説明

プラズマ発生装置、当該プラズマ発生装置を用いた洗浄浄化装置および小型電器機器

【課題】ラジカルを均一に拡散させることのできるプラズマ発生装置、当該プラズマ発生装置を用いた洗浄浄化装置および小型電器機器を得る。
【解決手段】プラズマ発生装置1は、気体収容部5に配設された第1電極12と、少なくとも第1電極12と対向する側の部分が液体収容部4中の液体17と接触するように配設した第2電極13と、を備えている。そして、第1電極12と第2電極13との間に放電を発生させることで、液体収容部4中の液体17内における気体の領域においてプラズマを生成し、液体17に含まれる水および気体に含まれる酸素からヒドロキシラジカルを生成する。気体拡散部70は、気体通路3aから圧送された気体を液体17内において拡散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生装置、当該プラズマ発生装置を用いた洗浄浄化装置および小型電器機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、気体中において安定してオゾンやラジカル等を生成し、その生成されたオゾンやラジカル等をこれらが消滅する前に微細な気泡として液体中へ拡散させるプラズマ発生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−178870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ラジカルを微細な気泡にすることで液体中に拡散させることとしているが、このような方法では、ラジカルが液体の隅々にまで均一に拡散しないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ラジカルを均一に拡散させることのできるプラズマ発生装置、当該プラズマ発生装置を用いた洗浄浄化装置および小型電器機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラズマ発生装置にあっては、水を含む液体を収容する液体収容部と、気体を収容する気体収容部と、前記気体収容部中の気体を前記液体収容部へ導く気体通路が形成され、前記液体収容部と前記気体収容部とを隔てる隔壁部と、前記気体収容部に配設された第1電極と、前記第1電極と距離を隔てられ、少なくとも前記第1電極と対になる側の部分が前記液体収容部中の液体と接触するように配設された第2電極と、前記気体収容部の気体を前記気体通路を介して前記液体収容部へ圧送させる態様で、酸素を含む気体を前記気体収容部に供給する気体供給部と、前記第1電極と前記第2電極との間に所定の電圧を印加して前記第1電極と前記第2電極との間に放電を発生させることにより、前記気体収容部に導入された気体をプラズマ化するプラズマ電源部と、を備えるプラズマ発生装置であって、前記気体通路部から圧送された気体を液体内において拡散させる気体拡散部と設けたことを主要な特徴とする。
【0007】
また、本発明の洗浄浄化装置にあっては、上記プラズマ発生装置を備えることを主要な特徴とする。
【0008】
また、本発明の小型電器機器にあっては、上記プラズマ発生装置もしくは上記洗浄浄化装置を備えることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るプラズマ発生装置によれば、気体通路部から圧送された気体を液体内において拡散させる気体拡散部を備えているため、ラジカルを均一に拡散させることができる。
【0010】
そして、洗浄浄化装置や小型電器機器に上述のプラズマ発生装置を備えさせることで、ラジカルを均一に拡散させることのできる洗浄浄化装置および小型電器機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかるプラズマ発生装置の構成を模式的に示す一部断面を含む図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかるプラズマ発生装置の第1電極側の電位と第2電極側の電位の関係を示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかるプラズマ発生装置の動作を説明するための一状態を模式的に示す部分拡大断面図である。
