説明

プリント配線板の検査方法及びその装置

【課題】擬似短絡も含めたワイヤ短絡を自動的に簡便かつ正確に判定するプリント配線板の検査方法及びその装置を提供する。
【解決手段】ワーク3の回路構成部の短絡の有無を検査する際に、ワーク3をワーク載置台17に固定する工程と、ワーク3の回路構成部13を撮像する撮像手段の位置を連続的に変化させることで回路構成部13の画像焦点が合う最適な位置を決定する工程と、撮像手段19で複数箇所の回路構成部13を一括して撮像する工程と、撮像された画像の回路構成部13のみを2色のうちの一方の1色で表示する2値化処理を行う工程と、2値化処理を行った2値化処理画像に対して、基準値以下の回路構成部13の間の距離では回路構成部13同士が短絡するまで回路構成部13を膨張させる膨張処理を行う工程と、膨張処理を行った回路構成部13の色面積を取得し、この色面積が検査合格となる基準値内にあるか否かを判定する工程を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント配線板の検査方法及びその装置に関し、特にFPCを含むプリント配線板に実装された電子部品とプリント配線板とをワイヤで接続するプリント配線板の検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品をプリント配線板へ実装する技術の一つとしてワイヤボンディングがよく知られている。ワイヤボンディングは、半田を使用せずに直接プリント配線板に実装する方法であることから実装面積の縮小を実現するので、プリント配線板の高密度化に貢献している。
【0003】
ワイヤボンディングに対する検査項目の一つにワイヤ同士の短絡検査がある。隣接したワイヤ同士が短絡した場合は不良であることは言うまでもないが、ワイヤ同士が短絡していない場合でも、ワイヤ間の距離が極端に狭い場合は隣接するワイヤ間に電流が流れてしまう現象、いわゆる擬似短絡が生じることが一般に知られている。
【0004】
ワイヤ短絡の検査方法としては、作業者による顕微鏡を用いた目視検査が一般に行われてきたが、作業者によって判定基準にばらつきがあり、また、長時間にわたり精密なパターンの検査をすることが作業者に大きな負担をかけている。これに加えて、近年では配線パターンの微細化が一層進んできたために、上記の目視検査の限界が指摘されている。
【0005】
そのために、自動検査方法及びその装置が導入されてきており、パターンマッチングや3次元測定による検査方法が開発されている。
【0006】
パターンマッチングは、異物や変色、形状不良などの検出において好適に利用されている方法である。すなわち、パターンマッチングとは、予め良品の画像をプログラムに記憶させておき、検査対象ワークを撮像した画像と前記良品の画像を比較して所定以上の一致度が得られた場合を「良」とし、そうでない場合を「不良」として識別する手法である。すなわち、このパターンマッチングは以下の手順で行なわれる。
【0007】
(1)予め良品であることが既知の製品をテンプレート画像として撮像する。
【0008】
(2)X−Yステージの移動により、ワークの検査対象となるワイヤ部分をCCDカメラなどの撮像装置に合わせる。
【0009】
(3)CCDカメラの高さを変化させる等の方法により、ワイヤ部分の全体にピントが合うようにする。
【0010】
(4)ワイヤ部分を撮像し、この撮像した画像と上記のテンプレート画像と比較する。所定以上の一致度が得られたものを「良」、それ以外を「不良」と判定する。
【0011】
(5)全てのワイヤの判定が終了するまで、上記の(1)〜(4)の手順を繰り返す。
【0012】
また、ワイヤの自動検査方法としては、特許文献1に示されているような3次元形状検査が知られている。この検査方法は測長機能を有するものであり、X−Yステージとカメラの間の高さを微小距離ずつ変化させながらワイヤの頂点を検出し、次いで逆方向に微小距離ずつ変化させながらそれぞれの高さにおいて撮像し、この撮像したワイヤの各部分の画像に対して最もピントの合ったものを抜き出す画像処理を行うことで、3次元のワイヤ形状を得る。すなわち、このワイヤの自動検査は以下の手順で行なわれる。
【0013】
(1)X−Yステージの移動により、ワイヤをカメラに合わせる。
【0014】
(2)カメラの高さを変化させる等によりカメラとワイヤの距離を少しずつ大きくしながら撮像を繰り返し、ワイヤの頂点を検出するまで続ける。
