説明

ブローバイガス還元装置

【課題】特定の運転状態となるときに必要以上のブローバイガスが燃焼室に還元されて空燃比が乱れることを防止すること。
【解決手段】ブローバイガス還元装置は、エンジンの燃焼室から漏れ出たブローバイガスを還元通路を介して吸気通路へ流して燃焼室へ還元すると共に、還元通路に設けたPCVバルブ33によりブローバイガス流量を調整するように構成される。PCVバルブ33は、弁座46と、負圧により位置が変わることで弁座46との間のガス流路面積48を変更する弁体47と、弁座46及び弁体47を収容するハウジング41と、弁体47の位置を負圧にかかわらず所定位置に保持するための電磁石44とを含む。電子制御装置は、エンジンの空燃比がリッチとなるとき、負圧の作用により決定される特定位置よりもガス流路面積48を減少させる所定位置に弁体47を保持するために電磁石44を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの燃焼室からクランクケースへ漏れ出たブローバイガスを再びエンジンの吸気系へ戻して燃焼室へ還元するブローバイガス還元装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、下記の特許文献1及び2に記載される技術が知られている。特に、特許文献1には、図9に示すように、密閉されたクランクケースを吸気管81に連通する管路82,83と、この管路82,83に介装され管路82,83のブローバイガス流量を調整する流量調整弁(PCVバルブ)84とを備えた強制クランクケース換気装置が記載されている。この流量調整弁84は、吸気管81の負圧に応動して弁体85が弁座86から離間作動する、すなわち開弁方向へ作動するように構成される。この換気装置は、吸気管81の負圧を感知する負圧センサ87と、この負圧センサ87からの信号に基づき作動するスイッチ88と、流量制御弁84に付設され、通電により弁体85を弁座86から離間作動する電磁石89とを備える。スイッチ88と電磁石89は、電源90に接続される。弁体85は、スプリング91により、弁座86に近付く方向へ付勢される。そして、負圧センサ87が感知した負圧が所定値以下であるときのみスイッチ88を閉路させて電磁石89を励磁させるようになっている。これにより、吸気管81の負圧が所定値以下であるときには、電磁石89を励磁させて弁体85を吸引し、弁体85を弁座86から強制的に離間させ、弁座86との間に所望の隙間Cを作るようになっている。すなわち、弁体85を、負圧が作用することで特定される位置よりも、電磁石89による吸引分だけ開き側の位置に保持するようになっている。これにより、クランクケースから吸気管81へ流れるブローバイガスを、流量調整弁84により多目に流すようになっている。
【0003】
【特許文献1】実開昭59−119909号公報
【特許文献2】特開平8−338222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、特許文献1に記載の装置では、吸気管81の負圧が所定値以下となるときには、その負圧が弁体85に作用することで特定される弁体85の位置よりも、電磁石89による吸引分だけ弁体85を開側の位置に保持される。このため、ブローバイガスが、却って必要以上に吸気管81へ流れて燃焼室へ還元されるおそれがあった。
【0005】
ところで、クランクケースの中では、ブローバイガスに含まれる燃料成分が不意に高濃度となることがある。このときブローバイガスが燃焼室に還元されると、エンジンの空燃比がオーバリッチとなって乱れ、エンジンの空燃比制御が乱れるおそれがある。特に、エンジンのアイドル運転時には、ブローバイガスの空燃比に与える影響が大きく、エンジン回転速度が変動したり、排気エミッションが悪化したりするおそれがある。また、エンジンのシリンダ内に燃料を直接噴射する直接噴射式エンジンでは、噴射によりボア壁面に付着した未燃焼の燃料が壁面を伝わりオイルパンの潤滑油に入り込むことがある。この未燃焼の燃料は、潤滑油の温度(油温)が「40℃」以上になると気化し始めることから、このガスが燃焼室に還元されると、空燃比が乱れて空燃比制御が乱れるおそれがある。ここで、エンジンの空燃比制御において、エンジンの運転状態に応じた空燃比補正値を学習して制御に反映させる学習制御は既に周知である。この種の学習制御によれば、燃焼室に還元されるブローバイガスの影響についてもある程度対処することができる。しかし、ブローバイガスの燃料成分の濃度や量が学習制御の適用範囲を超えてしまうと対応しきれず、空燃比がオーバリッチとなって乱れ、空燃比制御が乱れる懸念がある。特許文献1に記載の装置では、吸気管81の負圧が所定値以下となるときに、弁体85が強制的に多目に開かれるので、必要以上のブローバイガスが燃焼室に還元されてエンジンの空燃比が乱れる懸念があった。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、エンジンが特定運転状態となるときに必要以上のブローバイガスが燃焼室に還元されて空燃比が乱れることを防止するブローバイガス還元装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンジンの燃焼室から漏れ出たブローバイガスを還元通路を介して吸気通路へ流して燃焼室へ還元すると共に、還元通路に設けたPCVバルブによりブローバイガス流量を調整するようにしたブローバイガス還元装置において、PCVバルブは、弁座と、負圧により位置が変わることで弁座との間のブローバイガス流路面積を変更する弁体と、弁座及び弁体を収容するハウジングと、弁体の位置を負圧にかかわらず所定位置に保持するための保持手段とを含み、エンジンの空燃比がリッチとなるときに、弁体を負圧の作用により決定される特定位置よりもブローバイガス流路面積を減少させる所定位置に保持するために保持手段を制御する制御手段を備えたことを趣旨とする。