【図4】図4は、図3に示す状態の後の状態を模式的に示す部分拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にかかる洗浄浄化装置の構成を模式的に示す一部断面を含む図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態にかかる洗浄浄化装置の構成を模式的に示す一部断面を含む図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態にかかる洗浄浄化装置の構成を模式的に示す一部断面を含む図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態にかかるプラズマ発生装置を備える小型電器機器の具体例を示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示す小型電器機器の側断面図である。
【図10】図10は、図9のA−A断面図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態にかかるプラズマ発生装置を備える小型電器機器の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態にかかるプラズマ発生装置1は、略円筒状のケース部材2を備えている。なお、ケース部材の形状は円筒状のものに限らず、例えば、角筒状としてもよい。
【0014】
そして、ケース部材2の内側には、図1に示すように、セラミックス部材3が配設されており、このセラミックス部材3によってケース部材2の内部空間が上下に仕切られている。
【0015】
本実施形態では、ケース部材2の内部空間のうちセラミックス部材3の上側の領域が、水を含む液体17を収容する液体収容部4となっているとともに、下側の領域が気体を収容する気体収容部5となっている。
【0016】
このように、本実施形態では、セラミックス部材3が、液体収容部4と気体収容部5とを隔てる隔壁部に相当している。
【0017】
また、液体収容部4の外周端部には、ケース部材2とセラミックス部材3との隙間を塞ぐリング状のシール材6が装着されており、液体収容部4内の液体17がケース部材2とセラミックス部材3との隙間から気体収容部5内に漏れ出ないようにしている。
【0018】
そして、ケース部材2の天壁部(液体収容部4側の壁部)2aには、液体収容部4に液体17を導入する液体導入口7が設けられるとともに、液体収容部4内に導入された液体17を外部に送り出す液体排出口8が設けられている。
【0019】
また、ケース部材2の側壁2bの下部には、気体収容部5と外部とを連通する気体導入口9が設けられており、この気体導入口9には配管(気体導入路)10が挿通されている。そして、配管10を介して気体収容部5と気体供給部11とが接続されている。本実施形態では、少なくとも酸素(O)を含む気体が気体供給部11から気体収容部5内に供給されるようになっている。
【0020】
さらに、セラミックス部材3には気体通路3aが形成されており、気体供給部11から気体収容部5内に導入された気体等は、この気体通路3aを経て液体収容部4内へ送り出されることになる。
【0021】
このように、本実施形態にかかる気体供給部11は、気体収容部5の気体を気体通路3aを介して液体収容部4へ圧送させる態様で、気体収容部5に少なくとも酸素を含む気体を供給する機能を有している。そして、このように気体通路3aから圧送された気体を液体内において拡散させる気体拡散部70を備えている(後述する)。
【0022】
なお、本実施形態では、気体通路3aの孔径を約1μm〜10μm程度としており、液体収容部4に収容された液体17が気体通路3aから気体収容部5内に漏れ出ることがないようになっている。
【0023】
また、プラズマ発生装置1は、気体収容部5に配設された第1電極12と、第1電極12と距離を隔てられ、少なくとも第1電極12と対になる側の部分が液体収容部4中の液体17と接触するように配設された第2電極13と、を備えている。
【0024】
具体的には、ドーナツ状の第1電極12およびドーナツ状の第2電極13をそれぞれ気体収容部5および液体収容部4に配設している。
【0025】
ドーナツ状の第1電極12は、図1に示すように、セラミックス部材3の気体収容部5側の表面3bに、中心が気体通路3aとなるように配置されている。この第1電極12の表面は、誘電体(図示せず)によって被覆されている。
【0026】
また、第2電極13は、少なくとも第1電極12と対になる側の部分が液体収容部4中の液体17と接触するように、液体収容部4に配置されている。この第2電極13も中心が気体通路3aとなるように配置されている。すなわち、第1電極12と第2電極13とが同心状に配置されている。
【0027】
このように、本実施形態にかかるプラズマ発生装置1では、気体収容部5にドーナツ状の第1電極12を配設することで、第1電極12が、液体収容部4に導入される液体17に接触しないようにしている。
【0028】
一方、ドーナツ状の第2電極13を液体収容部4に配設することで、第2電極13(少なくとも第1電極12と対になる側の部分を含む)が、液体収容部4に導入される液体17に接触するようにしている。
