説明

プッシュ操作型スイッチ装置

【課題】操作部材の十分な復帰力の確保と、操作部材のプッシュ操作方向における寸法の短縮化とを両立させることが容易なプッシュ操作型スイッチ装置を提供すること。
【解決手段】操作部材13を初期位置に自動的に復帰させる復帰手段が、操作部材13のプッシュ操作方向に交差する方向に延び、その交差する方向に弾性変形可能な弾性部材19と、操作部材13に対し弾性部材19の弾性力を伝達可能に接触する可動部材17,18とを備えている。可動部材17,18のそれぞれと操作部材13との接触個所20,27には、弾性部材19の復帰力を、プッシュ操作方向と逆向きの力に変換して操作部材13に伝達する伝達部24,31がそれぞれ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュ操作される操作部材を備え、この操作部材の操作に連動して電気信号を生成し、操作部材が初期位置に自動的に復帰するよう構成されたプッシュ操作型スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プッシュ操作型スイッチ装置としては特許文献1で開示された従来技術がある。この従来技術は、ケースと、このケースの外部から内部に向かう方向へのプッシュ操作が可能にケースに対し保持された操作部材と、プッシュ操作された操作部材を自動的に復帰させる復帰手段と、前記操作部材のプッシュ操作に連動するスイッチ素子とを備えている。
【0003】
復帰手段は、操作部材の復帰力の発生源として弾性部材であるコイルスプリングを備えている。このコイルスプリングは、操作部材のプッシュ操作方向に延び、そのプッシュ操作方向に弾性変形可能に配置されている。コイルスプリングの一端は操作部材に嵌合されていて、コイルスプリングの他端はケースに当接している。
【特許文献1】特開2001−35296公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プッシュ操作型スイッチ装置に対しては、操作部材のプッシュ操作方向における寸法の短縮化が要望されている。前述の従来技術では、弾性部材が操作部材のプッシュ操作方向に延びた形状をしているので、操作部材のプッシュ操作方向における寸法を短縮するには弾性部材を小型化する必要がある。しかし、弾性部材を小型化すると操作部材の復帰力が小さくなるため、十分な復帰力の確保と、操作部材のプッシュ操作方向における寸法の短縮化の両立が困難な場合が合った。
【0005】
本発明は、前述の実状を考慮してなされたものであり、その目的は、操作部材の十分な復帰力の確保と、操作部材のプッシュ操作方向における寸法の短縮化とを両立させることが容易なプッシュ操作型スイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するために、本発明は次のように構成されている。
【0007】
〔1〕 本発明は、ケースと、このケースの外部から内部に向かう方向へのプッシュ操作が可能に前記ケースに対し保持された操作部材と、この操作部材を初期位置に自動的に復帰させる復帰手段と、前記操作部材のプッシュ操作に連動するスイッチ素子とを備えたプッシュ操作型スイッチ装置であって、前記復帰手段が、前記操作部材のプッシュ操作方向に交差する方向に延び、その交差する方向に弾性変形可能な弾性部材と、前記操作部材に対し前記弾性部材の弾性力を伝達可能に接触する可動部材とを備え、前記操作部材と前記可動部材との接触個所には、前記弾性部材の復帰力を、プッシュ操作方向と逆向きの力に変換して前記操作部材に伝達する伝達部が形成されたことを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明では、復帰手段の弾性部材が操作部材のプッシュ操作方向に交差する方向に延び、その交差する方向に弾性変形可能であるとともに、この弾性部材の復帰力が可動部材と操作部材との間で伝達部によりプッシュ操作方向と逆向きの力に変換されて、操作部材に伝達される。これにより、操作部材の十分な復帰力の確保と、操作部材のプッシュ操作方向における寸法の短縮化とを両立させることが容易なプッシュ操作型スイッチ装置を提供できる。
【0009】
