説明

プリントシステム、印刷装置、画像処理方法、及びプログラム

【課題】画像処理に用意しなければならないワークメモリの容量を減少させ、印刷対象画像サイズを大きくすることを可能にする。
【解決手段】被写体を撮影して画像データを出力するデジタルカメラ1と、該デジタルカメラ1から出力された画像データに基づいて印刷処理を行うプリンタ3とからなるプリントシステム、または該プリンタ3において、画像データによって表される画像を複数の領域に分割し、この分割された複数の領域の画像データの各々を、プリンタ3が印刷可能な形態の画像データに変換する。この画像データの変換においては、圧縮画像の伸張処理、ローパスフィルタリング処理、回転処理、およびリサイズ処理のうちの少なくとも1つが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリントシステム、印刷装置、画像処理方法、及びプログラムに関し、特に、被写体を撮影して画像データを出力する撮像装置と、該撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置とからなるプリントシステム、該プリントシステムを構成する印刷装置、該プリントシステムまたは印刷装置に適用される画像処理方法、及び該画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク液を用紙に噴射することによって画像印刷を行うインクジェットプリンタがある。一方、印画用紙に感熱型の用紙を用い、主走査方向に配列された複数個の発熱体の各々を選択的に駆動し、かつ印画用紙を副走査方向に搬送することで、印画用紙にドットライン状に画像印刷を行うライン熱転写方式のプリンタがある。
【0003】
インクジェットプリンタでは、液滴を用紙に向かって飛ばすか否かという2値的な選択しかできないために、小さな液滴を用紙へ着弾させて、誤差拡散等の手法でみかけ上の解像度と階調性とを得ようとしている。これに対して、熱転写方式のプリンタでは、1つの画素を形成する熱の量を容易に変更できるため、1つの画素に関する濃淡の階調を多数設定することが可能である。そのため、熱転写方式のプリンタでは、インクジェットプリンタに比べて高画質な画像を得ることができる。また、熱転写方式のプリンタを構成するサーマルヘッドの性能や、用紙材料の性能も向上したために、仕上がり品位で銀塩写真にも見劣りしない画像プリントを得ることが可能になっている。
【0004】
こうした熱転写方式のプリンタが、近年のデジタルカメラの性能の向上に歩調を合わせるように、特に自然画像用のプリンタとして注目されている。また、こうした熱転写方式等のプリンタと、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮影機器とを直接的に接続するダイレクトプリントシステムも登場している。このダイレクトプリントシステムでは、撮影された画像情報を、パーソナルコンピュータなどの画像処理装置を介在させることなくプリントすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以下に、デジタルカメラとプリンタとを直接的に接続したダイレクトプリントシステムについて、具体的に説明する。すなわち、デジタルカメラで撮影された画像は一旦、デジタルカメラが有する記録媒体に保存される。この画像をプリンタからプリントアウトするために、ユーザによって、デジタルカメラとプリンタとが専用のケーブルによって直接的に接続される。次に、記録媒体に保存されている画像がデジタルカメラの表示装置に表示され、プリントしたい画像が選択される。この画像の選択は、デジタルカメラの有する操作部材をユーザが操作することによって行われる。プリントしたい画像が選択された後、デジタルカメラの操作部材に割り付けられたプリント指示キーがユーザによって押されると、デジタルカメラ内でプリント用の画像処理が実行される。そして、デジタルカメラ内での画像処理が終了すると、プリント用データがプリンタに転送され、プリンタは、受け取ったプリント用データに基づきプリントアウトを行う。
【0006】
以上のように、ユーザが、プリントアウトをするためにデジタルカメラの操作部材を数回操作するだけで、簡単に写真画像のプリントアウトを行うことが可能であり、大変便利である。
【0007】
また、デジタルカメラはその装置の性質上、撮影した画像のデータをJPGファイルに圧縮したり、逆にJPGファイルを伸長して画像データを復元したりするためのJPGチップを有している。また一般的に、撮影した画像データを所望のサイズに変更するためのリサイズ機能を備えたICチップを有している。これらのデジタルカメラの有するハードリソースを印刷データ作成のために利用することによって、JPG伸縮機能やリサイズ機能をソフト処理で実現する場合に較べて、処理時間を格段に短くすることができる。また、ダイレクトプリントシステム全体として要求されるリソースを最低限で構成することができ、コストダウンにも繋がる。