【0015】
(3)逆にカメラとワイヤの距離を少しずつ小さくしながら撮像を繰り返す。
【0016】
(4)ワイヤの各部分において最もピントが合っているものを、(3)で取得した画像から選択し、ワイヤの3次元形状とする。
【0017】
(5)全てのワイヤの画像が取得されるまで、上記の(1)〜(4)の手順を繰り返す。
【0018】
また、特許文献2では、2種類の異なった高さにおいてカメラのピントが合ったワイヤの位置情報を取得し、これらをもとにワイヤの頂点を推測して次のカメラ高さ変化に対応させることにより、ワイヤの頂点の検出を高速化することが示されている。
【特許文献1】特許第3312395号公報
【特許文献2】特開平6−307824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、従来のパターンマッチングの手法では、複数のワイヤを短時間で検査することが可能であるという特長があるが、ワイヤ短絡の検査という点では、判定基準の作成に実績が必要であり、擬似短絡のようなワイヤ同士間の距離が問題となるような場合には使用できないという問題点があった。
【0020】
より詳しくは、短絡しているものがどれだけ低い一致度となるかは実績を積んで確認する必要があり、特に初期段階では誤判定が頻繁に発生することが懸念される。また、パターンマッチング自体にはワイヤ同士間の距離の測長機能が備えられていないため、特にワイヤ同士間の距離が基準値以下であると、実際には短絡していないにもかかわらず導通してしまう擬似短絡というワイヤ同士の間隔の測長が必要な検査には不向きである。
【0021】
また、特許文献1のワイヤの自動検査方法では、3次元測長であるので詳細なデータは得られるとしても、検査に時間がかかりすぎるという問題があった。
【0022】
より詳しくは、最もカメラのピントが合った状態のワイヤを組み合わせた画像が取得されるため、詳細なワイヤの3次元形状を得ることができるとしても、3次元形状の精度を高めるためにはカメラとワイヤの距離を細かく変化させなければならず、一つの視野のワイヤ画像を取得するために何度も撮像するために検査時間が長くなる。また、ワイヤ短絡を検査するためには、膨大なワイヤの位置座標の中から隣接したワイヤの最短距離となる2点を選び出さなければならず、これも検査時間の短縮化を阻害する要因となる。
【0023】
また、特許文献2では、ワイヤの頂点の検出が速くなったとしても、一つの視野に対して複数回の撮像を繰り返すという課題に対する抜本的な解決には至っていないために検査効率の更なる向上が必要である。
【0024】
この発明は、擬似短絡も含めたワイヤ短絡を自動的に簡便かつ正確に判定するプリント配線板の検査方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の課題を解決するために、この発明のプリント配線板の検査方法は、プリント配線板の回路パターンにおける回路構成部の短絡の有無を検査するプリント配線板の検査方法において、
検査対象ワークをワーク載置台に固定する工程と、
前記ワークの回路構成部を撮像する撮像手段の位置を連続的に変化させることで前記回路構成部の画像焦点が合う最適な位置を決定する工程と、
前記ワークに照明を照射して前記撮像手段で複数箇所の回路構成部を一括して撮像する工程と、
撮像された画像の回路構成部のみを2色のうちの一方の1色で表示する2値化処理を行う工程と、
前記2値化処理を行った2値化処理画像に対して、基準値以下の回路構成部間距離では回路構成部同士が短絡するまで前記回路構成部を膨張させる膨張処理を行う工程と、
前記膨張処理を行った回路構成部の色面積を取得し、前記色面積が検査合格となる基準値内にあるか否かを判定する工程を実施することを特徴とするものである。
【0026】
また、この発明のプリント配線板の検査方法は、前記プリント配線板の検査方法において、前記回路構成部が、プリント配線板に実装された電子部品と前記プリント配線板とをワイヤで接続するワイヤボンディングのワイヤ部であることが好ましい。
【0027】
また、この発明のプリント配線板の検査方法は、前記プリント配線板の検査方法において、前記回路構成部が、プリント配線板に実装された電子部品と前記プリント配線板とをワイヤで接続するワイヤボンディングのボンディング部であることが好ましい。
