説明

プラズマ処理装置

【課題】処理容器内の高周波電極その他の電気的部材から給電ラインや信号線等の線路上に入ってくる高周波ノイズに対して並列共振周波数を任意にずらして調整できるようにし、異なる周波数の高周波ノイズをいずれも効率よく安定確実に遮断する。
【解決手段】フィルタ102(1)は、円筒形の外導体110の中にコイル104(1)を同軸に収容し、コイル104(1)と外導体110との間にリング部材122を同軸に設ける。リング部材122は、好ましくは外導体110の軸方向と直交する平面上で円環状に延びる板体として構成され、好ましくは銅、アルミニウム等の導体からなり、外導体110に電気的に接続され、コイル104(1)とは電気的に絶縁されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波を用いて被処理体にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置に係り、特に処理容器内の高周波電極その他の電気的部材から給電ラインや信号線等の線路上に入ってくる高周波ノイズを遮断するためのフィルタを備えるプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを用いる半導体デバイスあるいはFPD(Flat Panel Display)の製造のための微細加工においては、被処理基板(半導体ウエハ、ガラス基板等)上のプラズマ密度分布の制御と共に、基板の温度ないし温度分布の制御が非常に重要である。基板の温度制御が適正に行われないと、基板表面反応ひいてはプロセス特性の均一性が確保できなくなり、半導体デバイスあるいは表示デバイスの製造歩留まりが低下する。
【0003】
一般に、プラズマ処理装置、特に容量結合型のプラズマ処理装置のチャンバ内で被処理基板を載置する載置台またはサセプタは、プラズマ空間に高周波を印加する高周波電極の機能と、基板を静電吸着等で保持する保持部の機能と、基板を伝熱で所定温度に制御する温度制御部の機能とを有している。温度制御機能に関しては、プラズマやチャンバ壁からの輻射熱の不均一性による基板への入熱特性の分布や、基板支持構造による熱分布を適切に補正できることが望まれている。
【0004】
従来より、サセプタ上面の温度(ひいては基板の温度)を制御するために、サセプタまたはサセプタ支持台の内部に冷媒を流す冷媒通路を設け、チラー装置より温調した冷媒を該冷媒通路に循環供給する方式が多用されている(たとえば特許文献1参照)。しかしながら、このようなチラー方式は、冷媒の温度を急速に変化させるのが難しく、温度制御の応答性が低いため、温度切換または昇降温を高速に行えないという弱点がある。
【0005】
最近のプラズマプロセスたとえばプラズマエッチングの分野では、被処理基板上の多層膜を従来のマルチチャンバ方式に代えて単一チャンバ内のマルチステップで連続加工する方式が求められている。この単チャンバ内の連続プロセスを実現するうえで、載置台の高速昇降温を可能とする技術が必須になってきている。このような事情から、サセプタに通電により発熱する発熱体を組み込み、該発熱体の発生するジュール熱を制御してサセプタ温度ひいては基板温度を高速かつ精細に制御できるヒータ方式が改めて見直されている。
【0006】
ところで、プラズマ制御の面からサセプタ(下部電極)に高周波電源を接続する下部高周波印加方式と温度制御の面からサセプタに発熱体を設ける上記のようなヒータ方式とを一緒にした場合、該高周波電源よりサセプタに印加された高周波の一部がノイズとして発熱体およびヒータ給電ラインを通ってヒータ電源に入り込むと、ヒータ電源の動作ないし性能が害されるおそれがある。特に、高速制御の可能なヒータ電源は、SSR(Solid State Relay)等の半導体スイッチング素子を使用して高感度のスイッチング制御またはON/OFF制御を行うため、高周波のノイズが入り込むと容易に誤動作を起こしやすい。
【0007】
そこで、不所望な高周波ノイズを減衰させまたは阻止するためのフィルタをヒータ給電ラインに設けるのが通例となっている。この種のフィルタに求められる基本的な性能要件は、ヒータ電源からの大電流をサセプタの発熱体に効率よく送りながら、発熱体を介して給電ライン上に入ってくる高周波ノイズに対して十分高いインピーダンスを与えて高周波ノイズの通過つまりヒータ電源への侵入を阻止して、ヒータ電源を高周波ノイズから保護するとともに、チャンバ内のプラズマを安定化させることである。
【0008】
本発明者は、この種フィルタの初段に非常に大きなインダクタンスを有する空芯コイルを設け、この空芯コイルをサセプタの近く(通常は下)に設置される導電性のケーシング内に収容するプラズマ処理装置を特許文献2で提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−286733
【特許文献2】特開2008−198902
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2で開示されたプラズマ処理装置においては、サセプタ(下部電極)に単一の高周波、特に13.56MHz以下の高周波を印加する場合は、空芯コイルを用いる上記構成のフィルタが有効に機能して、ヒータ給電ライン上で30A以上の大きなヒータ電流を流しつつ、13.56MHz以下の高周波ノイズを効率よく安定確実に遮断することができる。
【0011】
しかしながら、イオンの引き込みに適した比較的低い周波数(通常13.56MHz以下)の高周波とプラズマ生成に適した比較的高い周波数(通常27MHz以上)の高周波とを重畳してサセプタに印加する、いわゆる下部2周波印加方式を採る場合に、上記構成のフィルタでは、周波数の高い方の高周波ノイズを安定確実に遮断することが困難であることがわかってきた。特に、低圧力の下で高密度のプラズマを得るために、プラズマ生成用高周波の周波数を高くするほど、典型的には60MHz以上にすると、そのような高い領域の周波数に対するフィルタのインピーダンス特性がばらついて不定になりやすい。そのようなフィルタ特性のばらつきは、プラズマプロセスの再現性・信頼性にも影響し、量産型プラズマ処理装置ではプロセス性能の機差になる。
【0012】
また、従来一般のフィルタは、複数の周波数のいずれに対しても高いインピーダンスを与えるために、並列共振周波数の異なる複数のLC並列共振回路を直列に接続する構成を採っている。しかしながら、このようなフィルタ構成は、各LC並列共振回路を構成するコイルの自己共振や隣接するLC並列共振回路間の相互干渉などによってインピーダンス特性が複雑に変動し、やはりプラズマプロセスの再現性・信頼性を下げる原因になっている。
【0013】
本発明者は、上記のような従来技術の課題を克服するために、幾多の実験と鋭意な研究を積み重ねた結果、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、処理容器内の高周波電極その他の電気的部材から給電ラインや信号線等の線路上に入ってくる高周波ノイズを、特に周波数が異なる複数の高周波ノイズをいずれも効率よく安定確実に遮断して、プラズマプロセスの再現性・信頼性を向上させるプラズマ処理装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、処理容器内の高周波電極その他の電気的部材から給電ラインや信号線等の線路上に入ってくる高周波ノイズを遮断するために、多重並列共振を含むインピーダンス特性の安定性・再現性が高く、さらには並列共振周波数を任意にずらして調整できるフィルタを備えたプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点におけるプラズマ処理装置は、プラズマ処理が行われる処理容器内に配設された高周波電極に高周波電源を電気的に接続し、前記高周波電極に設けられる発熱体とヒータ電源とを電気的に接続するための給電ライン上に前記発熱体を介して入ってくる所定周波数の高周波ノイズを減衰させ、または阻止するためのフィルタを設けているプラズマ処理装置であって、前記フィルタが、前記給電ラインの一部を構成する1個のコイルと、前記コイルを収容または包囲し、前記コイルと対になって特性インピーダンスが一定の分布定数線路を形成する筒形の外導体とを有し、前記分布定数線路が、前記コイルの巻線長に応じた規則的な複数の周波数で並列共振をなして、それら複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える。
【0017】
上記第1の観点のプラズマ処理装置では、給電ライン上のフィルタにおいて1個のコイルとこれを収容または包囲する筒形の外導体とによって分布定数線路が形成される。この分布定数線路は、該コイルの巻線長に応じた規則的な複数の周波数で並列共振をなし、安定性・再現性に優れたインピーダンス特性を示す。これにより、それら複数の並列共振周波数の1つを遮断対象である高周波ノイズの周波数に一致または近似させることで、該高周波ノイズの周波数に対して所望の十分高いインピーダンスを与えることができる。これによって、給電回路を確実に保護するとともに、プラズマプロセスの再現性・信頼性を向上させることができる。
【0018】
本発明の第2の観点におけるプラズマ処理装置は、プラズマ処理が行われる処理容器内に被処理体を保持する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを配設し、第1の高周波を出力する第1の高周波電源を前記第1の電極に電気的に接続するとともに、第2の高周波を出力する第2の高周波電源を前記第1の電極または前記第2の電極に電気的に接続し、前記第1の電極に設けられる発熱体とヒータ電源とを電気的に接続するための給電ライン上に前記発熱体を介して入ってくる所定周波数の高周波ノイズを減衰させ、または阻止するためのフィルタを設けているプラズマ処理装置であって、前記フィルタが、前記給電ラインの一部を構成する1個のコイルと、前記コイルを収容または包囲し、前記コイルと対になって特性インピーダンスが一定の分布定数線路を形成する筒形の外導体とを有し、前記分布定数線路が、前記コイルの巻線長に応じた規則的な複数の周波数で並列共振をなして、それら複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える。
【0019】
上記第2の観点のプラズマ処理装置では、給電ライン上のフィルタにおいて1個のコイルとこれを収容または包囲する筒形の外導体とによって分布定数線路が形成される。この分布定数線路は、該コイルの巻線長に応じた規則的な複数の周波数で並列共振をなし、安定性・再現性に優れたインピーダンス特性を示す。これにより、それら複数の並列共振周波数の1つを遮断対象である高周波ノイズの周波数(典型的には第1または第2の高周波の周波数)に一致または近似させることで、該高周波ノイズの周波数に対して所望の十分高いインピーダンスを与えることができる。これによって、給電回路を確実に保護するとともに、プラズマプロセスの再現性・信頼性を向上させることができる。
【0020】
本発明の好適な一態様においては、第2の高周波が主として処理容器内で処理ガスのプラズマを生成するのに寄与し、第1の高周波が主としてプラズマから第1の電極上に保持される被処理体へのイオンの引き込みに寄与する。
【0021】
