説明

プラズマ洗浄方法

【課題】 被処理基板に設けられる有機物層のスパッタリングを抑え、導電部からの有機物の除去を効率的に行なうことのできるプラズマ洗浄方法を提供する。
【解決手段】 プリント配線基板17の配線19にプラズマ18を照射して洗浄するとき、洗浄すべき配線19にプラズマを集中させるようにプリント配線基板17にプラズマ集中処理を施し、配線19に臨む領域でプラズマ18を発生させ、発生させたプラズマ18を配線19に照射する。たとえば、プリント配線基板17を下部電極16に載置してスルーホール21を介して下部電極16と配線19とを短絡させ、上部電極15と下部電極16との間に電圧を印加してプラズマ18を発生させる。これによって、照射するプラズマ18と逆極性の電位を配線19に与え、配線19およびその周囲にプラズマ18を集中して照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板にプラズマを照射して洗浄するプラズマ洗浄方法および前記プラズマ洗浄方法によって洗浄される配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品同士を電気的に接続するための配線、電極などの導電部が形成されたプリント配線基板などの基板に半導体素子、チップ部品などの電子部品を実装する際には、実装に先立って、基板表面部の導電部の洗浄が行なわれる。この導電部の洗浄は、導電部と電子部品との接続に使用されるワイヤ、バンプ、はんだなどの金属導体に対する導電部のボンディング性およびぬれ性を改善するために行なわれる。
【0003】
たとえば、ボンディングに使用される電極の表面部に金めっきが施されている場合、この金めっき面には、金めっき工程で混入したニッケルに由来するニッケル化合物、製造過程で付着した有機物などが存在し、前述の金属導体との良好な電気的接続を阻害する。このような接合阻害物を洗浄によって除去することによって、金属導体に対するボンディング性およびぬれ性を向上させ、良好な接合を実現することができる。このように、導電部を洗浄することによって、半導体素子などの電子部品とプリント配線基板などの基板との接合強度を向上させることができる。
【0004】
導電部の洗浄方法としては、プラズマを用いたプラズマ洗浄方法が多用されている。図7は、従来のプラズマ洗浄方法によってプリント配線基板5を洗浄する様子を簡略化して示す断面図である。従来技術によるプラズマ洗浄方法では、まずプラズマ洗浄装置1のチャンバ2の内方に対向して設けられる上部電極3および下部電極4のうち下部電極4に、洗浄対象となるプリント配線基板5を載置した後、チャンバ2の内方の空間を減圧して真空状態とする。次いで、チャンバ2の内方の上部電極3と下部電極4との間にプラズマ発生用ガスを導入し、マッチングボックス6を介して交流電源7から下部電極4に高周波の交流電力を供給する。これによって、上部電極3と下部電極4との間にプラズマ8が発生し、プラズマ8中のイオンがプリント配線基板5に照射される。プリント配線基板5は、イオンが衝突する際の衝撃によってスパッタリングされ、配線部5aに付着した前述の接合阻害物などが除去される。
【0005】
プラズマ発生用ガスとしては、アルゴンなどの希ガスが用いられる。希ガスを用いる従来のプラズマ洗浄方法では、プラズマ放電によって発生した希ガスのイオンが洗浄対象物に衝突することによる物理的なエッチング作用によって前述の接合阻害物などを除去する。この方法を用いて有機物が露出している基板を洗浄する場合には、洗浄対象部位である導電部の表面部にプラズマ洗浄後にも有機物が残留し、良好な洗浄品質を確保できないという問題が生じる。たとえば、プリント配線基板5の配線部5aに設けられた図示しない電極の表面部のニッケル化合物などの無機物、電極の表面部に付着した有機物を除去対象とする場合、洗浄によって無機物は除去できるけれども、有機物は洗浄後にも電極の表面部に残存し、充分に除去することができないという問題が生じる。これは、以下のことが原因であると推察される。プラズマ洗浄過程において、プリント配線基板5の配線部5aおよび樹脂部5bは、いずれもイオンの照射によってチャージアップされるので、配線部5aと樹脂部5bとの間には大きな電位差が生じない。このため、プラズマ8中のイオンはプリント配線基板5に均一に照射されるので、配線部5aだけでなく、樹脂部5bもスパッタリングされる。この樹脂部5bがスパッタリングされて飛散した有機物が配線部5aの電極の表面部に再付着するので、電極の表面部には洗浄後にも有機物が残存するものと考えられる。
【0006】
電極の表面部に残留する残留有機物を低減させるための技術としては、プラズマ発生用ガスとして、酸素ガスを含むガスを用いることが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2001−259411(第1図,第3図,第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の技術では、有機物層から飛散した有機物を酸素ガスから発生する酸素ラジカルと反応させてガス化させることによって、処理対象部位への有機物の再付着を防止し、残留有機物の低減を図っている。しかしながら、特許文献1に開示の技術においても有機物層のスパッタリングは生じ、飛散した有機物の電極表面部への再付着は起こるので、電極の表面部から有機物を充分に除去することはできない。また、特許文献1に開示の技術では、酸素ガスなどの新たなガスを使用するので、これらのガスをチャンバ内に導入するための供給手段などを新たに設ける必要があり、装置コスト、ランニングコストなどのコストの増大を招くという問題もある。
【0009】
本発明の目的は、被処理基板に設けられる有機物層のスパッタリングを抑え、導電部からの有機物の除去を効率的に行なうことができ、コストを増大させることなく導電部に残存する有機物を低減し、良好な洗浄品質を実現することのできるプラズマ洗浄方法および前記プラズマ洗浄方法を実現可能な配線基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、導電性を有する導電部が形成される被処理基板の前記導電部にプラズマを照射して洗浄するプラズマ洗浄方法であって、
洗浄すべき前記導電部にプラズマを集中させるように被処理基板にプラズマ集中処理を施し、前記導電部に臨む領域でプラズマを発生させ、発生させたプラズマを前記導電部に照射することを特徴とするプラズマ洗浄方法である。
【0011】