【0028】
また、この発明のプリント配線板の検査方法は、前記プリント配線板の検査方法において、前記回路構成部が、回路パターンを構成する回路であることが好ましい。
【0029】
また、この発明のプリント配線板の検査方法は、前記プリント配線板の検査方法において、前記撮像手段で前記ワークにおいて隣接する異なった視野の検査を行う際に、隣接する視野の端となる部分を重複させて検査することが好ましい。
【0030】
また、この発明のプリント配線板の検査方法は、前記プリント配線板の検査方法において、前記膨張処理を行う工程の前後に、前記2値化処理を行った2値化処理画像に対して必要に応じて収縮処理を行う工程を実施することが好ましい。
【0031】
また、この発明のプリント配線板の検査方法は、前記プリント配線板の検査方法において、前記撮像手段による撮像画像、前記2値化処理を行った2値化処理画像、前記収縮処理を行った収縮処理画像、あるいは前記膨張処理を行った膨張処理画像の少なくとも一つ以上を保存することが好ましい。
【0032】
この発明のプリント配線板の検査装置は、プリント配線板の回路パターンにおける回路構成部の短絡の有無を検査するプリント配線板の検査装置において、
検査対象ワークを固定するワーク載置台と、
前記ワーク載置台の前記ワークの複数箇所の回路構成部を一括して撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した画像に対して前記回路構成部のみを2色のうちの一方の1色で表示する2値化処理を行う2値化処理装置と、
前記2値化処理を行った2値化処理画像に対して、基準値以下の回路構成部間距離では回路構成部同士が短絡するまで前記回路構成部を膨張させる膨張処理を行う膨張処理装置と、
前記膨張処理を行った回路構成部の色面積を計算する演算装置と、この演算装置で計算した前記回路構成部の色面積が検査合格となる基準値内にあるか否かを判定する比較判断装置を備えた制御装置と、で構成されていることを特徴とするものである。
【0033】
また、この発明のプリント配線板の検査装置は、前記プリント配線板の検査装置において、前記回路構成部が、プリント配線板に実装された電子部品と前記プリント配線板とをワイヤで接続するワイヤボンディングのワイヤ部であることが好ましい。
【0034】
また、この発明のプリント配線板の検査装置は、前記プリント配線板の検査装置において、前記回路構成部が、プリント配線板に実装された電子部品と前記プリント配線板とをワイヤで接続するワイヤボンディングのボンディング部であることが好ましい。
【0035】
また、この発明のプリント配線板の検査装置は、前記プリント配線板の検査装置において、前記回路構成部が、回路パターンを構成する回路であることが好ましい。
【0036】
また、この発明のプリント配線板の検査装置は、前記プリント配線板の検査装置において、前記制御装置が、前記ワークにおいて隣接する異なった視野の端となる部分を重複させて撮像する指令を前記撮像手段に与える指令部を備えていることが好ましい。
【0037】
また、この発明のプリント配線板の検査装置は、前記プリント配線板の検査装置において、前記膨張処理装置の前後に、前記2値化処理装置で2値化処理を行った2値化処理画像に対して必要に応じて収縮処理を行う収縮処理装置を設けていることが好ましい。
【0038】
また、この発明のプリント配線板の検査装置は、前記プリント配線板の検査装置において、前記制御装置が、前記撮像手段による撮像画像、前記2値化処理を行った2値化処理画像、前記収縮処理を行った収縮処理画像、あるいは前記膨張処理を行った膨張処理画像の少なくとも一つ以上を記憶する記憶装置を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明のプリント配線板の検査方法及びその装置によれば、撮像手段で撮像した画像に対して2値化処理及び膨張処理の2つの画像処理により、擬似的な短絡も含めた回路構成部短絡の判定検査を、自動的に簡単で正確に、かつ高速に行うことができる。その結果、これまで作業者の目視によって行われていた回路構成部の検査が、画像処理後の色面積をもとに自動的に実施することができるため、作業者間の判定基準のばらつきや、作業者の体調・疲労などによる不良検出能力のばらつきに影響されることがなく、検査精度が向上する。
