説明

プリント配線板およびその製造方法

【課題】導電性の良好な導電性ペーストを使用することにより、優れた接続信頼性を有するプリント配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のプリント配線板1は、金属基板2と、金属基板2の表面上に設けられた絶縁層3と、絶縁層3の表面上に設けられ、金属基板2と電気的に接続される導電層4とを備えている。また、プリント配線板1は、絶縁層3と導電層4に形成され、金属基板2を底面とするとともに、絶縁層3、および導電層4を壁面とする貫通孔6と、貫通孔6に充填され、金属基板2と導電層4を電気的に接続するための導電性ペースト7を備えている。そして、プリント配線板1において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、電流を流す処理がなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ハードディスクドライブにおける磁気ヘッドサスペンション用の基板として使用されるプリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器分野においては、電子機器の高密度化や小型化等に伴い、種々の用途に、プリント配線板が広く用いられている。例えば、データ転送の高速化が要求されるハードディスクドライブにおける磁気ヘッドを搭載するための磁気ヘッドサスペンション用の基板としてプリント配線板が使用されている。
【0003】
このようなプリント配線板としては、例えば、貫通孔が形成された絶縁層と、当該貫通孔に充填された導電性ペーストと、絶縁層の両面に形成され、所定の配線パターンを有する銅箔からなる導電層を備えるプリント配線板が開示されている。ここで、導電性ペーストは、一般に、良好な導電性を示すことから、電子機器に幅広く使用されており、本プリント配線板においては、エポキシ樹脂等のバインダー樹脂中に金属粉末等の導電性フィラーを分散させたものが使用される。そして、絶縁層の両面に形成された導電層は、導電性ペーストを介して電気的に接続される構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、絶縁層の両面に形成された導電層間を、はんだペーストにより電気的に接続したプリント配線板が開示されている。より具体的には、貫通孔が形成された絶縁層と、当該貫通孔にリフロー処理により充填されたはんだペーストと、絶縁層の両面に形成された所定の配線パターンを有する導電層を備え、絶縁層の両面に形成された導電層間を、はんだペーストを介して、電気的に接続されるプリント配線板が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、上述のハードディスクドライブにおける磁気ヘッドサスペンション用の基板として使用されるプリント配線板としては、例えば、ステンレス(SUS)等により形成された金属基板と、金属基板の上に積層された絶縁層と、絶縁層上に積層され、所定の配線パターンが形成された銅箔からなる導電層を備え、各層を所定の形状にエッチングしたプリント配線板が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−68620号公報
【特許文献2】特開2002−94206号公報
【特許文献3】特開2002−25213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述の導電性ペーストは、銅箔からなる導電層間を電気的に接続するための手段としては有効であるものの、上述の磁気ヘッドサスペンション用の基板として使用されるプリント配線板において、金属基板と導電層を電気的に接続するための手段として使用することが困難であるという問題があった。即ち、ステンレス等により形成された金属基板の表面には、絶縁性の酸化皮膜の発生や有機物等の付着が起こりやすいため、導電性ペーストを介して、金属基板と導電層を電気的に接続する際に、導電性ペーストと金属基板の界面に絶縁層が形成されやすくなる。その結果、導電性ペーストと金属基板の界面の抵抗が上昇するため、金属基板と導電層間の接続信頼性が低下するという問題があった。
【0008】
また、上述のはんだペーストを介して、金属基板と導電層を電気的に接続することも考えられるが、この場合、上述の金属基板の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜等を除去するために、はんだペーストにフラックスを添加する必要がある。しかし、当該フラックスを使用すると、マイグレーション等の絶縁劣化を引き起こすという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、導電性ペーストを使用することにより、優れた接続信頼性を有するプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、金属基板と、金属基板の表面上に設けられた絶縁層と、絶縁層の表面上に設けられ、金属基板と電気的に接続される導電層と、絶縁層と導電層に形成され、金属基板を底面とするとともに、絶縁層、および導電層を壁面とする有底のビアホールもしくは貫通孔と、有底のビアホールもしくは貫通孔に充填され、金属基板と導電層を電気的に接続するための導電性ペーストとを備え、金属基板と導電性ペーストとの界面に対して、接続抵抗を低下させるための手段として、電流を流す処理がなされていることを特徴とするプリント配線板である。
【0011】
同構成によれば、金属基板の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等を破壊して、除去することが可能になるため、導電性ペーストと金属基板の界面に絶縁層が形成されるのを効果的に抑制することが可能になる。従って、導電性ペーストと金属基板の界面の抵抗を低下させることが可能になるため、導電性ペーストを介して、金属基板と導電層を良好に接続することが可能になる。その結果、金属基板と導電層間の接続信頼性を向上することができる。また、金属基板と導電層の接続の際に、フラックスを使用する必要がないため、当該フラックスに起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプリント配線板であって、金属基板が、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、および亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種により形成されていることを特徴とする。
【0013】
同構成によれば、絶縁性の酸化皮膜の発生や有機物等の付着が起こりやすいステンレス等から形成される金属基板を使用する場合であっても、導電性ペーストと金属基板の界面の抵抗を効果的に低下させることが可能になる。その結果、例えば、放熱性、ばね性、および耐食性に優れているステンレスから形成される金属基板を使用する場合においても、金属基板と導電層間の接続信頼性を向上することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、金属基板と、金属基板の表面上に設けられた絶縁層と、絶縁層の表面上に設けられ、金属基板と電気的に接続される導電層と、絶縁層と導電層に形成され、金属基板を底面とするとともに、絶縁層、および導電層を壁面とする有底のビアホールもしくは貫通孔と、有底のビアホールもしくは貫通孔に充填され、金属基板と導電層を電気的に接続するための導電性ペーストとを備え、金属基板がステンレスであり、金属基板と導電性ペーストとの界面での接触抵抗が0.03Ω・mm以下であることを特徴とするプリント配線板である。
【0015】
