説明

フロアパネル構造

【課題】荷物などにより下向きの荷重が作用しても、表皮が剥がれを起こすことのないフロアパネルを提供する。
【解決手段】自動車の荷室10に設けられ、固定基材16と該固定基材16に対して回動可能な可動基材18とからなるフロアパネル構造であって、固定基材16と可動基材18との間には、固定基材16の上面26と可動基材18の下面27とに接合される連結体28が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用のフロアパネル構造、特に、車両後部の荷室のフロアパネル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ワゴン車などの車両にあっては、リヤシートを前側に倒れるようにしてフロア下に格納できる構造のものがある。このような構造のものにおいては、格納されたリヤシートのシートバック背面とその後方の荷室底壁との平坦化を図るために、シートバックの下端部と荷室フロアとの隙間を閉塞するフロアパネルが用いられている。このフロアパネルは荷室後部の第1のフロアと、この第1のフロアの前端部に回動可能に支持され、格納されたシートのシートバックとの間に跨る第2のフロアとで構成され、このフロアパネル上面にはこれを覆う表皮が接着等により取り付けられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−250431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、例えば、第2のフロアの上面に荷物などによる荷重が作用すると、比較的剛性の点で不利な第2のフロアが第1のフロアに対して下側に下がる方向に変位し、これにより第2のフロアの後端部で表皮が剥がれを起こすという問題がある。つまり第2のフロアが下側に向かって荷重を受けると、そのままの位置にとどまろうとする第1のフロアの表皮に対して第2のフロアの表皮が剥離方向の力を受けるため、第2のフロアの表皮が剥がれを起こすのである。
【0004】
そこで、この発明は、荷物などにより下向きの荷重が作用しても、表皮が剥がれを起こすことのないフロアパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、車両(例えば、実施形態における自動車1)の荷室(例えば、実施形態における荷室10)に設けられ、固定基材(例えば、実施形態における固定基材16)と該固定基材に対して回動可能な可動基材(例えば、実施形態における可動基材18)とからなるフロアパネル構造であって、前記固定基材と前記可動基材との間には、前記固定基材の上面(例えば、実施形態における上面26)と前記可動基材の下面(例えば、実施形態における下面27)とに接合される連結体(例えば、実施形態における連結体28)が設けられていることを特徴とする。
このように構成することで、可動基材側に荷重が作用した場合には、連結体を介して固定基材にも荷重が分担されると共に、可動基材側の下方への変位が連結体により阻止される。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記固定基材及び前記可動基材の上部に表皮(例えば、実施形態におけるフロアマット35)が接合され、前記連結体の後部(例えば、実施形態における後半部29)は、前記表皮及び前記固定基材にて挟持されていることを特徴とする。
このように構成することで、可動基材に荷重が作用した場合に、連結体の前部から連結体の後部に荷重が作用するが、連結体の後部は表皮及び前記固定基材にて挟持され、強度的に有利な剪断方向で力を受けることができる。
【0007】
請求項3に記載した発明は、前記連結体は、前記固定基材と前記可動基材との間の屈曲部(例えば、実施形態における屈曲部30)において、前記可動基材のみと接合していることを特徴とする。
このように構成することで、固定基材とは接合しないことで、可動基材を回動させる際に抵抗を生じさせることを防止できる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、可動基材側に荷重が作用した場合には、連結体を介して固定基材にも荷重が分担されると共に、可動基材側の下方への変位が連結体により阻止されるため、容易にフロアパネルの耐荷重性を高めることができる効果がある。
請求項2に記載した発明によれば、可動基材に荷重が作用した場合に、連結体の前部から連結体の後部に荷重が作用するが、連結体の後部は表皮及び前記固定基材にて挟持され、強度的に有利な剪断方向で力を受けることができるため、一層強固に連結体を保持することができる効果がある。
請求項3に記載した発明によれば、固定基材とは接合しないことで、可動基材を回動させる際に抵抗を生じさせることを防止できるため、良好な操作性が得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、2に示すように、ワゴン車等の車両としての自動車1(車両)には、左右の前席シート2,2と後席シート3,3とが配置されている。前席シート2,2が配置されたフロントフロア4は、このフロントフロア4に対して段差5をもって立ち上がるリヤフロア6に接続されている。後席シート3,3は各々シートクッション7にシートバック8を重ね合わせるようにして折り畳まれた状態でフロントフロア4上に格納され、リヤフロア6の上面と格納された後席シート3のシートバック8の背面9とで平坦な荷室10が形成されるようになっている。
【0010】
図3、図4に示すように、リヤフロア6には中央部にスペアタイヤ等の収納凹部11が形成され、リヤフロア6の両側部はリヤインナパネル12,12及びリヤホイルハウス13,13に接続されている。このリヤフロア6の上部にはスペアタイヤ等の収納凹部11の両側部に棚部14,14が形成され、これら棚部14,14に収納凹部11を閉塞するようにして荷室10の底壁を構成するフロアボード15が載置されるようになっている。
【0011】
フロアボード15の前端には、左右のリヤホイルハウス13,13の前部に跨る位置に車幅方向に延びる固定基材16がビスあるいはクリップにより固定されている。
尚、図3、図4中17は固定基材16に取り付けられたフロアボード15の取付孔を示す。
そして、この固定基材16の前端部側には、可動基材18,18が載置され、可動基材18はリヤフロア6面に対して後端部を中心に上下方向回動可能に設けられている。
各可動基材18は、折り畳まれた後席シート3のシートバック8の下端部と固定基材16の前端部との間に形成された空間部分19を上側から覆うようにして載置されたものである。
【0012】
