説明

プリント配線板の製造方法およびプリント配線板

【課題】ソルダレジストに位置ずれが生じても、搭載部品の電極との関係で有効な接触面積を確保しつつ、従来サイズのランドの周縁部にソルダレジストからなるランド被覆層を形成してランド剥離現象の発生を効果的に防止できるプリント配線板の製造方法およびプリント配線板の提供。
【解決手段】プリント基板12の所定箇所にランド13を形成する工程と、プリント基板12の所定領域にソルダレジスト23を形成する工程とを含むプリント配線板11の製造方法において、ソルダレジスト23は、ランド13の外縁部14における部分的領域上に設けたランド被覆層25を含めて一体形成することにより、ランドの剥離を防止することができる。また、ランド13は、ソルダレジスト23に位置ずれが生じても搭載部品の電極との間で必要な接触面積を確保することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板が備えるランドに発生しがちなランド剥離現象を効果的に防止することができるプリント配線板の製造方法およびプリント配線板に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、例えば両面に銅箔が積層されたガラスエポキシ銅張積層板からなるプリント基板に対し、穴開け加工やスルーホールめっき加工によるスルーホールの形成、めっき層と銅箔のエッチング加工による配線およびランドの形成、ソルダレジストの形成という加工プロセスを経ることで形成される。
【0003】
図8(a)は、プリント配線板1におけるランド2とソルダレジスト4との配置関係についての従来例を示すものであり、平面形状が長方形を呈するランド2は、該ランド2よりもサイズの大きな相似形を呈してソルダレジスト4が存在していない空白部6内に形成されている。つまり、ランド2は、その外縁3aと空白部6を区画形成しているソルダレジスト4の端縁5との間に間隙7を介在させた状態で形成されることになる。このようにランド2とソルダレジスト4との間に間隙7を介在させておく理由は、レジスト用インキ印刷時に生じがちな位置ずれを予め考慮に入れて、ソルダレジスト4がランド2側に入り込んでこれを覆わないようにするための余裕幅を確保することにある。
【0004】
一方、プリント配線板のはんだ付けに使用されるはんだについては、近時、鉛の毒性に関する問題もあって、鉛フリーはんだが使用されるようになってきている。そして、該鉛フリーはんだには、例えば90〜98%のすずに銀、銅、アンチモンを混合させたものを主材とし、これに微量のビスマス、インジウム、ニッケル、亜鉛を含有させてなるものなどがある。
【0005】
上記成分からなる鉛フリーはんだは、その溶融温度が210〜230℃であり、溶融温度が約183℃である従来からあるすず−鉛の共晶はんだよりも溶融温度は高い。
【0006】
このように溶融温度の高い鉛フリーはんだを図8(a)に示すランド2に適用した場合には、従来からある有鉛はんだを用いた場合にはあまり発生しなかったランド剥離現象が多発する傾向にある。そして、該ランド剥離現象の発生原因は、必ずしも定かではないものの、鉛フリーはんだの熱収縮や凝固収縮に起因すると推定されている。
【0007】
このため、上記ランド剥離現象の発生を抑制・防止し得る手法として、図8(b)に示すようにランド2の外縁部3にまでソルダレジスト4を入り込ませてランド被覆層8を形成するようにした構造のものも既に提案されている。
【特許文献1】特開2001−332851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図8(b)に開示されている従来技術による場合には、レジスト用インキ印刷時に位置ずれが発生すると、部品搭載時に該部品の電極とランド2との間に必要とされるだけの十分な接触面積を確保できなくなる不都合があった。また、図8(b)の従来手法のもとでレジスト用インキ印刷時に生じがちな位置ずれを考慮に入れた設計を行おうとする場合には、通常サイズよりも大きなサイズのランドを予め形成しておくことが必要になるものの、ランドサイズを大きくすると、微小ピッチでの部品実装時にランド相互が短絡しやすくなってしまうので、実用的な解決手法とはいえない。
【0009】
本発明は、従来技術の上記課題に鑑み、ソルダレジストに位置ずれが生じても、搭載部品の電極とランドとの間に必要な接触面積を確保しつつ従来サイズのランドの周縁部にソルダレジストからなるランド被覆層を形成してランド剥離現象の発生を効果的に防止することができるプリント配線板の製造方法およびプリント配線板を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであり、そのうちの第1の発明(製造方法)は、プリント基板の所定箇所にランドを形成する工程と、前記プリント基板の所定領域にソルダレジストを形成する工程とを含むプリント配線板の製造方法において、前記ソルダレジストは、前記ランドの外縁部における部分的領域上に設けたランド被覆層を含めて一体形成することを最も主要な特徴とする。