【0008】
上記発明の構成によれば、エンジンの空燃比がリッチとなるときに、制御手段が保持手段を制御することにより、弁体が、負圧の作用により特定される位置よりもブローバイガス流路面積を減少させる所定位置に保持される。従って、エンジンの空燃比がリッチとなるときには、還元通路から吸気通路を介して燃焼室に還元されるブローバイガス流量が低減する。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、エンジンの燃焼室から漏れ出たブローバイガスを還元通路を介して吸気通路へ流して前記燃焼室へ還元すると共に、還元通路に設けたPCVバルブによりブローバイガス流量を調整するようにしたブローバイガス還元装置において、PCVバルブは、弁座と、負圧により位置が変わることで弁座との間のブローバイガス流路面積を変更する弁体と、弁座及び弁体を収容するハウジングと、弁体の位置を負圧にかかわらず所定位置に保持するための保持手段とを含み、エンジンの減速時に、弁体を負圧の作用により特定される位置よりもブローバイガス流路面積を減少させる所定位置に保持するために保持手段を制御する制御手段を備えたことを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、エンジンの減速時に、制御手段が保持手段を制御することにより、弁体が、負圧の作用により特定される位置よりもブローバイガス流路面積を減少させる所定位置に保持される。従って、エンジンの減速時には、吸気通路の負圧が急激に大きくなるが、この吸気通路から還元通路を介してPCVバルブの上流側に作用する負圧の影響が抑えられる。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、エンジンの燃焼室から漏れ出たブローバイガスを還元通路を介して吸気通路へ流して燃焼室へ還元すると共に、還元通路に設けたPCVバルブによりブローバイガス流量を調整するようにしたブローバイガス還元装置において、PCVバルブは、弁座と、負圧により位置が変わることで弁座との間のブローバイガス流路面積を変更する弁体と、弁座及び弁体を収容するハウジングと、弁体の位置を負圧にかかわらず所定位置に保持するための保持手段とを含み、弁体を負圧にかかわらず弁体を閉弁位置に保持するために保持手段を制御する制御手段を備えたことを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、例えば、エンジンが特定運転状態となるときに、制御手段が保持手段を制御することにより、弁体が、負圧にかかわらず閉弁位置に保持される。従って、還元通路におけるブローバイガスの流れが遮断され、燃焼室へのブローバイガスの還元が停止する。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明において、保持手段は、円筒形状をなすボビンと、そのボビンの外周に設けられたコイルとを含む電磁石であり、弁体は、略円柱状をなし、ボビンの中空にてボビン及びコイルの中心軸線に沿って貫通可能に設けられ、弁体は、負圧の作用により特定位置に配置された状態において、コイルの中心軸線方向における中間位置が、弁体の中心軸線方向における中間位置よりもブローバイガス流れの下流側に片寄って配置され、弁体がブローバイガス流れの下流側に変位することにより前記ブローバイガス流路面積が縮小されることを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の作用に加え、弁体は、負圧の作用により特定位置に配置された状態において、コイルの中心軸線方向における中間位置が、弁体の中心軸線方向における中間位置よりもブローバイガス流れの下流側に片寄って配置される。従って、この状態から電磁石のコイルが励磁されることにより、弁体が、磁力の作用によりブローバイガス流れの下流側へ向けて変位してブローバイガス流路面積が縮小される位置に保持される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンの空燃比がリッチとなるときに必要以上のブローバイガスが燃焼室に還元されて空燃比が乱れることを防止することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、エンジンの減速運転時に必要以上のブローバイガスが燃焼室に還元されて空燃比が乱れることを防止することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、エンジンが特定運転状態となるときにブローバイガスが燃焼室に還元されるのを停止することができ、空燃比が乱れることを防止することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の効果に加え、弁体をブローバイガス流路面積を縮小した状態又は閉弁した状態に確実に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明のブローバイガス還元装置をエンジンシステムに具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1に、この実施形態のブローバイガス還元装置を含むエンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムを構成するエンジン1は、燃焼室2の中に燃料を直接噴射する直接噴射式の多気筒火花点火式エンジンである。このエンジン1を構成するエンジンブロック3には、複数のシリンダボア4が形成され、各シリンダボア4にはそれぞれピストン5が上下動可能に設けられる。エンジンブロック3の下部にはクランクケース3aが設けられ、クランクケース3aにはオイルパン6が組み付けられる。これらクランクケース3aとオイルパン6によりクランク室7が形成される。クランク室7の中には、クランクシャフト8が回転可能に支持され、各ピストン5がコネクティングロッド9を介してクランクシャフト8にそれぞれ連結される。
