説明

ブラジキニンB1受容体の拮抗薬

本発明は、原因物質としてのB1に関連した疾病または状態に対する治療薬または予防薬として使用することができる一定の生物活性ペプチドおよび接合ペプチドに関する。本発明の好ましい実施態様において、生物活性化PEG接合ペプチドを提供する。本発明の一つの側面において、本発明の薬理活性PEG接合ペプチドは、炎症または疼痛の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
米国だけでも二百万人を越える人々が、慢性疼痛により日常的に無力化している(T.M.Jessell & D.D.Kelly, Pain and Analgesia in PRINCIPLES OF NEURAL SCIENCE, third edition(E.R.Kandel,J.H.Schwartz,T.M.Jessell,ed.,(1991))。残念なことに、疼痛に対する現行の治療は、一部にしか有効でなく、ライフスタイルの変化、衰弱、および/または危険な副作用の原因となることも多い。例えば、アスピリン、イブプロフェンおよびインドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)は、炎症性疼痛に対して適度に有効ではあるが、腎毒性でもあり、高い用量は、胃腸の炎症、潰瘍形成、出血、心血管リスク増大、および錯乱を引き起こす傾向がある。オピオイドで治療した患者は、多くの場合、錯乱および便秘を経験し、長期のオピオイド使用は、耐薬性および依存症を随伴する。リドカインおよびミクセリチン(mixelitine)などの局所麻酔薬は、疼痛を抑制すると同時に正常な感覚を喪失させる。加えて、局所麻酔薬は、全身使用すると、有害な心血管作用を随伴する。このように、目下、慢性疼痛の治療には、まだ対処されていない要求がある。
【0002】
疼痛は、環境から受け取り、神経系によって伝達および翻訳されるシグナルに基づく知覚である(総説については、Millan,M.J.,The induction of pain:an integrative review.Prog Neurobiol 57:1−164(1999)参照)。熱および接触などの侵害刺激により、皮膚の特殊感覚受容器が、シグナルを中枢神経系(「CNS」)に送る。このプロセスは、侵害受容と呼ばれ、これを媒介する抹消感覚ニューロンが、侵害受容器である。侵害受容器(複数を含む)からのシグナルの強さならびにCNSによるこのシグナルの抽出および加工に依存して、人は、侵害刺激を痛いと体験することもあり、しないこともある。疼痛の知覚が、刺激の強度に対して正確に対応している場合、疼痛は、この所期の保護機能に役立つ。しかし、あるタイプの組織損傷は、この人の疼痛閾値が低下したために比較的無害な刺激を強烈に痛いと知覚する、痛覚過敏または前侵害受容(pronociception)として知られている現象を引き起こす。炎症と神経損傷の両方が、痛覚過敏を誘発し得る。従って、日焼け、変形性関節症、大腸炎、心臓炎、皮膚炎、筋炎、神経炎、炎症性腸疾患、膠原血管病(関節リウマチおよび狼瘡を含む)などのような炎症性状態に罹患している人は、多くの場合、痛覚増強を経験する。同様に、外傷、手術、切断術、膿瘍、灼熱痛、膠原血管病、脱髄疾患、三叉神経痛、癌、慢性アルコール中毒、卒中、視床痛症候群、糖尿病、ヘルペス感染症、後天性免疫不全症候群(「AIDS」)、毒素および化学療法は、過度の痛みを生じさせる神経損傷の原因となる。
【0003】
侵害受容器が正常および痛覚過敏状態下で外部シグナルを変換するメカニズムが、よりよくわかるようになると、痛覚過敏に関与するプロセスの的をしぼって、疼痛閾値の低下を抑制し、これにより、経験する疼みの量を低減することができる。
【0004】
ブラジキニン(BK)および関連ペプチド、カリジン(Lys−BK)(表3参照)は、心血管系および腎臓系でのキニンの生理作用を媒介する。しかし、これらの活性ペプチド、BKおよびカリジンは、血漿および他の生体液中のペプチダーゼにより、ならびに様々な細胞から放出されるものにより急速に分解され、このため血漿中でのBKの半減期は、約17秒であると報告されている(1)。BKおよびカリジンは、カルボキシ末端アルギニン残基を除去してArg欠失(Des−Arg)BKまたはArg欠失カリジンを生じさせるカルボキシペプチダーゼNにより、体内で急速に代謝される。Arg欠失カリジンは、人間の主キニンのうちの一つであり、人間においてキニンの異常生理作用を媒介する。非常に強い炎症誘発性ペプチドであることに加え、Arg欠失BKまたはArg欠失カリジンは、血管拡張、血管透過性および気管支収縮を誘発することが知られている(総説については、Regoli and Barabe,Pharmacology of Bradykinin and Related Kinins,Pharmacological Reviews,32(1):1−46(1980)参照)。加えて、Arg欠失BKおよびArg欠失カリジンは、炎症および炎症性疼痛の特に重要な媒介因子であり、これらの維持に関与していると思われる。Arg欠失カリジンの過剰生産が、敗血症性ショック、関節炎、アンギナおよび偏頭痛などの疼痛が顕著な特徴である状態に関係しているという証拠も相当な数ある。
【0005】
キニンの多面発現性作用を媒介する膜受容体には、B1およびB2と呼ばれる二つの異なる種類のものがある。両方の種類の受容体が、人間を含む様々な種からクローニングされ、配列されている(Menkeら,Expression cloning of a human b1 bradykinin receptor.J.Biol.Chem.269:21583−21586(1994); Hessら,Cloning and pharmacological characterization of a human bradykinin(BK−2) receptor.Biochem.Biophys.Res.Commun.184,260−268(1992))。これらは、7つの推定膜貫通領域を有する代表的なG蛋白結合受容体である。様々な組織にいおいて、BK受容体は、あらゆる既知第二メッセンジャーに結合している。BKに対してより高い親和性を有するB2受容体は、ブラジキニン受容体の最も一般的な形態であると思われる。ブラジキニンに対する本質的にすべての正常な生理反応および多数の異常生理反応が、B2受容体によって媒介される。
【0006】
この一方で、B1は、BKと比較して、より高い親和性をArg欠失BKに対して有する(表3参照)が、Arg欠失BKは、B2受容体では不活性である。加えて、B1受容体は、殆どの組織で正常には発現されない。これらの発現は、外傷または組織損傷時に、ならびに一定の種類の慢性炎症または全身性傷害の際に誘発される(Marceau,F.ら,Kinin B1 receptors:a review.Immunpharmacology,30:1−26(1995))。さらに、B1受容体により媒介される反応は、ウサギ、ラットおよびブタにおいて細菌性リポ多糖類(LPS)または炎症性サイトカインの投与後にゼロレベルからアップレギュレートされる(Marceauら,(1998))。
【0007】
このB1受容体誘発性発現に連結したキニンの疼痛誘発特性が、B1受容体を、特異的に損傷組織に向けることができ、正常な組織では最少の作用しか有さない抗炎症薬、抗侵害受容薬、抗痛覚過敏薬および鎮痛薬の開発における興味深いターゲットにしている。B1受容体をターゲットにする様々なペプチド拮抗薬が同定されているが、鎮痛治療薬としてのこれらの開発は、組織および血清ペプチダーゼによる非常に急速な分解および効率的な腎クリアランスに起因する低効能な半減期により挫折している。より最近、非天然アミノ酸置換基を有するペプチド類似体が、インビトロ安定性アッセイにおいて耐ペプチダーゼ性であると証明された(総説については、Regoliら,Bradykinin receptors and their antagonists.European Journal of Pharmacology,348:1−10(1998); Stewart,J.M.ら,Bradykinin antagonists:present progress and future prospects.Immunopharmacology,43:155−161(1999);およびStewart,J.M.ら,Metabolism− Resistant Bradykinin Antagonists:Development and Applications.Biol.Chem.,382:37−41(2001)参照)。
【0008】
ポリ(エチレングリコール)(PEG)と蛋白質の共有結合型接合は、治療用蛋白質のインビボでの循環半減期を有意に延ばすアプローチとして広く認知されている。PEG化は、主に腎クリアランスを遅らせることによりこの作用を達成する。PEG部分が、この蛋白質に相当な流体力学的半径を付加するからである(Zalipsky,S.ら,Use of functionalized poly(ethylene glycol)s for modification of polypeptides.,in Poly(ethylene glycol)chemistry:Biotechnical and biomedical applications.,J.M.Harris,Editor.(1992),Plenum Press:New York.p.347−370.)。蛋白質のPEG化により、多くの場合、付与されるさらなる利点には、溶解度上昇、蛋白分解性分解に対する耐性、および治療用ポリペプチドの免疫抗原性低下が挙げられる。蛋白質PEG化のメリットは、PEG−アデノシンデアミナーゼ(Adagen(商標)/Enzon Corp.)、PEG−L−アスパラギナーゼ(Oncaspar(商標)/Enzon Corp.)、PEG−インターフェロンα−2b(PEG−Intron(商標)/Schering/Enzon)、PEG−インターフェロンα−2a(PEGASYS(商標)/Roche)およびPEG−G−CSF(Neulasta(商標)/Amgen)を含む幾つかのPEG化蛋白質の製品化、ならびに臨床試験中の他の多数のものから明らかである。この一方で、小さな治療用ペプチドのPEG化は、ユニークな課題であり、あまり広く応用されていない。ペプチドPEG化に対する大きな障害の一つは、生物活性が最終的な接合体に保存されるという必須要件である。治療用ペプチドは、多くの場合、活性に必要な最小限の配列を含むものであり、従って、非常に小さいため、置換に対して比較的耐性がない。PEG部分は、ペプチドこれ自体より不相応に大きく、この結果、活性に必要な特異的ペプチド:受容体結合相互作用を立体的に妨げる可能性がより高い。これ故、PEG化に耐え、さらに、有用な治療薬であるに足る比活性を保持するペプチドの能力は、全く予想できず、経験的に求めなければならない(Morpurogoら,Selective Alkylation and Acylation of α and ε Amino Groups with PEG in a Somatostatin Analogue:Tailored Chemistry for Optimized Bioconjugates.Bioconjugate Chem.13:1238−1243(2002))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
明らかに、炎症および疼痛のための新しい安全で有効な治療が必要である。循環寿命を増す(クリアランスを遅らせる)こと、溶解度を上昇させること、安定性を強化すること、および/または分子の免疫抗原性を低下させることにより治療中の全身暴露によりよく耐えることができるB1特異的ペプチド拮抗薬があると、有利であろう。循環寿命増加は、低頻度の投薬方式をもたらし、低頻度の投薬スケジュールは、医師にとっても、患者にとっても、より便利であり、自己投与に関係する患者には特に有用であろう。低頻度の投薬の他の利点には、患者に導入される薬が少ないこと、およびコンプライアンスが増すことを挙げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要約)
従って、本発明の目的は、公知ペプチドB1拮抗薬と比較して明白に勝っている薬物動態特性を有し、さらに、充分にB1受容体活性に拮抗するので、炎症、疼痛および他のB1によって媒介される状態(喘息およびアレルギー性鼻炎を含むが、これらに限定されない)の治療または予防に治療上有用であるB1受容体の新規結合剤を提供することである。本発明は、こうした薬剤を、B1受容体の新規ペプチド拮抗薬および接合ペプチド拮抗薬の形態で提供する。一つの実施態様において、本発明の新規B1受容体ペプチド拮抗薬は、配列番号15から54のいずれか一つで示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0011】
本発明の一部の実施態様によると、20個の遺伝的にコードされたL−アミノ酸またはこれらの立体異性体のD−アミノ酸のいずれかから独立して選択される1個またはそれ以上、好ましくは1個から9個の間のアミノ酸残基が、配列番号15から54で示されるようなペプチド配列のいずれかの末端または両末端に結合されることとなる。
【0012】
もう一つの反応混合物において、本発明は、公知ペプチドB1拮抗薬と比較して明白に勝っている薬物動態特性を有し、さらに、充分に、このB1受容体に結合し、この活性に拮抗するため治療使用することができる、接合ペプチドも提供する。
【0013】
本発明の一つの側面は、式I:
F−[(X)−(Y] I
(式中、
Fは、XまたはYに共有結合しているビヒクルであり
(好ましくは、Fは、PEG部分またはこの誘導体である);
およびYは、各場合、独立して、それぞれ、式−L−Pおよび−L−Pのペプチドであり;
およびLは、各場合、独立して、リンカーであり;
nは、0から3であり;ならびに
およびPは、各場合、独立して、ブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である)
接合ペプチドを含む。好ましくは、PおよびPは、配列番号5から26、43から60およびこれらの誘導体のうちのいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、本発明の接合ペプチドがこの中に分散されている賦形剤担体材料を含む医薬組成物を提供することである。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、賦形剤ならびに本発明の少なくとも1つのペプチドおよび/または接合ペプチドを含む組成物の医薬的に有効な量をこの必要がある哺乳動物に投与することを含む、治療的治療方法を提供することである。
【0016】
本発明のペプチドおよび/または接合ペプチドは、炎症ならびに炎症および神経障害由来の慢性疼痛状態、敗血症性ショック、関節炎、変形性関節症、アンギナ、喘息、アレルギー性鼻炎ならびに偏頭痛を含む(しかし、これらに限定されない)B1活性化により媒介される疾病の治療に、治療的価値を有する。
【0017】
本発明のペプチドおよび/または接合ペプチドは、適切な医薬用担体と調合し、この必要があるヒト(または他の哺乳動物)などの患者に有効量を投与することにより、治療または予防目的で使用することができる。
【0018】
本明細書に開示するペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドのアミノ酸配列の保存的修飾により、さらなる有用なペプチドおよび/または接合ペプチドを得ることができる。保存的修飾により、こうした修飾が成されるペプチドおよび/または接合ペプチドのものに類似した機能的、物理的および化学的特性を有するペプチドおよび/または接合ペプチドが生産されることとなる。本明細書に開示するペプチドおよび/または接合ペプチドのこうした保存修飾形も、本発明の実施態様であると考える。
【0019】
本発明のもう一つの側面は、本明細書において説明するような接合ペプチドを製造する方法に関し、この方法は、構造:
(X)−(Y
(上記構造において、
およびYは、各場合、独立して、それぞれ、式−L−Pおよび−L−Pのペプチドであり;
およびLは、各場合、独立して、リンカーであり;
nは、0から3であり;ならびに
およびPは、各場合、独立して、ブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である)
を有する化合物をビヒクル(F)と反応させて、式:F−[(X)]、F−[(X)]−F、F−[(X)−(Y]、F−(X)−(Y、またはF−(X)−(Y−Fの接合ペプチドを得る段階を含む。好ましくはは、Fは、PEG部分またはこの誘導体である。さらに好ましくは、PおよびPは、各場合、独立して、配列番号5から60で示されるペプチド配列の少なくとも1つを含むブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である。さらにいっそう好ましくは、Xは、配列番号27から41で示されるようなペプチドである。本発明のさらなる側面および利点は、後続の発明の詳細な説明を考究することにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、置換に対して全く耐性がないと一般に考えられている種類のペプチドを、N末端でアミノ酸置換して、および/またはN末端で様々なビヒクルに接合させて、同種類の公知ペプチドと比較して劇的に持続性の効能プロフィールを有する治療上有用なペプチドおよび/またはペプチド接合体を生じさせることができ、この結果、これらを炎症および疼痛の処理に使用することができるという驚くべき発見に基づく。従って、本発明のペプチドおよび/またはペプチド接合体は、公知B1ペプチド拮抗薬を超えるとてつもない治療上の利点をもたらす。さらに詳細には、本発明者らは、公知B1ペプチド拮抗薬に関するこれらの治療上の使用についての前述の欠点は、N末端でのアミノ酸置換により、および/または効能のあるインビボ半減期を長期化すると同時に拮抗薬の活性および特異性の保存を最大にする被定義サイズおよび組成のペプチジルまたは非ペプチジルリンカーを使用して、ポリエチレングリコール(PEG)など(しかし、これに限定されない)のビヒクルにペプチド拮抗薬を接合させることにより、克服できることを見出した。加えて(または)、より小さなPEGポリマーに接合したペプチド接合体と比較して、より大きなPEGポリマーに接合したB1ペプチド拮抗薬にはインビトロ活性の有意な低下がもたらされるにもかかわらず、大きなPEG接合体の延長された循環半減期により、露出が有意に大きくなり、効能が有意に長期化することを発見した。加えて、本発明者らは、B1受容体のペプチド拮抗薬に結合したPEG分子のサイズが、固有拮抗薬活性および効能のあるインビボ半減期の最適化に不可欠なパラメータであることを見出した。例えば、アセチル化B1拮抗薬は、疼痛の適切なインビボモデルにおいて、多数の投薬の後、最大4時間は効能を示した。驚くべきことに、本明細書に開示する手法で5kDおよび20kDのPEG分子に接合させた同ペプチドは、1回のボーラス注射後、それぞれ、2日までの間および少なくとも4日間、効能を示した。
【0021】
本発明のブラジキニンB1受容体のペプチドおよびビヒクル−またはPEG−接合ペプチド拮抗薬ならびにこれらの製造および使用方法を説明する前に、本発明により考慮さえるペプチドおよび/または接合ペプチド拮抗薬ならびに方法論は、勿論、少しばかり変わることがあるので、本発明は、記載する特定のペプチドおよび/または接合ペプチド拮抗薬に限定されないことを理解しなければならない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることとなるので、本明細書において用いる専門用語は、特定の実施態様を説明することのみを目的とするものであり、限定と解釈されないことは、理解しなければならない。
【0022】
本明細書に記載する目的のためにおよび手法でビヒクルに接合することが考慮されるブラジキニンB1受容体結合ペプチドには、本明細書に開示する新規B1結合ペプチド拮抗薬ならびに当該技術分野では周知のB1結合ペプチド拮抗薬が挙げられるが、これらに限定されず、また前記周知ペプチド拮抗薬には、以下の出版物(各々が、この全文、本明細書に参照により組み込まれている)のいずれか一つに開示されているいずれかのペプチドが挙げられるが、これらに限定されない: Regoliら,Bradykinin receptors and their antagonists.Eur.J.of Pharma.,348:1−10(1998); Neugebauer,W.ら,Kinin B receptor antagonists with multi−enzymatic resistance properties.Can.J.Physiol.Pharmacol.,80:287−292(2002); Stewart,J.M.ら,Bradykinin antagonists:present progress and future prospects.Immunopharmacology,43:155−161(1999); Stewart,J.M.ら,Metabolism−Resistant Bradykinin Antagonists:Development and Applications.Biol.Chem.,382:37−41(2001); PCT国際公開第98/07746号;ならびに米国特許第4,693,993号、同第4,801,613号、同第4,923,963号、同第5,648,336号、同第5,834,431号、同第5,849,863号、同第5,935,932号、同第5,648,333号、同第5,385,889号、同第5,444,048号、および同第5,541,286号。
【0023】
本明細書全体を通して用いる用語は、特定の事例において別様に限定されていない限り、以下のとおり定義する。
【0024】
天然アミノ酸残基は、3つの方法で論じる: アミノ酸のフルネーム、標準三文字コード、または下に示すチャートに従って標準一文字コード。
【0025】
A=Ala G=Gly M=Met S=Ser
C=Cys H=His N=Asn T=Thr
D=Asp I=Ile P=Pro V=Val
E=Glu K=Lys Q=Gln W=Trp
F=Phe L=Leu R=Arg Y=Tyr
明確に他の指示をしない限り、天然または非天然アミノ酸のここでの呼称は、このアミノ酸のD異性体とL異性体の両方を包含するものと解釈する。非天然アミノ酸のためにここで用いる略記は、米国特許第5,834,431号、PCT国際公開第98/07746号、およびNeugebauerら,(2002)に記載されているものと同じであり、前記参照は、この全文、本明細書に参照により組み込まれている。加えて、略記「Dab」および「D−Dab」は、非天然アミノ酸、D−2−アミノ酪酸のL異性体とD異性体をそれぞれ指すものと解釈する。略記「3’PaI」および「D−3’PaI」は、非天然アミノ酸3’−ピリジルアラニンのL異性体とD異性体をそれぞれ指すものと解釈する。また、略記「Igl」は、「Igla」および「Iglb」(それぞれ、α−(1−インダニル)グリシンおよびα−(2−インダニル)グリシン)の両方を包含すると解釈する。同様に、「DIgl」は、「D−Igla」および「D−Iglb」(それぞれ、α−(1−インダニル)グリシンおよびα−(2−インダニル)グリシンのD異性体)の両方を包含すると解釈する。好ましくは、ここで用いる場合のIglは、Iglbであり、D−Iglは、D−Iglbである。
【0026】
「ビヒクル接合ペプチド」または「接合ペプチド」とは、生物活性を有し、哺乳動物に投与したとき治療効果をもたらす化合物を意味する。2つのパートが、(1)少なくとも1つのB1ペプチド拮抗薬、および(2)ペプチドの残基これ自体に、またはペプチドの残基に共有結合しているペプチジルもしくは非ペプチジルリンカー(芳香族リンカーを含むが、これらに限定されない)に共有結合している、後で定義する少なくとも1つのビヒクルを含む。
【0027】
「PEG接合ペプチド」または「PEG化ペプチド」とは、生物活性を有し、哺乳動物に投与したとき治療効果をもたらすツー・パート化合物を意味する。これらの2つのパートには、(1)少なくとも1つのB1ペプチド拮抗薬、および(2)ペプチドの残基これ自体に、またはペプチドの残基に共有結合しているペプチジルもしくは非ペプチジルリンカー(芳香族リンカーを含むが、これらに限定されない)に共有結合している少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)部分が挙げられる。
【0028】
「ポリエチレングリコール」または「PEG」とは、カップリング剤、またはカップリング剤もしくは活性化部分での(例えば、チオール、トリフレート、トレシレート、アジルジン、オキシラン、オルトピリジルジスルフィド、ビニルスルホン、ヨードアセトアミドまたはマレイミド部分での)誘導化を伴うまたは伴わない、ポリアルキレングリコール化合物またはこの誘導体を意味する。
【0029】
PEGは、市販されている、または当該技術分野では周知の方法(Sandler and Karo,Polymer Synthesis,Academic Press,New York,Vol.3,pages 138−161)に従ってエチレングリコールを開環重合することにより調製することができる、公知水溶性ポリマーである。本出願において、用語「PEG」は、このPEGのサイズおよび末端での変性にかかわらず、一官能形から多官能形までのあらゆるポリエチレングリコール分子を包含するように広く用いており、式:
X−O(CHCHO)n−1CHCHOH、 II
(式中、nは、20から2300であり、Xは、Hまたは末端変性、例えばC1−4アルキル、である)
によって表すことができる。
【0030】
好ましくは、本発明において用いるPEGは、一方の末端がヒドロキシまたはメトキシで終わる、すなわち、Xは、HまたはCHである(「メトキシPEG」)。X=CHの場合、OHで終わる式IIで示されるPEGのもう一方の末端は、活性化する部分にエーテル酸素結合によって共有結合している。X=Hの場合、PEGの両末端が、活性化する部分にエーテル結合によって結合し、この結果、直鎖二官能性PEGが生じる。化学構造の中で用いる場合、用語「PEG」は、リンカーの遊離炭素原子と反応してエーテル結合を形成するために利用することができる酸素を残し、示されているヒドロキシル基の水素がない上記式IIを包含する。より具体的には、PEGをペプチドに接合させるために、PEGは、「活性化」形でなければならない。活性化PEGは、式III:
(PEG)−(A) III
によって表すことができ、この式中のPEG(上で定義済み)は、活性化部分(A)の炭素原子に共有結合して、エーテル結合を形成し、および(A)は、ペプチドのアミノ酸残基またはこのペプチドに共有結合しているリンカー部分にあるアミノ、イミノまたはチオール基と反応することができる反応性基を含有する。
【0031】
活性化PEGの製造方法は、当該技術分野では周知である。例えば、米国特許第5,643,575号、同第5,919,455号、同第5,932,462号、およびPCT国際公開第95/06058号参照(これらは、各々は、これら全文、本明細書に参照により組み込まれている)。適する活性化PEGは、多数の従来どおりの反応によって製造することができる。例えば、PEGのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(M−NHS−PEG)は、Buckmann and Merr,Makromol.Chem.,182:1379−1384(1981)の方法に従って、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と反応させることにより、PEG−モノメチルエーテル(これは、Union Carbideから市販されている)から製造することができる。PEG−アルデヒドなどの他の活性化PEGは、市場の供給源、例えば、Nektar Therapeutics(アラバマ州、ハンツヴィル)またはEnzon,Inc.(ニュージャージー州、ピスカタウェイ)から入手することができる。本発明のために好ましい活性化PEGの例は、PEG−プロピオンアルデヒドおよびPEG−ブチルアルデヒドであり、これらは、Nektar Therapeutics(アラバマ州、ハンツヴィル)から市販されている。PEG−プロピオンアルデヒドは、式PEG−CHCHCHOによって表され、米国特許第5,252,714号に記載されている。前記特許は、全文、本明細書に参照により組み込まれている。加えて、二官能性PEGアルデヒドを使用して、二量体型接合体を製造することができる。
【0032】
さらなるの好ましいアミン反応性PEGには、メトキシ−PEGスクシンイミジルプロピオネート(mPEG−SPA)およびメトキシ−PEGスクシンイミドブタノエート(mPEG−SBA)、mPEG−ベンゾトリアゾールカーボネート、またはmPEG−p−ニトロフェニルカーボネートが挙げられ、これらは、Nektar Therapeutics(アラバマ州、ハンツヴィル)、Enzon,Inc.(ニュージャージー州、ピスカタウェイ)、または日本油脂株式会社(NOF Corporation)(日本、東京)から、様々な分子量で入手することができる。さらなる好ましい活性化PEG部分には、式PEG−CHCHSO−CH=CHによって表されるPEGビニルスルホン、ならびに下に図示するmPEG−ヨードアセテートおよびmPEG−チオエステル:
【0033】
【化1】

