説明

ブロワ用消音装置及びブロワ用消音材

【課題】構成の複雑化や組立の煩雑化を伴うことなく、従来の抵抗形消音器よりも消音効果の高い消音装置を提供すること。
【解決手段】円筒状のケース50の中に円筒状吸音体50を備え、ブロワの吐出口に取付けて使用されるブロワ用の消音装置5において、円筒状吸音体50に空洞51Bを設け、円筒状吸音体50により、抵抗形消音器と単純膨張形消音器の双方の動作が与えられるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の吸音部材を用いたブロワの消音装置に係り、特に羽根車を備えたブロワに好適な消音装置と消音材に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロワには羽根車を備えた遠心ブロワや渦流ブロワなどがあり、空気などガス状流体の強制的な移送に有用なため、汎用品としても市場に広く提供されている機器であるが、運転騒音を伴うため消音装置を装備する場合がある。そして、このとき用いられる消音装置としては、従来から抵抗形とリアクタンス形のいずれかの消音器が一般的であり、ここでリアクタンス形の場合は、単純膨張形と、単純膨張形に挿入管を組合わせた方式の何れかが採用されることになる。
【0003】
ここで、図4は、渦流ブロワに抵抗形消音器を適用した場合の従来技術による電動ブロワの一例で、図示の渦流ブロワ1は、その羽根車が電動機2により回転駆動され、図示されていないブロワの吸入口から取り込んだ空気を吐出口3に送り出すことによりブロワとしての機能を発揮するものであるが、このときブロワの吐出口3に抵抗形消音器4を設け、ここで運転騒音を減衰させるようにしたものである。
【0004】
そこで、この抵抗形消音器4について、図5により詳細に説明すると、これは、例えば鋼などの金属で作られた円筒状のケース40の中に、合成樹脂発泡材など多孔性の吸音材からなる円筒状吸音体41を設け、ケース40の端部の一方を入口通路42としてブロワの吐出口3に連接させ、他方を出口通路43としたもので、渦流ブロワ1が運転され、ブロワの吐出口3から入口通路42に空気が流入されると、この空気が円筒状吸音体41の中心孔41Aを通り抜け、出口通路43から排出されるようになるが、このとき円筒状吸音体41を構成している多孔性の吸音材が音波のエネルギーを吸収し、この結果、消音効果が得られるものである。
【0005】
このときの抵抗形消音器4による音波の減衰量は円筒状吸音体41の長さと厚さに依存し、消音される音波の周波数は、更に円筒状吸音体41を構成する吸音材の吸音特性にも依存する。そこで円筒状吸音体41の長さ及び厚さと吸音材の種別の選定により、比較的広いレンジの周波数に渡る音波に対しても必要な消音特性が得られる上、比較的単純な構造で済むため、従来から広く用いられている。
【0006】
ところで、近年は、機器の低騒音化要求は高まるばかりで、ブロワも例外ではなく、この場合、当然に消音器の装備を要するが、ここで、上記した従来の抵抗形消音器4の場合、より消音効果を高くするためには、音波が吸音材に接触する面積を大きくする必要があり、このためには消音器の長さや径を大きくしなければならならず、従って、抵抗形消音器4が大型になり、渦流ブロワ1が大型化してしまう。
【0007】
そこで、或る従来技術では、抵抗形消音器断面形状の違う吸音材を組み合わせることにより音波が吸音材に接触する面積を大きくした抵抗形消音器について提案しており(例えば特許文献1参照。)、他の従来技術では、吸音材の断面積形状を変えることにより音波が吸音材に接触する面積を大きくした抵抗形消音器について提案している(例えば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−209600号公報
【特許文献2】特開2005−2897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術は、渦流ブロワの低騒音化に組立ての煩雑化や構成の複雑化が伴ってしまう点に配慮がされいているとは言えず、更なる低騒音化促進が困難であるという問題があった。すなわち、上記した或る従来技術では、断面形状が異なる吸音材の組み合わせが必要になるので組立が煩雑になり、他の従来技術では、吸音材を複雑な断面形状にする必要があるので構成が複雑になり、何れも最終的にはブロワがコストアップになって、更なる低騒音化促進が困難になってしまうのである。
【0009】