【0029】
そして、第1電極12および第2電極13は、それぞれリード線14を介してプラズマ電源部15(図1参照)に電気的に接続されており、この第1電極12と第2電極13との間に所定の電圧が印加されるようになっている。なお、図2に示すように、液体17中にある第2電極13側の電位を気体中にある第1電極12側の電位よりも低くすることにより、感電の危険性を回避することができる。
【0030】
次に、上述したプラズマ発生装置1の動作ならびにヒドロキシラジカルの生成方法について説明する。
【0031】
まず、気体収容部5の気体を気体通路3aを介して液体収容部4へ圧送させる態様で酸素を含む気体を気体収容部5に供給する(気体を供給する工程)。
【0032】
本実施形態では、図1に示すように、空気をベースとして酸素を含有した気体(流量約0.01L/min〜1.0L/min(10cc/min〜1000cc/min))が、気体供給部11から配管10を介して気体収容部5に送り込まれる。このとき、気体を送り込む圧力は、約0.0098MPa〜0.49MPa(0.1kgf/cm〜5kgf/cm)程度とされる。
【0033】
このように、気体供給部11は、大気中の気体(空気)を供給する機能を備えている。なお、気体の供給流量は、気体供給部11に設けた流量制御部によって制御されている。また、気体供給部11に、大気中の気体だけでなく他の種類の気体(例えば、酸素濃度が異なる気体)を供給できる機能を持たせるとともに気種制御部を設け、様々な種類の気体のなかから1種類もしくは複数種類の気体を選択的に供給できるようにしてもよい。
【0034】
そして、気体が気体収容部5に供給されることで、気体収容部5の圧力は、大気圧にこの圧力が加わって約0.11MPa〜0.59MPa(1.1kgf/cm〜6kgf/cm)程度となり、陽圧状態になる。このように、気体収容部5を陽圧とすることで、気体収容部5から気体通路3aを経て液体収容部4へ向う気体の流れが形成される。なお、気体収容部5を陽圧とすることによっても、液体収容部4に収容された液体17が気体通路3aから気体収容部5内に漏れ出てしまうのが抑制される。
【0035】
そして、上述したように酸素を含有した気体を供給することで、図3に示すように、気体通路3aの液体収容部4側(図1の上側)の開口端3cにおいて酸素を含む気泡16が成長する(気泡を成長させる工程)。
【0036】
次に、プラズマ電源部15によって、第1電極12と第2電極13に所定の電圧が印加される。電圧としては、大気圧のもとにおいてグロー放電を可能にする電圧(パワー:約10W〜100W程度)が好ましい。このとき、プラズマ電源部15に電圧制御部を設け、第1電極12と第2電極13との間に印加する電圧を制御するようにするのが好ましい。
【0037】
そして、第1電極12と第2電極13に所定の電圧が印加されることで、第1電極12と第2電極13との間には、大気圧あるいはそれ以上の圧力の気体雰囲気のもとで放電が生じる。なお、大気圧のもとでプラズマを生成する技術については、たとえば文献A(岡崎幸子、「大気圧グロー放電プラズマとその応用」、レビュー講演:20th JSPF Annual Meeting)に報告されている。
【0038】
そして、この放電によって、液体収容部4の液体17中の気体の領域においてプラズマが生成され、液体に含まれる水や気体に含まれる酸素によってオゾンやヒドロキシラジカル等が生成される(ヒドロキシラジカルを生成する工程)。
【0039】
本実施形態では、気泡16内の気体(液体収容部4の液体17中の気液境界面近傍の気体)に電位差を生じさせてプラズマを生成している。このように、ヒドロキシラジカルが生成されやすい気液境界面の近傍(気体通路3aの液体17に臨む開口端3c近傍)に電位差を生じさせることで、より多くのオゾンやヒドロキシラジカル等を生成できるようになる。なお、本実施形態では、気体通路3aの液体17に臨む開口端3c近傍の気泡16だけでなく、液体収容部4へ送り出された気泡16内でもオゾンやヒドロキシラジカル等を生成することができる。
【0040】
こうして生成されたオゾンやヒドロキシラジカル等は、上述した気体の流れに伴って、液体収容部4へ送り出されることになる。
【0041】
本実施形態では、液体収容部4内の液体17の流れにより、ヒドロキシラジカル等を含んだ気泡16をセラミックス部材(隔壁部)3からせん断して液体17中に放出させている(気泡放出工程)。
【0042】
具体的には、気泡16が成長する液体収容部4では、液体17が導入されることによって液体17の流れ(図3および図4の矢印18参照)が生じている。図4に示すように、矢印18方向に流れる液体17が成長する気泡16にあたると、液体17の流れが気泡16にせん断力として作用し、気泡16は開口端3cから液体17中へ解き放たれる。