を含む(しかし、これらに限定されない)チオール反応性官能基が挙げられる。本発明のPEG接合ペプチドを生じさせるためのもう一つの好ましい活性化PEGは、PEG−マレイミドである。マレイミドモノメトキシPEGなどの化合物は、本発明のPEG接合ペプチドを生じさせるために特に有用である。
【0034】
本発明のPEG接合ペプチドを生じさせるためにさらにいっそう好ましい活性化PEGは、1個より多くの活性化残基を有する多価PEGである。好ましい多価PEG部分には、下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない:
【0035】
【化2】

【0036】
PEGについては、あらゆる分子量、例えば、約1,000ダルトン(Da)から100,000Da(nは、20から2300である)を実際に望むとおりに使用することができる。PEGにおける繰り返し単位の数「n」は、ダルトンで記載する分子量に対して割り当てられている。活性化リンカー上のPEGの総合分子量が医薬用途に適するほうが、好ましい。従って、EPG分子の総合分子量は、100,000Daを超えるべきではない。
【0037】
好ましくは、本発明のPEG接合ペプチドにおいて使用されるPEGの総合または合計分子量は、約3,000Daから60,000Da(合計nは、70から1,400である)、さらに好ましくは約8,800Daから36,000Da(合計nは、約200から約820である)である。PEGについての最も好ましい総合分子量は、約20,000Daから24,000Daである(合計nは、約450から約540である)。
【0038】
ポリプロピレングリコールなどの他のポリアルキレングリコールを、本発明において使用してもよい。他の適切なポリアルキレングリコール化合物には、次のタイプの荷電または天然ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない:デキストラン、コロミン酸または他の炭水化物系ポリマー、アミノ酸のポリマー、およびビオチン誘導体。
【0039】
用語「含む」は、ペプチドまたは接合ペプチドが、所定の配列のNまたはC末端のいずれかまたは両方に追加の分子単位(アミノ酸が、挙げられるが、これに限定されない)を含むことができることを意味する。勿論、これらの追加の分子単位は、このペプチドまたは接合ペプチドの活性に有意に干渉してはならない。
【0040】
ここで用いる用語「天然ペプチド」は、本明細書に開示する、または当該技術分野では周知の非接合B1ペプチド拮抗薬を指す。
【0041】
用語「誘導化する」および「誘導体」または「誘導化された」は、それぞれ、プロセス、および得られたペプチドまたは接合ペプチド[この場合、(1)前記ペプチドまたは接合ペプチドは、環状部分、例えば接合ペプチドの中のシステイニル残基間の架橋、を有する;(2)前記ペプチドまたは接合ペプチドは、架橋しているか、架橋部位を有する;例えば、培養で、またはインビボで、前記ペプチドまたは接合ペプチドは、システイニル残基を有し、故に、架橋二量体を形成する;(3)−NH末端基を有する接合ペプチドのN末端は、−NRR、NRC(O)R、−NRC(O)OR、−NRS(O)、−NHC(O)NHR、スクシンイミド基、または非置換もしくは置換ベンジルオキシカルボニル−NH−により置換されている(この場合のR、Rおよび環状置換基は、後で定義するとおりである);(5)C末端は、−C(O)Rまたは−NRによって置換されている(この場合のR、RおよびRは、後で定義するとおりである)]ならびに(6)個々のアミノ酸部分が、選択された副鎖または末端残基と反応することができる物質で処理することにより変性されている場合の接合ペプチドを包含する。誘導体は、後でさらに説明する。
【0042】
用語「B1」は、ブラジキニンB1受容体を意味する(Judith M Hall,A review of BK receptors.Pharmac.Ther.56:131−190(1992)参照)。特に別様に述べない限り、B1またはブラジキニンB1受容体は、ヒトブラジキニンB1受容体(hB1)を意味すると解釈する。好ましくは、hB1は、野生型受容体である。さらに好ましくは、hB1は、ゲンバンクアクセッション番号AJ238044に記載のブラジキニン受容体である。
【0043】
ここで一般に用いる用語「ペプチド」は、アミノ酸数4から40の分子を指し、アミノ酸数10から20の分子が好ましく、アミノ酸数15から18のものが、最も好ましい。ここで用いる用語「ジペプチド」は、アミノ酸数2の分子を指す。ここで用いる用語「トリペプチド」は、アミノ酸数3の分子を指す。
【0044】
蛋白質−蛋白質相互作用の構造解析を利用して、大きな蛋白質リガンドの結合活性を模倣するペプチドを提案することもできる。こうした解析では、結晶構造が、蛋白質リガンドの重要な残基の素性および相対配向を示唆し、このことから類似ペプチドを設計することができる。例えば、Takasakiら,Nature Biotech.,Volume 15,pages 1266−1270(1997)参照。これらの解析方法を利用して、受容体蛋白質と、本発明のペプチド、ビヒクル接合ペプチドまたはPEG接合ペプチドとの間の相互作用を調査することもでき、これが、結合親和性を増大させるために前記ペプチドまたは接合ペプチドのさらなる変性を示唆することもある。
【0045】
ペプチド、ビヒクル接合ペプチドまたはPEG接合ペプチドB1拮抗薬に関して用いる場合にここで用いる用語「有効量」および「治療有効量」は、望ましい結果をもたらすために(すなわち、本発明のペプチド、ビヒクル接合ペプチドおよび/またはPEG接合ペプチドでの治療のために)充分な量または用量を指す。本発明に関連して、望ましい結果とは、例えば炎症および/または疼痛の望ましい軽減、またはB1の1つまたはそれ以上の生物活性のレベルの観察可能な低下を支持することを指す。より具体的には、治療有効量は、この(これらの)薬剤でインビボで治療した被験者において、問題の状態、例えば炎症または疼痛、を随伴する臨床的定義された病理学的プロセスの1つまたはそれ以上を、ある期間、抑制するために充分なペプチドおよび/または接合ペプチドの量である。有効量は、選択される具体的なペプチドおよび/または接合ペプチドB1拮抗薬に依存して変化し得、ならびに治療すべき被験者に関する様々な因子および状態ならびにこの疾患の重症度にも依存する。例えば、ペプチドおよび/または接合ペプチドB1拮抗薬をインビボで投与することになる場合、中でも、患者の年齢、体重および健康状態などの因子、ならびに前臨床動物研究において得られた用量応答曲線および毒性データが、考慮されるであろう。この(これらの)薬剤をインビトロで細胞と接触させることになる場合、取り込み、半減期、用量、毒性などのようなパラメータを評価するために、様々な前臨床インビトロ試験も設計することになろう。所定の薬剤についての有効量または治療有効量の決定は、充分に当業者の能力の範囲内である。
【0046】
用語「薬理学的に活性な」は、そう記載されている物質が、医学的パラメータまたは疾病状態(例えば疼痛)に影響を及ぼす活性を有すると判定されることを意味する。本発明に関連して、一般に、この用語は、B1によって誘導されるか、B1によって媒介される疾病または異常な医学的状態または疾患、より具体的には、炎症または疼痛の拮抗作用を指す。
【0047】
用語「拮抗薬」、「阻害剤」および「逆作動薬」(例えば、Rianne A.F.de Ligtら,British Journal of Pharmacology 2000,130,131参照)は、対象となる関連蛋白質の生物活性を遮断、妨害、低減、低下またはなんらかの方法で干渉する分子を指す。本発明の好ましい「拮抗薬」または「阻害剤」は、B1に結合し、B1活性のインビトロアッセイにおいて500nMまたはそれ以下のIC50でこれを阻害する分子である。本発明のさらに好ましい「拮抗薬」または「阻害剤」は、B1に結合し、B1活性のインビトロアッセイにおいて100nMまたはそれ以下のIC50でこれを阻害する分子である。本発明の最も好ましい「拮抗薬」または「阻害剤」は、B1に結合し、B1活性のインビトロアッセイにおいて50nMまたはそれ以下のIC50でこれを阻害する、ならびに少なくとも1つの一般に認められている疼痛インビトロ動物モデルにおいて測定して疼痛を予防、改善もしくは撤廃する、および/または浮腫、炎症もしくは疼痛のインビボ動物モデルにおいて生化学的攻撃を抑制する分子である。
【0048】
加えて、本発明のペプチドまたは接合ペプチドの生理学的に許容される塩も、ここに包含される。ここで用いるフレーズ「生理学的に許容される塩」および「薬理学的に許容される塩」は、交換可能であり、医薬適合性(すなわち、温血動物の治療に有用)であることが知られているか、いずれわかるあらゆる塩を指す。幾つかの具体的な例は、酢酸塩;トリフルオロ酢酸塩;ハロゲン化水素酸塩、例えば塩酸塩および臭化水素酸塩;硫酸塩;クエン酸塩;酒石酸塩;グリコール酸塩;シュウ酸塩;塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸などを含む(しかし、これらに限定されない)無機および有機酸の塩である。本発明の化合物が、カルボキシ基などの酸性官能基を含む場合、このカルボキシ基に適する医薬的に許容されるカチオン対は、当業者には周知であり、アルカリカチオン、アルカリ土類カチオン、アンモニウムカチオン、第四アンモニウムカチオンなどが挙げられる。「薬理学的に許容される塩」のさらなる例については、以下およびBergeら,J.Pharm.Sci.66:1(1977)を参照のこと。
【0049】
「保護基」は、一般に、求核反応、求電子反応、酸化反応、還元反応などの望ましくない反応から、カルボキシ、アミノ、ヒドロキシ、メルカプトなどの選択された反応性基を保護するために使用される、当業者には周知の基を指す。好ましい保護基は、本明細書中、適所に示す。アミノ保護基の例には、アラルキル、置換アラルキル、シクロアルケニルアルキルおよび置換シクロアルケニルアルキル、アリル、置換アリル、アシル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、シリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アラルキルの例には、ベンジル、オルト−メチルベンジル、トリチルおよびベンズヒドリル(これらは、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アシルアミノ、アシルなど、ならびにホスニウム塩およびアンモニウム塩などの塩で場合により置換されていてもよい)が挙げられるが、これらに限定されない。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、インダニル、アントラセニル、9−(9−フェニルフルオレニル)、フェナントレニル、デュレニルなどが挙げられる。シクロアルケニルアルキルまたは置換シクロアルケニルアルキルラジカル(好ましくは、6から10個の炭素原子を有するもの)の例には、シクロヘキセニルメチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。適するアシル、アルコキシカルボニルおよびアラルコキシカルボニル基には、ベンジルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、ベンゾイル、置換ベンゾイル、ブチリル、アセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタロイルなどが挙げられる。保護基の混合物を使用して、同じアミノ基を保護することができ、例えば、第一アミノ基をアラルキル基とアラルコキシ基の両方によって保護することができる。アミノ保護基は、これらが結合している窒素原子と一緒に複素環、例えば、1,2−ビス(メチレン)ベンゼン、フタルイミジル、スクシンイミジル、マレイミジルなどを形成することもでき、この場合、これらの複素環基は、隣接アリールおよびシクロアルキル環をさらに含むことができる。加えて、複素環基は、ニトロフタルイミジルのように、一、二または三置換されていてもよい。アミノ基は、塩酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの付加塩を形成することにより、酸化などの望ましくない反応から保護することもできる。アミノ酸保護基の多くが、カルボキシ、ヒドロキシおよびメルカプト基の保護にも適する。例えば、アラルキル基。アルキル基、例えばt−ブチルは、ヒドロキシおよびメルカプト基の保護にも適する。
【0050】
シリル保護基は、1個またはそれ以上のアルキル、アリールおよびアラルキル基によって場合により置換されているケイ素原子である。適するシリル保護基には、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジメチルフェニルシリル、1,2−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ジメチルシリル)エタンおよびジフェニルメチルシリルが挙げられるが、これらに限定されない。アミノ基のシリル化により、モノまたはジシリルアミノ基が生じる。アミノアルコール化合物のシリル化により、N,N,O−トリシリル誘導体にすることができる。シリルエーテル官能基からのシリル官能基の除去は、別の反応段階として、またはアルコール基との反応中にインサイチューで、例えば金属水酸化物またはフッ化アンモニウム試薬で処理することにより、容易に達成することができる。適するシリル化剤は、例えば、塩化トリメチルシリル、塩化t−ブチル−ジメチルシリル、塩化フェニルジメチルシリル、塩化ジフェニルメチルシリル、またはこれらとイミダゾールもしくはDMFの併用生成物である。アミンのシリル化方法およびシリル保護基の除去方法は、当業者には周知である。対応するアミノ酸、アミノ酸アミドまたはアミノ酸エステルからのこれらのアミン誘導体の製造方法も、アミノ酸/アミノ酸エステルまたはアミノアルコール化学を含む有機化学の技術分野の技術者には公知である。
【0051】
保護基は、この分子の残りの部分に影響を及ぼさない条件下で除去する。これらの方法は、当業者には公知であり、酸水解、水素化分解などが挙げられる。好ましい方法は、保護基の除去、例えば、アルコール、酢酸などまたはこれらの混合物のような適する溶媒系中の炭素担持パラジウムを利用する水素化分解によるベンジルオキシカルボニル基の除去を含む。t−ブトキシ−カルボニル保護基は、ジオキサンまたは塩化メチレンなどの適する溶媒系中、HClまたはトリフルオロ酢酸などの無機または有機酸を利用して除去することができる。得られたアミノ酸を中和して、遊離アミンを生じさせることが容易にできる。メチル、エチル、ベンジル、t−ブチル、4−メトキシフェニルメチルなどのようなカルボキシ保護基は、当業者には周知の加水分解および水素化分解条件下で除去することができる。
【0052】
本発明の化合物は、互変異性形で存在し得る基、例えば、次の例にて説明される、環状および非環状アミジンおよびグアニジン基、ヘテロ原子置換ヘテロアリール基(Y’=O、S、NR):
【0053】
【化3】

