説明

ブロードキャスト・ネットワーク上における個別化コンテンツの配信

【課題】種々の実施形態において、単一方向ブロードキャスト・ネットワークを利用し、ユーザの計算機が、ユーザにとって関連性のある情報との同期を維持できるようにして、ディジタル・コンテンツをユーザに提供する。
【解決手段】少なくとも一部の実施形態では、ブロードキャスト・ネットワークは、データ・チャネルおよびシグナリング・チャネルを利用する。データ・チャネルは、データを種々のユーザにブロードキャストするために用いられ、一方シグナリング・チャネルは、通例ではデバイスまたは機械に特有のデータを送信するために用いられるが、ユーザが関連性を見出した情報またはデータと関連のあるユーザ特有情報を送信するために用いられる。次いで、このユーザ特有情報は、ユーザの移動体計算機が用いて、このような情報またはブロードキャスト・データ・チャネルを通じて配信されるディジタル・オブジェクトを管理することができ、例えば、記録し、時間をずらして読み出すためにデバイス・データベースに入力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通信ネットワークが発展し増々精緻化するにつれて、ユーザは彼らにとって関心のある情報に目新しいやり方で管理およびアクセスできるようになった。例えば、第三者のサービス提供元が予約申し込みを呼び掛け、それを通じてユーザがディジタル・オブジェクトを予約し受け取って消費することができる。このようなディジタル・オブジェクトには、ディジタル音楽、ビデオ、ニュース、文書等のようなものを含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
しかしながら、今日では多くのユーザは彼らの移動体計算機を携行して動き回る。このような移動場面では、(1)ユーザのデバイスを、ユーザに関心があるリモート・データと同期させ続ける、または(2)それ以外の方法で、ユーザに関心がある情報にアクセスしこれを消費することをユーザに可能にすることが課題となる。例えば、今日のアップリンク/ダウンリンク・セルラ・ネットワークを利用すれば、事実上全世界における接続有効範囲を得ることができるが、データ・スループットの足枷となる電磁スペクトルの制約により、これらのネットワークはあらゆるユーザにデバイス同期を維持するための変幻自在な解決策を提供する可能性は低い。
【課題を解決するための手段】
【0003】
種々の実施形態において、「ブロードキャスト・ネットワーク」、即ち、単一方向の「1対多数ネットワーク」を利用して、「ディジタル・オブジェクト」とも呼ぶディジタル・コンテンツをユーザに提供する。少なくとも一部の実施形態では、これを行うには、ユーザの計算機に、ユーザにとって個人的に関連性のある情報との同期を維持させるようにする。少なくとも一部の実施形態では、ブローキャスト・ネットワークはデータ・チャネルおよびシグナリング・チャネルを利用する。データ・チャネルはデータを全ての受信ユニットにブロードキャストするために用いられ、一方シグナリング・チャネルは、通例ではデバイスまたは機械に特有のデータを送信するために用いられるが、ユーザが関連性を見出した情報またはデータと関連のあるユーザ特有情報を送信するために用いられる。
【0004】
少なくとも一部の実施形態では、ユーザは、ブロードキャスト・サービス提供元に、何らかの他の「バック・チャネル」ネットワーク・リンク、例えば、ホーム・イントラネットを通じて、彼/彼女が関連性があるとみなす情報またはコンテンツを指定し、彼らの移動体デバイス上で同期させることができる。シグナリング・チャネルが利用可能である場合、シグナリング・チャネルはいつそしてどこでそのコンテンツを読み出すことができるのか、そのデバイスに通知することができる。次いで、このユーザ特有情報は、ユーザの移動体計算機によって用いて管理することができ、例えば、ディジタル・オブジェクトがブロードキャスト・ネットワークによってブロードキャストされたときにこのような情報をローカル・データベースに記録して、時間をずらして消費することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、一実施形態によるシステム例を示す。
【図2】図2は、ユーザ間における関心の重複概念を、非常に小さな規模で示す。
【図3】図3は、一実施形態による方法におけるステップを記述する流れ図である。
【図4】図4は、一実施形態による移動体計算機の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
全体像
