説明

プリント配線板及びその製造方法並びに感光性樹脂組成物

【課題】最外層をなす絶縁層に段差を有するプリント配線板を低コストで効率よく製造できる方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るプリント配線板の製造方法は、最外層をなす絶縁層に段差を有するプリント配線板を製造するためのものであり、導体回路を表面に有するプリント配線板上に、感光性樹脂組成物からなる絶縁層を形成した後、当該絶縁層に対して第一の露光処理及び現像処理を施して絶縁層パターンを形成する工程と、絶縁層パターンに対して第二の露光処理を施した後、更に第一の熱硬化処理を施す工程と、第一の熱硬化処理後の絶縁層パターンに対してデスミア処理を施して当該絶縁層パターンに段差を設ける工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板及びその製造方法並びに感光性樹脂組成物に関する。より詳しくは、プリント配線板のソルダーレジストなどの最外層に段差を形成し、例えばフリップチップ実装に適したプリント配線板を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、コアとなる銅張積層体、層間絶縁材及びソルダーレジストの積層体からなる。ソルダーレジスト形成前の積層体の表面には配線パターンが設けられている。ソルダーレジスト形成後、外部との電気的接続が必要な箇所に露光処理及び現像処理によって開口部が設けられる。
【0003】
プリント配線板上には、通常、ダイボンディング材やアンダーフィル材を介して半導体素子が実装され、必要に応じてトランスファー封止材によって全面封止される。近年、半導体装置の軽薄短小化は留まるところを知らず、半導体素子や多層プリント配線板の高密度化が進んでいる。また、半導体素子の上に半導体素子を積むパッケージ・オン・パッケージといった実装形態も盛んに行われており、今後、ますます半導体素子の実装密度は高まると予想される。
【0004】
ところで、プリント配線板上に金属バンプを介してフリップチップ型の半導体素子を実装した後、半導体素子とプリント配線板との間にアンダーフィル材を充填した場合、半導体素子の周辺部にフィレットが形成される。従って、半導体素子を実装する周辺部分には、フィレットを形成できる領域を確保する必要がある。
【0005】
従来のプリント配線板は実装密度が低く、また、実装する半導体素子も厚かったため、フィレットを形成できる領域を充分に確保でき、フィレット形状やフィレット長を精度良く制御する必要がなかった。これに対し、上述のとおり、プリント配線板に対する実装密度が高まり、また半導体素子が薄くなるに従って、フィレットを形成できる領域を充分に確保するため、フィレット形状やフィレット長を精度良く制御する必要性が高まっている。
【0006】
そのため、最近では、ソルダーレジスト表面に感光性樹脂組成物を用いて段差(ダム)を形成することで、アンダーフィル材のフィレットを制御可能なプリント配線板の開発が進められている(例えば特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−186213号公報
【特許文献2】特開2006−351559号公報
【特許文献3】特開2007−059596号公報
【特許文献4】特開2008−187054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ソルダーレジスト表面にダムを有するプリント配線板にフリップチップ型の半導体素子を実装する場合、プリント配線板と半導体素子との間に充填されるアンダーフィル材をダムが塞き止め、安定したフィレットを形成することができる。しかし、従来のプリント配線板の製造方法では、ソルダーレジスト表面にダムを設けるのに、ソルダーレジストの形成を2回以上実施する必要があった。このため、プリント配線板の製造に時間がかかるだけでなく、工程が複雑になり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0009】
図7は、従来のプリント配線板の製造方法を示す図である。まず、表面及び内部に配線パターン102,104を有するプリント配線板100Aを準備する。プリント配線板100Aは、銅張積層体、層間絶縁材及び金属箔などを積層するとともにエッチングによって配線パターン102,104を適宜形成することによって得られる。
【0010】
プリント配線板100Aの両面に第一の液状ソルダーレジスト105をスクリーン印刷機やロールコータを用いて印刷する(図7(a)参照)。次いで、外部と電気的に接続することが必要な箇所を、露光及び現像することで配線パターン104の一部を開口し、その後順次、UV硬化及び熱硬化などの処理を施す(図7(b)参照)。さらに、第2の液状ソルダーレジスト106をスクリーン印刷機やロールコータを用いて印刷する(図7(c)参照)。その後、半導体素子が実装される領域とフィレットが形成される箇所を露光及び現像によって開口することでダム106aを形成し、その後順次、UV硬化及び熱硬化などの処理を施す。これらの処理を経ることで最外層にダム106aを有するプリント配線板100Bが得られる(図7(d)参照)。なお、液状ソルダーレジストの代わりにフィルム状のソルダーレジストを使用する場合もある。図7に示す従来例では、図7(d)に示すプリント配線板100Bを得るまでに、ソルダーレジストを二回(ソルダーレジスト105,106)形成している。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、最外層をなす絶縁層に段差を有するプリント配線板を低コストで効率よく製造できる方法を提供することを目的とする。また、本発明は上記方法によって製造されたプリント配線板、及び、段差を有する絶縁層を形成するのに適した感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、最外層をなす絶縁層に段差を有するプリント配線板を製造するためのものであり、導体回路を表面に有するプリント配線板上に、感光性樹脂組成物からなる絶縁層を形成した後、当該絶縁層に対して第一の露光処理及び現像処理を施して絶縁層パターンを形成する工程と、絶縁層パターンに対して第二の露光処理を施した後、更に第一の熱硬化処理を施す工程と、第一の熱硬化処理後の絶縁層パターンに対してデスミア処理を施して当該絶縁層パターンに段差を設ける工程とを備える。
【0013】
上記製造方法によれば、プリント配線板の表面に形成した硬化前の絶縁層(例えば、ソルダーレジスト)に対して実施する二段階の露光処理(第一の露光処理及び第二の露光処理)と、熱硬化処理後の絶縁層パターンに対して実施するデスミア処理とを組み合わせたことで、プリント配線板の表面に絶縁層を形成する工程を一回実施するだけでダムを形成できる。従って、図7に示したように、ソルダーレジストの形成を複数回行ってプリント配線板の最外層にダムを形成する方法と比較して、製造工程が簡素化するとともに低コスト化が図られる。