【0008】
一方で、デジタルカメラ内では、JPG伸長、リサイズ、ローパスフィルタリング、プリント出力用データへのデータ変換等の画像処理を一切行わず、デジタルカメラからJPGファイルをプリンタに送るようにしてもよい。この場合、プリンタ内で上記画像処理を行うことになるが、この方が、デジタルカメラとプリンタとの接続汎用性を高くすることができる。
【特許文献1】特開2003−244584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のダイレクトプリントシステムにおいて、画像処理に使用できるワークメモリの記憶容量には限度がある。すなわち、JPG伸張、リサイズ、ローパスフィルタリング、プリント出力用データへのデータ変換等の画像処理は、CPUが、RAMのワーキングエリアを利用して行われる。このRAMのワークメモリ容量には限度があり、その限度内で上記画像処理を行う必要がある。
【0010】
従来、JPG伸張、リサイズ、ローパスフィルタリング、プリント出力用データへのデータ変換等の画像処理は一括画像処理で行われていた。この一括画像処理が、RAMのワークメモリ容量によって制限されるため、この画像処理によって扱える印刷対象画像サイズが小さいものになってしまうという問題があった。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、画像処理に用意しなければならないワークメモリの容量を減少させ、印刷対象画像サイズを大きくすることを可能にした印刷装置、画像処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明によれば、被写体を撮影して画像データを出力する撮像装置と、該撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置とからなるプリントシステムにおいて、画像データによって表される画像を複数の領域に分割する分割手段と、前記分割手段によって分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する画像変換手段とを有することを特徴とするプリントシステムが提供される。
【0013】
また、請求項3記載の発明によれば、撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置において、画像データによって表される画像を複数の領域に分割する分割手段と、前記分割手段によって分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する画像変換手段とを有することを特徴とする印刷装置が提供される。
【0014】
また、請求項12記載の発明によれば、被写体を撮影して画像データを出力する撮像装置と、該撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置とからなるプリントシステムに適用される画像処理方法において、画像データによって表される画像を複数の領域に分割する分割ステップと、前記分割ステップにおいて分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する画像変換ステップとを有することを特徴とする画像処理方法が提供される。
【0015】
また、請求項14記載の発明によれば、撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置に適用される画像処理方法において、画像データによって表される画像を複数の領域に分割する分割ステップと、前記分割ステップにおいて分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する画像変換ステップとを有することを特徴とする画像処理方法が提供される。
【0016】
さらに、上記画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被写体を撮影して画像データを出力する撮像装置と、該撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置とからなるプリントシステム、または該印刷装置において、画像データによって表される画像を複数の領域に分割し、この分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する。この画像データの変換においては、圧縮画像の伸張処理、ローパスフィルタリング処理、回転処理、およびリサイズ処理のうちの少なくとも1つが実行される。
