説明

プラズマ調理方法および装置

【課題】飲食品の表面を迅速に焼き上げる調理方法および調理器を提供することを目的とする。それにより、例えば、グラタン又はピザの表面のチーズを溶かす、パイの外皮のクリスピーな食感を出す、餃子などの麺帯食品にクリスピーな食感と焼き立ての風味を付与する、おむすびの表面におこげを作る、肉類の旨みを閉じ込める等の調理が可能な方法および調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】吹き出し形プラズマ発生装置1と、同軸ケーブル3と、ガス管4と、同軸導波管変換器5と、マイクロ波伝播方向変換器6と、送風機7と、ガス導入口8と、ガス排気口9と、前記の吹き出し形プラズマ発生装置の格納室22と、前記のプラズマ発生装置を支持する支持棒23と、前記の支持棒の長さおよび平面の位置を制御するコントロール器24を備える電子レンジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いた調理装置に係るもので、詳しくは、大気圧の吹き出し形プラズマを飲食品、例えば、グラタン、ピザ、パン、ビスケット、おむすび、肉類、餃子等に直接照射させ、調理を施す、プラズマ調理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジと電気オーブンとIH(Induction Heating)クッキングヒータ等の調理用の電気機器が食品工場、業務店、又家庭で多く使われ、電気エネルギーを用いて迅速に飲食物を調理し得ることができるようになった。
【0003】
電子レンジは、マグネトロンを用い、一般的な2.45GHzのマイクロ波を発生させ、そのマイクロ波を飲食物に与えて、飲食物内部の水分子を振動させることにより、発生する熱を利用して飲食物の調理を行うものである。
電気オーブンは、ハロゲンヒータ等の電気ヒーターを用いて飲食品を直接加熱するものである。
IHクッキングヒータは、インバータを用い、加熱コイルに高周波(20kHz〜60Hz)電流を供給し、磁界を発生させ、その磁界によりなべ底に渦電流が流れ、なべ自体がもつ電気抵抗により発生するジュール熱を利用して飲食物の調理を行うものである。
【0004】
一方、飲食品の調理においては、飲食品の表面を迅速に焼き上げる方法が要求されている。例えば、グラタン又はピザの表面のチーズを溶かすため、パイの外皮のクリスピーな食感を出すため、餃子などの麺帯食品にクリスピーな食感と焼き立ての風味を付与するため、おむすびの表面におこげを作るため、肉類の旨みを閉じ込めるため、等の調理においては、迅速な表面焼き上げ調理が要求されている。
【0005】
しかし、状来の提案されている調理器は迅速な表面焼き上げ調理ができない。
電子レンジの場合は、飲食物の形状、食塩の濃度の差により、飲食物の全体にマイクロ波電力が均一に吸収されず、温度のむらが生じるし、又、飲食物の内部から食品が内部から温まるので、飲食物の迅速な表面焼き上げ調理ができない。
電気オーブンの場合は、調理器の内部の空気がかくはんしないために、飲食品に当たる温度の分布が不均一になるし、そのために調理器の内部の温度制御ができない問題がある。又、電気ヒーターから発生した熱は、調理器の内部において空間的に全体に放射され、内部壁にも吸収されるので、熱を飲食品に集中させることができず、飲食品の表面を焼き上げるのに時間がかかり、迅速な焼き上げ調理はできない。
IHクッキングヒータの場合も、なべをジュール熱で加熱して調理を行うので、飲食品の表面を迅速に焼き上げる調理ができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、飲食品の表面を迅速に焼き上げる調理方法および調理器を提供することを目的とする。それにより、例えば、グラタン又はピザの表面のチーズを溶かす、パイの外皮のクリスピーな食感を出す、餃子などの麺帯食品にクリスピーな食感と焼き立ての風味を付与する、おむすびの表面におこげを作る、肉類の旨みを閉じ込める等の調理が可能な方法および調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
プラズマを用いて飲食品を直接加熱させることを特徴とする調理方法、および調理器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来の電気調理器、あるいは、飲食品工場の生産ラインに吹き出し形大気圧プラズマを具備し、プラズマで飲食品の表面を直接加熱することで、迅速に飲食物の表面を焼き上げる調理が可能となり、例えば、グラタン又はピザの表面のチーズを溶かす、パイの外皮のクリスピーな食感を出す、餃子などの麺帯食品にクリスピーな食感と焼き立ての風味を付与する、おむすびの表面におこげを作る、肉類の旨みを閉じ込める等の調理が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
飲食品を調理には、飲食品類等によって、数十℃から千℃程度の範囲において熱の制御が必要である。
状来の大気圧におけるプラズマは、温度が数千℃から数万℃の熱プラズマであったために、本発明を実際実施することが困難であった。
しかし、最近では、大気圧においても、室温から千℃程度の熱を持つ非熱平衡プラズマを発生させる技術が開発されてある。例えば、直流放電と、数十Hz〜数十kHzのAC電源を用いた誘電体バリア放電(DBD:dielectric barrier discharge)と、数MHz〜数百MHzの高周波電源を用いたICP(inductively coupling discharge)放電がある。また、最近では、2.454Hzのマイクロ波電源を用いたマイクロ波放電も開発されてある(非特許文献1参照)。これらのプラズマ発生技術により本発明の実現が可能となっている。
【非特許文献1】松尾雄平、小野茂、堤井信力、「大気圧マイクロ波H20プラズマ源」電気学会プラズマ研究会資料PST−04−104(2004)。
【0010】
図1に、本発明を実施するために、従来の電子レンジに吹き出し形大気圧プラズマを備えた飲食品の調理装置の模式図を示す。