などを含有することがあり、一つの形が本明細書において指名、記載、表示および/または特許請求の範囲に記載されていたとしても、こうした指名、記載、表示および/または特許請求の範囲への記載には、すべての互変異性形が本質的に含まれるものと解釈することに留意しなければならない。
【0054】
本発明では、本発明の化合物のプロドラッグも考慮されている。プロドラッグは、このプロドラッグを患者に投与した後、インビボでの生理作用、例えば加水分解、代謝などにより、本発明の化合物に化学変性される活性または不活性化合物である。プロドラッグの製造および使用に関わる適性および技法は、当業者には公知である。エステルを含むプロドラッグの一般的な考察については、Svensson and Tunek Drug Metabolism Review 165(1988)およびBundgaard Design of Prodrugs,Elsevier(1985)を参照のこと。マスクされたカルボン酸アニオンの例には、アルキル(例えば、メチル、エチル)、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル)、アラルキル(例えば、ベンジル、p−メトキシベンジル)およびアルキルカルボニルオキシアルキル(例えば、ピバロイルオキシメチル)などの様々なエステルが挙げられる。アミンは、アリールカルボニルオキシメチル置換誘導体としてマスクされており、これは、インビボでエステラーゼによって分解されて、遊離薬物およびホルムアルデヒドを放出する(Bungaard J.Med.Chem.2503(1989))。また、酸性NH基、例えばイミダゾール、イミド、インドールなどを含有する薬物は、N−アシルオキシメチル基でマスクされている(Bundgaard Design of Prodrugs,Elsevier(1985))。ヒドロキシ基は、エステルおよびエーテルとしてマスクされている。欧州特許第039,051号(Sloan and Little,4/11/81)には、マンニッヒ塩基ヒドロキサム酸プロドラッグ、これらの製造および使用が開示されている。
【0055】
接合ペプチドの構造
概説。本発明のビヒクル接合ペプチドは、次の式:
F−[(X)−(Y] (IV)
(式中、
およびYは、各場合、独立して、それぞれ、式−L−Pおよび−L−Pのペプチドであり;
Fは、XまたはYに共有結合しているビヒクルであり;
およびLは、各場合、独立して、不在であるか、0から9個のアミノ酸残基を有するリンカーであり;
nは、0から3であり;ならびに
および(存在する場合には)Pは、各場合、独立して、ブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である)
によって表すことができる。
【0056】
式IVのビヒクル接合ペプチドは、Pおよび(存在する場合には)Pが、各場合、独立して、配列番号5から60のいずれか一つで示されるようなペプチド配列を有するブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬およびこの誘導体である、好ましい実施態様を含むであろう。
【0057】
ビヒクル接合ペプチドのさらなる好ましい実施態様には、Pおよび(存在する場合には)Pが、式:
NH−a1011121314−COOH
(式中、
は、塩基性側鎖を有する1個か2個の残基を含有する塩基性または中性芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドであるか、不在であり;
、a、aおよびaは、各場合、独立して、塩基性または中性、芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸であり;
は、Serであり;
、aおよびaは、各場合、独立して、芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸であるが、但し、a、aおよびaのうちの少なくとも一つが、DまたはL配置のChg、Cpg、Igla、Iglb、NigaおよびNigbから選択されることを条件とし;ならびに
、a10、a11、a12、a13およびa14は、各場合、独立して、天然アミノ酸であるか、不在である)
によって定義される、式IVのビヒクル接合ペプチドが挙げられよう。
【0058】
さらに好ましくは、Pおよび(存在する場合には)Pは、式:
NH−a1011121314−COOH
(式中、
は、塩基性アミノ酸、または塩基性側鎖を有する1個か2個の残基を含有するジペプチドであるか、不在であり;
は塩基性アミノ酸であり;
はProであり;
はHypであり;
はGlyであり;
およびaはインダニルアミノ酸であり;
はSerであり;
はD−インダニルアミノ酸であり;
はCpgであり;および
、a10、a11、a12、a13およびa14は、各場合、独立して、いずれかの天然アミノ酸であるか、不在である)
によって定義される。
【0059】
さらにいっそう好ましくは、Pおよび(存在する場合には)Pは、式:
NH−a1011121314−COOH
(式中、
は、塩基性アミノ酸、または塩基性側鎖を有する1個か2個の残基を含有するジペプチドであるか、不在であり;
は塩基性アミノ酸であり;
はProであり;
はHypであり;
はGlyであり;
はCpgであり;
はSerであり;
はDTicであり;および
はCpgであり;および
、a10、a11、a12、a13およびa14は、各場合、独立して、いずれかの天然アミノ酸であるか、不在である)
によって定義される。
【0060】
さらにいっそう好ましくは、本発明のビヒクル接合ペプチドは、n=0ならびにXが、配列番号27から41で示されるようなペプチドおよびこの誘導体から成る群より選択されるペプチドである場合の式IVのビヒクル接合ペプチドを含む。
【0061】
本発明は、ブラジキニンB1受容体(B1)結合し、この活性に拮抗する、ならびに非接合ペプチドB1拮抗薬と比較して明白に勝ったインビボでの薬物動態特性を有するPEG接合ペプチドも提供する。本発明のPEG接合ペプチドは、下記式(V):
F−[(X)−(Y
(式中、
およびYは、各場合、独立して、それぞれ、式−L−Pおよび−L−Pのペプチドであり;
Fは、XまたはYに共有結合しているPEG部分であり;
およびLは、各場合、独立して、不在であるか、0から9個のアミノ酸残基を有するリンカーであり;
nは、0から3であり;ならびに
および(存在する場合には)Pは、各場合、独立して、ブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である)
によって表すことができる。
【0062】
式VのPEG接合ペプチドは、Pおよび(存在する場合には)Pが、各場合、独立して、配列番号5から60のいずれか1つで示されるようなペプチド配列を有するブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬およびこれらの誘導体である、好ましい実施態様を含むであろう。
【0063】
PEG接合ペプチドのさらなる好ましい実施態様には、Pおよび(存在する場合には)Pが、式:
NH−a1011121314−COOH
(式中、
は、塩基性もしくは中性芳香族、脂肪族、複素環式もしくは脂環式アミノ酸、または塩基性ジペプチドもしくはトリペプチドであるか、不在であり;
、a、aおよびaは、各場合、独立して、塩基性または中性、芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸であり;
は、Serであり;
、aおよびaは、芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸であるが、但し、a、aおよびaのうちの少なくとも一つが、DまたはL配置のChg、Cpg、Igla、Iglb、NigaおよびNigbから選択されることを条件とし;ならびに
、a10、a11、a12、a13およびa14は、各場合、独立して、なんらかの天然アミノ酸であるか、独立して不在である)
によって定義される、式VのPEG接合ペプチドが挙げられよう。
【0064】
さらに好ましくは、Pおよび(存在する場合には)Pは、式:
NH−a1011121314−COOH
(式中、
は、塩基性アミノ酸または塩基性ジペプチドであるか、不在であり
は塩基性アミノ酸であり;
はProであり;
はHypであり;
はGlyであり;
およびaはインダニルアミノ酸であり;
はSerであり;
はD−インダニルアミノ酸であり;
はCpgであり;および
、a10、a11、a12、a13およびa14は、各場合、独立して、なんらかの天然アミノ酸であるか、不在である)
によって定義される。
【0065】
さらにいっそう好ましくは、Pおよび(存在する場合には)Pは、式:
NH−a1011121314−COOH
(式中、
は、塩基性アミノ酸または塩基性ジペプチドであるか、不在であり
は塩基性アミノ酸であり;
はProであり;
はHypであり;
はGlyであり;
はCpgであり;
はSerであり;
はDTicであり;
はCpgであり;および
、a10、a11、a12、a13およびa14は、各場合、独立して、なんらかの天然アミノ酸であるか、不在である)
によって定義される。
【0066】
本発明のさらにいっそう好ましいPEG接合ペプチドには、n=0ならびにXが、配列番号27から41で示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドおよびこの誘導体から成る群より選択されるペプチドである場合の式VのPEG接合ペプチドが挙げられる。本発明のさらにいっそう好ましいPEG接合ペプチドには、n=0ならびにXが、配列番号27から41で示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドおよびこの誘導体から成る群より選択されるペプチドである場合のものが挙げられる。さらにいっそう好ましくは、本発明のPEG接合ペプチドは、下記式:
F’−R VI
(式中、
F’は、多価ビヒクルであり;
Rは、各場合、独立して、−(X)−(Yであり、この場合、Rは、F’に共有結合しており;
およびYは、各場合、独立して、それぞれ、式−L−Pおよび−L−Pのペプチドであり;
およびLは、各場合、独立して、不在であるか、0から9個のアミノ酸残基を有するリンカーであり;
nは、0から3であり;
Zは、2から8であり;ならびに
およびPは、各場合、独立して、ブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である)
またはこの生理学的に許容される塩によって表すことができる。
【0067】
本発明のさらにいっそう好ましいPEG接合ペプチドには、nが0であり、Zが、4から8であり、ならびにXが、配列番号27から41で示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドおよびこれらの誘導体から成る群より選択されるペプチドである、式VIのPEG接合ペプチドが挙げられる。
【0068】
本明細書で定義するような、Pおよび(存在する場合には)Pのフラグメント(すなわち、「部分配列」)、類似体および誘導体であるペプチド配列を有するペプチド接合体も、本発明の一部と解釈され、この場合、こうした接合ペプチドは、インビトロおよび/またはインビボ抗B1活性に関して、本明細書に具体的に開示するペプチド接合体と実質的に同等である。
【0069】
用語「類似体」は、ペプチド、接合ペプチド(非接合Pおよび(存在する場合には)P)ならびに/または式(IV)および(V)によりそれぞれ規定されるビヒクル−もしくはPEG−接合ペプチドのいずれかのペプチジルリンカー(L)のアミノ酸の直線配列に由来する、ならびにインビトロおよび/またはインビボ抗B1活性に関して、本明細書に具体的に開示する類似の非接合ペプチドまたは接合ペプチドと比較して実質的に同等な分子を結果として生じさせる、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を表す分子を意味すると解釈する。
【0070】
本発明の接合ペプチド類似体は、(P)(Pおよび/または(存在する場合には)P)または(L)(Lおよび/または(存在する場合には)L)の配列に一つまたはそれ以上のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を一般に有するであろう。保存的アミノ酸変化は、ポリペプチドの構造および/または機能を不安定する可能性が最少であり、一般に、あるアミノ酸についての、構造および/または機能が類似した別のアミノ酸(例えば、サイズ、電荷および/または形が類似した副鎖を有するアミノ酸)での置換を伴うと、一般に理解されている。これらの置換の性質は、当業者には公知であり、具体例としてのアミノ酸置換を表1および2にまとめる。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
新たなシステインが、遊離チオールとして残っている場合、A、F、H、I、L、M、P、V、WまたはYからCに変えることが、さらに好ましい。
【0074】
(保存的であろうと、非保存的であろうと)望ましいアミノ酸置換は、当業者が、こうした置換を望むときに決めることができる。例えば、アミノ酸置換を利用して、ペプチド配列の重要な残基を同定することができ、または本明細書に記載する非接合および/もしくは接合ペプチド分子の親和性を増加もしくは減少させることができる。
【0075】
一定の実施態様において、保存的アミノ酸置換は、一般には化学的ペプチド合成によって組み込まれる非天然アミノ酸残基も包含する。
【0076】
前のセクションで述べたように、天然残基は、配列の修飾に有用であり得る共通の副鎖基に分類することができる。例えば、非保存的置換は、これらの類の一構成員を別の類の一構成員と交換することを含むことができる。こうした置換残基は、非ヒトオーソログと相同であるペプチドの領域に導入してもよいし、またはこの分子の非相当領域に導入してもよい。加えて、鎖の配向に影響を及ぼすためにPまたはGを用いて修飾を行うこともできる。
【0077】
こうした修飾を行う場合、アミノ酸の疎・親水性指数(hydropathic index)を考慮することができる。各アミノ酸には、これらの疎水性および電荷特性を基に一定の疎・親水性指数が割り当てられており、これらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタメート(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパルテート(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)である。
【0078】
蛋白質への相互作用性生体機能の付与におけるアミノ酸疎・親水性指数の重要性は、当該技術分野において理解されている。Kyteら,J.Mol.Biol.,157:105−131(1982)。一定のアミノ酸は、類似した疎・親水性指数またはスコアを有する他のアミノ酸を置換し、類似した生物活性をなお保持することができることが知られている。疎・親水性指数を基に交換を行う場合、疎・親水性指数が±2の範囲内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1の範囲内ものが、特に好ましく、±0.5の範囲内のものが、さらにいっそう好ましい。
【0079】
類似のアミノ酸の置換を、親水性を基に有効に行うことができることも、当該技術分野では理解されている。この隣接アミノ酸の親水性により決定されるような蛋白質の最大局所平均親水性は、この免疫抗原性および抗原性、すなわち、この蛋白質の生物学的性質と相関する。
【0080】
以下の親水性値が、アミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−0.1);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。類似した親水性値を基に交換を行う場合、親水性値が±2の範囲内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1の範囲内のものが、特に好ましく、±0.5の範囲内のものが、さらにいっそう特に好ましい。親水性を基に第一アミノ酸配列からエピトープを同定することもできる。これらの領域は、「エピトープのコア領域」とも呼ばれる。
【0081】
当業者は、周知の技術を利用して、本明細書に記載する非接合および/または接合ペプチドの適する類似体を決定することができるであろう。当業者は、活性を保持しながら、天然ペプチドにおいて発生する残基を化学的に類似したアミノ酸で置換すること(保存的アミノ酸置換)ができることも知っているだろう。従って、生物活性または構造に重要であり得る領域であっても、この生物活性を破壊することなく、またこの非接合ペプチドもしくは接合ペプチド構造に悪影響を及ぼすことなく、保存的アミノ酸置換に付すことができる。
【0082】
加えて、当業者は、活性または構造に重要である非接合および/または接合ペプチド配列内の残基を同定する構造−機能研究を再考することができる。こうした比較にかんがみて、ペプチド配列におけるアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、こうした予測された本発明の非接合および/または接合ペプチドの重要なアミノ酸残基を化学的に類似したアミノ酸置換で置換することを選んでもよい。
【0083】
多数の科学出版物が、二次構造の予測に充てられている。Moult J.,Curr.Op.in Biotech.,7(4):422−427(1996); Chouら,Biochemistry,13(2):222−245(1974); Chouら,Biochemistry,113(2):211−222(1974); Chouら,Adv.Enzymol.Relat.Areas Mol.Biol.,47:45−148(1978); Chouら,Ann.Rev.Biochem.,47:251−276およびChouら,Biophys.J.,26:367−384(1979)参照。さらに、現在では、二次構造の予測を助けるコンピュータプログラムを利用することができる。
【0084】
二次構造を予測するさらなる方法には、「スレッディング」(Jones,D.,Curr.Opin.Struct.Biol.,7(3):377−87(1997); Sipplら,Structure,4(1):15−9(1996))、「プロフィール分析」(Bowieら,Science,253:164−170(1991); Gribskovら,Meth.Enzym.,183:146−159(1990); Gribskovら,Proc.Nat.Acad.Sci.,84(13):4355−8(1987))、および「進化的関連(evolutionary linkage)」(Home,上記、およびBrenner,上記、参照)が挙げられる。
【0085】
本発明のペプチドおよび/または接合ペプチド類似体および誘導体は、本明細書に具体的に開示するこれらの類似ペプチドおよび/または接合ペプチドが有用(すなわち、インビトロおよび/またはインビボでのB1活性の拮抗薬)であるのと同じ意味で有用であろう。
【0086】
(ペプチド)
本発明のペプチドには、配列番号15から35および39から54で示す配列を含むペプチドが挙げられる。本発明のビヒクル−またはPEG−接合ペプチドの中のペプチド配列Pおよび(存在する場合には)Pは、述べたように、B1に結合し、この活性に拮抗する(例えば、これを低下させる)ペプチドを含む。本発明の好ましいビヒクル−またはPEG−接合ペプチドは、配列番号5から60およびこれらの誘導体から成る群より選択される少なくとも1つのペプチド配列を含む。さらに好ましくは、さらに好ましくは、本発明のビヒクル−またはPEG−接合ペプチドは、配列番号27から41およびこれらの誘導体から成る群より選択される少なくとも1つのペプチド配列を含む。
【0087】
【表3】


【0088】
(ビヒクル)
ここで用いる用語「ビヒクル」は、分解を防止する、および/または半減期を拡大する、毒性を低減する、免疫抗原性を低下させる、または治療用ペプチドもしくは蛋白質の生物活性を増大させる分子を指す。本発明に関連して有用なビヒクルは、当該技術分野では公知であり(例えば、PCT国際公開第98/07746号、これは、全文、本明細書に参照により組み込まれている)、当業者には、すべて、容易に入手することができる。本発明に関連して、好ましいビヒクルには、ポリメチルエチレン−グリコール、ポリヒドロキシプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびオキシド、ポリメチルプロピレングリコール、ポリヒドロキシプロピレンオキシド、直鎖および分枝鎖プロピレングリコールならびにこれらの誘導体、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールならびにこれらのモノメチルエーテル、モノセチルエーテル、モノ−n−ブチルエーテル、モノ−t−ブチルエーテルおよびモノオレイルエーテル、ポリアルキレングリコールとカルボン酸のエステル、ならびにポリアルキレングリコールとアミンの脱水縮合産物、ならびに他のアルキレンオキシドおよびグリコールならびにこれらの誘導体、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルアセテート)、共重合体ポリ(ビニルアセテート−co−ビニルアルコール)、ポリビニルオキサゾリドン、ポリ(ビニルメチルオキサゾリドン)およびポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ(アクリルアミド)およびポリ(メタクリルアミド)ならびにこれらの他のアミド、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−アセトアミドアクリルアミド)、およびポリ(N−アセトアミドメタクリルアミド)ならびにこれらのアミドの他のN−置換誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本発明の1つの側面は、非ペプチジルリンカー部分に、またはペプチドB1拮抗薬に共有結合で融合しているペプチジルリンカーのアミノ酸残基に結合している少なくとも一つのビヒクル(F)の存在を必要とする。本発明に関連して、好ましいビヒクルは、本明細書において定義するようなPEG分子を構成する。さらにいっそう好ましいビヒクルは、本明細書において定義するような多価PEG分子を構成する。
【0090】
本明細書において具体的に開示するまたは引用するビヒクル−またはPEG−接合ペプチド分子を、(X)−(Y(上で定義したとおり)によって表される領域内でわずかに変性して、本発明の類似体を作ることができるが、但し、B1の拮抗作用が実質的に維持されることを条件とする。
【0091】
本発明のビヒクルまたはPEG接合ペプチドとこれらの類似体の間のこととして、(P)領域の3個より多くの非末端残基が異ならないほうが、好ましい。さらに好ましくは、本発明によって考慮される類似体には、本発明のビヒクル−またはPEG−接合ペプチドの(P)領域のいずれかの特定の非末端部位において2個以下のアミノ酸の置換、挿入または欠失を有する分子が挙げられる。最も好ましくは、特に指定(P)領域における、本発明のビヒクルまたはPEG接合ペプチドとこれらの考慮される類似体の間の配列の相違は、一つまたはそれ以上の「保存的修飾」の形態での相違である。
【0092】
(リンカー)
ここで用いる用語「リンカー」は、式IVおよびV(上記)のいずれかで示されるようなLおよび(存在する場合には)Lを指し、本明細書では(L)と略記する。好ましくは、(L)は、本質的にペプチジルであり(すなわち、ペプチド結合によって互いに結合されているアミノ酸から成り)、1から9個のアミノ酸から成る。さらに好ましくは、(L)は、20の天然アミノ酸から選択される、1から9個のアミノ酸から成る。さらにいっそう好ましい実施態様において、前記ペプチジルリンカーの1から9個のアミノ酸は、システイン、グリシン、アラニン、プロリン、アルギニン、アスパラギン、グルタミンおよびリシンから選択される。さらにいっそう好ましくは、ペプチジルリンカーは、アミノ酸から成り、これらのアミノ酸の大多数が、立体障害のないアミノ酸、例えば、ペプチド結合によって連結されたグリシンとアラニンである。従って、好ましいペプチジルリンカーは、ポリ(Gly)1−8、特に(Gly)(配列番号100)、(Gly)(配列番号101)および(Gly)(配列番号102)、ならびにポリ(Gly−Ala)2−4およびポリ(Ala)1−8である。ペプチジルリンカーの他の具体的な例には、(Gly)Lys(配列番号103)および(Gly)LysArg(配列番号104)が挙げられる。GlyとAlaの他の組合せも好ましい。上の命名法を説明すると、例えば、(Gly)Lysは、Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Lysを意味する。ペプチジルリンカーは、ビヒクルとの接合のためのN−末端システイン、別のチオールまたは求核分子を含有してもよい。さらに好ましいリンカーは、マレイミド、ヨードアセトアミドまたはチオエステル官能化ビヒクルと接合のためのN末端システインもしくはホモシステイン残基または他の2−アミノ−エタンチオールもしくは3−アミノ−プロパンチオール部分を含有する。マレイミド活性化PEGとペプチドの反応によって形成された初期3−スルファニルスクシンイミド付加体(1c)を過剰な塩基で処理することにより、この安定性が低いスイクシンイミド付加体を加水分解安定性の6−メチルカルバモイル−5−オキソ−チオモルホリン−3−カルボキサミド形(1d、図式1)に転化させる。また、図式2および3に示すように、市販のチオエステルPEGまたはヨードアセトアミドPEG(アラバマ州、ハンツヴィルのNektar Therapeutics)を化学選択的接合に使用してもよい。
【0093】
【化4】