【0021】
各シリンダボア4にてピストン5の上側に形成される燃焼室2は、上部中央が高くなる傾斜したペントルーフ形状をなす。各燃焼室2に対応して、エンジンブロック3の上部には、吸気ポート10及び排気ポート11がそれぞれ形成される。吸気ポート10には吸気バルブ12が、排気ポート11には排気バルブ13がそれぞれ設けられる。各吸気バルブ12及び各排気バルブ13は、周知の動弁機構14により、クランクシャフト8の回転に連動して開閉するようになっている。これら吸気バルブ12及び排気バルブ13が開閉することで、吸気ポート10から燃焼室2に外気が導入され、燃焼室2から排気ポート11へ燃焼後の排気ガスが排出される。エンジンブロック3の上部には、動弁機構14等を覆うエンジンカバー15が設けられる。
【0022】
吸気ポート10には、インテークマニホールドを含む吸気通路21が接続される。この吸気通路21の入口には、エアクリーナ22が設けられる。吸気通路21の途中には、スロットルバルブ23を含むスロットルボディ24が設けられる。スロットルバルブ23は、運転席に設けられたアクセルペダル(図示略)の操作に連動して開閉されるようになっている。エアクリーナ22にて浄化された空気は、吸気通路21、スロットルボディ24及び吸気ポート10を通じて燃焼室2に吸入される。この吸入空気量は、スロットルバルブ23の開度に応じて調節される。エンジンブロック3には、各燃焼室2に燃料を直接噴射するためのインジェクタ25が取り付けられる。インジェクタ25から燃焼室2に噴射される燃料は、吸気ポート10から燃焼室2に吸入された空気と混合気を形成する。エンジンブロック3の上部には、各燃焼室2にて混合気に点火する点火プラグ26が設けられる。
【0023】
排気ポート11には、排気マニホールドを含む排気通路27が接続される。各燃焼室2で生じた燃焼後の排気ガスは、排気ポート11及び排気通路27を通じて外部へ排出される。
【0024】
上記したエンジン1には、各燃焼室2から漏れ出たブローバイガスを吸気通路21へ流して各燃焼室2へ還元するためのブローバイガス還元装置が設けられる。すなわち、クランクケース3aには、そのクランク室7に連通するオイルセパレータ31が設けられる。このオイルセパレータ31は、クランク室7にてブローバイガスに混入した潤滑油等の油分をブローバイガスから分離して捕捉する機能を有する。このオイルセパレータ31と、スロットルバルブ23より下流の吸気通路21との間には、クランク室7から吸気通路21へブローバイガスを流すための還元通路32が設けられる。この還元通路32の途中には、ブローバイガス流量を調整するためのPCVバルブ33が設けられる。PCVバルブ33の詳しい構成については後述する。エアクリーナ22の近傍の吸気通路21と、エンジンカバー15との間には、エンジン1のクランク室7におけるブローバイガスを掃気するためにクランク室7に外気を導入するための掃気通路34が設けられる。エンジンブロック3には、クランク室7をエンジンカバー15の中に連通させる通気孔35が形成される。この通気孔35を通じて、エンジンカバー15の中に導入された外気がクランク室7へと導かれるようになっている。この通気孔35も掃気通路34の一部を構成している。
【0025】
ここで、PCVバルブ33の構成を詳しく説明する。図2,3に、PCVバルブ33を断面図により示す。図2は、PCVバルブ33の初期状態を示し、図3は、PCVバルブ33の作動状態を示す。図2,3に示すように、PCVバルブ33は、中空形状をなす樹脂製のハウジング41を備える。このハウジング41は、互いに組み付けられたメインハウジング42とサブハウジング43から構成される。
【0026】
メインハウジング42は、その上部に形成されたコネクタ部42aと、内部に一体的に設けられた電磁石44と、外周に着けられたシールリング45とを含む。サブハウジング43は、その一端部外周の雄ネジ43aが、メインハウジング42の他端部の雌ネジ42bに締め付けられることで、メインハウジング42に組み付けられる。サブハウジング43の一端部をメインハウジング42の他端部に圧入して超音波溶着することで、サブハウジング43をメインハウジング42に組み付けることもできる。サブハウジング43の他端部は、パイプ継手43bとなっている。このパイプ継手43dに、還元通路32を構成するパイプが接続される。ハウジング3は、メインハウジング42の一端部外周の雄ネジ42cがオイルセパレータ31に形成された取付孔(図示略)の雌ネジに締め付けられて取り付けられる。
【0027】
メインハウジング42の中空部は弁室42dを構成する。弁室42dは、その中心軸線方向の一端に入口42eを含む。この入口42eは、メインハウジング42の一端壁に形成され、エンジンブロック3のクランク室7に連通する。サブハウジング43は、メインハウジング42の弁室42dに連通する中空部43cを含む。弁室42dと中空部43cは、互いにブローバイガスのための通路を構成する。メインハウジング42とサブハウジング43との間には、円環状をなす弁座46が挟まれて設けられる。この弁座46に対応して、弁室42dの中には、弁体47が、その中心軸線方向へ移動可能に設けられる。この弁体47は、鉄等の磁性材料により略円柱状をなし、弁座46を貫通可能に設けられる。図2,3に示すように、弁体47は、その基端部(図面右側)から先端部にかけて段階的に縮径した形状をなす。従って、弁室42dの中において、弁体47が中心軸線方向へ移動変位することにより、弁座46と弁体47との間の隙間の大きさ、すなわち本発明のブローバイガス流路面積としての開度が変わる。この弁座46と弁体47との間の隙間が、弁室42dの中心軸線方向他端に位置する出口48を構成する。
