説明

プリプレグの製造方法、コンポジット積層板の製造方法およびコンポジット積層板

【課題】低コスト化を維持しつつ、低線膨張化と打抜き性を兼ね備えたコンポジット積層板用プリプレグの製造方法、コンポジット積層板の製造方法およびコンポジット積層板を提供すること。
【解決手段】コンポジット積層板に用いられ、第一の層と第二の層とから構成されるプリプレグを連続的に製造する方法であって、ガラス織布に対して第一の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥させる第一の工程と、前記ガラス織布上にガラス不織布を載置し、前記ガラス不織布の上面から第二の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥させる第二の工程と、ガラス織布およびガラス不織布からなる積層体を加工し、前記第一の工程で得られた第一の層と、前記第二の工程で得られた第二の層とを形成する第三の工程と、を含むことを特徴とするコンポジット積層板用プリプレグの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグの製造方法、コンポジット積層板の製造方法およびコンポジット積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路板には多くの種類の積層板が用いられるが、これらの中でも、ガラス不織布を中間層基材、ガラス織布を表面層基材としコンポジット積層板は、基本的な機械的特性、電気的特性に優れるとともに低価格であるため、産業・民生など広い分野で使用されている。そして、このように複数種の基材を用いたコンポジット積層板用のプリプレグを効率的に生産する方法についても数多くの検討がなされてきている(例えば、特許文献1)。
【0003】
コンポジット積層板は、一般的にガラス織布基材積層板と比較すると線膨張率が大きい傾向があるため、搭載部品との半田接続信頼性をより向上させるために、コンポジット積層板の低線膨張率化が検討されている。
【0004】
コンポジット積層板に低線膨張性を付与する手法のひとつとして、基材に含浸させる樹脂組成物に無機充填材を配合する手法が挙げられる(例えば、特許文献2)。近年、高密度実装化が進み、さらなる、低線膨張化が要求されるようになってきた。低線膨張化には、無機充填材を増量する手法があるが、ガラス織布に塗布する樹脂材料とガラス不職布に塗布する樹脂材料で、ガラス不織布に塗布する樹脂材料中に無機充填材を含む場合には、表面層と中間層との間の密着性が必ずしも十分ではなく、コンポジット積層板の裁断、打ち抜き加工などの加工工程において表面層と中間層の間で剥離の懸念があり、熱時の安定性と加工性を兼ね備えたコンポジット積層板の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2003−236868号公報
【特許文献2】特開2005−290029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情の鑑みてなされたものであり、低コスト化を維持しつつ、熱時の安定性と、加工性を兼ね備えたコンポジット積層板用プリプレグの製造方法、コンポジット積層板の製造方法およびコンポジット積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるプリプレグの製造方法は、コンポジット積層板に用いられ、第一の層と第二の層とから構成されるプリプレグを連続的に製造する方法であって、ガラス織布に対して第一の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥させる第一の工程と、前記ガラス織布上にガラス不織布を載置し、前記ガラス不織布の上面から第二の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥させる第二の工程と、ガラス織布およびガラス不織布からなる積層体を加工し、ガラス織布および含浸樹脂からなる表面層と、ガラス不織布及び含浸樹脂からなる中間層を形成する第三の工程と、
を含むことを特徴とする。
【0007】
プリプレグの製造方法の一般的方法として、ガラス織布の一方の面側から樹脂材料を含浸したあと、含浸させた面にガラス不織布を載置し、ガラス不織布の面側から他の樹脂材料を含浸させ、そのあと加熱乾燥を行っている。この製造方法では、ガラス不織布を載置したとき、ガラス織布に含浸していた樹脂材料の一部がガラス不織布側に吸引される。次の工程で、他の樹脂材料を含浸させるとガラス不織布の内部で樹脂材料が混ざり合い、不均一な樹脂材料となる場合がある。さらに、無機充填材が多い樹脂系では、ガラス織布とガラス不織布との界面で樹脂材料がより不均一となり、積層板の加工時、層間で十分な密着性が与えられないことが懸念される。
【0008】