本発明の目的は、構成の複雑化や組立の煩雑化を伴うことなく、従来の抵抗形消音器よりも消音効果の高い消音装置及び消音材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、気体を吸込又は吐出運転するブロワに取付けて使用し筒状ケースと通風路を有する吸音材から構成される消音装置において、吸音材が単純膨張形消音器形状を有することにより達成される。
【0011】
また、上記目的は、気体を吸込又は吐出運転するブロワに取付けて使用し筒状ケースと通風路を備えた吸音材において、当該消音材が単純膨張形消音器形状を有することにより達成される。
【0012】
同じく上記目的は、円筒形のケースに円筒形の吸音部材を備え、ブロワの吐出口に取付けて使用されるブロワ用消音装置において、前記吸音部材に、単純膨張形消音器の膨張室としての動作に必要な形状の空洞を設け、前記吸音部材により、抵抗形消音器と単純膨張形消音器の双方の動作が与えられるようにして達成される。このとき、前記ブロワが羽根車を備えたブロワであり、前記空洞の長さと径が前記ブロワの羽根車の羽根数と回転速度に応じて決められているようにしても上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、筒状のケースに通風路を有する吸音材が備えられ、気体を吸込又は吐出運転するブロワに取付けて使用される消音装置において、単純膨張形構造を有する吸音材を採用した抵抗形消音器構造が得られ、この結果、従来技術の消音器よりも消音効果の高い消音装置を提供する事が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、図示の実施形態により詳細に説明する。図1は、本発明に係るブロワ用消音装置の一実施形態を示したもので、この場合も、図4で説明した従来技術と同じく、図示の渦流ブロワ1は、その羽根車が電動機2により回転駆動され、図示されていないブロワの吸入口から取り込んだ空気を吐出口3に送り出すことによりブロワとしての機能を発揮するものであり、このとき、この実施形態では、ブロワの吐出口3に消音装置5を設け、ここで運転騒音を減衰させるようにしたものである。
【0015】
次に、図2により、この消音装置5の詳細について説明すると、これは、金属製の円筒部材からなるケース50の中に、合成樹脂発泡材など多孔性の吸音材からなる円筒状吸音体51を設け、ケース50の両端部に、このケース50を構成している円筒部材の径より小さな径の円筒部材を設け、一方を入口通路52とし、他方を出口通路53としたものであり、この点では、一般的な抵抗形消音器の場合に類似している。
【0016】
しかして、この実施形態では、その円筒状吸音体51の形状が一般的な抵抗形の場合と異なっていて、図示のように、円筒部の両端には径の小さい部分が設けられている。そして、各端部では入口通路52及び出口通路53と夫々同じ径に作られ、円筒部では、両端の部分よりも大径に作られていて、これにより、この円筒状吸音体51の内部に膨張部となる空洞51Bが形成され、単純膨張形消音器としても働くようにしてあるのが特徴である。
【0017】
従って、この実施形態によれば、円筒状吸音体51の空洞51B内を空気が通過することにより与えられる抵抗形消音器としての消音作用と、円筒状吸音体51に形成してある空洞51Bによる単純膨張形消音器としての消音作用の双方が得られることになり、この結果、構成の複雑化や組立の煩雑化を伴うことなく、従来の抵抗形消音器よりも消音効果の高い消音装置が得られることになるのであるが、以下、この点について更に詳細に説明する。
【0018】
まず、はじめに単純膨張形消音器について説明する。ここで図3は一般的な単純膨張形消音器6を示したもので、これは、図示のように、比較的大径の円筒部材からなるケース61の両端に、比較的小径の管路からなる入口通路62と出口通路63を設け、ケース61の内部に膨張管となる空洞61Bが形成されるようにしたものである。そして、これを、例えば図4の渦流ブロワ1に適用し、抵抗形消音器4に置換したとすると、渦流ブロワ1が駆動されることにより、入口通路62から空洞61Bの中に空気が入り、ここで膨張した後、出口通路63から抜け出してゆくようになる。
【0019】
このとき空洞61Bの中で空気が膨張したことにより、この中で音波の反射と干渉が起って相互に打ち消し合い、消音効果が得られるようになる。なお、これが単純膨張形という名称の由来であるが、このときの単純膨張形消音器による音響透過損失をTLとすると、これは、空洞61Bの断面積をS1、入口通路62の断面積をS2、出口通路63の断面積をS3、空洞61Bの長さをL[m]、それに音波の波数をk[rad/m]とした場合、次の式により表わされる。
【数1】