【0018】
このように、プリント用画像データ作成の一連の画像処理を、複数の画像領域に分割した上で、各画像領域に対して実施する。これによって、画像処理に必要となるワークメモリの記憶容量を少なくでき、ひいては印刷対象画像サイズを大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係るダイレクトプリントシステムの構成を示す図である。
【0021】
このダイレクトプリントシステムは、デジタルカメラ1と、熱転写方式の昇華型プリンタ3と、両者を接続する専用ケーブル2とで構成される。専用ケーブル2は、USBケーブルからなる。
【0022】
デジタルカメラ1で撮影して得られた画像が、または撮影後にメモリ媒体に保存され、再度読み出された画像が、デジタルカメラ1内で、昇華型プリンタ3が印刷可能なプリントデータに画像処理される。この画像処理されたプリントデータが、またはメモリ媒体に保存されたファイル形式の画像データが、専用ケーブル2を介して昇華型プリンタ3に送り出され、そのデータを基に昇華型プリンタ3でカラープリントが行われる。
【0023】
図2は、デジタルカメラ1を構成する操作部材4と液晶画面5とを示す図である。
【0024】
ユーザは、操作部材4を操作して、プリントパターン、プリントしたい画像、プリント指定枠等を選択し、それらの内容を液晶画面5で確認することが可能である。
【0025】
図3は、昇華型プリンタ3の基本構成を示す図であり、図4は、図3に示す昇華型プリンタ3の部分拡大図である。
【0026】
昇華型プリンタ3は昇華型熱転写方式の印刷装置であり、昇華型熱転写方式は、染料(色素)の拡散現象を利用した印刷方式である。
【0027】
図3及び図4において11はインクシートであり、プラスチックベースシート11aと、該プラスチックベースシート11aに塗布された3色(イエロー、マゼンタ、シアン)の昇華性染料11bとから構成される。12は専用印画紙であり、インクシート11が専用印画紙12と重ね合わされた状態で、サーマルヘッド13とプラテンローラ14とによって挟支される。そして、インクシート11の昇華性染料11bが、サーマルヘッド13の熱により、専用印画紙12に昇華/熱拡散される。これにより、カラープリントが実現する。
【0028】
なお、専用印画紙12は、ベース層12aと受容層12bとで構成される。受容層12bは、昇華性染料11bの発色を確保するために、ポリエステル系樹脂を主成分とする材料がベース層12aに塗布されたものである。15は、受容層12bに昇華/熱拡散された染料である。
【0029】
サーマルヘッド13の発熱量を制御することにより、印刷濃度を変化させることができる。3色(イエロー、マゼンタ、シアン)それぞれに階調を与え、専用印画紙12の同じ個所に印刷することにより1画素単位の高精細フルカラープリントを実現できる。
【0030】
図5は、図1に示すデジタルカメラ1の制御部の構成を示すブロック図である。
【0031】
図中20はCCD(Charge Coupled Device)であり、レンズを通して結像された画像を電気信号に変換する。21はCPUであり、デジタルカメラ1全体を制御するとともに、演算処理を行う。22は画像処理エンジンであり、CCD20から送られてきた電気信号を処理する。画像処理エンジン22には、JPG伸張機能やリサイズ機能が含まれる。23はフラッシュROMであり、デジタルカメラ1を制御するためのプログラムを格納する。24はSDRAMであり、画像データを一時的に保存したり、データ処理作業のためのワーキングエリアを提供したりする。
【0032】
25は、画像データファイルを保存しておくためのCF(コンパクトフラッシュ(登録商標)メモリ)カードであり、26は、CFカード25をデジタルカメラ1に装着するためのCFコネクタである。なお、CFカード25、CFコネクタ26に代わって、SDカード、メモリスティック等の記憶媒体と、該記憶媒体をデジタルカメラ1に装着するためのコネクタであってもよい。
【0033】
27はLCD(Liquid Crystal Display)であり、デジタルカメラ1で撮影した画像を表示したり、デジタルカメラ1を操作するためのメニューを表示したりする。28は、LCD27をドライブするためのLCDドライバである。29は通信モジュールであり、デジタルカメラ1内で画像処理をして得られたプリントデータを、またはCFカード25に保存されていたファイルをそのままの形でプリンタ3に送信するための通信モジュールである。なお、通信モジュール29は、CPU21に内包される場合もある。