これに対し、本発明において、ガラス織布に対して第一の樹脂材料を含浸したあと加熱乾燥させる。これにより、ガラス織布上にガラス不織布を載置したとき、第一の樹脂材料は加熱乾燥により高粘度化しており、ガラス不織布側に第一の樹脂材料が容易には浸透していかない。従って、上述したガラス不織布の内部で樹脂材料が混ざり合い、不均一な樹脂材料とならない。
【0009】
また、前記ガラス織布に対して、一方の面側から前記第一の樹脂材料を含浸させるとともに、前記面上に前記ガラス不織布を載置してもよい。これにより、第一の樹脂材料が一方の面側のガラス織布面側に多く含浸されており、その面上にガラス不織布を載置することにより、ガラス不織布との境界面に積層接着するのに十分な樹脂材料を供給できる。
【0010】
さらに、前記ガラス織布に対して、他方の面側から第三の樹脂材料を含浸させる第四の工程を含んでもよい。これにより、他方の面側に樹脂分を補うことができる。そのため、他方の面側に、たとえば、金属箔を積層接着するとき、接着するのに十分な樹脂分を確保することが可能となる。
【0011】
また、第一の樹脂材料、第二の樹脂材料は以下のようにすることができる。
【0012】
第一の樹脂材料は、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含み、さらに、フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0013】
第二の樹脂材料は、無機充填材と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含み、フェノキシ樹脂を含まなくともよい。
【0014】
これにより、フェノキシ樹脂を含む第一の樹脂材料と第二の樹脂材料との相容性の違いから樹脂材料同士が混ざりにくく界面が均一に形成されたプリプレグとすることが出来る。
【0015】
また、プリプレグの製造方法により得られたプリプレグ2枚を、第二の層を対向させ、第一の層が外側になるように重ね合わせ、積層成形するコンポジット積層板の製造方法を提供できる。また、上述のコンポジット積層板の製造方法によりコンポジット積層板を提供できる。
【0016】
これにより、低コスト化を維持しつつ、熱時の安定性と、加工性を兼ね備えたコンポジット積層板を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低コスト化を維持しつつ、熱時の安定性と、加工性を兼ね備えたコンポジット積層板用プリプレグの製造方法、コンポジット積層板の製造方法およびコンポジット積層板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のプリプレグの製造方法およびコンポジット積層板について説明する。
【0019】
プリプレグの製造方法は、以下の4工程に分けることができる。
【0020】
すなわち、
(第一の工程)ガラス織布に対して第一の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥させる工程。
(第二の工程)ガラス織布上にガラス不織布を載置し、ガラス不織布の上面から第二の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥させる工程。
(第三の工程)ガラス織布およびガラス不織布からなる積層体を加工し、ガラス織布および含浸樹脂からなる表面層と、ガラス不織布及び含浸樹脂からなる中間層を形成する工程。
(第四の工程)ガラス織布に対して、他方の面側から第三の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥する工程。
【0021】
本発明によるプリプレグの製造方法は、コンポジット積層板に用いられ、第一の層と第二の層から構成されるプリプレグを連続的に製造する方法である。コンポジット積層板は、コンポジット積層板となったとき、表面層を形成する第一の層と、コアを形成する第二の層から構成されている。
【0022】
以下各工程について説明する。
[第一の工程]
図1に示すように、ガラス織布に対して第一の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥させる。ガラス織布に対して第一の樹脂材料を含浸したあと加熱乾燥させることにより、ガラス織布上にガラス不織布を載置したとき、第一の樹脂材料は加熱乾燥により高粘度化しており、ガラス不織布側に第一の樹脂材料が容易には浸透していかない。そして、ガラス不織布の上面から第二の樹脂材料を含浸したとき、ガラス織布とガラス不織布の境界面に第二の樹脂材料が達することにより、均一な境界面を形成することができる。
【0023】
ガラス織布としては特に限定されないが、単位面積当たりの重量が、150〜250g/cm であるものが好ましい。さらに好ましくは190〜230g/cmである。これにより、コンポジット積層板の機械的強度を確保することができる。