〔2〕 本発明は「〔1〕」に記載の発明において、前記スイッチ素子が、前記可動部材に設けられた可動接点と、前記ケースに設けられ前記可動接点に接触および離間される固定接点とを備え、前記伝達部が、前記操作部材のプッシュ操作時における前記弾性部材の弾性力を、前記可動接点が前記固定接点に押し付けられる方向の力として前記可動部材に付与する形状であることを特徴とするものであってもよい。
【0010】
このように構成された本発明では、伝達部が、操作部材のプッシュ操作時における弾性部材の弾性力を、可動接点が固定接点に押し付けられる方向の力として可動部材に付与するから、弾性部材の弾性力を利用して可動接点と固定接点の接触圧を確保することができる。また、その接触圧は操作部材のプッシュ操作時に発生するものであるから、可動接点のへたりを防止ることができる。
【0011】
〔3〕 本発明は「〔1〕」または「〔2〕」に記載の発明において、前記弾性部材が導電性を有し、前記スイッチ素子が自身を構成する回路に前記弾性部材を含むことを特徴とするものであってもよい。
【0012】
このように構成された本発明では、スイッチ素子を構成する回路の形状の自由度を向上させることができる。
【0013】
〔4〕 本発明は「〔1〕」〜「〔3〕」のいずれか1に記載の発明において、前記操作部材には、前記可動部材を基準にした前記弾性部材とは反対側に位置し前記可動部材の移動を規制する規制部が設けられ、前記ケースには、プッシュ操作時に前記規制部が挿入される逃げ部が設けられたことを特徴とするものであってもよい。
【0014】
このように構成された本発明では、操作部材が初期位置にあるときに規制部が可動部材の移動を規制し、操作部材のプッシュ操作時に逃げ部に挿入される。これにより、操作部材に規制部を設けることと、プッシュ操作方向における操作部材の可動範囲の確保とを両立させることができる。
【0015】
〔5〕 本発明は「〔1〕」に記載の発明において、前記復帰手段が、前記交差する方向において間隔をあけ対向する前記可動部材としての第1,第2可動部材と、これら第1,第2可動部材間に保持された前記弾性部材と、前記第1可動部材を基準にした前記弾性部材とは反対側に位置し前記第1可動部材の移動を規制する第1規制部と、前記第2可動部材を基準にした前記弾性部材とは反対側に位置し前記第2可動部材の移動を規制する第2規制部とから構成され、前記弾性部材が、導電性を有するコイルスプリングからなり、前記スイッチ素子が、前記第1可動部材に設けられた第1可動接点と、前記第2可動部材に設けられた第2可動接点と、前記ケースに設けられ前記第1可動接点に接触および離反される第1固定接点と、前記ケースに設けられ前記第2可動接点に接触および離反される第2固定接点と、前記第1,第2可動接点に結合しこれら第1,第2可動接点を導通させた前記弾性部材とから構成されたことを特徴とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前述したように、弾性部材が操作部材のプッシュ操作方向に交差する方向に延び、その交差する方向に弾性変形可能であるとともに、この弾性部材の復帰力が可動部材と操作部材との間で伝達部によりプッシュ操作方向と逆向きの力に変換されて、操作部材に伝達されるので、操作部材の十分な復帰力の確保と、操作部材のプッシュ操作方向における寸法の短縮化とを両立させることが容易なプッシュ操作型スイッチ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態について図を用いて説明する。
【0018】
図1は本実施形態の外観を示す4面図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図、(e)は下面図である。図2は本実施形態を分解して正面側から見た場合の分解斜視図である。図3は本実施形態を分解して背面側から見た場合の分解斜視図である。図4は本実施形態からカバーを取り除いた状態の2面図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。図5は図2,3に示したケース本体の正面図である。図6は本実施形態の図4(b)のVI−VI断面を含む斜視図である。図7は図4(b)のVII−VII断面図である。なお、図1において本実施形態の正面、側面、上面および下面を定めてあるが、これは本実施形態の姿勢はこれに限定されない。
