説明

プラズマ処理装置、スパッタ装置、及び液晶装置の製造装置

【課題】プラズマ処理時における異常放電の発生を防止した、プラズマ処理装置、スパッタ装置、及び液晶装置の製造装置を提供する。
【解決手段】チャンバ3a内に対向配置された電極9a,9b間に高周波電力を印加してプラズマを発生させるプラズマ処理装置3である。チャンバ3aの内壁面への処理生成物の付着を防止する防着板30を備え、防着板30には少なくともプラスの電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置、スパッタ装置、及び液晶装置の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体などの電子デバイスは急速に細密化が進んでおり、高精度の加工処理が求められる。このような微細加工技術ではプラズマを利用した加工方法が一般的となっており、例えばプラズマCVD装置やスパッタ装置等のプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置は、その構造上チャンバ内が処理生成物によって汚染される可能性がある。そこで、排気手段が接続された微粒子排出ダクトを用いることで、プラズマ中の気相反応により発生する微粒子を外部に排出し、該微粒子によるチャンバの汚染を防止したプラズマ処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3301152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液晶装置の無機配向膜の形成時に好適なスパッタ装置ではチャンバ内に防着板を設置することでチャンバ内にスパッタ粒子が付着することを防止している。しかしながら、スパッタ処理が進行するに従って防着板上に堆積したスパッタ生成物が防着板に対して電位差を持つようになる。すると、スパッタ生成物がチャージアップしてしまい、チャンバ内に異常放電を誘発し、液晶装置を構成するための素子基板にダメージが及ぼす、或いはパーティクルを発生させる可能性がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、プラズマ生成時における異常放電の発生を防止した、プラズマ処理装置、スパッタ装置、及び液晶装置の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のプラズマ処理装置は、チャンバ内に対向配置された電極間に高周波電力を印加してプラズマを発生させるプラズマ処理装置において、前記チャンバの内壁面への処理生成物の付着を防止する防着板を備え、該防着板には少なくともプラスの電圧が印加されることを特徴とする。
【0007】
本発明のプラズマ処理装置によれば、プラズマを用いてスパッタ処理を行った場合に防着板には処理生成物としてスパッタ生成物が堆積されるようになる。スパッタ生成物が絶縁性材料の場合、スパッタ生成物にマイナスの電荷が蓄積される可能性がある。本発明によれば防着板にプラスの電圧が印加されることでマイナスの電荷を外部に放出することができる。よって、スパッタ成膜時に防着板上に堆積したスパッタ生成物にマイナスの電荷がチャージアップされることが無く、異常放電が生じることで成膜対象としてのデバイスにダメージを与えたり、パーティクルを発生させるといった不具合を防止できる。
【0008】
また、上記プラズマ処理装置においては、前記処理生成物が絶縁性材料であり、該処理生成物における絶縁耐性を上回る強さの電圧を前記防着板に印加するのが好ましい。
処理生成物における絶縁耐性よりも弱い電圧が防着板に印加された場合、処理生成物に帯電したマイナスの電荷は該処理生成物における絶縁性を貫いて防着板に流れ込むことができない。そこで、本発明を採用すれば、防着板に電圧を印加した際に処理生成物に帯電した電荷が処理生成物の絶縁性を貫くことで、防着板を介して外部に確実に放出できる。
【0009】
また、上記プラズマ処理装置においては、前記防着板に印加する電圧の極性を切り替え可能とする電源を備えるのが好ましい。
この構成によれば、プラスの電荷のみならずマイナスの電荷も防着板を介して外部に排出できるので、防着板に付着した堆積物にプラスの電荷がチャージアップされるのを防止できる。よって、防着板に堆積される物質が帯電する極性によらず、異常放電の発生を良好に防止することができる。
【0010】
本発明のスパッタ装置は、チャンバ内に対向配置された電極間に高周波電力を印加してプラズマを生成させ、該プラズマ発生領域を挟んで対向配置される一対のターゲットを有し、該ターゲットから飛散した粒子を付着させて基材上にスパッタ生成物を形成するスパッタ装置であって、前記チャンバの内壁面への前記スパッタ生成物の付着を防止する防着板を備え、該防着板には少なくともプラスの電圧が印加されることを特徴とする。
【0011】
本発明のスパッタ装置によれば、所謂対向ターゲット型のスパッタ装置が構成される。ここで、スパッタ生成物が絶縁性材料で構成されているとスパッタ生成物にマイナスの電荷が蓄積される可能性がある。そこで、本発明によればプラスの電圧が印加された防着板を介してマイナスの電荷を外部に放出することができる。よって、スパッタ生成物にマイナスの電荷がチャージアップされることが無く、異常放電によって被処理対象物であるデバイスにダメージを与えたり、パーティクルが発生するといった不具合を防止できる。
【0012】
また、上記スパッタ装置においては、前記スパッタ生成物が絶縁性材料であり、該スパッタ生成物における絶縁耐性を上回る強さの電圧を前記防着板に印加するのが好ましい。