【0024】
また、ガラス織布に対して、一方の面側から第一の樹脂材料を含浸させるとともに、上記面上にガラス不織布を載置するようにしてもよい。これにより、第一の樹脂材料が一方の面側のガラス織布面側に多く含浸されており、その面上にガラス不織布を載置することにより、ガラス不織布との境界面に積層接着するのに十分な樹脂材料を供給できる。
【0025】
第一の樹脂材料は、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含んでいてもよい。エポキシ樹脂を含有することにより耐熱性を付与することができる。
【0026】
ここでエポキシ樹脂としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートなどの複素環式エポキシ樹脂のほか、脂環式型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
また、コンポジット積層板として、ハロゲン物質を含まないものを製造する場合は、上記エポキシ樹脂として、実質的にハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂を用いることができる。なおここで、実質的にハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂としては、例えば、樹脂中のハロゲン原子の含有量が1重量%以下であるものを用いることができる。
【0028】
第一の樹脂材料には、硬化剤を用いてもよい。硬化剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、イソシアネート化合物、ノボラック型フェノール樹脂、イミダゾール化合物、ジシアンジアミドなどが挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
第一の樹脂材料は、フェノキシ樹脂をさらに含有してもよい。これにより、コンポジット積層板の表面層と中間層との間に可塑性を付与することができ、熱履歴に対する中間層の寸法変化
を吸収することができるので、表面層側の線膨張を低減させ、表面層に搭載された部品との半田接続信頼性を向上させることができる。また同時に、フェノキシ樹脂を含む第一の樹脂材料と第二の樹脂材料との相容性の違いから樹脂材料同士が混じり合わず界面が均一に形成されたプリプレグとすることができ、コンポジット積層板としたとき表面層と中間層界面の密着力に優れた積層板とすることができる。
【0030】
ここで用いられるフェノキシ樹脂としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA・F混合型フェノキシ樹脂などのビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂のほか、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
また、フェノキシ樹脂の分子量としては特に限定されないが、重量平均分子量が10000以上であるものを用いることが好ましい。さらに好ましくは30000〜80000である。これにより、上記特性をより効果的に発現させることができる。
【0032】
また、フェノキシ樹脂以外にも、密着性や接続信頼性を向上させるため、他の成分も用いることができる。例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル系共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ナイロン、スチレン−イソプレン共重合体、及びスチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体などを用いることができ、単独あるいは2種以上混合しても良い。
【0033】
また、コンポジット積層板として、ハロゲン物質を含まないものを製造する場合は、上記フェノキシ樹脂として、実質的にハロゲン原子を含まないフェノキシ樹脂を用いることができる。なおここで、実質的にハロゲン原子を含まないフェノキシ樹脂としては、例えば、樹脂中のハロゲン原子の含有量が1重量%以下であるものを用いることができる。
【0034】
第一の樹脂材料において、エポキシ樹脂(E)とフェノキシ樹脂(P)との配合割合(E:P)は特に限定されないが、重量比で1:9〜8:2の割合で含有することが好ましい。さらに好ましくは3:7〜7:3である。これにより、コンポジット積層板としての耐熱性と、上記効果とを高い水準で両立させることができる。
【0035】
