説明

プラズマとその使用方法

プラズマ装置と、分析測定においてかかるプラズマ装置を使用する方法とを開示する。いくつかの例において、低流量プラズマは、毎分約5リットル未満の総アルゴンガス流を、いくつかの実施形態においては毎分約4リットル未満のプラズマアルゴンガス流を用いて、作動可能である。別の例においては、誘導及び容量結合を用いて生成されるプラズマを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示するいくつかの例はプラズマ装置と、化学分析においてかかるプラズマ装置を使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
典型的なプラズマは、プラズマを維持するため、及び/またはプラズマに関連するガラス製品を冷やすため、かなりの量のアルゴンを要する。かかる量のアルゴンにかかる費用のため、多くの企業と研究者はプラズマを有する分析機器を使用できない。加えて、第三世界諸国においてはアルゴンが入手困難であるため、同諸国におけるプラズマを有する分析機器の広範な採用は妨げられてきた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
アルゴンプラズマを開示する。いくつかの例において、プラズマは毎分約5リットル未満の総アルゴンガス流で作動可能であり、あるいは維持される。いくつかの例において、プラズマは毎分約4リットル未満のプラズマアルゴンガス流で作動可能である。別の例において、プラズマは毎分約4乃至5リットルのバリアガス流で作動可能である。いくつかの例において、バリアガスは窒素である。
【0004】
別の態様によると、分光システムが提供される。いくつかの例において、分光システムは、低流量プラズマを、またはバリアガスで構成されたプラズマを、維持するように構成されたトーチを含む。別の例において、分光システムはまた、トーチ本体の少なくともある部分を取り巻く少なくとも1つの誘導性装置を含んでもよい。いくつかの例において、誘導性装置はループ電流を生成するように構成される。別の例において、誘導性装置は、ここで説明するように、平板電極を備える。分光システムはまた、例えば発光、原子吸収、質量分光等、励起原子の特性を分析する検知器を含んでもよい。
【0005】
別の態様によると、プラズマを生成するトーチが提供される。いくつかの例において、トーチは、トーチにおいてプラズマを生成するためアルゴンガスを受け取るように構成されたプラズマガスポートを含む。トーチはまた、トーチ注入器の上方でプラズマ放電の高さを制御するためアルゴンガスを受け取るように構成された補助ガスポートを含んでもよい。トーチはさらに、トーチを冷やすため冷却ガスを受け取るよう適合されたバリアガスポートを含んでもよい。トーチはさらなる特徴を持っていてもよい。
【0006】
さらなる態様によると、発光分光法のための装置が開示される。いくつかの例において、装置は、低流量プラズマを維持するよう、またはバリアガスで構成されたプラズマを維持するように構成されたトーチと、トーチに磁場を生成するように構成された誘導性装置と、トーチにおいて種の発光を検知するように構成された検知装置とを含んでよい。いくつかの例において、検知装置は、発光を半径方向に、軸方向に、またはその両方で検知するように構成される。いくつかの例において、検知装置は、光電子倍増管、単色光分光器、レンズ、格子、電荷結合素子(CCD)等を含んでよい。いくつかの例においては、データ取得のために構成されたコンピュータが検知装置と電気的に連通する。さらなる特徴が含まれていてもよく、ここでは例証的なさらなる特徴を説明する。
【0007】
別の態様によると、吸収分光法のための装置が提供される。いくつかの例において、装
置は、低流量プラズマを維持するよう、またはバリアガスで構成されたプラズマを維持するように構成されたトーチと、トーチに磁場を生成するように構成された誘導性装置と、トーチへ光を供給するように構成された光源と、トーチにおいて種の光吸収を測定するように構成された検知装置とを含む。いくつかの例において、光源は、可視、紫外、または赤外光源である。装置はまた、低流量プラズマと流体連通する試料導入装置を含んでもよい。ここでは例証となる光源を説明する。いくつかの例において、検知装置は、光電子倍増管、単色光分光器、レンズ、格子、CCD等を含んでよい。いくつかの例においては、データ取得のために構成されたコンピュータが検知装置と電気的に連通する。さらなる特徴が含まれることもあり、ここでは例示的なさらなる特徴を説明する。
【0008】
さらなる態様によると、質量分光法のための装置が開示される。いくつかの例において、装置は、低流量プラズマを維持するよう、またはバリアガスで構成されたプラズマを維持するように構成されたトーチと、トーチに磁場を生成するように構成された誘導性装置と、トーチと流体連通し且つ質量対電荷比に基づき種を分離するように構成された質量分析器とを含む。いくつかの例において、分析器は、1つまたは複数の走査型質量分析器、磁場型質量分析器、四重極分析器、イオントラップ分析器、またはこれらの組み合わせから選ばれる。いくつかの例において、質量分光法のための装置はまた、質量分析器と流体連通する検知装置を含んでもよい。いくつかの例において、検知装置は、1つまたは複数の電子倍増管、ファラデーカップ、またはこれらの組み合わせから選ばれる。別の例においては、マイクロプロセッサ等の処理装置が検知装置と電気的に連通してよい。いくつかの例において、処理装置はデータベースを含むか、またはこれにアクセスできる。
【0009】
さらなる態様によると、トーチにおいてプラズマを生成する方法が開示される。いくつかの例において、方法は、アルゴンガス流の存在下でプラズマに点火することを含む。方法の例として、非アルゴンバリアガス流を導入することを含んでもよい。方法の例としてはさらに、アルゴンガス流を減らすことを含んでもよい。
【0010】
さらなる態様によると、プラズマのイオン化ポテンシャルを高めるためプラズマに対し誘導結合と容量結合とを提供することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態において、方法はさらに、プラズマのイオン化ポテンシャルを少なくとも約25eVまで増やすため容量結合を構成することを含む。別の実施形態において、方法はさらに、容量結合を提供するため第1の板と第2の板とともにトーチを構成することを含む。
【0011】
本明細書において論じるプラズマとそれらを使用する装置は、大幅な技術進歩を表している。本明細書で開示するプラズマの少なくともいくつかは、既存のプラズマに比べて少ないアルゴンを用いて実質的な性能低下をともなうことなく作動させることができ、運転費用の削減が可能である。プラズマはまた、プラズマのイオン化ポテンシャルを高めるため容量結合により作動させることができる。
【0012】
以下、添付の図面を参照しながらいくつかの例を説明する。
より明瞭な説明を促進するため、そしてここで論じる例証的な特徴、態様、及び例の容易い理解を提供するため、図面の中のいくつかの特徴が他の特徴に比べて拡大または変形されているかもしれないことは、この開示の恩恵により、当業者によって理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
詳細な説明
ここで論じるいくつかの特徴と態様は、誘導結合プラズマの、及び/または誘導結合され且つ容量結合されるプラズマの特性を、例えば容積、形状、及び/または温度域を、制御する装置と方法とを指向する。いくつかの例において、プラズマの容積、形状、及び/または温度域は非アルゴンバリアガスの使用を通じて調整される。いくつかの例において
、誘導結合プラズマの容積、形状、及び/または温度域を制御するために用いる構成品または装置は、ここに提示されるプラズマを作動させるために用いるトーチとRF生成器である。いくつかの例において、プラズマを維持するために要するアルゴンの量は、アルゴンガス流だけを使用するプラズマを作動させるために用いるアルゴンの量より少なくとも約50%少ない。毎分約5リットル未満の総アルゴンガス流を用いるプラズマを、ここでは場合によって「低流量」プラズマと呼ぶ。別の例においては、プラズマが誘導結合され且つまた容量結合されることにより相互結合プラズマが提供され、少なくともある特定の領域におけるプラズマイオン化ポテンシャルは誘導結合プラズマを用いるプラズマイオン化ポテンシャルに比べて増す。
【0014】