同構成によれば、導電性ペーストと金属基板の界面の接触抵抗が、0.03Ω・mm以下であるため、導電性ペーストを介して、金属基板と導電層を良好に接続することが可能になる。その結果、金属基板と導電層間の接続信頼性を向上することができる。また、金属基板と導電層の接続の際に、フラックスを使用する必要がないため、当該フラックスに起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。さらに、金属基板としてステンレスを使用しているため、放熱性、ばね性、および耐食性に優れた金属基板を有するプリント配線板を提供することが可能になる。
【0016】
また、本発明の請求項1乃至請求項3に記載のプリント配線板は、導電性ペーストと金属基板の界面の接触抵抗が、0.03Ω・mm以下であり、金属基板と導電層間の接続信頼性を向上することができるという優れた特性を備えているため、請求項4に記載の発明のように、ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として用いられるプリント配線板として好適に使用できる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、金属基板と、金属基板の表面上に設けられた絶縁層と、絶縁層の表面上に設けられ、金属基板と電気的に接続される導電層と、絶縁層と導電層に形成され、金属基板を底面とするとともに、絶縁層、および導電層を壁面とする有底のビアホールまたは貫通孔と、金属粒子を含有するとともに、有底のビアホールまたは貫通孔に充填され、金属基板と導電層を電気的に接続するための導電性ペーストとを備え、金属基板と導電性ペーストとの界面において、導電性ペーストの金属粒子と金属基板が固着していることを特徴とする。
【0018】
同構成によれば、金属基板と導電性ペーストとの界面において、導電性ペーストの金属粒子と金属基板が固着しているため、導電性ペーストと金属基板の界面の抵抗を低下させることが可能になる。従って、導電性ペーストを介して、金属基板と導電層を良好に接続することが可能になり、結果として、金属基板と導電層間の接続信頼性を向上することができる。また、金属基板と導電層の接続の際に、フラックスを使用する必要がないため、当該フラックスに起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。なお、ここでいう「固着」とは、走査型断面顕微鏡で観察した断面にて、隙間が無く、接している部分が点状ではなく、線状である状態のことをいう。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のプリント配線板であって、導電性ペーストの金属粒子と金属基板が固着している部分の長さが、0.1μm以上であることを特徴とする。
【0020】
同構成によれば、導電性ペーストの金属粒子と金属基板が固着している部分の長さが、0.1μm以上であるため、電気が導通する部分が大きくなり、結果として、導電性ペーストと金属基板の界面の抵抗を、一層効果的に低下させることが可能になる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載のプリント配線板であって、金属基板が、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、および亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種により形成されていることを特徴とする。
【0022】
同構成によれば、絶縁性の酸化皮膜の発生や有機物等の付着が起こりやすいステンレス等から形成される金属基板を使用する場合であっても、導電性ペーストと金属基板の界面の抵抗を効果的に低下させることが可能になる。その結果、金属基板と導電層間の接続信頼性を向上することができる。
【0023】
特に、請求項8に記載の発明のように、金属基板をステンレスにより形成することにより、放熱性、ばね性、および耐食性に優れているステンレスから形成される金属基板を使用する場合においても、金属基板と導電層間の接続信頼性を向上することができる。
【0024】
また、本発明の請求項5乃至請求項8に記載のプリント配線板は、金属基板と導電性ペーストとの界面において、導電性ペーストの金属粒子と金属基板が固着しており、金属基板と導電層間の接続信頼性を向上することができるという優れた特性を備えているため、請求項9に記載の発明のように、ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として用いられるプリント配線板として好適に使用できる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、金属基板、絶縁層、および導電層が順次積層された基材を準備する工程と、絶縁層を選択的に除去することにより、金属基板を底面とするとともに、絶縁層、および導電層を壁面とする有底のビアホールもしくは貫通孔を形成する工程と、有底のビアホールもしくは貫通孔の底面である金属基板の表面と、有底のビアホールもしくは貫通孔の壁面である導電層の表面が連続するように、導電性ペーストを塗布することにより、貫通孔に導電性ペーストを充填する工程と、金属基板と前記導電性ペーストとの界面に対して、電流を流す工程を少なくとも含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法である。
【0026】
同構成によれば、金属基板の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等を破壊して、除去することが可能になるため、導電性ペーストと金属基板の界面に絶縁層が形成されるのを効果的に抑制することが可能になる。従って、導電性ペーストと金属基板の界面の抵抗を低下させることが可能になるため、導電性ペーストを介して、金属基板と導電層を良好に接続することが可能になる。その結果、金属基板と導電層間の接続信頼性を向上することができる。また、金属基板と導電層の接続の際に、フラックスを使用する必要がないため、当該フラックスに起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。
【0027】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のプリント配線板の製造方法であって、金属基板と導電性ペーストとの界面に流す電流の密度が、0.1A/mm〜1000A/mmであることを特徴とする。同構成によれば、電流を流す際に発生する熱により、導電性ペーストを構成する樹脂の変質や、金属基板の溶融という不都合を生じることなく、金属基板の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等の破壊や除去を効果的に促進することが可能になる。
【0028】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のプリント配線板の製造方法であって、電流を流す時間が、1×10−6秒〜100秒であることを特徴とする。同構成によれば、プリント配線板の生産性を低下させることなく、金属基板の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等の破壊や除去を効果的に促進することが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、導電性ペーストを介して、金属基板と導電層が接続されたプリント配線板において、金属基板と導電層を良好に接続することが可能になるとともに、マイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図2】(a)〜(h)は、本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】(a)〜(f)は、本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するための断面図であり、図2の続きの工程を示す図である。