【0034】
図6は、図1に示す昇華型プリンタ3の制御部の構成を示すブロック図である。
【0035】
31はCPUであり、昇華型プリンタ3を制御するとともに、演算処理を行う。32は画像処理エンジンであり、JPG伸張機能、リサイズ機能を備える。33はフラッシュROMであり、昇華型プリンタ3を制御するためのプログラムを格納する。34はSDRAMであり、画像データを一時的に保存したり、データ処理作業のためのワーキングエリアを提供したりする。
【0036】
35はモータ・ヘッドコントローラであり、印刷用紙を搬送するためのLFモータや、昇華ヘッド37を上下させるためのUDモータを制御するとともに、昇華ヘッド37自体の動きを制御する。36は、上記のLFモータやUDモータを駆動するためのモータドライバ、37は昇華ヘッドである。38は通信モジュールであり、デジタルカメラ1内で処理された画像データを、またデジタルカメラ1のCFカード25に保存されているファイルを受信するためのものである。なお、通信モジュール38は、CPU31に内包される場合もある。
【0037】
昇華型プリンタ3では、ユーザが複数種類の印刷用紙サイズの中から任意のサイズを選択することが可能であり、且つ、ユーザが選択したサイズの用紙に対して行われる印刷の印刷スタイルも複数種類の中から任意の印刷スタイルを選択することができる。通常、昇華型プリンタ3が、選択された印刷対象画像をそのままのサイズで印刷することは無く、リサイズ処理が行われる。
【0038】
図7は、昇華型プリンタ3で行われるリサイズ処理の原理を示す図である。
【0039】
リサイズ処理では、図7に示すように、正方形のブロック単位でリサイズ処理を複数回繰り返すことによって画像全体のサイズの変更を行う。図7(A)がリサイズ前の元画像、図7(B)がリサイズ後の画像である。ここでは、この正方形のブロック単位でリサイズ処理を複数回繰り返す画像処理を、「分割画像処理」と呼ぶ。
【0040】
ここで、リサイズ前の元画像が、一辺がAの正方形によって分割され、また、リサイズ後の画像が、一辺がBの正方形によって分割されるとともに、リサイズ前後の分割数が同数であるとする。この場合のリサイズ率はB/Aである。なお、元画像とリサイズ後の画像とのアスペクト比が異なる場合には、サイズH×Wの元画像の周囲を切り落とし、サイズHsrc×Wsrcの画像をリサイズ前の画像とする。
【0041】
元画像から一辺がAの正方形のブロック領域のデータを読み込み、B/Aのリサイズ率でリサイズを実行すると、一辺がBの正方形のブロック領域のデータが生成される。この操作を、サイズHsrc×Wsrcの元画像を構成する全部の正方形ブロック領域に対して繰り返すことで、サイズHtag×Wtagのリサイズ後の画像を得ることができる。
【0042】
次に、昇華型プリンタ3におけるSDRAM34の所要記憶容量を説明する。
【0043】
図8は、昇華型プリンタ3のCPU31が、JPG伸張、ローパスフィルタリング、回転、リサイズ等の一連の処理を行うときに、昇華型プリンタ3のSDRAM34に用意すべき記憶容量を示す図である。(A)はJPGファイル読み込み時、(B)はJPG伸張後展開時、(C)はローパスフィルタリング、回転時、(D)はプリントデータ展開時にそれぞれ必要となるSDRAM34の記憶容量を示す。
【0044】
まず、図8(A)に示すように、昇華型プリンタ3、専用ケーブル2を介してデジタルカメラ1からJPGファイルを受け取り、SDRAM34に一時記憶する際に必要となるSDRAM34の記憶容量は、例えば1MBである。
【0045】
こうして読み込んだJPGファイルを伸張後展開する際に必要となるSDRAM34の記憶容量は、図8(B)に示すように、2×(2×w×A)である。すなわち、読み込んだ画像の幅をw、リサイズ前の元画像の正方形の1ブロック領域のサイズ(リサイズ率を分数で表現した場合の分母に相当)をAとする。ここで、JPG伸張後のデータはYUV4:2:2の形式で扱われ、また後続の処理に回転処理が存在するので、1辺がAの正方形を4つ合わせた形、つまり一辺が2Aの正方形をベースにして処理を進める。そのため、JPGファイルを伸張後展開する際に必要となるSDRAM34の記憶容量は、2×(2×w×A)となる。なお、上記のYUVは、輝度信号(Y)と、輝度信号と青色成分との差(U)と、輝度信号と赤色成分との差(V)との3つの情報によって、色を表す形式である。
【0046】