いくつかの例においては、低流量プラズマを提供する装置と方法とが開示される。アルゴンガスは非常に高価であり、世界の僻地においてこれを入手することは非常に困難である。機器アルゴン消費量が減れば、プラズマ装置の運転費用を大幅に減らすことができるであろう。ここで開示するいくつかの方法及び装置の例においては、既存のプラズマ装置(または機器)を作動させるために要する量の2分の1または4分の1未満までアルゴン消費量を減らすことができる。かかる低流量プラズマのいくつかの例においてはさらに、1つ以上の方法により、すなわち信号(試料放射)を増大させることにより、バックグラウンド放射を低下させることにより、プラズマ安定性を向上させることにより、及び/またはプラズマの中へ導入される試料の増量により、機器性能を向上させることができる。
【0015】
最も初期の誘導結合プラズマ(ICP)トーチは、1960年代初期にイギリス、バーミンガムのスタンリー・グリーンフィールドの功績とされた。このICPトーチは元素分析のため大気圧誘導結合プラズマにおいて使用された。このトーチは後ほどアイオワ州立大学のベルマー・ファッセルと彼の同僚たちによって改良された。そのトーチ設計は1970年代初期以来比較的不変に保たれてきた。現行版のファッセルトーチは、約16L/min.のアルゴンプラズマガス、約1L/min.未満のアルゴン補助ガス、そして試料導入システムに次第では約0.5L/min.から約1L/min.までのアルゴンネブライザガスを要する。このトーチは大量のアルゴンガス流をプラズマガスとして使用する。このガス流が減るとトーチの石英の温度が過剰となり、石英は溶け始める。この溶解が起こるのは、イオン化され、主RF放電を維持するために使われるガスが、トーチのガラス製品を冷やすためにも使われるからである。
【0016】
ここで開示するいくつかの例においては、プラズマ放電を維持するためのアルゴン流を供給するため、そしてプラズマ放電と石英トーチとの間に別個のバリアガス流を供給するため、プラズマガスと冷却ガスとを分離する。ここで使われる「バリアガス」は、直接的にはイオン化されないか、直接的にイオン化される傾向が弱いか、またはプラズマガスに比べて高周波(RF)電流を維持しない、ガスを指す。バリアガスの中にRF電流は事実上存在しないから、バリアガスの温度はプラズマガスを下回り、トーチを冷やすためにバリアガスを使用することができる。いくつかの例において、プラズマガスは1500ワット放電の場合に約16L/min.から約4L/min.以下まで減らすことができ、より低い放電のならばより少量のアルゴン流を使用できる。別個のバリアガスを使用することにより、熱いプラズマ放電ガスを石英ガラス製品から分離するため、4〜5L/min.等の少ないアルゴン流でアルゴンプラズマ放電を維持できる。特定の科学理論またはこの例によって束縛されることを望まず、この方法には、試料を脱溶媒和するためプラズマガス温度を高めるという想定外の付加的利点がある。ここで論じるとおり、プラズマ電力は所定の値で維持され、プラズマガスの容積は減少するから、最終的なプラズマ温度は増す。この温度増加は、既存のトーチ及びガス流方式で所与の電力の場合に達成できるより大量の試料流の効果的脱溶媒和を可能にする。
【0017】
いくつかの例によると、トーチを冷やすために用いるバリアガスは、直接的にイオン化
される傾向が弱い任意の適切なガスであってよい。いくつかの例において、バリアガスは、窒素、周囲空気、圧縮空気等、廉価であって一般的には不活性のガスから選ばれる。バリアガスの流量は、トーチガラス製品の溶解を防ぐように選ばれ、少なくとも部分的にはプラズマの温度次第であり、より低い温度のプラズマは一般的により少ないバリアガス流量を許す。
【0018】
いくつかの例によると、低流量プラズマが開示される。いくつかの例においては、冷却ガスを、例えばバリアガスを、導入することによって低流量プラズマが維持される。いくつかの例においては、トーチの中へ導入されるバリアガスの量が増すにつれ、トーチの中へ導入されるアルゴンの量を減らすことができる。例えば、冷却ガスをアルゴン以外のガスに切り替えることにより、非常に小さく、強く、熱いプラズマ放電を維持できる。いくつかの例においては、例えばファッセルトーチ等のプラズマ生成構成品と、例えば螺旋負荷コイル等の1つ以上の誘導性装置とを使用し低流量プラズマが維持される。別の例において、例えば同一出願人米国特許出願第10/730,779号表題「ICP−OES and ICP−MS Induction Current(ICP−OES及びICP−MS誘導電流)」2003年12月9日出願、同一出願人米国特許出願第11/156,249号表題「Boost Devices and Methods of Using Them(ブースト装置とその使用方法)」2005年6月17日出願、及び同一出願人米国特許出願第11/218,912号表題「Induction Device for Generating a Plasma(プラズマ生成のための誘導性装置)」2005年9月2日出願に記載されたファッセルトーチと1つ以上の誘導性装置とを用いて低流量プラズマを生成及び/または維持でき、これらの各々の全開示内容はここに参照により本願に援用される。さらに別の例において、ファッセルトーチは、窒素、空気等のバリアガスの導入のため1つ以上の追加ガス導入口を含むよう修正でき、修正されたトーチは、螺旋負荷コイル、平板電極、またはその他適切な電極とともに使用できる。低流量プラズマを生成する適切な構成品を選択することは、この開示の恩恵により、当業者の力量の範囲内となるであろう。
【0019】
いくつかの例においては、毎分約5リットル未満の総アルゴン流で作動する誘導結合アルゴンプラズマが提供される。トーチを通るガス流は、プラズマガスと、バリアガスと、補助ガスと、試料ガスとを含む。図1Aを参照し、誘導結合プラズマ装置100は、管110、120、130、140等、3つ以上の管を備えるチャンバ105と、プラズマ150と、導入口160と、高周波誘導コイル170とを含む。管110は、アルゴン等のガス源とネブライザ等の試料導入装置とに流体連通する。アルゴンガスは試料をエアロゾル化し、プラズマ150の脱溶媒和・イオン化領域の中へこれを運ぶ。管110及び120間には補助ガス流が供給され、これは内管の上方にプラズマを移すことにより管の溶解を防ぐために使われる。管120及び130間にはプラズマガスが供給される。外管140からプラズマ150を分離するため、外管140と内管130との間にはバリアガスが通過する。特定の科学理論またはこの例によって束縛されることを望まず、バリアガスは導入口160を通じて導入されてよく、そのバリアガス流は外側の管140の内壁を冷やし、プラズマ150を放射状に中心に置く。高周波誘導コイル170は高周波生成器(図示せず)と電気的に連通し、アーク、スパーク、その他を用いてガスがイオン化された後にプラズマ150を生成するよう構築され、且つ配置される。図1Bは誘導結合プラズマ装置100の断面を示している。当業者はこの開示により、誘導結合プラズマ、誘導−容量結合プラズマ、直流プラズマ、マイクロ波誘導プラズマ、その他を含みただじ前記に限定されない適切なプラズマを選択できるか、または設計できるだろうし、プラズマを生成する適切な装置は、PerkinElmer,Inc.(マサチューセッツ州ウェルズリー)、Varian Instruments,Inc.(カリフォルニア州パロアルト)、Teledyne Leeman Labs(ニューハンプシャー州ハドソン)、及びSpectro Analytical Instruments(ドイツ、クレーベ
)を含みただし前記に限定されない数多くの製造業者から市販されている。
【0020】
いくつかの例に従い、図2には高周波電界を提供する例証的装置が示されている。ヘリカル共振器180は、RFソース182と、共振空洞188の中にあるコイル186との電気的連通を提供するように構成され通常ならば同軸ケーブルである電気導線184とを備える。コイル186を有する共振空洞188は、図1Aのトーチに図示されたチャンバ等、チャンバを受け入れるように構成される。いくつかの例においては、例えばヘリカル共振器を使用し、約20MHzから約500MHzまでの高周波電界を生成できる。当業者はこの開示の恩恵により、ヘリカル共振器の構築のため例示的な寸法情報を容易く選択するであろう。
【0021】