【0028】
弁体47は、その基端部、すなわち入口42eの付近に位置する入口側端部がフランジ47aをなす。このフランジ47aは、その外周面の一部が弁室42dの内周面に摺動可能に設けられる。フランジ47aは、その一部にブローバイガスの通過を許容する切欠が設けられる。弁座46とフランジ47aとの間には、圧縮スプリング49が設けられる。このスプリング49は、弁体47を弁室42dの入口42eの方向へ、すなわち開弁方向へ付勢する。また、弁体47の先端部分は、弁座46を貫通してサブハウジング43の中空部43cに侵入可能に設けられる。サブハウジング43の中空部43cには、別の圧縮スプリング50が、弁体47の先端に接触可能に設けられる。
【0029】
図2に示す初期状態から、エンジン1が運転状態に入ると、サブハウジング43の中空部43cには、吸気通路21から還元通路32を通じて吸気負圧が作用する。また、エンジン1のクランク室7に充満したブローバイガスが、入口42eからメインハウジング42の弁室42dに侵入し、そのガス圧力が弁体47に作用する。このとき、吸気負圧がスプリング49の付勢力に抗して弁体47に作用し、ガス圧力が弁体47に作用することにより、弁体47が弁座46へ向けてその中心軸線方向へ移動し、弁座46と弁体47との間の出口48の開度が変わる。これにより、メインハウジング42の弁室42dからサブハウジング43の中空部43cへ抜ける、すなわちPCVバルブ33で計量されるブローバイガス流量が調整される。弁体47は、その先端がサブハウジング43中空部43cの中のスプリング50に当接することで、その移動が規制される。このように、PCVバルブ33において、弁体47は、吸気負圧の作用により中心軸線方向における位置を変わることで、弁座46との間のブローバイガス流路面積を変更するようになっている。
【0030】
本発明の保持手段としての電磁石44は、メインハウジング42の内部に設けられる。電磁石44は、中心軸線方向における両端に大小のフランジ51a,51bを有する円筒形状をなすボビン51と、そのボビン51の外周にニクロム線を巻き付けて設けられたコイル52と、大フランジ51aに設けられた接続端子53とを含む。コイル52は、通電により励磁されて磁力を発生させる。接続端子53は、その基端部がコイル52に電気的に接続され、その先端部がコネクタ部42aの中に突出配置される。
【0031】
電磁石44は、メインハウジング42に対してインサート成形されている。すなわち、メインハウジング42を樹脂成形するときに、電磁石44を金型内にインサート品として装填した後、金型に溶融樹脂を注入する。これにより、電磁石44を溶融樹脂で包んで固化させ、一体化した複合部品としてのメインハウジング42が作製される。ここで、図2,3に示すように、電磁石44は、メインハウジング42の中心部に配置され、電磁石44のボビン52の中空がメインハウジング42の弁室42dの一部を構成する。また、弁座46は、ボビン51の大フランジ51aに内包され、大フランジ51aの内周面に接触してメインハウジング42に一体的に設けられる。
【0032】
ここで、電磁石44と弁体47との位置関係について説明する。図2,3に示すように、弁体47は、電磁石44のボビン51の中空にてボビン51及びコイル52の中心軸線に沿って貫通可能に設けられる。図2に示すように、PCVバルブ33の初期状態、すなわち、弁室42dに吸気負圧が作用していない状態では、弁体47がスプリング49の付勢力により初期位置に配置される。このため、電磁石44は、弁体47の先端部近くに位置する関係となる。また、PCVバルブ33の作動状態、すなわち、弁室42dに吸気負圧が作用した状態では、弁体47が、吸気負圧の作用により決定される特定位置(図3に実線で示す位置)に配置される。この特定位置に配置された状態において、弁体47は、コイル52の中心軸線方向における中間位置P1が、弁体47の中心軸線方向における中間位置P2よりもブローバイガス流れの下流側に片寄った位置に配置される。そして、この特定位置に配置された状態から、電磁石44がONされ、すなわちコイル52が通電により励磁されることにより、コイル52に磁力が発生する。そして、その発生磁力の作用により、弁体44がブローバイガス流れの下流側へ向けて、図3に2点鎖線で示すように更に変位し、本発明の所定位置としての絞り位置に保持される。この絞り位置に配置された状態では、弁座46と弁体47との間のブローバイガス流路面積、すなわち開度が縮小され、その縮小状態が保持される。このときの弁体47の動きは、従来例の装置のそれとは異なる。すなわち、特許文献1に記載の装置では、電磁石89を通電することにより、弁体85を、負圧が作用することで特定される位置よりも開き側の位置に保持し、クランクケースから吸気管81へ流れるブローバイガス流量を多目にするようになっている。これに対して、この実施形態のPCVバルブ33では、電磁石44を通電することで、弁体47を、吸気負圧が作用することで特定される特定位置よりも閉じ側の絞り位置に保持し、燃焼室2に還元されるブローバイガス流量を少な目にするようになっている。
【0033】
