説明

ブリーダプラグ

【課題】製造工程に切削加工を伴うことなく製造することを可能とし、かつ癒着によるエア抜き不良をも生じさせることの無いブリーダプラグを提供する。
【解決手段】ニップル部12と螺合部20を有し、ニップル部12側の端部から螺合部20側の端部にかけて貫通孔24を備えるブリーダ本体30と、ブリーダ本体30における貫通孔24の螺合部20側の開口部に圧入される圧入部44とブリーダ孔を閉塞するシート部42とを有するシートピン40とを備え、ブリーダ本体30とシートピン40との当接面に、貫通孔24におけるニップル部12側の開口部と前記当接面を介した外部空間とを連通する溝(第1の溝46と第2の溝48)を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリーダプラグに係り、特に油圧ブレーキにおけるエア抜きに使用されるブリーダプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車等の油圧ブレーキ装置などに用いられるブリーダプラグの形態については種々提案されており、その基本的な形態としては、例えば特許文献1に開示されているようなものを挙げることができる。特許文献1に開示されているブリーダプラグは、図9に示すように、ニップル部2と螺合部4、およびシート部5を基本として構成されている。ニップル部2は、エア抜き時に吐出される作動油を他の容器等へ送るための樹脂チューブ等を接続する吐出口を有する部位であり、その端部には詳細を後述するシート部5にまで延設されたエア抜き穴6が形成されている。螺合部4には、雄ねじが形成されており、ブレーキキャリパなどに形成されたブリーダ孔9の雌ねじに螺合可能な構成とされている。ニップル部2と螺合部4との間には、六角状に形成された締付け部3が備えられ、螺合部4を介したブリーダプラグ1の締め付けを可能な構成としている。シート部5は、螺合部4の先端に形成され、取り付け対象であるブリーダ孔9の開口部を閉塞するための部位である。シート部5は、先端に円錐台状の傾斜面から成るシート面を有し、このシート面をブリーダ孔9の開口部に当接させることでブリーダプラグ1の締め付け時における作動油の漏れを防止する。また、シート部5にはシート面と螺合部4との間に位置する胴部に、エア抜き穴6に連通する横穴7が設けられている。このような構成とすることで、ブリーダプラグ1の締め付けが緩められ、シート面によるエア抜き穴6の閉塞が解除されると、横穴7を介してエア抜き穴6からエア、及びエア作動油が吐出されることとなる。
【0003】
また、ブリーダプラグとしては、特許文献2−4に示すような2ピース構造のものも提案されている。
特許文献2に開示されているブリーダプラグは、図10に示すように、金属製のブリーダ本体8と樹脂性のニップル部2から構成されており、ブリーダ本体8の後端にニップル部2を圧入して成る構成とされている。なお、図10(A)はブリーダプラグの部分断面正面図であり、図10(B)はブリーダ本体の部分断面正面図であり、図10(C)はニップル部の部分断面正面図である。ブリーダ本体8には、特許文献1に開示されたブリーダプラグ1と同様にエア抜き穴6と横穴7が形成されており、ニップル部2には、貫通孔6aの一端に圧力により開放される弁6bが設けられている。ニップル部2は、弁6bが設けられていない端部をブリーダ本体8に圧入されることで、ブリーダプラグ1aの端部に弁6bが配置されることとなる。これにより、樹脂により構成されるブリーダキャップ(不図示)を装着しなくとも、ブリーダプラグ1aの孔(貫通孔6aを含むエア抜き穴6)に泥や塵埃が入り込む虞が無くなるという。
【0004】
特許文献3に開示されているブリーダプラグは、ブリーダ本体とニップル部とを別体形成し、鍛造加工による形成部位を増やすことで、切削加工に要する加工時間、およびコストを抑制することを目的としたものである。また、特許文献3には、図11に示すように、シート部をさらに別体として構成し、これをブリーダ本体の先端に設けられたカシメ部4aによりカシメて据え付けるという構成のものも開示されている。
【0005】
特許文献4には、ブリーダ本体に圧入構造とされたシート部を有するブリーダプラグが開示されている。ブリーダ本体に設けられたエア抜き穴は、シート部側開口部を小径、としており、内部に拡幅部を有する構造とされている。シート部の後部には、エア抜き穴へ差し込むための差込部が設けられている。差込部の先端は、小径部よりも直径が太く形成されると共に長手方向にスリットが設けられ、弾性変形により、プラグ本体への押し込みが可能な構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61−97637号公報(第5頁18行−第8頁1行、図1)