スパッタ生成物における絶縁耐性よりも弱い電圧が防着板に印加された場合、スパッタ生成物に帯電したマイナスの電荷は該スパッタ生成物における絶縁性を貫いて防着板に流れ込むことができない。そこで、本発明を採用すれば、防着板に電圧を印加した際に処理生成物に帯電した電荷がスパッタ生成物の絶縁性を貫くことで、防着板を介して外部に確実に放出できる。
【0013】
また、上記スパッタ装置においては、前記防着板に印加する電圧の極性を切り替え可能とする電源を備えるのが好ましい。
この構成によれば、プラスの電荷のみならずマイナスの電荷も防着板を介して外部に排出できるので、防着板に付着した堆積物にプラスの電荷がチャージアップされるのを防止できる。よって、防着板に堆積される物質が帯電する極性によらず、異常放電の発生を良好に防止することができる。
【0014】
本発明の液晶装置の製造装置は、対向する一対の基板間に挟持された液晶層を備え、少なくとも一方の前記基板の内面側に無機配向膜が形成されてなる液晶装置の製造装置であって、上記のスパッタ装置を備え、前記基板上に配向膜材料をスパッタすることで前記無機配向膜を形成することを特徴とする。
【0015】
本発明の液晶装置の製造装置によれば、基板上に無機配向膜を形成する際に異常放電が生じることがないので、基板上に形成された駆動素子が上記異常放電によって破壊されることで点欠陥が生じたり、セルギャップよりも大きな粒子状物質(パーティクル)が基板面に付着することで液晶装置における光学デバイスとしての性能が低下するのを防止できる。また、所望形状の柱状構造を有する配向性に優れた無機配向膜を備えた高信頼性の液晶装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
図1(a)は本発明に係る液晶装置の製造装置の一実施の形態を示す概略構成図である。図1(b)はスパッタ装置3をXa方向に観察した側面構成図である。
図1(a)に示すように、製造装置1は、液晶装置の構成部材となる基板W上にスパッタ法により無機配向膜の形成材料を飛散させるスパッタ装置3と、スパッタ成膜を行う対象物としての基板Wを収容する成膜室2とを備えている。
【0018】
なお、本実施形態ではスパッタ装置3は本発明のプラズマ処理装置の一例をなすものであり、チャンバ内に対向配置された電極間に高周波電力を印加してプラズマを発生させ、これら電極間に配置されたターゲットからスパッタ粒子5pを放出させるものである。
【0019】
スパッタ装置3は、そのプラズマ生成領域に放電用のアルゴンガス(第1のスパッタガス)を流通させる第1のガス供給手段21を備えている。また成膜室2は、内部に収容された基板W上に飛来する配向膜材料と反応して無機配向膜を形成する反応ガスとしての、酸素ガス(第2のスパッタガス)を供給する第2のガス供給手段22を備えている。
【0020】
成膜室2には、その内部圧力を制御し、所望の真空度を得るための排気制御装置20が配管20aを介して接続されている。また、成膜室2の図示下側の壁面から外側に突出するようにして、スパッタ装置3との接続部を成す筒状の装置接続部25が形成されている。前記装置接続部25は、その中心軸と、成膜室2内部に収容される基板Wの成膜面法線方向(図示Z軸方向)とが、所定の角度(θ1)を成すように斜め方向に延びて形成されており、その先端部に接続されるスパッタ装置3を、基板Wに対して所定の角度で斜めに向けて配置することができるようになっている。
前記第2のガス供給手段22は、装置接続部25に関して排気制御装置20と反対側に接続されており、第2のガス供給手段22から供給される酸素ガスは、矢印22fで示すように、成膜室2の+X側から基板W上を経由して排気制御装置20側へ図示−X方向に流通するようになっている。
【0021】
また実際の製造装置1では、成膜室2の真空度を保持した状態での基板Wの搬入/搬出を可能とするロードロックチャンバー(不図示)が、成膜室2のX軸方向外側に備えられている。ロードロックチャンバーにも、これを独立して真空雰囲気に調整する排気制御装置が接続され、ロードロックチャンバーと成膜室2とは、チャンバ間を気密に閉塞するゲートバルブを介して接続されている。このような構成により、成膜室2を大気に解放することなく基板Wの出し入れを行えるようになっている。
【0022】
本実施形態に係るスパッタ装置3は、2枚のターゲット5a、5bを対向配置してなる対向ターゲット型のスパッタ装置であり、第1のターゲット5aは略平板状の第1電極9aに装着され、第2のターゲット5bは略平板状の第2電極9bに装着されている。電極9a、9bに支持されたターゲット5a、5bは、基板W上に形成する無機配向膜の構成物質を含む材料、例えばシリコンからなるものとされる。またターゲット5a、5bは図示Y方向に延びる細長い板状のものが用いられており(図2参照)、互いの対向面がほぼ平行になるように設置されている。
第1電極9aには直流電源又は高周波電源からなる電源4aが接続され、第2電極9bには直流電源又は高周波電源からなる電源4bが接続されており、各電源4a、4bから供給される電力によりターゲット5a、5bが対向する空間(プラズマ生成領域)にプラズマPzを発生させるようになっている。
【0023】