【0040】
さらに、一つの視野で複数箇所の回路構成部を同時に検査するので、検査時間の大幅な短縮を図ることができる。また、今後、プリント配線板の配線密度が増大して人間の目視検査に限界が生じる場合においても、撮像手段の画素数を増やすことによって同様に検査することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0042】
図1を参照するに、この実施の形態に係るプリント配線板の検査装置1は、プリント配線板の回路パターンにおける回路構成部の短絡の有無を検査する装置である。例えば、前記回路構成部の一例であるワイヤボンディングが行われた検査対象となるワーク3に対して前記ワイヤボンディングの検査を自動的に行うための装置である。
【0043】
具体的には、検査対象となるワーク3は、図2に示されているように、電子部品(実装部品)としての例えば半導体チップ5がプリント配線板7(被実装基板)に搭載されている。ワイヤボンディングとは、上記の半導体チップ5とプリント配線板7が半導体チップ5上のパッド9とプリント配線板7の上の基板側回路11とを多数のワイヤ13で直接接続することで、半導体チップ5とプリント配線板7の導通を取るものである。なお、上記のワイヤ13としては、金やアルミニウムの材質が好適に用いられている。
【0044】
再び、図1を参照するに、プリント配線板の検査装置1は、隣接するワイヤ13同士の短絡を判定する装置であり、上記の検査対象のワーク3を図3に示されているように固定して検査エリア15に移動するワーク載置台としての例えばX−Yステージ17と、検査エリア15で前記X−Yステージ17のワーク3の複数本のワイヤ13を一括して撮像する撮像手段としての例えばCCDカメラ19が備えられている。なお、前記X−Yステージ17にはワーク3のX−Y座標及び角度補正を行う機能が備えられている。
【0045】
前記CCDカメラ19は、X−Yステージ17のワーク3を撮像するに際してレンズ21を上下動して画像のピントを合わせるものであり、制御装置23に接続されている。なお、CCDカメラ19には前記X−Yステージ17のワーク3にLED等の照明25を照射するための照明装置27が設けられている。
【0046】
なお、上記のX−Yステージ17はステージ移動装置29により検査エリア15の内外に移動される構成であり、前記ステージ移動装置29は制御装置23に接続されている。また、上記のCCDカメラ19には、当該CCDカメラ19で撮像した画像を処理するための画像処理装置31が接続されている。
【0047】
この画像処理装置31としては、撮像した前記画像を例えば白黒の2色で表示し、かつ、前記ワイヤ13の部分のみを例えば白黒のうちの一方の白色又は黒色で表示、この実施の形態では白色で表示する2値化処理を行う2値化処理装置33と、この2値化処理装置33で2値化処理を行った2値化処理画像に対して、基準以下のワイヤ13の間の距離ではワイヤ13同士が短絡するまで前記ワイヤ13の部分の白色を膨張させる膨張処理を行う膨張処理装置35が備えられている。この膨張処理装置35は制御装置23に接続されている。
【0048】
図4を参照するに、制御装置23は、中央処理装置としてのCPU37が備えられており、このCPU37には、種々のデータやプログラム等を入力するキーボードやタッチパネルなどの入力装置39と、CRTや液晶などの表示装置41と、入力装置39から入力されたプログラムや種々の検知データ、さらには前記2値化処理を行った2値化処理画像と前記膨張処理を行った膨張処理画像などを記憶するメモリ43(記憶装置)とが備えられている。
【0049】
さらに、前記CPU37には、前記膨張処理装置35で膨張処理を行ったワイヤ13の部分の色面積を計算する演算装置45と、この演算装置45で計算した前記ワイヤ13の部分の色面積が検査合格となる基準値内にあるか否かを判定する比較判断装置47が接続されている。
【0050】
さらに、前記CPU37には、図5に示されているように前記ワーク3において隣接する異なった視野の端となる部分を重複させて撮像する指令を前記CCDカメラ19に与える指令部49が接続されている。
【0051】
