説明

フレキシブル配線板

【課題】 例え結露等が生じても、マイグレーションを有効に抑制防止することのできるフレキシブル配線板を提供する。
【解決手段】 可撓性を有する絶縁性のフィルム1と、フィルム1上に並べて印刷形成される複数の銀ライン2とを備える。そして、フィルム1上に、複数の銀ライン2の一部を覆うレジスト層3を積層形成して複数の銀ライン2の残部を露出領域とし、露出領域の一部を複数のカーボン被膜4により被覆するとともに、露出領域の残部を接続部5とする。イオン化しにくいカーボン皮膜4を形成するので、例え結露が生じても銀イオンの溶出を有効に抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器や電子機器の回路接続等に使用されるフレキシブル配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフレキシブル配線板は、図示しないが、絶縁性のフィルムと、このフィルムの表面上に並べて形成される複数の銀ラインと、この複数の銀ラインを被覆するレジスト層とを備え、このレジスト層から露出した複数の銀ラインの露出領域が接続部とされており、パーソナルコンピュータ、携帯電話、液晶パネル、回路基板等からなる複数の電子機器の回路接続に使用されている。
【0003】
ところで、フレキシブル配線板も工業製品であるから、長時間使用していると故障を引き起こすことがあるが、その故障原因の一つとしてマイグレーションがあげられる。マイグレーションは、エレクトロマイグレーション(eletromigration)ともいい、電界の影響により金属成分が非金属媒体の上や中を横切って移動する現象をいう。このようなマイグレーションは、高湿時や結露時に、フレキシブル配線板に電圧が印加されることにより発生し、銀ラインの銀イオンを溶出させ、この銀イオンの溶出により短絡事故が生じてシステム破壊を招くおそれがある。
【0004】
係るマイグレーションに伴う短絡事故の発生を防止するため、従来においては、銀ラインを形成する銀系ペーストに銅粉や亜鉛粉等の金属粉を添加して銀イオンの溶出を抑制する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8‐222839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のフレキシブル配線板は、以上のようにマイグレーション防止のため、銀系ペーストに金属粉を添加して銀イオンの溶出を抑制する方法が提案されているが、結露による水滴付着の場合には、殆ど効果がないという大きな問題がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、例え結露等が生じても、マイグレーションを有効に抑制防止することのできるフレキシブル配線板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、可撓性を有する絶縁性の基材と、この基材上に形成される導電ラインとを含んでなるものであって、
基材上に、導電ラインの一部を覆う絶縁層を形成して導電ラインの残部を露出領域とし、この露出領域の一部をマイグレーション防止層により被覆したことを特徴としている。
【0008】
なお、露出領域の一部を、導電ラインの端部、及び又は導電ラインと絶縁層との境界付近とすることが好ましい。
また、マイグレーション防止層をカーボン被膜とすることが好ましい。
さらに、露出領域の残部を接続部とすることができる。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における基材の材質、厚さ、大きさ等は、必要に応じて変更することができる。導電ラインは、複数が主ではあるが、必要に応じて増減することができる。この導電ラインとしては、導電インクを用いた金ライン、銀ライン、銅ライン、ニッケルライン等が使用される。また、絶縁層は、透明でも良いし、不透明でも良い。
【0010】
マイグレーション防止層は、単数複数いずれでも良い。このマイグレーション防止層は、固体マイグレーション(狭義のマイグレーション)を防止するものでも良いし、イオンマイグレーションを防止するものでも良い。境界付近には、境界と、境界の近傍のいずれもが含まれる。接続部には、異方導電接着剤を塗布しても良いし、そうでなくても良い。さらに、フレキシブル配線板は、ヒートシールコネクタとして電気機器や電子機器の回路接続等に使用することができる。
【0011】
本発明によれば、導電ラインの露出領域をマイグレーション防止層によりコートするので、導電ラインに水分が付着するのを抑制できる。特に、マイグレーションの発生しやすい導電ラインの端部、及び又は導電ラインと絶縁層との境等をイオン化しにくいマイグレーション防止層によりコートするので、例え結露が発生しても、導電ラインに水分が付着するのを抑制できる。
また、導電ラインの接続部に、抵抗値の高いカーボン等からなるマイグレーション防止層が重ねて形成されることがないので、低抵抗を維持しつつ接続の安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例え結露等が生じても、マイグレーションを有効に抑制防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるフレキシブル配線板は、図1や図2に示すように、可撓性を有するフィルム1と、このフィルム1に並設される複数の銀ライン2とを備え、フィルム1に、複数の銀ライン2の一部を覆う絶縁性のレジスト層3を積層形成して複数の銀ライン2の残部を露出領域とし、この露出領域に複数のカーボン被膜4と接続部5とを設けるようにしている。
【0014】
フィルム1は、例えば耐熱性、耐薬品性、電気特性等に優れる絶縁性のポリエステルを使用して厚さ20〜80μmの平面矩形に成形される。
複数の銀ライン2は、例えばフィルム1の表面に導電性を有する銀レジン系のペーストがスクリーン印刷され、乾燥硬化することにより、フィルム1の表面に並列にパターン形成されており、各銀ライン2がフィルム1の長手方向に直線的に指向する。各銀ライン2は例えば厚さ5〜35μmの帯形に形成され、隣接する他の銀ライン2との間に隙間が形成される。