【特許文献2】実開昭63−188268号公報(7頁10行−7頁20行、図1)
【特許文献3】実開昭64−6437号公報(4頁2行−4頁6行、6頁20行−7頁10行、図2、5)
【特許文献4】仏国特許出願公開第FR1250139(A)号明細書(1頁右欄32行−2頁左欄3行、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなブリーダプラグにおいて、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3における図1に開示されているブリーダプラグは、形状形成上、切削加工による形成箇所が多く、加工コストおよび生産性の改善が望まれていた。
【0008】
また、特許文献3における図5に開示されているブリーダプラグは、シート部を保持するカシメ部の肉厚が極めて薄くなる可能性があり、その耐久性に問題がある。
【0009】
さらに、特許文献4に開示されているブリーダプラグは、シート部を構成するシートピンにおける圧入部の形成に切削加工が必要となると共に、シートピンとブリーダ本体の端部が癒着してしまった場合、エア抜きをすることができなくなってしまう可能性がある。
【0010】
そこで本発明では、上記問題および希望を参酌し、製造工程に切削加工を伴うことなく製造することを可能とし、かつ癒着によるエア抜き不良をも生じさせることの無いブリーダプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係るブリーダプラグは、ニップル部と螺合部を有し、前記ニップル部側の端部から前記螺合部側の端部にかけて貫通孔を備えるブリーダ本体と、前記ブリーダ本体における前記貫通孔の前記螺合部側の開口部に圧入される圧入部とブリーダ孔を閉塞するシート部とを有するシートピンとを備え、前記ブリーダ本体と前記シートピンとの当接面に、前記貫通孔における前記ニップル部側の開口部と前記当接面を介した外部空間とを連通する溝を備えたことを特徴とする。
【0012】
上記のような特徴を有するブリーダプラグにおいて、前記貫通孔は、少なくとも一部に内径を小径化させた括れ部を有し、前記圧入部は、前記括れ部よりも直径を小さくした遊嵌部と、前記遊嵌部の外周に設けられ、前記圧入部の半径を前記貫通孔の半径よりも小さく、前記括れ部の半径よりも大きくする凸部を有し、前記螺合部側の開口部から前記括れ部までの長さよりも、前記シート部から前記圧入部における前記凸部までの長さを長く構成すると良い。
【0013】
このような構成とすることにより、シートピンのシート部に、いわゆる首振り機能を有することとなり、螺合部とシート部との中心軸がずれた場合であっても、ブリーダ孔に対して自動調芯することが可能となる。
【0014】
また、上記のような特徴を有するブリーダプラグにおいて前記凸部は、前記遊嵌部の外周上に配置された複数の突起により構成すると良い。このような構成とすることにより、圧入のし易さと抜け止め効果の両立を図ることができる。
【0015】
また、上記のような特徴を有するブリーダプラグにおいて前記貫通孔は、前記ニップル部側に小径部、前記螺合部側に大径部を有するようにすると良い。このような構成とすることにより、圧入部の直径を太くすることができ、圧入時に圧入部が座屈するなどの不具合を回避することができる。
【0016】
また、上記のような特徴を有するブリーダプラグにおいて前記溝は、前記ブリーダ本体側に設けるようにすることができる。このような構成とすることにより、シートピン側に溝を設ける必要が無くなる。
【0017】
また、上記のような特徴を有するブリーダプラグにおいて前記溝は、前記シートピンに設けるようにすることができる。このような構成とすることにより、ブリーダ本体側に溝を設ける必要が無くなる。
【0018】
また、上記のような特徴を有するブリーダプラグでは、前記当接面は、前記ブリーダ本体における前記螺合部側端部と前記シート部とにより構成される第1当接面と、前記貫通孔と前記圧入部とより構成される第2当接面とから成り、前記溝は、前記第1当接面を構成する前記螺合部側端部と前記シート部との少なくとも一方と、前記貫通孔と前記圧入部との少なくとも一方に設けられるようにすることができる。このような構成とすることにより、溝の配置に種々のバリエーションを設けることができる。
【0019】
さらに、上記のような特徴を有するブリーダプラグでは、前記圧入部の基部に、その外周を一周する円周溝を設けるようにすると良い。このような構成とすることにより、第1当接面に設けた溝(第1の溝)と第2当接面に設けた溝(第2の溝)の形成位置がずれた場合であっても、作動油及びエアの導通路を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