ここでアルゴリズムの簡略化のために、リサイズ前の元画像の正方形の1ブロック領域のサイズ(リサイズ率の分母)Aを、リサイザ(本実施の形態では、ハードブロックで実現する)のとり得る値の最大値に設定することも考えられる。ハードブロックでリサイザを形成する場合には、ソフトウエアでのリサイズと違って計算のビット数に制限があるため、ソフトウエアのように小数を使って全てのリサイズ率を誤差無く表現することは不可能である。本実施の形態では、1〜255の整数をリサイズ率の分母と分子とに使用することで、リサイズ率を表現している。本実施の形態の場合、リサイズ率の分母、分子とも、とり得る最大値は、255となる。
【0047】
また、更なるアルゴリズムの簡略化を考えると、読み込んだ画像の幅によって図8(B)に示すメモリ領域の形状を変えるよりは、扱える画像の最大値を決めることによって、図8(B)に示すメモリ領域の記憶容量を固定することができる。
【0048】
次に、ローパスフィルタリング処理および回転処理を行う際には、SDRAM34の記憶容量として、図8(C)に示すように、4×A×Aが2つ分必要となる。すなわち、本実施の形態では、画像に対してハードブロックでローパスフィルタリング処理をかけることができる。但し、ハード構成上、画像の横方向にしかローパスフィルタリング処理をかけることができないので、2次元ローパスフィルタリング処理を実現するためには、対象画像を90°回転させて再度ローパスフィルタリング処理をかける必要がある。一方、本実施の形態では、上述のように一辺が2Aの正方形をベースにして処理を進めている。また、画像の回転処理のためには、YUV4:2:2の形式をYUV4:4:4の形式に変換する必要がある。これは、YUV4:2:2の形式のまま回転すると、YUV形式で表現した際の輝度Yと色差U、Vとのバランスが崩れるためである。YUV4:4:4は、YUV4:2:2に対して2倍のデータ容量が必要になる。また、回転前と回転後とにそれぞれ記憶領域が必要となるため、このローパスフィルタリング処理および回転処理で必要なSDRAM34の記憶容量は、4×A×Aが2つ分となる。
【0049】
また、アルゴリズムの簡略化のため、処理単位を一辺が2Aの正方形ではなく、一辺が2×256(255よりは、256の方がハード構成上扱いやすい)の正方形で処理することも考えられる。
【0050】
最後に、ローパスフィルタリング処理および回転処理を施された画像を、所定のリサイズ率でリサイズ後、画像データを格納するための領域がSDRAM34に必要となる。図8(D)に示す例は、A6サイズの用紙に画像形成出力する場合を示し、SDRAM34に1248×1876×2の記憶容量が必要となる。
【0051】
以上説明したように、JPG伸張、ローパスフィルタリング、回転、リサイズ等の一連の処理を行うときに、昇華型プリンタ3のSDRAM34に用意すべき記憶容量は、アルゴリズムの簡略化を考慮した場合、下記のようになる。
【0052】
JPGファイル読み込み領域 1MB
JPGファイル伸張後展開領域 2×512×w
ローパスフィルタリング・回転処理領域 2×(4×512×512)
リサイズ後展開領域 2×1248×1876
これに対して、上記の分割画像処理を行わない従来の一括画像処理において必要となるメモリ容量は、まず、JPGファイル全てをメモリに読み込むために、例えば、500万画素の画像を印刷対象とすると、少なくとも2MBは必要であった。
【0053】
また、2次元ローパスフィルタリング処理はモアレ低減のために行うものであり、リサイズする前に行う必要がある。そのため、JPG伸張後の画像に対してローパスフィルタリング処理を施すが、この処理では、JPG伸張後の画像データをメモリ上に全て展開する必要があった。印刷対象画像の幅をw、高さをhとすると、2×w×hのメモリ容量が必要になる。
【0054】
さらに、JPG伸張後の画像に対するローパスフィルタリング処理では、メモリの横方向の1次元でしかローパスフィルタリングをかけられないので、2次元ローパスフィルタリングを実現しようとすると、画像を90°回転する必要がある。その回転時には、YUV4:4:4のデータ形式で扱う必要があり、また回転前、回転後の画像データを格納するメモリ領域が必要となるので、4×w×hのメモリ容量が、2つ分必要になる。
【0055】
最後に、ローパスフィルタリング処理および回転処理後、所望のサイズにリサイズしてその画像データを格納する領域が必要になる。
【0056】
以上説明した一括画像処理の場合、メモリ領域の使い回しが可能であるので、一連の処理の中で最大のメモリ容量を必要とする処理に合わせたメモリ容量を用意すればよい。一括画像処理では、ローパスフィルタリング処理および回転処理が最大のメモリ容量を必要とするので、従来の一括画像処理では、2×4×w×hが用意すべきメモリ容量となる。
【0057】
次に、本実施の形態における分割画像処理で必要となるSDRAM34の記憶容量と、従来の一括画像処理で必要となるメモリ容量とを比較する。