種々の実施形態において、「ブロードキャスト・ネットワーク」を利用して、ユーザの計算機に、ユーザにとって個人的に関連性のある情報との同期を維持させるように、「ディジタル・オブジェクト」とも呼ぶディジタル・コンテンツをユーザに提供する。同期作業により、例えば、ユーザが1つ以上の個人用計算機と、そのユーザの関連性のある情報を記述または参照するリモート・ライブラリとの間において同期を維持することを可能にする。少なくとも一部の実施形態では、ブロードキャスト・ネットワークはデータ・チャネルおよびシグナリング・チャネルを利用する。
【0007】
データ・チャネルは、データを全ての受信ユニットにブロードキャストするために用いられ、一方シグナリング・チャネルは、通例では保護されているメディア・コンテンツまたはハードウェア/ファームウェアの更新のためのコンテンツ解読鍵を供給するというような、デバイスまたは機械に特有のデータを送信するために用いられるが、ユーザが関連性を見出した情報またはデータと関連のあるユーザ特有情報を送信するために用いられる。次いで、このユーザ特有情報は、移動体計算機のようなユーザの計算機によって用いて、ディジタル・オブジェクトがブロードキャスト・ネットワークによってブロードキャストされたときにこのようなディジタル・オブジェクトを記録する、警報を発する、または所与のディジタル・オブジェクトに対してしかるべきその他の処置を行うというように、1つ以上のディジタル・オブジェクトに関係する処置を行うことができる。
【0008】
同期作業の対象となるディジタル・オブジェクトは、ユーザが個人的に関連性があると考えることができる種類のディジタル・オブジェクトであれば任意のものを含むことができる。このようなディジタル・オブジェクトは、一例であって限定ではなく、ディジタル音楽、ビデオ、写真、文書、ブログ、スポーツ・イベント警報、ニュース項目等を含むことができる。本文書全体を通じて用いられる例では、ディジタル音楽(ファイルまたはストリーム)の形態としたディジタル・オブジェクトを用いる。尚、このようなディジタル・オブジェクトの例は、特許請求する主題の適用をこれらのオブジェクトに限定することは意図していないことは認められるであろうし、言うまでもないであろう。逆に、他のオブジェクト(前述したようなオブジェクトおよびその他のような)も、特許請求する主題の主旨および範囲から逸脱せずに利用することができる。
【0009】
システム例の全体像
図1は、一実施形態によるシステム例を、全体的に100で示す。システム100は、この例では、種々のユーザ情報を含む記憶装置104を維持するサービス提供元102を含む。この特定的な例では、サービス提供元102は、種々のユーザのために加入申し込み(subscription)を提供し、加入申し込み情報を記憶装置104に維持する。加入申し込み情報は、ライブラリの中に維持することができ、ユーザ名、課金情報、ユーザにとって関心のあるディジタル・オブジェクトのリストというようなユーザ情報を含むことができる。このようなディジタル・オブジェクトは、例えば、ユーザが申し込んだソングのようなオブジェクトのリスト、または最新の電子メールを含むこともできる。
【0010】
加えて、システム100は複数の計算機も含み、これらを全体的に106で示す。これらの計算機は、一般には非移動体デバイスであると見なすことができるが、それに限られる訳ではない。例えば、これらのデバイスは、一箇所に通常据え置かれるデスクトップ計算機であってもよく、あるいは、代わりに、110で全体的に示すような移動体デバイスであってもよい。これらのデバイスは、インターネットのような適したネットワークを通じてサービス提供元102と通信するようにリンクされている。
【0011】
加えて、システム100は、コンテンツを多くのユーザまたは加入者に(単一方向に)ブロードキャストするように構成されているブロードキャスト・ネットワーク108を含む。適したブロードキャスト・ネットワークであれば任意のものを利用することができる。少なくとも一部の実施形態では、デバイスからサービス提供元またはブロードキャスト・ネットワーク運営者へのバック・チャネル通信はない。配信の確認をネットワーク提供元に送ることができるバック・チャネルがないので、ネットワーク提供元は、通例、ユーザ・デバイスによる受信の可能性を高めるために、配信を繰り返す。ユーザ・デバイスは、バッテリ給電式であったり、使用していないときには電源を切っていることが多い。デバイスの活性化とディジタル・オブジェクトのブロードキャスト配信との完全な時間不一致という最悪の事態でも、デバイス自体は、シグナリング・チャネルを通じて、特定のメディア・オブジェクトが指定時間枠以内に配信されていないことを知り、このダウンロードを確実に得る代替手段を探すように、またはある時間には彼のデバイスをオンのままにしておくように、ユーザに通知することができる。
【0012】
オプションとして、任意のバック・チャネルを含むセルラ・ネットワーク109を設ければ、これを通じてユーザがブロードキャスト・ネットワークと通信することができる。この構成の利点の1つは、ネットワーク提供元が配信確認を用いて、その配信スケジューリング効率を向上させることができることである。