いくつかの例によると、低流量プラズマを生成するため様々なタイプのトーチを使用できる。図3及び4には2つの例証的なトーチが示されている。図3を参照し、トーチ300は、外管310と、内管320と、注入器330とを含む。トーチ300はまた、プラズマガス導入口340と補助ガス導入口350とを含む。図3のトーチ300の運転の一実施形態において、プラズマガス流量は16〜20L/min.のアルゴンガスであり、補助ガス流量は0.5〜1.0L/min.のガスであり、ネブライザガス流量は0.5〜1.0L/min.のアルゴンガスである。プラズマは、トーチに磁場を生成することにより、そして磁場においてアルゴンプラズマガスに点火することにより、生成される。図3のトーチで低流量プラズマが生成される例においては、プラズマの点火後に、アルゴン補助ガス流量を、例えば約16〜20L/min.まで増やすことができる。アルゴンプラズマガス流量は、流量が約4〜5L/min.の窒素バリアガスへ切り替えられる前に、例えば空気圧により切り替えられる前に、同じ4〜5L/min.まで減らすことができる。この結果が達成された後には、ガラス製品を過熱せずに安定放電を維持するにあたって必要最低限のレベルまで補助ガス流を減らすことができる。この方法は、注入器より上方のプラズマの高さを制御するためしばしば使われる補助ガス流を用いてプラズマを維持できる。トーチの中へ試料を導入するには、約0.5から約1L/min.までのネブライザガス流量が一般的に使われる。いくつかの実施形態において、プラズマガス/バリアガスはポート340の中に入り、外管310と中間管320との間を流れる。補助ガスはポート350の中に入り、内管330と中間管320との間を流れる。試料は内管330の中を流れる。トーチ、ポート、その他の厳密な寸法は様々であり、例証的な寸法は、観察スロットが取り外された、PerkinElmer Optima 4300Vトーチアセンブリ(品番N0771500)で使われているトーチのそれとほぼ同じである。
【0022】
次に図4を参照し、トーチ400のもうひとつの例が示されている。トーチ400は、補助ガス導入口410と、プラズマガス導入口420と、バリアガス導入口430とを含む。図4のトーチ400でプラズマが維持される例において、バリアガス流量は一般的に、プラズマの点火中に0L/min.に設定される。補助ガス流量は約0.1〜0.5L/min.のアルゴンに設定でき、プラズマガスは約12〜20L/min.のアルゴンに設定できる。電極への適切な電力の印加とプラズマの点火との後、バリアガス流量は0L/min.から3〜7L/min.程度のバリアガスまで増やすことができる。アルゴンプラズマガス流量は約3〜5L/min.のアルゴンガスまで減らすことができる。トーチ400の中へ試料を導入するには、約0.5から約2L/min.までのネブライザガス流量が一般的に使われる。いくつかの実施形態において、そして図1Aと図4とを参照し、バリアガスはポート430の中に入り、外管140と中間管130との間を流れる。プラズマガスはポート420の中に入り、中間管120及び130間を流れる。補助ガスはポート410の中に入り、内管110と中間管120との間を流れる。試料は内管110の中を流れる。図4に描かれたトーチの厳密な寸法は様々であり、一般的には図3に示された追加のガスポートと中間内管とを有するトーチと同じ寸法か、またはほぼ同じ寸
法である。この中間管は、例えば約8〜15mm外径、例えば約12mm外径であってよく、約0.5〜3mm壁厚、例えば1mm壁溶融石英管を有してよい。
【0023】
いくつかの例によると、図3及び4に示された例証的トーチはいずれも、同一出願人米国特許出願第10/730,779号表題「ICP−OES and ICP−MS Induction Current(ICP−OES及びICP−MS誘導電流)」2003年12月9日出願、同一出願人米国特許出願第11/156,249号表題「Boost Devices and Methods of Using Them(ブースト装置とその使用方法)」2005年6月17日出願、及び同一出願人米国特許出願第11/218,912号表題「Induction Device for Generating a Plasma(プラズマ生成のための誘導性装置)」2005年9月2日出願に記載された螺旋負荷コイル/誘導平板負荷コイル等、螺旋負荷コイルとともに、または誘導平板負荷コイルとともに、使用できる。
【0024】
いくつかの例において、約10L/min.未満の、より具体的には約5L/min.未満の、例えば約4、3、2、または1L/min.未満のアルゴンガス流を、プラズマを維持するためプラズマガスとして使用できる。トーチの内部寸法が減少するにつれ種々のガス流量を減らせることは、この開示の恩恵により当業者によって認識されるであろう。プラズマガスの厳密な流量は、プラズマの所望の温度と形状とに、少なくとも部分的には、左右される。別の例においては、約0.05から約1L/min.までの補助ガスを使用でき、より具体的には約0.1から約0.5L/min.までのアルゴンが補助ガスとして使われ、例えば約0.2から約0.5L/min.までのアルゴンが補助ガスとして使われる。いくつかの例においては、約0.1L/min.から約2L/min.までのネブライザ流を使用できる。ここで開示する低流量プラズマのいくつかの構成において、プラズマ温度の増加は、脱溶媒和のためプラズマの中へ導入される試料の増量を許す。例えば、従来のプラズマの中へ導入できる量に比べ、少なくとも約25%以上、例えば約30%、40%、または50%以上の試料を脱溶媒和のため低流量プラズマの中へ導入できる。
【0025】
いくつかの例によると、以下のガスのため以下の例証的流量を用いて低流量プラズマを維持できる:バリアガスとして約1〜5L/min.の窒素、プラズマガスとして約1〜4L/min.のアルゴン、補助ガスとして約0.1から約0.2L/min.までのアルゴン、約0.1L/min.から約0.9L/min.までのアルゴンのネブライザ流。いくつかの例においては、約5L/min.の窒素がバリアガスとして使われる。別の例においては、約4L/min.のアルゴンがプラズマガスとして使われる。さらに別の例においては、約0.2L/min.のアルゴンが補助ガスとして使われる。さらなる例においては、約0.9L/min.のアルゴンガスがネブライザ流に使われる。当業者はこの開示の恩恵により、プラズマガス、バリアガス、ネブライザガスの他の適切な流量を容易く選択するであろう。
【0026】
いくつかの例によると、低流量プラズマを、またはバリアガスで構成されるプラズマを、備える分光システムが提供される。分光システムの厳密な構成は、望まれる、または選ばれる分析方法に、少なくとも部分的には、左右される。分析方法にかかわりなく、分光システムは、低流量プラズマを、または例えばプラズマを成形するためバリアガスで構成されるプラズマを、維持するように構成されたトーチと、トーチの少なくともある部分を取り巻き且つトーチに磁場を生成するように構成された少なくとも1つの誘導性装置とを含んでよい。システムはさらに検知器を含んでよく、これは一般的に所望の分析方法に基づいて選ばれる。
【0027】
図5を参照し、例示的な発光分光計(OES)が示されている。OES装置500は、
筐体505と、試料導入装置510と、低流量プラズマ520と、検知装置530とを含む。発光525は検知装置530の中へ導入でき、選択された光535は、ディスプレイ550と電気的に連通する光増幅器540まで通過できる。試料導入装置510は試料の性質次第で異なる。いくつかの例において、試料導入装置510は、低流量プラズマ520の中への導入のため液体試料をエアロゾル化するように構成されたネブライザである。別の例において、試料導入装置510はエアロゾル試料を受け取るように構成された注入器であり、同エアロゾル試料はプラズマの中へ直に注入もしくは導入できる。当業者はこの開示の恩恵により、試料を導入するため他の適切な装置・方法を容易く選択するであろう。検知装置530は数多くの形態をとることができ、発光525等、発光を検知できる任意の適切な装置であってよい。例えば、検知装置530は、レンズ、ミラー、プリズム、窓、バンドパスフィルタ等、適切な光学機器を含んでよい。検知装置530はまた、マルチチャネルOES装置を提供するため、エシェル格子等の格子を含んでよい。エシェル格子等の格子は、複数の放射波長の同時検知を可能にする。監視すべき1つまたは複数の特定の波長を選択するため、格子は、単色光分光器やその他の適切な装置の中に配置できる。別の例においては、複数放射波長の同時検知を提供するため、フーリエ変換を実施するようOES装置を構成してよい。検知装置は、紫外、可視、近・遠赤外、その他を含みただし前記に限定されない大きい波長範囲にわたって放射波長を監視するように構成できる。検知装置は、CCD等のソリッドステート検知器を含んでよい。OES装置500はさらに、マイクロプロセッサ及び/またはコンピュータ等の適切な電子機器と、所望の信号を提供するため、及び/またはデータ取得のため、適切な回路とを含んでよい。適切な付加的装置・回路は当技術において公知であり、例えばPerkinElmer,Inc.から市販されているOptima 2100DVシリーズ、及びOptima 5000 DVシリーズOES装置等、市販のOES装置に見ることができる。光増幅器540は信号を増大させるため、例えば検知された光子から信号を増幅させるため作用し、ディスプレイ550へ信号を提供でき、同ディスプレイ550はプリンタ、表示器、コンピュータ、その他であってよい。いくつかの例において、増幅器540は、検知装置530から信号を受け取るように構成された光電子倍増管である。ただし当業者ならこの開示の恩恵により、信号を増幅する他の適切な装置を選択するであろう。信号が十分に大きいため検知装置530において回路と装置とを用いてこれを検知できる例においては、増幅器540を省いてよい。低流量プラズマを生成するため既存のOES装置を改良すること、そしてここで開示する低流量プラズマを使用する新しいOES装置を設計することもまた、この開示の恩恵により、当業者の力量の範囲内となるであろう。OES装置はさらに、PerkinElmer,Inc.から市販されているAS90及びAS93オートサンプラ等のオートサンプラを、または他の供給業者から入手できる同様の装置を、含んでよい。
