ブレーキ制御装置
【課題】 マスタシリンダ圧が助勢限界を超えた際にホイルシリンダ圧を増圧する手段の作動頻度を低下することができるブレーキ制御装置を提供すること。
【解決手段】 負圧センサ132bと、コントロールユニット20で実行されるステップS101の処理と、ブレーキペダルストロークセンサ15と、ホイルシリンダ5と、ドライバのブレーキ操作とは別に液圧を供給できるポンプ10と、コントロールユニット20を備え、コントロールユニット20は、検出されたブレーキ操作状態が予め設定された所定の状態のときに、ホイルシリンダ5の液圧が算出された助勢限界圧より大きな所定値まではポンプ10の作動を制限し、マスタシリンダ圧をホイルシリンダ5に対して供給した。
【解決手段】 負圧センサ132bと、コントロールユニット20で実行されるステップS101の処理と、ブレーキペダルストロークセンサ15と、ホイルシリンダ5と、ドライバのブレーキ操作とは別に液圧を供給できるポンプ10と、コントロールユニット20を備え、コントロールユニット20は、検出されたブレーキ操作状態が予め設定された所定の状態のときに、ホイルシリンダ5の液圧が算出された助勢限界圧より大きな所定値まではポンプ10の作動を制限し、マスタシリンダ圧をホイルシリンダ5に対して供給した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、マスタシリンダ圧が助勢限界圧を超えると、液圧発生機構を液圧源としてホイルシリンダ圧を増圧している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−211494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、液圧発生機構の作動頻度が高く、液圧発生機構の性能や耐久性をさらに求められるという課題がある。このことは、液圧を発生させる手段の大型化や高い負荷で駆動することにつながるものである。
【0005】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、マスタシリンダ圧が助勢限界を超えた際にホイルシリンダ圧を増圧する手段の作動頻度を低下することができるブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、ドライバのブレーキ操作を倍力し、マスタシリンダ圧の助勢を行う倍力手段と、ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出手段と、前記マスタシリンダ圧が供給されるホイルシリンダと、前記ドライバのブレーキ操作状態に関連して、アクチュエータを駆動して前記ホイルシリンダに対しドライバのブレーキ操作とは別に液圧を供給できる液圧供給手段と、車両の状態に応じて前記液圧供給手段をコントロールするコントローラーを備え、前記コントローラーは、前記検出されたブレーキ操作状態が予め設定された所定の状態のときに、前記ホイルシリンダの液圧が前記倍力手段による助勢限界圧より大きな所定値までは前記液圧供給手段の作動を制限し、前記マスタシリンダ圧をホイルシリンダに対して供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明にあっては、マスタシリンダ圧が助勢限界を超えた際にホイルシリンダ圧を増圧する手段の作動頻度を低下することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置を備える車両のシステム図である。
【図2】実施例1のブレーキ制御装置のブレーキ制御システムの油圧回路構成を示す図である。
【図3】実施例1のコントロールユニットで実行される前輪における通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1のコントロールユニットで実行される後輪ホイルシリンダ圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1において、ドライバによるブレーキペダル操作量を示すマスタシリンダ圧と目標ホイルシリンダ圧の関係を表したグラフ図である。
【図6】実施例1において、負圧と閾値Aの関係を示すグラフ図である。
【図7】実施例1において、ブレーキペダル操作速度と閾値Bの関係を示すグラフ図である。
【図8】実施例1において、ブレーキペダル操作速度と閾値Cの関係を示すグラフ図である。
【図9】実施例2のブレーキ制御システムの油圧構成を示す油圧回路図である。
【図10】実施例2のコントロールユニットで実行される通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施例2において、p系統とs系統の制御状態(増圧・減圧・保持)による、ゲートイン弁、ゲートアウト弁、モータの制御を表したものである。
【図12】実施例2において、各系統における各輪の制御状態(増圧・減圧・保持)による増圧制御弁、減圧制御弁の制御を表したものである。
【図13】実施例2において、ドライバによるブレーキペダル操作量を示すマスタシリンダ圧と目標ホイルシリンダ圧の関係を表したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のブレーキ制御装置を実現する実施の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
(エンジンシステム)
図1は実施例1のブレーキ制御装置を備える車両のシステム図である。
この車両システムの内燃機関101における吸気系の構成を説明する。
エンジンへの吸気は、エアクリーナ151で塵等を除去、エアフローメータ115で吸入空気量を検出し、電子スロットル104を通過して吸気管102へ向かう構成である。電子スロットル104では、スロットルモータ103aによりスロットルバルブ103bが開閉駆動される。このスロットルバルブ103bの開度により吸入空気量を制御する。
そして、吸気管102により燃焼室106の内部へ空気を吸入させる。この際には、吸気バルブ105の開閉により吸気は燃焼室106の内部へ取り込まれる。吸気バルブ105は、可変バルブ機構112によってバルブリフト量及びバルブ作動角(開閉特性)を連続的に変更する。可変バルブ機構112の詳細は省略するが、作動角センサ127でセンシングされた制御軸をDCサーボモータ121により回転制御することにより、吸気バルブ105を駆動するカムの偏心状態を変化させて、バルブリフト量及びバルブ作動角を変更するものである。
【0011】
次に内燃機関101の排気系の構成について説明する。
燃焼室106からの燃焼排気は、排気バルブ107を介して排気管152へ排出させる。排気バルブ107は、排気側カム軸110に軸支されたカム111によって一定のバルブリフト量及びバルブ作動角(開閉特性)を保ち開閉駆動する。排気管152を通過した排気は、フロント触媒108及びリア触媒109で浄化され、マフラ153で消音されて、大気中へ放出する。
【0012】
次に内燃機関101の燃料系の構成について説明する。
燃料は燃料タンク133に収容され、図示しない燃料ポンプにより燃焼室106へ送られて、所定の燃圧により燃焼室106の内部、又は吸気バルブ105の近傍へ噴射される。この燃料系では蒸発燃料処理装置を備えている。蒸発燃料処理装置は、燃料タンク133の内部における蒸発燃料を、蒸発燃料通路134によりキャニスタ135へ送り、吸着させて気液を分離する。そして、パージ制御弁136を備えたパージ通路137により、吸気負圧でスロットルバルブ103bの下流の吸気系に吸引処理させる構成である。
【0013】
また、内燃機関101では、混合ガスを処理するブローバイガス処理装置を備えている。ブローバイガス処理装置は、クランクケース内に溜まるブローバイガスをPCV(ポジティブ・クランクケースベンチレーテッド・バルブ)138を備えたブローバイガスパージ通路139へ送る。ブローバイガスパージ通路139は、吸気負圧によりガスを、スロットルバルブ103bの下流の吸気系に吸引処理する。また、スロットルバルブ103bの上流に接続した新気通路140により、シリンダヘッドを経由してクランクケース内に新気を導入させる構成である。
【0014】
次に内燃機関101の制御系の構成について説明する。
エンジンコントロールユニット114には、各センサによる検出信号が入力される。アクセルペダルセンサ116によるアクセルペダルの開度、エアフローメータ115による吸入空気量、クランク角センサ117によるクランク軸からの回転信号、スロットルセンサ118によるスロットルバルブ103bの開度、水温センサ119による内燃機関101の冷却水温度、負圧センサ132bによる倍力装置2の負圧などが、検出信号として入力される。
【0015】
そして、エンジンコントロールユニット114は、倍力装置2、蒸発燃料処理装置、及びブローバイガス処理装置の負圧要求量を算出し、要求を満たす負圧が得られるようスロットルバルブ103bの開度を調整する。
また、エンジンコントロールユニット114は、スロットルバルブ103bの開度及び吸気バルブ105の開特性によってアクセル開度に対応する吸入空気量が得られるように、アクセルペダルセンサ116で検出されるアクセルペダルの開度に応じて、電子制御スロットル104及び可変バルブ機構112を制御する。
ブレーキ制御システム200については後述するが、エンジンコントロールユニット114との通信ライン211、チェックバルブ210は図1に示す。
内燃機関101の点火系については説明を省略する。
【0016】
(ブレーキシステム)
次にブレーキ制御システム200の構成について説明する。
図2は実施例1のブレーキ制御装置のブレーキ制御システムの油圧回路構成を示す図である。以下、4つの車輪FL,FR,RL,RRのそれぞれに対応して設けられている構成については、a,b,c,dの記号を添えて区別する。つまり、aは前左輪FL、bは前右輪FR、cは後左輪RL、dは後右輪RRに対応する構成を示す。
ブレーキ制御システム200の油圧回路は独立した2つの系統、第1ブレーキ回路201及び第2ブレーキ回路202に分かれている。
【0017】
第1ブレーキ回路201は、第1増圧制御弁6a,6bを介してマスタシリンダ3と前輪側のホイルシリンダ5a,5bを接続するブレーキ回路である。第2ブレーキ回路202は、ポンプ10及び増圧制御弁7を介してリザーバタンク4と前後輪のホイルシリンダ5a〜5dを接続するブレーキ回路である。また、減圧制御弁8a〜8dを介してホイルシリンダ5a〜5dとリザーバタンク4を接続するリターン回路が、第2ブレーキ回路202との間でブレーキ液路を一部共通しつつ、設けられている。
【0018】
ブレーキペダル1は、運転者の操作力(踏力)により作動し、運転者のブレーキ操作をマスタシリンダ3へ伝達する。ブレーキペダルストロークセンサ15は、ブレーキペダル1のストローク量を検出し、検出した値をコントロールユニット20に入力する。
倍力装置2は、ブレーキペダル1から伝わる力を増幅し、増幅した力をマスタシリンダ3へ伝える。実施例1における倍力装置2は、吸気系の負圧を内部に取り込むことによりブレーキペダル1の操作力の倍力を行うものである。例えば、負圧室に隣接した室にブレーキ操作で大気を送ることで倍力させるマスターバック(負圧ブースタに相当する)を用いるものなどである。なお、実施例1では、その負圧の状態で倍力できる限界を全負荷点と呼ぶ。
また、倍力装置2は、内部へ取り込んだ負圧を検出する負圧センサ132bを備えるものとする。なお、負圧センサ132bは図1に示す。
マスタシリンダ3は、第1ブレーキ回路201の2系統の液路201a,201bに接続し、また2系統でリザーバタンク4に接続する。そして、倍力装置から加わる力に比例した油圧(マスタシリンダ圧)を発生する。
リザーバタンク4は、ブレーキ液を貯留するタンクであり、マスタシリンダ3及び第2ブレーキ回路202に接続されている。
【0019】
マスタシリンダ3に接続された第1ブレーキ回路201(201a,201b)は、それぞれ第1増圧制御弁6(6a,6b)を介して前左輪FLのホイルシリンダ5a、前右輪FRのホイルシリンダ5bにそれぞれ接続されている。
第1増圧制御弁6(6a,6b)は、常開の電磁弁であり、コイルに流される電流値によりバルブ開度が比例的に変化する、いわゆる比例弁である。第1増圧制御弁6(6a,6b)は、コントロールユニット20からの指令電流により開閉動作を行い、それぞれ第1ブレーキ回路201(201a,201b)の連通・遮断を行う。開弁することで、マスタシリンダ圧>ホイルシリンダ圧の場合に、マスタシリンダ圧をホイルシリンダ5a,5bへ供給・遮断する動作を行う。また、開弁することで、マスタシリンダ圧<ホイルシリンダ圧の場合に、ホイルシリンダ圧をマスタシリンダ3へ供給・遮断する動作を行う。
【0020】
リザーバタンク4に接続された第2ブレーキ回路202の下流側は、ポンプ10に接続されている。ポンプ10はモータ11により駆動され、リザーバタンク4からブレーキ液を吸い上げ、チェック弁9を介して第2増圧制御弁7へブレーキ液を高圧で供給する。ポンプ10としては、ギヤ式ポンプやプランジャ式ポンプを例として挙げておく。
モータ11は、コントロールユニット20からの指令電流により回転数制御され、ポンプ10を駆動する。モータ11としては、ブラシレスDCモータを例として挙げておく。
【0021】
ポンプ10の下流にはチェック弁9が設けられる。チェック弁9は、第2増圧制御弁7からポンプ10へ向かう流れを防止し、ポンプ10から第2増圧制御弁7へ向かう流れを妨げない弁である。