第一の樹脂材料は、樹脂材料として上記エポキシ樹脂と硬化剤とフェノキシ樹脂とを主成分として含有するが、このほかにも、本発明の効果を損なわない範囲内において、その他の樹脂材料、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などのほか、エポキシ樹脂と反応するテトラブロムビスフェノールAなどの化合物を配合して用いることができる。
【0036】
また、第一の樹脂材料は、樹脂成分のほか、無機充填材を配合してもよい。これにより、コンポジット積層板に難燃性、低線膨張性、耐トラッキング性などを付与することができる。
【0037】
ここで用いられる無機充填材としては特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等が挙げられる。これらの中でも、水酸化アルミニウムを用いると、上記効果に加えてコンポジット積層板に耐燃性を付与することができる。
【0038】
無機充填材を用いる場合、その配合量としては特に限定されないが、上記樹脂成分の合計100重量部に対して、20〜80重量部とすることが好ましい。
【0039】
ガラス織布に塗布される第一の樹脂材料の量は特に限定されないが、ガラス織布100重量部に対して、20〜200重量部であることが好ましい。さらに好ましくは40〜150重量部である。第一の樹脂材料の量が上記下範囲内であれば、コンポジット積層板の表面層と中間層との間の密着性を維持し、裁断、打ち抜き加工などの加工工程において表面層と中間層の間で剥離が発生すること防ぐことができる。
【0040】
ガラス織布に第一の樹脂材料を塗布する方法としては特に限定されないが、第一の樹脂材料をワニスとし、コンマロールコーター、ナイフコーター、ダイスコーター、リバースコーター等のコーター装置を用いてガラス織布の上面に塗工する方法が好ましい。特に、コンマロールコーター、ナイフコーターを用いることが好ましい。これにより、第一の樹脂材料を高粘度ワニスの形態で用いても、均一な塗工を簡易に行うことができる。
【0041】
本発明のプリプレグの製造方法においては、上記工程の後、第一の樹脂材料を塗布したガラス織布を加熱乾燥する条件は、特に限定されないが、例えば、120〜180℃、1〜5分間で行うことができる。
[第二の工程]
次に、ガラス織布上にガラス不織布を載置し、ガラス不織布の上面から第二の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥させる。
【0042】
第一の工程で、第一の樹脂材料は加熱乾燥されている。そのため、ガラス織布上にガラス不織布を載置したとき、第一の樹脂材料は加熱乾燥により高粘度化しており、ガラス不織布側に第一の樹脂材料が容易には浸透していかない。そして、ガラス不織布の上面から第二の樹脂材料を含浸したとき、ガラス織布とガラス不織布の境界面に達っしてもガラス織布側へ第二の樹脂材料が浸透していかないため、ガラス織布とガラス不織布の境界面で均一な樹脂材料の境界面を形成することができる。
【0043】
ガラス不織布としては特に限定されないが、単位面積当たりの重量が25〜150g/cm2であるものを用いることが好ましい。さらに好ましくは30〜120g/cm2である。これにより、コンポジット積層板の機械的強度を確保することができる。
【0044】
上記第二の工程の、ガラス不織布の上から、エポキシ樹脂と無機充填材とを含有する第二の樹脂材料を塗布する。
【0045】
上記第二の工程で用いられる第二の樹脂材料は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材とを含有してもよい。これにより、コンポジット積層板に、低線膨張化と打抜き性とを付与することができる。
【0046】
第二の樹脂材料に用いるエポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材としては、第一の樹脂材料と同様のものを用いることができる。このほかにも、その他の樹脂成分、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アミド樹脂などのほか、エポキシ樹脂と反応するテトラブロムビスフェノールAなどの化合物を配合して用いることができる。
【0047】
第二の樹脂材料における無機充填材の配合量としては特に限定されないが、第二の樹脂材料中の樹脂成分(樹脂、硬化剤など)の合計100重量部に対して、130〜250重量部とすることが好ましい。さらに好ましくは150〜200重量部である。配合量が上記下限値より少ないと、低熱膨張性、寸法安定性の向上効果が小さくなることがある。また、上記上限値を越えると、成形性が低下し、これに伴う熱時特性の低下がみられることがある。ここでいう、樹脂材料は、無機充填材を含む材料をいい、樹脂成分とは、無機充填材を除いた、樹脂や硬化剤をいう。
【0048】