【図4】実施例1のプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図5】実施例9のプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図6】電流処理を行ったプリント配線板において、導電性ペーストと金属基板の界面を走査型電子顕微鏡で観察した場合の断面構造図である。
【図7】電流処理を行っていないプリント配線板において、導電性ペーストと金属基板の界面を走査型電子顕微鏡で観察した場合の断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプリント配線板の概略構成を示す断面図である。本発明のプリント配線板1は、例えば、ハードディスクドライブにおける磁気ヘッドを搭載するための磁気ヘッドサスペンション用の基板として使用されるものである。このプリント配線板1は、図1に示すように、金属箔により形成された金属基板2と、当該金属基板2の表面上に設けられた絶縁層3と、当該絶縁層3の表面上に設けられ、所定の配線パターンを有する導電層4とを備えている。
【0032】
金属基板2としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、亜鉛等からなる金属箔が使用できる。また、これらの金属箔のうち、放熱性、ばね性、および耐食性に優れているステンレスからなる金属箔を使用することが好ましい。本実施形態においては、金属基板2の厚みが、1μm〜100μmのものが好適に使用できる。
【0033】
絶縁層3としては、柔軟性にすぐれた樹脂材料が使用される。かかる樹脂としては、例えば、ポリエステル等の、プリント配線板用として汎用性のある樹脂を使用することができる。また、特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているのが好ましく、かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリアミド系の樹脂や、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂が好適に使用される。また、本実施形態においては、絶縁層3の厚みが、5μm〜200μmのものが好適に使用できる。
【0034】
また、導電層4としては、絶縁層3の表面上に形成された、導電層4の下地となる導体薄膜8と、導体薄膜8の表面上に形成されためっき層12により構成されている。この導体薄膜8としては、導電性、耐久性を考慮して、例えば、銅、または銅を主成分とする合金が好適に使用でき、例えば、銅薄膜やクロム薄膜が使用できる。また、めっき層12は、例えば、銅、アルミ、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金等により形成されており、導電性向上の観点から、特に、銅めっきが好適に使用できる。本実施形態においては、導電層4の厚みが、2μm〜50μmのものが好適に使用できる。
【0035】
また、本実施形態においては、図1に示すように、導電層4とグランド用の接続端子(不図示)をアース接続する際の接続信頼性を高めるために、導電層4の表面をめっき層5により被覆する構成としている。そして、環境への配慮から、鉛を含有しないめっき層5を使用することが好ましい。また、導電層4と接続端子間の接続信頼性の低下を防止するとの観点から、鉛を含有しないめっき層5として、金めっき層を使用することができる。導電層4の表面へのめっき処理は、無電解めっき法、または電解めっき法により行われ、金めっき層を設ける際には、露出した導電層4の表面に対して、まず、拡散防止層としてのニッケルめっき層を形成した後、当該ニッケルめっき層の表面上に金めっき層を形成する方法が採用される。
【0036】
また、本実施形態においては、図1に示すように、プリント配線板1には、導電層4と金属基板2を連結するための貫通孔(または、有底のビアホール)6が形成されるとともに、当該貫通孔6に導電性ペースト7が充填されている。そして、金属基板2と導電層4が、当該導電性ペースト7を介して、電気的に接続される構成となっている。
【0037】
この貫通孔6は、図1に示すように、金属基板2を底面とするとともに、絶縁層3、および導電層4を壁面とするものであり、当該貫通孔6の直径は、30〜400μmとすることが好ましく、50〜200μmとすることが更に好ましい。これは、直径が30μmよりも小さいと、貫通孔6の接続面積が小さくなるため、金属基板2と導電層4を電気的に接続する際に、接続抵抗が大きくなる場合があるからであり、また、直径が400μmよりも大きい場合は、導電層4上に形成された配線パターンの配線幅に比し、貫通孔6が大きくなり、高密度実装を行うことが困難になる場合があるからである。なお、貫通孔6の形状は、円形状のほか、例えば、楕円形状等の形状とすることができ、円形状以外の形状の場合は、開口部の最大長さを貫通孔の直径とする。
【0038】
また、導電性ペースト7としては、金属粒子等の導電性フィラーを含有し、当該導電性フィラーをバインダー樹脂中に分散したものが使用できる。ここで、金属粒子としては、例えば、銀、白金、金、銅、ニッケルおよびパラジウム等を使用できるが、これらのうち、銀粉末や銀コート銅粉末を使用すると優れた導電性を示すため、好ましい。また、バインダー樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、およびポリアミドイミド樹脂等を使用することができる。また、これらのうち、導電性ペーストの耐熱性を向上させるとの観点から、熱硬化性樹脂を使用することが好ましく、本実施形態においては、エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0039】
なお、使用するエポキシ樹脂は、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールA型、F型、S型、AD型、またはビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型のエポキシ樹脂や、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0040】
また、バインダー樹脂は溶剤に溶解して使用することができる。使用する溶剤としては、例えば、エステル系、エーテル系、ケトン系、エーテルエステル系、アルコール系、炭化水素系、アミン系等の有機溶剤を使用することができる。ここで、導電性ペースト7は、スクリーン印刷等により、貫通孔6に充填されるため、印刷性に優れた高沸点溶媒を使用することが好ましく、より具体的には、カルビトールアセテートやブチルカルビトールアセテートを使用することが好ましい。なお、これらの溶剤を複数種類、組み合わせて使用することもできる。これらの材料を三本ロール、回転攪拌脱泡機等により混合、分散して、均一な状態とし、導電性ペーストを作製する。
【0041】
また、図1に示すように、プリント配線板1において、導電層4の一部の表面上、および導電性ペースト7の表面上に、他の絶縁層15が積層されており、当該他の絶縁層15により、導電層4の一部、および導電性ペースト7が被覆される構成としている。他の絶縁層15としては、上述の絶縁層3と同様のものを使用することができる。
【0042】
次に、図1に示すプリント配線板の製造方法の一例について、図面を参照して説明する。図2(a)〜(h)は、本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するための断面図である。また、図3(a)〜(f)は、本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するための断面図であり、図2の続きの工程を示す図である。
【0043】