【0013】
ブロードキャスト・ネットワークの一例は、いわゆる条件付きアクセス・ネットワークであり、このネットワークでは、ネットワーク提供元(サービス提供元102または他の何らかのエンティティとすることができる)との何らかの形式の合意に応答して、条件付きでユーザにネットワークへのアクセスを付与する。このような合意は、加入の形態を取ることができる。条件付きアクセス・ネットワークの最近の例には、一例であって限定ではなく、Direct-TV、XM radio、Sirius radio、来るべきDVB-Hネットワーク等が含まれる。
【0014】
また、システム100は、多数の異なる移動体計算機も含み、ここでは全体的に110で示されている。この例では、移動体計算機は、一例であって限定ではなく、セル・フォン、パーソナル・ディジタル・アシスタント、およびラップトップ計算機を含むが、他にも数多くある。移動用に設計されていないものを含むその他の計算機も、特許請求する主題の主旨や範囲から逸脱することなく利用することができる。
【0015】
実際には、サービス提供元102は、加入申し込みを提供するか、それ以外の方法で種々のユーザがディジタル・オブジェクトの権利を取得することを可能にすることができる。例えば、ディジタル・オブジェクトがディジタル音楽を含む場合、サービス提供元は、種々のソングをダウンロードするために、ユーザに登録させ支払わせることができる。これは、全体的に106で示す計算機の1つによって行うことができる。先に注記したように、次に、サービス提供元は、ユーザが申し込んだオブジェクトを含む情報のライブラリを維持する。
【0016】
実際には、ブロードキャスト・ネットワーク運営者は、サービス提供元運営業者と同じエンティティであることが多い。
ユーザの移動体計算機とサービス提供元が維持するライブラリとの間の同期性を維持するために、ブロードキャスト・ネットワークは、計算機に情報をブロードキャストし、ディジタル・オブジェクトがブロードキャスト・ネットワーク108によってブロードキャストされたときに、その指示にしたがってしかるべく計算機がディジタル・オブジェクトを受信すること、またはそれ以外では記録、警報、あるいは再生することを可能にする。この情報は、本実施形態では、ブロードキャスト・ネットワークに関連したシグナリング・チャネルを用いて伝達する。具体的には、本実施形態では、データ(ディジタル・オブジェクトのような)は、データ・チャネルを用いてブロードキャストする。コンテンツ解読鍵、更新、権利、時間期限、配信枠(delivery window)、およびディジタル・オブジェクト同期情報を含むその他のユーザ特有情報の送信というような、その他の情報は、シグナリング・チャネルを用いてブロードキャストする。同期情報の形式、および各々をどのようにして用いることができるかについての具体的な例は、以下の「実現例」と題する章において提示する。
【0017】
実現例
これより、前述のシステムの特定的な一実現例について検討する。図2は、ユーザ間で重複する関心の観念を、非常に小さな規模で示す。
【0018】
具体的には、サービス提供元を通じて、ディジタル・オブジェクトを受信する申し込みを行った3人のユーザがいると考える。各ユーザのディジタル・オブジェクトの収集を、個々の円で図式的に表現する。つまり、ユーザ1のディジタル・オブジェクト収集を、指示した円で表す、等とする。尚、この例では、ユーザ間において、彼らの関心に何らかの重複がある(陰影区域で示す)があることに注意されたい。具体的には、このユーザの一群には、彼らが共通して関心を持っているディジタル・オブジェクトがある。ディジタル・オブジェクトが音楽を含む場面では、重複領域に該当する音楽は、特定の部類のユーザにとっては、その時点で最も流行っているソングであることもあり得る。
【0019】
この特定的な例では、サービス提供元またはブロードキャスト・ネットワークは、そのユーザ間における「多数決規則」の方針に基づいた、個々のディジタル・オブジェクトの配信スケジュールを基本とすることができる。特定のオブジェクトの要望が多い程、ブロードキャストおよび再ブロードキャストの優先順位は高くなる。統計に基づく配信方法を用いると、オブジェクトのブロードキャスト業者は、シグナリング・チャネルを用いて、個別のユーザの移動体計算機に、ユーザにとって関連性のあるディジタル・オブジェクトをいつブロードキャストするのか通知することができる。一旦移動体計算機が、特定のディジタル・オブジェクトがブロードキャスト(または再ブロードキャスト)されるときを知ったならば、そのユーザのためにディジタル・オブジェクトを記録するように手配することができる。
【0020】