無機充填材として、特に限定はされないが、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物等を挙げることができる。これらは単独または複数の組合せ用いることができる。また、これらの中で水酸化アルミニウムを用いることがより好ましい。これにより、高い耐燃性を維持しつつ、耐熱性をさらに向上させることができる。
【0049】
ガラス不織布に塗布される第二の樹脂材料の量は特に限定されないが、ガラス不織布100重量部に対して、500〜2000重量部であることが好ましい。さらに好ましくは700〜1500重量部である。第二の樹脂材料の量が上記下限値より少ないと、コンポジット積層板を成形する際にプリプレグ間の密着性が小さくなる傾向があり、コンポジット積層板の熱時特性に影響することがある。上記上限値より多いと、成形性が低下するようになる。
【0050】
ガラス不織布に第二の樹脂材料を塗布する方法としては特に限定されないが、第二の樹脂材料をワニスとし、コンマロールコーター、ナイフコーター、ダイスコーター、リバースコーター等のコーター装置を用いてガラス不織布の上面に塗工する方法が好ましい。特に、コンマロールコーター、ナイフコーターを用いることが好ましい。これを加熱乾燥して、第二の樹脂材料中の溶剤を蒸発させることができる。この加熱乾燥条件は、特に限定されないが、例えば、120〜180℃、1〜10分間で行うことができる。
[第三の工程]
次に、ガラス織布およびガラス不織布からなる積層体を加工し、ガラス織布および含浸樹脂からなる表面層と、ガラス不織布及び含浸樹脂からなる中間層を形成する。
【0051】
第一および第二の工程で得られたガラス織布およびガラス不織布を積層体とし、プリプレグを構成する、ガラス織布および含浸樹脂からなる表面層と、ガラス不織布及び含浸樹脂からなる中間層となる。
[第四の工程]
プリプレグの製造方法においては、上記以外の工程を有していてもよい。たとえば、ガラス織布に対して、他方の面側から第三の樹脂材料を含浸させる。第一の工程で、例えば、ガラス織布の一方の面側から第一の樹脂材料を含浸させたとき、第一の樹脂材料の粘度などの影響により、均一に樹脂材料が含浸されないことがあった場合、第四の工程で、ガラス織布の他方の面側から第三の樹脂材料を含浸させることにより、他方の面側の樹脂材料量を補うことができる。そのため、他方の面側に、たとえば、金属箔を積層接着するとき、接着するのに十分な樹脂分を確保することが可能となる。
【0052】
第三の樹脂材料としては、エポキシ樹脂と硬化剤を含む樹脂組成物を好適に用いることができる。このほかにも、その他の樹脂成分、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などのほか、エポキシ樹脂と反応するテトラブロムビスフェノールAなどの化合物を配合して用いることができる。
【0053】
また、第三の樹脂材料は、これら樹脂成分のほか、無機充填材を配合することができる。これにより、コンポジット積層板に難燃性、低線膨張性、耐トラッキング性などを付与することができる。
【0054】
ここで用いられる無機充填材としては特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等が挙げられる。これらの中でも、水酸化アルミニウムを用いると、上記効果に加えてコンポジット積層板に耐燃性を付与することができる。
【0055】
無機充填材を用いる場合、その配合量としては特に限定されないが、上記樹脂成分の合計100重量部に対して、20〜80重量部とすることが好ましい。
【0056】
第三の樹脂材料に用いるエポキシ樹脂、硬化剤としては、第一の樹脂材料と同様のものを用いることができる。この中でも、第一の樹脂材料、第三の樹脂材料とも、同じガラス織布に塗布含浸されるものであるので、同一種のものを用いることが好ましい。
【0057】
第三の樹脂材料の形態としては特に限定されないが、以上に説明した成分を含有したワニスとすることが好ましい。これにより、ガラス織布に塗布する際の取り扱い性と、ガラス織布への含浸性とを良好なものとすることができる。
【0058】
ガラス織布に塗布される第三の樹脂材料の量は特に限定されないが、ガラス織布100重量部に対して、20〜200重量部であることが好ましい。さらに好ましくは40〜150重量部である。第三の樹脂材料の量が上記下限値より少ないと、銅箔とプリプレグとの密着性が低下するようになる。また、上記上限値より多いと、樹脂量が多くなり成形性の低下や寸法安定性の低下を生じやすくなる。
【0059】
ガラス織布に第三の樹脂材料を塗布する方法としては特に限定されないが、第三の樹脂材料をワニスとし、転写ロール、ロールコーター、ナイフコーター等の装置を用いて塗工する方法が好ましい。また、加熱乾燥する条件は特に限定されないが、例えば、120〜180℃、1〜10分間で行うことができる。これにより、第一〜第四の工程で用いた樹脂組成物中の溶剤分を実質的に蒸発除去するとともに、樹脂材料の硬化反応を途中まで進めることにより、取り扱い性が良好なプリプレグを得ることができる。
