説明

プラスチック減容回収方法

【目的】 液体により発泡材、プラスチック容器、プラスチック材を高い減容率で減容する装置を開発する。
【構成】 減溶液である脂肪族ニ基酸エステルを90℃以上沸点まで加熱した液と、圧力を併用して軟化、縮小減容を行い、減容したプラスチックを水洗いし、最後に油水分離により減容を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック減容回収方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオールを加温して、ペットボトルを減容する技術が開発されている(特願)。しかし、この液体は水と分離するのが難しく、最終工程の洗浄工程において多大なコスト高となる。加圧機で減容し、それを粉砕してチップ化する従来の一般的方法では、減容率が小さく、また、ラベルやキャップもそのままチップ化されるため、それらを分別する工程が必要である。その結果装置が大がかりとなり、コスト高となる。さらに、得られたチップのかさも大きく、輸送上、コスト高となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水と容易に分離でき、かつ、減容率が大きく、ラベルやキャップも減容工程で分別できて、大がかりな選別工程不要な、画期的減容方法を開発する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のプラスチック減容回収方法は、減容軟化溶媒と、それを加熱する手段と、次にプラスチックに加熱溶媒を接触させる工程と、最後に、減容又は軟化したものを集め、時には破砕し、次に水洗によって付着した液体を洗い流し、その液体を水から回収する工程からなる。加熱溶媒は接触時または接触直後に圧力を加えれば減容率は大きなものとなり、かつ減容のスピードも大となる。
発明者は、人体安全性が高く、環境に対する害が少なく、かつ水から容易に分離できる液体として、ステアリン酸エステル、セバシン酸エステル等の脂肪族二塩基酸エステルを見い出した。
この脂肪族二酸基酸エステルを好ましくは100℃〜150℃に加温し、それに発泡ポリエチレン、又は発泡ポリプロピレン等を浸すと減容でき、またポリエチレン容器、ポリプロピレン容器等は軟化するため、結果として減容できる。特にペットボトルに使われるポリエステルには、縮小する性質があるため、ペットボトルの減容については、この縮小効果が加わって、減容率は極めて大きなものとなる(約1/30)。また、ポリエステルの布、シート等も減容可能である。
このように本発明は、ペットボトルの減容において減容率が大であるという利点の他に、ボトルのラベルやフタが自然にはがれる利点があげられる。すなわち、従来技術ではラベルやフタはペットボトルを減容後粉砕し、選別によって除かなければならないが、もし減容時に除くことができれば大がかりな選別工程はいらなくなる。この利点は極めて大きい。本発明ではペットボトルのラベルやフタはポリエチレン製であるため軟化し、一方、ポリエステルは収縮変形するため、ラベルやフタは、ボトルからはがれやすくなる。
【0005】
脂肪族二塩基酸エステルを用いて、ペットボトルを90℃以上、好ましくは110〜130℃で減容でき、ポリエチレンは110℃で軟化できる(液体なので沸点が上限温度となるが、蒸気を廃材にあてて縮小させる方式も可能で、この場合は沸点以上でもよい)。ただし、減容速度を大きくするには圧力併用が必要である。この脂肪族二塩基酸エステルの最大の特徴は、非水溶性であるため、ジェット水洗により、容易に付着液を除くことができ、さらに水から容易に分離できる点にある。一般に脂肪族二塩基酸エステルは沸点が高く、引火爆発や火災の危険性は本発明の温度ではほとんどない(消防法第4類第3石油類である)。
【0006】
脂肪族二塩基酸エステルとしては、ステアリン酸エステル、セバシン酸エステルが主要である。さらにエステル反応のアルコール基としては、メチル、エチル、ブチル、オクチルなどがよく用いられる。特にセバシン酸オクチルは人体安全性、環境安全性が高く、燃えにくく、本発明の溶媒として最も適している。
【0007】
本発明で主たる対象となるものとして、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等があるが、発泡スチロールは溶解するため適しない。容器では、ペットボトル、ポリエチレン容器、ポリプロピレン容器、などに適用できる。一般に、100℃前後の温度では圧力をかけて減容率とスピードを大きくする必要がある。
【0011】