まず、図2(a)に示すように、金属基板2を用意する。この金属基板2としては、例えば、上述のステンレスからなる金属箔を使用することができる。次に、図2(b)に示すように、金属基板2の表面に、例えば、ポリイミド系のカバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工して乾燥させることにより、金属基板2の表面に、ポリイミド樹脂からなるフィルム状の絶縁層3を形成する。
【0044】
次いで、絶縁層3上にレジストを用いて所定のパターンを形成した後、めっき処理により配線を形成するセミアディティブ法を用いて、絶縁層3の表面上に導電層4を形成する。より具体的には、まず、図2(c)に示すように、絶縁層3の表面上に、導電層4の下地となる導体薄膜8を形成する。この導体薄膜8としては、クロム薄膜や銅薄膜が使用でき、本実施形態においては、導体薄膜8の形成は、スパッタリング法等の真空成膜法が使用される。例えば、絶縁層3の表面全体に、スパッタリング法により、クロム薄膜と銅薄膜を順次形成する方法を採用することができる。なお、クロム薄膜の厚さが、10〜5000Å、銅薄膜の厚みが、100〜10000Åであることが好ましい。
【0045】
次いで、図2(d)に示すように、導体薄膜8の表面において、導電層4が形成される部分と反転する部分に、レジスト10を形成するとともに、金属基板2の表面において、レジスト11を形成する。レジスト10,11の形成は、例えば、ドライフィルムレジストを用いる等、公知の方法を使用することができる。より具体的には、導体薄膜8、および金属基板2の表面に、例えば、アクリル樹脂系のドライフィルムレジストをラミネート法を用いて形成することができ、また、ノボラック樹脂系のレジストをスピンコート法を用いて形成することができる。その後、当該レジストを加工処理することにより、図2(d)に示すように、所定の開口パターンを有するレジスト10,11を形成する。
【0046】
そして、図2(e)に示すように、レジスト11をマスクとして使用し、例えば、化学エッチング(ウェットエッチング)等の公知のエッチング法により、金属基板2のエッチングを行い、当該金属基板2を選択的に除去することにより、金属基板2を所定の形状にする。
【0047】
次いで、図2(f)に示すように、レジスト10をマスクとして、当該レジスト10から露出する導体薄膜8の表面上に、無電解めっきにより、例えば、銅めっきからなるめっき層12を形成する。なお、めっき層12の厚みは、2〜30μmであることが好ましい。
【0048】
次いで、図2(g)に示すように、上述のレジスト10,11を、例えば、公知のレジスト剥離液等を用いて除去する。その後、図2(h)に示すように、レジスト10が形成されていた導体薄膜8の一部を、同様に、化学エッチング(ウェットエッチング)等の公知のエッチング法により除去することにより、絶縁層3の表面に、導体薄膜8およびめっき層12からなる導電層4を、セミアディティブ法により形成する構成となっている。このように、本実施形態においては、まず、金属基板2、絶縁層3、および導電層4を順次積層した基材を形成する。
【0049】
次いで、図3(a)に示すように、導電層4および絶縁層3の表面において、レジスト13を形成するとともに、金属基板2の表面において、レジスト14を形成する。レジスト13,14の形成は、上述のレジスト10,11と同様に、例えば、ドライフィルムレジストを用いる等、公知の方法を使用することができる。より具体的には、導体薄膜8、および金属基板2の表面に、例えば、アクリル樹脂系のドライフィルムレジストをラミネート法を用いて形成することができ、また、ノボラック樹脂系のレジストをスピンコート法を用いて形成することができる。その後、当該レジストを加工処理することにより、図3(a)に示すように、所定の開口パターンを有するレジスト13,14を形成する。
【0050】
次いで、図3(b)に示すように、レジスト13,14をマスクとして使用し、例えば、化学エッチング(ウェットエッチング)等の公知のエッチング法により、絶縁層3のエッチングを行い、当該絶縁層3を選択的に除去することにより、導電層4と金属基板2を連結するための貫通孔6(または、有底のビアホール)を形成する。
【0051】
次いで、図3(c)に示すように、上述のレジスト13,14を、例えば、レジスト剥離液等を用いて除去する。
次いで、図3(d)に示すように、導電層4の表面をめっき処理して、当該導電層4の表面をめっき層5により被覆する。この導電層4の表面へのめっき処理は、例えば、露出した導電層4の表面に対して、まず、拡散防止層としてのニッケルめっき層を形成した後、当該ニッケルめっき層の表面上に金めっき層を形成する。
【0052】
次いで、図3(e)に示すように、貫通孔6に導電性ペースト7を充填することにより、金属基板2と導電層4を、当該導電性ペースト7を介して、電気的に接続する。導電性ペースト7を貫通孔6に充填する方法としては、例えば、スクリーン印刷法等の方法により、貫通孔6の底面である金属基板2の表面と、貫通孔6の壁面である導電層4の表面が連続するように、導電性ペースト7を塗布することにより、貫通孔6に導電性ペースト7を充填する方法を採用することができる。なお、必要に応じて、導電性ペースト7の充填後、当該導電性ペースト7を加熱処理して硬化させても良い。
【0053】
ここで、本実施形態においては、上述の導電性ペースト7を貫通孔6に充填後、図3(e)に示す状態において、接続抵抗を低下させるための手段として、当該導電性ペースト7と金属基板2との界面に対して、電流を流す点に特徴がある。このような構成により、金属基板2の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等を破壊して、除去することが可能になるため、導電性ペースト7と金属基板2の界面に絶縁層が形成されるのを効果的に抑制することが可能になる。従って、導電性ペースト7と金属基板2の界面の抵抗を低下(例えば、ノイズの発生を効果的に抑制することができる1Ω以下に低下)させることが可能になるため、導電性ペースト7を介して、金属基板2と導電層4を良好に接続することが可能になる。その結果、金属基板2と導電層4間の接続信頼性を向上することができ、導電性の良好な導電性ペースト7を使用することにより、優れた接続信頼性を有するプリント配線板1を提供することができる。また、上記従来技術と異なり、金属基板2と導電層4の接続の際に、フラックスを使用する必要がなくなるため、当該フラックスに起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を効果的に抑制することが可能になる。
【0054】
また、金属基板2と導電性ペースト7との界面において、導電性ペースト7に含有される金属粒子と金属基板2が固着した状態で、金属基板2と導電層4が接続された、プリント配線板1を提供することが可能になる。従って、金属基板2と導電層4間の接続信頼性に優れたプリント配線板1を提供することが可能になり、特に、ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として好適に使用できるプリント配線板1を提供することができる。
【0055】
なお、電気が導通する部分が大きくなり、低抵抗化が実現できるとの観点から、導電性ペースト7の金属粒子と金属基板2が固着している部分の長さは、0.1μm以上であることが好ましい。
【0056】
また、金属基板2としてステンレスを使用するとともに、導電性ペースト7と金属基板2の界面の接触抵抗が0.03Ω・mm以下である、金属基板2と導電層4間の接続信頼性に優れたプリント配線板1を提供することが可能になり、特に、ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として好適に使用できるプリント配線板1を提供することができる。
【0057】
なお、貫通孔6の底面である金属基板2の表面(即ち、導電性ペースト7と金属基板2の界面)に流す電流の密度の範囲としては、0.1A/mm〜1000A/mmが好ましい。これは、電流密度が0.1A/mmより小さい場合は、金属基板2の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等の破壊や除去が困難になる場合があるからであり、また、電流値が1000A/mmより大きい場合は、電流を流す際に発生する熱により、導電性ペースト7を構成する樹脂の変質が発生する場合や、金属基板2が溶融し、当該金属基板2の剥離が生じる場合があるからである。