【0028】
いくつかの例に従い、図6には吸収分光法(AS)のためのシングルビーム装置が示されている。特定の科学理論またはこの例によって束縛されることを望まず、原子とイオンは一定波長の光を吸収し、低エネルギーレベルから高エネルギーレベルへの遷移のためのエネルギーを供給できる。原子またはイオンは、例えば基底状態から高エネルギーレベルへの遷移の結果、複数の共鳴線を内包できる。かかる遷移を促進するにあたって必要とされるエネルギーは、数多くのソースを、例えばここで論じるとおり、熱、炎、プラズマ、アーク、スパーク、陰極線ランプ、レーザー、その他を用いて供給できる。当業者はこの開示の恩恵により、かかる遷移エネルギーを供給するソースと、かかる遷移エネルギーを供給する光の適切な波長とを容易く選択するであろう。
【0029】
いくつかの例に従い、そして図6を参照し、例証的なシングルビームAS装置600は、筐体605と、電源610と、電源610へ接続されたランプ620と、低流量プラズマ630と流体連通する試料導入装置625と、低流量プラズマ630から信号を受け取るように構成された検知装置640と、検知装置640から信号を受け取るように構成さ
れた任意選択可能な増幅器650と、増幅器650と電気的に連通するディスプレイ660とを含む。電源610はランプ620へ電力を供給するように構成でき、同ランプ620は、原子及びイオンによる吸収のため1つまたは複数の波長の光622を供給する。適切なランプは、無電極放電ランプ、中空陰極ランプ、水銀ランプ、陰極線ランプ、レーザー、その他、またはこれらの組み合わせを含みただし前記に限定されない。ランプ620は、適切なチョッパーまたはパルス電源を用いてパルス化してよく、あるいはレーザーが実施される例においては、選択された周波数により、例えば毎秒5、10、または20回で、レーザーをパルス化できる。ランプ620の厳密な構成は様々である。例えばランプ620は、プラズマ630に沿って軸方向に、例えばトーチの長軸に沿って、光を供給でき、あるいはプラズマ630に沿って半径方向に、例えばトーチの長軸に対し垂直に、光を供給できる。図6に示す例は、ランプ620から軸方向に光を供給するように構成されている。信号の軸視野を使用し信号対雑音利点がある。試料が低流量プラズマ630において原子化及び/またはイオン化するときには、ランプ620からの入射光622が原子を励起する。つまり、ランプ620によって供給される光622の何割かはプラズマ630において原子とイオンとによって吸収される。残りの光635は検知装置640へ伝送される。検知装置640は、例えばプリズム、レンズ、格子を、そして例えばOES装置に言及し上記において論じた他の適切な装置を用いて、1つまたは複数の適切な波長を選択できる。いくつかの例において、検知装置640はCCD等のソリッドステート検知器を含んでよい。ディスプレイ660への送信に向けて信号を増大させるため、信号は任意選択可能な増幅器650へ供給できる。信号が十分に大きいため検知装置640において回路と装置とを用いてこれを検知できる例においては、増幅器650を省いてよい。低流量プラズマ630における試料による吸収量を考慮に入れるため、試料導入に先駆け水などのブランクを導入することにより100%の透過基準値を提供することができる。試料が低流量プラズマの中へ導入された後に伝送された光の量は測定でき、試料とともに伝送された光の量を基準値で割ることにより透過率を求めることができる。この透過率の負log10は吸収度に等しい。AS装置600はさらに、マイクロプロセッサ及び/またはコンピュータ等の適切な電子機器と、所望の信号を提供するため、及び/またはデータ取得のため、適切な回路とを含んでよい。適切な付加的装置・回路は、例えば市販のAS装置に、例えばPerkinElmer,Inc.から市販されているAAnalystシリーズ分光計等に、見ることができる。低流量プラズマを生成するため既存のAS装置を改良すること、そしてここで開示する低流量プラズマを使用する新しいAS装置を設計することもまた、この開示の恩恵により、当業者の力量の範囲内となるであろう。AS装置はさらに、PerkinElmer,Inc.から市販されているAS−90A、AS−90plus、及びAS−93plusオートサンプラ等、当技術で公知のオートサンプラを含んでよい。
【0030】
いくつかの例に従い、そして図7を参照し、例証的な二光束AS装置700は、筐体705と、ランプ720と電気的に連通する電源710と、低流量プラズマ765と、低流量プラズマ765と流体連通する試料導入装置760と、低流量プラズマ765から信号を受け取るように構成された検知装置780と、検知装置780から信号を受け取るように構成された任意選択可能な増幅790と、増幅器790から信号を受け取るように構成された出力装置795とを含む。信号が十分に大きいため検知装置780において回路と装置とを用いてこれを検知できる例においては、増幅器790を省いてよい。電源710はランプ720へ電力を供給するように構成でき、同ランプ720は、原子及びイオンによる吸収のため1つまたは複数の波長の光725を供給する。適切なランプは、無電極放電ランプ、中空陰極ランプ、水銀ランプ、陰極線ランプ、レーザー、その他、またはこれらの組み合わせを含みただし前記に限定されない。ランプは、適切なチョッパーまたはパルス電源を用いてパルス化してよく、あるいはレーザーが実施される例においては、選択された周波数により、例えば毎秒5、10、または20回で、レーザーをパルス化できる。ランプ720の構成は様々である。例えばランプ720は、低流量プラズマ765に沿
って軸方向に光を供給でき、あるいは低流量プラズマ765に沿って半径方向に光を供給できる。図7に示す例は、ランプ720からの軸方向光供給のために構成されている。信号の軸視野を使用し信号対雑音利点がある。試料が低流量プラズマ765において原子化及び/またはイオン化するときには、ランプ720からの入射光725が原子を励起する。つまり、ランプ720によって供給される光735の何割かは低流量プラズマ765において原子とイオンとによって吸収される。残りの光767の少なくとも大部分は検知装置780へ伝送される。二光束を使用する例においてはビーム分割器730を用いて入射光725を分割でき、かくして光の50%はビーム735として低流量プラズマ765へ伝送され、光の50%はビーム740としてレンズ750及び755へ伝送される。これらの光ビームは半透明ミラー等の結合器770を用いて再結合でき、結合された信号775は検知装置780へ伝送できる。そして基準値と試料の値との比を求めることにより試料の吸収度を計算できる。検知装置780は、例えばプリズム、レンズ、格子を、そして例えばOES装置に言及し上記において論じた他の適切な装置を用いて、1つまたは複数の適切な波長を選択できる。いくつかの例において、検知装置780はCCD等のソリッドステート検知器を含んでよい。ディスプレイ795への出力に向けて信号を増大させるため、信号785は増幅器790へ提供できる。AS装置700はさらに、マイクロプロセッサ及び/またはコンピュータ等、当技術で公知の適切な電子機器と、所望の信号を提供するため、及び/またはデータ取得のため、適切な回路とを含んでよい。適切な付加的装置・回路は、例えば市販のAS装置に、例えばPerkinElmer,Inc.から市販されているAAnalystシリーズ分光計等に、見ることができる。低流量プラズマを生成するため既存の二光束AS装置を改良すること、そしてここで開示する低流量プラズマを使用する新しい二光束AS装置を設計することもまた、この開示の恩恵により、当業者の力量の範囲内となるであろう。AS装置はさらに、PerkinElmer,Inc.から市販されているAS−90A、AS−90plus、及びAS−93plusオートサンプラ等、当技術で公知のオートサンプラを含んでよい。