図2,3に示すメインハウジング42のコネクタ部42aには、外部コネクタ(図示略)が接続される。外部コネクタは、接続端子53に電気的に接続可能に構成される。外部コネクタは、電磁石44を制御するために、外部配線(図示略)を介して後述する電子制御装置(ECU)60に接続される。
【0034】
この実施形態では、上記したエンジンシステムを制御するためにECU60が設けられる。吸気通路21の上流側には、吸入空気量QAを計測するためのエアフローメータ61が設けられる。スロットルボディ24には、スロットルバルブ23の開度(スロットル開度)TAを検出するためのスロットルセンサ62が設けられる。エンジンブロック3には、クランクシャフト8の回転角度(クランク角度)をエンジン回転速度NEとして検出するためのクランク角センサ63が設けられる。エンジンブロック3には、冷却水温度THWを検出するための水温センサ64が設けられる。オイルパン6には、潤滑油の温度(油温)THOを検出するための油温センサ65が設けられる。排気通路27には、排気ガス中の酸素濃度Oxを検出するための酸素センサ66が設けられる。これら各種センサ等61〜66は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段を構成する。ECU60は、クランク角センサ63により検出されたクランク角度に基づいて各気筒における吸気、圧縮、膨張(爆発)及び排気の各行程を判別すると共に、エンジン回転速度NEを算出するようになっている。また、ECU60は、各種センサ等61〜66により検出された吸入空気量QA、スロットル開度TA、エンジン回転速度NE、冷却水温度THW、油温THO及び酸素濃度Oxなどのエンジン運転状態に基づき、燃料噴射制御、点火時期制御及びブローバイガス還元制御等をそれぞれ実行するようになっている。ECU60は、燃料噴射制御を実行することでインジェクタ25を制御する。ECU60は、点火時期制御を実行することで点火プラグ26を制御する。ECU60は、ブローバイガス還元制御を実行することで電磁石44を制御する。この実施形態で、ECU60は、本発明の制御手段に相当する。
【0035】
この実施形態で、ECU60は、燃料噴射制御の一環として、学習制御を含む空燃比制御を実行するようになっている。すなわち、ECU60は、空燃比制御として、インジェクタ25から燃料を噴射するに際して、エンジン回転速度NE、エンジン負荷状態及びエンジン暖機状態等の運転状態に応じて変化するエンジン1の要求空燃比に合致するように、インジェクタ25による燃料噴射量を制御するようになっている。そのために、ECU60は、実際の空燃比が要求空燃比に合致するように、酸素センサ66により検出される酸素濃度Oxから実際の空燃比を算出し、その空燃比が要求空燃比となるよう空燃比フィードバック制御を実行する。また、空燃比の学習制御として、ECU60は、過去の制御結果を評価し、記憶し、その評価に基づき、空燃比制御のための空燃比補正量の記憶、修正を行うようになっている。すなわち、エンジン1の個体差や経時変化、あるいは使用環境条件に対応するために、ECU60は、エンジン1の各種運転領域で、空燃比補正量を修正して記憶しておき、エンジン1が停止していても、次回始動時には、記憶しておいた空燃比補正量を各種運転領域に応じて読み出して空燃比制御に反映させるようになっている。従って、この実施形態のエンジンシステムでは、インジェクタ25による燃料噴射量に加え、燃焼室2に還元されるブローバイガスの中の燃料成分濃度を、学習制御を含む空燃比制御に反映させることができるようになっている。この実施形態では、学習制御を含む空燃比制御については、周知な制御内容を採用するものとし、その詳しい説明は省略する。
【0036】
しかしながら、この種の学習制御を含む空燃比制御を実行するエンジンシステムにおいても、燃焼室2に還元されるブローバイガスの中の燃料成分濃度が学習制御の適用範囲を超えるおそれがある。そこで、この実施形態では、燃焼室2に還元されるブローバイガスが空燃比制御に与える影響を抑えるために、ECU60がブローバイガス還元制御を実行するようになっている。
【0037】
図4に、ブローバイガス還元制御の処理内容をフローチャートにより示す。ECU60は、この制御をエンジン1の始動後に実行するようになっている。
【0038】
すなわち、ステップ100で、ECU60は、クランク角センサ63で検出され、算出されたエンジン回転速度NE、スロットルセンサ62により検出されるスロットル開度TAをそれぞれ読み込む。そして、ECU60は、ステップ110で、読み込まれたエンジン回転速度NE及びスロットル開度TAに基づいて、エンジン1がアイドル運転状態にあるか否かを判断する。例えば、スロットル開度TAが全閉状態を示し、エンジン回転速度NEが所定値(アイドル回転速度領域)となる場合に、ECU60は、アイドル運転状態と判断することとなる。ここで、エンジン1がアイドル運転状態にあるか否かを判断するのは、アイドル運転状態での空燃比に対してブローバイガスの影響が大きいからである。
【0039】
そして、ステップ110の判断結果が肯定の場合は、ECU60は、ステップ120で電磁石44をONして、処理をステップ100へ移行する。一方、ステップ110の判断結果が否定の場合は、ECU60は、ステップ130で電磁石44をOFFして、処理をステップ100へ移行する。すなわち、このブローバイガス還元制御では、エンジン1がアイドル運転状態にあるときには、電磁石44をONすることにより、電磁石44のコイル52が励磁される。これにより、コイル52の磁力の作用により弁体47がブローバイガス流れの下流側へ向けて変位し、図3に2点鎖線で示す絞り位置に保持される。このため、弁体47を、ブローバイガス流路面積を縮小した状態に確実に保持することができる。この結果、PCVバルブ33によりブローバイガス流量を確実に低減することができる。