このように、ユーザの移動体計算機上におけるディジタル・オブジェクトの収集は、ユーザが関心のあるオブジェクトを反映するライブラリとの同期を保つことができる。
これより、同期の一例、およびシグナリング・チャネル例を用いてどのような種類の同期情報を送ることができるかについて検討する。少なくとも一部の実施形態では、同期は、移動体計算機上で起こり得る異なる活動、および/またはサービス提供元が決定する活動に関係するか、またはその影響を受ける。これら異なる種類の活動に応答して、異なる種類の情報を送ることができる。
【0021】
第1の活動は、「追加」活動であり、ディジタル・オブジェクトを移動体計算機に追加する。これは、2箇所の異なる時点において起こり得る。オブジェクトを追加することができる初回は、デバイスを最初に同期させるときである。オブジェクトを追加することができる2回目は、ユーザが彼らの収集には現状では未だ入っていないディジタル・オブジェクトを追加したときである。「追加」の場面では、ブロードキャスト・ネットワークはシグナリング・チャネルを用いて同期情報をデバイスに送り、特定のディジタル・オブジェクトをいつ記録するかを示す。少なくとも一部の実施形態では、この同期情報は、記録開始時間、記録継続時間、「活動」タグ(例えば、追加、削除、通知等の活動に関する)、再ブロードキャスト時間、およびブロードキャスト・チャネルまたは周波数を含む。オプションとして、ディジタル・オブジェクトのコンテンツIDもシグナリング・チャネルにおいて送ることができる。この任意情報は、その再ブロードキャスト・スケジュール中において特定のコンテンツ項目を配信しないことをユーザに通知する際に、有用となることができる。少なくとも一部の実施形態では、コンテンツIDは、ディジタル・オブジェクトをブロードキャストするときに、データ・チャネルにおいて送られる。つまり、特定のチャネル上でいつ記録を開始しそして停止するかを知ることにより、移動体計算機は、ディジタル・オブジェクトがブロードキャストされたときに、これを取り込むことができる。
【0022】
第2の活動は「削除」活動であり、ユーザまたはサービス提供元はディジタル・オブジェクトを削除する。これが起こり得るのは、例えば、ユーザが彼らのライブラリを取り除くとき、または彼らの権利が失効したときである。この場合、同期データは、削除するディジタル・オブジェクトのコンテンツIDを含む。
【0023】
第3の活動は、「無(null)」活動即ち「非送出」活動であり、この場合、ユーザに関心がある特定のディジタル・オブジェクトをブロードキャストの予定に入れない。これは、ユーザに、彼らが他の手段によってオブジェクトを入手しなければいけないことを通知する。この場合、無活動の対象であるディジタル・オブジェクトのコンテンツIDを送ることができる。この場合、ユーザはオブジェクトを彼らの移動体計算機上に含ませるために代替手段を見つけなければならない。
【0024】
少なくとも一部の実施形態では、シグナリング・チャネルは、実際のディジタル・オブジェクトを個別のユーザに送るために用いることができる。例えば、ユーザが、頻繁に要求される可能性が低い無名の(obscure)ソングであるディジタル・オブジェクトを、ライブラリの中に有する場合を考える。この場合、シグナリング・チャネルを用いて実際のディジタル・オブジェクトをユーザの移動体計算機に送ることができる。
【0025】
尚、前述の方法を実施するためには、適したシグナリング・チャネルであれば任意のものを用いることができることは認められるであろうし、言うまでもないであろう。このようなシグナリング・チャネルの特性または固有性(properties)には、このチャネルは、通例機械特有のデータまたは機械と関連のあるデータを送るために用いられるのが通例であるということを含むことができるが、これは一例であって限定ではない。加えて、このようなチャネルの少なくとも一部は、個別のユーザによる消費のためのデータを送る主要データ・チャネルではないのが通例である。逆に、送られるデータは、コンテンツ保護鍵または更新のような、個別のデバイスによって消費されるのが通例である。
【0026】
シグナリング・チャネルの具体的な非限定的一例は、いわゆる権利付与管理メッセージ(EMM:Entitlement Management Message)を送り、個別のデバイスにメッセージ、コマンド、およびサービス鍵を渡すために用いられるシグナリング・チャネルである。EMMは、通例、メディア・ペイロードと同期をとって送信する必要はなく、むしろ許可した加入者にアクセスを与えるために前もって送信される。ユーザがEMMを受信して予約を更新(renew)したことを確実にするために、メッセージは十分に頻繁に繰り返されるのが通例である。したがって、周期的にEMMを編成しブロードキャストする。
【0027】
方法例