【0019】
本実施形態は、ケース1と操作部材13とを備えている。ケース1はケース本体2とカバー11とから構成されている。ケース本体2には、操作部材13等の後述する構成部品を収容するために凹んだ収納部3が形成されている。カバー11は収納部3を覆ってケース本体2に取付けられている。ケース本体2の上部2aには切欠き4が形成されていて、この切欠き4とカバー11とによって形成された開口部12に操作部材13が挿通されている。
【0020】
操作部材13には、ケース本体2の背部2cの方向に突出し、図1(a)および図4(a)における左右方向に延びた2つのガイド用突出部14,15が形成されている。ケース本体2の背部2cの内面には、操作部材13の方向に突出し左右方向に延びた3つのガイド用突出部5,6,7が形成されている。操作部材13のガイド用突出部14,15は、ケース本体2の上部2aとガイド用突出部5,6,7との間に摺動可能に嵌め込まれている。操作部材13が左右方向におけるケース本体2の中央に位置した状態において、操作部材13のガイド用突出部14,15は、それぞれケース本体2におけるガイド用突出部5,6間およびガイド用突出部6,7間のそれぞれを通過可能に形成されている。つまり、操作部材13のガイド用突出部14,15と、ケース本体2の上部2aと、ケース本体2のガイド用突出部5,6,7とによって、操作部材13は、ケース1に対して所定の初期位置(図1,4に示す位置)から異なる2方向、すなわち図1(a)および図4(a)における左右方向と上下方向に移動可能に保持されている。
【0021】
以下、操作部材13を初期位置から下方向に操作することをプッシュ操作といい、操作部材13を初期位置から右方向または左方向に操作することをスライド操作という。
【0022】
ケース1内には、操作部材13を初期位置に自動的に復帰させる復帰手段が設けられている。この復帰手段は、ケース1に対して操作部材13と同方向にスライド可能に保持され、間隔をあけ対向する第1,第2可動部材17,18と、これら第1,第2可動部材17,18間に保持され、操作部材13のスライド方向において弾性変形可能な弾性部材19、例えばコイルスプリングとを備えている。第1,第2可動部材17,18のそれぞれの背面には、ケース本体2の背部2cの方向に突出するガイド用突出部17a,18aのそれぞれと、ガイド用突出部17b,18bのそれぞれとが形成されている。ケース本体2には、左右方向に沿って延びガイド溝8A,8Bが形成されている。第1可動部材17はガイド用突出部17a,17bをガイド溝8A,8Bのそれぞれに摺動可能に嵌め込まれた状態で下部2bに載置されている。第2可動部材18もガイド用突出部18a,18bのそれぞれをガイド溝8A,8Bのそれぞれに摺動可能に嵌め込まれた状態で下部2bに載置されている。
【0023】
操作部材13には、プッシュ操作方向と反対方向に凹んだ凹部16が形成されている。この凹部16に対して第1,第2可動部材17,18が摺動可能に挿入されている。左右方向において対向する凹部16の内壁部のうちの一方(右側)の内壁部と第1可動部材17との接触個所20には、第1,第2伝達部21,24が形成されている。前記一方の内壁部に対向する他方の内壁部と第2可動部材18との接触個所27には、第1,第2伝達部28,31が形成されている。接触個所20,27は、操作部材13のスライド方向に直交する方向に広がる仮想平面50に関して面対象になっている。
【0024】
右側の第1伝達部21は、弾性部材19の復帰力をスライド操作後の復帰力として操作部材13に付与可能に形成されている。この第1伝達部21は、操作部材13に形成された平坦面22と、第1可動部材17に形成された平坦面23とから構成されている。操作部材13の平坦面22は、第1可動部材17を基準にした弾性部材19とは反対側に位置している。第1可動部材17の平坦面23は、第1可動部材17における弾性部材19とは反対側に位置している。これらの平坦面22,23は面接触している。左側の第1伝達部28は、操作部材13に形成された平坦面29と、第2可動部材18に形成された平坦面30とによって、右側の第1伝達部21と同様に構成されている。
【0025】