第1電極9aのターゲット5aと反対側にはターゲット5aを冷却するための第1の冷却手段8aが設けられており、第1の冷却手段8aには。第1の冷媒循環手段18aが配管等を介して接続されている。また第2電極9bのターゲット5bと反対側には、ターゲット5bを冷却するための第2の冷却手段8bが設けられており、第2の冷却手段8bには、配管等を介して第2の冷媒循環手段18bが接続されている。第1の冷却手段8aは、図1(b)に示すようにターゲット5aとほぼ同一の平面寸法に形成されており、第1電極9aを介してターゲット5aと平面視で重なる位置に配設されている。また特に図示はしないが、第2の冷却手段8bについても同様にターゲット5bと平面視で重なる位置に配設されている。冷却手段8a、8bは内部に冷媒を流通させる冷媒流路を備えており、かかる冷媒流路に対して冷媒循環手段18a、18bから供給される冷媒を循環させることでターゲット5a、5bの冷却を行うようになっている。
【0024】
また、図1(b)に示すように、平面視矩形状の第1の冷却手段8aを取り囲むようにして矩形枠状の永久磁石、電磁石、これらを組み合わせた磁石等からなる第1の磁界発生手段16aが配設されており、図1(a)に示す第2の冷却手段8bを取り囲む第2の磁界発生手段16bも同様の形状である。
【0025】
なお、冷却手段8a、8bは、導電部材により作製してそれぞれ第1電極9a、9bと電気的に接続してもよく、この場合には冷却手段8a、8bに対しそれぞれ電源4a、4bを電気的に接続することができる。また、第1電極9a、9bの内部に冷媒流路を形成することで第1電極9a、9bが冷却手段を兼ねる構成としてもよい。
【0026】
図2は、図1(a)に示すスパッタ装置3の構成を示す図であり、図2(a)はスパッタ装置3を成膜室2側から見た平面図であり、図2(b)は図2(a)におけるG−G’矢視図である。
図1及び図2に示すように、第1電極9a及び第2電極9bは、それらの一端部(−Za側端部)に接続された側壁部材19と、第1電極9a及び第2電極9bのY軸方向両端部にそれぞれ接続された側壁部材9c、9dとともにスパッタ装置3のチャンバ3aをなす箱形筐体を構成している。ただし、チャンバ3a(箱形筐体)を構成する第1電極9a、第2電極9b、及び側壁部材9c、9d、19は互いに絶縁された構造である。またチャンバ3aには、第1電極9a及び第2電極9bの側壁部材19と反対側の端部にスパッタ粒子5pが排出される開口が設けられており、この開口を介して成膜室2に突出形成された装置接続部25に接続され、かかる接続構造により前記チャンバ3aの内部は成膜室2の内部と連通している。
【0027】
ところで、スパッタ粒子5pは成膜室2内に配置される基板Wにのみ付着させるのが望ましい。しかしながら、アルゴンイオンの衝突によりターゲット5a,5bから放出されるスパッタ粒子は放射状に拡がることで、その一部が装置接続部25の内面やチャンバ3a内壁面に付着して汚染したり、付着した粒子がやがて剥離することでパーティクル(異物)となり基板W上に付着することで成膜不良を引き起こす可能性がある。
【0028】
そこで、本実施形態では、チャンバ3aの内部から装置接続部25に亘って、板状部材から構成される防着板30を備えている。この防着板30はスパッタ粒子(スパッタ生成物、処理生成物)がチャンバ3aの内面及び装置接続部25の内面に付着することを防止する機能を有している。防着板30は、その一部が対向配置されるターゲット5a,5b上を覆うように配置されており、上記ターゲット5a,5bに対応する位置に開口部30aが形成されている。これにより、アルゴンイオンの衝突によってターゲット5a,5bから放出されるスパッタ粒子が防着板によって遮断されるのを防止している。
また防着板30には少なくともプラスの電圧を印加可能とする直流電源からなる電源31が接続されている。なお、電源31としては防着板30にプラスの電圧を印加できるものであれば高周波電源であってもよい。
【0029】
図1に示すように、ターゲット5a、5bに挟まれるプラズマ生成領域に対して成膜室2と反対側に配置された側壁部材19には、前記第1のガス供給手段が接続されており、第1のガス供給手段21から供給されるアルゴンガスは、側壁部材19側からプラズマ生成領域(ターゲット対向領域)に流入し、装置接続部25を介して成膜室2内に流入するようになっている。そして、成膜室2に流入したアルゴンガスは、矢印21fで示すように、第2のガス供給手段22から供給されて矢印22fに沿って流通する酸素ガスと合流して排気制御装置20側へ流れるようになっている。本実施形態の製造装置1では、第1のスパッタガスであるアルゴンガスを図示Za方向に沿って成膜室2側へ流通させ、成膜室2内を−X方向に流通する酸素ガスと合流させ、その後−X方向に流通させるようになっており、第2のスパッタガスである酸素ガスの流通方向と前記アルゴンガスの流通方向との成す角度が鋭角になるようにしてスパッタガスを円滑に流通させるようになっている。これにより、酸素ガスとアルゴンガスとの合流地点においてガス流が乱れるのを防止することができ、基板Wに対するスパッタ粒子5pの入射角度がばらつくのを防止することができる。
【0030】
第1電極9aのターゲット5aと反対側に第1の磁界発生手段16aが配置され、第2電極9bのターゲット5bと反対側には第2の磁界発生手段16bが配置されている。図2(b)に示すように、第2の磁界発生手段16bは、矩形状のターゲット5bの外周端に沿って配置された矩形枠状であり、第1の磁界発生手段16aも同様である。従って第1の磁界発生手段16aと第2の磁界発生手段16bとは、対向配置されたターゲット5a、5bの外周部で互いに対向して配置されている。そして、これらの磁界発生手段16a、16bがターゲット5a、5bを取り囲むXa方向の磁界をスパッタ装置3内に発生させ、かかる磁界によってプラズマPzに含まれる電子をプラズマ生成領域内に拘束する電子拘束手段を構成している。
【0031】