【0014】
上記製造方法は、段差が設けられた絶縁層パターンに対してUV硬化処理及び第二の熱硬化処理の少なくとも一方を施す工程を更に備えることが好ましい。これらの処理を実施することでプリント配線板のはんだ耐熱性及び耐薬品性等が向上する。
【0015】
十分な高低差を有する段差を絶縁層に形成する観点から、第一の露光処理における露光量は20mJ/cm〜800mJ/cmであることが好ましく、第二の露光処理における露光量は100mJ/cm〜3000mJ/cmであることが好ましい。
【0016】
第一の熱硬化処理における熱硬化温度は60℃〜180℃であり、硬化時間は5分〜120分であることが好ましい。硬化温度が60℃より低く、硬化時間が5分より短いと、絶縁層の熱硬化が不足し、その後のデスミア処理によって絶縁層の表面が大きく侵食されて導体回路が露出しやすくなる。一方、硬化温度が180℃より高く、硬化時間が120分より長いと、絶縁層の硬化が進みすぎて、その後にデスミア処理を実施しても絶縁層に段差を十分に形成することが難しくなる傾向となる。
【0017】
本発明に係るプリント配線板は、上記製造方法によって製造されたものであり、絶縁層パターンに高低差5μm〜30μmの段差を有する。この段差の高低差は好ましくは10μ〜20μmである。段差の高低差が5μm未満であるとフリップチップ実装時にアンダーフィル材を十分に塞き止めることができず、フィレット形状が不安定なものとなりやすく、他方、30μmを超えるとプリント基板の薄型化への対応が不十分となりやすい。
【0018】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、プリント配線板の最外層をなし且つ段差を有する絶縁層の形成に用いられるものであって、
(a)カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを含有する光反応性樹脂と、
(b)光重合開始剤と、
(c)熱硬化性化合物と、
(d)無機フィラーと、
を含有し、(d)無機フィラーは最大粒径が5μm以下であり且つ平均粒径が1μm以下である。無機フィラーの最大粒径は1μm以下であることが好ましく、無機フィラーの平均粒径が100nm以下であることが好ましい。最大粒径がなるべく小さい無機フィラーを使用することで、デスミア処理後の絶縁層の表面が平滑となり、その後のフリップチップ実装時にアンダーフィル材の充填性が高まる。なお、ここでいう無機フィラーの最大粒径は日機装株式会社製の動的光散乱式ナノトラック粒度分布計「UPA−EX150」(商品名)又はレーザ回折散乱式マイクロトラック粒度分布計「MT−3100」(日機装社製)を用いて測定した値を意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、最外層をなす絶縁層に段差を有するプリント配線板を低コストで効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)〜(d)は、表面及び内部に導体回路を有するプリント配線板の製造過程を模式的に示す端面図である。
【図2】プリント配線板の両表面に感光性樹脂組成物からなる層を形成した状態を模式的に示す端面図である。
【図3】プリント配線板の両表面にソルダーレジストパターンを形成した状態を模式的に示す端面図である。
【図4】最外層をなす絶縁層に段差を有するプリント配線板の一態様を模式的に示す端面図である。
【図5】図4に示すプリント配線板にめっき層及び受けはんだを設けた状態を模式的に示す端面図である。
【図6】図5に示すプリント配線板に半導体素子をフリップチップ実装した状態を模式的に示す端面図である。
【図7】従来のプリント配線板の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
ここでは、図1(d)に示す態様のプリント配線板100から、最外層をなすソルダーレジスト8に段差(ダム)10を有するプリント配線板200(図4参照)を製造する方法について説明する。なお、本発明の製造方法は、感光性樹脂組成物からなる絶縁層において段差の形成を要する技術に適用可能であり、ダムの形成に限定されるものではない。
【0023】
図1を参照しながら、プリント配線板100の製造方法について説明する。まず、銅張積層体1を準備する(図1(a))。銅張積層体1の銅箔2の不要な箇所をエッチングにより除去して回路2a,2bを形成するとともに、ドリル等によって所定の位置に穴あけ、更に金属めっき等を施してスルーホール3を形成して上側の回路2aと下側の回路2bを電気的に接続する(図1(b))。その後、スルーホール3に穴埋め材4を充填するとともに熱硬化させて内層基板5を得る(図1(c))。
【0024】
内層基板5の両表面上に感光性樹脂を主成分とする絶縁層5a,5bをそれぞれ形成する。なお、絶縁層5a,5bの形成には液状の感光性樹脂組成物を使用してもよいし、感光性樹脂フィルムを使用してもよい。絶縁層5a,5bにおける回路2a,2bに対応する箇所に、バイアホール6を形成して回路2a,2bの一部を露出させる。バイアホール6は、例えば、紫外線波長のレーザ光を直接照射して穴加を行うことで形成することができる。絶縁層5a及び絶縁層5bの面に回路及び電極パッド9a,9bを形成する。バイアホール6に導電性ペーストなどを充填するとともに熱硬化させてプリント配線板100を得る。
【0025】
図2〜図4を参照しながら、プリント配線板200の製造方法について説明する。図2に示すように、プリント配線板100の両面に後述する感光性樹脂組成物からなるソルダーレジスト(絶縁層)8を形成する。なお、ソルダーレジスト8の形成には液状の感光性樹脂組成物を使用してもよいし、感光性樹脂フィルムを使用してもよい。液状の感光性樹脂組成物を使用する場合、ソルダーレジスト8の形成はスクリーン印刷やロールコータによって実施できる。感光性樹脂フィルムを使用する場合は、ソルダーレジスト8の形成は真空ラミネート等によって実施できる。
【0026】
ソルダーレジスト8の厚みを精度良く制御でき、予めソルダーレジスト8の厚みを管理できる点から、ソルダーレジスト8の形成には感光性樹脂フィルムを使用することが好ましい。感光性樹脂フィルムの厚さは、プリント配線板100表面の回路や電極パッドの厚さや残銅率によっても異なるが、好ましくは5μm〜100μmであり、より好ましくは10μm〜50μmである。感光性樹脂フィルムの厚さが5μm未満であると、導体回路間に感光性樹脂フィルムを真空ラミネートによって埋め込むことができない傾向がある。一方、感光性樹脂フィルムの厚さが100μmを超えると、感光性樹脂フィルムの上部と底部で光硬化度の傾斜が大きくなり、露光性及び現像性が低下して安定した開口形状を得ることが難しくなる傾向がある。