図3は、一実施形態による方法におけるステップを記述した流れ図である。本方法は、適したハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはその組み合わせであればいずれとでも実施することができる。少なくとも一部の実施形態では、本方法はソフトウェアで実施する。加えて、図示した流れ図では、種々の行為即ちステップは、例えば、ウェブ・サービス/アプリケーション、サービス提供元、ブロードキャスト業者(broadcaster)またはブロードキャスト・ネットワーク(サービス提供元であってもなくてもよい)、および移動体デバイスのような、異なるエンティティによって実行するように示されている。
【0028】
ステップ300において、特定のコンテンツを特定のデバイスにダウンロードするようにサービス提供元に通知する。このステップは、ユーザによって、適したウェブ・サービスまたはアプリケーションを通じて遂行することができ、あるいはある種の状況、例えば、ニュース警報では、サービス提供元自体によって遂行することができる。少なくとも一部の実施形態では、コンテンツは、先に述べたような、1つ以上のディジタル・オブジェクトの形態で存在する。このステップは、例えば、ユーザが最初にディジタル・オブジェクトにおける権利を獲得するときに実行することができる。
【0029】
ステップ302では、何らかの更新要求があるいか否か確認する。このステップは、更新要求があることを示す入力に応答して、適した構成のサービス提供元によって遂行することができる。少なくとも一部の実施形態では、更新要求は、異なるエンティティの結果として発生することができる。例えば、ユーザは、彼らの非移動体計算機上において1つ以上の新しいまたは追加のディジタル・オブジェクトにおける権利を獲得し、それを受信することができる。この場合、更新メッセージを作成し、ブロードキャスト業者に送る(ステップ304)。あるいはまたは加えて、特定のディジタル・オブジェクトにおけるユーザの権利は、消滅したり、そうでなければ変化する場合もある。この場合、更新メッセージを作成し、ブロードキャスト業者に送る(ステップ304)。
【0030】
他方、更新要求を受信しない場合、ステップ306において、保留中になっている何らかの周期的な更新があるか否か確認する。ない場合、本方法はステップ302に戻る。保留中の周期的更新がある場合、本方法は分岐してステップ304に進み、更新メッセージを作成してブロードキャスト業者に送る。
【0031】
ステップ308において、更新要求を受信し、シグナリング・チャネルを通じて移動体デバイスに送ることができるメッセージに変換する。図示し説明している実施形態では、このメッセージはEMMメッセージである。尚、特許請求する主題の主旨および範囲から逸脱することなく、他のシグナリング・チャネルを用いた他のメッセージを用いることもできることは認められるであろうし、言うまでもないであろう。図示した例では、このステップはブロードキャスト業者によって実行する。ブロードキャスト業者は、サービス提供元と同じエンティティであってもなくてもよい。尚、ブロードキャスト・ネットワーク上にシグナリング・チャネルがない場合、本方法はステップ322まで飛び越すので、移動体デバイスは所定のコンテンツを取り込むように、ユーザによってプログラミングされていることになる。
【0032】
ステップ310では、要求の全てが有効なEMMに変換されたか否か確認する。全てが変換されていない場合、ステップ312においてエラー・メッセージEMMを作成する。要求の全て(またはいずれか)が有効なEMMに変換されている場合、ステップ314では、周期的EMMを、アドレス可能な移動体計算機に送る。少なくとも一部の実施形態では、配信は、ネットワーク運営者のユーザ・ベース(user base)全体による総合的な要望の統計に基づく。加えて、受信を確保するために、ディジタル・オブジェクトのデータ・チャネルを通じた配信、およびEMMのシグナリング・チャネルを通じた配信を頻繁に再ブロードキャストする。
【0033】
ステップ316において、EMMを受信して処理する。このステップは、移動体計算機によって実行する。ここでは、移動体計算機は、シグナリング・チャネルを通じてEMMを受信する。ステップ318において、EMMに何らかのエラー・メッセージがあるいか否か判定を行う。ある場合、ステップ320において、加入者またはユーザに対してエラー・メッセージを表示する。EMMがエラー・メッセージを収容していない場合、および/またはEMMに記載されているコンテンツがある場合、ステップ322において、EMMに収容されている命令にしたがって、コンテンツ、ここではディジタル・オブジェクトを取り込む。先の論述から、受信したメッセージがコンテンツを取り込むことを可能にする場合、記録開始時間および記録停止時間のような同期情報、後続の再ブロードキャスト時間、ならびにディジタル・オブジェクトをブロードキャストすることになっているチャネルに対応するチャネル番号を収容している可能性がある。加えて、EMM自体がディジタル・オブジェクトを収容している可能性もある。このような場合、移動体デバイスはディジタル・オブジェクトからメッセージ・データを抽出する。