【0060】
得られたプリプレグは、カッター装置により所定長さのプリプレグに切断した後、コンポジット積層板の成形に用いることができる。また、長尺物のまま連続的なコンポジット積層板の成形に供してもよい。
【0061】
また、これらの樹脂材料の好適な組合せ例を示す。
(1)第一の樹脂材料として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を70重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を27重量部、硬化剤としてジシアンジアミドを3重量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルを0.1重量部、水酸化アルミニウムを50重量部。
【0062】
第二の樹脂材料として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を25重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を25重量部、テトラブロムビスフェノールAを25重量部、ノボラック型フェノール樹脂を25重量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルを0.1重量部、水酸化アルミニウムを175重量部。
(2)第一の樹脂材料として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を50重量部、フェノキシ樹脂を47重量部、硬化剤としてジシアンジアミドを3重量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルを0.1重量部、水酸化アルミニウムを50重量部。
【0063】
第二の樹脂材料として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を25重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を25重量部、テトラブロムビスフェノールAを25重量部、ノボラック型フェノール樹脂を25重量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルを0.1重量部、タルクを175重量部。
【0064】
次に、本発明のコンポジット積層板の製造方法について説明する。
【0065】
本発明のコンポジット積層板の製造方法は、上記本発明のプリプレグの製造方法で得られたプリプレグ2枚を用い、ガラス不織布側を内側にして重ね合わせ、加熱加圧成形することを特徴とする。
【0066】
上記加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、例えば、温度150〜200℃、圧力1〜4MPa、時間60〜120分間で行うことができる。
【0067】
このようにして得られたコンポジット積層板は、低線膨張化と打抜き性などに優れたものである。
【0068】
次に、本発明のプリプレグの製造方法について、その好適な形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0069】
図1において、ガラス織布1は巻き出し装置から順次連続的に供給される。そして、ガラス織布1の上面側2に、第一の樹脂材料3をコンマコーター装置4により所定量塗工し、乾燥装置5に等して加熱乾燥する。次いで、ガラス不織布7を巻き出し装置から供給し、表面層に接するようにガラス不織布7を載置し重ね合わせガラス不織布7の上面側8から、第二の樹脂材料9をコンマコーター装置10により所定量塗工する。これを乾燥装置11に通した後、さらに、ガラス織布の下面側12から、第三の樹脂材料13を転写ロール装置14により所定量塗工する。これを乾燥装置15に通した後、裁断装置16により所定長さに裁断して、プリプレグ17を得ることができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
1.第一の樹脂材料、第二の樹脂材料、及び、第三の樹脂材料の調製
下記の原料を、表1に示した量(重量部)で配合し、樹脂組成物(a1)〜(a2)、樹脂組成物(b1)〜(b3)、及び、第三の樹脂材料を得た。
(1)ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂:大日本インキ化学社製・「エピクロン850」、エポキシ当量190
(2)クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂:大日本インキ化学社製・「エピクロンN−690−75M」、エポキシ当量225