【0094】
もう一つの好ましいリンカーは、ほぼ1k PEG分子のサイズであると概算される、ランダムGly/Ser/Thr配列(GSGSATGGSGSTASSGSGSATH;配列番号105)を含む大型可撓性(flexible)リンカーである。加えて、ペプチジルリンカーは、非ペプチジルセグメント、たとえば、式−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−の炭素数6の脂肪族分子を含むことができる(剛性(rigid)リンカー:−AEAAAKEAAAKEAAAKAGG−)。
【0095】
また、反応性求核因子を含有する非ペプチジルリンカーが、Xおよび(存在する場合には)Yに存在してもよい。例えば、−NH−(CH−C(O)−(式中、S=20)のようなアルキルリンカーを使用することができる。これらのアルキルリンカーは、なんらかの非立体障害性の基、例えば、低級アルキル(例えば、C−C)低級アシル、ハロゲン(例えば、Cl、Br)、CN、NH、フェニルなど、によってさらに置換されていてもよい。具体例としての非ペプチジルリンカーは、PEGリンカーである(下に示す):
【0096】
【化5】

(式中、nは、リンカーが、100から5000キロダルトン(kD)、好ましくは100から500kDの分子量を有するようなnであり、mは、1から3である)。好ましくは、非ペプチジルリンカーは、芳香族である。これらのリンカーは、ここで説明するものと同し手法で誘導体を形成するように変性することができる。
【0097】
加えて、PEG分子は、PEGアルデヒドを使用する還元アルキル化またはヒドロキシスクシンイミドもしくはPEGの炭酸エステルを使用するアシル化のいずれかによって、N末端アミンまたは選択された副鎖アミンに結合させることができる。上で説明したいずれのリンカーも、このアプローチに使用することができる。また、適切に官能化されたPEGを、配列番号5から26もしくは配列番号43から60として示すようなブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬のいずれかに直接結合させることができ、または配列番号5から26もしくは43から60として示すようなブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬のいずれかに共有結合で融合しているペプチジルリンカーのアミノ酸残基に直接結合させることができる。
【0098】
ビヒクルおよび/またはターゲットペプチドは、多価であり得るので、本発明のプロセスにより様々なビヒクル:ペプチド構造を製造できることは、理解されるであろう。例として、一価のビヒクルと一価のペプチドは、1:1接合体を生じさせるであろうし;二価のペプチドと一価のビヒクルは、ペプチド接合体が2個のビヒクル分子を有する接合体を形成することができ、これに対して二価のビヒクルと一価のペプチドは、2個のペプチド単位が、単一のビヒクル分子に連結している種を生じさせることができる。より高い価のビヒクルを使用すると、単一のビヒクル部分に結合したペプチド単位のクラスタが形成されることとなり、これに対してより高い価のペプチドは、多数のビヒクル分子で覆われることとなり得る。ペプチド分子は、活性化ビヒクルと反応するであろう1つまたはそれ以上の反応性基を有することができ、複雑な構造を形成する可能性を常に考慮しなければならず;ビヒクルとペプチドの1:1付加体のような単純構造の形成を望む場合、または二価のビヒクルを使用してペプチド:ビヒクル:ペプチド付加体を形成することを望む場合、活性化ビヒクルとペプチド材料の所定比率、これらの所定濃度を用いること、および所定の条件(例えば、継続時間、温度、pHなど)下で反応を行って、記載の生成物の比率を作り、次いで、記載の生成物を他の反応生成物と分離することが、有益であろう。試薬の反応条件、比率および濃度は、比較的簡単な試行錯誤実験によって得ることができ、これらの実験は、通常技能の技術者の能力の範囲内であり、必要に応じて適切に規模を拡大する。同様に、生成物の精製および分離は、当業者には公知の従来どおりの技法によって達成される。しかし、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する単数形「a」、「an」および[the]は、この文脈に明確な別様の指図がない限り、多数の指示対象を包含する。従って、例えば、「ビヒクル接合ペプチド拮抗薬」または「PEG接合ペプチド拮抗薬」への言及は、こうした接合体の混合物を包含し、ならびに「治療方法」への言及は、当業者には周知であろう、または本明細書を読むとわかることになるであろう、等々のタイプの1つまたはそれ以上の治療方法への言及を包含する。
【0099】
システインアミノ酸残基を有するペプチドおよびポリペプチドのチオール基とmPEG−マレイミドの接合による従来どおりのPEG化は、有機溶媒を伴うまたは伴わないリン酸緩衝液中で実行される。PEG化ペプチドおよびポリペプチドの水への高い溶解性ならびに水中でのピロリジン−2,5−ジオン環の潜在的不安定性が、PEG化ペプチドおよび蛋白質の大規模な生産および精製へのこの方法の適用の妨げとなっている。しかし、本発明者らは、システイン残基を有するペプチドおよびポリペプチドのチオール基とmPEG−マレイミドの接合についての新規非水系条件をここに開示する。この新規プロセスによって、中から高収率のPEG化ペプチドおよびポリペプチドが得られ、ならびにマイケル付加とアミノ分解が併用されてワン・ポットとなる(図式4)。両方の条件が、沈殿によるPEG化ペプチドおよびポリペプチドの直接単離をもたらす。
【0100】
【化6】

【0101】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式4に示したプロセスのもう一つの実施態様では、メタノール(MeOH)の代わりに以下の溶媒のうちの1つまたはそれ以上を含む溶媒を用いてもよい:メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル(AcN)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびN−メチルピロリドン(NMP)。
【0102】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式4に示したプロセスのもう一つの実施態様では、TBMEの代わりに次の溶媒のうちの1つまたはそれ以上を含む溶媒を用いてもよい:ジエチルエーテル、メチルイソプロピルエーテルおよびジイソプロピルエーテル。
【0103】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式4に示したプロセスのもう一つの実施態様では、図式4に示したような反応1)を約20℃から約60℃の温度で行うことができる。好ましくは、図式4に示したような反応1)は、約30℃から約50℃の温度で行うことができる。さらに好ましくは、図式4に示したような反応1)は、約35℃から約45℃の温度で行うことができる。最も好ましくは、図式4に示したような反応1)は、室温で行うことができる。
【0104】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式4に示したプロセスのもう一つの実施態様では、図式4に示したような反応2)を約20℃から約60℃の温度で行うことができる。好ましくは、図式4に示したような反応2)は、約30℃から約50℃の温度で行うことができる。さらに好ましくは、図式4に示したような反応1)は、約35℃から約45℃の温度で行うことができる。最も好ましくは、図式4に示したような反応2)は、室温で行うことができる。
【0105】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式4に示したプロセスのもう一つの実施態様では、図式4に示したような沈殿反応を少なくとも10分間、行うことができる。さらに好ましくは、図式4に示したような沈殿反応は、少なくとも60分間、行うことができる。最も好ましくは、図式4に示したような沈殿反応は、約60分間、行うことができる。
【0106】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式4に示したプロセスのもう一つの実施態様では、沈殿、濾過および/または精製反応を1回より多く行うことができる。
【0107】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式4に示したプロセスのもう一つの実施態様では、沈殿および/または精製反応を1回より多く行うことができる。
【0108】
部分保護ペプチドは、多官能性ペプチドの特定部位の選択的変性が可能であるので、この戦略に特に有用な試薬である。これらの保護基は、ペプチド合成の技術分野の技術者には公知の確立された脱保護法を用いて、PEG接合体から除去される。この用途に適する部分保護ペプチドは、ペプチド合成の技術分野の技術者には公知の直交型保護(orthogonal protecting)戦略を用いて製造することができる。ブラジキニンB1受容体の部分保護ペプチド拮抗薬の合成および接合の実例を、図式5に示す。副鎖アミンが接合部位としての役割を果たす類似体は、容易に入手できる被直交型保護塩基性アミノ酸から製造することができる。
【0109】
【化7】