別の好適な一態様においては、給電ラインが、発熱体の両端にそれぞれ接続される第1および第2の給電導線を有し、フィルタのコイルが、第1の給電導線の一部を構成する第1のコイルと、第2の給電導線の一部を構成する第2のコイルとを含む。そして、外導体の内側で、第1および第2のコイルをそれぞれ構成する第1および第2のコイル導線が、並進しながら略等しい巻線長で螺旋状に巻かれる。この構成によれば、2つのフィルタで1つの外導体を共用できるだけでなく、フィルタのRF電力損失およびそのばらつき(機差)を低減することができる。
【0022】
本発明の第3の観点におけるプラズマ処理装置は、プラズマ処理が行われる処理容器内に配設された高周波電極に高周波電源を電気的に接続し、前記高周波電極に設けられる発熱体とヒータ電源とを電気的に接続するための給電ライン上に前記発熱体を介して入ってくる所定周波数の高周波ノイズを減衰させ、または阻止するためのフィルタを設けているプラズマ処理装置であって、前記フィルタが、前記給電ラインの一部を構成する1個のコイルと、前記コイルを収容または包囲し、前記コイルと対になって複数の周波数で並列共振をなす分布定数線路を形成する筒形の外導体と、前記複数の並列共振周波数の少なくとも1つをずらして調節するための並列共振周波数調節部とを有し、前記複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える。
【0023】
本発明の第4の観点におけるプラズマ処理装置は、プラズマ処理が行われる処理容器内に被処理体を保持する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを配設し、第1の高周波を出力する第1の高周波電源を前記第1の電極に電気的に接続するとともに、第2の高周波を出力する第2の高周波電源を前記第1の電極または前記第2の電極に電気的に接続し、前記第1の電極に設けられる発熱体とヒータ電源とを電気的に接続するための給電ライン上に前記発熱体を介して入ってくる所定周波数の高周波ノイズを減衰させ、または阻止するためのフィルタを設けているプラズマ処理装置であって、前記フィルタが、前記給電ラインの一部を構成する1個のコイルと、前記コイルを包囲または収容し、前記コイルと対になって複数の周波数で並列共振をなす分布定数線路を形成する筒形の外導体と、前記複数の並列共振周波数の少なくとも1つをずらして調節するための並列共振周波数調節部とを有し、前記複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それにより前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える。
【0024】
上記第3または第4の観点のプラズセマ処理装置では、給電ライン上に設けられるフィルタにおいて1個のコイルとこれを収容または包囲する筒形の外導体とによって分布定数線路が形成される。この分布定数線路は、複数の周波数で並列共振をなすインピーダンス特性を有する。並列共振周波数調節部の働きにより、それら複数の並列共振周波数の1つを遮断対称である高周波ノイズの周波数に一致または近似させることができるので、該高周波ノイズの周波数に対して所望の十分高いインピーダンスを与えることができる。これによって、給電回路を確実に保護するとともに、プラズマプロセスの再現性・信頼性を向上させることができる。
【0025】
特性インピーダンス局所可変部材の好適な一態様は、外導体の内側にコイルと同軸にリング状の部材を設ける構成である。このリング部材は、好適には導体からなり、外導体またはコイルの一方に電気的に接続され、他方とは電気的に絶縁されている。もっとも、このリング部材を誘電体たとえば樹脂で構成することも可能である。
【0026】
リング部材の好適な構成は、外導体の軸方向と直交する平面上で円環状に延びる板体である。外導体の軸方向でコイルに対するリング部材の相対的な位置を調節するためのリング部材位置調節部を有する構成も好ましい。
【0027】
また、好ましい一態様として、処理容器側から見て、コイルがフィルタの初段に設けられてよく、コイルの出力側の端子がコンデンサを介して接地電位の導電性部材に電気的に接続されてよい。この場合、コンデンサは、コイルの出力端側で高周波波の周波数領域では実質的に短絡状態になり、分布定数回路を出力端短絡線路とする。外導体は、好ましくは電気的に接地される。
【0028】
本発明の第5の観点におけるプラズマ処理装置は、プラズマ処理が行われる処理容器内の高周波電極に高周波電源より給電棒を介して高周波を印加するプラズマ処理装置であって、前記給電棒を包囲し、前記給電棒と対になって分布定数線路を形成する筒形の外導体と、前記給電棒と前記外導体との間に配置され、前記分布定数線路のインピーダンス特性が前記高周波電極側から前記給電棒に入ってくる可能性のある所定周波数の高周波ノイズに対して十分高いインピーダンスを与えるように、各々の配置位置で前記分布定数線路の特性インピーダンスに局所的な変化を与える1個または複数個の特性インピーダンス局所可変部材とを有する。
【0029】
上記第5の観点のプラズマ処理装置においては、高周波給電ライン上で給電棒と外導体との間に分布定数線路が形成される。この分布定数線路は、複数の周波数で並列共振をなすインピーダンス特性を有する。特性インピーダンス局所可変部材を用いて、それら複数の並列共振周波数の1つを遮断対称である高周波ノイズの周波数に一致または近似させることにより、該高周波ノイズの周波数に対して所望の十分高いインピーダンスを与えることができる。これによって、高周波給電系統を確実に保護するとともに、プラズマプロセスの再現性・信頼性を向上させることができる。
【0030】
本発明の第6の観点におけるプラズマ処理装置は、プラズマ処理が行われる処理容器内の所定の電気的部材に線路を介して電気的に接続される電力系または信号系の外部回路を有し、前記電気的部材から前記外部回路に向かって前記線路に入ってくる所定周波数の高周波ノイズを前記線路上に設けたフィルタによって減衰させ、または阻止するプラズマ処理装置であって、前記フィルタが、前記線路の一区間を構成し、一定の軸に沿って一様な空間的プロファイルで延びる第1の導体と、前記第1の導体を収容または包囲し、前記第1の導体と対になって特性インピーダンスが一定の分布定数線路を形成する筒形の第2の導体とを有し、前記分布定数線路が、前記第1または第2の導体の長さに応じた規則的な複数の周波数で並列共振をなして、それら複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える。
【0031】
上記第6の観点のプラズマ処理装置では、プラズマ処理が行われる処理容器内の所定の電気的部材と電力系または信号系の外部回路とを結ぶ線路上に設けられるフィルタにおいて第1の導体とこれを収容または包囲する筒形の第2の導体とによって分布定数線路が形成される。この分布定数線路は、第1または第2の導体の長さに応じた規則的な複数の周波数で並列共振をなし、安定性・再現性に優れたインピーダンス特性を示す。これにより、それら複数の並列共振周波数の1つを遮断対象である高周波ノイズの周波数に一致または近似させることで、該高周波ノイズの周波数に対して所望の十分高いインピーダンスを与えることができる。これによって、外部回路等を確実に保護するとともに、プラズマプロセスの再現性・信頼性を向上させることができる。
【0032】
本発明の第7の観点におけるプラズマ処理装置は、プラズマ処理が行われる処理容器内の所定の電気的部材に線路を介して電気的に接続される電力系または信号系の外部回路を有し、前記電気的部材から前記外部回路に向かって前記線路に入ってくる所定周波数の高周波ノイズを前記線路上に設けたフィルタによって減衰させ、または阻止するプラズマ処理装置であって、前記フィルタが、前記線路の一区間を構成し、一定の軸に沿って一様な空間的プロファイルで延びる第1の導体と、前記第1の導体を収容または包囲し、前記第1の導体と対になって複数の周波数で並列共振をなす分布定数線路を形成する筒形の第2の導体と、前記複数の並列共振周波数の少なくとも1つをずらして調節するための並列共振周波数調節部とを有し、前記複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える。
【0033】
上記第7の観点のプラズマ処理装置では、プラズマ処理が行われる処理容器内の所定の電気的部材と電力系または信号系の外部回路とを結ぶ線路上に設けられるフィルタにおいて第1の導体とこれを収容または包囲する筒形の第2の導体とによって分布定数線路が形成される。この分布定数線路は、複数の周波数で並列共振をなすインピーダンス特性を有する。並列共振周波数調節部の働きにより、それら複数の並列共振周波数の1つを遮断対称である高周波ノイズの周波数に一致または近似させることができるので、該高周波ノイズの周波数に対して所望の十分高いインピーダンスを与えることができる。これによって、外部回路等を確実に保護するとともに、プラズマプロセスの再現性・信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のプラズマ処理装置によれば、上記のような構成および作用により、処理容器内の高周波電極その他の電気的部材から給電ラインや信号線等の線路上に入ってくる高周波ノイズを、特に周波数が異なる複数の高周波ノイズをいずれも効率よく安定確実に遮断して、プラズマプロセスの再現性・信頼性を向上させることが可能であり、さらには並列共振周波数を任意にずらして調整することにより高周波遮断機能を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態によるプラズマ処理装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】実施形態においてサセプタの発熱体に電力を供給するためのヒータ給電部の回路構成を示す図である。
【図3】実施形態における発熱体の構成例を示す図である。
【図4】第1の実施例によるフィルタユニットの構造を示す縦断面図である。
【図5】第1の実施例によるフィルタユニットの構造を示す横断面図である。
【図6】実施形態において共通のボビンに装着される2系統の空芯コイルのコイル巻線構造を示す斜視図である。
【図7】実施形態におけるコイル巻線構造を示す一部断面斜視図である。
【図8】分布定数線路上の高周波の周波数と波長との関係を示すプロット図である。
【図9】第1の実施例による2つのフィルタユニット試作品で得られたインピーダンス特性を示す図である。
【図10】比較例のフィルタユニットの構造を示す縦断面図である。
【図11】比較例による3つのフィルタユニット試作品で得られたインピーダンス特性を示す図である。
【図12】実施形態におけるフィルタユニットの配置構成を示す略平面図である。
【図13】実施形態におけるフィルタユニットの配置構成を示す略縦断面図である。
【図14】実施例のフィルタユニットにおける開口部回りの構成を示す略縦断面図である。
【図15】第2の実施例によるフィルタユニットの構造を示す縦断面図である。
【図16】第2の実施例において、リング部材の位置を軸方向で可変して各リング位置で得られた多重並列共振の各周波数をプロットした図である。
【図17】第3の実施例によるフィルタユニットの構造を示す縦断面図である。
【図18】第3の実施例の作用効果を実証するための比較的低い周波数領域におけるインピーダンス特性を示す図である。
【図19】第3の実施例の作用効果を実証するための比較的高い周波数領域におけるインピーダンス特性を示す図である。
【図20】更に別の実施例によるフィルタユニットの構造を示す縦断面図である。
【図21】更に別の実施例によるフィルタユニットの構造を示す縦断面図である。