また本発明は、前記プラズマ集中処理は、
前記導電部に、照射するプラズマと逆極性の電位を与える処理であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記プラズマ集中処理は、
前記導電部に隣接するように被処理基板にプラズマ集中用電極部を設け、前記プラズマ集中用電極部に、照射するプラズマと逆極性の電位を与える処理であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、厚み方向一方側に設けられる配線と、
前記配線に電気的に接続され、厚み方向他方側に延びる短絡用端子部とを有することを特徴とする配線基板である。
【0014】
また本発明は、厚み方向一方側に設けられる配線と、
前記配線に隣接して設けられ、厚み方向他方側に延びるプラズマ集中用電極部とを有することを特徴とする配線基板である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被処理基板の洗浄すべき導電部にプラズマを集中させるように被処理基板にプラズマ集中処理を施し、導電部に臨む領域でプラズマを発生させ、発生させたプラズマを導電部に照射することによって、導電部を洗浄する。被処理基板にはプラズマ集中処理が施されているので、プラズマは、被処理基板の洗浄すべき導電部およびその周囲に集中して照射される。これによって、被処理基板の洗浄すべき導電部以外の部分の広範囲にわたってプラズマが照射されることを防ぐことができるので、導電部を効率的に洗浄することができる。たとえば被処理基板の導電部を除く部分に有機物層が形成されている場合、有機物層の広範囲にわたってプラズマが照射されることを防ぎ、有機物層からの有機物の飛散量を低減することができるので、飛散した有機物の導電部への再付着を抑え、導電部から有機物を効率的に除去することができる。したがって、良好な洗浄品質を実現することができる。
【0016】
また本発明によれば、被処理基板の洗浄すべき導電部は、照射するプラズマと逆極性の電位が与えられるので、被処理基板の導電部以外の部分に比べて、プラズマとの間の電位差が大きくなる。これによって、被処理基板の導電部以外の部分に向かって照射されるプラズマの進路を、導電部に向かって屈曲させることができるので、プラズマを導電部およびその周囲に集中して照射することができる。したがって、洗浄すべき導電部以外の部分の広範囲にわたってプラズマが照射されることを防ぐことができるので、導電部以外の部分からの飛散物の導電部への再付着を抑え、導電部を効率的に洗浄することができる。
【0017】
また本発明によれば、被処理基板の洗浄すべき導電部に隣接して設けられるプラズマ集中用電極部は、照射するプラズマと逆極性の電位が与えられるので、被処理基板のプラズマ集中用電極部以外の部分に比べて、プラズマとの間の電位差が大きくなる。これによって、被処理基板のプラズマ集中用電極部以外の部分に向かって照射されるプラズマの進路を、プラズマ集中用電極部に向かって屈曲させることができるので、プラズマをプラズマ集中用電極部およびプラズマ集中用電極部に隣接する導電部に集中して照射することができる。したがって、洗浄すべき導電部以外の部分の広範囲にわたってプラズマが照射されることを防ぐことができるので、導電部以外の部分からの飛散物の導電部への再付着を抑え、導電部を効率的に洗浄することができる。また複数の導電部を洗浄する場合、複数の導電部に隣接してプラズマ集中用電極部を設けることによって、複数の導電部に集中してプラズマを照射することができるので、複数の導電部を容易に洗浄することができる。
【0018】
また本発明によれば、配線基板は、厚み方向一方側に設けられる配線に電気的に接続され、厚み方向他方側に延びる短絡用端子部を有するので、厚み方向他方側が接するように、照射するプラズマと逆極性の電位が与えられる電極に支持させることによって、短絡用端子部を介して配線と電極とを短絡させることができる。したがって、本発明の配線基板は、配線に、照射するプラズマと逆極性の電位を容易に与えることができる。
【0019】
また本発明によれば、配線基板は、厚み方向一方側に設けられる配線に隣接して設けられ、厚み方向他方側に延びるプラズマ集中用電極部を有するので、厚み方向他方側が接するように、照射するプラズマと逆極性の電位が与えられる電極に支持させることによって、プラズマ集中用電極部と電極とを短絡させることができる。したがって、本発明の配線基板は、配線に隣接して設けられるプラズマ集中用電極部に、照射するプラズマと逆極性の電位を容易に与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のプラズマ洗浄方法は、導電性を有する導電部が形成される被処理基板の洗浄すべき導電部にプラズマを照射して導電部を洗浄する方法であり、洗浄すべき導電部にプラズマを集中させるように被処理基板にプラズマ集中処理を施し、導電部に臨む領域でプラズマを発生させ、発生させたプラズマを導電部に照射することを特徴とする。
【0021】
本発明の実施の一形態であるプラズマ洗浄方法として、図1に示す本発明の実施の他の形態であるプリント配線基板17を洗浄する場合を例示する。被処理基板であるプリント配線基板17は、基板本体20と、基板本体20の厚み方向一方側の表面部に設けられる導電部である配線19と、配線19に電気的に接続される短絡用端子部であるスルーホール21とを含む。配線19は、プリント配線基板17の厚み方向一方側に設けられ、スルーホール21は、プリント配線基板17の厚み方向他方に延びて設けられる。本実施形態では、基板本体20は、絶縁性材料、たとえばエポキシ樹脂などの樹脂などで形成される。基板本体20を絶縁性材料で形成することによって、配線19同士の間の基板本体20に導電性の異物が付着することによるリークを防ぐことができる。
【0022】
プリント配線基板17は、その厚み方向一方側の表面部17aで配線19が露出しており、この表面部17aで露出する配線19が洗浄される。この配線19が露出する表面部(以後、洗浄面と称する)17aのうち、配線19が形成されていない部分では、基板本体20が露出している。以後、基板本体が露出している部分を基部と称する。基板本体20の厚みは、たとえば0.1〜2mm程度である。配線19は、たとえば、基板本体20の配線19となるべく予め定められる部分を除去して溝を形成した後、溝に銅などの導電性材料を埋め込むことによって形成される。配線19を構成する導電性材料層の厚みは、たとえば5〜40μm程度である。