チェック弁9の下流では、第2ブレーキ回路202は、前輪側回路部分202aと後輪側回路部分202bに分かれる。さらに、前輪側回路部分202aはブレーキ液路203a,203bに分岐し、後輪側回路部分202bはブレーキ液路203c,203dに分岐する。そして、ブレーキ液路203a,203bは第1増圧制御弁6a,6bと、ホイルシリンダ5a,5bの間の第1ブレーキ回路201a,201bに接続されている。また、後輪側となるブレーキ液路203c,203dはそれぞれ後輪側のホイルシリンダ5c,5dに接続されている。
【0022】
このように、後輪RL,RRのホイルシリンダ5c,5dには、第1ブレーキ回路201(201a,201b)を介してマスタシリンダ3が接続されておらず、第2ブレーキ回路202を介してポンプ10のみが接続されている。そのため、後輪側では、常に第2ブレーキ回路2によってのみホイルシリンダ圧が増圧される。そして、前輪側でのみ、第1ブレーキ回路201及び第2ブレーキ回路202が選択されて用いられ、ホイルシリンダ圧が増圧される。
【0023】
ブレーキ液路203a〜203dには、それぞれ第2増圧制御弁7a〜7dが設けられる。第2増圧制御弁7(7a〜7d)は、コントロールユニット20からの指令電流により開閉動作を行う、常閉の比例電磁弁である。この開閉動作により、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を断接し、ポンプ圧をホイルシリンダ5に供給、又は遮断する動作を行う。
ブレーキ液路203a〜203dには、それぞれブレーキ液路204a〜204dが接続される。ブレーキ液路204a〜204dの他端はリザーバタンク4に接続される。そして、ブレーキ液路204a〜204dには減圧制御弁8を設ける。減圧制御弁8は、コントロールユニット20からの指令電流により開閉動作を行う常開の電磁弁である。この開閉動作によりホイルシリンダ5a〜5dとリザーバタンク4の間のブレーキ液路を断接し、ホイルシリンダ圧をリザーバタンク4へ抜き減圧する動作を行う。
【0024】
チェック弁9とポンプ10の間には、リリーフ弁12が接続される。リリーフ弁12は、ポンプ圧が所定値、例えば本油圧回路の耐圧以上の場合に、ポンプ10の出口をリザーバタンク4へ接続し、ポンプ圧をリザーバタンク4へ開放することにより、ポンプ圧が所定値以上になることを防止する。
マスタシリンダ3と第1増圧制御弁6bの間の第1ブレーキ回路201bには、マスタシリンダ圧センサ13が設けられる。マスタシリンダ圧センサ13は、マスタシリンダ圧を検出し、検出値をコントロールユニット20へ送る。
【0025】
各ホイルシリンダ5a〜5dのそれぞれの上流には、ホイルシリンダ圧センサ14(14a〜14d)を設ける。ホイルシリンダ圧センサ14は、ホイルシリンダ圧を検出し、検出値をコントロールユニット20へ送る。
ブレーキペダル1には、ブレーキペダルストロークセンサ15が設けられ、ブレーキペダル1のストロークを検出し、検出値をコントロールユニット20へ送る。
コントロールユニット20は、マスタシリンダ圧センサ13、ホイルシリンダ圧センサ14、ブレーキペダルストロークセンサ15から送られる検出値、及び車両から得られる走行状態に関する情報が入力あれ、内蔵されるプログラムに基づき、第1増圧制御弁6、第2増圧制御弁7、減圧制御弁8、モータ11を制御する。
【0026】
[通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御]
図3に示すのは、実施例1のコントロールユニット20で実行される前輪における通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御の処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
ステップS101では、ホイルシリンダ圧をマスタシリンダ圧以上に増圧制御するかどうかを判断し、増圧制御を行う場合は、ステップS102へ移行し、増圧制御を行わない場合は、ステップS308へ移行する。このステップにおける判断内容の詳細は後述する。
ステップS102では、第1増圧制御弁6を閉状態にし、マスタシリンダ3〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。
ステップS103では、ホイルシリンダ圧を増圧するかどうかを判断し、増圧するならばステップS104へ移行し、増圧しないならばステップS109へ移行する。
【0027】
ステップS104では、第2増圧制御弁7を開状態にし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を接続する。また、減圧制御弁8を閉状態にし、モータ11をオンにし、ポンプ10を駆動する。これにより、ポンプ圧が第2増圧制御弁7を介してホイルシリンダ5に供給され、ホイルシリンダ圧が増圧される。またこの時、制御を行う輪の第1増圧制御弁6は閉状態であるため、運転者がブレーキペダル1を操作してもマスタシリンダ圧がホイルシリンダ5へ供給されることはない。
ステップS105では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したかどうかを判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧センサ14で検出した値に基づき判断する。目標値に到達した場合はステップS106へ移行し、目標値に到達しない場合はステップS104へ戻り、引き続きホイルシリンダ5の増圧を行う。
ステップS106では、第2増圧制御弁7を閉状態にし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。また、モータをオフにし、ポンプ10の駆動を停止し、ポンプ圧によるホイルシリンダ圧の増圧を終了する。
ステップS107では、引き続き、その該当輪のホイルシリンダ圧を制御するかどうかを判断し、続ける場合はステップS103戻り制御を続け、終了する場合はステップS108へ移行する。
【0028】
ステップS108では、ホイルシリンダ圧制御を行わない、あるいは、ホイルシリンダ圧制御を終了する場合において、第1増圧制御弁6を開状態にし、第2増圧制御弁7を閉状態にし、減圧制御弁8を開状態にし、モータ11をオフにする。これにより、マスタシリンダ3〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路が接続され、マスタシリンダ圧が第1増圧制御弁6を介し、直接ホイルシリンダ5へ供給され、運転者操作によりホイルシリンダ圧が増圧される通常ブレーキ状態にする。
ステップS109では、ホイルシリンダ圧を減圧するかどうかを判断し、減圧する場合には、ステップS110へ移行し、減圧しない場合には、ステップS113へ移行する。
ステップS110では、第2増圧制御弁を閉状態にし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。また、減圧制御弁8を開状態にし、リザーバタンク4〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を接続し、ホイルシリンダ圧をリザーバタンク4に抜き減圧する。
ステップS111では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧センサ14が検出した値に基づき行う。目標値に到達した場合にはステップS112へ移行し、到達しない場合にはステップS110へ戻り、引き続きホイルシリンダの減圧を行う。
ステップS112では、減圧制御弁8を閉状態とし、リザーバタンク4〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断し、ホイルシリンダ圧の減圧を終了し、ステップS107へ移行する。
ステップS113では、ホイルシリンダ圧を増圧も減圧もしない、すなわち保持を行う。第2増圧制御弁7を閉状態にし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断し、減圧制御弁8を閉状態とする。既に、ステップS102の処理によって、第1増圧制御弁6も閉状態となっている。従って、ホイルシリンダ圧は、第1増圧制御弁6と第2増圧制御弁7、及び減圧制御弁8により封じ込められ、保持され、ステップS107へ移行する。なお、ホイルシリンダ圧の目標値算出方法については後述する。
【0029】
[後輪ホイルシリンダ圧制御]
図4に示すのは、実施例1のコントロールユニット20で実行される後輪ホイルシリンダ圧制御の処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
ステップS201では、ホイルシリンダ圧を制御するかどうかを判断し、制御するならばステップS202へ移行し、制御しないならばステップS207へ移行する。
ステップS202では、ホイルシリンダ圧を増圧するかどうかを判断し、増圧するならばステップS203へ移行し、増圧しないならばステップS208へ移行する。
ステップS203では、第2増圧制御弁7を開状態とし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を接続する。また、減圧制御弁8を閉状態とし、モータをオンにし、ポンプ10を駆動する。これにより、ポンプ圧が第2増圧制御弁7を介して、すなわち、第2ブレーキ回路202により、ホイルシリンダ5へブレーキ液が供給され、ホイルシリンダ圧が増圧される。
【0030】
ステップS204では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧センサ14で検出した値に基づき行う。目標値に到達したならばステップS205へ移行し、目標値に到達していないならばステップS403へ戻り、引き続きホイルシリンダ圧の増圧を行う。
ステップS205では、第2増圧制御弁7を閉状態とし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。また、モータをオフにし、ポンプ10の駆動を停止し、ポンプ圧によるホイルシリンダ圧の増圧を終了する。
ステップS206では、引き続き、該当する輪のホイルシリンダ圧を制御するかどうかを判断し、続けるならばステップS202へ戻り制御を続け、終了するならばステップS207へ移行する。
ステップS207では、ホイルシリンダ圧制御を行わない場合、あるいは、ホイルシリンダ圧制御を終了する場合、第2増圧制御弁7を閉状態にし、減圧制御弁8を開状態にし、モータ11をオフにする。これにより、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。また、リザーバタンク4〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を接続し、ホイルシリンダ圧をリザーバタンク4に抜き減圧する。
【0031】
ステップS208では、ホイルシリンダ圧を減圧するかどうかを判断し、減圧するならばステップS209へ移行し、減圧しないならばステップS212へ移行する。
ステップS209では、第2増圧制御弁7を閉状態とし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。また、減圧制御弁8を開状態とし、リザーバタンク4〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を接続し、ホイルシリンダ圧をリザーバタンク4に抜き減圧する。
ステップS210では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧センサ14で検出した値に基づき行う。目標値に到達したならばステップS411へ移行し、到達しないならばステップS409へ戻り、引き続きホイルシリンダ5の減圧を行う。
ステップS211では、減圧制御弁8を閉状態とし、リザーバタンク4〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断し、ホイルシリンダ圧の減圧を終了し、ステップS206へ移行する。
ステップS212では、制御を行う輪のホイルシリンダ圧を増圧も減圧もしない、すなわち保持を行う。第2増圧制御弁7を閉状態とし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断し、減圧制御弁8を閉状態とする。従って、ホイルシリンダ圧は、第2増圧制御弁7と減圧制御弁8により封じ込められ、保持され、ステップS206へ移行する。
後輪RL,RRについては、常時、ポンプ10による増圧である。従って、図3のステップS101に示すマスタシリンダ圧による増圧からポンプ10による増圧を切り換える動作は不要である。
【0032】
[増圧制御の判断、ホイルシリンダ圧の目標値算出方法]
上記ステップS101におけるホイルシリンダ圧を増圧制御するかどうかの判断、及び図3、図4におけるホイルシリンダ圧の目標値算出方法について説明する。
図5は実施例1において、ドライバによるブレーキペダル操作量を示すマスタシリンダ圧と目標ホイルシリンダ圧の関係を表したグラフ図である。図6は実施例1において、負圧と閾値Aの関係を示すグラフ図である。
図5、図6に示す関係は、コントロールユニット20において、例えばマップデータ等として用いられ、目標ホイルシリンダ圧を算出する。