【図22】更に別の実施例によるフィルタユニットの構造を示す縦断面図である。
【図23A】更に別の実施例によるフィルタユニットの構造を示す横断面図である。
【図23B】更に別の実施例によるフィルタユニットの構造を示す横断面図である。
【図23C】更に別の実施例によるフィルタユニットの構造を示す横断面図である。
【図24】本発明を高周波給電ラインに適用した一実施例を示す図である。
【図25】更に別の実施形態におけるフィルタユニットの配置構成を示す略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0037】
図1に、本発明の一実施形態におけるプラズマ処理装置の構成を示す。このプラズマ処理装置は、下部2周波印加方式の容量結合型プラズマエッチング装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は保安接地されている。
【0038】
チャンバ10内には、被処理体としてたとえば半導体ウエハWを載置する円板形状のサセプタ12が下部電極として水平に配置されている。このサセプタ12は、たとえばアルミニウムからなり、チャンバ10の底から垂直上方に延びるたとえばセラミック製の絶縁性筒状支持部14により非接地で支持されている。この絶縁性筒状支持部14の外周に沿ってチャンバ10の底から垂直上方に延びる導電性の筒状支持部16とチャンバ10の内壁との間に環状の排気路18が形成され、この排気路18の底に排気口20が設けられている。この排気口20には排気管22を介して排気装置24が接続されている。排気装置24は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内の処理空間を所望の真空度まで減圧することができる。チャンバ10の側壁には、半導体ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ26が取り付けられている。
【0039】
サセプタ12には、第1および第2の高周波電源28,30がマッチングユニット32および給電棒34を介して電気的に接続されている。ここで、第1の高周波電源28は、主としてプラズマの生成に寄与する所定周波数(通常27MHz以上、好ましくは60MHz以上)の第1高周波HFを出力する。一方、第2の高周波電源30は、主としてサセプタ12上の半導体ウエハWに対するイオンの引き込みに寄与する所定周波数(通常13.56MHz以下)の第2高周波LFを出力する。マッチングユニット32には、第1および第2の高周波電源28,30とプラズマ負荷との間でインピーダンスの整合をとるための第1および第2の整合器(図示せず)が収容されている。
【0040】
給電棒34は、所定の外径を有する円筒形または円柱形の導体からなり、その上端がサセプタ12の下面中心部に接続され、その下端がマッチングユニット32内の上記第1および第2整合器の高周波出力端子に接続されている。また、チャンバ10の底面とマッチングユニット32との間には、給電棒34の周りを囲む円筒形の導体カバー35が設けられている。より詳細には、チャンバ10の底面(下面)に給電棒34の外径よりも一回り大きな所定の口径を有する円形の開口部が形成され、導体カバー35の上端部がこのチャンバ開口部に接続されるとともに、導体カバー35の下端部が上記整合器の接地(帰線)端子に接続されている。
【0041】
サセプタ12は半導体ウエハWよりも一回り大きな直径または口径を有している。サセプタ12の上面は、ウエハWと略同形状(円形)かつ略同サイズの中心領域つまりウエハ載置部と、このウエハ載置部の外側に延在する環状の周辺部とに区画されている。ウエハ載置部の上に、処理対象の半導体ウエハWが載置される。環状周辺部の上には、半導体ウエハWの口径よりも大きな内径を有するリング状の板材いわゆるフォーカスリング36が取り付けられる。このフォーカスリング36は、半導体ウエハWの被エッチング材に応じて、たとえばSi,SiC,C,SiO2の中のいずれかの材質で構成されている。
【0042】
サセプタ12上面のウエハ載置部には、ウエハ吸着用の静電チャック38および発熱体40が設けられている。静電チャック38は、サセプタ12の上面に一体形成または一体固着された膜状または板状の誘電体42の中にDC電極44を封入しており、DC電極44にはチャンバ10の外に配置される外付けの直流電源45がスイッチ46、高抵抗値の抵抗48およびDC高圧線50を介して電気的に接続されている。直流電源45からの高圧の直流電圧がDC電極44に印加されることにより、クーロン力で半導体ウエハWを静電チャック38上に吸着保持できるようになっている。なお、DC高圧線50は、被覆線であり、円筒体の下部給電棒34の中を通り、サセプタ12を下から貫通して静電チャック38のDC電極44に接続されている。
【0043】
発熱体40は、静電チャック38のDC電極44と一緒に誘電体42の中に封入された例えばスパイラル状の抵抗発熱線からなり、この実施形態では図3に示すようにサセプタ12の半径方向において内側の発熱線40(IN)と外側の発熱線40(OUT)とに2分割されている。このうち、内側発熱線40(IN)は、絶縁被覆された給電導体52(IN)、フィルタユニット54(IN)および電気ケーブル56(IN)を介して、チャンバ10の外に配置される専用のヒータ電源58(IN)に電気的に接続されている。外側発熱線40(OUT)は、絶縁被覆された給電導体52(OUT)、フィルタユニット54(OUT)および電気ケーブル56(OUT)を介して、やはりチャンバ10の外に配置される専用のヒータ電源58(OUT)に電気的に接続されている。この中で、フィルタユニット54(IN),54(OUT)はこの実施形態における主要な特徴部分であり、その内部の構成および作用については後に詳細に説明する。
【0044】
サセプタ12の内部には、たとえば円周方向に延びる環状の冷媒室または冷媒通路60が設けられている。この冷媒室60には、チラーユニット(図示せず)より冷媒供給管を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。冷媒の温度によってサセプタ12の温度を下げる方向に制御できる。そして、サセプタ12に半導体ウエハWを熱的に結合させるために、伝熱ガス供給部(図示せず)からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給管およびサセプタ12内部のガス通路62を介して静電チャック38と半導体ウエハWとの接触界面に供給されるようになっている。
【0045】
チャンバ10の天井には、サセプタ12と平行に向かい合って上部電極を兼ねるシャワーヘッド64が設けられている。このシャワーヘッド64は、サセプタ12と向かい合う電極板66と、この電極板66をその背後(上)から着脱可能に支持する電極支持体68とを有し、電極支持体68の内部にガス室70を設け、このガス室70からサセプタ12側に貫通する多数のガス吐出孔72を電極支持体68および電極板66に形成している。電極板66とサセプタ12との間の空間Sがプラズマ生成空間ないし処理空間となる。ガス室70の上部に設けられるガス導入口70aには、処理ガス供給部74からのガス供給管76が接続されている。電極板66はたとえばSi、SiCあるいはCからなり、電極支持体68はたとえばアルマイト処理されたアルミニウムからなる。
【0046】
このプラズマエッチング装置内の各部たとえば排気装置24、高周波電源28,30、直流電源45のスイッチ46、ヒータ電源58(IN),58(OUT)、チラーユニット(図示せず)、伝熱ガス供給部(図示せず)および処理ガス供給部74等の個々の動作および装置全体の動作(シーケンス)は、たとえばマイクロコンピュータを含む装置制御部(図示せず)によって制御される。
【0047】
このプラズマエッチング装置において、エッチングを行なうには、先ずゲートバルブ26を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック38の上に載置する。そして、処理ガス供給部74よりエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量でチャンバ10内に導入し、排気装置24によりチャンバ10内の圧力を設定値にする。さらに、第1および第2の高周波電源28、30をオンにして第1高周波HFおよび第2高周波LFをそれぞれ所定のパワーで出力させ、これらの高周波HF,LFをマッチングユニット32および給電棒34を介してサセプタ(下部電極)12に印加する。また、伝熱ガス供給部より静電チャック38と半導体ウエハWとの間の接触界面に伝熱ガス(Heガス)を供給するとともに、静電チャック用のスイッチ46をオンにして、静電吸着力により伝熱ガスを上記接触界面に閉じ込める。一方で、ヒータ電源58(IN),58(OUT)をオンにして、内側発熱体40(IN)および外側発熱体40(OUT)を各々独立したジュール熱で発熱させ、サセプタ12上面の温度ないし温度分布を設定値に制御する。シャワーヘッド64より吐出されたエッチングガスは両電極12,64間で高周波の放電によってプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによって半導体ウエハW表面の被加工膜が所望のパターンにエッチングされる。
【0048】
この容量結合型プラズマエッチング装置は、サセプタ12にプラズマ生成に適した比較的高い周波数(好ましくは60MHz以上)の第1高周波HFを印加することにより、プラズマを好ましい解離状態で高密度化し、より低圧の条件下でも高密度プラズマを形成することができる。それと同時に、サセプタ12にイオン引き込みに適した比較的低い周波数(13.56MHz以下)の第2高周波LFを印加することにより、サセプタ12上の半導体ウエハWに対して選択性の高い異方性のエッチングを施すことができる。
【0049】
また、この容量結合型プラズマエッチング装置においては、サセプタ12にチラーの冷却とヒータの加熱を同時に与え、しかもヒータの加熱を半径方向の中心部とエッジ部とで独立に制御するので、高速の温度切換または昇降温が可能であるとともに、温度分布のプロファイルを任意または多様に制御することも可能である。
【0050】
次に、図2〜図22につき、このプラズマエッチング装置における主要な特徴部分であるフィルタユニット54(IN),54(OUT)内の構成および作用を説明する。
【0051】
図2に、サセプタ12に設けられる発熱体40に電力を供給するためのヒータ給電部の回路構成を示す。この実施形態では、発熱体40の内側発熱線40(IN)および外側発熱線40(OUT)のそれぞれに対して実質的に同一の回路構成を有する個別のヒータ給電部を接続し、内側発熱線40(IN)および外側発熱線40(OUT)の発熱量または発熱温度を独立に制御するようにしている。以下の説明では、内側発熱線40(IN)に対するヒータ給電部の構成および作用について述べる。外側発熱線40(OUT)に対するヒータ給電部の構成および作用も全く同じである。
【0052】
ヒータ電源58(IN)は、たとえばSSRを用いて商用周波数のスイッチング(ON/OFF)動作を行う交流出力型の電源であり、内側発熱体40(IN)と閉ループの回路で接続されている。より詳しくは、ヒータ電源58(IN)の一対の出力端子のうち、第1の出力端子は第1の給電ライン(電源線)100(1)を介して内側発熱線40(IN)の第1の端子h1に電気的に接続され、第2の出力端子は第2の給電ライン(電源線)100(2)を介して内側発熱線40(IN)の第2の端子h2に電気的に接続されている。