スパッタ装置3の下方には、基板Wをその被処理面(成膜面)が水平(XY面に平行)になるようにして保持する基板ホルダ6が設けられている。基板ホルダ6には、基板ホルダ6を図示略のロードロックチャンバー(図示せず)側からその反対側へ水平に搬送する移動手段6aが接続されている。移動手段6aによる基板Wの搬送方向は、図1においてX軸方向に平行であり、ターゲット5a、5bの長さ方向(Y軸方向)と直交する方向となっている。
【0032】
また、基板ホルダ6には、保持した基板Wを加熱するためのヒータ(加熱手段)7が設けられており、さらに、保持した基板Wを冷却するための第3の冷却手段8cが設けられている。ヒータ7は、電源等を具備した制御部7aに接続されており、制御部7aを介した昇温動作により所望の温度に基板ホルダ6を加熱し、これによって基板Wを所望の温度に加熱できるように構成されている。一方、第3の冷却手段8cは、第3の冷媒循環手段18cと配管等を介して接続されており、第3の冷媒循環手段18cから供給される冷媒を循環させることにより所望の温度に基板ホルダ6を冷却し、これによって基板Wを所望の温度に冷却するように構成されている。
【0033】
製造装置1により液晶装置の構成部材である基板W上に無機配向膜を形成するには、第1のガス供給手段21からアルゴンガスを導入しつつ、第1電極9a及び第2電極9bにDC電力(RF電力)を供給することで、ターゲット5a、5bに挟まれる空間にプラズマPzを発生させ、プラズマ雰囲気中のアルゴンイオン等をターゲット5a、5bに衝突させることで、ターゲット5a、5bから配向膜材料(シリコン)をスパッタ粒子5pとしてたたき出し、さらにプラズマPzに含まれるスパッタ粒子5pのうち、チャンバ3aの開口側へ飛行するスパッタ粒子5pのみを選択的に成膜室2側へ放出する。そして、基板Wの面上に斜め方向から飛来したスパッタ粒子5pと、成膜室2を流通する酸素ガスとを基板W上で反応させることで、シリコン酸化物からなる配向膜を基板W上に形成するようになっている。
【0034】
(液晶装置の製造方法)
次に、上記製造装置1を用いた液晶装置の製造方法について説明する。なお、本実施形態では基板W上に無機配向膜を形成する工程に特徴を有しており、それ以外の工程は従来公知のものと同様である。したがって、無機配向膜の形成工程について具体的に説明し、それ以外に工程については説明を省略する。
【0035】
まず、基板Wとして、液晶装置用基板としてスイッチング素子や電極等、所定の構成部材を形成したものを用意する。次いで、基板Wを成膜室2に併設されたロードロックチャンバー内に収容し、ロードロックチャンバー内を減圧して真空状態とする。また、これとは別に、排気制御装置を作動させて成膜室2内を所望の真空度に調整しておく。
【0036】
続いて、基板Wを成膜室2内に搬送し、基板ホルダ6にセットする。そして、配向膜形成の前処理として、基板ホルダ6のヒータ7によって基板Wを例えば250℃〜300℃程度で加熱し、基板Wの表面に付着した吸着水やガスなどの脱水・脱ガス処理を行う。次いで、ヒータ7による加熱を停止した後、スパッタリングによる基板温度の上昇を抑制するため、冷媒循環手段18cを作動させて冷却手段8cに冷媒を循環させることで基板Wを所定温度、例えば室温に保持する。
【0037】
次に、アルゴンガスを第1のガス供給手段21からスパッタ装置3内に所定流量で導入し、酸素ガスを第2のガス供給手段22から所定流量で成膜室2内に導入するとともに、排気制御装置20を作動させ、所定の操作圧力、例えば10−1Pa程度に調整する。酸素ガスプラズマでは酸素ラジカル、酸素の負イオンが発生するため、本実施形態の製造装置1では、プラズマ生成領域であるターゲット5a、5bの前面にはアルゴンガスのみを導入し、酸素ガスは別系統のガス供給路から基板W上へ流入させている。また、成膜中にも必要に応じてヒータ7、冷却手段8cを作動させることにより、基板Wを室温に保持することが好ましい。
【0038】
その後、このような成膜条件のもとで、移動手段6aにより基板Wを図1中のX方向に所定の速度で移動させつつ、スパッタ装置3によるスパッタリングを行う。すると、ターゲット5a、5bから配向膜材料となるスパッタ粒子(シリコン)5pが放出されて、チャンバ3aの開口から成膜室2内にスパッタ粒子5pが放出される。
このとき、防着板30はスパッタ粒子5pの進行方向を規制するとともに、チャンバ3aの内部及び装置接続部25の内面に付着することを防止する機能を奏する。
【0039】
これにより、スパッタ粒子5pは装置接続部25に臨む基板Wの成膜面に対してのみ選択的に入射し、基板W上で酸素ガスと反応してシリコン酸化物の被膜を形成する。このように基板Wに対して斜めに傾けて配置されたスパッタ装置3から放出され、さらに基板Wに対してスパッタ装置3と同様に斜めに傾けて配置された装置接続部25を通過したスパッタ粒子5pは、基板Wの成膜面に対して所定の角度、すなわち前記θ1で入射するようになる。その結果、基板W上で酸素ガスとスパッタ粒子5pとの反応を伴って堆積した無機配向膜は、前記の入射角θ1に対応した角度で傾斜する柱状構造を有した無機配向膜となる。
【0040】
このように、製造装置1により基板W状に形成される無機配向膜は所望の角度で傾斜した柱状構造を有する無機配向膜であり、この配向膜を備えてなる液晶装置は、かかる無機配向膜によって液晶のプレチルト角を良好に制御することがでるものとなる。
【0041】
またこのとき、スパッタ装置3に設けられた磁界発生手段16a、16bによりプラズマPzに含まれる電子やイオン状物質が捕捉又は反射されるため、これらの電子やイオン状物質が基板Wに到達するのを防止することができる。
【0042】