【0040】
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムにおけるブローバイガス還元装置によれば、エンジン1の運転時に燃焼室2からクランク室7へ漏れ出たブローバイガスは、クランク室7からオイルセパレータ31、PCVバルブ33及び還元通路32を介して吸気通路21へ流され、燃焼室2へ還元されて燃焼に供される。また、還元通路32におけるブローバイガス流量はPCVバルブ33により調整される。
【0041】
ここで、この実施形態では、ブローバイガスの影響によりエンジン1の空燃比がリッチとなるアイドル運転状態のときに、ECU60が電磁石44を制御することにより、弁体47が、吸気負圧の作用により特定される特定位置よりもブローバイガス流路面積を減少させる、図3に2点鎖線で示す絞り位置に保持される。従って、エンジン1の空燃比がリッチとなるアイドル運転状態のときには、還元通路32から吸気通路21を介して燃焼室2に還元されるブローバイガス流量が低減する。この結果、エンジン1がアイドル運転状態となるときには、必要以上のブローバイガスが燃焼室2に還元されることを防止することができ、エンジン1の空燃比がオーバリッチとなって乱れることを防止することができ、延いては空燃比制御の乱れを防止することができる。
【0042】
ここで、図5(A)〜(C)に、「−10℃」からエンジン1を始動させてアイドル運転状態で放置したときの空燃比補正量、水温・油温及びエンジン回転速度の経時変化をグラフにより示す。図5(A)において、実線は本実施形態の場合における空燃比補正量の変化を示し、破線は電磁石44を持たないPCVバルブを使用した場合の空燃比補正量の変化を示す。このグラフから分かるように、本実施形態の場合、エンジン始動後にアイドル運転状態となると、電磁石44がONされ、PCVバルブ33を通過するブローバイガス流量が低減される。従って、図5(A)に示すように、空燃比補正量が「0」に比較的近い「−10〜−20」の範囲で推移することとなり、空燃比制御に対するブローバイガスの影響が抑えられていることが分かる。このため、図5(B),(C)に示すように、水温(冷却水温度THW)、油温THO、吸気圧及びエンジン回転速度NEも、特に急激な変化もなく比較的安定して推移することが分かる。これに対し、PCVバルブを流れるブローバイガス流量が低減されない従来例では、図5(A)に破線で示すように、始動後に空燃比補正量が徐々に「0」から離れ、最終的には異常レベル(MIL点灯レベル)である「−40」になってしまうことが分かる。このグラフから、本実施形態のブローバイガス還元装置が、空燃比制御に対して有効であることが分かる。
【0043】
また、この実施形態では、PCVバルブ33に導入される前のブローバイガスから潤滑油等の油分を捕捉するためのオイルセパレータ31が設けられる。従って、PCVバルブ33に導入される前のブローバイガスから油分がオイルセパレータ31により捕捉されるので、PCVバルブ33へ不要な油分が流れ難くなる。このため、油分が弁座46や弁体47に付着して弁体47が固着等することによりPCVバルブ33が動作不良となることを防止することができる。
【0044】
この実施形態では、クランク室7におけるブローバイガスを掃気するためにクランク室7に外気を導入するための掃気通路34及び通気孔35が設けられる。従って、エンジン1のクランク室7に導入される外気によりクランク室7におけるブローバイガスが掃気されるが、このとき燃焼室2からクランク室7へ漏れ出たブローバイガスが掃気による外気により薄められる。この意味で、ブローバイガスが原因で空燃比が乱れることを防止できる効果を高めることができる。
【0045】
ここで、本実施形態の直接噴射式のエンジン1では、燃焼室2にインジェクタ25から直接燃料を噴射することから、未燃焼の燃料がシリンダボア4の壁面を伝わりクランク室7に入り込み、オイルパン6の潤滑油の中に入り込むことがある。従って、この実施形態では、特に直接噴射式のエンジン1において、ブローバイガスに係る上記作用効果を得ることができる点で有利である。
【0046】
[第2実施形態]
次に、本発明のブローバイガス還元装置をエンジンシステムに具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態では、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0047】
この実施形態では、ECU60が実行するブローバイガス還元制御の処理内容の点で第1実施形態と構成が異なる。図6に、ブローバイガス還元制御の処理内容をフローチャートにより示す。ECU60は、この制御をエンジン1の始動後に実行する。
【0048】
すなわち、ステップ200で、ECU60は、酸素センサ66により検出される酸素濃度Oxから算出される空燃比を読み込む。そして、ECU60は、ステップ210で、読み込まれた空燃比がリッチ化傾向にあるか否かを判断する。この判断は、ブローバイガスの影響によりエンジン1の空燃比がリッチになりかけているか否かを判断するものである。
【0049】
そして、ステップ210の判断結果が肯定の場合は、ECU60は、ステップ220で電磁石44をONして、処理をステップ200へ移行する。一方、ステップ210の判断結果が否定の場合は、ECU60は、ステップ230で電磁石44をOFFして、処理をステップ200へ移行する。すなわち、このブローバイガス還元制御では、エンジン1の空燃比が実際にブローバイガスの影響によりリッチになりかけているときに、電磁石44をONすることで、弁体47を開度を縮小する方向へ強制的に移動させて保持し、PCVバルブ33を通過するブローバイガス流量を低減する。