【0023】
スルーホール21は、プリント配線基板17を厚み方向に貫通するように設けられる。本実施の形態においてスルーホール21は、プリント配線基板17を厚み方向に貫通する貫通孔21aに銅などの導電性材料を充填することによって形成される。スルーホール21は、軸線方向の一端部が配線19に電気的に接続され、他端部がプリント配線基板17の洗浄面17aの反対側の表面部である厚み方向他方側の表面部(以後、下面部と称する)17bにおいて露出するように形成される。本実施形態では、配線19は複数本が設けられており、スルーホール21も配線19と同数が形成され、各配線19にそれぞれ電気的に接続されている。本実施形態とは異なるけれども、スルーホール21は、貫通孔21aの軸線に対して交差する方向に臨む基板本体20の表面部(以後、貫通孔21aの側壁部と称する)に、金属めっきなどによって前述の導電性材料が成膜されて形成されたものであってもよい。
【0024】
本実施形態のプラズマ洗浄方法によるプリント配線基板17の洗浄は、たとえば図1に示すプラズマ洗浄装置10を用いて実施することができる。図1は、本発明の実施の一形態であるプラズマ洗浄方法に好適に用いられるプラズマ洗浄装置10の構成を簡略化して示す断面図である。プラズマ洗浄装置10は、容量結合プラズマを用いるプラズマ洗浄装置である。プラズマ洗浄装置10は、基本的に、チャンバ11と、一対の電極12と、マッチングボックス13と、交流電源14とを含んで構成される。一対の電極12および交流電源14は、プラズマを発生させるプラズマ発生手段に相当する。
【0025】
チャンバ11は、真空槽とも呼ばれ、内方に空間(以後、反応室と称する)11aを有する。チャンバ11には、図示しない真空ポンプおよびガス供給装置が接続される。チャンバ11の内方の反応室11aは、真空ポンプによって真空吸引可能に形成される。チャンバ11は、反応室11a内の気体が真空ポンプによって吸引されて反応室11aが真空状態になっても大気圧に耐え得るように形成される。ここで、真空状態とは、標準大気圧(1.013×10Pa)よりも低い圧力の気体で満たされた状態のことである。反応室11aは、たとえば圧力1×10−5Pa以上1×10Pa以下の真空状態で使用される。またチャンバ11は、電気的に接地されており、その内側の内側壁面部11bには接地電位が与えられる。チャンバ11は、たとえばステンレス鋼またはガラスなどによって形成される。
【0026】
反応室11aは、ガス供給装置から供給されるプラズマ発生用ガスを貯留可能に形成される。反応室11aには、ガス供給装置によってプラズマ発生用ガスが供給される。これによって、反応室11aにプラズマ発生用ガスを散在させることができる。反応室11aに供給されるプラズマ発生用ガスの圧力は、たとえば0.01Pa以上100Pa以下である。プラズマ発生用ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどの希ガスなどが挙げられ、これらの中でもアルゴンが好適に用いられる。プラズマ発生用ガスとして希ガスを用いる場合、希ガスは、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。また、希ガスと窒素などの不活性ガスとの混合ガス、希ガスと酸素との混合ガスなどを用いることもできる。
【0027】
一対の電極12は、チャンバ11の内方の反応室11aに設けられる。一対の電極12は、互いに対向するように離隔して並設される。本実施の形態において一対の電極12は、鉛直方向に並んで設けられる。一対の電極12には、上部電極15と、上部電極15の鉛直下方に設けられる下部電極16とが含まれる。本実施形態では、下部電極16が、被処理基板であるプリント配線基板17を支持する支持電極である。
【0028】
上部電極15は、略平板形状の導電体である。本実施の形態において上部電極15は、略円板形状に形成される。上部電極15は、チャンバ11の内側壁面部11bに電気的に接続され、チャンバ11を介して電気的に接地される。
【0029】
下部電極16は、略平板形状の導電体である。本実施の形態において下部電極16は、略円板形状に形成される。下部電極16は、その平坦な一表面部である載置面部16aに、被処理基板であるプリント配線基板17を載置できるように形成される。下部電極16は、載置面部16aが上部電極15の平坦な一表面部である対向面部15aに略平行になるように配設される。ここで、略平行とは平行を含む。また下部電極16は、載置面部16aから突出するように設けられる図示しない位置決めピンを有し、該位置決めピンによってプリント配線基板17を位置決めする。下部電極16は、マッチングボックス13および交流電源14を介して電気的に接地される。
【0030】
交流電源14は、マッチングボックス13を介して下部電極16に交流電力、具体的には周波数13.56MHzなどの高周波の交流電力を供給する。このような高周波の交流電力を下部電極16に供給することによって、一対の電極12間すなわち上部電極15と下部電極16との間に、高周波の交流電圧を印加することができる。これによって、上部電極15と下部電極16との間に放電が発生する。このとき、上部電極15と下部電極16との間にプラズマ発生用ガスが貯留されていると、放電によってプラズマ発生用ガスが電離され、上部電極15と下部電極16との間にプラズマ18が発生する。
【0031】
マッチングボックス13は、インピーダンス整合器とも呼ばれ、交流電源14のインピーダンスと、交流電源14に接続された負荷であるプラズマ洗浄装置10のインピーダンスとを整合させるために設けられる。マッチングボックス13を設けることによって、交流電源14から供給される電力の損失を最小限に抑えることができる。またマッチングボックス13には、図示しない直流電流阻止コンデンサが含まれる。直流電流阻止コンデンサは、ブロッキングコンデンサとも呼ばれ、交流電源14から供給される交流電力の直流成分を排除し、交流成分のみを下部電極16に供給するために設けられる。また直流電流阻止コンデンサを設けることによって、下部電極16を負の直流バイアス電位に自己バイアスすることができる。
【0032】