【0043】
ここで、本実施形態では、開口端3cの上方を覆うように気体拡散部70を備えている。この気体拡散部70は、例えば多孔質状の部材で構成されている。液体17中に解き放たれた気泡16は、浮力により上昇して気体拡散部70を通過する。これにより、気泡16の位置が変わるため、気泡16を液体17の隅々にまで均一に拡散させることができる。そして、拡散した微細な気泡16の一部は液体17中に容易に溶解する。このとき、気泡16に含まれているオゾン等が液体17中に溶解することで、液体のオゾン濃度は一気に上昇することになる。
【0044】
また、文献B(高橋正好、「マイクロバブルとナノバブルによる水環境の改善」、アクアネット、2004.6)によれば、通常、オゾンや各種のラジカルを含んだ微細な気泡16はマイナスに帯電していることが多いことが報告されている。そのため、気泡16の他の一部は、液体17中に含まれる有機物、油脂物、染料、たんぱく質、細菌等(図示せず)に容易に吸着する。液体17中の有機物等は、液体17に溶解したオゾンあるいは各種のラジカルや、有機物等に吸着した気泡16に含まれるオゾンあるいは各種のラジカル等によって分解される。
【0045】
例えば、ヒドロキシラジカル等は、約120kcal/mol程度の比較的大きなエネルギーを有している。このエネルギーは、窒素原子と窒素原子との二重結合(N=N)、炭素原子と炭素原子との二重結合(C=C)あるいは炭素原子と窒素原子との二重結合(C=N)等の結合エネルギー(〜100kcal/mol)を上回るものである。そのため、窒素や炭素等の結合からなる有機物等は、このヒドロキシラジカル等によって容易にその結合が切断されて分解されることになる。なお、このような有機物等の分解に寄与するオゾンやヒドロキシラジカル等は、塩素等のような残留性がなく時間とともに消滅するため、環境に配慮した物質でもある。
【0046】
ここで、気体拡散部70は、図5に示すように、筒状のシリコン箔程度の剛性を有する柔軟部材で構成してもよい。このようにすれば、液体17中に解き放たれた気泡16が気体拡散部70を通過する際、気泡16の圧送時による外力で気体拡散部70が振動し易くなる。このように気体拡散部70が振動すると、気泡16の位置が変わるため、気泡16を液体17の隅々にまで均一に拡散させることができる。
【0047】
あるいは、気体拡散部70は、図6に示すように、能動的に並進運動や回転運動をしてもよい。並進運動の方向は、浮力により上昇する気泡16を効率的に拡散させるために水平方向としている。同様の理由から、回転運動の方向は、水平面上で円を描く方向(回転軸が浮力方向となる方向)である。これら運動は、気体拡散部70を駆動するための駆動源71を備えることで容易に実現することができる。このように気体拡散部70が能動的に並進運動や回転運動をすれば、より確実に気泡16を液体17の隅々にまで均一に拡散させることができる。なお、気体拡散部70の全体が振動(可動)している必要はない。少なくとも気体拡散部70の一部が振動(可動)していれば、気泡16を均一に拡散させる点で一定の効果を得ることができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態にかかるプラズマ発生装置1では、気体通路3aから圧送された気体を液体内において拡散させる気体拡散部70を備えている。これにより、OHラジカルを液体17の隅々にまで均一に拡散させることができ、OHラジカルをより有効に活用することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、気体拡散部70を多孔質状の部材で構成することができる。この場合、簡単な構成でOHラジカルを均一に拡散させることが可能である。
【0050】
また、気体拡散部70を筒状の柔軟部材で構成することもできる。この場合も、簡単な構成でOHラジカルを均一に拡散させることが可能である。
【0051】
また、気体拡散部70は、能動的に可動する部分を有する。これにより、より確実にOHラジカルを均一に拡散させることが可能である。
【0052】
また、気体拡散部70は、並進運動を行う部分を有する。この場合も、より確実にOHラジカルを均一に拡散させることが可能である。
【0053】
また、気体拡散部70は、回転運動を行う部分を有する。この場合も、より確実にOHラジカルを均一に拡散させることが可能である。
【0054】