ところで、スパッタ装置3に設けられた防着板30における基板W側にはシリコン酸化物(処理生成物)が付着する。シリコン酸化物は絶縁性材料であるため、防着板30に付着したシリコン酸化物にはマイナスの電荷が蓄積する。本実施形態に係る防着板30は電源31に接続されており、プラスの電圧が印加されたものとなっている。したがって、シリコン酸化物に帯電しようとするマイナスの電荷は、プラスの電圧が印加された防着板30から外部に放出することができる。
【0043】
なお、電源31は少なくともプラスの電圧を防着板30に印加するものであれば良く、例えば防着板31に印加する電圧の極性をプラスとマイナスとで切り替え可能とするものであってもよい。この構成によれば、シリコン酸化物上に帯電するプラスの電荷のみならずマイナスの電荷も防着板30を介して外部に排出できるので、例えば防着板30に付着したパーティクルにプラスの電荷がチャージアップされることを防止できる。すなわち、防着板30に堆積される物質に帯電する極性によらず、異常放電の発生を良好に防止することができる。
【0044】
ところで、シリコン酸化物における絶縁耐性よりも弱い電圧が防着板に印加されたとしても、シリコン酸化物に帯電したマイナスの電荷は該シリコン酸化物における絶縁性を貫いて防着板まで流れ込むことができない。
【0045】
そこで、本実施形態では、処理生成物としてのシリコン酸化物(スパッタ生成物)における絶縁耐性を上回る強さの電圧を防着板30に印加するように電源31を制御している。これにより、防着板30に電圧を印加した際にシリコン酸化物に帯電した電荷がシリコン酸化物における絶縁性を貫くことで、防着板30を介して外部に確実に放出できる。
【0046】
よって、スパッタ成膜時に防着板30上に堆積したシリコン酸化物(スパッタ生成物)にマイナスの電荷がチャージアップされることが無く、異常放電が生じることで基板Wに形成されているスイッチング素子や電極等のデバイスにダメージを与えたり、パーティクルが異物として基板Wに付着するといった不具合を防止できる。
【0047】
以上の工程により、基板W上に無機配向膜を形成したならば、別途製造した他の基板とシール材を介して貼り合わせ、基板間に液晶を封入することで液晶装置を製造することができる。なお、本発明に係る液晶装置の製造方法において、無機配向膜の形成工程以外の製造工程については公知の製造方法を適用することができる。
【0048】
上記構成を備えた製造装置1によれば、対向ターゲット型のスパッタ装置3を基板Wに対して所定角度(θ1)傾けて配置しているので、チャンバ3aの開口から放出されるスパッタ粒子5pを所定角度で斜め方向から基板Wの成膜面に入射させることができる。そして、このようにして斜め方向から入射させたスパッタ粒子5pの堆積により、一方向に配向した柱状構造を具備した無機配向膜を基板W上に形成することができるようになっている。さらにスパッタ装置3においては、ターゲット間隔を狭めることでチャンバ3a内から放出されるスパッタ粒子5pの指向性を高めることができるので、基板Wに到達するスパッタ粒子5pの入射角は高度に制御されたものとなり、形成される無機配向膜における柱状構造の配向性も良好なものとなる。
【0049】
また、上記成膜動作に際して、スパッタ装置3のターゲット5a、5bを取り囲む矩形枠状の磁界発生手段16a、16bにより形成される磁界によって、プラズマPzに含まれる電子を捕捉ないし反射させることができ、プラズマPzをターゲット5a、5bが対向する領域内に良好に閉じ込めることができるので、前記電子が基板Wの成膜面に入射して基板W表面の濡れ性が上昇するのを防止することができる。これにより、基板Wに付着したスパッタ粒子5pの再配置により柱状構造の形成が阻害されるのを良好に防止することができる。従って本実施形態の製造装置1によれば、配向性の良好な無機配向膜を基板W上に容易に形成することができる。
【0050】
さらに製造装置1では、ターゲット5a、5bに細長い板状のものを用いており、スパッタ装置3からY軸方向に延びるライン状にスパッタ粒子5pを放出させることができる。そして、基板ホルダ6は前記スパッタ粒子のラインと直交する方向(X軸方向)に基板Wを搬送することができるようになっているので、前記スパッタ粒子のラインにより基板W上を走査するようにして面状に成膜を行うことができ、連続的に基板処理を行うことができ、極めて高い生産効率を実現することができる。
【0051】
また、基板ホルダ6に基板Wを冷却するための第3の冷却手段8cを設けているので、成膜時に第3の冷却手段8cによって基板Wを冷却し、基板Wを室温等の所定温度に保持することができ、スパッタによって基板Wに付着した配向膜材料分子の基板上での拡散(マイグレーション)を抑制することができる。これにより、基板W上における配向膜材料の局所的な成長が促進され、一軸方向に柱状に成長した配向膜を容易に得られるようになる。
【0052】
なお、本実施形態では、スパッタ粒子5pとしてのシリコンを、第2のスパッタガスである酸素ガスと反応させることでシリコン酸化物を基板W上に成膜する場合について説明しているが、ターゲット5a、5bとして例えばシリコン酸化物(SiOx)やアルミニウム酸化物(AlOy等)などを用い、ターゲット5a、5bに対してRF電力を入力してスパッタ動作を行うことで、これらシリコン酸化物やアルミニウム酸化物からなる無機配向膜を基板W上に形成することができる。またこの場合において、第2のスパッタガス(酸素ガス)を成膜室2内に流通させておくことで、形成される無機配向膜の酸化物組成からのずれを防止することができ、無機配向膜の絶縁性を高めることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、チャンバ3aの対向する二側壁を成す第1電極9a及び第2電極9bにのみターゲット5a、5bが支持されている構成としているが、対向ターゲット型のスパッタ装置3では、側壁部材9c、9d、19にもそれぞれターゲットを配設するようにしてもよい。このような構成において、各側壁部材9c、9d、19に電源を接続して電極として機能させ各ターゲットに電力を供給することで、これらのターゲットから放出されるスパッタ粒子を成膜に用いることで成膜速度を向上させることができる。