マッチングボックス13および交流電源14は、本実施形態では下部電極16に電気的に接続されるけれども、これに限定されず、上部電極15に電気的に接続されてもよい。この場合、プリント配線基板17を下部電極16に載置してアノードカップリングとしてもよく、プリント配線基板17を上部電極15に支持させてカソードカップリングとしてもよいが、カソードカップリングとした方がよい。このようにプリント配線基板17を交流電源14に接続される電極に支持させることによって、より高い洗浄効果が得られる。上部電極15を、プリント配線基板17を保持する保持電極として用いる場合、上部電極15に図示しない真空吸着手段を設け、真空吸着手段によってプリント配線基板17を保持させる構成とする。
【0033】
プラズマ洗浄装置10を用いる本実施形態のプラズマ洗浄方法は、たとえば以下のようにして実施される。まず、チャンバ11の内方の下部電極16にプリント配線基板17を載置する。このとき、プリント配線基板17は、洗浄面17aの反対側の表面部である下面部17bが下部電極16の載置面16aに接するように載置される。これによって、下面部17bで露出するスルーホール21が下部電極16に電気的に接続され、スルーホール21を介して配線19と下部電極16とが短絡される。
【0034】
次いで、チャンバ11の内方の反応室11aを真空ポンプによって真空吸引して反応室11aから気体を排気し、反応室11aを真空状態にする。真空状態にされた反応室11aにガス供給装置を用いてプラズマ発生用ガスを供給し、貯留させる。次いで、交流電源14によってマッチングボックス13を介して下部電極16に交流電力を供給し、一対の電極12間に交流電圧を印加する。本実施形態では、交流電力として高周波電力を供給する。これによって、上部電極15と下部電極16との間にプラズマ放電が発生する。この放電によって、上部電極15と下部電極16との間に供給されたプラズマ発生用ガスがプラスイオン(以後、単にイオンとも称する)と電子とに電離され、上部電極15と下部電極16との間であって、配線19に臨む領域にプラズマ18が発生する。たとえばプラズマ発生用ガスとしてアルゴンガスを用いる場合、プラズマ18中にはプラスイオンとしてアルゴンイオン(Ar)が生成される。発生したプラズマ18に含まれる荷電粒子、たとえばアルゴンイオンなどのプラスイオンは、プラズマ18と下部電極16との間の電位差によって下部電極16に向かって加速され、下部電極16に載置されるプリント配線基板17の洗浄面17aに照射される。
【0035】
このとき、前述の図7に示すようにプリント配線基板5の配線部5aが装置内のいずれの箇所にも短絡されていないと、配線部5aおよび樹脂部5bはいずれも電気的に浮いた状態になる。よって、配線部5aおよび樹脂部5bは、アルゴンイオンなどのプラスイオンの照射によっていずれも表面がチャージアップ(帯電)されるので、配線部5aと樹脂部5bとの間には電位差がほとんど生じない。このため、プリント配線基板5に向かって照射されるプラスイオンの進路9は配線部5aおよび樹脂部5bのいずれにおいても屈曲されず、プラスイオンは配線部5aおよび樹脂部5bの双方に一様に照射される。
【0036】
これに対し、本実施形態では、プリント配線基板17の洗浄面17aで露出する配線19は、スルーホール21を介して下部電極16に短絡されているので、下部電極16と同電位になる。プラズマが照射されるとき、下部電極16の電位は、照射されるプラズマと逆極性の電位になっているので、配線19には、照射されるプラズマと逆極性の電位が与えられることになる。これによって、配線19は、配線19以外の部分である基部20aに比べて、プラズマ18との間の電位差が大きくなる。これによって、基部20aに向かって照射されるプラズマ18の進路を、配線19に向かって屈曲させることができるので、プラズマ18を配線19および配線19の周囲に集中して照射することができる。このように本実施形態では、配線19に、照射するプラズマ18と逆極性の電位を与える処理が施されており、この処理がプラズマ集中処理に相当する。
【0037】
このようにプラズマ集中処理が施されていると、たとえばプラズマ19中のプラスイオンが照射されるとき、配線19はプラスイオンが入射してもチャージアップされず、配線19と下部電極16との間にはプラスイオンによる電流が流れる。一方、プリント配線基板17の基部20aは、絶縁性材料で形成されて絶縁体となっており、下部電極16とは電気的に絶縁されているので、照射されるプラズマ18と逆極性の電位が与えられず、プラスイオンの照射によって表面にチャージアップが起こる。これによって配線19と基部20aとの間には電位差が生じ、配線19の電位は、基部20aの電位よりも低くなるので、プラズマ18と配線19との間の電位差は、プラズマ18と基部20aとの間の電位差よりも大きくなる。したがって基部20aに向かって照射されるプラスイオンの進路22は、プラスイオンと逆極性の電位が与えられている配線19に向かって大きく曲げられる。その結果、プラスイオンは、下部電極16に短絡されている配線19およびその周囲に集中して照射されることになる。
【0038】
プラスイオンが集中して照射される配線19の表面部では、プラスイオンのスパッタリング効果によって有機物および無機物の除去が進み、電子部品との接続に使用されるはんだなどの金属導体に対するボンディング性およびぬれ性が向上する。一方、基部20aは、配線19の周囲の一部分にはプラスイオンが照射されるけれども、プラズマ集中処理が施されない場合に比べて、プラスイオンが照射される領域は狭くなる。このようにプラスイオンが基部20aの広範囲にわたって照射されることを防ぐことができるので、基部20aにおけるスパッタリングを抑えることができる。これによって、本実施形態のように基部20aが樹脂などの有機物で形成されている場合、基部20aを構成する有機物の飛散量を低減することができるので、基部20aから飛散した有機物が配線19に再付着することを抑制し、配線19から有機物を効率的に除去することができる。したがって、飛散した有機物の再付着による洗浄品質の低下を防止し、良好な洗浄品質を実現することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態によるプラズマ洗浄方法によれば、スパッタリング洗浄に優れた効果を発揮するアルゴンイオンなどのプラスイオンを配線19およびその周囲に集中して照射させ、基部20aの広範囲にわたってプラスイオンが照射されることを防ぐことができるので、基部20aにおけるスパッタリングを抑え、基部20aからの有機物の飛散量を低減することができる。これによって、飛散した有機物の配線19への再付着を抑えることができるので、洗浄すべき配線19から有機物を効率的に除去し、配線19を効率的に洗浄することができる。
【0040】
