説明

プリンタ選択システム

【課題】本発明は、複数のプリンタのメンテナンス時期を合わせることによるメンテナンス作業の効率化を実現するための方法と実現するためのシステム構成に関するものであり、従来は複数のプリンタが存在していた場合には、メンテナンス時期が合わない事によりメンテナンス作業の効率が悪いという課題があった。
【解決手段】上記課題を解決するために、プリンタ11ごとに印刷データを解析して色情報とプリンタ優先情報を求めて、他の各プリンタと自プリンタのそれぞれの印刷枚数を保持して、印刷の実行を判定する機能を持つ状態管理装置10と、実際に印刷を行うプリンタ11と、印刷要求を行う帳票印刷コンピュータ1で構成された帳票印刷システムにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷処理を分散させることにより、プリンタのメンテナンス時期を平均化させるための方法、および実現するためのシステム構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の帳票印刷システムでは、出力先のプリンタを要求元が選択して印刷を行うため、要求元の指示により稼動するプリンタに偏りが生じ、複数あるプリンタのそれぞれのメンテナンスの必要性が生じるたびにメンテナンス作業を行っていた。
【0003】
特開2002−366326号公報に記載されている「プリントシステム」や、特開2002−11923号公報に記載されている「カラー画像形成システム」では、カラートナーの残量のみでプリンタの振り分けを行うため、トナーの交換時期を複数のプリンタで合わせる事ができるが、ハードウェアメンテナンス時期を合わせることはできない。
【0004】
また、特開2002−73312号公報に記載されている「ネットワークプリントシステム」では、複数のプリンタごとに保守枚数を保持して当該保守枚数に該当するまで印刷を行う事から、保守枚数に達する前に1つのプリンタに集中して印刷が稼動した場合のハードウェア負荷は他のプリンタに比べて増大するため、ハードウェアメンテナンス時期を合わせる事ができない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−366326号公報
【特許文献2】特開2002−11923号公報
【特許文献3】特開2002−73312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術の範囲では、印刷要求者は印刷したいプリンタを明示的に選択した上で印刷を行うこと、またプリンタを自動分散してもカラートナーやインクの残量のみ、印刷枚数のみでの選択となることから、プリンタの設置場所や性能、機能などにより出力先が特定のプリンタに集中する可能性が高くなるという課題があった。そのため、複数のプリンタが存在する場合、それぞれのプリンタの負荷の状況によりメンテナンス時期があわずに、メンテナンス作業の回数が増えてしまう。
【0007】
本発明の目的は、複数のプリンタのトナーやインクの交換、およびハードウェア自体のメンテナンス時期を合わせることで、メンテナンス作業回数の低減とハードウェア寿命を延ばすことを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本帳票印刷システムは、プリンタで出力された印刷用紙の累計を読み込んで保持する手段と、プリンタに取り付けられているカラートナーまたはインクの残り残量を読み込んで保持する手段と、帳票印刷要求の印刷データをカラー要素の要素数に変換する手段と、印刷データのカラー要素数とカラートナーやインクの残り残量を比較する手段と、プリンタの状態を他のプリンタに通知することと他のプリンタの状態を受け取る手段と、印刷データを他のプリンタに転送する手段を具備する事を特徴としている。
【0009】
本帳票印刷システムでは、印刷を要求するコンピュータ側には特別な装置や処理は必要とせず、プリンタ側に設置する状態管理装置を準備することで、容易にハードウェアのメンテナンス時期を平均化でき、前述の課題を解決できる特徴をもっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、プリンタのメンテナンス時期を意識することなく印刷を行えるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実現するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本帳票印刷システムの実施構成例と構成要素の制御の関連を示す。CPU3と二次記憶装置4とプリンタインタフェース5と主記憶装置6とネットワークインタフェース7がバス8で接続された帳票印刷コンピュータ1から、ネットワーク9またはプリンタインタフェース5に接続された状態管理装置10を有するプリンタ11に印刷を行うシステムにおいて、帳票印刷者は帳票印刷プログラム2を実行して印刷を行う。状態管理装置10は、接続されているプリンタ11の印刷累計枚数と、カラートナーやインクの残りを定期的に読み出して、常に接続先プリンタの状態を管理しておく。帳票印刷プログラム2は、指定されたプリンタ11に向けて印刷要求を行うと、状態管理装置10が印刷データを解析して、実際に印刷を行うために必要なカラートナーやインクの量を確認し、印刷データ自体の付加情報として「色情報」を付与する。また状態管理装置10では、指定されたプリンタ11の印刷累計枚数と他のプリンタ11の印刷累計枚数を確認して、印刷累計枚数が少ない順番に印刷の優先度を付け、印刷データ自体の付加情報として「プリンタの優先度」を付与する。