【0034】
EMMチャネルのようなシグナリング・チャネルを用いることにより、帯域外メカニズム(out of band mechanism)を、データ・チャネルとは独立して設け、ユーザの移動体計算機を同期させて、彼らの計算機が、ユーザが関心を持つ特定のディジタル・オブジェクトを載せるライブラリの変更が絶えず分かるようにするために用いることができる。
【0035】
移動体計算機の一例
図4は、前述した実施形態の1つ以上を実施するために用いることができる移動体計算機の一例を、全体的に400で示す。この特定的な例では、移動体計算機400は、1つ以上のプロセッサ402および1つ以上の計算機読み取り可能媒体404を含む。ここでは、コンピュータ読み取り可能媒体は、前述の機能性を実装するためにプロセッサ402によって実行可能なソフトウェアの形態とした、コンピュータ読み取り可能媒体を含む。具体的には、この例では、コンピュータ読み取り可能媒体は、前述の機能性を実施するようにプログラミングされている同期モジュール406を含む。加えて、コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ読み取り可能媒体は、種々のディジタル・オブジェクトを格納することができるオブジェクト・ストア408も含む。加えて、デバイス400は、ディジタル・オブジェクトをレンダリングするように構成されているレンダリング・エンジン・モジュール407も含む。この例では、全てのユーザ・コンポーネントは、アプリケーション・モジュール409によって組織化されており、アプリケーション・モジュール409は、権利に伴う規則遵守や、ディジタル・オブジェクトに関連した規制も担当領域である。
【0036】
更に、デバイス400は、データ・チャネルおよびシグナリング・チャネル双方を通じて送信を受信するように構成されている受信モジュール410も含む。この場合、シグナリング・チャネルを通じて受信する送信は、前述したような同期情報を含む可能性がある。
【0037】
少なくとも一部の実施形態では、先に注記したように、ディジタル・オブジェクトはディジタル音楽の形態を取ることができる。以上、基本的な動作原理の一部について説明したので、これより使用場面の例について考察する。
【0038】
使用場面の例
ボブ(Bob)が彼のダッシュボード内取付用の衛星ラジオ・ユニット(in-dash satellite radio unit)を彼のインターネット音楽予約サービスと同期させたいと思っている場合について検討する。この場合、彼の衛星ラジオの条件付きアクセス・シグナリング・チャネルを利用することにより、ボブがこのサービスを通じて購入または予約した音楽は、前述のように、彼の車のヘッド・エンド・ユニットに自動的にダウンロードすることができる。その結果、ボブは今では彼の音楽の全てにアクセスすることが可能となる。同じ方法は、ボブの電子メール、写真、住所録、ワード文書(word documents)等にも適用することができる。
【0039】
支払いモデル
少なくとも一部の実施形態では、エンド・ユーザが消費するディジタル・オブジェクト、例えば、ディジタル音楽に対して行われるべき使用料の支払いに対処するために支払いモデルを利用することができる。ディジタル・オブジェクトがソングを含む文脈では、以下のことを考慮する。これは、再生回数を示すための計量データが入手できない場合には、特に有用である。
【0040】
ユーザの移動体計算機が彼らのダッシュボード取付用ユニットを含む通勤需要(commuting market)のような所与の需要では、平均通勤時間<T(分)>および通勤時間のある割合としての平均聴取時間<p(%)>アクセスすることができる。このモデルにおけるその他の仮定は、1曲当たりn分、1曲当たりxの著作権報酬である。このモデルでは、サービス提供元は、
【0041】
【数1】

【0042】
だけ毎日ASCAPに支払う責任が生ずる可能性がある。
一例として、<T>=25分×2往復、p=80%、n=3分、そしてx=0.0007ドルと仮定する。これらの数字を用いると、著作権報酬を賄うためのASCAPへの毎月の支払いは、0.23ドルとなる。
【0043】
拡張
少なくとも一部の実施形態では、前述のようなシグナリング・チャネルの使用は、次のように拡張することができる。
【0044】