【0011】
第1の発明における前記ランドは、平面形状が方形を呈し、その四隅に位置する前記外縁部の部分的領域に対し前記ランド被覆層を形成したり、平面形状が楕円形もしくは略長円形を呈し、少なくともその弧状部位が位置する前記外縁部の部分的領域に対し前記ランド被覆層を形成したりすることができる。
【0012】
また、第2の発明(プリント配線板)は、上記第1の発明により製造したプリント配線板であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のうち、請求項1に係る第1の発明によれば、ソルダレジストは、ランドの外縁部の部分的領域上のランド被覆層を含めて一体形成することができるので、該ランド被覆層を介してランドの剥離を効果的に防止することができる。また、ランド被覆層に位置ずれが生じても、部品搭載時に該搭載部品の電極との関係で必要とされるだけの十分な接触面積をランド側に確保することができる。
【0014】
請求項2に係る製造方法によれば、略方形を呈するランドの四隅にランド被覆層を形成することにより、四カ所にてランドを位置固定してランドの剥離をより効果的に防止することができる。また、ランド被覆層に位置ずれが生じても、搭載部品の電極との関係で十分な接触面積をランド側に確保することができる。
【0015】
請求項3に係る製造方法によれば、略楕円形もしくは略長円形を呈するランドの弧状部位に対しランド被覆層を形成することにより、少なくとも二カ所にてランドを位置固定してランドの剥離を効果的に防止することができる。また、ランド被覆層に位置ずれが生じても、搭載部品の電極との関係で十分な接触面積をランド側に確保することができる。
【0016】
一方、請求項4に係る第2の発明によれば、プリント配線板が備えるランドに部品を比較的高い温度ではんだ付けした際にランド側が剥離するという不具合を効果的に防止することができるので、環境に優しい鉛フリーはんだの使用を促進することができる。また、ランド被覆層に位置ずれが生じても、搭載部品の電極との関係で十分な接触面積をランド側に確保してはんだ付けを確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1ないし図4は、本発明方法(第1の発明)を適用してランドとソルダレジストとを形成する際における相互の配置関係をパターン別に示す説明図である。
【0018】
これらの図に示すプリント配線板11が備えるランド13とソルダレジスト23とは、プリント基板12の所定箇所に銅箔などからなるランド13を形成する工程と、プリント基板12の所定領域にソルダレジスト23を形成する工程とを含む本発明に係るプリント配線板の製造方法(第1の発明)を適用して形成される。
【0019】
本発明におけるソルダレジスト23としては、熱硬化性樹脂被膜、紫外線硬化性樹脂被膜、感光性樹脂被膜およびラミネートフィルムなどを例示することができる。
【0020】
すなわち、ソルダレジスト23が例えば熱硬化性樹脂被膜である場合には、ランド13の外縁部14の部分的領域上にもスクリーン印刷法にて熱硬化性樹脂をプリント基板12の表面に印刷した後、熱処理を施してなるランド被覆層25を含めて一体形成されることになる(以下、熱硬化性樹脂被膜からなるソルダレジスト23を例に説明する。)。
【0021】
これを図1に示す例に基づいてより具体的に説明すれば、ランド13は、平面形状が長方形を呈して形成されている。また、ソルダレジスト23は、楕円形を呈して該ソルダレジスト23が存在していない空白部24が形成されるようにスクリーン印刷法にて熱硬化性樹脂をプリント基板12の表面に印刷した後、熱処理を施して形成される。
【0022】
しかも、該空白部24は、ランド13に対して正対させた際に、その四隅にのみ入り込むことができるサイズが付与されて形成されているので、ランド13の四隅に位置する外縁部14の部分的領域、つまり角部15のそれぞれに対しソルダレジスト23と一体となったランド被覆層25を形成することができることになる。
【0023】
また、図2によれば、ランド13は、平面形状が正方形を呈して形成されている。また、ソルダレジスト23は、円形を呈して該ソルダレジスト23が存在していない空白部24が形成されるようにスクリーン印刷法にて熱硬化性樹脂をプリント基板12の表面に印刷した後、熱処理を施して形成される。
【0024】