【0053】
フィルタユニット54(IN)は、第1および第2の給電ライン100(1),100(2)の途中にそれぞれ設けられる第1および第2のフィルタ102(1),102(2)を有している。両フィルタ102(1),102(2)は、回路構成が実質的に同じである。
【0054】
より詳しくは、両フィルタ102(1),102(2)は、それぞれコイル104(1),104(2)とコンデンサ106(1),106(2)との直列回路で構成されている。コイル104(1),104(2)の一方の端子またはフィルタ端子T(1),T(2)は一対の給電導体52(IN)を介して内側発熱線40(IN)の両端子h1,h2にそれぞれ接続されており、コイル104(1),104(2)の他方の端子と接地電位の導電性部材(たとえばチャンバ10)との間にコンデンサ106(1),106(2)がそれぞれ接続されている。そして、コイル104(1),104(2)とコンデンサ106(1),106(2)との間の接続点n(1),n(2)は、電気ケーブル(ペアケーブル)56(IN)を介してヒータ電源58(IN)の第1および第2の出力端子にそれぞれ接続されている。
【0055】
かかる構成のヒータ給電部において、ヒータ電源58(IN)より出力される電流は、正極性のサイクルでは、第1の給電ライン100(1)つまり電気ケーブル56(IN)、コイル104(1)および給電導体52(IN)を通って一方の端子h1から内側発熱線40(IN)に入り、内側発熱線40(IN)の各部で通電によるジュール熱を発生させ、他方の端子h2から出た後は、第2の給電ライン100(2)つまり給電導体52(IN)、コイル104(2)および電気ケーブル56(IN)を通って帰還する。負極性のサイクルでは、同じ回路を上記と逆方向に電流が流れる。このヒータ交流出力の電流は商用周波数であるため、コイル104(1),104(2)のインピーダンスまたはその電圧降下は無視できるほど小さく、またコンデンサ106(1),106(2)を通ってアースへ抜ける漏れ電流も無視できるほど少ない。

[フィルタの実施例1]
【0056】
図4〜図7に、第1の実施例によるフィルタユニット54(IN)の物理的な構造を示す。フィルタユニット54(IN)は、図4および図5に示すように、たとえばアルミニウムからなる円筒形の外導体110の中に第1フィルタ102(1)のコイル104(1)と第2フィルタ102(2)のコイル104(2)とを同軸に収容し、フィルタ端子T(1),T(2)の反対側でたとえばアルミニウムからなるコンデンサボックス112の中に第1フィルタ102(1)のコンデンサ106(1)と第2フィルタ102(2)のコンデンサ106(2)(図2)とを一緒に収容している。外導体110は接地電位の導電性部材たとえばチャンバ10にネジ止めで接続されている。
【0057】
各々のコイル104(1),104(2)は、空芯コイルからなり、ヒータ電源52(IN)から内側発熱線40(IN)に十分大きな(たとえば30A程度の)電流を流す給電線の機能に加えて、発熱(パワーロス)を防ぐ観点からフェライト等の磁芯を持たずに空芯で非常に大きなインダクタンスを得るために、さらには大きな線路長を得るために、太いコイル線とこれまでの常識に反するような大きさのコイルサイズ(たとえば直径が22〜45mm、長さ130〜250mm)を有している。
【0058】
この実施例では、円筒形の外導体110の中でコイル104(1),104(2)同士が、コンデンサボックス112の上に垂直に立てられた絶縁体たとえば樹脂からなる円筒または円柱状のボビン114に同心状に装着されている。
【0059】
ここで、両コイル104(1),104(2)相互間の巻線構造は特徴的である。すなわち、両コイル104(1),104(2)をそれぞれ構成するコイル導線が、共通のボビン114の外周面に沿って図6に示すようにボビン軸方向に重なり合って並進しながら等しい巻線長で螺旋状に巻かれている。両コイル104(1),104(2)のそれぞれのコイル導線は、図7に示すように、好ましくは同一の断面積を有する薄板または平角の銅線からなり、両者間の短絡を防ぐために、片方の空芯コイル104(2)のコイル導線を絶縁被覆たとえばテフロン(登録商標)製のチューブ116で覆っている。
【0060】
なお、図4に示すように、両コイル104(1),104(2)の下端(出力端)は、接続導体118(1),118(2)を介して、コンデンサボックス112内のコンデンサ106(1),106(2)(図2)にそれぞれ接続されている。
【0061】
このように、共通のボビンに装着される2系統のコイル同士の間では、コイル径および巻線長が等しい。すなわち、共通のボビン114に装着される第1フィルタ102(1)のコイル104(1)と第2フィルタ102(2)のコイル104(2)とは、同一材質および同一サイズ(太さ、長さ)の導線からなり、どちらもボビン114の外径で規定されるコイル径を有している。そして、両コイル104(1),104(2)は、それぞれのコイル導線がボビン軸方向で交互に重なり合っている。
【0062】
一方で、第1フィルタ102(1)のコイル104(1)と第2フィルタ102(2)のコイル104(2)は、電気的にはそれぞれ独立して(並列に)円筒形の外導体110との間に分布定数線路を形成する。
【0063】
なお、この実施例のフィルタユニット54(IN)において、ボビン114は必須の部材ではない。すなわち、両コイル104(1),104(2)の電気的な機能または電磁的作用に絶縁体のボビン114は何の影響も与えない。したがって、両コイル104(1),104(2)が接着剤あるいはボビン以外の支持部材によって一体的に安定に保持できるのであれば、ボビン114を省くことができる。
【0064】
以下に、本発明における第1および第2フィルタ102(1),102(2)のコイル104(1),104(2)と外導体110との間に分布定数線路が形成される仕組みについて説明する。
【0065】
一般的に、伝送線路の特性インピーダンスZoは、無損失の場合には単位長さあたりの静電容量C、インダクタンスLを用いて、Zo=√(LC)で与えられる。また、波長λは、次の式(1)で与えられる。
λ=2π/(ω√(LC) ・・・・(1)
【0066】
一般的な分布定数線路(特に同軸線路)では線路の中心が棒状の円筒導体であるのに対して、本発明では円筒状のコイルを中心導体にしている点が異なる。単位長さあたりのインダクタンスLは主にこの円筒状コイルに起因するインダクタンスが支配的になると考えられる。一方、単位長さあたりの静電容量は、コイル表面と外導体がなすコンデンサの静電容量Cで規定される。したがって、本発明においても、単位長さあたりのインダクタンスL、静電容量Cとしたときに、特性インピーダンスZo=√(LC)で与えられる分布定数線路が形成されていると考えることができる。
【0067】
このような分布定数線路を有するフィルタユニットを端子T側からみると、反対側が大きな容量(たとえば5000pF)を有するコンデンサで疑似的に短絡されているため、一定の周波数間隔で大きなインピーダンスを繰り返すような周波数−インピーダンス特性が得られる。このようなインピーダンス特性は、波長と分布線路長が同等のときに得られる。
【0068】
本発明の形態では、コイルの巻き線長ではなく、コイルの全長s(図4)が分布線路長となる。そして、中心導体にコイルを用いたことで、棒状の円筒導体の場合に比べてLをはるかに大きくしてλを小さくすることができるため、短い線路長(コイル全長s)でありながら波長と同等以上の実効長を実現することが可能であり、比較的短い周波数間隔で大きなインピーダンスをもつことを繰り返すようなインピーダンス特性を得ることができる。
【0069】
ここで、コイル104(1),104(2)と外導体110との間に形成される分布定数線路上では特性インピーダンス(特に単位長さ当たりのインダクタンスおよびキャパシタンス)が一定であるのが望ましい。この点、この実施例では、円筒形の外導体110の中に円筒形のコイル104(1),104(2)が同軸に配置されるので、この特性インピーダンス一定の要件が厳密に満たされている。
【0070】
もっとも、コイル104(1),104(2)と外導体110との間のギャップ(距離間隔)に多少の凹凸があっても、許容範囲(一般に遮断すべき高周波の波長の 1/4以下)内であれば、特性インピーダンス一定の要件は実質的に満たされる。
【0071】
たとえば、この実施例のフィルタユニット54(IN)の標準的なケースとして、単位長さ当たりのインダクタンスおよびキャパシタンスをそれぞれ40μH、200pFである場合、分布定数線路上の高周波の周波数と波長は上記の式(1)より図8に示すような関係(特性)になる。この特性によれば、たとえば高周波の周波数が80MHzの場合、その波長は約150mmである。したがって、コイル104(1),104(2)と外導体110との間のギャップ(距離間隔)には、軸方向または線路方向に沿って37.5mmまでの凹凸が許容される。
【0072】
かかる構成によれば、第1フィルタ102(1)において、多重並列共振をなし、かつインピーダンス特性の安定性・再現性に優れたフィルタ特性を容易に得ることができる。
【0073】
この点に関して、本発明者は、上記のような本実施例のフィルタユニット54(IN)(図4〜図7)を複数個試作した。そして、本実施形態のプラズマエッチング装置(図1)に2つの実施例試作品54(IN)A,54(IN)Bをそれぞれ個別に組み込んで、ネットワークアナライザを用いて0〜100MHzの範囲内で周波数を掃引して、フィルタ端子T(1)側から見た第1フィルタ102(1)のインピーダンスを測定した。
【0074】
その実験結果として、フィルタユニット54(IN)の2つの実施例試作品54(IN)A,54(IN)Bにつき、図9に示すようなインピーダンス特性ZA,ZBがそれぞれ得られた。図示のように、一方の実施例試作品54(IN)Aのインピーダンス特性ZAと他方の実施例試作品54(IN)Bのインピーダンス特性ZBとはどちらか見分けがつかないほど略完全に重なり合っている。また、多重並列共振の特性が規則的で安定しており、両実施例試作品54(IN)A,54(IN)Bのどちらも並列共振周波数は約11.31MHz、約40.68MHz、約70.44MHz、約93.9MHzで略完全に揃っている。このように、インピーダンス特性の安定性・再現性が非常に優れていることが確認された。
【0075】
一方で、本発明者は、比較例として、図10に示す構成のフィルタユニット54(IN)'を複数個試作した。このフィルタユニット54(IN)'は、導体板からなるケーシング110'の中に複数個たとえば2個の空芯コイル単体[104A(1),104B(1)]、[104A(2)、104B(2)]を並べて配置する。
【0076】
ここで、一方のボビン114Aにはコイル104A(1),104A(2)が並進しながら等しい巻線長で螺旋状に巻かれており、他方のボビン114Bにはコイル104B(1),104B(2)が並進しながら等しい巻線長で螺旋状に巻かれている。そして、ボビン114A側のコイル104A(1)とボビン114B側のコイル104B(1)は、第1の給電ライン100(1)の途中に設けられ、コネクタ導体105(1)'を介して互いに電気的に接続されている。また、ボビン114B側のコイル104A(2)とボビン114B側のコイル104B(2)は、第2の給電ライン100(2)の途中に設けられ、コネクタ導体105(2)'を介して互いに電気的に接続されている。