【0027】
次いで、マスクパターンを通して活性光線を照射することにより、ソルダーレジスト8の所定部分を露光し、露光部のソルダーレジスト8を光硬化させる(第一の露光処理)。活性光線の光源としては、公知の光源を用いることができるが、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものを使用できる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも使用できる。更に直接描画方式のダイレクトレーザ露光を用いてもよい。露光量は使用する装置や感光性樹脂組成物の組成によって異なるが、好ましくは20mJ/cm〜800mJ/cmであり、より好ましくは50mJ/cm〜600mJ/cmである。露光量が20mJ/cm未満であると光硬化が不充分となりやすく、他方、600mJ/cmを越えると光硬化が過剰となり、ソルダーレジストの開口形状を安定して得ることが困難となる傾向となる。
【0028】
次いで、現像により露光部以外のソルダーレジスト8の表面を除去することで、図3に示すようなパターンをソルダーレジスト8に形成し、電極パッド9a,9bをそれぞれ露出させる(現像処理)。このときに用いる現像液としては、例えば、20℃〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1〜5質量%水溶液)等のアルカリ現像液が用いられ、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング及びスクラッピング等の公知の方法により現像する。
【0029】
現像処理後、ソルダーレジスト8のパターン上の所定の一部を更に露光する(第二の露光処理)。この露光は、第一の露光処理と同様の方法で行うことができるが、現像処理後に形成されたソルダーレジスト8のパターン上にダムを形成するために設計されたマスクパターンを用いる点で異なる。すなわち、第二の露光処理においては、ダムを形成するためにソルダーレジスト8の厚みを厚めに設定したい範囲に照射がなされるように設計されたマスクパターンを使用する。第二の露光処理における露光量は、使用する装置や感光性樹脂組成物によって異なるが、好ましくは100mJ/cm〜3000mJ/cmであり、より好ましくは100mJ/cm〜1000mJ/cmである。
【0030】
第二の露光処理後、ソルダーレジスト8を熱硬化させる(第一の熱硬化処理)。第一の熱硬化処理における熱硬化温度が60℃〜180℃であり、硬化時間が5分〜120分であることが好ましく、硬化温度が80℃〜160℃であり、硬化時間が15分〜90分であることがより好ましい。硬化温度が60℃より低く、硬化時間が5分より短いと、絶縁層の熱硬化が不足し、その後のデスミア処理によって絶縁層の表面が大きく侵食されて導体回路が露出しやすくなる。一方、硬化温度が180℃より高く、硬化時間が120分より長いと、絶縁層の硬化が進みすぎて、その後にデスミア処理を実施しても絶縁層に十分な高低差を有する段差を形成することが難しくなる傾向となる。
【0031】
第一の熱硬化処理後、ソルダーレジスト8の表面をデスミア処理し、第一の露光処理及び現像後に表面の導体回路近傍に残った樹脂残渣を除去するとともに、第二の露光処理がなされなかった部分のソルダーレジスト8の表面を除去する。これにより、ソルダーレジスト8に段差10が形成されたプリント配線板200が得られる(図4)。段差10によって囲われた領域が凹部をなし、アンダーフィル材を塞き止めるダムとして機能する。
【0032】
デスミア処理は、例えば、過マンガン酸カリウム液、クロム液、硫酸などの混合液に被処理基板を浸漬することによって実施できる。具体的には、熱湯や所定の膨潤液を用いて被処理基板を膨潤処理した後、過マンガン酸カリウム液等で残渣等を除去し、還元(中和)を行った後、水洗、湯洗、乾燥を行う。1回の処理を行っても充分なダムが形成されない場合は複数回処理を行ってもよい。なお、デスミア処理は上記のものに限定されない。
【0033】
デスミア処理によって形成される段差10の高低差(図4に示す高さh)は、好ましくは5μm〜30μmであり、より好ましく10μm〜20μmである。段差10の高低差が5μm未満であると、フリップチップ実装時にアンダーフィル材を十分に塞き止めることができず、フィレット形状が不安定なものとなりやすく、他方、30μmを超えるとプリント基板の薄型化への対応が不十分となりやすい。
【0034】
デスミア処理の終了後、はんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによるUV硬化処理を実施してもよく、熱硬化処理(第二の熱硬化処理)を実施してもよい。UV硬化処理を実施する場合は必要に応じてそのUV照射量を調整することができ、例えば1〜5J/cm程度の照射量で照射を行うこともできる。また、熱硬化処理する場合は、120〜180℃程度の範囲で15〜120分程行われることが好ましい。UV硬化処理と熱硬化処理とを同時に行うこともでき、いずれか一方を実施した後、他方を実施することもできる。UV硬化と熱硬化とを同時に行う場合、はんだ耐熱性、耐薬品性等を効果的に付与する観点から、60〜150℃に加熱することがより好ましい。
【0035】
プリント配線板200には、図5に示すように、電極パッド9a,9b上にめっき層11(例えば、ニッケル/金めっき)を形成するとともに、フリップチップ実装するめっき層11の上に更に受けはんだ12を形成してもよい。なお、プリント配線板200に対し、上記のようなめっき処理やはんだ処理に加えて、プリント配線板に対して一般的に行われている各種加工処理、例えば、穴開け加工、キャビティー加工、スルーホールめっき処理等を更に施してもよい。
【0036】
図6は、プリント配線板200に半導体素子13をフィリップチップ実装した状態を示す図である。図6に示すように、半導体素子13はプリント配線板200の段差10で囲われた領域内に配置されており、半導体素子13の外部端子13aと受けはんだ12が電気的に接続されている。半導体素子13の周囲及び半導体素子13とプリント配線板200の間にはアンダーフィル材14が充填されている。段差10はアンダーフィル材14が外側に流れ出るのを効果的に防止する。段差10を有するプリント配線板200によれば、フィレット形状やフィレット長を精度良く制御できるため、高い実装密度を要する場合であっても対応可能である。
【0037】