ペットボトルは、現在では減容率が小さく、輸送や保管のコストが大きいが本発明によれば、劇的にそれらのコストを削減できる。集められたペットボトルは、最後は破砕や細断によりチップとして集められて、保管され、次なる目的地に輸送される。そこで、チップをさらに減容することが望まれているが、現在のところ、その技術が開発されていない。本発明によれば、チップとしたものをさらに減容できる。すなわち、チップは数mm〜2cm程度の長さのものであるが、これを、本発明の例えば130〜170℃に加温した液体につけることにより、数分の一に減容できる。実験では、小さいチップの集合体のほうが減容率は大きくなった。これは、大きなチップの場合、そりが生じるためである。チップの集合体に、加温液体を流し込むだけでも良く、さらに圧力を加えれば大きく減容が可能である。
【0012】
この時、加温液体を加えた後圧力を加えるのではなく、チップの集合体に圧力を加えておき、その状態で加温液体をかけるようにすれば大きいチップでも減容率を大きくすることができる。なお圧力が加わっても、ポリエチレンテレフタレートの融点以下であればチップどうしがくっつきあうことはない。
【0013】
ここで、本発明で用いる脂肪族二塩基酸エステルの一般的性質とその効果について述べる。これは前述のように非水溶性であるため、減容時ペットボトルやチップに付着した液を、ジェット水洗や、激しい撹拌により二塩基酸エステルを容易にプラスチックから除くことができる。洗浄水は静置により、または油水分離膜により、あるいは各種油水分離法などにより水と容易に分離できる結果、脂肪族二塩基酸エステルを容易に回収することができる。すなわち、水洗液を廃水処理する必要がないという利点がある。
【0014】
液の加温には電熱加熱や火炎加熱が一般的であるが、発明者は本発明の溶媒が高周波誘導過熱、マイクロ波誘導過熱により、急速に加熱が可能であることを見出した。特にマイクロ波加熱の加熱スピードは大である。
【0015】
かかる油性の液体が、マイクロ液誘導加熱により容易に温度が上昇することはほとんど知られていない。この原理を使えば、液を霧化し、その中にペットボトルを置き、そこにマイクロ照射を行えば、温度が上昇してペットボトルを減容することができる。
【0016】
装置のコンパクト化は、液をふりかける方式で特に顕著となる。タンクに液を入れて、それを加熱する方式はエネルギー消費が大となり、又液も多量に必要となる。しかし、液のふりかけ方式にすれば液は局部的に加熱すればよく、液をプラスチックにふりかけるノズル手前で加熱すればよい、加熱部もコンパクトにできる。
【0017】
タンク方式の減容装置の一例を次に示す。図1に示すように、軟化減容タンク(4)は、上下に分かれており、上部に加熱器(8)を通して加温された軟化減容液(1)が入れてあり、そこへペットボトル、その他プラスチック廃材等を入れ、上方から圧縮器(10)で押しながら、圧力を加える。ペットボトルでは、圧力を加えることにより、容器内に入った液をはき出すことができる。この場合、加える圧力は、フタのネジ口も押しつぶす程度の強い圧力が好ましい。
【0018】
次に、バルブA(5)をあければ上の減溶液が下の網の網目を通って下の廃溶媒だめ(3)に流出する。減容した、プラスチックは網上(2)に残る。次に、網を上方へ引き上げてプラスチックを取り出し収集する。これで一工程が終る。次に、ポンプ(6)により廃溶媒だめの液を加熱器(8)に送りながら加温し(例えば130℃)タンク(4)の横上方から注入する。次にプラスチックをタンクに投入する。
【0019】
なお、減容用タンクに液をためておく必要はなく、上方から加熱液をシャワーのように液滴をかける方式(図2)又は霧化器で霧をプラスチックにかける方式(マイクロ液照射装置を噴出口に取り付け、液を局所的に加熱するようにするのが有効である)にすれば、溶媒タンクが不要なので装置をコンパクトにできる。ペットボトルに対してのこの方法のメリットは大である。すなわち、ペットボトルを一定方向に並べてコンベアで送り、加温液を上方からあびせながら圧力を加えて押しつぶす。この時、ボトルのラベルは収縮率がボトルよりも小さいので自然にはがれ、フタはポリエチレンのためボトルと比べて熱変形の形が異なるので、これも分離が容易となる。
【0020】
分別が行えるよう設計した回収装置では、発泡材及びプラスチック材を区別することなく上記溶液の入った容器に入れ、上記加熱溶液をこれらに吹き付け、比重や流動性、大きさをもとに分別し、分別収集を自然に行うことが可能である。
【0021】
減容したペットボトル、プラスチック材は、付着した液を水で単に洗い流したり、ジェット水洗して、大半を分離する。次に破砕して、再び水洗し、最後に薄い洗剤液で完全に減溶液を除き、その後乾燥する。