右側の第2伝達部24は、弾性部材19の復帰力をプッシュ操作方向と逆向き力に変換し、プッシュ操作後の復帰力として操作部材13に付与可能に形成されている。この第2伝達部24は、操作部材13に形成された平坦面25と、第1可動部材17に形成された平坦面26とから構成されている。正面視において、操作部材13の平坦面25は、第1伝達部21を構成する平坦面22からプッシュ操作方向と反対方向に延び、弾性部材19に近づく方向に傾斜している。第1可動部材17の平坦面26も、第1伝達部21を構成する平坦面23からプッシュ操作方向と反対方向に延び、弾性部材19に近づく方向に傾斜している。これら平坦面25,26は面接触している。左側の第2伝達部31は、操作部材13に形成された平坦面32と、第2可動部材18に形成された平坦面33とによって、右側の第2伝達部24と同様に構成されている。
【0026】
第1,第2可動部材17,18のそれぞれには、インサート成形により金属製の第1,第2導電部材34,38が設けられている。第1導電部材34には、第1可動部材17からケース本体2の右側部2dの方向に延びた可動接点35が形成されている。第2導電部材38には、第2可動部材18からケース本体2の左側部2eの方向に延びた可動接点39が形成されている。ケース本体2の右側部2dには、可動接点35に接触および離反される固定接点42が設けられている。ケース本体2の左側部2eには、可動接点39に接触および離反される固定接点44が設けられている。
【0027】
第1導電部材34には、第1可動部材17から弾性部材19側に突出し弾性部材19の一端(右側)が嵌め込まれる嵌め込み部36が形成されている。第2導電部材38には、第2可動部材18から弾性部材19側に突出し弾性部材19の他端(左側)が嵌め込まれる嵌め込み部40が形成されている。弾性部材19は、その両端のそれぞれが嵌め込み部36,40のそれぞれに嵌め込まれることによって、第1,第2可動部材17,18に支持されている。また、弾性部材19は導電性を有し、第1,第2導電部材34,38は弾性部材19を介して導通している。
【0028】
復帰手段はさらに、第1可動部材17に近づく方向への第2可動部材18の移動時に第2可動部材18から離れる方向への第1可動部材17の移動を規制する第1規制手段と、第2可動部材18に近づく方向への第1可動部材17の移動時に第1可動部材17から離れる方向への第2可動部材18の移動を規制する第2規制手段とを備えている。第1規制手段は、第1可動部材17に設けられケース本体2の右側部2dに当接する第1当接部としての可動接点35と、ケース本体2の右側部2dに設けられ第1当接部(可動接点35)を受け止める第1受け部としての固定接点42とから構成されている。第2規制手段は、第2可動部材18に設けられケース本体2の左側部2eに当接する第2当接部としての可動接点39と、ケース本体2の左側部2eに設けられ第2当接部(可動接点39)を受け止める第2受け部としての固定接点44とから構成されている。図において、42aは固定接点42から導出された端子であり、44aは固定接点44から導出された端子である。
【0029】
第1導電部材34には、可動接点35と平行して延び、ケース本体2の背部2cの方向に突起した突起部37aを含む可動接点37が形成されている。ケース本体2の背部2cの内面には、可動接点37の突起部37aに接触および離反される固定接点43が設けられている。第2導電部材38には、可動接点39と平行して延び、ケース本体2の背部2cの方向に突起した突起部41aを含む可動接点41が形成されている。ケース本体2の背部2cの内面には、可動接点41の突起部41aに接触および離反される固定接点45が設けられている。図において、43aは固定接点43から導出された端子であり、45aは固定接点45から導出された端子である。
【0030】
本実施形態は、操作部材13が初期位置から右方向にスライド操作されたことを検出して電気信号を生成する検出手段を備えている。この検出手段は、固定接点42と、可動接点35と、弾性部材19と、可動接点41と、固定接点45とを含むスイッチ素子(以下「第1スライド操作用スイッチ素子」という)からなる。また、本実施形態は、操作部材13が初期位置から左方向にスライド操作されたことを検出して電気信号を生成する検出手段を備えている。この検出手段は、固定接点44と、可動接点39と、弾性部材19と、可動接点37と、固定接点43とを含むスイッチ素子(以下「第2スライド操作用スイッチ素子」という)からなる。