上記のような特徴を有するブリーダプラグによれば、製造工程に切削加工を伴うことなく製造することが可能となる。また、癒着等によりブリーダ本体とシートピンとが固着した場合であっても、エア抜き不良を生じさせることが無い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係るブリーダプラグの構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るブリーダプラグのブリーダ本体の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係るブリーダプラグのシートピンの構成を示す図である。
【図4】ブリーダプラグの取り付け状態を示す参考図である。
【図5】第2の実施形態に係るブリーダプラグの構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係るブリーダプラグのブリーダ本体の構成を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係るブリーダプラグのシートピンの構成を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係るブリーダプラグにおける応用例を示す図である。
【図9】従来のブリーダプラグの基本構成を示す図である。
【図10】従来の2ピース構造のブリーダプラグの構成を示す図である。
【図11】従来のブリーダプラグであって、3ピース構造のブリーダプラグにおけるブリーダ本体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のブリーダプラグに係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、図1〜図4を参照して、本発明のブリーダプラグに係る第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るブリーダプラグの構成を示す図であり、図1(A)は部分断面正面図、図1(B)は同図(A)における左側面図、図1(C)は同図(A)における右側面図である。図2は、ブリーダプラグを構成するブリーダ本体の構成を示す図であり、図2(A)は部分断面正面図、図2(B)は同図(A)における左側面図、図2(C)は同図(A)における右側面図である。図3は、ブリーダプラグを構成するシートピンの構成を示す図であり、図3(A)は部分断面正面図、図3(B)は同図(A)における左側面図、図3(C)は同図(A)における右側面図である。図4は、実施形態に係るブリーダプラグの取り付け状態を示す参考図である。
【0023】
本実施形態に係るブリーダプラグ10は、ブリーダ本体30と、シートピン40を基本として構成される。
ブリーダ本体30は、ニップル部12と締付け部18、および螺合部20から成る外観形状を有すると共に、貫通孔24を備える。
ニップル部12は、ブリーダ本体30の一方の端部に位置する構成要素であり、その端部には、詳細を後述する貫通孔24における一方の開口部が設けられる。ニップル部12の外観形状は、頭部14と括れ部16より構成されている。頭部14は円錐台状、括れ部16は円筒状とされており、エア抜き時や作動油交換時に、ブリーダプラグ10を介して排出される作動油を別容器へ流し入れるためのチューブ等を装着可能な構成とすると共に、頭部14と括れ部16のバランスにより、頭部14がいわゆるかえしの役割を担い、抜け止め機能を発揮する。なお、頭部14の後端(括れ部16との接続側)には、円錐台の底面に、僅かに円筒部14aが形成されており、接続されたチューブに対する摩擦力(抜け止め力)確保と、樹脂製のチューブに対する傷つけ防止を成す構成とされている。
【0024】
締付け部18は、上述したニップル部12と詳細を後述する螺合部20との間に位置する構成要素であり、ブリーダプラグ10の取り付け先であるブリーダ孔60へ、ブリーダプラグ10を螺合させる際に使用する締付け工具に噛合う外観形状を有する。本実施形態では、締付け部18の断面形状を六角型としている。このような外観形状とすることにより、ブリーダプラグ10の締付けに際し、ボルトなどの締付けに通常用いられるスパナを使用することができ、汎用性が増すからである。
【0025】
螺合部20は、ブリーダ孔60への螺合が成される雄ねじ22が形成される構成要素である。螺合部20を有することにより、ブリーダプラグ10をブリーダ孔60へ、確実に装着することが可能となる。なお、螺合部20は、転造加工により形成されることで、切削を施す事無く雄ねじ22を形成することができる。このため、形成材料のファイバーフローが切断されることが無く、耐摩耗性や、スラスト方向に対する耐応力特性を高めることができる。