多くの場合、ディジタル音楽のようなディジタル・オブジェクトに関連して、種々のユーザ関連の権利またはユーザ特有の権利があり、これらがユーザと個々のサービス提供元との間における合意を構成する。これらの権利は、ユーザがディジタル・オブジェクトを転送できるか否か、何回ユーザはディジタル・オブジェクトを消費することができるか、ディジタル・オブジェクトを消費する際の解像度等を含むことができる。これらの実施形態では、シグナリング・チャネルを用いると、ユーザの移動体計算機にこれらの権利を伝達する、またはそれ以外の方法で表現することが可能となる。
【0045】
あるいはまたは加えて、同期の観念は、ユーザの個人的ライブラリだけでなく、他の誰かまたは他の何らかのエンティティのリモート・ライブラリとの同期にも適用することができる。例えば、これは、ユーザ間で共有するディジタル・オブジェクト、または種々のエンティティによって提供するディジタル・オブジェクト、例えば、音楽、ブログ、ユーザが属するグループのブログ、RSSフィードのようなシンジケーション・フィード(syndication feed)の文脈における場合に該当することがある。
【0046】
加えて、同期の観念は、ユーザの直観的な選択に基づく、サービス提供元のオブジェクト集合体、例えば、リモート・ライブラリからのディジタル・オブジェクトの同期を含むように拡張することができる。一例として、これは、例えば、シンジケーション・フィードを通じて提供される、日々のニュース見出し、または1日の内のスポーツのお知らせとすることもできる。
【0047】
結論
種々の実施形態において、単一方向ブロードキャスト・ネットワークを利用し、ユーザの計算機が、ユーザにとって関連性のある情報との同期を維持できるようにして、ディジタル・コンテンツをユーザに提供する。少なくとも一部の実施形態では、ブロードキャスト・ネットワークは、データ・チャネルおよびシグナリング・チャネルを利用する。データ・チャネルは、データを種々のユーザにブロードキャストするために用いられ、一方シグナリング・チャネルは、通例ではデバイスまたは機械に特有のデータを送信するために用いられるが、ユーザが関心を示した情報またはデータと関連のあるユーザ特有情報を送信するために用いられる。次いで、このユーザ特有情報は、ユーザの移動体計算機によって、このような情報またはディジタル・オブジェクトを記録するために用いることができる。
【0048】
以上、構造的特徴および/または方法ステップに対して特定的な文言で本発明について説明したが、添付した特許請求の範囲に定めた本発明は、必ずしも記載した具体的な特徴やステップに限定されるのではないことは言うまでもない。逆に、具体的な特徴やステップは、特許請求する発明を実施する好ましい形態として開示したのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより実行される方法であって、
ユーザ特有情報を移動体計算機(110)に送信するために、ブロードキャスト・ネットワーク(108)に関連したシグナリング・チャネル(314)を用いる行為であって、前記ユーザ特有情報は、前記ブロードキャスト・ネットワークによって1つ以上のディジタル・オブジェクトをブロードキャストするときに、前記移動体計算機が前記ディジタル・オブジェクトを記録するために用いるように構成されている、行為と、
1つ以上のディジタル・オブジェクトをブロードキャストするために、前記ブロードキャスト・ネットワーク(108)に関連したデータ・チャネルを用いる行為と、
を備えた、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記ディジタル・オブジェクトの少なくとも一部はディジタル音楽を含む、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記ブロードキャスト・ネットワークは、前記移動体計算機が前記ブロードキャスト・ネットワークに逆に通信することを可能にするバック・チャネルを含まない、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記ブロードキャスト・ネットワークは、条件付きアクセス・ブロードキャスト・ネットワークを含む、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、ユーザが申し込んだディジタル・オブジェクトの仕様を含む情報のライブラリから、前記ユーザ特有情報を確認する、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記ユーザ特有情報は、記録開始時間と、記録停止時間と、チャネル番号とを含むことができる同期情報を含む、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記ユーザ特有情報は、ディジタル・オブジェクトに関連したコンテンツIDを含むことができる同期情報を含む、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記ユーザ特有情報は、ディジタル・オブジェクトをブロードキャストする予定がないことの指示を含むことができる同期情報を含む、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、更に、ディジタル・オブジェクトをユーザに送るために前記シグナリング・チャネルを用いる行為を含む、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記シグナリング・チャネルは、権利付与管理メッセージ(EMM)を送るために用いることができるものを含む、方法。