【0031】
いくつかの例に従い、図8には質量分光法(MS)のための例証的装置が概略的に示されている。MS装置800は、低流量プラズマ820と流体連通する試料導入装置810と、質量分析器830と、検知装置840と、処理装置850と、ディスプレイ860とを含む。試料導入装置810と、低流量プラズマ820と、質量分析器830と、検知装置840とは、1つまたは複数の真空ポンプを用いて低い圧力で作動できる。ただしいくつかの例においては、質量分析器830及び/または検知装置840の内1つまたは複数だけが低い圧力で作動する。試料導入装置820は、低流量プラズマ820へ試料を供給するように構成された導入口システムを含んでよい。導入口システムは、1つまたは複数のバッチ導入口、直接プローブ導入口、及び/またはクロマトグラフ導入口を含んでよい。試料導入装置810は、注入器、ネブライザ、または固体、液体、または気体試料を低流量プラズマ820へ引き渡すことができる他の適切な装置であってよい。質量分析器830は、一般的には試料の性質、所望の分解能、その他に応じて数多くの形態をとることができ、これ以降は例示的な質量分析器についてさらに論じる。検知装置840は、既存の質量分光計とともに使用できる適切な任意の検知装置、例えば電子倍増管、ファラデーカップ、被覆感光板、シンチレーション検知器、その他であってよく、さらにこの開示の恩恵により当業者によって選択される他の適切な装置であってよい。処理装置850は一般的に、マイクロプロセッサ及び/またはコンピュータと、MS装置800の中へ導入される試料の分析にとって適切なソフトウェアとを含む。MS装置800の中へ導入される種の化学的同一性を判定するため、処理装置850によって1つまたは複数のデータベースへアクセスできる。PerkinElmer,Inc.から市販されているAS−90plus及びAS−93plusオートサンプラ等、オートサンプラを含みただし前記に限定されない、当技術で公知の他の適切な付加的装置もまたMS装置800とともに使用できる。
【0032】
いくつかの例によると、MS装置800の質量分析器は所望の分解能と導入される試料の性質とに応じて数多くの形態をとることができる。いくつかの例において、質量分析器は走査型質量分析器、磁場型分析器(例えば一重及び二重集束型MS装置用)、四重極質量分析器、イオントラップ分析器(例えばサイクロトロン、四重極イオントラップ)、飛行時間型分析器(例えばマトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型分析器)、ならびに質量対電荷比が異なる種を分離できる他の適切な質量分析器である。ここで開示する低流量プラズマは、上記の質量分析器と他の適切な質量分析器の内いずれか1つ以上と併せて使用できる。
【0033】
他のいくつかの例によると、ここで開示する低流量プラズマは、質量分光法で使われている既存のイオン化手法とともに使用できる。例えば、質量分析器の中へのイオンの進入に先駆けイオン化効率を高めるため、低流量プラズマを有する電子衝撃ソースを組み立てることができる。別の例においては、質量分析器の中へのイオンの進入に先駆けイオン化効率を高めるため、低流量プラズマを有する化学イオン化ソースを組み立てることができる。さらに別の例においては、質量分析器の中へのイオンの進入に先駆けイオン化効率を高めるため、低流量プラズマを有するフィールドイオン化ソースを組み立てることができる。さらに別の例において、低流量プラズマは、脱離ソースとともに、例えば高速原子衝撃、電界脱離、レーザー脱離、プラズマ脱離、熱脱離、電気流体力学的イオン化/脱離、その他のために構成されたソースとともに使用できる。さらに別の例においては、サーモスプレーまたはエレクトロスプレーイオン化ソースとともに使用するよう低流量プラズマを構成できる。質量分光法に用いる低流量プラズマを含む、イオン化のため適切な装置を設計することは、この開示の恩恵により、当業者の力量の範囲内となるであろう。
【0034】
他のいくつかの例によると、ここで開示するOES、AS、及びMS装置は、1つまたは複数の他の分析技法と複合できる。例えば、OES、AS、またはMS装置は、液体クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法、キャピラリー電気泳動法、及び他の適切な分離技法を実行する装置と複合できる。低流量プラズマを含むMS装置をガスクロマトグラフに結合する場合には、ガスクロマトグラフからMS装置の中へ試料を導入するため、適切なインターフェイスを、例えばトラップ、ジェット分離器、その他を含めることが望ましい。MS装置を液体クロマトグラフへ結合する場合もまた、液体クロマトグラフ法と質量分光法に用いる容積の違いを考慮に入れるため、適切なインターフェイスを含むことが望ましい。例えばスプリットインターフェイスを使用でき、かくして液体クロマトグラフから出る少量の試料だけがMS装置の中へ導入される。液体クロマトグラフから出る試料は、MS装置の低流量プラズマへの輸送のため適切なワイヤー、カップ、またはチャンバ内に堆積させることもできる。いくつかの例において、液体クロマトグラフは、加熱された毛細管を通過する試料を蒸発させ、エアロゾル化するように構成されたサーモスプレーを含む。いくつかの例においては、サーモスプレーを用いた種のイオン化を向上させるため、サーモスプレーは独自の低流量プラズマを含んでよい。当業者はこの開示の恩恵により、液体クロマトグラフからMS装置の中へ液体試料を導入する他の適切な装置を、または他の検知装置を、容易く選択するであろう。
【0035】
いくつかの例においては、低流量プラズマを含むMS装置が、タンデム質量分光分析のため、低流量プラズマを含む場合とそうでない場合とがある少なくとも1つの他のMS装置に複合される。例えば、1つのMS装置は第1のタイプの質量分析器を含むことができ、第2のMS装置は、第1のMS装置と異なるかまたは同様の質量分析器を含むことができる。別の例において、第1のMS装置は分子イオンを隔離するため作用でき、第2のMS装置は隔離された分子イオンを断片化/検知するため作用できる。少なくとも1つが低流量プラズマを含む複合MS/MS装置を設計することは、この開示の恩恵により、当業者の力量の範囲内となるであろう。
【0036】
いくつかの例に従い、低流量プラズマを生成する方法が開示される。いくつかの例において、方法は、アルゴンガス流を用いてプラズマに点火することと、非アルゴンバリアガス流を導入することとを含む。いくつかの例において、非アルゴンバリアガス流が導入されるときには、アルゴンガス流の量が約50%以上減らされる。プラズマは一般的に、アーク、スパーク等を用いて点火される。プラズマの点火の後、アルゴンガス流の2分の1以上は、窒素、空気等の非アルゴンガスに置き換えることができる。いくつかの例において、アルゴンガスの約75%以上は非アルゴンバリアガスによって置き換えられる。例示的な方法においては、プラズマの点火のときに約5〜16L/min.のアルゴンプラズマガス流を使用できる。プラズマが点火された後には、約4〜5L/min.の流量でバリアガス流を導入でき、アルゴンプラズマガス流量は約4〜5L/min.まで減らすことができる。これらの例証的な流量を使用しながら低流量プラズマを維持でき、脱溶媒和、原子化、イオン化等のために使用できる。
【0037】
低流量プラズマを使用するさらなる装置を組み立てることもできる。例えば、溶接トーチ、半田付け装置、ろう接装置、切削装置、蒸着装置、スパッタリング装置、またはプラズマを含む他の適切な装置は、ここで開示する低流量プラズマを用いて構築できる。
【0038】
