説明

フードモール取付構造

【課題】自動車のフロントフードに設けるフードモールの取付構造において、コストを増加させることなく、フードアウタとの合わせ部の剛性を確保し、ばらつきを吸収することのできるフードモールの取付構造を提供する。
【解決手段】フードアウタ2とフードインナ3とからなるフロントフード1の先端縁部に、車幅方向に延設されたフードモール4を取り付けるフードモールの取付構造であって、前記フードモール4は、該モールの先端部が上方に立ち上がって形成され、前面が化粧面であるモール本体10と、前記モール本体の下端部から後方に延設され、前記フードインナに連結部材8,9を介して結合される結合部13と、前記モール本体の裏側近傍において上方に立設された複数の爪状突起11とを有し、前記モール本体の裏面を前記フードアウタの先端縁部と合わせた状態で、前記複数の爪状突起は、前記フードインナに形成された複数の係止孔5aにそれぞれ係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントフードの先端縁部に取り付けられるフードモールの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントフードの先端縁部に設けられるフードモールの取付構造にあっては、従来、図4の断面図に示すように、上方に立ち上がって形成されたモール本体50の裏面をフードアウタ60の先端縁部に合わせ、モール本体50の下端部から後方に延設された部分をフードインナ61に対し連結部材62(図では、スクリューグロメットとスクリューにより固定)を用いて固定している。
【0003】
しかしながら、このような片持ちの取付構造にあっては、モール本体50とフードアウタ60との合わせ部の係止状態が弱く、十分な剛性を確保できない上、その合わせ部がばらつき、口開きが生じるという課題があった。
このような課題を解決するものとして、図示するようにモール本体50とフードアウタとの間に、ゴム等の弾力性を有する樹脂からなるプロテクタ部材65を設ける方法がある(例えば特許文献1に開示されるラバー製受け部材71)。このプロテクタ部材65を設けることにより、前記合わせ部のばらつきが吸収される上、モール本体50によるフードアウタ60表面への傷つけが防止される。
【特許文献1】特開2005−349855
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのようにフードモールの取り付けに、別部材であるプロテクタ部材65を用いると、組立工数が増加し、コストが嵩むという課題があった。
【0005】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、自動車のフロントフードの先端縁部に設けるフードモールの取付構造において、コストを増加させることなく、フードアウタとの合わせ部の剛性を確保し、ばらつきを吸収することのできるフードモールの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係るフードモールの取付構造は、フードアウタとフードインナとからなるフロントフードの先端縁部に、車幅方向に延設されたフードモールを取り付けるフードモールの取付構造であって、前記フードモールは、該モールの先端部が上方に立ち上がって形成され、前面が化粧面であるモール本体と、前記モール本体の下端部から後方に延設され、前記フードインナに連結部材を介して結合される結合部と、前記モール本体の裏側近傍において上方に立設された複数の爪状突起とを有し、前記モール本体の裏面を前記フードアウタの先端縁部と合わせた状態で、前記複数の爪状突起は、前記フードインナに形成された複数の係止孔にそれぞれ係止することに特徴を有する。
【0007】
このようにフードモールの先端部に設けられたモール本体は、その裏面近傍に一体形成により立設された爪状突起が、フードインナに形成された係止孔に係止することによりフードインナに対し固定される。即ち、従来のように別部材を介在させることなくモール本体をフロントフードに確実に固定することができる。
したがって、モール本体の剛性を確保し、フードアウタに対する合わせ部分のばらつきを吸収することができる上、別部材を用いる必要がないため、コストを低減することができる。
【0008】
また、前記フードインナに形成された係止孔は、該フードインナの所定領域を下方に切り起こした切り起こし部に形成されていることが望ましい。
このように切り起こし部を形成し、そこに係止孔を設けることにより、爪状突起とフードインナとの接触面積をより大きく確保することができ、前後方向からの力に対し耐久性を持たせることができる。
また、前記フードモールにおいて上方に立設された爪状突起には、縦方向にリブが形成されていることが望ましい。
このようにリブを形成することにより、爪状突起の強度を向上し、また、モール本体のがたつきを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動車のフロントフードの先端縁部に設けるフードモールの取付構造において、コストを増加させることなく、フードアウタとの合わせ部の剛性を確保し、ばらつきを吸収することのできるフードモールの取付構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るフードモールの取付構造の実施の形態について図面に基づき説明する。図1は本発明のフードモールの取付構造を適用した車両フロント部の一部破断斜視図であり、図2は図1のA−A矢視断面図(側部断面図)である。
また、図3は、図1、図2に示すフードモールの斜視図である。
【0011】
図1、図2に示すように、フロントフード1は、外装をなすフードアウタ2と、その裏側に設けられたフードインナ3とからなる。フードアウタ2とフードインナ3との間には、空間S1が形成されている。図2に示すように、フロントフード1の先端縁部にあっては、フードインナ3の先端縁部3aが、フードアウタ2の先端縁部にヘミングされて挟み込まれ、ヘミング部2aが形成されて接合されている。このヘミング部2aにおけるフードインナ3との継ぎ目は、錆止めを目的とするシーリング材7によって埋められている。
【0012】
また、フードインナ3の前部上面側(空間S1側)には、車両幅方向に沿って、所定間隔ごとに複数(例えば6箇所)の凹部3cが形成されている。この凹部3cは、その底部が平坦に形成され、略中央にフードモール4との連結に利用される円形の貫通孔3bが形成されている。