【0020】
次に、この音響透過損失TLが最大になるときの音波の周波数をfとすると、これは、音速をc[m/s]として、次の式により表わされる。ここで、nは整数である。
【0021】

f=c/4L・(2n+1)[Hz]

従って、音波の波長をλ[m]とすると、空洞61Bの長さLが「λ/4」の奇数倍になったとき、音響透過損失TLが最大になる。但し、空洞61Bの内径をD[m]としたとき、不等式「λ>D」が満足され、平面波論理が成立している場合に限るが、この結果、単純膨張形消音器は、特定の周波数においてピーク状に現われる音に特に消音効果を発揮するものであることが判る。
【0022】
ところで、渦流ブロワなど羽根車を備えた送風装置は、回転周波数をN[Hz]、羽根車の羽根の枚数をZ(無名数)としたとき、NZ成分の騒音(周波数がN×Z[Hz]の騒音)、いわゆる卓越音を発生することが知られているが、この卓越音は鋭いピーク状であるなどの理由から消音が難しく、抵抗形消音器の場合、かなり大型のものが必要になるが、ここで、この実施形態では、円筒状吸音体51の存在に由来する抵抗形消音器としての働きに加え、円筒状吸音体51の形状に由来する単純膨張形消音器としての働きも得られるようになっている。
【0023】
そこで、この実施形態に係る消音装置において、NZ成分の周波数に合わせて寸法Lを設定した上で、それを渦流ブロワなどの送風装置に適用することにより、広い周波数帯域の騒音については、抵抗形消音器としての働きにより低減させ、卓越音については、単純膨張形消音器としての働きにより低減させることができ、この結果、耳障りな卓越音が無く、騒音全体のレベルも抑えられている送風装置が提供できることになる。
【0024】
しかも、この実施形態による消音装置5は、図3の単純膨張形消音器6と比較下場合、円筒状吸音体51に空洞51Bが形成されているだけの違いがあるだけなので、構成が複雑化する程度は僅かであり、従って、この実施形態によれば、構成の複雑化や組立の煩雑化を伴う虞はなく、ローコストで性能の高い消音装置を提供することができ、ブロワの低騒音性能の向上に寄与することができる。
【0025】
また、この実施形態による消音装置5は、図3の単純膨張形消音器6にケース50と円筒状吸音体51を加えただけで済むので、構成が複雑化する程度は僅かな上、寸法の増加もケ−ス50と円筒状吸音体51を加えた分だけなので、それほど大きさを必要とすることもなく、従って、この実施形態によれば、同じくローコストで性能の高い消音装置を提供することができ、ブロワの低騒音性能の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるブロワ用消音装置の一実施の形態が適用された電動ブロワの一例を示す側面図である。
【図2】本発明によるブロワ用消音装置の一実施の形態を示す側断面図である。
【図3】単純膨張形消音器を説明するための側断面図である。
【図4】従来技術による消音器を備えた電動ブロワの一例を示す側面図である。
【図5】抵抗形消音器を説明するための側断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1:渦流ブロワ
2:電動機
3:吐出口
5:消音装置
50:ケース
51:円筒状吸音体
51B:空洞(膨張管)
52:入口通路
53:出口通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸込又は吐出運転するブロワに取付けて使用し筒状ケースと通風路を有する吸音材から構成される消音装置において、
吸音材が単純膨張形消音器形状を有することを特徴とした消音装置。
【請求項2】
気体を吸込又は吐出運転するブロワに取付けて使用し筒状ケースと通風路を備えた吸音材において、
単純膨張形消音器形状を有することを特徴とする消音材。
【請求項3】
円筒形のケースに円筒形の吸音部材を備え、ブロワの吐出口に取付けて使用されるブロワ用消音装置において、
前記吸音部材に、単純膨張形消音器の膨張室としての動作に必要な形状の空洞を設け、
前記吸音部材により、抵抗形消音器と単純膨張形消音器の双方の動作が与えられるように構成したことを特徴とするブロワ用消音装置。
【請求項4】
請求項1に記載のブロワ用消音装置において、
前記ブロワが羽根車を備えたブロワであり、
前記空洞の長さと径が前記ブロワの羽根車の羽根数と回転速度に応じて決められていることを特徴とするブロワ用消音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−321735(P2007−321735A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156151(P2006−156151)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】