【0058】
また、導電性ペースト7と金属基板2の界面に流す電流としては、直流電流、交流電流、ハルス波等を使用することができ、これらを組み合わせて使用することもできる。また、0.1A/mm〜1000A/mmの電流を流す場合、当該電流を流す時間(印加時間)は、1×10−6秒〜100秒が好ましい、これは、1×10−6秒より小さい場合は、金属基板2の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等の破壊や除去が困難になる場合があるからであり、また、100秒より大きい場合は、プリント配線板1の製造工程が長時間になり、プリント配線板1の生産性が低下する場合があるからである。
【0059】
次いで、図3(f)に示すように、導電層4の一部の表面上に、他の絶縁層15を積層して、導電層4の一部、および導電性ペースト7を他の絶縁層15で被覆することにより、図1に示すプリント配線板1が製造される。具体的な絶縁層の形成方法としては、例えば、ポリイミド系の感光性カバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工して乾燥させ、さらに、露光現像することにより、導電層4の一部の表面、および導電性ペースト7の表面上に、ポリイミド樹脂からなるフィルム状の他の絶縁層15を形成する方法が採用できる。
【0060】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、プリント配線板1が、金属基板2と、金属基板2の表面上に設けられた絶縁層3と、絶縁層3の表面上に設けられ、金属基板2と電気的に接続される導電層4とを備える構成としている。また、プリント配線板1が、絶縁層3と導電層4に形成され、金属基板2を底面とするとともに、絶縁層3、および導電層4を壁面とする貫通孔6と、貫通孔6に充填され、金属基板2と導電層4を電気的に接続するための導電性ペースト7を備える構成としている。そして、このようなプリント配線板1において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、電流を流す処理がなされている。従って、金属基板2の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等を破壊して、除去することができ、導電性ペースト7と金属基板2の界面の抵抗を低下させることができる。その結果、良好な導電性を有する導電性ペースト7を使用することにより、金属基板2と導電層4間の接続信頼性が向上したプリント配線板1を提供することが可能になる。また、フラックスを使用する必要がなくなるため、当該フラックスに起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。
【0061】
(2)本実施形態においては、プリント配線板1が、金属基板2と、金属基板2の表面上に設けられた絶縁層3と、絶縁層3の表面上に設けられ、金属基板2と電気的に接続される導電層4とを備える構成としている。また、プリント配線板1が、絶縁層3と導電層4に形成され、金属基板2を底面とするとともに、絶縁層3、および導電層4を壁面とする貫通孔6と、貫通孔6に充填され、金属基板2と導電層4を電気的に接続するための導電性ペースト7を備える構成としている。そして、このようなプリント配線板1において、金属基板2をステンレスで形成するとともに、金属基板2と導電性ペースト7との界面での接触抵抗を0.03Ω・mm以下とする構成としている。従って、良好な導電性を有する導電性ペースト7を使用することにより、ステンレスにより形成された金属基板2と導電層4間の接続信頼性が向上したプリント配線板1を提供することが可能になる。また、フラックスを使用する必要がなくなるため、当該フラックスに起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。さらに、金属基板2としてステンレスを使用しているため、放熱性、ばね性、および耐食性に優れた金属基板を有するプリント配線板1を提供することが可能になる。
【0062】
(3)また、本実施形態のプリント配線板1は、導電性ペースト7と金属基板2の界面の接触抵抗が、0.03Ω・mm以下であり、金属基板2と導電層4間の接続信頼性を向上することができるという優れた特性を備えているため、特に、ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として用いられるプリント配線板として好適に使用できる。
【0063】
(4)本実施形態においては、プリント配線板1が、金属基板2と、金属基板2の表面上に設けられた絶縁層3と、絶縁層3の表面上に設けられ、金属基板2と電気的に接続される導電層4とを備える構成としている。また、プリント配線板1が、絶縁層3と導電層4に形成され、金属基板2を底面とするとともに、絶縁層3、および導電層4を壁面とする貫通孔6と、金属粒子を含有するとともに、貫通孔6に充填され、金属基板2と導電層4を電気的に接続するための導電性ペースト7を備える構成としている。そして、このようなプリント配線板1において、金属基板2と導電性ペースト7との界面において、導電性ペースト7の金属粒子と金属基板2が固着している構成としている。従って、導電性ペースト7と金属基板2の界面の抵抗を低下させることが可能になるため、導電性ペースト7を介して、金属基板2と導電層4を良好に接続することが可能になる。その結果、金属基板2と導電層4間の接続信頼性を向上することができる。また、金属基板2と導電層4の接続の際に、フラックスを使用する必要がないため、フラックスに起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。
【0064】
(5)本実施形態においては、導電性ペースト7の金属粒子と金属基板2が固着している部分の長さが、0.1μm以上となる構成としている。従って、導電性ペースト7と金属基板2の界面の抵抗を、一層効果的に低下させることが可能になる。
【0065】
(6)また、本実施形態のプリント配線板1は、金属基板2と導電性ペースト7との界面において、導電性ペースト7の金属粒子と金属基板2が固着しており、金属基板2と導電層4間の接続信頼性を向上することができるという優れた特性を備えているため、特に、ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として用いられるプリント配線板として好適に使用できる。
【0066】
(7)本実施形態においては、金属基板2を、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、および亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種により形成する構成としている。従って、例えば、絶縁性の酸化皮膜の発生や有機物等の付着が起こりやすいステンレス等から形成される金属基板2を使用する場合においても、導電性ペースト7と金属基板2の界面の抵抗を効果的に低下させることが可能になる。その結果、例えば、放熱性、ばね性、および耐食性に優れているステンレスから形成される金属基板2を使用する場合においても、金属基板2と導電層4間の接続信頼性を向上することができる。
【0067】