本実施形態に係る製造方法によれば、プリント配線板100の表面に形成した硬化前のソルダーレジスト8に対して実施する二段階の露光処理(第一の露光処理及び第二の露光処理)と、熱硬化処理後のソルダーレジストパターンに対して実施するデスミア処理とを組み合わせたことで、プリント配線板100の表面にソルダーレジストを形成する工程を一回実施するだけでダム(段差10)を形成できる。従って、プリント配線板200を低コストで効率よく製造できる。
【0038】
次に、上述のプリント配線板の製造に用いられる感光性樹脂組成物について詳細に説明する。プリント配線板200の製造に用いる感光性樹脂組成物は、特に限定するものではないが、以下のものが好適である。すなわち、ソルダーレジストパターン(絶縁層パターン)の形成に好適な感光性樹脂組成物は、
(a)カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを含有する光反応性樹脂と、
(b)光重合開始剤と、
(c)熱硬化性化合物と、
(d)無機フィラーと、
を含有し、(d)無機フィラーは最大粒径が5μm以下であり且つ平均粒径が1μm以下のものである。無機フィラーの最大粒径は、より好ましくは2μm以下であり、更に好ましくは1μm以下である。無機フィラーの平均粒径は解像度の点から、より好ましくは300nm以下であり、更に好ましくは200nm以下である。最大粒径がなるべく小さい無機フィラーを使用することで、デスミア処理後のソルダーレジストパターンの表面が平滑となり、その後のフリップチップ実装時にアンダーフィル材の充填性が高まる。
【0039】
(a)カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを含有する光反応性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)のエステル化物に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(a3)を付加した付加反応物等を用いることができる。
【0040】
これらは、次の2段階の反応によって得ることができる。最初の反応(以下、便宜的に「第1の反応」という。)では、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)とが反応する。次の反応(以下、便宜的に「第2の反応」という。)では、第一の反応で生成したエステル化物と、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(a3)とが反応する。
【0041】
上記エポキシ化合物(a1)としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、多官能エポキシ化合物等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型とエピクロルヒドリンを反応させて得られるものが適しており、チバガイギー社製GY−260、GY−255、XB−2615、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート828、1007、807等のビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、アミノ基含有、脂環式あるいはポリブタジエン変性等のエポキシ化合物が好適である。
【0042】
ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール及びアルキルフェノール等のフェノール類から選ばれる少なくとも一種とホルムアルデヒドとを、酸性触媒下で反応して得られるノボラック類と、エピクロルヒドリンを反応させて得られるものが適しており、東都化成株式会社製YDCN−701、704、YDPN−638、602、ダウ・ケミカル社製DEN−431、439、チバガイギー社製EPN−1299、大日本インキ化学工業株式会社製N−730、770、865、665、673、VH−4150、4240、日本化薬株式会社製EOCN−120、BREN等が挙げられる。
【0043】
その他の構造のエポキシ化合物としては、例えば、サリチルアルデヒド−フェノール又はサリチルアルデヒド−クレゾール型エポキシ化合物(日本化薬株式会社製EPPN502H、FAE2500等)、ダウ・ケミカル社製DER−330、337、361、ダイセル化学工業株式会社製セロキサイド2021、三菱ガス化学株式会社製TETRAD−X、C、日本曹達株式会社製EPB−13、27等も使用することができる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用され、混合物あるいはブロック共重合物を用いてもよい。
【0044】
上記不飽和モノカルボン酸(a2)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸や、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類又は飽和若しくは不飽和二塩基酸と不飽和モノグリシジル化合物との半エステル化合物類との反応物が挙げられる。この反応物としては、例えば、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、へキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸等と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等とを、常法により等モル比で反応させて得られる反応物などが挙げられる。これらの不飽和モノカルボン酸は単独又は混合して用いることができる。これらの中でも、アクリル酸が好ましい。
【0045】
飽和又は不飽和多塩基酸無水物(a3)としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。
【0046】
第1の反応では、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基と不飽和モノカルボン酸(a2)のカルボキシル基との付加反応により水酸基が生成する。第1の反応における、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)との比率は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1当量に対して、不飽和モノカルボン酸(a2)が0.7〜1.05当量となる比率であることが好ましく、0.8〜1.0当量となる比率であることがより好ましい。
【0047】
エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)とは有機溶剤に溶解させて反応させることができる。有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などを用いることができる。
【0048】
第1の反応では、反応を促進させるために触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン等を用いることができる。触媒の使用量は、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましい。
【0049】
第1の反応において、エポキシ化合物(a1)同士又は不飽和モノカルボン酸(a2)
同士、あるいはエポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)との重合を防止するため、重合防止剤を使用することが好ましい。重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、及びピロガロール等を用いることができる。重合防止剤の使用量は、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)の合計100質量部に対して、0.01〜1質量部とすることが好ましい。第1の反応の反応温度は、60〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
【0050】
第1の反応では、必要に応じて不飽和モノカルボン酸(a2)と、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物とを併用することができる。
【0051】
第2の反応では、第1の反応で生成した水酸基及びエポキシ化合物(a1)中に元来ある水酸基が、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物(a3)の酸無水物基と半エステル反応すると推察される。ここでは、第1の反応によって得られる樹脂中の水酸基1当量に対して、0.1〜1.0当量の多塩基酸無水物(a3)を反応させることができる。多塩基酸無水物(a3)の量をこの範囲内で調製することによって、(a)成分の酸価を調整することができる。
【0052】
上記のカルボキシル基を有する樹脂としては、CCR−1218H、CCR−1159H、CCR−1222H、PCR−1050、TCR−1335H、ZAR−1035、ZAR−2001H、ZFR−1185及びZCR−1569H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0053】
(b)光重合開始剤としては、使用する露光機の光波長にあわせたものであれば特に制限はなく、公知のものを利用することができる。具体的には例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アルキルアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、9−フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル類、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン系化合物、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物などが挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
(b)光重合開始剤は、レジスト形状をより良好にする観点から、ホスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いることが好ましい。そのような化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイドのものとしては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドがあり、ビスアシルホスフィンオキサイドのものとしては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、が挙げられる。それぞれ、IRGACURE−TPO、IRGACURE−819(いずれもチバ・ジャパン社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0055】
また、感度向上を目的にアクリジン環を有する化合物、オキシムエステルを有する化合物をさらに含有することが好ましく、これらは併用することもできる。上記アクリジン環を有する化合物としては、例えば、9−フェニルアクリジン、9−アミノアクリジン、9−ペンチルアミノアクリジン、1,2−ビス(9−アクリジニル)エタン、1,3−ビス(9−アクリジニル)プロパン、1,4−ビス(9−アクリジニル)ブタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、1,6−ビス(9−アクリジニル)ヘキサン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,8−ビス(9−アクリジニル)オクタン、1,9−ビス(9−アクリジニル)ノナン、1,10−ビス(9−アクリジニル)デカン、1,11−ビス(9−アクリジニル)ウンデカン、1,12−ビス(9−アクリジニル)ドデカン等のビス(9−アクリジニル)アルカン、9−フェニルアクリジン、9−ピリジルアクリジン、9−ピラジニルアクリジン、9−モノペンチルアミノアクリジン、1,3−ビス(9−アクリジニル)−2−オキサプロパン、1,3−ビス(9−アクリジニル)−2−チアプロパン、1,5−ビス(9−アクリジニル)−3−チアペンタンなどが挙げられ、中でも1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタンがより好ましい。1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタンは、N−1717(株式会社ADEKA製、商品名)として商業的に入手可能である。上記オキシムエステルを有する化合物としては、例えば、(2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン)、(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム))が挙げられる。市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0056】
(c)熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ベンゾオキサジン化合物、オキサゾリン化合物、環状カーボナート化合物、ブロック化イソシアネート、メラミン誘導体等が使用できる。