【0058】
例えば、3072×2304の画像サイズ、700万画素相当の画像を処理する場合を計算する。
【0059】
本実施の形態の分割画像処理の場合
JPGファイル読み込み領域 1MB
JPGファイル伸張後展開領域 2×512×3072=3MB
ローパスフィルタリング・回転領域 2×(4×512×512)=2MB
リサイズ後展開領域 2×1248×1876=4.5MB
が必要となる。したがって、合計10.5MB(=1+3+2+4.5)の記憶容量がSDRAM34に必要となる。
【0060】
一方、従来の一括画像処理の場合、上述のようにメモリ容量2×4×w×hを用意する必要があり、この場合、54MB(=2×4×3072×2304)となる。
【0061】
両者を比較すると明らかなように、本実施の形態における分割画像処理の方が、少ないメモリ容量で画像処理を実施することができる。これは、印刷対象画像として扱える画像サイズを大きくできるということになる。
【0062】
〔他の実施の形態〕
なお、上記の実施の形態では、デジタルカメラ1と熱転写方式の昇華型プリンタ3とに本発明を適用した場合を例に挙げて説明しているが、本発明は、撮像装置の種類を問わず、また印刷装置の種類を問わず、撮像装置全般及び印刷装置全般に適用可能である。撮像装置としては、静止画を記録する、例えばデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、カメラ付き携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)等が対象となる。
【0063】
また、上記の実施の形態では、デジタルカメラ1と昇華型プリンタ3とが、専用ケーブル2によって接続される構成となっているが、これに代わって、デジタルカメラ1と昇華型プリンタ3とが無線通信手段によって接続される構成であってもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態では、ダイレクトプリントシステムに本発明を適用した場合を例に挙げて説明しているが、本発明は、撮像装置と印刷装置とがネットワークを介して接続されるネットワークプリントシステムにも適用可能である。
【0065】
また、本発明の目的は、前述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても達成される。
【0066】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0067】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0068】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施の形態の機能が実現されるだけではなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0069】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その拡張機能を拡張ボードや拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施の形態に係るダイレクトプリントシステムの構成を示す図である。
【図2】デジタルカメラを構成する操作部材と液晶画面とを示す図である。
【図3】昇華型プリンタの基本構成を示す図である。
【図4】図3に示す昇華型プリンタの部分拡大図である。
【図5】図1に示すデジタルカメラの制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】図1に示す昇華型プリンタの制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】昇華型プリンタで行われるリサイズ処理の原理を示す図である。
【図8】昇華型プリンタのCPUが、JPG伸張、ローパスフィルタリング、回転、リサイズ等の一連の処理を行うときに、昇華型プリンタのSDRAMに用意すべき記憶容量を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 デジタルカメラ(撮像装置)
2 専用ケーブル
3 昇華型プリンタ(印刷装置)
4 操作部材
5 液晶画面
11 インクシート
12 専用印画紙
13 サーマルヘッド
14 プラテンローラ
15 昇華性染料
16 受容層
20 CCD
21 CPU
22 画像処理エンジン
23 フラッシュROM
24 SDRAM
25 CFカード
26 CFコネクタ
27 LCD
28 LCDドライバ