しかも、該空白部24は、ランド13に対して正対させた際に、その四隅にのみ入り込むことができるサイズが付与されて形成されているので、ランド13の四隅に位置する外縁部14の部分的領域、つまり角部15のそれぞれに対しソルダレジスト23と一体となったランド被覆層25を形成することができることになる。
【0025】
さらに、図3によれば、ランド13は、平面形状が楕円形を呈して形成されている。また、ソルダレジスト23は、長方形を呈して該ソルダレジスト23が存在していない空白部24が形成されるようにスクリーン印刷法にて熱硬化性樹脂をプリント基板12の表面に印刷した後、熱処理を施して形成される。
【0026】
しかも、該空白部24は、ランド13に対して正対させた際に、上下と左右とに位置する弧状部位にのみ入り込むことができるサイズが付与されて形成されているので、ランド13の上下左右にに位置する各外縁部14の部分的領域、つまり上下左右の弧状部16のそれぞれに対しソルダレジスト23と一体となったランド被覆層25を形成することができることになる。
【0027】
さらにまた、図4によれば、ランド13は、平面形状が長円形を呈して形成されている。また、ソルダレジスト23は、長方形を呈して該ソルダレジスト23が存在していない空白部24が形成されるようにスクリーン印刷法にて熱硬化性樹脂をプリント基板12の表面に印刷した後、熱処理を施して形成される。
【0028】
しかも、該空白部24は、ランド13に対して正対させた際に、上下に位置する弧状部位にのみ入り込むことができるサイズが付与されて形成されているので、ランド13の上下左右に位置する各外縁部14の部分的領域、つまり上下左右の弧状部16のそれぞれに対しソルダレジスト23と一体となったランド被覆層25を形成することができることになる。
【0029】
このため、本発明方法により製造された第2の発明に係るプリント配線板11は、各ランド13の外縁部14の部分的領域にソルダレジスト23と一体となったランド被覆層25が形成される結果、ランド13に部品を比較的高い温度ではんだ付けした際にランド側が剥離するという不具合を効果的に防止することができることになる。
【0030】
しかも、ランド被覆層25に位置ずれが生じたとしても、各ランド13は、部品搭載時に該部品の電極との関係で必要とされるだけの十分な接触面積を確保することができるので、搭載部品を確実にはんだ付けすることができる。
【実施例1】
【0031】
次に、本発明の実施例について従来例(比較例)ともにに、以下に説明する。すなわち、図5は、図8(a)に従来例として示すランドとソルダレジストとの配置関係をより具体的に示した比較例説明図である。
【0032】
同図によれば、縦(a)が1.4mmで、横(b)が0.4mmの長方形を呈する各ランド3は、隣接するランド3の中心位置相互間の間隔(c)を0.65mmとすることで形成されている。また、各ランド3は、その外縁3aとこれに隣接するソルダレジスト4の端縁5との間に間隙7を介在させて形成されている。つまり、各ランド3は、ソルダレジスト4に設けられた縦(d)が1.5mmで、横(e)が0.5mmの長方形を呈する空白部6内に配置されることになる。このため、図5における各ランド3の有効面積は、a(縦)×b(横)である0.56mmとなる。
【0033】
図6は、図8(b)に従来例として示すランドとソルダレジストとの配置関係をより具体的に示した比較例説明図である。そのうちの(a)は、ソルダレジスト4に位置ずれが発生しなかった状態を、(b)は、ソルダレジスト4の位置がずれた状態をそれぞれ示す。
【0034】
同図によれば、図5に示すと同様に縦(a)が1.4mmで、横(b)が0.4mmの長方形を呈する各ランド3は、隣接するランド3の中心位置相互間の間隔(c)を0.65mmとすることで形成されている。また、各ランド3は、その外縁部3にまでソルダレジスト4を入り込ませてランド被覆層8が形成されている。
【0035】
そして、図6(b)に示すように縦横方向に各0.1mmずつソルダレジスト4の空白部6の位置がずれることにより、斜線で示す各ランド3の有効面積は、0.3125mmとなってしまい、図5に示す従来例の有効面積に比較してその55.8%にまで減少してしまうことが確認された。
【0036】
一方、図7は、本発明の実施例についてのランドとソルダレジストとの配置関係をより具体的に示した説明図である。そのうちの(a)は、ソルダレジスト23の位置がずれていない状態を、(b)は、ソルダレジスト23の位置がずれた状態をそれぞれ示す。
【0037】
同図によれば、図5に示すと同様に縦(a)が1.4mmで、横(b)が0.4mmの長方形を呈する各ランド13は、隣接するランド13の中心位置相互間の間隔(c)を0.65mmとすることで形成されている。また、各ランド13は、その四隅にのみソルダレジストによるランド被覆部25が形成された状態で長円形を呈する空白部24内に配置される。このため、図7(a)の状態での各ランド13の有効面積は、a(縦)×b(横)である0.56mmとほぼ同等な近似値となる。