閾値Aは、マスタシリンダ圧による増圧からポンプ10による増圧、つまりホイルシリンダ圧の増圧制御を切り換える閾値である。この閾値Aはすなわち、図3のステップS101におけるホイルシリンダ圧を増圧制御するかどうかの判断閾値に相当するものである。目標ホイルシリンダ圧が閾値A以下ならばマスタシリンダ圧による増圧を行い、閾値Aを超えるならばホイルシリンダ圧を増圧制御し、ポンプ10による増圧を行う。
【0033】
さらに閾値Aは、倍力装置2の全負荷点のホイルシリンダ圧(助勢限界)に略一致させている。そのため、全負荷点を超える範囲、すなわち倍力装置2が所定の倍力比で増圧しなくなる範囲では、ポンプ10により、ホイルシリンダ圧を増圧し、十分な車両制動力を発揮させる。
これに加えて、実施例1では、閾値Aを図6に示すように負圧に応じて設定する。詳細には、負圧センサ132bにより倍力装置2の負圧を検出し、図6の例えばマップデータを参照して、負圧に応じた全負荷点のホイルシリンダ圧(助勢限界)を算出する。そして、閾値Aを略一致させるよう設定する。このようにすると、負圧が低下し、倍力装置2の全負荷点が低下する場合であっても、倍力装置2が所定の倍力比で増圧しなくなる範囲で、ポンプ10により、ホイルシリンダ圧を増圧し、十分な車両制動力を発揮させる。
【0034】
またさらに、実施例1では、図3のステップS101の判断における閾値Aに対して、閾値B、閾値Cを設定する。つまり、特定の条件成立時に閾値Aを閾値B又は閾値Cへ変更する。
図7は実施例1において、ブレーキペダル操作速度と閾値Bの関係を示すグラフ図である。図8は実施例1において、ブレーキペダル操作速度と閾値Cの関係を示すグラフ図である。
実施例1では、ドライバのブレーキペダルの操作速度が速い場合に、閾値Aを、閾値Aより低い目標ホイルシリンダ圧の閾値Bへ変更する。閾値Aから閾値Bへ変更するブレーキペダルの操作速度をSp1とする。
なお、図7の閾値Bは、目標ホイルシリンダ圧の閾値Aからの減少分を示す。
さらに、ブレーキペダルの操作速度がSp1より速いSp2に達すると、閾値Aを、閾値Aより高い目標ホイルシリンダ圧の閾値Cへ変更する。なお、図8の閾値Cは、目標ホイルシリンダ圧の閾値Aからの増加分を示す。閾値Cは、閾値Aより高い目標ホイルシリンダ圧に設定することにより、閾値Aがマスタシリンダ圧の増圧限界として倍力装置2の全負荷点として設定している目標ホイルシリンダ圧を超えて、ポンプ増圧領域に設定される。
【0035】
ここで、ブレーキペダルの操作速度Sp2は、倍力装置2により、ドライバがブレーキペダル1を踏み始めてから車輪がロックするまでの応答時間、例えば0.3s程度に近い値に設定すればよい。また、ブレーキペダルの操作速度Sp1は、通常、ドライバがブレーキペダル1を踏み始めてから車輪がロックするまでの応答時間、例えば1s程度と、操作速度Sp2の間に設定すればよい。
また、この閾値Aから閾値B、閾値Cへの変更は、閾値A以下でマスタシリンダ圧増圧を行っている際、ドライバがブレーキペダル1を速く操作した場合でも、図7、図8に示すように閾値Aを変更する。
【0036】
作用を説明する。
[ポンプによるホイルシリンダ圧の増圧の頻度を抑制する作用]
実施例1では、コントロールユニット20が、ブレーキペダルストロークセンサ15の検出信号と、自身がカウントする時間から、ブレーキペダル1の操作速度を算出する。そして、ブレーキペダル1の操作速度が通常より速い操作速度Sp1の場合には、閾値Aを低い閾値である閾値Bへ変更する。この閾値BがステップS101の増圧制御の開始判断に用いられることにより、ブレーキペダル1の操作速度が通常より速い場合に、閾値Aに達する前に、マスタシリンダ圧による増圧からポンプ10による増圧に切り換わる。つまりステップS102以降の処理へ切り換わる。これにより、ドライバのブレーキ操作に応じて、素早くホイルシリンダ圧を増圧する。
【0037】
さらに、ブレーキペダル1の操作速度がSp1より速く、通常の操作速度より極めて速い操作速度Sp2の場合には、閾値Aを高い閾値である閾値Cへ変更する。この閾値Cは倍力装置2の全負荷点(助勢限界)を超えるポンプ増圧領域に設定され、この閾値CがステップS101の増圧制御の開始判断に用いられる。
ブレーキペダル1の操作速度が通常より極めて速い場合には、ドライバのブレーキ操作の踏力が通常より大きく得られると判断できる。そのため、マスタシリンダ圧をポンプ10により増圧することなく、直接ホイルシリンダ5へ送る。
これによって、ポンプ10、モータ11による増圧頻度が抑制される。
【0038】
また、このようにブレーキペダル1の操作速度が通常より極めて速い場合に、マスタシリンダ圧により直接ホイルシリンダ5を増圧することは、素早くホイルシリンダ圧の増圧を行うことになる。このことは、負圧が低く倍力装置2の全負荷点が低下する場合があるブレーキ制御装置において、ポンプ10、モータ11によるポンプ増圧の能力の増大を抑制することになる。
【0039】
なお、この閾値Aの変更は、例えばドライバのブレーキペダル1の操作速度がSp1とSp2の間で、ポンプ10による増圧を行っている際に、ドライバがブレーキペダル1を操作速度Sp2以上で操作した場合は、以下のようにすればよい。
その際には、マスタシリンダ圧とホイルシリンダ圧を比較し、マスタシリンダ圧<ホイルシリンダ圧の場合には、ポンプ10による増圧を継続する。そして、マスタシリンダ圧>ホイルシリンダ圧の場合には、一旦、マスタシリンダ圧による増圧を行い、閾値Aを閾値Cへ変更し、その後にポンプ10による増圧を行うようにしてもよい。
【0040】
実施例1の作用を明確化するために、以下に説明を加える。
実施例1に示すように、可変バルブ機構を備えた車両においては、吸気バルブ105のリフト量を変更することによって、リフト量とともに開弁タイミング及び閉弁タイミングが制御される。これによりスロットルバルブ103bに加えて吸気バルブ105によっても燃焼室106へ流入させる空気量が制御される。
このような車両においては、吸気負圧は一定に近づけることが燃焼室106への空気重量の制御に有利である。また例えば、内燃機関101の低速側で、掃気より充填を重視されると、吸気バルブ105は排気バルブ107とのオーバーラップを小さくする方向へ制御され、その際に充分な空気重量を燃焼室106へ導入させるには、スロットルバルブ103bは開弁側へ制御されると考えられる。
これらのことから、吸気負圧が低く(大気圧に近く)なると、倍力装置2が取り込む負圧が低くなり、全負荷点(助勢限界)が低くなる。そのため、実施例1のように、マスタシリンダ3とポンプ10、モータ11の両方により前輪のホイルシリンダ圧が増圧されるブレーキシステムでは、ポンプ10、モータ11による増圧制御(図3のステップS102以降の処理)の頻度が高くなってしまう。
このことは、ポンプ10、モータ11の性能の増大させる要求となり、大型化や消費電流の増大化につながることになる。
実施例1では、目標ホイルシリンダ圧の閾値を変更して、速いブレーキ操作による大きなドライバの踏力を用いることにより、ポンプ10、モータ11による増圧制御の頻度を抑制する点が有利である。
【0041】
次に、効果を説明する。
実施例1のブレーキ制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0042】
(1)ドライバのブレーキ操作を倍力し、マスタシリンダ圧の助勢を行う倍力装置2と、ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキペダルストロークセンサ15と、マスタシリンダ圧が供給されるホイルシリンダ5と、ドライバのブレーキ操作状態に関連して、モータ11を駆動してホイルシリンダ5に対しドライバのブレーキ操作とは別に液圧を供給できるポンプ10と、車両の状態に応じてポンプ10をコントロールするコントロールユニット20を備え、コントロールユニット20は、検出されたブレーキ操作状態が予め設定された所定の状態のときに、ホイルシリンダ5の液圧が倍力装置2による助勢限界圧より大きな所定値まではポンプ10の作動を制限し、マスタシリンダ圧をホイルシリンダ5に対して供給するため、マスタシリンダ圧が助勢限界を超えた際にホイルシリンダ圧を増圧するポンプ10、モータ11の作動頻度を低下することができる。
また、これにより、ポンプ10及びモータ11の大型化、消費電流の増大化を抑制することができる。
【0043】
(2)ブレーキペダルストロークセンサ15は、ストローク量を検出し、時間との演算で、コントロールユニット20がブレーキペダル1の操作速度を検出し、所定の状態は、検出された操作速度が所定の操作速度Sp1より速い状態であるため、ドライバのブレーキ操作に応じて、素早くホイルシリンダ圧を増圧することができる。
【0044】
(3)コントロールユニット20は、検出された操作速度が第1の操作速度閾値Sp1より速い場合に、閾値Aを算出された助勢限界圧より小さな値の閾値Bとし、検出された操作速度が第1の操作速度閾値Sp1より大きい第2の操作速度閾値Sp2より速い場合に、閾値Aを算出された助勢限界圧より大きな値の閾値Cとするため、ブレーキペダル1の操作速度が通常より速い場合に、閾値Aに達する前に、マスタシリンダ圧による増圧からポンプ10による増圧に切り換え、ドライバのブレーキ操作に応じて、素早くホイルシリンダ圧を増圧することができ、またブレーキペダル1の操作速度が通常より極めて速い場合に、ドライバのブレーキ操作力でホイルシリンダ圧を増圧し、負圧が低く倍力装置2の全負荷点が低下する場合でもポンプ10、モータ11によるポンプ増圧の能力を増大させることなく、素早くホイルシリンダ圧の増圧を行うことができる。これにより、ポンプ10、モータ11の大型化や消費電力の増加を抑制することができる。
【0045】
(4)倍力装置2は、車両で得られる負圧により倍力を行う負圧ブースタを備え、負圧ブースタ内の負圧を検出する負圧センサ132bと、検出された負圧に基づいて負圧ブースタの助勢限界圧を算出するコントロールユニット20で実行されるステップS101の処理を備え、コントロールユニット20は、ポンプ10の作動の制限を、ステップS101の処理で負圧から算出する助勢限界圧より大きな所定値までとするため、マスタシリンダ圧が負圧から算出する助勢限界圧を超えた際にホイルシリンダ圧を増圧するポンプ10、モータ11の作動頻度を低下することができる。このことは、負圧が得られくい状態が生じる車両システムに対応できる点が有利である。
【実施例2】
【0046】
実施例2は、異なるブレーキ制御システム200の例である。
構成を説明する。
図9は実施例2のブレーキ制御システムの油圧構成を示す油圧回路図である。なお、実施例1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
実施例2のブレーキ制御システム200は、例えばX配管形式であり、p系統、s系統が設けられている。マスタシリンダ3からp系統、s系統が入力され、4輪のホイルシリンダへブレーキ液が配分される構成である。
以下の説明において、p系統、s系統にそれぞれ設けられる構成については、符号にp、sを付し、説明上、両系統で同様の場合は、概ねp、sを省略した符号で説明する。また、符号にa,b,c,dを付し、また省略する点は実施例1と同様である。
【0047】
マスタシリンダ3からのブレーキ液路301p,301sは、ギアポンプ910(910p,910s)へ接続する。ブレーキ液路302p,302sは、ギアポンプ910(910p,910s)の上流のブレーキ液路301p,301sに接続する。ブレーキ液路302pは、ブレーキ液路304b,304cに分岐する。ブレーキ液路304bはブレーキ液路305bを介してホイルシリンダ5bへ接続する。また、ブレーキ液路304cはブレーキ液路305cを介してホイルシリンダ5cへ接続する。
ブレーキ液路302sはブレーキ液路304a,304dに分岐する。ブレーキ液路304aはブレーキ液路305aを介してホイルシリンダ5aへ接続する。また、ブレーキ液路304dはブレーキ液路305dを介してホイルシリンダ5dへ接続する。
【0048】
マスタシリンダ3からのブレーキ液路301p,301sには、ゲートアウト弁99(99p,99s)を設ける。ゲートアウト弁99は、コントロールユニット920からの指令電流により開閉動作を行う常開の比例制御弁である。ゲートアウト弁99は、その開閉動作によりマスタシリンダ3とギアポンプ910の吐出側及び増圧制御弁96の間を、遮断、接続及び中間開度により接続する動作を行う。また、ゲートアウト弁99に並列してチェック弁306(306p,306s)を設ける。チェック弁306は、マスタシリンダ圧>ギアポンプ910の吐出側の液圧となった場合に、マスタシリンダ圧をギアポンプ910の吐出側及び増圧制御弁96の側へ伝える弁である。
【0049】
ブレーキ液路304には、増圧制御弁96をそれぞれ設ける。増圧制御弁96は、コントロールユニット920からの指令電流により開閉動作を行う常開の制御弁である。増圧制御弁96は、この開閉動作により、増圧制御弁96に供給されるマスタシリンダ圧又はポンプ圧をホイルシリンダ5へ供給又は遮断する。また増圧制御弁96に並列してチェック弁307(307a〜307d)を設ける。チェック弁307は、ホイルシリンダ圧>マスタシリンダ圧となった場合に、ホイルシリンダ圧をマスタシリンダ3へ抜く弁である。
【0050】
ギアポンプ910(910p,910s)は、共通する駆動手段として設けられるモータ911により駆動され、内部リザーバ912(912p,912s)のブレーキ液をマスタシリンダ3の側へ掻き出す動作、又はゲートイン弁98を介してマスタシリンダ3からブレーキ液を吸入して、ホイルシリンダ5の側へ吐出する。
