの解像度を考慮し、即ちギャップ量が大きすぎると解像度が低下し、また逆に近づけると解像度は向上すること、及びフォトマスクへのゴミ及び汚れ等の付着が増加することから、5μm〜200μmが好ましい。
【0040】
また積層原反のパターンの露光位置は、積層原反の端面からの距離を自動検出して、この検出結果にしたがって積層原反からフォトマスクパターン位置が一定距離になるよう自動調整後に露光を行う。このとき、後述するRGBの各色の着色パターン形成時の露光位置合わせのためのアライメントマークを作製しておくのが好ましい。
【0041】
露光処理の際に用いられる光源としては、高圧水銀ランプ、DEEP UVランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、ハロゲンランプ等が挙げられるが、前述したブラックマトリックス形成用感光性組成物を用いた場合には、特に波長350〜450nmを用いて露光することが感度及び解像度の点から好ましい。
【0042】
続いて現像処理及びポストベーク処理を行う。現像処理は、露光機の下流側に設置した現像装置にて行い、具体的には露光後の積層原反を一定速度で搬送するとともにベースフィルムを剥離しながら、剥離後のプラスチックフィルム表面に現像液を室温にてスプレイ状に吐出して行うことで、プラスチックフィルム上に所定のパターンのブラックマトリックスが積層された複合フィルムを得ることができる。また、ベースフィルムを付けた状態で露光を行った場合は、ベースフィルムを剥離した後に現像液を塗布して現像を行う。その後、この複合フィルムを、連続ベーク炉にて一定速度で搬送しながらベーク炉中を通過させて、ベーク処理を行うことで、ブラックマトリックスの樹脂パターンを熱キュアすることができる。ここで、ベークの温度は、低温すぎると熱キュアが不十分であり、また高温であると樹脂の黄変等が発生することから、120℃〜250℃が好ましい。
【0043】
図2は、このようにして得られるブラックマトリックスパターンが形成されたプラスチックフィルムの平面図である。
図2によれば、ブラックマトリックスパターン5がプラスチックフィルム上に格子状に形成されている。
【0044】
続いて、ブラックマトリックスパターンを形成した後、RGBの着色パターンを形成する。RGBの着色パターンを上述のようにドライフィルムを用いて転写する場合、このRGBの各色の対応する着色剤のドライフィルムも、前述したブラックマトリックスの場合と同様にして作製することができる。
【0045】
例えば、ブラックマトリックス内に赤色(RED)をパターニングするには、ブラックマトリックス形成済みのプラスチックフィルムを作製後、その上にカバーフィルムを予め剥離したREDのドライフィルムを塗料組成物層がプラスチックフィルム側と向かい合うように積層して、REDに対応する着色パターン形成用の感光性組成物の層を加圧加熱ローラにより連続的に転写し積層原反を作製することができる。この加圧加熱ローラによる着色パターンの転写処理は、前述したブラックマトリックス形成と同様の装置や条件で行うことができる。
【0046】
次に、転写されたREDの着色パターンに対する露光工程では、ブラックマトリックスと同時にパターニングされたアライメントマークを用いて位置合せを行う。以下ブラックマトリックスの場合と同様にして露光処理、現像処理、ポストベーク処理を行い、ブラックマトリックスが形成されたプラスチックフィルム上に、熱キュアされた着色パターンを形成することができる。
【0047】
なお、前記ブラックマトリックス形成済みのプラスチックフィルムの上に着色パターン形成用の感光性組成物を直接塗布して着色パターンを形成することもブラックマトリックス形成の場合と同様にして行うことができる。
【0048】
図3は、このようにして得られるブラックマトリックスパターン及びREDの着色パターンが形成されたプラスチックフィルムの平面図である。
図3によれば、格子状に形成されたブラックマトリックスパターン5により囲まれるマス目の領域に所定間隔でREDの着色パターンである赤色パターン4が形成されている。
【0049】
更に、ブラックマトリックスとREDを形成したプラスチックフィルム上に、同様にしてGREEN、BLUEを形成することができる。また、これらの層の上に透明なオーバーコート層を設けてもかまわない。更には、ブラックマトリックス及びRGBの着色剤の形成の順番は任意に決めることができる。また、2層以上が1回の巻き出し、成膜、巻き取りのロール・ツー・ロールの工程中で連続成膜されていてもよい。
【0050】
図4は、このようにして得られるブラックマトリックスパターン及びREDの各色の着色パターンが形成されたプラスチックフィルムの要部の断面図である。
図4によれば、格子状に形成されたブラックマトリックスパターン5により囲まれるマス目の各領域に、赤色パターン4、緑色パターン6、青色パターン7の順に周期的に形成されている。