【0031】
本実施形態は、初期位置からのプッシュ操作を検出して電気信号を生成する検出手段を備えている。この検出手段は、固定接点43と、可動接点37と、弾性部材19と、可動接点41と、固定接点45とを含むスイッチ素子(以下「プッシュ操作用スイッチ素子」という)からなる。
【0032】
操作部材13の右側の平坦面22は、第1可動部材17を基準にした弾性部材19とは反対側に位置し、第1可動部材17の移動を規制する第1規制部を兼ねている。操作部材13の左側の平坦面29は、第2可動部材18を基準にした弾性部材19とは反対側に位置し、第2可動部材18の移動を規制する第2規制部を兼ねている。ケース本体2の下部2bには、プッシュ操作時に第1,第2規制部のそれぞれが挿入される逃げ部9,10が設けられている。
【0033】
右側の第1伝達部21において、操作部材13の平坦面22および第1可動部材17の平坦面23は、上面視においてケース本体2の背部2cに向かって延び、弾性部材19から離れる方向に傾斜している。つまり、第1伝達部21は、スライド操作に伴って発生する弾性部材19の弾性力を、第1スライド操作用スイッチ素子において可動接点37が固定接点43に押し付けられる方向の力として、第1可動部材17に付与可能に形成されている。
【0034】
左側の第1伝達部28においても、操作部材13の平坦面29および第2可動部材18の平坦面30は、上面視においてケース本体2の背部2cの向かって延び、弾性部材19から離れる方向に傾斜している。つまり、第1伝達部28は、スライド操作に伴って発生する弾性部材19の弾性力を、第2スライド操作用スイッチ素子において可動接点41が固定接点45に押し付けられる方向の力として、第2可動部材18に付与可能に形成されている。
【0035】
右側の第2伝達部24において、操作部材13の平坦面25および第1可動部材17の平坦面26は、上面視においてケース本体2の背部2cに向かって延び、弾性部材19から離れる方向に傾斜している。つまり、第2伝達部24は、プッシュ操作方向に伴って発生する弾性部材19の弾性力を、プッシュ操作用スイッチ素子において可動接点37が固定接点43に押し付けられる方向の力として、第1可動部材17に付与可能に形成されている。
【0036】
左側の第2伝達部31においても、操作部材13の平坦面32および第2可動部材18の平坦面33は、上面視においてケース本体2の背部2cの内面に向かって延び、弾性部材19から離れる方向に傾斜している。つまり、第2伝達部31は、プッシュ操作方向に伴って発生する弾性部材19の弾性力を、プッシュ操作用スイッチ素子において可動接点41が固定接点45に押し付けられる方向の力として、第2可動部材18に付与可能に形成されている。
【0037】
このように構成された本実施形態は次の「[1]」,「[2]」ように動作する。
【0038】
[1]スライド操作型スイッチ装置としての動作
図8は本実施形態に備えられた操作部材が左方向にスライド操作された状態を示す図4(a)に対応する正面図である。図9は図8に示した状態の図6に対応する斜視図である。図10は図8に示した状態の図7に対応する断面図である。
【0039】
操作部材13のスライド操作時の動作について、操作部材13が左方向にスライド操作される場合を例に挙げて説明する。操作部材13が右方向にスライド操作される場合については左方向の場合と同様なので省略する。
【0040】
初期位置にある操作部材13に対して左方向の操作力が付与されると、第2導電部材38に設けられた可動接点39と、ケース本体2に設けられた固定接点44とが第2規制手段として機能する。つまり、可動接点39が固定接点44に当接していることによって第2可動部材18の移動が阻止される。この状態で、操作部材13は第1可動部材17とともに弾性部材19を圧縮変形させながら移動し、第1可動部材17が第2可動部材18に当接することによって停止する。
【0041】