【0015】
レジスト層3は、例えばポリメチルメタクリレート等を使用して平面矩形に印刷形成され、フィルム1の表面上に積層形成されるとともに、複数の銀ライン2の略中央部を被覆しており、複数の銀ライン2の略中央部以外の残部を露出させて露出領域とする。この露出領域の一部である複数の銀ライン2の両端部上には、表面改質性、絶縁性、密着性に優れる薄いカーボン皮膜4がそれぞれスクリーン印刷される。
【0016】
カーボン皮膜4は、例えば厚さ5〜30μm、好ましくは5〜15μmの帯形に形成され、複数の銀ライン2に直交配置される。露出領域の残部は電子機器と接続する接続部5とされ、この接続部5上に異方導電接着剤が塗布されることにより、異方導電接着層6が薄く積層形成される。
【0017】
異方導電接着剤は、絶縁性の樹脂接着剤中に金属粉等の導電粒子が混合・分散され、一定の圧力を加えて接着されることにより、接着面に対して垂直方向(接続方向)に導通性、水平方向に絶縁性を発揮するよう機能する。絶縁性の樹脂接着剤としては、例えばエポキシ系やポリイミド系等が使用され、導電粒子としては、例えばAg、Cu、Au、カーボン、グラファイト等が使用される。
【0018】
上記構成によれば、銀マイグレーションの発生しやすい各銀ライン2の端部に、イオン化しにくいカーボン皮膜4をコートするので、例え結露発生の場合でも、銀ライン2に水滴が付着することがなく、銀イオンの溶出をきわめて有効に抑制することができる。したがって、銀マイグレーションの発生を防いで短絡事故に伴うシステム破壊を有効に防止することができる。
【0019】
さらに、銀ライン2の接続部5には、異方導電接着剤のみが塗布され、抵抗値の高いカーボン皮膜4が何ら存在しないので、電子機器の接続の際、導通の抵抗値が高くなることがない。したがって、電子機器の接続の際、低抵抗を維持しつつ接続安定性を著しく向上させることが可能になる。
【0020】
次に、図3、図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、露出領域の一部である各銀ライン2とレジスト層3との境界付近に、表面改質性、絶縁性、密着性に優れる薄いカーボン皮膜4をスクリーン印刷するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様である。
本施形態によれば、銀マイグレーションの発生しやすい銀ライン2とレジスト層3との境界に、イオン化しにくいカーボン皮膜4をコートするので、銀ライン2に水滴が付着することがなく、銀イオンの溶出をきわめて有効に抑制することができる。
【0021】
次に、図5、図6は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、露出領域の一部である複数の銀ライン2の両端部、及び各銀ライン2とレジスト層3との境界付近に、表面改質性、絶縁性、密着性に優れる薄いカーボン皮膜4をそれぞれスクリーン印刷するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様である。
本施形態によれば、第1、第2の実施形態を組み合わせるので、銀ライン2に水滴が付着することがなく、銀イオンの溶出をさらに有効に抑制することができる。
【0022】
次に、図7、図8は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、露出領域の一部である電圧の加わる銀ライン2の両端部、及び電圧の加わる銀ライン2とレジスト層3との境界付近に、薄いカーボン皮膜4をそれぞれスクリーン印刷するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様である。
本施形態によれば、電圧の印加される銀ライン2の両端部、及びその銀ライン2とレジスト層3との境界付近のみに、イオン化しにくいカーボン皮膜4をコートするので、材料の節約や製造工程の簡素化が大いに期待できるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るフレキシブル配線板の実施形態を示す平面説明図である。
【図2】本発明に係るフレキシブル配線板の実施形態を示す断面説明図である。
【図3】本発明に係るフレキシブル配線板の第2の実施形態を示す平面説明図である。
【図4】本発明に係るフレキシブル配線板の第2の実施形態を示す断面説明図である。
【図5】本発明に係るフレキシブル配線板の第3の実施形態を示す平面説明図である。
【図6】本発明に係るフレキシブル配線板の第3の実施形態を示す断面説明図である。
【図7】本発明に係るフレキシブル配線板の第4の実施形態を示す平面説明図である。
【図8】本発明に係るフレキシブル配線板の第4の実施形態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 フィルム(基材)
2 銀ライン(導電ライン)
3 レジスト層(絶縁層)
4 カーボン皮膜(マイグレーション防止層)
5 接続部
6 異方導電接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する絶縁性の基材と、この基材上に形成される導電ラインとを含んでなるフレキシブル配線板であって、
基材上に、導電ラインの一部を覆う絶縁層を形成して導電ラインの残部を露出領域とし、この露出領域の一部をマイグレーション防止層により被覆したことを特徴とするフレキシブル配線板。
【請求項2】
露出領域の一部を、導電ラインの端部、及び又は導電ラインと絶縁層との境界付近とした請求項1記載のフレキシブル配線板。
【請求項3】
マイグレーション防止層をカーボン被膜とした請求項1又は2記載のフレキシブル配線板。
【請求項4】
露出領域の残部を接続部とした請求項1、2、又は3記載のフレキシブル配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−32782(P2006−32782A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211786(P2004−211786)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】