【0051】
更に、プラスチックフィルム3上に形成されたブラックマトリックスパターン5及びRGBの着色パターン4、6、7の上に、透明導電層やカラムスペーサを設けてもよい。
前記透明導電層は、例えばロール・ツー・ロール方式のスパッタリングや蒸着などにより形成される。透明導電層としては、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の薄膜で形成される薄膜が挙げられるが、材質はこれに限定されるものではない。
【0052】
<剥離工程>
前記剥離工程は、パターン形成されたフレキシブル基板をハード基板から剥離する工程である。
【0053】
前記剥離工程において、パターン形成されたフレキシブル基板とハード基板からなる積層体を熱水中に浸漬することにより、熱膨張係数の違いが生じて仮留剤層が歪んで、パターン形成されたフレキシブル基板をハード基板から容易に剥離することができる。前記熱水の温度は、50℃〜100℃であることが好ましい。
この剥離工程により、パターン形成されたフレキシブル基板が得られる。
【0054】
ここで、図1(A)〜(D)は、本発明のフレキシブル基板へのパターン形成方法(カラーフィルタの作製)を示す工程図である。
図1(A)に示すように、ハード基板1上に、仮留剤を塗布し該仮留剤層2を形成し、該仮留剤層2上に、フレキシブル基板(プラスチックフィルム)3を重ね合わせて、紫外線照射することにより、ハード基板(ガラス基板)1とフレキシブル基板3を仮留する。
次に、図1(B)に示すように、ハード基板1上に仮留されたフレキシブル基板3を、仮留剤のガラス転移温度以上フレキシブル基板を構成するポリマーのガラス転移温度以下の温度でアニール処理する。
次に、図1(C)に示すように、フレキシブル基板3上に、フォトリソグラフィーによりブラックマトリクス(BM)パターン5、RGBパターン4、6、7を形成する。
次に、パターン形成されたフレキシブル基板とハード基板の積層体を熱水中に浸漬することにより、パターン形成されたフレキシブル基板とハード基板から剥離した。以上により、フレキシブルなカラーフィルタが作製できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
厚み0.7mmのガラス基板上に、仮留剤(Photo Bond 830、サンライズMSI株式会社製にアクリル酸を1質量%添加した溶液、硬化後ガラス転移温度=98℃)を塗布し、該仮留剤層上に、厚み0.1μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(テオネックス(登録商標)、帝人デュポン株式会社製、ガラス転移温度=156℃)を重ね合わせて、紫外線照射することにより、ガラス基板とポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを仮留した。
次に、ガラス基板上に仮留されたポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを、オーブン(クリーンオーブンDT410、ヤマト科学株式会社製)を用いて、150℃で30分間アニール処理した。
【0057】
次に、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム上に、以下のようにしてフォトリソグラフィーによりブラックマトリクス(BM)パターンを形成した。
黒色レジスト液(CK−8400、富士フイルムエレクトロマテリアルズ株式会社製)をガラス基板上にスピンコーターを用いて乾燥膜厚が1.0μmとなるように塗布し、120℃で2分間乾燥させて、黒色の塗膜を形成した。
【0058】
次に、露光装置を使用して、塗膜に365nmの波長で100μmのマスクを通して200mJ/cmの露光量で照射した。照射後、1.0%のCDK−1(富士フイルムエレクトロマテリアルズ株式会社製)現像液を使用して、26℃で100秒間現像した。引き続き、流水で20秒間リンスした後、エアナイフで乾燥させ、180℃で30分間熱処理を行って黒色のパターン像(BMマトリックス)を形成した。
【0059】
次に、以下のようにして、フォトリソグラフィーによりRGBパターンを形成した。
緑色レジスト液(CGX−2420、富士フイルムエレクトロマテリアルズ株式会社製)をガラス基板の上にスピンコーターを用いて塗布し、100℃で2分間乾燥させて緑色の塗膜を形成した。
次に、露光装置を使用して、塗膜に365nmの波長で100μmのマスクを通して60mJ/cmの露光量で照射した。照射後、1.0%のCDK−1(富士フイルムエレクトロマテリアルズ株式会社製)現像液を使用して、26℃で100秒間現像した。引き続き、流水で20秒間リンスした後、エアナイフで乾燥させ、熱処理を行って緑色のパターン像(緑色画素)を形成した。