このとき、第1導電部材34の可動接点37は、ケース本体2に設けられた固定接点43に接触している。また、第2導電部材38の可動接点41は、ケース本体2に設けられた固定接点45から離反している。また、弾性部材19の弾性力が第1伝達部22によって、第2可動部材18を左方向に押圧する力と、ケース本体2の背部2cの方向に押圧する力とに分散されているので、第2導電部材38の可動接点39は固定接点44に押し付けられた状態であり、第1導電部材34の可動接点37は固定接点43に押し付けられた状態である。これらにより、固定接点44と固定接点43とは可動接点39、弾性部材19および可動接点37を介して安定した状態で導通し、操作部材13が左方向にスライド操作されたことに対応する電気信号が生成されることになる。
【0042】
操作部材13に対する左方向の操作力が取り除かれると、弾性部材19は第1可動部材17と操作部材13とを押し戻しながら復帰する。これに伴い、可動接点37が固定接点43から離反して、左方向へのスライド操作に対応する電気信号が生成されなくなる。また、第2可動部材18を左方向に押圧する力が除去されるとともに、第2可動部材18をケース本体2の背部2cの方向に押圧する力が除去される。また、操作部材13は初期位置に復帰する。
【0043】
[2]プッシュ操作型スイッチ装置としての動作
図11は本実施形態に備えられた操作部材がプッシュ操作された状態を示す図4に対応する正面図である。図12は図11に示した状態の図6に対応する斜視図である。図13は図11に示した状態の図7に対応する断面図である。図14は図11のXIV−XIV断面図である。
【0044】
初期位置にある操作部材13に対して下方向の操作力が付与されると、操作部材13は自身の平坦面25,32によって第1,第2可動部材17,18を、これらが弾性部材19の弾性力に抗して互いに近づく方向に移動させながら下方向に移動し、第1,第2可動部材17,18同士が当接することによって停止する。
【0045】
このとき、可動接点37が固定接点43に接触していて、可動接点41が固定接点45に接触している。また、弾性部材19の弾性力が第2伝達部24において第1可動部材17に伝達されることにより、第1可動部材17がケース本体2の背部2cの方向に押圧され、これによって可動接点37が固定接点43に押し付けられる。同様に、弾性部材19の弾性力が第2伝達部31において第2可動部材18に伝達されることにより、第2可動部材18がケース本体2の背部2cの方向に押圧され、これによって可動接点41が固定接点45に押し付けられる。これらの結果、固定接点43と固定接点45とは可動接点37、弾性部材19および可動接点41を介して安定した状態で導通し、操作部材13がプッシュ操作されたことに対応する電気信号が生成されることになる。
【0046】
操作部材13に対する下方向の操作力が取り除かれると、弾性部材19が第1,第2可動部材17,18と操作部材13とを押し戻しながら復帰する。これに伴い、可動接点37が固定接点43から離反し、可動接点41が固定接点45から離反して、プッシュ操作に対応する電気信号が生成されなくなる。また、第1可動部材17をケース本体2の背部2cの方向に押圧する力、および、第2可動部材18をケース本体2の背部2cの方向に押圧する力が除去される。また、操作部材13は初期位置に復帰する。
【0047】
本実施形態によれば次の効果を得られる。
【0048】
プッシュ操作型スイッチ装置としての本実施形態では、弾性部材19が操作部材13のプッシュ操作方向に交差する方向に延び、その交差する方向に弾性変形可能であるとともに、この弾性部材19の復帰力が第1,第2可動部材17,18のぞれぞれと操作部材13との間で第2伝達部24,31によりプッシュ操作方向と逆向きの力に変換されて、操作部材13に伝達される。これにより、操作部材13の十分な復帰力の確保と、操作部材13のプッシュ操作方向における寸法の短縮化とを両立させることが容易なプッシュ操作型スイッチ装置を提供できる。
【0049】
