説明

プリプレグシート

【課題】本発明は、無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物が半硬化状態で基材シートに担持されてなるプリプレグシートの柔軟性の向上を課題としている。
【解決手段】プリプレグシートに係る本発明は、無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物が半硬化状態で基材シートに担持されてなるプリプレグシートであって、前記基材シートに織布が用いられており、該織布を構成する糸と糸との間隙が1〜5mmのいずれかであることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物が半硬化状態で基材シートに担持されてなるプリプレグシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータなどのスイッチング電源素子としてパワーモジュールなどと呼ばれる電子部品が用いられており、該パワーモジュールとしては、電源をスイッチングするためのパワートランジスタとともに制御素子などを一つの回路基板上に搭載し樹脂モールドによって封止されたものが広く用いられている。
このパワーモジュールは、パワートランジスタからの発熱が大きいため前記回路基板として高放熱性の回路基板が用いられており、絶縁層を介して回路層と金属板層とが積層された金属ベース回路基板が用いられたりしている。
そして、金属ベース回路基板の金属板層をモジュール表面に露出させて、この金属板層の表面から放熱フィンなどの放熱部材に熱を伝達して放熱させることによりパワーモジュール内部の温度上昇を防止することが行われている。
【0003】
このパワーモジュールなどの発熱部材から放熱部材を用いて放熱を実施する場合には、例えば、発熱部材と放熱部材とを単に接触させるだけでは、間に空気層が形成されて十分な熱伝導が行われないおそれがある。
このようなことから、無機フィラーが高充填された接着性を有するポリマー組成物によってシート状に形成された熱伝導シートを発熱部材と放熱部材との間に介装させ、この熱伝導シートを発熱部材と放熱部材とに接着させて空気層の形成を防止して放熱性を向上させることが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、無機フィラーを含有するエポキシ樹脂脂組成物を半硬化な状態で銅箔シートの片面に担持させたプリプレグシートをヒートシンクに熱接着させてモジュール外への放熱に利用することが記載されている。
なお、このように無機フィラーを高充填させるとエポキシ樹脂組成物が脆くなり、例えば、薄いシート状に形成させると少しの力で割れを生じてしまうおそれがある(例えば、特許文献1の段落〔0042〕参照)。
【0005】
なお、下記特許文献2には、無機フィラーを含有させたエポキシ樹脂組成物をガラスクロスなどの基材シートに担持させてプリプレグシートの熱伝導性を向上させる試みがなされているが、このようなプリプレグシートは、通常、ガラスクロス自体が、ガラス繊維が複数本束ねられた糸が緊密に平織りされて曲げ強度が高い状態に形成されていることから十分な柔軟性を有していない。
【0006】
このようなことから、無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物が半硬化状態で基材シートに担持されてなるプリプレグシートにおいては、柔軟性の付与が難しい状況となっている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−165281号公報
【特許文献2】特開2008−274046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点の解決を図ることを課題としており、無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物が半硬化状態で基材シートに担持されてなるプリプレグシートの柔軟性の向上を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物を担持させるための基材シートについて鋭意検討を行った結果、所定の間隙を設けて織られた職布を基材シートに採用することによってプリプレグシートの柔軟性の向上を図り得ることを見出し本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、上記の課題を解決するためのプリプレグシートに係る本発明は、無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物が半硬化状態で基材シートに担持されてなるプリプレグシートであって、前記基材シートに織布が用いられており、該織布を構成する糸と糸との間隙が1〜5mmのいずれかであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプリプレグシートには、構成する糸と糸との間隙が1〜5mmのいずれかである織布が前記基材シートとして用いられていることからプリプレグシートに曲げを加えた際にこの基材シートが応力の集中を防止しつつプリプレグシートの補強に有効に作用する。