29 通信モジュール
31 CPU(分割手段、画像変換手段)
32 画像処理エンジン
33 フラッシュROM
34 SDRAM(記憶装置)
35 モータ・ヘッドコントローラ
36 モータドライバ
37 昇華ヘッド
38 通信モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影して画像データを出力する撮像装置と、該撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置とからなるプリントシステムにおいて、
画像データによって表される画像を複数の領域に分割する分割手段と、
前記分割手段によって分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する画像変換手段と
を有することを特徴とするプリントシステム。
【請求項2】
前記画像変換手段は、圧縮画像の伸張処理、ローパスフィルタリング処理、回転処理、およびリサイズ処理のうちの少なくとも1つを実行することを特徴とする請求項1記載のプリントシステム。
【請求項3】
撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置において、
画像データによって表される画像を複数の領域に分割する分割手段と、
前記分割手段によって分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する画像変換手段と
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
前記撮像装置から有線通信手段または無線通信手段を介して画像データを受信する受信手段を更に有し、
前記分割手段は、前記受信手段によって受信された画像データに対して前記分割を行うことを特徴とする請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記撮像装置に装着された記憶媒体に記憶された画像データを、該記憶媒体から直接取得する取得手段を更に有し、
前記分割手段は、前記取得手段によって取得された画像データに対して前記分割を行うことを特徴とする請求項3記載の印刷装置。
【請求項6】
前記画像変換手段は、圧縮画像の伸張処理、ローパスフィルタリング処理、回転処理、およびリサイズ処理のうちの少なくとも1つを実行することを特徴とする請求項3記載の印刷装置。
【請求項7】
画像処理の途中の画像データを一時的に記憶する記憶装置を更に有し、
前記圧縮画像の伸張処理において必要となる前記記憶装置の記憶容量は、前記分割手段によって分割された画像の各領域のサイズと、前記分割手段によって分割される前の画像の幅との積の整数倍の容量であることを特徴とする請求項6記載の印刷装置。
【請求項8】
前記分割手段は、リサイズ処理で最大とり得るサイズの領域となるよう、画像データによって表される画像を複数の領域に分割することを特徴とする請求項7記載の印刷装置。
【請求項9】
画像処理の途中の画像データを一時的に記憶する記憶装置を更に有し、
前記ローパスフィルタリング処理、回転処理、およびリサイズ処理において必要となる前記記憶装置の記憶容量は、前記分割手段によって分割された画像の各領域の面積の4倍の面積を持つ領域2つ分の容量であることを特徴とする請求項6記載の印刷装置。
【請求項10】
前記分割手段は、リサイズ処理で最大とり得るサイズの領域となるよう、画像データによって表される画像を複数の領域に分割することを特徴とする請求項9記載の印刷装置。
【請求項11】
画像処理の途中の画像データを一時的に記憶する記憶装置を更に有し、
前記記憶装置が用意すべき記憶容量は、前記分割手段によって分割された画像の各領域のサイズと前記分割手段によって分割される前の画像の幅との積の4倍の値と、前記分割手段によって分割された画像の各領域の面積の8倍の値との和であることを特徴とする請求項6記載の印刷装置。
【請求項12】
被写体を撮影して画像データを出力する撮像装置と、該撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置とからなるプリントシステムに適用される画像処理方法において、
画像データによって表される画像を複数の領域に分割する分割ステップと、
前記分割ステップにおいて分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する画像変換ステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
前記画像変換ステップでは、圧縮画像の伸張処理、ローパスフィルタリング処理、回転処理、およびリサイズ処理のうちの少なくとも1つが実行されることを特徴とする請求項12記載の画像処理方法。