【0057】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、それらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。これらの化合物としては市販のものを用いることができる。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとしてはエピコート828,エピコート1001及びエピコート1002(いずれもジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができる。ビスフェノールFジグリシジルエーテルとしてはエピコート807(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができ、ビスフェノールSジグリシジルエーテルとしてはEBPS−200(日本化薬社製、商品名)及びエピクロンEXA−1514(大日本インキ化学工業社製、商品名)等を挙げることができる。また、ビフェノールジグリシジルエーテルとしてはYL−6121(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができ、ビキシレノールジグリシジルエーテルとしてはYX−4000(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができる。さらに、水添ビスフェノールAグリシジルエーテルとしてはST−2004及びST−2007(いずれも東都化成社製、商品名)等を挙げることができ、上述した二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてはST−5100及びST−5080(いずれも東都化成社製、商品名)等を挙げることができる。
【0058】
またオキセタン化合物の例としては、1分子中にオキセタン環を2つ以上有するものは全て含まれ、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルメチル)オキセタン、1,4−ベンゼンジカルボン酸 ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル等を挙げることができる。具体的な例としては、東亜合成(株)製のアロンオキセタンシリーズや宇部興産のエタナコールオキセタンシリーズがある。オキセタン化合物を用いる場合には、反応性が低いため、トリフェニルホスフィン等の硬化触媒を用いても良い。
【0059】
ブロック化イソシアネートは、常温では不活性であるが加熱するとブロック剤が可逆的に解離してイソシアネート基を再生するもので、用いられるイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型が挙げられるが密着性の見地からはイソシアヌレート型が好ましい。これらは、単独で又は2種類以上で使用される。上記ブロック剤としては、ジケトン類、オキシム類、フェノール類、アルカノール類及びカプロラクタム類から選ばれる少なくとも一種の化合物が挙げられる。具体的には、メチルエチルケトンオキシム、ε−カプロラクタム等が挙げられる。ブロック型イソシアネートは市販品として容易に入手可能であり、例えば、スミジュールBL−3175、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2957、TPLS−2078、BL4165、TPLS2117、BL1100,BL1265、デスモサーム2170、デスモサーム2265(住友バイエルウレタン社製商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(日本ポリウレタン工業社製商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(三井武田ケミカル社製商品名)、デュラネートTPA−B80E、デュラネート17B−60PX(旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。ブロック剤の解離温度は120〜200℃のものが好ましい。
【0060】
メラミン誘導体としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン等のアミノ基含有化合物にアルデヒドを反応させて得られる初期縮合物であり、例えば、トリメチロールメラミン樹脂、テトラメチロールメラミン樹脂、ヘキサメチロールメラミン樹脂、ヘキサメトキシメチルメラミン樹脂、ヘキサブトキシメチルメラミン樹脂、N,N′−ジメチロール尿素樹脂、サイメル300、サイメル301、サイメル303、サイメル325、サイメル350等のメラミン樹脂(三井東圧サイメル社製メラミン樹脂の商品名)、メラン523、メラン623、メラン2000等のメラミン樹脂(日立化成工業社製メラミン樹脂の商品名)、メラン18等の尿素樹脂(日立化成工業社製尿素樹脂の商品名)、メラン362A等のベンゾグアナミン樹脂(日立化成工業社製ベンゾグアナミン樹脂の商品名)などが挙げられる。特に好ましいアミノ樹脂としては、ヘキサメトキシメチルメラミン樹脂を挙げることができる。
【0061】
(d)無機フィラーとしては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、粉状酸化珪素、無定形シリカ、タルク、クレー、焼成カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の無機充填剤が使用できる。特に望ましくは、シリカフィラーで一次粒径のまま、凝集することなく樹脂中に分散させるために、シランカップリング剤を用いたものが好ましい。
【0062】
シランカップリング剤としては、一般的に入手可能なものを用いることができ、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン等が使用可能である。具体的な化合物名としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチルデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン等がある。
【0063】
シランカップリング剤としては、感光性樹脂組成物に含まれる(a)エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する光反応性の樹脂のカルボキシル基と反応する種類のものが好ましい。例えば、メタクリルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、イソシアネートシランが望ましい。これらのシランカップリング剤は、シリカと樹脂の結合を強めるため、永久マスクレジストとした際に膜の強度を強め、また同時に熱膨張係数を大きく低減することが可能である。