すなわち、本発明によれば、無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物が半硬化状態で基材シートに担持されてなるプリプレグシートの柔軟性を向上させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について(添付図面に基づき)説明する。
図1は、本実施形態のプリプレグシートを示す断面図で、図2は、上面図である。
【0013】
この図1に示されているように、本実施形態に係るプリプレグシート1は、半硬化状態のエポキシ樹脂組成物3が基材シート2に含浸された状態で担持されておりシート状に形成されている。
【0014】
前記基材シート2は、複数本の繊維が集合されてなる糸20が織製された織布であり、本実施形態においては、前記基材シート2は、前記糸20が隣接する他の糸との間に1〜5mmの間隙を形成させた状態に平織された織布である。
【0015】
この基材シート2を構成する糸20の太さは、通常、60〜600Texとされ、基材シート2の目付は、通常、100〜600g/m2のいずれかとされる。
なお、本実施形態において用いられる基材シート2の糸20どうしの間に形成される間隙の幅が1〜5mmのいずれかであることについては、例えば、糸20が延在する方向と直交する方向に数cmの測定区間を決定し、この測定区間を横切る糸本数を測定して測定区間の長さをこの糸本数で除することで糸ピッチを求め、その後、この糸ピッチから糸の太さを減じることで糸と糸との間隙幅を求めて確認することができる。
例えば、図2の「L」の長さ(測定区間)を糸本数「3」で除して糸ピッチ(P)を求め、この糸ピッチ(P)から糸太さ(D)を減じた値(P−D)を糸と糸との間隙の値として求めることができる。
なお、図2では、間隙の幅を求める方法の説明を簡略化すべく、糸本数3本の場合を例示しているが、通常、精度の高い測定結果を得るためには、糸本数が10本以上となる測定区間を設定することが好ましい。
【0016】
なお、基材シート2の糸の間隙幅が1〜5mmのいずれかであることについては、経糸と横糸との両方において該当することがプリプレグシート1の柔軟性付与に重要である。
糸20どうしの間の間隙が上記のような範囲とされるのは、上記範囲を超える広い範囲の間隙が糸の間に形成されている場合には、間隙部分の面積が広くなりすぎてエポキシ樹脂組成物を基材シートに担持させることが困難となるためである。
なお、エポキシ樹脂組成物の担持に関しては上記範囲よりも狭い範囲で間隙が形成された基材シートであっても特に問題を発生させるものではないが、このような間隙幅の狭い基材シートは、糸と糸との間が緊密化されることによってプリプレグシートに対する柔軟性付与が困難となるおそれがある。
【0017】
前記糸20を構成する繊維20aは、特に限定されるものではなく、前記糸20は、木綿、羊毛、絹などの天然繊維、ポリエチレン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、ポリプロピレン樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッソ樹脂繊維などの合成樹脂繊維、カーボンファイバー、ガラスファイバー、ロックウール、アルミナ(酸化アルミニウム)繊維、シリカ(二酸化ケイ素)繊維、アルミナ・シリカ複合繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維などの無機繊維が用いられてなるもの及びこれらが複数種類混紡されてなるものが挙げられる。
また、前記糸20は、前記繊維からなる単糸であっても、繊維が複数本撚りのかけられた“より糸”であっても、撚りのかけられていない複数本の繊維からなる“引きそろえ糸”であってもよい。
【0018】
なお、前記糸20は、エポキシ樹脂組成物3との親和性を向上させて基材シート2からエポキシ樹脂組成物3が脱落するおそれをより低減させるべくプライマー処理などの表面処理を施したものであってもよい。
本実施形態においては、合成樹脂繊維を用いる場合であれば、後述するエポキシ樹脂組成物3との親和性に優れていることからポリエステル樹脂繊維が用いられた糸が好適に用いられ得る。
しかも、図3に示すように芯鞘構造を有し、芯部20a1がポリエステル樹脂で形成され、該芯部20a1に用いられているポリエステル樹脂よりも融点の低い低融点ポリエステル樹脂で鞘部20a2が形成されている熱融着性のポリエステル繊維(以下「熱融着性繊維20」ともいう)は、プライマー処理などの特別な処理を施すことなくエポキシ樹脂組成物3に対して優れた接着性を発揮させ得る点において特に好適である。
【0019】
また、エポキシ樹脂組成物3との親和性に優れ、しかも、プリプレグシート1に対して優れた熱伝導性を付与させ得る点においては、前記無機繊維が好適である。
中でも、酸化アルミニウム繊維は、安価で電気絶縁性などにも優れ、プリプレグシートに熱伝導性と電気絶縁性とが求められるような用途において特に好適である。