可動基材18は、左右の各後席シート3,3に対応して車幅方向に2分割されて左の可動基材18と右の可動基材18とで構成されており、左の可動基材18及び右の可動基材18の前端は、左の後席シート3と、右の後席シート3のシートバック8の下部の背面9に重なるようにして配置されている。そして、右の可動基材18には1箇所、左の可動基材18は2箇所にトーションスプリング20を主体とする付勢体21が設けられ、この付勢体21により可動基材18が固定基材16に対して後席シート3の格納方向に付勢されるようになっている。付勢体21はトーションスプリング20の一端22が固定基材16に固定され、トーションスプリング20の他端23が、可動基材18の上面にビス25により固定された支持プレート24上に固定されている。尚、固定基材16にも支持プレートを設けてもよい。
【0013】
そして、固定基材16と可動基材18との間には両者に跨るようにして、固定基材16の上面26と可動基材18の下面27とに接合される樹脂製の不織布等からなる矩形の連結体28が設けられている。この連結体28は左の後席シート3では付勢体21を挟むようにして2箇所、右の後席シート3では付勢体21を挟むようにして3箇所に各々設けられている。
【0014】
ここで、各連結体28は各々大きさは異なるが、基本的機能は同様であるので、図5に右の後席シート3の連結体28を例にして説明する。同図に示すように、固定基材16の上面26には接着等により連結体28の後半部29(後部)が接合されている。そして、連結体28の後半部29はその前側に設けられクランク状に形成された屈曲部30を介して前半部31に一体形成されており、この前半部31が固定基材16と可動基材18との間から下側に向かう縦壁32を介して落とし込まれ、可動基材18の下面27に接着により接合されている。
また、後半部29の前側と前半部31の後側と縦壁32とで構成された屈曲部30においては、固定基材16の前端面33は縦壁32に接着されておらず、可動基材18の後端面34は縦壁32に接着されている。したがって、連結体28の屈曲部30は可動基材18側とのみ接合されていることとなる。
【0015】
そして、可動基材18と固定基材16を備えたフロアボード15に渡る部位に、リヤフロア6を覆うようにしてフロアマット35(表皮)が敷設され、フロアマット35は可動基材18及び固定基材16の上面に接着材により接合されている。したがって、前記連結体28の後半部29はフロアマット35と固定基材16との間に挟持されることとなる。
【0016】
上記実施形態によれば、図1に示すように、後席シート3を着座姿勢にすべく後席シート3のシートバック8を立ち上げるようにして回動すると、図5に鎖線で示すように、固定基材16に対して連結体28を介して接合された可動基材18が、後端に設けた連結体28を介して右回りに回動する。
このとき可動基材18は図4に示すトーションスプリング20により後席シート3の格納方向に付勢されているため、可動基材18がシートバック8の背面9に当接した状態に保持される。よって、荷室10のフロアボード15の前端側から後席シート3のシートバック8の背面9に対してフロアマット35は滑らかに沿うようにして位置することとなる。このとき、連結体28の縦壁32は可動基材18の後端面34に接着されているが、固定基材16の前端面33には接着されていないため、可動基材18の回動動作はスムーズに行われる。
【0017】
一方、図2に示すように後席シート3を前側に折り畳みフロントフロア4上に格納すると、図5に実線で示すように、後半部29がフロアマット35と固定基材16にて挟持された連結体28は、固定基材16に対してずれることなく、後席シート3のシートバック8の背面9に沿って水平となり、フロアマット35により平坦な荷室10の底壁が形成される。
【0018】
ここで、図3に示すように、後席シート3の格納状態で、可動基材18の上に荷重が作用した場合には、この荷重は連結体28を介して固定基材16にも荷重分担されると共に連結体28の縦壁32により下方への変位が阻止されるため、容易に荷室10の底壁の耐荷重性を高めることができる。よって、フロアマット35が剥がれを起こすようなことはない。
特に、固定基材16側では連結体28はフロアマット35と固定基材16とに挟持され両者に接着されているため、連結体28の後半部29に作用する引っ張り方向の荷重は固定基材16側では強度的に有利な剪断方向の荷重として作用し、一層強固に連結体28を保持することができる。
【0019】
そして、連結体28は、固定基材16と可動基材18との間の屈曲部30において、可動基材18のみと接着材により接合し固定基材16とは接合していないため、可動基材18を回動させる際に抵抗を生じさせることを防止できる。よって、後席シート3の起立操作を行う場合に操作性を損なう力として作用することがなく良好な操作性が得られる。
【0020】
尚、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、3列シートを備えた車両の3列目シート下のフロアにも適用できる。また、連結体28は付勢体21を挟んで車幅方向に分割して配置されているが、付勢体21を設けずに車幅方向に延在して設けてもよく、付勢体21の部分にだけ開口を形成して、車幅方向に延在するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態の車両のシート起立状態を示す側面図である。
【図2】この発明の実施形態の車両のシート格納状態を示す側面図である。
【図3】シート格納状態を示す荷室の斜視図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 自動車(車両)
10 荷室
16 固定基材
18 可動基材
26 上面
27 下面
28 連結体
29 後半部(後部)
30 屈曲部
35 フロアマット(表皮)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室に設けられ、固定基材と該固定基材に対して回動可能な可動基材とからなるフロアパネル構造であって、
前記固定基材と前記可動基材との間には、前記固定基材の上面と前記可動基材の下面とに接合される連結体が設けられていることを特徴とするフロアパネル構造。
【請求項2】
前記固定基材及び前記可動基材の上部に表皮が接合され、前記連結体の後部は、前記表皮及び前記固定基材にて挟持されていることを特徴とする請求項1記載のフロアパネル構造。
【請求項3】
前記連結体は、前記固定基材と前記可動基材との間の屈曲部において、前記可動基材のみと接合していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフロアパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−237806(P2007−237806A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60070(P2006−60070)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】