この調理装置は、図2に示す、マグネトロン10と、調理室11と、導波管12と、駆動モータ13と、モータ軸14と、ターンテーブル15を備える従来の電子レンジに、
さらに、プラズマ発生装置1と、同軸ケーブル3と、ガス管4と、同軸導波管変換器5と、マイクロ波伝播方向変換器6と、送風機7と、ガス導入口8と、ガス排気口9と、前期のプラズマ発生装置1の格納室22と、格納室22と調理室11との間のドア21と、前記のプラズマ発生装置11の支持棒23と、支持棒23の長さおよび平面の位置を制御することによりプラズマと飲食品の距離や位置を制御するコントロール器24を備える。
【0011】
この調理装置は、通常の電子レンジによる調理も可能であるし、必要に応じて、格納室22と調理室11との間のドア21を開け、格納室22からプラズマ発生装置1を調理室11に出して、飲食品30の表面を迅速に焼き上げる調理を行える。
プラズマ発生装置1を用いて調理を行う際には、マグネトロン10で発生して導波管12と伝播するマイクロ波は、マイクロ波伝播方向変換器6により同軸導波管変換器5に導入され、同軸ケーブル3を通ってプラズマ発生装置1に導入され、プラズマが発生する。
ガスは、ガス導入口8から導入され、送風機7によりガス管4を通って形プラズマ発生装置1に供給される。調理室11に溜まるガスは、ガス排気口9より排気される。
【0012】
プラズマ発生装置1は、従来の電子レンジのマグネトロン10により発生する2.45GHzのマイクロ波を用いて大気圧における非熱平衡プラズマを発生させる装置であれば良い。飲食品を調理には、飲食品類等によって、数十℃から千℃程度の範囲において熱の制御が必要であるので、それに応じて、マイクロ波の電力と、ガスの流量と、プラズマと飲食品との間の距離等を制御することにより、プラズマの温度の制御が可能となる。
【0013】
ガスとしては、空気でも良いし、その以外に不反応ガスであるアルゴン等も良い。
ガスとして空気を利用する場合は、プラズマにより有害物質である、オゾン(O)と窒素酸化物濃度(NO、NO、NOx)が発生する恐れがある。
その有害物の発生を抑えるために、空気は適宜の触媒のフィルターを通して、吹き出し形プラズマ発生装置1に導入させる。触媒のフィルターの設置位置は、例えば、ガス導入口8の前、又はガス導入口8と送風機7との間、又は送風機7とガス管4との間、又はガス管4と吹き出し形プラズマ発生装置1との間等の適宜なところで良い。
又、ガス排気口9には発生した前期の有害物を除去するために適宜なフィルターを設置する。
【0014】
一方、ガスとして不反応ガス、例えば、アルゴンを用いると、飲食品の酸化を抑えることができ、飲食品の本来の素直な味を出す調理が可能となる。
【0015】
最近、家庭に普及されているIH(Induction Heating)クッキングヒータは、最大3kWの電力で20kHz〜60Hzの高周波を電源として用いているので、その電源を用いてプラズマを発生させることにより、従来のIH(Induction Heating)クッキングヒータ調理器に、プラズマ調理室を設けることも可能である。
【0016】
一方、図3は、飲食品工場の生産ラインにある従来の電気ヒーター又はガスバーナーの代わりにプラズマ発生装置1を設置し、飲食品3をプラズマ2で直接加熱する調理ようすを示す模式図である。
一個又は複数のプラズマ発生装置1が設置されている調理室に、コンベア20の上に乗せられた飲食品30を通すことにより、プラズマ2により直接加熱され、調理が行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を実施するためにプラズマ発生システムを備える電子レンジの模式図。
【図2】従来の電子レンジの模式図。
【図3】本発明を飲食品工場で実施するために、プラズマ調理室を設けたコンベア生産ラインのようすを示す模式図。
【符号の説明】
【0018】
1 吹き出し形プラズマ発生装置
2 プラズマ
3 同軸ケーブル
4 ガス導入管
5 同軸導波管変換器
6 マイクロ波伝搬方向変換器
7 送風機
8 ガス排気口
10 マグネトロン
11 調理室
12 導波管
13 駆動モータ
14 モータ軸
15 ターンテーブル
20 コンベア
21 ドア
22 プラズマ発生装置の格納室
23 プラズマ発生装置の支持棒
24 支持棒23の長さおよび平面の位置を制御するコントロール器
30 飲食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧における吹き出し形プラズマを用いて飲食品を直接加熱させることを特徴とする調理方法。
【請求項2】
大気圧における吹き出し形プラズマを用いて飲食品を直接加熱させることを特徴とする調理器。
【請求項3】
プラズマ発生用の電源と、吹き出し形プラズマ発生装置と、送風機と、ガス管と、送風機と、ガス導入口と、ガス排気口と、飲食品を置くテーブルを備える調理器。
【請求項4】
吹き出し形プラズマ発生装置と、同軸ケーブルと、ガス管と、同軸導波管変換器と、マイクロ波伝播方向変換器と、送風機と、ガス導入口と、ガス排気口と、前記の吹き出し形プラズマ発生装置の格納室と、前記のプラズマ発生装置を支持する支持棒と、前記の支持棒の長さおよび平面の位置を制御するコントロール器を備える電子レンジ。
【請求項5】
吹き出し形プラズマ発生装置と、同軸ケーブルと、ガス管と、送風機と、ガス導入口と、ガス排気口と、前記のプラズマ発生装置の格納室と、前記のプラズマ発生装置を支持する支持棒と、前記の支持棒の長さおよび平面の位置を制御するコントロール器と、調理室を備えるIHクッキングヒータ調理器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−295909(P2007−295909A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152635(P2006−152635)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(502028566)
【Fターム(参考)】