いくつかの例によると、誘導及び容量結合RFエネルギーの同時結合を通じてプラズマを生成する装置が提供される。誘導結合と容量結合の両方を用いて生成及び/または維持されるプラズマは、ここで相互結合プラズマと呼ぶ場合がある。誘導性装置と容量性装置との組み合わせは「相互結合装置」と呼ぶ場合がある。誘導結合と容量結合の両方を用いて生成されるプラズマは低流量プラズマであってよく、あるいは従来の流量を使用するプラズマ、例えばPerkinElmer,Inc.(マサチューセッツ州ウェルズリー)から入手できるOptima 2100DV機器またはOptima 5x00シリーズ機器等、市販の機器で生成されるプラズマであってよい。相互結合装置の使用を通じて生成されるプラズマは、発光、原子吸収、質量分光法のために構成された機器において、またはプラズマとともに一般的に使われる他の検知器及び機器において使用できる。いくつかの実施形態においては、相互結合装置を提供するため容量性装置を誘導性装置の中に置くことができる。例えば図9Aを参照し、装置は、トーチ本体910と、トーチ本体を取り巻く負荷コイル920と、負荷コイル920とトーチ本体910との間の第1の板930と、負荷コイル920とトーチ本体910との間の第2の板940とを含む。第1の板930と第2の板940とは、これらの板が電荷を帯びるときに容量性装置として機能する。いくつかの例において、第1の板930と第2の板940とは互いに略平行に位置づけられる。容量結合と誘導結合の併用は、誘導結合だけを使用した場合より高いイオン化及び励起エネルギーを供給できる。例えば、容量結合を使用すると約25eV、40eV、60eV以上のイオン化ポテンシャルを持つプラズマを生成できる。この結果は、イオン化効率の増大、検知限界の向上、そしてイオン化が困難な元素の、例えば塩素、砒素、セレニウム、タリウム、及び鉛等のイオン化向上を可能にする。誘導結合と容量結合とを提供するよう構築され且つ配置される適切なプラズマ生成装置を設計することは、この開示の恩恵により、当業者の力量の範囲内となるであろう。
【0039】
いくつかの例において、第1の板930と第2の板940とは、負荷コイル920と同じ電源へ接続できる。例えば図9Bを参照し、負荷コイル920または第1の板930及び第2の板940は同じ電源950へ接続できる。負荷コイル920と、第1の板930と、第2の板940とに電力を供給するためただひとつの電源を使用する実施形態においては、誘導結合と容量結合とを図示するとおり直接的に接続でき、かくして容量性板にかかる電圧は負荷コイルにかかる電圧と同じになる。負荷コイルと容量性板の電圧を別々に調整できるようにするため、負荷コイルの脚部の各々から容量性板の各々にかけてインピーダンス整合素子を接続することは、この開示の恩恵により、当業者の力量の範囲内となるであろう。こうすれば、たとえ容量性板が負荷コイル電力から駆動されようとも、容量
性板にかかる電圧は負荷コイルの電圧を大きく上回ることができる(または負荷コイルの電圧を下回ることができる)。別の実施形態においては、2つの個別の電源を使用できる。例えば図9Cを参照し、第1の電源960は負荷コイル920へ電力を供給し、第2の電源970は第1の板930と第2の板940へ電力を供給する。別々の電源を使用する実施形態においては、例えばいずれかの電力レベルを、または作動周波数を、変えることにより、誘導結合と容量結合とを個別に制御または調整できる。
【0040】
図9A〜9Cに図示された装置は負荷コイルに言及しながら説明しているが、負荷コイルを平板電極に、または誘導結合プラズマを提供できる他の適切な装置に、置き換えることができることは、この開示の恩恵により当業者によって認識されるであろう。平板電極を使用する実施形態においては、容量性板と平板電極との間で望ましくないアーク放電を抑えるため、または防ぐため、容量性板と平板電極との間に絶縁材を含めるこが望ましい。例えば図9Dを参照し、実施形態の軸方向像は、平板電極915と、第1の板930と、第2の板940と、絶縁材980と、トーチ本体990とを備える。望ましくないアーク放電を抑えるため、または防ぐため、絶縁材980は、第1の板930と平板電極915との間に、そして第2の板940と平板電極915との間に位置づけられている。
【0041】
容量結合を提供するため、平らな板以外の装置を使用できる。例えば、容量結合を提供するために用いる電極の形状は、電極が電荷を帯びるときにある程度の容量結合が提供されるなら、いかなる形態をとってもかまわない。例えば図9E〜9Iを参照し、トーチ本体990を取り巻く電極は円筒形であってよく(1002、1004)、湾曲状であってよく(1006、1008)、あるいは厚みが一様でなくてもよい(1010、1012)。電極は、選ばれた角度から見たときに対称であってよく(1014、1016)、あるいは選ばれた角度から見たときに非対称であってもよい(1018、1020)。当業者はこの開示の恩恵により、容量結合を提供するために用いる電極のさらなる構成を容易く選択するであろう。
【0042】
容量性装置を使用する実施形態においては、容量性装置の領域の中でプラズマを修正できる。例えば、高循環電流と高ガス温度にともない低インピーダンス放電となる傾向がある誘導結合を提供するよう負荷コイルを構成でき、他方キャパシタは、負荷コイルに用いるより格段に高いRF電圧で駆動されるよう構築、配置でき、例えば標準的な負荷コイルで通常ならば容易くイオン化しない元素と分子をイオン化するため、格段に高い電子及びイオン励起を提供できる。いくつかの実施形態において、容量性板と負荷コイルは同じ領域の中になくてもよい。例えば図10Aを参照し、負荷コイル1102は、格段に高いガス温度が望ましい脱溶媒和領域に配置してよく、容量性板1104及び1106は負荷コイルの後ろ、より高いイオン化ポテンシャルとより低いガス温度(より低いバックグラウンド)とが望まれる励起領域に配置してよい。いくつかの実施形態において、容量性板1104及び1106は負荷コイル1102の末端を越えて延在してよい。この配置は、コイルの中で高いガス温度と高い励起エネルギーを、そしてキャパシタだけの領域により低いガス温度と高い励起電位を提供できる。当業者はこの開示の恩恵により、誘導性装置と容量性装置の両方を含む装置のさらなる構成を容易く選択するであろう。
【0043】
いくつかの例によると、誘導性装置と容量性装置とに提供される厳密な電力レベルは様々でよい。いくつかの例においては、約500ワットから約2500ワットまでの電力で約10MHzから約2500MHzまでの無線周波数を誘導性装置に供給することができる。いくつかの例においては、約500ワットから約2500ワットまでの電力で約0.1MHzから約2500MHzまでの無線周波数を容量性装置に供給することができる。
【0044】
いくつかの例によると、プラズマガス温度を制御するために誘導性装置を使用でき、他方イオン化ポテンシャルを制御するために容量性装置を使用できる。例えば、プラズマガ
スの温度を高めるため、及び/またはプラズマのイオン化ポテンシャルを高めるため、低流量プラズマ、従来流量プラズマ、または低圧プラズマとともに誘導性装置と容量性装置との組み合わせを使用することにより、より効率的なイオン化を図ることができる。いくつかの例において、誘導性装置と容量性装置とを用いて生成されるプラズマのイオン化ポテンシャルは、少なくとも約25eVまで、より具体的には少なくとも40eVまで、例えば60eV以上まで高めることができる。
【0045】
ここで開示する技術をさらに例証するため、いくつかの具体例を説明する。
例1
同一出願人米国特許出願第11/156,249号に記載されたハードウェアを用いて低流量プラズマを維持した。なお、同米国特許出願の全開示内容はあらゆる目的のため、ここに参照により本願に援用される。特に、米国特許出願第11/156,249号の「ハードウェア機構」と題する例1に記載された手動制御ハードウェア機構を用いて低流量プラズマを維持した。
【0046】
手短に、ハードウェア機構は、ファッセルトーチと、プラズマセンサーと、緊急オフスイッチと、プラズマ励起ソースと、Optima 400生成器とを含んでいた。プラズマ励起ソースは噴霧化装置の中心の板の上に置いた。使用した板は、Oriel Corporation(コネチカット州ストラットフォード)から購入した1.5フィート×2フィートのオプティカルベンチだった。プラズマ励起ソースは、ソースをプレートの上方でプレートに対し直角に据え付ける大きいアルミニウム製アングルブラケットに据え付けられた。板へ固定する前に横方向調整を許すためブラケットに溝を刻んだ。プラズマセンサーは、プラズマを見るために配置できるアルミニウム製の箱に据え付けた。プラズマが絶えた場合にプラズマソースを停止するため、プラズマセンサー配線を修正した。緊急オフスイッチは、作業員の近くに持って行くことができるアルミニウム製の箱の中に遠ざけて据え付けた。AC及びDC電力とプラズマセンサー配線はオプティカルベンチの下に置いた。この機構の運転を許すため従来型ICP−OES装置にみられる数多くの安全機能は取り除かれ、危険な電圧、またはRF及びUV放射から作業員を守る保護手段は用意しなかった。この機構は、独立したトーチ排出装置を有する通気遮蔽スクリーンルームの内側で遠隔的に運転した。この開放フレーム構造により実験の合間の準備は容易かった。
【0047】