【0110】
表3(配列番号5から60)に記載したものなどのB1拮抗薬ペプチドの部分保護形は、同様の方法を用いてPEG部分に接合させることができる。
【0111】
図式5に示したプロセスの一つの実施態様では、部分保護ペプチド5cのアミン副鎖をt−ブチルカルバモイル(Boc)部分によってマスクし、得られたペプチドを、1,2−ジクロロエタン(DCE)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはこれらの混合物などの有機溶媒中でいずれかの前記PEGアルデヒドと反応させる。中間体イミンの形成は、粉末4Åモレキュラーシーブなどの脱水剤の添加により加速することができる。室温で1から24時間攪拌した後、得られたイミンを、1から4当量のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムまたはシアノ水素化ホウ素ナトリウムの添加により還元する。
【0112】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式5に示したプロセスのもう一つの実施態様では、5cなどの部分保護ペプチドとの反応を約20℃から約60℃の温度で行うことができる。好ましくは、図式5に示したような5cなどの部分保護ペプチドとの反応は、約20℃から約50℃で行うことができる。さらに好ましくは、図式5に示したような5cなどの部分保護ペプチドとの反応は、約35℃から約45℃で行うことができる。図式5に示したような5cなどの部分保護ペプチドとの反応の殆どは、室温で行うことができる。
【0113】
図式5に示したプロセスのもう一つの実施態様では、部分保護ペプチド5cのアミン側鎖をt−ブチルカルバモイル(Boc)部分によってマスクし、得られたペプチドを、1,2−ジクロロエタン(DCE)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン、N−メチルピロリジン(NMP)またはこれらの混合物などの有機溶媒中、いずれかの前記PEG N−ヒドロキシスクシンイミドまたはp−ニトロフェニルエステルPEG試薬と反応させる。活性化PEGエステルは、一官能性変異体であってもよいし、直鎖二官能性変異体であってもよく、これらの両方が、Nekerまたは日本油脂株式会社(NOF)などの供給業者から市販されている。加えて、3から6個のヒドロキシスクシンイミドまたはp−ニトロフェニルエステル部分を含有する分枝鎖多官能性PEG活性化エステルは、本発明の接合体の製造に特に有用である。
【0114】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式5に示したプロセスのもう一つの実施態様では、5cなどの部分保護ペプチドとの反応を、約20℃から約60℃の温度、約4時間から約10日の範囲の反応時間で行うことができる。好ましくは、図式5に示したような5cなどの部分保護ペプチドとの反応は、約20℃から約50℃の温度、約12時間から約5日の範囲の反応時間で行うことができる。さらに好ましくは、図式5に示したような5cなどの部分保護ペプチドとの反応は、約35℃から約45℃の温度、約1から約5日の範囲の反応時間で行うことができる。図式5に示したような5cなどの部分保護ペプチドとの反応の殆どは、室温、約1から約4日の範囲の反応時間で行うことができる。
【0115】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式5に示したプロセスのもう一つの実施態様では、図式5に示したような側鎖保護基の除去を約−20℃から約60℃の温度で行うことができる。この反応は、約5容量%のトリフルオロ酢酸(TFA)と50容量%のTFAの間で使用するジクロロメタンなどの相溶性溶媒中で行うことができる。好ましくは、図式5に示したような酸によって媒介される保護基の除去は、約10から約25容量%のTFAを使用して、約0℃から約40℃の温度で行うことができる。さらに好ましくは、図式5に示したような酸によって媒介される保護基の除去は、ジクロロメタン中、約10から約20容量%のTFAを使用して、約0℃から約25℃の温度で行うことができる。最も好ましくは、図式5に示したような酸によって媒介される保護基の除去は、ジクロロメタン中、約20容量%を使用して、室温で行うことができる。
【0116】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式5に示したプロセスのもう一つの実施態様では、図式4に示した生成物5dを逆相HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーまたは膜透析により精製することができる。さらに好ましくは、上述の精製法のうちの2つまたはそれ以上の組合せを併用して、または別々に使用して、本発明の接合体を精製することができる。
【0117】
上記または下記実施態様のいずれかとともに、図式5に示したプロセスのもう一つの実施態様では、前記精製方法を1回より多く行うことができる。
【0118】
(誘導体)
本発明のペプチドおよび/または接合ペプチドの誘導体も、ここで考慮されている。こうした誘導体は、本明細書に開示するビヒクル−またはPEG−接合ペプチドの溶解度、吸収、生物学的半減期などをさらに改善することができる。また、付加部分により、本明細書に開示するペプチドおよび/または接合ペプチドの何らかの望ましくない特性を削除または減弱することができる。具体例としての誘導体には、次の場合のビヒクル−またはPEG−接合ペプチドが挙げられる。
【0119】
1.ペプチドおよび/もしくは接合ペプチドまたはこれらの一部が環状である。例えば、ペプチドおよび/または接合ペプチドのペプチド部分は、ジスルフィド結合の形成により環化し得る2個またはそれ以上のシステイン残基を(例えば、ペプチジルリンカー内に)含有するように、変性することができる。環化誘導体の製造に関して参照するための引用については、国際公開第00/24782号を参照のこと。
【0120】
2.ペプチドならびに/またはビヒクル−もしくはPEG−接合ペプチドが、架橋しているか、分子間架橋できるようにされている。例えば、接合ペプチドのペプチド部分は、1個のCys残基を含有するように変性することができ、これによって同様の分子と分子間ジスルフィド結合を形成することができる。
【0121】
3.1つまたはそれ以上のペプチジル[−C(O)NR−]結合(ペプチド結合)が、非ペプチジル結合によって置換されている。具体例としての非ペプチジル結合は、−CH−カルバメート[−CH−OC(O)NR−]、ホスホネート、−CH−スルホンアミド[−CH−S(O)NR−]、尿素[−NHC(O)NH−]、−CH−第二アミン、およびアルキル化ペプチド[−C(O)NR(式中、Rは、低級アルキルである)]である。
【0122】
4.Xにおける接合ペプチドのN末端システイン残基が、N末端誘導基で置換されていてもよい。実例としてのN末端誘導体基には、−NHR(式中、Rは、モノアルキルである)が挙げられる。
【0123】
二官能性因子剤での誘導化は、ビヒクル接合ペプチドまたはこれらの官能性誘導体を水不溶性支持マトリックスまたは他の高分子ビヒクルに架橋させるために有用である。一般に使用されている架橋剤には、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、4−アジドサリチル酸とのエステル)、ホモ二官能性イミドエステル(3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)などのジスクシンイミジル、およびビス−N−マレイミド−1,8−オクタンなどの二官能性マレイミドを含む)が挙げられる。メチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]−プロピオイミデートなどの誘導化剤により、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化性中間体が生じる。また、臭化シアン活性化炭水化物などの反応性水不溶性マトリックスならびに米国特許第3,969,287号、同第3,691,016号、同第4,195,128号、同第4,247,642号、同第4,229,537号、および同第4,330,440号に記載されている反応性基質が蛋白質の固定に利用される。
【0124】
炭水化物(オリゴ糖)基は、蛋白質の糖付加部位であることが知られている部位に適便に結合させることができる。一般に、O結合オリゴ糖は、セリン(Ser)またはトレオニン(Thr)残基に結合しており、一方、N結合オリゴ糖は、これらが配列Asn−Aaa−Ser/Thr(この場合、Aaaは、プロリンを除くあらゆるアミノ酸であり得る)の一部である場合は、アスパラギン(Asn)残基に結合している。Aaaは、好ましくは、プロリン以外の19の天然アミノ酸のうちの一つである。それぞれのタイプで見出されるN結合またはO結合オリゴ糖およびこれらの糖残基の構造が違う。両方に共通し見出される糖の1つのタイプは、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸と呼ばれる)である。シアル酸は、通常、N結合オリゴ糖とO結合オリゴ糖、両方の末端残基であり、この負の電荷によってグリコシル化接合ペプチドに酸性の特性をもたらすことができる。こうした部位(複数を含む)を本発明のビヒクル接合ペプチドのリンカーに組み込むことができる。こうした部位は、当該技術分野では公知の合成または半合成手順により、さらにグリコシル化することができる。
【0125】
他の可能な変性には、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、システインの硫黄原子の酸化、リシン、アルギニンおよび/またはヒスチジン副鎖のα−アミノ基のメチル化が挙げられる(Creighton,Proteins: Structure and Molecule Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pages 79−86(1983))。
【0126】
本明細書に別様に開示されていない限り、本明細書に記載するペプチドおよび/または接合ペプチドの合成(適切なアミノ酸誘導体の製造、ペプチドを形成するためのこれらの活性化およびカップリング、ならびにペプチドの精製およびこれらの純度を判定するための方法を含む)は、溶液相合成についてHouben−Weyl「有機化学法(Methoden der Organischen Chemie)」Vol.16,parts I & II,(1974)に概説されているような、ペプチド化学の全体知識に含まれている。固相法による合成についての適する技法も当該技術分野では公知であり、こうした技法には、Merrifield,Chem.Polypeptides,pages 335−361(Katsoyannis and Panayotis editors)(1973); Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,Volume 85,page 2149(1963); Davisら,Biochem.Intl.,Volume 10,pages 394−414(1985); Stewart and Young,Solid Phase Peptide Synthesis(1969); 米国特許第3,941,763号; Finnら,The Proteins(3d edition),Volume 2,pages 105−253(1976);およびEricksonら,The Proteins(Third Edition),Volume 2,pages 257−527(1976)に記載されているものが挙げられる。ペプチド合成の技術分野の熟練した化学者は、本記載ペプチドを標準的な溶液法により、または手動もしくは自動固相法により、合成することができるであろう。固相合成は、この原価効率のため、個々のペプチドの製造に好ましい技法である。
【0127】
医薬組成物
(概説)
本発明は、例えば炎症および疼痛(炎症性疼痛ならびに関連痛覚過敏および異痛を含むが、これらに限定されない)の予防または治療において、本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドの医薬組成物を使用する方法も提供する。本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドは、視床痛症候群、糖尿病、毒素および化学療法、敗血症性ショック、関節炎、混合型および非血管症候群、一般炎症、関節炎、リウマチ病、狼瘡、変形性関節症、炎症性腸疾患、炎症性眼疾患、炎症性または不安定膀胱障害、乾癬、炎症性成分での皮膚病訴、日焼け、心臓炎、炎症性腸疾患、皮膚炎、筋炎、神経炎、膠原血管病、慢性炎症性状態、上皮組織損傷または機能不全、単純疱疹、糖尿病性神経因性疼痛、ヘルペス後神経痛、灼熱痛、交感神経依存性疼痛、求心路遮断症候群、緊張性頭痛、アンギナ、偏頭痛、手術の痛み、呼吸部、尿生殖器部、胃腸部もしくは脈管部における内臓運動障害、創傷、火傷、アレルギー性鼻炎、喘息、アレルギー性皮膚反応、心因性痒み、白斑、一般胃腸障害、大腸炎、胃潰瘍形成、十二指腸潰瘍、または血管運動神経性もしくはアレルギー性鼻炎を含む(しかし、これらに限定されない)、B1の活性化に随伴するまたはB1の活性化によって媒介される他の有痛状態の予防または治療にも治療価値を有する。
【0128】
本発明は、急性疼痛、歯痛、背部疼痛、腰痛、外傷からの痛み、手術の痛み、切断または膿瘍に起因する痛み、灼熱痛、脱髄疾患、三叉神経痛、癌、慢性アルコール中毒、卒中、視床痛症候群、糖尿病、後天性免疫不全症候群(「AIDS」)、毒素および化学療法、一般頭痛、偏頭痛、群発頭痛、混合型血管および非血管症候群、緊張性頭痛、一般炎症、関節炎、リウマチ病、狼瘡、変形性関節症、炎症性腸疾患、炎症性眼疾患、炎症性または不安定膀胱障害、乾癬、炎症性成分での皮膚病訴、日焼け、心臓炎、皮膚炎、筋炎、神経炎、膠原血管病、慢性炎症性状態、炎症性疼痛ならびに関連痛覚過敏および異痛、神経因性疼痛ならびに関連痛覚過敏および異痛、糖尿病性神経因性疼痛、灼熱痛、交感神経依存性疼痛、求心路遮断症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、上皮組織損傷または機能不全、単純疱疹、ヘルペス後神経痛、呼吸部、尿生殖器部、胃腸部もしくは脈管部における内臓運動障害、創傷、火傷、アレルギー性皮膚反応、心因性痒み、白斑、一般胃腸障害、大腸炎、胃潰瘍形成、十二指腸潰瘍および気管支疾患の予防または治療のための本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドの使用も提供する。
【0129】
従って、本発明は、急性疼痛、歯痛、背部疼痛、腰痛、外傷からの痛み、手術の痛み、切断または膿瘍に起因する痛み、灼熱痛、脱髄疾患、三叉神経痛、癌、慢性アルコール中毒、卒中、視床痛症候群、糖尿病、後天性免疫不全症候群(「AIDS」)、毒素および化学療法、一般頭痛、偏頭痛、群発頭痛、混合型血管および非血管症候群、緊張性頭痛、一般炎症、関節炎、リウマチ病、狼瘡、変形性関節症、炎症性腸疾患、炎症性眼疾患、炎症性または不安定膀胱障害、乾癬、炎症性成分での皮膚病訴、日焼け、心臓炎、皮膚炎、筋炎、神経炎、膠原血管病、慢性炎症性状態、炎症性疼痛ならびに関連痛覚過敏および異痛、神経因性疼痛ならびに関連痛覚過敏および異痛、糖尿病性神経因性疼痛、灼熱痛、交感神経依存性疼痛、求心路遮断症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、上皮組織損傷または機能不全、単純疱疹、ヘルペス後神経痛、呼吸部、尿生殖器部、胃腸部もしくは脈管部における内臓運動障害、創傷、火傷、アレルギー性皮膚反応、心因性痒み、白斑、一般胃腸障害、大腸炎、胃潰瘍形成、十二指腸潰瘍および気管支疾患などの疾患を治療するための薬物の製造における1つまたはそれ以上の本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドの使用にも関する。
【0130】
ここで用いる「治療」または「治療すること」は、有益なまたは望ましい臨床結果を得るためのアプローチである。本発明のために、有益なまたは望ましい結果には、次のうちの1つまたはそれ以上が挙げられるが、これらに限定されない:急性、慢性、炎症性、神経因性または手術後疼痛を含む疼痛および/または炎症のあらゆる側面の改善または緩和。本発明のために、有益なまたは望ましい結果には、次のうちの1つまたはそれ以上が挙げられるが、これらに限定されない:疼痛および/または炎症のあらゆる側面を含む疼痛および/または炎症を随伴する1つまたはそれ以上の症状の(重症度の低減を含む)緩和(例えば、疼痛および/もしくは炎症の継続期間の短縮、ならびに/または疼痛の感度または感覚の低下)。
【0131】
こうした医薬組成物または薬物は、注射による投与用、または経口投与、肺投与、経鼻投与、経皮投与もしくは他の形態での投与用であり得る。一般に、本発明は、(疼痛または本明細書に提供する他の病状のいずれかを予防、改善または撤廃するために有効な量での)本発明の少なくとも1つのペプチドおよび/または少なくとも1つのビヒクル接合ペプチドの有効量とともに医薬的に許容される希釈剤、賦形剤、保存薬、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体を含む医薬組成物を包含する。こうした組成物は、様々な緩衝液分(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pHおよびイオン強度の希釈剤;洗剤および可溶化剤(例えば、Tween 80、Polysorbate 80)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存薬(例えば、Thimerosol、ベンジルアルコール)および増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤;ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの重合体ビヒクル接合ペプチドの粒状製剤への、またはリポソームへの材料の組み込みを含む。ヒアルロン酸も使用することができ、これは、循環における長期持続時間を促進する作用を有し得る。こうした組成物は、本発明のビヒクル接合ペプチドの物理的状態、安定性、インビボでの放出率、およびインビボでのクリアランス率にさらに影響を及ぼし得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,pages 1435−1712(1990)参照。前記参照は、本明細書に参照により組み込まれている。本組成物は、液体形で、または乾燥粉末(例えば、凍結乾燥形)として製造することができる。経皮調合物である場合には、移植可能な持続放出性調合物も考慮される。
【0132】
(経口剤形)
経口固体剤形は、ここでの使用が考慮されており、これらは、上記Remington’s Pharmaceutical SciencesのChapter 89(本明細書に参照により組み込まれている)に概説されている。固体剤形には、錠剤、カプセル、ピル、トローチもしくはローゼンジ、カシェ剤またはペレットが挙げられる。また、リポソームまたはプロテイノイド封入を用いて、本組成物を調合することもできる(例えば、米国特許第4,925,673号において報告されているプロテイノイドミクロスフェアなど)。リポソーム封入を用いることができ、これらのリポソームは、様々なポリマーから誘導することができる(例えば、米国特許第5,013,556号参照)。可能な固体剤形の説明は、Marshall,K.,Modern Pharmaceutics,edited by G.S.Banker and C.T.Rhodes(1979)のChapter 10に与えられている(前記参照は、本明細書に参照により組み込まれている)。一般に、この調合物は、本発明のビヒクル接合ペプチド、ならびに本ビヒクル接合ペプチドを胃の環境からは保護し、腸内で放出させることができる不活性成分を含むであろう。
【0133】
また、本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドこれら自体の経口剤形は、特に考慮されている。これに関しては、必要な場合には、これらのペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドを、経口送達により意図した効果が生じるように化学変性することができる。N−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸ナトリウム(SNAC)などの変性脂肪族アミノ酸の塩を担体として使用して、本発明のビヒクル接合ペプチドの吸収を増進することもできる。「経口薬物送達組成物および方法(Oral Drug Delivery Composition and Method)」と題する米国特許第5,792,451号を参照のこと。
【0134】
本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドは、粒径約1ミリメートルの顆粒またはペレットの形態での多成分微粒子(fine multi−particulates)として調合物に含めることができる。カプセル投与用の材料の調合物は、粉末としてであってもよいし、軽く圧縮したプラグとしてであってもよいし、またはさらに錠剤としてであってもよい。治療薬を圧縮によって製造することもできる。
【0135】
着色剤および着香剤は、すべて含めることができる。例えば、本ペプチドおよび/もしくはビヒクル接合ペプチドまたはこれらのなんらかの誘導体を(例えば、リポソームまたはミクロスフェア封入により)調合し、この後、着色剤および着香剤を含有する清涼飲料などの食品の中にさらに含めることができる。
【0136】
不活性材料で本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドを希釈または増量することができる。これらの希釈剤には、炭水化物、特に、マンニトール、α−ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、変性デキストランおよびデンプンを挙げることができる。三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む一定の無機塩も充填剤として使用することができる。市販希釈剤には、Fast−Flo、Emdex、STA−Rx 1500、EmcompressおよびAvicellなどがある。
【0137】
固体剤形への治療薬の調合の際に崩壊剤を含めてもよい。崩壊剤として使用される材料には、デンプンをベースにした市販の崩壊剤、Explotabを含む、デンプンが挙げられるが、これらに限定されない。デンプングリコール酸ナトリウム、Amberlite、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然スポンジおよびベントナイトも使用することができる。崩壊剤のもう1つの形態は、不溶性カチオン交換樹脂である。粉末ゴムは、崩壊剤として、および結合剤として使用することができ、これらには、寒天、カラヤゴムまたはトラガカントゴムなどの粉末ゴムを挙げることができる。アルギン酸およびこのナトリウム塩も崩壊剤として有用である。
【0138】
結合剤は、本医薬組成物の成分を結合させて、硬質錠剤を形成するために使用することができ、これらには、アラビアゴム、トラガカントゴム、デンプンおよびゼラチンなどの天然産物から材料が挙げられる。他には、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、両方とも、本治療薬を顆粒にするためにアルコール溶液で使用することができる。
【0139】
減摩剤を調合物に含めて、調合プロセス中の粘着を防止することができる。滑沢剤は、治療薬とダイ壁の間の層として使用することができ、これらには、ステアリン酸(このマグネシウムおよびカルシウム塩を含む)、ポリテトラヒドロエチレン(PTFE)、液体パラフィン、植物油および蝋を挙げることができるが、これらに限定されない。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、Carboxwax 4000および6000などの可溶性滑沢剤も使用することができる。
【0140】
調合中のビヒクル接合ペプチドの流動性を改善することができる、および圧縮中の再配列を助長する潤滑剤を添加してもよい。こうした潤滑剤には、デンプン、タルク、熱分解法シリカおよびケイアルミン酸塩水和物を挙げることができる。
【0141】
本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドの水性環境への溶解を助長するために、界面活性剤を湿潤剤として添加してもよい。こうした界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムなどのアニオン系洗剤を挙げることができる。カチオン系洗剤を使用してもよく、これらには、塩化ベンズアルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを挙げることができる。界面活性剤として調合物に含めることができる可能性がある非イオン系洗剤のリストは、ラクロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースである。これらの界面活性剤は、単独で、または種々の比率での混合物として、調合物中に存在し得る。
【0142】
本ペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドの取り込みを増進するた添加剤も、調合物に含めることができる。この特性を有する可能性がある添加剤には、例えばオレイン酸、リノール酸およびリノレイン酸などの様々な脂肪酸が挙げられる。
【0143】
制御放出調合物が望ましいこともある。本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドは、分散メカニズムまたは浸出メカニズムのいずれかにより放出させる不活性マトリックス、例えばゴム、に組み込むことができる。ゆっくりと分解するマトリクス、例えばアルジネートまたは多糖類、を調合物に組み込むこともできる。本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドのもう1つの制御放出形は、Oros治療薬系(Alza Corp.)に基づく方法、すなわち、浸透圧効果に起因して一つの小さな開口部に水が入り薬物を押出すことができる半透膜の中に薬物を封入する方法による。一部の腸溶コーチングも、遅延放出効果を有する。
【0144】
(肺送達形)
本発明の医薬組成物の肺送達も、ここで考慮されている。本ペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチド(またはこれらの誘導体)は、吸入するうちに哺乳動物の肺に送達され、肺上皮層を横断して血流に至る。これに関して有用であり得る高分子の肺送達に関する報告には、Adjeiら,Pharma.Res.,Volume 7,pages 565−569(1990); Adjeiら,Internatl.J.Pharmaceutics,Volume 63,pages 135−144(1990)(酢酸ロイプロリド); Braquetら,J.Cardiovasc.Pharmacol.,Volume 13(suppl.5),s.143−146(1989)(エンドセリン−1); Hubbardら,Annals Int.Med.,Volume 3,pages 206−12(1989)(α1−アンチトリプシン) ;Smithら,J.Clin.Invest.,Volume 84,pages 1145−1146(1989)(α1−プロテイナーゼ); Osweinら、「蛋白質のエーロゾル適用(Aerosolization of Proteins)」,Proc.Symp.Resp.Drug Delivery II,Keystone,Colorado(1990)(組換えヒト成長ホルモン); Debsら,J.Immunol.,Volume 140,pages 3482−3488(1988)(インターフェロン−γおよび腫瘍壊死因子α);および米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)が挙げられる。
【0145】
治療製品の肺送達用に設計された広範な機械装置が、本発明の実施における使用に考慮されており、これらには、ネブライザ、定量吸入器および粉末吸入器(これらは、すべて、当業者によく知られている)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施に適する市販装置の幾つかの具体的な例には、ミズーリ州、セントルイスのMallinckrodt,Inc.により製造されている、Ultravent nebulizer;コロラド州、エングルウッドのMarquest Medical Productsにより製造されているAcorn II nebulizer;ノースカロライナ州、リサーチ・トライアングル・パークのGlaxo Inc.により製造されているVentolin metered dose inhaler;およびマサチューセッツ州、ベッドフォードのFisons Corp.によって製造されているSpinhaler powder inhalerがある。