また、本実施形態では、プラズマ発生用ガスとして特殊なガスを用いる必要がなく、該ガスを反応室11aに導入するための新たな装置を設ける必要もないので、コストの増大を抑えることができる。
【0041】
また、本実施形態で使用される本発明の他の形態であるプリント配線基板17は、厚み方向一方側に設けられる配線19に電気的に接続され、厚み方向他方側に延びる短絡用端子部であるスルーホール21を有する。このようにスルーホール21は、プリント配線基板17を厚み方向に貫通して設けられているので、プリント配線基板17は、下面部17bが下部電極16に接するように下部電極16に載置することによって、スルーホール21を介して配線19と下部電極16とを短絡させることができる。したがって、プリント配線基板17は、配線19に、照射するプラズマ18と逆極性の電位を与えるプラズマ集中処理を容易に施すことができる。
【0042】
以上に述べたように、図1に示すプリント配線基板17では、基部20aを構成する基板本体20は、樹脂などの絶縁性材料で形成される。基体本体20は、絶縁性材料に限定されず、絶縁性材料以外の材料、たとえば導電性セラミックスなどの導電性材料などで形成されてもよいが、本実施形態のように絶縁性材料で形成される方が好ましい。
【0043】
本実施形態のように基板本体20を絶縁性材料で形成することによって、プリント配線基板17を下部電極16に載置するだけで、導電部である配線19を下部電極16と短絡するとともに、プリント配線基板17の導電部を除く部分である基部20aを下部電極16と電気的に絶縁することができる。これによって、配線19に、照射するプラズマ18と逆極性の電位を与え、プラズマ18と配線19との間の電位差を、プラズマ18と基部20aとの間の電位差よりも大きくすることができる。したがって、プラズマ集中処理をより容易に施すことができる。これに対し、基板本体20が導電性材料で形成される場合、基体本体20と下部電極16との間に絶縁層を介在させる必要があるので、基板本体20は絶縁性材料で形成される方が好ましい。
【0044】
また、本実施形態では、短絡用端子部であるスルーホール21を下部電極16に直接接触させることによって電気的に接続するけれども、短絡用端子部と下部電極16との接続方法は、これに限定されるものではない。たとえば、短絡用端子部として貫通孔21aの側壁部に導電性材料を成膜して成るスルーホールを設けるとともに、導電性材料で形成される位置決めピンを下部電極16に結線されるように設け、スルーホールの内方の空間に位置決めピンを差し込むことによって接続させてもよい。これによって、プリント配線基板17の位置決めと、スルーホールを介しての配線19と下部電極16との短絡とを同時に行なうことができるので、製造工程を簡略化することができる。位置決めピンが投影される位置に配線19が形成されていない場合には、位置決めピンが投影される位置にスルーホールを形成しておき、この位置決めピンを差し込むスルーホールに対して、配線19をプリント配線基板17の内部で結線しておけばよい。
【0045】
また、本実施形態では、プリント配線基板17に短絡用端子部としてスルーホール21を設け、スルーホール21を介して導電部である配線19と下部電極16とを短絡させるけれども、導電部と下部電極16との短絡方法は、これに限定されない。たとえば、プリント配線基板17の厚み方向一方側に、配線19に電気的に接続される端子部を設けておき、プラズマ洗浄装置10に、導電性材料で形成される基板保持用治具を下部電極16に結線されるように設け、該基板保持用治具の先端部が端子部に接するように基板保持用治具にプリント配線基板17を保持させることによって、基板保持用治具および端子部を介して配線19と下部電極16とを短絡させてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、プリント配線基板17に設けられる複数の配線19の全てを洗浄するけれども、複数の配線19のうち、一部の配線19を洗浄してもよい。この場合、プリント配線基板17は、洗浄すべき一部の配線19に電気的に接続されるスルーホール21のみを有していればよい。このようなプリント配線基板17を用いることによって、洗浄すべき一部の配線のみを下部電極16に短絡させ、残余の配線19と下部電極16とを電気的に絶縁することができるので、下部電極16に短絡させた配線19のみを選択的に洗浄することができる。
【0047】
また、本実施形態では、図1に示すプリント配線基板17に対してプラズマ洗浄を行なうけれども、本発明のプラズマ洗浄方法によって洗浄される被処理基板の構成は、プリント配線基板17の構成に限定されるものではなく、他の異なる構成であってもよい。たとえば、図2に示すプリント配線基板30であってもよい。
【0048】
図2は、本発明の実施のさらに他の形態であるプリント配線基板30の構成を簡略化して示す平面図である。図3は、図2に示すプリント配線基板30の切断面線I−Iにおける断面構成を簡略化して示す断面図である。図4は、図2に示すボンディング部33を拡大して示す図である。図5は、図4に示すボンディング部33の切断面線II−IIにおける断面構成を簡略化して示す断面図である。なお図2では、図4および図5に示す配線部38および導電エリア39は、図が錯綜して理解が困難になるので、記載を省略する。
【0049】
プリント配線基板30は、基板本体31と、基板本体31の厚み方向一方側の表面部に設けられる部品搭載部32およびボンディング部33とを含んで構成される。部品搭載部32には、たとえば半導体素子などの回路素子などが実装される。ボンディング部33には、たとえば集積回路(略称IC)チップなどが実装される。プリント配線基板30では、部品搭載部32およびボンディング部33のリード配線40が導電部であり、洗浄対象となる。プリント配線基板30の部品搭載部32およびボンディング部33が露出する表面部(以後、洗浄面と称する)30aのうち、部品搭載部32およびボンディング部33が形成されていない部分では、基板本体31が露出しており、基部31aが形成されている。本実施形態では、基板本体31は、絶縁性材料、たとえばエポキシ樹脂などの樹脂などで形成される。基板本体31の厚みは、たとえば0.1〜2mm程度である。
【0050】
部品搭載部32は、本実施形態では複数個がマトリックス状に並べて設けられる。部品搭載部32は、たとえば、洗浄面30aとなる基板本体31の厚み方向一方側の表面部に銅箔などの導電性薄膜を張り付けた後、部品搭載部32となるべく予め定められる部分以外の導電性薄膜をエッチングなどで除去することによって形成される。部品搭載部32を構成する導電性薄膜の厚みは、たとえば5〜40μm程度である。