モータ911は、コントロールユニット920からの指令電流により回転数制御され、ギアポンプ910を駆動する。
ギアポンプ910の吐出側は、ブレーキ液路301p,301sに接続される。ギアポンプ910の吐出側のブレーキ液路301p,301sには、チェック弁914(914p,914s)を設ける。チェック弁914(914p,914s)は、ギアポンプ910からマスタシリンダ側へのブレーキ液の流れを許可し、マスタシリンダ側からギアポンプ910への流れを防止する弁である。
ギアポンプ910の吸入側は、ブレーキ液路309p,309sに接続する。ブレーキ液路309p,309sは、ギアポンプ910の吐出側と内部リザーバ912(912p,912s)を接続する。
【0051】
ギアポンプ910の吸入側のブレーキ液路309p,309sには、チェック弁915(915p,915s)を設ける。チェック弁915(915p,915s)は、ゲートイン弁98の側すなわちマスタシリンダ3の側から内部リザーバ912への流れを防止する。
内部リザーバ912(912p,912s)は、減圧制御弁97を介して送られるブレーキ液を一時的に貯留する。
ブレーキ液路304(304a〜304d)はブレーキ液路305(305a〜305d)とブレーキ液路308(308a〜308d)に分岐するようにし、ブレーキ液路308b,308cはブレーキ液路310sに合流させる。また、ブレーキ液路308a,308dはブレーキ液路310pに合流させる。そして、ブレーキ液路310p,310sは、内部リザーバ912p,912sへ接続するブレーキ液路309p,309sへ接続する。
【0052】
ブレーキ液路308(308a〜308d)には、減圧制御弁97(97a〜97d)をそれぞれ設ける。減圧制御弁97(97a〜97d)は、コントロールユニット920からの指令電流により開閉動作を行う常閉の制御弁である。減圧制御弁97は、この開閉動作により、ホイルシリンダ圧を内部リザーバ912に供給、又は遮断する動作を行う。
ブレーキ液路309p,309sと、ブレーキ液路301p,301sを接続するブレーキ液路303p,303sを設け、このブレーキ液路303p,303sにゲートイン弁98(98p,98s)をそれぞれ設ける。ゲートイン弁98は、コントロールユニット920からの指令電流により開閉動作を行い、マスタシリンダ3とギアポンプ910の吸入側を断続する動作を行う。
マスタシリンダ圧センサ913は、ブレーキ液路301pに設けられ、マスタシリンダ圧を検出し、検出値をコントロールユニット920へ送る。
ポンプ圧センサ916(916p,916s)は、チェック弁914とゲートアウト弁99の間のブレーキ液路301にそれぞれ設けられ、ギアポンプ910の吐出圧を検出し、検出した値をコントロールユニット920へ送る。
コントロールユニット920は、マスタシリンダ圧センサ913、ポンプ圧センサ916、ブレーキペダルストロークセンサ15から送られる検出値、及び車両から送られる走行状態に関する情報が入力され、内蔵されるプログラムに基づき、増圧制御弁96、減圧制御弁97、ゲートイン弁98、ゲートアウト弁99、モータ911を制御する。
【0053】
[通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御]
図10に示すのは、実施例2のコントロールユニット920で実行される通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御の処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
ステップS301では、ホイルシリンダ圧をマスタシリンダ圧以上に増圧制御するかどうかを判断し、増圧制御を行うならばステップS301へ移行し、増圧制御を行わないならばステップS306へ移行する。このステップにおける判断内容については後述する。
ステップS302では、図11、図12に示す方法により、各弁及びモータの制御を行う。
図11はp系統とs系統の制御状態(増圧・減圧・保持)による、ゲートイン弁98、ゲートアウト弁99、モータ911の制御を表したものである。図12は各系統における各輪の制御状態(増圧・減圧・保持)による増圧制御弁96、減圧制御弁97の制御を表したものである。
ステップS303では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか判断する。この判断はポンプ圧センサ916で検出した値に基づき行う。目標値に到達したならばステップS306へ移行し、到達していないならばステップS304へ戻り、引き続きホイルシリンダ5の増圧を行う。なお、ホイルシリンダ圧の目標値算出方法については、後述する。
【0054】
ステップS304では、ゲートイン弁98を閉状態にし、ゲートアウト弁99を閉状態にし、増圧制御弁96を開状態にし、減圧制御弁97を閉状態にし、モータ911をオフとして、目標値に到達したホイルシリンダ圧を保持する。
ステップS305では、引き続き、その輪のホイルシリンダ圧を制御するかどうかを判断し、制御を続けるならばステップS302へ戻り制御を続け、制御を終了するならばステップS306へ移行する。
ステップS306では、ホイルシリンダ圧制御を行わないか、あるいはホイルシリンダ圧制御を終了する場合に、ゲートイン弁98を閉状態にし、ゲートアウト弁99を開状態にし、増圧制御弁96を開状態にし、減圧制御弁97を閉状態にし、モータ911をオフにする。これにより、マスタシリンダ3〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路301,302,304,305が接続され、マスタシリンダ圧が増圧制御弁96を介し、直接ホイルシリンダ5に供給され、運転者操作によりホイルシリンダ圧が増圧される通常ブレーキ状態となる。
【0055】
[増圧制御の判断、ホイルシリンダ圧の目標値算出方法]
上記ステップS301におけるホイルシリンダ圧を増圧制御するかどうかの判断、及びステップS303におけるホイルシリンダ圧の目標値算出方法について説明する。
図13は実施例2において、ドライバによるブレーキペダル操作量を示すマスタシリンダ圧と目標ホイルシリンダ圧の関係を表したグラフ図である。
実施例2においても、図13に示すように、実施例1と同様、マスタシリンダ圧による増圧からギアポンプ910による増圧、つまりホイルシリンダ圧の増圧制御を、閾値Aにより切り換える。そして、閾値Aを倍力装置2の全負荷点のホイルシリンダ圧(助勢限界)に略一致させる。さらに、閾値B、閾値Cを設定し、ブレーキペダル1の操作速度で切り換える点は実施例1と同様であるので説明を省略する。
その他の構成は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0056】
作用を説明する。
[ポンプによるホイルシリンダ圧の増圧の頻度を抑制する作用]
実施例2では、p系統、s系統の2系統をX配管させ、4輪のそれぞれに対して、図13に示すように、閾値A,B,Cによるマスタシリンダ圧による増圧と、ギアポンプ910による増圧を切り換えて行う。ギアポンプ910による増圧に切り換えた場合、系統ごとの状態(増圧、保持、減圧)の状態の組み合わせにより各弁及びモータ911の制御状態は図11のようになる。
実施例2では、p系統のギアポンプ910pと、s系統のギアポンプ910sを共通のモータ911で駆動する。そのため、2つの系統で増圧と保持の組み合わせとなる場合には、モータ911を駆動させて増圧を行うとともに、保持を行う系統では、比例制御弁であるゲートアウト弁99を中間開度にする。これにより、ギアポンプ910からゲートアウト弁99、ゲートイン弁98の間でブレーキ液を循環させるようにして、保持を行う。
このように、実施例2では、4輪全てでマスタシリンダ圧による通常ブレーキ状態でのブレーキ制御を行うとともに、ステップS301による目標ホイルシリンダ圧の閾値(閾値A,B,C)との比較判断により、ギアポンプ910による増圧へ切り換えを行う。
【0057】
そのため、このように、4輪全てでマスタシリンダ圧による通常ブレーキ状態でのブレーキ制御を行うブレーキ制御システム200において、得られる負圧の低下により倍力装置2が所定の倍力比で増圧しなくなっても、ギアポンプ910の増圧により、十分な車両の制動力を発揮させる。そして、閾値Aをブレーキペダル1の操作速度により閾値Bに切り換えることにより、ドライバのブレーキ操作に応じて、素早くホイルシリンダ圧を増圧する。また、閾値Aをブレーキペダル1の操作速度により閾値Cに切り換えることにより、ブレーキペダル1の操作速度が通常より極めて速い場合に、ドライバのブレーキ操作力でホイルシリンダ圧を増圧する。これにより、負圧が低く倍力装置2の全負荷点が低下する場合でもギアポンプ910、モータ911によるポンプ増圧の能力を増大させることなく、素早くホイルシリンダ圧の増圧を行う。これにより、ギアポンプ910、モータ911の大型化や消費電力の増加を抑制する。
その他の作用は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
効果を説明する。実施例2のブレーキ制御装置では、実施例1の(1)〜(4)と同様の効果を得ることができる。
【0058】
以上、本発明のブレーキ制御装置を実施例1、実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
なお、実施例1では、閾値Aを閾値B及び閾値Cへ変更することを示したが、閾値Bへのみ変更するものであってもよく、閾値Cへのみ変更するものであってもよい。例えば、閾値Bへのみ変更する場合には、ブレーキペダル1の操作速度がSp1以上で閾値Aからの減少分を徐々に増やし、Sp2以降では、減少分を一定にするようにしてもよい。これによっても、ドライバ操作に応じ、素早くホイルシリンダ圧を増加することができる。
また例えば、閾値Cへのみ変更する場合、及び閾値B、閾値Cへ変更する場合には、ブレーキペダル1の操作速度がSp2以上で、閾値Aに対する増分を増やし、所定値で一定にするようにしてもよい。これによっても、ドライバ操作に応じ、素早くホイルシリンダ圧を増加することができ、ポンプ10やモータ11の大型化や消費電流の増加を抑制でき、ポンプ10、モータ11による増圧制御の頻度を抑制することができる。
また、実施例1では、前輪をマスタシリンダ圧とポンプ圧で増圧し、後輪をポンプ圧で増圧するブレーキシステムを示し、実施例2では、前後輪の両方をマスタシリンダ圧とポンプ圧で増圧するブレーキシステムを示したが、他のブレーキシステムであってもマスタシリンダ圧とポンプ圧を切り換えるものであれば、同様の効果を得ることができる。
また、実施例1では、倍力手段として負圧により倍力を行う倍力装置2を示したが、特開2009-40290を示すように、電動モータにより倍力機構を作動させる電動倍力装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、他の移動体のブレーキ制御に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ブレーキペダル
2 倍力装置
3 マスタシリンダ
4 リザーバタンク
5(5a〜5d) ホイルシリンダ
6(6a,6b) 第1増圧制御弁
7(7a〜7d) 第2増圧制御弁
8(8a〜8d) 減圧制御弁
9 チェック弁
10 ポンプ
11 モータ
15 ブレーキペダルストロークセンサ
20 コントロールユニット
910(910p,910s) ギアポンプ
911 モータ
912 内部リザーバ
920 コントロールユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、マスタシリンダ圧が助勢限界圧を超えると、液圧発生機構を液圧源としてホイルシリンダ圧を増圧している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−211494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、液圧発生機構の作動頻度が高く、液圧発生機構の性能や耐久性をさらに求められるという課題がある。このことは、液圧を発生させる手段の大型化や高い負荷で駆動することにつながるものである。
【0005】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、マスタシリンダ圧が助勢限界を超えた際にホイルシリンダ圧を増圧する手段の作動頻度を低下することができるブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、ドライバのブレーキ操作を倍力し、マスタシリンダ圧の助勢を行う倍力手段と、ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出手段と、前記マスタシリンダ圧が供給されるホイルシリンダと、前記ドライバのブレーキ操作状態に関連して、アクチュエータを駆動して前記ホイルシリンダに対しドライバのブレーキ操作とは別に液圧を供給できる液圧供給手段と、車両の状態に応じて前記液圧供給手段をコントロールするコントローラーを備え、前記コントローラーは、前記検出されたブレーキ操作状態が予め設定された所定の状態のときに、前記ホイルシリンダの液圧が前記倍力手段による助勢限界圧より大きな所定値までは前記液圧供給手段の作動を制限し、前記マスタシリンダ圧をホイルシリンダに対して供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明にあっては、マスタシリンダ圧が助勢限界を超えた際にホイルシリンダ圧を増圧する手段の作動頻度を低下することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置を備える車両のシステム図である。