また、本実施形態では、第1電極12を気体収容部5に配設するとともに、第2電極13を、少なくとも第1電極12と対向する側の部分が液体収容部4中の液体と接触するように配設している。そして、第1電極12と第2電極13との間に放電を発生させることで、液体収容部4中の液体17内における気体の領域においてプラズマを生成し、液体17に含まれる水および気体に含まれる酸素からヒドロキシラジカルを生成するようにしている。このような構成および方法によれば、液体17の電気抵抗による影響をそれほど受けることなく第1電極12と第2電極13との間に放電を生じさせることができるため、気体をより確実にプラズマ化することができ、より安定してオゾンやラジカル等を大量に生成することができるようになる。
【0055】
また本実施形態によれば、液体収容部4に液体17が導入され、セラミックス部材3によって画成された気体収容部5にプラズマを生成する第1電極12が配設されている。そのため、第1電極12は液体17には全く接触せず、液体17の電気抵抗の影響を受けることがなくなる。これにより、第1電極12と第2電極13との間に放電を安定して発生させることができ、気体収容部5に導入された酸素を含む気体が確実にプラズマ化されて、水と酸素からオゾンあるいはヒドロキシラジカル等を安定に生成させることができる。
【0056】
また本実施形態によれば、気体収容部5に酸素を含む気体を導入することで、気体収容部5を陽圧にし、気体収容部5から気体通路3aを経て液体収容部4へ向う気体の流れを形成している。そして、この気体の流れに乗って気体通路3aの液体17に臨む開口端3cにおいて成長する気泡16内にオゾンやヒドロキシラジカル等が生成されるようにしている。そして、所定の大きさに成長した気泡16を液体17の流れによってせん断して液体17中に解き放たれるようにしている。
【0057】
すなわち、本実施形態では、気泡16内の気体(液体収容部4の液体17中の気液境界面近傍の気体)中でオゾンやヒドロキシラジカル等が生成されるようにしている。そして、オゾンやヒドロキシラジカル等を含んだ気体が微細な気泡16として液体17中に拡散されるようにしている。これにより、オゾンや各種のラジカルを発生させた後、これらが消滅する前に極めて短時間で効率的にそのオゾンや各種のラジカルを液体17中に送り込むことができるようになる。
【0058】
そして、オゾンや各種のラジカルを含んだ微細な気泡16が液体17中に拡散することによって、液体17のオゾン濃度が高められるとともに液体17中に含まれる有機物等に気泡16が吸着する。これにより、液体17中に溶解したオゾン等や吸着した気泡16に含まれる各種のラジカルによって有機物や細菌等を効率的に分解することができる。
【0059】
さらに、プラズマを生成する電極としてドーナツ状の第1電極12および第2電極13を用いることで、プラズマ発生装置1のプラズマ電源部15や気体供給部11を除いた本体部分の大きさをコンパクトにすることができる。その結果、既存の装置に組み込みやすくすることができる。また、新たに装置に搭載する場合においても、その占有空間を最小限に抑えることができる。
【0060】
また、気体供給部11が、気体の種類を制御する気種制御部を有していれば、オゾンやヒドロキシラジカル等の生成量等の調整を行うことが可能となる。
【0061】
このとき、気体供給部11が大気中の空気を供給する機能を有していれば、より簡便に気体を供給することができる。
【0062】
また、流量制御部により気体の供給流量を制御するようにすれば、より安定的にプラズマを生成することができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、プラズマ発生装置1を用いた洗浄浄化装置の一例について説明する。
【0064】
洗浄浄化装置20は、図7に示すように、上述のプラズマ発生装置1を備えている。そして、本実施形態にかかる洗浄浄化装置20では、セラミックス部材3を収容するケース部材2の液体導入口7に、被洗浄処理対象部30から処理の完了した液体17を液体収容部4に導入する配管(液体導入路)21が接続されている。また、液体排出口8には、液体収容部4内の液体を被洗浄処理対象部30へ送る配管(液体排出路)22が接続されている。
【0065】
次に、上述した洗浄浄化装置20の動作について説明する。
【0066】
まず、図7に示すように、空気をベースとして酸素を含有した所定流量の気体が、気体供給部11から配管(気体導入路)10を介して気体収容部5内に送り込まれる。そして、気体収容部5が陽圧状態とされて、その気体収容部5から気体通路3aを経て液体収容部4へ向う気体の流れが形成される。
【0067】
このとき、液体収容部4には被洗浄処理対象部30から処理の完了した液体17が配管(液体導入路)21から液体導入口7を経て導入される。
【0068】
次に、第1電極12と第2電極13に所定の電圧を印加することによって、第1電極12と第2電極13との間において放電が生じる。この放電によって、液体収容部4の液体17中の気体の領域においてプラズマが生成され、液体17に含まれる水や気体に含まれる酸素によってオゾンやヒドロキシラジカル等が生成される(図3参照)。