(8)本実施形態のプリント配線板1の製造方法は、金属基板2、絶縁層3、および導電層4が順次積層された基材を準備する工程と、絶縁層3を選択的に除去することにより、金属基板2を底面とするとともに、絶縁層3、および導電層4を壁面とする貫通孔6を形成する工程と、貫通孔6の底面である金属基板2の表面と、貫通孔6の壁面である導電層4の表面が連続するように、導電性ペースト7を塗布することにより、貫通孔6に導電性ペースト7を充填する工程を備えている。そして、本実施形態のプリント配線板1の製造方法においては、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、電流を流す工程を少なくとも含む構成としている。従って、金属基板2の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等を破壊して、除去することができ、導電性ペースト7と金属基板2の界面の抵抗を低下させることができる。その結果、良好な導電性を有する導電性ペースト7を使用することにより、金属基板2と導電層4間の接続信頼性が向上したプリント配線板1を提供することが可能になる。また、フラックスを使用する必要がなくなるため、当該フラックスに起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。
【0068】
(9)本実施形態においては、金属基板2と導電性ペースト7との界面に流す電流の密度を、0.1A/mm〜1000A/mmとする構成としている。従って、電流を流す際に発生する熱により、導電性ペースト7を構成する樹脂の変質や、金属基板2の溶融という不都合を生じることなく、金属基板2の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等の破壊や除去を効果的に促進することが可能になる。
【0069】
(10)本実施形態においては、電流密度が0.1A/mm〜1000A/mmである電流を流す時間を、1×10−6秒〜100秒とする構成としている。従って、プリント配線板1の生産性を低下させることなく、金属基板2の表面に存在する絶縁性の酸化皮膜や有機物等の破壊や除去を効果的に促進することが可能になる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0071】
例えば、導電性フィラーをバインダー樹脂中に分散した導電性ペースト7に、潜在性硬化剤を配合する構成としても良い。この硬化剤としては、例えば、バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂を使用する場合にはイソシアネート化合物を使用することができ、エポキシ樹脂を使用する場合にはアミン化合物、イミダゾール化合物を使用することができる。
【0072】
また、上記実施形態においては、ポリイミド系のカバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工して乾燥させることにより、金属基板2の表面に、ポリイミド樹脂からなるフィルム状の絶縁層3を形成する構成としたが、当該絶縁層3である樹脂フィルムの片面に接着剤層(不図示)が設けられたものを用意し、当該接着剤層を介して、金属基板2と絶縁層3を貼り合わせて使用しても良い。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0074】
(プリント配線板の作製)
以下、図4を用いて説明する。まず、金属基板2として、20μmの厚みを有するステンレスからなる金属箔(SUS304HTA)を用意するとともに、絶縁層3として、エポキシ樹脂を含有する熱硬化性樹脂からなる接着剤層20が設けられるとともに、直径(開口径)が0.4mmの開口部を有する、厚みが12μmのポリイミドからなる樹脂フィルムを用意した。次いで、接着剤層20を介して、金属基板2と絶縁層3を貼り合わせ、金属基板2を底面とするとともに、接着剤層20が設けられた絶縁層3を壁面とする貫通孔6a(上述の実施形態における貫通孔6に相当)を有する、金属基板2と絶縁層3の接合体を得た。次いで、スクリーン印刷により、貫通孔6aの底面である金属基板2の表面と、貫通孔6aの壁面である絶縁層3の表面が連続するように、導電性ペースト7を塗布することにより、貫通孔6aに導電性ペースト7を充填した。
【0075】
なお、使用した導電性ペースト7は、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(エポキシ棟梁7000〜8500)100重量部をブチルカルビトールアセテートに溶解したものに、イミダゾール系の潜在性硬化剤を1重量部添加し、さらに銀粒子を、全固形分の60堆積%となるように添加して作製した。
【0076】
次いで、充填された導電性ペースト7に対して加熱処理(180℃、30分)を行い、当該導電性ペーストを硬化させて、図4に示すプリント配線板30を作製した。なお、金属基板2と導電性ペースト7の界面における接触面積は、0.1256mmであった。
【0077】
(初期の抵抗、および初期の接触抵抗の測定)
そして、図4に示すように、金属基板2と導電性ペースト7を電気的に接続して、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性ペースト7との抵抗(以下、「初期の抵抗」という。)を測定するとともに、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性ペースト7との接触抵抗(以下、「初期の接触抵抗」という。)を四端子法により求めた。以上の結果を、表1に示す。ただし、この接触抵抗には、四端子法の限界から、貫通孔6a部分の抵抗を含むものである。
【0078】
(実施例1)
作製したプリント配線板30において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、1A(即ち、電流密度が8.0A/mm)の電流を1秒間流し、再度、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性ペースト7との抵抗(以下、「通電後の抵抗」という。)を測定するとともに、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性ペースト7との接触抵抗(以下、「通電後の接触抵抗」という。)を四端子法により求めた。以上の結果を表1に示す。
【0079】
(実施例2)
作製したプリント配線板30において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、2A(即ち、電流密度が15.9A/mm)の電流を1秒間流し、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性ペースト7との通電後の抵抗、および通電後の接触抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表1に示す。
【0080】
(実施例3)
作製したプリント配線板30において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、3A(即ち、電流密度が23.9A/mm)の電流を1秒間流し、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性ペースト7との通電後の抵抗、および通電後の接触抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表1に示す。
【0081】
(実施例4)
作製したプリント配線板30において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、4A(即ち、電流密度が31.8A/mm)の電流を1秒間流し、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性ペースト7との通電後の抵抗、および通電後の接触抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表1に示す。
【0082】
(プリント配線板の作製、初期の抵抗、および初期の接触抵抗の測定)