【図2】実施例1のブレーキ制御装置のブレーキ制御システムの油圧回路構成を示す図である。
【図3】実施例1のコントロールユニットで実行される前輪における通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1のコントロールユニットで実行される後輪ホイルシリンダ圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1において、ドライバによるブレーキペダル操作量を示すマスタシリンダ圧と目標ホイルシリンダ圧の関係を表したグラフ図である。
【図6】実施例1において、負圧と閾値Aの関係を示すグラフ図である。
【図7】実施例1において、ブレーキペダル操作速度と閾値Bの関係を示すグラフ図である。
【図8】実施例1において、ブレーキペダル操作速度と閾値Cの関係を示すグラフ図である。
【図9】実施例2のブレーキ制御システムの油圧構成を示す油圧回路図である。
【図10】実施例2のコントロールユニットで実行される通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施例2において、p系統とs系統の制御状態(増圧・減圧・保持)による、ゲートイン弁、ゲートアウト弁、モータの制御を表したものである。
【図12】実施例2において、各系統における各輪の制御状態(増圧・減圧・保持)による増圧制御弁、減圧制御弁の制御を表したものである。
【図13】実施例2において、ドライバによるブレーキペダル操作量を示すマスタシリンダ圧と目標ホイルシリンダ圧の関係を表したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のブレーキ制御装置を実現する実施の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
(エンジンシステム)
図1は実施例1のブレーキ制御装置を備える車両のシステム図である。
この車両システムの内燃機関101における吸気系の構成を説明する。
エンジンへの吸気は、エアクリーナ151で塵等を除去、エアフローメータ115で吸入空気量を検出し、電子スロットル104を通過して吸気管102へ向かう構成である。電子スロットル104では、スロットルモータ103aによりスロットルバルブ103bが開閉駆動される。このスロットルバルブ103bの開度により吸入空気量を制御する。
そして、吸気管102により燃焼室106の内部へ空気を吸入させる。この際には、吸気バルブ105の開閉により吸気は燃焼室106の内部へ取り込まれる。吸気バルブ105は、可変バルブ機構112によってバルブリフト量及びバルブ作動角(開閉特性)を連続的に変更する。可変バルブ機構112の詳細は省略するが、作動角センサ127でセンシングされた制御軸をDCサーボモータ121により回転制御することにより、吸気バルブ105を駆動するカムの偏心状態を変化させて、バルブリフト量及びバルブ作動角を変更するものである。
【0011】
次に内燃機関101の排気系の構成について説明する。
燃焼室106からの燃焼排気は、排気バルブ107を介して排気管152へ排出させる。排気バルブ107は、排気側カム軸110に軸支されたカム111によって一定のバルブリフト量及びバルブ作動角(開閉特性)を保ち開閉駆動する。排気管152を通過した排気は、フロント触媒108及びリア触媒109で浄化され、マフラ153で消音されて、大気中へ放出する。
【0012】
次に内燃機関101の燃料系の構成について説明する。
燃料は燃料タンク133に収容され、図示しない燃料ポンプにより燃焼室106へ送られて、所定の燃圧により燃焼室106の内部、又は吸気バルブ105の近傍へ噴射される。この燃料系では蒸発燃料処理装置を備えている。蒸発燃料処理装置は、燃料タンク133の内部における蒸発燃料を、蒸発燃料通路134によりキャニスタ135へ送り、吸着させて気液を分離する。そして、パージ制御弁136を備えたパージ通路137により、吸気負圧でスロットルバルブ103bの下流の吸気系に吸引処理させる構成である。
【0013】
また、内燃機関101では、混合ガスを処理するブローバイガス処理装置を備えている。ブローバイガス処理装置は、クランクケース内に溜まるブローバイガスをPCV(ポジティブ・クランクケースベンチレーテッド・バルブ)138を備えたブローバイガスパージ通路139へ送る。ブローバイガスパージ通路139は、吸気負圧によりガスを、スロットルバルブ103bの下流の吸気系に吸引処理する。また、スロットルバルブ103bの上流に接続した新気通路140により、シリンダヘッドを経由してクランクケース内に新気を導入させる構成である。
【0014】
次に内燃機関101の制御系の構成について説明する。
エンジンコントロールユニット114には、各センサによる検出信号が入力される。アクセルペダルセンサ116によるアクセルペダルの開度、エアフローメータ115による吸入空気量、クランク角センサ117によるクランク軸からの回転信号、スロットルセンサ118によるスロットルバルブ103bの開度、水温センサ119による内燃機関101の冷却水温度、負圧センサ132bによる倍力装置2の負圧などが、検出信号として入力される。
【0015】
そして、エンジンコントロールユニット114は、倍力装置2、蒸発燃料処理装置、及びブローバイガス処理装置の負圧要求量を算出し、要求を満たす負圧が得られるようスロットルバルブ103bの開度を調整する。
また、エンジンコントロールユニット114は、スロットルバルブ103bの開度及び吸気バルブ105の開特性によってアクセル開度に対応する吸入空気量が得られるように、アクセルペダルセンサ116で検出されるアクセルペダルの開度に応じて、電子制御スロットル104及び可変バルブ機構112を制御する。
ブレーキ制御システム200については後述するが、エンジンコントロールユニット114との通信ライン211、チェックバルブ210は図1に示す。
内燃機関101の点火系については説明を省略する。
【0016】
(ブレーキシステム)
次にブレーキ制御システム200の構成について説明する。
図2は実施例1のブレーキ制御装置のブレーキ制御システムの油圧回路構成を示す図である。以下、4つの車輪FL,FR,RL,RRのそれぞれに対応して設けられている構成については、a,b,c,dの記号を添えて区別する。つまり、aは前左輪FL、bは前右輪FR、cは後左輪RL、dは後右輪RRに対応する構成を示す。
ブレーキ制御システム200の油圧回路は独立した2つの系統、第1ブレーキ回路201及び第2ブレーキ回路202に分かれている。
【0017】
第1ブレーキ回路201は、第1増圧制御弁6a,6bを介してマスタシリンダ3と前輪側のホイルシリンダ5a,5bを接続するブレーキ回路である。第2ブレーキ回路202は、ポンプ10及び増圧制御弁7を介してリザーバタンク4と前後輪のホイルシリンダ5a〜5dを接続するブレーキ回路である。また、減圧制御弁8a〜8dを介してホイルシリンダ5a〜5dとリザーバタンク4を接続するリターン回路が、第2ブレーキ回路202との間でブレーキ液路を一部共通しつつ、設けられている。
【0018】
ブレーキペダル1は、運転者の操作力(踏力)により作動し、運転者のブレーキ操作をマスタシリンダ3へ伝達する。ブレーキペダルストロークセンサ15は、ブレーキペダル1のストローク量を検出し、検出した値をコントロールユニット20に入力する。
倍力装置2は、ブレーキペダル1から伝わる力を増幅し、増幅した力をマスタシリンダ3へ伝える。実施例1における倍力装置2は、吸気系の負圧を内部に取り込むことによりブレーキペダル1の操作力の倍力を行うものである。例えば、負圧室に隣接した室にブレーキ操作で大気を送ることで倍力させるマスターバック(負圧ブースタに相当する)を用いるものなどである。なお、実施例1では、その負圧の状態で倍力できる限界を全負荷点と呼ぶ。
また、倍力装置2は、内部へ取り込んだ負圧を検出する負圧センサ132bを備えるものとする。なお、負圧センサ132bは図1に示す。
マスタシリンダ3は、第1ブレーキ回路201の2系統の液路201a,201bに接続し、また2系統でリザーバタンク4に接続する。そして、倍力装置から加わる力に比例した油圧(マスタシリンダ圧)を発生する。
リザーバタンク4は、ブレーキ液を貯留するタンクであり、マスタシリンダ3及び第2ブレーキ回路202に接続されている。
【0019】
マスタシリンダ3に接続された第1ブレーキ回路201(201a,201b)は、それぞれ第1増圧制御弁6(6a,6b)を介して前左輪FLのホイルシリンダ5a、前右輪FRのホイルシリンダ5bにそれぞれ接続されている。
第1増圧制御弁6(6a,6b)は、常開の電磁弁であり、コイルに流される電流値によりバルブ開度が比例的に変化する、いわゆる比例弁である。第1増圧制御弁6(6a,6b)は、コントロールユニット20からの指令電流により開閉動作を行い、それぞれ第1ブレーキ回路201(201a,201b)の連通・遮断を行う。開弁することで、マスタシリンダ圧>ホイルシリンダ圧の場合に、マスタシリンダ圧をホイルシリンダ5a,5bへ供給・遮断する動作を行う。また、開弁することで、マスタシリンダ圧<ホイルシリンダ圧の場合に、ホイルシリンダ圧をマスタシリンダ3へ供給・遮断する動作を行う。
【0020】
リザーバタンク4に接続された第2ブレーキ回路202の下流側は、ポンプ10に接続されている。ポンプ10はモータ11により駆動され、リザーバタンク4からブレーキ液を吸い上げ、チェック弁9を介して第2増圧制御弁7へブレーキ液を高圧で供給する。ポンプ10としては、ギヤ式ポンプやプランジャ式ポンプを例として挙げておく。
モータ11は、コントロールユニット20からの指令電流により回転数制御され、ポンプ10を駆動する。モータ11としては、ブラシレスDCモータを例として挙げておく。
【0021】
ポンプ10の下流にはチェック弁9が設けられる。チェック弁9は、第2増圧制御弁7からポンプ10へ向かう流れを防止し、ポンプ10から第2増圧制御弁7へ向かう流れを妨げない弁である。
チェック弁9の下流では、第2ブレーキ回路202は、前輪側回路部分202aと後輪側回路部分202bに分かれる。さらに、前輪側回路部分202aはブレーキ液路203a,203bに分岐し、後輪側回路部分202bはブレーキ液路203c,203dに分岐する。そして、ブレーキ液路203a,203bは第1増圧制御弁6a,6bと、ホイルシリンダ5a,5bの間の第1ブレーキ回路201a,201bに接続されている。また、後輪側となるブレーキ液路203c,203dはそれぞれ後輪側のホイルシリンダ5c,5dに接続されている。
【0022】
このように、後輪RL,RRのホイルシリンダ5c,5dには、第1ブレーキ回路201(201a,201b)を介してマスタシリンダ3が接続されておらず、第2ブレーキ回路202を介してポンプ10のみが接続されている。そのため、後輪側では、常に第2ブレーキ回路2によってのみホイルシリンダ圧が増圧される。そして、前輪側でのみ、第1ブレーキ回路201及び第2ブレーキ回路202が選択されて用いられ、ホイルシリンダ圧が増圧される。
【0023】
ブレーキ液路203a〜203dには、それぞれ第2増圧制御弁7a〜7dが設けられる。第2増圧制御弁7(7a〜7d)は、コントロールユニット20からの指令電流により開閉動作を行う、常閉の比例電磁弁である。この開閉動作により、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を断接し、ポンプ圧をホイルシリンダ5に供給、又は遮断する動作を行う。
ブレーキ液路203a〜203dには、それぞれブレーキ液路204a〜204dが接続される。ブレーキ液路204a〜204dの他端はリザーバタンク4に接続される。そして、ブレーキ液路204a〜204dには減圧制御弁8を設ける。減圧制御弁8は、コントロールユニット20からの指令電流により開閉動作を行う常開の電磁弁である。この開閉動作によりホイルシリンダ5a〜5dとリザーバタンク4の間のブレーキ液路を断接し、ホイルシリンダ圧をリザーバタンク4へ抜き減圧する動作を行う。
【0024】
チェック弁9とポンプ10の間には、リリーフ弁12が接続される。リリーフ弁12は、ポンプ圧が所定値、例えば本油圧回路の耐圧以上の場合に、ポンプ10の出口をリザーバタンク4へ接続し、ポンプ圧をリザーバタンク4へ開放することにより、ポンプ圧が所定値以上になることを防止する。
マスタシリンダ3と第1増圧制御弁6bの間の第1ブレーキ回路201bには、マスタシリンダ圧センサ13が設けられる。マスタシリンダ圧センサ13は、マスタシリンダ圧を検出し、検出値をコントロールユニット20へ送る。
【0025】
各ホイルシリンダ5a〜5dのそれぞれの上流には、ホイルシリンダ圧センサ14(14a〜14d)を設ける。ホイルシリンダ圧センサ14は、ホイルシリンダ圧を検出し、検出値をコントロールユニット20へ送る。
ブレーキペダル1には、ブレーキペダルストロークセンサ15が設けられ、ブレーキペダル1のストロークを検出し、検出値をコントロールユニット20へ送る。