制御電子機器は、Power One(マサチューセッツ州アンドーバー)によって製造された外部24V/2.4A DC電源で構成された。RF放射による電子機器とコンピュータへの干渉を防ぐためフェライトを追加した。点火導線は、トーチに到達させるため、そしてアーク放電を防ぐため、高電圧導線とプラスチック製の絶縁材を用いて本来のハーネスから延長させた。
【0048】
光学プラズマセンサーはプラズマソースの上方に置いた。プラズマからの光が光学プラズマセンサーに入射できるようにするため、光学プラズマセンサーのアルミニウム箱と据え付けブラケットには小さい穴(直径約4.5mm)を穿孔した。光学プラズマセンサーは、プラズマが意図せず絶えた場合にプラズマソースを停止することによりプラズマソースを保護した。一次プラズマ点火、ガス流制御、電力設定、及び監視を含む生成器機能はいずれも手動制御下で実行した。自動運転のため、Againで市販されているもの等、標準WinLabTMソフトウェアを使用するコンピュータ制御、この機構の運転を許すため、その他多数の安全機能は無効にし、危険な電圧、危険な煙霧、またはRF及びUV放射から作業員を守る保護手段は用意されなかった。ただし当業者はこの開示の恩恵により、安全に作動する装置と作動環境とを提供するため適切な安全機能を実施できるであろう。
【0049】
PerkinElmer,Inc.から市販されているOptima 5300Vに見
られる負荷コイルとファッセル型トーチ等、2巻螺旋負荷コイルとファッセル型トーチとともに上記の機構を使用し、低流量プラズマを維持した。ここで図11を参照し、アルゴンプラズマガスが16L/min.、補助アルゴンガスが0.5L/min.、そしてアルゴンネブライザガスが0.7L/min.のガス流でイットリウム試料を実行する例証的構成においてプラズマが示されている。この運転モードにおいては、図3に示すトーチのプラズマ導入口へ供給されるガス流によってプラズマが維持される。以下の手順を使用し、プラズマを生成すること、そして外部ガス制御によりプラズマ導入ポート340から補助導入ポート350にかけてプラズマ維持ガスを移すことは可能だった。
【0050】
プラズマは、ここで論じた標準的なガス流を用いて点火した。ポート340に入るアルゴンガスは約20L/min.まで増やした。ポート350に入るアルゴンガスの補助流は約20L/min.まで増やした。ネブライザ流は、所望の値(使用する試料導入システム次第で異なる)に達するまでゆっくりと増やした。プラズマは、注入器の上方でプラズマの高さを制御するためしばしば使われるガス流によって維持された。この方法の結果、プラズマの直径はより小さくなり、プラズマの試料チャネルをより効率的に加熱できた。図12に見られるとおり、より小さいプラズマは同じ入力電力でより明るく、より高温でもあった。
【0051】
例2
バリアガス流を用いてプラズマを実行するため、ICP生成器とファッセル型トーチとを使用した。この方法は、外部ガス制御と例1で上述したハードウェア機構によって達成され、以下の手順を用いて遂行された。プラズマは標準的なガス流を用いて点火した。プラズマ導入ポート340に入るアルゴンガスは約20L/min.まで増やした。補助ポート350に入るアルゴンガスは約20L/min.まで増やした。その後、ポート340に入るガスはゼロ(0)L/min.まで減らした。ネブライザ流は、所望の値(使用する試料導入システム次第で異なる)に達するまでゆっくりと増やした。ポート340へ供給されるガスは窒素ガス供給へ切り替えた。窒素ガス流は0L/min.から16L/min.までゆっくりと増やした。こうして得たプラズマが図13に示されている。図13に見られるとおり、プラズマは非常に小さく、強く、高温の放電であり、非常に安定的であることがわかった。トーチはこのモードで溶解を経験しなかった。
【0052】
この運転モードを使用しながら、プラズマの形状と容積と温度とは、補助ポート350の中へ至る窒素の流れを調整することによって容易く調節または調整された。図14は図13に示されたプラズマの生成に用いたのと同じ運転条件を示すものだが、窒素流は16L/min.から0.5L/min.まで減らされた。
【0053】
図4は、バリアガスのため追加のポート430を使用する低流量トーチを示す。このトーチを、同一出願人米国特許出願第10/730,779号表題「ICP−OES and ICP−MS Induction Current(ICP−OES及びICP−MS誘導電流)」2003年12月9日出願と同一出願人米国特許出願第11/218,912号表題「Induction Device for Generating a
Plasma(プラズマ生成のための誘導性装置)」2005年9月2日出願とに記載された誘導平板型負荷コイル等、誘導平板型負荷コイルと併せて使用した。プラズマの点火と実行に用いた手順は次のとおりであった:ネブライザ流とバリアガス流はそれぞれ0L/min.に設定し、補助アルゴンガス流は0.2L/min.に設定し、アルゴンプラズマガスは10L/min.に設定した。プラズマに点火し、誘導平板負荷コイルの電力を1500ワットに設定した。バリアガス流は4乃至5L/min.あたりの窒素に設定した。アルゴンプラズマガスは4L/min.まで減らした。ネブライザガスは0.9L/min.のアルゴンに設定した。そして、ネブライザと1000ppmのイットリウム試料とに流体連通する蠕動ポンプを起動した。こうして得たプラズマは図15に示され
ている。このプラズマは非常に安定的な放電を呈し、アルゴンガス流だけを用いて生成されるプラズマより格段に小さく、且つ高温であった。このより小さくより高温のプラズマは、より大量の試料の導入を許すであろう。放射像の試料放出領域におけるバックグラウンドも大幅に抑えることができるであろう。
【0054】
比較のための図について、図16は、以下のガス流量を使用する点を除き、図15のプラズマを生成するのに用いたのと同じトーチと誘導板である:0L/min.の窒素バリアガス、16L/min.のアルゴンプラズマガス、0.2L/min.の補助アルゴンガス、及び0.6L/min.のネブライザガス。
【0055】
例3
29.5巻きの負荷コイル1702を使った点を除き、上記の例1で説明したハードウェア機構を使用し、プラズマ生成のための誘導・容量結合装置を組み立てた。容量性板1704及び1706を提供するため、銅箔テープ(3Mから市販されている型番1181)を使用した。容量性板1704及び2706を構成する銅箔テープは、石英チャンバ1710の上部及び下部において、導線を通じて負荷コイル1702の両端へ取り付けられた状態のものを見ることができる。容量対誘導結合比は負荷コイルの直径を変えることによって調整した。容量結合は一定に保たれ、誘導結合は負荷コイルの直径が増すにつれ減少した。1000ワットと約450トルでアルゴンプラズマを実行するこの装置の運転は図18に見ることができる。
【0056】
誘導結合プラズマの性能を容量結合プラズマの性能に比較するため実験を行った。これらの実験は、約450トルの若干低い圧力で行った。誘導結合プラズマ(図19A〜19D参照)は、15.8電子ボルト(eV)であるアルゴンの第1のイオン化ポテンシャルにほぼ等しいイオン化ポテンシャルに制限された。この容量結合プラズマを使用する特定の実施形態は、少なくとも約60eVの上位イオン化ポテンシャルを提供した。図20A〜20Dはそれぞれアルゴンの第1、第2、第3、及び第4のイオン化放出ピークを示しており、第2、第3、及び第4のイオン化放射はそれぞれ約27.6eV、40.9eV、及び59.8eVで発生している。容量結合を用いるバックグラウンドもまた、誘導結合だけを用いるバックグラウンドより低いことが観察された。
【0057】
ここで開示した例の要素を紹介するときに、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は1つまたは複数の要素があることを意味するものである。用語「comprising」、「including」、及び「having」は制約なきことを意図し、記載された要素のほかにさらなる要素があるかもしれないことを意味する。例の種々の構成品を他の例の種々の構成品と交換または代替できることは、この開示の恩恵により当業者によって認識されるであろう。参照によりここに援用される特許、特許出願、または出版物のいずれかの用語の意味がこの開示で使われている用語の意味と対立する場合には、この開示に含まれる用語の意味が支配するものとする。
【0058】
いくつかの態様、例、及び実施形態を上記のように説明してきたが、開示された例証的な態様、例、及び実施形態の追加、代替、修正、及び変更が可能であることは、この開示の恩恵により当業者によって認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】いくつかの例に従い、図1Aはトーチとプラズマの上部図であり、図1Bは図1Aのトーチ及びプラズマの断面上部図である。