【0026】
貫通孔24は、ブリーダ本体30を長手方向、すなわちニップル部12と、締付け部18、および螺合部20を貫くように形成された孔であり、小径部26と大径部28とから構成される。貫通孔24を構成する小径部26と大径部28のうち、小径部26はニップル部12側に配置され、大径部28は螺合部20側に配置される。ニップル部12は上述したように、外観形状を小径とする括れ部を有する。このため、ニップル部12側に貫通孔24の小径部26を配置することにより、括れ部16における材料の肉厚を確保することができ、括れ部16の強度を確保することができる。また、大径部28を螺合部20側に配置することにより、貫通孔24に圧入されるシートピン40の圧入部44の直径を太くすることができる。これにより、圧入時に圧入部44が座屈する等のトラブルを防止することが可能となる。なお、大径部28の長さは、詳細を後述するシートピン40における圧入部44の長さよりも長く構成する。
【0027】
シートピン40は、シート部42と圧入部44により構成される。シート部42は、円錐台状の先端部42aと、円柱状の胴部42bより構成されている。先端部42aにおいて円錐台状に形成された外周面はシート面を構成し、ブリーダ孔60の開口部に当接することで、作動油の漏れ出しを防止する役割を担う。シート面を傾斜面とすることにより、ブリーダ孔60との当接面は、ブリーダ孔60の開口形状である円形の最少面積のみとなる。このため、ゴミなどによる凹凸の影響を受け難く、密閉性を確保し易い。
【0028】
圧入部44は、シート部42の後端側に設けられた円柱であり、シート部42と同芯円上に形成される。圧入部44は、シート部42を構成する胴部42aよりも小径とされ、上述した貫通孔24の大径部28よりも僅かに大きな直径とすることで、貫通孔24を構成する大径部28への圧入が可能とされる。
【0029】
このような基本構成を有するシートピン40では、シート部42を構成し、螺合部と対向することとなる面には、胴部42bの外周側から圧入部44まで延びる第1の溝46が形成されている。また、圧入部44の外周面には、第1の溝46の端部から圧入部44の長手方向に亙って延びる第2の溝48が形成されている。第1の溝46と第2の溝48を有することにより、シートピン40とブリーダ本体30が密着した状態であったとしても、ブリーダ本体30に設けられた貫通孔24に、ブリーダ孔60から排出されたエアや作動油を導くことが可能となる。
【0030】
このような構成を有するブリーダプラグ10は、切削加工を伴う事無く製造することができる。このため、加工コストを抑制することができると共に、生産性を向上させることができる。
【0031】
製造工程としては、ブリーダ本体30とシートピン40をそれぞれ別工程で製造し、ブリーダ本体30に対してシートピン40を圧入することで完成する。ブリーダ本体30も、シートピン40も、冷間鍛造により形成することができる。ブリーダ本体30は、型鍛造による外観形状の形成、押出しによる貫通孔24の形成、および転造による螺合部20における雄ねじ22の形成といった工程を経ることにより製造することができる。また、シートピン40は、型鍛造により製造することができる。
【0032】
このような構成のブリーダプラグ10は、従来のSS400や鍛造用炭素鋼の他、アルミニウム(Al)により構成することもできる。現在、ブリーダ孔60が設けられるブレーキ装置のキャリパー(不図示)を軽量なアルミニウムにより構成することがある。このような場合に、ブリーダプラグ10をSS400などの鉄性金属により構成すると、ブリーダ孔60との間で電食が生じてしまっていた。これに対してブリーダプラグ10をアルミニウムにより構成した場合、ブリーダ孔60との間での電食といった問題を回避することが可能となる。
【0033】
上記構成を有する本実施形態に係るブリーダプラグ10は、締付けによりシート部42のシート面とブリーダ孔60の開口部が当接することによりブリーダ孔60を閉塞し、作動油の漏れ出しを防止することができる。また、締付けを緩めることによりブリーダ孔60の開口部とシート面との間に隙間が形成されると、ブリーダ孔60から流れ出た作動油と作動油中に介入したエアが、第1の溝46、第2の溝48、および貫通孔24を通過して、外部へ放出されることとなる。
【0034】
本実施形態に係るブリーダプラグ10では、第1の溝46と第2の溝48を共にシートピン40に設ける構成とした。しかしながら、第1の溝と第2の溝は、ブリーダ本体30に設けるようにしても良い。この場合、第1の溝はブリーダ本体30における螺合部の端面であって、シート部42との対向面に設け、第2の溝は貫通孔24における大径部28の内周面に設けるようにすれば良い。このような構成とした場合であっても、切削加工を伴うことなく製造することができると共に、ブリーダ本体30とシートピン40とが密着した状態であっても、作動油およびエアの導通路を確保することができる。