【0020】
この基材シート2に半硬化状態で担持させるエポキシ樹脂組成物3は、エポキシ樹脂と無機フィラーとを含有するもので、通常、50μm〜1mmの平均厚みで基材シート2に担持される。
なお、このエポキシ樹脂組成物3が半硬化状態であるかどうかについては、示差走査熱量計(DSC)を用いてエポキシ樹脂の硬化反応による熱変化が観測されるかどうかをもって判断することができる。
【0021】
このエポキシ樹脂組成物3に用いるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールタイプのもの、ノボラックタイプのものを挙げることができ、例えば、ビスフェノールタイプのものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、さらには、例えば、これらをCTBN変性したものなどが挙げられ、エポキシ当量が180〜2500g/eqのものが挙げられる。なお、このエポキシ当量は、JIS K 7236に準拠して求められうる。
なかでも、CTBN変性等の変性がなされていない、900〜2500g/eqのいずれかのエポキシ当量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適である。
また、ノボラックタイプのものとしては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられ、例えば、70〜90℃のいずれかの軟化点を有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を例示することができる。なお、前記軟化点は、JIS K 7234の環球法によって測定されうる。
このノボラックタイプのエポキシ樹脂についても変性がなされていない一般的なものが好適に用いられ得る。
これらのエポキシ樹脂は、単独あるいは複数種類混合された状態でエポキシ樹脂組成物に含有させることができる。
なお、その場合にも、材料コストや柔軟性付与に対する要望の強さなどの観点から、CTBN変性などのゴム変性がされたエポキシ樹脂を実質的に含有させないことが好ましく、仮にCTBN変性エポキシ樹脂を含有させるにしても、エポキシ樹脂全体の10wt%以下とすることが好ましい。
【0022】
前記無機フィラーとしては、プリプレグシート1に優れた熱伝導性を付与する観点から、高熱伝導率のものをより多く含有させることが好ましい。
このような無機フィラーとしては、例えば、10nm〜100μmの粒径を有する窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ガリウム粒子、酸化アルミニウム粒子、炭化ケイ素粒子、二酸化ケイ素粒子、ダイヤモンド粒子などが挙げられる。
なかでも、窒化ホウ素粒子は、比較的安価でありながらも、高い熱伝導率を有している点において好適である。
このような無機フィラーの配合割合は、プリプレグシート1の用途に応じて適宜決定されるものではあるが、ガラスクロスが基材シートとして用いられるようなプリプレグシートにおいて僅かな応力で剥離を生じることから担持させること自体が困難であるために本発明の効果がより顕著化されうる点において、エポキシ樹脂組成物の固形分に40体積%以上となる割合で配合されることが好ましい。
また、あまり無機フィラーを多く含有させると基材シート2の補強効果ならびに応力緩和効果をプリプレグシート1の柔軟性付与に有効に作用させることが難しくなることから、無機フィラーの配合割合は、65体積%以下であることが好ましい。
【0023】
また、このエポキシ樹脂組成物には、前記エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤や促進剤と呼ばれるものを含有させうる。
この硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミンなどのアミン系硬化剤、フェノールノボラック樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、ビスフェノール系フェノール樹脂などのフェノール系硬化剤、酸無水物などを用いることができる。
中でも、プリプレグシートに電気絶縁性が強く求められるような場合においては、電気特性における信頼性を確保し易い点において、フェノールノボラック樹脂、ジアミノジフェニルスルホンなどが好適である。
前記硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、イミダゾール類や、トリフェニルフォスフェイト(TPP)、三フッ化ホウ素モノエチルアミンなどのアミン系硬化促進剤がプリプレグシートの保存時における硬化反応の進行を抑制させ得る点において好適である。
【0024】
また、上記のようなエポキシ樹脂、無機フィラー、硬化剤、促進剤以外に、分散剤、粘着性付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、顔料などといったゴム、プラスチック配合薬品として一般に用いられるものをエポキシ樹脂組成物に適宜含有させることができる。