【0054】
また、プラズマ生成領域を取り囲むようにしてターゲット5a〜5eが配置されていると、成膜室2へ放出されるスパッタ粒子を除くスパッタ粒子はプラズマPzを取り囲むターゲット5a〜5eに入射して、他のスパッタ粒子の生成等に再利用されるので、ターゲットの利用効率を高めることができる。
上記構成においては、ターゲット5c、5d、5eを冷却するための冷却手段を各側壁部材9c、9d、19に隣接して設けることが好ましい。さらには、増設したターゲット5c、5d、5eに対応して電子拘束手段(磁界発生手段)の配置を変更し、プラズマPzとターゲット5a〜5eとの位置関係を最適化することが好ましい。
【0055】
また、上記実施形態では、対向配置されるターゲット5a,5b間に挟持されるように2枚の板状部材から構成される防着板30を設けていたが、防着板30の形状はこれに限定されることはなく、防着板30の機能をなすものであれば、例えば開口部30a側が開放された筒状、或いは箱型形状等を採用することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、本発明のプラズマ処理装置の一例としてチャンバ内で発生したプラズマを用いてスパッタを行うスパッタ装置について説明したが、本発明はチャンバ内で発生させたプラズマを用いるCVD装置についても適応可能である。
【0057】
(液晶装置)
以下、上記製造装置1を用いて製造することができる液晶装置の一例について図面を参照して説明する。図3は、本実施形態の液晶装置を構成するTFTアレイ基板80の平面構成図である。図4は、本実施形態の液晶装置の等価回路図である。図5は、TFTアレイ基板80の画像表示領域を拡大して示す平面構成図である。図6は、図5のA−A’線に沿う液晶装置の断面構成図である。
本実施形態の液晶装置は、図3に示すように、対向配置されたTFTアレイ基板80と、対向基板90との間に液晶層50を挟持した構成を備えたTFTアクティブマトリクス方式の透過型液晶装置である。
【0058】
図3に示すように、TFTアレイ基板80の中央には画像表示領域101が形成されている。画像表示領域101の周縁部にシール材89が配設されており、かかるシール材89により前記TFTアレイ基板80と対向基板90とを貼り合わせ、前記両基板80,90とシール材89とに囲まれる領域内に液晶層(不図示)が封止される。シール材89の外側には、後述する走査線に走査信号を供給する走査線駆動回路110と、後述するデータ線に画像信号を供給するデータ線駆動回路120とが実装されている。TFTアレイ基板80の端部には外部回路に接続する複数の接続端子79が設けられており、かかる接続端子79には前記駆動回路110,120から延びる配線が接続されている。シール材89の四隅には前記TFTアレイ基板80と対向基板90とを電気的に接続する基板間導通部70が設けられており、基板間導通部70も配線を介して接続端子79と電気的に接続されている。
【0059】
図4は、液晶装置の等価回路図である。液晶装置の画像表示領域には、複数のデータ線46aと、データ線46aと交差する方向に延びる複数の走査線43aとが形成されており、隣接する2本のデータ線46aと隣接する2本の走査線43aとに囲まれた矩形状の領域に対応して画素電極49が配置されており、画像表示領域全体では画素電極49が平面視マトリクス状に配列されている。各画素電極49には、画素電極49への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT30が接続されている。TFT30のソースにはデータ線46aが接続されている。各データ線46aには、前述したデータ線駆動回路から画像信号S1、S2、…、Snが供給されるようになっている。
【0060】
また、TFT30のゲートには走査線43aが接続されている。走査線43aには、前述した走査線駆動回路から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmが供給される。一方、TFT30のドレインには画素電極49が接続されている。そして、走査線43aから供給された走査信号G1、G2、…、GmによりTFT30を一定期間だけオンすることで、データ線46aから供給された画像信号S1、S2、…、Snが、画素電極49を介して各画素の液晶に所定のタイミングで書き込まれるようになっている。
【0061】
液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極49と後述する共通電極との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。なお、保持された画像信号S1、S2、…、Snがリークするのを防止するため、画素電極49と容量線43bとの間に蓄積容量17が液晶容量と並列に接続されている。
【0062】