【請求項14】
撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置に適用される画像処理方法において、
画像データによって表される画像を複数の領域に分割する分割ステップと、
前記分割ステップにおいて分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する画像変換ステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項15】
前記撮像装置から有線通信手段または無線通信手段を介して画像データを受信する受信ステップを更に有し、
前記分割ステップでは、前記受信ステップにおいて受信された画像データに対して前記分割を行うことを特徴とする請求項14記載の画像処理方法。
【請求項16】
前記撮像装置に装着された記憶媒体に記憶された画像データを、該記憶媒体から直接取得する取得ステップを更に有し、
前記分割ステップでは、前記取得ステップにおいて取得された画像データに対して前記分割を行うことを特徴とする請求項14記載の画像処理方法。
【請求項17】
前記画像変換ステップでは、圧縮画像の伸張処理、ローパスフィルタリング処理、回転処理、およびリサイズ処理のうちの少なくとも1つが実行されることを特徴とする請求項14記載の画像処理方法。
【請求項18】
前記印刷装置は、画像処理の途中の画像データを一時的に記憶する記憶装置を備え、
前記圧縮画像の伸張処理において必要となる前記記憶装置の記憶容量は、前記分割ステップにおいて分割された画像の各領域のサイズと、前記分割ステップにおいて分割される前の画像の幅との積の整数倍の容量であることを特徴とする請求項17記載の画像処理方法。
【請求項19】
前記分割ステップでは、リサイズ処理で最大とり得るサイズの領域となるよう、画像データによって表される画像を複数の領域に分割することを特徴とする請求項18記載の画像処理方法。
【請求項20】
前記印刷装置は、画像処理の途中の画像データを一時的に記憶する記憶装置を備え、
前記ローパスフィルタリング処理、回転処理、およびリサイズ処理において必要となる前記記憶装置の記憶容量は、前記分割ステップにおいて分割された画像の各領域の面積の4倍の面積を持つ領域2つ分の容量であることを特徴とする請求項17記載の画像処理方法。
【請求項21】
前記分割ステップでは、リサイズ処理で最大とり得るサイズの領域となるよう、画像データによって表される画像を複数の領域に分割することを特徴とする請求項20記載の画像処理方法。
【請求項22】
前記印刷装置は、画像処理の途中の画像データを一時的に記憶する記憶装置を備え、
前記記憶装置が用意すべき記憶容量は、前記分割ステップにおいて分割された画像の各領域のサイズと前記分割ステップにおいて分割される前の画像の幅との積の4倍の値と、前記分割ステップにおいて分割された画像の各領域の面積の8倍の値との和であることを特徴とする請求項17記載の画像処理方法。
【請求項23】
被写体を撮影して画像データを出力する撮像装置と、該撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置とからなるプリントシステムに適用される画像処理方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムにおいて、
画像データによって表される画像を複数の領域に分割する分割ステップと、
前記分割ステップにおいて分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する画像変換ステップと
を有することを特徴とするプログラム。
【請求項24】
撮像装置から出力された画像データに基づいて印刷処理を行う印刷装置に適用される画像処理方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムにおいて、
画像データによって表される画像を複数の領域に分割する分割ステップと、
前記分割ステップにおいて分割された複数の領域の画像データの各々を、前記印刷装置が印刷可能な形態の画像データに変換する画像変換ステップと
を有することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−28839(P2008−28839A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200864(P2006−200864)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】