さらに、フードインナ3において、各凹部3cよりも前方には、所定領域を下方に切り起こした切り起こし部5が、車両幅方向に沿って複数(例えば5箇所)設けられている。この切り起こし部5には、所定の形状、大きさの係止孔5aが形成されている。
【0013】
一方、フードモール4は、図3に示すように車幅方向に延びる長尺形状の略板状体である。このフードモール4は、該モール4の先端部が上方に立ち上がって形成され、前面が化粧面であるモール本体10と、このモール本体10の下端部から後方に延設され、フードインナ3の前記凹部3cに結合される結合部13とを有している。
【0014】
前記モール本体10の裏側近傍には、図示するように、車両幅方向に沿って所定間隔ごとに複数の爪状突起11が、一体形成により立設され、これら複数の爪状突起11は、前記フードインナ3の切り起こし部5に1対1に対応して設けられている。即ち、爪状突起11の先端には、前記切り起こし部5の係止孔5aに係止可能な爪部11aが設けられ、フードモール4の取付時にそれらが係合するようになされている。
より具体的には、図2に示すように、爪状突起11が、ヘミング部2aと切り起こし部5との間に下方から挿入されると、その爪部11aが切り起こし部5の係止孔5aに係止するように構成されている。このため、爪部11aは後方に向けて突起している。
【0015】
また、フードモール4の結合部13には、円形の貫通孔4aが形成されており、この貫通孔4aはフードインナ3に形成された貫通孔3bと、その形状が略同一に形成され、フードモール4が取付位置にあるときに、それら貫通孔4a、3bの水平方向の位置が一致し、上下に連通するようになされている。
【0016】
また、前記爪状突起11において、爪部11aが形成された側とは反対側の面には、爪状突起11の強度向上、及びモール本体10のがたつき防止のために、縦方向にリブ12aが形成されている。また、このリブ12aは、フードモール4(モール本体10)の取付時に、正しい位置に導くガイド部材としても機能する。
尚、図示するように車幅方向に延びるモール本体10の裏面には、その補強のために、複数のリブ12bが所定間隔ごとに形成されている。
【0017】
このように構成されたフードモール4をフロントフード1に取り付ける場合、先ず、フードモール4のモール本体10の裏面がフードアウタ2の先端縁部(ヘミング部2a)表面に密着するよう位置合わせを行う。
このとき、図2に示すように、モール4の各爪状突起11がフードインナ3の各切り起こし部5の位置に対応しており、各爪状突起11の爪部11aが切り起こし部5の孔5aに係止し、モール本体10がフードアウタ2に対し強固に固定される。
【0018】
さらに説明すると、各爪状突起11は、図2に示すように、ヘミング部2aと切り起こし部5との間の間隙S2に挿入されて爪部11aが係止孔5aに係止する。
ここで、爪状突起11の先端部は先細り形状に形成され、前記のようにガイド部材としても機能するリブ12aが設けられているため、前記間隙S2への爪状突起11の挿入を容易に行うことができる。
【0019】
前記のようにモール本体10の固定がなされると、フードインナ3に形成された貫通孔3bと、フードモール4の結合部13に形成された貫通孔4aとの位置が一致するようになされている。そこで、上下に連通する貫通孔3b,4aにスクリューグロメット8を挿嵌し、さらに螺子切りされたスクリュー9をスクリューグロメット8に押し込む。これによりフードモール4の結合部13がフードインナ3に対し固定される。
【0020】
以上のように本実施の形態によれば、フードモール4の先端部に設けられたモール本体10は、その裏面近傍に一体形成により立設された爪状突起11が、フードインナ3に形成された係止孔5aに係止することによりフードインナ3に対し固定される。即ち、従来のように別部材を介在させることなくモール本体10をフロントフード1に確実に固定することができる。
したがって、モール本体10の剛性を確保し、フードアウタ2に対する合わせ部分のばらつきを吸収することができる上、別部材を用いる必要がないため、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明のフードモールの取付構造を適用した車両フロント部の一部破断斜視図である。
【図2】図2は、図1のA−A矢視断面図(側部断面図)である。
【図3】図3は、図1、図2に示すフードモールの斜視図である。
【図4】図4は、従来のフードモールの取付構造を適用した車両フロント部の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 フロントフード
2 フードアウタ
3 フードインナ
4 フードモール
5 切り起こし部
5a 係止孔
8 スクリューグロメット(連結部材)
9 スクリュー(連結部材)
10 モール本体
11 爪状突起
12a リブ
13 結合部
S1 空間
S2 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードアウタとフードインナとからなるフロントフードの先端縁部に、車幅方向に延設されたフードモールを取り付けるフードモールの取付構造であって、
前記フードモールは、該モールの先端部が上方に立ち上がって形成され、前面が化粧面であるモール本体と、前記モール本体の下端部から後方に延設され、前記フードインナに連結部材を介して結合される結合部と、前記モール本体の裏側近傍において上方に立設された複数の爪状突起とを有し、
前記モール本体の裏面を前記フードアウタの先端縁部と合わせた状態で、前記複数の爪状突起は、前記フードインナに形成された複数の係止孔にそれぞれ係止することを特徴とするフードモール取付構造。
【請求項2】
前記フードインナに形成された係止孔は、該フードインナの所定領域を下方に切り起こした切り起こし部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたフードモール取付構造。
【請求項3】
前記フードモールにおいて上方に立設された爪状突起には、縦方向にリブが形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたフードモール取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−126080(P2010−126080A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304927(P2008−304927)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】