なお、プリント配線板7の上に異物があった場合は、撮像した画像が2値化処理されると、前記異物が白く見えるために誤判定されるので、この異物による誤判定を防止するために、2値化処理を行った2値化処理画像に対して収縮処理を行うための収縮処理装置51を設けることができる。この収縮処理装置51は制御装置23に接続されている。なお、前記異物が誤判定を生じさせることについて詳しくは後述するプリント配線板の検査方法の中で説明する。
【0052】
次に、この発明の実施の形態に係るプリント配線板の検査方法について、前述したプリント配線板の検査装置1を用いて説明する。
【0053】
検査対象となるワーク3は、図2に示されているようにワイヤボンディングされており、前述した通りである。
【0054】
上記の検査対象のワーク3は、図3に示されているように、ワーク載置台としての例えばX−Yステージ17の上に固定する工程が行われる。なお、ワーク3の固定方法は、検査中にワーク3に折れ・しわ・裂け・反りなどの変形が発生しない限り、あるいはX−Yステージ17の移動によりワーク3の位置ずれが起こらない限り、エア吸着や固定用治具を使用すること、あるいはその他の固定方法を任意に用いることができる。
【0055】
この後に、図1の二点鎖線に示されているように、ワーク3を固定したX−Yステージ17をステージ移動装置29により検査エリア15へ移動するワーク搬送工程が行われる。
【0056】
検査エリア15では、まず、照明装置27のLED等の照明25によりワーク3に照射し、ワーク3の上方でCCDカメラ19の高さを連続的に変化させることで、ワイヤ13に対するCCDカメラ19のピント(焦点)が合う最適な高さを決定する撮像焦点調整工程が行われる。つまり、CCDカメラ19の高さを自動的に調整してピントを合わせる。
【0057】
この後に、ワーク3の表面には画像認識の基準点として予め定めた少なくとも2点のパターン(認識マーク)が設けられているので、上記の2点のパターンをCCDカメラ19により認識することで、X−Yステージ17によってワーク3のX−Y座標及び角度補正を行うワーク位置補正工程が行われる。
【0058】
次いで、前記撮像焦点調整工程で焦点を合わせたCCDカメラ19で複数本のワイヤ13を一括して撮像する撮像工程が行われる。つまり、一つの視野内に視複数本のワイヤ13が入るようにX−Yステージ17を移動させてから、複数本のワイヤ13をCCDカメラ19で一括して撮像する。
【0059】
撮像された画像は画像処理装置31で2工程の画像処理が行われる。すなわち、まず、2値化処理装置33では、例えばこの実施の形態では前記撮像したワイヤ13の画像に対して白黒の2色で表示し、かつ、前記ワイヤ13の部分のみを例えば白黒のうちの一方の白色又は黒色で表示されるように2値化閾値を設定することで2値化処理を行う2値化処理工程が行われる。この実施の形態ではワイヤ13の部分が白色となるようにしている。
【0060】
次いで、膨張処理装置35では、上記の2値化処理を行った2値化処理画像53に対して、基準値以下のワイヤ13の間の距離ではワイヤ13同士が短絡するまで前記ワイヤ13の部分の白色を膨張させる膨張処理を行う膨張処理工程が行われる。
【0061】
次に、制御装置23では、演算装置45により上記の膨張処理装置35で膨張処理を行った膨張処理画像55のワイヤ13の部分の色面積を計算し、比較判断装置47により前記計算したワイヤ13の部分の色面積がワイヤ13の1本分に相当するような所定の範囲内、つまり検査合格となる良品となる基準値内にあるか否かを判定する検査判定工程が行われる。
【0062】
例えば、図5(A)では、一つの視野の検査範囲57の画像に対して白黒の2値化処理によってワイヤ13の部分のみが白く表示された2値化処理直後の状態のイメージを示しており、この2値化処理画像53に対して膨張処理を行うことにより、この実施の形態では図5(B)に示されているように各ワイヤ13の部分の白色が膨張される。図5(B)の場合は、膨張されたワイヤ13の部分の白色がワイヤ13同士で重なっていないために、膨張したワイヤ13の部分の色面積は基準値内となるので「合格」と判定される。
【0063】
その逆に、膨張されたワイヤ13の部分の白色が隣り合うワイヤ13同士で重なった場合は、その重なった部分の色面積が約2倍になるので、擬似短絡あるいはワイヤ短絡が生じていると判断されて「不合格」と判定される。例えば、図6(A)のように2値化処理直後の状態では、ワイヤ13Bとワイヤ13Cは短絡していないが、ワイヤ13B、13C同士の間隔Aが狭くなっている。この間隔Aが擬似短絡となる基準値以下となっている場合は、ワイヤ13B、13C同士が直接短絡していない場合でも膨張処理後には、図6(B)のように重なったワイヤ13の部分の白色の面積が通常の約2倍になり、短絡しているように見えるので、擬似短絡あるいはワイヤ短絡の判定が可能となる。