【0051】
部品搭載部32には、図3に示すように第1スルーホール34が電気的に接続されている。第1スルーホール34は、プリント配線基板30を厚み方向に貫通するように設けられている。本実施形態では第1スルーホール34は、部品搭載部32と同数が設けられ、各部品搭載部32にそれぞれ電気的に接続されている。第1スルーホール34は、前述の図1に示すプリント配線基板17に設けられるスルーホール21と同様に、基板本体31を厚み方向に貫通する貫通孔34aに導電性材料が充填されたものである。第1スルーホール34は、貫通孔34aの側壁部に導電性材料が成膜されたものであってもよい。また第1スルーホール34は、本実施形態とは異なるけれども、複数の部品搭載部32同士が図示しない配線パターンによって電気的に接続されている場合には、各部品搭載部32に対して設けずに、結線された複数の部品搭載部32のいずれか1つまたは複数に電気的に接続されるように設けられてもよい。
【0052】
プリント配線基板30は、部品搭載部32が設けられる洗浄面30aの反対側の表面部である厚み方向他方側の表面部(以後、下面部と称する)30bに下面配線35を有する。本実施形態において下面配線35は、基板本体31から突出するように設けられる。下面配線35は、第1スルーホール34に電気的に接続されるように設けられる。第1スルーホール34は部品搭載部32に電気的に接続されるので、部品搭載部32は、第1スルーホール34を介して下面配線35に電気的に接続される。下面配線35は、たとえば、下面部30bとなる基板本体31の厚み方向他方側の表面部に銅箔などの導電性薄膜を張り付けた後、下面配線35となるべく予め定められる部分以外の導電性薄膜をエッチングなどで除去することによって形成される。下面配線35を構成する導電性薄膜の厚みは、たとえば5〜40μm程度である。
【0053】
基板本体31は、より詳細には、図4および図5に示すように、プリント配線基板30の洗浄面30a側に設けられる第1基体層36と、下面部30b側に設けられる第2基体層37とを含む。第1基体層36の厚みは、たとえば0.1〜50μmである。第1基体層36は、ボンディング部33が形成される部分において開口されている。本実施形態では、第1基体層36の開口縁部36aの形状は、略正方形状である。
【0054】
ボンディング部33は、配線部38と導電エリア39と第2スルーホール41とを含む。配線部38および導電エリア39は、プリント配線基板30の厚み方向一方側に設けられる。第2スルーホール41は、導電エリア39に電気的に接続され、プリント配線基板30の厚み方向他方側に延びて設けられる。導電エリア39および第2スルーホール41は、プラズマ集中用電極部を構成する。配線部38は、ICチップなどとのボンディングに使用される複数のリード配線40を含む。リード配線40は、第1基体層36の開口縁部36aの外方から内方に向かって延びるように直線状に設けられる。本実施形態では、リード配線40は、開口縁部36aの各辺部に対して直交するように設けられる。第1基体層36の開口縁部36aの内方に向かうリード配線40の先端部には、図示しないけれども、無電解めっきなどによって金めっき、ニッケルめっきなどの金属めっきが施されている。この金属めっきが施されたリード配線40の先端部が、ボンディング部33において、本発明のプラズマ洗浄方法によってプラズマ洗浄されるプラズマ洗浄対象部位である。
【0055】
導電エリア39は、第1基体層36の開口縁部36aの内方であって、第2基体層37の第1基体層36と接する側の表面部に設けられる。導電エリア39は、リード配線40の先端部に隣接して設けられる。本実施形態において導電エリア39は、プリント配線基板30の洗浄面30aに略平行な仮想平面に投影したときに、リード配線40によって囲繞されるように形成されている。導電エリア39には、第2スルーホール41が電気的に接続されている。第2スルーホール41は、第2基体層37を厚み方向に貫通するように設けられており、プリント配線基板30の下面部30bで露出している。第2スルーホール41は、部品搭載部32に電気的に接続される第1スルーホール34と同様に、第2基体層37を厚み方向に貫通する貫通孔40aに導電性材料が充填されたものである。第2スルーホール41は、貫通孔41aの側壁部に導電性材料が成膜されたものであってもよい。
【0056】
導電エリア39は、たとえば、第1基体層36と第2基体層37とを積層して基板本体31を形成した後、導電エリア39を形成するべく予め定められる部分の第1基体層36に開口を形成して第2基体層37を露出させ、第2基体層37の厚み方向一方側の表面部にスパッタなどで導電性材料、たとえば銅などを堆積させることによって形成することができる。この場合、導電エリア39を形成した後に、第1基体層36の厚み方向一方側の表面部にリード配線40が形成される。
【0057】
前述の図1に示すプラズマ洗浄装置10を用いてプリント配線基板30を洗浄する場合、プリント配線基板30は、下面部30bが下部電極16に接するように載置される。部品搭載部32が形成されている部分では、図3に示すようにプリント配線基板30の下面部30bには下面配線35が形成されているので、下面配線35が下部電極16に接触し、電気的に接続される。下面配線35は第1スルーホール34に電気的に接続され、第1スルーホール34は部品搭載部32に電気的に接続されているので、部品搭載部32は、第1スルーホール34および下面配線35を介して下部電極16と短絡される。つまり、本実施形態では、第1スルーホール34および下面配線35が短絡用端子部である。
【0058】
このように部品搭載部32と下部電極16とを短絡させることによって、前述の実施形態と同様に、部品搭載部32に、照射するプラズマ18と逆極性の電位を与えることができるので、部品搭載部32およびその周囲にプラズマ18を集中して照射させることができる。このように本実施形態では、部品搭載部32に、照射するプラズマと逆極性の電位を与えるプラズマ集中処理が施されている。このプラズマ集中処理を施すことによって、部品搭載部32およびその周囲にプラスイオンを集中して照射させ、基部31aが広範囲にわたってスパッタリングされることを抑えることができる。したがって、基部31aが樹脂などの有機物で形成される場合であっても、基部31aからの有機物の飛散および飛散した有機物の部品搭載部32への再付着を抑えることができるので、部品搭載部32を効率的に洗浄することができる。