コントロールユニット20は、マスタシリンダ圧センサ13、ホイルシリンダ圧センサ14、ブレーキペダルストロークセンサ15から送られる検出値、及び車両から得られる走行状態に関する情報が入力あれ、内蔵されるプログラムに基づき、第1増圧制御弁6、第2増圧制御弁7、減圧制御弁8、モータ11を制御する。
【0026】
[通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御]
図3に示すのは、実施例1のコントロールユニット20で実行される前輪における通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御の処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
ステップS101では、ホイルシリンダ圧をマスタシリンダ圧以上に増圧制御するかどうかを判断し、増圧制御を行う場合は、ステップS102へ移行し、増圧制御を行わない場合は、ステップS308へ移行する。このステップにおける判断内容の詳細は後述する。
ステップS102では、第1増圧制御弁6を閉状態にし、マスタシリンダ3〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。
ステップS103では、ホイルシリンダ圧を増圧するかどうかを判断し、増圧するならばステップS104へ移行し、増圧しないならばステップS109へ移行する。
【0027】
ステップS104では、第2増圧制御弁7を開状態にし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を接続する。また、減圧制御弁8を閉状態にし、モータ11をオンにし、ポンプ10を駆動する。これにより、ポンプ圧が第2増圧制御弁7を介してホイルシリンダ5に供給され、ホイルシリンダ圧が増圧される。またこの時、制御を行う輪の第1増圧制御弁6は閉状態であるため、運転者がブレーキペダル1を操作してもマスタシリンダ圧がホイルシリンダ5へ供給されることはない。
ステップS105では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したかどうかを判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧センサ14で検出した値に基づき判断する。目標値に到達した場合はステップS106へ移行し、目標値に到達しない場合はステップS104へ戻り、引き続きホイルシリンダ5の増圧を行う。
ステップS106では、第2増圧制御弁7を閉状態にし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。また、モータをオフにし、ポンプ10の駆動を停止し、ポンプ圧によるホイルシリンダ圧の増圧を終了する。
ステップS107では、引き続き、その該当輪のホイルシリンダ圧を制御するかどうかを判断し、続ける場合はステップS103戻り制御を続け、終了する場合はステップS108へ移行する。
【0028】
ステップS108では、ホイルシリンダ圧制御を行わない、あるいは、ホイルシリンダ圧制御を終了する場合において、第1増圧制御弁6を開状態にし、第2増圧制御弁7を閉状態にし、減圧制御弁8を開状態にし、モータ11をオフにする。これにより、マスタシリンダ3〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路が接続され、マスタシリンダ圧が第1増圧制御弁6を介し、直接ホイルシリンダ5へ供給され、運転者操作によりホイルシリンダ圧が増圧される通常ブレーキ状態にする。
ステップS109では、ホイルシリンダ圧を減圧するかどうかを判断し、減圧する場合には、ステップS110へ移行し、減圧しない場合には、ステップS113へ移行する。
ステップS110では、第2増圧制御弁を閉状態にし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。また、減圧制御弁8を開状態にし、リザーバタンク4〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を接続し、ホイルシリンダ圧をリザーバタンク4に抜き減圧する。
ステップS111では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧センサ14が検出した値に基づき行う。目標値に到達した場合にはステップS112へ移行し、到達しない場合にはステップS110へ戻り、引き続きホイルシリンダの減圧を行う。
ステップS112では、減圧制御弁8を閉状態とし、リザーバタンク4〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断し、ホイルシリンダ圧の減圧を終了し、ステップS107へ移行する。
ステップS113では、ホイルシリンダ圧を増圧も減圧もしない、すなわち保持を行う。第2増圧制御弁7を閉状態にし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断し、減圧制御弁8を閉状態とする。既に、ステップS102の処理によって、第1増圧制御弁6も閉状態となっている。従って、ホイルシリンダ圧は、第1増圧制御弁6と第2増圧制御弁7、及び減圧制御弁8により封じ込められ、保持され、ステップS107へ移行する。なお、ホイルシリンダ圧の目標値算出方法については後述する。
【0029】
[後輪ホイルシリンダ圧制御]
図4に示すのは、実施例1のコントロールユニット20で実行される後輪ホイルシリンダ圧制御の処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
ステップS201では、ホイルシリンダ圧を制御するかどうかを判断し、制御するならばステップS202へ移行し、制御しないならばステップS207へ移行する。
ステップS202では、ホイルシリンダ圧を増圧するかどうかを判断し、増圧するならばステップS203へ移行し、増圧しないならばステップS208へ移行する。
ステップS203では、第2増圧制御弁7を開状態とし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を接続する。また、減圧制御弁8を閉状態とし、モータをオンにし、ポンプ10を駆動する。これにより、ポンプ圧が第2増圧制御弁7を介して、すなわち、第2ブレーキ回路202により、ホイルシリンダ5へブレーキ液が供給され、ホイルシリンダ圧が増圧される。
【0030】
ステップS204では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧センサ14で検出した値に基づき行う。目標値に到達したならばステップS205へ移行し、目標値に到達していないならばステップS403へ戻り、引き続きホイルシリンダ圧の増圧を行う。
ステップS205では、第2増圧制御弁7を閉状態とし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。また、モータをオフにし、ポンプ10の駆動を停止し、ポンプ圧によるホイルシリンダ圧の増圧を終了する。
ステップS206では、引き続き、該当する輪のホイルシリンダ圧を制御するかどうかを判断し、続けるならばステップS202へ戻り制御を続け、終了するならばステップS207へ移行する。
ステップS207では、ホイルシリンダ圧制御を行わない場合、あるいは、ホイルシリンダ圧制御を終了する場合、第2増圧制御弁7を閉状態にし、減圧制御弁8を開状態にし、モータ11をオフにする。これにより、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。また、リザーバタンク4〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を接続し、ホイルシリンダ圧をリザーバタンク4に抜き減圧する。
【0031】
ステップS208では、ホイルシリンダ圧を減圧するかどうかを判断し、減圧するならばステップS209へ移行し、減圧しないならばステップS212へ移行する。
ステップS209では、第2増圧制御弁7を閉状態とし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断する。また、減圧制御弁8を開状態とし、リザーバタンク4〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を接続し、ホイルシリンダ圧をリザーバタンク4に抜き減圧する。
ステップS210では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧センサ14で検出した値に基づき行う。目標値に到達したならばステップS411へ移行し、到達しないならばステップS409へ戻り、引き続きホイルシリンダ5の減圧を行う。
ステップS211では、減圧制御弁8を閉状態とし、リザーバタンク4〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断し、ホイルシリンダ圧の減圧を終了し、ステップS206へ移行する。
ステップS212では、制御を行う輪のホイルシリンダ圧を増圧も減圧もしない、すなわち保持を行う。第2増圧制御弁7を閉状態とし、ポンプ10〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路を遮断し、減圧制御弁8を閉状態とする。従って、ホイルシリンダ圧は、第2増圧制御弁7と減圧制御弁8により封じ込められ、保持され、ステップS206へ移行する。
後輪RL,RRについては、常時、ポンプ10による増圧である。従って、図3のステップS101に示すマスタシリンダ圧による増圧からポンプ10による増圧を切り換える動作は不要である。
【0032】
[増圧制御の判断、ホイルシリンダ圧の目標値算出方法]
上記ステップS101におけるホイルシリンダ圧を増圧制御するかどうかの判断、及び図3、図4におけるホイルシリンダ圧の目標値算出方法について説明する。
図5は実施例1において、ドライバによるブレーキペダル操作量を示すマスタシリンダ圧と目標ホイルシリンダ圧の関係を表したグラフ図である。図6は実施例1において、負圧と閾値Aの関係を示すグラフ図である。
図5、図6に示す関係は、コントロールユニット20において、例えばマップデータ等として用いられ、目標ホイルシリンダ圧を算出する。
閾値Aは、マスタシリンダ圧による増圧からポンプ10による増圧、つまりホイルシリンダ圧の増圧制御を切り換える閾値である。この閾値Aはすなわち、図3のステップS101におけるホイルシリンダ圧を増圧制御するかどうかの判断閾値に相当するものである。目標ホイルシリンダ圧が閾値A以下ならばマスタシリンダ圧による増圧を行い、閾値Aを超えるならばホイルシリンダ圧を増圧制御し、ポンプ10による増圧を行う。
【0033】
さらに閾値Aは、倍力装置2の全負荷点のホイルシリンダ圧(助勢限界)に略一致させている。そのため、全負荷点を超える範囲、すなわち倍力装置2が所定の倍力比で増圧しなくなる範囲では、ポンプ10により、ホイルシリンダ圧を増圧し、十分な車両制動力を発揮させる。
これに加えて、実施例1では、閾値Aを図6に示すように負圧に応じて設定する。詳細には、負圧センサ132bにより倍力装置2の負圧を検出し、図6の例えばマップデータを参照して、負圧に応じた全負荷点のホイルシリンダ圧(助勢限界)を算出する。そして、閾値Aを略一致させるよう設定する。このようにすると、負圧が低下し、倍力装置2の全負荷点が低下する場合であっても、倍力装置2が所定の倍力比で増圧しなくなる範囲で、ポンプ10により、ホイルシリンダ圧を増圧し、十分な車両制動力を発揮させる。
【0034】
またさらに、実施例1では、図3のステップS101の判断における閾値Aに対して、閾値B、閾値Cを設定する。つまり、特定の条件成立時に閾値Aを閾値B又は閾値Cへ変更する。
図7は実施例1において、ブレーキペダル操作速度と閾値Bの関係を示すグラフ図である。図8は実施例1において、ブレーキペダル操作速度と閾値Cの関係を示すグラフ図である。
実施例1では、ドライバのブレーキペダルの操作速度が速い場合に、閾値Aを、閾値Aより低い目標ホイルシリンダ圧の閾値Bへ変更する。閾値Aから閾値Bへ変更するブレーキペダルの操作速度をSp1とする。
なお、図7の閾値Bは、目標ホイルシリンダ圧の閾値Aからの減少分を示す。
さらに、ブレーキペダルの操作速度がSp1より速いSp2に達すると、閾値Aを、閾値Aより高い目標ホイルシリンダ圧の閾値Cへ変更する。なお、図8の閾値Cは、目標ホイルシリンダ圧の閾値Aからの増加分を示す。閾値Cは、閾値Aより高い目標ホイルシリンダ圧に設定することにより、閾値Aがマスタシリンダ圧の増圧限界として倍力装置2の全負荷点として設定している目標ホイルシリンダ圧を超えて、ポンプ増圧領域に設定される。
【0035】
ここで、ブレーキペダルの操作速度Sp2は、倍力装置2により、ドライバがブレーキペダル1を踏み始めてから車輪がロックするまでの応答時間、例えば0.3s程度に近い値に設定すればよい。また、ブレーキペダルの操作速度Sp1は、通常、ドライバがブレーキペダル1を踏み始めてから車輪がロックするまでの応答時間、例えば1s程度と、操作速度Sp2の間に設定すればよい。
また、この閾値Aから閾値B、閾値Cへの変更は、閾値A以下でマスタシリンダ圧増圧を行っている際、ドライバがブレーキペダル1を速く操作した場合でも、図7、図8に示すように閾値Aを変更する。
【0036】
作用を説明する。
[ポンプによるホイルシリンダ圧の増圧の頻度を抑制する作用]