【0146】
こうした装置すべてが、本明細書に記載するペプチドおよび/もしくはビヒクル接合ペプチドならびに/またはこれらの誘導体の分散に適する調合物の使用を必要とする。一般に、各調合物は、利用される装置のタイプに特有のものであり、治療に有用な希釈剤、賦形剤、アジュバントおよび/または担体に加えて、適切な噴射剤材料の使用を必要とし得る。
【0147】
これらの肺用組成物のための医薬的に許容される担体には、トレハロース、マンニトール、キシリトール、スクロース、ラクトースおよびソルビトールなどの炭水化物が挙げられる。調合物に使用するための他の成分には、DPPC、DOPE、DSPCおよびDOPCが挙げられる。天然または合成界面活性剤を使用することができる。(ペプチドの送達に関するこの使用とはさらに別に)PEGを使用することができる。シクロデキストランなどのデキストラン、胆汁酸塩、セルロースおよびセルロース誘導体も使用することができる。緩衝調合物などでアミノ酸を使用することもできる。
【0148】
加えて、リポソーム、マイクロカプセルもしくはミクロスフェア、包接錯体、または他のタイプの担体が、考慮される。
【0149】
ジェットタイプまたは超音波タイプ、いずれかのネブライザでの使用に適する調合物は、一般に、溶液1ミリリトル(mL)あたり生物活性薬約0.1から25ミリグラム(mg)の濃度で水に溶解した本記載ペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドを含むであろう。この調合物は、(例えば、ペプチドの安定化および浸透圧の調節のために)緩衝液および単糖も含むことができる。ネブライザ用調合物は、エーロゾルを形成する際の溶液の霧化に起因する蛋白質の表面誘起凝集を低減または防止するために、界面活性剤を含有することもできる。
【0150】
定量吸入装置で使用するための調合物は、界面活性剤を利用して噴射剤に懸濁させた本記載ペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドを含有する微粉を一般に含む。噴射剤は、この目的に利用されるあらゆる従来どおりの材料、例えば、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボンもしくは炭化水素(トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノールおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む)またはこれらの組合せであり得る。適する界面活性剤には、トリオレイン酸ソルビタンおよび大豆レシチンが挙げられる。オレイン酸は、界面活性剤として有用であり得る。
【0151】
粉末吸入装置から分散させるための調合物は、本記載ペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドを含有する乾燥微紛を含むであろう。また、前記装置からの前記微粉の分散を促進する量、例えばこの調合物の50から90重量%、でラクトース、ソルビトール、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはキシリトールなどの増量剤も含有することができる。
【0152】
(経鼻送達形)
本ペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドの経鼻送達も考慮される。経鼻送達により、本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドを、この治療製品を鼻に投与後、この製品を肺に蓄積させる必要なく、直接血流に送ることができる。経鼻送達用の調合物には、デキストランまたはシクロデキストランを伴うものが挙げられる。他の粘膜を通した輸送による送達も考慮される。
【0153】
(ポンプ送達)
本発明の一定の実施態様では、本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドの局所送達が、B1媒介疾患の治療または予防のために考慮されている。本発明によって考慮される局所送達の1つの方法は、薬剤が作用する局所部位での薬剤の注射である。
【0154】
局所送達のためのもう1つの方法は、所望の身体部位に薬物を送るためにカテーテルを挿入し、ポンプを使用してこのカテーテルを通して薬物(複数を含む)を推し進めることを含む。体内に移植されたカテーテルとともに使用される体外装着型薬物ポンプは、当業者には公知である。
【0155】
局所送達のためのさらにもう1つの方法には、植え込み型薬物送達装置が挙げられる。体外ポンプおよびカテーテルシステムを使用する技術の不利益に対処するために開発された植え込み型装置は、当業者には公知である。植え込み型薬物送達ポンプは、薬物を貯蔵するためのレザバー;新鮮な製剤を注入することができ、前記レザバーから定期的に古い薬物を除去することもできる注入口;および場合により、所望の部位に薬物を送達するためのカテーテルを具備する。好ましい植え込み型装置には、Duros implant(カリフォルニア州、マウンテンビューのAlza Corporation)、Synchro Med IまたはII Infusion System(ミネアポリスのMedtronic,Inc.)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
加えて(または)、本発明は、本明細書において上で先程述べた、および/または当業者には公知である、様々な緩速放出性もしくは徐放性調合物またはミクロ粒子調合物のいずれかにおいて使用するためのペプチドおよび/または接合ペプチドを提供する。
【0157】
(用量)
投薬することができる本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドの有効用量は、生物学的半減期、バイオアベイラビリティおよび毒性などのパラメータを取り扱う当業者には周知の手順により決定することができる。好ましい実施態様において、有効用量範囲は、当業者には公知である常用のインビトロおよびインビボ試験からのデータを使用して、当業者により決定される。例えば、下の実施例6において説明する具体例としてのアッセイなどのインビトロ細胞培養アッセイは、当業者が、何らかの量のB1誘発活性を阻害するために必要な本ペプチドまたは接合ペプチドの平均阻害濃度(IC)または平均有効濃度(EC)(例えば、50%、IC50;または90%、IC90)を容易に決定することができるデータをもたらすであろう。次に、当業者は、所定のIC値と等しい、またはそれ以上の本ペプチドの最少血漿中濃度(Cmin)が得られるように、1つまたはそれ以上の常用動物モデルからの薬物動態データ、例えば、下の実施例9において説明する具体例としての薬物動態データを使用して適切な用量を選択することができる。複雑な疾病または疾患を治療するための方法に関する投与計画は、治療薬の作用を修飾する様々な因子、例えば、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、治療する状態の重症度、投与回数、ならびに他の臨床因子を考慮して、掛かりつけの臨床医により決定されるであろう。一般に、一日あたりの投与計画は、体重のキログラム(kg)あたり、本ペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチド1.0から10000マイクログラム(μg)、好ましくは体重のキログラムあたり1.0から1000μg、最も好ましくは体重のキログラムあたり1.0から150μgの範囲内であろう。
【0158】
(併用療法)
もう一つの側面において、本発明は、本発明のペプチドおよび/または接合ペプチドの一定量ならびにNSAIDの一定量を投与することを含む、疼痛および/もしくは炎症、またはB1活性化に随伴するあらゆる状態もしくは疾患を治療する(他の実施態様では、予防する)ための方法を含む。用語「NSAID」は、非ステロイド性抗炎症化合物を指す。ペプチド拮抗薬および/または接合ペプチド拮抗薬とNSAIDの相対量および比率は、変化し得る。一部の実施態様では、同程度の疼痛または炎症を改善するために必要とされるNSAIDの通常の用量を低減させるために充分なペプチド(複数を含む)および/または接合ペプチド(複数を含む)が投与されることとなる。一部の実施態様では、同程度の疼痛または炎症を改善するために必要とされるNSAIDの通常の用量を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはそれ以上低減させるために充分なペプチド(複数を含む)および/または接合ペプチド(複数を含む)が投与されることとなる。この低減を所定の投与で投与される量、および/または所定の期間にわたって投与される量(頻度低減)に反映させることができる。
【0159】
もう1つの側面において、本発明は、NSAIDの有効量と併用で本発明の少なくとも1つのペプチドおよび/または少なくとも1つの接合ペプチドの有効量を投与することを含む、NSAID疼痛または炎症治療を強化するための方法を提供する。ここで用いる「併用での投与」は、NSAIDならびに本発明のペプチドおよび/または接合ペプチドが、有効量で個体に投与されるあらゆる状況を包含するという意味も持つ。ここで用いる「併用での投与」は、同時投与および/または別の時点での投与を含む。併用での投与は、共共調合物(すなわち、本発明のペプチドおよび/または接合ペプチドならびにNSAIDが、同じ組成物中に(併せて)存在する)としての投与、および/または別の組成物としての投与も包含する。本発明のペプチド(複数を含む)および/または接合ペプチド(複数を含む)ならびに少なくとも1つのNSAIDを異なる投薬頻度および/または間隔で投与できることは、理解される。例えば、本発明の接合ペプチドは、週に1度投与してもよく、この一方でNSAIDは、より頻繁に投与することができる。本発明のペプチド(複数を含む)および/または接合ペプチド(複数を含む)ならびにNSAIDは、同じ投与経路または異なる投与経路を使用して投与できること、ならびに異なる投薬計画が、投与(複数を含む)の経過につれて変化し得ることは、理解される。投与は、疼痛または炎症の発症前であってもよい。従って、もう1つの側面において、本発明は、個体における疼痛および/または炎症を治療する、個体における疼痛および/または炎症の発生率を低下させる、個体における疼痛および/または炎症の発現または進行を緩和および/または遅延させるための方法を提供し、前記方法は、本発明の少なくとも1つのペプチドおよび/または少なくとも1つの接合ペプチドの有効量を少なくとも1つのNSAIDの有効量と併用で投与することを含む。こうした方法は、NSAIDの使用が一般に指示されている疼痛および/または炎症を含むあらゆる病因のあらゆる疼痛および/または炎症の治療または予防を含む。こうした方法は、B1活性化により媒介される、またはB1活性化に随伴すると、本明細書において上で先程述べた、または下で述べるあらゆる状態または疾患の治療または予防にも適する。一部の実施態様において、この疼痛および/または炎症は、手術後の痛みである。一部の実施態様において、この疼痛および/または炎症は、火傷または創傷に随伴する。他の実施態様において、この疼痛および/または炎症は、関節リウマチに随伴する。他の実施態様において、この疼痛および/または炎症は、変形性関節症に随伴する。他の実施態様において、この疼痛および/または炎症は、ヘルペス後神経痛に随伴する。一部の実施態様において、NSAIDは、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、トルメチン、スリンダク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ジフルニサル、Rufenisal、ピロキシム、スドキシカム、イソキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、DUP−697、フロスリド、メロキシカム、6メトキシ−2ナフチル酢酸、MK−966、ナブメトン、ニメスリド、NS−398、SC−5766、SC58215、T−614、またはこれらの組合せから成る群より選択される。
【0160】
(実施例)
以下の実施例は、説明のためだけに提供するものであり、いかなる点においても本発明の制限と解釈されず、本発明の制限と見なすべきではない。本発明の精神または範囲を逸脱することなく、本明細書に開示する化合物を変更および変形できることは、当業者には理解されるであろう。本発明の化合物は、以下の方法のうちの1つまたはそれ以上に従って合成することができる。一般手順は、立体化学が特定されていない化合物の調製に関するがごとく示されていることに注意しなければならない。しかし、こうした手順は、一般に、特定の立体化学の化合物、例えばある基の立体化学が(S)または(R)である化合物、に適用可能である。加えて、一方の立体化学(例えば(R))を有する化合物は、公知の方法を用いて、例えば転位により、反対の立体化学(すなわち(S))を有するものを製造するために、多くの場合、利用することができる。
【実施例1】
【0161】
B1受容体ペプチド拮抗薬およびPEG接合B1受容体ペプチド拮抗薬の合成および精製。
【0162】
本発明の様々なペプチドは、当該技術分野では周知の合成技術を使用して合成することができる。本発明の様々なペプチドの好ましい合成方法は、下で説明するようなカルボジイミド活性化を用いるFMOC法を使用する。
【0163】
パート1: カルボジイミド化学を使用する樹脂へのFmoc−アミノ酸の溶解。
【0164】
Fmoc−アミノ酸(3から4当量)を乾燥DCM/NMP混合物に溶解した(NMPまたはDMFを使用して完全な溶解を助長した)。NMP中のN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、アミノ酸と同じ当量)の溶液をこのアミノ酸溶液に添加した。DCM中のN,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC、アミノ酸と同じ当量)の溶液をこのアミノ酸溶液に添加した。この溶液を約20分間混合した。次いで、この活性酸性溶液を樹脂に添加した(必要な場合には、添加前に沈殿を除去した)。樹脂がニンヒドリン試験により陰性になるまで、この反応物を攪拌した。カップリングが完了したら、樹脂を回収し、DMFで数回洗浄した。
【0165】
パート2: ペプチド−樹脂からのN末端Fmocの除去。
【0166】
Fmoc保護ペプチジル樹脂をピペリジン/DMF(2/8)で3分間、処理した。樹脂を排液し、処理を15分間、繰り返した。樹脂をDMFで洗浄し、次いで、DCMで数回洗浄した。次の段階が、段階3で説明するような樹脂からのペプチドの切断を含む場合には、この樹脂を空気乾燥させた。
【0167】
パート3: TFA切断および脱保護。
【0168】
パート2からの乾燥樹脂をフラスコに入れ、樹脂1gにつき10から25mLの切断用カクテル(95% TFA、2.5% 水、1.5% トリイソプロピルシラン、および1% エタンジチオール)を添加した。この反応物を3から4時間、攪拌した後、減圧下での濾過によって樹脂を除去し、TFAで2回洗浄した。併せた濾液を減圧下での回転蒸発により〜20%に濃縮した。この液を−50℃に冷却し、10倍量の冷乾燥エーテルで沈殿させた。沈殿を回収した。次に、このペプチドを、0.5%のTFAを含有する水/アセトニトリル混合物に溶解し、凍結乾燥させた。この後、水中10%アセトニトリル/0.1% TFAから水中50%アセトニトリル/0.1% TFAの勾配でC18 HPLCを用いてこの粗生成物を精製した。1gの粗生成物について、250x50mm C18カラムを、215および254nmでの二重波長検出で、Agilent分取HPLCにおいて90mL/分の流量で用いた。注入物を分画し、各画分を質量分析法によって分析した。質量分析を基に試験管をプールし、減圧下で濃縮して、アセトニトリルを除去し、凍結乾燥させて、ペプチドB1拮抗薬を白色の粉末として得た。特性付けは、HPLC−MSおよびMaldi−TOF質量分析によって遂行した。
【0169】
本発明の様々なPEG接合ペプチドは、次のように調製した。
【0170】
異なるペプチジルリンカーをN末端に有し、各々、末端から二番目にシステイン基を有する、配列番号5から60から成る群より選択される様々な活性ブラジキニンB1受容体拮抗薬(例えば、配列番号27から41)を、上述の方法を用いて合成した。これらのペプチド類似体を、例えば下で説明する方法Aおよび方法Bを使用して、これらのペプチド類似体のN末端システインチオールへのマレイミド活性化ポリマーの部位特定カップリングにより、異なるサイズおよび配置のポリ(エチレングリコール)(PEG)で誘導化した。得られたPEG−ペプチド接合体は、インビトロおよびインビボバイオアッセイの前に、イオン交換クロマトグラフィーによって精製し、凍結乾燥またはダイアフィルトレーションによって濃縮し、緩衝液に透析した。
【0171】
方法A:
システインを有するペプチドを、50mM NaHPO、5mM EDTA、pH6.5中のPEG−マレイミドと、2.5から5mg/mL ペプチドで、および1.2倍モル過剰のマレイミド:チオールの反応化学量論比で反応させることによって、PEG接合ペプチドを調製した。この反応物を室温(20から25℃)で1から1.5時間攪拌した。完了したら、10倍モル過剰のβ−メルカプトエタノール(β−ME):マレイミドで反応を停止させ、さらに30から60分間、室温で攪拌させておいた。
【0172】
反応の進行は、4.6x250mm、5マイクロメートル C4カラム(メリーランド州、コロンビアのGrace Vydac;カタログ番号#214TP54)に5μLの反応物を注入することにより、逆相HPLC(RP−HPLC)を使用してモニターした。未反応ペプチドおよびPEG−ペプチド接合体を、0.1%トリフルオロ酢酸中、5から90%のアセトニトリルの線形勾配で溶離した。一般に、90%より多くのペプチド類似体が、反応に消費される。
【0173】
直鎖マレイミド活性化PEGポリマー(MW=5kDまたは20kD、PD=1.01から1.02)は、シアーウォーター株式会社(Shearwater Corp.)または日本油脂株式会社(NOF Corporation)(日本、東京)により供給された。
【0174】
精製:
PEG接合ペプチドは、10mM NaOAc、20%EtOH、pH4で予め平衡させておいてSP Sepharose HPカラム(Amrsham Biosciences)を使用するカチオン交換クロマトグラフィーによって精製した。充填前、反応混合物を20% EtOHで10倍に希釈し、氷酢酸でpHを3.5に調整した。これらの希釈反応混合物を、2.5mg/mLのペプチド:樹脂比を超えないように、適切なサイズのカラムに充填した。
【0175】
次に、カラムを2カラム量(CV)の10mM NaOAc、20% EtOH、pH4で洗浄し、10から20CVにわたって10mM NaOAc、20% EtOH、pH4中、0から200mMのNaClの直線勾配で溶離した。254nmまたは220nm、いずれかでの吸収をモニターすることにより、未変性ペプチドおよびPEG−ペプチド接合体を検出した。これらの条件下、過剰なPEGおよびβ−MEは、結合せず流出する画分中に洗い出され、接合体は、〜50mM NaClから始まる広いピークで溶離され、遊離ペプチドは、〜200mM NaClでの溶離により充分に分離された。
【0176】
溶離されたピーク画分は、RP−HPCLによって評価し、均一性およびPEG接合ペプチドと一致する保持時間を基にプールした。プールした接合体ピーク画分を乾燥により濃縮し、この後、水で再構成し、緩衝液に透析した。また、ダイアフィルトレーションを用いて濃縮し、バッファと接合体を交換してもよい。
【0177】
PEG−ペプチド接合体の最終プールをRP−HPLCによって分析し、一般に、〜98%接合体であった。接合体の組成および濃度は、アミノ酸分析、ペプチド配列決定および吸収分光分析の併用により決定した。
【0178】
図式1の1cによって表される化合物の溶液安定性を、上で説明したCEX法を使用し、周囲温度、pH=7.2リン酸緩衝食塩液(PBS)中で経時的にモニターした(図1(A))。化合物1cは、1d、ならびにスクシンイミド部分の加水分解から生じた2つの産物への急速な転化を示した(IR、MS/MSおよびNMR試験の併用により構造判定)。
【0179】
方法B:
mPEG−マレイミド(1.0当量)を、攪拌機、温度プローブおよびN導入口を装備した三つ口丸底フラスコの中で、30℃で、無水MeOHに溶解した。mPEG−マレイミドが全部溶解したら、N末端システイン残基を有するペプチド(1.3当量)をこの透明な溶液に添加し、室温で3時間、攪拌した。逆相HPLCは、mPEG−マレイミドの消失および初期3−スルファニル−スクシンイミド付加体の新たなピークを示す。次に、10当量のジイソプロピル−エチルアミン(ミズーリ州、セントルイスのSigma−Aldric Corp.)をこの溶液に添加し、25℃で少なくとも24時間、攪拌した。固定相としてTOSOHAAS SP−5PW(20μm)を使用するイオン交換クロマトグラフィーにより、反応をモニターした。CEX分析は、98%を超える転化、1.5%未満の3−スルファニル−スクシンイミド付加体の残存を示した。t−ブチルメチルエーテル(TBME)を添加(この反応に使用したメタノール量の二倍)し、得られた濁った溶液を室温で1時間、攪拌した。この白色の沈殿を濾過して除去し、真空下、室温で一晩乾燥させて、粗製6−メチル−カルバモイル−5−オキソ−チオモルホリン−3−カルボキサミド結合生成物(1d)を得た。
【0180】
精製:
上の粗生成物を、MeOH−HO−AcOH系を使用するRP−HPLC(固定相として、c18 YMC ODS NQ)によって精製して、6−メチル−カルバモイル−5−オキソ−チオモルホリン−3−カルボキサミド結合生成物を、逆相クロマトグラフィー分析により純度>98%で得た。これらの純粋な画分を併せ、真空下で濃縮乾固し、得られた白色の残留物を、透明な溶液を得るために足る最少量の温MeOH(〜30℃)に溶解し、この後、TBME(使用したMeOHの量の二倍)で処理した。得られた濁った溶液を室温で1時間、攪拌し、沈殿を濾過して除去し、真空下、室温で少なくとも16時間、乾燥させた。純粋な生成物(1d)が、オフホワイトとして、全収率74%、CEXおよびRPC純度>98%で得られる。接合体の組成およびペプチドの含有率は、アミノ酸分析、ペプチド配列決定、多核NMR法および吸収分光分析の併用によって判定した。化合物1dの溶液安定性は、pH=7リン酸緩衝食塩液(PBS)中、周囲温度でモニターし、上で説明したCEX法を使用して経時的にモニターした。この化合物は、6日間にわたって注目される有意な変化がなく、有意に高く安定していることが判明した。
【0181】
逆相(RP)およびカチオン交換(CEX)クロマトグラフィー分析は、ダイオードアレーまたは可変波長検出器およびサーモスタット付きオートサンプラーを具備するAgilent 1100 HPLCシステムで行った。標準クロマトグラフ条件を下に略述する:
1.RP−HPLC法条件
カラム: YMC ODS−AQ、3μm、120Å、4.6x100mm
カラム温度: 40℃
移動相: A)水中、0.1%TFA
B)MeOH中、0.1%TFA
流量: 1.1mL/分
勾配: 時間 %B
0 5
10 40
30 95
35 95
35.1 5
40 5
検出: 220nmでのUV
注入量: サンプル濃度に依存して20μLまたは50μL
サンプル濃度: 2.5から10mg/mL
サンプル希釈剤: ダルベッコのPBS、および安定性試験において使用される他の緩衝液
2.一般的なカチオン交換クロマトグラフィー分析方法
カラム: TOSOH、TSK−GEL、SP−5PW、10μm、7.5x7.5mm
カラム温度: 25℃
移動相: A)水/EtOH(8:2)、pH3.5中、20mM NaHPO
B)水/EtOH(8:2)、pH3.5中、20mM NaHPOおよび0.5M NaCl
流量: 1.0mL/分
勾配: 時間 B%
0 0
3 0
25 45
40 100
45 100
45.1 0
50 0
検出: 220nmでのUV
注入量: サンプル濃度に依存して10から50μL
サンプル濃度: 2.5から10mg/mL
サンプル希釈剤: ダルベッコのPBS、および安定性試験において使用される他の緩衝液
【実施例2】
【0182】
PEGチオエステルを使用するPEG接合B1受容体ペプチド拮抗薬の合成および精製。
【0183】
システインを有するペプチドを、50mM NaHPO、5mM EDTA、pH7中のPEG−マレイミドと、2.5から5mg/mL ペプチドで、および1.2倍モル過剰のマレイミド:チオールの反応化学量論比で反応させることによって、PEG接合ペプチドを調製した。この反応物を室温(20から25℃)で18から26時間攪拌した。完了したら、10倍モル過剰のβ−メルカプトエタノール(β−ME):マレイミドで反応を停止させ、さらに30から60分間、室温で攪拌させておいた。これらの反応物を、上の実施例1の方法Aについて説明したとおり精製した。
【実施例3】
【0184】
PEGチオエステルまたはヨードアセテートを使用するPEG接合B1受容体ペプチド拮抗薬の合成および精製。
【0185】
N末端システイン残基を有するペプチドを、50mM NaHPO、5mM EDTA、pH7中のPEG−OPTE(オルト−ピリジルチオエステル)と、2.5から5mg/mL ペプチドで、および1.2倍モル過剰の活性化PEG:ペプチドの反応化学量論比で反応させることによって、PEG接合ペプチドを調製した。この反応物を室温(20から25℃)で18から26時間攪拌した。完了したら、10倍モル過剰のシステイン:過剰なPEG試薬で反応を停止させ、さらに30から60分間、室温で攪拌させておいた。これらの反応物を、上の実施例1の方法Aについて説明したとおり精製した。
【0186】
また、PEG−ヨードアセトアミドを上で説明したように使用して、PEG部分がチオエーテル結合により結合している接合体を形成することができる(図式3)。この場合、1.5モル当量の活性化PEG反応物を使用し、反応時間を24時間に増加し、10モル当量のβ−メルカプトエタノールで反応を停止させ、上の実施例において説明したとおり精製する。
【実施例4】
【0187】
PEGプロピオンアルデヒドを使用するPEG接合B1受容体ペプチド拮抗薬の合成および精製。
【0188】
米国特許第5,824,784号(この特許は、この全文、本明細書に参照により組み込まれている)に記載されている方法を使用し、B1受容体ペプチド拮抗薬、例えば、配列番号5から60および27から41のうちのいずれか1つをPEGで選択的にN末端変性することができる。例えば、配列番号6で示されるようなペプチド(245mg、0.14mmol)を、100mM NaHPOおよび60mM NaCnBHを含有する10mLの溶液に溶解した。この混合物を攪拌しながら4℃に冷却し、2.35gの20K mPEGプロピオンアルデヒド(アラバマ州、ハンツヴィルのNektar Therapeutics)で処理した。この混合物を3日間、攪拌し、この後、実施例1の方法Bにおいて説明したとおりRPおよびCEXクロマトグラフィーによって精製した。
【0189】
また、アミン反応性官能基を有するPEGを、図式5に図示した方法に従って、部分保護B1ペプチド拮抗薬と反応させることができる。接合反応後、固相および溶液相ペプチド合成の技術分野の技術者には公知の方法を使用して、副鎖の保護基を切断し、得られたPEG−ペプチド構築物を上で説明したとおり精製する。多官能性PEGアルデヒド(反応性基3から6個)を過モル量の保護ペプチドと反応させて、位置化学的におよび化学量論的に定義されている様式で複数のペプチドが結合している多価PEG構築物を得ることもできる。
【実施例5】
【0190】
PEG Nヒドロキシ−スクシンイミドを使用するPEG接合B1受容体ペプチド拮抗薬の合成および精製。
【0191】
B1受容体ペプチド拮抗薬、例えば、配列番号5から60のうちのいずれか1つを、図式5に図示した方法に従って部分保護B1ペプチド拮抗薬を使用して、特定のN末端または副鎖窒素原子で選択的にPEG化することができる。例えば、2.5mLの無水DMF中の部分的デカペプチド(1.43g、1.025mmol)の溶液を、25mLのジクロロメタン中、3.5g(0.18mmol)のSunbright PTE−200GS(20kD 4−アームのスクシンイミジルグルタレート;日本、東京の日本油脂株式会社(NOF))および1.0mLのジイソプロピルエチルアミンと併せた。得られた無色の溶液を室温で2日間、攪拌し、この後、減圧下で蒸発させた。得られた残留物を25mLの脱イオン水に溶解し、分画分子量10,000の透析膜(米国、イリノイ州、ロックフォードのPierce)内に配置した。化合物を24時間、水に透析し(緩衝液交換3回)、この後、凍結乾燥させて、保護された四価PEG生成物を得た。得られた白色の固体を60mLのジクロロメタンに溶解し、20mLの無水TFAで処理した。室温で2日間、攪拌した後、この反応混合物を減圧下で蒸発させ、この後、上のとおり溶解し、透析した。透析された材料を凍結乾燥させ、この後、前に説明したようなイオン交換クロマトグラフィーによって精製して、四価生成物を白色の固体として得た。同様のやり方で、1から6個のスクシンイミジルグルタレート部分を有するPEGを使用して、一または多官能性ペプチド構築物を調製した。
【0192】
【表4】