【0077】
そして、図1のプラズマエッチング装置に図10に示す構成のフィルタユニットの3つの比較例試作品54(IN)'C,54(IN)'D,54(IN)'Eをそれぞれ個別に組み込んで、それぞれの第1フィルタ102(1)'について上記と同様にネットワークアナライザを用いて0〜100MHzの範囲内で周波数を掃引してフィルタ端子T(1)側から見た各周波数のインピーダンスを測定した。
【0078】
その実験結果として、3つの比較例試作品54(IN)'C,54(IN)'D,54(IN)'Eにつき、図11に示すようなインピーダンス特性ZC,ZD,ZEがそれぞれ得られた。図示のように、三者のインピーダンス特性ZC,ZD,ZEは、13.56MHz以下の低周波数領域では大体揃うが、それ以上高い周波数領域では不揃いになり、しかも並列共振と紛らわしい角(つの)状の異常増大または異常減少が不定に現れ、安定性・再現性はよくない。
【0079】
上記比較例のフィルタユニット54(IN)'においては、たとえば第1の給電ライン100(1)上では、ボビン114A側のコイル104A(1)と外導体のケーシング110'との間、およびボビン114B側のコイル104B(1)と外導体のケーシング110'との間にそれぞれ分布定数線路が形成される。しかし、両コイル104A(1),104B(1)は並列に配置され、それらのコイルを繋ぐコネクタ導体105(1)'の箇所で分布定数線路の空間的プロファイルが著しく変化する。
【0080】
第2の給電ライン100(2)上でも同様である。すなわち、ボビン114A側のコイル104A(2)と外導体のケーシング110'との間、およびボビン114B側のコイル104B(2)と外導体のケーシング110'との間にそれぞれ分布定数線路が形成される。しかし、両コイル104A(2),104B(2)は並列に配置され、それらのコイルを繋ぐコネクタ導体105(2)'の箇所で分布定数線路の空間的プロファイルが著しく変化する。
【0081】
このように上記比較例のフィルタユニット54(IN)'においては、同一構成および同一仕様でも個々のフィルタユニット54(IN)'C,54(IN)'D,54(IN)'Eの間で並列共振周波数に安定性・規則性がなく、ばらつき(機差)が生じやすい。このため、インピーダンス特性において並列共振に基づき突出して高くなる角状部分の高インピーダンスを安定かつ正確に利用することができない。
【0082】
このように、この実施例によれば、サセプタ(下部電極)12に組み込まれている発熱線40(IN)にヒータ電源58(IN)からの大電流を供給するための給電ライン100(1)上に設けられるフィルタ102(1)において、規則的な複数の周波数で多重並列共振をなし、かつインピーダンス特性の安定性・再現性に優れたフィルタ特性を容易に得ることができる。
【0083】
したがって、高周波電源28,30からの高周波HF,LFの一部が高周波ノイズとしてサセプタ12ないし発熱線40(IN)を介して第1の給電ライン100(1)上に入ってきても、1個のコイル104(1)からなる第1フィルタ102(1)が上記のような規則的な多重並列共振特性に基づいて両周波数の高周波ノイズのいずれに対しても十分高いインピーダンスを与えることができる。たとえば、第2高周波LFの周波数を13.56MHzに選定し、第1高周波HFの周波数を80MHzに選定した場合、図9のインピーダンス特性によれば、第2高周波LF(13.56MHz)の高周波ノイズに対しては1000Ω以上の一定の高インピーダンスを与え、第1高周波HF(80MHz)の高周波ノイズに対しては100Ω以上の一定の高インピーダンスを与えることが可能であり、機差のない安定した高周波ノイズ遮断特性を奏することができる。
【0084】
また、別な見方をすれば、機差のない安定した高周波ノイズ遮断特性を得るために、規則的な多重並列共振特性を使えるようになり、空芯コイルのインダクタンス(つまりコイル長)を従来のものに比して大幅に小さくすることができる。これによって、従来装置ではフィルタユニット内に収められる空芯コイルが複数であったのに対して、この実施形態のプラズマ処理装置ではフィルタユニット内に収める空芯コイルを1個で済ますことができる。そして、空芯コイルが1個であっても、電気的に直列接続される複数の空芯コイルよりも機差の少ない安定した高周波ノイズ遮断特性を得ることができる。
【0085】
このように、この実施例のフィルタ102(1)によれば、ヒータ電源58(IN)への高周波ノイズの侵入を確実に防止できるとともに、チャンバ10内で高周波放電により生成されるプラズマを安定化し、プラズマプロセスの再現性・信頼性を向上させることができる。また、第2の給電ライン100(2)上に設けられる第2のフィルタ102(2)も、上述した第1のフィルタ102(1)と同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
【0086】
なお、フィルタ102(1)において、コイル104(1)の出力端側に接続されるコンデンサ106(1)は、高周波の周波数領域では実質的に短絡状態になり、分布定数回路120(1)を出力端短絡線路とする。また、フィルタ102(1)のインピーダンス特性、特に多重並列共振の共振周波数は、コイル104(1)の巻線長(線路長)を変えることによって任意に調整することができる。すなわち、線路長に依存して多重並列共振の周波数が変化する出力端短絡線路の特性がフィルタ102(1)の分布定数回路120(1)に当てはまる。したがって、コイル104(1)の巻線長を上記実施例試作品のものよりも長くすることで、各並列共振周波数を低くする方向に可変調整することができる。また、反対にコイル104(1)の巻線長を上記実験の試作品よりも短くすることで、各並列共振周波数を高くする方向に可変調整することができる。
【0087】
また、上記のように、この実施例のフィルタユニット54(IN)は、円筒形のケーシングまたは外導体110の中に所要の全て(第1および第2フィルタ102(1),102(2)のコイル104(1),104(2))を収めている。他方のフィルタユニット54(OUT)も同様である。このことにより、この実施形態のフラズマ処理装置においては、図12に示すように、サセプタ12内の内側発熱線40(IN)および外側発熱線40(OUT)に対して両フィルタユニット54(IN),54(OUT)を方位角方向で均一な距離間隔(180°間隔)を空けて配置することが可能であり、装置内の電磁気的なプロファイル(たとえばチャンバ10内のプラズマ密度分布等)に対してフィルタユニット54(IN),54(OUT)が与える影響の偏りを少なくすることができる。
【0088】
なお、別の実施例として、図25に示すように、発熱体40を半径方向で4系統40A,40B,40C,40Dに分割する場合は、それぞれ対応するフィルタユニット54A,54B,54C,54Dを方位角方向で均一な距離間隔(90°間隔)を空けて配置することが可能であり、上記と同様に偏り発生防止効果が得られる。
【0089】
さらには、図13に示すように、両フィルタユニット54(IN),54(OUT)の占有スペースが小さいので、サセプタ12の背後に設けられる他の用力系または可動系のレイアウト設計が非常に楽になるという利点もある。
【0090】
なお、図4に示すように、フィルタ端子T(1),T(2)を通すために円筒形外導体110の一端面に形成される開口110aは、コイル104(1),104(2)の外径J104と同一またはそれよりも大きい口径(内径)J110を有することが入口つまり開口110a付近の静電容量を小さくするうえで望ましい。
【0091】
開口110aの口径J110がコイル104(1),104(2)の外径J104よりも小さい場合は、入口の静電容量を低減するために、図14に示すように軸方向におけるコイル104(1),104(2)と開口110aとの離間距離Kを十分(たとえば20mm以上)大きくしなければならず、フィルタユニット54(IN)の全長が大きくなってしまう。
【0092】
なお、開口110aは外導体110の開口部であり、図4に示すように樹脂などの誘電体で開口110aを塞いでも電磁的には無いのと同じである。

[フィルタの実施例2]
【0093】
図15に、第2の実施例によるフィルタユニット54(IN)の物理的な構造を示す。この第2の実施例の主たる特徴は、上記第1実施例のフィルタユニット54(IN)において並列共振周波数を任意にずらして調整するための並列共振周波数調節部を備えていることである。以下、第2の実施例においても、第1フィルタ102(1)の構成および第1分布定数回路120(1)の作用について説明する。第2フィルタ102(2) の構成および第2分布定数線路120(2)の作用も全く同じである。
【0094】
この並列共振周波数調節部の基本形態は、分布定数線路120(1)の特性インピーダンスに線路の途中で局所的な変化を与える特性インピーダンス局所可変部材を設けることであり、好適には図10に示すようにコイル104(1)と外導体110との間にリング部材122を同軸に設ける。
【0095】
このリング部材122は、好ましくは外導体110の軸方向と直交する平面上で円環状に延びる板体として構成され、好ましくは銅、アルミニウム等の導体からなり、外導体110に電気的に接続され、コイル104(1)とは電気的に絶縁されている。もっとも、リング部材122がコイル104(1)と電気的に接続され、外導体110とは電気的に絶縁されている構成も可能である。また、リング部材122を樹脂等の誘電体で構成してもよく、その場合は外導体110とコイル104(1)の双方と接触していてもよい。また、リング部材122を一定の位置に固定配置してもよいが、軸方向でリング部材122の配置位置を可変調整できる構成も好ましい。
【0096】
導体、あるいは誘電体からなるリング状のインピーダンス局所可変部材122は同軸線路のCを変化させることによって局所的に特性インピーダンス√(LC)を変化させることができる。特性インピーダンスがZ0からZ1に部分的に変化すると、その界面では反射が発生する。このため直列に結合した3つの同軸線路(長さS1−特性インピーダンスZ0,長さS2−特性インピーダンスZ1,長さS3−特性インピーダンスZ0)のようになり、周波数、長さと波長の関係で決まっている直列・並列共振の周波数を結果的にシフトさせる効果をもつ。
【0097】
このリング部材122によって分布定数線路120(1)の空間的プロファイルに与えられる変化は、後述する本発明の効果を奏するうえで、一定量を超える必要があり、特性インピーダンスZoに換算して10%以上の変化を付けることが望ましい。
【0098】
本発明者は、上記のような本実施例の構成(図10)を有するフィルタユニット54(IN)を試作した。この実施例試作品の主な仕様として、外導体110の内径(半径)は28.125mm、コイル104(1)の外径(半径)は21.25mm、長さは134mm、リング部材122とコイル104(1)との距離間隔Dは3.75mm、幅Mは5mmである。そして、この実施例試作品のフィルタユニット54(IN)において、リング部材122の位置を軸方向で可変しながら、各リング位置についてフィルタ端子T(1)側から見た第1フィルタ102(1)のインピーダンス特性をネットワークアナライザで取得し、その多重並列共振の各周波数(並列共振周波数)を測定してプロットしたところ、図16に示すような実験結果が得られた。
【0099】