【請求項11】
コンピュータにより実行される方法であって、
移動体計算機(110)を通じて、該移動体計算機上にあるユーザのディジタル・オブジェクト収集をリモート・ライブラリと同期させるために用いることができる同期情報を受信する行為であって、ディジタル・オブジェクトを送信するデータ・チャネルとは異なるシグナリング・チャネルを通じて前記同期情報が受信される、行為(316)と、
ディジタル・オブジェクトがブロードキャスト・ネットワークによってオブロードキャストされるときに、前記ディジタル・オブジェクトを取り込むために前記同期情報を用いる行為(322)と、
を備えた方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記受信する行為は、前記同期情報を権利付与管理メッセージとして受信することによって実行される、方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、前記ディジタル・オブジェクトの少なくとも一部は、ディジタル音楽を含む、方法。
【請求項14】
請求項11記載の方法において、前記受信する行為は、前記ディジタル・オブジェクトもブロードキャストするブロードキャスト・ネットワークから前記同期情報を受信することによって実行される、方法。
【請求項15】
請求項11記載の方法において、前記同期情報は、記録開始時間、記録停止時間、およびチャネル番号を含むことができる、方法。
【請求項16】
請求項11記載の方法において、前記同期情報は、ディジタル・オブジェクトに関連したコンテンツIDを含むことができる、方法。
【請求項17】
請求項11記載の方法において、前記同期情報は、ディジタル・オブジェクトをブロードキャストする予定がないことの指示を含むことができる、方法。
【請求項18】
移動体計算機であって、
1つ以上のプロセッサ(402)と、
1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体(404)と、
前記1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体上にあるコンピュータ読み取り可能命令(406)であって、前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ以上のプロセッサに方法を実行させ、該方法が、
前記移動体計算機上にあるユーザのディジタル・オブジェクト収集をリモート・ライブラリと同期させるために用いることができる同期情報を受信する行為であって、ディジタル・オブジェクトを送信するデータ・チャネルとは異なるシグナリング・チャネルを通じて前記同期情報が受信される、行為と、
ディジタル・オブジェクトがブロードキャスト・ネットワークによってオブロードキャストされるときに、前記ディジタル・オブジェクトを取り込むために前記同期情報を用いる行為と、
を備えた、コンピュータ読み取り可能命令(406)と、
を備えている、移動体計算機。
【請求項19】
請求項18記載の移動体計算機において、前記受信する行為は、前記同期情報を権利付与管理メッセージとして受信することによって実行される、移動体計算機。
【請求項20】
請求項18記載の移動体計算機において、前記同期情報は、
記録開始時間と、
記録停止時間と、
チャネル番号と、
ディジタル・オブジェクトに関連したコンテンツIDと、
ディジタル・オブジェクトをブロードキャストする予定がないことの指示と、
を含むことができる、移動体計算機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−507350(P2010−507350A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533491(P2009−533491)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/081567
【国際公開番号】WO2008/115283
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(500046438)マイクロソフト コーポレーション (3,165)
【Fターム(参考)】