【0038】
したがって、本発明方法を適用してソルダレジスト23からなるランド被覆層25を形成しようとした際に、図7(b)に示すように縦横方向に各0.1mmずつソルダレジスト23の空白部24の位置がずれることにより、斜線で示す各ランド13の有効面積は、0.47mmとなり、図5に示す有効面積に比較してその84%にまで減少はするものの、図6(b)に示す比較例(従来例)ほどにはその有効面積が減少しないことが確認された。
【0039】
つまり、本発明方法を適用してソルダレジスト23を形成する場合には、ランド剥離に有効であるばかりでなく、ランド13自体のサイズを大きくしないでも搭載部品との接触面積を十分に確保することができることが確認された。
【0040】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その具体的な構成はこれに限定されるものではない。例えば、ソルダレジスト23は、紫外線硬化性樹脂被膜、感光性樹脂被膜およびラミネートフィルムなどからなるものであってもよい。また、ランド13の形状とソルダレジスト23側の空白部24の形状とは、ランド13と空白部24とを正対させた際に、該空白部24の外側にランド13の外縁部14の部分的領域を位置させることができるものでさえあれば、所望に応じ適宜選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明方法(第1の発明)を適用してランドとソルダレジストとを形成する際における相互の配置関係の第1パターンを示す説明図。
【図2】同第2パターンを示す説明図。
【図3】同第3パターンを示す説明図。
【図4】同第4パターンを示す説明図。
【図5】本発明の実施例を説明する際の比較例1として示される従来例についてのランドとソルダレジストとの相互の配置関係を示す説明図。
【図6】本発明の実施例を説明する際の比較例2として示される従来例についてのランドとソルダレジストとの相互の配置関係を示す説明図であり、そのうちの(a)はソルダレジストに位置ずれが生じていない場合を、(b)はソルダレジストに位置ずれが生じている場合をそれぞれ示す。
【図7】本発明の実施例についてのランドとソルダレジストとの相互の配置関係を示す説明図であり、そのうちの(a)はソルダレジストに位置ずれが生じていない場合を、(b)はソルダレジストに位置ずれが生じている場合をそれぞれ示す。
【図8】従来例についてのランドとソルダレジストとの相互の配置関係を示す説明図であり、そのうちの(a)はソルダレジストがランド側に入り込んでいない例を、(b)はソルダレジストがランド側に入り込んでいる例をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0042】
1 プリント配線板
2 ランド
3 外縁部
3a 外縁
4 ソルダレジスト
5 端縁
6 空白部
7 間隙
8 ランド被覆部
11 プリント配線板
12 プリント基板
13 ランド
14 外縁部
15 角部
16 弧状部
23 ソルダレジスト
24 空白部
25 ランド被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板の所定箇所にランドを形成する工程と、前記プリント基板の所定領域にソルダレジストを形成する工程とを含むプリント配線板の製造方法において、
前記ソルダレジストは、前記ランドの外縁部における部分的領域上に設けたランド被覆層を含めて一体形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記ランドは平面形状が略方形を呈し、その四隅に位置する前記外縁部の部分的領域に対し前記ランド被覆層を形成する請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記ランドは平面形状が略楕円形もしくは略長円形を呈し、少なくともその弧状部位が位置する前記外縁部の部分的領域に対し前記ランド被覆層を形成する請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかのプリント配線板の製造方法により製造したことを特徴とするプリント配線板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−24858(P2006−24858A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203618(P2004−203618)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】