【0069】
そして、生成されたオゾンや各種のラジカルは、上述した気体の流れとともに液体収容部4へ送り出されることとなる。このとき、成長する気泡は、上述したように液体17の流れによってせん断され、微細な気泡16として開口端3cから液体中へ解き放たれる。
【0070】
液体中に解き放たれた微細な気泡16は液体の隅々にまで拡散する。このとき、拡散した微細な気泡16の一部は、気泡16に含まれていたオゾンやヒドロキシラジカル等とともに容易に液体17中に溶解して、オゾン濃度が上昇する。また、一部の気泡16は、オゾンやヒドロキシラジカル等を含んだ状態で、液体17中に含まれる有機物等に容易に吸着する。さらに、気泡16の一部には、微細な有機物が吸着する。
【0071】
こうして、液体17中の有機物等は、液体17に溶解したオゾンあるいはラジカルや、有機物等に吸着した気泡16に含まれるオゾンあるいはラジカル等によって効率的に分解される。そして、有機物等が分解されて浄化された液体17は、液体排出口8から配管(液体排出路)22を経て被洗浄処理対象部30へ戻され、再び使用されることになる。
【0072】
なお、上記では、洗浄浄化装置20として、ケース部材2内で液体17を洗浄浄化する使用態様(使用態様A)のものを例示したが、この他に、微細な気泡を拡散させた液体17を洗浄液として所定の装置に供給する使用態様(使用態様B)も可能である。
【0073】
この場合には、洗浄浄化装置20は、以下のように動作する。
【0074】
まず、ケース部材2内に導入された液体17中に、オゾンやヒドロキシラジカル等を含んだ微細な気泡16が拡散されるとともに、微細な気泡16に含まれていたオゾンやラジカルが溶解される。このとき、気泡16の一部には、微細な有機物が吸着する。
【0075】
次に、この液体17が洗浄液として被洗浄処理対象部30へ供給される。被洗浄処理対象部30では、有機物等が、液体17に溶解したオゾンあるいはラジカルや、有機物等に吸着した気泡16に含まれるオゾンあるいはラジカル等によって効率的に分解されることになる。
【0076】
なお、洗浄浄化装置を使用態様Aとして使用する場合、たとえば浴槽に溜めた湯、雨水、汚水、下水等の各種の液体の浄化に、この洗浄浄化装置を適用することが可能である。また、使用態様Bとして使用する場合、たとえば洗濯機や食器洗い機等の各種家電製品、口内洗浄機等の健康家電製品、トイレ等の衛生機器等に使用する水に洗浄液として使用することができる。また、家電製品等の他に、たとえば食品の洗浄や工業製品の製造工程における洗浄等の産業界へ幅広く適用することができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態によれば、洗浄浄化装置20に上述のプラズマ発生装置1を備えさせることで、OHラジカルを均一に拡散させることのできる洗浄浄化装置20を得ることができる。
【0078】
また、洗浄浄化装置20にプラズマ発生装置1の位置を調整する位置調整部を設ければ、よりプラズマを安定化させることができる。
【0079】
(第3実施形態)
次に、プラズマ発生装置1を用いた小型電器機器の一例について、図8〜10を参照して説明する。以下では、除毛装置としての電気かみそりのヘッド部を洗浄する洗浄浄化装置を例示する。
【0080】
図8〜10に示す小型電器機器としての洗浄浄化装置40は、除毛装置の一種である電気かみそり50のヘッド部51を洗浄するものである。すなわち、洗浄浄化装置40は、上述した使用態様Bとして使用する洗浄浄化装置である。この場合、電気かみそり50のヘッド部51が被洗浄処理対象部30に相当する。
【0081】
洗浄浄化装置40は、図8〜10に示すように、ヘッド部51を下向きにした電気かみそり50を挿入するための開口41aを有した筐体41と、開口41aを通じて挿入されたヘッド部51を受容する受け皿42とを備えている。
【0082】
また、洗浄浄化装置40は、液体を貯留するタンク43と、受け皿42に連通されたオーバーフロー部44と、タンク43内の液体を液体導入口7に循環供給するポンプ45と、を備えている。さらに、液体を濾過するフィルタ46aを有したカートリッジ46と、タンク43内の気密状態を制御するための開閉弁47と、液体を循環するための循環経路と、を備えている。
【0083】
この循環経路は、タンク43に貯留された液体を液体導入口7に導く配管(液体導入路)21と、液体排出口8から排出される液体を受け皿42に導く配管(液体排出路)22と、受け皿42から排出される液体をカートリッジ46に導く経路23(排出路)と、オーバーフロー部44から排出される液体をカートリッジ46に導く経路24と、カートリッジ46から排出された液体をポンプ45に導く経路25と、ポンプ45から送出される液体をタンク43に導く経路26と、で構成されている。また、タンク43には、気密経路27を介して開閉弁47が接続されている。以下、各構成部品について説明する。