まず、金属基板2であるステンレスからなる金属箔(SUS304HTA)を、塩酸20%水溶液に10分間浸漬し、水洗後、上述の作製方法と同様にして、プリント配線板30を作製し、初期の抵抗、初期の接触抵抗を測定した。以上の結果を、表2に示す。なお、金属基板2と導電性ペースト7の界面における接触面積は、0.1256mmであった。また、この接触抵抗には、四端子法の限界から、貫通孔6a部分の抵抗を含むものである。
【0083】
(実施例5)
塩酸20%水溶液に浸漬させた金属基板2を使用して作製した上述のプリント配線板30において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、1A(即ち、電流密度が8.0A/mm)の電流を1秒間流し、再度、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性
ペースト7との通電後の抵抗、および通電後の接触抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表2に示す。
【0084】
(実施例6)
塩酸20%水溶液に浸漬させた金属基板2を使用して作製した上述のプリント配線板30において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、2A(即ち、電流密度が15.9A/mm)の電流を1秒間流し、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性ペースト7との通電後の抵抗、および通電後の接触抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表2に示す。
【0085】
(実施例7)
塩酸20%水溶液に浸漬させた金属基板2を使用して作製した上述のプリント配線板30において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、3A(即ち、電流密度が23.9A/mm)の電流を1秒間流し、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性ペースト7との通電後の抵抗、および通電後の接触抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表2に示す。
【0086】
(実施例8)
塩酸20%水溶液に浸漬させた金属基板2を使用して作製した上述のプリント配線板30において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、4A(即ち、電流密度が31.8A/mm)の電流を1秒間流し、貫通孔6aにおける金属基板2と導電性ペースト7との通電後の抵抗、および通電後の接触抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表2に示す。
【0087】
(プリント配線板の作製)
以下、図5を用いて説明する。まず、金属基板2として、20μmの厚みを有するステンレスからなる金属箔(SUS304HTA)を用意するとともに、金属基板2の表面に、ポリイミド系のカバーコートインクをスクリーン印刷により塗工して乾燥させることにより、金属基板2の表面に、ポリイミド樹脂からなるフィルム状の絶縁層3を形成した。次いで、スパッタリング法により、絶縁層3の表面上に、0.2μmの厚みを有する、主に銅からなる導体薄膜8を形成した。次いで、導体薄膜8の表面上に、無電解めっきにより、銅からなるめっき層12を形成した。次いで、導体薄膜8を、化学エッチング(ウェットエッチング)により除去して、絶縁層3の表面に、導体薄膜8およびめっき層12からなる導電層4を、セミアディティブ法により形成した。次いで、強アルカリ溶液を用いて、化学エッチング(ウェットエッチング)により絶縁層3のエッチングを行い、当該絶縁層3を選択的に除去することにより、導電層4と金属基板2を連結するための貫通孔6(直径:0.165mm)を形成した。次いで、導電層4の表面に対して、拡散防止層としてのニッケルめっき層を形成した後、当該ニッケルめっき層の表面上に金めっき層を形成して、導電層4の表面をめっき層5により被覆した。次いで、スクリーン印刷により、貫通孔6の底面である金属基板2の表面と、貫通孔6の壁面である導電層4の表面が連続するように、導電性ペースト7を塗布することにより、貫通孔6aに導電性ペースト7を充填した。なお、使用した導電性ペースト7は、上述のプリント配線板30の作製の際に使用した導電性ペーストと同じものを使用した。
【0088】
次いで、充填された導電性ペースト7に対して加熱処理(180℃、30分)を行い、当該導電性ペーストを硬化させ、図5に示すプリント配線板40を作製した。なお、金属基板2と導電性ペースト7の界面における接触面積は、0.0214mmであった。
【0089】
(初期の抵抗、および初期の接触抵抗の測定)
そして、図5に示すように、金属基板2と導電性ペースト7を電気的に接続して、貫通孔6における抵抗(以下、「初期の抵抗」という。)を測定するとともに、貫通孔6における接続抵抗(以下、「初期の接続抵抗」という。)を四端子法により求めた。以上の結果を、表3に示す。
【0090】
(実施例9)
作製したプリント配線板40において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、10mA(即ち、電流密度が0.5A/mm)の電流を2秒間流し、再度、貫通孔
6aにおける抵抗(以下、「通電後の抵抗」という。)を測定するとともに、貫通孔6aにおける接続抵抗(以下、「通電後の接続抵抗」という。)を四端子法により求めた。以上の結果を表3に示す。
【0091】
なお、初期の接続抵抗、および通電後の接続抵抗は、各々、金属基板2と導電性ペースト7との接触抵抗、めっき層5と導電性ペースト7との接触抵抗、および導電性ペースト7の抵抗の合計と考えられる。
【0092】
(実施例10)
作製したプリント配線板40において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、30mA(即ち、電流密度が1.4A/mm)の電流を2秒間流し、貫通孔6における通電後の抵抗、および通電後の接続抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表3に示す。
【0093】
(実施例11)
作製したプリント配線板40において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、100mA(即ち、電流密度が4.7A/mm)の電流を2秒間流し、貫通孔6における通電後の抵抗、および通電後の接続抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表3に示す。
【0094】
(実施例12)
作製したプリント配線板40において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、200mA(即ち、電流密度が9.4A/mm)の電流を2秒間流し、貫通孔6における通電後の抵抗、および通電後の接続抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表3に示す。
【0095】
(実施例13)
作製したプリント配線板40において、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、500mA(即ち、電流密度が23.4A/mm)の電流を2秒間流し、貫通孔6における通電後の抵抗、および通電後の接続抵抗を四端子法により求めた。以上の結果を表3に示す。
【0096】
(導電性ペーストと金属基板の界面評価)