【0059】
また本実施形態では、短絡用端子部は第1スルーホール34および下面配線35で構成され、下面配線35は基板本体31から突出して設けられているので、部品搭載部32と下部電極16とをより確実に短絡することができる。たとえば前述のプリント配線基板17のように短絡用端子部がスルーホール21のみで構成される場合、プリント配線基板17の反りなどで、プリント配線基板17の端部に設けられるスルーホール21が下部電極16に接触せず、配線19と下部電極16とが短絡しない恐れがある。これに対し、本実施形態では、下面配線35が基体本体31から突出して設けられているので、下面配線35を下部電極16に接触させ、下面配線35を介して第1スルーホール34と下部電極16とを電気的に接続することができる。したがって、部品搭載部32と下部電極16とをより確実に短絡することができる。
【0060】
また、ボンディング部33では、図5に示すように、プリント配線基板30の下面部30bで第2スルーホール41が露出しているので、第2スルーホール41は下部電極16に接触し、電気的に接続される。第2スルーホール41は、導電エリア39に電気的に接続されているので、導電エリア39は、第2スルーホール41を介して下部電極16と短絡される。このように導電エリア39と下部電極16とを短絡させることによって、前述の部品搭載部32と同様に、導電エリア39に、照射するプラズマ18と逆極性の電位を与えることができる。導電エリア39は、リード配線40に隣接して設けられているので、導電エリア39と下部電極16とを短絡させてプラズマ洗浄を行なうことによって、導電エリア39およびその周囲のリード配線40の先端部に集中してプラズマ18を照射させることができる。このように本実施形態では、リード配線40に隣接するようにプラズマ集中用電極部である導電エリア39および第2スルーホール41を設け、プラズマ集中用電極部に、照射するプラズマと逆極性の電位を与える処理が施されており、この処理もプラズマ集中処理に相当する。このプラズマ集中処理を施すことによって、導電エリア39およびその周囲のリード配線40の先端部にプラスイオンを集中して照射させ、リード配線40の周囲の基部31aである第1基体層36が広範囲にわたってスパッタリングされることを抑えることができる。したがって、第1基体層36からの有機物の飛散および飛散した有機物のリード配線40への付着を抑制することができるので、リード配線41の先端部を効率良くプラズマ洗浄することができる。
【0061】
リード配線40の先端部を充分に洗浄するためには、導電エリア39を、プリント配線基板30の洗浄面30aに略平行な仮想平面に投影したときのリード配線40の先端部からの距離Dが100μm以下になるように形成することが好ましい。リード配線40からの距離Dが100μmを超えると、リード配線40の先端部にプラズマ18が充分に照射されず、リード配線40の洗浄を充分に行なうことができなくなる恐れがある。前記距離Dを100μm以下にすることによって、リード配線40の先端部により確実にプラズマ18を照射させることができるので、リード配線40を充分に洗浄することができる。導電エリア39とリード配線40の先端部との距離Dの下限値は、特に制限されないけれども、30μm以上であることが好ましい。前記距離Dが30μm未満であると、ICチップなどの電子部品をリード配線40に実装するときに、導電性の異物の混入などで、リード配線40と導電エリア39とが短絡する恐れがある。前記距離Dを30μm以上にすることによって、リード配線40と導電エリア39との短絡を防ぐことができる。
【0062】
このようにして洗浄されたリード配線40には、ICチップなどの電子部品が実装される。たとえば、リード配線40と電子部品のバンプ電極とを合わせながら、加熱および加圧してフリップチップボンディングして電子部品が実装される。このようにして電子部品が実装された後、導電エリア39と電子部品との間には、絶縁性樹脂などの絶縁性材料からなるアンダーフィルが充填される。これによって、導電エリア39との短絡による電子部品の誤作動を防止することができる。
【0063】
以上に述べたように、図2に示すプリント配線基板30では、リード配線40の洗浄すべき先端部に隣接して導電エリア39および第2スルーホール41で構成されるプラズマ集中用電極部を設け、導電エリア39および第2スルーホール41を下部電極16と短絡させて、リード配線40の先端部を洗浄するけれども、部品搭載部32と同様に、リード配線40毎にそれぞれスルーホールを形成し、下部電極16と短絡させて洗浄してもよい。しかしながら、配線部38に形成されるリード配線40は、多い場合には数百本となることがあるので、このような場合にリード配線40毎にスルーホールを形成することは非常に困難である。このように多数のリード配線40が設けられる場合には、本実施形態のように、リード配線40の洗浄すべき先端部に隣接して導電エリア39および第2スルーホール41で構成されるプラズマ集中用電極部を設け、プラズマ集中用電極部を下部電極16と短絡させてリード配線40を洗浄することが好ましい。これによって、各リード配線40に対してスルーホールを設けることなく、導電エリア39およびその周囲のリード配線40の先端部にプラズマ18を集中して照射させることができるので、リード配線40の先端部を容易に洗浄することができる。このように本実施形態のプリント配線基板30を用いることによって、複数のリード配線40の先端部を容易に洗浄することができる。
【0064】
またプラズマ集中用電極部は、導電エリア39および第2スルーホール41で構成されるけれども、これに限定されず、導電エリアがプリント配線基板30の厚み方向他方側に延びるように形成されたものであってもよい。この場合、第2スルーホール41は設けられず、導電エリアがプラズマ集中用電極部を構成する。
【0065】
また本実施形態では、プラズマ洗浄装置として、容量結合プラズマを用いるプラズマ洗浄装置(以後、容量結合型プラズマ洗浄装置とも称する)10を用いるけれども、これに限定されず、たとえば誘導結合プラズマ(Inductive Coupled Plasma;略称ICP)を用いるICP型プラズマ洗浄装置を用いてもよい。図6は、本発明の実施の一形態であるプラズマ洗浄方法に好適に用いられるICP型プラズマ洗浄装置50の構成を簡略化して示す断面図である。ICP型プラズマ洗浄装置50は、前述の図1に示す容量結合型プラズマ洗浄装置10と類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。ICP型プラズマ洗浄装置50は、基本的に、チャンバ53と、載置電極54と、プラズマ励起用コイル51と、高周波電源52とを含んで構成される。