【0084】
筐体41は、その後部に電気かみそり50の把持部52と当接するスタンド部41bを有し、開口41aから挿入される電気かみそり50を受け皿42と共に保持するものである。スタンド部41bの前面には、図8に示すように、洗浄浄化装置40に電気かみそり50が装着されたことを検知する接点部材41cが設けられている。接点部材41cは、把持部52背面に設けられた端子52aとの接触により電気かみそり50の装着を検知するものであり、このような検知機能に併せて、電気かみそり50に各種制御信号や駆動電力を出力する機能を持たせている。
【0085】
筐体41の前部上方には、洗浄後にヘッド部51を乾燥させるためのファン48を収容している。筐体41前面には、ファン48用の通気窓41dや、洗浄動作を実行するための動作ボタン41e、動作状態を表示するランプ41f等が設けられている。筐体41の後面側は、タンク43を着装する着装部となっており、タンク43の各口43a、43b、43cと連結される連結口41g、41h、41iを有している。連結口41gは配管(液体導入路)21と繋がっており、連結口41hは経路26と繋がっており、連結口41iは気密経路27と繋がっている。
【0086】
受け皿42は、ヘッド部51の形状に沿うような凹形状とされており、底壁部の背面側にはプラズマ発生装置1が設けられている。なお、洗浄浄化装置40に、プラズマ発生装置1の位置を調整する位置調整部を設けるようにしてもよい。例えば、底壁部の背面側にアーム部を設けるとともに、当該アーム部によりプラズマ発生装置1を揺動可能に取り付け、位置調整部によってプラズマ発生装置1が水平に配置されるように調整できるようにすることが可能である。こうすれば、プラズマ発生装置1を常時水平に配置させることができ、より安定的にプラズマを生成することができるようになる。
【0087】
このプラズマ発生装置1は、配管(液体導入路)21と繋がった液体導入口7と、配管(液体排出路)22と繋がった液体排出口8と有している。そして、受け皿42の底壁部には、配管(液体排出路)22と繋がった供給口41jが設けられるとともに、経路23と繋がった排出口41kが設けられている。
【0088】
また、受け皿42の底部壁背面側にはヒータ49が設けられている(図10参照)。このヒータ49は、ファン48と連動してヘッド部51の乾燥を行うものである。
【0089】
そして、受け皿42の前方にはオーバーフロー部44が設けられており、本実施形態においては受け皿42とオーバーフロー部44とが一体形成されている。オーバーフロー部44の入口は受け皿42と繋がっており、出口は経路24と繋がっている。経路24は、オーバーフロー部44の出口から、受け皿42後部に設けられた中継口42aを介してカートリッジ46に至る。
【0090】
タンク43は、吐出口43aおよび流入口43bと、気密状態を開放するための通気口43cとを前面に有しており、通気口43cの開閉により吐出口43aからの液体吐出が制御されている。タンク43は筐体41後面側に着脱自在に設けられ、筐体41への装着状態では、吐出口43aが、連結口41gに連結されて配管(液体導入路)21によりプラズマ発生装置1の液体導入口7と繋がり、流入口43bが、連結口41hに連結されて経路26によりポンプ45の送出口45aと繋がり、通気口43cが、連結口41iに連結されて気密経路27により開閉弁47と繋がっている。
【0091】
カートリッジ46は、フィルタ46aを内部に収容した略箱状体であり、上部に流入口46bを有し、前部に流出口46cを有している。このカートリッジ46は、筐体41の下部後方に着脱自在に設けられており、筐体41への装着状体では、流入口46bが、経路23(排出路)により排出口41kと繋がるとともに、経路24によりオーバーフロー部44の出口と繋がっている。そして、流出口46cが、経路25によりポンプ45の吸入口45bと繋がっている。
【0092】
かかる構成とすることで、タンク43からプラズマ発生装置1に導入され液体に、オゾンやヒドロキシラジカル等を含んだ微細な気泡16を拡散させて生成した洗浄液が、供給口41jから受け皿42内に供給されることなる。すなわち、生成された洗浄液は、被洗浄処理対象部30としてのヘッド部51に供給されることとなる。そして、液体(洗浄液)に溶解したオゾンあるいはラジカルや、気泡16に含まれるオゾンあるいはラジカル等によって、ヘッド部51に付着した有機物等を効率的に分解させることができるようになる。
【0093】