まず、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して、30mAの電流を2秒間流した、上述の実施例10のプリント配線板40において、クロスセクションポリッシャー(日本電子(株)製、商品名SM−09010)を用いて、貫通孔6部分の断面加工を行った。次いで、貫通孔6部分の断面における、導電性ペースト7と金属基板2の界面の状態を、SEM(走査型電子顕微鏡、日立ハイテクノジーズ(株)製、商品名S−800形電界放射形走査電子顕微鏡)を使用して観察した。導電性ペースト7と金属基板2の界面の断面構造図を、図6に示す。また、電流処理を行っていないプリント配線板40(即ち、30mAの電流を流す前のプリント配線板40)において、同様に、断面加工を行い、貫通孔6部分の断面における、導電性ペースト7と金属基板2の界面の状態を、SEMを使用して観察した。導電性ペースト7と金属基板2の界面の断面構造図を、図7に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
表1に示すように、実施例1〜4のいずれの場合においても、初期接触抵抗(0.15Ω・mm)に比し、通電後の接触抵抗が顕著に低下していることが判る。また、表2に示すように、実施例5〜8のいずれの場合においても、初期接触抵抗(0.1884Ω・mm)に比し、通電後の接触抵抗が顕著に低下していることが判る。さらに、実施例9〜13のいずれの場合においても、初期の接続抵抗(0.0406Ω・mm)に比し、通電後の接続抵抗が顕著に低下していることが判る。従って、金属基板2と導電性ペースト7との界面に対して電流を流すことにより、金属基板2と導電層4間の接続信頼性が向上することが判る。
【0101】
また、図6に示すように、30mAの電流を2秒間流した、上述の実施例10のプリント配線板40においては、金属基板2と導電性ペースト7との界面25において、導電性ペースト7の金属粒子50と金属基板2が固着していることが判り、また、導電性ペースト7の金属粒子50と金属基板2が固着している部分の長さが、0.1μm以上となっていることが判る。一方、図7に示すように、電流処理を行っていないプリント配線板40においては、金属基板2と導電性ペースト7との界面25において、導電性ペースト7の金属粒子50と金属基板2が固着していないことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の活用例としては、例えば、ハードディスクドライブにおける磁気ヘッドサスペンション用の基板として使用されるプリント配線板およびその製造方法が挙げられる。
【符号の説明】
【0103】
1…プリント配線板、2…金属基板、3…絶縁層、4…導電層、5…めっき層、6…貫通孔、7…導電性ペースト、8…導体薄膜、12…めっき層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、
前記金属基板の表面上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の表面上に設けられ、前記金属基板と電気的に接続される導電層と、
前記絶縁層と前記導電層に形成され、前記金属基板を底面とするとともに、前記絶縁層、および前記導電層を壁面とする有底のビアホールもしくは貫通孔と、
前記有底のビアホールもしくは貫通孔に充填され、前記金属基板と前記導電層を電気的に接続するための導電性ペーストと
を備え、
前記金属基板と前記導電性ペーストとの界面に対して、電流を流す処理がなされていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記金属基板が、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、および亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
金属基板と、
前記金属基板の表面上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の表面上に設けられ、前記金属基板と電気的に接続される導電層と、
前記絶縁層と前記導電層に形成され、前記金属基板を底面とするとともに、前記絶縁層、および前記導電層を壁面とする有底のビアホールもしくは貫通孔と、
前記有底のビアホールもしくは貫通孔に充填され、前記金属基板と前記導電層を電気的に接続するための導電性ペーストと
を備え、
前記金属基板がステンレスであり、
前記金属基板と前記導電性ペーストとの界面での接触抵抗が0.03Ω・mm以下であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
金属基板と、
前記金属基板の表面上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の表面上に設けられ、前記金属基板と電気的に接続される導電層と、
前記絶縁層と前記導電層に形成され、前記金属基板を底面とするとともに、前記絶縁層、および前記導電層を壁面とする有底のビアホールまたは貫通孔と、
金属粒子を含有するとともに、前記有底のビアホールまたは貫通孔に充填され、前記金属基板と前記導電層を電気的に接続するための導電性ペーストと
を備え、
前記金属基板と前記導電性ペーストとの界面において、前記導電性ペーストの前記金属粒子と前記金属基板が固着していることを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
前記導電性ペーストの前記金属粒子と前記金属基板が固着している部分の長さが、0.1μm以上であることを特徴とする請求項5に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記金属基板が、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、および亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種により形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記金属基板が、ステンレスにより形成されていることを特徴とする請求項7に記載のプリント配線板。
【請求項9】
ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として用いられることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載のプリント配線板。
【請求項10】
金属基板、絶縁層、および導電層が順次積層された基材を準備する工程と、
前記絶縁層を選択的に除去することにより、前記金属基板を底面とするとともに、前記絶縁層、および前記導電層を壁面とする有底のビアホールもしくは貫通孔を形成する工程と、
前記有底のビアホールもしくは貫通孔の底面である金属基板の表面と、前記有底のビアホールもしくは貫通孔の壁面である前記導電層の表面が連続するように、導電性ペーストを塗布することにより、前記貫通孔に前記導電性ペーストを充填する工程と、
前記金属基板と前記導電性ペーストとの界面に対して、電流を流す工程と、
を少なくとも含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記金属基板と前記導電性ペーストとの界面に流す前記電流の密度が、0.1A/mm〜1000A/mmであることを特徴とする請求項10に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
前記電流を流す時間が、1×10−6秒〜100秒であることを特徴とする請求項11に記載のプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−212938(P2012−212938A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−164199(P2012−164199)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【分割の表示】特願2007−47609(P2007−47609)の分割
【原出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】