【0193】
【表5】

【実施例6】
【0194】
B1活性のペプチド PEG接合ペプチド拮抗薬のインビトロB1阻害活性
B2活性と比較してB1活性を選択的に阻害することができるペプチドおよび/または接合ペプチドを、下のセクションA、BおよびCにおいて説明するものなどのアッセイを使用して特定した。
【0195】
A.カルシウムフラックスを使用するヒトB1受容体機能のインビトロアッセイ:
結合B1受容体の活性化により、細胞内カルシウムの増加が生じる。故に、カルシウム感受性発光蛋白質エクオリンをB1受容体活性化の指示薬として使用することができる。エクオリンは、発色団補因子セレンテラジンに結合すると生物発光複合体を形成する21kDa発光蛋白質である。この複合体にカルシウムが結合すると、セレンテラジンの酸化反応により、アポエクオリン、セレンテラミド、CO、および従来どおりの発光測定により検出することができる光が生じる。
【0196】
安定なCHO D−/ヒトB1受容体(ゲンバンクアクセッション番号AJ238044)/エクオリン細胞系統を樹立し、比率1:1のDMEMとHAMのF12(Gibco 11765−047)、ハイグルコース(Gibco 11965−084)、10%熱不活性化透析血清(Gibco 26300−061)、1X 非必須アミノ酸(Gibco 11140−050)、1X グルタミン−Pen−Strep(Gibco 10378−016)およびヒグロマイシン、300μg/mL(Roche 843555)を含有するスピンナー瓶内の懸濁液中で維持した。照度計アッセイの15から24時間前、96ウエル黒壁透明底アッセイプレート(Costar #3904)に細胞数25,000/ウエル(細胞数2.5E6/10mL/プレート)でプレーティングする。
【0197】
ウエルから培地を除去し、30mM HEPES(pH7.5)および15μM セレンテラジン(Coelenterazine h Luciferin #90608;Assay Designs(ミシガン州、アナーバー))を含有する60μLの無血清HAMのF12で置換する。次いで、これらのプレートを1.5から2時間、インキュベートする。拮抗薬化合物の1:3または1:5希釈物が入った10点IC50化合物プレートおよび作動薬アクチベータプレート(20nM des−Arg10−Kallidin 最終濃度、EC80)を、30mM HEPES(pH7.5)を含有するHamのF12を使用して調製する。セレンテラジンのインキュベーション後、自動フラッシュ−照度計プラットフォームを使用して、B1拮抗薬化合物を細胞プレートに分配し、細胞プレートの下にあるCCDカメラにより5秒間隔で12枚の細胞プレートの画像を撮影して、化合物に伴う何らかの作動薬活性があるかを判定する。次に、hB1作動薬、des−Arg10−Kallidin、を細胞プレートに添加し、さらに12枚の画像を記録して、拮抗薬(複数)のIC50を決定する。
【0198】
B.カルシウムフラックスを使用するhB2受容体機能のインビトロアッセイ:
hB2受容体活性化により誘導される細胞内カルシウムフラックスを、PerkinElmer(マサチューセッツ州、ウェズリー)から購入したhB2組変え細胞系統(CHO−K1)(カタログ番号:RBHB2C000EA)を使用し、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)で分析する。HamのF12 Nutrient Mixture(カリフォルニア州、カールスバッドのInvitrogen Corp.;カタログ番号:11765−047)、10% Fetal Clone II Bovine Serum(ユタ州、ローガンのHyClone;カタログ番号:SH3006603)、1mM ピルビン酸ナトリウム(100mM 原液、Invitrogen Corp.、カタログ番号:12454−013)および0.4mg/mL Geneticin(G418;50mg/mL 活性ジェネティシン、Invitrogen、カタログ番号:10131−207)が入っているT225フラスコの中で細胞を培養する。培地は、1日おきに交換する。FLIPRアッセイの24時間前、hB2/CHO細胞をPBS(Invitrogen)で1回洗浄し、10mLのVersene(1:5000、Invitrogen、カタログ番号:15040−066)を各フラスコに添加する。37℃で5分インキュベートした後、Verseneを除去し、細胞をフラスコから引き離し、培地に再び浮遊させる。細胞をカウントし、細胞25,000個/ウエルを96ウエル黒壁透明底アッセイプレート(マサチューセッツ州、アクトンのCostar;カタログ番号:3904)にプレーティングする。細胞を37℃ COインキュベータの中で一晩、インキュベートする。
【0199】
細胞から培地を吸出し、65μLの色素負荷緩衝液で置換する。この負荷緩衝液は、10%[w/v]プルロン酸(pluronic acid)を含有するDMSOに溶解した0.5mM Fluo−4 AM(オレゴン州、ユージーンのMolecular Probes)の原液を、0.1% BSA、20mM HEPESおよび2.5M プロベネシド(プロベネシドは、アニオン輸送蛋白質の活性を阻害し、従って、細胞における色素負荷を増進する)を含有する透明ダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)中、1μMの濃度に希釈することにより調製する。細胞を1時間、室温で、色素負荷する。アッセイ緩衝液で細胞を2回洗浄することにより、過剰な染料を除去する。このアッセイ緩衝液は、20mM HEPES、0.1% BSAおよび2.5mM プロベネシドを含有するハンクス平衡塩類溶液(HBSS)から成る。これらの洗浄サイクルの後、各ウエルに100μL量を残し、プレートをFLIPR Systemでアッセイするために準備する。アッセイ緩衝液を使用して、拮抗薬化合物の1:3または1:5希釈物が入っている単点(最終濃度10μM)POC拮抗薬化合物プレートまたは10点IC50化合物プレート、および作動薬アクチベータプレート(ブラジキニン最終濃度0.3nM、EC80)を作製する。細胞プレートおよび化合物プレートをFLIPRに装填し、アッセイ中、細胞プレートの96すべてのウエルから同時に蛍光読み取り値を取る。1秒読み取り値を10取って、ウエルごとに安定なベースラインを確立し、この後、B1拮抗薬プレートからの25μLを迅速に(50μL/秒)添加する。蛍光シグナルを1秒間隔(1分)、この後、6秒間隔(2分)で合計3分間測定して、化合物に伴う何らかの作動薬活性があるかを判定する。次いで、B2作動薬、ブラジキニンを細胞プレートに添加し、さらに3分間、記録を取って、10μMでの阻害率(POCプレート)または拮抗薬のIC50を決定する。
【0200】
hB1エクオリンアッセイで検定したビヒクル−またはPEG−接合ペプチドについてのIC50値は、平均して、大きなPEGポリマーに接合しているペプチドに付与されるインビトロ活性のほうがわずかに低かった。例えば、配列番号36によって表されるペプチドおよび配列番号37によって表されるこのアセチル化形は、hB1受容体で、それぞれ、3.0nM(+/−5nM、n=8)および3.2nM(+/−3.2nM、n=9)のIC50という結果になった。しかし、本明細書において説明するとおりPEGに接合させた同ペプチドは、約10倍のIC50の増加を示した。ペプチドの天然形、アセチル化形およびPEG接合形は、hB2 FLIPRアッセイでは、10μMまで不活性であった。hB1受容体、hB2受容体、いずれにおいても作動薬活性を示した化合物はなかった。
【0201】
C.hB1受容体結合ペプチドの組織ベースのインビトロアッセイ:
本発明のペプチドおよび/またはビヒクル接合ペプチドのブラジキニンB1受容体に対する拮抗薬活性および選択性を、下で説明するインビトロヒト臍静脈(HUV)収縮性アッセイで判定した:
酸素処理(95%Oおよび5%CO)し、予め温めておいた(37℃)、次の組成(単位mM):NaCl 118.0、KCl 4.7、MgSO 1.2、CaCl 2.5、KHPO 1.2、NaHCO 25.0およびグルコース11.0(pH7.4)、の標準生理食塩液が入っている20mL器官槽に、内皮剥脱血管を懸濁させた。高K+溶液(80mM KCl)を、KClでのNaClの等モル置換により調製した。B2受容体を阻害するため、およびペプチドの分解を防止するために、Hoe 140(1μM)、mergetpa(1μM)およびカプトプリル(10μM)も、それぞれ、本実験を通して存在した。等尺張力記録のために力変換機に組織を接続し、この後、最適な静止張力のもとで充分な時間、平衡させた。実験は、各々8つの器官槽を有する半自動器官単離システムを使用し、多チャンネルデータ収集で行った。組織を先ず高K+溶液(80mM KCl)に暴露して、対照濃度を得た。洗浄および続く60分の平衡期間の後、様々な濃度の試験化合物またはレファレンス拮抗薬Lys−desArg9[Leu8]−BKが不在の状態(対照試料)または存在する状態(試験試料;Lys−DesArg9−BKに暴露する15分前に添加)で、組織を累積漸増濃度のレファレンス作動薬Lys−DesArg9−BKに暴露して、濃度−反応曲線を得た。各試料におけるLys−DesArg9−BKに対する濃度−反応曲線を作成した。
【0202】
測定したパラメータは、各作動薬濃度により誘導された張力の最大変化であり、結果をKClへの対照の反応に対するパーセントとして表した。作動薬のEC50値(最大反応の半分を誘導する濃度)をこの濃度−反応曲線の線形回帰分析により計算した。試験化合物およびLys−desArg9[Leu8]−BKの拮抗薬効力をpA2値(作動薬濃度−反応曲線を二倍右方向にシフトさせる−log濃度)に関して評価した。これらのpA2値は、Van Rossum(Van Rossum,J.M.,Cumulative dose−response curves.II.Technique for the making of dose−response curves in isolated organs and the evaluation of drug parameters.Arch.Int.Pharmacodyn.Ther.,143:299−330(1963))に従って計算した。pA2値は、作動薬濃度−反応曲線の有意な右方向シフトを生じさせる拮抗薬濃度のみを用いて計算した。pA2値は、3回の測定の平均±s.e.m.として与える。差の統計学的有意性は、スチューデントt検定を使用して決定し、p値<0.05は、統計的に有意とみなした。
【0203】
D.ペプチドおよび/または接合ペプチドのインビトロB1阻害活性
背根神経節(DRG)ニューロン培養物において各ペプチドおよび/または接合ペプチドがB1刺激CGRPおよび物質P放出ならびにカルシウムシグナリングを阻害する能力を測定することにより、B1活性の阻害剤としての本ペプチドおよび/または接合ペプチドの有効性(すなわち、B1「中和」)も評価した。
【0204】
背根神経節ニューロン培養物。
背根神経節は、妊娠時の終末麻酔したSprague−Dawleyラット(マサチューセッツ州、ウィルミントンのCharles River)の子宮部から外科手術により取り出した胎齢19日(E19)のラットの全脊髄分節から、無菌条件下で1つ1つ切開する。DRGを、5%熱不活性化ウマ血清(GibcoBRL)を含有する氷冷L−15培地(ニューヨーク州、グランドアイランドのGibcoBRL)に回収し、一切の疎性結合組織および血管を除去する。このDRGをCa2+およびMg2+非含有ダルベッコリン酸緩衝食塩液(DPBS)、pH7.4(GibcoBRL)中で2回すすぐ。この後、パパイン解離系(ニュージャージー州、フリーホールドのWorthington Biochemical Corp.)を使用して単個細胞浮遊液に解離する。簡単に言うと、37℃で、50分間、アール平衡食塩水(EBSS)中、20U/mLのパパインを含有する消化溶液中でDRGをインキュベートする。MEM/HamのF12(1:1)、1mg/mL オボムコイド阻害剤および1mg/mL オボアルブミン、ならびに0.005%デオキシリボヌクレアーゼI(DNアーゼ)から成る解離培地中で精密研磨パスツールピペットにより磨砕することにより、細胞を解離させる。解離した細胞を200xgで5分間、ペレッティングし、1mg/mLオボムコイド阻害剤、1mg/mLオボアルブミンおよび0.005%DNアーゼを含有するEBSSに再び浮遊させる。10mg/mLオボムコイド阻害剤、10mg/mLオボアルブミンを含有する勾配溶液により200xgで6分間、細胞浮遊液を遠心分離して、細胞破壊片を除去し、次いで、88−μmナイロンメッシュ(ペンシルバニア州、ピッツバーグのFisher Scientific)により濾過して、一切の凝集塊を除去する。細胞数を血球計数器で測定し、細胞を、ポリ−オルニチン 100μg/mL(ミズーリ州、セントルイスのSigma)およびマウスラミニン 1μg/mL(GibcoBRL)を塗布した96ウエルプレートに、完全培地中、細胞数10x10/ウエルで接種する。この完全培地は、最少必須培地(MEM)とHamのF12(1:1)、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100U/mL)および100%熱不活性化ウマ血清(GibcoBRL)から成る。これらの培養物を37℃、CO 5%および湿度100%で保持する。非ニューロン細胞の成長を制御するために、5−フルオロ−2’−デオキシウリジン(75μM)およびウリジン(180μM)を培地中でインキュベートする。
【0205】
B1および抗B1ペプチドならびに/または抗B1接合ペプチドでの処理。
プレーティングの2時間後、細胞を、10ng/mLの濃度(0.38nM)の組換えヒトβ−B1または組換えラットβ−B1で処理する。系列希釈した抗B1抗体(ミネソタ州、ミネアポリスのR&D Systems)を含む正の対照を各培養プレートに適用する。試験ペプチドまたは試験接合ペプチド(例えば、実施例1からのもの)を、3.16倍系列希釈を用いて10の濃度で添加する。すべてのサンプルは、培養物に添加する前に完全培地で希釈する。インキュベーション時間は、一般に、VR1発現測定前の約40時間である。
【0206】
DRGニューロンにおけるVR1発現の測定。
細胞をハンクス平衡塩類溶液中の4%p−ホルムアルデヒドで15分間、固定し、Superblock(イリノイ州、ロックフォードのPierce)でブロックし、Tris.HCl(Sigma)緩衝食塩液(TBS)中の0.25% Nonidet P−40(Sigma)で1時間、室温で透過性化する。培養物を、0.1% Tween 20(Sigma)を含有するTBSで1回すすぎ、ウサギ抗VR1 IgG(Amgenで調製されたもの)とともに1時間半、室温でインキュベートし、この後、Eu標識抗ウサギ第二抗体(フィンランド、トゥルクのWallac Oy)とともに1時間、室温でインキュベートする。各抗体インキュベーション後にTBSでの洗浄(ゆっくりと振盪しながら5分間 x3)を適用する。Enhance solution(150μL/ウエル、Wallac Oy)を培養物に添加する。この後、時間分解蛍光光度計(Wallac Oy)で蛍光シグナルを測定する。ビヒクル接合ペプチドで処理したサンプルにおけるVR1発現を、0から1000ng/mLのB1滴定の標準曲線との比較により判定する。DRGニューロンにおけるVR1発現に対するB1作用の阻害率(最大可能阻害と比較したもの)を、B1処理していない対照との比較により決定する。
【0207】
各PEG接合ペプチドB1拮抗薬についての受容体結合および機能活性の減損は、付加したPEG基のサイズに直接関連し、〜5から200倍の効力低下におよんだ。〜5から7個の残基のポリグリシンリンカーは、機能活性の保存に充分役立つが、より長いリンカーは、殆ど改善をしめさなかった(「可撓性リンカー」)か、活性を低下させることが判明した(「剛性リンカー」)。最後に、表8は、様々な異なるPEG接合ペプチドB1拮抗薬でのこの応用の幅を説明するものである。
【0208】
【表6】