【0050】
この実施形態では、酸素センサ66の検出結果に基づきエンジン1の運転状態が空燃比としてリッチ化傾向にあるときには、ECU60が電磁石44をONする。従って、電磁石44をONすることで、燃焼室2に還元されるブローバイガス流量が低減されて、空燃比のリッチ化が阻止される。このため、エンジン1の運転時に、特に空燃比がリッチ化傾向にあるときに、燃焼室2に還元されるブローバイガスにより空燃比がオーバリッチとなって乱れることを防止することができ、延いては空燃比制御の乱れを防止することができる。この実施形態におけるその他の作用効果は、第1実施形態のそれと同じである。
【0051】
[第3実施形態]
次に、本発明のブローバイガス還元装置をエンジンシステムに具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0052】
この実施形態では、ECU60が実行するブローバイガス還元制御の処理内容の点で第1及び第2の実施形態と構成が異なる。図7に、ブローバイガス還元制御の処理内容をフローチャートにより示す。ECU60は、この制御をエンジン1の始動後に実行する。
【0053】
すなわち、ステップ300で、ECU60は、油温センサ65により検出される油温THOを読み込む。そして、ECU60は、ステップ310で、読み込まれた油温THOが所定値T1(例えば「40℃」)より高いか否かを判断する。この判断は、油温THOが所定値T1より高くなるとオイルパン6の潤滑油に混入したブローバイガスが気化し始め、クランク室7のブローバイガスの燃料成分濃度が高くなることから、これをチェックするために行われるものである。
【0054】
そして、ステップ310の判断結果が否定の場合は、ECU60は、ステップ340で、電磁石44をOFFする。一方、ステップ310の判断結果が肯定の場合は、ECU60は、ステップ320で電磁石44をONする。続いて、ステップ330で、ECU60は、電磁石44をONしてから所定時間が経過したか否かを判断する。この判断を行うのは、電磁石44を所定時間だけONすることで、燃焼室2に還元されるブローバイガス流量が低減されるからである。そして、ステップ330で所定時間が経過しない間は、ECU60は、ステップ320で電磁石44をONし続ける。その後、ステップ330で、所定時間が経過すると、ECU60は、ステップ340で、電磁石44をOFFする。
【0055】
すなわち、このブローバイガス還元制御では、エンジン1の運転時に、オイルパン6の油温THOが所定値T1を超えるときに電磁石44を所定時間だけONすることで、PCVバルブ33を通過するブローバイガス流量を低減するようになっている。
【0056】
この実施形態では、油温センサ65により検出される油温THOが所定値T1を超えるときには、ECU60が電磁石44を所定時間だけONする。これにより、燃焼室2に還元されるブローバイガス流量が低減され、エンジン1の空燃比のリッチ化が阻止される。このため、エンジン1の運転時に、特に油温THOが高くなる運転状態において、ブローバイガスにより空燃比がオーバリッチとなって乱れることを防止することができ、延いては空燃比制御の乱れを防止することができる。この実施形態におけるその他の作用効果は、第1実施形態のそれと同じである。
【0057】
[第4実施形態]
次に、本発明のブローバイガス還元装置をエンジンシステムに具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0058】
この実施形態では、ECU60が実行するブローバイガス還元制御の処理内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。図8に、ブローバイガス還元制御の処理内容をフローチャートにより示す。ECU60は、この制御をエンジン1の始動後に実行する。
【0059】
すなわち、ステップ400で、ECU60は、クランク角センサ63で検出され、算出されたエンジン回転速度NE、スロットルセンサ62により検出されるスロットル開度TAをそれぞれ読み込む。そして、ECU60は、ステップ410で、読み込まれたエンジン回転速度NE及びスロットル開度TAに基づいて、エンジン1が減速運転状態にあるか否かを判断する。例えば、スロットル開度TAが所定開度から全閉状態となり、エンジン回転速度NEが急激に低下する場合には、ECU60は、減速運転状態と判断することとなる。ここで、エンジン1が減速運転状態にあるか否かを判断するのは、減速運転状態における空燃比に対してブローバイガス等の影響が大きいからである。
【0060】
そして、ステップ410の判断結果が肯定の場合は、ECU60は、ステップ420で電磁石44をONして、処理をステップ400へ移行する。一方、ステップ410の判断結果が否定の場合は、ECU60は、ステップ430で電磁石44をOFFして、処理をステップ400へ移行する。すなわち、このブローバイガス還元制御では、多量のブローバイガスを処理する必要のないエンジン1の減速運転時に電磁石44をONすることで、PCVバルブ33を通過するブローバイガス流量を低減する。これにより、エンジン1の減速運転時には、ブローバイガスに含まれているオイルミストの持ち去り量を低減することができる。また、燃焼室2に還元されるブローバイガスにより空燃比がオーバリッチとなって乱れることを防止することができ、延いては空燃比制御の乱れを防止することができる。この実施形態におけるその他の作用効果は、第1実施形態のそれと同じである。
【0061】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