図16において、リング位置に依存しない一定値の並列共振周波数F1(約17.5MHz),F2(約68.75MHz),F3(約116.25MHz),F4(約155.00MHz)は、本実施例のフィルタユニット54(IN)(図10)からリング部材122を除外した構成(図4)で得られた比較基準値である。
【0100】
図16に示すように、この実施例によれば、リング部材122の位置(約10mm位置〜約132mm位置)に応じて各並列共振周波数が上下に変動(シフト)することがわかる。そして、さらに注目すべきことは、各並列共振周波数が各々固有の周期で独立に上下変動(シフト)することである。
【0101】
より詳しくは、第1の並列共振周波数は、入力端側(リング位置10mm位置付近)で比較基準値F1から下がる方向に最も大きく変化し、中心位置付近(75mm位置付近)でシフト量が略0であり、出力端側に近づくにつれて比較基準値F1よりも上昇する方向にシフト量が増大する。もっとも、第1の並列共振周波数のシフト量(絶対値)は、他の並列共振周波数のシフト量(絶対値)に比して格段に小さい。
【0102】
また、第2の並列共振周波数は、リング部材122を中心位置つまり1/2位置付近(75mm位置付近)に配置したときに比較基準値F1からの低下シフト量が最大になる。
【0103】
第3の並列共振周波数は、リング部材122を1/2位置付近(75mm位置付近)に配置したときに上昇シフト量が最大になり、1/3位置付近(45mm位置付近)または2/3位置付近(120mm位置付近)に配置したときに低下シフト量が最大になる。
【0104】
第4の並列共振周波数は、リング部材122を1/4位置付近(30mm位置付近)、1/2位置付近(75mm位置付近)または3/4位置付近(135mm位置付近)に配置したときに比較基準値F1からの低下シフト量が最大になり、3/8位置付近(60mm位置付近)または5/8位置付近(100mm位置付近)に配置したときに上昇シフト量が最大になる。
【0105】
したがって、たとえば、プラズマ生成用の第1高周波HFの周波数が80MHzに選ばれた場合は、リング部材122を30mm位置付近に配置することで、第2の並列共振周波数を比較基準値F2(約68.75MHz)から上にずらして72〜75MHz付近に調整し、これによって80MHzの高周波ノイズに対して十分高いインピーダンスを与えることができる。
【0106】
もっとも、イオン引き込み用の第2高周波LFの周波数は13.56MHz以下という絶対的制限があるため、通常は第2高周波LFの周波数に対して第1の並列共振周波数を優先的に最適化する。上述したように、コイル104(1)の巻線長を延ばすことで、第1の並列共振周波数を所望の低い値(たとえば12MHz付近)に合わせることができる。そして、その場合に、プラズマ生成用の第1高周波HFの周波数に対して所望の十分高いインピーダンスを与えるために第2、第3または第4の並列共振周波数のいずれかを比較基準値(F2,F3,F4)から適宜ずらす調整を行う必要があるときは、上述したようにリング部材122の配置位置を最適な位置に合わせればよい。
【0107】
この第2の実施例は、第1実施例のフィルタ構成に一定の形状・サイズ・材質のリング部材122を付け加えるだけの構成であり、多重並列共振の各並列共振周波数を任意にずらす調整を可能としつつ、第1実施例と同様にインピーダンス特性の安定性・再現性に優れたフィルタ特性を得ることができる。

[フィルタの実施例3]
【0108】
図17に、第3の実施例によるフィルタユニット54(IN)の物理的な構造を示す。この第3の実施例は、上述した第2の実施例の一変形例であり、1つのフィルタ102(1)にリング部材122を複数たとえば2個備える構成を特徴とする。これら複数のリング部材122,122の形状・サイズ・材質は、異なってもよいが、通常は同じでよい。
【0109】
本発明者は、本実施例の構成(図17)を有するフィルタユニット54(IN)を試作し、そのインピーダンス特性を上記と同様にネットワークアナライザを用いて測定し、上記第1および第2の実施例の試作品と比較した。
【0110】
図18および図19にその実験結果を示す。図中、インピーダンス特性ZNは、フィルタユニット54(IN)内にリング部材122が無い第1実施例(図4)の試作品のものである。このインピーダンス特性ZNにおいて、第1の並列共振周波数は図18に示すように約16.8MHzであり、第3の並列共振周波数は図19に示すように約117MHzである。
【0111】
インピーダンス特性Z45は、フィルタユニット54(IN)内に1つのリング部材122を45mm位置に配置した第2実施例(図10)の試作品のものである。このインピーダンス特性Z45において、第1の並列共振周波数は図18に示すように約16.4MHzであり、第3の並列共振周波数は図19に示すように約108MHzである。これは、図16の特性と符号する。すなわち、図16に示すように、リング位置を45mm位置にした場合、第1の並列共振周波数は比較基準値F1から僅かに下がる方向にシフトし、第3の並列共振周波数は比較基準値F3から大きく下がる方向にシフトする。
【0112】
インピーダンス特性Z110は、フィルタユニット54(IN)内に1つのリング部材122を110mm位置に配置した第2実施例(図15)の試作品のものである。このインピーダンス特性Z110において、第1の並列共振周波数は図13に示すように約17.2MHzであり、第3の並列共振周波数は図18に示すように約107MHzである。これも、図16の特性と符号する。すなわち、図16に示すように、リング位置を110mm位置にした場合、第1の並列共振周波数は比較基準値F1から僅かに上がる方向にシフトし、第3の並列共振周波数は比較基準値F3から大きく下がる方向にシフトする。
【0113】
インピーダンス特性Z45,110は、フィルタユニット54(IN)内に2つのリング部材122,122をそれぞれ45mm位置,110に配置した本実施例(図17)の試作品のものである。このインピーダンス特性Z45,110において、第1の並列共振周波数は図13に示すように約16.9MHzであり、第3の並列共振周波数は図14に示すように約98MHzである。
【0114】
このように、本実施例によれば、1つのリング部材122を45mm位置または110mm位置に個別に配置する第2実施例(図15)の試作品におけるインピーダンス特性Z45,Z110を足し合わせた効果が得られる。すなわち、第1の並列共振周波数については、インピーダンス特性Z45とインピーダンス特性Z110とが足し合わさることによって、比較基準値F1からの低下シフトと上昇シフトとが互いにキャンセルして、比較基準値F1に近い値が得られる。また、第3の並列共振周波数については、インピーダンス特性Z45とインピーダンス特性Z110とが足し合わさることによって、比較基準値F3からの低下シフトが重畳して、略2倍の低下シフト量が得られる。これにより、100MHzで約300Ω以上の高インピーダンスが得られる。
【0115】
このように、この実施例によれば、先ず第2高周波LFの周波数(たとえば13.56MHz)に対して所望の高いインピーダンスを与えるようにコイル104(1)の巻線長を調整して、第1の並列共振周波数を最適な値に設定してよい。そして、フィルタユニット54(IN)内に2つのリング部材122,122を中心リング位置(約75mm位置)に対して略対称の2位置(たとえば45mm位置,110mm位置)にそれぞれ配置することで、第1の並列共振周波数を殆どシフトさせずに第3の並列共振周波数を一方向に大きくシフトさせて遮断対象の周波数(たとえば100MHz)に対して十分高い一定の高インピーダンスを与えることができる。
【0116】
この第3の実施例も、第1実施例のフィルタ構成に一定の形状・サイズ・材質の複数のリング部材122を付け加えるだけの構成であり、多重並列共振の各並列共振周波数を第2実施例よりも広い範囲で任意にずらす調整を可能としつつ、第1実施例と同様にインピーダンス特性の安定性・再現性に優れたフィルタ特性を得ることができる。

[フィルタの実施例(その他)]
【0117】
図20および図21に、フィルタユニット54(IN)の他の実施例を示す。
【0118】
図20の実施例は、外導体110にリング部材122を固定し、コイル104(1),104(2)と外導体110との間で軸方向の相対移動または変位を可能とし、コイル104(1),104(2)に対してリング部材122の位置を可変調整できるようにしている。
【0119】
図21の実施例は、軸方向の任意の位置でコイル104(1),104(2)の径を局所的に変えることよって、リング部材122を備えずに分布定数回路120(1),120(2)の特性インピーダンスZoに対して局所的な変化を与えるようにしたものである。この実施例でも、コイル104(1),104(2)と外導体110との間で軸方向の相対移動または変位を可能とする構成を採ってよい。
【0120】
図22の実施例は、フィルタユニット54(IN)において、軸方向の所望の位置で外導体110の径を局所的に大きくしてリング状の溝部(凹所)124を形成するものであり、これによって分布定数回路120(1) ,120(2)の特性インピーダンスZoにリング状溝部124の位置で局所的な変化を与えるようにしたものである。
【0121】
上記した実施例では、1つの外導体110の中で第1フィルタ102(1)のコイル104(1)および第2フィルタ102(2)のコイル104(2)をそれぞれ構成するコイル導線が、共通のボビン114の外周面に沿って図6に示すようにボビン軸方向に重なり合って並進しながら等しい巻線長で螺旋状に巻かれている。かかるコイル巻線構造は、両空芯コイル104(1),102(2)の間で、自己インダクタンスが互いに等しく、かつ最大の相互インダクタンスを得ることができる。これによって、フィルタユニット54(IN)におけるRF電力損失が低減し、さらにはRFパワー損失の機差が低減するという利点がある。
【0122】
もっとも、図示省略するが、第1フィルタ102(1)のコイル104(1)と第2フィルタ102(2)のコイル104(2)とを各々の個別のボビン114に巻いて別々の外導体110内に同軸に収容する構成ももちろん可能である。なお、上述したように、ボビン114はコイル支持手段の一つであり、ボビン114を省いた構成も可能である。
【0123】
また、上記した実施例のフィルタユニット54(IN),54(OUT)では、円筒形の外導体110の中に円筒形のコイル104(1),104(2)が同軸に収容され、コイル104(1)と外導体110との間に形成される分布定数線路120(1)、およびコイル104(2)と外導体110との間に形成される分布定数線路120(2)は同軸線路であった。
【0124】
しかし、分布定数線路120(1),120(2)は、一定の特性インピーダンス(特にインダクタンスおよびキャパシタンス)を有していればよく、必ずしも同軸線路である必要はない。基本的な必要条件は、コイルおよび筒形外導体のそれぞれの横断面の形状およびサイズが分布定数線路に沿って略一定であることであり、コイルと筒形外導体との間のギャップが分布定数線路に沿って略一定であることである。
【0125】
したがって、たとえば図23Aに示すように、円筒形の外導体110の中に円筒形のコイル104(1),104(2)が非同軸(偏心)で収容されていてもよい。
【0126】
あるいは、図23Bの(a)のように、横断面が四角形の角筒状外導体110の中に、横断面が四角形の角筒形コイル104(1),104(2)が非同軸(または同軸)で収容される構成も可能である。あるいは図23Bの(b)のように、横断面が五角形の角筒状外導体110の中に横断面が五角形の角筒形コイル104(1),104(2)が同軸(または非同軸)で収容される構成も可能である。