この操作を赤色レジスト液(CRX−2420、富士フイルムエレクトロマテリアルズ株式会社製)と青色レジスト液(CBX−2420、富士フイルムエレクトロマテリアルズ株式会社製)についても同様に、同一のガラス基板に対して行い、順次赤色のパターン像(赤色画素)、及び青色のパターン像(青色画素)を形成し、カラーフィルタを作製した。
【0060】
次に、カラーフィルタとガラス基板の積層体を熱水(70℃)中に3分間及び冷水(23℃)中に5分間浸漬することを3回繰り返すことにより、カラーフィルタをガラス基板から剥離した。以上により、実施例1のフレキシブルなカラーフィルタを作製した。
【0061】
(実施例2)
実施例1において、アニール処理温度を150℃から100℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のフレキシブルなカラーフィルタを作製した。
【0062】
(比較例1)
実施例1において、仮留剤による仮留を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のフレキシブルなカラーフィルタを作製した。
【0063】
(比較例2)
実施例1において、アニール処理温度を150℃から27℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2のフレキシブルなカラーフィルタを作製した。
【0064】
(比較例3)
実施例1において、アニール処理温度を150℃から70℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例3のフレキシブルなカラーフィルタを作製した。
【0065】
次に、作製した各フレキシブルなカラーフィルタについて、以下のようにして、剥離後の長さ変化率、及び反り量を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
<剥離工程後の長さ変化率の測定>
露光に用いたマスクの所定の2点間の距離の設計値A(100mm)を基準として、作製したフレキシブルなカラーフィルタにおける該2点間の距離Bを測定し、前記設計値に対する変化率(%)〔(B−A)/A×100〕を算出した。
【0067】
<反り量の測定>
基板の中央に作製したフレキシブルなカラーフィルタを水平面に置き、該カラーフィルタの上面に100mm角で厚さ0.7mmの白板ガラスを載せた。該白板ガラスの4隅のうち1つの隅を水平面上に固定し、他の3隅の水平面からの高さを測定し、最も水平面から距離が大きい値からガラスの厚みを引いた値を反り量(単位:mm)とした。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のパターン形成方法は、フレキシブル基板上へのパターン形成の際の寸法安定性を向上させることができるので、例えばフレキシブルなカラーフィルタ及びTFT等の機能性フレキシブル基板を形成するのに好適である。
【符号の説明】
【0070】
1 ガラス基板
2 仮留剤層
3 フレキシブル基板
4 赤色パターン
5 ブラックマトリックスパターン
6 緑色パターン
7 青色パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板を寸法安定なハード基板に仮留剤で仮留めする仮留工程と、
前記仮留剤のガラス転移温度以上、前記フレキシブル基板を構成するポリマーのガラス転移温度以下の温度で前記フレキシブル基板をアニール処理するアニール処理工程と、
前記フレキシブル基板上にフォトリソグラフィーによりパターンを形成するパターン形成工程と、
前記パターン形成したフレキシブル基板を前記ハード基板から剥離する剥離工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
剥離工程において、パターン形成されたフレキシブル基板とハード基板の積層体を熱水中に浸漬することにより、パターン形成したフレキシブル基板をハード基板から剥離する請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
形成されるパターンが、カラーフィルタ及びTFTのいずれかである請求項1から2のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項4】
フレキシブル基板を構成するポリマーが、ポリエチレンナフタレート(PEN)である請求項1から3のいずれかに記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−225853(P2010−225853A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71616(P2009−71616)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】