【0062】
例えば、前記各実施形態では、エンジン1が特定運転状態となるときに電磁石44をONすることで、燃焼室2に還元されるブローバイガス流量を低減するように構成した。これに対し、吸気通路21の負圧の状態にかかわらず、弁体47を閉弁位置に保持するためにECU60により電磁石44を制御するように構成してもよい。この場合、電磁石44と弁体47との位置関係を、前記各実施形態の状態に対して適宜変更することにより、電磁石44がONしたときの磁力の作用により、弁体44を弁座46との間で隙間をつくらない閉弁位置(全閉状態)に保持することができるようになる。従って、還元通路32におけるブローバイガスの流れが遮断され、燃焼室2へのブローバイガスの還元が停止する。このため、エンジン1が特定運転状態となるときに、ブローバイガスが燃焼室2に還元されることを停止することができ、空燃比が乱れることを防止することができ、延いては空燃比制御の乱れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ブローバイガス還元装置を含むエンジンシステムを示す概略構成図。
【図2】PCVバルブの初期状態を示す断面図。
【図3】PCVバルブの作動状態を示す断面図。
【図4】ブローバイガス還元制御の処理内容を示すフローチャート。
【図5】空燃比補正量、水温・油温及びエンジン回転速度の経時変化を示すグラフ。
【図6】ブローバイガス還元制御の処理内容を示すフローチャート。
【図7】ブローバイガス還元制御の処理内容を示すフローチャート。
【図8】ブローバイガス還元制御の処理内容を示すフローチャート。
【図9】従来例の強制クランクケース換気装置を示す断面図。
【符号の説明】
【0064】
1 エンジン
2 燃焼室
21 吸気通路
32 還元通路
33 PCVバルブ
41 ハウジング
44 電磁石(保持手段)
46 弁座
47 弁体
51 ボビン
52 コイル
60 ECU(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室から漏れ出たブローバイガスを還元通路を介して吸気通路へ流して前記燃焼室へ還元すると共に、前記還元通路に設けたPCVバルブによりブローバイガス流量を調整するようにしたブローバイガス還元装置において、
前記PCVバルブは、弁座と、負圧により位置が変わることで前記弁座との間のブローバイガス流路面積を変更する弁体と、前記弁座及び前記弁体を収容するハウジングと、前記弁体の位置を負圧にかかわらず所定位置に保持するための保持手段とを含み、
前記エンジンの空燃比がリッチとなるときに、前記弁体を負圧の作用により決定される特定位置よりも前記ブローバイガス流路面積を減少させる所定位置に保持するために前記保持手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とするブローバイガス還元装置。
【請求項2】
エンジンの燃焼室から漏れ出たブローバイガスを還元通路を介して吸気通路へ流して前記燃焼室へ還元すると共に、前記還元通路に設けたPCVバルブによりブローバイガス流量を調整するようにしたブローバイガス還元装置において、
前記PCVバルブは、弁座と、負圧により位置が変わることで前記弁座との間のブローバイガス流路面積を変更する弁体と、前記弁座及び前記弁体を収容するハウジングと、前記弁体の位置を負圧にかかわらず所定位置に保持するための保持手段とを含み、
前記エンジンの減速時に、前記弁体を負圧の作用により決定される特定位置よりも前記ブローバイガス流路面積を減少させる所定位置に保持するために前記保持手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とするブローバイガス還元装置。
【請求項3】
エンジンの燃焼室から漏れ出たブローバイガスを還元通路を介して吸気通路へ流して前記燃焼室へ還元すると共に、前記還元通路に設けたPCVバルブによりブローバイガス流量を調整するようにしたブローバイガス還元装置において、
前記PCVバルブは、弁座と、負圧により位置が変わることで前記弁座との間のブローバイガス流路面積を変更する弁体と、前記弁座及び前記弁体を収容するハウジングと、前記弁体の位置を負圧にかかわらず所定位置に保持するための保持手段とを含み、
前記弁体を負圧にかかわらず閉弁位置に保持するために前記保持手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とするブローバイガス還元装置。
【請求項4】
前記保持手段は、円筒形状をなすボビンと、そのボビンの外周に設けられたコイルとを含む電磁石であり、
前記弁体は、略円柱状をなし、前記ボビンの中空にて前記ボビン及び前記コイルの中心軸線に沿って貫通可能に設けられ、
前記弁体は、負圧の作用により前記特定位置に配置された状態において、前記コイルの中心軸線方向における中間位置が、前記弁体の中心軸線方向における中間位置よりもブローバイガス流れの下流側に片寄って配置され、前記弁体が前記ブローバイガス流れの下流側に変位することにより前記ブローバイガス流路面積が縮小されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のブローバイガス還元装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−309082(P2008−309082A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158629(P2007−158629)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】