【0035】
また、第1の溝をシート部42、第2の溝を大径部28の内周面に設ける構成や、第1の溝を螺合部20、第2の溝を圧入部44に設ける構成としても良い。このような構成とする場合、圧入部44とシート部42との接合部に円環状の溝(円周溝:不図示)を設けたり、大径部28における開口部に大きめの面取りを設けるようにすると良い。このような構成とすることにより、第1の溝と第2の溝の位置がずれた場合であっても、作動油およびエアの導通路を確保することができるからである。
【0036】
次に、本発明のブリーダプラグに係る第2の実施形態について、図5〜図7を参照して説明する。本実施形態に係るブリーダプラグの基本的構成は、上述した第1の実施形態に係るブリーダプラグと同様である。よって、その機能を同一とする箇所には、図面に100を足した符号を付して詳細な説明は省略することとする。なお、図5は本実施形態に係るブリーダプラグの構成を示す部分断面正面図である。図6はブリーダ本体の構成を示す部分断面正面図である。図7はシートピンの構成を示す図であり、図7(A)はシートピンの正面図、図7(B)は同図(A)における左側面図である。
【0037】
本実施形態に係るブリーダプラグ110の特徴的な構成は、貫通孔124と圧入部144の関係にある。具体的には、本実施形態に係るブリーダプラグ110におけるブリーダ本体130では、貫通孔124の大径部128に、その直径を小さくする括れ部128aを有する。括れ部128aは、大径部128の内周側にリング状にせり出された凸部であり、詳細を後述するシートピン140の圧入部144に形成される凸部144bを引掛け、シートピン140の抜け止めを図る役割を担う。
【0038】
括れ部128aは、大径部128の内周側の薄肉を削ぐように、大径部128の開口部側から押出し加工を行うことで、予め定められた位置に形成することができる。このため、このような形態を有するブリーダ本体130であっても、切削加工を有する事無く製造することができ、加工コストの低減、および生産性の向上を図ることができる。
【0039】
シートピン140における圧入部144は、円柱状の遊嵌部144aと、この遊嵌部144aの外周上に形成された凸部144bとから成る。遊嵌部144aは、上述した貫通孔124における大径部128の括れ部128aよりも、その半径(直径)が小さくなるように形成される。このため、遊嵌部144aは、括れ部128aに対して挿通自由とされると共に、大径部128との間に隙間を生じさせることとなる。凸部144bは、遊嵌部144aの外周上に少なくとも2つ以上(本実施形態では3つ)設けられ、遊嵌部144aの中心からの距離(半径)を大径部128の半径よりも小さく、かつ括れ部128aの半径よりも大きく形成する。ここで凸部144bは、型鍛造により形成しても良いし、括れ部128aの形成と同様に、遊嵌部144aの先端側からの押出し加工により形成しても良い。
【0040】
遊嵌部144aの基端部(シート部142との接合部)から凸部144bまでの距離L2は、ブリーダ本体130における貫通孔124の、螺合部120側開口部(大径部128側開口部)から括れ部128aまで(括れ部128aの小径部126側端部まで)の距離L1よりも長くなるように形成される。このような構成とすることにより、括れ部128aに対して凸部144bを圧入することでシートピン140の抜け止めを図ることができると共に、凸部144bが括れ部128aを抜けて小径部126側に位置することにより、シート部142を僅かに揺れ動かす、いわゆる首振り機能を持たせることが可能となる。
【0041】
このような特徴を有する本実施形態に係るブリーダプラグ110では、ブリーダプラグ110をブリーダ孔60(図4参照)に螺合させた際、ブリーダ孔60の中心に対してシート部142が調芯されることとなり、首振り機能による自動調芯が可能となる。このため、螺合部120の中心とシート部142の中心との間にズレが生ずるような場合であっても、シート面の片当たり等による作動油の漏れを生じさせることが無い。よって、螺合部120の中心軸とシート部142の中心軸との間の許容誤差(公差)を従来よりも大きくすることができる。よって、切削等による加工を施すことなく、冷間鍛造のみで高品質なブリーダプラグを製造することが可能となる。
【0042】