【0127】
さらには、図23Cに示すように、横断面が四角形の角筒状外導体110の中に、横断面が円形の円筒形コイル104(1),104(2)が同軸(または非同軸)で収容される構成も可能である。

[給電棒の実施例]
【0128】
分布定数線路の多重並列共振特性を利用する本発明の高周波フィルタの技法は、上記実施形態のプラズマエッチング装置(図1)においては、マッチングユニット32とサセプタ(下部電極)12とを電気的に接続する高周波給電ライン(34,35)にも適用可能である。
【0129】
この高周波給電ライン(34,35)は、内導体の給電棒34と外導体の導体カバー35が互いに対をなして同軸線路の分布定数回路を形成している。したがって、たとえば図24に示すように、軸方向の所定の位置で導体カバー35の内壁に1つまたは複数のリング部材122を取り付けてよい。この場合、リング部材122の機能(役目)は、マッチングユニット32からの高周波HF(RF)を少ない損失で効率よくサセプタ12ないしプラズマ負荷に送りつつ、プラズマから発生する高調波または相互変調歪の高調波が高周波給電ライン(34,35)上に入ってきた時にこれを効果的に遮断することにある。

[他の実施形態]
【0130】
上記実施形態は、チャンバ10内のサセプタ12にプラズマ生成用の第1高周波HFとイオン引き込み用の第2高周波RFとを重畳して印加する下部2周波印加方式の容量結合型プラズマエッチング装置において、サセプタ12に組み込まれる発熱体40とチャンバ10の外に設置されるヒータ電源58とを電気的に接続する一対のヒータ給電ライン100(1),ライン100(2)上に両周波数のノイズを減衰させるためのフィルタに係わるものであった。
【0131】
しかしながら、上部電極64にプラズマ生成用の第1高周波HFを印加し、サセプタ12にイオン引き込み用の第2高周波RFを印加する上下部2周波印加方式の容量結合型プラズマエッチング装置、あるいはサセプタ12に単一の高周波を印加する下部1周波印加方式の容量結合型プラズマエッチング装置においても、上記実施形態のフィルタをそのまま好適に適用することができる。
【0132】
また、本発明は、ヒータ給電線等の電源線用のフィルタに限定されるものでは決してなく、チャンバ内に設けられる所定の電気的部材とチャンバの外に設けられる電力系または信号系の外部回路とを電気的に接続する一対の線路または単一の線路上に設けられる任意のフィルタに適用可能である。遮断対象の高周波ノイズは、上述したように、プラズマプロセスに用いる高周波のノイズに限らず、プラズマから発生する高調波あるいは相互変調歪の高調波であってもよい。また、本発明において、高周波ノイズ遮断用のコイルは、空芯コイルに限るものではなく、コア(芯)入りのコイルも使用可能である。
【0133】
本発明は、容量結合型のプラズマエッチング装置に限定されず、マイクロ波プラズマエッチング装置や、誘導結合プラズマエッチング装置、ヘリコン波プラズマエッチング装置等にも適用可能であり、さらにはプラズマCVD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリングなどの他のプラズマ処理装置にも適用可能である。また、本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0134】
10 チャンバ
12 サセプタ
24 排気装置
28 (プラズマ生成用)高周波電源
30 (イオン引き込み用)高周波電源
32 マッチングユニット
40(IN) 内側の発熱線
40(OUT) 外側の発熱線
54(IN),54(OUT) フィルタユニット
58(IN),58(OUT) ヒータ電源
100(1) 第1の給電ライン
100(2) 第2の給電ライン
102(1) 第1のフィルタ
102(2) 第2のフィルタ
104(1),104(2) コイル
106(1),106(2) コンデンサ
110 外導体
120(1),120(2) 分布定数線路
122 リング部材(インピーダンス局所可変部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理が行われる処理容器内に配設された高周波電極に高周波電源を電気的に接続し、前記高周波電極に設けられる発熱体とヒータ電源とを電気的に接続するための給電ライン上に前記発熱体を介して入ってくる所定周波数の高周波ノイズを減衰させ、または阻止するためのフィルタを設けているプラズマ処理装置であって、
前記フィルタが、
前記給電ラインの一部を構成する1個のコイルと、
前記コイルを収容または包囲し、前記コイルと対になって特性インピーダンスが一定の分布定数線路を形成する筒形の外導体と
を有し、
前記分布定数線路が、前記コイルの巻線長に応じた規則的な複数の周波数で並列共振をなして、それら複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記フィルタは、前記処理容器内の処理空間側から見て前記高周波電極の背後に配置される、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
プラズマ処理が行われる処理容器内に被処理体を保持する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを配設し、第1の高周波を出力する第1の高周波電源を前記第1の電極に電気的に接続するとともに、第2の高周波を出力する第2の高周波電源を前記第1の電極または前記第2の電極に電気的に接続し、前記第1の電極に設けられる発熱体とヒータ電源とを電気的に接続するための給電ライン上に前記発熱体を介して入ってくる所定周波数の高周波ノイズを減衰させ、または阻止するためのフィルタを設けているプラズマ処理装置であって、
前記フィルタが、
前記給電ラインの一部を構成する1個のコイルと、
前記コイルを収容または包囲し、前記コイルと対になって特性インピーダンスが一定の分布定数線路を形成する筒形の外導体と
を有し、
前記分布定数線路が、前記コイルの巻線長に応じた規則的な複数の周波数で並列共振をなして、それら複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える、
プラズマ処理装置。
【請求項4】
前記複数の並列共振周波数の1つが、前記第1の高周波または前記第2の高周波のどちらかの周波数に一致または近似する、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記複数の並列共振周波数の1つが前記第1の高周波の周波数に一致または近似し、他の1つが前記第2の高周波の周波数に一致または近似する、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第2の高周波は、主として前記処理容器内で処理ガスのプラズマを生成するのに寄与し、
前記第1の高周波は、主として前記プラズマから前記第1の電極上に保持される被処理体へのイオンの引き込みに寄与する、
請求項3〜5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記フィルタは、前記処理容器内の処理空間側から見て前記第1の電極の背後に配置される、請求項3〜6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記発熱体が並列に複数設けられ、それら複数の前記発熱体にそれぞれ対応する複数の前記フィルタが方位角方向で均一な距離間隔を空けて配置される、請求項2または請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記給電ラインが、前記発熱体の両端にそれぞれ接続される第1および第2の給電導線を有し、
前記コイルが、前記第1の給電導線の一部を構成する第1のコイル単体と、前記第2の給電導線の一部を構成する第2のコイル単体とを含み、
前記外導体の内側で、前記第1および第2のコイル単体をそれぞれ構成する第1および第2のコイル導線が並進しながら略等しい巻線長で螺旋状に巻かれている、
請求項1〜8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記コイルおよび前記筒形外導体のそれぞれの横断面の形状およびサイズは、前記分布定数線路に沿って略一定である、請求項1〜9のいずれか一項記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記コイルと前記筒形外導体との間のギャップは、前記分布定数線路に沿って略一定である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記コイルと前記筒形外導体との間の空間には、前記分布定数線路に沿って前記高周波ノイズの波長の1/4より大きな凹凸が存在しない、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
プラズマ処理が行われる処理容器内に配設された高周波電極に高周波電源を電気的に接続し、前記高周波電極に設けられる発熱体とヒータ電源とを電気的に接続するための給電ライン上に前記発熱体を介して入ってくる所定周波数の高周波ノイズを減衰させ、または阻止するためのフィルタを設けているプラズマ処理装置であって、
前記フィルタが、
前記給電ラインの一部を構成する1個のコイルと、
前記コイルを収容または包囲し、前記コイルと対になって複数の周波数で並列共振をなす分布定数線路を形成する筒形の外導体と、
前記複数の並列共振周波数の少なくとも1つをずらして調節するための並列共振周波数調節部と
を有し、
前記複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える、
プラズマ処理装置。
【請求項14】
前記フィルタは、前記処理容器内の処理空間側から見て前記高周波電極の背後に配置される、請求項13に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
プラズマ処理が行われる処理容器内に被処理体を保持する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを配設し、第1の高周波を出力する第1の高周波電源を前記第1の電極に電気的に接続するとともに、第2の高周波を出力する第2の高周波電源を前記第1の電極または前記第2の電極に電気的に接続し、前記第1の電極に設けられる発熱体とヒータ電源とを電気的に接続するための給電ライン上に前記発熱体を介して入ってくる所定周波数の高周波ノイズを減衰させ、または阻止するためのフィルタを設けているプラズマ処理装置であって、
前記フィルタが、
前記給電ラインの一部を構成する1個のコイルと、
前記コイルを包囲または収容し、前記コイルと対になって複数の周波数で並列共振をなす分布定数線路を形成する筒形の外導体と
前記複数の並列共振周波数の少なくとも1つをずらして調節するための並列共振周波数調節部と
を有し、
前記複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える、
プラズマ処理装置。
【請求項16】