実施例1では、コントロールユニット20が、ブレーキペダルストロークセンサ15の検出信号と、自身がカウントする時間から、ブレーキペダル1の操作速度を算出する。そして、ブレーキペダル1の操作速度が通常より速い操作速度Sp1の場合には、閾値Aを低い閾値である閾値Bへ変更する。この閾値BがステップS101の増圧制御の開始判断に用いられることにより、ブレーキペダル1の操作速度が通常より速い場合に、閾値Aに達する前に、マスタシリンダ圧による増圧からポンプ10による増圧に切り換わる。つまりステップS102以降の処理へ切り換わる。これにより、ドライバのブレーキ操作に応じて、素早くホイルシリンダ圧を増圧する。
【0037】
さらに、ブレーキペダル1の操作速度がSp1より速く、通常の操作速度より極めて速い操作速度Sp2の場合には、閾値Aを高い閾値である閾値Cへ変更する。この閾値Cは倍力装置2の全負荷点(助勢限界)を超えるポンプ増圧領域に設定され、この閾値CがステップS101の増圧制御の開始判断に用いられる。
ブレーキペダル1の操作速度が通常より極めて速い場合には、ドライバのブレーキ操作の踏力が通常より大きく得られると判断できる。そのため、マスタシリンダ圧をポンプ10により増圧することなく、直接ホイルシリンダ5へ送る。
これによって、ポンプ10、モータ11による増圧頻度が抑制される。
【0038】
また、このようにブレーキペダル1の操作速度が通常より極めて速い場合に、マスタシリンダ圧により直接ホイルシリンダ5を増圧することは、素早くホイルシリンダ圧の増圧を行うことになる。このことは、負圧が低く倍力装置2の全負荷点が低下する場合があるブレーキ制御装置において、ポンプ10、モータ11によるポンプ増圧の能力の増大を抑制することになる。
【0039】
なお、この閾値Aの変更は、例えばドライバのブレーキペダル1の操作速度がSp1とSp2の間で、ポンプ10による増圧を行っている際に、ドライバがブレーキペダル1を操作速度Sp2以上で操作した場合は、以下のようにすればよい。
その際には、マスタシリンダ圧とホイルシリンダ圧を比較し、マスタシリンダ圧<ホイルシリンダ圧の場合には、ポンプ10による増圧を継続する。そして、マスタシリンダ圧>ホイルシリンダ圧の場合には、一旦、マスタシリンダ圧による増圧を行い、閾値Aを閾値Cへ変更し、その後にポンプ10による増圧を行うようにしてもよい。
【0040】
実施例1の作用を明確化するために、以下に説明を加える。
実施例1に示すように、可変バルブ機構を備えた車両においては、吸気バルブ105のリフト量を変更することによって、リフト量とともに開弁タイミング及び閉弁タイミングが制御される。これによりスロットルバルブ103bに加えて吸気バルブ105によっても燃焼室106へ流入させる空気量が制御される。
このような車両においては、吸気負圧は一定に近づけることが燃焼室106への空気重量の制御に有利である。また例えば、内燃機関101の低速側で、掃気より充填を重視されると、吸気バルブ105は排気バルブ107とのオーバーラップを小さくする方向へ制御され、その際に充分な空気重量を燃焼室106へ導入させるには、スロットルバルブ103bは開弁側へ制御されると考えられる。
これらのことから、吸気負圧が低く(大気圧に近く)なると、倍力装置2が取り込む負圧が低くなり、全負荷点(助勢限界)が低くなる。そのため、実施例1のように、マスタシリンダ3とポンプ10、モータ11の両方により前輪のホイルシリンダ圧が増圧されるブレーキシステムでは、ポンプ10、モータ11による増圧制御(図3のステップS102以降の処理)の頻度が高くなってしまう。
このことは、ポンプ10、モータ11の性能の増大させる要求となり、大型化や消費電流の増大化につながることになる。
実施例1では、目標ホイルシリンダ圧の閾値を変更して、速いブレーキ操作による大きなドライバの踏力を用いることにより、ポンプ10、モータ11による増圧制御の頻度を抑制する点が有利である。
【0041】
次に、効果を説明する。
実施例1のブレーキ制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0042】
(1)ドライバのブレーキ操作を倍力し、マスタシリンダ圧の助勢を行う倍力装置2と、ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキペダルストロークセンサ15と、マスタシリンダ圧が供給されるホイルシリンダ5と、ドライバのブレーキ操作状態に関連して、モータ11を駆動してホイルシリンダ5に対しドライバのブレーキ操作とは別に液圧を供給できるポンプ10と、車両の状態に応じてポンプ10をコントロールするコントロールユニット20を備え、コントロールユニット20は、検出されたブレーキ操作状態が予め設定された所定の状態のときに、ホイルシリンダ5の液圧が倍力装置2による助勢限界圧より大きな所定値まではポンプ10の作動を制限し、マスタシリンダ圧をホイルシリンダ5に対して供給するため、マスタシリンダ圧が助勢限界を超えた際にホイルシリンダ圧を増圧するポンプ10、モータ11の作動頻度を低下することができる。
また、これにより、ポンプ10及びモータ11の大型化、消費電流の増大化を抑制することができる。
【0043】
(2)ブレーキペダルストロークセンサ15は、ストローク量を検出し、時間との演算で、コントロールユニット20がブレーキペダル1の操作速度を検出し、所定の状態は、検出された操作速度が所定の操作速度Sp1より速い状態であるため、ドライバのブレーキ操作に応じて、素早くホイルシリンダ圧を増圧することができる。
【0044】
(3)コントロールユニット20は、検出された操作速度が第1の操作速度閾値Sp1より速い場合に、閾値Aを算出された助勢限界圧より小さな値の閾値Bとし、検出された操作速度が第1の操作速度閾値Sp1より大きい第2の操作速度閾値Sp2より速い場合に、閾値Aを算出された助勢限界圧より大きな値の閾値Cとするため、ブレーキペダル1の操作速度が通常より速い場合に、閾値Aに達する前に、マスタシリンダ圧による増圧からポンプ10による増圧に切り換え、ドライバのブレーキ操作に応じて、素早くホイルシリンダ圧を増圧することができ、またブレーキペダル1の操作速度が通常より極めて速い場合に、ドライバのブレーキ操作力でホイルシリンダ圧を増圧し、負圧が低く倍力装置2の全負荷点が低下する場合でもポンプ10、モータ11によるポンプ増圧の能力を増大させることなく、素早くホイルシリンダ圧の増圧を行うことができる。これにより、ポンプ10、モータ11の大型化や消費電力の増加を抑制することができる。
【0045】
(4)倍力装置2は、車両で得られる負圧により倍力を行う負圧ブースタを備え、負圧ブースタ内の負圧を検出する負圧センサ132bと、検出された負圧に基づいて負圧ブースタの助勢限界圧を算出するコントロールユニット20で実行されるステップS101の処理を備え、コントロールユニット20は、ポンプ10の作動の制限を、ステップS101の処理で負圧から算出する助勢限界圧より大きな所定値までとするため、マスタシリンダ圧が負圧から算出する助勢限界圧を超えた際にホイルシリンダ圧を増圧するポンプ10、モータ11の作動頻度を低下することができる。このことは、負圧が得られくい状態が生じる車両システムに対応できる点が有利である。
【実施例2】
【0046】
実施例2は、異なるブレーキ制御システム200の例である。
構成を説明する。
図9は実施例2のブレーキ制御システムの油圧構成を示す油圧回路図である。なお、実施例1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
実施例2のブレーキ制御システム200は、例えばX配管形式であり、p系統、s系統が設けられている。マスタシリンダ3からp系統、s系統が入力され、4輪のホイルシリンダへブレーキ液が配分される構成である。
以下の説明において、p系統、s系統にそれぞれ設けられる構成については、符号にp、sを付し、説明上、両系統で同様の場合は、概ねp、sを省略した符号で説明する。また、符号にa,b,c,dを付し、また省略する点は実施例1と同様である。
【0047】
マスタシリンダ3からのブレーキ液路301p,301sは、ギアポンプ910(910p,910s)へ接続する。ブレーキ液路302p,302sは、ギアポンプ910(910p,910s)の上流のブレーキ液路301p,301sに接続する。ブレーキ液路302pは、ブレーキ液路304b,304cに分岐する。ブレーキ液路304bはブレーキ液路305bを介してホイルシリンダ5bへ接続する。また、ブレーキ液路304cはブレーキ液路305cを介してホイルシリンダ5cへ接続する。
ブレーキ液路302sはブレーキ液路304a,304dに分岐する。ブレーキ液路304aはブレーキ液路305aを介してホイルシリンダ5aへ接続する。また、ブレーキ液路304dはブレーキ液路305dを介してホイルシリンダ5dへ接続する。
【0048】
マスタシリンダ3からのブレーキ液路301p,301sには、ゲートアウト弁99(99p,99s)を設ける。ゲートアウト弁99は、コントロールユニット920からの指令電流により開閉動作を行う常開の比例制御弁である。ゲートアウト弁99は、その開閉動作によりマスタシリンダ3とギアポンプ910の吐出側及び増圧制御弁96の間を、遮断、接続及び中間開度により接続する動作を行う。また、ゲートアウト弁99に並列してチェック弁306(306p,306s)を設ける。チェック弁306は、マスタシリンダ圧>ギアポンプ910の吐出側の液圧となった場合に、マスタシリンダ圧をギアポンプ910の吐出側及び増圧制御弁96の側へ伝える弁である。
【0049】
ブレーキ液路304には、増圧制御弁96をそれぞれ設ける。増圧制御弁96は、コントロールユニット920からの指令電流により開閉動作を行う常開の制御弁である。増圧制御弁96は、この開閉動作により、増圧制御弁96に供給されるマスタシリンダ圧又はポンプ圧をホイルシリンダ5へ供給又は遮断する。また増圧制御弁96に並列してチェック弁307(307a〜307d)を設ける。チェック弁307は、ホイルシリンダ圧>マスタシリンダ圧となった場合に、ホイルシリンダ圧をマスタシリンダ3へ抜く弁である。
【0050】
ギアポンプ910(910p,910s)は、共通する駆動手段として設けられるモータ911により駆動され、内部リザーバ912(912p,912s)のブレーキ液をマスタシリンダ3の側へ掻き出す動作、又はゲートイン弁98を介してマスタシリンダ3からブレーキ液を吸入して、ホイルシリンダ5の側へ吐出する。
モータ911は、コントロールユニット920からの指令電流により回転数制御され、ギアポンプ910を駆動する。
ギアポンプ910の吐出側は、ブレーキ液路301p,301sに接続される。ギアポンプ910の吐出側のブレーキ液路301p,301sには、チェック弁914(914p,914s)を設ける。チェック弁914(914p,914s)は、ギアポンプ910からマスタシリンダ側へのブレーキ液の流れを許可し、マスタシリンダ側からギアポンプ910への流れを防止する弁である。
ギアポンプ910の吸入側は、ブレーキ液路309p,309sに接続する。ブレーキ液路309p,309sは、ギアポンプ910の吐出側と内部リザーバ912(912p,912s)を接続する。
【0051】
ギアポンプ910の吸入側のブレーキ液路309p,309sには、チェック弁915(915p,915s)を設ける。チェック弁915(915p,915s)は、ゲートイン弁98の側すなわちマスタシリンダ3の側から内部リザーバ912への流れを防止する。
内部リザーバ912(912p,912s)は、減圧制御弁97を介して送られるブレーキ液を一時的に貯留する。
ブレーキ液路304(304a〜304d)はブレーキ液路305(305a〜305d)とブレーキ液路308(308a〜308d)に分岐するようにし、ブレーキ液路308b,308cはブレーキ液路310sに合流させる。また、ブレーキ液路308a,308dはブレーキ液路310pに合流させる。そして、ブレーキ液路310p,310sは、内部リザーバ912p,912sへ接続するブレーキ液路309p,309sへ接続する。
【0052】
ブレーキ液路308(308a〜308d)には、減圧制御弁97(97a〜97d)をそれぞれ設ける。減圧制御弁97(97a〜97d)は、コントロールユニット920からの指令電流により開閉動作を行う常閉の制御弁である。減圧制御弁97は、この開閉動作により、ホイルシリンダ圧を内部リザーバ912に供給、又は遮断する動作を行う。
ブレーキ液路309p,309sと、ブレーキ液路301p,301sを接続するブレーキ液路303p,303sを設け、このブレーキ液路303p,303sにゲートイン弁98(98p,98s)をそれぞれ設ける。ゲートイン弁98は、コントロールユニット920からの指令電流により開閉動作を行い、マスタシリンダ3とギアポンプ910の吸入側を断続する動作を行う。
マスタシリンダ圧センサ913は、ブレーキ液路301pに設けられ、マスタシリンダ圧を検出し、検出値をコントロールユニット920へ送る。
ポンプ圧センサ916(916p,916s)は、チェック弁914とゲートアウト弁99の間のブレーキ液路301にそれぞれ設けられ、ギアポンプ910の吐出圧を検出し、検出した値をコントロールユニット920へ送る。
コントロールユニット920は、マスタシリンダ圧センサ913、ポンプ圧センサ916、ブレーキペダルストロークセンサ15から送られる検出値、及び車両から送られる走行状態に関する情報が入力され、内蔵されるプログラムに基づき、増圧制御弁96、減圧制御弁97、ゲートイン弁98、ゲートアウト弁99、モータ911を制御する。