プッシュ操作型スイッチ装置としての本実施形態では、第2伝達部24は、プッシュ操作方向に伴って発生する弾性部材19の弾性力を、プッシュ操作用スイッチ素子において可動接点37が固定接点43に押し付けられる方向の力として第1可動部材17に付与する。同様に、第2伝達部31は、プッシュ操作方向に伴って発生する弾性部材19の弾性力を、プッシュ操作用スイッチ素子において可動接点41が固定接点45に押し付けられる方向の力として第2可動部材18に付与する。これらにより、プッシュ操作時に、弾性部材の弾性力を利用して可動接点37と固定接点43の接触圧、および、可動接点41と固定接点45の接触圧を確保することができる。また、それらの接触圧はプッシュ操作時にのみ可動接点37,41に付与されるので、可動接点37,41のへたりを防止することができる。
【0050】
プッシュ操作型スイッチ装置としての本実施形態では、弾性部材19が導電性を有し、プッシュ操作用スイッチ素子が自身を構成する回路に弾性部材19を含む。これにより、プッシュ操作用スイッチ素子を構成する回路の形状の自由度を向上させることができる。
【0051】
プッシュ操作型スイッチ装置としての本実施形態では、操作部材13が初期位置にあるとき、第1,第2可動部材17,18が互いに離れる方向に移動するのを規制する第1,第2規制部として操作部材13の平坦面22,29が機能する。そして、プッシュ操作時に、規制部が形成された操作部材13の部分が逃げ部9,10に挿入される。これにより、操作部材13に規制部を設けることと、プッシュ操作方向における操作部材13の可動範囲の確保とを両立させることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、第1伝達部21,28も、第2伝達部24,31も面接触する2つの平坦面から構成されているが、第1,第2伝達部21,24は可動接点37が固定接点43に押し付けられる力を第1可動部材17に付与可能に形成されていればよく、第1,第2伝達部28,31は可動接点41が固定接点45に押し付けられる力を第2可動部材18に付与する形状でいればよい。つまり、本発明における第1,第2伝達部は平坦面で構成されるものに限定されず、操作部材に形成された凸曲面と、可動部材に設けられその凸曲面に摺接する凹曲面から構成されるものであってもよい。
【0053】
本実施形態では、可動接点37,41が第1,第2可動部材17,18の背面側に設けられていて、固定接点43,45がケース本体2の背部2cに設けられているが、本発明における第1,第2スライド操作用スイッチ素子の配置はそれに限定されるものではない。可動接点37,41に相応するものが第1,第2可動部材17,18の下面側に設けられていて、固定接点43,45に相応するものがケース本体2の下部2bに設けられていてもよい。
【0054】
本実施形態では、操作部材13のスライド操作が直線的であるが、本発明におけるスライド操作は直線的なものに制限されるものではなく、円弧状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態の外観を示す4面図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図、(e)は下面図である。
【図2】本実施形態を分解して正面側から見た場合の分解斜視図である。
【図3】本実施形態を分解して背面側から見た場合の分解斜視図である。
【図4】本実施形態からカバーを取り除いた状態の2面図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】図2,3に示したケース本体の正面図である。
【図6】本実施形態の図4(b)のVI−VI断面を含む斜視図である。
【図7】図4(b)のVII−VII断面図である。
【図8】本実施形態に備えられた操作部材が左方向にスライド操作された状態を示す図4(a)に対応する正面図である。
【図9】図8に示した状態の図6に対応する斜視図である。
【図10】図8に示した状態の図7に対応する断面図である。
【図11】本実施形態に備えられた操作部材がプッシュ操作された状態を示す図4に対応する正面図である。
【図12】図11に示した状態の図6に対応する斜視図である。
【図13】図11に示した状態の図7に対応する断面図である。
【図14】図11のXIV−XIV断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ケース
2 ケース本体
2a 上部
2b 下部
2c 背部
2d 右側部
2e 左側部
3 収納部
4 切欠き
5,6,7 ガイド用突出部
8A,8B ガイド溝
9,10 逃げ部