【0064】
感光性樹脂組成物における上述の各成分の含有量は以下の範囲とすることが好ましい。すなわち、(b)光重合開始剤の含有量は(a)成分100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部であり、より好ましくは1〜5質量部である。(c)熱硬化性化合物の含有量は(a)成分100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは10〜30質量部である。(d)無機フィラーの含有量は(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部であり、より好ましくは20〜80質量部である。
【0065】
以上、本発明に係るプリント配線板の製造方法及び用いる感光性樹脂組成物の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【0066】
例えば、上記実施形態では、銅張積層体1や感光性樹脂組成物を使用して製造したプリント配線板100の表面にダムを形成する場合を例示したが、プリント配線板100は市販のものでもよく、またその態様は図1(d)に示すものに限られるものではない。例えば、プリント配線板100は、一方面上にのみ導体回路が形成されたものであってもよいし、多層ではなく単層であってもよい。
【実施例】
【0067】
<プリント配線板(ソルダーレジストなし)の製造>
まず、厚さ12μmの銅箔2が両面に貼着された銅張積層体(日立化成工業株式会社製 MCL−E−679FG)を準備した。銅張積層体の厚さは100μmであった(図1(a)参照)。銅張積層体にドリル穴開け加工を施した後、無電解銅めっき処理及び電解銅めっき処理を施し、上面及び下面の銅箔を電気的に接続した(図1(b)参照)。
【0068】
銅箔2をエッチング処理し、所定パターン形状に加工した。スルーホール3内に穴埋め材4を充填し、熱硬化させた(図1(c)参照)。次いで、絶縁層5a,5bとして層間絶縁材(日立化成工業株式会社 AS−Z3)を両面に貼着し、炭酸ガスレーザー加工機により微小径のバイアホール6を形成し、セミアディティブ法によって、表層回路を形成した(図1(d)参照)。なお、絶縁材の厚みは40μmであった。
【0069】
<フィルム状ソルダーレジストの製造>
プリント配線板のソルダーレジストの形成に使用する感光性樹脂組成物として、以下に示すものを調製した。
【0070】
(感光性樹脂組成物A)
(a)カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを含有する光反応性樹脂
酸変性したクレゾールノボラック型エポキシアクリレート(CCR−1219H、日本化薬株式会社製、商品名)。
(b)光重合開始剤
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(ダロキュアTPO、チバ・ジャパン社製、商品名);
エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(イルガキュアOXE−02、チバ・ジャパン社製、商品名)。
(c)熱硬化性化合物
ビフェノール型エポキシ樹脂(YX−4000、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)。
(d)無機フィラー
ビニルシランでシランカップリング処理したシリカフィラー(平均粒径50nm)。
【0071】
(d)無機フィラーは、樹脂分に対し、30重量%になるように配合した。分散状態は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計「UPA−EX150」(日機装社製)、及びレーザ回折散乱式マイクロトラック粒度分布計「MT−3100」(日機装社製)を用いて測定し、最大粒径が1μm以下であることを確認した。
【0072】
(感光性樹脂組成物B)
(a)成分、(b)成分及び(c)成分は、上記の感光性樹脂組成物Aと同様のものを使用し、これらの樹脂分に対して以下の(d)無機フィラーの量が30重量%になるように配合した。(d)無機フィラーとして、平均粒径300nmの硫酸バリウム粉末を使用した。この硫酸バリウム粉末は、スターミルLMZ(アシザワファインテック株式会社製)及び直径1.0mmのジルコニアビーズによる粉砕・分散処理(周速12m/sにて3時間)を実施することによって得た。上記のシリカフィラーと同様に最大粒径を測定し、2μmであることを確認した。
【0073】
(感光性樹脂組成物C)
(a)成分、(b)成分及び(c)成分は、上記の感光性樹脂組成物Aと同様のものを使用し、これらの樹脂分に対して以下の(d)無機フィラーの量が30重量%になるように配合した。(d)無機フィラーとして、平均粒径が1μmの結晶性シリカ粉末を使用した。この結晶性シリカ粉末は、スターミルLMZ(アシザワファインテック株式会社製)及び直径1.0mmのジルコニアビーズによる粉砕・分散処理(周速12m/sにて3時間)を実施することによって得た。上記のシリカフィラーと同様に最大粒径を測定し、10〜15μmの範囲内であることを確認した。
【0074】
上述のように得た各感光性樹脂組成物の溶液を支持層である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(G2−16、帝人社製、商品名)上に均一に塗布することにより感光性樹脂組成物層を形成した。その後、感光性樹脂組成物層を熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間乾燥することによって支持層上にフィルム状ソルダーレジストを得た。フィルム状ソルダーレジストの膜厚は30μmであった。なお、フィルム状ソルダーレジストに埃等が付着しないように、支持層と接している側とは反対側の表面上にポリエチレンフィルム(NF−15、タマポリ社製、商品名)を保護フィルムとして貼り合わせた。
【0075】
<プリント配線板の製造>
得られたフィルム状ソルダーレジストを用いて、プリント配線板100A上にソルダーレジスト8を形成した(図2参照)。詳細には、まず、感光性樹脂組成物A,B又はCからなるフィルム状ソルダーレジストの保護フィルムのみを剥がし、プリント配線板100Aの表面にフィルム状ソルダーレジストを載置した。プレス式真空ラミネータ(MVLP−500、名機製作所製、商品名)を用いてプリント配線板100の表面にフィルム状ソルダーレジストを積層した。プレス条件は、プレス熱板温度80℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaとした。