図5は、TFTアレイ基板80の平面構成図である。本実施形態の液晶装置では、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide;ITO)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極49(破線49aによりその輪郭を示す)が、マトリクス状に配列形成されている。各画素電極49の縦横の境界に沿って、データ線46a、走査線43a及び容量線43bが設けられている。本実施形態では、各画素電極49の形成領域に対応する矩形状の領域が画素の平面領域に対応しており、マトリクス状に配列された画素毎に表示動作が行われるようになっている。
【0063】
TFT30は、ポリシリコン膜等からなる半導体層41aを備えている。半導体層41aのソース領域(後述)には、コンタクトホール45を介して、データ線46aが接続されている。また、半導体層41aのドレイン領域(後述)には、コンタクトホール48b(48a)を介して、画素電極49が接続されている。一方、半導体層41aにおける走査線43aとの対向部分には、チャネル領域41a’が形成されている。
【0064】
図6は、液晶装置の断面構造を示す図であり、図5のA−A’線に沿う断面構成図である。図6に示すように、本実施形態の液晶装置60は、TFTアレイ基板80と、これに対向配置された対向基板90と、これらの間に挟持された液晶層50とを備えて構成されている。TFTアレイ基板80は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体80A、及びその内側(液晶層側)に形成されたTFT30や画素電極49、さらにこれを覆う配向下地膜85及び無機配向膜86などを備えている。一方の対向基板90は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体90A、およびその内側(液晶層側)に形成された共通電極61、さらにこれを覆う配向下地膜95、無機配向膜92などを備えている。
【0065】
基板本体80Aの内面側には、後述する第1遮光膜51aおよび第1層間絶縁膜52が形成されている。第1層間絶縁膜52上に島状の半導体層41aが形成されている。半導体層41aにおける走査線43aとの対向部分にはチャネル領域41a’が形成されており、チャネル領域41a’の両側にソース領域およびドレイン領域が形成されている。TFT30はLDD(Lightly Doped Drain)構造を採用しており、ソース領域およびドレイン領域に、それぞれ不純物濃度が相対的に高い高濃度領域と、相対的に低い低濃度領域(LDD領域)とが形成されている。チャネル領域41a’側から順に形成された低濃度ソース領域41bと高濃度ソース領域41dとが前記ソース領域を構成し、チャネル領域41a’側から順に形成された低濃度ドレイン領域41cと高濃度ドレイン領域41eとが前記ドレイン領域を構成している。
【0066】
半導体層41aの表面にゲート絶縁膜42が形成されており、ゲート絶縁膜42上に走査線43aが形成されている。走査線43aのうちチャネル領域41a’との対向部分はTFT30のゲート電極を構成している。ゲート絶縁膜42及び走査線43aを覆って第2層間絶縁膜44が形成されている。第2層間絶縁膜44上にデータ線46a、及びドレイン電極46bが形成されており、データ線46aの一部は第2層間絶縁膜44に貫設されたコンタクトホール45内に埋設されて高濃度ソース領域41dと電気的に接続されている。一方、ドレイン電極46bは、第2層間絶縁膜44に貫設されたコンタクトホール48aを介して半導体層41aの高濃度ドレイン領域41eと電気的に接続されている。
【0067】
第2層間絶縁膜44、データ線46a、及びドレイン電極46bを覆って第3層間絶縁膜47が形成されている。第3層間絶縁膜47の表面に画素電極49が形成されており、画素電極49は第3層間絶縁膜47を貫通してドレイン電極46bに達する画素コンタクトホール48bを介してドレイン電極46bと電気的に接続されている。かかる構造により、画素電極49とTFT30とが電気的に接続されている。さらに、画素電極49を覆って、配向下地膜85が形成され、配向下地膜85上に無機配向膜86が形成されている。
無機配向膜86は、先に記載のようにシリコン酸化物によって好適に構成されるが、シリコン酸化物に限らず、アルミニウム酸化物、亜鉛酸化物、マグネシウム酸化物、インジウム錫酸化物、あるいはシリコン窒化物、チタン窒化物などにより形成してもよい。後述する無機配向膜92についても同様である。
【0068】
半導体層41aを延設して第1蓄積容量電極41fが形成されている。また、ゲート絶縁膜42を延設して誘電体膜が形成されており、かかる領域のゲート絶縁膜42を介して前記第1蓄積容量電極41fと対向する位置に第2蓄積容量電極を成す容量線43bが配置されている。これにより、前記第1蓄積容量電極41fと容量線43bとが平面的に重なる位置に前述の蓄積容量57が形成されている。
また、TFT30の形成領域に対応する基板本体80Aの表面に、第1遮光膜51aが形成されている。第1遮光膜51aは、TFTアレイ基板80の外側からの光が、半導体層41aのチャネル領域41a’、低濃度ソース領域41bおよび低濃度ドレイン領域41cに入射して光リークを生じるのを防止するものである。
【0069】
一方、対向基板90における基板本体90A上には、第2遮光膜63が形成されている。第2遮光膜63は、対向基板90側からの光が半導体層41aのチャネル領域41a’や低濃度ソース領域41b、低濃度ドレイン領域41c等に入射するのを防止するものであり、平面視において半導体層41aと重なる領域に設けられている。前記第2遮光膜63を覆う対向基板90のほぼ全面にITO等の透明導電材料からなる共通電極61が形成されている。そして、共通電極61を覆って配向下地膜95が形成され、かかる配向下地膜95上に無機配向膜92が形成されている。