【図2】いくつかの例に従い、RF生成器と電気的に連通する螺旋負荷コイルを使用するヘリカル共振器の概略図である。
【図3】いくつかの例に従い、ファッセルトーチの概略図である。
【図4】いくつかの例に従い、低流量プラズマを維持するのに適したトーチの概略図である。
【図5】いくつかの例に従い、例証的な発光分光計の概略図である。
【図6】いくつかの例に従い、例示的なシングルビーム原子吸収分光計の概略図である。
【図7】いくつかの例に従い、例示的なダブルビーム原子吸収分光計の概略図である。
【図8】いくつかの例に従い、例証的な質量分光計の概略図である。
【図9A】いくつかの例に従い、容量結合プラズマを提供する装置の概略図である。
【図9B】いくつかの例に従い、容量結合プラズマを提供する装置の概略図である。
【図9C】いくつかの例に従い、容量結合プラズマを提供する装置の概略図である。
【図9D】いくつかの例に従い、容量結合プラズマを提供する装置の概略図である。
【図9E】いくつかの例に従い、容量結合を提供するため使用できる例証的な電極の概略図である。
【図9F】いくつかの例に従い、容量結合を提供するため使用できる例証的な電極の概略図である。
【図9G】いくつかの例に従い、容量結合を提供するため使用できる例証的な電極の概略図である。
【図9H】いくつかの例に従い、容量結合を提供するため使用できる例証的な電極の概略図である。
【図9I】いくつかの例に従い、容量結合を提供するため使用できる例証的な電極の概略図である。
【図10】図10A及び10Bはいくつかの例に従い、容量結合プラズマを提供するため使用できる実施形態の概略図である。
【図11】いくつかの例に従い、選択されたガス流と螺旋負荷コイルとを用いて生成されたプラズマの写真である。
【図12】いくつかの例に従い、窒素バリアガスと螺旋負荷コイルとを用いて生成された低流量プラズマの写真である。
【図13】いくつかの例に従い、16L/minの流量を持つ窒素バリアガスと螺旋負荷コイルとを用いて生成された低流量プラズマの写真である。
【図14】いくつかの例に従い、0.5L/minの流量を持つ窒素バリアガスと螺旋負荷コイルとを用いて生成された低流量プラズマの写真である。
【図15】いくつかの例に従い、窒素バリアガスと平板誘導コイルとを用いて生成された低流量プラズマの写真である。
【図16】いくつかの例に従い、選択されたガス流と平板誘導コイルとを用いて生成されたプラズマの写真である。
【図17】いくつかの例に従い、容量結合プラズマを提供するために用いる装置の写真である。
【図18】いくつかの例に従い、図17の装置により生成された誘導及び容量結合プラズマの写真である。
【図19】図19A〜19Dはいくつかの例に従い、誘導結合プラズマを使用したイオン化ポテンシャルを示すグラフである。
【図20】図20A〜20Dはいくつかの例に従い、容量結合プラズマを使用したイオン化ポテンシャルを示すグラフである。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
毎分約5リットル未満の総アルゴン流を用いて維持されるプラズマ。
【請求項2】
約4L/min.未満のプラズマアルゴンガス流により維持される、請求項1に記載のプラズマ。
【請求項3】
約4L/min.乃至約5L/min.のバリアガス流により維持される、請求項2に記載のプラズマ。
【請求項4】
バリアガスは窒素である、請求項3に記載のプラズマ。
【請求項5】
バリアガスは空気である、請求項3に記載のプラズマ。
【請求項6】
トーチ本体と、
トーチ本体に磁場を生成するように構成された誘導性装置と、
誘導性装置とトーチ本体との間に配置された少なくとも1つの容量性装置とを備える、装置。
【請求項7】
誘導性装置と容量性装置とに電力を供給するため単一の電源をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
誘導性装置へ電力を供給するように構成された第1の電源と、容量性装置へ電力を供給するように構成された第2の電源とをさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
誘導性装置はループ電流を生成するように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
誘導性装置は平板電極を備える、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
容量性装置は第1の板と第2の板とを備え、第1の板は第2の板に対し略平行に配置され、トーチ本体は第1の板と第2の板との間に配置される、請求項6に記載の装置。
【請求項12】
発光検知のために構成された検知器をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項13】
原子吸収のために構成された検出器をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項14】
質量分光法のために構成された検出器をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項15】
トーチにおいて低流量プラズマを生成する方法であって、
第1の流量でアルゴンガス流を用いてプラズマに点火すること、及び
トーチの中へ非アルゴンバリアガス流を導入することを含む、方法。
【請求項16】
第1の流量から第1の流量より少ない第2の流量にかけてトーチの中のアルゴンガス流を減らすことをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
非アルゴンバリアガス流として窒素を選択することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
アルゴンガス流の約75%を非アルゴンバリアガス流に置き換えることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
容量結合によりトーチにおいてプラズマを構成することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
プラズマのイオン化ポテンシャルを少なくとも約25eVまで高めるため容量結合を構成することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
容量結合を提供するため第1の板と第2の板でトーチを構成することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
プラズマのイオン化ポテンシャルを高めるためにプラズマに誘導結合と容量結合とを提供することを含む方法。
【請求項23】
プラズマのイオン化ポテンシャルを少なくとも約25eVまで高めるため容量結合を構成することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
容量結合を提供するため第1の板と第2の板でトーチを構成することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
トーチにおいてプラズマを生成するためアルゴンガスを受け取るように構成されたプラズマガスポートと、
トーチ注入器の上方でプラズマ放電の高さを制御するためアルゴンガスを受け取るように構成された補助ガスポートと、
トーチを冷やすため冷却ガスを受け取るよう適合されたバリアガスポートを備える、トーチ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図9I】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−537282(P2008−537282A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500981(P2008−500981)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/008687
【国際公開番号】WO2006/099190
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507302058)パーキンエルマー・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER,INC.
【Fターム(参考)】