【0025】
次いで、このようなプリプレグシート1の製造方法について図4を参照しつつ説明する。
【0026】
本実施形態におけるプリプレグシート1の製造方法においては、予め前記エポキシ樹脂組成物を液状化させたエポキシ樹脂ワニスを作製し、次いで、図4に示すように、作製されたエポキシ樹脂ワニスを長尺の帯状の基材シートに対して連続的に塗工、乾燥することによりプリプレグシート1を作製する。
このエポキシ樹脂ワニスの作製方法としては、通常、ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂やノボラックタイプのエポキシ樹脂の軟化点が120℃以下であることから、この軟化点以上の温度(例えば、120℃以上)に加熱することで液状のエポキシ樹脂組成物を得る方法が挙げられる。
また、このような方法に代えて、エポキシ樹脂を可溶な有機溶剤を用いて液状のエポキシ樹脂組成物を作製することができる。
例えば、エポキシ樹脂、無機フィラー、硬化剤、促進剤、その他配合剤をメチルエチルケトンなどの有機溶剤中に分散させて液状のエポキシ樹脂組成物を作製することができる。
【0027】
なお、図4では、有機溶剤を用いて作製したエポキシ樹脂ワニス3rを、帯状の基材シート2sがロール状に巻き取られた基材シートロール2rから連続的に繰り出された基材シート2sにブレードコート機4で連続的に塗工する様子を示している。
本実施形態においては、この塗工の後、基材シート2sにエポキシ樹脂ワニス3rを担持させた状態で乾燥炉5に導入して加熱乾燥を実施して帯状のプリプレグシート1を作製し、この帯状のプリプレグシート1sをロール状に巻き取ってプリプレグシートロール1rを形成させる。
【0028】
なお、要すれば、基材シート2sを下面側から離型処理されたフィルムなどで支持させて、そのフィルムによって基材シート2sにエポキシ樹脂ワニス3rが担持された状態を維持させつつフィルムごと乾燥炉5に導入して加熱乾燥をさせる方法も採用が可能である。
【0029】
このようにして得られた帯状のプリプレグシート1sは、例えば、図4に示すように、プリプレグシートロール1rから、一定長さ繰り出して、切断装置6で定尺に切断した後、この所定の大きさに切断されたプリプレグシート1と金属箔Mとを重ね合わせて、熱プレス機9でエポキシ樹脂組成物を完全硬化させない温度条件で熱プレスして熱接着が可能な積層シートLを作製することができる。
このときの金属箔は用途に応じて適宜選択すればよく、プリント回路基板用であれば、5〜300μm厚みの、電解銅箔、圧延銅箔、電解アルミニウム箔、圧延アルミニウム箔、ニッケルメッキ銅箔、アルミニウム/銅二層クラッド箔などが例示される。
【0030】
また、このような積層シートを銅板、アルミニウム板、SUS板などに接着させて金属箔をエッチング加工して回路形成を行うことで金属ベース回路基板として用いられ得る。
さらには、両面に金属箔を積層した積層シートを作製し、多層回路基板用材料とすることも可能である。
【0031】
本実施形態に係るプリプレグシートは、プリント回路基板用途のみならず、熱伝導性と電気絶縁性などが求められる用途において好適に用いられ得る。
例えば、このプリプレグシートをパワーモジュールなどの発熱部材と、放熱フィンなどの放熱部材との間に介装させて、このパワーモジュールと放熱フィンとを近接させる方向に加圧するとともにエポキシ樹脂組成物の硬化反応温度まで加熱して、一面側をパワーモジュールに熱接着させるとともに、他面側を放熱フィンに熱接着させて熱伝導性接着シートとして用いることができる。
【0032】
なお、先に述べたように基材シートとしてアルミナ繊維が用いられてなるものを用いることで、プリプレグシートを、この回路基板材料のように熱伝導性と電気絶縁性とが求められるような用途において特に好適なものとさせ得る。
このことについてより詳しく説明すると、通常、無機フィラーを含む樹脂組成物における熱伝導においては、無機フィラーの占める体積割合に加えて、樹脂と無機フィラーとの界面における熱伝達率が重要な要素となる。
そして、アルミナ繊維織物を基材シートとして用いることでプリプレグシートにおける無機物の体積分率を増加させるのみならず、この基材シートを構成するアルミナ繊維を伝ってすばやく熱を移動させることができる。
【0033】
すなわち、アルミナ繊維が用いられてなる基材シートを採用することで面方向への熱拡散性に優れたプリプレグシートとすることができ、例えば、このプリプレグシートをパワートランジスタなどの発熱素子を搭載するための回路基板材料として用いた場合にこの熱拡散性が発熱素子の保護に有効に作用することとなる。
【0034】
さらには、プリプレグシートを熱接着させて絶縁層を形成させる用途に用いられる場合においては、絶縁層の厚みの均一化に、アルミナ繊維が用いられてなる基材シートが有効に作用し絶縁信頼性の向上を期待することができる。
例えば、基材シートが用いられていないプリプレグシートや、エポキシ樹脂組成物の硬化反応温度よりも低い軟化点を有する熱可塑性樹脂で形成された繊維からなる基材シートが用いられているプリプレグシートにおいては、熱プレス時において圧力の加わり方に差が生じると、強い圧力が加えられた部分において絶縁層の厚みが薄くなって絶縁信頼性を損なうおそれを有する。