【0076】
第一の露光処理として、半導体素子13を接続する電極パッド9a,9bに光が当たらないようにパターンを形成したフォトツールを密着させ、オーク製作所社製EXM−1201型露光機を使用して、所定のエネルギー量で露光を行った。次いで、常温で1時間静置した後、フィルム状ソルダーレジストの支持層(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を剥がし、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の2.0倍の時間でスプレー現像を行い、電極パット9a、9bの一部が露出するようにソルダーレジスト8を開口させた(図3参照)。
【0077】
続いて、アンダーフィル材の塗布がなされる部分に光が当たらないように設計されたフォトツールを密着させ、同様にオーク製作所社製EXM‐1201型露光機を使用して、所定の条件で第二の露光処理を行った。
【0078】
その後、第一の熱硬化処理を所定の条件で行い、表1に示す工程に沿ってデスミア処理を行うことで、ソルダーレジスト8に段差10(ダム)を形成した(図4参照)。また、必要に応じてデスミア処理を繰り返し実施した。実施例1〜12におけるプリント配線板の製造時におけるソルダーレジスト形成のプロセス条件を表2及び表3にそれぞれ示す。
【0079】
デスミア処理後、オーク製作所社製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、160℃で1時間の第二の熱硬化処理を行った。その後、市販の無電解ニッケル/金めっき液を用いて、ニッケルめっき厚5μm、金めっき厚0.1μmとなるようにめっき処理を行った。半導体素子13が搭載される電極パッド9a上に受けはんだ12を施した(図5参照)。受けはんだ12の組成は、Sn−3.0Ag−0.5Cuとした。作製したプリント配線板は、パッケージサイズが14mm×14mmで、中心部の8.8mm×8.8mmを囲むように段差(ダム)を有し、7.3mm×7.7mmのペリフェラルタイプのフリップチップを実装できる仕様とした。段差の高低差は表面粗さ計を用いて測定した。
【0080】
作製したプリント配線板上に7.3mm×7.7mmのペリフェラルタイプの半導体素子13(株式会社日立超LSIシステムズ製 PHASE11−80)を、フリップチップボンダーを用いてローカルリフロー実装し、電極パッド9a,9bと半導体素子の外部端子13aを受けはんだ12を介して電気的に接続した(図6参照)。フラックスは半導体素子13のバンプ先端に転写方式により供給した。次に、165℃で2時間の乾燥を行った後、アンダーフィル材(日立化成工業株式会社製 CEL−C−3730S)を、ディスペンサーを用いて半導体素子とプリント配線板の間に流し込み、165℃で2時間の条件でアンダーフィル材を硬化した。アンダーフィル材の塗布量は5mgとした。
【0081】
ダムでアンダーフィル材を洩れなく塞き止め、ダムの外側へのアンダーフィル材14のはみ出しの有無を目視で確認した。ダムの外側へのアンダーフィル材14の洩れがないものを○、漏れが発生したものを×と表記した。また、超音波探査映像装置を用いて、アンダーフィル充填部にボイド発生の有無を非破壊で検査した。結果を表4及び表5に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【符号の説明】
【0087】
1…銅張積層体、2a,2b…回路、2b…回路、3…スルーホール、5…内層基板、5a,5b…絶縁層、6…バイアホール、8…ソルダーレジスト(絶縁層)、9a,9b…電極パッド(導体回路)、10…段差、13…半導体素子、13a…外部端子、14…アンダーフィル材、100…プリント配線板、200…表面に段差(ダム)を有するプリント配線板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層をなす絶縁層に段差を有するプリント配線板の製造方法であって、
導体回路を表面に有するプリント配線板上に、感光性樹脂組成物からなる絶縁層を形成した後、当該絶縁層に対して第一の露光処理及び現像処理を施して絶縁層パターンを形成する工程と、
前記絶縁層パターンに対して第二の露光処理を施した後、更に第一の熱硬化処理を施す工程と、
前記第一の熱硬化処理後の前記絶縁層パターンに対してデスミア処理を施して当該絶縁層パターンに段差を設ける工程と、
を備える、プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記段差が設けられた絶縁層パターンに対してUV硬化処理及び第二の熱硬化処理の少なくとも一方を施す工程を更に備える、請求項1記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記第一の露光処理における露光量が20mJ/cm〜800mJ/cmである、請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記第二の露光処理における露光量が100mJ/cm〜3000mJ/cmである、請求項1〜3のいずれか一項記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記第一の熱硬化処理における熱硬化温度が60℃〜180℃であり、硬化時間が5分〜120分である、請求項1〜4のいずれか一項記載プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の製造方法によって製造されたプリント配線板であり、前記絶縁層パターンに高低差5μm〜30μmの段差を有する、プリント配線板。
【請求項7】
プリント配線板の最外層をなし且つ段差を有する絶縁層の形成に用いられる感光性樹脂組成物であって、
(a)カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを含有する光反応性樹脂と、
(b)光重合開始剤と、
(c)熱硬化性化合物と、
(d)無機フィラーと、
を含有し、
前記(d)無機フィラーは最大粒径が5μm以下であり且つ平均粒径が1μm以下である感光性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−238668(P2012−238668A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105595(P2011−105595)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】