【0070】
TFTアレイ基板80と対向基板90との間には、ネマチック液晶等からなる液晶層50が挟持されている。ネマチック液晶分子は、正の誘電率異方性を有するものであり、非選択電圧印加時には基板に沿って水平配向し、選択電圧印加時には電界方向に沿って垂直配向する。またネマチック液晶分子は、正の屈折率異方性を有するものであり、その複屈折と液晶層厚との積(リタデーション)Δndは、例えば約0.40μm(60℃)となっている。TFTアレイ基板80側の無機配向膜86による配向規制方向と、対向基板90側の無機配向膜92による配向規制方向とは、約90°ねじれた状態に設定されている。基板本体80A、90Aのそれぞれの外側(液晶層50と反対側)には、偏光板58、68が互いの透過軸を直交させた状態(クロスニコル)で配置されている。従って、本実施形態の液晶装置60は、TNモードで動作し、捻れ配向した液晶の旋光性を利用した白表示と、電圧印加により垂直配向させた液晶の透過性を利用した黒表示との間で階調表示を行うものとなっている。
なお、本液晶装置60をプロジェクタのライトバルブとして用いる場合には、偏光板58、68については、サファイヤガラスや水晶等の高熱伝導率材料からなる支持基板上に装着して、液晶装置60から離間して配置することが望ましい。
【0071】
以上説明した液晶装置60にあっては、無機配向膜86、92が上述の製造装置1により形成されるので、スパッタ成膜時に防着板30と基板との間で異常放電が発生することが防止される。よって、異常放電によりTFT30やこれに接続される配線、画素電極49、及び共通電極61が異常放電によって破壊されて点欠陥が生じたり、異常放電によりセルギャップよりも大きな粒子状物質(パーティクル)が基板80,90に付着することで液晶装置60における光学デバイスとしての性能が低下することが防止されたものとなる。また、所望形状の柱状構造を有する配向性に優れた無機配向膜86,92を備えることで、液晶分子のプレチルト角等の配向状態をより良好に制御することができ、これらの無機配向膜86、92によって高輝度、高コントラストの表示が可能であり、また耐熱性、耐光性に優れた信頼性の高い液晶装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施形態に係る液晶装置の製造装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すスパッタ装置の詳細構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る製造装置で製造された液晶装置の概略構成図である。
【図4】液晶装置の等価回路図である。
【図5】液晶装置の画素の詳細構成を示す図である。
【図6】図5のA−A´線矢視による断面構成図である。
【符号の説明】
【0073】
1…製造装置、2…成膜室、3…スパッタ装置、3a…チャンバ、5a,5b…ターゲット、9a,9b…電極、30…防着板、50…液晶層、60…液晶装置、80…TFTアレイ基板(一対の基板)、86,92…無機配向膜、90…対向基板(一対の基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に対向配置された電極間に高周波電力を印加してプラズマを発生させるプラズマ処理装置において、
前記チャンバの内壁面への処理生成物の付着を防止する防着板を備え、
該防着板には少なくともプラスの電圧が印加されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記処理生成物が絶縁性材料であり、該処理生成物における絶縁耐性を上回る強さの電圧を前記防着板に印加することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記防着板に印加する電圧の極性を切り替え可能とする電源を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
チャンバ内に対向配置された電極間に高周波電力を印加してプラズマを生成させ、該プラズマ発生領域を挟んで対向配置される一対のターゲットを有し、該ターゲットから飛散した粒子を付着させて基材上にスパッタ生成物を形成するスパッタ装置であって、
前記チャンバの内壁面への前記スパッタ生成物の付着を防止する防着板を備え、
該防着板には少なくともプラスの電圧が印加されることを特徴とするスパッタ装置。
【請求項5】
前記スパッタ生成物が絶縁性材料であり、該スパッタ生成物における絶縁耐性を上回る強さの電圧を前記防着板に印加することを特徴とする請求項4に記載のスパッタ装置。
【請求項6】
前記防着板に印加する電圧の極性を切り替え可能とする電源を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載のスパッタ装置。
【請求項7】
対向する一対の基板間に挟持された液晶層を備え、少なくとも一方の前記基板の内面側に無機配向膜が形成されてなる液晶装置の製造装置であって、
請求項4〜6のいずれか一項に記載のスパッタ装置を備え、
前記基板上に配向膜材料をスパッタすることで前記無機配向膜を形成することを特徴とする液晶装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−57590(P2009−57590A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224400(P2007−224400)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】