【0066】
チャンバ53は、たとえば石英、セラミックなどの絶縁性材料で形成される。チャンバ53は、材料が異なること以外は、図1に示す容量結合型プラズマ洗浄装置10のチャンバ11と同様に形成される。チャンバ53には、図1に示すチャンバ11と同様に、図示しない真空ポンプおよびガス供給装置が接続される。
【0067】
プラズマ励起用コイル51は、本実施の形態では、平面渦巻状アンテナであるスパイラルアンテナである。プラズマ励起用コイル51は、たとえば銅などの導電性材料で形成される。プラズマ励起用コイル51には、図示しないインピーダンス整合器を介して高周波電源52が電気的に接続される。高周波電源52は、プラズマ励起用コイル51の両端部に接続される。高周波電源52は、たとえば13.56MHzの高周波の交流電力をプラズマ励起用コイル51に供給することができる。高周波電源52によってプラズマ励起用コイル51に高周波の交流電力を供給することによって、チャンバ53の内方の空間にプラズマ18を発生させることができる。プラズマ励起用コイル51は、スパイラルアンテナに限定されるものではなく、チャンバ53の内方の空間にプラズマ36を発生させることのできるものであればよい。
【0068】
載置電極54は、チャンバ53の内方に設けられる。載置電極54は、略平板形状の導電体である。本実施形態において載置電極54は、略円板形状に形成される。載置電極54は、その平坦な一表面部に、被処理基板であるプリント配線基板17を載置できるように形成される。載置電極54は、前述の容量結合型プラズマ洗浄装置10の下部電極54と同様に、インピーダンス整合器13および交流電源14を介して電気的に接地される。交流電源14は、インピーダンス整合器13を介して載置電極54に交流電力、たとえば13.56MHzなどの高周波の交流電力を供給することができる。このように載置電極54に交流電力を供給することによって、プラズマ18をプリント配線基板17に照射することができる。
【0069】
図6に示すICP型プラズマ洗浄装置50を用いて、たとえばプリント配線基板17を洗浄する場合、プリント配線基板17は、厚み方向一方側が載置電極54に接するように載置される。これによって、スルーホール21を介して配線19が載置電極54に短絡されるので、配線19に、照射されるプラズマと逆極性の電位を与えることができる。したがって、前述の容量結合型プラズマ洗浄装置10を用いる場合と同様に、配線19およびその周囲に集中してプラズマ18を照射することができるので、配線19を効率的に洗浄することができる。前述の図2に示すプリント配線基板30を洗浄する場合も同様に、プリント配線基板30を厚み方向他方側が接するように載置電極54に載置することによって、部品搭載部32およびリード配線40を効率的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の一形態であるプラズマ洗浄方法に好適に用いられるプラズマ洗浄装置10の構成を簡略化して示す断面図である。
【図2】本発明の実施のさらに他の形態であるプリント配線基板30の構成を簡略化して示す平面図である。
【図3】図2に示すプリント配線基板30の切断面線I−Iにおける断面構成を簡略化して示す断面図である。
【図4】図2に示すボンディング部33を拡大して示す図である。
【図5】図4に示すボンディング部33の切断面線II−IIにおける断面構成を簡略化して示す断面図である。
【図6】本発明の実施の一形態であるプラズマ洗浄方法に好適に用いられるICP型プラズマ洗浄装置50の構成を簡略化して示す断面図である。
【図7】従来のプラズマ洗浄方法によってプリント配線基板5を洗浄する様子を簡略化して示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10,50 プラズマ洗浄装置
11,53 チャンバ
11a 反応室
12 一対の電極
13 マッチングボックス
14 交流電源
15 上部電極
16 下部電極
17,30 プリント配線基板
18 プラズマ
19 配線
20,31 基板本体
20a,31a 基部
21 スルーホール
32 部品搭載部
33 ボンディング部
34 第1スルーホール
35 下面配線
38 配線部
39 導電エリア
40 リード配線
41 第2スルーホール
51 プラズマ励起用コイル
52 高周波電源
54 載置電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する導電部が形成される被処理基板の前記導電部にプラズマを照射して洗浄するプラズマ洗浄方法であって、
洗浄すべき前記導電部にプラズマを集中させるように被処理基板にプラズマ集中処理を施し、前記導電部に臨む領域でプラズマを発生させ、発生させたプラズマを前記導電部に照射することを特徴とするプラズマ洗浄方法。
【請求項2】
前記プラズマ集中処理は、
前記導電部に、照射するプラズマと逆極性の電位を与える処理であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ洗浄方法。
【請求項3】
前記プラズマ集中処理は、
前記導電部に隣接するように被処理基板にプラズマ集中用電極部を設け、前記プラズマ集中用電極部に、照射するプラズマと逆極性の電位を与える処理であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ洗浄方法。
【請求項4】
厚み方向一方側に設けられる配線と、
前記配線に電気的に接続され、厚み方向他方側に延びる短絡用端子部とを有することを特徴とする配線基板。
【請求項5】
厚み方向一方側に設けられる配線と、
前記配線に隣接して設けられ、厚み方向他方側に延びるプラズマ集中用電極部とを有することを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−196122(P2007−196122A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16889(P2006−16889)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】