(3)フェノキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製・「エピコ−ト1256」、重量平均分子量50000
(4)テトラブロムビスフェノールA
(5)ノボラック型フェノール樹脂:住友ベークライト社製・「PR−51470」
(6)ジシアンジアミド
(7)硬化促進剤:2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル
(8)無機充填材1:住友化学社製・水酸化アルミニウム「CL−310」
(9)無機充填材2:富士タルク工業株式会社製・タルク「PKP−53」
(10)溶剤:アセトン
【0071】
【表1】

【0072】
2.プリプレグ及びコンポジット積層板の製造
<実施例1>
ガラス織布(日東紡績社製・「WEA7628」、単位面積当たりの重量180g/m2)に、ガラス織布100重量部に対して第一の樹脂材料(a1)100重量部を塗布した。これを150℃で2分間加熱乾燥した。
【0073】
次に、ガラス織布の第一の樹脂材料(a1)を塗布した側にガラス不織布(キュムラス社製・「EPM―4100B」、単位面積当たりの重量100g/m2 )を重ね合わせガラス不織布のガラス織布とは反対側から、ガラス不織布100重量部に対して第二の樹脂材料(b1)1000重量部を塗布した。これを150℃で6分間加熱乾燥した。
【0074】
次に、ガラス織布のガラス不織布とは反対側から、ガラス織布100重量部に対して第三の樹脂材料50重量部を塗布した。これを150℃で2分間加熱乾燥して、プリプレグを得た。
【0075】
なお、樹脂組成物、及び、樹脂材料の塗布量は、すべて固形分換算値である。
【0076】
上記で得られたプリプレグ2枚を、ガラス不織布側を内側にして重ね合わせ、さらに、その両外面に18μm厚みの電解銅箔(古河サーキットフォイル社製・「GTSMP−18」)を重ね、180℃、4MPaで90分間加熱加圧成形してコンポジット積層板を得た。
<実施例2>
第一の樹脂材料(a1)の代わりに、第一の樹脂材料(a2)を用い、 第二の樹脂材料(b1)の代わりに、第二の樹脂材料(b2)を用いた。これ以外は、実施例1と同様にしてプリプレグ及びコンポジット積層板を得た。
<実施例3>
第一の樹脂材料(a1)の代わりに、第一の樹脂材料(a2)を用いた。これ以外は、実施例1と同様にしてプリプレグ及びコンポジット積層板を得た。
<比較例1>
ガラス織布(日東紡績社製・「WEA7628」、単位面積当たりの重量180g/m2)に、ガラス織布100重量部に対して第一の樹脂材料(a1)100重量部を塗布した。その第一の樹脂材料(a1)塗布した上面側からガラス不織布(キュムラス社製・「EPM―4100B」、単位面積当たりの重量100g/m2 )を重ね合わせ、150℃で2分間加熱乾燥した。
【0077】
次に、ガラス不織布のガラス織布とは反対側から、ガラス不織布100重量部に対して第二の樹脂材料(b1)1000重量部を塗布した。これを150℃で6分間加熱乾燥した。これ以外は、実施例1と同様にしてプリプレグ及びコンポジット積層板を得た。
<比較例2>
ガラス織布(日東紡績社製・「WEA7628」、単位面積当たりの重量180g/m2)に、ガラス織布100重量部に対して第一の樹脂材料(a1)100重量部を塗布した。その第一の樹脂材料(a1)塗布した上面側からガラス不織布(キュムラス社製・「EPM―4100B」、単位面積当たりの重量100g/m2 )を重ね合わせ、ガラス織布とは反対側から、ガラス不織布100重量部に対して第二の樹脂材料(b3)1000重量部を塗布したのち、150℃で2分間加熱乾燥した。
【0078】
これ以外は、実施例1と同様にしてプリプレグ及びコンポジット積層板を得た。
【0079】
実施例及び比較例で得られたコンポジット積層板について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
3.評価方法
(1)熱膨張係数:得られたコンポジット積層板の熱膨張係数をTMA法により測定した。測定はコンポジット積層板の平面方向で、表面材のガラス織布の2つの繊維方向に平行な方向(X,Y)および、コンポジット積層板の厚み方向(Z)について行った。値は250℃から毎分10℃の速度での降温時における、50℃から100℃の間の平均熱膨張を読んだ。
(2)打抜き加工性:得られたコンポジット積層板の熱膨張係数を、アイダエンジニアリング株式会社製・150t打抜きプレス「NC1−150」により打抜き、剥離の有無を目視にて確認した。
【0082】
○:剥離なし △:微小な剥離あり ×:剥離あり
(3)熱時の安定性:積層板にチップ抵抗(3216)を実装し、冷熱試験機にて温度サイクル試験を行った。温度条件は−40℃ 9分 ⇔ 125℃ 9分。評価方法は500サイクル終了時にハンダ接続部の断面を顕微鏡観察し、クラックの有無を調べた。