【0064】
この実施の形態では、擬似短絡が生じるワイヤ13同士の間隔はワイヤ13の1本分の幅寸法の距離としたとき、擬似短絡とはワイヤ13の1本分の幅寸法の距離以下にワイヤ13同士が近づいた状態をいう。したがって、膨張処理では2値化処理画像53のワイヤ13の幅が2倍になるように画像処理を行うと、擬似短絡もしくは実際にワイヤ短絡している場合は、膨張処理画像55では膨張したワイヤ13の白色部分が重なるので、その面積が基準値より大きくなるために短絡状態として判定することが容易になる。
【0065】
以上のように、一つの視野のワイヤ13の検査が行われた後に、ワーク3を別の視野へ移動させて、前述した同様の手段により別視野のワイヤ13を検査する。
【0066】
このとき、指令部49で与えられる指示により、例えば、図7に示されているように、一つの視野の検査範囲57Aの右端となる部分と、次に検査される別の視野の検査範囲57Bの左端となる部分は、互いに重複させて検査される。その理由は、図8に示されているように、隣り合う検査範囲57A,57Bの互いに隣り合う端がワイヤ13同士の間隔内に位置した場合は、その箇所の隣り合うワイヤ13同士の間隔の検査漏れが起こるので、この検査漏れを防止するためである。
【0067】
以上のように、ワーク3の全てのワイヤ13が漏れなく検査されるように、上記の検査工程が自動的に繰り返される。
【0068】
なお、プリント配線板7の上に異物59があった場合は、撮像した画像が2値化処理されると、図9(A)に示されているように、ワイヤ13以外にも前記異物59が白く見えるために、この2値化処理画像53が膨張処理されると、図9(B)に示されているように、異物59も膨張処理されて異物59の白色面積が大きくなるために、ワイヤ13の部分の白色部分が短絡しているように誤判定され、「不合格」と判定されてしまう可能性がある。
【0069】
そこで、上記の異物59による誤判定を防ぐために、図10(A)に示されているように2値化処理された2値化処理画像53に対しては、一旦、図10(B)に示されているように、前述した収縮処理装置51にて収縮処理を行って異物59の白色部分を画像から除去し、この収縮処理画像61に対して膨張処理を行うことにより、図10(C)に示されているように、ワイヤ13の部分だけが白色に表示された状態で膨張することになる。したがって、この膨張処理画像55に対して、前述したように比較判断装置47により合格、不合格の判定を行うで、誤判定を防止することができる。
【0070】
以上のように、2値化処理画像53に対して収縮処理と膨張処理を併せて適用することにより、異物59による影響を排除することができる。
【0071】
また、上記の比較判断装置47により、合格、不合格の判定された画像をメモリ43に記憶する記録工程が行われることが望ましい。すなわち、CCDカメラ19で取得したワイヤ画像、判定に使用した2値化処理後の2値化処理画像53、収縮処理を行った収縮処理画像61、あるいは膨張処理を行った膨張処理画像55の少なくとも一つ以上をメモリ43に記憶して保存することにより、不良調査が可能となる。
【0072】
なお、前述した実施の形態では、プリント配線板7の回路パターンにおける回路構成部として、隣り合うワイヤ13同士の短絡の検査について説明したが、隣接したボンディング部の短絡の検査も、ワイヤの検査と同様、X−Yステージの上に固定し、CCDカメラの高さを連続的に変化させることでピントを合わせ、ボンディング部に照明を照射して複数個のボンディングを一括で撮像し、ボンディング部のみを2色のうちの一方で表示する2値化処理を行い、必要に応じて膨張及び収縮処理を行い、ボンディング部の色面積を基準値内にあるか否かを判定することで実施可能である。また、ワイヤボンディングに限らずプリント配線板の一般回路についても、同様にX−Yステージの上に固定し、CCDカメラの高さを連続的に変化させることでピントを合わせ、回路部に照明を照射して複数個の回路を一括で撮像し、回路部のみを2色のうちの一方で表示する2値化処理を行い、必要に応じて膨張及び収縮処理を行い、ボンディング部の色面積を基準値内にあるか否かを判定することで実施可能である。