【0053】
[通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御]
図10に示すのは、実施例2のコントロールユニット920で実行される通常ブレーキ制御及びホイルシリンダ圧増圧制御の処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
ステップS301では、ホイルシリンダ圧をマスタシリンダ圧以上に増圧制御するかどうかを判断し、増圧制御を行うならばステップS301へ移行し、増圧制御を行わないならばステップS306へ移行する。このステップにおける判断内容については後述する。
ステップS302では、図11、図12に示す方法により、各弁及びモータの制御を行う。
図11はp系統とs系統の制御状態(増圧・減圧・保持)による、ゲートイン弁98、ゲートアウト弁99、モータ911の制御を表したものである。図12は各系統における各輪の制御状態(増圧・減圧・保持)による増圧制御弁96、減圧制御弁97の制御を表したものである。
ステップS303では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか判断する。この判断はポンプ圧センサ916で検出した値に基づき行う。目標値に到達したならばステップS306へ移行し、到達していないならばステップS304へ戻り、引き続きホイルシリンダ5の増圧を行う。なお、ホイルシリンダ圧の目標値算出方法については、後述する。
【0054】
ステップS304では、ゲートイン弁98を閉状態にし、ゲートアウト弁99を閉状態にし、増圧制御弁96を開状態にし、減圧制御弁97を閉状態にし、モータ911をオフとして、目標値に到達したホイルシリンダ圧を保持する。
ステップS305では、引き続き、その輪のホイルシリンダ圧を制御するかどうかを判断し、制御を続けるならばステップS302へ戻り制御を続け、制御を終了するならばステップS306へ移行する。
ステップS306では、ホイルシリンダ圧制御を行わないか、あるいはホイルシリンダ圧制御を終了する場合に、ゲートイン弁98を閉状態にし、ゲートアウト弁99を開状態にし、増圧制御弁96を開状態にし、減圧制御弁97を閉状態にし、モータ911をオフにする。これにより、マスタシリンダ3〜ホイルシリンダ5の間のブレーキ液路301,302,304,305が接続され、マスタシリンダ圧が増圧制御弁96を介し、直接ホイルシリンダ5に供給され、運転者操作によりホイルシリンダ圧が増圧される通常ブレーキ状態となる。
【0055】
[増圧制御の判断、ホイルシリンダ圧の目標値算出方法]
上記ステップS301におけるホイルシリンダ圧を増圧制御するかどうかの判断、及びステップS303におけるホイルシリンダ圧の目標値算出方法について説明する。
図13は実施例2において、ドライバによるブレーキペダル操作量を示すマスタシリンダ圧と目標ホイルシリンダ圧の関係を表したグラフ図である。
実施例2においても、図13に示すように、実施例1と同様、マスタシリンダ圧による増圧からギアポンプ910による増圧、つまりホイルシリンダ圧の増圧制御を、閾値Aにより切り換える。そして、閾値Aを倍力装置2の全負荷点のホイルシリンダ圧(助勢限界)に略一致させる。さらに、閾値B、閾値Cを設定し、ブレーキペダル1の操作速度で切り換える点は実施例1と同様であるので説明を省略する。
その他の構成は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0056】
作用を説明する。
[ポンプによるホイルシリンダ圧の増圧の頻度を抑制する作用]
実施例2では、p系統、s系統の2系統をX配管させ、4輪のそれぞれに対して、図13に示すように、閾値A,B,Cによるマスタシリンダ圧による増圧と、ギアポンプ910による増圧を切り換えて行う。ギアポンプ910による増圧に切り換えた場合、系統ごとの状態(増圧、保持、減圧)の状態の組み合わせにより各弁及びモータ911の制御状態は図11のようになる。
実施例2では、p系統のギアポンプ910pと、s系統のギアポンプ910sを共通のモータ911で駆動する。そのため、2つの系統で増圧と保持の組み合わせとなる場合には、モータ911を駆動させて増圧を行うとともに、保持を行う系統では、比例制御弁であるゲートアウト弁99を中間開度にする。これにより、ギアポンプ910からゲートアウト弁99、ゲートイン弁98の間でブレーキ液を循環させるようにして、保持を行う。
このように、実施例2では、4輪全てでマスタシリンダ圧による通常ブレーキ状態でのブレーキ制御を行うとともに、ステップS301による目標ホイルシリンダ圧の閾値(閾値A,B,C)との比較判断により、ギアポンプ910による増圧へ切り換えを行う。
【0057】
そのため、このように、4輪全てでマスタシリンダ圧による通常ブレーキ状態でのブレーキ制御を行うブレーキ制御システム200において、得られる負圧の低下により倍力装置2が所定の倍力比で増圧しなくなっても、ギアポンプ910の増圧により、十分な車両の制動力を発揮させる。そして、閾値Aをブレーキペダル1の操作速度により閾値Bに切り換えることにより、ドライバのブレーキ操作に応じて、素早くホイルシリンダ圧を増圧する。また、閾値Aをブレーキペダル1の操作速度により閾値Cに切り換えることにより、ブレーキペダル1の操作速度が通常より極めて速い場合に、ドライバのブレーキ操作力でホイルシリンダ圧を増圧する。これにより、負圧が低く倍力装置2の全負荷点が低下する場合でもギアポンプ910、モータ911によるポンプ増圧の能力を増大させることなく、素早くホイルシリンダ圧の増圧を行う。これにより、ギアポンプ910、モータ911の大型化や消費電力の増加を抑制する。
その他の作用は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
効果を説明する。実施例2のブレーキ制御装置では、実施例1の(1)〜(4)と同様の効果を得ることができる。
【0058】
以上、本発明のブレーキ制御装置を実施例1、実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
なお、実施例1では、閾値Aを閾値B及び閾値Cへ変更することを示したが、閾値Bへのみ変更するものであってもよく、閾値Cへのみ変更するものであってもよい。例えば、閾値Bへのみ変更する場合には、ブレーキペダル1の操作速度がSp1以上で閾値Aからの減少分を徐々に増やし、Sp2以降では、減少分を一定にするようにしてもよい。これによっても、ドライバ操作に応じ、素早くホイルシリンダ圧を増加することができる。
また例えば、閾値Cへのみ変更する場合、及び閾値B、閾値Cへ変更する場合には、ブレーキペダル1の操作速度がSp2以上で、閾値Aに対する増分を増やし、所定値で一定にするようにしてもよい。これによっても、ドライバ操作に応じ、素早くホイルシリンダ圧を増加することができ、ポンプ10やモータ11の大型化や消費電流の増加を抑制でき、ポンプ10、モータ11による増圧制御の頻度を抑制することができる。
また、実施例1では、前輪をマスタシリンダ圧とポンプ圧で増圧し、後輪をポンプ圧で増圧するブレーキシステムを示し、実施例2では、前後輪の両方をマスタシリンダ圧とポンプ圧で増圧するブレーキシステムを示したが、他のブレーキシステムであってもマスタシリンダ圧とポンプ圧を切り換えるものであれば、同様の効果を得ることができる。
また、実施例1では、倍力手段として負圧により倍力を行う倍力装置2を示したが、特開2009-40290を示すように、電動モータにより倍力機構を作動させる電動倍力装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、他の移動体のブレーキ制御に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ブレーキペダル
2 倍力装置
3 マスタシリンダ
4 リザーバタンク
5(5a〜5d) ホイルシリンダ
6(6a,6b) 第1増圧制御弁
7(7a〜7d) 第2増圧制御弁
8(8a〜8d) 減圧制御弁
9 チェック弁
10 ポンプ
11 モータ
15 ブレーキペダルストロークセンサ
20 コントロールユニット
910(910p,910s) ギアポンプ
911 モータ
912 内部リザーバ
920 コントロールユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバのブレーキ操作を倍力し、マスタシリンダ圧の助勢を行う倍力手段と、
ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出手段と、
前記マスタシリンダ圧が供給されるホイルシリンダと、
前記ドライバのブレーキ操作状態に関連して、アクチュエータを駆動して前記ホイルシリンダに対しドライバのブレーキ操作とは別に液圧を供給できる液圧供給手段と、
車両の状態に応じて前記液圧供給手段をコントロールするコントローラーを備え、
前記コントローラーは、前記検出されたブレーキ操作状態が予め設定された所定の状態のときに、前記ホイルシリンダの液圧が前記倍力手段による助勢限界圧より大きな所定値までは前記液圧供給手段の作動を制限し、前記マスタシリンダ圧をホイルシリンダに対して供給することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記ブレーキ操作状態検出手段は、ブレーキペダルの操作速度を検出し、
前記所定の状態は、検出された操作速度が所定の操作速度より速い状態である、ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキ制動装置において、
前記コントローラーは、検出された操作速度が第1の操作速度閾値より速い場合に、前記所定値を前記算出された助勢限界圧より小さな値とし、検出された操作速度が第1の操作速度閾値より大きい第2の操作速度閾値より速い場合に、前記所定値を前記算出された助勢限界圧より大きな値とする、ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のブレーキ制動装置において、
前記倍力手段は、車両で得られる負圧により倍力を行う負圧ブースタを備え、
負圧ブースタ内の負圧を検出する負圧検出手段と、
検出された負圧に基づいて負圧ブースタの助勢限界圧を算出する助勢限界圧力検出手段を備え、
前記コントローラーは、前記液圧供給手段の作動の制限を、前記助勢限界圧力検出手段が算出する助勢限界圧より大きな所定値までとする、
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項1】
ドライバのブレーキ操作を倍力し、マスタシリンダ圧の助勢を行う倍力手段と、
ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出手段と、
前記マスタシリンダ圧が供給されるホイルシリンダと、
前記ドライバのブレーキ操作状態に関連して、アクチュエータを駆動して前記ホイルシリンダに対しドライバのブレーキ操作とは別に液圧を供給できる液圧供給手段と、
車両の状態に応じて前記液圧供給手段をコントロールするコントローラーを備え、
前記コントローラーは、前記検出されたブレーキ操作状態が予め設定された所定の状態のときに、前記ホイルシリンダの液圧が前記倍力手段による助勢限界圧より大きな所定値までは前記液圧供給手段の作動を制限し、前記マスタシリンダ圧をホイルシリンダに対して供給することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記ブレーキ操作状態検出手段は、ブレーキペダルの操作速度を検出し、
前記所定の状態は、検出された操作速度が所定の操作速度より速い状態である、ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキ制動装置において、
前記コントローラーは、検出された操作速度が第1の操作速度閾値より速い場合に、前記所定値を前記算出された助勢限界圧より小さな値とし、検出された操作速度が第1の操作速度閾値より大きい第2の操作速度閾値より速い場合に、前記所定値を前記算出された助勢限界圧より大きな値とする、ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のブレーキ制動装置において、
前記倍力手段は、車両で得られる負圧により倍力を行う負圧ブースタを備え、
負圧ブースタ内の負圧を検出する負圧検出手段と、
検出された負圧に基づいて負圧ブースタの助勢限界圧を算出する助勢限界圧力検出手段を備え、
前記コントローラーは、前記液圧供給手段の作動の制限を、前記助勢限界圧力検出手段が算出する助勢限界圧より大きな所定値までとする、
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−274865(P2010−274865A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131647(P2009−131647)
【出願日】平成21年5月30日(2009.5.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月30日(2009.5.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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