【0083】
○:クラックなし △:微小なクラックあり ×:クラックあり
実施例1、2、3はいずれも、本発明の製造方法により得られたプリプレグ及びコンポジット積層板であり、従来のコンポジット積層板の加工性を維持しながら、熱膨張係数を低減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の製造方法によれば、加工性を実質的に維持しながら、熱膨張係数の小さなコンポジットエポキシ積層板に適用できるプリプレグと、このプリプレグを用いたコンポジット基材エポキシ積層板を製造することができる。本発明の製造方法により得られたコンポジット積層板は、ガラス織布基材エポキシ樹脂積層板と同様な用途への展開が期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明のプリプレグの製造方法の形態の一例を示した側面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 ガラス織布
3 第一の樹脂材料
4 コンマコーター装置
5 乾燥装置
7 ガラス不織布
8 重ね合わせロール
9 第二の樹脂材料
10 コンマコーター装置
11 乾燥装置
13 第三の樹脂材料
14 転写ロール装置
15 乾燥装置
16 裁断装置
17 プリプレグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポジット積層板に用いられ、第一の層と第二の層とから構成されるプリプレグを連続的に製造する方法であって、
ガラス織布に対して第一の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥させる第一の工程と、
前記ガラス織布上にガラス不織布を載置し、前記ガラス不織布の上面から第二の樹脂材料を含浸し、加熱乾燥させる第二の工程と、
前記ガラス織布および前記ガラス不織布からなる積層体を加工し、前記第一の工程で得られた第一の層と、前記第二の工程で得られた第二の層とを形成する第三の工程と、
を含むことを特徴とするコンポジット積層板用プリプレグの製造方法。
【請求項2】
前記ガラス織布に対して、一方の面側から前記第一の樹脂材料を含浸させるとともに、前記面上に前記ガラス不織布を載置する請求項1に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項3】
前記ガラス織布に対して、他方の面側から第三の樹脂材料を含浸させる第四の工程を含む請求項2に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項4】
前記第一の樹脂材料は、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含む請求項1ないし3のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項5】
前記第一の樹脂材料は、フェノキシ樹脂をさらに含む請求項1ないし4のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項6】
前記第二の樹脂材料は、無機充填材と、エポキシ樹脂とを含み、フェノキシ樹脂を含まない請求項1ないし5のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項7】
前記第一の樹脂材料に含まれるフェノキシ樹脂の含有量は、前記第一の樹脂材料100重量部中、5重量部以上、50重量部以下である請求項1ないし6のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項8】
前記第二の樹脂材料に含まれる無機充填材の含有量は、前記第二の樹脂成分100重量部に対して、130重量部以上、250重量部以下、である請求項1ないし7のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の製造方法により得られたプリプレグ2枚を、第二の層を対向させ、第一の層が外側になるように重ね合わせ、積層成形することを特徴とするコンポジット積層板の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のコンポジット積層板の製造方法により得られたことを特徴とするコンポジット積層板。

【図1】
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【公開番号】特開2008−280470(P2008−280470A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127529(P2007−127529)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】