状態管理装置10では印刷累計枚数が少ない優先度の高いプリンタに接続されている状態管理装置10に対して、付加情報をつけた印刷データを転送する。印刷データが転送された状態管理装置10では、付加されている「色情報」を基にして、当該プリンタ11で印刷が全て実施できる量のカラートナーやインクがあるかを確認し、印刷できる場合にはそのまま印刷を実施する。カラートナーやインクが足りない場合には、印刷データに付加された「プリンタの優先度」に従って次のプリンタ11に接続されている状態管理装置10に再度印刷データを転送する。この転送をくり返して印刷を実現することで、一番最適な出力先のプリンタを選択して印刷を実行することができる。なお図1で示す実施構成例の各構成制御は、1台のコンピュータに構成しても、ネットワークで接続されたクライアントサーバ構成として分割したコンピュータに構成してもよい。またプリンタ11は、帳票印刷コンピュータ1のプリンタインタフェース5に接続されていても、ネットワーク9に接続されていても、またネットワーク9に接続された別のコンピュータに接続されたプリンタでもよい。
【0013】
図2は、図1に示す状態管理装置10の内部構造を示す。帳票印刷コンピュータ101からネットワーク102を経由、または直接接続でプリンタ115に印刷を要求する場合、プリンタ115から印刷を行う前にプリンタ115に接続されている状態管理装置103が印刷データを受け取る。印刷データ判定部105で受信した印刷データ中にこの帳票印刷システムを使用して付与された「色情報」「プリンタ優先情報」が存在するか確認する。印刷データに「色情報」「プリンタ優先情報」が無い場合には、帳票印刷コンピュータ101からの最初の印刷要求を受信したとして、色情報解析部106で印刷するために必要な色の情報量を解析する。またプリンタ優先確認部107であらかじめ主記憶装置に保持されている全プリンタ状態情報を読み取り、印刷された枚数が少ない順番に優先度を決めて「プリンタ優先情報」を作成する。色情報解析部106とプリンタ優先確認部107の処理が完了したら、付加情報付与部108で印刷データに対して「色情報」「プリンタ優先情報」を付与する。プリンタ選択部109では、印刷データに付与されている「プリンタ優先情報」を確認して、一番優先度の高いプリンタ115に接続された状態管理装置103に、通信制御装置104を経由して印刷データを転送する。一番優先度の高いプリンタ115が自筐体のプリンタ115であった場合には、トナー状態判定部110でプリンタドライバ111から取得したトナーの状態と、印刷データに付与されている「色情報」を比較する。トナー状態判定部110で、トナー残量で印刷ができると判断した場合には、プリンタドライバ111を経由してプリンタ115に印刷を実行する。トナー残量が印刷に必要なトナー量よりも少ない場合には、印刷できないと判断し、「プリンタ優先情報」の中の次のプリンタ115に接続されている状態管理装置103に印刷データを転送する。印刷データ判定部105で、印刷データ中に「色情報」「プリンタ優先情報」が存在する場合には、トナー状態判定部110で、トナー残量と「色情報」を比較して同様の印刷の可否を判断する。またプリンタ115から印刷が実行されたら印刷した枚数を、プリンタドライバ111を経由して印刷枚数確認部114で管理し、自筐体のプリンタで出力した印刷の累計枚数を主記憶装置113に保持する。その後、状態送受信部112で主記憶装置113に保持された印刷枚数を通信制御装置104を経由して、他の全ての状態管理装置103に対して転送する。状態管理装置103では、印刷枚数の通知が他の状態管理装置103から転送された場合には、状態送受信部112にて情報を受信し、主記憶装置113に、他のプリンタの印刷枚数として管理しておく。印刷を実行するごとに状態管理装置103の主記憶装置113に他のプリンタ115と自筐体のプリンタ115の全ての印刷枚数を把握することができる。
【0014】
図3は、図2に示す状態管理装置101での処理フローチャートを示す。状態管理装置の不稼動状態は、常に201にて印刷データや他の状態管理装置からのデータの受信を待っている状態である。印刷要求するコンピュータや他の状態管理装置からのデータを受信したら、202にて受信データが印刷データか他状態管理装置からの状態データかを判定する。印刷データである場合には、203にて当該印刷データ中に、印刷データを構成する色情報とプリンタ優先情報の「付加情報」があるか確認する。「付加情報」がない場合には204にて、印刷データの構成要素を解析して印刷を実行するために必要な色素データを数値化して「色情報」を作成する。205では213で管理されている全プリンタの管理状態情報から、全プリンタで印刷済みの印刷枚数を読み出し、206で既に印刷済みの印刷枚数の少ない順番でプリンタの優先順位を決定し、「プリンタ優先情報」を作成する。207で印刷データに対して付加情報として、204で求めた色情報と、206で決定したプリンタ優先情報を付与する。208で付加情報が付与された印刷データにあるプリンタ優先情報の一番優先度の高いプリンタが自プリンタかどうかを確認し、自プリンタである場合には209のトナー判定処理に移行する。209では印刷データにある色情報と、プリンタの現在のトナーの残量を比較して、印刷が可能と判断できたら、210で印刷を実行する。202のデータ種別の判定で、他の状態管理装置からの状態データの場合には、211で状態管理装置の主記憶装置に保持する全プリンタ管理状態情報から、該当するプリンタの情報を検索し、213でプリンタ管理状態情報の該当するプリンタの印刷枚数を更新して、201のデータ受信待ちに遷移する。203で当該印刷データ中に、色情報とプリンタ優先情報の「付加情報」がある場合には、他の状態管理装置から転送されてきた印刷データと判断し、209のトナー判定処理に遷移する。208のプリンタ優先情報で、一番優先度が高いプリンタが当該プリンタではない場合と209のトナー判定処理で印刷ができないと判断した場合には、当該プリンタでは印刷処理は行わずに、215で次に転送先のプリンタを選択し、214で印刷データを他の状態管理装置に転送して、201のデータ受信待ちに遷移する。210で印刷の実行を行ったら、213で印刷した枚数を当該プリンタの印刷枚数に加算して情報を更新し、212で最新の印刷枚数を他の状態管理装置全てに対して状態データとして送信し、201のデータ受信待ちの状態に遷移する。