11 カバー
12 開口部
13 操作部材
14,15 ガイド用突出部
16 凹部
17 第1可動部材
17a,17b ガイド用突出部
18 第2可動部材
18a,18b ガイド用突出部
19 弾性部材
20 接触個所
21 第1伝達部
22 平坦面
23 平坦面
24 第2伝達部
25 平坦面
26 平坦面
27 接触個所
28 第1伝達部
29 平坦面
30 平坦面
31 第2伝達部
32 平坦面
33 平坦面
34 第1導電部材
35 可動接点
36 嵌め込み部
37 可動接点
37a 突起部
38 第2導電部材
39 可動接点
40 嵌め込み部
41 可動接点
41a 突起部
42〜45 固定接点
42a〜45a 端子
50 仮想平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、このケースの外部から内部に向かう方向へのプッシュ操作が可能に前記ケースに対し保持された操作部材と、この操作部材を初期位置に自動的に復帰させる復帰手段と、前記操作部材のプッシュ操作に連動するスイッチ素子とを備えたプッシュ操作型スイッチ装置であって、
前記復帰手段が、前記操作部材のプッシュ操作方向に交差する方向に延び、その交差する方向に弾性変形可能な弾性部材と、前記操作部材に対し前記弾性部材の弾性力を伝達可能に接触する可動部材とを備え、
前記操作部材と前記可動部材との接触個所には、前記弾性部材の復帰力を、プッシュ操作方向と逆向きの力に変換して前記操作部材に伝達する伝達部が形成されたことを特徴とするプッシュ操作型スイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記スイッチ素子が、前記可動部材に設けられた可動接点と、前記ケースに設けられ前記可動接点に接触および離間される固定接点とを備え、
前記伝達部が、前記操作部材のプッシュ操作時における前記弾性部材の弾性力を、前記可動接点が前記固定接点に押し付けられる方向の力として前記可動部材に付与する形状であることを特徴とするプッシュ操作型スイッチ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発明において、
前記弾性部材が導電性を有し、前記スイッチ素子が自身を構成する回路に前記弾性部材を含むことを特徴とするプッシュ操作型スイッチ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の発明において、
前記操作部材には、前記可動部材を基準にした前記弾性部材とは反対側に位置し前記可動部材の移動を規制する規制部が設けられ、
前記ケースには、プッシュ操作時に前記規制部が挿入される逃げ部が設けられたことを特徴とするプッシュ操作型スイッチ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の発明において、
前記復帰手段が、前記交差する方向において間隔をあけ対向する前記可動部材としての第1,第2可動部材と、これら第1,第2可動部材間に保持された前記弾性部材と、前記第1可動部材を基準にした前記弾性部材とは反対側に位置し前記第1可動部材の移動を規制する第1規制部と、前記第2可動部材を基準にした前記弾性部材とは反対側に位置し前記第2可動部材の移動を規制する第2規制部とから構成され、
前記弾性部材が、導電性を有するコイルスプリングからなり、
前記スイッチ素子が、前記第1可動部材に設けられた第1可動接点と、前記第2可動部材に設けられた第2可動接点と、前記ケースに設けられ前記第1可動接点に接触および離反される第1固定接点と、前記ケースに設けられ前記第2可動接点に接触および離反される第2固定接点と、前記第1,第2可動接点に結合しこれら第1,第2可動接点を導通させた前記弾性部材とから構成されたことを特徴とするプッシュ操作型スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−282685(P2008−282685A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126023(P2007−126023)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】