【実施例7】
【0209】
ペプチドおよび/または接合ペプチドの安定性の判定
【0210】
A.ラット腎臓刷子縁微小絨毛アッセイ
Boothら(Biochemical Journal,142:575(1974))が記載した手順に従って、腎膜を準備する。蛋白質濃度は、Bradford(Anal.Biochemistry.,72:248−254(1976))の方法によって決定する。
【0211】
B.ラットまたはヒト肺S9ホモジネートアッセイ
ラットまたは人間の肺は、Skidgelら(Biochemical Pharmacology 33:3471(1984))が記載したとおり準備する。
【0212】
試験化合物は、PBS溶液(pH=7.1)中、1mM濃度で調製する。試験化合物を手順AまたはBからの組織の試料に添加し(2mg/mLの最終蛋白質濃度)、37℃でインキュベートする。様々な時点で、蛋白質を、アセトニトリル、アセトニトリル中0.1M HCl、または水中10%TFAで沈殿させる。沈殿を遠心分離により除去し、濾液を0.1μM膜によりさらに濾過する。この後、サンプルを、逆相HPLC(4.6x300mm Novapak HR C18(マサチューセッツ州、ミルフォードのMaters Corporation)流量=1mL/分、20分にわたる10%ACN(0.1%ギ酸)−90%水(0.1%ギ酸)から50%ACN(0.1%ギ酸)−50%水(0.1%ギ酸)への直線勾配)により、質量分光検出で分析する。内部標準に対する時間Tでの試験化合物の濃度を一次損失関数([化合物]=[化合物](1−e(−kt);「[化合物]0」および「[化合物]t」は、それぞれ、ゼロ時における試験化合物の濃度およびサンプル抜き取り時点での試験化合物の濃度であり、可変項「t」は、分析のためにサンプルを抜き取った時間であり、kは、試験化合物濃度の変化率である)に当てはめる。可変項「k」は、JMP Statistical software packageにより供給される非線形回帰アプローチを使用して決定する。化合物濃度が経時的に低下することから、「k」の値は負である。半減期は、次の式: T1/2=(Ln 2)/k を使用して、「k」のモデル導出値から計算する。
【実施例8】
【0213】
ラットおよびサル疼痛モデルにおける抗B1ペプチドおよびビヒクル接合抗B1ペプチドのインビボ抗侵害受容活性
【0214】
A.ラット神経因性疼痛モデル
雄Spargue−Dawleyラット(200g)をイソフルラン吸入麻酔法で麻酔し、L5およびL6レベルの左腰脊髄神経を、KimおよびChangが最初に説明した(An experimental model for peripheral neuropathy produced by segmental spinal nerve ligation in the rat.Pain 50:355−363,(1992))とおり、背根神経節に対して遠位、坐骨神経への入口より前で緊密に結紮する(4−0絹糸縫合糸)。切開部を閉じ、ラットを回復させる。金網観察用ケージにより足の足底間隙(足蹠と足蹠の間)に垂直にかける段階的刺激(4.0から148.1mNの範囲にわたる、von Freyフィラメント)からこの罹患した足(神経損傷側と同じ側)を引っ込めた時点の圧力を記録することにより評価すると、この処置により、機械的(触覚)異痛が左後ろ足に生じる。足引込め閾値(PWT)は、刺激強度を順次増加および低下させ、Chaplan,S.R.らが記載している(Quantitative assessment of tactile allodynia in the rat paw. J.Neurosci.Meth,53:55−63(1994))ようなDixonノンパラメトリック検定を用いて引っ込めデータを分析することにより、決定した。
【0215】
正常なラットおよび擬似手術ラット(神経を単離したが、結紮していないもの)は、反応なしに少なくとも148.1mN(15gと等価)の圧力に耐える。脊髄神経結紮ラットは、この罹患した足への4.0mN(0.41gと等価)ほどのわずかな圧力に対して反応する。ラットは、運動機能不全(例えば、足のひきずりまたは落下)を示さず、PWTが39.2mN(4.0gと等価)未満であった場合のみ、試験に含めた。手術後少なくとも7日のラットを、皮下注射により試験ペプチドもしくは試験ビヒクル接合ペプチド(通常、それぞれ、約1mg/kgおよび約60mg/kgのスクリーニング用量)または対照希釈剤(PBS)で1回、治療し、PWTを、この後7日間、毎日、測定した。
【0216】
B.ラットCFA炎症性疼痛モデル
雄Sprague−Dawleyラット(200g)をイソフルラン吸入麻酔法により軽度に麻酔し、この左後ろ足に完全フロイントアジュバント(CFA)、0.15mLを注射する。金網観察用ケージにより足の足底間隙(足蹠と足蹠の間)に垂直にかける段階的刺激(4.0から148.1 mNの範囲にわたる、von Freyフィラメント)からこの罹患した足を引っ込める圧力を記録することにより評価すると、この処置により、機械的(触覚)異痛がこの左後ろ足に生じる。PWTは、刺激強度を順次増加および低下させ、Chaplanらが記載している(1994)ようなDixonノンパラメトリック検定を用いて引っ込めデータを分析することにより、決定する。ラットは、運動機能不全(例えば、足のひきずりまたは落下)または皮膚欠損を示さず、PWTが39.2mN(4.0gと等価)未満である場合のみ、試験に含める。CFA注射後少なくとも7日のラットを、皮下注射により試験ペプチドおよび/もしくは試験ビヒクル接合ペプチド(通常、60mg/kgのスクリーニング用量)または対照溶液(PBS)で1回、治療し、PWTを、この後7日間、毎日、測定する。次の式: %MPE=100(治療ラットのPWT−対照ラットのPWT)/(15−対照ラットのPWT)を用いて、平均足引込め閾値(PWT)を最大可能効果率(%MPE)に変換した。従って、15g(148.1mN)のカットオフ値は、100%のMPEと等価であり、対照反応は、0% MPEと等価である。
【0217】
本発明の好ましいペプチドおよびビヒクル接合ペプチドは、それぞれ、約1mg/kgおよび約60mg/kgのスリーニング用量でのPD関係での抗侵害受容作用を生じさせることが予想される。
【0218】
B.ミドリザルLPS炎症モデル
B1活性の阻害剤としてのペプチドおよび/または接合ペプチドの有効性は、本質的にはdeBloisおよびHorlickが記載している(British Journal of Pharmacology.132:327−335(2002);これは、本明細書に参照により組み込まれている)とおり、B1作動薬で局所的に攻撃した雄ミドリザル(セントキッツ・サバンナザル(Cercopithaecus aethiops St Kitts))で評価することができる。
【0219】
本発明のPEG接合ペプチド拮抗薬がB1誘発浮腫を抑制するかどうかを判定するために、雄ミドリザル(セントキッツ・サバンナザル(Cercopithaecus aethiops St Kitts))を用い、Caribbean Primates Ltd.の実験農場(西インド諸島、セントキッツ)で、下に説明する試験を行った。手順は、the CR−CHUM(カナダ、モントリオール)およびCaribbean Primates Lts.(西インド諸島、セントキッツ)の動物管理委員会により再考され、受諾された。体重6.0±0.5kgの動物(n=67)を麻酔(50mgケタミン kg−1)し、伏在静脈経由でのLPS(90μg・kg−1)または食塩水(1mL)の静脈内注射1回で前処置をした。
【0220】
1.炎症試験
キニン誘発浮腫を、腹部皮下脂肪アッセイ(ventral skin hold assay)(Sciberrasら,1987)により評価した。簡単に言うと、麻酔したサルにカプトプリル(アッセイの30分前に1mg・kg−1)を注射した。dKD、BKまたはビヒクル(100μLのリンガーズ・ラクテート中の2mM アマスタチン)の皮下注射1回を腹部に施し、較正したノギスを使用して皮下脂肪厚の増加を30から45分間モニターした。結果は、皮下注射前の皮下脂肪厚と皮下注射後の皮下脂肪厚の差として表した。カプトプリルおよびアマスタチンを使用して、カルボキシル末端およびアミノ末端、それぞれにおけるキニンの分解を減少させた。
【0221】
拮抗薬シルド(SCHILD)解析
dKD(1から100nmol)誘発浮腫についての用量−反応関係を、異なる濃度のPEG−ペプチド拮抗薬が不在の状態または存在する状態で、LPSの24時間後に判定した。BK(30nmmol)を正の対照として使用した。
【0222】
拮抗薬時間経過
1回のボーラス投与の後、4、24、48、72および/または96時間の時点で、拮抗薬による阻害の時間経過を判定した。BK(30nmol)を正の対照として使用した。
【0223】
薬物
塩酸ケタミン、LPS、アマスタチンおよびカプトプリルは、Sigma(米国、ミズーリ州)からのものであった。すべてのペプチドは、Phoenix Pharmaceuticals(米国、カリフォルニア州)からのものであった。
【0224】
統計
値は、平均±標準誤差(s.e.mean)として提示する。浮腫試験における注射前皮下脂肪厚を皮下攻撃後の値から引いた。アップル・コンピュータ用のDelta Graph 4.0ソフトウェアを使用して、曲線近似値およびEC50計算値を得た。ボンフェローニ補正法を用い、二元配置分析、この後、対応のない片側スチューデントt検定によりデータを比較した。p<0.05を統計学的に有意と見なした。
【0225】
ミドリザルへのLPS投与は、浮腫形成アッセイにおいて、B受容体作動薬に対するこれらの感受性をゼロレベルから上昇させた。比較として、B受容体作動薬BKに対する反応には、影響を及ぼさなかった。
【0226】
驚くべきことに、代表5kD PEG接合ペプチドおよび同ペプチド類似体の20kD PEG接合ペプチドの10mg/kgでの1回の皮下投薬は、既に定着したB1作動薬誘発炎症応答を緩和するために、ならびに3日間および4日間、継続する毎日の作動薬攻撃を抑制するために、それぞれ充分であった。B1攻撃で96時間までにタキフィラキシーは観察されなかった。B2ではなくB1において選択的である作用も判定した。さらに、1.25時間までは両分子について急速な発症および効能は、同等であったが、5K PEG接合ペプチドは、非接合ペプチド(すなわち、天然ペプチド)よりも長くdKD攻撃に応じた浮腫を抑制した
【実施例9】
【0227】
ラット薬物動態試験
【0228】
様々なペプチドまたは接合ペプチド(水性媒体中)をボーラスとして静脈内(iv)または皮下(sc)経路により雄Sprague−Dawleyラットに投薬した。血液サンプルを様々な時点(例えば、注射後、0、15、30分ならびに/または1、2、4、6、8、10、12、18、24、30、36、42、48、60、72、84、96、120、240および/もしくは320時間)でヘパリン処理試験管に回収した。遠心分離によりペレット化した細胞から血漿を除去し、冷凍するか、直ちに処理した。血漿中の対象化合物を分析物特異的LC−MS/MSまたはELISA法により定量した。クリアランス(CL)、見掛けのクリアランス(CL/F)、分布容量(Vss)、平均滞留時間(MRT)、曲線下面積(AUC)、および終末半減期(t1/2)などの様々な標準薬物動態パラメータを非分画(non−compartmental)法により計算した(例えば、表9参照)。
【0229】
【表7】

【0230】
上で説明した本発明に様々な変更を施すことができることは、理解されるであろう。従って、本発明の範囲は、後続の特許請求の範囲において定義する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:F−[(X)−(Y
(式中、
およびYは、各場合、独立して、それぞれ、式−L−Pおよび−L−Pのペプチドであり;
Fは、XまたはYに共有結合しているビヒクルであり;
およびLは、各場合、独立して、不在であるか、0から9個のアミノ酸残基を有するリンカーであり;
nは、0から3であり;ならびに
およびPは、各場合、独立して、ブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である)
の物質またはこの生理学的に許容されるの塩の組成物。
【請求項2】
式:F’−R
(式中、
F’は、多価ビヒクルであり;
Rは、各場合、独立して、−(X)−(Yであり、ここで、Rは、F’に共有結合しており;
およびYは、各場合、独立して、それぞれ、式−L−Pおよび−L−Pのペプチドであり;
およびLは、各場合、独立して、不在であるか、0から9個のアミノ酸残基を有するリンカーであり;
nは、0から3であり;
Zは、2から8であり;ならびに
およびPは、各場合、独立して、ブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である)
の物質またはこの生理学的に許容される塩の組成物。
【請求項3】
およびPが、各場合、独立して、配列番号5から26、43から60で示されるペプチドおよびこれらの誘導体から成るペプチド群から選択されるブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である、請求項1から2のいずれかに記載の物質の組成物。
【請求項4】
が、配列番号27から41で示されるペプチドおよびこの誘導体から成る群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドである、請求項1から2のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項5】
nが、1であり、Pが、配列番号42で示される配列を有するペプチドである、請求項1から2のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項6】
nが、0である、請求項1から2のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項7】
およびPが、各場合、独立して、式:
NH−a1011121314−COOH
(式中、
は、塩基性もしくは中性芳香族、脂肪族、複素環式もしくは脂環式アミノ酸、または塩基性ジペプチドであるか、不在であり;
、a、aおよびaは、各場合、独立して、塩基性または中性、芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸であり;
は、Serであり;
、aおよびaは、各場合、独立して、芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸であるが、但し、a、aおよびaのうちの少なくとも一つが、DまたはL配置のChg、Cpg、Igla、Iglb、NigaおよびNigbから選択されることを条件とし;ならびに
、a10、a11、a12、a13およびa14は、各場合、独立して、天然アミノ酸であるか、不在である)
によって定義されるペプチドから成るペプチド群からのペプチド拮抗薬である、請求項1から2のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項8】
が、塩基性アミノ酸または塩基性ジペプチドであるか、不在であり;
が塩基性アミノ酸または塩基性ジペプチドであり;
がProであり;
がHypであり;
がGlyであり;
およびaが、各場合、独立して、インダニルアミノ酸であり;
がSerであり;
がD−インダニルアミノ酸であり;
がCpgであり;および
、a10、a11、a12、a13およびa14が、各場合、独立して、天然アミノ酸であるか、不在である、
請求項7に記載の物質の組成物。
【請求項9】
が、Arg、D−Arg、Orn、D−Orn、Lys、DLysまたはArg、D−Arg、Orn、D−Orn、Lys、またはDlysから成る群より独立して選択される2個のアミノ酸から成るジペプチド
から成る群より選択されるアミノ酸であり;
がArgであり;
がProであり;
がHypであり;
がGlyであり;
がCpgであり;
がSerであり;
がDTicであり;および
がCpgである、
請求項7に記載の物質の組成物。
【請求項10】
がLys−Lysであり;
がArgであり;
がProであり;
がHypであり;
がGlyであり;
がIglbであり;
がSerであり;
がDIglbであり;および
がOicである、
請求項7に記載の物質の組成物。
【請求項11】
がDArgであり;
がArgであり;
がProであり;
がHypであり;
がGlyであり;
がIglであり;
がSerであり;
がDIglであり;および
がOicである、
請求項7に記載の物質の組成物。
【請求項12】
およびPが、各場合、独立して、式:
NH−a1011121314−COOH
(式中、
は、不在であるか、塩基性アミノ酸または塩基性ジペプチドであり;
はArgであり;
はProであり;
はProであり;
はGlyであり;
はMe−Pheであり;
はSerであり;
はD−β−NaIであり;および
はIleである)
によって定義されるペプチドから成るペプチド群からのペプチド拮抗薬である、請求項1から2のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項13】
前記Lが、配列番号100から配列番号105(配列番号100と配列番号105を含む)から成る群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチジルリンカーである、請求項1から2のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項14】
前記Lが、配列番号100から配列番号105(配列番号100と配列番号105を含む)から成る群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチジルリンカーである、請求項3に記載の物質の組成物。
【請求項15】
請求項1から2のいずれか一項に記載の物質の組成物の治療有効量をヒトまたは動物被験者に投与することを含む、B1活性に関連したまたはB1活性によって媒介される疾病または状態を治療、予防または改善する方法。
【請求項16】
請求項3に記載の物質の組成物の治療有効量をヒトまたは動物被験者に投与することを含む、B1活性に関連したまたはB1活性によって媒介される疾病または状態を治療、予防または改善する方法。
【請求項17】
疾病または状態が、炎症、炎症性疼痛、急性疼痛、歯痛、背部疼痛、腰痛、外傷からの痛み、手術の痛み、炎症性腸疾患、喘息およびアレルギー性鼻炎から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
疾病または状態が、炎症、炎症性疼痛、急性疼痛、歯痛、背部疼痛、腰痛、外傷からの痛み、手術の痛み、炎症性腸疾患、喘息およびアレルギー性鼻炎から成る群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から2のいずれか一項に記載の物質の組成物および少なくとも一つの医薬的に許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項20】
式:F−[(X)−(Y
(式中、
およびYは、各場合、独立して、それぞれ、式−L−Pおよび−L−Pのペプチドであり;
Fは、XまたはYに共有結合しているPEGであり;
およびLは、各場合、独立して、不在であるか、0から9個のアミノ酸残基を有するリンカーであり;
nは、0から3であり;ならびに
およびPは、各場合、独立して、ブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である)
の物質またはこの生理学的に許容されるの塩の組成物。
【請求項21】
F’が、多価PEGである、請求項2に記載の物質の組成物。
【請求項22】
およびPが、各場合、独立して、配列番号5から60で示されるペプチドおよびこれらの誘導体から成るペプチド群から選択されるブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬である、請求項20から21のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項23】
が、配列番号27から41で示されるペプチドおよびこの誘導体から成る群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドである、請求項21に記載の物質の組成物。
【請求項24】
nが、0であり、Zが、2から8である、請求項21に記載の物質の組成物。
【請求項25】
Zが、4である、請求項24に記載の物質の組成物。
【請求項26】
式:F−[(X)−(Y
[式中、
およびYは、各場合、独立して、それぞれ、式−L−Pおよび−L−Pのペプチドであり;
Fは、XまたはYに共有結合しているビヒクルであり;
およびLは、各場合、独立して、不在であるか、0から9個のアミノ酸残基を有するリンカーであり;
nは、0から3であり;ならびに
およびPは、各場合、独立して、式:
NH−a1011121314−COOH
(この式中、
は、塩基性もしくは中性芳香族、脂肪族、複素環式もしくは脂環式アミノ酸、または塩基性ジペプチドであるか、不在であり;
、a、aおよびaは、各場合、独立して、塩基性または中性、芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸であり;
は、Serであり;
、aおよびaは、各場合、独立して、芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸であるが、但し、a、aおよびaのうちの少なくとも一つが、DまたはL配置のChg、Cpg、Igla、Iglb、NigaおよびNigbから選択されることを条件とし;ならびに
、a10、a11、a12、a13およびa14は、各場合、独立して、天然アミノ酸であるか、不在である)
によって定義されるペプチドから成るペプチド群からのペプチド拮抗薬である]
の物質またはこの生理学的に許容されるの塩の組成物。
【請求項27】
式:F’−R
[式中、
F’は、多価ビヒクルであり;
Rは、各場合、独立して、−(X)−(Yであり、ここで、Rは、F’に共有結合しており;
およびYは、各場合、独立して、それぞれ、式−L−Pおよび−L−Pのペプチドであり;
およびLは、各場合、独立して、不在であるか、0から9個のアミノ酸残基を有するリンカーであり;
nは、0から3であり;
Zは、2から8であり;ならびに
およびPは、各場合、独立して、式:
NH−a1011121314−COOH
(式中、
は、塩基性もしくは中性芳香族、脂肪族、複素環式もしくは脂環式アミノ酸、または塩基性ジペプチドであるか、不在であり;
、a、aおよびaは、各場合、独立して、塩基性または中性、芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸であり;
は、Serであり;
、aおよびaは、各場合、独立して、芳香族、脂肪族、複素環式または脂環式アミノ酸であるが、但し、a、aおよびaのうちの少なくとも一つが、DまたはL配置のChg、Cpg、Igla、Iglb、NigaおよびNigbから選択されることを条件とし;ならびに
、a10、a11、a12、a13およびa14は、各場合、独立して、天然アミノ酸であるか、不在である)
によって定義されるペプチドから成るペプチド群からのペプチド拮抗薬である]
の物質またはこの生理学的に許容される塩の組成物。
【請求項28】
が、塩基性アミノ酸または塩基性ジペプチドであるか、不在であり;
が塩基性アミノ酸であり;
がProであり;
がHypであり;
がGlyであり;
およびaが、各場合、独立して、インダニルアミノ酸であり;
がSerであり;
がD−インダニルアミノ酸であり;
がCpgであり;および
、a10、a11、a12、a13およびa14が、各場合、独立して、アミノ酸であるか、不在である、
請求項26から27のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項29】
が、Arg、D−Arg、Orn、D−Orn、Lys、DLysまたはArg、D−Arg、Orn、D−Orn、Lys、またはDLysから成る群より独立して選択される2個のアミノ酸から成るジペプチド
から成る群より選択されるアミノ酸であり;
がArgであり;
がProであり;
がHypであり;
がGlyであり;
がCpgであり;
がSerであり;
がDTicであり;および
がCpgである、
請求項26から27のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項30】
が、D−Argであるか、Lys−Lys、DLys−Lys、およびDOrnーLysから成る群より選択されるジペプチドであり;
がArgであり;
がProであり;
がHypであり;
がGlyであり;
がIglbであり;
がSerであり;
がDIglbであり;および
がOicである、
請求項26から27のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項31】
がDArgまたはLys−Lysジペプチドであり;
がArgであり;
がProであり;
がHypであり;
がGlyであり;
がIglであり;
がSerであり;
がDIglであり;および
がOicである、
請求項26から27のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項32】
およびPが、各場合、独立して、式:
NH−a1011121314−COOH
(式中、
は、Arg、D−Arg、Orn、D−Orn、Lys、DLysまたはArg、D−Arg、Orn、D−Orn、Lys、またはDLysから成る群より独立して選択される2個のアミノ酸から成るジペプチドから成る群より選択されるアミノ酸であり;
はArgであり;
はProであり;
はProであり;
はGlyであり;
はMe−Pheであり;
はSerであり;
はD−β−NaIであり;および
はIleである)
によって定義されるペプチドから成るペプチド群からのペプチド拮抗薬である、請求項1から2のいずれか一項に記載の物質の組成物。
【請求項33】
前記Lが、配列番号100から配列番号105(配列番号100と配列番号105を含む)から成る群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチジルリンカーである、請求項32に記載の物質の組成物。
【請求項34】
前記ポリエチレングリコールが、
i.5,000ダルトン;
ii.20,000ダルトン;
iii.24,000ダルトン;
iv.30,000ダルトン;
v.40,000ダルトン;および
vi.60,000ダルトン;
から成る群より選択される平均分子量を有する、請求項33に記載の物質の組成物。
【請求項35】
インビトロでB1受容体活性に拮抗することができ、および哺乳動物において治療上許容されるインビボでの半減期を有する、請求項34に記載の物質の組成物。
【請求項36】
請求項34に記載の物質の組成物の治療有効量をヒトまたは動物被験者に投与することを含む、B1活性に関連したまたはB1活性によって媒介される疾病または状態を治療、予防または改善する方法。
【請求項37】
疾病または状態が、炎症、炎症性疼痛、急性疼痛、歯痛、背部疼痛、腰痛、外傷からの痛み、手術の痛み、炎症性腸疾患、喘息およびアレルギー性鼻炎から成る群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
請求項34に記載の物質の組成物および少なくとも一つの医薬的に許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項39】
炎症、炎症性疼痛、急性疼痛、歯痛、背部疼痛、腰痛、外傷からの痛み、手術の痛み、炎症性腸疾患、喘息およびアレルギー性鼻炎から成る群より選択される疾病または状態の治療のための薬物の製造における、請求項34に記載の物質の組成物の使用。
【請求項40】
配列番号15から35、39から54から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬、これらの誘導体およびこれらの生理学的に許容される塩。
【請求項41】
配列番号15から35から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬またはこれらの生理学的に許容される塩。
【請求項42】
配列番号15から26から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項41に記載のペプチド。
【請求項43】
N−末端アミノ酸が、D−アミノ酸である、請求項40に記載のペプチド。
【請求項44】
N−末端アミノ酸が、D−Dab、DLys、DArgおよびDOrnから成る群より選択される、請求項43に記載のペプチド。
【請求項45】
配列番号15から35から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬および少なくとも一つの医薬的に許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項46】
配列番号15から35から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むブラジキニンB1受容体のペプチド拮抗薬および少なくとも一つの医薬的に許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物の治療有効量をヒトまたは動物被験者に投与することを含む、B1活性に関連したまたはB1活性によって媒介される疾病または状態を治療、予防または改善する方法。
【請求項47】
疾病または状態が、炎症、炎症性疼痛、急性疼痛、歯痛、背部疼痛、腰痛、外傷からの痛み、手術の痛み、炎症性腸疾患、喘息およびアレルギー性鼻炎から成る群より選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
炎症、炎症性疼痛、急性疼痛、歯痛、背部疼痛、腰痛、外傷からの痛み、手術の痛み、炎症性腸疾患、喘息およびアレルギー性鼻炎から成る群より選択される疾病または状態の治療のための薬物の製造における、請求項19に記載の医薬組成物の使用。
【請求項49】
炎症、炎症性疼痛、急性疼痛、歯痛、背部疼痛、腰痛、外傷からの痛み、手術の痛み、炎症性腸疾患、喘息およびアレルギー性鼻炎から成る群より選択される疾病または状態の治療のための薬物の製造における、請求項45に記載の医薬組成物の使用。

【公表番号】特表2007−526240(P2007−526240A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536809(P2006−536809)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/034976
【国際公開番号】WO2005/042027
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】