なお、上述した使用態様Aとして洗浄浄化装置を使用する場合は、図11に示すように、プラズマ発生装置1のケース部材2の天壁部を開放し、ケース部材2内で洗浄浄化された液体17にヘッド部51を浸すようにしてもよい。このようにしても、使用態様Bの場合と同様、ヘッド部51に付着した有機物等を効率的に分解させることができる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態によれば、洗浄浄化装置(小型電器機器)40に上述のプラズマ発生装置1を備えさせることで、OHラジカルを均一に拡散させることのできる小型電器機器を得ることができる。
【0095】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0096】
例えば、上記実施形態では、気体通路が形成された隔壁部としてセラミックス部材を例示したが、隔壁部の材料は、セラミックス部材に限られるものではない。例えば、気体と液体を隔壁するガラス板などのような適当な部材を用い、この部材に写真製版とエッチングを施すことによって細孔径が約1μm〜10μm程度の微細孔を形成したものを用いることも可能である。
【0097】
また、隔壁部に複数の気体通路を設けるようにしてもよい。
【0098】
また、洗浄浄化装置や小型電器機器も上記実施形態体で示したものに限らず、例えば、電動歯ブラシの洗浄浄化装置や浄水装置、洗剤等が含まれた水を排水前に浄化する装置等に本発明を適用することが可能である。
【0099】
また、液体収容部や気体収容部、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 プラズマ発生装置
3 セラミックス部材(隔壁部)
3a 気体通路
4 液体収容部
5 気体収容部
10 配管(気体導入路)
11 気体供給部
12 第1電極
13 第2電極
15 プラズマ電源部
20…洗浄浄化装置
21 配管(液体導入路)
22 配管(液体排出路)
40 洗浄浄化装置(小型電器機器)
70 気体拡散部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む液体を収容する液体収容部と、
気体を収容する気体収容部と、
前記気体収容部中の気体を前記液体収容部へ導く気体通路が形成され、前記液体収容部と前記気体収容部とを隔てる隔壁部と、
前記気体収容部に配設された第1電極と、
前記第1電極と距離を隔てられ、少なくとも前記第1電極と対になる側の部分が前記液体収容部中の液体と接触するように配設された第2電極と、
前記気体収容部の気体を前記気体通路を介して前記液体収容部へ圧送させる態様で、酸素を含む気体を前記気体収容部に供給する気体供給部と、
前記第1電極と前記第2電極との間に所定の電圧を印加して前記第1電極と前記第2電極との間に放電を発生させることにより、前記気体収容部に導入された気体をプラズマ化するプラズマ電源部と、を備えるプラズマ発生装置であって、
前記気体通路部から圧送された気体を液体内において拡散させる気体拡散部を設けたことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記気体拡散部は、多孔質状の部材で構成されていることを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記気体拡散部は、筒状の柔軟部材で構成されていることを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記気体拡散部は、能動的に可動する部分を有することを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記気体拡散部は、並進運動を行う部分を有することを特徴とする請求項4記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記気体拡散部は、回転運動を行う部分を有することを特徴とする請求項4記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のプラズマ発生装置を備えることを特徴とする洗浄浄化装置。
【請求項8】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のプラズマ発生装置もしくは請求項6記載の洗浄浄化装置を備えることを特徴とする小型電器機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−164558(P2012−164558A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24932(P2011−24932)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】