【0073】
以上、説明したように、この発明の実施の形態のプリント配線板の検査方法及びその装置1によれば、撮像手段で撮像した画像に対して2値化処理及び膨張処理の2つの画像処理により、擬似的な短絡も含めたワイヤ短絡の判定検査を、自動的に簡単で正確に、かつ高速に行うことができる。
【0074】
その結果、これまで作業者の目視によって行われていたワイヤボンディングの検査が、画像処理後のワイヤ13の色面積をもとに自動的に実施することができるため、作業者間の判定基準のばらつきや、作業者の体調・疲労などによる不良検出能力のばらつきに影響されることがなく、検査精度が向上する。
【0075】
さらに、一つの視野で複数本のワイヤ13を同時に検査するので、検査時間の短縮を図ることができる。また、今後、プリント配線板7の配線密度が増大して人間の目視検査に限界が生じる場合においても、CCDカメラ19の画素数を増やすことによって同様に検査することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】この発明の実施の形態のプリント配線板の検査装置を示す概略説明図である。
【図2】この発明の実施の形態で使用されるワークの概略説明図である。
【図3】対象のワークを実装したX−Yステージの概略説明図である。
【図4】制御装置のブロック構成図である。
【図5】(A)は合格品のワークにおける2値化処理後の画像を示す平面図で、(B)は(A)に対して膨張処理後の画像を示す平面図である。
【図6】(A)は不合格品のワークにおける2値化処理後の画像を示す平面図で、(B)は(A)に対して膨張処理後の画像を示す平面図である。
【図7】撮像する際に隣り合う検査範囲の端を重複した状態を示す平面図である。
【図8】撮像する際に隣り合う検査範囲の端を重複しないために検査洩れが生じた状態を示す平面図である。
【図9】(A)は異物59があった場合のワークにおける2値化処理後の画像を示す平面図で、(B)は(A)に対して膨張処理後の画像を示す平面図である。
【図10】(A)は異物59があった場合のワークにおける2値化処理後の画像を示す平面図で、(B)は(A)に対して収縮処理後の画像を示す平面図で、(C)は(B)に対して膨張処理後の画像を示す平面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 プリント配線板の検査装置
3 ワーク
5 半導体チップ(電子部品)
7 プリント配線板
13 ワイヤ
15 検査エリア
17 X−Yステージ(ワーク載置台)
19 CCDカメラ(撮像手段)
23 制御装置
27 照明装置
29 ステージ移動装置
31 画像処理装置
33 2値化処理装置
35 膨張処理装置
43 メモリ(記憶装置)
45 演算装置
47 比較判断装置
49 指令部
51 収縮処理装置
53 2値化処理画像
55 膨張処理画像
57 検査範囲
59 異物
61 収縮処理画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板の回路パターンにおける回路構成部の短絡の有無を検査するプリント配線板の検査方法において、
検査対象ワークをワーク載置台に固定する工程と、
前記ワークの回路構成部を撮像する撮像手段の位置を連続的に変化させることで前記回路構成部の画像焦点が合う最適な位置を決定する工程と、
前記ワークに照明を照射して前記撮像手段で複数箇所の回路構成部を一括して撮像する工程と、
撮像された画像の回路構成部のみを2色のうちの一方の1色で表示する2値化処理を行う工程と、
前記2値化処理を行った2値化処理画像に対して、基準値以下の回路構成部間距離では回路構成部同士が短絡するまで前記回路構成部を膨張させる膨張処理を行う工程と、
前記膨張処理を行った回路構成部の色面積を取得し、前記色面積が検査合格となる基準値内にあるか否かを判定する工程を実施することを特徴とするプリント配線板の検査方法。
【請求項2】
前記回路構成部が、プリント配線板に実装された電子部品と前記プリント配線板とをワイヤで接続するワイヤボンディングのワイヤ部であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板の検査方法。
【請求項3】