【0015】
図4は、図3の処理フローチャートの207にて状態管理装置が作成するデータ形式を示す。データは、本帳票システムで生成されたデータであることが明確にわかるヘッダと、色情報とプリンタ優先情報が付与されたデータであることがわかる付加情報フラグと、色情報とプリンタ優先情報を纏めた付加情報データの長さを示す付加情報長と、色情報とプリンタ優先情報を纏めた付加情報データと、実際の印刷データで構成されている。処理フローチャートの202では、ヘッダと付加情報フラグの組み合わせか、またはヘッダが存在しないデータである場合には、印刷データであると判断し、処理フローチャートの203に処理を遷移する。処理フローチャートの203ではヘッダと付加情報フラグであるか、ヘッダが存在しないデータであるかを判断する。付加情報データは、色情報ヘッダと、色情報データの長さを示す色情報長と、色情報データと、プリンタ優先情報ヘッダと、プリンタ優先情報データの長さを示すプリンタ優先情報長と、プリンタ優先情報データで構成されている。色情報データは、色の4色素のC(シアン)Y(イエロー)M(マゼンダ)K(クロ)のそれぞれのデータで構成されている。プリンタ優先情報データは、選択する優先順位の高い順番にそれぞれのプリンタ名で構成されている。
【0016】
図5は、図4の処理フローチャートの212にて状態管理装置が作成するデータ形式を示す。データは、本帳票システムで生成されたデータであることが明確にわかるヘッダと、プリンタの状態を通知するためのデータであることを示す状態情報フラグと、プリンタ名と印刷済枚数データを加えた長さを示す状態情報長と、プリンタ名と、印刷済枚数データで構成されている。また図5のヘッダと図4のヘッダは同じ内容のデータである。
【0017】
図6は、図3の処理フローチャートの213で更新するプリンタ管理状態を管理するためのテーブル構成である。プリンタ名とそのプリンタ名に対応する印刷済枚数データが対で管理されており、自プリンタで印刷を行った時と、他の状態管理装置から送信された図5に示すプリンタ状態のデータを受信した時に、対象のプリンタの印刷済枚数データを更新する。
【0018】
以上に示した本帳票印刷システムを利用することにより、プリンタのハードウェアメンテナンス時期を平均化したメンテナンス作業効率の向上を実現する帳票印刷システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施構成例を示す。
【図2】本発明を実現するための装置の内部構成を示す。
【図3】本発明を実現するための装置の処理フローチャートを示す。
【図4】本発明を実現するための色情報とプリンタ優先情報が付加されたデータ形式を示す。
【図5】本発明を実現するためのプリンタ状態を示すデータ形式を示す。
【図6】本発明を実現するためのテーブル構造を示す。
【符号の説明】
【0020】
1…帳票印刷コンピュータ、2…帳票印刷プログラム、3…CPU、4…二次記憶装置、5…プリンタインタフェース、6…主記憶装置、7…ネットワークインタフェース、8…バス、9…ネットワーク、10…状態管理装置、11…プリンタ、101…帳票印刷コンピュータ、102…ネットワーク、103…状態管理装置、104…通信制御装置、105…印刷データ判定部、106…色情報解析部、107…プリンタ優先確認部、108…付加情報付与部、109…プリンタ選択部、110…トナー状態判定部、111…プリンタドライバ、112…状態送受信部、113…主記憶装置、114…印刷枚数確認部、115…プリンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプリンタに対して複数の要求元からの印刷を行う帳票印刷システムにおいて、出力先のプリンタを特定せずに、それぞれのプリンタの累計印刷ページ数と、カラートナーまたはインクの残数と、要求された印刷データを印刷するために必要なカラートナーまたはインクの必要量を元に出力先のプリンタを自動的に選択して印刷を実行する帳票印刷システム。
【請求項2】
請求項1の帳票印刷システムにおいて、それぞれのプリンタごとに、プリンタの累計印刷ページ数と、カラートナーまたはインクの残数を保持する状態管理装置があり、それぞれの状態管理装置が相互的にそれぞれのプリンタの状態を認識・保存することと、印刷データを相互的に転送できる通信機能を有している印刷システム。
【請求項3】
請求項1の帳票印刷システムにおいて、要求された印刷ページを構成するために必要な色要素情報を数値化し、印刷に必要なカラートナーまたはインクの必要量に変換する処理装置を有する印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−178942(P2009−178942A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20060(P2008−20060)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】