前記複数の並列共振周波数の1つが、前記第1の高周波または前記第2の高周波のどちらかの周波数に一致または近似する、請求項15に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記複数の並列共振周波数の1つが前記第1の高周波の周波数に一致または近似し、他の1つが前記第2の高周波の周波数に一致または近似する、請求項15に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
前記並列共振周波数調節部は、前記コイルと前記外導体との間に配置され、各々の配置位置で前記分布定数線路の特性インピーダンスに局所的な変化を与える1個または複数個の特性インピーダンス局所可変部材を有する、請求項15〜17のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】
前記特性インピーダンス局所可変部材は、前記分布定数線路の特性インピーダンスに10%以上の変化を与える、請求項18に記載のプラズマ処理装置。
【請求項20】
前記特性インピーダンス局所可変部材は、前記外導体の内側に前記コイルと同軸に設けられるリング状の部材からなる、請求項18または請求項19記載のプラズマ処理装置。
【請求項21】
前記リング部材は、導体からなり、前記外導体または前記コイルの一方に電気的に接続され、他方とは電気的に絶縁されている、請求項20に記載のプラズマ処理装置。
【請求項22】
前記リング部材は誘電体からなる、請求項20に記載のプラズマ処理装置。
【請求項23】
前記リング部材は、前記外導体の軸方向と直交する平面上で円環状に延びる板体である、請求項20〜22のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項24】
前記外導体の軸方向で前記コイルに対する前記リング部材の相対的な位置を調節するためのリング部材位置調節部を有する、請求項20〜23のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項25】
前記フィルタは、前記処理容器内の処理空間側から見て前記第1の電極の背後に配置される、請求項15〜24のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項26】
前記発熱体が並列に複数設けられ、それら複数の前記発熱体にそれぞれ対応する複数の前記フィルタが方位角方向で均一な距離間隔を空けて配置される、請求項14または請求項25に記載のプラズマ処理装置。
【請求項27】
前記給電ラインが、前記発熱体の両端にそれぞれ接続される第1および第2の給電導線を有し、
前記コイルが、前記第1の給電導線の一部を構成する第1のコイル単体と、前記第2の給電導線の一部を構成する第2のコイル単体とを含み、
前記外導体の内側で、前記第1および第2のコイル単体をそれぞれ構成する第1および第2のコイル導線が並進しながら略等しい巻線長で螺旋状に巻かれている、
請求項13〜26のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項28】
前記処理容器側から見て、前記コイルが前記フィルタの初段に設けられ、前記コイルの出力側の端子がコンデンサを介して接地電位の導電性部材に電気的に接続される、請求項1〜27のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項29】
前記外導体が電気的に接地される、請求項1〜28のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項30】
前記ヒータ電源は、前記給電ラインを介して商用周波数の交流電力または直流電力を前記発熱体に供給する、請求項1〜29のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項31】
前記筒形外導体の一端面に、前記コイルと前記発熱体とを結ぶ前記給電ラインを通すための開口が設けられ、
前記開口の周りで前記筒形外導体の内径が前記コイルの外径と同一またはそれよりも大きい、
請求項1〜30のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項32】
前記コイルは空芯コイルである、請求項1〜31のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項33】
プラズマ処理が行われる処理容器内の高周波電極に高周波電源より給電棒を介して高周波を印加するプラズマ処理装置であって、
前記給電棒を包囲し、前記給電棒と対になって分布定数線路を形成する筒形の外導体と、
前記給電棒と前記外導体との間に配置され、前記分布定数線路のインピーダンス特性が前記高周波電極側から前記給電棒に入ってくる可能性のある所定周波数の高周波ノイズに対して十分高いインピーダンスを与えるように、各々の配置位置で前記分布定数線路の特性インピーダンスに局所的な変化を与える1個または複数個の特性インピーダンス局所可変部材と
を有する、プラズマ処理装置。
【請求項34】
前記特性インピーダンス局所可変部材は、前記分布定数線路の特性インピーダンスに10%以上の変化を与える、請求項33に記載のプラズマ処理装置。
【請求項35】
前記特性インピーダンス局所可変部材は、前記外導体の内側に前記給電棒と同軸に設けられるリング状の部材からなる、請求項33または請求項34記載のプラズマ処理装置。
【請求項36】
前記リング部材は、導体からなり、前記外導体または前記給電棒の一方に電気的に接続され、他方とは電気的に絶縁されている、請求項35に記載のプラズマ処理装置。
【請求項37】
前記リング部材は誘電体からなる、請求項35に記載のプラズマ処理装置。
【請求項38】
前記リング部材は、前記外導体の軸方向と直交する平面上で円環状に延びる板体である、請求項35〜37のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項39】
前記外導体の軸方向で前記給電棒に対する前記リング部材の配置位置を調節するためのリング部材位置調節部を有する、請求項35〜38のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項40】
前記高周波ノイズは、前記処理容器内のプラズマで発生した高調波または相互変調歪である、請求項33〜39のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項41】
プラズマ処理が行われる処理容器内の所定の電気的部材に線路を介して電気的に接続される電力系または信号系の外部回路を有し、前記電気的部材から前記外部回路に向かって前記線路に入ってくる所定周波数の高周波ノイズを前記線路上に設けたフィルタによって減衰させ、または阻止するプラズマ処理装置であって、
前記フィルタが、
前記線路の一区間を構成し、一定の軸に沿って一様な空間的プロファイルで延びる第1の導体と、
前記第1の導体を収容または包囲し、前記第1の導体と対になって特性インピーダンスが一定の分布定数線路を形成する筒形の第2の導体と
を有し、
前記分布定数線路が、前記第1または第2の導体の長さに応じた規則的な複数の周波数で並列共振をなして、それら複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える、
プラズマ処理装置。
【請求項42】
プラズマ処理が行われる処理容器内の所定の電気的部材に線路を介して電気的に接続される電力系または信号系の外部回路を有し、前記電気的部材から前記外部回路に向かって前記線路に入ってくる所定周波数の高周波ノイズを前記線路上に設けたフィルタによって減衰させ、または阻止するプラズマ処理装置であって、
前記フィルタが、
前記線路の一区間を構成し、一定の軸に沿って一様な空間的プロファイルで延びる第1の導体と、
前記第1の導体を収容または包囲し、前記第1の導体と対になって複数の周波数で並列共振をなす分布定数線路を形成する筒形の第2の導体と
前記複数の並列共振周波数の少なくとも1つをずらして調節するための並列共振周波数調節部と
を有し、
前記複数の並列共振周波数の1つが前記高周波ノイズの周波数に一致または近似し、それによって前記高周波ノイズの周波数に対して十分高いインピーダンスを与える、
プラズマ処理装置。
【請求項43】
前記並列共振周波数調節部は、前記第1の導体と前記第2の導体との間に配置され、各々の配置位置で前記分布定数線路の特性インピーダンスに局所的な変化を与える1個または複数個の特性インピーダンス局所可変部材を有する、請求項42に記載のプラズマ処理装置。
【請求項44】
前記特性インピーダンス局所可変部材は、前記分布定数線路の特性インピーダンスに10%以上の変化を与える、請求項43に記載のプラズマ処理装置。
【請求項45】
前記特性インピーダンス局所可変部材は、前記第2の導体の内側に前記第1の導体と同軸に設けられるリング状の部材からなる、請求項43または請求項44に記載のプラズマ処理装置。
【請求項46】
前記リング部材は、導体からなり、前記第1の導体または前記第2の導体の一方に電気的に接続され、他方とは電気的に絶縁されている、請求項45記載のプラズマ処理装置。
【請求項47】
前記リング部材は誘電体からなる、請求項45に記載のプラズマ処理装置。
【請求項48】
前記リング部材は、前記第2の導体の軸方向と直交する平面上で円環状に延びる板体である、請求項45〜47のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項49】
前記第2の導体の軸方向で前記第1の導体に対する前記リング部材の相対的な位置を調節するためのリング部材位置調節部を有する、請求項45〜48のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項50】
前記処理容器側から見て、前記第1の導体が前記フィルタの初段に設けられ、前記第1の導体の出力側の端子がコンデンサを介して接地電位の導電性部材に電気的に接続される、請求項41〜49のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項51】
前記第2の導体が電気的に接地される、請求項41〜50のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項52】
前記外部回路より前記線路を介して前記電気的部材に商用周波数の交流電力または直流電力が供給される、請求項41〜51のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項53】
前記筒形の第2の導体の一端面に、前記第1の導体と前記電気的部材とを結ぶ前記線路を通すための開口が設けられ、
前記開口の周りで前記第2の導体の内径が前記第1の導体の外径と同一またはそれよりも大きい、
請求項41〜52のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項54】
前記第1の導体がコイルである、請求項41〜53のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項55】
前記コイルは空芯コイルである、請求項54に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−135052(P2011−135052A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252645(P2010−252645)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】