本実施形態に係るブリーダプラグ110においても、図7に示すように、シート部142における螺合部120との対向面、または図8に示すように螺合部120の端面であってシート部142との対向面に、作動油やエアを挿通させるための導通路である第1の溝146が設けられる。ここで、図8(A)はブリーダ本体に第1の溝を設けた場合の例を示す部分断面正面図であり、図8(B)は同図(A)における右側面図であり、図8(C)は同図(A)の構成を有するブリーダ本体に圧入されるシートピンの構成を示す正面図である。
【0043】
なお、本実施形態に係るブリーダプラグ110では、圧入部144における遊嵌部144aと大径部128との間には隙間が設けられるため、第2の溝を設ける必要性は無い。
その他の構成、作用、効果については、上述した第1の実施形態に係るブリーダプラグ10と同様である。
【0044】
上記実施形態では、本発明の一例を特定し易くするために、各構成要素の外観形状を具体的に説明した。しかしながら各構成要素における外観形状は、その機能を損なわない程度の範囲において、設計変更することに何ら問題は無い。例えばニップル部における頭部は、上記説明では円錐台状としているが、これをそろばん球のような形状とした場合であっても、本発明の一部とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
10………ブリーダプラグ、12………ニップル部、14………頭部、16………括れ部、18………締付け部、20………螺合部、22………雄ねじ、24………貫通孔、26………小径部、28………大径部、30………ブリーダ本体、40………シートピン、42………シート部、44………圧入部、46………第1の溝、48………第2の溝、60………ブリーダ孔。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニップル部と螺合部を有し、前記ニップル部側の端部から前記螺合部側の端部にかけて貫通孔を備えるブリーダ本体と、
前記ブリーダ本体における前記貫通孔の前記螺合部側の開口部に圧入される圧入部とブリーダ孔を閉塞するシート部とを有するシートピンとを備え、
前記ブリーダ本体と前記シートピンとの当接面に、前記貫通孔における前記ニップル部側の開口部と前記当接面を介した外部空間とを連通する溝を備えたことを特徴とするブリーダプラグ。
【請求項2】
前記貫通孔は、少なくとも一部に内径を小径化させた括れ部を有し、
前記圧入部は、前記括れ部よりも直径を小さくした遊嵌部と、前記遊嵌部の外周に設けられ、前記圧入部の半径を前記貫通孔の半径よりも小さく、前記括れ部の半径よりも大きくする凸部を有し、
前記螺合部側の開口部から前記括れ部までの長さよりも、前記シート部から前記圧入部における前記凸部までの長さを長く構成したことを特徴とする請求項1に記載のブリーダプラグ。
【請求項3】
前記凸部は、前記遊嵌部の外周上に配置された複数の突起であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブリーダプラグ。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記ニップル部側に小径部、前記螺合部側に大径部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のブリーダプラグ。
【請求項5】
前記溝は、前記ブリーダ本体側に設けることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のブリーダプラグ。
【請求項6】
前記溝は、前記シートピンに設けることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のブリーダプラグ。
【請求項7】
前記当接面は、前記ブリーダ本体における前記螺合部側端部と前記シート部とにより構成される第1当接面と、
前記貫通孔と前記圧入部とより構成される第2当接面とから成り、
前記溝は、前記第1当接面を構成する前記螺合部側端部と前記シート部との少なくとも一方と、前記貫通孔と前記圧入部との少なくとも一方に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のブリーダプラグ。
【請求項8】
前記圧入部の基部に、その外周を一周する円周溝を設けたことを特徴とする請求項7に記載のブリーダプラグ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−194921(P2011−194921A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60823(P2010−60823)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】