【0022】
前述のように、発泡材、ボトル、容器、かさ高シートを最大限に縮小させるためには加温液をかけながら圧縮機で圧縮する。圧力を大きくすれば、内部の液をしぼり出すことができる。
【0023】
軟化減容液は、単独である必要はなく、燃焼性、流動性、沸点、加熱の難易、対象プラスチクなどを考慮して混合して用いてもよい。
【実施例1】
【0024】
セバシン酸ブチル100mlを、電子レンジ(1000W)で2分マイクロ波加熱した。その時液温は130℃であった。ペットボトルのフタ付ネジ部を切りとり、この加熱液の中にいれたところフタが軟化し、ペットボトルネジ部から容易にとまることができた。棒で液中に押しこむと、気泡が出て減容した
【実施例2】
【0025】
セバシン酸オクチル100mlビーカーに入れ、液温を110℃とし、そこに炭酸飲料用の硬質ペットボトルを立てて入れ、下に押しながら減容させた。減容率は約15分の一であった。また、ペットボトルの胴部にまいてある印刷シールは、液温度を選択することにより(100〜120℃)縮小せず、ペットボトルは縮小する結果、容易にはがすことができた。
【実施例3】
【0026】
空気圧縮機(19)により溶媒タンク(18)内の減容液(14)を上方に送り、(11)のマイクロ波照射器(電子レンジ代用)で加温し、圧縮機(10)下のパイプ(12)内に注入する。加温液は圧縮板(13)の下部の細孔(14)より出て、下方に落ち、ペットボトル(16)にかかり、下方のコンベア(17)へ落下する。(コンベアの連結部から液が下方へ落ちる。)同時に圧縮面(13)を下げ、軟化したペットボトルを下方へ圧縮する。液が停止し、圧縮機は上昇する。次に減容したペットボトルを上方から取り出すとともに、下層にたまった液をドレイン(15)からタンク(18)に戻す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 タンク式のプラスチック減容装置の正面断面図である。
【図2】 コンベア式減容装置の正面断面図である。
【符号の説明】
1 減容液
2 網
3 廃溶液だめ
4 減容タンク
5 バルブA
6 ポンプA
7 注入口
8 加熱器
9 プラスチック容器
10 圧縮器
11 バルブ
12 液パイプ
13 圧縮板
14 細孔
15 バルブ
16 ペットボトル
17 コンベア(金属製)
18 液タンク
19 空気圧縮ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族二塩基酸エステルを所定の温度に加熱し、該加熱溶液中にポリエステル、ポリエチレン又はポリプロピレン製のプラスチックを浸し、あるいは該加熱溶液を吹き付けて、減容し、次に減容したプラスチックを水洗し、洗浄水と混合した脂肪族二塩基酸エステルを油水分離法で回収することを特徴とするプラスチック減容方法。
【請求項2】
前記減容時に圧力を加えることを特徴とする請求項1記載のプラスチック減容方法。
【請求項3】
脂肪族ニ塩基酸エステルを容器内で霧化し、その中にプラスチックを置き、霧をマイクロ波誘導加熱により加熱することを特徴とする請求項1または請求項2記載のプラスチック減容方法。
【請求項4】
前記プラスチックがペットボトルであることを特徴とする請求項1ないし3記載のプラスチク減容方法。
【請求項5】
前記プラスチックがペットボトルを粉砕又は細断して得られるチップである請求項1ないし3記載のプラスチック減容方法。
【請求項6】
前記溶液又は霧の温度が90℃以上から沸点まである請求項1ないし5記載のプラスチック減容方法。
【請求項7】
前記、脂肪族二塩基酸エステルがセバシン酸オクチルである請求項1ないし6記載のプラスチック減容方法。
【請求項8】
前記、脂肪族二塩基酸エステルを所定の温度に加熱する加熱装置と、加熱された溶液中に発泡プラスチック材、プラスチック容器、又はプラスチック材を浸し、あるいは溶液を吹き付けるか、もしくは霧化する手段と、該発泡材、プラスチック容器、又はプラスチック材を収集する収集手段とを備えるプラスチック減容回収装置。
【請求項9】
前記加熱装置は、高周液誘導加熱装置又はマイクロ波加熱装置である、請求項8記載のプラスチック減容回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−131860(P2006−131860A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354665(P2004−354665)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(598049436)
【Fターム(参考)】