一方でアルミナ繊維が用いられてなる基材シートにエポキシ樹脂組成物を担持させたプリプレグシートは、基材シートが熱プレスによる変形を受け難いことから形成される絶縁層の厚みが不均一となるおそれを抑制させ得る。
このことから熱接着における接着性に有利な熱溶融時における粘度の低い(流動性に富んだ)エポキシ樹脂組成物を担持させることもできる。
【0035】
さらに、本実施形態におけるプリプレグシートは、柔軟性を有することから慎重な取り扱いを要しない。
例えば、図4に示すようなロールトゥロールでの取り扱いが可能で製造時のみならず加工時においても作業効率の向上を期待することができる。
また、ロール巻取りによる収容形態においても、その曲げ半径を小さくすることができることから、エポキシ樹脂組成物の剥離を防止するために太い心材を採用する必要がなく従来に比べて収容スペースの削減を図ることができる。
【0036】
なお、本実施形態においては、プリプレグシートを上記のように構成し、上記のように製造する場合を例示しているが、上記例示に限定されるものではなく、プリプレグシートにおいて従来公知の技術事項を本発明においても採用が可能である。
【実施例】
【0037】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(プリプレグシートの作製)
酸化アルミニウム粒子を65体積%含有するエポキシ樹脂組成物を作製し、該エポキシ樹脂組成物を溶剤に分散させた塗工液を乾燥後の厚みが130μmとなるように銅箔上に塗布、乾燥して比較例1のプリプレグシートを作製した。
アルミナ(酸化アルミニウム)繊維によって形成された糸(200Tex)、互いの間隙が3mmとなるように平織りされた織布を銅箔に代えて基材シートとして用いたこと以外は上記比較例1と同様にして実施例1のプリプレグシートを作製した。
【0039】
(評価)
実施例、比較例のプリプレグシートを室温で50mmφのマンドレルに、外周面に沿わせた状態で巻きつけそれぞれの柔軟性について評価した。
その結果、比較例1のプリプレグシートは、担持させたエポキシ樹脂組成物にひび割れが生じるとともに銅箔からエポキシ樹脂組成物が脱落する状態となった。
一方で、実施例1のプリプレグシートは、ひび割れやエポキシ樹脂組成物の脱落が発生しなかった。
【0040】
以上のようなことからも、本発明によれば、無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物が半硬化状態で基材シートに担持されてなるプリプレグシートの柔軟性を向上させ得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施形態におけるプリプレグシートの断面図。
【図2】同実施形態におけるプリプレグシートの上面図。
【図3】同実施形態のプリプレグシートに用いられている熱融着性繊維を表す断面図。
【図4】一実施形態のプリプレグシート及び積層シートの概略製造工程を示す側面図。
【符号の説明】
【0042】
1:プリプレグシート、2:基材シート、3:エポキシ樹脂組成物、20:糸、20a:繊維、20a1:芯部、20a2:鞘部、L:積層シート、M:金属箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物が半硬化状態で基材シートに担持されてなるプリプレグシートであって、
前記基材シートに織布が用いられており、該織布を構成する糸と糸との間隙が1〜5mmのいずれかであることを特徴とするプリプレグシート。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物の固形分に占める前記無機フィラーの割合が、40体積%以上である請求項1記載のプリプレグシート。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂組成物の固形分に占める前記無機フィラーの割合が、65体積%以下である請求項1又は2記載のプリプレグシート。
【請求項4】
前記基材シートは、無機繊維が用いられて形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリプレグシート。
【請求項5】
前記無機繊維が、酸化アルミニウム繊維である請求項4記載のプリプレグシート。
【請求項6】
前記基材シートを構成する糸の太さが 60 〜 600Texのいずれかである請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプリプレグシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−126685(P2010−126685A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304867(P2008−304867)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】