前記回路構成部が、プリント配線板に実装された電子部品と前記プリント配線板とをワイヤで接続するワイヤボンディングのボンディング部であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板の検査方法。
【請求項4】
前記回路構成部が、回路パターンを構成する回路であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板の検査方法。
【請求項5】
前記撮像手段で前記ワークにおいて隣接する異なった視野の検査を行う際に、隣接する視野の端となる部分を重複させて検査することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のプリント配線板の検査方法。
【請求項6】
前記膨張処理を行う工程の前後に、前記2値化処理を行った2値化処理画像に対して必要に応じて収縮処理を行う工程を実施することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のプリント配線板の検査方法。
【請求項7】
前記撮像手段による撮像画像、前記2値化処理を行った2値化処理画像、前記収縮処理を行った収縮処理画像、あるいは前記膨張処理を行った膨張処理画像の少なくとも一つ以上を保存することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のプリント配線板の検査方法。
【請求項8】
プリント配線板の回路パターンにおける回路構成部の短絡の有無を検査するプリント配線板の検査装置において、
検査対象ワークを固定するワーク載置台と、
前記ワーク載置台の前記ワークの複数箇所の回路構成部を一括して撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した画像に対して前記回路構成部のみを2色のうちの一方の1色で表示する2値化処理を行う2値化処理装置と、
前記2値化処理を行った2値化処理画像に対して、基準値以下の回路構成部間距離では回路構成部同士が短絡するまで前記回路構成部を膨張させる膨張処理を行う膨張処理装置と、
前記膨張処理を行った回路構成部の色面積を計算する演算装置と、この演算装置で計算した前記回路構成部の色面積が検査合格となる基準値内にあるか否かを判定する比較判断装置を備えた制御装置と、で構成されていることを特徴とするプリント配線板の検査装置。
【請求項9】
前記回路構成部が、プリント配線板に実装された電子部品と前記プリント配線板とをワイヤで接続するワイヤボンディングのワイヤ部であることを特徴とする請求項8記載のプリント配線板の検査装置。
【請求項10】
前記回路構成部が、プリント配線板に実装された電子部品と前記プリント配線板とをワイヤで接続するワイヤボンディングのボンディング部であることを特徴とする請求項8記載のプリント配線板の検査装置。
【請求項11】
前記回路構成部が、回路パターンを構成する回路であることを特徴とする請求項8記載のプリント配線板の検査装置。
【請求項12】
前記制御装置が、前記ワークにおいて隣接する異なった視野の端となる部分を重複させて撮像する指令を前記撮像手段に与える指令部を備えていることを特徴とする請求項8、9、10又は11記載のプリント配線板の検査装置。
【請求項13】
前記膨張処理装置の前後に、前記2値化処理装置で2値化処理を行った2値化処理画像に対して必要に応じて収縮処理を行う収縮処理装置を設けてなることを特徴とする請求項8、9、10、11又は12記載のプリント配線板の検査装置。
【請求項14】
前記制御装置が、前記撮像手段による撮像画像、前記2値化処理を行った2値化処理画像、前記収縮処理を行った収縮処理画像、あるいは前記膨張処理を行った膨張処理画像の少なくとも一つ以上を記憶する記憶装置を備えていることを特徴とする請求項8、9、10、11、12又は13記載のプリント配線板の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−176826(P2009−176826A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11688(P2008−11688)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】